清水銀行(頭取 岩山 靖宏)は、お客様の SDG s の達成をご支援するため、各種サステナブルファイナンスの提供に努めており、その一環としてこのたび、株式会社コウノ(代表取締役 香野 智章)と「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約を締結いたしました。
株式会社コウノ との
「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
清水銀行(頭取 xx xx)は、お客様の SDG s の達成をご支援するため、各種サステナブルファイナンスの提供に努めており、その一環としてこのたび、株式会社コウノ(代表取締役 xx xx)と「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約を締結いたしました。
本件の取組みにあたっては、関連会社の株式会社xx地域経済研究センター(代表取締役 xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所(代表取締役社長 xx xx)がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。
xx銀行では、2021 年 12 月に「環境方針」「責任ある投融資方針」からなる「xx銀行サステナビリティ方針」を策定し、持続可能な社会の実現や社会的課題の解決に向けた取り組みを加速させてまいりました。今後も社会・環境問題の解決に資する取り組みを一層推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
1.契約概要 | 2.借入人概要 | |
x 約 日 | : 令和 4 年 9 月 30 日(金) | 企 業 名 : 株式会社コウノ |
融資金額 | : 50 百万円 | 所 在 地 : xxxxxxxxx 000-0 |
資金使途 | : 運転資金 | 事業内容 : 橋梁総合メンテナンス |
3.借入人の主な取組み(詳細は「ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書」をご参照ください)
(1)特定されたインパクト
ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項 | ・従業員への資格取得促進による有資格者の増加 ・健康経営優良法人の取得 ・女性活躍・高齢者の積極雇用とxxな所得 ・事業を通じて地域の社会インフラ維持に貢献し、持続的なまちづくりと経済発展を図る |
ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項 | ・全従業員の健康管理 による 健全な職場環境の維持 ・従業員の働きやすい環境の構築 ・省エネルギー化の推進 ・環境に影響を与えない工法の使用促進 |
(2)測定する KPI
社会面 | ・1 級土木施工管理技士と 2 級土木施工管理技士を毎年 1 名ずつ養成し、 現状の 1 級土木施工管理技士 5 名、2 級土木施工管理技士(鋼構造物) 4 名を 2027 年 9 月までに 1 級土木施工管理技士 10 名、2 級土木施工 管理技士(鋼構造物)を 9 名にする ・2022 年 12 月までに健康経営優良法人の認定を取得する ・現在の 0 人の女性管理職を 2027 年 9 月までに1人登用する ・現在 65 歳以上の従業員数 3 人を 2027 年9月までに 6 人に増加する ・法定の特殊検診、定期健診の実施率 100%を維持する ・各種技能講習への担当社員派遣と、全社員を対象に現在年 1 回実施しているパワーハラスメント・メンタルヘルスの勉強会実施を維持する ・労働災害事故ゼロを維持する |
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環境面 | ・営業車両 13 台のうち 5 台( 38 %)のハイブリッド車などの省エネ ルギー車両を 2027年9月までに 13 台のうち 10 台(77%)にする ・循環式ハイブリッドブラスト工法の適用率 95%を維持し、循環式ハイブリッドブラスト工法が適用できない部分についてIH式塗膜剥離工法の適用率を引き上げる | |
経済面 | ・現在の 0 人の女性管理職を 2027 年 9 月までに1人登用する ・現在 65 歳以上の従業員数 3 人を 2027 年9月までに 6 人に増加する ・2021 年8月期の施工件数 95 件を 2027 年8月期に 100 件にする |
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以 上
<ニュースリリースに関するお問い合せ> xx銀行 支店営業部 xx 054-366-9990
株式会社xx地域経済研究センター
The Shimizu Regional Economy Research Center,INC
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年 9 月 27 日
株式会社xx地域経済研究センター
株式会社xx地域経済研究センター
The Shimizu Regional Economy Research Center,INC
目次 | |
1.評価の概要••••••••••••••••••••••••••• | 1 |
2.PIFの概要•••••••••••••••••••••••••• | 2 |
3.企業概要•••••••••••••••••••••••••••• | 2 |
4.包括的分析••••••••••••••••••••••••••• | 4 |
5.サステナビリティ経営体制•••••••••••••••••••• | 11 |
6.インパクトの特定•••••••••••••••••••••••• | 20 |
7.KPIの決定•••••••••••••••••••••••••• | 24 |
8.モニタリング•••••••••••••••••••••••••• | 30 |
xx地域経済研究センターは、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融計画(UNEP FI)が公表している「ポジティブ•インパクト•ファイナンス金融原則」に則り、株式会社コウノ(以下、コウノという)の包括的なインパクト分析を行いました。
xx銀行は、本評価書で特定されたポジティブ•インパクトの拡大とネガティブ•インパクトの低減に向けた取り組みを支援するため、xxxに対してポジティブ•インパクト•ファイナンス(以下、PIFという)を実行します。
1.評価の概要
(企業概要)
コウノは、静岡県静岡市xx区にある 1950 年創業の橋梁総合メンテナンス及び建築工事業者である。塗装を中心とした橋梁総合メンテナンス業に特化した事業特性を生かし、静岡県内を中心とした社会インフラの維持整備事業を行っている。
事業に当たっては、社会インフラの維持という事業の特性から、安全、環境への配慮を充分に行って取り組み、労働災害事故ゼロを維持しつつ、最新の設備を導入して事業を営んでいる。
(インパクト特定)
事業におけるポジティブ•インパクトとして特定した項目は「健康•衛生」「教育」「雇用」
「移動手段」「包括的で健全な経済」「経済収束」とし、ネガティブ•インパクトとして特定した項目は「健康•衛生」「雇用」「人格と人の安全保障」「水(質)」「大気」「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」とした。
(KPIの決定)
ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項として、社会面において、「教育」ではテーマを「従業員への資格取得促進」とし KPI は「1 級土木施工管理技士と 2 級土木施工管理技士を毎年 1 名ずつ養成し、現状の 1 級土木施工管理技士 5 名、2 級土木施工管理技士
(鋼構造物)4 名を 2027 年 9 月までに 1 級土木施工管理技士 10 名、2 級土木施工管理
技士(鋼構造物)を 9 名にする」とした。「健康•衛生」ではテーマを「従業員の健康」と
し KPI は「2022 年 12 月までに健康経営優良法人の認定を取得する」とした。社会面•経済面において、「雇用」「包括的で健全な経済」ではテーマを「女性活躍•高齢者の積極雇用とxxな所得」とし KPI は「現在の 0 人の女性管理職を 2027 年 9 月までに1人登用す
る」「現在の 65 歳以上の従業員数 3 人を 2027 年9月までに 6 人に増加する」とした。経済面において、「経済収束」ではテーマを「事業を通じて地域の社会インフラ維持に貢献し、持続的なまちづくりと経済発展を図る」とし KPI は「2021 年 8 月期の施工件数 95件を 2027 年 8 月期に 100 件にする」とした。
ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項として、社会面において、「健康•衛生」ではテーマを「全従業員の健康管理による健全な職場環境の維持」とし KPI は「法定の特殊検診、定期健診の実施率 100%を維持する」とした。「健康•衛生」「人格と人の安全保障」
ではテーマを「従業員の働きやすい環境の構築」とし KPI は「各種技能講習への担当社員の派遣と、全社員を対象に現在年 1 回実施しているパワーハラスメント•メンタルヘルスの勉強会実施を維持する」「労働災害事故ゼロを維持する」とした。環境面において、「気候」ではテーマを「省エネルギー化の推進」とし KPI は「営業車両 13 台のうち 5 台(38%)のハイブリッド車などの省エネルギー車両を 2027年9月までに 13 台のうち 10 台(77%)にする」とした。「水(質)」「大気」「資源効率•安全性」「廃棄物」ではテーマを「環境に影響を与えない工法の使用促進」とし、KPIは「循環式ハイブリッドブラスト工法の適用率 95%を維持し、循環式ハイブリッドブラスト工法が適用できない部分についてIH式塗膜剥離工法の適用率を引き上げる」とした。
(モニタリング)
モニタリング体制として、統括責任者をxxxx代表取締役が務め、プロジェクトリーダーにxxxx総務担当を選任し、総務部をプロジェクトチームとして、今後少なくとも年 1 回はモニタリングする体制を構築し、進捗状況を確認する。
2.PIFの概要
今回実施予定の融資概要
契約日及び返済期限 | 2022 年 9 月 30 日~2027 年 9 月 30 日 |
金額 | 50,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5 年 |
3.企業概要
企業名 | 株式会社コウノ
|
グループ企業 | 会社名(◎中心企業) 業種 所在地 橋梁総合 ◎㈱コウノ xxxxxxxxx 000-0メンテナンス ㈱セント•フィールド ホールディングス xxxxxxxxx 000-0 ホールディングス |
海外拠点の有無 | 無 |
従業員 | 21 名 |
資本金 | 40 百万円 |
業種 | 橋梁総合メンテナンス業 |
事業の内容 売上高構成比 (2021 度実績) | 橋梁総合メンテナンス業 98%建築工事業 2% |
主要取引先 | <主要販売先> 官公庁、ショーボンド建設㈱、中部化工建設㈱ 他 |
沿革 | 1950 年 xx社長xxxxxが塗装店を個人創業 1966 年 xx塗装㈱を設立 1971 年 旧xx町から旧xxxxxxxx 0000 年 xxxxが代表取締役に就任、㈱コウノに社名変更 2015 年 xxxxxx 000-0 に本社移転 2022 年 ㈱セント•フィールドホールディングスを新設 |
企業理念 | 品質•サービスを通して、地域•従業員に寄り添った企業を実現する |
経営方針 | 環境に配慮した工法の活用を常に行い、社会インフラの長寿命化に貢献し ていくことで、持続可能な橋梁総合メンテナンス企業を実現する。 |
組織図 | |
代表者経歴 | 【代表取締役 xxxx 兼務役職】 一般社団法人 鋼橋塩害対策協会 SSG 工法 理事一般社団法人 循環式ハイブリッドブラストシステム工法協会 理事一般社団法人 IH式塗膜剥離技術協会 中部ブロック長 日本黒錆転換技術協議会 東日本ブロック長 |
㈱コウノ表彰履歴 | 2014 年 静岡県袋井土木事務所 安全工事部門表彰 2016 年 静岡県袋井土木事務所 優良工事部門表彰 2017 年 国土交通省『1号xxxx管内東部維持修繕工事』 表彰 2019 年 静岡県袋井土木事務所 優良技術者表彰 2019 年 静岡県下田土木事務所 優良技術者表彰 2019 年 静岡県交通基盤部長 地域貢献部門工事表彰 2022 年 xxxxxxxx xxxxxx 0000 年 静岡県熱海市土木事務所 地域貢献部門工事表彰 |
4.包括的分析
(1)業種別インパクトの状況
コウノの事業は、鋼構造物•コンクリート構造物の塗装•補修•補強工事など、橋梁総合メンテナンス業が主業務であり、付随事業として一般建築物の塗装工事を建築工事業として行っている。
本ファイナンスでは、国際標準産業分類における「道路•鉄道建設業」と「建築工事業」として整理した。
橋梁総合メンテナンス業のインパクトレーダーにおける標準値において、ポジティブなインパクトとして発現した項目は「雇用」「移動手段」「包括的で健全な経済」「経済収束」、ネガティブなインパクトとして発現した項目は「健康•衛生」「雇用」「文化•伝統」「水
(質)」「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」「資源効率•安全性」「気候」
「廃棄物」「経済収束」となった。
421 4210 道路•鉄道建設業 | 標準値 | |
ポジティブ | ネガティブ | |
水(入手可能性) | ||
食糧 | ||
住居 | ||
健康•衛生 | ||
教育 | ||
雇用 | ||
エネルギー | ||
移動手段 | ||
情報 | ||
文化•伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
xx | ||
強固な制度•平和•安定 | ||
水(質) | ||
大気 | ||
土壌 | ||
生物多様性と■生態系サービス | ||
資源効率•■安全性 | ||
気候 | ||
廃棄物 | ||
包括的で健全な経済 | ||
経済収束 |
建築工事業におけるインパクトレーダーの標準値において、ポジティブなインパクトとし て発現した項目は「住居」「健康•衛生」「雇用」「エネルギー」「包括的で健全な経済」
「経済収束」、ネガティブなインパクトとして発現した項目は「健康•衛生」「雇用」「エネルギー」「文化•伝統」「人格と人の安全保障」「水(質)」「大気」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」となった。
410 4100 建築工事業 | 標準値 | |
ポジティブ | ネガティブ | |
水(入手可能性) | ||
食糧 | ||
住居 | ||
健康•衛生 | ||
教育 | ||
雇用 | ||
エネルギー | ||
移動手段 | ||
情報 | ||
文化•伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
xx | ||
強固な制度•平和•安定 | ||
水(質) | ||
大気 | ||
土壌 | ||
生物多様性と■生態系サービス | ||
