Contract
ポケット労働法 2008
目次
第 1 章 就職するときに
1.労働法とは 3
2.労働契約を結ぶとき ━労働条件ははっきりと━ 4
3.労働契約に会社がつけてはならない条件とは 5
4.労働組合に入らなければならないという条件があるとき 6
5.労働条件が約束と違っていたら 6
第 2 章 働く人、雇う人のルール | |
1.就業規則とは | 7 |
2.合理的な理由なく労働条件を労働者に不利に変えることはできない | 8 |
3.最低賃金の保障 | 9 |
4.賃金支払いの5つの原則 | 9 |
5.減給の定めの制限 | 9 |
6.年俸制と賃金 | 10 |
7.会社が倒産して賃金が支払われないとき ━未払い賃金の立替払い制度━ | 10 |
8.男女雇用機会均等法 | 12 |
9.母性を守るために ━産前産後の休業・生理日の休暇━ | 14 |
10.パートタイマーにも労働法は適用される | 15 |
第 3 章 労働時間と休日・休暇 | |
1.労働時間は週 40 時間制が原則 | 16 |
2.変形労働時間制 | 16 |
3.みなし労働時間制 | 17 |
4.休憩時間は全員いっせいに、その利用は自由に | 18 |
5.労働から離れる日 ━休日━ | 19 |
6.残業・休日労働 | 21 |
7.残業・休日労働の割増賃金 | 22 |
8.年次有給休暇は労働者が自由に利用できる | 24 |
9.パートタイマーなどへの年次有給休暇の比例付与 | 25 |
第 4 章 育児・介護休業法
1.育児関連 26
2.介護関連 28
第 5 章 派遣労働
1.派遣労働とは 30
2.派遣労働の類型 30
第 6 章 労働組合 | ||
1.労働組合はどんな団体か 2.労働組合の要件 3.労働組合のいろいろな活動 | ━団体交渉など━ | 33 34 35 |
4.労働協約 ━労働条件をよくして労働者の地位を高める制度━ 37
第 7 章 安全衛生と労災保険
1.安全衛生 38
2.労災保険 39
第 8 章 雇用保険と健保・年金
1.雇用保険 41
2.健康保険 44
3.公的年金制度 45
第 9 章 退職・解雇のときに
1.退職のルール 47
2.解雇 48
3.労働契約が終了すると 49
4.定年と高齢者の働きかた 50
この資料は平成 20 年 6 月
xxx産業労働局雇用就業部労働環境課(xxxxxxxxx 0-0-0)
によって発行された「ポケット労働法 2008」を転載(一部省略)したものです。
第 1 章 就職するときに
1-1 労働法
◇労働基準法
労働者が「健康で文化的な最低限度の生活」を営むことができるように、労使が守るべき最低限の基準を示したものが労働基準法です。労働基準法では、労使は、労働基準法で示した労働条件の基準を単に守るだけではなく、これを改善向上するように努めなければならないと示しています。
さらに、労働基準法では、本来、労働条件とは、労使がお互いに対等の立場で決定すべきものであることを示しており、労使間で取り決めた労働協約や労働契約等は、これを誠実に遵守するよう義務付けています。
◇労働契約法
労働契約法は、労働契約の成立から終了まで、労働契約が円滑に継続するための基本ルールを定め、個別の労使関係の安定を図ることを目的としています。
◇最低賃金法
最低賃金法では、労働者の生活の糧となる賃金の最低額を保障することによって、労働条件の改善向上を図り、これによって労働者の生活の安定を図ることを目的としています。
◇労働安全衛生法
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的としています。事業主は、単にこの法律で定める労働災害防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、職場における労働者の安全と健康を確保するように示しています。
◇職業安定法
職業安定法は、公共職業安定所及び職業紹介事業者等に対して、「職業選択の自由」の尊重や「差別的取扱の禁止」などの職業紹介等の基本ルールを定め、職業の安定を図ることを目的としています。
◇雇用保険法
雇用保険法は、労働者が、働く意思と働く能力があっても、何らかの理由によって職に就くことができないときに、再就職するまでのあいだの生活を安定させ、就職活動を円滑に行うことができるよう支援することを目的としています。
雇用保険給付には、求職者給付(失業手当)だけではなく、就業中であっても受給することができる教育訓練給付などもあります。
◇労働組合法
労働組合法は、労働者が団結して労働組合をつくり、団結の力を背景に、使用者と対等の立場に立って、労働条件をより良いものとするための活動を保護することを目的としています。
労働組合の活動には、労働条件をより良くするために使用者側と話し合う団体交渉や、その話し合いを有利に進めるために、団結の力を示すストライキなどがあります。
1-2 労働契約を結ぶとき -労働条件ははっきりと-
ある会社に就職が決まると、就職しようとする人と会社との間で、労働契約を締結します。労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者と使用者が合意することにより成立します。
労働契約を結ぶときには、毎月の賃金、労働時間、休憩時間、休日、年次有給休暇、残業の有無など、あらかじめ決めておかなければならないことがたくさんあります。それらをすべて口頭で済ませてしまうと、後に「言った、言わない」のトラブルのもとになりかねません。
このようなトラブルを防ぐため、労働基準法第 15 条では、使用者に対して、労働契約を結ぶときには労働者に労働条件を明らかにすることを義務付けており、特に、次に示す①~⑤までの事項については、書面を交付しなければなりません(同法施行規則第 5 条)。
なお、①~⑤以外の労働契約の内容についても、使用者はできる限り書面により確認するものとされています(労働契約法第 4 条第 2 項)。
明示しなければならない事項
必ず明示しなければならない事項 | ① 労働契約の期間に関すること ② 仕事をする場所、仕事の内容 ③ 仕事の始めと終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換(交代制勤務のローテーション等) ④ 賃金の決定、計算と支払いの方法、締切りと支払いの時期 ⑤ 退職に関すること(解雇の事由を含む) ⑥ 昇給に関すること * ①~⑤までは書面で明示しなければならない |
制度を設ける場合に明示しなければならない事項 | ⑦ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法と支払いの時期 ⑧ 臨時に支払われる賃金、賞与及び最低賃金額に関すること ⑨ 労働者に負担させる食費、作業用品などに関すること ⑩ 安全・衛生 ⑪ 職業訓練 ⑫ 災害補償・業務外の傷病扶助 ⑬ 表彰・制裁 ⑭ 休職 |
1-3 労働契約に会社がつけてはならない条件
◇賠償予定の禁止(労働基準法第 16 条)
労働者が、契約期間の途中で会社を退職したときや、労働者の不注意で会社の備品を壊してしまったときには、ペナルティとしていくら支払う、というように、あらかじめ労働契約に賠償額を決めておくことは認められません。
ただし、労働者が故意・過失により、会社に損害を与えた場合には、損害賠償義務がなくなるわけではありません。
◇前借金相殺の禁止(同法第 17 条)
使用者が、労働者に賃金を前貸しして、前借りした賃金は毎月の賃金から返済させるようにし、借金が残っている間は退職することができないようにする、という行為は許されません。
◇強制貯金(同法第 18 条第1項、第 2 項)
使用者が、労働者に賃金の一部又は全部を強制的に会社に積立てさせる行為は、会社への不当な足止めにつながり、また賃金の全額払いの原則にも反し、認められません。
ただし、「社内預金」のように、会社が、労働者の意思に基づいて、賃金の一部を天引きして管理することは、会社が、労働基準監督署長へ労使協定を届け出ることによって認められています。
◇契約期間(同法第 14 条)
労働契約を結ぶときに、あらかじめ雇用期間を定めておく有期労働契約を結ぶときには、3 年(次の
①、②に該当するときには 5 年)を超える労働契約を結んではなりません(例外として「ある事業が完了するまで」という契約を結ぶときには、3 年を超える契約を結ぶことが認められています)。
① 高度な専門的知識、技術、経験を持っている労働者との間に結ぶ労働契約
* 「高度な専門的知識」を持っている人とは、博士課程修了者や、公認会計士や弁護士の資格を持っている人などです。
② 満 60 歳以上の労働者との間に結ぶ労働契約
なお、1 年を超える有期労働契約を結んだ労働者は、当該労働契約の初日から 1 年を経過した日以後は、使用者に申し出ることによって、契約期間の満了前であっても退職することが認められています
(暫定措置)。
◇黄犬契約(憲法第 28 条、労働組合法第 7 条第 1 項)
日本国憲法では、労働者が団結する権利、団体交渉する権利、その他労働組合の様々な活動をする権利を保障しています。
この憲法の理念を実現するため、労働組合法では、使用者に対して、労働組合に加入しないこと、あるいは労働組合から脱退することを雇用条件とするような契約(黄犬契約)を結ぶことを禁止しています。
1-4 労働組合に入らなければならないという条件があるとき
「会社に入ったら、労働組合にも加入しなければならない」という、労働組合と会社との労使協定のことをユニオン・ショップ協定といいます。
ユニオン・ショップ協定が結ばれている場合には、労働者が労働組合から脱退したり、除名させられたことなどによって組合員資格を失ったときには、会社はその労働者を解雇しなければなりません。しかし、ユニオン・ショップ協定があっても、会社に特別な事情があるときや、労働組合と会社が話し合って決めたときは、会社はその労働者を解雇しない、と決めている場合も多く見受けられます。
なお、ユニオン・ショップ協定を締結している労働組合の組合員が、その組合を脱退して別の組合に加入した場合、あるいは労働者が新たに労働組合を結成した場合については、ユニオン・ショップ協定の効力はこれらの労働者には及ばない、と考えられています。
1-5 労働条件が約束と違っていたら
労働契約を結んで実際に働き始めたところ、あらかじめ示された労働時間よりも長く働かされたり、安い賃金で働かされた。というように、労働契約の内容と実際の労働条件が違っていた場合はどうしたらよいでしょうか。
このような場合において、もし、今後もその会社で働き続けることを希望しているのであれば、会社に対して、労働契約の内容を誠実に守ってもらうように要求しましょう。
しかし、その会社で働き続けるつもりがないのであれば、労働基準法では、あらかじめ示された労働契約の内容と、実際の労働条件が異なっていたことを理由に、ただちに労働契約を解除することを認めています(労働基準法第 15 条第 2 項)。この場合には、たとえ雇用期間をあらかじめ定めておく有期労働契約の契約期間途中であっても、退職することが認められています。
また、その会社に就職するために住居を移転した者が、契約内容と実際の労働条件が違っていたことを理由に退職し、その後 14 日以内に元の住居地に戻るような場合には、労働基準法では、会社が労
働者が転居するのに必要な旅費を負担するよう義務付けています(同法第 15 条第 3 項)。
第2章 働く人、雇う人のルール
2-1 就業規則とは
就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律、そのほか労働者に適用される各種の定めを明文化したもので、いわば職場における法律のようなものです。
小規模の会社では、就業規則を作成していない場合もありますが、明文化した規定がなく、労働条件がそのつど決められるようでは、トラブルが生じる原因になりかねません。大勢の人の集まりである会社の秩序を守り、統一的に事業を運営していくためには、労働条件や服務規律などを明らかにした就業規則を作成することが必要です。
なお、就業規則の作成から周知までの一連の手順をすべて会社の自由に任せたのでは、何らかのトラブルが起こりかねませんので、労働基準法では、就業規則の作成手続きや行政官庁への届出、労働者への周知等について、次のように定めています。
◇就業規則の作成義務(労働基準法第 89 条)
常時 10 人以上の労働者(いわゆる正社員だけではなく、パートタイマーや契約社員なども含まれます。)を雇用している会社は、必ず就業規則を作成して、労働基準監督署長に届け出なければなりません。また、就業規則を変更したときも、労働基準監督署長への届出が必要です。就業規則の届出は事業場ごとに行うのが原則ですが、一定の条件を満たしていれば、本社が一括して労働基準監督署長に届け出ることも認められています。
なお、従業員が 10 人未満でも、就業規則を作成する方が望ましいことは言うまでもありません。
◇就業規則に定めなければならないこと(同法第 89 条)
就業規則には、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替勤務をさせる場合の就業時転換に関する事項、賃金及び退職に関する事項(解雇の事由を含む)について、必ず記載しておかなければなりません。
また、退職手当の規定を設けるときには、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払い方法等を、また、臨時の賃金(賞与等)に関すること、安全衛生や災害補償に関すること、表彰や制裁に関することについて何らかの定めを設けるときには、そのことを就業規則に記載しておかなければなりません。
◇労働者からの意見聴取(同法第 90 条)
就業規則を作成又は変更するときには、会社は、労働者側の意見を聴かなければなりません。「労働者側」とは、その会社(複数の工場や営業所を持つ会社では、その事業場ごと)の労働者の過半数で組織する労働組合、これがないときには労働者の過半数を代表する者(選挙などで民主的に決める必要があります。)をさします。作成した就業規則を労働基準監督署長に届け出るときには、労働者側の意見書を添付しなければなりません。
◇法令及び労働協約との関係(労働契約法第 13 条、労働基準法第 92 条)
会社は、就業規則の作成にあたり、法律に違反することや、労働基準法で定められた基準を下回る労働条件を定めることはできません。また、規律に違反した労働者への制裁の規定を定めるときも、公序良俗(世間一般で重んじられている秩序や、善良とされる風俗)に反してはなりません。
就業規則に示された労働条件は、会社が会社の立場で定めたものですが、労働者は、さらにより良い労働条件にするため、労働組合を結成し団結の力を背景に、会社と話し合いを行います。この話し合いを団体交渉といいます。団体交渉の結果を文書にし、両当事者が署名又は記名押印したものが労働協約です。労働基準法では、労働協約に抵触する就業規則は、その部分について無効であると定めており、労使間の合意によって作られた労働協約に強い効力を認めています。
◇就業規則と労働契約との関係(労働基準法第 12 条)
