第7条 乙は、甲から本協定に基づく措置の実施の状況及び当該措置に係る当該医療機関の派遣状況その他の事項について報告の求めがあったときは、速やかに当該事項を報告 するものとする。この場合において、広域災害救急医療情報システム(EMIS)等により報告を行うものとする。
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資料4 |
○○都道府県における災害支援ナースの派遣に関する協定の解説
○○都道府県知事(以下「甲」という。)と (以下「乙」(病院又は診療所の管理者)という。)とは、災害支援ナースの派遣に関し、次のとおり協定を締結する。
(解説)
災害支援ナースの派遣は、都道府県知事と医療機関の管理者とが協議し、合意が成立したときは協定を締結し、その協定の内容に基づき派遣を行うこととなっている。(改正医療法第30条の12の6)
(目的)
第1条 この協定は、災害・感染症医療確保事業を実施するため必要な研修の課程を修了した看護職員が速やかに出動し、看護活動を行うことにより、地域の医療提供体制を支援し、人々の生命や健康を守ることを目的とする。
(解説)
改正医療法では、都道府県知事が、医療計画に定める災害医療又は感染症発生・まん延時における医療の確保に必要な事業(災害・感染症医療確保事業)を実施するため、 災害・感染症医療業務従事者又は災害・感染症医療業務従事者の一隊(以下「医療隊」という。)の派遣の求め及び当該求めに係る派遣に関すること等を協定に記載することとされている。
(派遣要請等)
第2条 甲は、災害支援ナース活動要領等に基づき、災害や新型インフルエンザ等感染症等について対応を行う必要が生じた場合は、乙に対し、災害支援ナースの派遣を要請するものとする。
2 乙は、前項の規定により甲から要請を受けた場合は、速やかに災害支援ナースを派遣するものとする。
(解説)
改正医療法第30条の12の6第1項第1号に基づき、災害・感染症医療業務従事者又は医療隊を派遣する手続きについて記載するもの。
(派遣先)
第3条 乙が派遣する災害支援ナースは、甲の都道府県内において看護活動を行うことを原則とする。
2 甲又は国が認めた場合には、他の都道府県において第4条に定める看護活動を行うことができる。
(解説)
災害支援ナースの派遣に関する協定は、災害・感染症医療確保事業の実施を目的としていることから、まずは協定を締結した都道府県知事の管轄する都道府県内で活動することが基本となるが、災害や感染症発生・まん延時においては、都道府県を越えた協力が必要となる場合があることから、他の都道府県からの求めに応じた派遣を行うことも可能である。その場合、第3条第2項のように、当該派遣を行う旨を協定に記載する必要がある(改正医療法第30条の12の6第1項第2号)。
また、新興感染症発生・まん延時には、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第44条の4の2第6項及び感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則第23条の10第2項に基づき、国から医療人材派遣の求めを受けることがあり得る。
(災害支援ナースの活動)
第4条 乙が派遣する災害支援ナースが行う業務は災害支援ナース活動要領等に定めるものとする。
(解説)
改正医療法第30条の12の6第1項第3号に基づき、災害・感染症医療業務従事者又は医療隊が行う業務の内容について記載するもの。具体的な活動としては、災害支援ナース活動要領において、災害等発生時の医療機関、社会福祉施設、避難所(福祉避難所を含む)等での看護業務等を行うこととされている。
第5条 乙が派遣した災害支援ナースに対する指揮及び活動の連絡調整は、甲が指定する者が行う。
2 災害支援ナースが他の都道府県からの要請を受けて派遣される場合には、要請した(被災)都道府県の災害支援ナース受入に係る体制の中で活動するものとする。
(解説)
災害支援ナースの指揮系統については、災害支援ナース活動要領により、災害支援ナース派遣先都道府県が管内で活動する全ての災害支援ナースを指揮することとされている。なお、災害支援ナースの派遣調整業務を都道府県が都道府県看護協会その他の法人に委託して実施するなど、地域の実情に応じて効率的・効果的な体制を構築しておく必要がある。
(身分)
第6条 乙が派遣する災害支援xxxは、原則として派遣元である乙の職員として看護活動に従事する。
(解説)
災害支援ナースは、所属する医療機関との雇用関係を維持したまま、災害発生時等に都道府県から災害支援ナースの派遣要請を受けて所属医療機関が派遣を行う。
(協定の実施状況等の報告)
第7条 乙は、甲から本協定に基づく措置の実施の状況及び当該措置に係る当該医療機関の派遣状況その他の事項について報告の求めがあったときは、速やかに当該事項を報告するものとする。この場合において、広域災害救急医療情報システム(EMIS)等により報告を行うものとする。
(解説)
