契約書は、自治体及びESCO事業者の責任の範囲、保証条件、支払い条件、その他様々な障害に直面した場合の解決策等、重要な合意事項を明文化したものである。ESCO 事業にあっては、事業を円滑に遂行することを第一条件に、保証条件と保証が達成されなかった場合のペナルティーの条件を明確に示すことが重要であると同時に、民間資金活 用型(以下「シェアード・セイビングス契約」という。)のようにESCO事業者が投資する場合の投資回収を、施設の運営管理を損なうことなく円滑に行うための条件を明確...
契約書は、自治体及びESCO事業者の責任の範囲、保証条件、支払い条件、その他様々な障害に直面した場合の解決策等、重要な合意事項を明文化したものである。ESCO事業にあっては、事業を円滑に遂行することを第一条件に、保証条件と保証が達成されなかった場合のペナルティーの条件を明確に示すことが重要であると同時に、民間資金活用型(以下「シェアード・セイビングス契約」という。)のようにESCO事業者が投資する場合の投資回収を、施設の運営管理を損なうことなく円滑に行うための条件を明確にすることが求められる。ここでは、ESCO事業の典型的な契約方法である、ギャランティード・セイビングス契約の場合とシェアード・セイビングス契約の場合における契約書(案)を示す。四角の枠内は契約書条文(案)であり、多くは共通であるが、各契約条件により条文が異なる場合は、必要に応じ書き分けている。
1.1 契約書前文
民間資金活用型ESCO事業にはPFI法に拠る場合と拠らない場合の両者があるが、PFI法に拠る場合には、前文でその旨を明記する。
<PFI法に拠る事業の場合>
委託者○○○(以下「甲」という。)と受託者○○○(以下「乙」という。)は、「民間資金活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(平成11年7月30日 法律第117号)に基づく、○○○○○○
○ESCO事業について、次の条項により、委託契約を締結する。
<一般のESCO事業の場合>
委託者○○○(以下「甲」という。)と受託者○○○(以下「乙」という。)は、○○○○○○○ESCO事業について、次の条項により、委託契約を締結する。
1.2 契約の目的
(契約の目的)
第1条 この契約は、乙が甲に提供する改修工事の設計・施工、運転・維持管理、計測・検証、運転管理指針に基づく助言及び省エネルギーと光熱水費削減保証に対するパフォーマンス等の契約期間中継続的に提供される省エネルギーサービス(以下「ESCOサービス」という。)のために必要なESCO設備を甲の敷地内に設置する工事及びESCOサービスに必要とする甲の施設等の改修工事(以下
「改修工事等」という。)並びに乙の甲に対するESCOサービスの提供を行うことを目的とする。
1.3 契約の要領
事業の対象とする建物の特定と、契約金額、契約期間などの契約の概要を示している。
ギャランティード・セイビングス契約の場合、初年度に設計・施工に相当する金額を支払い、設備の引渡し以降はサービス料を支払う。
シェアード・セイビングス契約の場合、契約金額が契約期間中の「総支払額」及び各年度の「年度別支払額」が示される。この際、「削減予定額」以上の削減が実現した場合のESCO事業者へのボーナス支払いを認めない場合は「総支払限度額」及び「年度別支払限度額」と表現する。
契約書に示す金額は「支払額」と表現する場合でも一定額で示される。ただし、第14条に示す
「削減保証額」が満たされない場合には減額し、あるいは同条に示す「削減予定額」以上の削減が実現した場合の利益を両者で配分するなど、実績により「支払額」が変動するが、これらについては第 16条で示している。この際の「削減保証額」が達成されたかの判定は「実際の削減額=(ベースラインエネルギー消費量-実際のエネルギー消費量)×エネルギー価格+その他削減額」で評価され、エネルギー価格の変動リスクは主に自治体が負うことから、「削減保証額」はエネルギーの削減量とほぼ同等の意味を持つことに留意されたい。また、節水を含む提案の場合も同様の考え方となる。尚、第15条に示すベースラインの調整範囲及び方法については、別添の「包括的エネルギー管理計画書」に示し、これが契約の一部となる。
(契約の要領)
<ギャランティード・セイビングス契約の場合>第2条 この契約の要領は、次のとおりとする。
1)委託事業 ○○○○○○○ESCO事業
2)履行場所 ○○○○○○○○
3)契約金額
ア 初年度支払額 金○○○,○○○,○○○ 円
(消費税及び地方消費税相当額を含む。)
イ 平成○○年度以降の年度別支払額 金○,○○○,○○○ 円
