静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱イーシーセンター(社長 海野幸男)と
2021.9.30
㈱イーシーセンターと「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱イーシーセンター(社長 xxxx)と
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 9 月 30 日(木)
2.融資金額 3 億 5 千万円
3.資金使途 設備資金
4.㈱イーシーセンターの取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、建築物・構築物の解体および産業廃棄物の収集運搬処理事業者で、「私たちの子どもたちに残したいxxがある」という企業理念のもと、安心安全な資源循環型社会の形成に取り組んでいます。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
社会面 | ・ダイバーシティ経営(女性やスポーツ選手、障がい者など、多様な人材が活躍できる職場環境の整備) ・安心安全な作業現場(安全衛生方針・目標の策定、建設業労働安全衛生マネ ジメントシステムの構築、安全衛生委員会の設置、安全パトロールの実施など) |
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経済面 | ・多彩な処理方法による付加価値の高いリサイクル製品の製造(廃棄物のリサイクルによって製造される再生砕石や固形燃料(RPF)、木材チップ、K-グランドなどの製造) ・農業への挑戦(富士山木耳の無農薬栽培、xx放棄地を活用した米の生産) |
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環境面 | ・マテリアルリサイクル(混合廃棄物高度選別ライン、CCD カメラを利用した色彩選別等の高度選別による金属くずや紙くずなどのマテリアルリサイクル) ・サーマルリサイクル(廃プラスチック等の廃棄物を 10%まで縮減し、発電可能な乾溜ガス化炉発電施設の新設) ・環境負荷の低減(効率的な配車や焼却量削減などによる CO2 排出量の削減) |
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5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱イーシーセンターの概要
所 在 地 | xxxxxxxxx 000 | 設 立 | 1980 年(昭和 55 年)1 月 |
資 本 金 | 40 百万円 | 売 上 高 | 5,285 百万円(2021 年 3 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2021 年9月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社イーシーセンター(以下、イーシーセンター) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、イーシーセンターの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
(企業概要、経営方針と事業活動)
イーシーセンターは、建築物・構築物の解体および産業廃棄物の収集運搬処分業者である。解体に伴い排出された建設廃棄物などのマテリアルリサイクルに取り組み、K-グランドなどのリサイクル製品の製造や乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクルも行う。解体から廃棄物処理までトータルに手掛ける一貫した体制やマテリアルリサイクルに積極的な姿勢などに強みを持つ。
(インパクトの特定)
ポジティブなインパクトが期待できる活動としては、都市の再開発につながる老朽化したあらゆる建物の解体やチームワークの醸成やコミュニケーションアップにつながる社内行事、多様な人材が 活躍できる職場の醸成、エコキャップ運動などの地域・社会貢献活動が、社会面の「解体事業」や「従業員満足度の向上」、「ダイバーシティ経営」、「地域・社会貢献」に、多彩な処理方法による高付加価値なリサイクル製品の製造やチャレンジスピリッツから生まれた農業が、経済面の「付 加価値の高いリサイクル製品」や「農業への挑戦」に想定される。そのほか、高度な選別によるマテリアルリサイクルや乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクル、xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出が、環境面の「マテリアルリサイクル」や「サーマルリサイクル」、「再生可能エネルギー」として、ポジティブなインパクトに挙げられる。
一方で、ネガティブなインパクトを低減する活動としては、安全第一主義の徹底による「安心安全な作業現場」や騒音・振動・臭気対策などによる「周辺環境への配慮」、CO2 排出量の削減などといった「環境負荷低減」が想定される。
(インパクトレーダーとの関連性)
特定されたインパクトを UNEP FI が掲げるインパクトレーダーに当てはめると、ポジティブ・インパクトについては、老朽化した建築物の解体を行い新たな住宅などを建設できるようにする解体事業は「住宅」に、社内行事などでのチームワークの醸成やモチベーションアップによる従業員満足度向上、スポーツ選手や障害者の活躍を支援するダイバーシティ経営の実践は「雇用」に該当す る。また、K-グランドなどの付加価値の高いリサイクル製品は同社の収益性向上にもつながるため
「経済の収れん」に、地域・社会貢献活動や農業への挑戦は地域の雇用や産業の維持、活性化に貢献しているため「包摂的で健全な経済」への該当が想定される。さらに、混合廃棄物高度選別ラインなどによるマテリアルリサイクルや乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクルは「資源効率・資源安全確保」、「廃棄物」に、再生可能エネルギーの創出は「気候変動」に資する。
一方、各種安全衛生活動により醸成された安心安全な作業現場は「雇用」の、有害物質対策や騒音・振動・粉塵対策といった周辺環境への配慮は「健康と衛生」や「大気」、「水」、「土 壌」のネガティブ・インパクトを低減させており、環境負荷低減の取組みは「気候変動」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっている。
(SDGs との関連性)
解体事業や社内行事による従業員満足度向上、ダイバーシティ経営の実践が「ターゲット 9.1」や「ターゲット 8.5」に、付加価値の高いリサイクル製品の製造や地域・社会貢献活動、農業への挑戦が「ターゲット 8.2」や「ターゲット 9.2」にとってプラスの影響を与える。また、マテリアルリサイクルやサーマルリサイクルは「ターゲット 12.2」や「ターゲット 12.5」、「ターゲット 9.4」、「ターゲット 14.1」に、再生可能エネルギーの創出は「ターゲット 7.2」に資する。
一方、安心安全な作業現場は「ターゲット 8.8」に関するネガティブなインパクトを抑制するものである。また、周辺環境への配慮、環境負荷低減は「ターゲット 6.3」や「ターゲット 11.6」、「ターゲット 12.4」のネガティブなインパクトを低減させている。
(地域課題との関連性)
イーシーセンターでは、10 年後に売上高や雇用の増加が見込まれ、これにより静岡県経済全体に年間 130 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
また、行政との災害時の支援に関する協定の締結や積極的な SDGs への取組みなど、事業内容を生かした活躍や SDGs xx都市を牽引するフロントランナーとしての役割が期待される。イーシーセンターは、自社の環境保全に対する取組みを公表することで、より良いxxを子供 たちに残す活動に地域全体で取り組む姿勢の醸成を目指している。本ポジティブ・インパクト・ファイナンスは、代表取締役社長のxxxxx(以下、xx社長)のこうした強い思いを具現化
するものである。
