Contract
第 481 回企業会計基準委員会
資料番号 審議事項(1)-3
日付 2022 年 6 月 15 日
プロジェクト リース
一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の会
項目
計処理
I. 本資料の目的
1. 本資料では、一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の売手である借手の会計処理についての事務局の分析及び提案をお示し、ご意見を伺うことを目的としている。
II. これまでの経緯
2. 第 90 回リース会計専門委員会(2019 年 10 月 30 日開催)において、参考人(公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会 サブリース事業者協議会)から、以下の意見をいただいた。
⚫ 一括借上契約とは、賃貸住宅のサブリース事業者が賃貸住宅オーナーから物件を一括借上げし、当該物件を入居者に転貸(サブリース)する契約である。一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合があり、現行では、建設請負工事契約と一括借上契約は別個の取引として会計処理しており、建物の売却損益は売却時に一括で認識されている。
一括借上契約と建設請負工事契約が、セール・アンド・リースバック取引に該当する場合、リースバック期間に対応する売却損益は、使用権資産の帳簿価額に調整され、減価償却を通じてリース期間にわたって純損益に含めて認識され、現行の実務を大きく変更することになる。
3. 前項のご意見を踏まえ、一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の売手である借手の会計処理について検討を行い、第 449 回企業会計基準委員会
(2021 年 1 月 15 日開催)、第 96 回リース会計専門委員会(2020 年 11 月 26 日開
催)及び第 108 回リース会計専門委員会(2022 年 1 月 17 日開催)において事務局
の分析をお示しし、第 108 回リース会計専門委員会においてセール・アンド・リースバック取引についてIFRS 第 16 号と整合的な取扱いを改正リース会計基準に採り入れることを前提に、事務局による提案をお示しした。
III. 一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の売手である借手の会計処理
(第 449 回企業会計基準委員会及び第 96 回リース会計専門委員会での事務局の分析)
4. 第 449 回企業会計基準委員会及び第 96 回リース会計専門委員会においては、一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の会計処理1について、次の事務局の分析(要約)を示した。
1. 工事請負契約による利益をセール・アンド・リースバック取引での建物の売却益の取扱いと同様に会計処理し、使用権資産の償却に合わせて利益を計上していくか否かが論点となり、次の考え方があり得ると考えられる。
(1) 工事請負契約とその後の一括借上取引は一体として一つのビジネスを構成するため、工事請負契約による利益はセール・アンド・リースバック取引における建物の売却益と同様に会計処理すべきである。
(2) 工事請負契約とその後の一括借上取引は、各々、ビジネスとして完結しているものであり、別個に利益を計上すべきである(工事請負契約における利益はその後の一括借上取引と関係なく会計処理すべきである)。
2. また、企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)の売却の認識パターンの違いによって、セール・アンド・リースバック取引の定義を満たすか否かについても論点になり得ると考えられる。
(1) 企業が賃貸物件を建設することが一時点で充足される履行義務に該当する場合、原資産である賃貸住宅に対する支配が買手である貸手に移転した時点で売却されたこととなり、同時に売手である借手が使用権資産に対する支配を獲得すると考えられる。
(2) 企業が賃貸物件を建設することが一定の期間にわたり充足される履行義務に該当する場合、契約における義務を履行するにつれて買手である貸手に支配が移転することになるため(収益認識会計基準第 38 項)、原資産がどの時点で「売却」され、売手である借手がどの時点で使用権資産に対する支配を獲得するのかについては、整理が必要になるものと考
1 本資料では、一括借上契約がリースに該当すること及びサブリース取引における中間的な貸手のヘッドリース(一括借上契約)の借手としてのリースとxxxxx(転貸)の貸手としてのリースは、別個の取引として扱うことを前提としている。
えられる。
3. 改正リース会計基準がIFRS 第 16 号の考え方(資産の売却取引とリースバック取引を一体の取引とする)を基礎とした場合、工事請負契約による利益を建物の売却益と同様に会計処理することが整合的であると考えられるが、収益認識のパターンとの関係も整理する必要がある。
5. 第 449 回企業会計基準委員会及び第 96 回リース会計専門委員会並びにその後のリース会計専門委員会においては、次の意見が聞かれた。
(1) 一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合に、建設請負工事契約の履行義務が一定期間にわたり充足される場合、売手である借手が使用権資産の支配を獲得する時点について、整理が必要になると考える。建設請負工事契約についてだけ売却とは別のカテゴリーを設けることも納得感がないと考える。