(うち消費税及び地方消費税相当額 金○○○,○○○ 円) 4)契約期間 平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日まで
5)ESCO設備の引渡し予定日 平成○○年○○月○○日
6)契約保証金 免除
7)委託事業内容別添「包括的エネルギー管理計画書」のとおり
3.参考資料1 ESCO事業標準契約書(案)
<シェアード・セイビングス契約の場合>
第2条 この契約の要領は、次のとおりとする。 1)委託事業 ○○○○○○○ESCO事業
2)履行場所 ○○○○○○○○
3)契約金額
ア 総支払(限度)額 金○○○,○○○,○○○ 円
(消費税及び地方消費税相当額を含む。)
イ 年度別支払(限度)額 金○○,○○○,○○○ 円
(うち消費税及び地方消費税相当額 金○,○○○,○○○ 円) 4)契約期間 平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日まで
5)契約保証金 免除
6)委託事業内容別添「包括的エネルギー管理計画書」のとおり
1.4 権利義務譲渡の制限
権利義務の第三者への譲渡は禁止しているが、民間資金活用型の事業、特にSPC(特別目的会社)を設立する場合における資金調達の便益を確保する為にはこれらの譲渡及び担保提供が可能な条件とすることが望ましいことから第2項では自治体の承認が得られる場合に限り、債権を担保とすることを認めている。ただし、事業者にあっては、自治体がこれに応じることが可能な事業スキームを構築し提案する必要がある。
<シェアード・セイビングス契約の場合>
第3条 乙は、甲の了解を得ないで、この契約によって生じる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。
2 乙は、甲の了解を得ないで、この契約によって生じる甲に対する債権を担保の用に供してはならない。
(権利義務譲渡の制限)
<ギャランティード・セイビングス契約の場合>
第3条 乙は、この契約によって生じる権利又は義務を第三者に譲渡し、又は承継させてはならない。
2 乙は、この契約によって生じる甲に対する債権を担保の用に供してはならない。
1.5 再委託の禁止
特に、ESCO事業にあっては省エネルギーの保証などの責務を負う主体を明確にする必要があり、再委託する際でもESCO事業者がその責務を契約期間中、継続して負うこととする措置である。
(再委託の禁止等)
第4条 乙は、委託事業の全部又はその主要部分の処理を第三者に委任し、又は請け負わせてはならない。
2 乙は、委託事業の一部を第三者に委任又は請け負わせようとするときは、あらかじめ、受任者又は下請負人の名称、委任又は請け負わせる業務の内容その他甲が必要とする事項を書面をもって甲に通知し、その承諾を得なければならない。この場合において、乙は甲に対し、委任又は請け負わせた第三者の委託事業の履行責任を負うものとする。
1.6 秘密を守る義務
秘密の厳守は自治体、事業者の双方が負うべき義務としている。自治体が負うべき義務は、ESCO事業者が提供するノウハウに関するものであり、この漏洩を防ぐことでESCO事業者からのノウハウの積極的な提供を促すことを目的としている。
(秘密を守る義務)
第5条 乙及び前条第2項に規定する受任者又は下請負人は、委託事業の遂行上知り得た甲の秘密を他人に漏らし、又は他の目的に利用してはならない。
2 甲は、この契約により知り得た乙の秘密(乙が実施した改修工事等の内容、改修工事等で乙が設置した設備及びシステム開発(以下設置した設備及び開発したシステム等を「ESCO設備」という。)並びにESCOサービスの内容等に係る秘密をいう。)を他人に漏らしてはならない。ただし、乙が事前に了解した範囲内の内容に関しては、この限りでない。
3 前2項の規定は、第2条第4号に規定する契約期間終了後又はこの契約の解除後においても、同様とする。
1.7 善管注意義務
自治体が善管注意義務を負うことは前提条件であり、これを双方が負うことを再確認するもの。ただし、ここでいう義務の範囲及び条件には解釈の余地が残されていることから、守るべき重要な義務については別途契約書等で規定している。
(善管注意義務)
第6条 甲乙は、この契約の履行に当たっては、常に善良なる管理者の注意をもってこれをなすべき責めを負う。
1.8 ESCO設備の施工等
ESCO設備の施工は、ESCO事業者が工事内容及び許認可などの手続きを責任を持って、行うものであり、自治体は可能な範囲で施工が円滑に進むよう便宜を図る。また、自治体は、行政財産の使用に関する許可を与え、行政財産への立ち入りを許可する。