労働契約法では、就業規則とは別に、労使の間で個別に労働契約を結んでいて、その内容が就業規則で定めた基準を下回っているときには、その部分について無効である、と定めています。
◇就業規則の周知(労働基準法第 106 条)
会社は、就業規則のほか労働基準法、及び労働基準法に基づくすべての労使協定等を、次のいずれかの方法によって労働者に周知しなければなりません。
① 常時、各作業場の見やすい場所へ掲示するか、各事業場に備え付けておく。
② 書面を労働者に交付する。
③ 磁気ディスク等に記録し、各事業場に労働者が記録の内容を確認できるパソコン等を設置しておく。
2-2 合理的な理由なく労働条件を労働者に不利に変えることはできない
前述のとおり、労働契約は、労働者と使用者の合意により成立しますが、より効率的な労務管理のために、就業規則によって統一的に労働条件を定めることがあります。
労働契約法では、使用者が、合理的な内容の就業規則を労働者に周知させていた場合には、就業規則で定める労働条件が、労働契約の内容になると定めています(第 7 条)。
労働者が働いていく中では、当初の労働契約から、労働条件が変更されることもあります。労働契約の変更は、労働者と使用者の合意が必要です(第 8 条)。使用者は、労働者の同意なく就業規則を変
更することによって、一方的に労働者の不利益に労働条件を変更することはできません(第 9 条)。た
だし、以下の場合については、就業規則の変更によって労働条件を変更することができます(第 9 条
但書、第 10 条)。
① 変更後の就業規則を労働者に周知すること。
② 就業規則の変更が、以下の事情などに照らして合理的なものであること。
・ 労働者が受ける不利益の程度
・ 労働条件の変更の必要性
・ 変更後の就業規則の内容の相当性
・ 労働組合等との協議の状況
なお、就業規則とは別に個別に結んでいる労働契約の内容を不利益に変更する場合については、原則として労働者の同意が必要になります。
2-3 最低賃金の保障
労働者は、働いて賃金を得て生活しているのですから、その賃金が低すぎては生活することができません。このようなことがないように、最低賃金法では、使用者が労働者を働かせたときに支払わなければならない賃金の最低額を定めています。
平成 20 年 6 月現在、xxx最低賃金は時間額 739 円で、産業別最低賃金が適用されないすべての労働者とその使用者に適用されます。
なお、最低賃金には、精皆勤手当、通勤手当や残業手当、臨時に支払われる賃金などは含まれません。
2-4 賃金支払いの5つの原則
労働基準法では賃金の支払いについて次の5つの原則を定めています。(労働基準法第 24 条)。
① 通貨払いの原則
賃金は、法令又は労働協約で別に定めがある場合を除き、通貨で支払わなければなりません。口座振込みによって賃金を支払う場合には、一定の要件(労働者の意志に基づき、労働者の指定する本人名義の口座に振り込まれること、賃金の全額が所定の支払日の午前 10 時頃までには引き出せること等)を満たしていなければなりません。
② 直接払いの原則
賃金は、労働者本人に支払わなければなりません。労働者が未xx者の場合も、親や後見人に支払ったり、代理人に支払うことはできません。
③ 全額払いの原則
賃金から、所得税や社会保険料など、法令で定められているもの意外を控除する場合には、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、これがない場合は労働者の過半数を代表する者との間に、労使協定を結んでおくことが必要です。
④ 毎月1回以上払いの原則と、⑤一定期日払いの原則
賞与などの臨時的に支払われるものを除き、賃金は毎月1回以上、一定の期日に支払日を決めて支払わなければなりません。
また、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、使用者は平均賃金の6割以上の休業手当を支払わなければなりません(労働基準法第 26 条)。
2-5 減給の定めの制限
労働者が、職場規律あるいは企業秩序を乱した場合に、会社がその労働者を罰することを制裁といいます。制裁の種類には、口頭注意や始末書提出などの比較的軽いものから懲戒解雇にxxxまで、程度に応じて数種類定めていることが多いようです。このうち、労働者が規律違反したことを理由に、賃金の一部を減額することを減給といいます。
例えば、遅刻や早退をしたときに、その時間の賃金を減額することはノーワーク・ノーペイの原則により違法ではありませんが、その時間を越えて賃金を減額したり、「遅刻したこと」又は「早退したこと」そのものを理由に、ペナルティとして賃金をカットすることは、制裁としての減給にあたります。
減給の制裁を就業規則で定めるときには、減給する事案1件について、減給総額が平均賃金の1日
分の半額を超えてはなりません。また、事案が複数回生じた場合であっても、個々の減給額の合計が一賃金支払い期における賃金総額の 10 分 1 を超えてはなりません。これを超えて減給する必要がある
場合には、その次の賃金支払い期間まで減給を先送りしなければなりません。(労働基準法第 91 条)。
2-6 年俸制と賃金
年俸制とは、会社が、労働者の能力や仕事の成果、将来への期待などを総合的に評価して、1年間の総賃金(年俸)に反映させる賃金制度です。
「年俸制を採用すれば、残業代を支払わなくてすむ」と誤解している会社も多いようですが、原則的に年俸額とは年間所定労働時間だけ働いたときの賃金を想定していますから、時間外労働や休日労働を命じたときには、別途、割増賃金を支払う必要があります。
もし、一定の金額を割増賃金分として含んだうえで年俸額を決定するのであれば、あらかじめ年俸
○○円、うち割増賃金分○○円というように内訳を明らかにしておかなければなりません。
また、実際に働いてみた結果、事前に決められた割増賃金分を超えて働いた場合にも、割増賃金の不足分を追加して支払わなければなりません。
もちろん、年俸額が最低賃金額を下回ってはなりません。
2-7 会社が倒産して賃金が支払われないとき ━未払い賃金の立替払制度━
民法では、賃金や退職金などの労働債権は、他の債権者より優先して支払われる権利があると示しています。これを先取特権といいます(民法 308 条)。ですから、たとえ会社が倒産したからといっても、当然に賃金が支払われなくなるというわけではありません。しかし、支払われる権利があるとはいえ、会社が倒産したときに、何もしなくても賃金が支払われるという保障はありません。
そこで、賃確法(賃金の支払いの確保などに関する法律)では、企業の倒産に伴って、賃金が支払われないまま退職した労働者の生活の安定を図るために、国(独立行政法人労働者健康福祉機構)が未払い賃金の一部を、事業主に代って退職労働者に立替えて支払う未払賃金の立替払制度を定めています。
なお、この制度を利用しても未払賃金が全額支払われるわけではありませんし、すべての労働者の未払賃金が、この制度の対象となるわけではありませんので注意しましょう。(以下、労働者健康福祉機構ホームページより)
◇立替払を受けられる人
立替払の対象となるのは、次の二つの条件を満たす労働者です。
① 一年以上にわたって事業活動を行ってきた企業に労働者として雇用されていたが、企業の倒産に伴い退職し、未払賃金が残っている者(ただし、未払賃金の総額が 2 万円未満の場合は、立替払を受けられません)。
② 裁判所に対する破産等の申し立て日(破産等の場合)又は労働基準監督署長に対する倒産の事実
についての認定申請日(事実上の倒産の場合)の 6 ヶ月前の日から 2 年の間に、当該企業を退職した者。
◇立替払の対象となる未払賃金
立替払いの対象となる未払賃金とは、退職日の 6 ヶ月前の日から労働者健康福祉機構に対する立替払請求の日の前日までの間に支払期日が到来している「定期賃金」及び「退職手当」であって、未払いとなっているものです。
◇立替払を受けられる額
立替払を受けられる額は、未払賃金総額の 100 分の 80 の金額です。ただし、立替払の対象となる
未払賃金の総額には限度額が設けられていますので、この未払賃金の総額の限度額の 100 分の 80
が、立替払をする額の上限となります。
退職時の年齢 | 未払い賃金の限度額 | 立替払の上限額 |
45 歳以上 | 370 万円 | 370×0.8 296 万円 |
30 歳以上 45 歳未満 | 220 万円 | 220×0.8 176 万円 |
30 歳未満 | 110 万円 | 110×0.8 88 万円 |
* 未払い賃金の総額が 2 万円に満たないときは、立替払の対象とはなりません。
◇立替払の請求手続き
事実上の倒産の場合は、倒産した企業の本社を所轄する労働基準監督署長に、退職日の翌日から 6ヶ月以内の間に、企業が倒産して事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ、賃金支払い能力がないことについての認定を申請します。認定の後、労働基準監督署長に認定の申請日、認定の日、退職日、未払賃金の額及び立替払額等についての「確認通知書」の交付を申請します。
法律上の倒産(破産等)の場合は、裁判所、管財人等に、破産等の申立日・決定日、退職日、未払賃金額、立替払額、賃金債権の裁判所への届出額等を証明する「証明書の」交付を申請します。この証明が得られない事項については、労働基準監督署長に確認を申請します。
これらの手続きによって、確認通知書、証明書の交付を受けてから、倒産した日(事実上の倒産の認定日、破産手続開始等の決定日)の翌日から 2 年以内に、労働者健康福祉機構に立替払の請求をします。
2-8 男女雇用機会均等法
憲法では、すべて国民は法の下に平等であることを保障しています(第 14 条)。男女雇用機会均等法では、この憲法の理念に基づき、募集、採用から定年、退職に至るまでのさまざまな場面において、労働者が性別によって差別されることなく、また、女性労働者にあっては、母性を尊重されながら充実した職業生活を営むことができるようにするための措置について、次のように定めています。
◇性別を理由とする差別の禁止(第 5 条、6 条)
事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければなりません。
① 配置(業務の配分・権限の付与を含む)、昇進、降格、教育訓練
② 福利厚生(例:住宅資金や生活資金の貸付、住宅の貸与など)
③ 職種・雇用形態の変更
④ 退職の勧奨、定年、解雇、労働契約の更新
また、事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として差別的取扱いをしてはなりません。
◇間接差別の禁止(第 7 条)
① 募集又は採用にあたって、身長、体重又は体力を要件とすること
② コース別雇用管理における「総合職」の募集又は採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
③ 昇進にあたり、転勤経験があることを要件とすること
性別以外の事由を要件とする措置でも、次の3つの措置については、実質的に一方の性の構成員に不利益を与えるおそれがあることから、業務遂行上の必要などの合理的な理由がない場合には、間接差別として禁止されます。
◇女性のみに関する特例━ポジティブ・アクション(第 8 条)
女性労働者が男性と比較して相当程度少ない(女性が 4 割を下回っている)雇用管理区分等において、支障となっている事情を改善するため、募集、採用、配置、昇進、教育訓練、福利厚生等に関して、女性に有利な取扱いをすること(ポジティブ・アクション)は違法ではありません。
◇婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(第 9 条)
事業主は、女性労働者が婚姻、妊娠、出産したことや、産前産後休業を取得したこと、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置を求めたこと等を理由として、解雇その他の不利益取扱いをしてはなりません。妊娠中及び産後 1 年以内の解雇は、事業主が「妊娠・出産・産前産後休業等による解雇でないこと」を証明しない限り、無効となります。
◇セクシュアルハラスメントに関する雇用管理上の措置(第 11 条)
職場におけるセクシュアルハラスメントとは、職場の内外において行われる、他の者を不快にさせる性的な言動のことを言います。「性的な言動」をどのように受け止めるかは、個人間あるいは男女間
で差がありますが、原則的には、受け止めた本人がセクシュアルハラスメントであると判断すれば、その言動はセクシュアルハラスメントにあたります。
事業主は、女性に加え、男性に対するセクシュアルハラスメントも含めて、職場においてセクシュアルハラスメントが起きないように、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません。
〔事業主が講ずべき措置の内容(要約)〕(平成 18 年厚生労働省告示第 615 号)
① 就業規則にセクシュアルハラスメントに関する事項を規定し、資料を配布したり、研修などを行うことにより周知・啓発を図ること
② 相談・苦情窓口を定めること。
③ セクシュアルハラスメントが生じた際に、速やかに事実関係を確認し、適正に対処すること。
④ 労働者のプライバシーを守ること、その旨を労働者に周知すること。
⑤ 相談・苦情を申し出たことや事実関係の確認に協力したことを理由に、労働者に対して不利益な取扱いをしない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
◇妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(第 12 条、13 条)
事業主は、妊娠中及び出産後の女性労働者に、母子保健法の規定による保健指導や健康診査を受けるための時間を確保しなければなりません。また、女性労働者が保健指導や健康診査等に基づく指導事項を守ることができるように、勤務時間の変更や勤務の軽減等(時差通勤、勤務時間の短縮、休憩時間の延長、作業の制限、休業等)の必要な措置を講じなければなりません。
◇男女雇用機会均等法にかかる紛争が生じたとき(第 17 条、18 条)
都道府県労働局長は、労働者と事業主との間の紛争について、当事者の双方又は一方から解決の援助を求められた場合には、助言、指導、勧告を行うことができます。
また、紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合に、都道府県労働局長が紛争の解決のために必要であると認めたときには、紛争調整委員会において調停を行います。
これらの紛争解決の手続は男女労働者とも利用できます。
◇均等法の実効性を確保するために(第 29 条、30 条、33 条)
厚生労働大臣及び都道府県労働局長は、男女雇用機会均等法の法律の施行にあたって必要があると認めるときは、事業主に対し、報告を求め、助言、指導、勧告をすることができます。厚生労働大臣の勧告に従わない事業主については、企業名の公表を行うことができます。
また、厚生労働大臣が報告を求めたにも関わらず、事業主が報告しない場合、又は虚偽の報告をした場合は、罰則(過料)が科されます。
2-9 母性を守るために━産前産後の休業・生理日の休暇━
