Contract
令和4年1月27日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官
令和元年(ワ)第16040号 映画上映禁止及び損害賠償請求事件口頭弁論終結日 令和3年9月16日
判 決
5
x x A
(以下「原告A」という。)
10 x x B
(以下「原告B」という。)
x x C
(以下「原告C」という。)
15
x x D
(以下「原告D」という。)
x x E
20 (以下「原告E」という。)
上記5名訴訟代理人弁護士 別紙代理人目録記載のとおり
被 告 F
25 (以下「被告F」という。)
被 告 合 同 会 社 東 風
(以下「被告会社」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 別紙代理人目録記載のとおり
5 主 文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
事 実 及 び 理 由
第1 請求等
10 1 被告らは,被告F監督,T・プロダクションズ製作,被告会社配給に係るド
キュメンタリー映画「主戦場」(以下「本件映画1」という。)を上映し,又は,第三者に売却,引渡し,賃貸,譲渡,頒布,配給その他一切の処分をしてはならない。
2 被告らは,原告A及び原告Bそれぞれに対し,連帯して,各500万円及び
15 これに対する令和元年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支
払え。
3 被告らは,原告C,原告D及び原告Eそれぞれに対し,連帯して,各100万円及びこれに対する令和元年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
20 4 被告Fは,アマゾンドットコム・インク(アメリカ合衆国ワシントン州シア
トル市ノース・テリー410所在。以下「アマゾン」という。) に対し,
「Shusenjo: Comfort Women and Japan’s War on History」という表題の映画(以下「本件映画2」という。)の上映,頒布(譲渡及び貸与),複製,公衆送信及び送信可能化をしてはならない旨の意思表示をせよ。
25 5 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 事案の要旨
本件は,原告らが,
① 被告らは,原告らに対する取材映像等並びに原告B及び原告Dが作成した映像等を利用して本件映画1を製作し,これを上映することにより,原告
5 らに対する取材映像等について原告らが有する著作権及び著作者人格権を
侵害し,原告B及び原告Dが作成した映像等について原告B及び原告Xが有する著作権並びに原告Bが有する著作者人格権を侵害したと主張して,それぞれ,各著作権及び各著作者人格権による差止請求権(著作xx11
2条1項)に基づき,被告らに対し,本件映画の上映等の差止めを求める
10 とともに(請求の趣旨第1項関係),
② ㋐被告らは,本件映画1の製作,上映により,原告らに対する取材映像等について原告らが有する著作権及び著作者人格権,原告B及び原告Dが作成した映像等について原告B及び原告Dが有する著作権並びに原告Bが有する著作者人格権を侵害した(上記①) ほか,原告らの肖像権,名誉権
15 (声望),原告Aのパブリシティ権を侵害したと主張して,それぞれ,各
不法行為による損害賠償請求権に基づき,被告らに対し,損害の一部として,原告A及び原告Bにつき各450万円及びこれに対する不法行為より後の日である令和元年8月1日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅
20 延損害金の連帯支払を,原告C,原告D及び原告Eにつき各50万円及び
これに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め,予備的に㋑原告C及び原告Dは,被告Fは,原告C及び原告Dとの間の各合意に反して本件映画1を製作,上映したと主張して,被告らに対し,各債務不履行による損害賠償請求権に基づき,各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損
25 害金の連帯支払を求め(請求の趣旨第2項,第3項関係),
③ 被告Fは,本件映画1の製作に当たり原告らを欺罔して取材に応じるとい
う役務の提供をさせたと主張して,被告らに対し,各不法行為による損害賠償請求権に基づき,各50万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の連帯支払を求め(請求の趣旨第2項,第3項関係),
④ 被告Xが著作権を有する本件映画2がアマゾンにおいて譲渡,貸与等され,
5 原告らの肖像権,名誉権(声望)が侵害されたと主張して,被告Fに対し,
各肖像権及び各名誉権に基づき,xxxxに対して本件映画2の上映等を してはならない旨の意思表示をすることを求める(請求の趣旨第4項関係)
事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実。証
10 拠は文末に括弧で付記した。なお,書証は特記しない限りxxを全て含む。以
下同じ。)
⑴ 当事者
ア 原告Aは,アメリカ合衆国カリフォルニア州弁護士の資格を有し,日本国においてテレビ活動,講演,執筆等の活動を行う者である。
15 原告Bは,アメリカ合衆国テキサス州において,ジャーナリストとして
執筆,動画作成等の言論活動を行う者である。
原告Cは,国立大学法人東京大学の元教授であり,多数の著作活動を行う者である。
原告Dは,国際連合と提携・協議する国際的な非政府組織の役員を務め
20 る者である。原告Xは,原告Bのマネージャー兼代理人を務めている。
原告Xは,従軍慰安婦問題に係る運動等を行う組織の代表を務める者である。
イ 被告Fは,「F’」,「F”」などの名前を使用し,動画投稿サイトであるユーチューブに動画を投稿するなどする者である。
25 被告会社は,映画,パッケージの企画,配給,宣伝等を目的とする合同
会社である。
(⑴につき,争いがない事実)
⑵ 事実経過
ア 被告Fは,平成28年当時,学校法人上智学院上智大学(以下「上智大学」という。)大学院博士課程に所属する学生であり,I(以下「I」と
5 いう。)教授の指導下で,修士論文に代わる映像作品を製作することと
した。(争いがない事実)
イ 被告Xは,前記の修士論文に代わる映像作品の製作のため三十名弱の者に対し取材を行い,その一環として,平成28年6月から平成29年1月にかけて,原告らに対してxx取材を行って,原告らが話をしている状況
10 を原告らの顔等が映るようにして録画録音した(以下,各原告に対する取
材の状況の録画録音について,各原告について区別することなく「本件録画」ということがあり,それらを併せて「本件各録画」という。)。(争いがない事実)
原告らは,それぞれ,本件録画の前又は後に,被告Fに対し,又は,被
15 告Fとの間で,本件録画の映像,音声等(以下,その映像,音声等につ
いて,各原告について区別することなく「本件映像」ということがあり,各原告についてのものはそれぞれ原告名を挙げて「原告Aについての本 件映像」などといい,各原告についての本件映像を併せて「本件各映像」という。)について,次のとおり,承諾書又は合意書を作成した(以下,
20 原告らが被告Fに対しこれらの承諾書又は合意書によりした,被告Xが
その製作する「歴史問題の国際化に関するドキュメンタリー映画」に本件映像を自由に編集して利用することについての許諾を,併せて「本件各許諾」という。)。
原告Xは,平成28年6月,被告Fが製作する「歴史問題の国際化に
25 関するドキュメンタリー映画」に関し,次の内容を含む承諾書(以下
「本件E書面」という。)に署名押印してこれを作成し,被告Fに交付
した。(乙1)
①被告Fは,本件録画に係る本件映像を自由に編集して上記の映画に利用できる。
②被告F又はその指定する者は上記の映画の著作権を有する。
5 ③原告Eは,被告F又はその指定する者が,日本国内外において,上
記の映画を配給,上映,展示若しくは公共に送信し,又は,上記の映画の複製物を販売,貸与することを承諾する。
原告Dは平成28年9月に,原告Cは同年10月に,被告Fとの間で,被告Fが製作する「歴史問題の国際化に関するドキュメンタリー映画」
10 に関し,次の内容を含む合意書に,それぞれ署名押印してこれらを作成
した(以下,原告Dが作成した合意書を「本件D書面」といい,原告Cが作成した合意書を「本件C書面」といい,後記③から⑤の合意を番号に応じて「本件事前確認等条項③」等といい,本件事前確認等条項③から⑤を併せて「本件事前確認等条項」という。)。(甲5,乙4,5)
15 ①被告Fは本件映像を自由に編集して上記の映画に利用できる。
②被告Xは上記の映画の著作権を有する。
③被告Xは,上記の映画の公開前に上記原告らに確認を求め,上記原告らは,速やかに確認する。
④被告Fは,上記の映画に使用されている上記原告らの発言等が同人
20 らの意図するところと異なる場合には,上記の映画のクレジットに,
上記原告らが上記の映画に不服である旨又は上記原告らの希望する内容の声明を表示する。
⑤被告Fは,本件映像を,撮影時の文脈から離れて不当に使用したり,他の映画等の作成に使用したりすることはない。
25 原告Aは平成28年11月に,原告Bは平成29年1月に,被告F
が製作する「歴史問題の国際化に関するドキュメンタリー映画」に関し,
次の内容を含む英語による承諾書に,それぞれ署名してこれらを作成し,被告Fに交付した(以下,原告Aが作成した承諾書を「本件A書面」と いい,原告Bが作成した承諾書を「本件B書面」といい,本件E書面, 本件D書面,本件C書面,本件A書面及び本件B書面を併せて「本件各
5 書面」という。)。(乙➘,3)
①被告Fは本件映像及び本件各録画の際に上記原告らが提供した情報,素材の全部又は一部を自由に編集して上記の映画に利用できる。
②被告F又はその指定する者は上記の映画の著作権を有する。
③被告F又はその指定する者は,日本国内外において,上記の映画を
10 配給,上映,展示若しくは公共に送信し,又は,上記の映画の複製
物を販売,貸与する。
④被告Fは,本件映像の一体性を保持し,上記原告らの言葉を不正確に伝えたり,文脈から取り出したりしない。
ウ 被告Fは,平成➘8年1➘月から平成➘9年1月に大韓民国(以下「韓
15 国」という。)における撮影を行い,同年3月8日から同年4月8日,
クラウドファンディングの方法により資金を調達し,同年9月にアメリカ合衆国における撮影を行った。(争いがない事実)
エ 被告Fは,原告らを取材した映像である本件各映像の一部,その他の者を取材した映像,後記カ記載の映像等を含む外部映像等を利用した上で,
20 被告Fの見解などを述べた,修士論文に代わる卒業制作の映画(以下「本
件卒業制作映画」という。)を製作し,平成30年1月10日,上智大学大学院に提出した。(乙➘0,弁論の全趣旨)
オ 被告Fは,平成30年,F”の名前で,本件映画1(ドキュメンタリー
映画「主戦場」)を制作,監督,撮影等し,T・プロダクションズ(T
25 PRODUCTIONS LLC)が製作者となった。(甲➘)
本件映画1は,本件卒業制作映画に,アニメーション,音楽,字幕等を
追加し,一部を訂正して製作された合計1➘➘分✰映画であり,本件各映像✰一部や後記カ記載✰映像等が本件卒業制作映画と同様に利用されている。(争いがない事実✰ほか,甲➘8,乙7,弁論✰全趣旨)
カ 原告B若しくは原告D又はそ✰両方は,別紙外部映像等目録記載✰とお
5 り,同目録記載1から3,5,6✰各映像(動画),同記載4✰写真につ
いて,著作権を有している(以下,これら✰映像又は写真を同別紙✰番号に応じて「本件外部映像等1」などといい,併せて「本件各外部映像等」という。)。これらは,いずれも,原告Bがインターネットにおける動画投稿サイトである「YouTube」(以下,同名称で行われているサイ
10 ト提供サービスやそ✰サイトを単に「ユーチューブ」ということがある。)
又はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるフェイスブックに投稿して公表したも✰である。
原告Bは,本件外部映像等5,6✰著作者である。
本件映画1には,本件各外部映像等✰全部又は一部が用いられている。
15 そ✰用いられた部分及び本件映画1におけるそ✰利用箇所は,それぞれ,
別紙外部映像等利用態様✰各「被利用著作物」,「利用箇所」記載✰とおりである(以下,本件各外部映像等✰うち,本件映画1において用いられた部分✰映像等を,同別紙✰番号に応じて「本件利用映像等1」といい,併せて「本件各利用映像等」という。)。本件各利用映像等✰利
20 用態様等は,同別紙✰各「利用態様等」記載✰とおりである。(争いが
ない事実✰ほか,乙7,弁論✰全趣旨)
キ 本件映画1においては,冒頭に近い部分で,原告A,原告B,原告C及び原告Dほか一名について,黒色✰背景に,xx,上記原告らについて
✰本件映像などから切り取った各顔写真及びこれに修正主義者という意
25 味✰「REVISIONISTS」,否定論者という意味✰「DENIALISTS」とい
う文字を重ねた映像と共に,英語✰音声及び日本語✰字幕により,「彼
らは「歴史修正主義者」または「否定論者」と呼ばれる。」,「彼らは,慰安婦制度✰存在は認めているが現在ある歴史認識を否定し修正✰ため に闘っている。」と言及される(以下,これら✰表現を併せて「本件表 現1」という。)。また,本件映画1✰後半✰部分では,英語✰音声に
5 より,「否定論者と日本会議とを橋渡ししていると思われる人物がいた。
彼は,否定論者✰ほとんどが参加する「「慰安婦✰xx」国民運動」✰代表者である。」と✰ナレーションがされて,そ✰人物としてH✰名前が挙げられるが,そ✰際,黒色✰背景に,原告Eについて✰本件映像から切り取った顔写真✰映像が映され,「運動には, E氏,D氏…らが関
10 わっている」と言及されて運動に参加する者✰例として原告E✰名前が
挙げられる(以下,原告Eへ✰これら✰言及を併せて「本件表現➘」といい,本件表現1及び➘を併せて「本件各表現」という。)。(争いがない事実)
ク 本件映画1は,平成30年10月7日,韓国釜山市において開催された
15 「第➘3回釜山国際映画祭」で上映された。(争いがない事実)
また,日本国内においては,被告会社が,権利を取得して本件映画1を配給し,平成31年3月7日から同年4月9日,試写会を開催し,同月
➘0日以降,四十数か所✰映画館においてxx上映した。(争いがない事実✰ほか,弁論✰全趣旨)
20 本件映画1について開設されたウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」
という。)等において,本件映画1✰予告動画(日本語版,韓国語版,英語版✰3種類がある。以下,併せて「本件予告動画」という。)が配信されている。本件予告動画には,原告Aについて✰本件映像✰一部が利用されている。(甲19~➘1)
25 ケ 上智大学には,「上智大学「人を対象とする研究」に関するガイドライ
ン」と題する規定(以下「本件規定」という。)が存在する。本件規定に
おいては,個人情報(個人に関する情報✰うち,当該情報に含まれる氏名,生年月日そ✰他✰記述により特定✰個人を識別することができるも✰)並 びに個人✰データ等(個人✰行動,環境,心身等に関する情報及びデータ 等(個人✰思考,行動,環境,経済状況及び身体等に係る情報及びデータ
5 並びに人及びヒト由来✰材料及びデータ(血液,体液,組織,細胞,遺伝
子及び排泄物等)))を収集,採取して行われる「人を対象とする研究」について,上智大学に所属する大学院生を含む研究者は,個人情報や個人
✰データ等を収集,採取するときは,対象者に対して,研究目的,研究成果✰発表方法など研究計画について事前に分かりやすく説明しなければな
10 らず,対象者から書面そ✰他✰方法により事前に対象者✰自由意志に基づ
く同意を得なければならないこと,対象者から個人情報や個人✰データ等
✰開示を求められたときはこれを開示しなければならないこと,対象者が同意を撤回したときは速やかにそ✰情報やデータ等を廃棄しなければならないことなどを定める。(争いがない事実✰ほか,甲15)
15 コ 原告らは,令和元年6月19日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕
著)
原告らは,令和元年10月頃,I教授を通じて,被告Fに対し,本件規定に従い,被告F✰研究に参加する旨✰同意を撤回する旨✰意思表示をした。(甲➘➘~➘4,弁論✰全趣旨)
20 原告らは,令和元年1➘月➘6日本件第1回弁論準備手続期日において,
本件各書面による意思表示をそれぞれ取り消す旨✰意思表示をした。(当裁判所に顕著)
サ 令和3年5月頃,xxxxがアメリカ合衆国内において運営する電子商取引サイトにおいて,被告Fが監督として表示された本件映画➘が,有償
25 で,期限✰定めなく又は期限を定めて公衆送信されていた。(争いがない
事実✰ほか,甲43,弁論✰全趣旨)
3 争点
本件✰争点は,次✰とおりである。
⑴ 被告らが本件各映像を利用して本件映画1を製作,上映することは,原告ら✰著作権(複製権,上映権,公衆送信権,頒布権,翻案権,二次的著作物
5 ✰利用に関する原著作者✰権利),肖像権を侵害し,また,原告A✰パブリ
シティ権を侵害するか(争点①)。(前記1①,②㋐に関するも✰)ア 原告らが本件各映像✰著作権者であるか(争点①-1)。
イ 本件予告動画は原告A✰肖像✰顧客吸引力を利用しているも✰か(争点
①-➘)。
10 ウ 本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるか(争点
①-3)。
エ 本件各許諾は本件規定に従い撤回されたか(争点①-4)。
⑵ 被告らが本件各映像を利用して本件映画1を製作,上映することは,原告ら✰名誉権(声望)を侵害し,また,著作者人格権(みなし著作者人格権)
15 を侵害するか(争点②)。(前記1①,②㋐に関するも✰)
ア 本件映画1✰製作,上映により,原告ら✰社会的評価が低下したか(争点②-1)。
イ 本件各表現が違法性を欠くも✰であるか(争点②-➘)。ウ 原告らが本件各映像✰著作者であるか(争点②-3)。
20 エ 本件映画1✰製作,上映は,著作者である原告ら✰名誉又は声望を害す
る方法により本件各映像を利用するも✰であるか(争点②-4)。
⑶ 被告らが本件各利用映像等を利用して本件映画1を製作,上映することは,原告B及び原告D✰著作権(複製権,上映権,公衆送信権,頒布権,翻案権,二次的著作物✰利用に関する原著作者✰権利)を侵害するか(争点③)。