また、天災や自治体施設の運営に支障をきたす場合は施行を一時中断し、改修工事等の完了日又は ESCOサービスの提供開始日の変更を行うなどの措置により、事業の継続を可能とする。
7、8項は、行政財産の使用許可と使用料に関する規定である。ギャランティード・セイビングス契約の場合には特に問題にする必要が無いと考えられるが、シェアード・セイビングス契約のように所有権をESCO事業者が持つ場合には、行政財産の使用許可を得る必要がある。また施工期間中の行政財産使用料は最終的にサービス料に組み込まれ、自治体にとってはプラス・マイナス・ゼロとなることから、極力免除することが望ましい。
(ESCO設備の施工等) 第7条 乙は、自己の負担において、平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までの間に ESCOサービスを提供するための施工及びシステム開発を完了し、平成○○年○○月○○日からESCOサービスを甲に提供するものとする。 2 乙は、改修工事等を行うに当たって、第2条第2号に規定する履行場所(以下「履行場所」という。)における甲の業務運営及び施設管理に支障をきたさないよう十分注意するとともに、履行場所に来訪する第三者に不安感、不快感等を与えないよう、配慮しなければならない。 3 乙は、xx者を設置し、当該xx者を工事期間中、履行場所に常駐させ、同者に改修工事等の運営、取締りを行わせるほか、この契約に基づく乙の改修工事等に係る一切の権限を行使させるものとし、その氏名その他必要な事項を書面により甲に通知しなければならない。xx者を変更したときも、同様とする。 4 乙は、前項の規定にかかわらず、自己の有する権限のうちxx者に委任せず、自ら行使しようとするものがあるときは、あらかじめ、当該権限の内容を甲に通知しなければならない。 5 乙は、改修工事等の施工等に必要な関係法令に基づく許可等を得ること及び検査を受けることに関する一切の責任を負うものとする。 6 乙は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権その他日本国の法令に基づき保護される第三者の権利の対象となっている工事材料、施工方法を使用するときは、その使用に関する一切の責任を負わなければならない。 |
<7、8項はシェアード・セイビングス契約の場合のみ> 7 乙は、改修工事等の開始前に、甲に対し、設置しようとする設備のうち必要とするものについて、行政財産使用許可申請の手続きを行い、その許可を受けなければならない。 8 甲は、乙に対し、改修工事等を行うために一時的に必要となる場所を第7条第1項に定める期 間は無償で提供するものとする。 |
<9項以降はギャランティード・セイビングス契約、シェアード・セイビングス契約両者に共通> 9 乙は、履行場所又はESCO設備に緊急事態が発生したときは、これに対応するため、甲に通知の上、履行場所内に立ち入ることができるものとする。 10 暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、火災、騒乱、暴動その他の自然的又は人為的な事象(以下「天災等」という。)であって乙の責めに帰すことができないものにより履行場所若しくは甲の既存設備に損害を生じ、又は履行場所の状態が変動したため、乙が改修工事等を施工できないときは、甲は、改修工事等の中止内容を直ちに乙に通知して、改修工事等の全部又は一部の施工を一時中止させるものとする。 11 甲は、前項の規定によるほか、履行場所における甲の業務運営に支障があると認めるときは、改修工事等の中止内容を乙に通知して、改修工事等の全部又は一部の施工を一時中止させることができるものとする。 12 前2項の規定により改修工事等の全部又は一部の施工を一時中止した場合において、第1項の規定にかかわらず、改修工事等の完了日又はESCOサービスの提供開始日について甲乙協議の 上、これを変更することができるものとする。 |
1.9 運転管理等
運転管理は、省エネルギー効果を長期に持続する上で非常に重要な要素である。特に省エネルギー保証を行う契約にあっては、運転管理の主導権をESCO事業者に委ねることが求められる。他方、自治体にあっては良質な住民サービスの継続を図ることを目的とした自治体の管理方針を遵守することが求められることから、自治体がESCO事業者からの運転管理に関する助言を可能な範囲で採用することで、良好な運転管理の実現を図ることが可能となる。ギャランティード・セイビングス契約のように自治体にESCO設備の所有権がある場合であっても、ESCO事業者が省エネルギー保証を提供している限り、運転管理の変更を伴う行為については甲乙両者の合意の上で行うことが求められる。従って、第6項についてもESCO事業者との合意の上で行うこととしている。
