本章では、入居者への WEB アンケートで把握できなかった、貸しルーム(いわゆる「シェアハウス」)物件の募集から契約に至る手続き、また、実際の運用に係る内容等 について、既往資料から補足調査を行った。
第4章 貸しルームの契約等にかかる関連資料
本章では、入居者への WEB アンケートで把握できなかった、貸しルーム(いわゆる「シェアハウス」)物件の募集から契約に至る手続き、また、実際の運用に係る内容等について、既往資料から補足調査を行った。
1 貸しルーム物件の募集方法等
⚫ 貸しルーム運営事業者のほぼ全数が、ポータルサイトを活用しており、インターネットを介して入居者を募集している。
⚫ 入居希望者も、ポータルサイトを介して問い合わせを行い、物件の内覧希望、空室状況把握を行
っている。
(1)貸しルーム事業者の入居者募集手段
・貸しルーム物件の入居者募集は、ほぼすべての事業者がポータルサイトを活用している。そのほか、自社サイト(約 6 割)、Facebook(約4割)と続き、インターネットによる方法が主な募集手段となっている。
図 4-1 主な貸しルーム事業者の広告手段(複数回答)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-2 主な貸しルーム事業者が利用している貸しルーム専用のポータルサイト(複数回答)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
(2)入居希望者のポータルサイトへの問い合わせ内容
・入居希望者の運営事業者へのポータルサイトを介した問い合わせ内容は、「物件を見たい」が6.
5割を占め一番多く、次いで「空室を知りたい」(約 1.5 割)と続き、「今すぐ入居したい」も1割強ある。
図 4-3 貸しルームポータルサイトへの問い合わせ者の問い合わせ理由
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
2 入居審査
⚫ 貸しルーム運営事業者による入居者の入居審査は、9割で行われており、その項目は、面接、本人確認書類の提示が主に行われている。
⚫ 入居審査により「入居拒否」することも6割の事業者で行われている。その理由としては「コミュニケーション能力に問題がある」が 8.5 割を占める。
⚫ 共同居住が前提となる貸しルームでは、居住者同士のトラブルを未然に防ぐ、すでに住んでいる居住者の安心・安全を確保する上でも、入居審査は重要視されていると推察される。
(1)入居審査の内容
・貸しルーム運営事業者の半数以上が入居者の年齢制限について「あり」と回答。
・貸しルーム運営事業へのアンケート調査によると、入居審査は、運営事業者の9割近くが行うこととしており、その内容は「面接(内覧時に面接)」、「本人確認書類の提示」が約8割で行われている。
・入居審査の結果、6割の事業者が「入居拒否」を「する」としており、その理由は、「コミュニケーション能力に問題がある」が 8.5 割を占め、次いで「既存の入居者との性格的な相性が合わない」、「入居期間が短い」、「高齢のため」が続く。
図 4-4 入居者の年齢制限
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-4 入居審査の有無
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-5 入居審査の項目(複数回答)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-6 入居拒否の有無
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-7 入居拒否の具体的な理由(複数回答)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
3 契約手続き
⚫ 契約名目は、契約更新のできない「定期借家契約」が主流だが、「普通賃貸借契約」もある。その 2 つの契約の違いについて理解している居住者は少ないとみられる。
⚫ 契約期間は、定期借家契約の場合1年未満が多く、普通賃貸借契約の場合1年以上が多い。
⚫ 「物件の内見」、「本人確認(免許証の提示等)」、および「契約内容の対面による説明」等、契約締結に至るまでの重要な手続きが省かれている物件もあると推察される。
(1)契約名目と期間
□契約名目
・貸しルーム入居者へのWEBアンケート調査によると、「普通借家契約」が半数を占め、次いで
「定期借家契約」(約2割)と続く。
・一方、日本シェアハウス・ゲストハウス連盟による運営事業者へのアンケート調査によると、「定期借家契約」が 8.5 割を占め、「普通賃貸借契約」は1割強にとどまる。
・貸しルーム物件の契約名目については、入居者と事業者へのアンケート結果に差異があった。入居者アンケートにおいて、「わからない」との答が1割あることからも、自分がどのような契約をしているかを理解していない人も多いと推察される。
□契約期間
・貸しルーム入居者へのWEBアンケート調査によると、契約期間は、普通借家契約では「1 年以上2年未満」が最も多く、定期借家契約では「6か月以上1年未満」が多く、定期借家契約の方が契約期間が短い傾向にある。
