Japanese no. 36/2022
シーフェアラーズ・
国際運輸労連
ブルテン
世界を
動かし続ける
船員たち
Japanese no. 36/2022
コロナ禍の打撃を受け続ける船員たち
12頁の
綴じ込み
遺棄
ガイドブック
目次
支援要請
インスペクターの連絡先
インスペクターの支援
あなたの法的権利
詐欺
ITFに支援を求めるには 拡大版綴じ込みガイドブック
2 目次
4 FOCキャンペーン
5 コロナ禍の影響
8 船員のワクチン接種
10 支援の現場最前線
12 行動する組合
13 遺棄
16 プロフィール xxx・xxxxxITF会長
18 海で活躍する女性綴じ込みガイドブック
連絡先とアドバイス
19 業界の動向
20 詐欺
22 船員の有罪化
25 健康と幸福
26 ITFインスペクター
30 便宜置籍船(FOC)
32 水産
34 港湾労働者
35 ITF船員トラスト
36 ITFのウェブサイトとソーシャルメディア
デジタルバージョンはこちら
国際運輸労連(ITF)は、約150か国、700組合の交通運輸労働者2,000万人(船員91万人を含む)を組織する国際的な労働組合の連合体です。船員、水産、内陸水運、港湾、鉄道、路面運輸、民間航空、観光の8つの産別部会で構成され、国際レベルで交通運輸労働者を代表するとともに、グローバルな運動や連帯活動を通じて労働者の利益増進を図っています。世界の港湾に130人のインスペクターやFOCキャンペーン担当者を配置しています。
発行:国際運輸労連(ITF)東京事務所 x000-0000 xxxxxxx0-0-00 xxxxxx0X ☎03-3798-2770 FAX03-3769-4471 Xxxxxxxx@xxxxxxxx.xxx Web http: /xxxxxxxx.xxx/日本語以外の言語版(英語、アラビア語、 中国語、ドイツ語、インドネシア語、ロシア語、スペイン語、トルコ語)については、上記までお問い合わせください。PDFをダウンロ
ードすることもできます。 https: /xxx.xxxxxxxxxxxx.xxx/xx/xxxxxxxxx/xxxxxxxxx
Web: xxx.xxxxxxxxxxxx.xxx Email: xxxx@xxx.xxx.xx Tel: x00 (00) 0000 0000 Fax: x00(00)0000 0000
表紙写真: xxxx・xxランジット(フィリピン) ITF船員xxxxが2021年に実施した写真コンテスト「去る者は日々に疎からず」の入選作「パパは疲れているけど、決して諦めない」
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
ようこそ 3
「新型コロナウィルス感染症のパンデミック(世界的大流行)によって今年もまた困難と不安が続く中、船員のプロ意識と犠牲、努力によって世界の物流が維持されていることに、ITFを代表して心から感謝します」
みなさま
新型コロナウィルス感染症のパンデミックによって今年もまた困難と不安が続く中、ITFを代表し、プロ意識を高く持ち、多くの犠牲を払いながら、多大な努力をして、船員の皆さんが世界の物流を動かし続けて下さっていることに ITFを代表して心から感謝します。
また、船員とその家族が経済的な不安定xx不安を抱える困難な時期に、組合員に連帯し、実質的、精神的サポートを提供し続けている加盟組合にも感謝します。
今年のシーフェアラーズ・ブルテンでは、契約期間を超過しての労働、上陸休暇の拒否、時には必要な医療を受けられないこともあるなど、コロナ禍が船員の生活に及ぼした影響を軽減するためにITFと加盟組合が行ってきた様々な取り組みを紹介しています。
まだまだ道半ばではありますが、船員が自国や外国の港を訪問する際にワクチンを受けられるよう運動を推進してきたことは大きな成果です。地元の組合、ITFインスペクター、船員福祉セン ターが、この重要な活動を現場で展開する支援をしてくれました。
また、今号では、便宜置籍(FOC)制度が船員にとって何を意味するのかについても解説します。船員が未払い賃金を勝ち取り、本国送還を果たす際に、FOC制度が障害となった船員遺棄の事例もいくつか紹介します。また、船員が犯罪捜査に巻き込まれた際に、FOC制度がいかに裁判の進行を遅らせたかを示す事例も紹介します。
新たに船員の仕事をお探しの方は、ITFの新設専用ウェブサイト「ShipBeSure」を活用してください。同サイトでは、採用の各ステップで、皆さんが詐欺の被害に遭わないように支援することを目指しています。
今号では、綴じ込みページを拡大し、より基本的な情報や助言を掲載し、読者の皆様がより活用し易いものにしました。
シーフェアラーズ・ブルテンの発行を準備する今現在も、ウクライナでは恐ろしい戦争が続います。ITFファミリーを代表し、悲劇的な戦争に巻き込まれたウクライナとロ シアの船員、そしてその家族の皆様に思いを寄せたいと思います。ITFは皆さまのために常に祈っています。
連帯を込め、2022年に平和が訪れることを祈念して。
xxxxx・xxxx
ITF書記長
xxx.xxxxxxxxxxxx.xxx #ITFseafarers
4
目次
数字に見る FOCキャンペーン
(2021年)
ITFの査察件数
ITFが査察した船舶を問題が判明した船舶と問題がなかった船舶に分類
船舶総数
査察した
7,264
査察で判明した
問題上位5種
1,911 契約違反
1,851 協約関連
1,198 賃金未払い
894 国際基準の非遵守
6,302
問題が判明した船舶数
962
問題がなかった船舶数
610 医療関連
未払い賃金回収総額
$
37,291,112ドル
?
ITF協約の対象となる船舶と船員の数
280,687
対象船員数
13,260
ITF協約数
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
特集 コロナ禍の影響 5
コロナ禍の打撃を受け続ける
船員たち
コロナ禍が始まってから二年が経過しても、船員たちの生活への悪影響は続いている。その諸問題と、ITF及び加盟船員組合がそれにどう対処しようとしてきたかをITF船員・内陸水運部会のxxxxx・xxxx副コーディネーターが報告する
コロナ禍が今ももたらしている影響としては、乗船期間の延長、上陸休暇の拒否、船員とその家族たちに高まる不安感がある。
1年半にわたってコロナ禍の最前線に立ってきたITFは、2021年10月10日の世界メンタルヘルスデーにあたり、全世界の交通運輸労働者の声に耳を傾けるよう訴えた。
より少ない乗組員数で船が運航され、超過労働を強いられたり、頑な政府の方針によって陸上での医療・歯科治療が受けられなかったり、船員たちに大きな負荷がかかっている事例も見られた。
xxxxxxxxxxx@xxx.xxx.xx xxx.xxxxxxxxxxxx.xxx #ITFseafarers
船上に留め置き
2021年7月時点で推定25万人の船員が、多くの国が課していた渡航規制によって契約期間超過となっていた。規制の緩和につれてこの人数は減少したが、2022年初頭においても数千人の船員たちが契約満了後も船上に留め置かれたままだった。
政府と船主は、9か月を船上で過ごしたすべての船員に対し、あらゆる手段を講じて帰国させる責任がある。だが、帰国便のわずかな追加費用を負担し、規制のより少ない港へ行先を変更することを怠る船会社が散見された。これら以外の会社は率先して船員のコロナ検査や隔離用ホテルの費用を負担した。
本国送還の不履行
最悪のケースでは、船主は船も船員も遺棄した。2021年の公式の遺棄案件95件の内88件はITFが報告したものだった。そして2022年は初頭だけでもかなりの件数が既に出ている。(13~15頁の遺棄に関する記事を参照。)本国送還の不履行といった悪弊の報告は便宜置籍船
(FOC)に顕著だというのは驚くに当たらない。パナマ、リベリア、マーシャル諸島、EU加盟のマルタとキプロスといった船籍国が違反常連国となっている。(30~31頁の FOCに関する記事を参照。)
本国送還の不履行は、通常なら交代要員となるはずのxx人という他の船員たちが乗船できないことをも意味する。長期にわたる収入の不足は、船員家族の経済的困窮につながる。特に船員が唯一の稼ぎ手の場合はなおさらだ。主要な船員供給国はこれを補う収入保障制度をほとんどもたない。
6 特集 コロナ禍の影響
写真提供:xxx・xx・xxx
渡航規制の変更
船員たちはコロナ禍に起因する行動制限に直面している。そしてこの制限は国ごとに異なっている。各国政府はオミクロン株流行への対抗策として、ここ数カ月で入管政策を変更したり、国境を封鎖したりしている。EU諸国は独自の規制を適用しており、欧州アジア間の航空便数はまだ通常に戻っていない。
中国では、下船は地方政府の承認が必要で、かつ限られた港でしかできないため、船員交代は極めて難しい。インドネシアでは、ワクチン完全接種済みの乗船予定船員は5日間の隔離及び2回のPCR検査を受けなければならない。日本では、フィリピンやインドから来た船員は出発前 10日間の隔離と2回のPCR検査、それに陰性証明の提示が義務付けられている。
南米にも規制がある。例えばアルゼンチンでは、中央政府が多くの港での船員交代を認めたものの、地方政府が安全な回廊を確保できず、実現していない。ブラジルで
は、下船を含むすべての外国人船員は出発前72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明を提示しなければならない。これに加え、過去14日間の体温記録も求められる。
コロナ禍が始まって以来、ITFは船員たちの行動の自由が守られるように海運界と協力しながらできる限りのことをしてきた。国際海運会議所(ICS)と共に、国際機関や特定の国内規制を持つ個々の政府に対して、ロビー活動を続けたりもした。
船員のワクチン接種
「船員供給国において、船員をワクチンの優先接種の対象となるキーワーカー(市民の生活に不可欠な労働者)に認定させたい。寄港国において、入港船員がワクチン接種を受けられるようにしたい。船籍国がその旗を掲げるすべての船舶の乗組員にワクチン接種を行うようにしたい」とxxx・xxxxITF船員部会議長は語る。
海上にいる約150万人の船員の半数以上がワクチン未接種である。これは多くの地域で、船員交代の手続き上の障害となっている。例えばシンガポールと中国では、ワクチン接種証明の提示が求められており、提示できない場合は出入国管理で止められる。
ITFは海運界と共に、船員のワクチン接種を促してきた。
(TRIPS免除として知られている)ワクチンの知的財産権の一時放棄への支持を訴えたりもしてきた。2021年 10月には、118か国1200万人の交通運輸労働者を代表する375以上の労働組合が、イギリス、ドイツ、スイス、欧州委員会の指導者たちに、TRIPS免除への反対を止めるよう要請する書簡を出した。(8~9頁のワクチン接種の記事を参照。)
コミュニケーション
陸上ではほとんどの人が当たり前のようにオンラインで繋がっているが、船員の家族や友人がそうできる保証はないことを船員たちは懸念している。船主は乗組員へのインターネット接続提供を義務付けられていないし、多くの船主はそうしていない。
ITFはこのような現状を変えるために、適切なインターネット接続の設置を義務化するよう海上労働条約(MLC)の改正を提案している。この改正案は他の改正案と共に、 2022年5月にジュネーブで開かれるILO海事総会特別三者委員会で議論される。ここで採択された改正案はILO加盟国政府によって批准されなければならないが、通常は批准されるので、実質的にMLCの一部となる。
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「船員供給国において、船員をワクチンの優先接種の対象となるキーワーカー(市民の生活に不可欠な労働者)に認定させたい。寄港国において、入港船員がワクチン接種を受けられるようにしたい。船籍国がその旗を掲げるすべての船舶の乗組員にワクチン接種を行うようにしたい」
xxx・xxxxITF船員部会議長
医療措置
コロナ下の規制によって医療へのアクセスに困難をきたしている船員もいる。例えば、次の事例をITFは知ることとなった。
2022年1月初め、ビッグロール・ビューフォート号がスリランカへ向けてシンガポールを出港した直後、乗組員らはコロナ検査で陽性となった。一人は重傷で医療措置が必要だった。船長がスリランカのハンバントタ港当局と連絡を取ったところ、医師の船上派遣はできるが陸上での医療措置はできないと言われた。幸いにもその乗組員は回復したが、現在、スリランカ当局による拒否の全容解明の調査が行われている。
2021年10月には、国際労働機関(ILO)と国際海事機関(IMO)が医療措置についての共同声明を発表した。この声明は、「船員が必要とする時にはいつでも遅滞なく陸上で医療を受けられるようにし、必要な場合は資格を有する医師及び歯科医師が船舶を訪れることを認め、船内における医療的支援を提供する義務」を強調した。
ITFとICSはMLCの改正を5月の特別三者委員会に提案している。
8 特集 船員のワクチン接種
組合が
船員のワクチン接種を支援
写真提供: 国境なき医師団(MSF)
シーフェアラーズ・ブルテンでは、船員のワクチン接種を促進するために世界中の組合が実施している取り組みを紹介する。
世界の船員組合は当初から船員のワクチン接種を支援する行動を開始した。米国のITFインスペクターとコーディネーターは地元の組合や船員福祉団体と協力して、ワクチン接種の促進に取り組んだ。一方、ITFに加盟する海事組合は寄港国政府に対して港を訪れる船員のワクチン接種拡大を要請した。
4月、英国のノーチラス労組は、英国を国際的な船員ワクチン接種の拠点とすることを要求した。一方、カナダ国際船員組合は、船員へのワクチン接種を迅速に行う計画が策定されないのであれば、カナダの海運業界は全面的に停止することになると警告した。5月、米国テキサス州の港湾で、ITF、労働組合、ヒューストン国際船員センター(HISC)、現地医療機関のワークプレイス・セーフティ・スクリーニング(WSS)の協力により、船員のワクチン接種が開始された。これをきっかけに、米国をはじめ世界各地で同様のプログラムが実施されるようになった。
2021年5月に米国で本格的に船員のワクチン接種が開始される中、米船員国際労働組合(SIU)のITFインスペクター、バーバラ・xxxxの記憶に残っていたのがカノーラ号のケースだ。xxxxはバージニア州ニューポート・ニューズで乗組員
9人にワクチンを受けさせたが、三等航海士は米国のビザがないため、接種を受けることができなかった。8月、カノーラ号がバージニア州に戻ってきた際、xxxxはこの三等航海士を助けると約束し、船上でワクチンを接種させた。
「忙しいのに、どうして私のことなんか覚えているんですか?どうしてそんなに一生懸命なんですか?私の体験を聞いてくれてありがとう、バーバラ。本当に嬉しかった」
カノーラ号の3等航海士レシャル・バラスブラマニヤム
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「ケータ号の乗組員を代表して、本国送還とワクチン接種、そして船の新協約締結に多大な貢献をしてくれたITFとオーストラリア海事組合(MUA)の港湾労働者たちに感謝の意を表したい。私たちは、ITFが今回の件で絶えず宿泊施設や援助を提供してくれたことに感謝している」– ケータ号の乗組員