(運転管理等) <ギャランティード・セイビングス契約の場合> 第8条 乙は、甲との協議により、あらかじめ甲の承諾を受けた運転管理指針に基づき、十分な省エネルギー効果を発揮するようESCOサービスを提供しなければならない。 2 前項に規定する運転管理指針には、省エネルギーを目的とし、同時に人間の快適性のニーズを満たすような適切な操作を行うための操作、維持、調整、変更方法を示す内容が含まれていなければならない。 3 乙は、甲に最適のESCOサービスを提供できるよう、ESCO設備の運転管理を工夫するものとする。 4 乙は、甲の了解を得て、甲の既存設備等履行場所の状況について調査することができるものとする。 5 乙は、甲の既存設備等のより効果的な運転管理について、甲に助言を行うことができるものとし、甲は、当該助言を尊重するものとする。 6 甲は、乙の承諾なしに、ESCO設備の増設又は改造を行ったり、そのいずれかの部品の取り替 え、又は撤去を行ったりしないものとする。 |
<シェアード・セイビングス契約の場合> 第8条 乙は、ESCO設備の運転管理責任を負い、甲との協議により、あらかじめ甲の承諾を受けた運転管理指針に基づき、十分な省エネルギー効果を発揮するようESCOサービスを提供しなければならない。 2 前項に規定する運転管理指針には、省エネルギーを目的とし、同時に人間の快適性のニーズを満たすような適切な操作を行うための操作、維持、調整、変更方法を示す内容が含まれていなければならない。 3 乙は、甲に最適のESCOサービスを提供できるよう、ESCO設備の運転管理を工夫するものとする。 4 乙は、甲の了解を得て、甲の既存設備等履行場所の状況について調査することができるものとする。 5 乙は、甲の既存設備等のより効果的な運転管理について、甲に助言を行うことができるものとし、甲は、当該助言を尊重するものとする。 6 甲は、乙の承諾なしに、ESCO設備の増設又は改造を行ったり、そのいずれかの部品の取り替 え、又は撤去を行ったりしないものとする。 |
1.10 維持管理等
ギャランティード・セイビングス契約の場合の維持管理者及びその経費は設備の所有者である自治体になる。一方で、ESCO事業者は削減保証を行うことから、ESCO設備に支障が認められた場合は、自治体の了解のもとに、これの復旧、調整等を行う。この際の経費は自治体が負担することが基本となるが、経費についてはESCO事業者が見積額を提示し、自治体がこれを承認することが必要である。
ただし、このような経費の発生は、自治体によっては、予算制度に馴染まないことが考えられる。この場合には、予想される維持管理費を予めESCOサービス料に含んで計上し、維持管理費の負担を ESCO事業者が行う方法が考えられ、この際の第9条は、シェアード・セイビングス契約の場合の条文を採用することになる。
また、維持管理に当たっては、事業導入以前の室内環境の快適性を損なわないことも重要な条件である。
シェアード・セイビングス契約の場合、ESCO設備の維持管理はESCO事業者の負担で行うが、 ESCO事業者が当該施設に常駐しない場合が多いと考えられ、この標準契約でも常駐しないことを前提としている。この場合、設備の異常などの監視は、極力、遠隔監視が可能なシステムを導入することが望まれるが、自治体側にも異常を検知した場合の通知義務(第12条)を課している。
<シェアード・セイビングス契約の場合>
第9条 乙は、ESCO設備の維持管理及び修理を行うものとし、これに係る経費は乙が負担する。ただし、甲の過失により生じた設備の修理に係る経費については、xがこれを負担する。
2 乙は、第12条第1項又は第2項の規定による通知を受けたときは、直ちに設備等の点検を行い、 ESCOサービスの提供に支障をきたさないよう、復旧、調整等を行わなければならない。
3 乙は、甲の建物の冷暖房や照明等の快適性能を従来どおり維持する。
(維持管理等)
<ギャランティード・セイビングス契約の場合>
第9条 乙は、第12条第1項又は第2項の規定による通知を受けたときは、直ちに設備等の点検を行い、 ESCOサービスの提供に支障をきたさないよう、甲の承諾を受けた範囲の復旧、調整等を行わなければならない。
2 前項により乙がESCO設備の復旧、調整を行う際の経費については、甲がこれを負担する。
3 乙は、甲の建物の冷暖房や照明等の快適性能を従来どおり維持する。
1.11 ESCO設備の所有権
この標準契約はBOTの場合を前提としている。BTOの場合には、所有権の移転に関する条件を規定する。BTOあるいはギャランティード・セイビングス契約の場合には第10条は必要無い