(KPI の設定とマネジメント体制)
イーシーセンターは、特定したインパクト(社会面、経済面、環境面)ごとに、KPI(指標と目標)を設定する。推進体制としては、xx社長を最高責任者とし、経営管理部長のxxxxxx(以下、xx部長)を実行責任者とした、経営管理部内のプロジェクトチームが中心となる。
(モニタリング)
KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とイーシーセンターの担当者が、少なくとも年に1回の会合の場を設け、共有する。静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2021 年9月 30 日~2037 年2月 20 日 |
金額 | 350,000,000 円 |
資金使途 | 乾溜ガス化炉発電設備 新設資金 |
モニタリング期間 | 8年 10 ヵ月 |
企業概要
企業名 | 株式会社イーシーセンター |
所在地 | xxxxxx 000 |
事業所・処理場 | 沼津支店 沼津ステーション 富士第3ステーション三島支店 富士ステーション 富士第4ステーション静岡営業所 富士第2ステーション 富士第5ステーション 厚木営業所 |
従業員数 | 155 名 |
資本金 | 4,000 万円 |
業種 | 産業廃棄物処分業、解体工事業、産業廃棄物収集運搬業 |
取得許可 | 建設業許可 (土木一式工事、建築一式工事、とび・土工工事、解体工事等)産業廃棄物収集運搬業許可 (静岡県、神奈川県、山梨県、xxx、愛知県、xx県)産業廃棄物処分業許可(静岡県) 特別管理産業廃棄物収集運搬業許可 (静岡県、神奈川県、山梨県) |
主要取引先 | <解体工事発注業者> ㈱大林組、xxx託㈱、住友林業㈱、xx建設㈱ など <リサイクル製品販売先> 大日製紙㈱、王子マテリア㈱、㈱レックス など <リサイクル処理委託先> ㈱エコネコル、xx産業㈱、中央環境開発㈱ など |
沿革 | 1980 年 創立、コンクリート処理工場・リサイクル砕石販売開始 2003 年 沼津ステーション完成 2006 年 富士ステーション完成 2009 年 富士第2ステーション完成 2010 年 ㈱フジウンノを吸収合併、本社を現所在地へ移転 2012 年 富士第2ステーションを富士第3ステーションへ変更新たに富士第2ステーション完成 2016 年 富士第4ステーション完成 2021 年 富士第5ステーション完成 乾溜ガス化炉発電施設完成 |
(2021 年9月 30 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および強み
イーシーセンターは建築物・構築物の解体および産業廃棄物の収集運搬処分業者である。木造一般住宅や鉄骨鉄筋コンクリートのビル、学校、工場など建築物の構造を問わず解体が 可能であり、焼却炉や橋、煙突といった特殊な構築物も手掛ける。解体に伴い排出された建 設廃棄物は、当社が所有する5カ所の廃棄物処理施設に品目ごと持ち込まれ、砕石やプラスチック原料、製鋼原料などにリサイクルされる。解体事業の営業エリアは富士市やxx市、沼津市などが中心であり、県内東部地域で売上の5割を占める。産業廃棄物の収集運搬に関しても県内東部地域が9割以上を占めている。
<産業廃棄物リサイクルの流れ>
廃棄物の品目 | リサイクル施設 | 再生資源・リサイクル製品 |
大きなガラ陶、がれき類廃かわら 細かなガラ陶、がれき類 混合廃棄物 廃石膏ボード | 沼津ステーション (砕石製造ライン) 富士第4ステーション (重量物選別ライン) 富士ステーション 富士第2ステーション (混合廃棄物高度選別ライン) (RPF製造ライン) 富士第3ステーション 外部リサイクル業者 (廃石膏ボード選別ライン) | 砕石 K-グランド、かわらかべ ECチップ・サンド RPF、木材チップフォーミング材 プラスチック原料 製鋼原料、石膏ボード原料 セメント原料、再生紙 |
<イーシーセンターの事業内訳>
資料:イーシーセンター売上内訳
売上高別にみると、解体事業が8割を占めており、残りの2割が産業廃棄物収集運搬処分事業となる。解体工事の発注者は主に大手ゼネコンであり、解体する建築物・構築物の内訳は、ビルが5割、一般住宅が3割、その他2割となっている。解体事業の流れは、解体の依頼が入ったら物件の現地調査を行い、見積りを作成して発注者へ提示する。契約となれば、各種届出や解体計画を作成、施工チームと作業手順を確認後、道路や水道管などのライフラインを切り回し、解体工事に着手することとなる。工事完了後、建物の滅失登記を行い、建設廃棄物は自社処理施設へ搬送される。
<解体工事の流れ>
資料:イーシーセンターHP
産業廃棄物収集運搬処分事業は、自社の解体工事に伴う廃棄物の持ち込みが 14%、他社解体工事の自社運搬が 68%、他社解体工事の他社持込が 18%であり、他社解体工事の自社運搬が主な収集源となっている。搬入される品目の内訳は重量ベースで、がれき類が 53.1%、混合廃棄物が 34.3%、ガラスくず・コンクリートくず・陶磁器くずが 4.6%、その他が
8.0%となっており、がれき類が過半数を占めている。
<2020 年度の産業廃棄物収集運搬実績>
(単位:トン)
2020年度 | 産業廃棄物 | |||||||||
品目 | 廃プラス チック類 | 紙くず | 木くず | 繊維くず | 金属くず | ガラスくず・ コンクリートくず 及び陶磁器くず | 石膏 ボード | がれき類 | 混合 廃棄物 | |
収集搬入量 | 1,871.0 | 256.5 | 1,839.8 | 87.3 | 1,069.2 | 3,929.4 | 1,151.7 | 45,220.3 | 29,256.6 | |
2020年度 | 産業廃棄物 | |||||||||
品目 | 石綿含有 廃棄物 | 汚泥 | 燃え殻 | 廃油 | 廃酸 | 廃アルカ リ | 動植物性残渣 | 水銀使用製品産業廃棄物 | ばいじん | 産業廃棄物合計 |
収集搬入量 | 467.4 | 8.4 | 6.8 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 39.4 | 0.3 | 0.0 | 85,204.1 |
2020年度 | 特別管理産業廃棄物 | |||||||||
品目 | 廃xxx | 汚泥 | 合計 | |||||||
収集搬入量 | 0.7 | 2.1 | 2.9 |
資料:イーシーセンター「優良産廃処理業者認定制度に係る公表資料」
産業廃棄物収集運搬処分事業は、持ち込まれる品目によって多少違いがあるものの、概ね破砕後に選別機や手作業による選別を繰り返す工程となっている。その後、廃プラスチック類や紙くず、金属くずなどは外部リサイクル業者へ委託しプラスチック原料や再生紙、製鋼原料などにリサイクルされる。コンクリートガラは沼津ステーションにて、廃石膏ボードは富士第3ステーションにて、それぞれ再生砕石や石膏ボードの原料などにリサイクルされる。マテリアルリサイクルに適合しない廃プラスチック類、木くずなどに関しては、富士第2ステーションにて RPF(固形燃料)などにリサイクルされる。リサイクル製品は路盤材として建設業者に販売されたり、石炭やコークスの代替燃料として地元の製紙会社へ販売されることで、域内資源循環に寄与している。
また、2021 年8月には乾溜ガス化炉発電施設が完成し、試運転を経て本年度中に本格稼働を見込んでいる。この施設は、廃棄物を乾溜(空気を断った炉での蒸し焼き)により発生した可燃性ガスを利用した発電施設であり、単純な焼却処理よりも縮減率が高く、サーマルリサイクルによる廃棄物の有効活用が可能なため廃棄物削減および CO2 排出量削減に大きく貢献する。
近年、環境保全への関心の高さから、単純な中間処理による埋立てを行う処理業者ではなく、リサイクルに取り組む廃棄物処理業者が選ばれ始めている。イーシーセンターの解体から廃棄物処理までトータルに手掛ける一貫した体制やマテリアルリサイクルに積極的な姿勢などは、顧客の安心につながり、当社の強みとなっている。
<コンクリートくず処理工程>
<建設系・工業系混合廃棄物処理工程>
<木くず処理工程>
<可燃物(廃プラスチック類・紙くずなど)処理工程>
<石膏ボード処理工程>
2. 業界・取引先からの要望・ニーズ