り、彼らが確実に接種できるようにした。ITFはワクチン接種の
フィリピンAMOSUPでの協力体制
ITF加盟組合のAMOSUP、フィリピン保健省、海事産業局の協力により、2022年2月末までの8カ月間に、25,000人以上のフィリピン人船員がワクチンを接種した。また、AMOSUPはマニラ、セブ、イロイロ、ダバオシティにある組合の船員病院で4,342人のブースター接種も実施した。組合支部においても、船員の家族のワクチン接種を進めた。
「政府、民間企業、ソーシャル・パートナーから多大な支援を受けたことに感謝する。…船員をウイルスから守り、世界中の船で仕事を続けられるようにすることが極めて重要である」 AMOSUPのコンラッド・F・オカ委員長
クロアチアで外国人船員に無料のワクチン接種
クロアチア政府は現地のITFインスペクターやクロアチア船員組合(SUC)との協議を経て、外国人船員に対してxxxxx&xxxxx社のxxxxの接種を無償で提供することを決定した。ITFは船員の接種会場までの移動を手配し、SUCがその費用を負担した。
2022年2月末までに、リエカとプロチェの港で 400人以上の船員がワクチンを接種した。初回接種の船員もいれば、ブースター接種の船員もいた。ワクチンを接種した船員は直ちに母国政府が承認する国際予防接種台帳に記録され、15日後に EUデジタル・コロナワクチン証明書を受け取り、欧州内を自由に移動できるようになる。
ワクチン接種をめぐる米国の協力体制
バージニア州: 2022年2月末までに約1,600人の接種が実施された。まず、バーバラ・xxxxITFインスペクターが、船員の予防接種がいかにサプライチェーンの維持に貢献できるかについて、港湾関係の協力組織と協議を開始した。バージニア州保健局は、州知事室を通じて、バージニア州兵による船上でのワクチン接種を許可された。最終的には、独立系の海事コンサルタント会社がワクチン接種の調整を引継ぎ、12月からはxxxxがその指揮を取っている。xxxxは地元の薬局と協力し、船員の船上ワクチン接種を進めている。
ヒューストン: ITF、HISC、WSSのパートナーシップにより、2022年2月末までに、1,020隻を超える船舶に乗り組む船員約19,700人が少額の費用で船内でワクチンを接種することができた。シュウェ・アウンITFインスペクター(SIU労組所属)は、船長や乗組員からワクチン接種の要望を日々受けてお
実施チームを訪船させたり、船員を陸上の診療所に移動させたりする費用について、HISCに資金援助を行った。ITFの財政支援により、船員はワクチン会場への往復の交通費を支払わなくて済んだ。
クイーンズランド州のワクチン接種モデルを採用
クイーンズランド州: 2021年9月、港に到着するすべての外国人船員にコロナワクチンを投与することを決めたオーストラリア初の州となった。この試験プログラムは、クイーンズランド州海上保安局が、同州保健局と協力して開発した。まずは、リスクの高い船舶、オーストラリアの港に定期的に寄港する船舶、液体燃料を運搬する船舶の船員から接種を開始し、後にすべての寄港船舶に対象を広げた。このプログラムは3月にオーストラリア政府に承認され、このモデルがオーストラリア全土で展開されることとなった。
ビクトリア州: 2022年2月、NPO法人のステラマリスと MTSが、TSLローズマリー号やマウント・オーウェン号などの寄港船舶内で船員へのワクチン無料接種を開始した。ITFのマット・パーセル・インスペクター(MUA所属)は、これらの事例をもとに、ワクチン接種の拡大に向けて調整を行うことを州政府に求め、ITFとオーストラリア海事組合(MUA)がその費用を負担すると申し出た。
ニューサウスウェールズ州:2021年9月にインジ・コサン号の乗組員11人が最初にワクチンを接種して以来、2022年2月末までにポートケンブラとニューカッスルの間の地点で働く約1,600人の船員が接種した。ITFインスペクターのxx・xxxxx(MUA所属)は、同州の保健海事チーム、港、MTS、ステラマリスなどと緊密に連携しながら、港を訪れる船員が1回目と2回目のワクチン接種を確実に受け、ワクチン証明書を得られるようにしている。また、ケータ号では、10カ月以上乗船していた乗組員16人が本国送還されて家族の元へ戻る前にワクチン接種を済ませるという大規模な取り組みが実施された。
10 支援の現場最前線
インスペクター、 寡婦補償を勝ち取る
サンクトペテルブルクのITFインスペクター、xxx・xxxxは、船員の夫の死後、賠償金請求闘争を行った未亡人を支援し、その「偉大な支援」に対する感謝の印として、未亡人から手作りの船長人形を受け取った。この人形は実はxxxxが夫に贈る予定のサプライズ・プレゼントだったが、夫に渡す機会は訪れなかった。xxxxの夫のロスティスラフ船長は、4カ月の契約期間満了後も帰国することはなく、ポルトガル船籍のセリンダ号の船主からコロナ禍の移動制限で後任を探すことは無理だと言われていた。ロスティスラフ船長はばら積み船のセリンダ号をフィリピンまで運航するように言われた。同船は15週間後にフィリピンで売却された。セリンダ号を新たな船主に引き渡した直後、ロスティスラフ船長は船内で心臓発作を起こし、入院した。
「夫は健康問題を抱えていなかったし、出航前に受けた健康診断でも特に問題は見つからなかった」とxxxxは振り返る。「異なる気候、航海中のエアコンの故障、風通しの悪さ、暑さによる脱水症状、契約の延長、ばら積み船を新しい船主に引き渡すという過酷な重労
一日にして記録的額の未払い賃金を回収
ジーロング港で行われたオーストラリアのITFインスペクターによる1日研修で、27万米ドル以上の未払い賃金が回収されたと同国のITFアシスタント・コーディネーターのマット・パーセルが報告する。
働など、色々なことが重なって大変な事態が起きた」 ロスティスラフ船長はロシアに戻され、病院に搬送さ
れた。しかし、病院で新型コロナウィルス感染症の感染が拡大したため、すぐに退院させられ、その後、血栓症のため自宅で亡くなった。
船長の雇用契約では、妻のオクサナと幼い息子には補償金を受け取る権利があった。しかし、保険会社は、ロスティスラフ船長が雇用契約満了から1ヵ月後に陸上で死亡したことを理由に、保険金を支払おうとしなかった。地元のP&Iクラブはオクサナが受け取る権利のある額をはるかに下回る金額を提示し、それ以外の権利を放棄する旨の書類に署名するようオクサナに求めたが、オクサナはこれを拒否した。
「保険会社は時間稼ぎをしようとした。彼らは何回か間違ったメールアドレスを伝えてきた。その後、彼らは私の電話やメッセージに答えなくなった。友人の電話から電話した時は電話が通じたので、多分、私の番号をブロックしていたのだろう」とオクサナは語った。
希望を失いかけた時、オクサナは夫の友人からITFに連絡するようにとの助言を受けた。ITFは、ロスティスラフ船長の健康問題は、契約期間を超えて働き、船の引き渡しまでさせられた際のストレスが引き金になったと主張した。ポルトガルのFESMAR組合が締結したセリンダ号の国内協約には、船員が勤務中に死亡した
2月14日、荷役労働者、港湾労働者、船員など、6人の新任の職場代表と既存のボランティアが、私や長年ボランティアとして活躍してきたグラハム・アーチャー、ビクトリア州職員のデビッド・ボールから、ITFについて学ぶ一日研修をオーストラリア海事組合(MUA)事務所で受けた。翌日の実習では、経験豊富な訪船経験者とともに、4隻の船舶の査察を実施した。
その結果は驚くべきものだった。この4隻で、併せて27万米ドルの未払い賃金を回収したのだ。これは記録的な額だ。
さらに、ITF、寄港国、船主の間で、船員の本国送還計画が合意され、この会社の新造船について、香港のITF加盟組合と会社がITF協約を締結する可能性を探ることも確認された。港で働くマーク・クラーベンは次のように述べた。「ITFが船員の権利を保護し、経験の浅い私たちがマッ
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「この手の案件には本当に腹が立つ。会社は船長を奴隷のようにこき使い、コストを削減して、彼をごみのように捨てたのだ。会社が船長の適切な治療を行うことも、彼のメンタルヘルスを心配することもなかった。船主は保険会社を雇っているので、補償問題は迅速に解決できると主張するが、保険会社は問題を解決しようとしないことが多い」
ITFインスペクター、キリル・パブロフ
場合、受取人は当該船員が死亡した月の給与全額と基本給を受け取ることができると規定されていた。ITFは正にこれを主張し、成功した。また、寡婦補償に加え、未成年の子供に関する補償金も勝ち取ることができた。最終的にオクサナは約70,000米ドル
を受け取った。
犬が
乗組員の癒しに
船舶の査察中に、犬が乗組員に癒しと喜びを与えるというのは初めての試みかもしれない。フロリダのITFインスペクター、エリック・ホワイトは愛犬のスタンレーとともに訪船した際の様子を語った。
トとITFを手伝って、船員のためにこのような素晴らしい結果を達成できたことに感激している。ITFのおかげで、オーストラリアの港湾労働者と船員がFOCキャンペーンでいかに協力できるかを学ぶ機会が得られた」
この国内研修プログラムは、オーストラリアでITFのアシスタントを務めるサンドラ・バーナルが実施しており、2021年 7月にメルボルンで行われた第1回目以降、コロナ禍の移動制限より開催が見送られていた。今後は、ポートランド、ニューカッスル、シドニー、タスマニア、アデレード、クイーンズランド、西オーストラリア、ダーウィンの各地で実施し、今年半ばまでに終了する予定だ。
うちの一家は2021年7月に5歳のシベリアンハスキー、スタンレーを貰い受けた。我が家にスタンレーが来た最初の週に、港までスタンレーを散歩させ、トラックに戻してから、訪船を実施する予定だった。ところが、驚いたことに船長からスタンレーを連れて船内に入るように言われた。
乗組員はスタンレーを気に入り、写真を撮ったりした。スタンレーは今ではすっかり港や船内の人気者になっている。主にフィリピンや東欧出身の船員がスタンレーを見ると故郷を思い出し、一日が明るくなると言っている。ある機関長は、「埠頭の中をスタンレーを連れて少し歩かせて欲しいと」と頼んできたほどだ。最近、あるAB船員が、家で飼っていた犬が死んだばかりで、スタンレーと一緒にいると心が癒されると言っていた。スタンレーが周りの人々に良い影響をもたらすのを見るのは感動的で、スタンレー自身もそうした時間を楽しんでいるようだった。スタンレーと一緒だと査察に時間がかかる。乗組員はインスペクターに対して警戒しがちだが、スタンレーがいると皆、私のところに集まって来るからだ。
スタンレーは船員センターの常連にもなった。船内に連れて行くのが適切でないと私が判断した場合は、ポートチャプレンが喜んで面倒を見てくれる。スタンレーがもたらすプラスの影響を目の当たりにし、複数の船員センターが、いわゆるセラピードッグ・プログラムの導入を検討している。
しかし、現段階では、税関職員にも、船員にも、また他のITFインスペクターたちにも、スタンレーと私は特別なケースだと言われている。
行動する組合
ロシアのFOC船主に不利な画期的判決
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ロシアの船員がロシアのFOC船主を相手取った裁判で船員の主張が初めて支持された。ロシア船員組合のウラジオストク船員労組委員会のアレクサンドラ・ズゴルジュスカヤ副議長が4年に及ぶ闘いを報告する。
ニコライ・ミハイロビッチ・カルチェンコ甲板長は、2018年5月にシエラレオネ船籍のプラトン号に乗船中に負傷した。韓国の病院で手術をして帰国し、8月までウラジオストクの総合病院で治療を続けていた。
彼は3ヶ月の病気休暇と補償、事故報告書の提出を会社に要求したが、拒否された。ウラジオストクに登録するSKグランドシッピング社は、船主ではなく船舶管理会社であり、彼の雇用主ではないと主張した。同社は、実質的な雇用主はヴァージン諸島に登記する外国企業のプラティス・コーポレーションだと主張した。しかし、カルチェンコの雇用契約書にはSKグランド社が署名し、同社はシッピングブック上には雇用主兼船主と記載されていた。
カルチェンコは2019年3月にロシア船員組合に連絡し、支援を求めた。組合は、障害報告書の準備を固め、医者の診察を受け、政府の社会保険基金に申請するよう勧めた。ところが、SKグランドシッピング社が、カルチェンコの保険料や税金を支払っていなかったため、彼は保険金を請求できないことが判明したことにはショックを受けた。8月、我々はロシア運輸検察庁と運輸省捜査局の協力を仰いだ。運輸検察庁は、本件を裁判所に提訴し、同社にロシア連邦に対する税金その他の法的義務を履行するよう訴えた。
この裁判の裏付けとして、SKグランドシッピングが船主および雇用主として、保険料や賃金を支払い、病気休暇
の提供にも責任を負うことを示す海上労働条約(MLC)適合申告書の提出を旗国に求めた。
行政上の理由で第一審は失敗に終わった。しかし、控訴審では成功し、2021年10月8日、裁判所は、SKグランドシッピングがその責任を認め、ロシア連邦に税金を納め、そうすることでカルチェンコが国から一時障害者手当を受給できるようにすべきとの判決を下した。
これは画期的な判決だった。運輸検察庁が初めて、FOC船に関連して、ロシアの船主ではなく、ロシア連邦の市民の訴えを支持したのだ。それ以前は、ロシアの裁判所は、ロシアには管轄権がなく、この手の労使紛争は旗国の法律に従って規制されるべきだとの主張を繰り返していた。しかし、会社から病気休暇と補償を確保するカルチェンコの闘いはまだ終わっていない。
FOC船に関するより詳細な記事(p30-31)も参考にして欲しい。
特集 遺棄 13
私たちからのアドバイス
どのようなものであっても書類にサインする前に、船について入手できるすべての情報をチェックすること―船舶の位置や目的地の詳細を示すウェブサイトや遺棄された船舶すべてをリスト化したIMO/ILO共同データベースを利用してほしい。https://www.ilo.org/dyn/ seafarers/seafarersbrowse.home
船上で何週間も賃金未払いが続くのは使用者が船と乗組員を遺棄しかけているサインかもしれない。MLCは、最低でも月ごとの船員への支払いを求めており、もし一カ月以上にわたって全額の支払いがなされない場合はMLC違反となる。
使用者を恐れて行動を躊躇わないこと。ITFがあなたを助けられるのは、あなたが第一歩を踏み出し、支援を求めてきたときだけである。メールをseafsupport@itf.org.ukへ送るか、ITF Seafarers’SupportのFacebookのページを訪ねてほしい。そして苦情申し立てを行うと共に金銭的損失を避けるために可能な限り速やかに保険会社に連絡してほしい。
遺棄されたと思ったら素早く行動を
このページの悲惨な事例は、2021年にITFインスペクターたちが援助した88件の遺棄事案のほんの一部である。ITF査察コーディネーターのスティーブ・トロウズデールは、遺棄された船員たちに素早い行動と援助を求めることをアドバイスしている。