・一方、日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、運営事業者へのアンケート調査によると、定期借家契約の契約期間は、「1か月以上6か月未満」、「6か月以上1年未満」の割合が高い。
倉庫利用契約 0.5%
オフィス利用契約 1.7%
わからない 15.0%
その他【 】
2.0%
一時使用目的賃貸借契約
6.3%
定期借家契約
21.4%
普通借家契約 53.0%
(n=931)
図 4-8 契約名目の種別【再掲】(入居者へのWEBアンケート調査結果)
3年以上~
4年未満
1ヶ月未満
1ヶ月
2ヶ月以上~
6ヶ月未満
6ヶ月以上~
1年未満
1年以上~ 1年半以上~
1年半未満
2年半以上~
3年未満
2年以上~
4年以上~
5年未満
5年以上~
0% 20% 40% 60%
2年未満
80%
2年半未満
0.8%
100%
普通借家契約
3.4%
4.9%
10.3%
20.1%
16.6%
22.7%
15.0%
1.2% 1.0% 2.0%
1.0%
定期借家契約
5.5%
8.0%
23.1%
26.1%
18.6%
10.1%
4.5% 2.0%
1.8%
1.0%
一時使用目的賃貸借契約
オフィス利用契約倉庫利用契約
6.8%
12.5%
20.0%
15.3%
12.5%
22.0%
12.5%
20.0%
18.8%
33.9%
40.0%
18.8%
6.3%
6.8%
8.5%
18.8%
20.0%
1.7% 3.4% 1.7%
わからない
その他【 】0.0%
10.7%
15.8%
14.3%
5.3%
10.5%
20.0%
10.5%
15.0%
10.7%
57.9%
8.6%
5.7%
1.4% 4.3% 1.4% 4.3%
3.6%
図 4-9 契約名目別の契約期間(入居者へのWEBアンケート調査結果)
図 4-10 入居時の契約形態(運営事業者ごとの全体的な傾向)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
(2)普通賃貸借契約と定期借家契約の相違点
・貸しルームの契約名目として主に利用されている.定期借家契約と、主に一般的な賃貸物件において利用されている普通賃貸借契約について、契約手続きを中心としたフローとその2つの契約の相違点を整理した。
・定期借家契約と普通賃貸借契約の二つの契約における大きな相違点は、契約期間、契約更新の可否である。定期借家契約は、1 年未満の短い契約期間を設定することが可能で、原則、1 年以上とする普通賃貸借契約と異なる。また、定期借家契約は契約更新をすることができず、継続して居住したい場合は、再契約という形をとる。そのために、書面によってその旨を示す必要があり、加えて、1 年以上の契約期間の場合は、契約期間終了前に契約終了の通知をしなくてはならないなどの違いがある。
■物件探しから明渡しまでのフロー
*住宅賃貸借(借家)契約の手引き((一財)不動産適正取引推進機構)より作成
普通賃貸借契約
(主に一般的な賃貸物件)
定期借家契約
(主に貸しルーム)
物件探し
物件探し
○賃貸情報誌、xx業者のサイト等 ○貸しルーム専門ポータルサイト等
入居申込み
入居申込み
○物件の確認
○申込み手続書類(入居申込書等)提出
○重要事項説明書の交付・説明
(xx業者による媒介・代理の場合)
○物件の確認
○申込み手続書類(入居申込書等)提出
○重要事項説明書の交付・説明
(xx業者による媒介・代理の場合)
○入居審査
契約の締結
契約の締結
○賃貸借契約書の締結
○賃料・敷金・手数料等の受渡し等
○定期借家契約書の締結【書面による】
○更新できない旨の書類による説明
○賃料・デポジット等の受渡し等
入居
入居
契約の更新
契約更新不可
満了の1年~6か月前までに 契約終了の通知
(期間1年以上の契約の場合)
○更新手続(合意更新契約書の作成等)
契約期間の終了
契約期間の終了 | |
物件(部屋)の明渡し | |
○引き渡し時の部屋の状況確認
敷金等の清算
○敷金の清算手続き
又は
再契約
物件(部屋)の明渡し
○引き渡し時の部屋の状況確認
敷金等の清算
○敷金の清算手続き
■普通賃貸借契約と定期賃貸借契約との比較
普通賃貸借契約 | 定期賃貸借契約 | |
契約方法 | 書面でも口頭でも可 (ただし、xx業者の媒介等により契約を締結したときは、契約書が作成され交付されます)。 | ① 書面(xx証書等)による契約に限る。 ②「更新がなく、期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない。 |
更新の有無 | 原則として、更新される。 | 期間満了により終了し、更新はない (ただし、再契約は可能)。 |
契約期間の上限 | 2000 年 3 月 1 日より前の契約…20 年 2000 年 3 月 1 日以降の契約……無制限 | 無制限 |
1年未満の契約 | 期間の定めのない契約とみなされる | 有効 |