解体工事は、住宅や事業所に隣接した現場で作業を行うことが多く、騒音や振動、有害物質など工事現場周辺への悪影響がトラブルに発展するケースがある。解体工事の発注者は、このような事態を避けるために、解体業者へ適切な対策を求めている。イーシーセンターでは、騒音・振動対策として圧砕工法やワイヤーソーイング工法を取り入れたり、重機での作業を低速で行ったりするなど、十分な対策を取っている。また、アスベスト飛散防止対策やダイオキシン除去対策、汚泥水を完全に吸い取る低騒音型のバキューム装置付きカッターの使用など、周囲への環境対策に万全を尽くしている。
環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課の産業廃棄物排出・処理状況調査報告書
(令和元年度速報値)によると、日本の産業廃棄物のうち建設廃棄物の割合は 20.0%と大きなウェイトを占めている。さらに、高度経済成長期に建設された建築ストックが続々と寿命を迎え、今後も建設廃棄物排出量の増加が見込まれており、そのリサイクルを推進することが課 題となっている。このような中、イーシーセンターは解体現場での分別はもちろん、自社処理場での多彩な選別方法により、建設廃棄物を積極的にマテリアルリサイクルしている。
<2019 年度 産業廃棄物の業種別排出量>
解体業を含む建設業界では、慢性的な人手不足に陥っている。その要因の一つとして、危険な労働環境が挙げられる。労働災害の発生件数は減少傾向にあるものの、建設業界の労働災害における死亡者数は全産業の 32.2%を占める 258 人とワースト1位※の水準になっており、人材確保の深刻化が懸念される。このような業界の課題に対し、イーシーセンターでは、安全衛生方針の策定や安全衛生委員会の設置、COHSMS(建設業労働安全衛生マネジメントシステム)の運用・管理や安全大会の実施など労働者の安全を第一に考えた職場の醸成に努めている。
※資料:厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課「令和2年における労働災害発生状況(確定)」
3. 経営方針と事業活動
【企業理念、社訓、方針】
イーシーセンターは、「私たちの子どもたちに残したいxxがある。」という企業理念の下、地域愛やMOTTAINAIの心をもって、解体事業と産業廃棄物収集運搬処理事業を核とした、安心安全な資源循環型社会の形成に努めている。MOTTAINAIとは、ケニア出身のノーベル平和賞受賞者であるxxxx・xxxx氏が訴え続けた日本語の「もったいない」であり、その精神を根付かせようと、各処理場の壁面に表示されている。
▲ 本社外観 ▲ 富士ステーション外観
また、社訓は「できないと言わずにやってみよう!」であり、xxへ発展していくためのチャレンジスピリッツを大切にしている。この失敗を恐れない精神は、後述するドローンを使った解体工事現場の事前調査や富士山木耳や米の生産など、新たな事業にもつながっている。
そのほか、イーシーセンターには6つの環境方針と3つのプラント安全方針が定められており、環境調和型社会や無災害プラントを実現するための具体的な行動が社内に浸透している。
<環境方針とプラント安全方針>
環境方針 プラント安全方針
01 | 事業活動に関する環境法規、条例、その他の要求事項 を遵守します。 |
02 | 事業活動を通じ、リサイクルを徹底し、リサイクル率 と製品品質向上に努めます。 |
03 | 行政、関係団体、地域住民とのコミュニケーションを 通じ、地域との共生に努めます。 |
04 | 環境目標を設定し、定期的に見直し、環境マネジメン トシステムの継続的改❹を推進します。 |
05 | 通常業務のみならず、非通常・事故等の緊急時においても汚染の予防を徹底し、以下の 対策を致します。 (1)省エネ・省資源 (2) 騒音・振動・粉塵の低減 (3) 解体工事における油飛散対策 (4) アスベスト飛散防止対策 |
06 | 当社環境方針に沿った行動を取るように、全社員およ び協力会社に周知します。 |
01 | 工場内の安全設備のチェックを毎日行い、 即時是正を行います。 |
02 | 構内の搬入車両の事故がないよう、構内走 行ルールを決めて表示・周知します。 |
03 | 重機の作業前点検及び月次点検を行い、人 と重機の災害を無くします。 |
【環境に配慮した解体事業】
主力事業の1つである解体事業は、騒音や振動、粉塵など、周辺環境へ多くの影響を及ぼす。作業効率やコスト削減などを追求するために、これらの対策を怠ると近隣からのクレームにつながる可能性がある。
イーシーセンターでは、解体作業を始める前に養生を必ず行い騒音・粉塵を軽減している。解体作業は、騒音や振動の少ないと言われている圧砕工法を採用、散水を併せて行うことで粉塵の飛散を抑制している。圧砕工法とは、油圧ショベルなどの先端にハサミ状のアタッチメントを取り付け、コンクリートを砕いて解体する工法である。また、油圧ショベルのような解体作業を行う重機を低速で動かすことで、振動をさらに抑えることができている。
そのほかにも、ロードカッター工事では低騒音型のバキューム装置付きカッターを使用することで、汚泥水を完全に吸い取り、道路を汚さない施工が可能。吸引した汚泥水は、xxと汚泥に分けられ、xxは雨水として放流し、汚泥は外部の産業廃棄物処理業者に委託される。騒音・振 動・粉塵等の規制が厳しい場所での解体工事は、ワイヤーソーイング工法を用いている。これは、切削用ダイヤモンドビーズを高速回転させて切断する工法であり、超厚コンクリート構造物などの解体に適している。
木造住宅の解体の際には、分別解体を基本としており、瓦などの屋根材、石膏ボードなどの内装材、建物本体から出る木くず、基礎解体で出るコンクリートなどを分別して撤去することでリサイクル率の向上に努めている。
発がん性物質であるアスベストを使用した建築物の解体には、特に注意を払っており、関係法令を遵守した作業計画・届出に従っている。入念な事前調査を行い、法律で隔離が必要なアスベストレベルの場合は、ビニールシート養生や負圧除塵装置、エアシャワーなどを設置し外部に漏洩しないよう徹底している。作業員も防護服や手袋、靴カバー、全面電動ファン付マスクに身を包んでおり、アスベストを含む建築物を安心安全に解体できる。
イーシーセンターは、一般的な住宅やビルだけでなく、焼却炉や橋など特殊な構築物の解体も請け負っている。ダイオキシン類を含む焼却炉の場合は、アスベストを使用した建物と同様に作業場を完全に隔離して、法律に適合した保護具を着用した作業員が除去を行う。洗浄に使用した汚水はすべて回収し、処理を施して排水している。橋の解体に関しては、分割・一本吊り工法を採用している。橋桁を分解し、一本ずつワイヤーで吊り降ろすことで、解体現場での大型重機による作業を伴わないため低騒音・低振動な解体を実現している。
▲ 粉塵を抑える湿潤並行工事 ▲ 建設廃棄物の粗選別
イーシーセンターが所在する富士市は、多くの製紙工場が集積しており“紙のまち”として有名である。同社では、製紙工場に欠かせない煙突の更新にも解体事業を通して携わることで、地場産業の発展に貢献している。作業場所が製紙工場内であり、過密設備群の中となるため、高所解体専用機(ハイリフト圧砕機)を使用できず、人力(ハンドブレーカ)解体で対応することも多い。これまで培ってきた確かな技術と経験から、高さ30mから100m超の煙突解体は県東部地域で1番の実績(受注金額ベース)を誇る。
【安全第一の徹底】
イーシーセンターでは、解体作業現場の安全への取組みに注力しており、安全衛生方針を策定し、具体的な安全衛生目標を掲げることで全社的に安全衛生意識の向上に努めている。
<安全衛生方針と安全衛生目標>
安全衛生方針
01 | 事故・災害の撲滅を目指す イ、リスクアセスメントを取り入れた作業手順の作ロ、安全施行技術の向上と継続的な改❹ ハ、声かけ運動の定着化第三者災害の絶無 安全衛 |
02 | |
03 | |
安全衛生目標
01 | 無災害記録の達成死亡災害0 休業災害0 |
02 | 施工サイクルの効果的実施 現地KYの完全実施と定着 |
03 | 安全衛生責任者の受講及び作業員教育の充実 90% |
04 | 健康診断・特殊健康診断の完全実施 社員、作業員100% |
同社では、建設業労働災害防止協会が開発したコスモスガイドラインに基づき、COHSMS