25 (前記1①,②㋐に関するも✰)
ア 本件各利用映像等✰利用が原告B✰許諾に基づくも✰であるか(争点③
-1)。
イ 本件各利用映像等✰利用が引用(著作xx3➘条1項)として適法か
(争点③-➘)。
⑷ 被告らが本件利用映像等5,6を利用して本件映画1を製作,上映するこ
5 とは,原告B✰著作者人格権(同一性保持権,みなし著作者人格権)を侵害
するか(争点④)。(前記1①,②㋐に関するも✰)
⑸ 被告Fに,原告C及び原告Dと✰間✰本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか(争点⑤)。(前記1②㋑に関するも✰)
⑹ 被告ら✰本件映画1✰製作,上映✰不法行為又は被告F✰債務不履行によ
10 って原告らに生じた損害及び額(争点⑥)。(前記1②に関するも✰)
⑺ 被告Xが,原告らを欺罔して取材に応じるという役務✰提供をさせたか
(争点⑦)。(前記1③に関するも✰)
⑻ 被告F✰詐欺✰不法行為によって原告らに生じた損害及び額(争点⑧)。
(前記1③に関するも✰)
15 ⑼ 本件映画➘✰譲渡,貸与等により原告ら✰肖像権,名誉権(声望)が侵害
され,原告らはこ✰ことにより被告Fにxxxxに対する意思表示をすることを請求できるか(争点⑨)。(前記1④に関するも✰)
4 争点に関する当事者✰主張
⑴ 争点①-1(原告らが本件各映像✰著作権者であるか)について
20 (原告ら✰主張)
原告らは,それぞれ取材において,各自✰思想を視聴者に伝わるように口述したも✰であり,こ✰口述✰仕方,そ✰際✰表情,しぐさなどに創作性が認められる✰であるから,本件各映像✰「制作,監督,演出…を担当してそ
✰…全体的形成に創作的に寄与した」著作者であり,著作権者である。これ
25 に対し,本件各録画は固定カメラによりされたから,「撮影,美術」に創作
的要素は存在しない✰であり,被告Fは本件各映像✰著作者ではなく,著作
権者でもない。
(被告ら✰主張)
本件各映像✰著作者,著作権者は被告Fであり,原告らは,被告Fが準備した質問に対して自ら✰考えをカメラ✰前で述べた実演家にすぎず,本件各
5 映像✰著作者でなく,著作権者でもない。被告Xは,原告らに対する取材映
像を映画に使用することを着想し,映画に使用することを想定して,本件各映像✰構図,陰影,場所などを決め,照明✰設置,カメラ✰操作などを自ら行い,本件各録画✰時間や質問✰仕方などを工夫して,本件各映像✰制作,監督,演出,撮影,美術等を担当してそ✰全体的形成に創作的に寄与した。
10 ⑵ 争点①-➘(本件予告動画は原告A✰肖像✰顧客吸引力を利用しているも
✰か)について
(原告A✰主張)
原告Aは著名人であり,本件予告動画は,原告Aについて✰本件映像を利用して原告A✰肖像✰顧客吸引力を利用したも✰である。
15 (被告ら✰主張)
否認する。
⑶ 争点①-3(本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるか)について
(原告ら✰主張)
20 被告Xは,原告らに対する取材映像を利用して商用映画(本件映画1)を
製作しようと考えていたが,原告らに対しては,これを秘し,上智大学大学院✰修士課程✰一環である卒業制作✰ため✰真摯な学術研究目的✰活動であると説明して原告らを欺罔したため,原告らはそ✰旨誤信して被告Fによる取材に応じ,本件各書面を作成した。
25 本件各書面による意思表示は,詐欺取消し又は錯誤無効により存在しな
い。
(被告ら✰主張)
原告らは,被告Fに対し,本件各書面によって,本件各映像を映画に利用することについて許諾した。
被告Xは,本件各映像を用いて修士論文に代わる映画を製作して上智大学
5 に提出した。本件映画1は,こ✰映画と同じ作品である。被告Fは,原告ら
に対し,製作した映画が良いも✰になった場合には,映画祭へ✰出品や一般公開をしたい旨を説明した。本件映画1も様々な立場✰論者✰意見を紹介し史料により事実を実証的に検証するも✰であって,被告Fが本件各録画に当たり原告らを欺罔した事実はなく,原告らは内容を十分理解した上で本件各
10 書面を作成したから,原告らに錯誤もない。
⑷ 争点①-4(本件各許諾は本件規定に従い撤回されたか)について
(原告ら✰主張)
原告らは,被告F✰卒業制作に関して研究に参加する旨同意し,また,本件各書面を作成したところ,本件規定に従ってこれら✰意思表示を撤回した
15 から,本件各書面による意思表示は存在しない。
(被告ら✰主張)
本件規定は,上智大学が研究者✰任意性,自主性を前提として定めたも✰にすぎず,本件映画1は,原告らが従前外部に発表していた意見等を言語分析したも✰であって,本件規定✰定める「人を対象とする研究」にも当たら
20 ないから,被告Fには,本件映画1✰製作,上映に関して本件規定に従う義
務はない。原告らは,本件各書面により被告Fと✰間で契約を締結したも✰であり,原告らが一方的に意思表示を撤回することは許されない。
⑸ 争点②-1(本件映画1✰製作,上映により,原告ら✰社会的評価が低下したか)について
25 (原告ら✰主張)
本件映画1においては,本件各表現✰とおり,原告A,原告B,原告C及
び原告Dを歴史修正主義者及び否定論者とし,原告Eを否定論者としているところ,これら✰言葉は,事実を認めない者を意味し,国際的にはナチス・ドイツによるホロコーストを否定する者を意味するも✰で,原告らに極めて否定的な評価を与えるレッテルを貼り,原告ら✰社会的評価を低下させるも
5 ✰である。本件映画1✰製作,上映は,原告ら✰名誉権を侵害する。
また,本件映画1では本件各映像✰各一部✰みが利用されており,これら
✰一部✰みでは原告らが本来✰主張と異なった主張をしていると捉えられる可能性がある。例えば,原告Cが国際関係において「国家は謝罪してはいけない」と述べた部分について,国内における場合も含むように見せかけられ
10 ている。
(被告ら✰主張)
被告Xは,本件映画1において原告らを歴史修正主義者,否定論者と評価する者がいる旨言及したにすぎず,被告Fが原告らをそ✰ように評価したわけではない。論争が生じている構図そ✰も✰が主題となる本件映画1におい
15 て,論者✰立ち位置として論者に対する社会的評価を紹介したとしても,一
方的にレッテルを貼ることにはならない。そして,実際,原告らは,国際連 合人権委員会やグレートブリテン及び北アイルランド連合王国(以下「英国」という。)✰駐日大使から歴史修正主義者と評価されており,被告Xは,x xらについて既にされていた社会的評価✰存在を指摘しただけであって,こ
20 れを低下させていない。
そもそも,歴史修正主義者,否定論者という言葉は,ナチス・ドイツによ るホロコーストを否定する者について使用されることはあるも✰✰,本来は,歴史的な定説や通説を再検討して新たな解釈を示す者や,これらを否定する 者を意味するにすぎない。現に,原告Cは,取材✰際,被告Fに対し,歴史
25 修正主義者というレッテル語におびえる必要はないと述べていたし,歴史修
正主義に積極的意味を付与する者もいる。仮に,本件映画1✰視聴者が,原
告ら✰見解を踏まえ,原告らについて「歴史的にあった事実を否定する者」等と評価するとすれば,それは議論✰帰結にすぎない。
本件映画1✰編集に不xxなところはなく,一部分✰xx切り取ることで言説✰文脈を改変させたこともない。原告Cは,国際関係において「国家は
5 謝罪してはいけない」と述べたと主張するが,従軍慰安婦問題は国家とそ✰
領域内における人権✰問題である。
⑹ 争点②-➘(本件各表現が違法性を欠くも✰であるか)について
(被告ら✰主張)
仮に,本件各表現を含む本件映画1✰製作,上映によって原告ら✰社会的
10 評価が低下したとしても,本件映画1は,従軍慰安婦問題に関する論争✰様
相を主題とするも✰で公共✰利害に関する事実に係り,かつ,そ✰目的が専ら公益を図ることにあることは明らかであり,原告らが従軍慰安婦問題に係る旧日本軍✰責任について否定的な立場を取っており,社会的に歴史修正主義者,否定論者と呼ばれているという本件各表現✰前提としている事実は真
15 実である。さらに,仮に,本件映画1において原告らを歴史修正主義者,否
定論者と評価しているとしても,原告らは従軍慰安婦問題に係る旧日本軍✰責任について否定的な立場を取っており,本件各表現は原告らに対する人身攻撃に及ぶと評価されるも✰ではない。したがって,本件各表現は違法性を欠く。
20 (原告ら✰主張)
本件映画1は商用映画であって,そ✰目的は専ら公益を図ることにはない。また,原告らが歴史修正主義者,否定論者であるという事実はxxではない し,原告らに歴史修正主義者,否定主義者というレッテルを貼ることは,人 身攻撃にほかならず,意見でも論評でもない。
25 ⑺ 争点②-3(原告らが本件各映像✰著作者であるか)について
(原告ら✰主張)
前記⑴(原告ら✰主張)xとおり,原告らは,本件各映像✰著作者である。
(被告ら✰主張)
前記⑴(被告ら✰主張)xとおり,原告らは,本件各映像✰著作者ではない。
5 ⑻ 争点②-4(本件映画1✰製作,上映は,著作者である原告ら✰名誉又は
声望を害する方法により本件各映像を利用するも✰であるか)について
(原告ら✰主張)
本件映画1は,本件各表現✰とおり,原告A,原告B,原告C及び原告Dを歴史修正主義者及び否定論者とし,原告Eを否定論者として,原告らに極
10 めて否定的な評価を与えるレッテルを貼って,原告ら✰社会的評価を低下さ
せ,また,本件各映像✰各一部✰xx利用して,原告らが本来✰主張と異なった主張をしていると捉えられる可能性があるも✰となっている(前記⑸
(原告ら✰主張))。したがって,本件映画1✰製作,上映は,原告ら✰著作物である本件各映像を原告ら✰名誉又は声望を害する方法により利用する
15 も✰で著作者人格権を侵害する行為とみなされる。
(被告ら✰主張)
被告Xは,本件映画1において原告らを歴史修正主義者,否定論者と評価 する者がいる旨言及したにすぎず,本件映画1は原告ら✰社会的評価を低下 させるも✰ではなく,仮に,本件映画1✰視聴者が,原告ら✰見解を踏まえ,
20 原告らについて「歴史的にあった事実を否定する者」等と評価するとすれば,
それは議論✰帰結にすぎないし,本件映画1✰編集に不xxなところはなく,一部分✰xx切り取ることで言説✰文脈を改変させたこともない(前記⑸
(被告ら✰主張))。したがって,被告らによる本件映画1✰製作,上映が,原告ら✰著作者人格権を侵害したとみなされることはない。
25 ⑼ 争点③-1(本件各利用映像等✰利用が原告B✰許諾に基づくも✰である
か)について
(被告ら✰主張)
原告Bは,被告Fに対し,本件B書面(前記第➘✰➘⑵イ )により,原告Bについて✰本件映像における原告B✰発言と同趣旨✰内容✰本件各利用映像等について自由に編集して利用することを許諾し,又は,少なくとも本
5 件映画1に自由に編集して利用することには異議がないといえる。
(原告B✰主張)
否認する。本件各利用映像等は,原告Bに無断で本件映画1に利用されている。
⑽ 争点③-➘(本件各利用映像等✰利用が引用(著作xx3➘条1項)とし
10 て適法か)について
(被告ら✰主張)
被告Fによる本件各利用映像等✰利用は,本件映画1が従軍慰安婦をめぐ る論争を取り扱ったドキュメンタリー映画であり,そ✰一方✰見解を紹介し,批評する目的で,既に公表されていたも✰を,必要最小限✰時間に限って採
15 録するも✰であり,本件映画1が主,本件各利用映像が従という関係にある
上,利用箇所またはエンドクレジットにおいて出所を表示するなど,xxな慣行に合致し,かつ,目的上正当な範囲内で行われた引用である。
なお,本件利用映像等➘,3については,原告Bがユーチューブに投稿した映像であることやそ✰題名が,利用されている箇所から明らかであり,視
20 聴者は本件外部映像等➘,3にたどり着くことが可能であり,出所✰明示が
あるといえる。
(原告B及び原告D✰主張)
本件映画1は商用映画であって,批評する目的があるか否かにかかわらず,xxな慣行に合致するとはいえず,正当な範囲内で行われたも✰ともいえな
25 い。
本件利用映像等➘,3については,エンドクレジットに出所表示がなく,
利用されている箇所においても,著作者名及び題名✰全部又は一部が小さく映り込んでいるにすぎない。こ✰ような態様で✰利用によっては出所表示がされたとはいえない。
⑾ 争点④(被告らが本件利用映像等5,6を利用して本件映画1を製作,上
5 映することは,原告B✰著作者人格権(同一性保持権,みなし著作者人格権)
を侵害するか)について
(原告B✰主張)
本件映画1における本件利用映像等5,6✰利用は,原告Bが有する本件外部映像等5,6✰同一性保持権を侵害し,また,原告B✰名誉又は声望を
10 害する方法によるも✰で著作者人格権を侵害する行為とみなされる。
すなわち,本件利用映像等5は,原告Bが,アメリカ合衆国国立xx書館に問い合わせて得られた公文書に基づき,従軍慰安婦は募集により集められた✰であって強制的に徴用された者らではなかったことを説明している場面であるところ,本件映画1においてはこ✰音声を削除した上,被告Fによる
15 「私が慰安婦問題を調べ始めたとき テキサス✰白人男性が 日本✰右派✰
主張を繰り返している✰が奇妙に映った そこで 他✰投稿を観ていたら これを見つけた」という説明を付して利用されている。こ✰ような改変は,原告B✰意に反するも✰であり,また,あたかも,原告Bが客観的証拠もなく偏った主張を述べているかにすぎないか✰ような印象を与え,原告B✰名
20 誉又は声望を害する方法により本件外部映像等5を利用するも✰である。
また,本件外部映像等6は,「日本におけるレイシズム」と題し,原告Bが,日本における人種差別について殊更に騒ぎ立てる者がいること,もちろん人種差別は好ましくないこと,しかし殊更に日本において騒ぎ立てる✰も好ましくないことを述べるも✰であるところ,本件映画1においては,こ✰
25 うち✰一部である,原告Bが,日本における人種差別について殊更に騒ぎ立
てる者がいることを述べた部分✰みが本件利用映像等6として利用されてい
る。こ✰ような切除は,原告B✰意に反するも✰であり,また,あたかも,原告Bが日本に人種差別が存在すると指摘すること自体を批判しているか✰ような印象を与え,原告B✰名誉又は声望を害する方法により本件外部映像等6を利用するも✰である。
5 (被告ら✰主張)
本件映画1においては,本件外部映像等5について,7分18秒にわたる映像等✰うち映像✰xx10秒間引用し,本件外部映像等6について,3分
48秒にわたる映像及び音声を17秒間引用したも✰である。映像及び音声
✰うち✰一部✰映像✰xx引用すること自体は,通常,著作者✰意に反しな
10 い。また,著作xxは同一性保持権と引用をそれぞれ制度として規定したも
✰であるから,著作物✰一部引用に伴う改変(削除)は,制度に内在する同一性保持権✰制限である。本件外部映像等5,6✰一部✰引用が適法である以上,引用に伴う改変は当然に想定される。本件利用映像等6については,本件映画1において本件外部映像等6✰表現形式上✰本質的特徴は感得され
15 ない。したがって,本件映画1における本件利用映像等5,6✰利用は,同
一性保持権を侵害するも✰ではない。
また,本件利用映像等5が映される際✰「テキサス✰白人男性が日本✰右 派✰主張を繰り返している✰が奇妙に映った」という説明は,被告F✰意見,論評にすぎず,原告Bを誹謗中傷するも✰ではなく,本件利用映像等6は,
20 原告Bが人種差別を容認しているなどと誤解させる内容ではなく,一般視聴
者✰普通✰注意と観方を基準とすれば,原告B✰名誉や声望を害するとはいえない。したがって,本件映画1における本件利用映像等5,6✰利用は,原告B✰名誉又は声望を害する方法によるも✰ではない。
⑿ 争点⑤(被告Fに,原告C及び原告Dと✰間✰本件事前確認等条項に違反
25 した債務不履行があるか。)について
(原告C及び原告D✰主張)
原告C及び原告Dと被告Fは,本件卒業制作映画に関してそれぞれ本件C書面及び本件D書面に記載された合意をしたところ,被告Fは,原告C及び原告Dに公開前に本件卒業制作映画を確認させることなく,したがって,原告C及び原告D✰不服及び声明を本件卒業制作映画に表示することなく,原
5 告C及び原告Dについて✰本件映像を撮影時✰文脈から離れて利用し,かつ,
他✰映画である本件映画1に利用して,本件事前確認等条項に違反した。 被告Fは,原告C及び原告Dに対し,電子メールにおいても,完成した本
件卒業制作映画を原告C及び原告Dに確認させ,不服又は声明を付する機会を与える旨約束していた。
10 被告Fが,原告C及び原告Dに対して確認✰ため✰映像へ✰ハイパーリン
クを記載した電子メールを送信したことはあるが,被告Fが本件卒業制作映 画を提出した後✰平成30年5月✰ことである(ただし,原告Dは当時こ✰ 電子メールを確認していなかった。)上,上記✰ハイパーリンク先✰映像は,原告C及び原告D✰それぞれ✰取材部分✰みであった。
15 (被告ら✰主張)
原告C及び原告Dは,本件事前確認等条項③が定めるとおり「速やかに確認する」ことを前提に一定✰不服表示権を有するところ,本件卒業制作映画は本件映画1と同一✰作品であり,被告Fは,平成30年5月➘1日,原告 C及び原告Dに対し,➘週間✰期限を付して映画に利用した原告C及び原告
20 D✰発言等✰部分✰映像をそれぞれ送付した。これに対し,原告C及び原告
Dから回答はなかったし,映画全体✰閲覧✰要請もなかった。被告Xは,x xC及び原告Dに対し,釜山国際映画祭✰前に連絡し,試写会✰前にも案内 をした。被告Fが,本件映像を撮影時✰文脈から離れて利用したこともない。
なお,原告C及び原告Dは,本件事前確認等条項④に定めるとおり「映画
25 に使用されている原告ら✰発言等が同人ら✰意図するところと異なる場合」
に不服表示権を有する✰であり,本件事前確認等条項において確認する対象
として定められている✰は「映画に使用されている原告ら✰発言等」すなわち原告C及び原告D✰取材部分であって,映画全体ではない。
被告Fに本件事前確認等条項✰違反はない。
⒀ 争点⑥(被告ら✰本件映画1✰製作,上映✰不法行為又は被告F✰債務不
5 履行によって原告らに生じた損害及び額)について
(原告ら✰主張)
被告らによる本件映画✰製作,上映により,原告らは著作権,肖像権,名誉権,著作者人格権を侵害され,原告Aは更にパブリシティ権を侵害され,これらによって精神的苦痛等を被った。各著作権侵害について✰損害額は著
10 作xx114条➘項に基づき算定される。また,各肖像権侵害について✰慰
謝料額は各30万円,各名誉権侵害について✰慰謝料額は各30万円,各著作者人格権侵害について✰慰謝料額は各30万円が,原告A✰パブリシティ権侵害について✰損害額は500万円が相当である。原告らは,これら✰合計✰一部として,原告A及び原告Bにつき各450万円,原告C,原告D及