賃金未払いの乗組員が船上にいる状態で船会社が倒産した時、便宜置籍船(FOC)の複雑な制度のせいで船員たちはどこに援助を求めたらよいのか分かりにくくなっている。
船会社は船員たちに対してMLCが定める諸義務を負っているが、経営難にある場合はそれらを無視しがちである。MLCを批准した船籍国は、遺棄された乗組員が食料、未払い金及び帰国費用を受け取れるよう保証する中心的役割を求められているが、そこから逃げがちである。また船籍国当局は、未払い賃金を支払うよう船主を奨励もしくは強制するようITFから要請されても動かないことが多い。
14 特集 遺棄
遺棄された乗組員のために海事裁判所のさらなる努力を
香港のジェーソン・ラムITFインスペクターは、中国の裁判所での審理が長引くにつれ、1年にわたりアンジェリック・パワー号の船内に足止めされた船員たちの肉体的・精神的状態が悪化して行く様を目の当たりにした。
このバラ積貨物船が香港近くの中国広州で2020年 7月に荷卸ししたとき、ギリシャ人9人とフィリピン人13人の乗組員が乗船していた。定期的だった入港は、貨物受取人と船主との間に発生した金銭トラブルによって乗組員たちの悪夢に変わった。
12月には船は裁判所によって拘束された。2021年
2月、船主であるギリシャのアンジェリキ・ダイナミス投資会社とオペレーターであるパンタラッサ・マリタイム社は船を遺棄し、乗組員への支払いを停止した。船舶保険も失効した。
裁判所は現地代理人を任命し、何の責任もないのに足止めされている乗組員たちの食料、水、その他必要物資の購入費用を提供した。4月にはマニング・エージ
ェントがギリシャ人乗組員7人の帰国手配と費用負担を行った。
追い込まれたフィリピン人乗組員は弁護士を任命し、帰国のために司法の場で闘うことを決意した。弁護士は私の要請を受けて残り2人のギリシャ人乗組員の弁護も引き受けた。
やがて中国当局も対応し始めた。中国人の交代要員
5人がアンジェリック・パワー号に乗船し、残りの乗組員が最終的に船を離れて家族のもとへ帰ることが許された2021年7月までに、船のオペレーションを習得した。
しかし話はここで終わらない。2022年2月時点で船はまだ売却されていなかったため、乗組員22人は計 221,000ドルの未払い賃金を受け取っていなかった。
裁判所は、船員たちが船上で疲労困憊していくのを何カ月も放置するのではなく、事件が発覚した時に乗組員の即時帰国を手配するべきだった。このあまりにも良くあるシナリオこそが、金銭トラブル発生時には当局が乗組員福祉の観点から素早く行動することを ITFが要求している理由である。
嵐の中で遺棄されて
嵐の中での身のすくむような救出劇のあと、ITF、現地労働組合、福祉団体は遺棄された船員8人を支援し、最終的に母国へ帰還させた。香港のジェーソン・ラムITFインスペクターが顛末を語る。
2021年10月6日、8人のミャンマー人船員が乗り組んでいたパラオ籍のリンダ号はホーチミン市へ向けて航行していたが、海が荒れてきたため、台湾の東沙諸島近くで投錨を余儀なくされた。
二日後、台湾沿岸警備隊は船長に対し、二つの台風がそちらに向かっており、東沙諸島は二つの台風に挟まれてしまうと繰り返し警告し、ただちに退避するよう促した。しかし船長は、船の状態が非常に悪く、穏やかな海でしか航行できないとして、退避は危険と報告してきた。
風が強まり、波が6メートルを超える中、船長はその日の夜に船を遺棄する決断をした。台湾沿岸警備隊から連絡を受けた香港海洋救出調整センターは、ヘリコプターで乗組員らを無事香港へ退避させ、ペニー・ベイ検疫センターに収容した。
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在香港ミャンマー大使館がITFに乗組員の支援を要請してきた。船長によると、ほとんどの乗組員がパスポート、船員手帳、所持品の多くを救出の過程で紛失していた上に、8月以降誰も賃金を受け取っておらず、総額 29,914米ドルが未払いであった。
マレーシアの船主、プレステージ・マリーン社は、乗組員への支払いと本国送還についてITFが繰り返しメールで問い合わせたにも拘わらず、10月11日以降は応答しなくなった。ミャンマー領事は本国送還について状況を把握するようマニング・エージェントに要請した。
ITF、現地労働組合、福祉団体が動き始めるまで何も起こらなかった。
私は大使館と協力し、マニング・エージェントに対して乗組員らの帰国費用を支払うよう説得した。11月1日、香港商船士官組合(HKMNOG)は、船員一人当たり 500ドルの緊急支援金を香港船員互助基金が支払う手配に成功した。ITF船員トラストが資金援助している香港国際船員サービスセンターが乗組員のホテルおよび空港への送迎を手配した。
11月2日、8人の乗組員全員がミャンマーのヤンゴンへ帰国した。そのうちの何人かは未払い賃金の少なくとも一部を後から受け取った。
危険な、沈みゆく監獄から逃れるために
危険なハジ・アブドゥーラ号に遺棄されていた乗組員をソマリアで支援した経験をITFアラブ・イラン地域ネットワーク・コーディネーターのモハメッド・アラチェディが紹介する。
船齢44年のこのバラ積み貨物船は、ドバイからタンザニアへ硫黄を運搬中に、喫水線の下にひび割れを起こした。2021年8月13日、ハジ・アブドゥーラ号はモガディシュに寄港、乗組員11人はここで船の検査と食料の補充が受けられると期待した。しかし期待は裏切られた。港湾当局は海賊被害のリスクが高いとして入港を認めず、ソマリ海岸沖に投錨するよう命じた。
乗組員らは船が沈まないように昼夜を問わず水を汲みだし続けているとITFに伝えてきた。食料と水も底をつきかけていた。
乗組員の一人がこう言った。「この錨泊地で身動き
できなくなることを皆恐れている。今のところはポンプが仕事をしているが、船体を検査しない限り、船がいつまで浮かんでいられるのか知る由もない。とても恐ろしい」
ITFは、船の緊急入港を認めるよう当局に懇願したが、なんの効果もなかった。船主にも問い合わせたが、返答はなかった。船籍国であるシエラレオネは、調査中であると回答したものの、船の安全性改善や乗組員の食料・賃金確保のための現実的な方策は何も講じなかった。乗組員らは4~6カ月間にわたり賃金の支払いを受けておらず、また彼らの多くは既に契約期間が満了していた。彼らは皆、この危険で沈みゆく監獄を去り、帰国することを望んでいた。
最終的には、すべての船員が12月24日までの賃金を受け取り、2022年1月10日までに全員が帰国した。
16 プロフィール
組合員であることと
ITFのメンバーであることを誇りに
シーフェアラーズ・ブルテンは、ITFTF会長兼港湾労働者部会議長、オーストラリア海事組合(MUF)の全国書記長を務めるパディ・クラムリン氏に、海運業界に対する情熱と、長いキャリアで成し遂げた最も誇らしい功績について尋ねた
積み貨物船に乗り組んだりしてきましたが、労働組合から、これまで助けてもらった分、恩返しするべ時期ではないのかと言われ、オーストラリア船員組合のシドニー事務所で働くようになりました。
オーストラリア船員組合は大きな力をもっていて、一社だけでなく、海運業界全体で尊厳ある安定した雇用と素晴らしい労働条件を船員のために実現していました。当時は、租税回避、労働者搾取、低い安全と保守のレベル、規制当局
海運産業に入ったきっかけは何ですか?
シドニーで育ちました。父が商船の船員をしていた影響が大きいと思います。若い頃は沢山旅をして、マグロ漁船に乗ったり、アワビを採ったり、サーフボートをつくったり、色々な仕事をしました。海は常に私にとって大きなテーマでした。1978年、22歳の時に、弟を養うた
めに船員になり、機関室で働くようになりました。船員は雇用が保障され、ディーセントな給料をもらえる仕事だったからです。
組合の専従役員になったのはなぜですか?
10年以上海で働いてきました。浚渫業界や揺籃期にあるオフショア産業で働いたり、ケープサイズ(超大型)のばら
による説明責任の回避により、自国籍船
が規制緩和され、カボタージュが攻撃され、便宜置籍(FOC)船が市場シェアを拡大しつつあり、これと激しく闘っていた時期でした。企業のこうした搾取的な振る舞いを見て、組合の強いアイデンティティと、今すぐ自分たちの仕事を守らなければならないという強い信念が生まれ、それが今日まで続いています。
「オーストラリアの保守政権による港湾労働者とカボタージュに対する絶え間ない攻撃に直面し、組合の再建に努めました」
シドニーは生活コストが高すぎて、当初、家族と一緒に住むことはできず、数年間は週末しか家族に会えない生活が続きました。しかし、父やオーストラリア船員組合の代議員から自分自身や組合、船員全般を支援することが最優先事項だと教えられました。組合役員は仲間やお互いに対して義務を負っていると教わりました。
オーストラリア海事組合(MUA)の全国書記長になったことはどのような意味がありましたか?
2000年にMUAの全国書記長になれたのは光栄でした。ちょうど、歴史的なパトリック社との労使紛争の直後でした。当時の裁判所の調べで、オーストラリア政府とパトリック社が結託し、港湾労働者と組合そのものを瓦解させようと陰謀を企てていたことが判明しました。
オーストラリアの保守政権による港湾労働者とカボタージュに対する絶え間ない攻撃に直面し、組合の再建に努めました。この経験から、海事労働者をはじめとする交通運輸労働者のための国際労働運動を、強力な ITFを通じて活性化させる必要があると決意しました。オーストラリアや他の国の海事労働者を守るためには、これが不可欠でした。 ITF会長として
最も誇りに思う成果は何ですか?
2010年のメキシコシティ大会でITF会長に選出され、身の引き締まる思いでした。メキシコシティ大会では、スティーブ・コットン書記長や私の他、多くのITF役員がITFがいかにキャンペーン展開と組織化を強化するべきかについて、新たなビジョンを打ち出しました。そのためには、加盟組織を活性化し、現場で私たちが直面する課題に対応する能力を
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向上させることが必要です。とりわけ、いわゆる自由貿易協定を通じた海運や複合一貫輸送のサプライチェーンの規制緩和を企業や規制当局が推進しているという課題に対応しなくてはなりません。これらの産業で今現在起きている危機は、メキシコシティ大会での決断の重要性とその決断が、今日性をもつことを示しています。
特に2つのことを誇りに思います。 船員の権利章典とも呼ばれる2006
年のILO海上労働条約(MLC)により、船員は初めて、どこで働いていても寄港国に対して強制力のある国際基準によって保護されることになりました。この条約は、ITFと各国政府、海運関係の使用者の間の長期にわたる厳しい交渉の末に成立しました。
また、国際交渉フォーラム(IBF)の創設も実現が大変困難でした。IBFでは、労使の非公式な対話に代わり、ITFとすべての海事労働組合による正式な労使交渉のプロセスが導入されました。これにより、船員と港湾労働者の労働権と保護に関する協約を締結するために、労使双方の責任が確認されることになったのです。IBFの交渉は必ずしも容易ではありませんが、強制力のある国際的な法的枠組みを通じて、結社の自由と団体交渉という基本的な労働権と基本的
人権の概念を、一般的に見て不可解な
海運産業に組み込ませることができたのです。
船員へのメッセージをどうぞ
船員の皆さんは世界を動かし続けて下さっていますが、その功績は殆ど認識されていません。コロナ禍で皆さんの権利が侵害されたことで、ITFは基本的な権利のために、共に断固として立ち上がる決意を固めました。ボクシングに例えるなら、毎日ゴングが鳴り、必要であれば全員でスイングするということです。それこそが、皆さんと皆さんの家族のために、真の正義とディーセントかつ安全な仕事を獲得し、雇用を保護する唯一の方法だからです。組合員であること、ITFのメンバーであることを誇りに思います。
写真提供: カゾウニ・クリスティーナ(ギリシア、セカンドオフィサー)
18 海で活躍する女性
写真提供: ノムシーボ・シヘシーレ・スル
女性の採用を阻む船内の暴力
最近報道された暴行事件により、海運業界に暴力やいじめが蔓延していることがクローズアップされた。さらに、これはすべての海事労働者にとって由々しき事態だが、特に女性船員を惹きつけ、海運界で働き続けてもらう上で、女性や海運界にとっても大問題だとITF船員部会の女性代表を努めるレナ・ディリングは述べる。
2021年10月、ITFのインスペクターが船長から身体的暴行を受けるという前代未聞の事件が発生した。この女性インスペクターは自分の仕事をしようとしていただけだ。安全規制を遵守していない船舶や、乗組員の賃金や労働条件に明らかな不正がある船舶を調査していただけだ。この事件を受けて、ITFはインスペクターを対象とした訓練や支援の見直しを開始したが、海運界全体が暴力や暴力的な態度に対するゼロトレランスのアプローチをとる必要がある。
ある訓練生が、2019年にマースクラインの船舶で1年間、船上勤務した際にレイプされたことを、MLAA(海事法律支援用語団体)のウェブサイト上で勇敢にも報告し
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
た。彼女が問題を公表したことで、APモラー・マースクが独立調査を進めることになり、米連邦運輸省も調査に乗り出した。この結果、マースクの乗組員5人が停職処分に処された。
この訓練生の主張では、米商船大学を同学年で卒業した女性船員50名の全員が船上で何らかのセクハラを受けた経験があると言っており、少なくとも5人がレイプされていた。彼女は性的暴行被害者の代弁者となる中で、これまでセクハラを受けたことがある女性が余りに多いことを知り、「全くもってうんざりする」と述べている。
このような恐ろしい事件は、海運業界全体に影響を及ぼす。今後、部員や職員が大幅に不足することが予想されるが、船員という職業により多くの女性を惹きつけ、定着してもらうためには、海運業界は女性が海で働くことの恩恵を積極的にアピールし、女性のために安全な職場と質の高い仕事を確保する必要がある。
真の意味での進歩のためには、船内の環境が女性を積極的に受け入れるものでなければならない。そのためには、男性船員の積極的な協力による男性船員の意識向上教育、女性船員のための公式支援ネットワークの構築、船員が匿名で懸念を表明することができる手続きの確立、迅速な調査の実施などが必要だ。
2020年時点で、世界の船員に占める女性の割合はわずか1.28%だった。オフィサー(職員)に占める女性の割合はわずか0.73%だ。女性船員の多くはクルーズ船やフェリーで働いていたが、コロナ禍で、多くの船員がクルーズ船から貨物船に転向している。貨物船で働く船員の男女比は従来、20対1だった。女性は一人も乗り組まない船も多い。ITFは、安全で衛生的かつ暴力のない職場で働く船員の権利などに関する指針を含む、女性船員に向けた独自の支援資材を発表する予定だ。
船内で性的暴行、セクハラ、ジェンダー差別を受けた場合、セイフ・ウェイブ慈善団体に連絡して、情報と支援を得ることができる– www.saferwaves.org.