(Construction Occupational Health and Safety Management System:建設業労働安全衛生マネジメントシステム)を2006年に構築しており、現在も同システムに基づいた安全衛生計画を策定し、計画に沿った活動に取り組んでいる。
具体的な活動として、社内に安全衛生委員会を設置し、毎月、安全衛生に関する事項の見直しを行っている。安全衛生委員会の監修の下、安全パトロールも実施されており、作業現場の安全衛生管理状況を審査し、災害要因を早期に発見、是正・指導を行っている。
年に一度、同社従業員と協力会社が一堂に会して開催する安全大会では、約300名にx xを啓発しており、年に二回開催されている事業主講習会では、同社が継続的に発注する施工業者と合同で専門的な技術や安全対策の向上を図っている。そのほか、ミニ防災防止協議会を同社の支店毎に継続的に注文している施工業者と不定期で開催しており、安全衛生方針・活動についての周知や解体発注者からの通達事項伝達、技術的指導を行っている。作業現場単位でも、解体工事の着工前に必ず着前検討会・現場周知会を開催し、工事関係者全員に工事の内容・条件・作業手順・発生材の運搬処分について検討周知を行うなど、万全な体制を整えている。手順の変更時には、変更に関わる全ての作業員に周知させてから再開することで安全の確保に努めている。
このような安全対策に取り組むことで、重大な人身事故を起こさずに事業を継続できている。
▲ 安全大会の様子 ▲ 事業主講習会の様子
【高度な選別技術によるマテリアルリサイクル】
イーシーセンターで扱っている廃棄物は、解体現場などで排出されたがれき類や廃プラスチック 金属くずなど多岐にわたるが、精度の高い選別工程を経ることで高いリサイクル率を誇る。特に、 選別が困難で全国平均のリサイクル率が約63%と低い建設混合廃棄物については、振動ふるいや磁力で金属を分ける磁選機、回転振動でふるい分けるトロンメル、風力や傾斜を利用した比重差選別機など多くの選別機と従業員の丁寧な手選別工程をコンベアで接続したラインを富士 ステーションに構成することで、精度の高い選別を実現している。このような高度な選別を行うこと で、紙くずを再生紙へ、廃プラスチック類を再生プラスチックへ、金属くずを製鋼原料へと再生する マテリアルリサイクルが可能となっており、イーシーセンターの建設混合廃棄物のリサイクル率は 92%と全国平均を大きく上回る値となっている。
<2018年度 全国の建設副産物の再資源化・縮減率>
品目 | 2012年度 | 2018年度 | 2018年度 -2012年度 | 建設リサイクル 推進計画2014 2018年度目標値 | |
アスファルト・コンクリート塊の再資源化率 | 99.5% | 99.5% | 0.0% | 99%以上 | |
コンクリート塊の再資源化率 | 99.3% | 99.3% | 0.0% | 99%以上 | |
建設発生木材の再資源化・縮減率 | 94.4% | 96.2% | 1.8% | 95%以上 | |
建設汚泥の再資源化・縮減率 | 85.0% | 94.6% | 9.6% | 90%以上 | |
建設混合廃棄物再資源化・縮減率 | 58.2% | 63.2% | 5.0% | 60%以上 | |
建設廃棄物の再資源化・縮減率 | 96.0% | 97.2% | 1.2% | 96%以上 |
資料:国土交通省「建設リサイクル推進計画2020~「質」を重視するリサイクル~」
廃石膏ボードについても富士第3ステーションに専用ラインを設けてリサイクルしている。圧縮ロールによって石膏ボードを圧縮し内部破壊を起こす特殊形状の破砕機や振動ふるいなどにより高い精度で紙部と石膏部に分離し、新たな石膏ボードや再生紙、セメント原料として蘇らせている。廃石膏ボードのリサイクルは大量の粉塵が発生する上に、濡れると固まるという廃石膏ボードの粉塵特有の性質によりミストでの対策ができないなど、困難性が高いため取り扱う業者は多くない。イーシーセンターでは、集塵機の設置や作業者へ付着した粉塵除去のためのエアシャワー、外部への流出を防止するための高速シャッターの設置などの対策を講じることで廃石膏ボードのマテリアルリサイクルを可能としている。
がれき類やガラ陶については、再生砕石を製造している沼津ステーションや重量物専用の選別施設である富士第4ステーションにおいて選別されている。大きなコンクリート塊のような細かな選別が不要な廃棄物は沼津ステーションに直接持ち込まれ、様々な種類の廃棄物が混在している小さながれき類は富士第4ステーションにて丁寧に選別された後に、不燃性廃棄物は沼津ステーションへ持ち込まれ、再生砕石としてリサイクルされる。
富士第4ステーションでは3CCDカメラによる色彩選別ラインを設置している。ここで使用されている色彩選別機は、元々大豆を選別するための機械であったが、日々選別に利用できる機 械・技術を探索しているイーシーセンターの役員が廃棄物にも応用できると考え導入したものである。大豆用色彩選別機の導入は成功し、がれき類の効率的な選別に貢献している。そのほか、農作物用の選別機である風力選別機を廃棄物用に改良・調整して活用したり最新の選別機を導入するなど、常に選別精度・効率を向上させるために検討している同社の姿勢が高いマテリア ルリサイクル率の実現へとつながっている。
廃棄物の品目 | 再生資源 |
コンクリートくず | 砕石 |
木くず | パルプ原料 |
廃プラスチック類 | プラスチック原料 |
紙くず | 再生紙 |
廃石膏ボード | 石膏ボード、再生紙、セメント原料 |
金属くず | 製鋼原料 |
<マテリアルリサイクル一覧>
▲ 廃石膏ボードから選別された石膏粉
【高性能なリサイクル製品】
イーシーセンターでは、マテリアルリサイクルに適さない産業廃棄物からも様々なリサイクル製品を製造することで環境負荷の低減に貢献している。同社のリサイクル製品の中でも高い付加価値を生み出しているのが、RPFとK-グランド、ECチップ・ECサンド、かわらかべである。
RPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)とは産業廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難なプラスチックや古紙、廃木材などを原材料とする固形燃料であり、主に石炭やコークスなどといった化石燃料の代替燃料として製紙・鉄鋼業界などで利用されている。化石燃料と比較して CO2削減効果があることや性状が明らかな廃棄物を使用しているため品質が安定していること、原料である廃棄物の割合を管理することでカロリー調整が可能であること、形状が一定であり固 形化されているのでハンドリング性が高いなどといった多くのメリットがある。
K-グランドは廃瓦を利用したリサイクル舗装材である。国立研究開発法人国立環境研究所と富山県環境科学センターの共同研究により作成されたリサイクル製品環境負荷簡易評価ツール
(EATRP ver 1.0)に基づき測定した結果、リサイクル材を用いず全てバージン材で製造された舗装材と比較し1t当たり14.78㎏のCO2削減効果が認められている。ポーラス構造(多孔質構造)である瓦を原料としているため保水性も高く、都市部におけるヒートアイランド現象を抑制する効果もある。環境に良いだけでなく、透水性や防滑性も高いため足への負担も軽減できるなど付加価値の高い製品となっている。
ECチップ・ECサンドとかわらかべも廃瓦から製造されるリサイクル製品である。ECチップ・ECサンドは廃瓦を細かく砕いたチップ・砂であり、庭などに敷き詰めることで除草効果を得られ、かわらかべは廃瓦を壁材としたものであり、湿度の調整や高い断熱性などといったメリットを享受できる。
K-グランドやECチップ・ECサンドは静岡県リサイクル認定製品にも認定されており、近隣の公園や三島スカイウォークなどでの採用実績もある。また、K-グランドに関して、災害発生時も安定して製造・供給できるよう、全国の施工販売業者と共に、人的・物的応援などといった連携事業継続力強化計画を策定、経済産業省の認定を受け、事業の持続可能性を高めている。
そのほか、同社では廃棄物の粉砕工程や選別工程で発生した粉塵も鉄鋼会社などで活用されるフォーミング材としてリサイクル製品化している。集塵機で粉塵濃度を下げ、労働環境を改善するだけでなく、集めた粉塵をさらにリサイクルする同社の環境保全への姿勢は徹底している。