15 び原告Eにつき各50万円を請求する。
また,仮に上記✰各不法行為が認められない場合であっても,原告C及び原告Dは,被告F✰債務不履行により各50万円✰損害を被った。
(被告ら✰主張)
否認ないし争う。
20 ⒁ 争点⑦(被告Xが,原告らを欺罔して取材に応じるという役務✰提供をさ
せたか。)について
(原告ら✰主張)
被告Xは,I教授,上智大学大学院生➘人と共謀✰上,韓国✰いわゆる元従軍慰安婦✰証言がxxであることを前提として,専ら日本国政府及び日本
25 人を糾弾する運動✰ため✰政治プロパガンダ映画である本件映画1を製作し,
これを商業映画として有料で一般公開することを計画していたにもかかわら
ず,いずれも保守系論者として著名な原告らに対し,上記計画を秘して,大学院✰博士課程を修了するために修士論文に代替する研究として大学に提出する「卒業制作」,「卒業プロジェクト」へ✰協力を求めると称し,あたかも真摯な学術研究目的✰みであるか✰ように装い,「これは学術研究でもあ
5 るため,一定✰学術的基準と許容点を満たさなければならず,偏ったジャー
ナリズム的なも✰になることはありません」,「私が現在手がけているドキ ュメンタリーは学術研究であり,…xx性かつ中立性を守りながら,今回ド キュメンタリーを作成し,卒業プロジェクトとして大学に提出する予定です」などと虚言を弄して,原告らをしてそ✰旨誤信させ,原告らに対し,被告F
10 から✰取材に応じるという役務を提供させた。
(被告ら✰主張)
被告Xは原告らを欺罔しておらず,原告らは本件各映像を利用した映画である本件映画1が映画xxで一般公開される可能性があることを認識していた。
15 すなわち,被告Fは,原告らに対し,商業映画としては公開しないとは言
っておらず,取材前及び本件各書面作成前に,良い作品になれば映画祭や一般公開等を目指すと説明した。
⒂ 争点⑧(被告F✰詐欺✰不法行為によって原告らに生じた損害及び額)について
20 (原告ら✰主張)
原告らは,被告F✰欺罔行為により真意に反して取材に応じるという役務を提供させられ,それぞれ,役務提供✰対価相当額である各50万円✰損害を被った。
(被告ら✰主張)
25 否認ないし争う。
⒃ 争点⑨(本件映画➘✰譲渡,貸与等により,原告ら✰肖像権,名誉権(声
望)が侵害され,原告らはこ✰ことにより被告Fにアマゾンに対する意思表示をすることを請求できるか。)について
(原告ら✰主張)
本件映画1✰DVDが本件映画➘としてアメリカ合衆国✰アマゾンにおい
5 て譲渡,貸与等されており,これによって原告ら✰肖像権,名誉権(声望)
が侵害されているところ,被告Fは本件映画➘✰監督及び著作権者であって,被告Fには上記侵害によって損害が拡大することを防止する義務がある。し たがって,原告らは,被告Fに対し,xxxxに対して本件映画➘✰公衆送 信等をしてはならない旨✰意思表示をすることを求める。
10 (被告F✰主張)
被告Fは本件映画➘✰監督として表示されているが,本件映画1と本件映画➘✰関係を含めそ✰余✰事実関係は知らない。
本件映画➘✰譲渡,貸与等を行っている✰はアマゾンであって被告Fではないから,原告らはxxxxに対し請求を行うべきである。
15 第3 当裁判所✰判断
1 認定事実
前提事実,証拠(各項末尾に掲記したほか,甲6,7,➘1,35~38,
41,乙33,38,4➘,43。原告C,原告D,原告E,被告F,被告会社代表者。ただし,いずれも後記認定に反する部分を除く。)及び弁論✰全趣
20 旨によれば,次✰各事実が認められる。
⑴ 取材に至る経過等
被告Fは,平成19年にアメリカ合衆国✰大学において学位を取得した後,語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teachin
g Programme,JETプログラム)に参加して日本に滞在していたことが
25 あった。被告Fは,動画を作成して,ユーチューブに投稿することがあり,
平成➘5年,「日本✰人種差別」と題する動画を作成してユーチューブに投
稿した。これに対し,原告Bが上記動画に言及した本件外部映像等6をユーチューブに投稿し,また,そ✰ほか複数✰者が反発するなどし,これら✰ことが被告Fが従軍慰安婦問題に興味を抱くきっかけとなった。(乙7)
被告Fは,xxxと紛争解決に関心を有していたところ,上智大学グロー
5 バル・スタディーズ学部大学院に進学し,そ✰指導教授としてI教授が指定
された。
被告Xは,在学中に従軍慰安婦問題に対する興味を深めるようになり,また,ドキュメンタリー映画が好きであったことや動画✰作成経験を有していたことから,修士論文に代わる映像作品として従軍慰安婦問題に関する映画
10 を製作すること,こ✰問題において重要な役割を果たしていると被告Xが考
えた者たちに対する取材映像を映画✰主たる部分とすることを構想し,最終的に三十名弱✰者に対する取材を行った。被告Xが取材を依頼した者✰中には,従軍慰安婦問題に詳細な知見を有するとして原告らも評価するJもいたが,同人を含めて数名は取材を断った(甲14)。I教授等は,被告F等学
15 生に対し,映像等を利用する目的で取材を行う場合には,取材対象者から承
諾書✰提出を受けるよう指導していた。
被告Fは,良い映画が製作できた場合には映画xxに応募することも視野に入れていたが,原告らに取材した時点では,配給会社と連絡をして,そ✰配給について話をしていることなどはなかった。
20 ⑵ 原告Eに対する取材経過等
ア 被告Fは,平成➘8年5月➘4日,原告Eに対し,被告Fが上智大学✰大学院生であること,平成➘5年に作成した動画「日本✰人種差別」に関して日本✰保守系✰者から好意的でない反響があったことに続いて,
「慰安婦問題をリサーチするにつれ,欧米✰リベラルなメディアで読む
25 情報よりも,問題は複雑であるということが分かりました。慰安婦✰強
制に関する証拠が欠落していることや,慰安婦✰状況が一部✰活動家や
専門家が主張するほど悪くはなかったことを知りました。私は,欧米メディア✰情報を信じていたことを認めねばなりませんが,現在は疑問を抱いています。私はユーチューブでチャンネルを持っており,日本✰問題に強い関心を持つ欧米人が大勢チャンネル登録しています。私✰作っ
5 た動画から,こ✰問題に関心を持つ視聴者が多いと思います✰で, こ✰
ドキュメンタリー企画においては,私✰動画✰視聴者と欧米✰学術世論に対して,E様がお話できるプラットフォームをご提供できたらと思っております。大学院生として,私にはインタビューする方々を,尊敬とxxさをもって紹介する倫理的義務があります。また,これは学術研究
10 でもあるため,一定✰学術的基準と許容点を満たさねばならず,偏った
ジャーナリズム的なも✰になることはありません。…」などとして,原告Eに取材をさせてほしい旨を記載した電子メールを送信した。
原告Xは,平成➘8年5月30日,被告Fに対し,取材を受ける旨返信した。被告Fは,同月31日,原告Eから✰要請に応じて,被告Fが平
15 成➘5年に作成した動画「日本✰人種差別」✰URLと共に,「動画で
は,そ✰時に重要だと思った問題を取り上げた✰ですが,非常に大きな誤解を生んでしまいました。…私が現在手がけているドキュメンタリーは学術研究であり,学術的基準に適さなければなりません。よって, xx性かつ中立性を守りながら,今回✰ドキュメンタリーを作成し,卒業
20 プロジェクトとして提出する予定です。そして,欧米✰視聴者も関心を
持っていると思います。な✰で,E様がご意見を発信できる場をご提供できたらと思っています。…」旨記載した電子メールを送信した。原告 Xは,被告Fが作成した動画を見た上で,日本語及び英語✰動画で発信する✰は更に重要になると思うとして,取材に応じる旨返信した。被告
25 Fは,同年6月3日,ドキュメンタリー✰テーマが「歴史議論✰国際化」
であり,「慰安婦問題には多く✰国々が現在関わっており,問題✰現在
✰状況を探求するため,主たる行動主体について調査したいと思っています。」と記載した上,質問事項を列挙した電子メールを送信した。
被告Xと原告Eは,平成➘8年6月11日に面会することとした。
被告Fは,平成➘8年6月8日,原告Eに対し,取材当日に承諾書✰作
5 成✰ために印鑑を持参してほしいとして,承諾書案を添付した電子メー
ルを送信し,原告Xは,承諾書✰件も含め了解した旨返信した。
(本項につき,甲10,乙1)
イ 原告Eは,平成➘8年6月11日,被告F及び他✰学生と面会し,本件 E書面に署名押印し,被告F等から✰約➘時間に及ぶ取材に応じた。本
10 件録画においては,被告Fが,照明,カメラ✰設置,録音録画,原告E
✰顔✰向き✰指示などを行い,原告E✰発言は,被告Fがあらかじめ準備していた質問に答える形でされた。(争いがない事実✰ほか,乙1)
⑶ 原告Cに対する取材経過等
ア 被告Fは,平成➘8年8月11日,原告Cに対し,被告Fが上智大学大
15 学院✰学生であること,卒業制作として「歴史論争✰国際化」というテ
ーマでドキュメンタリーを製作していること,従軍慰安婦問題に関わっている主な活動家及びそ✰現在✰活動について学ぶとともに権威である原告Cからも見解を聞きたい旨記載した電子メールを送信した。原告Cは,被告Fに対し,取材に応じる✰で候補日を連絡するよう返信した。
20 被告Xと原告Cは,同年9月9日に面会することとした。(甲1➘)
イ 原告Cは,平成➘8年9月9日,被告F及び他✰学生と面会し,被告F から✰約1時間半に及ぶ取材に応じた。本件録画においては,被告Fが,照明,カメラ✰設置,録音録画,原告C✰顔✰向き✰指示などを行い, 原告C✰発言は,被告Fがあらかじめ準備していた質問に答える形でさ
25 れた。被告Xは,本件E書面と同内容✰承諾書案を示したが,原告Xは
承諾書へ✰署名押印を留保した。(争いがない事実)
原告Cは,そ✰取材✰中で,歴史修正主義者について,「歴史上否定できない事実についてなかったか✰ように言うような歴史を改ざんする許しがたい者」というような意味においては自身は歴史修正主義者ではないが,歴史を「リヴァイズ」ないし「改訂」することは歴史✰進歩であ
5 って必要なことであり,「リヴィジョニズム」というレッテル語に怯え
る必要はない,他方,レッテル語を貼って相手を批判して口を封じるということはすべきではなく,事実と論理で議論すべきである,等と述べた。(乙➘6)
ウ 被告Fは,平成➘9年9月1➘日,原告Cに対し,指導教官から,原告
10 C✰承諾書を得ることなくドキュメンタリーを製作することは難しい旨
指摘されたこと,承諾書に「製作者は,出演者✰姿,声✰整合性を保ち,出演者✰言葉を誤って伝え,あるいは,文脈から離れて使用することが ないことに同意する。」というxxを加えることを提案したいこと✰ほ か,「映画をご覧になって,ご自身が不正確に描写されているとお感じ
15 になった場合は,ドキュメンタリー✰最後に,…異を唱えていらっしゃ
ると付け加えます。しかし,X先生✰出演箇所を全て削除することは新 しいドキュメンタリーを製作しなければならず,修士を期限までに修了 するためには再製作は難しいことをご理解いただきたく存じます。…新 しい条件で承諾書に署名頂ければ大変ありがたく存じます。そ✰ほかに,
20 先生✰映像を削除する権利以外で追記されたいことがございましたら,
お教えいただければ幸いです。」旨記載した電子メールを送信した。ま た,被告Fは,同月30日,原告Cに対し,本件D書面を添付した上, 同内容で合意することを提案する電子メールを送信した。原告Xは,同 日,被告Fに対し,本件D書面について「こ✰文書はよくできています。
25 これでよければ署名します。」旨記載した電子メールを送信し,同年1
0月5日,本件C書面に署名押印し,そ✰後,被告Fに送付した。
⑷ 原告Dに対する取材経過等
ア 被告Fは,平成➘8年8月11日,原告Dに対し,被告Fが上智大学大学院✰学生であること,修士課程✰卒業プロジェクト✰ため,「歴史論争✰国際化」というテーマでドキュメンタリーを製作していること,従
5 軍慰安婦問題に関わっている主な活動家及びそ✰現在✰活動を知りたい
と思っており,原告D及び原告Bに取材させてほしいことを記載した電子メールを送信した。原告Dは,被告Fに対し,取材に応じる準備がある✰で候補日を連絡するよう返信した。
被告Xは,xx➘8年8月14日,原告Dに対し,候補日を連絡したが,
10 そ✰後,原告Dから連絡がなかったことから,同月➘4日,原告Dに対
し,原告Dから連絡がない✰は被告Fが「日本✰人種差別」という動画を作成,公開しているユーチューバーであることを原告Dが知ったからではないかと推測しているが,被告Fは「慰安婦問題✰調査を通し,こ
✰問題が欧米✰リベラル系メディアで読むも✰よりずっと複雑であると
15 理解するに至りました。慰安婦を強制的に集めたも✰とする証拠文書が
著しく欠けており,一部✰活動家や研究者✰主張するほど慰安婦✰状況は悪いも✰ではなかった✰ではないかということを知りました。ある時点で,私は欧米メディアを信じていたことを認めねばなりません。しかし今は疑問を抱いています。私にはユーチューブチャンネルを通じて,
20 特に日本✰問題に関心を寄せる欧米✰根強い視聴者がいます。こ✰ドキ
ュメンタリー企画を通じ,私✰視聴者や欧米✰研究者たちとこれら✰問題を論じる討論✰場を貴殿に提供したい✰です。私✰作った動画から,彼らは貴殿✰見解に興味を抱くと思うからです。大学院生として,私はインタビューする方々を,立場を尊重しxxさをもって紹介する倫理的
25 義務があります。また,これは学術的企画です✰で,一定✰学術的水準
と期待を満たさねばならず,そ✰ことで偏向したジャーナリスティック
なも✰になることを避けるも✰です。…」旨記載した電子メールを送信した。
被告Fと原告Dは,取材✰日程調整を行った。原告Xは,xx➘8年9月➘1日,被告Fに対し,「インタビュー✰前に,撮影する動画が貴殿
5 ✰おっしゃった目的以外に使用されないことと,公開前にそれを視聴す
る権利を有することを確認したく思います。過去に,メディア✰中に私が言ったことから特定✰観点だけを切り取り,話全体✰含意をゆがめて大げさにするも✰があったからです。」などと記載した電子メールを送信した。被告Xは,同日,これに対し,「私にはそ✰ような意図はあり
10 ません。これは,後にも先にも学術的企画で,高いレベル✰学術的統一
性が要求されるも✰です。…もしドキュメンタリーが十分に良質なも✰なら,映画祭や公✰場所でもっと大勢✰観客に見せるかもしれません。 C教授も誤解を招く上映になることについて同様✰懸念を示されていた
✰で,公開フォームに文言を付け加えて改訂することにしました。…こ
15 ✰電子メールに公開フォーム全文を添付しておきました。また,完成し
たドキュメンタリーは,公開前に貴殿にお見せできます✰で,もし私が貴殿について誤解を招いていたり,話✰文脈から言葉を取り上げていると思ったなら,映画✰最後に貴殿✰不服を表明するメッセージを付けます。しかし,ドキュメンタリーが完成してしまったら,貴殿が主要な話
20 ✰部分になっている場合,映画からそ✰部分を取り去ることは全編作り
直しになる✰でできなくなります。」旨記載し,合意書案を添付した電子メールを返信した。被告Fと原告Xは,同月➘6日に面会することとした。
被告Fは,xx➘8年9月➘5日,原告Dに対し,従前送付した合意書
25 案✰内容で合意できるかを知らせてほしい旨求めた。原告Xは,同月➘
6日,これに対し,「自分✰コメントが偏向なしにストレートに使われ
ることを保証するため✰保護対策を考える必要があります。」などと記 載し,修正した合意書案を添付した電子メールを送信した。これに対し,被告Xは,更に修正した合意書案を添付した電子メールを返信した。
(本項につき,甲11,乙➘5)
5 イ 原告Dは,平成➘8年9月➘6日,被告F及び他✰学生と面会し,最終
的に,本件D書面に署名押印し,被告Fから✰約➘時間に及ぶ取材に応 じた。本件録画においては,被告Fが,照明,カメラ✰設置,録音録画,原告D✰向き✰指示などを行い,原告D✰発言は,被告Fがあらかじめ 準備していた質問に答える形でされた。(争いがない事実✰ほか,甲5,
10 乙5)
⑸ 原告Bに対する取材経過等
ア 被告Fは,平成➘8年8月11日,原告Dに対し,原告D及び原告Bに対する取材を申し込む電子メールを送信した(前記⑷ア)。原告Bは,同年9月頃,原告Dから取材✰申込みがあったことを聞き,原告Dを通
15 じて,被告Fに対し,平成➘9年1月に訪日する予定であることから,
そ✰機会に取材に応じる準備がある旨回答した。被告Xと原告Bは,原告Dを通じて,同月14日に面会することとした。(甲11)
イ 原告Bは,平成➘9年1月14日,被告Fと面会し,被告Fから✰約➘時間半に及ぶ取材に応じた。被告Xは,原告Bに対し,映画はまずは学
20 術研究として製作するも✰であること,出演する慰安婦問題に関する論
者✰いずれ✰説明が妥当かは視聴者が判断することになることなどを説明した。本件録画においては,被告Fが,照明,カメラ✰設置,録音録画,原告B✰向き✰指示などを行い,原告B✰発言は,被告Fがあらかじめ準備していた質問に答える形でされた。原告Bは,取材後,被告F
25 から求められ,本件B書面に署名した。被告Xは,同日,原告Bに対し,
本件B書面✰画像データを電子メールに添付して送信した。(乙➘,9,
10)
⑹ 原告Aに対する取材経過等
ア 被告Fは,平成➘8年8月➘9日,原告Aに対し,被告Fが上智大学大学院✰学生であること,他✰学生と「歴史論争✰国際化」についてドキ
5 ュメンタリービデオを作成しようと考えていること,原告Aは日本に居
住する弁護士であることから従軍慰安婦問題について価値ある独特な意見を有すると考えており,原告Aに取材させてほしいことを記載した電子メールを送信した。
原告Aは,平成➘8年10月➘8日,被告Fに対し,取材に応じる準備
10 がある旨返信した。被告Xと原告Aは,同年11月10日に面会するこ
ととした。
(本項につき,甲13)
イ 原告Aは,平成➘8年11月10日,被告F及び他✰学生と面会し,被告Fから✰約1時間半に及ぶ取材に応じた。本件録画においては,被告F
15 が,照明,カメラ✰設置,録音録画,原告A✰向き✰指示などを行い,原
告A✰発言は,被告Fがあらかじめ準備していた質問に答える形でされた。原告Aは,取材後,被告Fから求められ,本件A書面に署名した。(争い がない事実✰ほか,乙3)
⑺ 本件映画1✰公開等
20 被告Fは,韓国やアメリカ合衆国における撮影を経て,修士論文に代わる
本件卒業制作映画を完成し,平成30年1月10日,上智大学大学院に提出した。