ガイドブック
12頁の綴じ込み
目次
支援要請雇用契約
インスペクターの連絡先インスペクターの支援 あなたの法的権利
詐欺
支援要請
ITFに支援を求めるには
船員組合やITFインスペクターの見つけ方
まずは、所属の組合に連絡しよう。組合に未加入の場合は、加入する方法を見つけよう。今すぐ支援が必要な場合や、所属の組合と連絡が取れない場合は、ITFのインスペクターをつかまえよう。インスペクターの連絡先はこの綴じ込みガイドブックに記載されている。
ITFの船員用ホームページ(www. itfseafarers.org )にアクセスし、
「Find and Inspector or Union(インスペクターと組合の見つけ方)をクリックすれば、ITF加盟組合の連絡先が分かる。
スマートフォンやタブレットの場合は、無料アプリ「ITF Seafarers」をダウンロードしよう。www.itfseafarers. org/seafarer-apps.cfm
・最も近くにいるITFインスペクター、コーディネーター、または組合の連絡先を見つけよう。
・乗船契約を結ぶ前に、労働条件を調べよう。
・あなたの休憩時間は合法か調べよう。
無料QRコードリーダーをスマートフォンにダウンロードし、このコードを読み込ませよう。
www.facebook.com/ itfseafarerssupport
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
ITFに連絡するには
SMS/WhatsApp/Viber
+44 7523515097
Email seafsupport@itf.org.uk ITFに連絡する前に
次のチェックリストを参考に、問題を整理しておこう。
あなた自身について
・氏名
・職位
・国籍
・連絡先
本船について
・氏名
・船籍
・IMOナンバー
・現在位置
・乗組員の数と国籍
問題について
・どのような問題か?
・乗船期間は?
・乗組員全員が同じ問題を抱えているか?
配乗代理業者
ILO海上労働条約は、民間の配乗代理業者は規制されなければならないとし、船員に雇用機会提供のための手数料を課すことや、賃金から違法な控除を行うこと、船員のブラックリストを作成することを禁止している。また、船舶所有者は、利用する配乗代理業者がこれらの要件に適合することを確保しなければならないとしている。
契約書にサインする前に
ITFが承認する団体協約に準拠した雇用契約なら、ほぼ間違いなく適切な労働条件を保障される。そうでない場合は、次のアドバイスに従ってほしい。
・必ず文書による契約を交わしてから就労すること。
・白紙の契約書、または内容が具体的ではない、もしくは聞き慣れない条件を含んでいる契約書には絶対にサインしないこと。
・契約にサインする前に、団体協約についての記述があるかを確認すること。もしあれば、団体協約を読み、その写しを取って契約書と共に保管しておくこと。
・契約の有効期限が明示してあるかを確認すること。
・船主の一方的な意思で雇用期間を変更できる内容を含んだ契約書にはサインしないこと。このような変更は双方の合意に基づいて行われるべきである。
・基本給および基本労働時間が契約に明示されているか常に確認すること。国際労働機関(ILO)が規定する基本労働時間は最長週48 時間( 月208 時間) である。
・時間外労働の補償の額と支給方法が契約に明示されているか確認すること。
・ILOの規定では、時間外手当は最低「1.25×通常の時間給」で計算すべきである、とされている。
・1ヶ月に取得できる有給休暇の日数が明示されているか確認すること。ILOの規定では、有給休暇は年間30日(月2.5日)を下回らないこととされている。
・賃金、時間外手当、有給休暇がそれぞれ別項目に分かれて規定されているか確認すること。
・乗下船の費用の一部を船員に負担させる内容を含む契約書には絶対にサインをしないこと。
・船主が賃金の一部を留保できる内容を含む契約書にはサインしないこと。船員は毎月末にその月の給料全額を受け取る権利を有する。
・あなたの雇用契約に各種手当の詳細が明示されていない場合は、疾病、障害、死亡、船舶の喪失(私物の喪失を含む)、契約の早期終了の場合にどれだけの補償金が支払われるかの確認を求めること。(書面による合意か、契約上の権利として認めさせるのが望ましい。)
・労働者が自ら選択する労働組合への加入、連絡、相談もしくは組合の代表となることを禁じる条項を含む契約書にはサインしないこと。
・契約解除の条件や通告期間を確認すること。
・自らの意思で締結した契約や協約は、ほとんどの司法権の下において、法的拘束力を持つことを認識しておくこと。契約書、給与明細書、船主やマンニング会社との雇用条件に関するやり取りのコピーを下船後も保管しておくこと。賃金や補償金を要求する場合の証拠として必要になる。
・あなたの船にITF協約が締結されているかどうかを確認するには、ITFのホームページ(itf. seafarers.org)へ(「Look Up a Ship」をクリック)。
・携帯電話やタブレット用ア プリのダウンロードはw w w. itfseafarer. org/seafarer- apps.cfmへ。
www. itfseafarers. org/ seafarer-apps.cfm
seafsupport@itf.org.uk www.itfseafarers.org #ITFseafarers
インスペクターの連絡先
氏名 | 任務 | 国 | 港 | 事務所TEL | 携帯TEL | Eメール: |
Hassen Mellis | Inspector | Algeria | Algiers | +213 21 65 31 87 | +213 559 407 839 | |
Roberto Jorge Alarcón | Coordinator | Argentina | Rosario | +54 (0) 11 4300 9700 | +54 9 11 4414 5687 | |
Ian Bray | Coordinator | Australia | Fremantle | +61 2 92679134 | +61 403 325 376 | |
Matt Purcell | Assistant Coordinator | Australia | Melbourne | +61 3 9329 5477 | +61 418 387 966 | |
Dan Crumlin | Inspector | Australia | Sydney | +61 2 92679134 | +61 400 418 871 | |
Brian Gallagher | Inspector | Australia | Brisbane | +61 414 799 134 | ||
Christian Roos | Inspector | Belgium | Zeebrugge/ Ghent | +32 486 12 38 90 | ||
Marc Van-Noten | Inspector | Belgium | Antwerp | +32 3 224 3419 | +32 475 77 57 00 | |
Rino Huijsmans | Inspector | Belgium | Antwerp | +32 3 224 3414 | +32 473 97 31 95 | |
Ali Zini | Inspector | Brazil | Paranagua | + 55 (61) 3322-3931 | +55 41 99998 0008 | |
Renialdo de Freitas | Inspector | ブラジル | Santos | + 55 (61) 3322-3931 | +55 13 99761 0611 | |
Vladimir Miladinov | Inspector | Bulgaria | Varna | +359 (0)2 931 5124. | +359 887 888 921 | |
Peter Lahay | Coordinator | Canada | Vancouver | +1 (0)604 251 7174. | +1 604 418 0345 | |
Karl Risser | Inspector | Canada | Halifax | +1 902 455 9327 | +1 902 237 4403 | |
Nathan Smith | Inspector | Canada | Vancouver | +1 (0)604 251 7174. | +1 604 791 5216 | |
Vincent Giannopoulos | Inspector | Canada | Montreal | +1 (0)514 931 7859. | +1 514 970 4201 | |
Miguel Sanchez | Inspector | Colombia | Barranquilla | +57 310 657 3399 | +57 310 657 3399 | |
Joachim Mel Djedje-Li | Inspector | Côte d'Ivoire | Abidjan | +225 21 35 72 17 | +225 07 88 00 83 | |
Romano Peric | Coordinator | Croatia | Dubrovnik/ Ploce | +385 20 418 992 | +385 99 266 2885 | |
Luka Simic | Inspector | Croatia | Rijeka | +385(0)51 325 340 | +385 (0)97 793 9521. | |
Milko Kronja | Inspector | Croatia | Sibenik | +385 22 200 320 | +385 98 336 590 | |
Morten Bach | Inspector | Denmark | Copenhagen | +45 88 92 03 55 | +45 21 64 95 62 | |
Peter Hansen | Inspector | Denmark | Copenhagen | +45 36 36 55 85 | +45 30 58 24 56 | |
Jaanus Kuiv | Inspector | Estonia | Tallinn | +372 52 37 907 | ||
Kenneth Bengts | Coordinator | Finland | Helsinki | +358 9 615 20 258 | +358 (0)40 455 1229. | |
Jan Örn | Assistant Coordinator | Finland | Turku | +358 9 613 110 | +358 40 523 33 86 | |
Patrick Kuronen | Inspector | Finland | Helsinki | +358 40 178 7774 | ||
Pascal Pouille | Coordinator | France | Dunkirk | +33 3 28 21 32 89 | +33 6 80 23 95 86 | |
Corine Archambaud | Inspector | France | Le Havre | +33 6 85 52 27 67 | ||
Geoffroy Lamade | Inspector | France | St Nazaire | +33 2 40 22 54 62 | +33 660 30 12 70 |
氏名 | 任務 | 国 | 港 | 事務所TEL | 携帯TEL | Eメール: |
Laure Tallonneau | Inspector | France | Brest | +33 2 98 85 21 65 | +33 6 85 65 52 98 | |
Yves Reynaud | Inspector | France | Marseille | +33 6 07 68 16 34 | ||
Merab Chijavadze | Inspector | Georgia | Batumi | +995 422 270177 | +995 (0)5 93 261303. | |
Sven Hemme | Coordinator | Germany | Bremerhaven | +49 471 92189209 | +49 151 27037384 | |
Susan Linderkamp | Assistant Coordinator | Germany | Bremen | +49 421 330 33 33 | +49 1511 2 666 006 | |
Hamani Amadou | Inspector | Germany | Rostock | +49 381 670 0046 | +49 170 7603862 | |
Karin Friedrich | Inspector | Germany | Hamburg | +49 40 2800 6812 | +49 170 85 08 695 | |
Markus Wichmann | Inspector | Germany | Hamburg | +49 40 2800 6811 | +49 151 18868438 | |
Catherine Haizel | Inspector | Ghana | Tema | +233 266 457 793 | ||
Liam Wilson | Inspector | Great Britain | Scotland | +44 1224 210 118 | +44 7539 171 323 | |
Tommy Molloy | Inspector | Great Britain | NW England | +44 151 639 8454 | +44 776 418 2768 | |
Stamatis Kourakos | Coordinator | Greece | Piraeus | +30 210 411 6610/6604 | +30 6 9 77 99 3709 | |
Costas Halas | Inspector | Greece | Piraeus | +30 210 411 6610/6604 | +30 6944 297 565 | |
Jason Lam Wai Hong | Inspector | Hong Kong, China | +852 2541 8133 | +852 9735 3579 | ||
Jónas Gardarsson | Inspector | Iceland | Reykjavik | +354 551 1915 | +354 (0)892 79 22. | |
B V Ratnam | Inspector | India | Visakhapatnam | +91 8912 502 695 / 8912 552 592 | +91 9 8481 980 25 | |
Chinmoy Roy | Inspector | India | Calcutta | +91 33 2439 6184 | +91 98300 43094 | |
K Sreekumar | Inspector | India | Chennai | +91 44 2522 3539 | +91 9381001311 | |
Louis Gomes | Inspector | India | Mumbai | +91 22 2261 8368 | +91 8080556373 | |
Mukesh Vasu | Inspector | India | Kandla | +91 2836 226 581 | +91 94272 67843 | |
Thomas Sebastian | Inspector | India | Kochi | +91 484 2666409 | +91 98950 48607 | |
Evelina Saduikyte | Inspector | Ireland | Cork | +353 87 0512034 | ||
Assaf Hadar | Inspector | Israel | Haifa | +972 48 51 22 31 | +972 (0)522 977 127. | |
Francesco Di Fiore | Coordinator | Italy | Genoa | +39 10 25 18 675 | +39 (0)33 1670 8367. | |
Gianbattista Leoncini | Inspector | Italy | Taranto | +39 99 4707 555 | +39 335 482 703 | |
Paolo Serretiello | Inspector | Italy | Naples | +39 81 265021 | +39 (0)335 482 706. | |
Paolo Siligato | Inspector | Italy | Trieste | +39 3484454343 | ||
大堀二三男 | コーディネーター | 日本 | 東京 | +81 3 5410 8320 | +81 90 6949 5469 | |
藤木茂 | インスペクター | 日本 | 千葉 | +81 3 3735 0392 | +81 90 9826 9411 | |
豊滿芳弘 | インスペクター | 日本 | 東京 | +81 3 5410 8320 | +81 90 5306 2494 |
ITFインスペクター
世界中で船員を支援
Reykjavik
Seattle
Vancouver
Montreal
Halifax
ITF本部
欧州運輸
Portland San Francisco
Los Angeles
Houston
New York Baltimore
Charleston
Casablanca
Algiers
New Orleans
Tampa Las Palmas
Manzanillo
Veracruz San Juan
Cristobal
Barranquilla
Abidjan
Tema
ITF本部
ロンドン(英国)
Tel: +44 (0) 7403 2733
欧州運輸労連(ETF) ブリュッセル(ベルギー) Tel: +32 (0) 2 285 46 60
中南米地域事務所
リオデジャネイロ(ブラジル)
中南米地域事務所
Email: itf_americas@itf.org.uk
中南米地域事務所
Santos Paranagua
Rosario
Tromso
Bergen Porsgrunn
Oslo
Umea
Turku