(2) 建設請負工事とその後の一括借上取引を、一つのビジネスと考えるのか、もしくは各々ビジネスとして完結しているものと考えるのかの判断基準を明確にしていただきたい。
(3) 工事請負契約の場合に、事業者側には使用の実態がないにもかかわらず、使用権部分は保持されたままで売却されていないとする会計処理に違和感を覚える、というサブリース事業者協議会の意見を理解する。事業者は建物に対する占有権があるのみで、使用権は一括借上契約に伴って生じたものと考えられる。
(4) PFI 事業において、民間の建設会社が建設を行うとともに運営者となる取引もみられ、一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の論点と比較して検討すべきではないか。
(5) 一括借上契約において、リースバック取引のリース期間をどう見積るかが問題になるが、借上契約を継続するかどうかは、通常、買手である貸手に決定権があることが多いため、売手である借手が見積るリース期間は、非常に短期となるおそれがある。
(6) 機器に関してもセール・アンド・リースバック取引とサブリース取引を組み合わせた取引(例えば、メーカーが作成したものを購入したうえで、メーカーにリースし、それをメーカーがエンドユーザーに貸出す取引)があることについて、留意されたい。
(7) 一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結されていない場合も、売手である借手が一括借上契約を拒否できない場合は、実質的に両契約が同時に交渉されているものとみなすことができると考えられる。両契約の同時性については、同時に締結される場合に加えて、同時に交渉される場合も含めることを検討すべきと考える。
(第 108 回リース会計専門委員会での事務局の分析及び提案) セール・アンド・リースバック取引の会計処理の適用について
6. IFRS 第 16 号では、セール・アンド・リースバック取引は、売手である借手による
資産の売却取引と買手である貸手から当該資産のリースを受ける取引(以下「リー スバック取引」という。)を経済的実態として一体の取引と捉え、買手である貸手 に移転された権利に関する部分に相当する金額のみを売却損益として会計処理す ることとしている。その後の一括借上を伴う工事請負契約における損益についても、資産の売却取引とリースバック取引が経済的実態として一体の取引と考えられる 場合には、セール・アンド・リースバック取引の会計処理を適用することが適切で あると考えられる。
7. なお、セール・アンド・リースバック取引においては、「売却」した資産と、リースバック取引におけるリースの原資産が同一であることが前提になっていると考えられる。
8. 事務局では、工事請負契約における収益の認識パターンの違いが、取引の性質の違いに関係していることに着目し、次のとおり分析している。
(1) 建設請負工事契約における収益が収益認識会計基準に従い一時点で認識される 場合、当該一時点において建設された(完成した)資産に対する支配が買手で ある貸手に移転すると同時に、売手である借手が当該原資産の使用権資産に対 する支配を獲得すると考えられることから、売却された原資産の使用権がリー スバック取引におけるリースの原資産と捉えて会計処理することが考えられる。
(2) 建設請負工事契約における収益が収益認識会計基準に従い一定の期間にわたり認識される場合、当該一定の期間にわたり移転されるのは仕掛中の資産であり、移転された部分だけでは資産の使用から経済的便益を享受できる状態にない。これに対し、建設工事完了後に売手である借手が支配を獲得する使用権資産は、完成した資産に関するものである。前項のとおり、セール・アンド・リースバック取引においては、「売却」した資産と、リースバック取引におけるリースの原資産が同一であることが前提になっていると考えられることから、建設請負工事契約における収益が一定の期間にわたり認識される場合、請負工事はセー
ル・アンド・リースバック取引における「売却」に該当しないと考えられる。したがって、請負工事とリースを別個の取引と捉えて会計処理することが考えられる(すなわち、セール・アンド・リースバック取引の定めは適用しないことが考えられる)。この結果、建設工事に関する収益は建設工事完了時までに認識され、その後、リースの会計処理が行われると考えられる。
一括借上契約と建設請負工事契約間での価格調整について
9. IFRS 第 16 号のセール・アンド・リースバック取引に関する会計処理の定めは、「売 却」とリースの価格に相互依存が存在しうることを前提にしているものと思われる。ここで、収益認識会計基準では独立販売価格に基づく取引価格(対価)の配分を定 めており、改正リース会計基準でもリースを構成する部分とリースを構成しない部 分への対価の配分において独立販売価格(又は独立価格)に基づく配分を求める予 定である。同様の考え方から、セール・アンド・リースバック取引の定めを適用し ない場合であったとしても、工事契約の対価とリース料に相互依存が存在し、工事 契約の対価又はリース料が、収益認識会計基準に定める独立販売価格などの通常の 取引価格ではないことが明らかな場合2には、価格調整を行うことが考えられる。
第 108 回リース会計専門委員会での事務局からの提案
10. 以上のことから、改正リース会計基準におけるセール・アンド・リースバック取引の定めを適用する対象及び相互依存が存在する取引間での価格調整について、第 108 回リース会計専門委員会において次の取扱いとすることを提案し、文案イメージをお示しした。
(1) 売手である借手による資産の譲渡に係る収益が、収益認識会計基準などの他の会計基準等(*1)に従い一時点で認識される場合には、セール・アンド・リースバック取引の定めを適用する。