資源効率•■安全性 | ||
気候 | ||
廃棄物 | ||
包括的で健全な経済 | ||
経済収束 |
(2)サプライチェーン全体におけるインパクトの状況
ⅰ橋梁総合メンテナンス業界の状況
業界を取り巻く環境として、社会的な課題となっていることは、公共インフラの老朽化である。国土交通省道路局によると、全国には橋長 2m以上の道路橋梁が約 72 万橋存在し、7 割以上となる約 51 万橋が市町村道に存在する。
わが国のインフラは、その多くが高度経済成長期以降に整備されており、今後、建設から 50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加すると見込まれるため、国民の安全•安心や社会経済活動の基盤となるインフラの維持管理•更新を計画的に進めていく必要がある。
2012 年に発生した中央自動車道xxトンネル
出典:国土交通省
の天井板崩落事故により、2013 年にインフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議の中で策定された「インフラ長寿命化基本計画」により、各インフラ管理者は基本計画に基づき「インフラ長寿命化計画(行動計画)」及び「個別施設毎の長寿命化計画(個別施設計画)」を策定することとされた。
全国でトンネルや橋梁の点検が行われ、このうち建設後 50 年を経過した橋梁の割合は 2019 年時点で 27%であり、2029 年には 52%に増加する見通しとなっている。 静岡県でも、県が管理する橋梁約 3,300 の
うち、建築後 50 年を経過した橋梁は 2015年時点で 38%であったものが、2035 年には 76%になるとされている。
政令市である静岡市では 2,610、浜松市では 5,786 の橋梁を管理しており、いずれも
老朽化の課題を同様に抱えている。道路法に基づく定期点検により道路橋の状態を把握
出典:静岡県交通基盤部資料
し、損傷が軽微な段階に予防的な修繕を実施することで機能の保持•回復を図る「予防保全型維持管理」を目標として計画的な維持管理を実施する方針である。
また道路橋のほか、静岡県内には約 400 の横断歩道橋が存在し、国、県、政令市、市町により管理が行われ、橋梁と同様に「予防保全型維持管理」が実施されている。
道路橋以外にも、静岡県内には鉄道橋、水路橋など、インフラとしての多数の橋梁があり、それぞれの管理者により保全、維持管理が行われている。
ⅱ橋梁総合メンテナンス業界における課題について
橋梁総合メンテナンス業界は、大きくは建設業の一部であり、就業者数の減少や人材確保難といった課題を同様に抱えている。
建設業就業者:685 万人(1997)→498 万人(2010)→492 万人(2020)技術者 : 41 万人(1997)→ 31 万人(2010)→ 37 万人(2020)技能者 :455 万人(1997)→331 万人(2010)→318 万人(2020)
出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」
一方で、橋梁総合メンテナンスを主業務としている事業者は少なく、静岡県内でも数社程度しか存在しない。前述の通り、橋梁の維持管理は社会資本の維持管理であり、重要性が増すとともに修繕に関するニーズは高まっている状況といえる。
また、橋梁の塗装には過去に使用されたPCBや鉛が含まれる塗料が使用されているケースもあり、再塗装に際して必要となる既存塗装の剥離、下地処理に際して発生する廃棄物の処理と作業者に対する健康管理などは厳格な対応が求められる。
ⅲ同社の事業概要
同社の事業は、橋梁総合メンテナンス業と、一部から要請を受けて対応する建物塗装を行う建築工事業で構成されており、その比率は橋梁総合メンテナンス業 95%、建築工事業 5%の売上構成となっている。
同社は、1950 年に現社長の祖父であるxxxxxが旧xx郡xx町で塗装店を個人創業し、1966 年にxx塗装㈱を設立、xxxxxが社長に就任した。その後、1971 年に旧xx市に本社を移転、2011 年に㈱コウノに社名変更するとともにxxxxが社長に就任した。業容拡大に伴い 2015 年にxxxxxx 000-0 に本社を移転し、2022 年に関連会社として㈱セント•フィールドホールディングスを新設した。創業以来、船舶を始め各種の塗装工事を請け負う中で、事業の主軸は橋梁の塗装を中心とした橋梁総合メンテナンス業に移っていった。
同社は創業以来、常に現場の最前線で業務を行う技能工の集団であり、自分たちの経験を基に確実な補修、補強工事を行うことができると考え、技能工を中心とした従業員を大切にする考え方が根付いている。また、補修、補強の現場は供用中の道路橋やトンネルなどであり、周辺住民の日常生活のそばで工事をすることを念頭に事業を行っていることから、安全の確保にも充分配慮して工事を実施している。このため、労働災害事故の発生ゼロを継続している。
①塗装工事(鋼構造物•コンクリート構造物)
橋梁は主に鋼製、コンクリート製であるが、同社はいずれの構造物にも対応しており、橋梁のみならずトンネルの塗装や鉄道設備、一部ではあるが工場や住宅などの塗装工事も手掛けている。
②コンクリート補修工事•はく落対策工事
鉄筋コンクリート構造物は、海岸付近などの厳しい環境や、冬季における塩化カルシウムなどの凍結防止剤の散布による影響により、内部の鉄筋に錆が生じることがある。
鉄筋に錆を生じさせる水分•酸素•塩化物はコンクリート中にある微細な隙間やひびを伝わ って鉄筋まで到達する。錆は時間とともに成長しコンクリートを押し出し、最終的に爆裂と呼ばれるコンクリート片のはく落に繋がる。ま た、コンクリートのはく落により露出した鉄筋は更に錆が進行し、設計通りの強度が維持できなくなることから、補修工事が必要となる。 補修工事の工法には、下記の 2 種類がある。 a.ひび割れ注入工
ひび割れに樹脂等を低い圧力で注入して補
修する。(ひび割れに樹脂を充填することで、コンクリートと鉄筋を劣化させるガスや水
分を侵入しにくくする) b.断面修復工
コンクリートの劣化した部分を除去し、ポリマーセメントモルタルなどで復旧する。(鉄筋コンクリートの場合は鉄筋に防錆処理をしてから復旧する。小規模な補修は左官工法で行い、大規模な場合は注入工法や吹付け工法で実施する。)
また、断面修復を行った箇所に連続繊維シートなどを貼り付けたり、塗膜を形成して万一コンクリートがはく落しても落下を防止する「はく落対策工」も必要に応じて実施する。表面含浸材を塗布してコンクリート表面を緻密化し、コンクリート片が浮いたり落下したりしないようにするケースもある。
ひび割れ調査
a.ひび割れ注入工
b.断面修復工(施工前:劣化状況)
b.断面修復工
(施工中:ポリマーモルタルセメント補修後)
③コンクリート構造物の耐震性向上工事
コンクリート構造物の耐震性を向上させるため
③コンクリート構造物の耐震性向上
引張力に優れた炭素繊維シートを貼り付けたり、鉄板を貼り付けたりすることで橋の床板の補強 や建物の補強を行う。
(炭素繊維補強工:CFRP 板貼付完了後)
ⅳサプライチェーンの概要
同社におけるサプライチェーンは、地方自治体などの橋梁管理者から直接発注を受ける場合と、橋梁管理者から発注を受けた建設会社などから同社の専門分野である補修や塗装工事を下請けとして受注する場合の 2 種類である。
ここ数年は、市町や県土木事務所など橋梁管理者からの直接受注が増加しつつある。
また、今後も国、県、市町が管理する道路橋、歩道橋は「予防保全型維持管理」が実施されることから、同社の業務量が減少する可能性は低く、むしろ増加する可能性が高い。
また、橋梁総合メンテナンスを専業とする事業者は少なく、機材や施工能力を考慮した場合、
他の建設事業者による新規参入も限定的と考えられる。