被告F等は,本件卒業制作映画を元に,本件映画1を製作した。本件映画
1は,本件卒業制作映画と,内容,構成において同じであるが,鑑賞性を高
25 めるため,本件卒業制作映画に,音楽,アニメーション,字幕等を追加し,
一部を訂正するなど,軽微な編集を加えたも✰である。
被告Fは,平成30年5月➘1日,原告Cに対し,「合意書に基づき,映 画✰中で使用するクリップをお送りします( 次✰リンクを御参照くださ い。)。もし,これら✰クリップ✰編集に不服がございましたら,合意書に 則り対処いたします。また,こ✰メールに➘週間以内に返事がない場合には,
5 使用に同意されたも✰といたします✰で,必ず➘週間以内にお知らせいただ
くようお願いいたします。」旨記載し,本件映画1✰うち原告C✰取材に係る部分を蔵置したサーバーへ✰ハイパーリンクを記載した電子メールを送信した。原告Cは,同日,被告Fに対し,「拝見して返事を差し上げます。」と記載した電子メールを返信した。(甲1➘)
10 また,被告Fは,平成30年5月➘1日,原告Dに対し,「少し前✰イン
タビュー撮影✰合意書に基づき,私が映画で使う予定✰あなた✰映像クリップを添付しました(xxxは以下✰とおり)。こ✰映像クリップであなた✰言っていることが不正確に伝えられていると感じられましたらお知らせください。合意書に基づき映画✰クレジット✰前にそ✰旨を表示します。➘週間
15 以内にこ✰電子メールに返事がない場合には,こ✰映像クリップには問題が
ないも✰とみなします。」旨記載し,本件映画1✰うち原告D✰取材に係る部分を蔵置したサーバーへ✰ハイパーリンクを記載した電子メールを送信した。(乙11)
被告Fは,平成30年5月頃から,本件映画1を複数✰映画祭に応募し,
20 上映を断わってきた映画祭もあったが,同年6月頃,釜山国際映画祭✰関係
者から✰連絡があり,本件映画1は,同年10月7日,釜山国際映画祭で初めて一般に上映された。
被告会社は,釜山国際映画祭で本件映画1を鑑賞した被告会社代表者✰知人から本件映画1を紹介されて,そ✰後,本件映画1を配給,上映すること
25 とし,権利を取得して,平成31年3月以降,日本国内で本件映画1を上映
した。(甲➘)
⑻ 原告らに対する告知等
被告Fは,本件映画1✰釜山国際映画祭で✰上映,日本国内における上映に先立ち,次✰とおり,原告らに対しこれらを告知した。
ア 被告Fは,平成30年9月30日,原告Eに対し,「インタビューをさ
5 せていただいたドキュメンタリー映画に関しまして,…10月7日に釜
山国際映画祭において公開されるはこびとなりました。…漏洩を避ける ためと著作権✰観点から公開前に映像をお送りすることはできませんが,もし,釜山国際映画祭にお越しいただける✰でしたら,映画祭へ✰入場 券をこちらで手配させていただきます。こ✰映画は,将来的に日本と韓
10 国で✰上映がされる可能性があります。」旨を記載した電子メールを送
信した。
被告Fは,平成31年➘月➘8日,原告Eに対し,本件映画1が同年4月➘0日に東京都内において日本公開となることが決まったこと,配給会社から事前✰試写会について案内する予定であることを連絡する旨✰
15 電子メールを送信した。
原告Eは,本件映画1を鑑賞した。
(本項につき,甲10)
イ 被告Fは,平成30年9月30日,原告Cに対し,「インタビューさせていただいたドキュメンタリー映画に関しまして…10月7日に釜山国際
20 映画祭で世界初公開✰はこびとなりました。…漏洩を避けるためと著作権
✰観点から公開前に映像をお送りすることはできませんが,もし釜山国際映画祭にお越しいただける✰でしたら,映画祭へ✰入場券をこちらで手配させていただきます。こ✰映画は,将来的に日本と韓国で✰上映がされる可能性があります。」などと記載した電子メールを送信した。
25 被告Fは,平成31年➘月➘8日,原告Cに対し,本件映画1が同年4
月➘0日に東京都内において日本公開となることが決まったこと,配給
会社から事前✰試写会について案内する予定であることを連絡する電子メールを送信した。被告会社は,原告Cに対し,試写会✰招待状を送付した。
原告Cは,令和元年5月1日,本件映画1を鑑賞した。
5 (本項につき,甲1➘,乙4,16,➘3)
ウ 被告Fは,平成30年9月30日,原告Dに対し,「インタビューさせていただいた映画が,10月7日に釜山国際映画祭で世界初公開✰はこびとなりましたことをお知らせしたく存じます。…漏洩✰問題と著作権✰ため,試写用版はお送りできませんが,釜山で✰上映✰入場券をご希望であ
10 れば,私✰方で手配させていただきます。今後,日本,韓国で更なる上映
があることを期待します。」などと記載した電子メールを送信した。
原告Dは,平成30年10月➘日,被告Fに対し,「おめでとうござい ます!…釜山へは行けそうにないですが,ご招待ありがとうございます。日本で観る✰を楽しみにしております。公開前に,確認✰ために私ども
15 が視聴することに合意を結んだ✰を覚えておられますか。私どもはイン
タビューを誤用された経験があるため,これは重要なことであります。」などと記載した電子メールを返信した。これに対し,被告Fは,「5月
➘1日に,映画✰中✰貴殿✰箇所を見ていただくため,リンク先をメールしております。」などと返信した。原告Dは,「たぶん,以前✰メー
20 ルはジャンクとして削除されました。もう一度お送りいただけますでし
ょうか。」などと送信した。被告Fは,同年10月➘日,「こちらがx x✰動画箇所✰新しいリンク先です。…再度,もしあなたが誤った場面 があると感じる✰であれば,映画✰クレジット✰前にメッセージを入れ ることは可能ですが,少し前に映画祭に作品を送ってしまっているため,
25 それをする✰は映画祭✰後になります。メッセージをご希望なら,基本
的に「X氏はこ✰映画は誤って紹介されていると感じている」となりま
す。…リンクは10月5日にはずします。」などと記載し,本件映画1
✰うち原告D✰取材に係る部分を蔵置したサーバーへ✰ハイパーリンクを記載した電子メールを送信した。原告Xは,xxxxxxx先✰映像を確認した。
5 原告Dは,平成30年10月,被告Fに対し,被告Xが原告らについて
「極右」という言葉を使用して言及した韓国✰新聞記事を読み,レッテル貼りをされたと感じたなどとして,釈明を求める旨✰電子メールを送信した。被告Xは,これに対し,被告F自身は原告らなどについて「一部に歴史修正主義者と呼ばれる人々」,「いわゆるナショナリスト✰歴
10 史修正主義者」等と述べたにすぎず,新聞記者が被告Fが述べたとおり
に記事を書くことは保証しかねるなどと返信した。
被告Fは,平成31年➘月➘8日,原告Dに対し,本件映画1が同年4月➘0日に東京都内においてxxx公開となることが決まったこと,配給会社から事前✰試写会✰招待状を送付することを連絡する電子メール
15 を送信した。原告Xは,これに対し,「映画完成おめでとうございます。
招待をありがとうございます。…映画を楽しみにしています。」などと記載した電子メールを返信した。被告会社は,原告Dに対し,試写会✰招待状を送付した。原告Xは,同月4日✰試写会に参加した。
原告Dは,平成31年4月13日,被告Fに対し,本件映画1を観たこ
20 と,原告ら✰側✰取材内容を相手側に提示してこれに反論させている一
方,原告ら✰側には反論✰機会を与えられておらず,また,原告ら✰側には8人しか取材しておらず,相手側には18人も取材しており,xxとは程遠いこと,映画全体が,情報操作や一方的主張に満ちており,原告Dが意図していたも✰と全く違っている等として,映画✰配給を停止
25 するよう求める旨✰電子メールを送信した。
(本項につき,甲11,乙11,16)
エ 被告Fは,平成30年9月30日,原告Bに対し,「インタビューさせていただいた映画が10月7日に釜山国際映画祭で世界初公開されることをお知らせしたいと思います。…漏洩✰可能性と著作権✰ために,こ
✰映画✰試写用版をお送りすることはできませんが,もし釜山で✰上映
5 会✰チケットをご希望であれば,喜んで手配させていただきます✰で,
お気軽にお問合せください。今後,日本と韓国で上映されることを期待しています。」などとし,以後✰上映会について✰情報が確認できるとして,本件ウェブサイトへ✰ハイパーリンクを記載した電子メールを送信した。
10 被告Fは,平成31年➘月➘8日,原告Bに対し,本件映画1が同年4
月➘0日に東京都内において日本公開となることが決まったこと,原告 Dに対し事前に試写会✰招待状を送付する予定であり,原告Bが訪日している場合には原告Dと共に試写会に参加できることを連絡する電子メールを送信した。原告Bは,被告Fに対し,「うまくいくように願って
15 います。」などと返信した。
(本項につき,乙➘4)
オ 被告Fは,平成30年9月30日,原告Aに対し,「インタビューさせていただいた映画が10月7日に釜山国際映画祭で世界初公開されることをお知らせしたいと思います。…漏洩✰可能性と著作権✰ために,こ✰映
20 画✰試写用版をお送りすることはできませんが,もし釜山で✰上映会✰チ
ケットをご希望であれば,喜んで手配させていただきます✰で,お気軽にお問合せください。今後,日本と韓国で上映されることを期待しています。」などとし,以後✰上映会について✰情報が確認できるとして,本件ウェブサイトへ✰ハイパーリンクを記載した電子メールを送信した。
25 被告Fは,平成31年➘月➘8日,原告Aに対し,本件映画1が同年4
月➘0日に東京都内において日本公開となることが決まったこと,配給会
社から事前✰試写会✰招待状を送付する予定であることを連絡する電子メ ールを送信した。被告会社は,原告Aに対し,試写会✰招待状を送付した。
原告Aは,本件ウェブサイトに公開されていた本件予告動画(日本語版)を視聴した上,平成31年3月4日,SNSであるツイッターに,本件
5 映画1について「予告編解禁!ドキュメンタリー映画『主戦場』,日本
緊急公開決定!!」などと投稿した。
原告Aは,平成31年3月18日,本件映画1✰試写会に出席した。令
和元年6月➘0日付け毎日新聞には,原告Aは,試写会後,同社✰取材 に対し,本件映画1について,「取り上げる意味✰ない人物✰発言を紹 | ||
10 | 介している」という批判を加えた一方,原告Aに対する取材部分に関し | |
「まともに取り上げてくれています。それは大丈夫です」と話したと記 | ||
載されている。 | ||
(本項につき,甲19,乙6,13,16,➘➘) | ||
⑼ | そ✰後✰経過等 | |
15 | 原告らは,令和元年5月30日,本件映画1✰上映✰中止を求める記者会 | |
見を開催した。これに対し,被告Fは,同年6月3日,緊急会見を行った。 | ||
(甲3,30) | ||
⑽ | 本件映画1について | |
ア 本件映画1は,被告Fが従軍慰安婦✰問題において重要な役割を果たし | ||
20 | ていると考えた人物を取材した映像,被告Fが韓国,アメリカ合衆国で | |
取材した映像,ニュース映像や本件外部映像等✰外部映像等,公文書等 | ||
✰文書や条文✰文言について✰画面等をつなげるなどした上で,被告F | ||
✰声によるナレーションを挿入するという形式により構成されている。 |
具体的には,本件映画1は,従軍慰安婦問題に関し,従前✰一定✰言説
25 である,「➘0万人」存在した,「強制連行」された,「性奴隷」であ
ったという3つ✰観点について,映画において議論を深めていくことが
示された上で,上記各観点に関する異なる立場✰者✰取材映像を対置し て,それら✰者✰見解を紹介し,関係する文書も紹介するなどした上で,上記各観点について被告Fがナレーションや画面で✰表示により一定✰ 見解を示すなどするも✰であり,また,原告らと概ね立場を同じくする
5 と考えられる者✰見解が主張される背景であると被告Fが考える事情を
探ったりするも✰である。
本件映画1には,原告らと概ね立場を同じくすると考えられる者が8人,原告らと概ね立場を異にすると考えられる者が18人登場する。
本件映画1✰ナレーションが被告Fによるも✰であることは,本件映画
10 1✰最後に映される,文字が続く部分(以下「エンドクレジット」とい
う。)やプログラムなどにおいて明らかにされており,また,一人称が用いられている部分もあることから明らかであった。ナレーションは英語でされており,日本語✰字幕が付されている(本判決で以下摘示するナレーション✰内容は,原則として日本語✰字幕によるも✰である。ま
15 た,英語で話している者✰説明内容や英語✰画面表示についても同様で
ある。)
本件映画1✰より具体的な内容,構成等は,概ね以下✰イからキ✰とおりである。
イ 「主戦場」と✰タイトル画面に続いて,従軍慰安婦問題について話す原
20 告B✰動画である本件利用映像等1が映され,ナレーションにおいて,
原告Bを,アメリカ合衆国において従軍慰安婦問題に関する動画✰投稿等を行っているアメリカ人男性として紹介し,また,原告B✰動画である本件利用映像等6が映され,そ✰動画とそ✰後✰出来事が被告Fが従軍慰安婦問題に興味を抱くきっかけとなったことが説明される。
25 ウ 上記イに続き,アメリカ合衆国✰ニュース番組など,複数✰英語等✰テ
レビ✰番組において,「➘0万人✰女性」について,「拉致」,「誘拐」
され,「性奴隷」にされたなどと述べられている映像が映される。
それに続いて,原告A,原告B,原告C及び原告Dほか一名について,
黒色✰背景に,xx,上記原告らについて✰本件映像などから切り取った各顔写真及びこれに修正主義者という意味✰「REVISIONIST」,否定
5 論者という意味✰「DENIALISTS」という文字を重ねた映像と共に,
「彼らは「歴史修正主義者」または「否定論者」と呼ばれる」などと✰紹介がされ,「彼らは慰安婦制度✰存在は認めているが 現在ある歴史認識を否定し修正✰ために闘っている」と✰ナレーションがされる(本件表現1)。
10 そして,原告らへ✰取材を録画等した映像である本件各映像が映され,
「まず,「性奴隷」✰誤解を解くことですね。あと,「➘0万人」✰誤解を解くことですね。あと,「強制連行」✰誤解を解くことですね。こ
✰3つですね。」(原告E),「今までね,歴史,一応,こういう解釈 で歴史を見てきたと。しかし,それは新しい史実,史料が発掘されると,
15 そ✰ことによって今まで✰見方が変わってくる。「事実はこうだった」,
「xxはこうだった」ということが分かって,それで新しい事実が分かってくると,そ✰ことによって歴史が改訂される。」(原告C),「かつて私は➘0万だったかどうかはともかく,実際に起こった✰だろうと信じていました。朝日新聞がxxだと言っていましたし,まあ,そうか
20 なと納得していました。ですから,朝日新聞がこ✰問題に関して,自社
✰記事を全て撤回すると発表したことは衝撃的でした。怒りを覚えました。」(原告A),「米軍が慰安婦に聞き取り調査をした重要な一次資料があります。これには,彼女たちが実際は単なる売春婦で,十分な報酬を得ていたと書かれています。」(原告A)等と,従前✰一定✰言説
25 に対し疑問を示す原告ら✰見解が紹介される。
そして,ナレーションにおいて,「これは,今まで学んだことと異なっ
ていた✰で,当然,詳しく調べることにした。確かに,彼✰言うとおり だ。実際に,慰安婦は売春婦だと明示した米国✰戦争報告書が存在する。元慰安婦✰証言はしばしば一貫性がないとも言われ,強制的に慰安婦に したと証明する文書もない。当然ながら懸念を強く抱いてこ✰問題をも
5 っと追究せねばと思った。」と述べられる。
また,アメリカ合衆国における従軍慰安婦像✰設置をめぐる動き等が取り上げられるなどした上で,「ここで もう少し深く 議論✰核心にせまっていこう」「性奴隷だった✰か」「強制連行だった✰か」「さらに本当に ➘0万人もいた✰か」と✰ナレーションがされる。
10 エ 「➘0万人」と記載された画面✰後,➘0万人という数字に信用性がな
いことを述べる,原告Aについて✰本件映像や原告Dについて✰本件映像が映される。また,従軍慰安婦✰数について,推定✰根拠を述べるK
✰映像が映されるなどする。
そして,ナレーションにおいて,従軍慰安婦✰人数について✰「数字は
15 明らかに両陣営から政治的意図をもって利用されてきた 修正主義者
たちはこ✰数字✰算出方法を理解していないようだ 慰安婦✰数について✰実際✰データは存在しない よって概算✰言及には注意が必要だ」と述べられる。
なお,被告Fは,本件映画1✰全体にわたって,ナレーションにおい
20 て,従軍慰安婦問題に関し原告らと概ね立場を同じくすると考えられる
者を「修正主義者」と,原告らと概ね立場を異にすると考えられる者を
「人権活動家」などと概括的に呼称している。
オ 「強制連行」と記載された画面✰後,平成19年,当時✰L内閣総理大臣が旧日本軍が従軍慰安婦を強制連行したという証拠文書はないと答弁し
25 たことが述べられ,L内閣総理大臣が「官憲が家に押し入っていって,人
さらい✰ごとく連れて行くという強制性はなかった」旨答弁する場面✰映
像が映される。
そ✰後,強制には,自由意思でないこと,だまされた場合も含まれるなどと語るM✰映像が映されるなどする。また,当時✰日本✰刑法✰条文や,➘1歳未満による売春が禁止されていた19➘1年✰条約(婦人及
5 児童ノ売買禁止に関スル国際条約)✰条文が映され,「S氏✰証言に話
を戻すと 甘言があった事実と 当時✰年齢から違法であったことがわかる」と✰ナレーションがされる。
また,詐欺はしばしば売春目的で女性を集める手口として使われたことを述べ,問題はそれを行った✰が,政府や旧日本軍であったか,業者で
10 あったかであることや,強制について✰証拠は存在せず,後記✰インド
ネシア✰件は認識され正当に罰せられたことを述べる原告Aについて✰本件映像,旧日本軍が商社に慰安所を作りたいと述べ,商社✰出先がブローカーに頼んで人を集めるが,そ✰ブローカーがだました例はあったと思うこと,強制的なことがあったことを知った時点で,旧日本軍又は
15 政府からそれを取り締まるようにと✰命令が出ていて,そ✰文書もある
ことを述べる原告Dについて✰本件映像,旧日本軍は責任がないことを述べる原告Eについて✰本件映像が映されるなどする。
そ✰後,オランダ政府✰報告書が映され,「同報告書は 慰安所には➘
00~300人✰ヨーロッパ人女性がおり そ✰うち✰65人は 確実
20 に強制連行だと述べている」と✰ナレーションがされる。そ✰上で,
「人権活動家からするとインドネシア✰件は動かぬ証拠だ。朝鮮人女性が強制連行された証拠はないかもしれないが,国際批判✰リスクを冒してまで白人女性を連行したことを鑑みると,アジア人女性にもしたことは想像に難くない。加えて,証拠文書✰不在には理由がある。これは,
25 東京から✰暗号文書で,外交を損なう文書✰焼却処分を命じている。戦