Helsinki
St Petersburg Tallinn
Aberdeen
Gothenburg
Norrkoping
Copenhagen Hamburg
Riga Klaipeda
Liverpool
Bremerhaven
Malmo Gdynia
Bremen
Rostock Szczecin
Cork
Brest
Zeebrugge Rotterdam
Antwerp Ghent
Dunkirk
Le Havre
Odessa
St Nazaire
Trieste
Constanta
Novorossiysk
Vigo
Bilbao
Genoa Marseille
Rijeka Sibenik
Varna
Batumi
Lisbon
Barcelona Valencia
Dubrovnik Naples
Bar Taranto
Istanbul
Algeciras
Valletta
Piraeus
労連(ETF)
Vladivostock
ITFアラブ地域事務所
Haifa
Busan
Tokyo Chiba
A
ITFアフリカ地域事務所
Kandla Mumbai
Kochi
Kolkata Visakhapatnam
Chennai Yangon
Colombo
Kaoshiung Manila
Mombasa
ITFアジア太平洋地域事務所
(シンガポール)
アフリカ地域事務所
ナイロビ(ケニヤ)
Tel: +254 20 374 2774/5
アラブ地域事務所
アンマン(ヨルダン)
Tel: +962 (0)0 6 5821366
Fremantle
アジア太平洋地域事務所
シンガポール
Tel: +65 6379 5691
Brisbane Sydney
Melbourne
Wellington
インスペクターの連絡先
氏名 | 任務 | 国 | 港 | 事務所TEL | 携帯TEL | Eメール: |
Betty Makena Mutugi | Inspector | Kenya | Mombasa | +254 41 2230027 | +254 721 425828 | |
Moon Hyeokjin | Inspector | Korea | Busan | +82 51 469 0294 | +82 10 4444 8436 | |
Norbert Petrovskis | Inspector | Latvia | Riga | +371 677 09242 | +371 292 15136 | |
Andrey Chernov | Inspector | Lithuania | Klaipeda | +370 699 28198 | ||
Paul Falzon | Inspector | Malta | Valletta | +356 79969670 | +356 79969670 | |
Enrique Lozano Díaz | Inspector | Mexico | Veracruz | +52 229 932 1367 | +52 229 161 0700 | |
Jose Antonio RamirezPelayo | Inspector | Mexico | Manzanillo | +52 314 172 8089 | +52 314 172 8089 | |
Tomislav Markolović | Contact | Montenegro | Bar | +382 (0)30 315 105. | +382 69 032 257 | |
Hamid Rachik | Inspector | Morocco | Casablanca | +212(0) 5 22 21 96 26 | +212 (0) 6 48 13 09 57 | |
Han Bo Tun | Contact | Myanmar | Yangon | + 95 1 203874 | +959 250 143 678 | |
Aswin Noordermeer | Inspector | Netherlands | Rotterdam | +31 6 53 337522 | ||
Debbie Klein | Inspector | Netherlands | Rotterdam | +31 6 53 182 734 | ||
Gijs Mol | Inspector | Netherlands | Rotterdam | +31 622 89 08 77 | ||
Koen Keehnen | Inspector | Netherlands | Rotterdam | +31 624 336109 | ||
Grahame McLaren | Inspector | New Zealand | Wellington | +64 4 801 7613 | +64 21 292 1782 | |
Angelica Gjestrum | Coordinator | Norway | Oslo | +47 22 82 58 24 | +47 9 77 29 357 | |
Andreas Husa | Inspector | Norway | Bergen | +47 22825854 | +47 97532446 | |
Truls M Vik Steder | Inspector | Norway | Porsgrunn | +47 35 54 82 40 | +47 90 98 04 87 | |
Yngve Lorentsen | Inspector | Norway | Tromso | +47 77 69 93 46 | +47 (0)414 01 222. | |
Luis Carlos Fruto | Inspector | Panama | Cristobal/Balboa | +507 315 1904 | +507 6617 8525 | |
Arvin Ivan Peralta | Inspector | Philippines | Manila | +63 2 8927 0429 | +63 919 096 7187 | |
Adam Mazurkiewicz | Coordinator | Poland | Szczecin | +48 91 4239707 | +48 501 539329 | |
Grzegorz Daleki | Inspector | Poland | Gdynia/Gdansk | +48 58 6616096 | +48 514 430 374 | |
João de Deus Gomes Pires | Inspector | Portugal | Lisbon | +351 21 391 8181 | +351 91 936 4885 | |
Jose A. Claudio Baez | Inspector | Puerto Rico | San Juan | +1 787 318 0229 | ||
Adrin Mihalcioiu | Inspector | Romania | Constantza | +40 241 618 587 | +40 722 248 828 | |
Sergey Fishov | Coordinator | Russia | St Petersburg | +7 812 718 6380 | +7 911 096 9383 | |
Kirill Pavlov Olga Ananina | Inspector Inspector | Russia Russia | St. Petersburg Novorossiysk | +7 812 718 6380 +7 8617 612556 | +7 911 929 04 26 +7 9887 621232 | |
Petr Osichansky | Inspector | Russia | Vladivostok | +7 4232 401240 | +7 (0)914 790 6485. |
氏名 | 任務 | 国 | 港 | 事務所TEL | 携帯TEL | Eメール: |
Rodion Sukhorukov | Inspector | Russia | St. Petersburg | +7 812 718 6380 | +7 921 952 2562 | |
Daniel Tan | Contact | Singapore | Singapore | +65 63795666 | +65 9616 5983 | |
Gwee Guo Duan | Contact | シンガポール | Singapore | +65 6390 1611 | +65 9823 4979 | |
Luz Baz | Coordinator | Spain | Vigo | +34 986 221 177 | +34 660 682 164 | |
Esteban Pereda | Inspector | Spain | Bilbao | +34 94 4037700 | +34 688 75 53 35 | |
Gonzalo Galan | Inspector | Spain | Las Palmas | +34 638 809 166 | ||
Juan Ramon Garcia | Inspector | Spain | Valencia | +34 96 367 06 45 | +34 (0)628 565 184. | |
Marc Marti Gil | Inspector | Spain | Barcelona | +34 699 550 578 | ||
Pedro Damian Esteban | Inspector | Spain | Algeciras | +34(0)91 589 71 19 | +34 618 842 905 | |
Ranjan Perera | Inspector | Sri Lanka | Colombo | +94 112 583040 | +94 (0)77 314 7005. | |
Annica Barning | Coordinator | Sweden | Malmo | +46 70 57 49 714 | ||
Fredrik Bradd | Assistant Coordinator | Sweden | Umea | +46 10 4803103 | +46 761006445 | |
Göran Larsson | Inspector | Sweden | Gothenburg | +46 10 480 3114 | +46 70 626 7788 | |
Haakan Andre | Inspector | Sweden | Norrkoping | +46 8 791 41 02 | +46 (0)70 574 2223. | |
Tse-Ting Tu | Inspector | Taiwan, China | Kaoshiung | +886 7 5212380 | +886 988513979 | |
Muzaffer Civelek | Inspector | Turkey | Istanbul | +90 535 663 3124 | ||
Nataliya Yefrimenko | Inspector | Ukraine | Odessa | +380 482 429 901 | +380 50 336 6792 | |
Dwayne Boudreaux | Coordinator | USA | Gulf Coast | + 1 504 581 3196 | +1 504 442 1556 | |
Enrico Tortolano | Coordinator | USA | East Coast | +1 201 434 6000 (ext 240) | +1 201 417 2805 | |
Jeff Engels | Coordinator | USA | West Coast | +1 206 331 2134 | ||
Barbara Shipley | Inspector | USA | Baltimore/Norfolk | +1 757 622 1892 | +1 202 412 8422 | |
Donna Connor | Inspector | USA | Charleston | +1 843 469 5611 | ||
Eric White | Inspector | USA | Florida | +1 813-576 9805 | ||
Ryan Brazeau | Inspector | USA | Portland | +1 971 500 8596 | ||
Sam Levens | Inspector | USA | San Francisco | +1 415 490 8956 | ||
Shwe Tun Aung | Inspector | USA | Houston | +1 713 659 5152 | +1 713 447 0438 | |
Stefan Mueller-Dombois | Inspector | USA | Los Angeles | +1 562 493 8714 | +1 562 673 9786 | |
Michael Baker | Contact | USA | Cleveland | +1 216 781 7816 | +1 440 667 5031 |
インスペクターの支援
ITFインスペクターができること
最初のITFインスペクターが任命されたのは1971年で、現在では、世界中の港で働く130人のインスペクターとコンタクトのネットワークがある。
ITFインスペクターは、ITFの便宜置籍船(FOC)キャンペーンの目的や課題に関わる仕事をしている労働組合の役員である。(本誌p30-31参照)
ITFインスペクターの多くは元船員や港湾労働者である。彼らの仕事は入港してくる船舶の船員たちが適正な賃金、労働条件、居住条件を受けられるよう査察するとともに、船上でITF協約が実施されるよう監督することである。
ITFインスペクターができること
・船の雇用・居住条件に問題がないかの査察
・乗組員たちとの陸上での面会
・船員へのアドバイスや支援の提供
・特定の港・国で問題を解決する際の法的可能性のアドバイス
・契約上の争いにおいて乗組員の代理人(委任状)になること
・安全上の諸事案についてのポート・ステート・コントロールとの連携
・船員の母国にITF加盟組合がある場合は船員を紹介
・船上の諸問題を船主に対して提起
・船上の諸問題が解決するよう船主に圧力をかけること
・ITFが認める団体労働協約締結の促進
・ITF協約下にある船舶では査察目的での合法的乗船
・別の国のITFインスペクター・ITF加盟組合・コンタクトへの連絡
・支払われるべき賃金の計算と未払い金請求の扱い
・上質の英語を話すこと
・可能な限り事案を内密に扱うこと
・電話、スマホ、メール、ショートメッセージでの連絡
・船員争議を扱っている船籍国当局、福祉団体、大使館など第三者との連携
・入院した船員たちへの支援の提供
・ITF出版物の提供
ITFインスペクターができないこと
・国の法律で許されていること以上の行動
・船もしくはターミナルへの訪問を無条件にいつでも行うこと
・当該乗組員の協力なしでの問題解決
・船員が雇用を失ったりブラックリストに載せられたりしないという保証
・船員に船上での雇用を見つけること
・ITF方針の変更
・ITFや現地ITF加盟組合の方針を越えた行動
・ITFインスペクターを雇用する労働組合の利益に反する行動
・違法行為
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
権利の ために闘う
争議行為について
ITFは、便宜置籍船に乗り組む船員が正当な賃金と適正な団体協約の適用を受けられるよう、支援を約束しています。
時には船員が現地の裁判所に提訴しなければならないこともあります。場合によっては、船舶に対するボイコットも必要です。どのような手段が適切かは、国または場所によって異なります。ある国では適切な行動が、他の国においては全く不適切なこともあります。
最初に取るべき行動は、現地のITF代表に連絡することです。本誌の綴じ込みガイドブックに記載されている連絡先を参考にして下さい。何らかの行動を取る前に、必ず現地の助言を得て下さい。
一部の国においては、船舶の乗組員によるストライキが違法行為となることもあります。そのような場合には、現地のITF加盟組合の代表が状況を説明します。多くの国において、労使紛争での勝利の鍵を握るのは
あなたの法的権利
ストライキです。この場合にも、現地の助言に基づいて行動する必要があることは言うまでもありません。多くの国で、船員には、航行中を除き、入港中のストライキ権がが法律上認められています。
あらゆるストライキにおいて重要なことは、規律と安全を守り、団結を維持することです。多くの国で、ストライキ権は基本的人権の一部として、法律あるいは憲法により保障されています。
どのような行動を選択するにせよ、事前に現地のITF代表に連絡することを忘れないで下さい。互いに協力することによって、正義と基本的権利の闘いに勝利することができるのです。
海難事故
あなたの船が海難事故に巻き込まれた場合、船主、港湾当局、沿岸国、旗国、あるいは出身国による公正な処遇を確保するための国際的なガイドラインが存在することを知っておいて下さい。
このガイドラインに基づくあなたの権利を理解しておくことが重要です。
・証拠の提出を求められる場合は、当局はできるだけ早い機会にこれを行い、これが完了し次第、あなたはでききるだけ早く船に戻ったり、本国送還されたりすることを許されるべきです。
・あなたには弁護士を呼ぶ権利があります。質問に答えたり、供述を行ったりする前に、弁護士を要求して下さい。あなたの回答や供述が、将来の法的手続きにおいて、あなたに不利な材料として利用される可能性があるからです。
・言われたことを理解できない場合は、質問の中止を求めて下さい。使われている言語に問題がある場合は通訳を要求して下さい。
・会社はあなたを支援する義務があります。会社(または組合)に連絡をとり、助言と支援を求めて下さい。
より詳しいアドバイスが必要な場合や、現地に組合やITFインスペクターが存在しない場合は、ITFの船員サポートチーム( seafsupport@itf.org.uk)にご連絡下さい。詳しい情報はこちら www. itfseafarers.org/your_legal_rights.cfm
seafsupport@itf.org.uk www.itfseafarers.org #ITFseafarers
詐欺
求人詐欺にひっかかるな
船員をターゲットにした求人詐欺が増えている。そしてそれはますます巧妙になっている。
どうしたら詐欺師たちに騙されずにすむかを船員たちは学ぶ必要がある。
詐欺の手口は?