(2) 売手である借手による資産の譲渡に係る収益が、収益認識会計基準に従い一定の期間にわたり認識される場合には、セール・アンド・リースバック取引の定めは適用せず、収益認識取引とその後のリースを別個の取引として会計処理する。ただし、収益認識取引の対価とリース料に相互依存が存在し、収益認識取引の対価又はリース料が独立販売価格などの通常の取引価格ではないことが明らかな場合、収益認識取引の対価とリース料の価格調整を行う。
2 ここでは、簡素で利便性が高い会計基準を開発する観点から、常に価格調整を求めるのではなく、工事契約の対価又はリース料が「通常の取引価格ではないことが明らかな場合」に限定して価格調整を求めることを想定している。
(*1) 顧客との契約から生じる収益は、収益認識会計基準の適用範囲に含まれ るが(収益認識会計基準第 3 項)、顧客との契約に該当しない場合の固定 資産の売却については、収益認識会計基準の適用範囲に含まれない(収 益認識会計基準第 108 項)。収益認識会計基準に含まれない固定資産の売 却取引については一般的な実現主義の原則が適用されると解されており、また、一定の不動産については「関係会社間の取引に係る土地・設備等 の売却益の計上についての監査上の取扱い(日本公認会計士協会監査委 員会報告第 27 号)」などの指針等が定められていることから、「他の会計 基準等」としている。なお、「他の会計基準等」に含まれる指針等につい ては、結論の背景で説明することを文案イメージ提案の際に事務局から 説明を行っており、本資料「Ⅳ. 文案イメージ」にて整理を行う。
(第 108 回リース会計専門委員会で聞かれた意見及び対応について)
11. 第 108 回リース会計専門委員会では、次の意見が聞かれた。
(1) 建設請負工事契約における収益が、一時点で認識される場合と収益認識会計基準に従い一定の期間にわたり認識される場合で、セール・アンド・リースバック取引の定めの取扱いを分けるとした事務局の分析に関しては、ここで議論しているような、アパート等、建設期間の比較的短期の工事で、そもそも一定の期間にわたって認識しても、一時点で認識してもあまり変わらないような建設請負工事契約について、あえて取扱いを分けるとした理屈が見いだせず、結論ありきの議論に感じる。
(2) IFRS 第 16 号では、収益が一定期間にわたって認識される場合にセール・アンド・リースバック取引の定めが適用されるかどうかは明確ではなく、収益が一定期間にわたり認識される場合にもセール・アンド・リースバック取引の定めが適用されている実務が存在し得る。この実務が改正リース会計基準において否定される場合、IFRS を連結財務諸表に適用している企業が個別財務諸表に改正リース会計基準を適用しても基本的に修正が不要となる基準開発の方針に反するのではないか。
(3) 第 108 回リース会計専門委員会で提示された文案イメージでは、ASBJ が IFRS第 16 号におけるセール・アンド・リースバック取引の前提に関する解釈を示していると誤解される恐れがあるので、記載を見直したほうが良いのではないか。
なお、上記(3)のご意見については第 22 項でお示しする文案イメージを見直している。
本資料第 11 項(1)のご意見への対応について
12. 事務局による分析及び提案は次の考え方に基づくものである。
収益認識会計基準では、財又はサービスの支配の移転について企業が顧客との契約における義務の履行が一時点で行われるか、一定の期間にわたり行われるかに区分して支配の移転を捉えることとしている(収益認識会計基準第 36 項)。事務局の
分析及び提案は、収益認識会計基準の考え方により履行義務の充足についての 2 つのパターンの区分に基づき、買手である貸手に支配が移転する資産(例えば、買手である貸手が所有する土地の上に建設を行う工事契約の場合、通常、買手である貸手が支配を獲得するのは、履行義務の充足に係る進捗度に応じた仕掛品となる(収益認識会計基準第 136 項)。)が、リースバックされる資産と同一のものであるかどうかに着目したものである。
なお、ご意見にある工期の長短については、収益認識会計基準における履行義務の充足パターンの違いの考え方に影響しないことから、長短に基づく分析は行っていないものである。
本資料第 11 項(2)のご意見への対応について
13. IFRS の任意適用企業が、IFRS 第 16 号の適用において本資料第 10 項で示す事務局提案と異なる取扱いを行っている場合、当該企業が連結財務諸表を作成するにあたり修正を求めることとなる。しかしながら、改正リース会計基準の開発方針は、IFRSを連結財務諸表に適用している企業が、個別財務諸表に改正リース会計基準を適用しても「基本的に」修正が不要となることとしており、修正が完全に不要となることを想定していない。
14. ここで、IFRS を連結財務諸表に適用している企業が、個別財務諸表に改正リース会計基準を適用した場合に修正を求める可能性がある状況としては、次のようなものが考えられる。
(1) IFRS が求める会計処理が明らかであるものの、それが必ずしも最適なものであるとは考えられず、他の会計処理を日本基準において求めることが適切であると考えられる場合
(2) IFRS が求める会計処理が必ずしも明らかではなく、実務上の多様性をもたらす可能性があり、日本基準を適用する企業間の比較可能性を担保することが重要であると考えられる場合
15. 本資料で扱っている論点に関して、事務局は次のとおりに考えており、主として前項(2)の観点から、IFRS とは異なる定めを置くことが考えられる。
(1) セール・アンド・リースバック取引の定めは、売手である借手により売却された資産をリースバックする取引に対する定めであり、売却した資産とリースバックされるリースの原資産が同一である場合に適用される定めである(本資料第 6 項及び第 7 項参照)。