廃棄物の品目 | リサイクル製品 |
木くず | RPF、燃料チップ |
廃プラスチック類 | RPF |
紙くず | RPF |
繊維くず | RPF |
動植物性残渣 | RPF |
瓦 | K-グランド、ECチップ・ECサンド、かわらかべ |
粉塵 | フォーミング材 |
<廃棄物から製造されるリサイクル製品>
▲ 施工された K-グランド
【乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクル】
2021年度に本格稼働を予定している乾溜ガス化炉発電施設は、マテリアルリサイクルやRPFなどの原料にも利用できない廃プラスチック類などをサーマルリサイクルすることを計画している。廃 棄物を200℃で乾溜(空気を遮断した蒸し焼き)処理し、その際発生した可燃性ガスを利用した発電を行う。可燃性ガスの焼却時の温度は900℃にもなるが、急冷塔にて200℃以下に急速冷却することでダイオキシンの発生を防いでいる。排ガスは活性炭によるダイオキシン類の吸着や 消石灰による塩化水素中和など大気汚染対策を施し、バグフィルターにて煤塵を集塵する工程 を経て大気へ放出される。
<乾溜ガス化炉発電施設の発電フロー>
投入 バケット
バイナリー
発電設備
廃棄物
温水炉
乾溜ガス化炉
熱エネルギー
活性炭タンク
消石灰タンク
投入 バケット
乾溜ガス化炉
廃棄物
投入 バケット
廃棄物
乾溜ガス化炉
可燃性 ガス
燃焼炉
排ガス
① ②
固形の廃棄物を投入乾溜ガ
▲乾溜ガス化炉と 投入バケット ▲燃焼炉や温水炉、急冷塔、バイナリー発電設備
乾溜ガス化炉発電施設の縮減率は10%と、単純な焼却施設より高いため最終処分場への埋立量を大幅に削減でき、また、発電機能を有しているため、これまでマテリアルリサイクルできず廃棄物として処理してきた廃プラスチック類などをサーマルリサイクルすることで、資源として有効活用できる設計となっている。廃プラスチック類を削減できることで海洋に浮遊、堆積するマイクロプラスチック対策にも貢献が期待できる。また、乾溜処理のための燃料も、乾溜工程で発生する可燃性ガスを活用することで点火時以外不要であるため、焼却施設より非常に少量で済む。大気汚染などの環境保全対策も万全であり、産業廃棄物処理施設設置許可の基準も満たしている。
<乾溜ガス化炉発電施設の生活環境保全対策>
項目 | 場所 | 対策内容 |
大気汚染 | ①排ガス処理装置 | 煤塵… ガス化ゾーンと燃焼ゾーンを分けることで完全燃焼、バグフィルターにより除去 塩化水素… 消石灰噴霧による中和処理 ダイオキシン類…燃焼炉において発生抑制(高温燃焼、十分な滞留時間、空気との攪拌)、急冷塔において急冷し再合成を抑制、活性炭噴霧により吸着除去 |
②燃焼温度、物質濃度測定 | 排ガス温度や有害物質濃度を連続測定し燃焼状態を把握する | |
騒音・振動 | ①送風機、空気圧縮機 | 騒音…騒音の少ない機器を採用し、機器に応じてファンボックスや囲いを設ける 振動…強度を考慮した基礎を施工しアンカーで固定 |
悪臭 | ①廃棄物 | 処理を行う廃棄物において、特に吸気を伴うものの取扱いや保管は建物内にて行う |
②排ガス | 運転中の排ガスについては、燃焼炉で高温燃焼するため酸化脱臭される | |
③煙突 | 煙突を17mとし、安定な燃焼を図ることにより安定な吐出速度を確保する | |
飛散流出 | ①廃棄物 | 廃棄物の性状に合った専用の容器、施設にて貯留保管 飛散や悪臭発生の恐れのあるものは密閉式容器を使用する |
車輌 | 車輌の点検整備を行い、不良車輌走行による騒音・振動を抑制し、 車輌停車中はエンジンを切るなど行い排ガスによる大気汚染を防止する | |
排水 | ①排水 | 施設からの汚染水の排水はない |
②雨水 | 雨水の濁水化を回避するため敷地内の作業区域をアスファルトおよびコンクリート舗装 | |
安全 | 地震時…制御盤内感震器が作動し装置全停止停電時…自動検知し送電停止 従業員への危機管理教育 |
【新規事業への挑戦】
イーシーセンターのチャレンジスピリッツは本業にとらわれない新規事業も生み出している。農業は究極のリサイクルであると言い続けて始まった木耳栽培や後継者不足で休耕田になりかけた地域のxxの有効活用を要請されたことを契機に始めた米の生産などいった農業は解体事業や産業廃棄物処理業に次ぐ事業の柱となることが期待されている。木耳は本社にあるビニールハウスで栽培しており、イーシーセンターによりブランド化された富士山木耳は「食べられる漢方食材」と言 われるほど栄養価が高く、無農薬栽培のため安全性も高い。現在では、専担の従業員がおり、 富士xxxは年間約2,900㎏、米は年間約1,500㎏生産するほどに成長している。
従業員発信で始まった事業もある。近年、様々な活用が見込まれているドローンを使った事業は富士ステーションの工場長とその部下2名が発案した事業である。当初は、自社紹介動画の撮影を行う程度だったが、現在では、解体工事現場の事前調査へ応用されたり、富士市、沼津市の両市と災害時等における無人航空機の活用に関する協定を締結するまでになった。2021 年になってからはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクトに参画する10社に採択され、災害時の孤立地域や道路状況の確認および物資配送、橋梁点検などに利用されることが期待されている。
【ダイバーシティ経営の推進】
イーシーセンターでは多様な人材の活躍推進の一環として、はぐくむFUJIオフィシャルサポーター認定制度の認定を受けている。この制度は、子供たちの健やかな成長と安心して子育てできる環境作りを実現するための富士市の事業であり、イーシーセンターでは若手女性社員が結婚や出 産などのライフイベントを経ても継続的に就業できる環境作りを図っており、はぐくむFUJIオフィシャルサポーターミーティングへの参加などに取り組んでいる。
また、同社が2019年からスポンサーを務める地域サッカークラブの選手を3名採用している。 業務に取り組みつつも練習や試合を優先させることができるよう配慮しており、ワークライフバランスの良い職場を醸成している。
さらに、2015年にはNPO法人チェンジを設立し、障害者の就労支援を行っている。富士ステーション内に事務所を構え、就労継続支援A型(就労機会やその知識及び能力の向上のために必要な訓練)のサービスを提供している。イーシーセンターとしても2016年以降、手選別作業員として2~3名雇用しており、ダイバーシティ経営を実践している。
【従業員満足度向上】
従業員満足度向上の取組みとしては、数多くの社内行事が挙げられる。レクリエーションとしてサバイバルゲーム大会を開催したり、社員旅行や納涼会、忘年会を行うなどチームワークや円滑なコミュニケーションの醸成が図られている。
業務改善の取組みへの表彰も制度化されており、業務の効率化が図られると同時に従業員の取組みが会社から認められることでモチベーションの向上にもつながっている。
従業員の資格取得支援にも力を入れている。試験の受験料だけでなく通信講座の受講料などの費用も含め全額支援しており、自己啓発に励みやすい環境を整えている。資格取得後は昇給させるなど処遇にも反映させることで、従業員は積極的に技術の向上に努めている。
そのほか、従業員の健康にも気を配っている。健康診断の受診率は100%であり、インフルエンザの予防接種についても接種費用を全額補助している。新型コロナウイルスのワクチン接種も取引先主催の職域接種に参加するなど積極的に取り組んでいる。
2021年には、富士第5ステーションとして事務所や従業員専用の食堂を整備。従業員の福利厚生を充実させている。
このような従業員満足度の向上に取り組むことで人材の確保は順調であり、2016年に119名だった従業員が2021年には155名にまで増加している。
【環境負荷低減活動】
イーシーセンターは、環境負荷の低減にも積極的である。産業廃棄物の回収作業を効率化するために収集運搬車両にGPSを全車搭載している。回収先の番地が不明のためカーナビで目的地に辿り着けない際などに、車両の現在地を把握することで配車担当が的確に誘導できる。迅 速で効率的な配車を行うことで走行時に発生するCO2排出量の削減に貢献している。