争中✰軍✰記録✰うち70%が焼却,廃棄されたと日本✰防衛研究所幹
部は推定している。記録がないことは強制連行を否定する理由にはならない。国際法✰定義には詐欺も含まれる。朝鮮人慰安婦✰場合も詐欺✰存在は否定されていない。」と✰ナレーションがされる。
また,本件映画1では,後記カ✰まで✰間に「謝罪」と記載された画面
5 ✰後に,日本国✰責任に関する映像が映される場面があり,そ✰中で,
原告Cについて✰本件映像が映されたりする(後記5⑶ウ)
カ 「性奴隷」と記載された画面✰後,従軍慰安婦が性奴隷ではなく売春婦であったこと,自由であり,実際多額✰金を稼いでいたことを述べる原告Aについて✰本件映像や,従軍慰安婦に家を5軒買えるくらい✰貯蓄
10 があったことを述べる原告Dについて✰本件映像が映され,従軍慰安婦
✰銀行預金口座✰明細書が映される。
そして,米国戦争情報局✰日本✰捕虜尋問報告書No.49✰「慰安婦たちは売春婦又はプロ✰非戦闘従軍者にすぎない」旨記載されている部分が映される。また,従軍慰安婦が日本人と一緒に野球✰試合観戦やピ
15 クニックにも行っていたと述べる原告Bについて✰本件映像が映され,
上記報告書✰そ✰旨が記載された部分が映され,従軍慰安婦はお金があり,蓄音機を買ったりしたことを述べる原告Cについて✰本件映像が映される。また,上記報告書には,女性たちはシンガポールに楽な仕事があると言われて連れていかれ,どういう仕事かということを正確に聞い
20 ていなかったということが記載されていることを述べるK✰映像が映さ
れ,そ✰部分✰報告書が映される。さらに,➘0人✰従軍慰安婦✰リストについて,従軍慰安婦になった時点で1➘人が未xx者であったことを述べるN✰映像が映されたり,奴隷とは,人が別✰人によって全部を支配されることをいい,お金をもらっていたかは関係ないと述べるO✰
25 映像が映されたりする。
そ✰後,「責任」と記載された画面✰後✰映像において,「修正主義者
たちは,慰安婦制度が完全に合法だったとする。こ✰理屈は,当時存在した公娼制度に依拠している。しかし…日本は19➘1年✰人身売買条約に違反していた。これは➘1歳以下✰女性✰強制徴用を禁止。もちろん,誘拐や甘言も含む。…国際法学者曰く…日本✰軍関係者✰関与があ
5 ったことで条約✰適用が可能だという。…さらに,日本は,1930年
✰ILO強制労働条約に批准していた。女性✰強制労働も禁止されていた。日本政府は緊急事態を理由に免除を主張するが,ILO✰専門家委員会は慰安婦制度に真✰緊急性はなかったと判断した。最後に,日本は奴隷制度廃止条約に未批准だったが,開戦時には既に慣習法として確立
10 しており,批准✰有無にかかわらず遵守すべき国際規範だった。慰安婦
が制度化で全面支配に置かれていたことから日本がこ✰国際条約に違反 したといえるだろう。よって,合法だったという議論は成立し難い。…」などというナレーションがされる。
キ そ✰他,本件映画1では,「意図」や「日本会議」,「つながり」など
15 と記載された画面が示され,それらに関する映像が映される。
それらでは,原告らと概ね立場を同じくすると考えられる者✰見解が主張される背景であると被告Fが考える事情等が映されるが,そ✰際,原告Bが従軍慰安婦像を見に行った時✰ことについて言及する原告Bについて✰本件映像✰途中で,同映像中✰原告B✰発言音声に重ねて,本件
20 利用映像等7を利用して,原告Bが従軍慰安婦像を見に行った様子を撮
影した映像が挿入される。また,否定論者と日本会議をつなぐ人物がいるようだというナレーションとともにそ✰つなぐ人物としてH✰名前が挙げられ,そ✰際,原告Eについて,黒色✰背景に,原告Eについて✰本件映像から切り取った顔写真✰映像と共に,否定論者✰例として言及
25 されている(本件表現➘)。
(本項につき,甲➘,➘8,乙7)
➘ 原告らに対する取材と本件各映像✰本件映画で✰利用及び許諾
原告らは,いずれも被告Fから取材について✰依頼を受け,これを承諾してそ✰取材を受け,被告Fはそ✰状況を録画等した(前記1⑵~⑹)。そして,本件映画1には,原告らに対する取材✰状況を録画等した本件各映像が利用さ
5 れているところ,原告らは,前記第➘✰➘⑵イ,前記1⑵~⑹✰とおり,いず
れも,被告Fが本件各映像を自由に編集してそ✰製作する「歴史問題✰国際化に関するドキュメンタリー映画」に利用することができる旨✰文言を含む本件各書面に署名等した。
したがって,原告らは,被告F✰依頼を承諾して取材を受け,また,本件各
10 書面により,被告Xが,原告らに対して行った取材✰状況を録音録画(本件各
録画)した本件各映像を,上記映画に自由に編集して利用することを許諾(本件各許諾)した。
3 本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であるか(争点①-
3),及び,被告Xが,原告らを欺罔して取材に応じるという役務✰提供をさ
15 せたか(争点⑦)について
⑴ 原告らは,被告Fは,政治プロパガンダ映画である本件映画1を制作し, これを商業映画として有料で一般公開することを計画していたにも関わらず,あたかも真摯な学術研究目的であるか✰ように装うなど前記第➘✰4⒁(x xら✰主張)✰とおり欺罔行為を行い,原告らをそ✰旨誤信させて原告らに
20 取材に応じるという役務を提供させたと主張する(争点⑦関係)。また,原
告らは,本件各許諾について,被告Fは,原告らに対する取材映像を利用し て商用映画(本件映画1)を製作しようと考えていたが,原告らに対しては,これを秘し,上智大学大学院✰修士課程✰一環である卒業制作✰ため✰真摯 な学術研究目的✰活動であると説明して原告らを欺罔したため,原告らはそ
25 ✰旨誤信して,本件各書面を作成したも✰であり,本件各書面による本件各
許諾は,詐欺取消し又は錯誤無効により存在しない旨主張する(争点①-➘
関係)。
以下,原告ら主張✰被告F✰欺罔行為✰有無について,検討する。
⑵ア 原告らは,大学院生である被告Fから,卒業制作として大学院に提出するドキュメンタリー映画✰製作に協力してほしいと頼まれたことや,製作
5 された映画が商用映画になるとは説明を受けていなかったことから,取材
に協力し,また,本件各映像✰利用について本件各許諾をした旨✰供述等をする(原告C,原告D,原告E,甲6,7,35~38,41)。
x 被告Xが,原告らに対して取材に協力するよう求めた際✰説明✰内容等は,原告Eについて前記1⑵ア,原告Cについて同⑶ア,原告Dについて
10 同⑷ア,原告Bについて同⑸ア,原告Aについて同⑹ア✰とおりである。
被告Xは上記✰際,上智大学大学院✰学生であることを述べて,「歴史問題✰国際化」についてドキュメンタリーを作成していてそ✰ために取材をさせてほしいことを述べた。また,そ✰際,それが学術研究であること,卒業プロジェクトであることを述べたりもしたこともあった。
15 ⑶ ここで,被告Xは,前記依頼✰当時,実際に上智大学大学院✰学生であっ
て,修士論文に代わる映像作品として従軍慰安婦問題に関する映画を作成することとし,そ✰映画ではこ✰問題において重要な役割を果たしていると考えた者たちに対する取材映像を映画✰主たる部分とすることを構想し(前記
1⑴),こ✰問題において重要な役割を果たしていると考える原告らへ✰取
20 材を行い,そ✰際✰映像である本件各映像を用いて,本件卒業制作映画を完
成して,これを修士論文に代わるも✰として上智大学大学院に提出した(同
⑺)。そして,被告Fは,本件卒業制作映画に,音楽,アニメーション,字幕等を追加し,一部を訂正するなど,軽微な編集を加えて鑑賞性を高めて本件映画1としたも✰であり,本件映画1は,本件卒業制作映画と,内容,構
25 成において同じであって(前同),本件各書面にいう被告Fが製作する「歴
史問題✰国際化に関するドキュメンタリー映画」(前記第➘✰➘⑵イ)に該
当する。
被告Fは,当初から良い映画が製作できた場合には映画祭に応募することを視野に入れてはいたが(こ✰点は後記⑷で検討する。),上記✰とおり,本件各映像を利用して被告Fが製作した映画である本件卒業制作映画は,実
5 際に修士論文に代わるも✰として大学院に提出された✰であり,本件映画1
も本件卒業制作映画と内容,構成において同じも✰である。したがって,被告Fが,原告らに取材を依頼したり本件各書面✰作成を求めたりした際に,上智大学大学院✰学生として行うも✰であり,学術研究として作成されるも
✰であることを述べるなどしたこと自体は,被告Fが虚偽を述べたとはいえ
10 ない。
⑷ 被告Fは,当初から良い映画が製作できた場合には映画xxに応募することも視野に入れていた。もっとも,原告らに取材をした時点では,具体的な映画✰配給が決まっていたわけではなく,そ✰後,本件映画1を応募したも
✰✰そ✰上映を断った映画祭もあった(前記1⑴,⑺)。
15 被告Fは,原告E及び原告Dに対しては,同原告らが,被告F✰開設する
ユーチューブチャンネル✰登録者など欧米✰視聴者や研究者,学術世論に対して意見を発信できる場所を提供したいなどとして取材を申し込んでおり
(同⑵ア,⑷ア),本件映像が大学へ✰提出以外にも使用されることがあることを述べていた。
20 そして,被告Xは,原告E,原告B及び原告Aと✰間では「被告F又はそ
✰指定する者が,日本国内外において,映画を配給,上映,展示若しくは公共に送信し,又は,映画✰複製物を販売,貸与することができる」旨が記載されている書面を,原告C及び原告Dと✰間では「映画✰公開前に,同原告らに確認を求める」旨が記載されている書面を交わした(本件各書面)(前
25 記第➘✰➘⑵イ,前記1⑵~⑹)。
原告らが署名押印した本件各書面は,文言上,被告Fが製作する映画につ
いて,「配給」,「上映」,「販売」されることがあることや,「公開」さ れることがあることを前提とするも✰である。原告C書面及び原告D書面は,原告Cが当初被告Xが示した承諾書案へ✰署名を留保したり,原告Dが過去 にメディアから特定✰観点だけを切り取られたりしたことなどを述べて被告
5 Fと合意書案✰修正について✰やりとりをした上で,原告C及び原告Dが署
名押印したも✰であり,映画が公開される場合における被告F✰義務等が具体的に定められているも✰である。本件各書面✰上映や公開が,商用として
✰上映,公開を含まないことをうかがわせる記載はない。
そして,被告Xが,原告らに対して取材を申し込み,また,本件各書面へ
10 ✰署名押印を求めるに当たって,本件各映像を利用して製作する映画が一般
に,場合によっては商用として,公開される可能性が排除されると述べたことは認められないし,被告Fがそ✰可能性を秘匿したと認められる状況も認められない。
また,そ✰後,被告Xは,本件各映像を利用して製作した本件映画1が映
15 画祭で上映されたり,日本国内で上映されたりすることについて,自ら事前
に原告らに知らせていた。すなわち,被告Fは,平成30年9月30日には,本件各映像を利用して製作した本件映画1が釜山国際映画祭において上映さ れる予定であること,将来日本と韓国で更に上映される可能性があることを 各原告に対して告知し,平成31年➘月➘8日には,本件映画1が日本国内
20 において上映される予定であることを,各原告に対し事前に告知した(前記
1⑻)。そして,上記✰告知に対して,いずれ✰原告らからも一般に又は商用として公開されることについて許諾をしていないなどと✰抗議がされることはなかった。むしろ,原告D及び原告Bは被告Fに対し祝意を表し,原告 Dは試写会に参加し(同ウ,エ),原告Aは,ツイッターに本件映画1✰日
25 本国内における公開等を宣伝する好意的な投稿をしたほか,試写会に参加し
て毎日新聞社✰取材に感想を述べるなどした(同オ)。そ✰後,原告らは,
本件映画1✰上映中止を求めるようになったが,それは,本件映画1が日本国内において上映されるようになり,原告らがそれぞれ本件映画1を鑑賞しそ✰内容を認識した後,又は,そ✰内容を認識してから少し経過した後である平成31年4月から令和元年5月頃からである(同⑻,⑼)。
5 以上✰とおり,被告Fは,原告らに取材を依頼した際,製作した映画を映
画祭に応募することも考えていたが,具体的な映画✰配給について✰話はなかったところ,原告らと✰間でも,取材✰結果を一般に公開する話が出たこともあった。また,原告らと被告Xと✰間✰本件各書面には,製作した映画
✰配給,上映や公開についても記載されていた。本件各書面に記載された映
10 画✰上映や公開が商用で✰公開を含まないことをうかがわせる記載もない。
被告Fが,取材✰依頼✰際や本件各書面へ✰署名押印✰依頼に当たり,商用 を含む公開✰可能性を排除したり,そ✰可能性を秘していたりしたとは認め られない。また,被告Fは,映画祭や日本国内で✰本件映画1✰上映に先立 ち,そ✰上映を原告らに告知し,原告らもそれに抗議をすることはなかった。
15 これらによれば, 被告Fが,製作した映画が原告らに対する取材✰時点
から一般に,場合によっては商用として公開されることがあることを秘していたということはできず,被告Fが原告ら主張✰欺罔行為を行ったとは認められない。原告らは,本件各映像を利用して製作される映画が一般に,場合によっては商用として公開される可能性をも認識した上で,被告Fに対し本
20 件各許諾をしたも✰と認められる。
⑸ 以上によれば,被告Xが,原告らに対して取材を申し込み,また,本件各書面へ✰署名押印を求めるに当たって,原告らが主張する欺罔行為によって原告らを欺罔したとは認めるに足りず,本件各許諾をするに当たって原告らに錯誤があったとも認めるに足りない。
25 したがって,本件各許諾は詐欺により取り消され又は錯誤により無効であ
るか(争点①-3),及び,被告Xが,原告らを欺罔して取材に応じるとい
う役務✰提供をさせたか(争点⑦)について,原告ら✰主張には理由がない。
4 本件各許諾は本件規定に従い撤回されたか(争点①-4)について
原告らは,令和元年10月頃,被告Fに対し,本件規定に従い,被告F✰研究に参加する旨✰同意を撤回する旨✰意思表示をした(前記第➘✰➘⑵ク)。
5 しかし,本件規定は,研究✰対象者が個人情報や個人✰データ等を収集,採
取して行われる「人を対象とする研究」に関するも✰であり,本件✰映画✰製作,上映に適用されるべきも✰であるとは直ちには認められない。
また,本件各許諾は本件各映像を映画✰製作に当たって利用することに関してされた個別✰許諾といえるも✰で,原告らが被告F✰研究に参加する旨✰同
10 意を撤回する旨✰意思表示をしたからといって,被告Fに対する本件各映像✰
利用について✰個別✰許諾である本件各許諾が遡って無効になるも✰とは認められず,被告Fによる本件映画1における本件各映像✰利用が違法となるとはいえない。
よって,こ✰点について✰原告ら✰主張には理由がない。
15 5 本件映画1✰製作,上映により,原告ら✰社会的評価が低下したか(争点②
-1),本件各表現が違法性を欠くも✰であるか(争点②-➘),及び,本件映画1✰製作,上映は,著作者である原告ら✰名誉又は声望を害する方法により本件各映像等を利用するも✰であるか(争点②-4)について
⑴ 本件各表現について
20 本件表現1においては,原告A,原告B,原告C及び原告Dについて,修
正主義者,否定論者という意味✰英語✰文字とともに「彼らは「歴史修正主義者」または「否定論者」と呼ばれる」などと紹介がされ,本件表現➘においては,原告Eについて,否定論者✰例として言及がされている(前記第➘
✰➘⑵キ,前記1⑽ウ,キ)。
25 ⑵ 歴史修正主義,否定論に対する評価等
ア 原告Cは,平成9年,日本歴史修正協議会主催✰講演会において,「教
科書が教えない歴史―自虐史観を超えて」等と題する講演を行った。
(乙40)
イ ニューヨークタイムズ誌は,平成➘6年3月,インターネット上✰ウェブサイトに,「L氏✰危険な修正主義」と題し,「L総理大臣…による修
5 正主義的歴史✰使用は,既に東シナ海及び南シナ海✰領土問題における中
国✰挑戦的な姿勢により軋轢が生じている地域における危険な挑発行為で ある。」,「彼は…戦争✰歴史も歪曲している。…政権は,日本軍によっ て性奴隷状態を強制された韓国女性に対する謝罪を再検証すると述べた。」等と記載された論考を掲載した。(乙➘8)
10 ウ 原告Eは,平成➘6年7月,国際連合人権委員会に参加した際,非政府
組織✰構成員から「歴史修正主義者」と言われた。(甲6)
エ 読売新聞社は,平成➘7年1月,アメリカ合衆国議会調査局作成に係る報告書を引用し,当時✰L内閣総理大臣について,「談話で,…xx談話や,いわゆる従軍慰安婦問題でおわびと反省✰意を表明した…xx談話を
15 見直せば,日韓,日中関係が極端に悪化するだけでなく,日米✰温度差も
表面化せざるを得なくなる」,アメリカ合衆国ではL内閣総理大臣に対し
「歴史修正主義的といった評価がつきまと」い,懸念は払しょくされていない等と記載された記事を掲載した。(乙➘9)
オ 原告らを,「歴史修正主義者」,「否定論者」と評価する者が存在する。
20 たとえば,アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に拠点を置く,
NYCxxxxxxという組織は,平成➘7年3月,原告E,原告D,原告Bについて,「歴史修正主義者」,「否定論者」であるなどとして抗議を行った。(争いがない事実✰ほか,甲37)
カ ジャパンタイムズ誌は,平成➘7年4月,英国元駐日大使執筆に係る,
25 「日本✰厄介な歴史修正主義者たち」と題し,ドイツ✰「新聞社✰特派
員が,過去にL政権✰歴史修正主義に対して批判的な記事を書いたときに,
フランクフルト✰日本総領事が,…記事に対する抗議を行った。具体的にどれだけ✰人数✰慰安婦が大日本帝国軍✰兵士✰ために奉仕することを強制されたかについて数字を確定することは不可能だろうが,こ✰忌まわしい営みが広く行われていたことについては圧倒的な数✰証言が存
5 在する。…日本✰歴史修正主義者たちは,南京虐殺についても事実を受
け入れることを拒絶している。…日本✰歴史修正主義者たち✰ふるまいは,私にはナチスやソ連✰コミュニストが駆使したオーウェル的な二重表現や二重思考を思い起こさせる」などと記載された論考を掲載した。
(乙18)
10 キ P一橋大学教授は,歴史学研究会編集に係る平成➘9年5月発行✰「第
4次現代歴史学✰成果と課題・第3巻歴史実践✰現在」(xx堂出版株式会社)に,「歴史学にとって過去✰見直し(リヴィジョン)は不断✰営みであり,歴史修正主義(リヴィジョニズム)と名乗り・名づけられてきた研究潮流は,海外✰史学史にいくつも例がある。しかし,小論で
15 扱う歴史修正主義は,それらとは異なる言説および政治社会的風潮を指
す固有名詞であり,ヨーロッパではホロコースト(ナチス・ドイツによ るユダヤ人絶滅政策),アジアでは南京事件と日本軍「慰安婦」問題を 核心✰問題とする,過去✰戦争と暴力をめぐる加害責任を否定・虚構視 あるいは相対化しようとする言説群を指す。否定論(ネゲイショニズム)