受注パターン①
橋梁管理者
(国•県•市町など)
発注
コウノ
受注パターン②
橋梁管理者
(国•県•市町など)
発注
ゼネコンなど主契約者 発注
コウノ
5.サステナビリティ経営体制
(1)サステナビリティ経営方針
同社の企業理念は、『品質•サービスを通して、地域•従業員に寄り添った企業を実現する』である。環境に配慮した工法の活用を積極的に行い、社会インフラの長寿命化に貢献していくことで、持続可能な橋梁総合メンテナンス企業を実現することを全従業員が念頭に置き、業務遂行している。
具体的には、循環式ハイブリッドブラストシステム工法や IH 式塗膜剥離工法などの最新の施工技術により、工事に伴う廃棄物や粉塵、騒音を抑制し、社会課題解決に貢献していくとともに、xxx発電設備の導入や、エコアクション 21 の取り組みを通じて 3R(リデュース•リユース•リサイクル)活動により環境への負荷低減のためのさまざまな取り組みを実施している。
<施工前>
<施工後>
(2)社会面における対応
①健康•衛生として取り組んでいる項目、課題等
同社では、全従業員の血圧測定を毎日実施し、異常値が発生した社員には月に 1 度往診させている。また一般健康診断(1 回/年)のほか、有機溶剤(2 回/年)、鉛(2 回/年)、 PCB(2 回/年)、じん肺(1回/3年)の健診を実施している。また、労働安全衛生法に基づき、厚生労働省が発信しているストレスチェックについても全従業員を対象に定期的に実施し、検査結果を分析することで適宜職場環境の改善を図っている。このような取り組みが功を奏して、同社従業員は心身ともに健康な状態を維持しており、重大な労働災害は皆無となっている。
また、従業員の健康管理サポートとして「健康経営優良法人」の認定についても、2022年 12 月迄に取得予定である。取得後も、認定の継続に努めていく方針である。
従業員の健康と安全確保が重要課題として対処されていることを確認した。
種類 | 男性 | 女性 | 合計 |
役員 | 2 | 1 | 3 |
管理者 | 9 | 0 | 9 |
一般 | 6 | 2 | 8 |
パート | 0 | 1 | 1 |
合計 | 17 | 4 | 21 |
男女比率 | 80.9% | 19.1% | 100.0% |
平均勤続年数 | 11.9 年 | 12.5 年 | 12.0 年 |
②教育、雇用として取り組んでいる項目、課題等従業員の状況は以下の通りである。
同社の就業規則において、各種ハラスメントにおける記載等が具体的に明記されている。女性の就業比率については、今後、グループ企業含め総務経理部門を中心に増員していく。また女性管理者は現状ゼロであるが、専門資格の取得推進とともに近い将来において 1 名を登用予定である。女性の働きやすい環境づくりの一環として、近隣地区の企業主導型保育事業者と、0~2 歳児までを優先的に入所させることができる利用企業契約を締結しており、適切な準備を実施している。労働環境の整備を進めているが、女性の採用と登用については検討事項であることを確認した。
資格取得の状況は以下の通りである。
資格名 | 保有者数 | 内 女性の保有者数 |
一級土木施工管理技士(※1) | 5 | 0 |
二級土木施工管理技士(※2) (鋼構造物) | 4 | 0 |
一級建築施工管理技士(※3) | 1 | 0 |
登録鳶•土工基幹技能者(※4) | 4 | 0 |
登録建設塗装基幹技能者(※5) | 2 | 0 |
二級建設業経理士(※6) | 1 | 1 |
同社では、リニューアル事業本部、橋梁事業本部の所属社員は土木施工管理技士の資格を取得することを第一として社員教育に努めており、有資格者の年間 2 名増員を目標としている。
その他資格については、従業員の自主性に任せ資格取得を促している。会社としては、資格取得にかかる費用について全額負担することで、支援している。
技能講習及び教育支援
技能講習及び教育支援 | 人数 |
職長安全衛生責任者教育 | 14 |
有機溶剤作業xx者教育 | 13 |
鉛作業xx者教育 | 14 |
特定化学物質及び 四アルキル鉛作業xx者教育 | 13 |
足場の組立て等作業xx者教育 | 10 |
研削砥石作業xx者教育 | 13 |
特別管理産業廃棄物管理責任者教育 | 11 |
安全推進者教育 | 7 |
また、業務上必要な資格取得に向けた、各種研修制度を確立し、より質の高いサービスを提供できる人材育成に注力することで、持続可能な橋梁総合メンテナンス企業を目指している。また、技能講習の内容は従業員の安全確保のために必須の項目であり、従業員のモチベーションの維持と、安全確保を重視していることを確認した。
※1 一級土木施工管理技士
• 河川、道路、橋梁、港湾、鉄道、上下水道などの土木工事において、xx技術者または監理技術者として施工計画を作成し、現場における工程管理、安全管理など工事施工に必要な技術上の管理などを行う。
※2 二級土木施工管理技士(鋼構造物)
• 鋼構造物塗装(分類に限定•その他は土木、薬液注入等)において、河川、道路、橋梁、港湾、鉄道、上下水道などの土木工事において、xx技術者として施工計画を作成し、現場における工程管理、安全管理など工事施工に必要な技術上の管理などを行う。
※3 一級建築施工管理技士
• 国土交通省管轄の国家資格。一般建設業、特定建設業の許可基準の1つである営業所ごとに置く専任の技術者、並びに建設工事の現場に置くxx技術者及び監理技術者の有資格者として認められており、大規模工事を扱うことができる。
※4 登録鳶•土工基幹技能者
• 建設現場における作業内容、工程、現場状況等を把握、理解した上で元請、関係する他の職長等と調整できる技能者。職長経験 8 年以上を有する。
※5 登録建設塗装基幹技能者
• 熟達した作業力、豊富な知識、現場を効率的にまとめるマネジメント能力を有し、日本塗装工業会(専門工事業団体)の資格認定を受けた技能者。
※6 二級建設業経理士
• 建設業に関する一定レベルの経理実務の知識•技術を修得した有資格者。
③移動手段として取り組んでいる項目、課題等
同社の業務自体が、移動手段の一部である橋梁を中心とした社会インフラの補修、補強であり、少しでも長く使えるように工事を行い、施工完了後は見えなくなる部分(不可視部分)が多いことから、工事途中での品質管理にも留意した施工を行っている。
また、供用中の道路やトンネルなどが工事対象であり、施工中も安全に利用されることを意識している結果、労働災害事故ゼロを継続するなど、安全対策も充分対応していることを確認した。
(3)環境面における対応
①水(質)、大気、資源効率•安全性、廃棄物として取り組んでいる項目、課題等
橋梁総合メンテナンス業では、塗装の剥離、下地処理、再塗装という作業が中心である。 現在は、水そのものを使用するケースはコンクリート補強工事の際に使用するモルタルを 作る時であるが、使用量は少なく、汚水として排出されることがないよう取り扱っている。大気、資源効率•安全性、廃棄物について塗装の剥離工程で悪影響を与える可能性がある。従前は化学薬品である剥離剤も使用されていたが、同社では循環式ハイブリッドブラスト システムを採用しており、現状では循環式ハイブリッドブラスト工法が 95%を占め、残る 5%についてもIH式塗膜剥離工法などを使用しており、剥離剤などの化学薬品の使用は非常に少なく、環境への影響は抑制されている。
塗装剥離と下地処理の際には、従来は a.ディスクサンダーやワイヤホイルといった動力工具と手工具を用いる方法と、b.空気圧で研削材を塗装面に吹きつけ塗装を剥離するエアーブラスト工法、c.空気圧で研削材と水を混合して塗装面に吹きつけ剥離する湿式ブラスト工法の 3 種類の方法が主流であった。a.は作業者の負荷が大きく、剥離した塗装粉が粉塵となる点、b は研削材と剥離した塗装粉が粉塵となり、大気を含めて周辺の環境に悪影響を与える可能性が高く、また研削材の回収も限定されるため廃棄物が多く発生する点、c.は粉塵の発生は抑制されるが、水と研削材と剥離した塗装粉が一体となった排水が生じるため、作業後の処理を確実に行う必要があり、研削材の回収も限定され廃棄物が多く発生する点で問題があった。