労働基準法や男女雇用機会均等法では、働く女性の母性を保護するための規定を設けています。
◇産前産後休業(労働基準法第 65 条第 1 項、第 2 項)
出産予定の女性労働者は、出産予定日の 6 週間(多胎妊娠は 14 週間)前から、産前の休業を会社へ請求することができます。
また、産後の休業は、出産の翌日から原則 8 週間で、会社に請求しなくても取得することが保障されています。産前・産後休業中の賃金は、必ずしも有給でなければならないという定めはありませんので、賃金が支払われるかどうかは、就業規則等の定めに従います。
なお、労働者が健康保険の被保険者であれば、健康保険法に基づいて、出産手当金及び出産育児一時金が支給されます。
◇妊産婦の就業制限(同法第 64 条の 3、第 65 条第 3 項)
使用者は、妊産婦(妊娠中の女性及び産後 1 年を経過しない女性)に重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務、その他妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせることはできません。
また、妊娠中の女性からほかの軽易な業務に変えてくれるように請求があったときは、業務を転換させなければなりません。
◇労働時間、時間外・休日・深夜業の制限(同法第 66 条)
使用者は、妊産婦から請求があったときには、1 週 40 時間、1 日 8 時間を超えて働かせることはできません。また、妊産婦から請求があったときには、時間外・休日労働及び深夜業をさせてはなりません。
◇育児時間(同法第 67 条)
1 歳に満たない子を育てる女性労働者から請求があったときには、休憩時間のほかに、1 日 2 回それ
ぞれ少なくとも 30 分の育児時間を与えなければなりません。
◇生理日の休暇(同法第 68 条)
生理日の就業が著しく困難な女性労働者から休業の申し出があったときには、会社はその労働者を就業させてはなりません。
厚生労働省の通達では、女性労働者から請求があったときには、原則的には特別の証明がなくても休暇を与えること、どうしても何らかの証明が必要であると判断される場合であっても、医師の診断書のような厳格な証明を求めるのではなく、例えば同僚の証言程度の簡単な証明で対応するよう示しています。
また通達では、「使用者が就業規則に女性労働者が請求することができる休暇の日数を制限してはならないが、休暇のうち、有給扱いとする日数を定めておくことは差し支えない」と示しています。
2-10 パートタイマーにも労働法は適用される
よく街中に貼られている募集広告を見ると、「主婦パート」「学生アルバイト」という表現を目にすることがありますが、法律的にはパート(タイマー)とアルバイトとはどのように異なるのでしょうか。
「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称「パートタイム労働法」)で定義されている「短時間労働者」とは、「1 週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用されている通常の労働者と比べて短い労働者」のことを指しています。ですから、労働法上は、パートタイマーとかアルバイトという区別は特にしていないのです。ただし、会社によっては、パートタイマーとアルバイトで労働条件の違いがある場合もありますので注意しましょう。
◇パートタイマーも労働法が適用される
パートタイマーも労働者ですから、労働基準法をはじめ、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働者保護法令が適用されます。また、育児・介護休業法や雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法などは、要件を満たしていれば適用されます。
「パートタイマーには年次有給休暇を与えなくてよい」あるいは「パートタイマーは健康保険に加入させなくてよい」と思っている使用者もいるかもしれませんが、パートタイマーであっても要件を満たしていれば年次有給休暇を与えなければなりませんし、雇用保険や、健康保険・厚生年金にも加入させなければなりません。
会社に就業規則などの定めがあれば、パートタイマーもこれにしたがって働きます。就業規則は、特段の定めがない限り、すべての就業員に同一の就業規則が適用されますが、パートタイマーなどに、正社員とは異なる労働条件を定めるのであれば、正社員向けの就業規則に特別な規定を設けるか、パートタイマー向けの就業規則を別途作成する必要があります。
◇パートタイマーの労働条件
前述のとおり、労働基準法では、パートタイマーを含めて、労働者を雇い入れる際には、労働条件を明示することが使用者に義務付けられています。特に、重要な労働条件については文書で明示することとされていますが、パートタイム労働法では、これらに加えて、昇給・退職手当・賞与の有無についても文書により明示することを義務付けています。
ところで、パートタイマーとして労働契約を結んだのにもかかわらず、実際には、労働時間や労働日数が、正社員とほとんど変わらないという労働者も多く見受けられます。
「パート」という名前から「拘束時間が短くて済む」ということを期待しているパートタイマーも少なくありません。安易に残業や休日労働を命じればトラブルの原因となります。
また、実態としては正社員と同様の働き方をしているのにもかかわらず、パートタイマーであるために正社員と同等の権利が行使できなかったり、恩恵が受けられないということがないように、使用者は、通常の労働者との均衡を考慮して処遇しなければなりません。
第 3 章 労働時間と休日・休暇
3-1 労働時間は週40時間制が原則
使用者は、労働者を、休憩時間を除いて 1 週 40 時間、1 日 8 時間(これを法定労働時間といいます)を超えて働かせてはなりません(労働基準法第 32 条)。
法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合には「時間外・休日労働に関する協定(36 協定)」を締結する必要があります。
商業 | 卸売業、小売業、理美容業、倉庫業、その他の商業 |
映画・演劇業 | 映画の映写、演劇、その他興行の事業 |
保健衛生業 | 病院、診療所、社会福祉施設、浴場業、その他の保健衛生業 |
接客娯楽業 | 旅館、飲食店、ゴルフ場、公園・遊園地、その他の接客娯楽業 |
なお、特例措置対象事業場(常時 10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業及び接客娯楽業の事業場)では、1 日 8 時間、1 週 44 時間とする特例措置が認められています。
*事業場の規模(人数)は企業全体の規模をいうのではなく、工場、支店、営業所等の個々の事業場の規模をいいます。
3-2 変形労働時間制
労働時間の原則は 1 週 40 時間、1 日 8 時間です。しかし、業務量に繁閑の波があり、ある程度、繁忙期と閑散期の周期を予測できる事業場においては、この原則を守ることにより、かえって業務の効率を悪くしてしまうことがあるかもしれません。
変形労働時間制は、労働者と使用者が、自らの工夫で労働時間を弾力化し、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって、労働時間を短縮することを目的とする制度です。
◇1 ヶ月単位の変形労働時間制(労働基準法第 32 条の 2)
1 ヶ月単位の変形労働時間制とは、1 ヶ月以内の一定期間を平均して、1 週間の労働時間が 40 時間
(特例事業場は 44 時間)以下であれば、特定の日や週に、1 日及び 1 週間の法定労働時間を上回る所定労働時間を設定することができる制度です。例えば、月初は比較的余裕があり月末に残業が多くなるような事業場では、月初には所定労働時間を短く、月末に所定労働時間を長く設定することによって、効率的な労働時間管理を行うことができるようになります。この制度は、就業規則に規定することによって導入できますが、労使協定を締結し、労働基準監督署長に届け出ることによっても導入できます。
◇1 年単位の変形労働時間制(同法第 32 条の 4)
1 年単位の変形労働時間制とは、1 年以内の一定期間を平均して、1 週間の労働時間が 40 時間以下であれば、1 日 10 時間まで、1 週 52 時間まで働かせることができる制度です。特に、特定の季節や特定の月などに業務が立て込んでいる事業場では、繁忙期には所定労働時間を長く、閑散期には所定労働時間を短く設定することで、年間の総労働時間の短縮を図ることができます。制度の導入にあたっては、労使協定を締結して労働基準監督署長に届け出ておくことと、就業規則等に明記しておくことが必要です。
◇1 週間単位の非定型的変形労働時間制(同法第 32 条の 5)
1 週間単位の非定型的変形労働時間制とは、日によって業務に著しい繁閑が生じることが多く、しか
も直前になるまで状況がわからないため、就業規則等に労働時間を定めておくことができない 30 人未満の小売店、旅館、料理店及び飲食店において、1 週間の労働時間が 40 時間以下の範囲内であれば、 1 日 10 時間まで働かせることができる制度です。制度の導入にあたっては、労使協定を締結して労働基準監督署長に届け出ておくこと、就業規則等に明記しておくこと、前の週までに各日の労働時間を書面で通知することが必要です。
◇フレックスタイム制(同法第 32 条の 3)
フレックスタイム制とは、1 ヶ月以内の一定期間(清算期間)の総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者がその範囲内で、各日の始業及び終業の時刻を自由に決められる制度です。フレキシブルタイム(いつ出社又は退社してもよい時間帯)とコアタイム(必ず勤務しなければならない時間帯)を設ける場合には、その開始・終了時間を定めておかなければなりません。制度の導入にあたっては、労使協定の締結が必要です。
3-3 みなし労働時間制
使用者には労働時間を適切に把握する責務がありますが、常時社外にいる営業担当者や、仕事の進行管理を大幅に任せている研究員のように、労働者の担当職務によっては使用者の具体的な指揮監督が及ばないため、労働時間を正確に算定することが困難な場合があります。
そこで労働基準法では、このような労働者を対象に、ある一定の時間だけ働いたものとみなす、みなし労働時間制の適用を認めています。
◇事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法第 38 条の 2)
事業場外労働のみなし労働時間制とは、労働者が、営業など会社の外で仕事をするために労働時間の算定をすることが困難な業務について、通常の所定労働時間だけ働いたものとみなすという制度です。特段の定めがなければ所定労働時間を超えて働いたものとはみなされませんが、その業務を遂行するために、通常は所定労働時間を超えて働かなければならない場合には、「その業務の遂行に通常必要とされる時間」だけ働いたものとみなします。
また、労使協定を締結したときには、その労使協定で定めた時間を「その業務の遂行に通常必要とされる時間」とみなします。
◇裁量労働制
裁量労働制とは、業務の遂行手段や時間配分について、使用者が細かく指示するのではなく、労働者本人の裁量にまかせ、実際の労働時間数とは関係なく、労使の合意で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。裁量労働制には、次の 2 つのタイプがあります。
○専門業務型裁量労働制(同法第 38 条の 3)
① 新商品、新技術の研究開発又は人文科学、自然科学に関する研究の業務
② 情報処理システムの分析又は設計の業務
③ 新聞や出版業務での記事の取材や編集又は放送番組制作のための取材や編集の業務
④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告などのデザイナーの業務
⑤ 放送番組、映画などのプロデューサー又はディレクターの業務
⑥ 厚生労働大臣が指定する業務(コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲーム用ソフトウェアの創作、証券アナリスト、金融アナリスト、大学での教授研究、公認会計士、弁護士、一級・二級建築士、木造建築士及び不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士)
専門業務型裁量労働制とは、専門性が高く、業務の遂行手段や時間配分に関する具体的な指示をすることが難しい業務については、労使協定で労働時間を定め、労働基準監督署長に届け出ることによって、実際の労働時間に関係なく協定で定めた時間だけ働いたものとみなす制度です。専門業務型裁量労働制の対象となるのは、次の業務で働く労働者です。
○企画業務型裁量労働制(同法第 38 条の 4)
企画業務型裁量労働制の対象となるのは、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析を、自らの裁量で行う労働者です。制度を導入しようとする事業場では、労使委員会を設置して、その 5 分の 4 以上の多数の決議によって制度の内容を決議し、労働基準監督署長へ届け出なければなりません。また、実際に制度を適用するためには、決議だけではなく、対象となる個々の労働者の同意を得ることなどが必要です。
3-4 休憩時間は全員いっせいに、その利用は自由に
休憩時間とは、労働者の権利として、労働から離れることを保障している時間のことを言います。使用者は、労働時間が 6 時間を超える場合には少なくとも 45 分、8 時間を超える場合には少なくとも
1 時間の休憩を、労働時間の途中で与えなければなりません。
労働基準法では、休憩時間について、次の 3 つの原則が定められています。(第 34 条)。
休憩時間は
① 労働時間の途中に
② 一斉に
③ 自由に利用させること
休憩時間には、いわゆる「手待ち時間」(実際に作業していないけれども、業務の指示を受けたときにはすぐ就労できるようにするための待機時間)は含まれません。また事業場によっては、昼休み時間中の電話や来客に備えて、「昼休み当番」として労働者を待機させておくことがありますが、この場合、労働者は自由に休憩時間を利用することができませんので、使用者は、昼休み時間とは別に、休憩時間を与えなければなりません。
また、運輸交通業、商業、通信業、接客娯楽業等については、業務の性質上、休憩時間を一斉に与えなくてもよいことになっています。その他の業種では、労使協定で、一斉に休憩を与えない労働者の範囲と休憩時間の与え方を定めておけば、一斉に与えないことも可能です。
3-5 労働から離れる日 ━ 休日 ━
労働契約上、労働義務を免除されている日を休日といいます。使用者は、労働者に毎週少なくとも 1
回、あるいは 4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えなければなりません(労働基準法第 35 条)。労働基準法には、「何曜日を休みとしなければならない」というような定めはありませんが、労働条件明示の観点から、日曜日なら日曜日と休日を特定して、就業規則に定めておくことが必要です。
ところで、使用者は業務の必要に応じて労働者に休日出勤を命じたり、また、その代わりに別の日に休みを与えたりすることがあります。この休みの与え方には二つの方法があり、ひとつは、事前に休日と労働日を変更しておく休日の振替、もうひとつは、単に休日出勤したことに対して恩恵的に休日を与える代休という方法があります。「休日の振替」と「代休」は似たような制度ですが、どちらの方法を選ぶかによって、割増賃金の支払い義務の有無や割増率など労働基準法上の取り扱いが異なってきます。
◇休日の振替
労働日と休日を交換することを休日の振替といいます。「休日の振替」の場合、もとの休日が労働日になったので、休日に働かせても割増賃金を支払う義務は生じませんし、8 時間を超えて働かせた場合も、通常の時間外労働の計算方法(2 割 5 分増し以上)で計算した割増賃金を支払えばよいことになります。
休日の振替を行うためには、次の要件が必要です。
○ 終業規則等に、「業務上必要が生じたときには、休日を他の日に振り替えることがある」等の規定をもうけること。
○ あらかじめ、休日を振り替える日を特定しておくこと。
○ 遅くとも、前日の勤務時間終了までには、当該労働者に通知しておくこと。
休日の振替は、原則的には同一の週の中で行いますが、同一の週に予定どおり振替休日を取らせることができず、翌週に持ち越された場合は、〔図 3〕のように処理することになります。
なお、休日の振替について、就業規則等に定めがない場合には、労働協約の規定又は労働者の個別合意が必要です。
◇代休
一般的に、休日労働や、長時間の時間外労働、深夜労働が行われた場合に、その恩恵的な措置として、他の労働日の労働義務を免除するものを代休といいます。代休は、必ず与えなければならないとうものでも、いつまでに代休を与えなければならないというものでもありません。しかし、体を休めることが代休の本来の目的ですから、なるべく早目に与えることが望ましいでしょう。
代休の場合、改めて別の日に休みを与えても、休日労働をしたということに変わりはありませんので、休日労働した分の賃金は、休日労働の割増率(3 割 5 分増し以上)で計算した割増賃金を支払わなければなりません(〔図 4〕参照)。
なお、休日労働したことによって労働義務を免除した代休日において、有給とするか無給とするかは、就業規則に定めておく必要があります。
図1 36 協定にもとづいて休日労働をさせたとき
所定労働時間 1 日 8 時間、日給 10,000 円、週休 2 日制(日曜日は法定休日、土曜日は法律を上回る法定外休日)において、日曜日に休日労働した場合
8 時間
(35%増)
8 時間 8 時間 8 時間 8 時間
8 時間
日 月 火 x x 金 土
(法定休日) (法定外の休日)
日曜日の 8 時間分は休日労働なので、通常の賃金の 3 割 5 分増し以上の賃金(13,500 円以上)を支払うことになる。
図2 休日の振替1
日曜日を労働日とし、木曜日を振り替え休日とした場合
8 時間 | 8 時間 | 8 時間 | 8 時間 |
8 時間
日 月 火 x x 金 土
(法定休日→労働日) (労働日→振替休日)
当初の休日である日曜日は労働日になったので、休日労働させたことにはならない。よって、割増賃金も生じない
図3 休日の振替2
日曜日を労働日とし、木曜日を振替休日としたが、予定通り振り替えることができず、翌週の月曜日に振替休日を与えた場合
8 時間
8 時間
8 時間
8 時間
8 時間
25%増
8 時間
8 時間
日 月 火 x x 金 土 日 月 火
(法定休日→労働日) (労働日→振替休日→労働日) (労働日→振替休日)当初の休日である日曜日は労働日になったので、休日労働させたことにはならない。
木曜日に振替休日を取らせることができなかったので、この週の労働時間は 40 時間超えて勤務
させたことになるが、この 40 時間を超えた 8 時間分は、通常の賃金の 2 割 5 分増し以上の賃金
(12,500 円以上)を支払わなければならない。
図4 代休
日曜日を労働日とし、木曜日に代休を与える場合
8 時間
(35%増)
日
8 時間
月
8 時間
火
8 時間
x
x
(労働日→代休)
金
土
(法定休日→休日労働)
代休を与えても、日曜日は休日労働として扱うことに変わりはないので、日曜日の 8 時間分は、
通常の賃金に加えて 3 割 5 分増し以上の賃金(13,500 円以上)を支払わなければならない。なお、代休日の賃金を有給とするか、無給とするかは、就業規則等の定めによる。
8 時間
3-6 残業・休日労働
労働時間は、1 週 40 時間、1 日 8 時間(法定労働時間)が原則です。使用者が、労働者に残業や休日労働を命じるためには、あらかじめ会社(工場や営業所に分かれているときはその事業場ごと)と、労働者の過半数が加入している労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数が加入する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者とのあいだに労使協定を締結し、これを労働基準監督署長に届け出ておかなければなりません。この労使協定のことを、労働基準法第 36 条に基づき 36協定(サンロク協定、サブロク協定など)と呼んでいます。
厚生労働省では、「時間外労働や休日労働は無制限に認めるべきものではなく、あくまで臨時的なものである」という趣旨から、「時間外労働の限度に関する基準」を示しています。36 協定には、法定労働時間を超えて延長することができる上限時間を記入しますが、その時間は、最も長い場合であっても、この「時間外労働の限度に関する基準」で示した限度時間を超えることはできません。
しかしならが、36 協定を締結するだけでは、個々の労働者に残業や休日労働を義務付けることはできません。使用者は、36 協定のほかに、労働協約や就業規則、あるいは個別の労働契約等において、
「業務上の必要のあるときは 36 協定の範囲内で時間外労働や休日労働を命令できる」ということを明らかにしておくことが必要です。
〔時間外労働の限度に関する基準〕
① 業務区分の細分化
36 協定の締結に当たっては、安易に臨時の業務などを予想して対象業務を拡大したりすることのないよう、業務の区分を細分化することにより時間外労働をさせる業務の範囲を明確にしなければなりません。
② 一定期間の区分
労使は 36 協定で、1 日についての延長時間のほか、1 日を超え 3 ヶ月以内の期間及び 1 年間に
ついての延長時間を定めなければなりません。
③ 延長時間の限度
36 協定で定める延長時間は、最も長い場合でも、次の表の限度時間を超えないものとしなければなりません。
○ 一般労働者の場合
期間 | 限度時間 | 期間 | 限度時間 |
1 週間 | 15 時間 | 1 ヶ月 | 45 時間 |
2 週間 | 27 時間 | 2 ヶ月 | 81 時間 |
4 週間 | 43 時間 | 3 ヶ月 | 120 時間 |
1 年間 | 360 時間 |
○ 対象期間が 3 ヶ月を超える 1 年単位の変形労働時間制の対象者の場合
期間 | 限度時間 | 期間 | 限度時間 |
1 週間 | 14 時間 | 1 ヶ月 | 42 時間 |
2 週間 | 25 時間 | 2 ヶ月 | 75 時間 |
4 週間 | 40 時間 | 3 ヶ月 | 110 時間 |
1 年間 | 320 時間 |
3-7 残業・休日労働の割増賃金
使用者が、労働者を①法定労働時間を超えて働かせたとき(時間外労働)、②法定休日に働かせたとき(休日労働)、③午後 10 時から午前 5 時までの深夜に働かせたとき(深夜労働)には、政令で定め
られた割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働と深夜労働の割増率は 2
割 5 分以上で、休日労働の割増率は 3 割 5 分以上となっています(労働基準法第 37 条第 1 項・第 3
項)。
◇時間外労働と割増賃金の計算例
例えば、所定労働時間が 7 時間の労働者に、1 時間残業をさせた場合、その 1 時間は法定労働時間(1
日 8 時間)内の残業(法廷内残業)であることから、その 1 時間については通常の賃金(時給 1,000円の場合)1,000 円を支払えばよく、法内残業であっても割増賃金を支払うかどうかは、会社の判断に任されます。
法定労働時間を超えて働かせたときには、超えた時間について、使用者は通常の時間単価の 2 割 5
分増し(時給 1,000 円の場合)1,250 円以上の賃金を支払わなければなりません。
また、深夜(午後 10 時から午前 5 時まで)に働かせたときには、2 割 5 分増し以上、休日(1 週 1
回又は 4 週 4 日の法定休日)労働をさせたときには 3 割 5 分増し以上の割増賃金を支払わなければなりません。時間外労働と深夜労働、休日労働と深夜労働が重なったときは、次のモデルのように割り増しされます。
〔一般的な時間外労働・休日労働の割増率〕
(1 日の所定労働時間が 7 時間、時給 1,000 円の場合)
<労働日>
22:00
翌日 5:00
18:00
9:00
17:00
時間外労働
25%以上
深夜労働
25%以上時間外労働 25%以上
所定労働時間 7 時間 所定時間外労働時間 1 時間
(休憩 1 時間) (割増分の支払いは任意)
法定労働時間(8 時間) 時給 1,250 円以上 時給 1,500 円以上時給 1,000 円以上
<労働日>
22:00
24:00
翌日 5:00
9:00
深夜労働 25%以上
深夜労働 25%以上
休日労働 35%以上
休日労働 35%以上
時間外労働 25%以上
時給 1,350 円以上
時給 1,600 円以上
時給 1,500 円以上
◇割増賃金の算定基礎除外部分
次の手当は割増賃金の計算の基礎となる賃金から除外できます(同法第 37 条第 4 項、同法施行規則
第 21 条)。
①家族手当 ②通勤手当 ③別居手当 ④子女教育手当 ⑤住宅手当
⑥臨時に支払われた賃金(結婚祝金、見舞金など突発的な事由によるもの)
⑦1 ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与又はそれに類似するもの)
ただし、家族手当、通勤手当、住宅手当は、どの労働者にも一律に支払われるような手当である場合には、割増賃金の基礎として参入します。
3-8 年次有給休暇は労働者が自由に利用できる
働かなければならない日に休んだら、その分の賃金は支払われないというのが原則ですが(ノーワーク・ノーペイの原則)、年次有給休暇は、所定の休日以外に仕事を休んでも、賃金を支払ってもらうことができる休暇です。年次有給休暇は、要件を満たしていれば、法律上、当然に生じる権利であって、労働者の請求を待って初めて生じるものではありません。また、会社は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしてはなりません(労働基準法第 136 条)。
◇年次有給休暇の付与日数
使用者は、労働者を雇い入れてから 6 ヶ月間継続勤務していて、全労働日(雇用契約や就業規則等
で労働日として定められている日)の 8 割以上勤務した労働者には、少なくとも 10 日間の年次有給休
暇を与えなければなりません(労働基準法第 39 条第 1 項)。10 日間の年次有給休暇は、何回かに分け
て与えても、まとめて与えてもかまいません。同じ会社で働き続ける場合には、少なくとも最高 20 日
間になるまで、勤務年数に応じて加算した年次有給休暇を与えなければなりません(同条第 2 項)。
〔年次有給休暇の付与日数〕
勤続年数 | 6 ヶ月 | 1 年 6 ヶ月 | 2 年 6 ヶ月 | 3 年 6 ヶ月 | 4 年 6 ヶ月 | 5 年 6 ヶ月 | 6 年 6 ヶ月以上 |
付与日数 | 10 日 | 11 日 | 12 日 | 14 日 | 16 日 | 18 日 | 20 日 |
6 ヶ月に満たない短期契約を結んでいる労働者であっても、契約を更新して、6 ヶ月以上継続して勤務するようになった場合には、使用者は、年次有給休暇を与えなければなりませんし、さらに継続雇用が続くときには、6 ヶ月を超えて継続勤務をした 1 年ごとに、新たな年次有給休暇を付与しなければなりません。
◇年次有給休暇の取得と時季変更x
x次有給休暇を取得するには、事前に取得希望日を申し出ることが必要ですが、利用目的は問われることはありません。使用者は労働者が請求した日に、年次有給休暇を与えなければなりません(同条第 4 項)。
ただし、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者は、年次有給休暇を他の日に変更する権利があります(同条第 4 項但書)。これを時季変更権といいます。
ここでいう「事業の正常な運営を妨げる」というのは、「誰がみても、そのときに労働者に会社を休まれたら、会社が正常に運営できない」という具体的な事情があるときです。ですから、単に忙しいからという理由だけで、労働者が休みたい日に休ませない、ということはできません。
なお、あらかじめ労使で協定を結び、休暇の計画的付与を行うことができます。ただし、計画的付与の対象とすることができるのは、各労勝者の持っている年次有給休暇の日数のうち、5 日を越える部分に限ります。
◇年次有給休暇の時効
年次有給休暇の時効は付与日から起算して 2 年です(同法第 115 条)。年次有給休暇をその年度内に全部とらなかった場合、残りの休暇は翌年度に限り請求することができます。
3-9 パートタイマーなどへの年次有給休暇の比例付与
労働基準法では、パートタイマーなど、週の所定労働時間が短い労働者についても、6 ヶ月間継続勤務し、全労働日の 8 割以上出勤した場合には、年次有給休暇の対象となります。たとえば、1 回の雇用期間が 1 ヶ月や 3 ヶ月など、雇用期間を定めて雇い入れる場合であっても、契約更新によって 6 ヶ月以上勤務したときには、所定労働日数に応じて年次有給休暇を比例付与しなければなりません(労働基準法第 39 条第 3 項)。
比例付与の対象となるのは、週の所定労働時間が 30 時間未満で、所定労働日数が週 4 日以下の労働
者です。パートタイマー等であっても、①週の所定労働時間が 30 時間以上の労働者、②週所定労働日
数が 5 日以上(または 1 年間の所定労働日数が 217 日以上)の労働者については、通常の労働者と同じ日数の年次有給休暇を与えなければなりません。
〔パートタイマー等への年次有給休暇の付与日数〕
短時間労働者の週所定労働時間 | 短時間労働者の週所定労働日数 | 1 年間の所定労働日数(週以外の期間によって、労働日数を定めている場合) | 継続勤務期間に応じた年次有給休暇の日数 | ||||||
6 ヶ月 | 1 年 6 ヶ月 | 2 年 6 ヶ月 | 3 年 6 ヶ月 | 4 年 6 ヶ月 | 5 年 6 ヶ月 | 6 年 6 ヶ月 | |||
以上 | |||||||||
30 時間以上 | 10 日 | 11 日 | 12 日 | 14 日 | 16 日 | 18 日 | 20 日 | ||
30 時 間未満 | 5 日以上 | 217 日以上 | |||||||
4 日 | 169 日~216 日 | 7 日 | 8 日 | 9 日 | 10 日 | 12 日 | 13 日 | 15 日 | |
3 日 | 121 日~168 日 | 5 日 | 6 日 | 6 日 | 8 日 | 9 日 | 10 日 | 11 日 | |
2 日 | 73 日~120 日 | 3 日 | 4 日 | 4 日 | 5 日 | 6 日 | 6 日 | 7 日 | |
1 日 | 48 日~72 日 | 1 日 | 2 日 | 2 日 | 2 日 | 3 日 | 3 日 | 3 日 |
第 4 章 育児・介護休業法
4-1 育児関連
育児休業及び介護休業については、育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)で定められています。
・保育所に入所を希望しているが、入所できない場合
・子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降子を養育する予定であった者が、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合
育児休業は、原則として 1 歳に満たない子を養育する労働者からの申し出により、子の 1 歳の誕生日の前日までの期間で、一人の子につき原則1回取得することができます。ただし、次の場合には、子が1歳6ヶ月に達するまで、育児休業が延長できます。
休業期間を有給にするか、無給にするかは、就業規則等の定めに従います。また、雇用保険に加入している労働者には、国から給付金が支給されます。
◇育児休業の対象者(第5条、第6条第一項)
育児休業は、男女労働者とも事業主に申し出ることにより休業することができます。ただし、「日々雇用される労働者」は対象から除外されます。
また、労使協定により、次の労働者を対象から除外できます。
・雇用されてから1年未満の者
・配偶者が常に子供を養育できる者。ただし、配偶者が産前 6 週間(多胎妊娠の場合は 14 週間)、
産後 8 週間以内の場合、又は配偶者が病気で子の養育ができない場合は除外できない。
・休業申し出から 1 年以内に雇用関係が終了する者
・1 週間の所定労働日数が 2 日以内の者
なお、「期間を定めて雇用される労働者」についても、1 年以上の雇用実績があり、かつ育児休業を終了した後も引き続き雇用されることが明らかな場合など、一定の条件を満たせば、育児休業の取得が可能です。
◇育児休業の申し出等の手続き(第 6 条第 3 項、第 7 条第 1 項、第 3 項、第 8 条第 1 項、第 2 項)
休業の申し出は、休業の開始予定日・終了予定日など、一定の事項を示して 1 歳までの育児休業に
ついては 1 ヶ月前までに、1 歳から 1 歳 6 ヶ月までの育児休業については、1 歳の誕生日の 2 週間前までに行う必要があります。なお、休業申し出の撤回は、休業開始予定日の前日までであれば、理由を問わずに行えますが、1 度撤回すると、同じ子について、原則として再度休業の申し出はできません。
◇事業主の義務(第 6 条第 1 項、第 10 条)
対象となる労働者から育児休業の申し出があったときには、事業主は、これを拒むことはできません。また育児休業の申し出をしたことや、実際に育児休業をとったことを理由として、労働者を解雇したり、次のような不利益な取り扱いをしてはなりません。
・退職するように強要すること、正社員からパートタイマーなどに契約内容を変更するように強要すること
・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
・自宅待機を命じること
・降格させること
・減給や、賞与等で不利な算定を行うこと
・不利益な配置換えを行うこと
・就業環境を害すること
◇時間外労働の制限(第 17 条)
小学校に入学する前の子を養育する労働者は、1 ヶ月 24 時間、1 年 150 時間を超える時間外労働を免除してもらうように請求することができます。
◇勤務時間短縮等の措置(第 23 条第 1 項、第 24 条第 1 項)
事業主は、1 歳に達するまでの子を養育しながら働いている労働者に対しては、労働者からの申し出に基づき勤務時間を短縮する等、働きながら子育てをしやすくするための措置を講じなければなりません。この措置は、一定期間、育児休業した後で、職場に復帰した労働者に対しても適用されます。
また、1 歳から 3 歳に達するまでの子を養育しながら働いている労働者に対しては、労働者からの申し出に基づき、育児休業を延長したり、勤務時間を短縮するなど、働きながら子育てをしやすくするための措置を講じなければなりません。
〔勤務時間の短縮等の措置〕
・短時間勤務制度
・フレックスタイム制
・始業・終業時刻を繰り上げ、繰り下げる制度
・所定労働時間を超えて労働をさせない制度
・託児施設の設置運営その他これに準じる便宜の供与
さらに、3 歳から小学校に入学するまでの子を養育しながら働いている労働者に対しては、育児休業の制度又は勤務時間短縮等の措置に準じて、次のとおり、必要な措置を講じるように努めなければなりません。
◇看護休暇(第 16 条の 2、第 16 条の 3)
事業主は、小学校に就学する前の子を養育する労働者から申し出があったときには、子どもが怪我をしたり、病気になったときに世話をするための看護休暇を、年次有給休暇とは別に与えなければなりません。日数は子の人数にかかわらず、労働者 1 人につき 1 年に 5 日です。有給か無給かは労使の取り決めによります。育児休業とは異なり、配偶者が専業主婦(夫)である労働者も、看護休暇を取得できますが、労使協定により勤続 6 ヶ月未満の労働者及び週の所定労働日数が 2 日以下の労働者を対象外とすることができます。
◇労働者の配置に関する配慮(第 26 条)
事業主は、義務教育終了前の子を持つ労働者を転勤させようとするときには、子の養育の状況を把握し、労働者本人の意向を十分に汲み取り、転勤させた場合に子の養育を行える代替手段があるかどうかなどの配慮をしなければなりません。
4-2 介護関連
◇介護休業制度
介護休業は、負傷、疾病、身体上もしくは精神上の障害により、2 週間以上にわたって常時介護を必要とする状態(「要介護状態」といいます。)にある家族を介護するための休業です。対象となる家族一人につき、最長で通算 93 日間、複数回休業することができます。介護休業の対象となる家族は、その労働者の配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、xです。
休業期間を有給にするか、無給にするかは、就業規則等の定めに従います。また、雇用保険に加入している労働者には、国から給付金が支給されます。
◇介護休業の対象者(第 11 条、第 12 条第 2 項)
介護休業は、男女労働者とも事業主に申し出ることにより休業することができます。
・雇用されてから 1 年未満の者
・休業の申し出から 93 日以内に雇用関係が終了することが明らかな者
・1 週間の所定労働日数が 2 日以内の者
ただし、「日々雇用される労働者」は対象から除外されます。また、労使協定で定めた場合は、次の労働者を対象から除外することができます。
また、「期間を定めて雇用される労働者」についても、1 年以上の雇用実績があり、かつ介護休業終了後も継続して雇用されることが明らかである場合など、一定の条件を満たせば、介護休業の取得が可能です。
◇介護休業の申し出等の手続き(第 11 条第 2 項、第 13 条、第 14 条第 1 項)
休業の申し出は、休業の開始予定日・終了予定日など、一定の事項を示して、2 週間前までに行う必要があります。また、休業終了予定日は、理由を問わず、1 回だけ繰下げ変更ができます。なお、休業の申し出の撤回は、休業開始予定日の前日までであれば理由を問わずに行えます。
◇事業主の義務(第 12 条第 1 項、第 16 条)
対象となる労働者から介護休業の申し出があったときには、事業主は、これを拒むことはできません。また、介護休業の申し出をしたことや、実際に介護休業をとったことを理由に労働者を解雇したり、次のような不利益な取り扱いをしてはなりません。
・退職するように強要すること、正社員からパートタイマーなどに契約内容を変更するように強要すること
・期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
・自宅待機を命じること
・降格させること
・減給や、賞与等で不利な算定を行うこと
・不利益な配置換えを行うこと
・就業環境を害すること
◇時間外労働の制限(第 18 条)
要介護状態にある家族を介護する労働者は、1 ヶ月 24 時間、1 年 150 時間を超える時間外労働を免除してもらうように請求することができます。
◇勤務時間短縮等の措置(第 23 条第 2 項、第 24 条第 2 項)
事業主は、要介護状態にある家族を介護しながら働いている労働者に対しては、労働者からの申し出に基づき、勤務時間の短縮など、働きながら家族を介護しやすくするための措置を講じなければなりません。
また、家族を介護する労働者に対しては、介護休業の制度又は勤務時間短縮等の措置に準じて、その介護を必要とする期間、回数に配慮した必要な措置を講じるように努めなければなりません。
◇労働者の配置に関する配慮(第 26 条)
事業主は、労働者を転勤させようとするときに、転勤によって、働きながら家族を介護することが困難となる労働者がいるときには、労働者の家族の介護の状況を把握し、労働者本人の意向を十分に汲み取り、転勤させた場合に労働者が家族の介護が行える代替手段があるかどうかなどの配慮をしなければなりません。
第 5 章 派遣労働
5-1 派遣労働とは
派遣労働とは、雇用契約を結んだ会社(派遣元)が労働者派遣契約を結んでいる依頼主(派遣先)へ労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令にしたがって働くという働き方です。
派遣先は、労働者から労務の提供を受けた後に派遣元に派遣料金を支払い、派遣元は、派遣料金の中から派遣労働者へ賃金を支払います。
派遣労働は、雇用契約を結んだ会社の指揮命令で働く一般的な働き方とは異なり、指揮命令をする会社と賃金を支払う会社が別であるため、いろいろな問題が生じることがあります。
そこで、派遣労働者の雇用の安定、福祉の増進を図るため、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)及び派遣元指針(派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針)、派遣先指針(派遣先事業主が講ずべき措置に関する指針)を定め、派遣元と派遣先がそれぞれ講じるべき措置等を示しています。
◇登録型派遣労働者と常用型派遣労働者
派遣労働は、労働者の契約形態によって登録型と常用型の二つのタイプに分けられます。
登録型派遣労働者は、派遣元に氏名や希望する業務、xxx等を登録しておき、仕事が発生したときにだけ派遣元と雇用契約を結び、派遣先で働きます。およそ 8 割の派遣労働者が、登録型派遣労働者です。一方、常用型派遣労働者は、派遣元と常に雇用契約を結んでいる状態で、派遣先で働きます。
◇労働者派遣と請負
派遣労働と間違えやすい働き方としては、請負があります。請負とは、請負業者が注文主と請負契約を結んで仕事を引き受け、請負業者が雇用する労働者を指揮命令して、請負業者の責任で完結させるものです。労働者派遣と異なり、請負の場合は、業務の遂行に関する指示、労働時間管理に関する指示等については、請負業者が自ら行います。
「派遣労働者として働いていると思っていたら、実は請負契約だった。」ということもあります。会社と契約を結ぶときには、契約内容をよく確認することが大切です。
5-2 派遣労働の類型
◇派遣労働者の種類
1 派遣受入期間の制限のない業務
① いわゆる 26 業務
専門的な知識、技術、経験を必要とする業務又は特別の雇用管理を必要とする業務で、政令で定めた 26 業務については、派遣受入期間の制限はありません。
〔派遣受入期間の制限のない 26 業種〕
1 ソフトウエア開発 2 機械設計
3 放送機器等操作 4 放送番組等演出
5 事務用機器操作 6 通訳、翻訳、速記
7 秘書 8 ファイリング
9 調査 10 財務処理
11 取引文書作成 12 デモンストレーション
13 添乗 14 建築物清掃
15 建築設備運転、点検、整備 16 案内・受付、駐車場管理等
17 研究開発 18 事業の実施体制の企画・立案
19 書籍等の製作・編集 20 広告デザイン
21 インテリアコーディネーター 22 アナウンサー
23 OA インストラクション 24 テレマーケティングの営業
25 セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
26 放送番組等における大道具・小道具
② いわゆる 3 年以内の有期プロジェクト業務への派遣
事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のために必要な業務で、一定期間内で完了することが予定されている業務への派遣については、その業務が完了するまでの期間であれば、受入期間の制限はありません。
③ 日数限定業務
1 ヶ月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者への所定労働日数の半分以下で、かつ 10 日以下であるような業務への派遣については、派遣受入期間の制限はありません。
④ 出産・育児・介護休業取得者にかわる代替労働者の派遣
従業員が、産前産後休業や育児・介護休業を取得するときに、代わりの従業員を補充するための派遣労働者の受け入れは、派遣受入期間の制限はありません。
2 派遣受入期間の制限のある業務
① 臨時的・一時的な業務
臨時的・一時的な業務として、一般事務や営業職などに従事する派遣労働者については、最長 3 年の範囲で受け入れが認められていますが、1 年を超えて受け入れる場合には、派遣先の過半数労働組合などから意見聴取をすることが求められています。
② 「物の製造」業務への派遣
製造業のうち直接製造工程に係る業務への派遣については、最長 3 年の受け入れが認められていますが、1 年を超えて受け入れる場合には、派遣先の過半数労働組合などから意見聴取をすることが求められています。
◇雇用契約申込義務
派遣受入期間の制限のない業務について、3 年を超えて同一の労働者を同一の業務に受け入れている場合、この同一の業務に新たに労働者を雇い入れるときは、派遣先はまず、その派遣労働者に雇用契約を申し込むことが義務付けられています。
また、派遣受入期間の制限のある業務について、派遣受入期間制限に抵触する日以降も派遣労働者を使用しようとする場合、派遣先は、それまで働いてきた派遣労働者に対し、派遣先との直接雇用契約を申し込まなければなりません。
◇派遣が禁止されている業種
① 港湾運送業務、② 建設業務、③ 警備業務、④医師、歯科医師、看護師等の医療関係業務は、派遣労働者の受け入れが禁止されています。ただし、医療関係業務については、紹介予定派遣の場合は、派遣労働者の受け入れが可能です。
◇紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、派遣期間の終了後、派遣元から派遣先に、派遣労働者を職業紹介することを予定して派遣就業させるというものです。
紹介予定派遣の場合に限っては、派遣就業が終了した後にスムーズに直接雇用へと移行することができるように、派遣就業開始前の面接や履歴書の送付及び求人条件の明示や採用の内定等を行うことができます。
派遣受入期間は 6 ヶ月までとなっています。紹介予定派遣の労働者に対しては、採用後、試用期間を設けることはできません。
第 6 章 労働組合
6-1 労働組合はどんな団体か
労働組合とは、「労働者が、労働条件の維持改善を主な目的として、自主的・民主的に運営する団体」です。
労働組合はまた、会社内のことだけでなく、社会保障制度や税金などの問題にも取り組んでいます。なぜなら、賃金や労働時間など、その会社の中の労働条件を良くすることだけでは、労働者の生活が守られない状況にあるためです。
労働条件の維持改善のためには、会社との交渉が必要ですが、労働者個人では、対等に交渉することはなかなかできません。
〔憲法で保障されている「労働三権」〕
① 労働者が団結する権利(団結権)
② 労働者が使用者と交渉する権利(団体交渉権)
③ 労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権(争議権 )
そこで、憲法では、労働者が対等な立場で会社と交渉することができるように、労働者が労働組合を結成し、交渉する権利を保障しています(憲法第 28 条)。
憲法で掲げられた権利を、具体的に保障する目的で作られたものが労働組合法です。
会社が、労働者を雇い入れるときに、労働組合に入らないことを条件としてはならないということは前に述べましたが、労働者が労働組合に加入したり、労働組合を作ろうとしたり、労働組合の正当な行為をしたことを理由に会社が、その労働者を解雇したり、賃金や賞与などをほかの人と差別したり、条件の悪い転勤や、配置転換を行うなど、労働者の不利益になる取り扱いをしてはなりません(労働組合法第 7 条第 1 号)。このような、労働者の団結する権利を侵す会社の行為を不当労働行為といいます。
◇労働組合の結成について
労働者は、誰でも、自由に労働組合をつくることができます。労働組合を結成したことをどこかに届け出たり、誰かに承認してもらう必要はありません。
「うちの会社には労働組合がない」という人も多いでしょう。なせなら、日本の労働組合の大多数は企業別組合で、そのほとんどが、比較的大きな企業の正社員のみを組合員としていることが多いからです。
雇用形態の多様化で、正社員が減少する一方、パートタイマー、派遣労働者、契約社員といった労働者が増えています。また、セクシュアルハラスメント、職場のいじめなど、労使をめぐるトラブルは年々複雑化する傾向にあります。
こうした労働環境の変化に対応するために、近年、コミュニティユニオン、地域合同労組、一般労組など、個人でも加入できる労働組合が増えています。労働組合のない会社の従業員であっても、コミュニティユニオンなどに加入し、組合員になることで、労働組合を通じて、会社と団体交渉をすることができ、また、団体交渉を通じて、さまざまな問題を解決することが可能となっています。
◇不当労働行為
労働組合が正当な活動をしたことを理由に、会社がその労働者を不利益に取り扱うことは、不当労働行為にあたります(同法第 7 条第 1 号)。
次のような行為は、不当労働行為として禁止されています。
① 労働者に対し、労働組合員であることなどを理由として不当な扱いをすること。
② 労働組合に加入しないことを採用条件とすること。
③ 理由なしに団体交渉を拒否すること。
④ 労働組合の活動に介入したり、経費援助したりすること(組合事務所の供与等は経費援助とはならない)。
労働組合は、不当労働行為にあたる行為があったときは、労働委員会(xxxの場合はxxx労働委員会)へ、会社のそのような行為をやめさせる命令を出してもらうために申立を行うことができます。
労働委員会は、労働組合からの不当労働行為の申立に基づいて調査し、それが事実であることが明らかになれば、会社に不当労働行為に当たる行為をやめるように命令を出します。
命令が確定したのに、会社が従わないときは、使用者に罰金が科せられます(同法第 32 条)。
6-2 労働組合の要件
労働組合は一つの団体ですから、労働組合を結成しようとするときは、2 人以上の組合員がいることが必要ですが、すでに述べたように、労働組合がその機能を果たすためには、過半数以上のできるだけ多くの従業員で結成することが望ましいといえます。団体であれば、その団体を代表する人がいて、団体のいろいろなことをどうやって決定するか、しくみをどうするかなどを決めておくことも必要になるでしょう。
① その労働組合が、労働者が主体となってつくられていること。
② 労働者が自主的に運営していること。会社の指示にしたがって活動するようなことはなく、労働者が自らすすんで活動すること。
③ 労働条件の維持改善を主な目的としていること。
ところで、労働組合法では、労働組合が、労働組合法の保護(不当労働行為の救済制度もその一つです。)を受けるためには、次の要件を備えていなければならないとしています(労働組合法第 2 条)。
労働組合に使用者側の人が入っていたり、会社から、労働組合としての活動に必要な経費を援助してもらっているときには、この要件にはあてはまりません。また、組合員が結婚したり、災害に遭ったときにxxx見舞金を出すというような共済事業だけを目的としている団体や、選挙運動のような政治活動だけを目的としている団体も除きます(同法第 2 条但書)。
会社が、労働組合の活動に必要な経費を援助することは不当労働行為にあたります。なぜなら、労働組合のいろいろな活動が、会社のお金でまかなわれていたのでは、労働組合の本来の目的である労働条件の維持向上のための活動が自由に行いにくくなり、団結した意味が失われてしまうからです。
ただし、①勤務時間中の団体交渉・労使協議の有給保障、②福利厚生基金への援助、③最小限の広さの事務所の供与は、労働組合の自主性を損なわず、経費援助にあたらないとしています。
実際には、労働組合は、共済事業や、政治運動も行っていますが、あくまでも労働条件の維持向上が主目的で、ほかの活動はそれに付随するものとして行われているので違法とはいえません。なお、
労働組合が共済事業に対して、会社からの寄付を受けることは差し支えありませんし、不当労働行為にもあたりません(同法第 2 条第 2 項但書、同法第 7 条第 3 号但書)。
◇「労働組合規約」の作成
〔労働組合規約に定めなければならないこと〕
① 労働組合の名称。
② 主たる事務所の所在地。
③ 組合員の全員が、労働組合のあらゆる問題に参加でき、差別的取扱いをうけないこと。
④ 組合員はいかなる場合も、人種や宗教、性別、身分などの違いで、組合員としての資格を奪われないこと。
⑤ 役員の選挙は、組合員又は代議員の直接無記名投票で行うこと。
⑥ 総会は、少なくとも毎年 1 回開くこと。
⑦ 組合費など労働組合の財源やその使いみちなどの経理状況を、少なくとも毎年 1 回、組合員に公表すること、この場合、公認会計士などの資格を持っている人に監査してもらい、間違いないという証明書をつけること。
⑧ ストライキは、組合員又は代議員の直接無記名投票を行って、その過半数の賛成がなければ行わないこと。
⑨ 規約を改正するときは、組合員又は代議員の直接無記名投票を行って、投票をしなかった人や
無効の投票を含めた全組合員又は全代議員の過半数の賛成を得ること。
労働組合が、不当労働行為の救済など、労働組合法上の保護が受けられるためには、労働組合のいろいろな活動が民主的に行われていることも要件の一つです。会社には就業規則(社内規定と呼ぶ会社もあります。)が定められていますが、労働組合にも、そのしくみをどうするか、いろいろなことをどういう方法で決めるか、ということを定めた「規定」が必要です。その規定を労働組合規約といいます。労働組合規約には、労働組合の活動が民主的に行われるように、次のことを定めておかなければなりません(同法第 5 条第 2 項)。
6-3 労働組合のいろいろな活動 ━団体交渉など━
労働組合の活動にはいろいろなものがありますが、団体交渉はその中でも重要なものです。
たとえば、賃金引上げ交渉の場合、毎年 4 月がその会社の賃金を改定する時期ならば、労働組合は、
1 月か 2 月ごろに団体交渉の準備を始めます。労働組合は、賃金闘争の一環として、上部の労働組合や、その地域の労働組合と連絡をとりあい、協力しあって活動をすすめます。
労働組合では、会社の経営状況はどうか、自分たちの生活水準や賃金水準はどうかなど、資料を集めたり、勉強会を開いたりします。そして大会を開いて、会社にどのくらいの賃金引上げを要求するのかを決め、会社への要求提出から解決するまでのスケジュールなども決めます。その決め方は、その労働組合の憲法ともいえる労働組合規約にしたがい、民主的な方法で、組合員全員の意見を尊重して決められます。
要求の内容が決まると、それを要求書にして会社に提出し、そのことについて何日何時に話し合いたいと申し入れます。この話し合いのことを団体交渉といいます。団体交渉とは、労働者が、労働条
件をよくするために、団結の力を背景に会社と話し合うことで、憲法で保障された権利です(憲法第
28 条)。
団体交渉には、ふつう、労働組合の役員(委員長、副委員長、書記長など)があたりますが、場合によっては、外部の人(たとえば、上部の労働組合の役員など)に依頼することもできます。労働組合の代表者又は労働組合から委任を受けた人は、その労働組合と組合員のために、労働条件の向上などを目的として会社と交渉する権限をもっています(労働組合法第 6 条)。
会社と労働組合が、労働条件などについて、必要があればいつでも話し合える民主的な関係が保たれていればよいのですが、なかには労働組合との話し合いに応じようとしない会社もあります。しかし、会社が正当な理由がないのに、労働組合との団体交渉を拒むことは、不当労働行為にあたり認められません(同法第 7 条第 2 項)。また、団体交渉にあたって、会社は、労働組合の代表者と単に形式上会うだけではなく、誠意をもって交渉にあたらなければなりません。
団体交渉を行っても、話がなかなかまとまらないときには、労働組合では、組合員の結束を固め、会社に団結の力を示すため、集会やデモなどを実施することがあります。場合によってはストライキが行われることもあるでしょう。
ストライキとは「会社の指示にしたがって働くことを、みんなで一時的にやめる」ことで、会社に一定の打撃を与えるという効果を背景に、団体交渉を有利に導くために行われます。ストライキやその他の団体行動をする権利(団体行動権)も、労働者の基本的な権利の一つとして、憲法で保障されています(憲法第 28 条)。
ストライキが行われると、会社の業務は止まりますから、会社は損害を受けることになるかもしれません。しかし、そのストライキが「正当」なものである限り、会社は、労働組合や、その組合員に損害賠償を請求することはできません(労働組合法第 8 条)。
しかし、ストライキ中に、組合員ではない人が職場に立ち入って、正常の生産をしたりすると、組合員が単に「働くことを一時的にやめる」だけでは、ストライキの効果が望めないことになります。それを防ぐために、組合員が、職場に座り込んだり、その職場の入口に並んで、組合員の代りに働こうとする人に対して、説得して協力を呼びかけるという方法がとられることもあります。
このような行為が行き過ぎると、犯罪として罰せられる場合もありますが、「正当」な団体行動権の行使の範囲内である限り、犯罪として罰せられることはありません(同法第 1 条第 2 項)。
労働者が、自分たちの生活を守るために団結して、様々な団体行動をとることを保障した憲法上の労働者の権利と、すべての人に一様に保障している平等権、自由権、財産権などの権利とを比較考量し、それぞれ相手の権利を不当に侵すことにならないかどうか、という観点から、これら労働者の行為が「正当」であるかどうか、具体的な事実に基づいて判断することになります。
6-4 労働協約 ━労働条件をよくして労働者の地位を高める制度━
団体交渉によって、労働組合と会社の意見が一致したら、団体交渉で決まったことを、お互いに誠実に守らなければなりません。そのためには、決まったことを口約束ではなく、書面にしておくことが必要です。
団体交渉で決まったことを書面にしたものを労働協約といいます。労働協約には、労働組合と会社の両方の代表者が署名するか、又は記名押印しておくことが必要です(労働組合法第 14 条)。
会社が、独自の立場で就業規則をつくり労働条件を定めるのに対し、労働者が、労働条件をよりよいものにするために団体交渉を行った成果が労働協約である、ということになります。
労働協約は、賃金や労働時間などの労働条件だけではなく、人事や福利厚生、安全衛生に関すること、労働組合の活動に関すること、団体交渉を行うときの手続きやストライキを行うときのルールなどについて定めている場合が多くみられます。
労働協約の内容には、その会社の労働者の待遇に関することで、それについて、会社が会社の立場で決定できることはすべて含まれます。賃金引上げを定めた賃金協定や、退職金協定、組合費のチェックオフに関する協定などのように、それぞれ別個にまとめられたものも労働協約です。
労働協約の内容として、何を、どのように決めるかは、労働組合と会社の自由にまかされます。これまでに説明した就業規則や労働組合規約と異なり、特に法律上の決まりはありませんが、労働基準法などの法律に反するものや、公序良俗に反するものであってはなりません。
経済事情が大きく変動する場合もありますから、労働協約の有効期間を定める場合には 3 年を超えてはならず、3 年を超えた有効期間を定めている場合には、3 年たてば効力を失うことになっています
(同法第 15 条第 2 項)。
労働協約に有効期間が定められていないときには、労働組合、会社のどちらからでも、署名又は記名押印した文書で、90 日前までに予告して解約することができます。また、有効期間は定めているものの、期限が切れたときはそのまま効力が存続する、というように定めてある場合も、有効期間の定めのない労働協約の場合と同様に取り扱います(同法第 15 条第 3 項、第 4 項)。
労働協約で定められている労働条件や、その他労働者の待遇に関する規範的部分に反するような労働契約は無効となり、無効となった部分は労働協約で定められた基準によることになります(同法第 16 条)。たとえば、労働協約で最低でも月給 20 万円と定めてあるのに、ある労働者に月給 15 万円と
いう契約をした場合、それは無効となり、労働協約で決められた 20 万円に置き替えられることになります。
第 7 章 安全衛生と労災保険
7-1 安全衛生
職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することを目的として定められたのが労働安全衛生法です。
事業者(個人事業であればその事業主、法人企業であれば会社そのもの)は、労働災害を防止するために、労働安全衛生法で定められた最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境をつくり、労働条件を改善することで、労働者の安全と健康を守らなければなりません。
同様に、労働者も労働災害を防止するために必要な事項を守り、会社が実施する労働災害防止の措置に協力するように努めなければなりません。
労働安全衛生法では、事業者が講ずべき措置について、次のように示しています。
◇安全衛生体制を確立すること(第 10 条~第 19 条)
一定規模以上の会社では、総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者等を選任して、事業場内の安全衛生管理体制を確立しなければなりません。
◇労働者の危険又は健康障害を防止するための措置(第 20 条~第 36 条)
事業者は、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講じなければなりません。また、労働者を就業させる建設物その他の作業場の保全並びに換気、採光、証明、保湿等、労働者の健康、風紀及び生命の保持のために必要な措置を講じなければなりません。
◇労働者の就業に当たっての措置(第 59 条~第 63 条)
会社は、労働者を雇い入れたとき又は労働者の作業内容を変更するときには、安全衛生教育を行わなければなりません。
クレーン運転など一定の業務については、免許を有する者、一定の技能講習を終了した者でなければ就業させてはなりません。中高年齢者など特に労働災害を受けやすい者については適正な配置をするように努めなければなりません。
◇労働者の健康の保持増進のための措置(第 65 条~第 71 条)
事業者は、労働者を雇い入れるときや、継続雇用するときには、定期健康診断を行わなければなりません。事業場の業務が危険有害業務である場合は、特別な健康診断を行わなければなりません。有所見者については、健康保持のために必要な措置について医師等の意見を聴き、労働者の実情を考慮した上で適切な措置を講じなければなりません。また、長時間労働者については、労働者からの申し出があれば、医師による面接指導を行う必要があります。
◇快適な職場環境の形成のための措置(第 71 条の 2)
事業者は、事業場における安全衛生の水準向上のため、職場環境を快適な状態に維持管理する努力義務があります。このため、作業方法の改善、疲労回復のための措置を講ずることが必要とされていますが、最近ではいじめやストレスからくる心の問題などについて、事業主の責任が問われるケースも生じています。
7-2 労災保険
労働者が仕事のうえで怪我をしたり、病気にかかったときには、会社は労働者の療養費を負担しなければなりません。また、それらの怪我や病気がもとで労働者が働けなかったために賃金が得られないときには、労働者に平均賃金の 6 割の休業補償を支払わなければなりません(労働基準法第 75 条、
76 条)。
○ 業務遂行性
労働者が労働契約に基づいた事業主の支配下にある状態(作業中だけではなく、作業の準備行為・後始末行為、休憩時間中、出張中などの場合にも「業務」とみなします)において発生した負傷・疾病等であること。
○ 業務起因性
業務と傷病等との間に一定の因果関係が存在すること。
業務が原因で発症した疾病であるかどうかの判断が難しいものもあるので、業務上の疾病(職業病)の範囲は法律で定められています。
会社にこのような保障が義務付けられるのは、労働基準監督署長が労働災害であると認定した場合に限られますが、そのためには、次の要件を満たしていることが必要です。
業務災害が発生したとき、会社に十分な支払い能力がなかったり、大きな事故で補償額が多額にのぼり、支払いが困難になることもあるかもしれません。そこで、労働者災害補償保険法では、日頃から、会社が保険料を納めておいて、災害が発生したときは、そこから保障を行うように定めています。
◇労働者災害補償保険(労災保険)のしくみ
労災保険は、労働者が仕事の上で怪我をしたり、病気にかかったり、不幸にも死亡したり、また通勤の途中で事故に遭ったときなどに、国が事業主に代って必要な補償を行う保険です。労災保険料は事業主のみが負担します。
労災保険への加入は、事業主や労働者の意思にかかわらず、原則的には、パートタイマー、アルバイト等を問わず、労働者を一人でも雇用するすべての事業主に義務付けられています。
◇通勤災害について
通勤災害とは、労働者が通勤途中で被った負傷、疾病、障害又は死亡をいいます。この場合の「通勤」とは、就業するために、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法で往復することをいいます。往復の経路を逸脱又は中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の往復は「通勤」にあたりません。
ただし、逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって、やむを得ない理由(例えば、日用品の購入や病院・診療所で診療や治療を受ける場合など)で行う最小限のものである場合には、逸脱又は中断の部分を除き「通勤」となります。
◇労災保険からのおもな給付内容
労災保険の請求手続きは、労働者本人又はその遺族が請求することになっています。保険からの給付の内容には、次のようなものがあります。
〔労災保険からの給付〕
○療養補償給付(通勤災害の場合は療養給付)
業務災害又は通勤災害による怪我や病気が治るまで、労働者が無料で診察及び治療等が受けられるようにするものです。
○休業補償給付(通勤災害の場合は休業給付)
業務災害又は通勤災害による怪我や病気がもとで労働者が働けなかったために賃金が得られないときには、働けなくなった日の 4 日目から、休業(補償)給付として給付基礎日額の 60%相当額、休業特別支給金として 20%相当額が支給されます(業務災害による休業の場合には、休業の最初の日から 3日間分は、労働基準法第 76 条に基づいて、会社が平均賃金の 60%を補償します)。
○傷病補償年金(通勤災害の場合は傷病年金)
業務災害又は通勤災害による怪我や病気が、療養を開始してから 1 年 6 ヶ月を経過しても治らないときなどに、それまで支給されていた休業補償給付は打ち切られ、傷病による障害の程度に応じて年金が支給されます。このほかに傷病の程度に応じて傷病特別支給金が支給されます。
○傷害補償給付(通勤災害の場合は障害給付)
業務災害又は通勤災害による怪我や病気が治っても障害が残ったときには、その程度に応じて障害
(補償)年金あるいは障害(補償)一時金が支給されます。このほかに障害の程度に応じて障害特別支給金が支給されます。
○遺族補償給付(通勤災害の場合は遺族給付)
業務災害または通勤災害により死亡した場合は、遺族(補償)年金、あるいは遺族(補償)一時金が支給されます。そのほかに遺族特別支給金が支給されます。
第 8 章 雇用保険と健保・年金
8-1 雇用保険
雇用保険は、労働者が失業したときに、失業中の生活を心配することなく新しい仕事を探して、1 日も早く再就職することができるようにするための給付を行う保険です。
また、失業者を対象とする給付だけではなく、育児・介護休業を取得する労働者を対象とした育児休業給付や介護休業給付、一定の条件を満たした在職者及び離職者を対象に、教育訓練経費の一部を補助する教育訓練給付なども、雇用保険事業の一つです。
◇雇用保険への加入
雇用保険への加入は、原則的には、労働者を一人でも雇用する事業に適用されます。適用事業で働く労働者は、本人が加入を希望するか否かにかかわらず、すべて被保険者となります。
雇用保険料は、労働者の賃金総額に保険料率(一般の事業の場合は千分の 15)をかけたもので、このうち、被保険者負担分は千分の 6 となっています。各月の賃金支給額が変動すると、雇用保険料も変動します。
○パートタイマーの雇用保険の適用基準
パートタイマーについては、次のいずれにも該当するときは、雇用保険の被保険者となります。
① 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
② 1 年以上引き続き雇用されることが見込まれること。次の場合は、これにあたります。
ア. 期間の定めがなく雇用される場合イ. 雇用期間が 1 年の場合
ウ. 3 ヶ月等の期間を定めて雇用される場合であって、契約更新規定がある場合
エ. 3 ヶ月等の期間を定めて雇用される場合であって、同様の契約で雇用されている他の者の過去の
就労実績等からみて、契約を 1 年以上に渡って反復更新することが見込まれる場合
○登録型派遣労働者の雇用保険の適用基準
① 反復継続して派遣就業するものであること。
次のアまたはイに該当する場合がこれに当たります。
ア. 一の派遣元事業主に 1 年以上引き続き雇用されることが見込まれるとき。
イ. 一の派遣元事業主との間の雇用契約が 1 年未満であっても雇用契約と次の雇用契約の間隔が短く、その状態が通算して 1 年以上続く見込みがあるとき。
この場合、雇用契約については派遣先が変わっても差し支えありません。
② 1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
登録型派遣労働者については、次のいずれの要件にも該当する場合には雇用保険の被保険者となります。
◇雇用保険からのおもな給付
○求職者給付
雇用保険の被保険者が、解雇・倒産・自己都合等により離職し働く意思と能力がありながら就職できない場合に基本手当て(いわゆる失業手当)が支給されます。一般の離職者の場合、離職の日以前の 2年間に、11 日以上働いた月が 12 ヶ月以上あることが需給の要件です。特定受給資格者(倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者)の場合は、離職の前 1 年間に、11
日以上働いた月が 6 ヶ月以上あることが必要です。
基本手当日額(賃金日額の 50~80%、60~64 歳については 45~80%で、上限あり。)は、次の表の給付日数分支給されます。
なお、離職日の翌日から 1 年以内に、基本手当や就業促進手当などをまったく受給しないで再就職し、再び雇用保険の被保険者となった場合には、前の会社での被保険者として雇用された期間を通算することができます。
・65 歳未満で離職した者
① 一般の離職者(定年退職者や自己の意思で離職した者。)
被保険者で 離職時等の あった期間年齢 | 1 年未満 | 1 年以上 5 年未満 | 5 年以上 10 年未満 | 10 年以上 20 年未満 | 20 年以上 |
全年齢共通 | 90 日 | 120 日 | 150 日 | ||
障害者等の就職困難者 | 45 歳未満 | 150 日 | 300 日 | ||
45 歳以上 65 歳未満 | 360 日 |
被保険者で離職時等の あった期間 年齢 | 1 年未満 | 1 年以上 5 年未満 | 5 年以上 10 年未満 | 10 年以上 20 年未満 | 20 年以上 |
30 歳未満 | 90 日 | 90 日 | 120 日 | 180 日 | ━ |
30 歳以上 35 歳未満 | 180 日 | 210 日 | 240 日 | ||
35 歳以上 45 歳未満 | 240 日 | 270 日 | |||
45 歳以上 60 歳未満 | 180 日 | 240 日 | 270 日 | 330 日 | |
60 歳以上 65 歳未満 | 150 日 | 180 日 | 210 日 | 240 日 | |
障害者等の就職困難者 | 45 歳未満 | 150 日 | 300 日 | ||
45 歳以上 65 歳未満 | 360 日 |
② 特定受給資格者(倒産、解雇等により、再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者)
・65 歳以上で離職した者(一時金で支給)
被保険者として雇用された期間 | 1 年未満 | 1 年以上 |
高年齢求職者給付金の額 | 30 日 | 50 日 |
○失業給付がもらえない期間
ハローワークへ来所し離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から失業状態の日が通算して 7 日間は支給されません(これを待期といいます)。
自己の都合で退職した人や自己の責任による重大な理由で解雇された人は、待期後、さらに 3 ヶ月経過した日の翌日から支給の対象となります(これを給付制限といいます)。
○就職促進給付
労働者が離職後、公共職業安定所に失業と認定され、求職の申込みをしているときに再就職が決まり、更に一定の要件を満たした場合には、再就職手当が支給されます。給付額は、支給残日数に基本手当日額をかけた金額の 30%相当額です。
○教育訓練給付
国が指定する教育訓練を終了した場合に、本人が教育訓練施設に支払った経費の一部を支給します。
(1)平成 19 年 9 月 30 日までに指定講座を受講開始した方
被保険者期間 | 3 年以上 5 年未満 | 5 年以上 |
給付率 | 教育訓練経費の 20% | 教育訓練経費の 40% |
上限額 | 10 万円 | 20 万円 |
(2)平成 19 年 10 月 1 日以降に指定講座を受講開始した方
被保険者期間 | 3 年以上 | * ただし、初回に限り、被保険者期間 1 年 以上で受給可能 |
給付率 | 教育訓練経費の 20% | |
上限額 | 10 万円 |
○高年齢雇用継続給付
60 歳以上 65 歳未満の被保険者のうち、被保険者であった期間が通算して 5 年以上あり、かつ、原則として 60 歳時点に比べて賃金が 75%未満に低下した状態で働いている労働者に対して給付金を支給します。
○育児休業給付
育児休業を取得する被保険者に対して、給付金を支給します。支給額は賃金決額の 30%相当額、職場復帰後 6 ヶ月が経過すると、10%相当額が追加して支払われます。
ただし、暫定措置として、平成 19 年 3 月 31 日以降に職場復帰をした方から平成 22 年 3 月 31 日までに育児休業を開始した方については、支給率が、休業期間中は賃金月額の 30%相当額、職場復帰後 6 ヶ月が経過すると 20%相当額となり、全体の支給率は 50%となります。
○介護休業給付
対象家族の介護を行うための介護休業を取得する被保険者に対して、一定の要件を満たした場合に給付金を支給します。支給額は、休業開始時賃金月額の 40%相当額です。
8-2 健康保険
健康保険とは、労働者やその家族が、病気や怪我をしたとき、また労働者が病気や怪我のために会社を休んで賃金が支払われないとき、出産をしたとき、不幸にしてなくなったときなどに、必要な医療給付や手当金の支払いを行う保険です。
◇健康保険への加入
労働者を一人でも雇っている法人の事業所には、健康保険・厚生年金保険への加入が義務付けられています(強制適用事業所)。強制適用事業所で働く労働者は、本人が加入を希望するか否かにかかわらず、すべて被保険者となります。
また、パートタイマーも、1 日又は 1 週の所定労働時間及び 1 ヶ月の労働日数が、その事業所で同種