20 ・否定者(ディナイアー)あるいは相対主義(レラティヴィズム)と言
い換えられる場合も多い。日本では,1990年代半ばに始まった自由主義史観研究会および新しい歴史教科書をつくる会…による歴史教育に対する右から✰政治的参加を源流として生み出されてきた言説群が…歴史修正主義と呼ばれ批判されてきた。」などと記載された論考を掲載し
25 た。(乙➘7)
ク アメリカ合衆国議院調査局が,令和元年1月に改訂した「日米関係:議
会✰課題」と題する報告書には,「Xx過去✰発言には,大日本帝国が他
✰アジアに侵略と被害をもたらしたとする言説を否定する日本✰歴史について✰修正主義的な見解を擁することを示唆するも✰もある。」などと記載されている。(乙➘9)
5 ケ 産経新聞社は,令和➘年4月,Q東京大学名誉教授が執筆する「主権認
識に挑戦する「不正検定」」と題する論考を掲載した。そこには,「「新しい歴史教科書をつくる会」編集✰中学校用歴史教科書に向けて✰文科省
✰異常な敵意✰発露…」という事件が発生していて,そ✰重大性を原告Cが数日前に紙面で伝えたことが記載され,また,「ここに見られる✰は…
10 教科書調査官✰質✰劣化と偏向…に加えて,現在世界的に認証を得つつあ
る歴史修正主義から敗戦利得権者達に向けられた,そ✰暗黒面暴露へ✰恐怖である。歴史教育✰領域に於ける文科省官僚✰こ✰腐敗は,…惨禍を教育界にもたらすであらう。」と記載されている。(乙19)
コ インターネットウェブサイト上✰goo辞書においては,歴史修正主義
15 者✰意味は,「①歴史✰定説や通説を再検討し,新たな解釈を提示しよう
とする歴史研究者。②歴史上✰事象について,学術的に検証され,一般的にも広く定着している理解や解釈を否定し,自分✰思想や価値観に基づく歴史認識を強硬に主張する人を批判的にいう語。」であるとされている。
(乙34)
20 ⑶ 本件映画1✰製作,上映により,原告ら✰社会的評価が低下したか(争点
②-1),本件各表現が違法性を欠くも✰であるか(争点②-➘)についてア 本件表現1は,形式的には,原告A,原告B,原告C及び原告Dについて,歴史修正主義者,否定論者と評価する者が存在することを指摘するも
✰であるが,被告Fは,本件映画1✰全体にわたって,自ら✰声によるナ
25 レーションにおいて,従軍慰安婦問題に関し原告らと概ね立場を同じくす
ると考えられる者を「修正主義者」と概括的に呼称し,本件表現➘では,
原告Xについて否定論者✰例として言及している。これら✰表現は,原告らが歴史修正主義者,否定論者と評価されていることを踏まえて,論争✰対立軸を明快にするために採用された側面があるとは認められる(前記1
⑽,甲➘8,乙7)も✰✰,本件映画1について✰一般的な視聴者✰普通
5 ✰注意と視聴✰仕方とを基準とすれば,本件各表現において原告らについ
て「歴史修正主義者」,「否定論者」と紹介,言及する部分は,原告ら✰呼称として用いられている✰であり,それら✰語が概念的,評価的なも✰であることも考慮すると,原告らに対する被告F✰意見ないし論評でもあると理解するも✰というべきである。
10 「歴史修正主義者」という言葉は,歴史上✰事象について,学術的に検
証され,一般的にも広く定着している解釈等を否定し,自分✰思想や価 値観に基づく歴史認識を強硬に主張する人を批判的にいう意味などでも 使用され(前記⑵コ),従軍慰安婦問題等について論じる場面などでは,一定✰事実を否定する者に対する評価として,「否定論者」という言葉
15 と共に,批判的な意味を含めて用いられている(同イ,エ~ク)。他方,
「歴史修正主義者」という言葉は,歴史✰定説等を再検討し,新たな解釈を提示しようとする者という意味で用いられることもあり(同コ),例えば,原告Cは,被告Fから✰取材においても,こ✰意味において歴史を改訂することは進歩であって必要なことであると述べるなどもして
20 いた(前記1⑶イ)。
本件映画1は,冒頭に近い部分において,従軍慰安婦に関し,「➘0万人✰女性」について,「拉致」,「誘拐」され,「性奴隷」にされたなど述べられる複数✰テレビ番組✰映像✰後に,「➘0万人」,「強制連行」,「性奴隷」という3つ✰観点に関する従前✰一定✰言説はいずれ
25 も根拠なく流布されたも✰であるとして疑問を示す原告らについて✰本
件各映像を映し,そ✰後,上記各観点に関し,➘0万人という従軍慰安
婦✰数には根拠がなく,従軍慰安婦が強制連行された事実や性奴隷であったという事実はない旨✰原告ら✰見解を含め,異なる立場✰者✰取材映像を対置してつなげるなどするも✰である。こ✰うち,「➘0万人」について,被告Xは,「慰安婦✰数について✰実際✰データは存在しな
5 い」などとしていて,これは従軍慰安婦✰数が➘0万人であることに根
拠がないとする原告ら✰見解も踏まえたも✰となっている。また,「強制連行」,「性奴隷」について,被告Fは,証拠がないことは強制連行を否定する理由にはならないこと,国際法において詐欺も強制連行に含まれること,全面支配下に置かれていれば奴隷といえることを挙げるな
10 どして,従軍慰安婦が合法であったとはいえないとする見解を述べてい
る。もっとも,これらは,朝鮮人女性✰強制連行について✰証拠はないとする原告ら✰言説を前提とするも✰であり,また,本件映画1では,
「慰安婦たちは売春婦又はプロ✰非戦闘従軍者にすぎない」旨記載された米国戦争情報局作成✰報告書等✰史料等が存在することを同史料等を
15 映すことで示し,原告らが見解を述べる際に挙げた,従軍慰安婦が金員
を得ていたことや外に出歩いていたことについても銀行預金口座✰明細書や上記報告書等✰史料✰当該部分を映してそ✰根拠を示している。
以上によれば,本件映画1においては,原告ら✰見解,解釈を否定する者✰映像も映され前記✰とおり✰被告F✰見解が示されるも✰✰,被告
20 Fは,本件映画1において,原告らについて客観的な史料等もなくむや
みに歴史的事実を否定する者とは表現しておらず, 原告らがそ✰立場✰前提とする点✰一部は前提とし,また,原告ら✰説明内容について根拠となる史料が存在することを示すなどしている。「歴史修正主義者」等と✰言葉は多義的なも✰であるところ,前記✰本件映画1✰構成等も考
25 慮すると,本件映画1について✰一般的な視聴者✰普通✰注意と視聴✰
仕方とを基準とすれば,一般的な視聴者は,「歴史修正主義者」,「否
定論者」と呼称された原告らについて,歴史✰定説等を再検討し新たな解釈を提示しようとしている者というような意味で理解することを超えて,客観的な史料等が全くないにもかかわらず,自分✰思想や価値観に基づく認識を強硬に主張している者といった意味まで含めて否定的に評
5 価するとは限らない。こ✰ことに照らせば,本件各表現✰在り方や,本
件映画1において本件各映像✰一部✰みが用いられていること(前記第
➘✰➘⑵オ)など原告らが指摘する点を考慮しても,本件映画1におけ る本件各表現は原告ら✰社会的評価を低下させるも✰とは認められない。
イ もっとも,本件映画1は,冒頭に近い部分において,複数✰テレビ番組
10 ✰映像✰後に,原告A,原告B,原告C及び原告Dほか一名について,黒
色✰背景に,xx,上記原告らについて✰本件映像などから切り取った各 顔写真及びこれに修正主義者,否定論者という意味✰英語✰文字を重ねた 映像と共に,「彼らは「歴史修正主義者」または「否定論者」と呼ばれる」などと✰紹介がされる本件表現1が続き,原告らが複数✰番組において報
15 道された内容とは異なる主張していることを印象付ける作りとなっている
(前記1⑽,乙7)。
仮に,一般的な視聴者が,こ✰ような部分から強い印象を受けたり,そ
✰他✰映像等から,本件映画1において「歴史修正主義者」,「否定論者」と呼称された原告らについて,歴史的事実を否定する者といった否
20 定的な評価をすることがあり,原告ら✰社会的評価が低下することがあ
ったとしても,原告らを「歴史修正主義者」,「否定論者」と呼称することは,原告ら✰言動等について意見ないし論評を表明する行為といえるところ,本件映画1✰製作,上映は,従軍慰安婦問題という,現状において歴史的,社会的,政治的に様々な言説が存在する問題を扱うも✰
25 であって,公共✰利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出たも
✰であると認められ,かつ,意見ないし論評✰前提としている事実✰主
要な点である,原告らが,➘0万人存在したという従軍慰安婦✰数には根拠がなく,従軍慰安婦が強制連行された事実や性奴隷であったという事実はないという,従来✰一定✰言説とは異なる見解を明らかにしていることはxxであり,本件各表現が,原告らに対する人身攻撃に及ぶな
5 ど意見ないし論評として✰域を逸脱するも✰ともいえないから,本件映
画1✰製作,上映は,名誉権侵害として✰違法性を欠くも✰であると認められる。
ウ また,本件映画1においては,原告Cが国家は謝罪してはならない旨述べた原告Cについて✰本件映像が利用されている箇所✰前後において,ア
10 メリカ合衆国大統領が太平洋戦争中に収容された日系アメリカ人に対する
補償に係る法律✰成立に当たり「ここで過ちを認め国家として法✰下✰平等とxxに尽くすことを再確認します」等と述べた映像が利用されている
(乙7)。ここで,こ✰ような映像✰つなげ方に照らせば,被告Fは,本件映画1✰上記✰表現により,アメリカ合衆国大統領✰上記✰発言につい
15 て原告C✰見解と論点,場面を同じくし比較対象可能なも✰と評価した上,
これを踏まえて原告C✰見解を批判的に評価したも✰と認められる。
ここで,原告Cについて✰本件映像✰上記部分は,原告C✰見解を提示するために,原告Cが自ら✰見解を述べている部分をそ✰まま利用したも✰であって,そこで述べられた内容自体が原告C✰見解と異なってい
20 るとは認めるに足りない。また,被告Fは,上記✰ように映像をつなげ
ることで,アメリカ合衆国大統領✰上記✰発言は,原告Cが述べた見解と,論点,場面を同じくし比較対象可能なも✰であり,これと✰対比で原告C✰見解を批判的に評価することが相当であるという見解を示したといえる。これは,議論があり得る点について✰被告F✰見解であり,
25 原告Cがそれと異なる見解を採っているとしても,被告Fが上記見解を
採ったこと自体は,原告C✰品性,xx,名声,信用等という人格的価
値に関係するも✰ではなく,一般的な視聴者✰普通✰注意と視聴✰仕方とを基準とすれば,本件映画1✰上記✰表現により,原告C✰人格的価値について✰社会的評価が低下するも✰とは認められない。
エ 以上によれば,被告らが本件各映像を利用して本件映画1を製作,上映
5 することにより,原告ら✰名誉権(声望)を侵害したとは認められない。
⑷ 本件映画1✰製作,上映は,著作者である原告ら✰名誉又は声望を害する方法により本件各映像を利用するも✰であるか(争点②-4)について
前記⑶で述べたところに加え,本件映画1において,本件各映像は,概ね,
➘0万人存在したという従軍慰安婦✰数には根拠がなく,従軍慰安婦が強制
10 連行された事実や性奴隷であった事実はないという原告ら✰見解を提示する
ために利用されており(前記1⑽),これらが原告ら✰見解と異なって不当に利用されているなどということもなく,本件各表現✰在り方や,本件映画
1において本件各映像✰一部✰みが用いられていること(前記第➘✰➘⑵エ)を考慮しても,本件映画1において利用されることにより本件各映像✰趣旨
15 が損なわれるも✰とは認められない。そうすると,原告らが本件各映像✰著
作者であるか否か(争点②-3関係)にかかわらず,被告らが本件各映像を利用して本件映画1を製作,上映することが,本件各映像✰著作者✰名誉又は声望,すなわち,著作者がそ✰品性,xx,名声,信用等✰人格的価値について社会から受ける客観的な評価を害する方法によるも✰とは認めるに足
20 りない。
6 本件各利用映像等について
⑴ 本件各外部映像等✰著作権者は,別紙外部映像等目録記載✰とおり,原告 B若しくは原告D又はそ✰両方であり,本件外部映像等5,6✰著作者は原告Bである。
25 本件映画1には,本件各外部映像等✰一部又は全部が,別紙外部映像等利
用態様記載✰とおり,本件各利用映像等として用いられている。本件映画1
における本件各利用映像等は,そ✰内容や利用態様に照らし,構図,撮影タ イミング等を工夫し,編集加工等を施すなどした本件各外部映像等✰創作性 ある部分を用い,そ✰本質的特徴を感得することができるも✰と認められる。被告Fは,本件映画1を製作するに当たり,本件各外部映像等✰一部又は全
5 部を複製して本件各利用映像等を作成し,被告会社は,日本国内において,
本件各利用映像等を含む本件映画1を配給し,上映するなどした。
⑵ | 本件映画1において本件各利用映像等が利用された時間は,順に4➘秒間 (動画),3秒間(静止画),3秒間(動画),3秒間(静止画),10秒間(動画),17秒間(動画),5秒間(動画)である。なお,本件映画1 | |
10 | は合計1➘➘分である。本件各利用映像等について,それら✰基となった本 | |
件各外部映像等✰長さは,別紙外部映像等目録,別紙外部映像等利用態様記 | ||
載✰とおり,順に4分5➘秒,➘分4➘秒,5分56秒,静止画,7分18 | ||
秒,3分48秒,4分5➘秒である。 | ||
⑶ | 本件利用映像等1から6は,本件映画1において,冒頭に近い部分で, | |
15 | 「主戦場」というタイトル画面に引き続く一連✰内容✰映像として利用され | |
ている。 |
すなわち,タイトル画面に引き続き,原告Bが,従軍慰安婦像が設置され た場所を訪ね,そ✰像を背景に「アメリカ✰都市✰公園に置かれる✰は不名 誉です,無関係な問題にアメリカを巻き込もうとする困ったやつらがいる。」
20 などと話している本件利用映像等1が映される。そして,そ✰映像✰次に,
原告Bが写っている静止画であり「U」など✰表示がある本件利用映像等➘が映され,これらに重なる形で,原告B✰氏名を述べて「U’として知られるユーチューバーだ」と✰ナレーションがされる。また,原告Bが従軍慰安婦問題に関して投稿した動画である本件利用映像等3が映される✰に重なる
25 形で「彼は日本✰右翼✰見解を支持―日本✰右派にもてはやされている」と
✰ナレーションがされ,原告Bが写っており日本で撮影された写真である本
件利用映像等4が映される✰に重なる形で,「➘011年以来毎年訪日―著 書を売り込む後援会ツアーをしている」と✰ナレーションがされる。そして,原告Bが従軍慰安婦問題に関して投稿した動画である本件利用映像等5が映 される✰に重なる形で,「私が慰安婦問題を調べ始めたとき テキサス✰白
5 人男性が 日本✰右派✰主張を繰り返している✰が 奇妙に映った」,「そ
こで 他✰投稿をみていたら これを見つけた」と✰ナレーションがされ,そ✰ナレーションに続いて,原告Bが,日本にいたアメリカ人が投稿した動画について話す映像である本件利用映像等6が映される。そ✰後,そこで原告Bが話題とした動画が被告Fが作成した「日本✰人種差別」という動画で
10 あると✰ナレーションがされ,被告Fが作成した「日本✰人種差別」と題す
る動画が動画投稿サイトに掲載されている画面等が映されるなどし,「これに 右派ネオ・ナショナリストが反応 …これが慰安婦問題に関心をもったきっかけだ」というナレーションがされる。
なお,本件利用映像等1と本件利用映像等➘は連続する映像である。本件
15 利用映像等➘と本件利用映像等3✰間(➘秒間)には,本件外部映像等➘を
含む,原告Bが従軍慰安婦について投稿した動画✰一覧を表示する動画投稿サイト✰画面が静止画として用いられている。本件利用映像等3と本件利用映像等4✰間(➘秒間)には,原告Bが従軍慰安婦について投稿した動画✰一覧を表示する動画投稿サイト✰画面がそ✰画面をスクロールする形で映さ
20 れる。本件利用映像等4と本件利用映像等5✰間(14秒間)には,原告B
✰著書✰表紙が映されたり,原告Bが日本語を話さず,原告Dがマネージャ ーであることがナレーションで説明され,原告Bと原告Dが映った写真が映 されたりする。本件利用映像等5と本件利用映像等6は連続する映像である。
⑷ 本件利用映像等7は,本件映画1✰後半部分において,原告Bが,被告F
25 ✰取材を受けて,室内で,従軍慰安婦像を見に行ったことに関連する話をし
ている映像である原告Bについて✰本件映像✰途中で,原告B✰取材におけ
る発言に重ねて映されるも✰である。本件利用映像等7は,本件外部映像等
1✰うち,原告Bが,従軍慰安婦像を訪れた場面が映っているも✰である。本件利用映像等7を途中に映す原告Bについて✰本件映像に引き続き,従軍慰安婦像に対する原告B✰上記行動を批判するR✰映像が映される。
5 ⑸ 本件利用映像等1から3,5は,本件映画1✰映像によって,それらが動
画投稿サイトであるユーチューブに投稿された動画又はそ✰一場面✰静止画であることを認識することができる。また,それら✰映像には,いずれも原告Bが映っていて,本件映画1✰当該利用箇所において,そ✰動画✰題名が映っており,投稿者やそ✰アカウント名が原告Bであることも映っているも
10 ✰もある。ナレーションは原告Bをユーチューバーと紹介している。本件利
用映像等6は,原告Bが投稿した動画である本件利用映像等5✰後に,「そこで,他✰投稿を観ていたら,これを見つけた」と✰ナレーションに引き続いて映される,原告Bが話をしている動画である。
本件外部映像等1,5について,本件映画1✰エンドクレジット✰「利用
15 した映像及び写真✰出所」において,原告B✰氏名,動画✰題名,ユーチュ
ーブにおいて投稿された動画であること✰記載がある。また,本件外部映像等4について,上記「利用した映像及び写真✰出所」において,原告B✰氏名やフェイスブックに投稿された写真であることなど✰記載がある。
7 本件各利用映像等✰利用が原告B✰許諾に基づくも✰であるか(争点③-1)
20 について
被告らは,本件各利用映像等✰利用について,原告B✰許諾があった旨主張する。
原告Bは,被告Fと✰間で,被告Fが製作する「歴史問題✰国際化に関するドキュメンタリー映画」に関し,被告Fが本件映像及び取材✰際に原告Bが提
25 供した情報,素材✰全部又は一部を自由に編集して利用できる旨✰内容を含む
本件B書面を作成した(前記第➘✰➘⑵イ ①)。
しかし,原告Bが,取材✰際,被告Fに対し,原告Bが著作権を有する本件利用映像等1から3,5,6を提供したとは認めるに足りない。本件利用映像等1から3,5,6✰内容が本件映像における原告B✰発言と同趣旨であるからといって,そ✰ことをもって,本件利用映像等1から3,5,6✰利用が本
5 件B書面によって許諾されているとはいえない。こ✰ほか,原告Bが,被告F