同社が主な工法として採用している循環式ハイブリッドブラストシステムでは水を使用せず、金属系の研削材を空気圧で塗装面に吹きつけ剥離作業を行い、発生した塗装粉と研削材は吸引装置で回収し、剥離された塗装粉と研削材に分離される仕組みとなっている。 剥離された塗装粉は廃棄物としてほぼ全量が回収され、研削材は再利用されることから、
水と大気へのネガティブ•インパクトは抑制されており、廃棄物も発生が抑制されている。また、材料として使用される金属系研削材も回収の上で再利用されることから、資源効率•安全性の面でもネガティブ•インパクトは抑制されている。
また、IH式剥離機械を使用した場合は、熱により塗装を軟化して剥離することから粉塵も発生せず、騒音も発生しないため、環境に配慮した施工が可能となっている。
以上の点から、同社では環境に対するネガティブ•インパクトを最大限抑制している。
各種機械設備の導入状況は下記の通りである。
機械設備 | 設備数 | 環境配慮 適合設備数 | 導入率 |
循環式ハイブリッドブラストシステム (3 号機) ※7 | 4 | 4 | 100% |
循環式ハイブリッドブラストシステム (4 号機) ※8 | 1 | 1 | 100% |
IH 式剥離機械(200V) ※9 | 5 | 5 | 100% |
IH 式剥離機械(100V) ※10 | 1 | 1 | 100% |
Honda EU26 i | 1 | 1 | 100% |
Honda EU16 i | 1 | 1 | 100% |
Denyo GE-900ss.lv | 2 | 2 | 100% |
※7・※8 循環式ハイブリッドブラストシステム
• 橋梁の補修•補強工事等において、鋼構造物の素地調整(1 種ケレン)やコンクリート劣化部のチッピング(劣化した表面の剥離)を行うための循環式機能付きのブラスト工法である。ブラスト処理後のケレンかす(塗膜片•研削材)を吸引•分別できることが特徴である。
【構造•仕組み】
① バルブの調整を行い金属系研削材を放出する。
② 構造物に向けて投射する。
③ 投射された研削材と塗膜片をバキュームホースで吸引し、分別する。
④ 研削材はドラム缶へ落下し、塗膜片は分別タンクへ吸引され、さらに分別される。
⑤ サイクロンで塗膜片の分別を行い、粗い粉塵が⑤の排出口から回収される。
⑥ 細かい粉塵が⑥の排出口から回収される。
⑦ 微細な粉塵が除去された正常な空気が排出される。
【装置全体】
【投射時】 【粉塵回収時】
【塗膜片】 【研削材】
※9・※10 IH 式剥離機械
• IH 式塗膜剥離工法とは、電磁誘導加熱(IH)により塗膜の除去を行う。IH の原理を用いるため、粉塵や騒音が出ず環境に配慮した作業を行うことができる。粉塵が出ないため、鉛含有塗料や PCB 含有塗料にも効果がある。また、塗膜剥離剤を使用しないため、特別管理産業廃棄物の量を減容でき、環境配慮、コスト削減が実現できる。
【装置全体】
【工程】
②気候として取り組んでいる項目、課題等
同社では本社事務所のLED照明化は 100%完了している。
営業用車両については、現在 13 台中 5 台がハイブリッドなどの省エネルギー車両となっている。気候へのネガティブ•インパクトを抑制するための対策は確認できた。省エネルギー車両の導入については今後も対応していく課題として確認した。
(4)経済面における対応
①経済収束として取り組んでいる項目、課題等
同社の事業は地域の重要な社会インフラである橋梁の保守が主な事業であり、最新の技術を導入することで環境や従業員へのネガティブ•インパクトを最小限にする取り組みを続けており、事業を通じて交通インフラの維持に貢献することで静岡県経済の維持、発展に繋げている。
②その他社会貢献活動等
同社は従前より、同アカデミーの経営方針「サッカーを通じた豊かな教育」に賛同していたことから、同社が起債しxx銀行が引受けした地方創生私募債を活用し、静岡フットボールアカデミーへ、組立式ゴール 4 セット、サッカーボール 15 個の寄贈を行った。
また同社では、教育現場の遊具清掃作業等を無償で実施、清掃活動による地域美化等に積極的に取り組んでいる。今後もこのような取り組みを継続し、地域貢献を行っていくことを確認した。
【寄贈式】
【遊具清掃作業】
作業前:塗装が傷み、錆も目立つ。
作業後:全体の塗装を剥離し、再塗装を実施した
【地域美化活動】
6.インパクトの特定
(1)インパクトの特定分析
UNEP FI のインパクトレーダーにおける標準値を基に、前記の分析を踏まえ、下記のプレ審査シートにて個社別の状況を考慮して、インパクトと KPI 設定対象を特定した。
インパクトの特定分析
インパクト領域 | UNEP FI 標準値 | 個社分析修正値 | インパクトの詳細具体的取組内容 | KPI設定対象 | 関連するSDGsターゲット |
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質(一連の固有の特徴がニーズを満たす程度)
水(入手可能性) | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
食糧 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
住居 | ポジティブ | ○ | 一般住宅の塗装工事も手掛けるが、影響度合いが低いことから削除 | |||
ネガティブ | ||||||
健康•衛生 | ポジティブ | ○ | 〇 | 従業員の健康管理をサポートし、「健康経営優良法人」認定取得を目指す | 〇 | 3.9 |
ネガティブ | ○ | 〇 | 労働安全•衛生対策への取り組みにより労働災害事故ゼロを維持 | 〇 | 3.9 3.d | |
教育 | ポジティブ | 〇 | 従業員の人材育成サポート | 〇 | 4.3 4.4 | |
ネガティブ | ||||||
雇用 | ポジティブ | ○ | 〇 | ダイバーシティ経営の促進 | 〇 | 5.5 8.5 |
ネガティブ | ○ | 〇 | 労働環境整備の実施 | |||
エネルギー | ポジティブ | ○ | エネルギー供給の事業を行っていないため削除 | |||
ネガティブ | ○ | エネルギー供給の事業を行っていないため削除 | ||||
移動手段 (モビリティ) | ポジティブ | ○ | 〇 | 安全安心なインフラ整備による地域貢献 | ||
ネガティブ | ||||||
情報 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
文化•伝統 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 史跡や文化財などの塗装工事や影響を与える工事は行っていないため削除 | ||||
人格と人の安全保障 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 〇 | ハラスメント防止教育の定期的実施、コンプライアンス態勢の整備 | 〇 | 10.2 10.3 | |
xx | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ||||||
強固な制度•平和•安定 | ポジティブ | |||||
ネガティブ |
質(物理的•化学的構成•性質)と有効利用
