・インボイス(FCA)
輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会
買手が受けるサンプル値引きの取扱いについて
x 会 | ||
照会内容等 | ① 輸入貨物の品名 | 衣類他(税表分類:第 62 類) |
② 照会の趣旨 | 輸入者(買手)がサンプル値引きを受ける取引は、処分又は使用につき制限がある場合に該当するか否かについて照会するものです。 | |
③ 取引の概要及び関税評価に関する照会 者の見解とその理由 | 別紙1のとおり。 | |
④ 関係する法令条項等 | 関税定率法第4条第2項第1号 | |
⑤ 添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関する参考資料 |
回 答 | |||
回答年月日 | 平成 27 年 6 月 12 日 | 回答者 | 東京税関業務部首席関税評価官 |
回答内容 | 別紙2のとおり。 ただし、次のことを申し添えます。 (1) 回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提としたものであり、具体的な事例において異なる事実がある場合や新たな事実が生じた場合には、回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。 (2) 回答内容は、税関としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありませんのでご留意ください。 |
1.取引形態図
販売店契約
(別紙1)
X%出資
Y%出資
国内販売先 D社
(本邦)
サ ン プ
ル ・ 本 商 品 納品
輸出者・売手 S社
(X国)
輸入者・買手 B社
(本邦)
貨物(サンプル含む)
・インボイス(FCA)
サンプル品(a%レス)決済
本商品発注・決済(送金)(100)
再販売店契約
発注
決済
2.取引の概要
(1)買手であり輸入者であるB社(以下「買手」という。)は、売手であり輸出者であるS社(以下
「売手」という。)と販売店契約(以下「契約」という。)を締結し、衣類等(以下「本商品」という。)を輸入しています。
買手は、売手との合弁の販売会社であるD社と再販売店契約(以下「サブ契約」という。)を締結し、D社が実際の販売促進、受注活動を行っています。
売手と買手は、関税定率法施行令第1条の8第7号に該当する特殊関係にありますが、取引価格に影響はありません。
(2)売手は、1 年を SS(xx)AW(秋冬)と 2 シーズンに分け、シーズン開始前に売手が企画している全ての本商品のサンプルを各国に向け発送すると同時にカタログ・輸出価格リストを作製します。サンプルは、本商品と品質等の差異は全くなく、「Not For Sale」等の表示もされていません。
「契約」において、当該サンプルは
・「本商品の販促目的で提供する」
・「本邦における販売及び広告活動のためにそれを使用する」
・「本商品の FCA 価格の a%のサンプル割引を適用して計算した価格で請求する」
とされていますが、「契約」「サブ契約」いずれにおいても、販売及び広告活動の内容や、販促活動後のサンプルの取扱い、サンプルの販売価格、販路等具体的な取り決めはありません。
実態としては、買手は当該サンプルをD社に販売し、D社は展示会、内覧会等により各サンプルの顧客への反応等を見極めた上で、買手に発注を行い、買手から売手に正式発注が行われます。 D社は、展示会等後、独自の裁量に基づき「メディアにサンプル貸出→写真撮影(雑誌掲載)」「希
望者へ販売」「店頭(本商品)欠品時の代替品として販売」等に使用しますが、こうした最終使用方法について、売手、買手のいずれにも報告していません。また、当該サンプルを、社内販売、アウトレット等ルートは自主的に限定し相応の価格で販売していますが、販売についても、買手、売手から何ら制限を受けているものではありません。
(3)サンプルの輸入通関時に提出されるインボイスには、「サンプル」「本商品の輸出価格リストの金額」及び「値引き」の記載がなく、a%控除後の単価と合計額のみが記載されています。
買手は、サンプルについては、売手から送付されるインボイスに従い、a%値引きされた金額を売手に支払っています。
3.関税評価に対する照会者の見解