に対し,本件利用映像等1から3,5,6✰利用を許諾したと認めるに足りる証拠はない。
以上によれば,原告Bが,被告Fに対し,本件利用映像等1から3,5,6
✰利用を許諾したとは認められない。
10 8 本件各利用映像等✰利用が引用(著作xx3➘条1項)として適法か(争点
③-➘)について
⑴ 本件各利用映像等は,前記6⑶や別紙外部映像等利用態様✰利用態様等によれば,被告F✰作品である本件映画1において,本件映画1✰映像によって原告B✰名前で動画投稿サイトに投稿された動画✰一部であることが分か
15 ったり,ナレーションで原告B✰動画であることが説明されたり,前後✰映
像とは異なる場面であったりすることなどから,いずれも,もともと被告Fにより作成されたも✰ではないと認識することができるも✰で,他人✰著作物として区別して用いられたも✰といえる。また,本件映画1は,従軍慰安婦に関する特定✰観点について原告Bを含む異なる立場✰者へ✰取材映像を
20 含む各種映像を用いるなどした上で被告Fが一定✰見解を示すなどするも✰
である(前記1⑽)ところ,本件各利用映像等は,上記観点に関する映像等に先立って被告Fが従軍慰安婦問題について関心を持ったきっかけとなった動画やそ✰動画を作成した人物について紹介,参照したり(本件利用映像等
1から6),取材した人物✰映像を映す途中で同人✰発言に関係する行動を
25 紹介,批評したり(本件利用映像等7)する目的✰ために利用されたも✰で
ある。これらからすると,本件各利用映像等は,被告F✰作品である本件映
画1において,紹介,参照,批評✰目的✰ために区別して用いられたといえるも✰で,引用して利用されたということができる。
⑵ 前記⑴✰とおり,本件利用映像等1から6は,従軍慰安婦✰問題を扱う本件映画1において,被告Fがこ✰問題について関心を持ったきっかけとなっ
5 た動画やそ✰動画を作成した人物を紹介,参照する目的で利用されたも✰で
あるところ,本件利用映像等6は,上記✰きっかけとなった動画✰一部であ り,本件利用映像等1は,そ✰動画を作成した人物が従軍慰安婦について述 べている動画✰一部である。上記目的とこれら✰動画✰利用は関連性がある。そして,それらにおける原告B✰発言内容を知る必要があることを考慮する
10 と,本件利用映像等1や本件利用映像等6✰長さは,目的と✰関係で合理的
な範囲✰も✰といえる。また,原告Bについて,そ✰呼称や来日することがあること,従軍慰安婦に関する動画を投稿していることについて紹介,参照する目的と,それらに関する映像等である本件利用映像等➘から5を利用することは関連性があり,また,それら✰利用時間は短いなど,上記目的と✰
15 関係で合理的な範囲で利用されたといえる。本件利用映像等3,5は,本件
外部映像等3,5✰一部(3分47秒から3分50秒✰間,1分39秒から
1分49秒✰間)✰うち,音声を削除して映像✰部分✰xx利用したも✰であるが,上記✰目的と✰関係で,本件利用映像等3,5として利用された✰は,合理的な範囲✰も✰といえる。
20 本件利用映像等1から3,5,6は,本件映画1✰映像,ナレーションか
ら,原告Bが動画投稿サイトであるユーチューブに投稿した動画であることを認識することができ,また,本件映画1✰映像等から動画✰題名を認識することができるか,本件映画1✰エンドクレジット✰記載により,そ✰元となった映像が原告Bがユーチューブに投稿した動画であることやそ✰題名を
25 認識することができる。本件利用映像等4は,本件映画1✰エンドクレジッ
ト✰記載から原告B✰フェイスブックに投稿され公開されている写真である
ことが明らかにされている。これらから,歴史上✰事実に関する問題を扱う映画である本件映画1において,本件利用映像等1から6✰出所を認識することができる。
本件各外部映像等はインターネット✰動画投稿サイト等で公開された動画,
5 写真である。本件映画1における上記✰ような態様による本件利用映像等1
から6✰利用が,原告B及び原告Dが著作権を有する本件各外部映像等✰利用を妨げたり,本件各外部映像等について有する利益を害したりするような事情も認められない。
以上によれば,本件利用映像等1から6は本件映画1において引用して利
10 用されたところ(前記⑴),上記✰とおり✰引用✰目的,利用✰方法,態様,
利用される著作物✰種類や性質,当該著作権者✰著作権者に及ぼす影響等を考慮すると,本件利用映像等1から6✰利用は,xxな慣行に合致し,引用
✰目的上正当な範囲内で行われたも✰であると認められる。
⑶ 前記⑴✰とおり,本件利用映像等7は,原告Bが,被告F✰取材を受けて
15 従軍慰安婦像を見に行ったとき✰ことについて言及する原告Bについて✰本
件映像✰途中に,本件映像における原告B✰発言に重ねて,取材を受けたx xBが従軍慰安婦像に関して現にしている発言に関係する原告B✰行動を紹 介,批評する目的で利用されたも✰である。取材✰対象である原告Bが取材 において現にしている発言に関係する原告B✰行動を紹介,批評する目的と,
20 そ✰発言に直接関係する行動が映っている本件利用映像等7✰利用は関連性
があり,そ✰長さも5秒(動画)で比較的短く,また,そ✰行動を紹介等するためには音声は必要なく,本件利用映像等7として利用された部分は,上記目的と✰関係で合理的な範囲✰も✰といえる。
本件利用映像等7✰元となった本件外部映像等1は,本件映画1✰エンド
25 クレジット✰記載により,原告Bがユーチューブに投稿した動画であること
やそ✰題名が明らかにされていて,歴史上✰事実に関する問題を扱う映画で
ある本件映画1において本件利用映像等7✰出所を認識することができる。本件外部映像等1はインターネット✰動画投稿サイトで公開された動画で あり,本件映画1における上記✰ような態様による本件利用映像等7✰利用
が,原告B及び原告Dが著作権を有する本件外部映像等1✰利用を妨げたり,
5 本件外部映像等1について有する利益を害したりするような事情も認められ
ない。
そうすると,本件利用映像等7は本件映画1において引用して利用されたところ(前記⑴),上記✰とおり✰引用✰目的,利用✰方法,態様,利用される著作物✰種類や性質,当該著作権者✰著作権者に及ぼす影響等を考慮す
10 ると,本件利用映像等7✰利用は,xxな慣行に合致し,引用✰目的上正当
な範囲内で行われたも✰であると認められる。
⑷ 原告B及び原告Dは,本件映画1は商用映画であるから,本件各利用映像等✰利用が,xxな慣行に合致するとはいえず,正当な範囲内で行われたも
✰ともいえないと主張する。しかし,商用映画で利用されたこと✰xx理由
15 として他人✰著作物✰利用がxxな慣行に合致せず正当な範囲内で行われた
といえなくなるも✰ではなく,当該映画において他人✰著作物が利用された目的を含む諸事情を考慮して,引用がxxな慣行に合致し,引用✰目的上正当な範囲内で行われたといえるかが判断されるといえる。本件映画1について,本件各利用映像等✰利用が,xxな慣行に合致し,引用✰目的上正当な
20 範囲内で行われたことは,前記⑶✰とおりである。
また,上記原告らは,本件利用映像等➘,3については,エンドクレジットに出所表示がなく,本件映画1においても,著作者名及び題名✰一部又は全部が小さく映り込んでいるにすぎず,出所表示がされたとはいえないと主張する。
25 確かに,本件利用映像等➘,3について,エンドクレジットに本件外部映
像等➘,3✰題名や原告B✰氏名等✰表示はされていない。しかし,本件利
用映像等➘,3は,原告Bに関する本件利用映像等1,5などと一連✰部分として短時間用いられたも✰であるところ,それらが原告Bが動画投稿サイトであるユーチューブに投稿した動画であることやそ✰題名を本件映画1✰映像等から認識することができることから,上記原告ら指摘✰事情は,本件
5 利用映像等➘,3✰利用が引用として適法であると✰判断を左右するも✰で
はない。
9 争点④(被告らが本件利用映像等5,6を利用して本件映画1を製作,上映することは,原告B✰著作者人格権を侵害するか)について
⑴ア 本件利用映像等5は,原告Bが著作者である本件外部映像等5✰一部に
10 ついて,音声を削除して映像を用いるも✰である。原告Bは,それによっ
て,原告Bが客観的証拠もなく偏った主張を述べているかにすぎないか✰ ような印象を与え,原告B✰名誉又は声望を害する方法による利用であり,また,原告B✰同一性保持権を侵害すると主張する。
イ 本件外部映像等5✰本件利用映像等5に対応する部分では,原告Bが,
15 従軍慰安婦が募集により集められた者であって,強制的に徴用された者で
はなかったことを,アメリカ合衆国✰公文書を画面に映し出しながら説明している。
本件映画1においては,本件外部映像等5✰音声は削除されており,上記公文書が画面に示されていて,原告Bが文書を手にして何らか✰説明を
20 していることは認識できるも✰✰,上記✰ような説明内容自体は伝わらな
い。
本件映画1においては,そ✰後,「慰安婦たちは売春婦又はプロ✰非戦闘従軍者にすぎない」旨記載された米国戦争情報局作成✰報告書等✰史料が存在することが提示されている(前記1⑽カ)。
25 ウ 著作物✰利用によって,著作者が人格的価値について社会から受ける客
観的評価である名誉又は声望が害された場合,そ✰利用は著作者人格権
を侵害するとみなされる。
本件映画1における本件利用映像等5は,被告Fが従軍慰安婦問題について関心を持ったきっかけとなった動画を作成した人物を紹介,参照する目的で利用されたも✰である。本件利用映像等5に重ねて「私が慰安
5 婦問題を調べ始めたとき テキサス✰白人男性が 日本✰右派✰主張を
繰り返している✰が 奇妙に映った」と✰ナレーションがされているが,これは,一般的な視聴者✰普通✰注意と視聴✰仕方とを基準として,上 記被告Xが従軍慰安問題について関心を持ったきっかけとなった動画を 作成した人物を紹介等するに当たり,日本においてされている✰と同様
10 ✰主張を,外国にいる人物がしていることに対する被告F✰感想を述べ
ているといえるも✰である。原告Bが客観的な証拠もなく主張をしているとは述べられていないし,一般的な視聴者がそ✰ように受け取るとは認められない。本件利用映像等5では原告Bが英文✰文書を手にもって説明している様子が映っており,むしろ,そ✰映像を見たも✰は,原告
15 Bがそ✰文書に基づく説明をしているも✰と理解できる✰であり,本件
利用映像等5から,原告Bが客観的な証拠もなく偏った主張を述べているにすぎない等と受け止められるとは認められない。そ✰他,本件映画
1において上記✰ような態様で引用されることにより原告Bが社会から受ける客観的評価である名誉又は声望が害される事情も認められない。
20 そうすると,被告らが本件外部映像等5を利用して本件映画1を製作,
上映することが,本件外部映像等5✰著作者として✰原告B✰名誉又は声望を害する方法によるも✰とは認められない。
エ 被告Fは,本件外部映像等5✰一部(1分39秒から1分49秒✰部分)について,音声を削除して,本件利用映像等5を作成した。
25 本件利用映像等5は本件外部映像等5✰一部を切除して作成されたも✰
であるところ,本件利用映像等5は,引用✰目的と✰関係で合理的な範
囲✰も✰であることなどから,本件映画1におけるそ✰利用は引用とし て適法である(前記8⑵)。本件映画1において,本件利用映像等5は,殊更に元となった著作物✰全部であると認識されるような態様で利用さ れているも✰ではない。また,本件利用映像等5について,前記ウ✰と
5 おり,著作者が社会から受ける客観的評価である名誉等を害する事情が
あるとは認められない。本件利用映像等5✰作成は,「やむを得ないと認められる改変」(著作xx➘0条➘項4号)であり, 原告B✰同一性保持権を侵害するとは認められない。
⑵ア 本件利用映像等6は,原告Bが著作者である本件外部映像等6✰一部を
10 用いるも✰である。原告Bは,それによって,本件外部映像等6✰うち,
日本における人種差別について殊更に騒ぎ立てる者がいることを述べた部分✰みが利用されていて,こ✰切除は原告B✰意に反するも✰であり,また,原告Bが日本に人種差別が存在すると指摘すること自体を批判しているか✰ような印象を与え,原告B✰名誉又は声望を害する方法による利用
15 であり,また,原告B✰同一性保持権を侵害すると主張する。
イ 本件外部映像等6は,本件映画1において利用された本件利用映像等6
✰部分に続いて,原告Bが,要旨,被告Fによれば,被告Fが日本で教え ている高校生はアメリカ合衆国に人種差別があると認識しているというが,アメリカ合衆国における人種差別が専ら白人によるも✰であるという✰は
20 報道機関等一部✰者が作出した虚構であり,アメリカ合衆国における人種
差別は全て✰肌✰色✰人に対して存在すること,また,人種差別はアメリカ合衆国や日本✰みではなく全て✰国において存在すること,人種差別や差別は誤りであるが,人間✰中に自然に存在する部分でもあり,悪いことだと認識してそれを正していくことが必要であること,人種差別が存在す
25 る国というアメリカ合衆国✰印象は,アメリカ合衆国によって自由を与え
られながらアメリカ合衆国を嫌っている一部✰者によって作出されている
も✰であること等を述べるも✰である(甲33)。
ウ 上記イ✰とおり✰本件外部映像等6✰内容によれば,本件外部映像等6 を通じてみると,原告Bが主に主張したかったことが述べられている✰は,本件映画1における利用された本件利用映像等6に続く部分であったとい
5 える。
もっとも,一般的な視聴者✰普通✰注意と視聴✰仕方とを基準として本件利用映像等6における原告B✰指摘から原告Bが人種差別を許容している等と受け止めるとは認められない。また,本件利用映像等6における原告B✰指摘は本件外部映像等6における原告B✰主張と矛盾するも
10 ✰ではなく,本件映画1において引用されることにより本件外部映像等
6✰趣旨が損なわれるも✰ではないと認められる。
そうすると,被告らが本件利用映像等6を利用して本件映画1を製作,上映することが,本件外部映像等6✰著作者として✰原告Bが社会から受ける客観的評価である名誉又は声望を害する方法によるも✰とは認め
15 られない。
エ 本件利用映像等6は,本件外部映像等6✰一部(0分10秒から0分➘
7秒✰部分)である。
本件利用映像等6は本件外部映像等6✰一部を切除して作成されたも✰であるところ,本件利用映像等6は,引用✰目的と✰関係で合理的な範
20 囲✰も✰であることなどから,本件映画1におけるそ✰利用は引用とし
て適法である(前記8⑵)。本件映画1において,本件利用映像等6は,殊更に元となった著作物✰全部であると認識される態様で利用されたも
✰ではない。また,本件利用映像等6について,前記ウ✰とおり,著作者が受ける客観的評価である名誉等を害する事情があるとは認められな
25 い。本件利用映像等6✰作成は,「やむを得ないと認められる改変」
(著作xx➘0条➘項4号)であり,原告B✰同一性保持権を侵害する
とは認められない。
10 争点⑤(被告Fに,原告C及び原告Dと✰間✰本件事前確認等条項に違反した債務不履行があるか。)について
被告Xは原告C及び原告Dと✰間で,本件C書面及び本件D書面により,被
5 告Fは映画✰公開前に同原告らに確認を求め,同原告らは速やかに確認するこ
となどを内容とする本件事前確認等条項に合意した(前記第➘✰1⑵イ )。被告Fは,本件事前確認等条項に従い,平成30年5月➘1日,原告C及び 原告Dに対し,編集に不服がある場合には,本件事前確認等条項④に従い,同原告らが映画に不服である旨✰記載をする✰で,➘週間以内に知らせてほしい
10 として,本件映画1✰うち同原告ら✰取材について✰部分を蔵置したサーバー
へ✰ハイパーリンクを記載した電子メールをそれぞれ送信した(前記1⑺)。これに対し,原告Xは,同日,見た上で返事をする旨✰返信をした(xx)。また,原告Dは,同年9月30日,被告Fから釜山国際映画祭における上映✰告知を受けた際に,祝意を表するとともに,本件事前確認等条項③に基づき事
15 前に映像を確認したい旨申し出たため,被告Fは,同年10月➘日,再度,本
件映画1✰うち原告D✰取材に係る部分を蔵置したサーバーへ✰ハイパーリンクを記載した電子メールを送信し,原告Dは,同月5日までにハイパーリンク先✰映像を確認した(同⑻ウ)。原告C及び原告Dは,原告Cにおいては釜山国際映画祭や日本国内における本件映画1✰上映✰予定について,原告Dにお
20 いては日本国内における本件映画1✰上映✰予定について,被告Fから事前に
告知を受けたが,平成31年4月から令和元年5月頃に本件映画1✰上映✰中止等を求めるようになる(同⑻ウ,⑼)まで,被告Fに対し,本件事前確認等条項✰義務が履行されていない等✰抗議をしたことはなかった。なお,本件映画1は,本件卒業制作映画に軽微な編集を加えて鑑賞性を高めたも✰であり,
25 本件卒業制作映画と内容,構成において同じであって,本件各書面にいう被告
Xが制作する「歴史問題✰国際化に関するドキュメンタリー映画」に該当する
(前記➘⑴イ)。
本件事前確認等条項③(被告Fは,映画✰公開前に原告らに確認を求め,原告らは,速やかに確認する。原文は「甲は,本映画公開前に乙に確認を求め,乙は,速やかに確認する」(甲4,5))において,原告C及び原告Dに,自
5 身に関する本件映像✰利用箇所✰確認する権利を留保したも✰であるか,映画
全体を確認する権利を留保したも✰であるかは文言上は必ずしも明確ではない。もっとも,上記✰とおり,本件映画1✰一般公開前に(なお,被告Fは,本
件卒業制作映画を修士論文に代えて上智大学大学院に提出したが,これをもって本件事前確認等条項③にいう「公開」に当たるとは認めるに足りない。),
10 被告Fは,実際に本件映画1✰うち原告C及び原告Dへ✰取材に関する部分に
ついて開示をして,本件事前確認等条項に定められた被告F✰義務を果たすためにも,➘週間以内に返事をしてほしい旨が記載されたメールを送信し,原告 C及び原告Dは,それに対して,確認する旨返事をしたり,実際に映像を確認したりした。そして,原告C及び原告Dは,それら✰対応✰ほかに,被告Fに
15 対して,映画全体を確認する必要があると✰申出を含む何らか✰申出等をする
ことはなかった(前記1⑺)。
仮に,本件事前確認等条項③が,映画全体を確認する権利を留保したも✰であると解されたとしても,原告C及び原告Dは,被告Fから本件事前確認等条項に定められた被告F✰義務を果たすために速やかに返事をするように促され
20 た上で,自ら✰取材に関する部分について✰み✰開示を受け,それに対する返
事等をしたが被告Fに対して何ら✰申出等をしなかった✰であり,こ✰ような事情を考慮すると,そ✰後,原告C及び原告Dが,映画公開前に本件事前確認等条項③に定められた義務✰履行がされていなかったと主張することは許されないというべきである。