水(質) | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 〇 | 橋梁メンテナンス工事では水を使用せず、また河川の水質汚染を抑制する工法を採用しており、ネガティブ•インパクトを抑制し、加えて節水への取組み実践している | 〇 | 6.3 | |
大気 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 〇 | 循環式ハイブリッドブラストシステム工法、IH式塗膜剥離工法活用による大気汚染の抑制 | 〇 | 11.6 12.4 | |
土壌 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 橋梁メンテナンス工事が中心であり、土壌汚染に繋がる工事はないため削除 | ||||
生物多様性と生態系サービス | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 生態系に影響する工事(大規模伐採等)はないため削除 | ||||
資源効率•安全性 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 〇 | 循環式ハイブリッドブラストシステム工法により研削材を再利用している 3R(リデュース•リユース•リサイクル)活動の励行 | 〇 | 6.3 9.4 12.2 12.5 | |
気候 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 〇 | 自社内設備のLED化、省エネルギー車両の導入 | 〇 | 13.3 | |
廃棄物 | ポジティブ | |||||
ネガティブ | ○ | 〇 | 循環式ハイブリッドブラストシステム工法、IH式塗膜剥離工法活用による廃棄物の抑制 | 〇 | 6.3 11.6 12.4 12.5 |
環境の制約内で人間のニーズを満たす手段としての人と社会の経済的価値創造
包括的で健全な経済 | ポジティブ | ○ | 〇 | ダイバーシティ人材の活用 | 〇 | 5.5 8.5 |
ネガティブ | ||||||
経済収束 | ポジティブ | ○ | 〇 | 地域の社会インフラ維持に貢献し、持続的なまちづくりと経済発展を図る | 〇 | 8.2 8.3 11.3 |
ネガティブ | ○ | インフラの整備•維持が主業務であり、経済収束に与えるネガティブ•インパクトは小さいため削除 |
(2)インパクト特定
ⅰ橋梁総合メンテナンス業のインパクト特定
インパクトレーダーの標準値として発現した項目について包括的分析を行い、サステナビリティ経営体制について分析した結果、ポジティブ•インパクトとして「健康•衛生」「教育」を、ネガティブ•インパクトとして「人格と人の安全保障」を追加し、ネガティブ•インパクト「文化•伝統」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」「経済収束」を削除してインパクトを特定した。
特定したインパクト
ポジティブ:「健康•衛生」「教育」「雇用」「移動手段」「包括的で健全な経済」
「経済収束」
ネガティブ:「健康•衛生」「雇用」「人格と人の安全保障」「水(質)」「大気」
「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」削除したインパクトと理由
ネガティブ:「文化•伝統」は史跡や文化財などの塗装工事や影響を与える工事は行っていないことから削除した。「土壌」は橋梁メンテナンス工事が中心であることから土壌汚染に繋がる工事は無いため削除した。「生物多様性と生態系サービス」については、山林や海洋に影響を与える工事は行っていないことから削除した。「経済収束」については、同社の工事により地域経済の資源が流出するようなネガティブ•インパクトは生じないことから削除した。
421 4210 道路•鉄道建設業 | 修正値 | |
ポジティブ | ネガティブ | |
水(入手可能性) | ||
食糧 | ||
住居 | ||
健康•衛生 | ||
教育 | ||
雇用 | ||
エネルギー | ||
移動手段 | ||
情報 | ||
文化•伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
xx | ||
強固な制度•平和•安定 | ||
水(質) | ||
大気 | ||
土壌 | ||
生物多様性と■生態系サービス | ||
資源効率•■安全性 | ||
気候 | ||
廃棄物 | ||
包括的で健全な経済 | ||
経済収束 |
ⅱ建築工事業のインパクト特定
インパクトレーダーの標準値として発現した項目について包括的分析を行い、サステナビリティ経営体制について分析した結果、ポジティブ•インパクトの「住居」「健康•衛生」「エネルギー」を、ネガティブ•インパクトの「エネルギー」「文化•伝統」「土壌」「生物多様性と生態系サービス」を削除してインパクトを特定した。
特定したインパクト
ポジティブ:「雇用」「包括的で健全な経済」「経済収束」
ネガティブ:「健康•衛星」「雇用」「人格と人の安全保障」「水(質)」「大気」
「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」削除したインパクトとその理由
ポジティブ:「住居」については、同社事業で住宅の塗装、補強を行うケースは非常に少ないため削除した。「健康•衛生」については、同社は事業として健康•衛生にかかわるサービスは提供していないことから削除した。「エネルギー」については、同社はエネルギーを供給するサービスを行っておらず、削除した。
ネガティブ:「エネルギー」については、同社はエネルギーを供給するサービスを行っておらず、削除した。「文化•伝統」については史跡や文化財などの塗装工事や影響を与える工事は行っていないことから削除した。「土壌」は土壌汚染に繋がる工事は行っていないことから削除した。「生物多様性と生態系サービス」については山林や海洋に影響を与える工事は行っていないことから削除した。
410 4100 建築工事業 | 修正値 | |
ポジティブ | ネガティブ | |
水(入手可能性) | ||
食糧 | ||
住居 | ||
健康•衛生 | ||
教育 | ||
雇用 | ||
エネルギー | ||
移動手段 | ||
情報 | ||
文化•伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
xx | ||
強固な制度•平和•安定 | ||
水(質) | ||
大気 | ||
土壌 | ||
生物多様性と■生態系サービス | ||
資源効率•■安全性 | ||
気候 | ||
廃棄物 | ||
包括的で健全な経済 | ||
経済収束 |
ⅲコウノとして KPI は設定しないがインパクトを特定する項目
インパクトは特定するものの、KPI を設定しない項目と理由は以下のとおりである。
•特定するポジティブ•インパクトは「移動手段」であり、具体的取組内容は「安全安心なインフラ整備による地域貢献」である。同社の主業務である橋梁総合メンテナンス業務は、交通インフラの維持であり、インパクトは特定するものの、KPIの設定は行わないこととした。
•特定するネガティブ•インパクトは「雇用」であり、具体的取り組み内容は「労働環境整備の実施」である。同社事業では高所での揮発性塗料使用など、安全確保の取り組みが重要であるが、従業員の安全確保のために必須な項目については技能講習の受講促進を既に実施しており、今後も継続されることを確認したことから、インパクトは特定するものの、 KPI の設定は行わないこととした。
(3)インパクトレーダーにおけるマッピング
特定したインパクトをもとにインパクトレーダーで発現したインパクト•マップは以下の通りとなる。
7.KPIの決定