改正医療法第30条の12の6第3項及び第4項の規定に基づき、災害支援ナースが所属する医療機関は、都道府県知事から求めがあった場合には協定に基づく措置の実施状況等について報告することとされている。その方法については、医療法施行規則第30条の33の2の4の規定により、電磁的方法、書面の交付その他適切な方法とされているところ、災害支援ナース活動要領に基づき、EMIS等を用いて報告することを基本とする。
(平時における準備)
第8条 乙は派遣時に迅速な対応がとれるよう、組織内の連絡、派遣体制の整備に努めるものとする。
2 甲は、災害支援ナースの資質のxxxを図るため、研修、訓練等の企画及び機会の提供に努める。
(解説)
改正医療法第30条の12の6第1項(第7号)及び医療法施行規則第30条の33の2の4第1項に基づき、協定に基づく措置に係る準備に関する事項について記載するもの。
災害支援ナースは、被災者の救助・救出に係る時期を脱した後、被災地の復旧・復興が始まる前までの看護のニーズが特に高まる急性期から亜急性期(発災後3日以降から1か月間程度)を目安に活動することとしており、要請があった際に対応が可能な準備を平時よりしておく必要がある。また、都道府県は、平時における準備として、災害支援ナースに対する研修及び訓練の実施又は外部の研修・訓練に医療従事者を参加させるように努める必要がある。
(費用負担等)
第9条 甲の要請に基づき乙が派遣した災害支援ナースが、第4条の業務を実施した場合に要する次の費用は、甲が支弁するものとする。
一 乙が供給した医薬品、医療器具等を使用した場合の実費
二 前号に定めるもののほか、この協定の実施のために要した経費のうち、甲が必要と認めた経費
2 (被災した)市町村又は他都道府県等からの要請に基づき、甲が乙に対して災害支援ナースの派遣を要請した場合は、前項に定める費用について、甲が支弁する。
(解説)
改正医療法第30条の12の6第1項(第4号)に基づき、派遣に要する費用の負担の方法について記載するもの。具体的な費用として、日当、交通費、宿泊費や看護活動に要した実費等が想定される。
なお、改正医療法第30条の12の8第2項等の規定に基づき、他の都道府県からの要請に基づく派遣に係る費用については、要請を受けた都道府県より、他の都道府県に対して求償することが可能である。
(災害救助法適用時の費用負担)
第10条 甲の要請に基づき、乙が派遣した災害支援ナースが、災害救助法(昭和22年法律第118号)第7条の規定に基づく救助に関する業務に従事した場合は、甲は災害救助法第18条第2項及び災害救助法施行令(昭和22年政令第225号)第5条に定めるところにより費用を負担する。
(解説)
第9条により、都道府県は医薬品や医療器具等を使用した場合の実費その他必要と認めた経費を負担することになるが、災害救助法第7条の従事命令が適用された場合の同法に基づく費用負担について別途明示したものである。
(損害補償)
第11条 甲は、甲の要請に基づき乙が派遣した災害支援ナースが、第4条の業務に従事したため、死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となったときは、その損害を補償するものとする。
2 甲は、甲の要請に基づき乙が派遣した災害支援ナースの看護活動等において生じた事故等における損害を補償するため、甲の負担により傷害保険に加入させる。
(解説)
災害支援ナースの看護活動等への補償は、自然災害や事故による負傷、感染症や精神疾患への罹患についても対応することが必要である。
(定めのない事項等)
第12条 この協定に定めのない事項及びこの協定に関し疑義が生じたときは、甲、乙協議して定めるものとする。
(解説)
協議による契約内容の検討の可能性について定めている。
(当該協定変更に関する事項)
第13条 この協定の定める事項に変更が生じた際、甲、乙協議して定めるものとする。
(解説)
改正医療法第30条の12の6第1項(第7号)及び医療法施行規則第30条の33の2の4の規定に基づき、当該協定を変更する場合の手続等について定めるもの。
(有効期間)
第14条 この協定の有効期間は、協定締結の日から起算して1年間とする。ただし、この協定の有効期間満了の日の1か月前までに、甲、乙いずれからも更新しない旨の申し出がない場合は、有効期間満了の日から起算して1年間更新されるものとし、以降も同様とする。
(解説)
契約の有効期間は協議において決めて差し支えない。
(協定の措置を講じていないと認められる場合の措置)
第15条 甲は、乙が、正当な理由がなく、本協定に基づく措置を講じていないと認めるときは、乙に対し、医療法等に基づく措置を行うことができるものとする。
(解説)
災害・感染症医療確保事業を実施するに当たっては、まずは、当該規定に基づく医療法等に基づく措置(勧告・指示等)を行う前に、地域の医療機関等の関係者間での話し合いに基づく調整を行うことが重要である。