当該値引きは、関税定率法第 4 条第 2 項第 1 号の「買手による輸入貨物の処分等についての制限」
に該当せず、本件貨物の課税価格は関税定率法第 4 条第 1 項本文に基づき、現実支払価格(値引後価格)により計算します。
(別紙2)
【回答内容】
本事案において、輸入貨物に係る輸入取引は、関税定率法第 4 条第 2 項第 1 号に規定する「買手によ
る輸入貨物の処分等についての制限がある」場合に該当し、その課税価格は、同法第 4 条の 2 から第 4
条の 4 までに定めるところにより決定することとなります。
【理由】
1.関係法令等
(1) 関税定率法(以下「法」という。)第 4 条第 1 項本文において、輸入貨物の課税価格は、当該輸入貨物に係る輸入取引がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格に、その含まれていない限度において運賃等の額を加えた価格(取引価格)とする旨が規定されています。ただし、同条第 2 項本文において、輸入貨物に係る輸入取引に関し、同項各号に掲げる事情のいずれかがある場合における当該輸入貨物の課税価格の決定については、第 4 条の 2 から第 4 条の 4 までに定めるところによる旨も規定されており、同項第 1 号において、「買手による当該輸入貨物の処分又は使用につき制限(買手による輸入貨物の販売が認められる地域についての制限その他の政令で定める制限を除く。)があること。」が掲げられています。
(2)法施行令(以下「令」という。)第 1 条の 7 各号において、法第 4 条第 2 項第 1 号に規定する「政
令で定める制限」について規定しており、令第 1 条の 7 第 3 号において、「その他買手による輸入貨物の処分又は使用についての制限で当該輸入貨物の取引価格に実質的な影響を与えていないと認められるもの」を掲げています。
(3)法基本通達(以下「通達」という。)4-16 において、法第 4 条第 2 項第 1 号に規定する「買手による当該輸入貨物の処分又は使用についての制限」に該当する場合として、輸入貨物を売手の指示に従って展示用としてのみ使用させることを条件としてその価格を実質的に引き下げて輸入取引をした場合や特殊関係にある者のみに再販売させることを条件として実質的に価格を引き下げて輸入取引をした場合を例示しているほか、買手による輸入貨物の処分又は使用についての制限が当該輸入貨物の取引価格に実質的な影響を与えているか否かの判断は、制限の種類、輸入貨物の種類、産業の種類及び商慣行並びに価格への影響の商取引上の重要性等の要素を考慮して行うものとするとの注書が付されています。
2.検討
(1) 輸入者の説明と契約の記載によれば、本件取引は、本商品の本邦における唯一の独占販売代理店として輸出者から指定された輸入者が、本商品のサンプル(以下「輸入貨物」という。)を FCA 条件で輸入(購入)するものと認められることから、輸出者が売手、輸入者が買手である輸入取引であると認められます(以下輸出者を「売手」、輸入者を「買手」という。)。
(2) 契約において、
① 買手は、シーズン毎に、本商品と売手商標に特化した広告及び販売促進キャンペーンを実施する。また、買手は、売手に対し、シーズン毎の詳細なメディアプランを提出して、書面による売手の事前承認を受ける必要があるほか、シーズン期間中における当該メディアプランの進捗状況を売手に報告するとともに、当該メディアプランに基づく販売促進及び広告に関する最終報告書を売手に提供しなければならない。
② 売手は、買手又は下請販売代理店に対し、本邦における本商品の販売促進のために輸入貨物等を提供しなければならない。
③ 売手から買手に対し、売手商標に関するシーズン毎の全サンプル集を送付し、買手は、本邦における販売及び広告活動を行うためにそれを使用する。
④ 売手は、上記サンプル集を、本商品の FCA 価格から a%のサンプル割引を適用して計算した価格で請求する。買手による支払いは、○日以内に銀行振込により行う。
旨が定められています。
(3) また、サブ契約において、
① 買手とD社は、本商品と売手商標に特化した広告及び販売促進キャンペーンを、買手がD社に委託し、D社がそれを請け負うことに合意する。また、D社は、売手及び買手に対し、シーズン毎の詳細なメディアプランを提出して、書面による売手及び買手の事前承認を受ける必要があるほか、シーズン期間中における当該メディアプランの進捗状況を買手に報告するとともに、当該メディアプランに基づく販売促進及び広告に関する最終報告書を買手に提供しなければならない。