(1)ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項
ⅰ社会面
テーマ | 従業員への資格取得促進 |
インパクトレーダー | 教育 |
取組内容 | 従業員への資格取得促進による有資格者の増加 |
SDGsとの関連性 | 4.3:2030 年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育•職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする 4.4:2030 年までに、技術的•職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる |
KPI | 1 級土木施工管理技士と 2 級土木施工管理技士を毎年 1 名ず つ養成し、現状の 1 級土木施工管理技士 5 名、2 級土木施工 管理技士(鋼構造物)4 名を 2027 年 9 月までに 1 級土木 施工管理技士 10 名、2 級土木施工管理技士(鋼構造物)を 9名にする |
テーマ | 従業員の健康 |
インパクトレーダー | 健康•衛生 |
取組内容 | 健康経営優良法人の取得 |
SDGsとの関連性 | 3.9:2030 年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる |
KPI | 2022 年 12 月までに健康経営優良法人の認定を取得する |
ⅱ社会面•経済面
テーマ | 女性活躍•高齢者の積極雇用とxxな所得 |
インパクトレーダー | 雇用 包括的で健全な経済 |
取組内容 | 女性の採用拡大と役職者への登用拡大従業員勤続年数の更なる向上 従業員一人一人の雇用の安定と高齢化社会への対応を積極的 に行っていく |
SDGsとの関連性 | 5.5:政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する 8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する |
KPI | •現在の 0 人の女性管理職を 2027 年 9 月までに1人登用する •現在の 65 歳以上の従業員数 3 人を 2027 年9月までに 6 人に増加する |
ⅲ経済面
テーマ | 事業を通じて地域の社会インフラ維持に貢献し、持続的なま ちづくりと経済発展を図る |
インパクトレーダー | 経済収束 |
取組内容 | 橋梁総合メンテナンス事業を安定して維持し、拡大を図る |
SDGsとの関連性 | 8.2:高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する 8.3:生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する 11.3:2030 年までに、包摂的かつ持続可能な都市化を促進し、全ての国々の参加型、包摂的かつ持続可能な人間居住計画•管理の能力を強化する |
KPI | 2021 年 8 月期の施工件数 95 件を 2027 年 8 月期に 100 件にする |
(2)ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項
ⅰ社会面
テーマ | 全従業員の健康管理による健全な職場環境の維持 |
インパクトレーダー | 健康•衛生 |
取組内容 | 全従業員の健康管理の継続 |
SDGsとの関連性 | 3.9:2030 年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる |
KPI | •法定の特殊検診、定期健診の実施率100%を維持する |
テーマ | 従業員の働きやすい環境の構築 |
インパクトレーダー | 健康•衛生 人格と人の安全保障 |
取組内容 | 従業員の働きやすい環境を作る |
SDGs との関連性 | 3.9:2030 年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる 3.d:全ての国々、特に開発途上国の国家•世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する 10.2:2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 10.3:差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 |
KPI | •各種技能講習への担当社員の派遣と、全社員を対象に現在年 1 回実施しているパワーハラスメント•メンタルヘルスの勉強会実施を維持する •労働災害事故ゼロを維持する |
ⅱ環境面
テーマ | 省エネルギー化の推進 |
インパクトレーダー | 気候 |
取組内容 | 省エネルギー車両の継続導入による省エネルギー化 |
SDGsとの関連性 | 13.3:気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する |
KPI | •営業車両 13 台のうち 5 台(38%)のハイブリッド車などの省エネルギー車両を 2027年9月までに 13 台のうち 10 台(77%)にする |
テーマ | 環境に影響を与えない工法の使用促進 |
インパクトレーダー | 水(質) 大気 資源効率•安全性 廃棄物 |
取組内容 | 循環式ハイブリッドブラスト工法、IH式塗膜剥離工法の活用 |
SDGsとの関連性 | 6.3:2030 年までに、汚染の減少、投棄廃絶と有害な化学物質や物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模での大幅な増加させることにより、水質を改善する 9.4:2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術•産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う 11.6:2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する 12.2:2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する 12.4:2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物資質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する 12.5:2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用 及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する |
KPI | 循環式ハイブリッドブラスト工法の適用率 95%を維持し、循環式ハイブリッドブラスト工法が適用できない部分につい てIH式塗膜剥離工法の適用率を引き上げる |
(3)地域において認識される社会的課題•環境問題への貢献
静岡県は、「SDGs のフロントランナー」を標榜しており、県内5市(静岡市、浜松市、富士市、xx市、富士宮市)が内閣府の「SDGs xx都市」に選定されるなど、県内自治体は SDGs を積極的に推進している。
インフラ整備については 2022 年に改定した「美しい"ふじのくに"インフラビジョン」
の中で、2050 年を見据えた静岡県のxxを創るインフラのあり方として「社会•経済•環境の調和による、持続可能で強靭な県土づくり」とし、SDGsの理念を踏まえて方向性を示している。具体的施策の中では、「安心•安全」の項目に「持続可能なインフラメンテナンス」「安全•安心な移動空間の確保の推進」を盛り込んでいる。