<シェアード・セイビングス契約であってBOTの場合に限る。>
(ESCO設備の所有権)
第10条 第2条第4号に規定する契約期間中は、乙が設置したESCO設備の所有権は乙に帰属する。
1.12 保険
シェアード・セイビングス契約であってBOTの場合には、加入すべき保険を明記する。保険に加入するのは、事故が起こった場合に復旧に要する経費あるいは賠償等の経費負担により、ESCO事業者あるいはSPCの経営が行き詰まることを回避する為である。加入すべき保険の種類、内容はESCO事業者の提案を基に自治体と協議して定める。
<シェアード・セイビングス契約であってBOTの場合に限る>
(保険)
第11x xは、ESCO設備につき、自己の負担において次に掲げる保険に加入する。
○○○○保険、並びに□□□□保険、並びに△△△△保険
2 前項に規定する保険で補てんされた損害額に対しては、乙は甲に請求しない。
1.13 甲の通知義務
ESCO事業者が設備の管理者を当該施設に常駐させない場合の規定である。この場合、自治体が、 ESCO事業者に代わって、ESCO設備の異常監視、停電等への緊急措置に当たることになる。また、光熱水費の実績データは運転管理を行う上での重要なデータになることから、毎月、自治体から ESCO事業者に報告する。
(甲の通知義務)
第12条 甲は、ESCO設備の故障又は不具合を発見したときは、速やかに乙に連絡するものとする。
2 甲は、履行場所へのエネルギー供給が中断したときは、速やかに乙に通知するものとする。
3 甲は、乙の改修工事等完了日の属する月の翌月以降、毎月、乙に対し、履行場所に係る光熱水費の実績をその翌月に通知するものとする。
1.14 サービス料等
第13条から第16条は、ベースライン、予定削減額、保証削減額、ESCOサービス料に関する計算方法及び考え方を示したものである。削減保証が達成されたことを確認した上でESCOサービス料の支払いが行われるが、天候あるいは施設の稼働状況の変化によりベースラインが変化することから、上記の4者には密接な関係があり、以下のように整理することができる。このうち実削減額が予定削減額を上回った場合には、定められたESCOサービス料に上乗せした料金を支払う場合もあるが、これについては各自治体の会計制度等の事情を勘案して定めることが現実的である。
サービス料金の支払いとペナルティーの徴収
サービス料金の支払い
サービス料金とボーナスの支払い
1.14.1 ベースラインの算出
サービス料支払いの判定方法
ベースラインとは改修工事を行う以前の光熱水費であり、ここでは、過去3年間の実績をもとに、気温、稼働率などで補正した算定値を用いる。この際のエネルギー価格は直近のものを用いる。
(ベースラインの算出)
第13条 ESCOサービスによる削減対象とする1年間の光熱水費の基準額(以下「ベースライン」という。)は、平成○○年○○月○○日から平成○○年○○月○○日までの3年度間に甲が支払った履行場所に係る光熱水費の実績を基に算出して得た額とし、金○○○,○○○,○○○円(消費税及び地方消費税相当額を含む。)とする。
1.14.2 削減予定額及び削減保証額等
削減予定額、削減保証額に関する規定である。契約書では金額で規定しているが、基本的に保証しているのは省エネルギー量であり削減料金ではない。厳密にいうと、「省エネルギー量×エネルギー価格+削減水使用量×上下水道価格+エネルギー供給契約の変更、運転管理費の変更などに係る削減金額」がここでいう削減保証額になるが、エネルギー価格及び上下水道価格は計画段階の価格を用いて計算を行う。
(削減予定額及び削減保証額等)
第14条 ESCOサービスによる甲の光熱水費削減予定額(以下「削減予定額」という。)は、金○○,○
○○,○○○円(消費税及び地方消費税相当額を含む。)とする。
2 ESCOサービスの提供により、乙が甲に対し最低限保証する光熱水費削減額(以下「削減保証額」という。)は、削減予定額以下の範囲で年度別支払(限度)額を超える額とし、金○○,○
○○,○○○円(消費税及び地方消費税相当額を含む。)とする。
過去3年間のエネルギー消費、
水道使用量、気候、施設の稼働率等
計画時点のエネルギー及び用水価格
計画時点の運転管理費
ベースライン
ベースライン等の調整
(調整方法は包括的管理計画書)
エネルギー価格及び用水価格の変化、気候変化、施設の稼働率の変化、運転管理方法の変化、急激なインフレ・デフレ、新税
のうち認められたもの
実削減額
光熱水費、 運転管理費の実績
削減保証額
削減予定額
実削減額>削減予定額
判定 判定
実削減額<削減保証額
実削減額≧削減保証額
ボーナスが認められていない場合
実削減額≦削減予定額