また、本社や富士ステーション、富士第3ステーションにシステム容量31.92kWのxxx発電設備を設置している。発電した電力は全て東京電力へ売却しており、一般家庭での再生可能エネルギーの利用割合を増加させることで環境負荷の低減に貢献している。
乾溜ガス化炉発電施設においても発電を行っており、自社の事業活動に利用することで石油由来エネルギー利用の削減に努めている。さらに、処理委託のための愛知県などの遠方の外部業者への配送がなくなることで、走行距離の削減にもつながる。
【地域・社会貢献活動】
地域・社会貢献活動の一環としてエコキャップ運動にも取り組んでいる。ペットボトルのキャップを集めて世界中の子供たちにワクチンを届けるNPO法人Reライフスタイルの取組みがイーシーセンターの理念と共通しているために、2008年から社内や取引先のエコキャップ回収窓口を担うように なった。これまでにReライフスタイルに送付したキャップは2,210,800個(5,527㎏)であり、ポリオワクチン5,527本分に相当する。この活動は、ボランティアであるが取引先の廃棄物分別意識を高めることにも寄与し、本業である廃棄物処理業の効率化にも貢献している。
また、子供たちに向けた地域貢献活動として、小中学生の社会科見学や高校生のインターンシップ、職業講話などを行っている。廃棄物のリサイクルについて学んでもらうことで、xxを担う子供たちの環境保全意識の向上が期待できる。ドローン操縦の職業体験も行っており、将来的に必要となるであろうドローンの知識・経験を子供たちに提供してる。
そのほか、地元の自治体への防災用品などの寄贈やゴミゼロ清掃活動、縄跳びの大会に出場する子供たちが富士市を中心に活動している一般社団法人E-Jump Fujiへのスポンサーなど、多くの地域・社会貢献活動を行っている。このような地域・社会貢献活動や先述したスポーツクラブへの協賛、休耕田の有効活用などは、企業イメージの向上や地域住民の理解を得ることにもつながり、地域に根差した企業にとって事業の持続可能性を高めることに貢献している。
▲ ゴミゼロ清掃活動の様子① ▲ ゴミゼロ清掃活動の様子②
4. 企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブ・ネガティブなインパクト
【ポジティブなインパクトが期待できる活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面> | ①大手ゼネコンなどが都市の再開発などできるようにする解体事業 ・老朽化したあらゆる建築物の解体 ②チームワークの醸成やモチベーションアップにつながる社内行事 ・レクリエーションや社内旅行、納涼会などの各種イベントの実施 ③女性やスポーツ選手、障害者など、多様な人材が活躍できる職場 ➃エコキャップ運動や休耕田の活用などといった地域・社会貢献活動 |
解体事業 | |
従業員満足度向上 | |
ダイバーシティ経営 | |
地域・社会貢献 | |
<経済面> | ①多彩な処理方法による高付加価値なリサイクル製品の製造 ・再生砕石や RPF(固形燃料)、木材チップ、K-グランドなど付加価値の高いリサイクル製品の製造 ②チャレンジスピリッツから生まれた農業 ・富士山木耳の無農薬栽培、xx放棄地を活用した米の生産 |
付加価値の高い | |
リサイクル製品 | |
農業への挑戦 | |
<環境面> | ①混合廃棄物高度選別ラインや特殊形状粉砕機、CCD カメラを利用した色彩選別などの高度な選別による金属くずや紙くずなどのマテリアルリサイクル ②廃プラスチックなどの廃棄物を 10%まで縮減し、発電することが可能な乾溜ガス化炉発電施設の新設 ③xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出 |
マテリアルリサイクル | |
サーマルリサイクル | |
再生可能エネルギー |
【ネガティブなインパクトを低減する活動】
テーマ | 活動内容 |
<社会面> 安心安全な作業現場 | ①安全第一主義の徹底による労働災害発生率の低減 ・安全衛生方針・目標の策定、COHSMS の構築 ・安全衛生委員会の設置、安全パトロールの実施 ・安全大会や事業主講習会、ミニ防災防止協議会などの開催 |
<環境面> 周辺環境への配慮 環境負荷低減 | ①解体事業やリサイクル事業に伴う周囲への悪影響の低減 ・アスベストやダイオキシンなどの有害物質対策 ・圧砕工法、屋内型リサイクル施設などによる騒音・振動・臭気対策 ②効率的な配車や焼却量削減などによる CO2 排出量の削減 ・廃棄物のリサイクルによる焼却量の削減 ・K-グランドの製造による CO2 排出量の抑制 ・GPS 搭載車による効率的な収集運搬 ・乾溜ガス化炉発電施設での発電、外部委託時の走行距離削減 |
(1)UNEP FI が掲げるインパクトレーダーとの関連性
イーシーセンターの老朽化した建築物の解体を行い新たな住宅などを建設できるようにする解 体事業は「住宅」に、社内行事などでのチームワークの醸成やモチベーションアップによる従業員満足度向上やスポーツ選手や障害者の活躍を支援するダイバーシティ経営の実践は、定着率向上や多様な人材の活用につながるため「雇用」に関するポジティブなインパクトであると想定される。また、K-グランドなどの付加価値の高いリサイクル製品は同社の収益性向上にもつながるため「経済の収れん」に、エコキャップ運動などの地域・社会貢献活動や富士山木耳や米の生産といった農業への挑戦は地域の雇用や産業の維持、活性化に貢献しているため「包摂的で健全な経済」におけるポジティブ・インパクトに該当する。さらに、混合廃棄物高度選別ラインなどによるマテリアルリサイクルや乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクルは「資源効❹・資源安全確保」、
「廃棄物」に、再生可能エネルギーの創出は「気候変動」に資するポジティブなインパクトである。一方で、各種安全衛生活動により醸成された安心安全な作業現場は「雇用」のネガティブな
インパクトを低減させている。また、有害物質対策や騒音・振動・粉塵対策といった周辺環境への 配慮は「健康と衛生」や「大気」、「水」、「土壌」に、廃棄物のリサイクルによる焼却量の削減や全車 GPS 搭載車とすることで実現した効率的な廃棄物収集運搬などといった環境負荷低減の取
組みは「気候変動」に対するネガティブ・インパクトの抑制となっている。
利用可能性、アクセス性、価格の手頃さ、品質 | 質(物理的・化学的性質)と有効利用 | 環境の制約内で人のニーズを満たす手段としての、人々・社会の ための経済的価値創出 |
水 | 大気 | 包摂的で健全な経済 |
食料 | 水 | 経済の収れん |
住宅 | 土壌 | |
健康と衛生 | 生物多様性と生態系サービス | |
教育 | 資源効率・資源安全確保 | |
雇用 | 気候変動 | |
エネルギー | 廃棄物 | |
移動手段 | ||
情報 | ||
文化・伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
司法 | ||
強固な制度、平和、安定 |
(2)SDGs との関連性
イーシーセンターの企業活動は、新たな住宅などの建設に必要な解体事業や社内行事による従業員満足度向上、ダイバーシティ経営の実践が「ターゲット 9.1」や「ターゲット 8.5」に、再生砕石や RPF、木材チップ、K-グランドといった付加価値の高いリサイクル製品やエコキャップ運動などの地域・社会貢献活動、富士山木耳や米などの農業への挑戦が「ターゲット 8.2」や「ターゲット 9.2」に関するポジティブなインパクトと想定される。また、徹底した選別によるマテリアルリサイク ルや乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクルは「ターゲット 12.2」や「ターゲット
12.5」、「ターゲット 9.4」、「ターゲット 14.1」に、xxx発電設備による再生可能エネルギーの創出は「ターゲット 7.2」に資するポジティブなインパクトである。
一方、安全衛生方針・目標の策定や COHSMS の構築、各種安全衛生活動により実現し た安心安全な作業現場は「ターゲット 8.8」に関するネガティブなインパクトを抑制するものであ る。また、有害物質対策や屋内型リサイクル施設などによる騒音・振動・臭気対策などの周辺環 境への配慮、GPS 搭載車による効率的な配車や廃棄物のリサイクルによる焼却量の削減、K-グランドの製造による CO2 排出量の抑制といった環境負荷低減は「ターゲット 6.3」や「ターゲット
