Contract
Ⅴ 労働契約を結ぶとき
1.労働契約とは(労xx第5条、第6条、第8条)
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立します。
労働契約を結ぶことで、労働者には、決まった時間会社の指揮命令下で働く義務が生じますが、それだけでなく、仕事を誠実に行うことなども求められます。
同様に、使用者には、働いた労働者に対して賃金を払うだけでなく、労働者の生命・安全を確保するよう配慮したり、働きやすい職場環境を整えたりする義務も発生します。
また、労働契約は労働者と使用者の間の約束ですので、両者が合意することによって、労働契約の内容である労働条件を変更することができます。
2.労働条件の書面による確認・明示
(労xx第4条第2項、労基法第15条、労xx第5条、法第6条、規第2条)
労働契約法では、労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとされています。特に、労働基準法では、労働者を雇い入れるとき(契約更新時も含まれる)には、労働条件に関する下記 (1) ~ (6) の事項を文書交付等(電子メー
ルなどでも可)により明示しなければならないと定めています。また、下記 (7)
及び (8) は、パートタイム・有期雇用労働法により特定事項として追加されていることに注意が必要です。
ただし、これらの労働条件が、労働契約の締結を書面で行うことや就業規則を交付することによって明らかにされている場合は、重ねて労働条件通知書を交付する必要はありません。
パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れるときに書面で明示しなければならない事項
(1)労働契約の期間
(2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
(3)就業の場所及び従事すべき業務
(4)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
(5)賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期
(6)退職(解雇の事由を含む。)
(7)昇給・退職手当・賞与の有無
(8)相談窓口
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労働契約を結ぶとき
Ⅴ 労働契約を結ぶとき
上記 (2) の「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」につき、具体的には、事業主は、有期労働契約を結ぶ労働者に対し、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示しなければなりません。
具体的参考例
●自動的に更新する
●更新する場合があり得る
●契約の更新はしない 等
また、事業主が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対して、契約を更新する場合、またはしない場合の判断基準を明示しなければなりません。
具体的参考例
●契約期間満了時の業務量により判断する
●労働者の勤務成績、態度により判断する
●労働者の能力により判断する
●会社の経営状況により判断する
●従事している業務の進捗状況により判断する 等
使用者が更新の基準(あるいは雇止めの基準)を変更する場合には、労働者との合意等により変更する必要があります。また、事業主は、有期労働契約の締結後に (1) 又は (2) の判断基準を変更する場合には、労働者に対して、速やかにそ
の内容を明示しなければなりません。(平成24 年10 月26 日付基発1026 第2号)
次ページの労働条件通知書の様式は厚生労働省公式インターネットサイトからダウンロードできます。
xxxxx://xxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxx-xxxxxxxxxxx/xxxxxx_xxxxx_xxxxxxxxx/ hourei_youshikishu/youshikishu_zenkoku.html
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○労働条件通知書
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※ 以上のほかは、当社就業規則による。
※ 本通知書の交付は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示及び「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第6条に基づく文書の交付を兼ねるものであること。
※ 労働条件通知書については、労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします。
○網掛けの部分は、パートタイム・有期雇用労働法により、明示が義務つけられている事項です。
Ⅴ 労働契約を結ぶとき
3.労働契約期間の制限(労基法第14条・附則第137条、労xx第17条第2項)
有期労働契約は、その期間中、原則的に労働者又は使用者の一方だけの都合で解約することができません。その結果、非常に長い労働契約を結ぶことにより、労働者が長期にわたって拘束され、職業選択の自由を妨げる可能性が出てきます。そこで労基法第14条は、労働契約の期間の上限を原則3年と定めています。ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)はこれを超えることが許容されています。
さらに例外として、厚生労働大臣が定める基準に該当する、高度な専門的な知識、技術又は経験を有する労働者が、それを必要とする業務に就く場合や、満 60歳以上の労働者との間に締結される労働契約等について、3年を超える労働契約を締結することができます(上限5年)。
労働契約期間の上限の特例
上限5年 | 専門的な知識、技術又は経験であって高度なものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約 【例】博士号取得者、公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、 技術士又は弁理士のいずれかの資格を有する者、システムアナリスト試験又はアクチュアリー試験に合格している者、特許発明の発明 者など |
上限5年 | 満 60 歳以上の労働者との間に締結される労働契約 |
必要な期間 | 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等) |
なお、表に記載した労働契約期間の上限の特例に該当せずに1年を超える有期労働契約を結んだ場合、労働契約の初日から1年を経過した日以降は、労働者は使用者に申し出ることで、いつでも退職することができます。
4.契約期間についての配慮(労xx17条第2項、基準3条)
事業者は、有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、有期労働契約を反復して更新することのないように配慮しなければなりません。
また、事業者は、一定の有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るもの)を更新しようとする場合、契約の実態や労働者の希望に応じ、契約期間をできる限り長くするように努めなければなりません。
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