ほとんどの詐欺は、高賃金、多額のチップ、または通常見られない高条件で仕事を提供し、船員を誘惑する。
詐欺師たちは人材紹介、斡旋会社や人事担当者になりすまし、求人広告が本物に見えるようにする極めて巧妙な手口(まるで本物に見えるようなメールアドレスや偽サイト等)を用いてくる。彼らは、WhatsApp、Viber、Linkedinのような直接連絡の取れる通信手段を利用したり、Facebookや他のソーシャル・メディアを経由して、話を広めたりする傾向がある。
このような方法で広められている募集はすべて詐欺である。良く知られた船会社やクルーズ船会社は頼まれてもいないのに内定を出すこともなければ、ソーシャル・メディアに求人広告を出すこともない。
一切、反応してはいけない。そして、あなたの友人に注意を促そう。
このような募集広告に応募すると、パスポート等の身分証明書のコピーや、生年月日や銀行口座等の個人情報も要求して来るだろう。絶対に教えてはいけない。詐欺師はあなたになりすまし、口座から全額を引き出してしまうだろう。
そして、「一度限り」の登録料を支払うように言われる。船までの交通費やビザ取得料、事務費の名目で支払いを要求されることもある。しかし、これは違法だ。仕事の斡旋料を船員に要求することはILO海上労働条約で禁止されている。ビザ取得費も船主が負担することになっている。一銭たりとも払ってはいけない。
詐欺の手口
・頼んだわけでもないのに仕事のオファーが来る。
・ソーシャルメディア上の募集広告である。
・どのような理由であれ、金銭を要求してくる。
・個人情報の提供や身分証明書のコピーを要求してくる。
・事務所の連絡先が携帯電話番号になっている。
・電話番号の国番号がおかしい。
・会社名を含まない E メールアドレスを使っている。
・Gmail、Globomail、 Yahoo などのフリーメールアドレスからメールが届く。
・事務所の所在国とメールアドレスのドメイン名の国が異なる。
ITF のウェブサイト www. itfshipbesure.org を訪問し、詐欺にひっからないように、知識を得よう。
休職中の船員へのアドバイス
・ITFが新たに立ち上げたウェブサイト「ShipBeSure」
(www.itfshipbesure.org)を訪問してほしい。求人詐欺や悪徳エージェントに関するアドバイスが載っている。本誌の20頁も参考にしてほしい。
・有名なクルーズ会社や大手船会社の公式ウェブサイトを訪問してみよう。通常、陸上あるいは船内の仕事の専用の募集ページがあり、そこに履歴書を送ればよいようになっている。参加無料の就活イベントを開催している船社も多い。そのサイトに掲載されている詐欺警告をよく読んで、疑わしい点があったら、本社に問い合わせをしよう。
・実在の船会社のウェブサイト上の募集広告風に見えるものにも同様に注意しよう。特にフリーポストの募集広告は要注意だ。
疑わしい場合はITF jobscam@itf. org.ukに相談しよう
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
業界の動向 19
船員はグリーンな将来への公正な移行の中心的存在
国際海運会議所(ICS)のガイ・プラッテン事務局長が海運産業が交通運輸産業における公正でグリーン経済への移行をいかに主導しているかについて語る。
海運が取り掛かろうとしているグリーン・トランスフォーメーション(緑の変革)には、多くの不確定要素がある。例えば、どの代替燃料や推進方式が最終的に勝ち残るのか、まだ分からない。その過程の中で、どの航路が利用できるグリーン燃料に依存して変貌を遂げていくのかも不明だ。また、グローバル市場ベースのアプローチの承認から、提案されている50億米ドルの研究開発基金の設置に対する支援まで、重要な脱炭素化対策に対する各国政府の立場もまだ明確になっていない。
しかし、1つだけ非常にはっきりしていることは、船員が海運界の脱炭素化への道程の中心的存在になるということだ。
国際海運会議所(ICS)は、必要とされている明確な答えを提供すべく、また、2050年までに二酸化炭素排出ゼロを達成するために必要なペースと規模で変化を起こせるよう、こうした問題すべてについて活動を展開している。
この活動の重要な部分を担っているのが、COP26期間中に結成された「公正な移行海事タスクフォースだ。このタスクフォースには、ICS、ITF、国連グローバル・コンパクト、国際労働機関(ILO)、国際海事機関(IMO)が参画している。気候変動への取り組みは、海運産業にとって巨大な変革であり、同タスクフォースは、海運界がこの変革を利用して、良い方向へ根本的に変化できることを目指して結成された。公正な移行を実現することがその中核になくてはならない。同タスクフォースの活動は、公正さを確保するため
には、移行における海事労働者の安全衛生を確保し、彼らの生活の保護を確保するべきとの原則に基づき活動している。タスクフォースでは、現在のカリキュラムやトレーニングプログラムの更新とともに、再スキル育成、スキルアップ、新しいグリーンスキルの習得などについても検討する予定だ。
タスクフォースはまず、グリーンな移行に必要なグリーンスキルを決定するための調査を行う予定だ。この調査では、世界中で船舶に乗り組む船員に必要な訓練について、具体的な数値や事実を示すことを目指している。そうすることで、船員はアンモニアや水素ベースの燃料など、最も普及している代替燃料や推進技術を取り扱い、排出ゼロ船舶を安全に運航することができるようになるだろう。
また、タスクフォースは、例えば、スキル計画やトレーニングに関する方針を策定したり、ベストプラクティスや戦略を提供することによって、船員のスキルアップの面で企業や政府が果たすべき役割について提言する予定だ。
タスクフォースのすべての活動の基礎となるのは、発展途上国が権利を奪われないよう、公平な移行を確保するという原則だ。つまり、技術や知識の移転はグローバルノースからグローバルサウスへと共有されなくてはならず、インターネットプロトコル(IP)やグリーンテクノロジーへのアクセスも共有され、投資へのアクセスは限られた少数の者だけではなく、万人に提供されなければならないことを意味する。
seafsupport@itf.org.uk www.itfseafarers.org #ITFseafarers
20 詐欺
仕事を探していますか?
詐欺被害に会わないために
「ShipBeSure」をチェックしよう
仕事を探し始める前に、新しいITFのウェブサイト「ShipBeSure」を見てほしい。詐欺被害から守ってくれるかもしれないとITF査察コーディネーターのスティーブ・トロウズデールがアドバイスする。
ITFがウェブサイト「ShipBeSure」(https://www.itfshipbesure.org)を立ち上げたのは、求人詐欺が急増し、船員が大きな被害にあっているからである。
求人詐欺をはたらく犯罪者に金を奪われ、職無しにされ、屈辱を味あわされた船員たちの痛ましい話を聞く機会が増えている。これら詐欺師たちは他人の金を奪うことに抜け目なく、詐欺行為を実行するためにソーシャル・メディア等のあらゆる手段を講じる。
仕事を探しているのなら、まずは「ShipBeSure」を訪れることを強く勧める。詐欺被害から自分の身を守る多くの術が身に付くだろう。また、
「ShipBeSure」がより包括的で最新の情報を満載したウェブサイトとなるように、求人詐欺に関する自身の経験をITFに知らせてほしい。
「ShipBeSure」が助けてくれる
「ShipBeSure」は閲覧しやすく、重要な情報とアドバイスに溢れている。
Getting started(さあ始めよう):乗船する前に何をすべきか、マニング・エージェントを利用する場合に何を見ればよいのかを案内する。ここには、MLCで保障されたあなたの権利についての説明や契約に関するアドバイスを掲載している。クルーズ船で仕事を探している船員のために、クルーズ船運航会社とその連絡先を掲載し、直接連絡を取ることを勧めている。
・Find a manning agent(マンニング・エージェントを探そう):バングラデシュ、インド、インドネシア、ミャンマー及びフィリピンで正式に登録されたマンニング・エージェント(配乗代理店)を探したり、ITFによるそれらの格付け評価も見たりすることができる。評判の良いエージェントはグリーンリストに載っている。レッドリストに上がっているエージェントは避けるよう忠告している。
・Scams and fake jobs(詐欺と偽の求人):詐欺の兆候をどう掴むか、Facebookにあるクルーズ船詐欺をどう見つけるか等、Scam Alerts(詐欺警報)のページには、詐欺、偽会社、偽ウェブサイトをチェックする方法を説明している。
・Look up a ship, inspector or union(船、インスペクター、労働組合を調べよう)
:乗船を検討している船について詳しく知ろう。支援してくれる近くのITFインスペクターや労働組合を見つけよう。
・Report an agent or scam(エージェントや詐欺について報告しよう):もしあなたが詐欺や偽ウェブサイトを見つけたら、ITFに知らせよう。ITFはそれらを調査しScam Alerts(詐欺警報)のページに加えていく。
黄金律を忘れるな―本当にしては良すぎる求人は、ほぼ間違いなく本当ではない
あなたが確信の持てないオファーについてのアドバイスが欲しい時や、詐欺の報告はITFに連絡してほしい(jobscam@itf.org.uk)
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
フィリピン人船員たちの勝利
ライセンスを失ったマニング•エージェント、エーブル•マリタイム社
フィリピン人船員たちからの公式の苦情申し立てとITFからの圧力を前にエーブル・マリタイム社がついにそのライセンスを取り下げたことは、船員たちの喜びとなろう。マニラのITFインスペクター、アルビン・ペラルタはこの動きを歓迎しながらも、規制当局が何も対処しなかったために多くの悲劇が生まれたと述べた。
この勝利は、他の悪質なマニング・エージェントに対して、船員を搾取すれば会社が立ち行かなくなるという強い警告となる。船員たちは、安全な労働環境の下で適切な待遇を受ける権利を持っている。
約220,000人と推定されるフィリピン人船員は、家族やコミュニティに何十億ドルもの送金をすることで国の経済を活気づかせている。しかし彼らとその家族たちは、フィリピン海外雇用局(POEA)がエーブル・マリタイム社に対して何の措置もとらないことに大きく失望させられてきた。
21
船員に働く船を紹介し、海外で雇用される船員たちの賃金・福祉・労働条件を守るとともに、家族が賃金の一定部分を受け取れるように保証する役割を担うマニング・エージェントは、POEAの統制下にある。しかし、エーブル・マリタイム社が多数の船員配乗に失敗している圧倒的な証拠があるにも拘わらず、POEAは同社に対して船員紹介業のライセンスを与え続けた。
2021年10月、ITFはエーブル・マリタイム社をITFのウェブサイト「ShipBeSure」内の船員紹介業監視リストに加え、この会社を通して仕事を見つけないよう船員たちに忠告した。これは、エーブル・マリタイム社の行状についてのニュース記事が出た後、船員とその家族から次々と苦情がITFに寄せられた結果だった。ただ、エーブル・マリタイム社のライセンス自体は今も活きている。
エーブル•マリタイム社をめぐる体験談
アンディ・ウンバニア・ボロはエーブル・マリタイム社によって2021年9月 9日に漁船第8チン・ユァン・ユ号に配乗された。アンディのパートナーと幼子2人は4カ月たってもアンディから連絡もなければ、賃金も振り込まれてこないため、必死の思いでITFに駆けこみ、「10カ月の赤子と3歳の息子に生活必需品を買うお金が必要なのです」と訴えた。
レズリー・アン・デ・トレスは2021年
9月に、夫のジェミエル・クリス・デ・レオン・デ・トレスと8カ月以上も連絡がつかず、安否が心配だとしてITFに連絡してきた。ITFが記事にしたことで夫の生存が確認され、漁船第116ル・ユァン・ユ号で働いていることが分かった。デ・トレスは(エーブル・マリタイム社ではなく)船主が送還を強く主張したことで今はフィリピンに帰っている。
エーブル・マリタイム社がフィジーのガウンダー・シッピング社に送った21
人の船員らは、低賃金と劣悪な労働条件に直面した。船員らがフィジーに到着した際、エーブル・マリタイム社が契約書の内容を変えていたことを ITFが証明したため、POEAは一時的に会社のライセンスを停止させたものの、2週間後には解除した。乗組員がこの状況から解放され、帰国することができたのは2021年10月のことだった。
seafsupport@itf.org.uk www.itfseafarers.org #ITFseafarers
22 特集 船員の有罪化
犯罪捜査に 巻き込まれたら
自分の船が海難事故に遭遇したり、海洋汚染を引き起こしたりして、犯罪捜査に巻き込まれた場合に、自分にはどのような権利があるのか、どこに助けを求めたらよいのかについて、シーフェアラーズ・ブルテンがアドバイスする。
自分の権利について知ろう
自分の船が海難事故に巻き込まれた場合、船主、港湾当局、沿岸国、旗国、あるいは出身国による公正な処遇を確保するための国際的なガイドラインが存在することを知っておこう。
このガイドラインに基づく自分の権利を理解しておくことが重要だ。
・証拠の提出を求められる場合は、当局はできるだけ早い機会にこれを行い、これが完了し次第、できるだけ早くあなたを船に戻し、本国送還を許すべきであること。
・あなたには弁護士を呼ぶ権利がある。質問に答えたり、供述を行ったりする前に、弁護士を要求しよう。あなたの回答や供述が、将来の法的手続きにおいて、あなたに不利な材料として利用される可能性があるからだ。
・言われたことを理解できない場合は、質問の中止を求めよう。使われている言語に問題がある場合は通訳を要求しよう。
・会社はあなたを支援する義務がある。会社(または組合)に連絡をとり、助言と支援を求めよう。
より詳しいアドバイスが必要な場合や、現地に組合やITFインスペクターがいない場合は、ITFの船員サポートチーム( seafsupport@itf.org.uk)に連絡を。
More information at www.itfseafarers.org/your_legal_rights.cfm
フライング号の無実の乗組員の恩赦を求める
ITFとITF船員トラストは、マダガスカルで既に刑期の内3年を務めている無実の船員15人を刑務所から釈放させる取り組みを強化している。 ITF船員トラストのケイティ・ヒギンボトム事務局長がこの事件を説明する。
フライング号は2018年12月19日に許可なくマダガスカル領海に入ったとしてマダガスカル沿岸警備隊に拘束された。乗組員15人は全員逮捕され、懲役5年と罰金
1千万アリアリ(1,953.88ポンド)の判決を言い渡された。船主は罰金20億アリアリ(204,081.63英ポンド)を命じられ、船はマダガスカル政府に没収された。
これに加えて、船内からは何の証拠も発見されなかったにもかかわらず、15人は木材の違法取引で起訴され、 20年の実刑判決を受けた。
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
23
サントッシュ・クマールを帰国させよう
オーシャン・トレーダー号の船上でコンテナ一基が爆発したことがニュースになってから7カ月が経過したが、ドバイ警察は依然として船長の帰国を許していない。ITFのスティーブ・トロウズデール査察コーディネーターが船長支援のITFの取り組みを説明する。
2021年7月7日、ジェベル・アリ港(ドバイ)でオーシャン・トレーダー号に積み込まれたばかりのコンテナ一基に火災が発生し、25キロ離れたビルにまで振動が伝わる爆発を起こした。幸いなことに、重傷者は出なかった。
乗組員の一人がコンテナから煙が出ているのを発見した。連絡を受けた船長は直ちに船外への退避を指示し、港湾救助当局へ連絡した。サントッシュ・クマール船長はヒーローである。彼は迅速かつ適切に行動し、おそらく多くの人命を救った。
警察は爆発事故捜査の一環として、クマールを含む乗組員数人を事情聴取した。14人の乗組員全員は近くのホテルに留め置かれた。クマール以外の乗組員は2021年 11月28日に帰国の途に就いた。当局は拘留延期の理由も、更にどれだけの期間拘束されるかもクマールに明らかにしていない。ITFは少しでも良い居住環境となるよう、クマールを自炊設備のあるアパートに移した。
ITFは、乗組員に対する責任を負っている船籍国(コモロ連合、FOC船籍の一つ)および船主(パナマ登録のサシ
乗組員の内9人は中国人、4人はバングラデシュ人、2人はミャンマー人で、既に3年を刑務所で過ごしている。