11.6」、「ターゲット 12.4」のネガティブなインパクトを低減させている。
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<社会面>解体事業、従業員満足度向上、ダイバーシティ経営、安心安全な作業現場 9.1 すべての人々に安価でxxなアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。 イーシーセンターの行っている解体は一般住宅やビルなどに留まらず橋などの公共物や煙突といった特殊構造物にも及んでいる。このようなxxにわたる解体事業は都市の新陳代謝や大手ゼネコンによる都市の再開発に資する活動であり、インフラの構築に貢献している。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 毎年開催しているサバイバルゲーム大会などのレクリエーションや社内旅行、納涼会などの社内行事は、従業員のチームワークの醸成やモチベーションアップにつながり、生産性や働きがいを向上させ、定着率の改善にも寄与している。 また、はぐくむ FUJI オフィシャルサポーター認定企業としての女性の活躍推進や地域サッカークラブの選手の採用、NPO 法人チェンジを通した障害者の活躍推進 など多様な人材が活躍できる環境を整えている。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 安全衛生方針・目標の策定や COHSMS の構築、安全衛生委員会の設置などにより従業員が安心して働ける安全な職場を醸成している。安全パトロールや安全大会、事業主講習会など具体的な取組みも数多く実施されており、危険を伴う解体現場の安全性確保につながっている。 | |
<経済面>付加価値の高いリサイクル製品、農業への挑戦、地域・社会貢献 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 廃棄物のリサイクルによって製造される再生砕石や RPF、木材チップ、K-グランドは地元建設業者や製紙会社へ販売されるなど市場価値が認められる。特に、廃かわらのリサイクルにより製造される K-グランドは、製造工程での CO2 排出量を既存製品より抑制することが確認されており、高い透水性・保水性を有しているため、ヒートアイランド現象の防止効果や滑り止め効果もあり付加価値が高い。 9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及び GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。 社訓により社内に醸成されたチャレンジスピリッツから生まれた富士山木耳や米の生産は、産業の拡大に資する活動である。特に、イーシーセンターによりブランド化された富士山木耳は「食べられる漢方食材」と言われるほど栄養価が高く、無農薬栽培のため安全性も高いため、解体業や産業廃棄物処理業に次ぐ新たな事業の柱となることが期待される。 また、地域の要請に応える形で始めた農業や本業にも好影響を与えているエコキャップ運動、地域サッカークラブへの支援などといった地域・社会貢献は、企業イメージの向上や地域住民の理解を得ることにもつながり、地域に根差した企業にとって持続可能性を高めることに貢献している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<環境面>マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、再生可能エネルギー、周辺環境への配慮、環境負荷低減 9.4 2030 年までに、資源利用効❹の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効❹的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 14.1 2025 年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 混合廃棄物高度選別ラインなどにより実現しているマテリアルリサイクルや乾溜ガス化炉発電施設によるサーマルリサイクルは廃棄物の発生を削減しており、限られた資源の効率的・有効的な活用に貢献している。これらは、最終処分場への埋立量削減にも資する取組みであり、産業廃棄物処理業界の持続可能性を高めている。 また、廃プラスチック類の廃棄物を削減することで海洋に流れ込むマイクロプラスチックの削減に貢献している。 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 本社や富士ステーションに設置したxxx発電設備により再生可能エネルギーを創出している。これらは全て東京電力へ売却することで、一般家庭で利用される再生可能エネルギーの割合を増加させることに貢献している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 イーシーセンターは、アスベストやフロン、ダイオキシンなどといった解体作業に伴い発生する有害物質を徹底して除去している。騒音・振動・粉塵に対しても圧砕工法や一本吊り工法、ワイヤーソーイング工法を採用しており、汚泥水飛散防止対策としてバキューム装置付きカッターを活用するなど、解体現場での環境悪化抑制に努めている。 また、廃棄物処理現場においても、リサイクル施設を完全屋内型とし、エアシャワーや高速シャッターなど、騒音・臭気対策を徹底している。 さらに、GPS 搭載車両による効率的な収集運搬作業や廃棄物のリサイクルに よる焼却量の削減、K-グランドなどの製造による CO2 排出量の抑制、乾溜ガス化炉発電施設による発電および外部委託の削減に伴う走行距離の短縮など、環境負荷の低減に努めている。 |
(3)地域課題との関連性
①地域経済に与える波及効果の測定
イーシーセンターは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 80 億円に、従業員数を 170 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、こ
の目標を達成することによって、イーシーセンターは、静岡県経済全体に年間 130 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
②地域の独自課題への貢献
【行政との協定】
静岡県では、2011 年に発生した東日本大震災の教訓から、災害時の廃棄物処理は、被 害が発生してからではなく、防災的観点から事前に可能な限り対策を講じておくことが重要であるとし、2015 年に静岡県災害廃棄物処理計画を策定した。静岡県が 2013 年に公表した第4次地震被害想定や 2014 年に示された国の指針である災害廃棄物対策指針を踏まえ静岡県や各市町では、現実的かつ着実な災害廃棄物対策を計画している。
このように、行政が災害廃棄物の処理について事前に対策を進める中、イーシーセンターは公益社団法人静岡県産業廃棄物協会を通じて県と地震等大規模災害時における災害廃棄物の処理等に関する協定を締結している。これは、災害廃棄物の処理等について、被災地域の市町又は一部事務組合から静岡県産業廃棄物協会に支援協力要請があった際、協会を通じてイーシーセンターなどの会員企業が処理にあたるものである。
また、イーシーセンターは独自に富士市、沼津市の両市と災害時等における無人航空機の活用に関する協定を締結しており、空撮画像の提供等による被害状況の調査や救助活動における必要な情報収集、医薬品や食糧等の応急物資の運搬などの協力体制を整えている。
地震等による甚大な被害が想定されている静岡県で事業活動を営む企業として、行政と協定を締結することで、事業内容を生かした活躍が期待される。
【SDGs xx都市】
イーシーセンターが所在する富士市は、地方創生 SDGs の達成に向け、優れた SDGs の取組みを提案する地方自治体として内閣府の SDGs xx都市に選定されている。地方創生 SDGs とは、持続可能なまちづくりや地域活性化に向けた取組みの推進に当たり、SDGs の理 念を取り込むことにより、政策の全体最適化、地域課題解決の加速化という相乗効果を生むことである。