借主からの中途解約 | 中途解約に関する特約があれば、その定めに従う。 | ① 床面積 200 ㎡未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借主は、特約がなくても中途解約をすることができる。 ② ①以外の場合は中途解約に関する特約が あればその定めに従う。 |
出典:住宅賃貸借(借家)契約の手引き (一財)不動産適正取引推進機構
(3)契約手続き等
・入居者へのWEBアンケート調査によると、契約手続きにおいて「物件の内見」、「本人確認(免許証の提示等)」、および「契約内容の対面による説明」は、8 割で行われている。しかし、「なかった」の答が 1 割強あることから、契約締結に至るまでの重要な手続きが省かれている物件もあると推察される。
・その他、「連帯保証人の提示・保証会社への加入要求」は半数にとどまり、「緊急連絡先の提示要求」については7割程度を占める。
(n=931)
あった
なかった わからない
0%
20%
40%
60%
80%
100%
物件の内見
85.1%
13.1% 1.8%
本人確認(免許証の提示等)
83.4%
14.1% 2.6%
契約内容の対面による説明
81.2%
14.9% 3.9%
連帯保証人の提示・保証会社への加入要
求
45.8%
47.0%
7.2%
緊急連絡先の提示要求 70.7% 22.6% 6.8%
図 4-11 契約等の手続き項目【再掲】(入居者へのWEBアンケート調査結果)
【参考】定期建物賃貸借契約(例)
出典:貸しルームを管理する管理・運営会社のサイト情報及びシェアハウスの事業・運営戦略資料集(総合ユニコム)
(4)公営住宅等におけるハウスシェアリングの取り組み事例
・近年、公営住宅等においても共同居住の取り組みとして、単身高齢者を対象に見守りサービスとセットとなった名古屋市での高齢者共同居住事業、UR 都市機構においても友人同士によるハウスシェアリング制度が実施されている。
○UR都市機構におけるハウスシェアリング制度
項 目 | x x | |
目的 | 同居者同士の助け合い、都心居住の支援、単身者、単身高齢者の共同生活ニーズへの対応。 | |
実施時期 | 平成 16 年 10 月1日から | |
対象者 | 新たに契約する個人 | |
契約内容 | 名義人 | 原則 2名 |
契約者 | 全ての入居者を契約名義人(同一契約書に連名記載)として、入居者のう ちから、代表者を 1 名定める。 | |
契約名義人の 変更 | 契約名義人の一人(部)が退去する場合、退去届を徹する。新たな契約名義人の入居は認めない。 |
■UR 都市機構による案内
○xxxxxxxxxxxxx(xxxxxxx)
x | x | x | x |
目 | 的 | 市営住宅入居者の孤立死の防止及び高齢単身者の入居機械の拡大を目指す。 | |
実施時期 | (入居者募集)平成 23 年 10 月~ | ||
対象者 | 市内在住又は在勤で、自活できる60歳以上の単身者 | ||
仕組み | ・3DK など世帯向け住宅の内部を独立した3室に改造し、1つの住宅に親族関係にない 60 歳以上の高齢者3人が共同居住する。 ・NPO 法人が安否確認、生活相談などの見守りサービスを提供。 *名古屋市は当該市営住宅を地方自治法に規定される行政財産の目的外使用として取り扱い、NPO 法人等の使用を許可している。 | ||
契 | 約 | NPO 法人等が入居者を募集して、個別に入居契約を締結。 | |
建物概要 (改修等) | ・市営住宅の空き室を活用。 ・もともとの住戸プランを活用するタイプ、改修して部屋数を変更したタイプの 2 つのタイプがある。 |
出典:住宅(社団法人日本住宅協会 vol.61,2012)
4 貸しルームの管理・運営
⚫ 貸しルームにおける管理・運営は、交流促進、定期的な巡 、掃除等の維持管理、苦情処理など、運営事業者の介在によるところが大きい。
⚫ 貸しルーム内でのトラブルは、人間関係、掃除・ゴミ問題などが原因で起こることが多い。
⚫ トラブル避のため、ほぼ全ての貸しルームでハウスルールがある。
(1)貸しルームの管理・運営の概要
・貸しルームにおける管理は、日常的な掃除などの維持管理、トラブル処理など、運営事業者の介在によるところが大きい。
・貸しルーム内のトラブルは、8 割弱で「たまにトラブルがおきる」としており、その原因は、人間関係、掃除・ゴミ問題が約半数を占める。家賃の滞納、鍵の紛失などもある。
・トラブルを避するために、ハウス内のルールを取り決め徹底した管理をしているとした運営事業者は半数。入居者との話し合いで随時変更しているとした事業者は 4 割。ほとんどが何かしらのルールがある。
■貸しルームの管理・運営 *貸しルームを管理する管理・運営会社のサイト情報及びシェアハウ
スの事業化・運営戦略資料集(総合ユニコム)を参照し整理。
項 目 | x x | |
運営管理 | 交流促進 | ・入居募集後、居室が大方埋まった段階で、管理・運営会社がウェルカムパーティーを開催するなど、同居者同士の顔合わせを実施するところがある。 *同居者間の交流を促進がポイント。 |
巡 | ・貸しルームは、管理人が常駐しているケースは少なく、担当者が物件を巡しているのが通常。定期的な巡を実施、管理レポートを作成しオーナーに報告している。 | |