何人かは2017年3月からの契約になっており、家を離れてから5年以上が経過している。
彼らは船主、船社、エージェントから見捨てられており、代理人もいなければ支援する者もいない。家族には収入が一切入らず、彼らの心身の状態は極限に達している。
現地のITF加盟組合SYGMMAとチャリティー団体グッド・サマリタン・シーメンス・ミッションが本件を追っている。
ュ・シッピング社)と連絡を取ってきた。また、ドバイ警察に対しても、人道的見地から、妻、二人の幼子、年老いた父の待つ母国への帰国を許可するよう促してきた。家族は皆、クマールの収入で暮らしている。
ITFはクマールに金銭支援を行っているが、本来、クマールの雇用関係は帰国するまで継続するので、クマールは給与全額を受け取っていなければならないはずだ。しかしながら、実際は、2021年3月以降、14人の乗組員は誰一人として正当な支払いを受けていない。既に95,000ドル以上が未払いとなっている。
乗組員たちの基本的人権は恐ろしいほど無視されてきたが、船籍国、船主、ドバイ警察は皆、この状態を放置している。
ITF船員トラストは服役中の船員らに食料と衣類を差し入れ、家族への支援金を同ミッションに提供してきた。ITFは控訴のための弁護士費用を支払っている。ITF船員トラストは2022年1月14日にマダガスカルのアンジ・ニリナ・ラジョリナ大統領に書簡を送り、
「本件の人道的側面を考慮し、船員らができるだけ早く家族の待つ母国へ帰国できるように大統領恩赦を」促している。
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24 特集:船員の有罪化
モーリシャスでの不当な拘留
一件の海難事故がスリランカ人乗組員2人の1年半におよぶ投獄を生み、他の乗組員もモーリシャスからの出国を止められている。ITFインスペクター、ランジャン•ペレーラが、船員たちの解放を求める ITFや他団体の運動について報告する。
2020年7月25日、わかしお号がモーリシャス沖で座礁した時、船長のス二・ナンデシュワルと一等航海士のスボダ・ティラカラトナが当直を務めていた。乗組員は全員、10日後にモーリシャス当局によって空から救出するまで、座礁船に留まっていた。そして、検疫のためのホテルに収容された。
8月18日、船長と一等航海士は安全航行義務違反で暫定起訴され、収監された。刑期は最大60年の可能性があった。船主が雇った弁護士は、起訴内容を最高5年の刑期の無害通航違反に変更させることに成功した。しかし保釈請求は退けられた。他の乗組員たちの大半は現地のホテルで自宅軟禁となっていた。
逮捕から1年が経過し、ITFはモーリシャスのプリトヴィラジシン・ルーパン大統領に乗組員全員の即時釈放と帰
国を要請した。
2021年12月15日、二人は正式に起訴された。起訴内容は安全航行義務違反で、モーリシャス海事法が認める最も軽い2年の求刑だった。
スボダ・ティラカラトナは、無実だと訴えながらも罪を認めた。「これはできるだけ早く家族の元へ帰るための唯一の手段だ。モーリシャスで裁判を闘うと何カ月、いや何年もかかる。私の弁護士は私の精神的、感情的ストレスを理解し、この決断を全面的に支持してくれた」とITFに語った。
2021年12月27日、ティラカラトナは懲役1年8カ月の判決を受けたが、拘留期間や減免措置が考慮され、翌日に釈放された。2日後、彼は帰国した。残りの
3人の乗組員は12月25日に帰国を許可された。 ティラカラトナは「罪が立証されていない段階で服
役しなければならないのは何故なのか、今でも疑問に感じている。最高の弁護士と闘ったとしても、それが避けられないとしたら、弁護士費用を支払えない被告人はどうなるのか。考えただけで恐ろしくなる」と語った。
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
健康と幸福 25
写真提供:ジョンレイ・アルターアッド
「ヘルプラインには記録的な件数の相談が寄せられた。
2019年は679件だった。2020年4月から12月の間で1,275件になった。2021年にはさらに1,595件に増加した」
最初はコロナ。
今は隠れたパンデミック、つまり、
メンタルヘルス問題だ。
コロナ禍が始まってから、インド船員組合(NUSI)が船員とその家族のために運営している「サハラ24/7心理臨床ヘルプライン」への相談件数は急増した。NUSIのアブダルガニ・セラン書記長が NUSIの対応を説明する。
支援の手がそこにあるということを船員に知らせるために、ソーシャル・メディアやマニング・エージェント、船会社を通じてサハラ・ヘルプラインのことを広めてきた。安全が確認されている場所では、健康とストレス・マネージメントに関する対面の講座を再開すると共に、Facebookでのライブ・セッションも定期的に行ってきた。これらの中にはITFやノルウェー船員組合(NSU)の協力を得たものもあった。
ヘルプラインには記録的な件数の相談が寄せられている。2019年には679件だったが、2020年4月から12月の間に1,275件になった。2021年にはさらに1,595件に増加した。
コロナ禍初期の相談のほとんどが船員交代問題に起因するもの-契約延長、帰国の遅延、収入の不安定化などを
めぐるストレス、憂鬱、不安感-だった。2021年には医療関係の相談が増えてきた。例えば、酸素や医療保険を得るにはどこに行けばよいのか、ワクチンの効果や接種方法、更には特に小さな子供にとってワクチンが安全かどうかというものだった。2021年末からは多くの相談が別れや離婚、アルコールや薬物濫用、睡眠不足など船員とその家族の人間関係にまつわるものになっていった。
コロナ禍が生んだ先行きの不透明感、収入の不安定化や絶望感がメンタルヘルスをパンデミック化しているのは間違いない。これはコロナウィルスそのものより長く生き延び、破滅的な結果をもたらす危険がある。
NUSIは現実的な支援の拡大を迫られた。ITF船員トラストから資金援助を受け、酸素、個人用防護具、医療支援を提供した。NUSIサラ(ヒンディー語でアドバイス)を設立し、船員子弟への教育やキャリア指導を行った。これらは今、配偶者を対象とする家計管理、キャリア指導、小規模ビジネス設立のプログラムへと拡大している。
運動は健康と安寧にとって重要である。メディテーション(瞑想)とヨガのプログラム「NUSIスワト(ヒンディー語で健康)」をムンバイで運営するホステルで開始し、ストレス・マネージメントを促している。近々、NUSIのソーシャル・メディアでヨガのライブ配信も行う。
コロナ禍の状況が許せば、インド人船員の間によくみられる高血圧、心臓病、糖尿病に焦点を当てたヘルス・キャンプを始めたい。健康に良い食事、体重管理、良好な睡眠、健康に配慮したデジタル機器の利用などに焦点をあてた総合的生活習慣・保健プログラムも計画している。また、HIV-エイズ啓蒙講座も再開していく。
船上生活のプレッシャーに対処する知識と技能を訓練生やカデット(士官候補生)に身につけさせることの重要性がコロナ禍によって浮き彫りになった。海洋教育機関のカリキュラムに健康と安寧を加えるよう求めるITFの取り組みをNUSIは支持しており、今年インドでこのプロセスを開始する。
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26 ITFインスペクター
船員のために活動する ITFインスペクター
総勢130人のITFインスペクターは助けを必要とする船員のために活動している。本号では、新任インスペクターや中南米・カリブ海地域のインスペクターチームを紹介するとともに、各地域のコンタクト(担当者)ネットワークの近況を報告する。
新任インスペクターの紹介
パトリック・クロネン
(ヘルシンキ港 フィンランド船員組合)
今世紀初めに船員になり、いろいろな船の甲板や機関室で働いてきた。2017年、エケロ・ラインズ・フィンランディア号で甲板長として乗船していた時に職場委員に選出された。ITFインスペクターとして、国内外の船員のために闘いたい。
エベリナ・
サドゥイカイト
(ダブリン港 SIPTU) リトアニア出身で、2001
年にアイルランドに来た。学生時代から情報紙の発行に携わっている。労働者の権利に関する記事は人気が高い。2005年にアイルランド最大労組のSIPTUにオルガナイザーとして採用された。その後、オフィサーになり、四か国語を駆使しながら労働者を支援している。海が大好きで、今も乗船している。ITFの一員として船員を支援することができて嬉しい。
アンドレアス・フサ
(ベルゲン港 ノルウェー船員組合)
初めは漁船に乗っていた。直近の12年間はタグボートで係船業務に従事している。ノルウェー船員組合で執行部に加わり、青年委員に選出された。ITFインスペクターに就任し、ベルゲン港で船員を支援できることを誇りに思う。
ペドロ・エステバン
(アルジェシラス港 スペインELA-Zerbitzuak)
デッキオフィサーとしてタンカーに乗船していた。2020年初頭、フィリピンでLPG船ごと遺棄された。8カ月にわたり、ITFインスペクターが助けてくれた。未払い賃金も回収し、帰国することができた。その時、インスペクターになり、船員の権利のために闘いたいと思った。
ライアン・ブラゾー(米国オレゴン州ポートランド港 ILWU)
私は船員一家の4代目で、22年間乗船してきた。組合では、オルグ担当で、船員の問題を扱ったり、船員のネットワークづくりを促進するためのポッドキャストを作成したりしている。私の経験と創造力を生かしながら、他のインスペクターに学び、船員の生活向上の解決策を見出していきたい。
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中南米•カリブ海地域チーム
中南米・カリブ海地域からは、砂糖、バナナ、コーヒー、モラス等、重要な消費財が世界中に輸出されている。しかし、ブラジル、チリ、アルゼチン等には多数の港湾が点在し、カリブ海には700もの島々が存在する。このような環境の中、中南米・カリブ海地域のインスペクターはITFを必要とするすべての船員に支援の手を差し伸べている。
ロベルト・ジョージ・アラルコン(ブエノスアイレス州ロサリオ港 アルゼンチンCCUOMM)
船員としてキャリアを積み、組合役員を4年間務めた後、インスペクターに就任。インスペクター歴 27年。2003年からコーディネーターを務める。船長経験もあり、労働関係の学位も取得。FOCキャンペーンを通じて、60隻にITF協約を締結させる。
アリ・ジニ(パラナグア港 ブラジルCNTTL)
タグボートで働きながら、組合の役員を務めていた。1997年、ITFが船内の乗組員の状況を調査するために多言語を話せる組合員を探していたため、二度ほどその要請に応えた。その翌年、パートタイムのインスペクターに就任し、2007年にフルタイムになった。
レニアルド・デフレイタス(サントス港 ブラジルCNTTL)
商船職員組合の役員に就任するまで、甲板職員として乗船していた。1989年にパートタイムのインスペクターに任命され、外国人船員の支援という当時としては画期的な活動を開始した。1994年にフルタイムのインスペクターに任命された。船員に実務的な支援だけでなく、精神的な支援も行う ITFファミリーの一員でいられることを誇りに思っている。
ミグエル・サンチェス(バランキラ港 コロンビアUNIMPESCL)
18年間機関士として乗船した後、1998年にITFインスペクターに任命された。賃金未払い、本国送還、上陸休暇、労働権や人権に関するその他の問題について、船員を支援できることを誇りに思っている。
ホセ・ラミレス(マンザニロ港 メキシコORDEN)
船長として様々な国籍の船員と乗船した後、2017年にITFインスペクターに任命された。公正な労働条件の確保、本国送還、未払賃金の回収に務めてきた。「誰かを助けることは、全員を助けることを意味する」を信条としている。
エンリケ・ロザノ(ベルクルーズ港 メキシコORDEN)
1989年に組合に加入。カデット、デッキオフィサー、船長として16年間乗船した。2003年にITFインスペクターに就任。船長時代にアフリカで遺棄された時、船内でマラリアが流行、ITFの支援を受けた経験を持つ。乗組員を支援することができ、とても嬉しく思っている。
ルイス・C・フルト(パナマのバルボア=クリストバル港 SITRASERMAP)
甲板員やタグボート船長として12年間勤務した後、2007年にITFインスペクターに任命された。1989年に組合に加入し、4年間書記長を務めたほか、パナマ海事アカデミーで教鞭を取った。海軍・労働安全の修士号を取得している。
ホセ・A・クラウディオ・バエズ(プエルトリコのサンフアン港 ILA、AFL-CIO)
港湾労働者、チェッカー。所属するILA第1740支部で選挙委員長を務めている。乗組員が無料で新型コロナワクチンを接種したり、自由時間に無料Wi-fiでリラックスできたりする場所を確保するために支援を続けている。
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28 ITFインスペクター
現地にITFインスペクターがいない場合は
ITFのコンタクト•ネットワークが支援
ITFのコンタクト(担当者)ネットワークは、ITFインスペクターがいない国や港で船員を支援するために活動している。適正な賃金および船内労働・生活条件を確保する船主の義務も追求する。コンタクトは所属組合の推薦を受け、所属組合の事務所を拠点に、有志で活動している。
中南米・カリブ地域
中南米・カリブ地域のネットワークは、ITF加盟組合の代表者で構成され、ITFインスペクターが配置されていないところで機能している。助けを求めている船員を支援したり、港湾労働者と共に連帯行動を取ったりしながら、力を発揮している。ITFの様々なキャンペーンにも積極的に関与している。
中南米カリブ海地域ネットワークのコーディネーターの連絡先
スティーブ・トラウズデール(ロンドン)
(クロアチア、エルサルバドル、グアテマラ、ガイアナ、ニカラグア、ペルー、トリニダード・ドバゴ、ウルグアイ、ベネズエラで15名のコンタクトが活躍中)
アラブ地域とイラン
今年も、船主がコロナ禍を口実に船員の苦情や要請に対応しなかったため、コンタクトの活動は容易ではなかった。にもかかわらず、ITF加盟組合のコンタクトは精力的に活動し、何百人もの船員のために、未払賃金の回収や医療措置の確保、本国送還の実現に奔走した。 2021年は船員からの支援要請が大幅に増加し た。136件を扱い、総額7,325,864ドルの未払賃金を回収した。それらの多くが重大な遺棄案件だった。ITF
加盟組合のコンタクトが解決に大きく貢献した。
アラブ諸国やイランの港に寄港する船員の支援を拡充するために、引き続きネットワークを強化、拡大していく。
アラブ地域・イランネットワークのコーディネーターの連絡先
モハメド・アラチェディ (スペイン) Tel: +34(629)419 9265 007
Email: arrachedi_mohamed@itf.org.uk
(アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラン、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビヤ、オマーン、スーダン、チュニジア、イェメンで31名のコンタクトが活躍中)
シーフェアラーズ・ブルテン 2022
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西アフリカ
西アフリカ地域ネットワークのコーディネーターの連絡先 バイラ・ソウ (ブルキナファソ)
(ベニン、カメルーン、コートジボワール、ギニアビサウ、セネガル、トーゴで9名のコンタクトが活躍中)
アジア太平洋地域ネットワーク
現地で船員に具体的なサポートを行ってきたコンタクトが地域のネットワークを設立した。
2021年12月31日現在、114件のケースを処理、完了させた。船員の遺棄、未払い賃金の請求、家族への送金の遅延、本国送還、労災、治療要求等に関するものである。
コロナ下では、次の港で下船できるかどうかが船員にとっての最大の関心事だ。
特にタイとマレーシアでは、港内で船員にあらゆる支援を提供した。政府当局、大使館、港湾代理店、船主と連携し、600人以上の船員の本国送還を実現させた。(中には1年4カ月以上乗船していた者もいた。)
アジア太平洋地域ネットワークのコーディネーターの連絡先
ジェイソン・ラム (香港)
Tel: (+852)9735 9265 3579
(バングラデシュ、カンボジア、マレーシア、ミャンマー、パキスタン、パプアニューギニア、ソロモン諸島、タイで
8名のコンタクトが活躍中)
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30 特集 便宜置籍船(FOC)
便宜置籍船(FOC)船員のためのガイド
便宜置籍船とは何か?
便宜置籍船(FOC)とは、登録料の支払いを通じて、船主国以外の国の船籍となっている船のことである。
何故そうした船があるのか?
競争が激化する海運市場において、FOCは船員の権利や福祉についてほとんど考慮することなしに、コストを削減したり、責任を最小化したりすることが可能である。船主は自国の労働規制を回避するために、国際法の抜け穴を見つけ、FOCを利用している。FOCは船員に低賃金、長時間労働、危険な労働条件を押し付ける手段となっている。安価な登録料と低額の税金に惹かれて船籍を離脱する船主もいる。
真正な船籍国が乗組員に対して負う通常の責任を担うことなく、金儲けのために船籍登録を受け付ける国がある。こうした船籍国の中には、安全・訓練基準が不十分で、乗組員の国籍を規制しないものもある。ITFは、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、実質的な船主と船籍との間には「真正な関係」が存在すべきであると考えている。
FOCだと決めるのは誰?
ある船籍がFOCかどうかは、以下に基づき、ITFの公正慣行委員会が判断している。
・外国所有の船舶がどれだけ登録され、その国の船籍となっているか。
・その船籍国が、基本的人権と労働組合権尊重を含む国際的な最低社会基準を実施する能力と意思をどれだけ有しているか、またこれらの保護を定めた国際労働機関(ILO)の条約や勧告を批准しているか。
・船籍国の安全及び環境に関する記録―ポート・ステート・コントロールでの立入り検査のエビデンス、不備や拘留の件数、国際海事機関(IMO)の諸条約の批准状況等
FOCはいくつあるのか?
2022年1月現在、42のFOCが存在し、一年前の35から増加している。2021年8月にITFは7つの国(カメルーン、クック諸島、パラオ、シエラレオネ、セントクリストファー・ネービス、タンザニア(ザンジバル)、トーゴ)をFOCに加えた。これらの国の多くはその船籍船で働く船員保護の
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「便宜置籍国(FOC)がやっていることはモラル的に無責任だ。登録料は受け取りながら、その船舶を運航する船員たちの安寧を保障する意思も手段も持ち合わせていない。船籍国になるということは、大きな責任を伴う。項目にチェック印をつけるだけでは責任を果たしたとは言えない。船員コストをわずか数ドル減らそうとする船主のせいで、あまりにも多くの船員たちが被害を被っている」デーブ・ヘンデルITF船員部会議長
実績が悪い。
船員にとってFOCとは?
ITFインスペクターによるFOC船査察によって、船員酷使の実態が明らかになった。
・極めて低い賃金
・劣悪な船内労働条件
・質の低い食事と飲料水
・長時間労働と不十分な休憩時間、およびそれらに伴うストレスや疲労
・時には数か月間におよぶ賃金の未払いや遅延
・安全でない船舶
・重大事故につながる劣悪な安全慣行と補償を受けられる可能性の低さ
多くのFOC船員は苦情申し立てをすることをあまりに恐れている。
私はFOCで働いているが誰が守ってくれるのか?ほとんどの場合、船上で適用されるのは船籍国の法律 である。よって、乗組員の母国が彼らを守るためにできることは少ない。また、FOC船には真の国籍がないので、ど
の国の船員組合も手が届かない。そこでITFの出番だ。 ITFは、FOC船で働く船員の賃金・労働条件に対して、
独自の強い影響力を持っている。FOC船の賃金・労働条件は、船員からの苦情や支援要請に対応し、調査するITFインスペクターによって取り締まられ、守られている。ITFインスペクターは、船主も船籍国も義務を果たそうとしない場合に、現地の海事関係組合と協力しながら、船員の権利を保護、発展させるために休みなく働いている。また、ITF協約を遵守させるために、取締りも行っている。
2021年には、他に頼るところのない船員たちに代わり、未払い賃金や死亡・負傷の補償金を合計 37,291,112ドル取り戻した。
FOC(2022年1月現在)
・アンティグア・バーブーダ
・バハマ
・バルバドス
・ベリーズ
・バミューダ
・ボリビア
・カンボジア
・カメルーン
・ケイマン諸島
・コモロ
・クック諸島
・キュラソー
・キプロス
・赤道ギニア
・フェロー諸島
・フランス国際船籍(FIS)
・ドイツ国際船籍(GIS)
・ジョージア
・ジブラルタル
・ホンジュラス
・ジャマイカ
・レバノン
・リベリア
・マルタ
・マディラ
・マーシャル諸島
・モーリシャス
・モルドバ
・モンゴル
・ミャンマー
・北朝鮮
・パラオ
・ パナマ
・サントメ・プリンシペ
・シレラレオーネ
・セントクリストファー・ネービス
・セントビンセント
・スリランカ
・タンザニア(ザンジバ)
・トーゴ
・トンガ
・バヌアツ
32 水産
ITFがイギリスで漁船員の 権利促進キャンペーンを開始
イギリス漁船で魚船員の搾取や外国人労働者の低賃金問題が発生し続けている。ITFは「フェアネス・イン・フィッシング(公正な漁業)」キャンペーンの立ち上げに先立ち、共同調査を開始した。
ITFのクリス・ウィリアムス水産担当が詳しく説明する。
写真提供:Fisheries – デーブ・ロビンソン
イギリス水産業はこれまでも船内の人権侵害の報告から無縁ではなかった。最もショッキングな事例の他にも、漁船員が休憩・休日なしに長時間労働を強いられるケースが多数ある。強制労働の報告もあり、外国人労働者が酷使されるリスクは高い。
そのため、ITFはシーフェアラーズ・チャリティー及びノッティンガム大学人権研究所と共同で、イギリス各地の漁船員の労働条件調査を開始した。同人権研究所はイギリス人および外国人の漁船員を対面及びオンラインで調査した後、外国人漁船員を対象とするインタビューを実施した。これらの調査結果は2022年にイギリスで新たに開始される「フェアネス・イン・フィッシング(公正な漁業)」キャンペーンのエビデンスとして活用される。
ノッティンガム大学人権研究所エコシステム・環境計画副所長のジェス・スパーク博士は語る。「このキャンペーンは是非とも必要なものだ。イギリスの外国人漁船員の中には、大幅な賃金格差、長時間労働、構造的差別を許容するシステムの犠牲となっている者がいる。労働者を弱体化し、劣悪な労働条件を押し付ける入管制度がこれに追い打ちをかけている。外国人漁船員の声をキャンペーンに反映させるのは、彼らなしに彼らについての決定がなされるのを阻止するためだ」
イギリスの水産業は複雑だ。漁船の大きさ、乗組員の構成、漁獲対象・市場は千差万別である。今日、5,783隻
の漁船で11,298人の漁船員が働いている。その内訳は、72%がイギリス人、20%が欧州経済圏(EEA)の域外出身、8%がEEA域内出身と推定される。
三団体の作業グループは、労働組合を巻き込みながら、水産部門の規制・監督機関の円卓会議を設置した。水産部門の重要なステークホルダーである彼らの多くにとって、これらの問題を一堂に会して話し合うのは初めてのことだった。
イギリス政府はILO漁業労働条約(188号条約)を批准しているため、水産部門の労働条件に対する関心は高かった。188号条約は、世界中の漁船員が適切な労働・居住条件を享受できるよう、使用者と政府が守るべき諸義務の基本的枠組みを定めている。
船員のための福祉活動に助成金を付与しているシーフェアラーズ・チャリティー教宣部長のティナ・バーンズはこう語った。
「この調査活動に参加することで、水産部門の労働条件を改善し、イギリス内外の漁船員にとって漁業の仕事を魅力的なものにするために、どこに助成金を出せばよいのかを理解することができる」
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外国人漁船員の搾取が続くアイルランドで
ITFがキャンペーンを拡大
アイルランド政府の外国人漁船員就労許可制度の欠陥を是正するため、ITFはアイルランド漁船に対するキャンペーンを拡大した。ITFのマイケル・オブライアン水産キャンペーン主任が報告する。
2016年にアイルランドで導入された、欧州域外の漁船員のための非定型就労許可制度は、主にITFからの働きかけを受けて、漁船員の搾取に厳しく対応するために設立された。
しかし現実的には、非定型就労許可証を持っていようがいまいが、外国人漁船員のほとんどが最低賃金以下の賃金、過重労働、それに伴う負傷等に苦しんでいる。状況はあまりにひどく、ITFが漁船員35人を国の人身売買通報制度で保護させたほどだった。残念なことに、こうした搾取が行われている漁船の船主は未だに有罪となっていない。
ITFは2021年、コロナ下の初期のロックダウンの混乱の後に、外国人漁船員に何が起きているのかの調査を開始した。マイヌース大学法学部に資金提供し、アイルランド漁船に乗り組む主な外国人漁船員(エジプト人、ガーナ人、フィリピン人)を対象に、詳細な聞き取りを含む質的調査を行った。
2021年10月に公表した調査結果はアイルランドで幅広く報道され、国会での議論と首相答弁につながった。
調査結果はあまりに見慣れたものだった。一日15
~20時間労働、人種差別的な搾取、割当量を超過する過剰漁獲等の違法行為の強制―これらは聞き取り
調査に応じた漁船員が最も多く回答した搾取の事例だ。
たとえITFやアイルランド当局がこうした搾取を発見し、裁判所や労働関係委員会が有罪と判断しても、罰則がそれほど厳しくないために、再犯を繰り返す風土がなくならい。
アイルランド政府はITFの報告書が発表された直後に非定型就労許可制度の見直しを発表した。ITFは 2022年2月、制度の廃止を求める包括的な提言を行った。外国人労働者を特定の使用者に無期限に縛り付けることのない他の制度と比較して、この制度は賃金やビザのステータスの面で不利であることを強調し、許可証不保持の漁船員にもビザ取得の道が開かれるべきだと主張した。
ITFが訴えている制度改正だけでは、業界内のすべての搾取をなくすことはできない。しかし、ITFのキャンぺーンは、外国人漁船員が団結し、自分たちの権利を主張し、必要があれば是正する力をつけることにつながるだろう。
34 港湾労働者
港湾労働者は
サプライチェーンの問題児ではない
港湾労働者、船員、路面運輸労働者は、コロナ禍で発生したサプライチェーンの混乱や物流遅延の責任を労働者に押し付ける業界に反発している。ITF港湾部会のスティーブ・ビッグス上席アシスタントが真の問題を分析する。
世界各地で港湾や道路の混雑が増している。しかし、労働者が責められるべきではない。この混雑は、野放しにされた国際海運界のカルテル体質と、世界的なトラック運転手不足の最中に急増している消費需要との不一致によって生まれている。
コロナ禍は、グローバルサプライチェーンのほとんどすべての側面に影響を与えた。工場は、世界の製造業が集中している国々、特に中国での感染拡大によって操業停止もしくは減産に追い込まれた。
海運会社は需要を読み違えた。つまり、コロナ禍で貨物輸送需要は世界的に落ち込むと予測し、運航削減を計画した。しかし、実際には、消費者需要は増加し、工場への配送システムが飽和する一方、海上コンテナの極端な不足により、完成品が中国やアジア各地の倉庫や港に滞留していった。
このコンテナ不足は、コンテナが誤った場所に積み上げられたことが原因だった。例えば、中国から大量の個人用防護具が世界中に輸送されたが、空になったコンテナは中国に戻されることなく、多くの国に残された。一方、中国の製品製造は消費需要に合わせて急増した。
コンテナ不足と海運需要の増加は、運賃の釣上げ-商品やサービスの法外な値上げ-につながった。そ
して輸送コストは急騰した。また、トラック運転手や港湾労働者の検疫に関する会社の決定も影響を及ぼした。
米国のバイデン大統領は国際港湾倉庫労働組合
(ILWU)のウィリー・アダムス委員長と組合員に対して、コロナ禍を通じて貨物の流れを維持した彼らの努力に感謝の意を表明した。
バイデン大統領は業界に対して、労働者に続き、サプライチェーンの目詰まり解消のために努力するよう求めた。「サプライチェーンは意味もなくサプライチェーンと呼ばれているわけではない。サプライチェーンは、ターミナルオペレーター、鉄道、トラック会社、荷主、そしてその他の小売業者をも意味する」
「もし民間セクターが取り組みを強化しないなら、彼らを呼び出して、行動を求める。我々のゴールは直ちにボトルネックを解消するだけではなく、コロナ禍によって明らかになった輸送サプライチェーンの長年の弱点を克服することだ」
ITFは加盟港湾労組と共に、正しい現状分析と、大変なプレッシャーの中で非常に困難な仕事をこなしている港湾労働者に対する敬意を求めている。
ITF船員トラスト 35
船員から見た船員の姿
ITF船員トラストは2021年に設立40周年を迎えた。ケイティ・ヒギンボトム事務局長が40周年をどう祝ったかを報告する。
船員へのサービス・支援提供の40周年を祝うために、船員自身の言葉と画像により、船員に光をあててみたいと考えた。
そこで、写真コンテスト「去る者は日々に疎からず」を開催し、受賞作を同名の限定本(船員自身による40人のポートレート集)としてまとめた。
国際貿易を可能にしている船員の重要な役割や実
際の経験を知ってもらうために、各国のITF加盟組合がこの本を政府高官や議員に寄贈した。
ロンドンの国際海事機関(IMO)は、各国の政府代表がIMOの活動計画を承認したり、理事を選出したりする年次総会の開催期間中に、掲載写真の展示会を二週間にわたって開催しくれた。この展示会はオンラインで閲覧することもできる。 https://www.seafarerstrust.org/exhibition
ITFの慈善団体である船員トラストの詳細はこちら www.seafarerstrust.org
写真提供 : ロメル・ロマ
写真提供 : マイケル・オバジェ・エネフォラ
「黄金のハートを持つ船員」
「去る者は日々に疎からず」(船員自身による40人のポートレート)の受賞作品はオンラインで閲覧できる。 https://www.seafarerstrust.org/what-we-do/photo-competition-2021
国際運輸労連
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