売手である借手がリースを受けるのは最終的に完成した資産である。収益が一時点で認識される場合、売却される資産とリースバックされる資産は同一である(本資料第 8 項(1)参照)。
一方、収益が収益認識会計基準に従い一定の期間にわたり認識される場合、売手である借手が履行義務を充足するに従い買手である貸手に支配が移転されるのは仕掛中の資産であり、リースバックされる完成した資産と同一の資産は譲渡されていないこととなる(本資料第 8 項(2)参照)。
したがって、セール・アンド・リースバック取引の定めについては、収益が収益認識基準等に従い一時点で認識される場合に限定することが、当該定めを置く趣旨に沿うことになると考えられる。
(2) IFRS 第 16 号では、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用される取引の範囲について、明確な定めが置かれていない。上記(1)の考え方を含む事務局による分析及び提案は、収益認識を伴う資産の譲渡とリースバック取引の関係を IFRS 第 15 号と同等である収益認識会計基準の考え方(収益認識会計基準第 114 項)により整理したものであり、IFRS において認められる解釈の1つと考えられるため、国際的な企業間の財務諸表の比較可能性を損なわせるものではないと考えられる。なお、事務局は IFRS を解釈することを意図しておらず、本資料において示す解釈は IFRS において認められる解釈の 1 つであると考えられるが、唯一の解釈を示すものではない旨、改正リース会計基準の結論の背景に明示することが考えられる。
(3) 収益が一定の期間にわたり認識される場合にセール・アンド・リースバック取引の定めが適用されるか否かについては、我が国の実務において重要な論点であり、多様な解釈がなされることを懸念する関係者からの意見を踏まえ、改正リース会計基準における取扱いについて検討を行っているものである。事務局による提案は、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用される取引を明確にするものであり、改正リース会計基準を適用する企業間の財務諸表の比較可能性を向上させる便益もあると考えられる。
(今回の事務局の分析及び提案)
16. 本資料第 11 項から第 15 項で示すとおり、第 108 回リース会計専門委員会で聞かれ
た意見を検討した結果、本資料第 10 項で示す第 108 回リース会計専門委員会での事務局による提案を変更しないことが考えられ、当該事務局による提案を改正リース会計基準の適用指針に明記することが考えられるがどうか。
17. セール・アンド・リースバック取引の会計処理について、第 108 回リース会計専門 委員会では、IFRS 第 16 号と整合的に買手である貸手に移転された権利に係る利得 又は損失の金額のみを認識するモデルを提案していたが、この事務局提案を変更し、第 480 回企業会計基準委員会(2022 年 5 月 31 日開催)及び第 114 回リース会計専 門委員会(2022 年 5 月 10 日開催)において Topic 842 と整合的な取扱いを採り入 れることを提案しているが、本資料の論点に影響はないと考えられる。
一括借上契約と建設請負工事契約が同時に締結される場合の売手である借手の会計処理(本資料第 6 項から第 16 項)についての事務局の分析及び提案に
ついて、ご意見を伺いたい。
ディスカッション・ポイント 1
(工事契約における収益を一時点で認識することを選択した場合の取扱い)
18. 第 108 回リース会計専門委員会において、企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「収益認識適用指針」という。)第 95 項3を適用し、工事契約における収益を一時点で認識することを選択した場合の取扱いについても分析したほうがよいとのご意見をいただいた。
事務局による提案
19. 事務局による提案は、収益認識会計基準等により収益を一時点で認識する場合にはセール・アンド・リースバック取引の定めを適用し、収益認識会計基準により収益を一定期間で認識する場合にはセール・アンド・リースバック取引の定めを適用対象外とするものである。そのため、工事契約における収益の認識が一時点で行われる場合、それが企業の選択によるものであったとしても、提案どおりセール・アンド・リースバック取引の定めの対象とすることが適切であると考えられる。
3 収益認識適用指針第 95 項では、工事契約について、収益認識会計基準第 38 項で定める一定期間にわたり充足される履行義務の要件を充足したとしても、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、完全に履行義務が充足した時点で収益を認識することを、企業が選択できることを定めている。
20. したがって、収益認識適用指針第 95 項の定めを適用して収益を一時点で認識することを選択した工事契約と当該工事により建設された資産のリースバック取引が同時に締結される場合、これらの取引をセール・アンド・リースバック取引の定めが適用対象とすることが考えられるがどうか。
21. なお、事務局が調査した限り、収益認識適用指針第 95 項の定めは賃貸不動産における入居者の退去時の工事や修繕工事といった工事契約において適用され、リースの原資産となる建物等の不動産を建設する工事契約においては適用されておらず、対象となる取引は限定的であり、当該取扱いによる影響は必ずしも大きくないものと考えられる。
本資料第 19 項及び第 20 項で示す、工事契約における収益を一時点で認識することを選択した場合の取扱いについての事務局の提案について、ご意見を伺