維持・管理 | ・入居者による当番制か外部委託。当番制は掃除の仕方の個人差があるのでトラブルなしに綺麗に保つことが課題。 ・共用部の清掃・メンテナンスは、専門業者に委託する場合が多い。 | |
火気使用 | ・安全と管理のために火気は禁じている物件も多い。その場合、料理用コンロは IH タイプ。禁煙の物件も多い。 | |
入居者以外の訪問・宿泊 | ・入居者以外の人を招いても良い物件は少ない。事前に申請する許可制か禁止にしている物件が多い。共有スペースはあくまで入居者がシェアしているスペースであるということ、トラブルがあった場合に誰が責任をとるのかが難しいということで禁止している例が多い。 | |
苦情処理 | ・配水管がつまった、けが人が出た、居住者同士でもめたなどのトラブルがある。 ・入居者規約と併せて、物件ごとの詳細なハウスルールを定め説明しトラブルを未然に防止。→参考参照 ・専任のコーディネーターは必須。居住に関するルールの定期的見直しが必要で、こまめに居住者の意見を吸い上げる。 |
図 4-12 貸しルーム内のトラブル(運営事業者ごとの全体的な傾向)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-13 貸しルーム内のトラブル内容(複数回答)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
図 4-13 貸しルーム内のルール(運営事業者ごとの全体的な傾向)
出典:シェアハウス市場調査 2013 年版(一般社団法人日本シェアハウス・ゲストハウス連盟、株式会社シェアシェア)
【参考】ハウスルール(例)
出典:シェアハウスの事業化・運営戦略資料集(総合ユニコム)
第5章 貸しルーム等に関する課題
第1章から第4章までの調査結果を踏まえ、本章では、本業務において得られた貸しルーム(いわゆる「シェアハウス」)等市場における傾向を総括的に整理し、貸しルーム等における課題を抽出する。
1 本調査から得られた貸しルーム等市場の傾向
1-1 貸しルームの物件概要
(1)建物の形態による貸しルームの特性
・本調査で行った入居者ヘのWEBアンケート(以下、「WEB アンケート」とする)によると、一般的に供給されている貸しルームには、以下のような特性が見られた。
・共同住宅、戸建て住宅、業務・商業ビル、倉庫等の貸しルームの建物形態に着目すると、7割弱が共同住宅、約3割が戸建住宅、残りの数%が業務・商業ビル、倉庫であった。ストックの活用の観点からは、共同住宅や戸建て住宅を活用する貸しルームは中古住宅流通を促進する手法のひとつともいえる。
・建物形態にかかわらず、プライベートな部屋は個室が多いが、2人以上の相部屋も3割を占めた。日本シェアハウス・ゲストハウス連盟によるシェアハウス市場調査 2013 年版(以下、「市場調査レポート」とする。)の運営事業者へのアンケートにおいても、今後展開する貸しルームの部屋タイプとして個室を重要視しており、共用空間を持ちつつも、プライベート性を確保することが貸しルームには求められていると推察される。
・また、プライベートな部屋の面積は、共同住宅・戸建て住宅では 5~12.5 ㎡、業務・商業ビルはそれより狭く 3~7.5 ㎡のものが多い。貸しルーム全体でのプライベートな部屋数は、共同住宅は 2~ 4 部屋、戸建て住宅は 4~6 部屋、業務・商業ビルでは 6~20 部屋の割合が高く、建物の形態によりプライベートな部屋の数や面積が異なった。
・共用スペースには 8 割以上の物件にキッチン、トイレ、浴室、洗面所の部屋があった。設備は、7 割以上の物件に冷蔵庫、洗濯機、電子レンジがあり、6 割以上の物件にガスレンジ、テレビ、下駄箱が備え付けてあり、生活するのに必要な基本的な設備は整っていると推察される。
(2)居住環境として良質とはいえない「狭小・窓なし」貸しルーム
・市場に供給されている貸しルームの中には、居住環境として良質とは言えないものがあると推察された。そこで、WEB アンケート調査では、プライベートな部屋の面積が極端に小さいもの(7㎡未満)、居室に外部に通じる窓がないなど一定の基準を設け、「狭小・窓なし」物件を抽出した。その結果、貸しルーム全体に占める「狭小・窓なし」物件は 1.5 割程度となり、一定程度存在することを把握した。
・そうした、「狭小・窓なし」の貸しルームには、貸しルーム全体の傾向とは異なり以下のような特性が見られ、居住環境として良質とは言えないものがあると推察される。
*プライベートな部屋の面積は、5㎡以下が7.5割を占め、3㎡未満も2割程度見受けられた。
*プライベートな部屋には窓がないものが 4 割を占め(貸しルーム全体では 6%程度)、隣りの部屋との界壁や廊下に面している壁が天井まで達していないものも 2.5 割(貸しルーム全体
では 1 割)を占めた。
*共用スペースには、7 割以上の物件にキッチン、トイレ、浴室、洗面所の部屋があったが、貸しルーム全体の傾向よりは 1 割程度低い。設備についても同様の傾向が見られた。
・そのような居住環境が良質でないと思われる物件が出現する背景には、貸しルーム業界を健全に維持・発展するための基準等がなかったことがひとつの原因と考えられた。
・業界団体等では、貸しルームに独自の基準を設けて運用し、良好な貸しルームを提供しているところもある。(参考参照)