② 買手は、D社に対し、本邦における本商品の販売促進のために輸入貨物等を提供しなければならない。
③ 買手が売手から売手商標に関するシーズン毎の全サンプル集を入手することを前提に、買手から D社に対し、当該サンプル集を送付しなければならず、D社は、本邦における販売及び広告活動を行うためにそれを使用しなければならない。
④ 上記サンプル集の販売価格は、本商品の FCA 価格(各配送請求書上で計算される a%のサンプル割引があれば、それを適用したもの)の b%に実績原価及び支出を加えた価格とする。
旨が定められています。
(4)また、買手は、
① 輸入貨物は、本商品と品質等の差異は全くなく、「Not For Sale」等の表示もされていない。
② 実態としては、輸入貨物は、D社に販売する。
③D社は、展示会又は内覧会等により輸入貨物の顧客への反応等を見極めた上で、展示会等の後、独自の裁量に基づき、輸入貨物を使用又は処分(販売を含む。)する。
④D社は、当該使用又は処分について、売手及び買手には報告せず、輸入貨物の販売について、買手
及び売手から何ら制限を受けていない。
⑤ 輸入貨物については、売手から送付されるインボイスに従い、本商品の FCA 価格から a%値引きされた金額を、売手に対して支払っている。
旨を申し述べています。
(5) 本件輸入取引において、買手は、上記(2)①のとおり、売手の承諾を前提とした一定の本商品に係る販売促進及び広告(以下「販促活動」という。)を実施することが義務付けられているところ、上記(2)②及び③により、本件輸入貨物は、販促活動のために使用するものと認められます。
(6) また、上記(3)①により、買手が売手に義務付けられている販促活動は、D社が受託実施しているものと認められ、上記(3)②及び③のとおり、輸入貨物は、買手からD社に提供された後、販促活動に使用することが義務付けられています。
(7) さらに、上記(4)②及び③のとおり、実態としても、輸入貨物は、展示会又は内覧会等で使用されていることが認められます。
(8) 上記(4)①により、輸入貨物と本商品とは商品価値的に同一物と認められることからすれば、上記(2)④により、売手が、輸入貨物について、本商品の FCA 価格から a%の割引を適用して計算した価格で請求しているのは、上記(5)から(7)までの事情、すなわち、買手に義務付けられた販促活動に使用することが売手と買手との間で合意され、実際に、買手の委託を受けたD社によって、展示会や内覧会等で使用されていることによるものと認められます。
(9) 上記事情は、通達 4-16 本文で例示している「輸入貨物を売手の指示に従って展示用としてのみ使用させることを条件として」と同視できるものと認められます。また、上記(8)のとおり、上記事情は、輸入貨物の取引価格に実質的な影響を与えているものと認められることから、令第 1 条の 7第 3 号にも該当しません。
(10) また、照会者が提出した輸入貨物に係る輸入申告書類によれば、当年xx向けの輸入貨物が前年 6 月に、当年秋冬向けの輸入貨物が当年 1 月にそれぞれ輸入されているものと認められます。本商品の種類や商慣行等から鑑みて、輸入貨物が本件輸入直後に本邦の最終顧客向けに販売されることは通常考えられず、販促活動に向けた展示に使用するものと判断することが合理的です。
(11) なお、上記(4)③及び④のとおり、買手は、展示会又は内覧会等の後、D社が独自の裁量に基づき、輸入貨物を使用又は処分(販売を含む。)することや、当該使用又は処分について、D社に対する売手及び買手による制限はない旨を申し述べていますが、輸入貨物を展示会又は内覧会等において
使用する事実に変わりはなく、通達 4-16 本文で例示している「展示用としてのみ使用させる」との条件を否定することとはなりません。
3.結論
したがって、本件輸入貨物に係る輸入取引は、法第 4 条第 2 項第 1 号に規定する「買手による当該輸入貨物の処分又は使用につき制限がある」場合に該当することから、同項の規定により、本件輸入貨物の課税価格は、法第 4 条の 2 から第 4 条の 4 までに定めるところにより決定することとなります。