静岡市は、静岡市第 3 次総合計画の中で、歴史文化の拠点づくり、海洋文化の拠点づく
り、教育文化の拠点づくり、『健康長寿のまち』の推進、『まちは劇場』の推進の 5 大構想への SDGs の取り組みを進めている。SDGs が目指す国際社会の姿は、静岡市が目指す「市民の安心や幸せ」を実現する都市の姿と重なることから、本市がワールドクラスの都市の仲間入りをするためには、より視野を広げて、より視点を高くすることが必要であるとする。そこで、SDGs という世界共通のものさしで設定された大きな目標を第 3 次総合計画に組み込み、「世界に輝く静岡」の実現に向けた推進力として活用することを目指している。さらに、静岡市の SDGs 推進に関する基本的な考え方と必要な事項を定めるため、2019 年 3 月に「静岡市 SDGs 実施指針~持続可能なまちづくりのために~」を、2021 年 4 月には「静岡市 SDGs 実施指針の運用基準」を策定し、今後も全庁をあげて更なる SDGs 推進を図るとしている。
同社の事業活動を通じた様々な取り組みは、静岡市の推進する SDGs 推進の一環と評価
でき、同社の取り組みが波及し、地域全体の SDGs 推進が期待される。
(1)モニタリング体制
コウノでは、本PIFの組成にあたり横断的なプロジェクトチームを組成した。xxxx代表取締役を統括責任者、xxxx総務担当をプロジェクトリーダーとし、担当部署を総務部とした以下のプロジェクトチームとなっている。同社の企業理念、経営方針を基に、事業実績、企業活動等の棚卸しを行い、本PIFのインパクトの特定及び目標とKPIの策定を行った。
本PIF実行後においては、決定したインパクトの内容やKPIを営業会議•朝礼等で社員へ周知し、関連するサプライチェーンへも通達し、達成に向けた連携を図り、プロジェ
クトチームを中心に同社全体でKPIの達成に向けた推進体制を構築していく。
(2)モニタリングの頻度と方法
本PIFで設定したKPI及び進捗状況については、xxxxxx銀行及び当社の担当者が定期的な場を設け、共有する。会合は少なくとも年に 1 回は実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
8.モニタリング
統括責任者 | 代表取締役 xx xx |
プロジェクトリーダー | 総務担当 xx xx |
担当部署 | 総務部 |
本評価に関する説明
1.本評価書は、xx地域経済研究センターが、xx銀行から委託を受けて実施したもので、xx地域経済研究センターがxx銀行に対して提出するものです。
2.xx地域経済研究センターは、依頼者であるxx銀行及びxx銀行がポジティブ•インパクト•ファイナンスを実行する合同物流から供与された情報や合同物流へのインタビュー等で収集した情報に基づいて、現時点での状況を評価したものであり、将来における実現可能性、ポジティブな成果•見通し等を保証するものではありません。
3.xx地域経済研究センターが本評価に用いた情報は、信頼できるものと判断したものではあるものの、その正確性等について独自に検証しているわけではありません。xx地域経済研究センターはこれらの情報の正確性、適時性、完全性、適合性その他一切の事項について、何ら表明または保証するものではありません。
4.本評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した PIF 原則及び PIF 実施ガイド、ESG 金融ハイレベル•パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタスク
フォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則って行っております。
〈評価書作成者〉
〒424-0941
静岡市xx区富士見町 2 番 1 号
株式会社xx地域経済研究センター常務取締役 xx xx
Tel 000-000-0000、Fax 000-000-0000
第三者意見書
2022 年 9 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社コウノに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社xx銀行 |
評価者:株式会社xx地域経済研究センター |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、xx銀行が株式会社コウノ(「コウノ」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社xx地域経済研究センターによる分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項
(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた
「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。xx銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、xx地域経済研究センターと共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、xx銀行及びxx地域経済研究センターにそれを提示している。なお、xx銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。 JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則
との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
xx銀行及びxx地域経済研究センターは、本ファイナンスを通じ、コウノの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、コウノがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、xx銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) xx銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:xx銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、xx銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、xx銀行からの委託を受けて、xx地域経済研究センターが分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全てxx地域経済研究センターが作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、xx地域経済研究センターが、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるコウノから貸付人であるxx銀行及び評価者であるxx地域経済研究センターに対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所 サステナブル・ファイナンス評価部長 xx xx | |
担当xxアナリスト xx xx | 担当アナリスト xx xxx |
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000