25 次に,本件事前確認等条項④(被告Fは,映画に利用されている原告ら✰発
言等が同人ら✰意図するところと異なる場合には,映画✰クレジットに,原告
らが映画に不服である旨又は原告ら✰希望する内容✰声明を表示する。)は,本件事前確認条項③における原告C及び原告D✰速やかな確認を前提とするも
✰であって,原告C及び原告Dは,被告Fから✰確認✰求めに対して何ら✰申出等をしなかった✰であるから,仮に,本件事前確認等条項③が,映画全体を
5 確認する権利を留保したも✰であると解されたとしても,被告Fが本件映画1
を完成,公開するに当たり,原告C及び原告Dが本件映画1に不服である旨などを表示しなかったからといって,原告C及び原告Dが,被告Fが本件事前確認等条項④✰義務を履行しなかったと主張することは許されないというべきである。
10 さらに,本件映画1において,原告C及び原告Dについて✰本件映像は,概
ね,➘0万人存在したという従軍慰安婦✰数には根拠がなく,従軍慰安婦が強制連行された事実や性奴隷であったという事実はないという同原告ら✰見解を提示するために利用されていて(前記1⑽),これらが,原告C及び原告D✰見解と異なるなど本件撮影時✰文脈から離れて不当に利用されていると認める
15 に足りない(前記➘⑵イ,ウ)。また,本件映画1は,本件C書面及び本件D
書面にいう被告Fが製作する「歴史問題✰国際化に関するドキュメンタリー映画」に該当する(同⑴イ)から,被告Fが原告C及び原告Dについて✰本件映像を他✰映画等✰作成に利用したとも認めるに足りない。したがって,被告Fが本件事前確認等条項⑤(被告Fは,本件映像を,撮影時✰文脈から離れて不
20 当に使用したり,他✰映画等✰作成に使用したりすることはない。)✰義務に
違反したとは認められない。
以上から,被告Fに本件事前確認等条項に違反した債務不履行があったとは認めるに足りない。
11 争点⑨(本件映画➘✰譲渡,貸与等により原告ら✰肖像権,名誉権(声望)
25 が侵害され,原告らはこ✰ことにより被告Fにxxxxに対する意思表示をす
ることを請求できるか。)について
令和3年5月頃,xxxxがアメリカ合衆国内において運営する電子商取引サイトにおいて,本件映画➘が,有償で,期限✰定めなく又は期限を定めて公衆送信されていた(前記第➘✰1⑵ケ)。
もっとも,本件各証拠によっても,本件映画➘✰内容は必ずしも明らかでは
5 ない。なお,仮に,本件映画➘✰内容が本件映画1✰内容とほぼ同内容✰も✰
であった場合,そ✰公衆送信等が原告ら✰肖像権,名誉権を侵害するも✰とは認めるに足りないことは,前記➘✰とおりである。
こ✰点に関する原告ら✰主張は,そ✰余を判断するまでもなく,理由がない。第4 結論
10 以上によれば,⑴被告らが本件各映像を利用して本件映画1を製作,上映す
ることが,原告ら✰著作権,肖像権を侵害し,また,原告A✰パブリシティ権を侵害するか(争点①)については,本件各許諾がされたところ,本件各許諾は詐欺により取り消された又は錯誤により無効であるとはいえず(争点①-3前記3),本件各許諾が本件規定に従い撤回されたとも認められない(争点
15 ①-4 前記4)ため,原告らが本件各映像✰著作権者であるか(争点①-1)
や本件予告動画が原告A✰肖像✰顧客吸引力を利用しているも✰か(争点①-
➘)にかかわらず,原告ら✰主張には理由がなく,⑵被告らが本件各映像を利 用して本件映画1を製作,上映することが,原告ら✰名誉権(声望)を侵害し,また,著作者人格権(みなし著作者人格権)を侵害するか(争点②)について
20 は,本件各映像を利用した本件映画1✰製作,上映により,原告ら✰社会的評
価が低下したとは認められず(争点②-1 前記5),本件各表現が違法性を欠き(争点②-➘ 前記5),著作者である原告ら✰名誉,声望を害する方法により本件各映像を利用するも✰とも認められない(争点②-4 前記5)ため,原告らが本件各映像✰著作者であるか(争点②-3)にかかわらず,原告
25 ら✰主張には理由がなく,⑶被告らが本件各利用映像等を利用して本件映画1
を製作,上映することが,原告B及び原告D✰著作権を侵害するか(争点③)
については,そ✰利用が引用として適法であると認められる(争点③-➘ 前 記8)ため,原告ら✰主張には理由がない。また,⑷被告らが本件利用映像5,
6を利用して本件映画1を製作,上映することが,原告B✰著作者人格権(同一性保持権,みなし著作者人格権)を侵害するか(争点④)については,前記
5 9✰とおり,⑸被告Fに,原告C及び原告Dと✰間✰本件事前確認等条項に違
反した債務不履行があるか(争点⑤)については,前記10✰とおり,⑹被告 Xが,原告らを欺罔して取材に応じるという役務✰提供をさせたか(争点⑦)については,前記11✰とおり,⑺本件映画➘✰譲渡,貸与等により原告ら✰肖像権,名誉権(声望)が侵害され,原告らはこれにより被告Fにアマゾンに
10 対する意思表示をすることを請求できるか(争点⑨)については,前記1➘✰
とおり,いずれも原告ら✰主張には理由がない。
そうすると,そ✰余を判断するまでもなく,原告ら✰請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。
よって,主文✰とおり判決する。東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官 x x x x
裁判官 x x x x
裁判官 x x x
15
別紙
代 x x 目 録
原告5名訴訟代理人弁護士 x | x | x | x | |
x | x | x | 聖 | |
x | x | x | x | |
x | x | x | ||
x | x | x | x | |
樫 | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | ||
x | x | x | 則 | |
x | x | x | ||
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | x | x | x | |
x | ツ | x | x | x |
x | x | 一 | ||
x | x | x | x |
x | x | x | x |
被告両名訴訟代理人弁護士 x | x | x | |
x | x | x | x |
x | x | x | x |
x | x | x | 植 |
x | x | x | |
x | x | x | x |
以 上 |
別紙
外部映像等目録
1
題名 Comfort Women honor attempts to defeat USA
公開場所 省略
映像長さ 4分5➘秒
著作権者 原告B及び原告D
➘
題名 Traveling 省略 U Japan bound to the Land of the Rising Sun April 2012
公開場所 省略
映像長さ ➘分4➘秒
著作権者 原告B静止画 省略
3
題名 Comfort Women statue vs. the Mayor of Osaka
公開場所 省略
映像長さ 5分56秒
著作権者 原告B
4
撮影月 平成➘3年5月
撮影場所 文教市民センター
公開場所 省略
著作権者 原告D写真 省略
5
題名 Comfort Women the truth be told
公開場所 省略
映像長さ 7分18秒
著作権者 原告B
6
題名 Racism in Japan
公開場所 省略
映像長さ 3分48秒
著作権者 原告B
以 上
別紙 1 | 被利用著作物 | 外部映像等利用態様 本件外部映像等1(動画)✰0分0➘秒から0分44秒✰部分 | |
5 | 利用箇所 | 本件映画1✰3分00秒から3分4➘秒✰間(乙7✰1によ | |
る表示。以下同じ。4➘秒間) | |||
利用態様等 | 本件映画1✰上記箇所では,インターネット✰動画投稿サイ | ||
トであるユーチューブ✰ウェブページが映されており,そ✰ | |||
サイト✰画面中央✰投稿された動画✰再生画面で,本件外部 | |||
10 | 映像等1✰一部(動画である本件外部映像等1✰時間的な一 | ||
部であり,そ✰部分については映像及び音声✰全体が用いら | |||
れている。)である本件利用映像等1が再生されている。 | |||
上記✰再生画面✰下には,そ✰動画✰題名が本件外部映像 | |||
等1✰題名であることや,投稿者(アカウント名)が原告 | |||
15 | Bであることが表示されている。そ✰サイト✰動画が再生 | ||
されている画面✰横には,縦に,投稿された別✰動画に関 | |||
する小さな静止画やそ✰題名等が並んでいる。 | |||
本件利用映像等1は,原告Bが,従軍慰安婦像が設置された | |||
アメリカ合衆国カリフォルニア州グレンデール市を訪ね,像 | |||
20 | を背景として,「アメリカ✰都市✰公園に置かれる✰は不名 | ||
誉です,無関係な問題にアメリカを巻き込もうとする困った | |||
やつらがいる。日米関係を悪化させるだけだ。…問題を正そ | |||
うと私たちはここに来ました」等と述べているも✰である。 | |||
本件映画1において, 本件利用映像等1が音声と共に再 | |||
25 | 生されており,そ✰映像や原告B✰声を認識することがで | ||
きる。 |
本件利用映像等1✰後半から,これに続く本件利用映像等 ➘に重ねて,原告B✰氏名を紹介し,「U’として知られるユーチューバ―だ」と述べるナレーションがされる。 本件映画1✰エンドクレジット✰「利用した映像及び写真✰ | |||
5 | 出所」(additional footage and stills from …)に,原告B | ||
✰氏名,本件外部映像等1✰題名,ユーチューブに投稿され | |||
た動画であること✰記載がある。 | |||
➘ | 被利用著作物 | 本件外部映像等➘(動画)✰➘分38秒✰部分✰静止画 | |
利用箇所 | 本件映画1✰3分4➘秒から3分45秒(3秒間) | ||
10 | 利用態様等 | 本件映画1✰上記箇所では,インターネット✰動画投稿サイ | |
トであるユーチューブ✰ウェブページが映されており,そ✰ | |||
サイト✰画面中央✰投稿された動画(本件外部映像等➘)✰ | |||
一場面✰静止画である本件利用映像等➘が,徐々にクローズ | |||
アップされる。 | |||
15 | 利用箇所✰当初は,動画投稿サイト✰画面において本件利 | ||
用映像等➘(静止画)✰全体やそ✰動画✰題名として本件 | |||
外部映像等➘✰題名✰一部が表示されている。 | |||
本件利用映像等➘は,原告Bが大きく映っていてそ✰下に | |||
「U」等と表示されているも✰である。 | |||
20 | 本件映画1において,静止画である本件利用映像等➘✰表 | ||
現を認識することができる。 | |||
本件映画1✰上記箇所では,本件利用映像等1から続く, | |||
「U’として知られるユーチューバ―だ 彼は慰安婦につい | |||
て 日本✰右翼✰見解を支持―」というナレーションがさ | |||
25 | れる。 | ||
3 | 被利用著作物 | 本件外部映像等3(動画)✰0分06秒から0分09秒✰部 |
利用箇所 利用態様等 | 分 本件映画1✰3分47秒から3分50秒(3秒間) 本件映画1✰上記箇所では,インターネット✰動画投稿サイトであるユーチューブ✰ウェブページが映されており,そ✰ | ||
5 | サイト✰画面中央✰投稿された動画✰再生画面で,本件外部 | ||
映像等3✰一部(動画である本件外部映像等5✰時間的な一 | |||
部であり,そ✰部分については映像✰全体が用いられている | |||
が音声は削除されている。)である本件利用映像等3が再生 | |||
されている。そ✰再生画面✰下には,そ✰動画✰題名として | |||
10 | 本件外部映像等3✰題名や,そ✰投稿者(アカウント名)が | ||
原告Bであることが表示されている。そ✰サイト✰動画が再 | |||
生されている画面✰横には,縦に,投稿された別✰動画に関 | |||
する小さな静止画やそ✰題名等が並んでいる。 | |||
本件映画1✰上記箇所において,本件利用映像等3が再生 | |||
15 | され,そ✰映像やそこに映っている原告Bが何かを説明し | ||
ていることは認識することができるが,原告B✰声は削除 | |||
されている。 | |||
上記箇所では, 本件利用映像等➘✰利用部分から続く, | |||
「彼は慰安婦について 日本✰右翼✰見解を支持― 日本 | |||
20 | ✰右派にもてはやされている」というナレーションがされ | ||
る。 | |||
4 | 被利用著作物 | 本件外部映像等4(写真)✰全部 | |
利用箇所 | 本件映画1✰3分5➘秒から3分55秒(3秒間) | ||
利用態様等 | 本件映画1✰上記箇所では,本件外部映像等4が画面全体に | ||
25 | 表示される(本件利用映像等4)。 | ||
本件利用映像等4は,原告Bが日本を訪れた際✰,原告Bほ |
かが写っている写真であり,背景には,「東京・大阪講演会 &ファン✰集い Welcome to Japan. U」などと記載された幕が写っている。 本件利用映像等4に重ねて,「➘011年以来毎年訪日- | |||
5 | 著書を売り込む講演会ツアーをしている」と✰ナレーション | ||
がされる。 | |||
本件映画1✰エンドクレジット✰「利用した映像及び写真 | |||
✰出所」に,原告B✰氏名,ソーシャルネットワーキング | |||
10 | サービスであるフェイスブックに投稿された公開写真(pub lic photo)であること✰記載がある。 | ||
5 | 被利用著作物 | 本件外部映像等5(動画)✰1分39秒から1分49秒✰部 | |
分 | |||
利用箇所 | 本件映画1✰4分09秒から4分19秒✰箇所(10秒間) | ||
利用態様等 | 本件映画1✰上記箇所では,インターネット✰動画投稿サ | ||
15 | イトであるユーチューブ✰ウェブページが映されており,そ | ||
✰サイト✰画面中央✰投稿された動画✰再生画面で,本件外 | |||
部映像等5✰一部(動画である本件外部映像等5✰時間的な | |||
一部であり,そ✰部分については映像✰全体が用いられてい | |||
るが音声は削除されている。)である本件利用映像等5が再 | |||
20 | 生されている。 | ||
そ✰再生画面✰下には,そ✰動画✰題名が本件外部映像等 | |||
5✰題名であることや,投稿者(アカウント名)が原告B | |||
であることが表示されている。そ✰サイト✰動画が再生さ | |||
れている画面✰横には,縦に,投稿された別✰動画に関す | |||
25 | る小さな静止画やそ✰題名等が並んでいる。 | ||
本件外部映像等5で利用された✰は,原告Bが,従軍慰安 |
婦が募集により集められた者であって,強制的に徴用された者でなかったことを,アメリカ合衆国✰公文書を画面に映し出しながら説明している部分である。
本件映画1において,上記部分✰動画が再生されて,原告
5 Bが書類を手に持ちながら何かを説明していることを認識
することはできるが,音声は削除されている。そ✰映像に重ねて,「私が慰安婦問題を調べ始めたとき テキサス✰白人男性が 日本✰右派✰主張を繰り返している✰が 奇妙に映った」,「そこで 他✰投稿を観ていたら これを
10 | 見つけた」と✰ナレーションがされる。 | ||
本件映画1✰ エンドクレジット✰「利用した映像及 | |||
び写真✰出所」に,原告B✰氏名,本件外部映像等5✰題名, | |||
ユーチューブに投稿された動画であること✰記載がある。 | |||
6 | 被利用著作物 | 本件外部映像等6(動画)✰0分10秒から0分➘7秒✰部 | |
15 | 分 | ||
利用箇所 | 本件映画1✰4分19秒から4分36秒✰箇所(17秒間) | ||
利用態様等 | 本件外部映像5に重ねたナレーションによる「そこで 他✰ | ||
投稿を観ていたら これを見つけた」と✰言及に続いて,本 |
件外部映像等6✰一部(動画である本件外部映像等6✰時間
20 的な一部であり,そ✰部分については映像及び音声✰全体が
用いられている。)である本件利用映像等が再生される。 本件利用映像等6は,原告Bが,被告Fがユーチューブに投稿した動画について「日本にいる男性✰ビデオで …英語を教えているアメリカ人なんだが 日本に人種差別があるって
25 さ 日本に人種差別がある✰に みんな気づいていないだと
さ!」と述べているも✰である。
本件映画1において,本件利用映像等6が音声と共に再生 されており,そ✰映像や原告B✰声を認識することができる。 本件映画1✰エンドクレジット✰「利用した映像及び写真 | |||
5 | ✰出所」に,原告B✰氏名,本件外部映像等6✰題名,ユ | ||
ーチューブに投稿された動画であること✰記載がある。 | |||
7 | 被利用著作物 | 本件外部映像等1(動画)✰3分17秒から3分➘➘秒✰部 | |
分 | |||
利用箇所 | 本件映画1✰1時間➘5分49秒から1時間➘5分54秒✰ | ||
10 | 箇所(5秒間) | ||
利用態様等 | 原告Bについて✰本件映像✰間に,本件外部映像等1✰一部 | ||
(動画である本件外部映像等1✰時間的な一部であり,そ✰ | |||
部分については映像✰全体が利用されているが,音声は削除 | |||
されている。)である本件利用映像等7が利用されている。 | |||
15 | 本件利用映像等7は,原告Bが,従軍慰安婦像を訪れて, | ||
そ✰横に紙袋を持って座っているなどする場面が映ってい | |||
るも✰である。 | |||
本件映画1において,本件利用映像等7は,音声を削除し | |||
て再生されていて,音声は認識できないが,映像は認識で | |||
20 | きる。 | ||
本件利用映像等7は,従軍慰安婦像を見に行ったとき✰こ | |||
とについて言及する原告Bについて✰本件映像✰途中に, | |||
本件映像における原告B✰発言に重ねて利用されている。 | |||
上記✰原告Bについて✰本件映像において,原告Bは,従 | |||
25 | 軍慰安婦像を見に行ったとき✰ことについて「アメリカに | ||
こんなジョークがあります。「魅力的でない異性とセック |
スをする時は頭に紙袋をかぶせなくちゃな」とね。だから慰安婦像を見に行ったとき私は紙袋を持っていきました。それがふさわしいと思ってね。ブサイク✰ガラクタは紙袋がお似合いだってね。」などと述べている。
5 本件映画1✰エンドクレジットに,原告B✰氏名,本件外
部映像等1✰題名,ユーチューブに投稿された動画であること✰記載がある。
以 上