1-2 貸しルームの入居者像
(1)貸しルームを選択する 20 代から 30 代の居住者
・貸しルームは、WEB アンケートや市場調査レポートにより、全国に散在しているものの、首都圏、特にxxxに多いことが明らかになった。
・貸しルームの入居者像としては、20 代~30 代の平均的な若者が住んでいるとみられ、以下のような特性が挙げられる。
*男女比は半々。20 代~30 代の占める割合が高い。
*就業形態は、正社員が 5 割弱で非xx雇用者も多い。
*月収は 15 万円 20 万円未満が最も多く、家賃は5万円未満が7割を占める。
*通勤時間は 30 分未満が半数以上。
*職場の所在地と同一の市区町村に住む割合が高く、職場が東京都内の居住者は職場に近い東京都内に住んでいる割合が高い。
*立地が良い、家賃が安い、初期費用(敷金・礼金等)が安い等の理由で貸しルームを選択している割合が高かった。
・貸しルームがxxxに多く存在すること、居住者の特性を踏まえると、貸しルームの居住者は、家賃相場の高い東京都内において、職場になるべく近く、利便性が高く、かつ家賃が安いという条件を満たす居住形態の一つとして、貸しルームを選択していると推察される。
・以下に参考として、一般賃貸住宅と貸しルームの家賃相場を比較した。一般賃貸住宅は条件次第で多様にあり、一概に貸しルームの方が家賃が安いとは言えない。しかし、アンケート結果から、貸しルームは敷金・礼金等の初期費用が安く抑えられること、冷蔵庫等をはじめ生活に必要な基本的な設備が概ね整っていることから、入居しはじめの費用の持ち出しが少ないことが一般賃貸住宅との大きな違いといえ、シェハウスを選択するひとつの理由となっていると考えられる。
・また、貸しルームは、共同居住であることから様々なバックグランドを持った人たちとのコミュニケーションが魅力のひとつとなっていると推察される。その点については、本調査では詳細に把握していないが、入居者への WEB アンケート調査でも貸しルームを選択した理由として、他の居住者とコミュニケーション、イベントなどが楽しそう等の付加価値を挙げる居住者もある程度いた事から、共同生活することで得られる事の魅力についての評価は高いと思われる。
(条件)①アンケート結果を踏まえ、ひつじ不動産ポータルサイトより以下の条件で貸しルームを選択。
*xx区周辺(物件が多いエリア) *月々の家賃が 5 万円程度(ボリュームゾーン)
②賃貸情報検索サイト「at home」にて、①で選択した貸しルームと最寄り駅・最寄駅からの所要時間が近く、なるべく築年数の浅い賃貸物件を選択(2013.312 時点)
(結果)事例 1
事例2
■一般賃貸住宅と貸しルームの家賃相場の比較
貸しルーム | 一般賃貸住宅 | |
住所 | - | xxxxx区笹塚 1 丁目 |
最寄り駅 | 京王線笹塚駅 | 京王線笹塚駅 |
最寄駅からの所要時間 | 徒歩 4 分 | 徒歩 2 分 |
構造・築年 | - | 木造・1993 |
間取り・広さ | 7.0 ㎡(4.3 畳)+α(共用部) | ワンルーム 9.31 ㎡ |
家賃(共益費含む) | 5.7 万円 | 6.2 万円 |
その他条件(設備等) | 備品:エアコン、机、椅子、液晶 TV、ミ | ロフト付 最上階 角部屋 |
ニ冷蔵庫、収納ボックス、LAN ケーブル、 | 設備:サービス エアコン、公営水道、都 | |
ハンガー、ポールハンガー、物干し竿、カ | 市ガス、下水、フローリング、ロフト付き、 | |
ーテン | 光ファイバー、インターネット利用料無料 | |
初期費用:クリーニング代 9,000 円のみ | ||
必要 | ||
契約種類:定期建物賃貸借契約 |
貸しルーム | 一般賃貸住宅 | |
住所 | - | - |
最寄り駅 | 京急本線大森町駅 | 京急本線大森町駅 |
最寄駅からの所要時間 | 徒歩 8 分 | 徒歩 9 分 |
構造・築年 | - | 木造・2012 |
間取り・広さ | 7.1 ㎡(4.4 畳)+α(共用部) | ワンルーム 13 ㎡ |
家賃(共益費含む) | 5.8 万円 | 5.9 万円 |
その他条件(設備等) | 備品:エアコン、机、椅子、ベッド下収納、ハンガーパイプ 初期費用:クリーニング代 20,000 円償 却、事務手数料 52,500 円。 | 設備:キッチン/バス・トイレ 電気コンロ、給湯、冷蔵庫あり、シャワー |
(2)「狭小・窓なし」貸しルームの居住者特性
・WEBアンケート調査では、貸しルームの居住者像を「貸しルーム全体」と「狭小・窓なし」物件に分類し、分析を行った。ここでは、中でも「狭小・窓なし」貸しルームの居住者の特性を取り上げる。
・非xx雇用の割合が貸しルーム全体の傾向(以下、「全体傾向」とする)より高いなど、経済的に安定していない居住者も多いと推察される。
*男女比は半々。20 代~30 代の占める割合が高いが、40 代の占める割合が全体傾向より高い。
*就業形態は、正社員が 4 割いるものの、非xx雇用者の割合が約半数。
*1週間あたりの勤務時間は 8 時間~24 時間が 2 割を占め多く、全体的に労働時間は短い傾向。
*月収は 15 万円未満が5割を占め、収入なしも 1.5 割いる。