いたい。
ディスカッション・ポイント 2
IV. 文案イメージ
22. 本資料で示す事務局提案を反映した文案イメージは、次のとおりである。
(HP では非公表)
本資料第 22 項に記載した文案イメージについて、ご意見を伺いたい。
ディスカッション・ポイント 3
以 上
別紙 関連する会計基準等
企業会計基準第 29 号「収益認識に関する会計基準」
3. 本会計基準は、次の(1)から(7)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される。
(1) 企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)の範囲に含まれる金融商品に係る取引
(2) 企業会計基準第 13 号「リース取引に関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)の範囲に含まれるリース取引
(3) 保険法(平成 20 年法律第 56 号)における定義を満たす保険契約
(4) 顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2 つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する契約)
(5) 金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
(6) 日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第 15 号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(以下「不動産流動化実務指針」という。)の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡
(7) 資金決済に関する法律(平成 21 年法律第 59 号。以下「資金決済法」という。)における定義を満たす暗号資産及び金融商品取引法(昭和 23 年法律第 25 号)における定義を満たす電子記録移転権利に関連する取引
36. 契約における取引開始日に、第 38 項及び第 39 項に従って、識別された履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する。
38. 次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する(適用指針[設例 7])。
(1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること
(2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又
は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること(適用指針[設例 4])
(3) 次の要件のいずれも満たすこと(適用指針[設例 8])
① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
② 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること
108. IFRS においては、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットではない固定資産の売却について、IFRS 第 15 号と同様の収益の認識を行うよう IAS 第 16号「有形固定資産」が改正されたが、本会計基準においては、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットではない固定資産の売却については、論点が異なり得るため改正の範囲に含めておらず、本会計基準の適用範囲に含まれない。また、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットとなる不動産の売却は、本会計基準の適用範囲に含まれるが、当該不動産の売却のうち、不動産流動化実務指針の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡に係る会計処理は、連結の範囲等の検討と関連するため、本会計基準の適用範囲から除外している
(第 3 項(6)参照)。
114. 第 100 項に記載したとおり、本会計基準の本文のうち第 16 項から第 78 項は、基本的に IFRS 第 15 号における会計基準の内容を基礎としており、結論の背景についても、第 115 項から第 150-3 項は、IFRS 第 15 号における会計基準及び結論の根拠を基礎としている。
136. 第 38 項(2)の要件を満たすかどうかを判定するにあたっては、第 37 項の定めを考慮する。企業が顧客との契約における義務を履行することにより生じる資産又は価値が増加する資産は、有形又は無形のいずれの場合もある。例えば、顧客の土地の上に建設を行う工事契約の場合には、通常、顧客は企業の履行から生じる仕掛品を支配する。
企業会計基準適用指針第 30 号「収益認識に関する会計基準の適用指針」
(期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア)
95. 会計基準第 38 項の定めにかかわらず、工事契約について、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い
場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができる。