Contract
1 意思表示
⑴ 意思表示
「人の活動」に関する定めをする「民法」は、西欧法の伝統を受けて、「意思」をもって「人」と認識し、「意思表示」を「人の行為」と考えています。したがって、「意思能力」がないと、法律行為は無効( 3条の2) とされま す。本来、「人の意思(自由意思)」によるべきですが、「内心の意思」では他
人には分からないので不都合です。
「内心の意思」が外部に表示され、他人にも分かるようになった「意思表示」をもって判断するのです。
⑵ 意思の欠缺・瑕疵ある意思表示
形式的(外面的)には「意思表示」があっても、それに対応する意思(真意) がない場合とか、意思表示に対応する意思があっても自由意思によるものでない場合には、「意思表示」と認められません。
本人が「真意でない」と知ってした(心裡留保)意思表示は、本人が自覚しているので有効とされ( 93 条)、相手方と通じてした虚偽の意思表示(虚偽表示) は、もともと虚偽なので無効とされます( 94 条)。
意思表示に対応する意思を欠く「錯誤」や法律行為の基礎となる事情の認識がxxに反する「錯誤」による意思表示は、取消をすれば、無効となります( 95条)。また、「詐欺」による意思表示や「強迫」による意思表示は、取消をすれば、無効となります( 96 条)。
⑶ 行為能力
ⅰ 未xx者
「年齢 20 歳」で「xx」とされ( 4条)、「未xx者」の行為には、法定代
理人の同意が必要となり、法定代理人の同意のない法律行為は、取消すれば無効となります( 5条)。ただし、「単に権利を得る」「単に義務を免れる」だけの法律行為は、未xx者であっても不利にはなりませんから有効です(5 条)。未xx者であっても、営業の許可を得て行う「営業」に関しては、当然のこ
とながら、行為能力があるものとされます( 6条)。
未xx者の婚姻には父母の同意が必要です( 737 条)が、未xx者でも、婚姻するとxxとみなされます( 753 条)。婚姻していながら法定代理人の同意が必要では困るからです。
ⅱ 精神上の障害
「精神上の障害」によって、事理を弁識する能力が「不十分」な場合には、
「補助」が開始され( 15 条)、「補助人」がつけられ( 16 条)、本人が「特定の法律行為」を行うには補助人の同意が必要となります( 17 条)。
「精神上の障害」によって、事理を弁識する能力が「著しく不十分」な場合には、「保佐」が開始され( 11 条)、「保佐人」がつけられ( 12 条)、本人が次の法律行為には保佐人の同意を得ることが必要となります( 17 条)。
元本の受領・利用、借財・保証、不動産など重要な財産の権利得喪訴訟行為、贈与・和解・仲裁合意、相続の承認・放棄、遺産の放棄負担付贈与の承諾・負担付遺贈の承認、新築・改築・増築・大修繕山林 10 年・土地 5 年・建物 3 年・動産 6 月を超える賃貸借
上記の行為を法定代理人としてすること
「精神上の障害」によって、事理を弁識する能力を「欠く」場合には、「xx後見」が開始され(7条)、「xx後見人」がつけられ(8 条)、本人の行った法律行為は取消して無効とできます( 9条)が、日用品購入など日常生活に関する法律行為は有効です( 9条)。
2 法律行為
「法律行為」とは、「意思表示」によって、法律上の効果を生じる行為をいい、「契約(双方行為)」、「合同行為」、「単独行為」の3種があります。
「契約」とは、売買、交換、賃貸借など、相反する意思と意思の合致によって成立する法律行為(双方行為)です。実社会で行われている法律行為のほとんどが契約です。
「合同行為」とは、団体や法人の設立など、目的を同じくする複数の意思の合致で成立する法律行為をいい、「単独行為」とは、一方的な意思表示によって成立する法律行為であり、「遺言」が典型です。
3 契 約
⑴ 契約の成立
「契約」は、法令に特別の規定がある場合を除き、締結するかどうかは各人の自由であり( 521 条1項)、「契約の内容」は、法令の制限内で、当事者が自由に決定することができます( 521 条 2 項)。
「契約の成立」は、「申込」に対する「承諾」によります( 522 条1項)。「申込」とは、契約内容を示して、契約の締結を申し入れる意思表示をいい、「承諾」とは、申込を受入れ、契約を締結しようとする意思表示をいいます。
したがって、「契約」は、意思表示によって成立します。そして、法令に特別の規定がなければ、書面などの様式は不要です( 522 条)。
⑵ 契約の分類
A 物に関する契約
a | 贈 | 与 | 無償の財産付与( 549 条) |
b | 売 | 買 | 財産権の移転と代金の支払( 555 条) |
c | 交 | 換 | 互いに財産権の移転( 586 条) |
d | 消費貸借 | 同種・同等・同量の物を返還する( 587 条) | |
e | 使用貸借 | 無償で使用収益後に返還する( 593 条) | |
f | 賃 貸 借 | 物の使用収益と賃料の支払( 601 条) | |
g | 寄 託 | 物の保管の委託( 657 条) |
B 人に関する契約
a 雇 用 労務への従事と報酬の付与( 623 条)
b | 請 | 負 | 仕事の完成と報酬の付与( 632 条) |
c | 委 | 任 | 法律行為の委託( 643 条) |
d | 準 | 委 任 | 法律行為でない事務の委託( 656 条) |
e | 婚 | 姻 | ( 739 条) |
⑶ 3種の人的契約
人の働きを利用する契約には、「雇用」「請負」「委任」の3種があります。
「雇用」とは、当事者の一方が相手方の労務に従事し、それに対して相手方が報酬を支払う契約です。「相手方の労務」とは、相手方の必要とする労働力を意味し、「相手からの労務に従事する」とは、相手方の労働力として働くことを意味します。
当然、相手方のために、相手方の必要に応じて、相手方の指揮監督下で、相手方の定める働きをすることを意味します。相手方の労務である以上、働きの場、働きの内容、働きの時間は、相手方の定めに従うのみとなります。
「請負」とは、当事者の一方が相手方の注文に応じて仕事を完成させ、その仕事の結果に対して相手方が報酬を支払う契約です。「仕事」は、請負人の知識、技術、能力、才覚などにより、請負人の判断で働くことを意味します。
「委任(準委任)」とは、当事者の一方が相手方の委託に応じて法律行為( 事実行為)を行う契約です。委託された法律行為(事実行為)は、受任者の知識、技術、能力、才覚などによって、受任者の判断によって行います。
「雇用」の働き人は、相手方に使用される「被用者」という立場ですが、「請負」「委任」の働き人は、自己の責任で事を行う「事業者」という立場です。
4 労働契約
⑴ 労働契約法
「労働契約法」は、平成 20 年に施行された、比較的新しい法律です。
⑵ 労働契約
労働契約法第1条は、「労働契約」が、① 労働者と使用者の自主的な交渉の
下で、合意によって成立し、変更されることを原則とし、② 合理的な労働条件が円滑に決定・変更され、③労働者の保護と労働関係の安定に資することを目的としています。
その際、「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいい、「使用者」とは、使用する労働者に賃金を支払う者をいいます(2条)。
⑶ 労働契約の原則
「労働契約」は、①労働者と使用者が対等の立場で、合意に基づいて締結・変更されること、②就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結・変更されること、③仕事と生活の調和に配慮しつつ締結・変更されることが求められます
(3条1~3項)。
そして、労働者と使用者には、①契約を遵守し、②xxに従い、誠実に、権利を行使し、義務を履行することが求められ、③権利の濫用が禁止されています(3条 4~5項)。
⑷ 労働契約の成立
「労働契約」は、①労働者が使用者に使用されて労働し、②使用者が労働者に賃金を支払うことについての、「労働者と使用者の合意」によって成立します(6条)。