この場合、災害・感染症医療のみならず、救命救急医療や他の一般診療への影響など、地域の医療提供体制全体の状況を十分に勘案していただくことが必要である。
「正当な理由」については、災害等の状況や医療機関の実情に即した個別具体の判断が必要である。
例えば、
(災害の場合)
(1)所属医療機関が所在する地域の被害により、災害支援ナースの派遣が可能な人員を確保できない場合
(2)所属医療機関の被害状況により、災害支援ナースの派遣が可能な人員を診療体制の維持に従事させることが必要な場合
(3)想定を大きく上回る災害等により、人員や設備が不足し、災害支援ナースの派遣を行うことが困難な場合(災害等の対応を優先し他機関への派遣の事務等を行うことが困難な場合を含む)
(感染症の場合)
(1)感染拡大により派遣可能な人員が感染し、災害支援ナースの派遣を行うことが困難な場合
(2)ウイルスの性状等が協定締結時に想定していたものと大きく異なったため、所属医療機関の感染症診療に派遣可能な災害支援ナースを従事させる必要がある場合
(3)想定を大きく上回る感染拡大等により、人員や設備が不足し、災害支援ナースの派遣を行うことが困難な場合(感染症等の対応を優先し他機関への派遣の事務等を行うことが困難な場合を含む)
等、協定締結時の想定と異なる事情が発生し、協定に沿った対応が困難であることがやむを得ないと都道府県が判断する場合がある。
なお、ここでお示ししている内容の他、都道府県や医療機関からの情報が蓄積され次第、都度、協定が履行できない「正当な理由」の範囲について、不xxとならないよう、できる限り具体的に示していくこととする。
また、「医療法等に基づく措置」とは、医療法第30条の12の6第8項から第10項までに規定する措置をいい、都道府県知事が協定を締結した病院又は診療所の管理者に対し、締結した協定に基づく措置をとることの勧告をし、勧告に従わないときに指示をし、なお従わないときに公表することができる。
実際に都道府県が感染症法等に基づく措置(指示や勧告等)を行うか否かは、締結した協定の措置を講じないことによる患者の生命・健康等への影響や、協定の措置に代えて実施し得る他の手段の有無といったことを総合的に考慮して判断されるべきものと考えられる。
なお、都道府県において、勧告・指示・公表の是非を判断するに当たっては、医療機関等の事情も考慮し、慎重に行うこととし、例えば、都道府県医療審議会等の関係者の会議体により、事前に(緊急時でやむを得ない場合には事後に)、勧告・指示・公表について当該会議体から意見を聴取するなど、手続きの透明性を確保すること。
(感染症法に規定する医療措置協定との関係)
第16条 甲と乙が、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第36条の3第1項に規定する医療措置協定に基づく新型インフルエンザ等感染症等に係る人材派遣として災害支援ナースの派遣を実施する場合には、本協定が医療措置協定の一部を兼ねるものとし、本協定に定めるもののほか、当該派遣については医療措置協定によるものとする。
(解説)
医療法に基づく協定においては、「災害・感染症医療業務従事者」は災害や感染症に対応するために、国が養成・登録する災害支援ナース等の医療人材の派遣について定めることとしている。他方で、感染症法第36条の3第1項に規定する医療措置協定においては、新型インフルエンザ等に係る医療提供体制の確保に必要な措置を迅速かつ的確に講ずるため、「新型インフルエンザ等感染症医療担当従事者」及び「新型インフルエンザ等感染症予防等業務関係者」(感染症の発生、まん延時において、感染症患者に対する医療や感染症の発生・まん延防止のための医療提供体制確保に係る業務に従事する医師、看護師その他医療従事者)の広域派遣を含む各種の措置のうち当該医療機関が講ずべきものを定めることとしており、これらの者の中には「災害・感染症医療業務従事者」も含まれうる。このように、両協定はその目的や対象が重複するため、医療法第30条の12の6第2項の規定に基づき、同法に基づく協定は、医療措置協定と一体のものとして締結することができることとしている。
なお、医療法に基づく協定は病院、診療所を対象としているが、災害支援ナースは、病院、診療所のほか、訪問看護事業所、助産所等にも所属していることから、都道府県が地域の実情に応じて、訪問看護事業所や助産所等と協定を締結することを妨げるものではない。また、所属する施設のない災害支援ナースについても地域の実情に応じて、都道府県が災害支援ナースを直接雇用する、あるいは都道府県看護協会が災害支援ナースを雇用した上で、都道府県と都道府県看護協会が協定を締結し、派遣を行うことができる。詳細については、災害支援ナース活動要領を参照されたい。
この協定の締結を証するため、本書2通を作成し、甲、乙両者記名の上、各自1通を保有するものとする。
令和 年 月 日
甲
乙 |
(解説)
協定書は2通を作成し、甲、乙両者記名の上、各自1通を保有する。
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