India Legal Update
India Legal Update
2021 年 5 月 10 日
契約当事者がいずれもインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)である場合、紛争解決方法関する合意として、インド国外を仲裁地とする仲裁合意を行うことができるか
「契約当事者がいずれもインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)である場合、紛争解決方法として、インド国外を仲裁地とする仲裁合意を行うことができるか」という論点ついては、この論点 ついて正面から明確判断したインドの裁判例が無かったこともあり、長らくインド おいて論争となっていましたが、インド最高裁判所(Supreme Court of India)は、この点 ついて、2021 年 4 月 20 日の判決 おいて、明確「可能」との判断を下しました。
本ニュースレターは、同判決をご紹介するととも 、同判決 至るまでの過去の経緯、同判決の意義 ついて解説します。
1. 2021 年 4 月 20 日のインド最高裁判所の判決の概要
インド最高裁判所(Supreme Court of India)は、2021 年 4 月 20 日、GE Power Conversion India Private Limited v. PASL Wind Solutions Private Limited 事件の上告審判決おいて、同事件関するグジャラート高等裁判所(Gujarat High Court)の 2020 年 11 月 3 日の判決を支持し、
・インドの仲裁法であるArbitration and Conciliation Act, 1996(以下「インド仲裁法」といいます)は、当事者の双方がインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)であるとしても、インド国外を仲裁地として仲裁合意を行うことを禁止するものではなく、そのような合意は、インドの契約法である Indian Contract Act, 1872 及びインドの公序良俗(public policy)違反するものでもないこと
・当事者の双方がインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)であるインド国外の仲裁よる仲裁判断は、当該国がニューヨーク条約加盟国である限りおいて、インド仲裁法第二章いう「外国仲裁判断(foreign award)」該当し、インド国内おいて執行可能であること
を、それぞれ判示しました(以下「本件判決」といいます)。
なお、グジャラート高等裁判所(Gujarat High Court)の 2020 年 11 月 3 日の判決ついては、こちらの弊所の ASIA & EMERGING COUNTRIES LEGAL UPDATE のニュースレターおいても紹介しております。
2. 過去の経緯と本件判決の意義
インド法上、「契約当事者がいずれもインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)である場合 、紛争解決方法として、インド国外を仲裁地とする仲裁合意を行うことができるか」という論点ついては、この点ついて正面から明確判断したインドの裁判例が無かったこともあり、長らくインドおいて様々な議論、主張がなされてきたところでした。
過去のインドの下級審の裁判例は、「当事者の双方がインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)である場合、インド国外を仲裁地として仲裁合意を行うことは禁止される」と判断したとも解釈しうるような内容のものがあり、実際、いくつかのインドの法律事務所は、そのような解釈基づいて、日系企業(日本企業のインドの子会社、関連会社等)対し、「当事者の双方がインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)である場合、紛争解決方法として、インド国外を仲裁地とする仲裁合意を行うことはできない」とアドバイスしていたようです。しかしながら、それらの法律事務所が引用する下級審裁判例は、あくまで、「そのようも解釈できる」といった程度のものすぎず、「当事者の双方がインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)である場合、インド国外を仲裁地として仲裁合意を行うことができるかどうか」という論点ついて、正面から判断を下したものではありませんでした。また、本件判決至るまで、インド最高裁判所が、この論点ついて、正面から判断を下したこともありませんでした。
本件判決は、「当事者の双方がインド人またはインド企業(外国企業のインド子会社等を含む)であっても、インド国外を仲裁地として仲裁合意を行うことは可能」、「そのような仲裁合意基づく外国での仲裁判断は、インド仲裁法第二章いう『外国仲裁判断(foreign award)』該当し、インド国内おいて執行可能」であることを、インド最高裁判所が明確判示したものです。
なお、本件の一方当事者である GE Power Conversion India Private Limited は、米国企業である General Electric Company の子会社である GE Power Conversion(本社はフランス)のインドおける子会社または関連会社であるため、本件判決おけるインド最高裁判所の判旨は、「インド現地のインド人を株主とするインド企業同士」の場合限らず、「日本企業を含む外国企業のインド子会社(関連会社)」が一方(あるいは双方)の当事者である場合も適用されると考えられます。
本件判決 より、長らくインド おいて論争となってきた、「契約当事者がいずれもインド人またはインド企業(外 国企業のインド子会社等を含む)である場合、紛争解決方法として、インド国外を仲裁地とする仲裁合意を行うことができるか」、「そのような仲裁 基づく仲裁判断は、インド国内で執行できるか」という論点ついては、「いずれも可能」という結論で、明確決着がついたと考えられます。
インド国内の裁判制度は、➀非常時間がかかる、➁そのため弁護士報酬を含めた訴訟関する費用も高額となることが多い、③特下級審おいては不合理とも思える内容の判決が下されることも見受けられる、等の多くの問題があるため、日系企業としては、インド国内の裁判所/審判所専属管轄がある紛争を除いては、紛争解決方法をインド国内の裁判(暫定救済を含む)とすることは避けた方が良い場合も多いと考えられます。
本件判決より、日本企業のインド国内の子会社や関連会社が、インドの現地企業と契約を締結する場合であっても、インド国外(例:日本、シンガポール)での仲裁を紛争解決方法として選択できることが明確なったと言えます。
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