*生活保護などの生活支援を受けている割合は、全体傾向より若干高く、保険等の加入率も全体傾向より低い。
*通勤時間は 30 分未満が 5 割以上を占め、中でも 15 分未満の割合が全体傾向より高く、勤務地近くに住んでいると推察される。
・また、「狭小・窓なし」貸しルームでは、月々の家賃が安いとの経済的な理由で、消極的に貸しルームを選択している居住者が多いと推察され、そのため、居住期間も短い傾向にある。
*家賃は 3 万円未満が 4.5 割を占め、5 万円未満で7割を占める。全体傾向より安い。
*貸しルームを選択した理由で最も重要視したものとして「家賃が安いから」、「勤務地に近いから」が全体傾向よりも高く、家賃の安さを重要視した傾向。「連帯保証人が不要だから」、
「住民登録が可能だから」、「家賃債務保証会社が不要だから」などの理由は、全体傾向よりも数ポイント高い。
*退去に至った理由として、「当初から短期的に居住するつもりだったから」が一番多く、全体と同様の傾向を示すが、「想像としていた共同生活と違っていた」、「入居者のマナーが悪いから」、「入居者間のトラブルがあったから」は全体よりも数ポイント高い傾向にあり、マイナス要因による退去もあるとみられる。
*実際の居住期間は、1 年未満が 6 割弱を占め、全体傾向よりも居住期間が短い。
1-3 貸しルームの契約内容
(1)主流と思われる定期借家契約
・貸しルームの契約形態については、市場調査レポートにおける運営事業者へのアンケートにより、定期借家契約が主流と考えられるが、WEB アンケート調査では、普通賃貸借契約の割合も高かった。また、一次使用目的賃貸借契約、オフィス利用契約、倉庫利用契約等も一定程度あることから、貸しルームにかかる契約形態は多岐にわたることがわかった。
・定期借家契約は、契約の更新ができない、1 年未満の契約期間を設けることが可能などが、普通賃貸借契約とは大きく異なる。そのため、運営事業者側は契約期間を短めに設け、正当事由無しに再契約を断ることができるなど、運営事業者側とってメリットがあり、共同居住形態をとる貸しルームならではの活用と考えられる。一方、居住者にとっても、契約期間が短いために貸しルームにとりあえず住むことが可能、共同居住が難しいと思われた時に短期間で転居できるなど、メリットがある。WEBアンケート調査でも、貸しルームを選択した理由として、「短期的に住む予定だった」が一定程度あった。これらから、定期借家契約は、居住者、運営事業者双方にとって、メリットのある契約形態とも言える。
(2)契約期間と実際の居住期間
・貸しルームの契約形態として主流と考えられる定期借家契約は、1年未満の短期間の契約期間を設定することが可能であることから、WEB アンケート結果では、6か月以上1年未満、2か月以上6か月未満の割合が高く、1年未満の短い期間が6割を占める結果が得られた。また、一時使用目的賃貸借契約にあっては、1年未満の短い期間が 8 割近くを占めた。一方、普通賃貸借契約は、1年半以上2年未満の割合が高く、1年未満の短い期間は4割も満たなかった。
・実際の居住期間はばらつきがあるものの、6 ヶ月以上 1 年未満が 2 割を占め高く、1 年未満で 5 割程度を占める。一般的な賃貸住宅よりも短い居住期間であることから、短く設定される契約期間との関係があると推察される。
(3)契約時にかかる費用と家賃
・貸しルームの契約時の必要経費、月々の家賃についてWEBアンケートにより把握したところ、運営事業者により費用の種別や設定方法は様々で、一般の賃貸住宅とは大きく異なっていた。
・一般的な賃貸住宅の場合、通常、月々の家賃は住宅の費用として支払い、その他共益費として共用部の維持管理に係る費用を別途支払うことが多い。また、敷金・礼金は契約時に支払う場合が多い。一方、貸しルームの場合、月々の費用として、家賃とは別に共用使用している水道光熱費が発生する点が、一般的な賃貸住宅とは異なる点である。WEBアンケートによれば、水道光熱費等の管理費・共益費を含めた月々の家賃は、5万円未満が7割弱を占め、その内訳として、水道光熱費等の管理費・共益費は 5 千円未満が 5 割を占めた。
・また、契約時に必要な費用は事業者により異なり、デポジット、保証会社への保証料、事務手数料、退去時の清掃料など、様々な名称で徴収される。アンケート調査では、敷金(デポジット)、礼金、保証会社への保証料、その他として把握したが、いずれの場合も「不要」もしくは「わからない」との回答の割合が高かったことから、貸しルームにかかる費用については、事業者により様々な設定がなされ、理解しにくいものとなっていると推察される。
(4)契約手続き
・運営事業者による貸しルームの募集は、専用ポータルサイトで行われることが主流となっており、入居希望者は、そのサイトから運営事業者にアクセスし応募する方法が多いと思われる。
・共同居住の形態をとる貸しルームは、既存の住人と新規の入居希望者とのマッチングが重要視されることから、物件の内覧時等を利用して、運営事業者による入居審査が 8 割以上で行われている。運営
事業者からの入居拒否も 6 割が「する」としていることから、貸しルームへの入居は、運営者側も入居者を選ぶ立場にいるといえる。