の業務を行う一般の労働者のおおむね 4 分の 3 以上ある場合には、被保険者となります。
健康保険料(政府管掌健康保険)は、標準報酬月額及び標準賞与額の千分の 82 を、介護保険料は、
さらに千分の 12.3 を加えたものを事業主と被保険者で折半して負担します。
◇傷病手当金の給付
健康保険からの給付のひとつである傷病手当金は、被保険者が病気や怪我の療養のために会社を休んだため、賃金を受けられなくなった場合に、給料の 3 分の 2 相当額を、最長 1 年 6 ヶ月まで支給する制度です。健康保険制度と似た制度として国民健康保険がありますが、国民健康保険には傷病手当金の制度はありません。健康保険の場合は、私傷病がもとで休業し、賃金が得られなかったときでも、国から賃金補償を受けられることが特徴です。
8-3 公的年金制度
公的年金制度とは、被保険者が高齢になって働けなくなったとき、障害の状態になったとき、また不幸にして亡くなったときなどに、必要な給付を行う制度です。年金制度は、国民年金と厚生年金(公務員などは共済年金)の二階建ての仕組みとなっていて、国民年金からは全ての国民に共通する基礎年金が支給され、厚生年金や共済年金からは会社員など被用者であった者を対象に、原則として基礎年金に上乗せする報酬比例の年金が支給されます。
自営業・農業・学生など
会社員の夫をもつ専業主婦など
会社員 公務員など
厚生年金 | 共済年金 | |||
| ||||
国民 年金 | 第 1 号被保険者 (20 歳以上 60 歳未満) | 第 3 号被保険者 (20 歳以上 60 歳未満) | 第 2 号被保険者 (70 歳未満) | 第 2 号被保険者 |
◇厚生年金保険への加入
国民年金は、①20 歳以上 60 歳未満の者、②厚生年金と共済年金の被保険者、③②の被扶養配偶者で、
20 歳以上 60 歳未満の者は必ず加入しなければなりません。
また、健康保険と同様に、労働者を一人でも雇っている法人の事業所には、厚生年金の加入が義務付けられており(強制適用事業所)、強制適用事業所で働く労働者は、本人が加入を希望するか否かにかかわらず、すべて被保険者となります(パートタイマーも同様です)。
厚生年金保険料は、使用者と労働者が折半して負担します(標準報酬月額の千分の 149.96(*)を折半。賞与からも徴収)。
育児休業中の保険料は、事業主を通じて保険者へ申し出ることにより免除されます。免除期間については、年金額の算定にあたり、保険料を納付したものとして扱われます。
*平成 20 年 6 月現在。ただし、xx負担率引き上げ。
◇高齢になったとき
被保険者が高齢になったとき、被保険者本人に支給されるのが老齢年金です。このうち、25 年以上の資格期間があるとき、原則として 65 歳から支給されるのが老齢基礎年金で、これに上乗せする形で支給されるのが老齢厚生年金です。
老齢基礎年金は 65 歳から受けるのが基本で、60 代前半層には特別支給が行われますが、現在、年金
の支給開始年齢の 65 歳への移行が進んでいます。また本人の希望により 60 歳からでも受給することはできますが、この場合、65 歳から支給開始したときの年金額に比べて、受け取る年金額が減額されます。 60 歳から 64 歳の者で、仕事による収入を得ているとき又は失業給付を受けているときには、年金額
の調整が行われます。
◇障害の状態となったとき
被保険者が障害の認定を受けたときに、被保険者本人に支給されるのが障害年金です。障害年金の給付が受けられるのは、①国民年金に加入している期間中の病気や怪我による障害だけではなく、②老齢基礎年金を受けるまでの 60 歳から 64 歳までの間の病気や怪我による一定以上の障害や、③子供の頃の病気や怪我による一定以上の障害などにも、要件を満たしていれば障害基礎年金を受けることができます。
さらに、その障害が、厚生年金の被保険者期間中の病気や怪我により生じたものであるときには、障害厚生年金が上積みされます。
○亡くなったとき
国民年金に加入中の被保険者が亡くなったときには、亡くなった被保険者に生活を支えられていた妻と子がいる場合は妻に、子だけのときは子に遺族基礎年金が支給されます。
また、①厚生年金の被保険者、②被保険者期間中の病気や怪我がもとで、初診の日から 5 年以内に死
亡した人(ただし、保険料納付済み期間(免除期間を含む)が加入期間の 3 分の 2 以上あること)、③1級・2 級の障害厚生年金の受給権者、④老齢厚生年金の受給権者又は受給資格者が死亡したときなどに、厚生年金から支給される報酬比例の年金が遺族厚生年金です。
老齢基礎年金を受けられる加入期間のあった被保険者が、国民年金からいずれの年金も受けないで亡くなったときは、残された妻に寡婦年金が支給されます。寡婦年金は、10 年以上結婚していた妻に、60歳から 65 歳になるまで支給されます。
このほか、厚生年金からは、①夫が死亡した 35 歳以上の子のいない妻、②子が 18 歳に達したため遺族基礎年金を受けることができなくなった妻に対する中高齢寡婦加算などがあります。
注意:ここでいう「子」とは 18 歳到達年度の末日まで(1 級、2 級の障害があれば 20 歳未満)の子をいいます。
第 9 章 退職・解雇のときに
9-1 退職のルール
一般に、労働者からの申し出によって労働契約を終了することを退職(自己都合退職)といい、使用者からの申し出による労働契約の終了を解雇といいます。ここでは、まず労働者からの申し出による退職について説明します。
労働者が、ある日突然退職してしまったら、使用者も、また残された同僚も困ってしまいます。ですから一般的には、就業規則等に「退職の申し出は、退職予定日の 1 ヶ月前までに申し出ること」というように、あらかじめ後任の手配や事務引継ぎ期間を見込んで、退職日までの申し出期間を定めておくことが多いようです。退職の申し出をするときには、まず就業規則に退職に関するルールがどのように定められているかを確認し、そのルールにしたがって、事前に上司とよく話し合いましょう。
なお、退職の申し出にあたっては、契約期間の定めがある労働契約を結んでいた場合とそうでない場合では次のようにルールが異なりますので注意が必要です。
◇契約期間の定めがないとき
契約期間の定めがない労働契約を結んでいる場合には、就業規則がある場合は、その規定にしたがって退職届を提出しましょう。就業規則に定めがない場合は、労働者は少なくとも 2 週間前までに退職の
申し出をすることによって、いつでも労働契約を解除することができます(民法 627 条第 1 項)。この申し出は原則的には労働者からの口頭での意思表示で足りるとされていますが、行き違いのないよう、文書で「退職届」等の手続きをふむ方が無難だといえます。
◇契約期間の定めがあるとき
契約期間の定めがある労働契約(有期労働契約)の場合、会社と労働者が、契約期間を定めた上で労働契約を結んだのですから、お互いに契約の内容を誠実に守る義務があります。契約期間の満了前に退職することは契約違反ですから、契約期間満了前に、勝手に退職することはできません。就業規則に、契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には、それに従って退職することになりますが、特段の定めがない場合には、なるべく合意解約ができるように、十分話し合うことが大切です。
また、残念ながら会社の理解が得られなかった場合であっても、やむを得ない事情があるときに限り、労働契約の解除を申し入れることができますが、それが労働者側の一方的な過失による場合には、会社から損害賠償請求をされることもあります(民法第 628 条)。もし、損害賠償請求をされた場合は、その請求内容が適切なものか、損害賠償に応じるべき範囲は、など、お互いに納得できるまで十分に話し合うことが必要です。
◇あらかじめ明示された労働条件と相違していた場合
労働者は、あらかじめ明示された労働条件と、実態が異なっていたことを理由に、ただちに労働契約を解除することができます(労働基準法第 15 条第 2 項)。これは、有期労働契約の契約期間中であっても同様です。
9-2 解雇
解雇とは、会社の意思で労働契約を終了させることですが、いつでも自由に行えるというものではありません。法律では、会社が労働者を解雇してはならないケースを次のように定めています。
〔労働基準法〕
・労働者が業務上災害によって負傷したり、疾病にかかったことが原因でその療養のために休業している期間と、その後の 30 日間及び産前産後の女性が休業する期間と、その後の 30 日間。
・労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇。
・行政官庁又は労働基準監督官に申告したことを理由とする解雇。
〔労働組合法〕
・労働者が労働組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、労働組合を結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇。
・労働委員会への申立等をしたことを理由とする解雇。
〔男女雇用機会均等法〕
・労働者の性別を理由とする解雇。
・女性労働者が結婚、妊娠、出産、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇。
〔育児・介護休業法〕
・労働者が育児・介護休業を申し出たこと、又は育児・介護休業をしたことを理由とする解雇。
◇解雇には合理的な理由が必要
使用者は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。また、労働者を解雇するにあたり、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないような場合には、解雇権を濫用したものとして無効となります(労働契約法第 16 条)。また、解雇理由が妥当である場合にも、使用者は少なくとも 30 日前に解雇の予告をするか、30 日分以上の平均賃金(いわゆる解雇予告手当)を支払わなければなりません(労働基準法第 20 条)。
・雇用期間が引き続いて 1 ヶ月を超えない日雇いの労働者
・雇用期間が 2 ヶ月以内に定められ、かつ働いた期間が 2 ヶ月を超えていない労働者
・雇用期間が 4 ヶ月以内に定められた季節的業務で働き、かつ働いた期間が 4 ヶ月を超えていない労働者
・試用期間中で、かつ働き始めて 14 日以内の労働者
試用期間中の労働者であっても、14 日を超えて雇用された場合には支払義務が生じますが、次の場合は、解雇予告の対象から除外されます(同法第 21 条)。
なお、労働者は、使用者に対して解雇理由証明書を請求することができます(同法第 22 条第 1 項、
第 2 項)。
◇整理解雇における合理的な理由
① 整理解雇の必要性
会社の維持・存続を図るために、整理解雇が必要かつ最も有効な方法であること。
② 解雇回避の努力
新規採用の中止、希望退職者の募集、一時帰休の実施、関連会社への出向など会社が解雇回避のために努力したこと。
③ 整理基準と人選の合理性
整理解雇の対象を決める基準が合理的かつxxで、その運用も合理的であること。
④ 労働者との協議
解雇の必要性や規模・方法・整理基準などについて十分説明をし、労働者に納得してもらう努力をしたこと。
使用者が、不況や経営難などの理由により、人員整理のために行う解雇を整理解雇といいます。整理解雇の場合、一般的には、次の 4 つの要件を満たしていることが必要とされています。
◇有期雇用契約と解雇
期間の定めのある雇用契約を結んだ場合には、やむを得ない事情がある場合でなければ、会社が、契約期間の途中で、労働者を解雇することはできません(労働契約法第 17 条)。
また、やむをえない理由で労働契約を解除する場合であっても、それが使用者の一方的な過失による場合は、使用者は労働者に対して損害賠償責任を負うことになります(民法第 628 条)。
なお、有期雇用で雇用期間の満了時に更新を拒否することを雇止めとよんでいます。契約である以上、期間満了により打ち切られるのが原則ですが、繰り返し更新された場合、期間の定めがない契約と同様とみなされ、合理的な解雇理由と解雇手続きが必要となる可能性が生じます。
9-3 労働契約が終了すると
労働者契約は、退職又は解雇等によって終了しますが、会社は、労働者から請求があったときには、
7 日以内に賃金を支払い、積立金や保証金、貯蓄金など、その労働者の権利に属するものは、すべて労
働者に変換しなければなりません(労働基準法第 23 条)。
退職手当も、就業規則や労働協約で支給条件がはっきりしている場合には賃金とみなされますから、手当の支払時期について明記しておくことが必要です。ただし、退職手当が年金制になっているときなどは、あらかじめ決められた支払日が来るまで支払わなくても差し支えありません。
なお、賃金請求権の時効は 2 年、退職手当請求権の時効は 5 年となっています(同法第 115 条)。
会社は、労働契約が終了した、翌日から 10 日以内に、ハローワークへ雇用保険の資格喪失手続を行わなければなりません。ハローワークから会社に交付される離職票は、労働者が国から失業給付を受けるときに必要な書類で、離職票の記載内容に基づいて、基本手当の額や給付日数等を判断することになります。
また労働者が、会社に対して、試用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金及び退職の事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)に関する退職証明書を請求した場合には、会社は、遅滞なく交付しなければなりません。なお、退職証明書には、労働者が請求しない事項を記入してはなりません(同法第 22 条第 1 項、3 項)。
9-4 定年と高齢者の働き方
会社が定年を定めるときには、60 歳以上の定年を定めなければなりません(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第 8 条)。
また、65 歳未満の定年を設けている会社は、雇用する高年齢者の 65 歳(*年金支給開始年齢の引き上げに合わせて、段階的に引き上げ。下表参照)までの安定した雇用を確保するために、①定年の引き上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければなりません(同法第 9 条)。
〔高年齢者雇用確保措置の対象年齢〕
平成 19 年 4 月~平成 22 年 3 月 | 63 歳 |
平成 22 年 4 月~平成 25 年 3 月 | 64 歳 |
平成 25 年 4 月~ | 65 歳 |
ところで最近では、定年を迎えたといっても、まだまだ元気な高齢者もたくさんいます。このような高齢者の希望に沿った働き方ができるように、xxxでは、区市町村を通じて就業相談や就職のあっせんを行うとともに、NPO や創業等のさまざまな働き方に関する情報提供を行うアクティブシニア就業支援事業に取り組んでいます。
(以上)
この資料は平成 20 年 6 月
xxx産業労働局雇用就業部労働環境課(xxxxxxxxx 0-0-0)
によって発行された「ポケット労働法 2008」を転載(一部省略)したものです。
作成:2009 年 7 月 20 日