このように、SDGs の取組みを推進している富士市では、2020 年に SDGs xx都市計画を策定しており、xxxの恵みを享受しながら生活を営み発展させてきた歴史を踏まえ、富士山を SDGs のシンボルとして、一人ひとりが自らの希望を実現し、いきいきと輝けるまちを築くとともに、
経済、社会、環境の3側面が調和した持続可能な発展を実現させていくと標榜している。 SDGs の推進に資する取組みとして、新産業を始めとした多彩な産業の振興や一人ひとりが輝ける働き方の実現、環境共生社会の推進、環境活動・環境教育の推進などを挙げており、 SDGs の認知度向上のために情報発信にも力を入れている。
マテリアルリサイクルの推進やダイバーシティ経営の実践、新規事業につながるチャレンジスピリッツなど、イーシーセンターにおける活動の多くが、富士市の推進している取組みに沿ったものとなっている。また、富士市のラジオ放送を活用した SDGs 普及啓発活動にも協力しており、イーシーセンターの SDGs に資する取組みを公表することで市民などへの SDGs の浸透に貢献している。
イーシーセンターは SDGs に取り組むフロントランナーとして、地域全体を牽引していく企業とな
ることが期待される。
③イーシーセンターの持続的な成長への貢献度
イーシーセンターが本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む目的は、自社の環境保全に対する取組みを公表することで、より良いxxを子供たちに残す活動に地域全体で取り組みたいという気持ちを具現化することである。
また、自社の経営にとっても、社内の業務の棚卸しをし、SDGs の精神や社会・経済・環境に関する目標・KPI を設定することによって、自社の現状や目指すべき方向性を社員と共有し、全社員のベクトルを合わせることで、経営体制をより強固なものにできると考えている。
さらに、取引先や地域など対外的にも、自社の経営理念やミッション、経営者の想い・こだわり
等を周知することで、自社の強みや企業風土の理解を促進し、新規受注や採用などにつながるなど、持続的成長の源泉になることを期待している。
5. インパクトを測定する KPI(指標と目標)
特定されたインパクト | KPI(指標と目標) | 関連する SDGs |
<社会面> | ・年間 1,200 件以上の解体工事件数を維持する ・業務改善表彰制度や資格取得補助、予防接種費用補 助、社内行事の開催などを継続し、高い従業員満足度の維持することで、2025 年までに従業員数を 2020 年の 155名から5名増加させ、160 名を達成する ・2025 年までに、障害者の雇用者数を現状の 2 名から2名増加させ、合計4名の雇用を達成する ・安全第一主義を維持し、年間の労災発生件数を0に留める ・2030 年までに、エコキャップ運動でのキャップ回収数を累計 300 万個達成する | |
住宅 | ||
雇用 | ||
包摂的で健全な経済 | ||
<経済面> | ・2030 年までに、付加価値の高い K-グランドの製造量を 2020 年の約 300tから 100t増加させ、400tを達成する ・付加価値の高い RPF の製造量に関して、 2020 年の 5,600t程度を需要に応じ維持していく ・2030 年までに、富士山木耳の生産量を 2020 年の3tから4tの間で維持する ・米の生産量に関して、2020 年の 300 ㎏を維持する | |
経済の収れん | ||
包摂的で | ||
健全な経済 | ||
<環境面> | ・マテリアルリサイクルに関して、2030 年までに、 リサイクル砕石等を 2020 年の 70,000 ㎥から 10,000 ㎥ | |
資源効率・資源安全確保 | 増加させ 80,000 ㎥を、 金属リサイクルを 5,000tから 1,000t増加させ 6,000t | |
廃棄物 | を達成する ・乾溜ガス化炉発電施設でのサーマルリサイクルにより、 | |
気候変動 | 年間 4,800kWh発電する | |
健康と衛生 | ・xxx発電設備により、累計 200 万kWh発電する | |
大気 | ・アスベスト対策やダイオキシン対策、騒音・振動・臭気・汚泥・ | |
水 | 粉塵対策を継続することで、産業廃棄物処分業および建設 | |
土壌 | 業許可(解体工事)の基準を満たし、事業に必要なxx 可を維持する |
6. マネジメント体制
イーシーセンターでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、組織横断的なプロジェクトチームを結成。xx社長が陣頭指揮を執り、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とし、xx部長を実行責任者とした、経営管理部内に設置されたプロジェクトチームを中心として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。
xx社長が本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組む最大の目的は、イーシーセンターの
「私たちの子どもたちに残したいxxがある」という企業理念を達成すべく、環境保全活動を地域全体で取り組むことである。同社の事業は、地域住民の理解なくしては継続できないため、本件を契機に自社の取組みを広く周知することで、さらなる活動の拡充を図っていく方針である。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxx |
実行責任者 | 経営管理部長 xxxxx |
担当課 | 経営管理部 |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とイーシーセンターの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に
1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するイーシーセンターから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 調査グループ長 xx xxx研究部 研究員 xx xx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2021 年 9 月 30 日 株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社イーシーセンターに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナ
ンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社イーシーセンター(「イーシーセンター」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、イーシーセンターの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、イーシーセンターがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
お客さま | ①PIFの申込み | 当行 | ②PIF評価依頼 | 静岡経済研究所 | レビュー依頼 | JCR |
③インパクトの包括分析・特定 | ||||||
⑤目標・KPI等の協議 | ④インパクトの還元 ⑥目標・KPI等の報告 | コメントバック レビュー依頼 | ||||
⑨融資実行 PIF評価書交付 | ⑧PIF評価書作成 | ⑦目標・KPI等の評価 コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるイーシーセンターから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可
能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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