・また、WEB アンケート調査によると、契約時の手続きとして、「内見」、「免許証等による本人確認」、
「契約内容の対面による説明」が 8 割以上で行われている。しかし、1.5 割の物件で行われていないとの回答が得られたことから、適正な契約手続きが行われていないものもあると推察される。
・敷金・礼金などのまとまった費用を徴収しない貸しルームでは、連帯保証人の提示や保証会社への加入が約半数で求められている。
【参考】主な業界団体等によるシェアハウスの質の向上に向けた取り組み(貸しルームの基準等)
㈱ひつじインキュベーション・スクエア ひつじ不動産のポータルサイト掲載基準の主要部分 出典:SHARE ISSUE ARCHIVES HP | 日本シェアハウス・ゲストハウス連盟会員運営ガイドライン(附則 2013.8,14) 出典:日本シェアハウス・ゲストハウス連盟HP | 一般社団法人 日本シェアハウス協会 シェアハウス事業の基本指針(H26.1.21) 出典:日本シェアハウス協会HP | |
貸しルームの基準等 | ○入居者同士が十分に交流を育む余地のある屋内の共用設備/スペースが提供されていること ○建築基準法上の用途区分が明らかに住居系以外の用途でないと判断できること ○提供する専有部(居室/寝室)の床面積が 7 ㎡以上であること ○提供する居室(住室)の床面積の 7 分の 1 以上の大きさの開閉可能な窓が設置されており、その内寸の短辺もしくは短径の長さが著しく短くないこと ○室内の床面積に対し極端に大人数の入居者を受け入れているドミトリー(相部屋)を提供していないこと。具体的には、1人あたりの床面積 4 ㎡以上を目安とする ○旅館業法等に規定された行政の認可無く1ヶ月未満の滞在を受け入れていないこと ○提供部屋数が 4 部屋(または 4 ベッド)以下の物件は、男性専用または女性専用であること ○経済性を主たる訴求点とせず、低所得者向け専門との印象を与える可能性が低いと判断できること ○衛生管理及び入居者コミュニティの管理体制が安全かつ快適に生活可能な水準を充分に満たしていること ○掲載不可能な住室 3 室(ドミトリーは 1 ベッド 1 室)以上もし くは全体の 4 割以上ないこと | 1.各シェアハウスの許容人数について 今後、連盟は各シェアハウス物件最大許容人数×9.84 ㎡が、延床面積以下であることを推奨基準とする。 2. 建物用途について 各シェアハウス事業者が運営する建物の建築確認届出済み用途は、住居系建築物である「一戸建ての住居」、「xx」、「共同住宅」、 「寄宿舎」、「下宿」のいずれかであることとする 3. 入居者との契約について 入居者との契約は普通建物賃貸借契約または定期建物賃貸借契約とする。 4. マンションを使用してシェアハウスを運営する場合 区分所有建物(マンション・団地等)をシェアハウスに転用する場合、管理組合の規約を守り、またその了承を得ることとする。 5. 各シェアハウスのデータ管理について 運営するシェアハウスの建物住所・居室数(個室数と相部屋数)・延床面積に関するデータを連盟で収集し、会員専用ホームページ内に保存することとする。 6. 防火管理者の資格取得 シェアハウス事業者は、組織内に最低一名は防火管理者の資格を有することとする。 7. 防火対策の周知徹底 入居者に対し防火対策、避難口、避難方法等を周知させることとする(マニュアル等の作成または定期的な避難訓練など)。 | 1.用語の定義 1)シェアハウス 戸建住宅及び共同住宅の専有部を全て賃貸住居用に利用するタイプで個室単位の契約形態は「寄宿舎」扱い、ハウスシェアリング方式の場合は、「住宅」扱いとする。 2) ホームシェア 戸建て住宅及び共同住宅専有部の一部を賃貸住居用に利用し建物所有者又はその家族が「共住」するタイプで個室単位の契約形態でも「住宅」扱いとする。 3) ドミトリー 個室に複数名が同居するタイプで当協会の自主基準に基づき提供可能とする。借主個人単位の契約形態は「寄宿舎」扱い、ルームシェアリング方式の場合は「住宅」扱いとする。 2.建築確認申請及び既存活用に関する指針 1)新築の場合は 200 ㎡未満の場合でハウスシェアリング及びルームシェアリング方式であれば「08010:戸建住宅」として建築確認許可を取得し、200 ㎡を超える場合は「08040:寄宿舎」として建築確認許可(及び消防許可)を取り、共に「検査済証」を取得する。 2)既存戸建て住宅(08010)は、延べ床面積が 200 ㎡未満の場合は、元の用途である戸建て住宅とし、ハウスシェアリング及びルームシェアリング方式を前提とすれば「寄宿舎」への用途変更は無用とする。これは共同住宅の住戸も同様とする。 3)既存不適格のうち、旧耐震基準の建物は耐震補強し、簡易判定 1.0 以上をクリアーするものとする。又、接道や建ペイ率や容積率、その他の既存不適格建築の場合は事前に当協会コンプライアンス部会で判断する。 4)その他、事務所、倉庫、店舗などの非住居系用途の場合は、建築基準法の用途変更手続きを必須とする。又戸建て住宅でも 200 ㎡を超える規模の住宅の用途指導は、所轄の特定行政庁と協議する事とする。 4.その他の指針 1)建築関係 ①今後、様々な被害地震発生が懸念されている事から入居者の安全が最優先である為、旧耐震基準の住宅は原則新耐震基準への建替えか、耐震診断の実施と安全基準数値迄の耐震補強及び内外装の準耐火使用とし「耐震化促進」に貢献する。 ②200 ㎡を超える場合、所轄の特定行政庁独自の基準(例えばxxxや横浜市の安全基準など)は遵守するが寄宿舎としての窓先空地は数値基準ではなく、実際の避難通路(空間)が確保されているかを当協会基準で判断し主張する。 ③ルームシェアリングの場合避難路である廊下・階段部分(竪穴区画)の準耐火構造仕様及び個室の間仕切りも遮音性向上と防火性能向上の為に「界壁仕様」とする義務は無いが、安全性と居住性向上の為に可能な範囲で施工する事をすすめる。 2)消防関係 ①東京消防庁では、既に「シェアハウス」は「共同住宅」として指導しており入居者の安全性向上の為に、消火器や避難はしご、非常灯設置などの指導は遵守する。 ②新築は無論、既存活用の場合でも全て所轄の消防署へ「使用開始届け」を提出し、管理台帳に登録してもらう。 3)基本計画関係 ①シェアハウス及びルームシェアリングの場合の個室の最低床面積は7㎡以上とし、採光等の条件は建築基準法及び各特定行政庁の定める法令を遵守する。 ②ドミトリーに関しては、一人当り4㎡以上を確保基準とし且つ建物の延べ床面積÷10 ㎡を上限入居人数とする。又違法貸しルームの指導を受ける固定壁で仕切らず、その他は協会基準に準じる。 4)安全性と安心の向上(国土交通省は特に災害(地震火災)を心配し寄宿舎指導を開始した) ①震災対策用品 震災後、水道・ガス・電気が止まる事で生活が困難になる事を想定し当協会が推奨する最低限の 「震災対策用品」を設置する。 ②避難訓練 年2回(1月・9月)に震災対策用品の点検や地域の給水拠点情報や帰宅ルートの確認、安否情報の受発信など基本的情報を共有化する。 ③喫煙管理 室内喫煙の厳禁と万が一違反者が出た場合の退去処置を徹底する。 5)協会「登録ハウス」への掲載 既存及び新規は今後全て「協会登録ハウス」の審査を受け、協会のホームページに掲載・登録される様に協力する。 |
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2 貸しルーム等に関する課題
2-1 居住空間としての質の確保
・貸しルームは、個々でプライベートな部屋を持ちつつも、キッチンなどの共用空間を複数で利用しながら住む居住形態であることを把握した。しかし、そうした貸しルームの中には、プライベートな部屋が狭小であったり、屋外に面する窓がないなど、住居としてふさわしいといえない物件があることも明らかになった。
・貸しルームは、複数で住むことを考慮すると、特に、火災など防災面での安心・安全は確実に確保されなければならないと考えられる。また、住居であることを考慮すると、プライベートな部屋の居住面積を確保することや建築基準法上の居室としての基準を満たすことなど、居住空間としての質を確保することは重要だと思われる。今後、貸しルームが居住形態の一つとして、一層魅力的な住居に発展するためにも、貸しルーム市場の質の向上は今後も継続的に取り組むべき課題と思われる。
2-2 契約形態による手続きの明確化
・貸しルームの契約形態は、定期借家契約をはじめ、一時利用目的賃貸借契約など多岐にわたることが明らかになった。特に定期借家契約は、契約更新できないなどの一般的な普通賃貸借契約とは契約内容が異なり、また、入居者への WEB アンケート調査でも契約形態について「わからない」が 1 割強占めていたことなどから、初めて貸しルームに住む者にとって、自分が締結する契約が、どのような契約名目で、その契約内容の特徴は何か、契約に至るまでどのような手続きが行われるかなど、契約に関する一連の手続き内容が十分に理解されていない場合もあると推察された。
・さらに、共同居住の形態をとる貸しルームでは、既存の居住者とのマッチングが重要視され、運営事業者により契約前の入居審査が行われるものも多かった。運営事業者側としても居住者を選ぶ立場にあることが一般的な賃貸住宅とは異なる特性として挙げられた。
・今後、物件申し込みから契約締結までどのような手続きが行われるか等、契約にかかる具体的な内容の周知などを通じ、定期借家契約をはじめとする多様な契約への理解を深めることが、契約者、運営事業者、双方にとって重要であると考えられる。
・また、居住用の物件にもかかわらず、オフィス契約、倉庫契約など、居住用と異なる契約を締結している実態については、適切な対応が図られることが必要と思われる。
2-3 共同居住によるトラブルの把握・対策
・貸しルームは、キッチン、リビングなどの共用空間を全くの他人と共同で使用することが、一般的な賃貸住宅で生活することと大きく異なり、それゆえに、居住者間のトラブル等も発生しやすいことが明らかになった。
・貸しルームを良質な住居として運営していくためには、そうしたトラブルの回避、トラブル発生時の早めの解決が大きな鍵となると考えられる。貸しルームの特性として、そうしたトラブル解決を担うのは主に運営事業者であることから、今後、運営事業者へのヒアリング等を通じ、貸しルームの管理や運営状況の把握、トラブル対策方法の検討が必要と思われる。
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