Contract
工事請負契約約款第26条第1項~第4項
(全体スライド条項) 運用マニュアル(暫定版)
平成26年10月
小田原市
はじめに
本マニュアルは、工事請負契約約款第26条第1項から第4項の全体スライド条項について、スライド額の算定方法や発注者及び受注者間における協議等についての運用の考え方を整理したものである
1.適用対象工事
(1)工期が12か月を超える工事であること。
(2)工事請負契約約款第26条第1項の請求は、2.(3)に定める残工期が2.(2)に定める基準日から2か月以上あること。
(3)減額となる場合、物価変動後の発注者の積算を基に計算した契約金額が、
1,000分の30以上変化していると予想されること。
・全体スライドとは
項目 | 全体スライド (工事請負契約約款第26条第1項から第4項)) | |
趣旨 | 賃金水準又は物価水準などの工事費全体が変動した場合におけ る契約金額の変更規定で契約締結後12か月経過後に適用可能となる。 | |
適用対象工事 | 工期が12か月を超える工事。 但し、基準日以降、残工期が2か月以上ある工事 | |
請負額変更の方法 | 対象 | 請負契約締結の日から12か月経過した基準日以降の残工事量に対する資材、労務単価等 |
受発注者の 負 担 | 残工事費の1.5% | |
再スライド | 可能 (全体スライド又はインフレスライド適用後12か月経過後に適用可能) |
2.請求日及び基準日等について
請求日及び基準日等の定義は、以下のとおりとする。
(1)請求日:スライド変更の可能性があるため、発注者又は受注者が契約金額の変更の協議(以下「スライド協議」という。)を請求した日とする。
(2)基準日:請求日とすることを基本とする。
また、請求があった日から起算して、14日以内で発注者と受注者とが協議して定める日とすることもできる。
(3)残工期:基準日以降の工事期間とする。
・請求日について
請求に際しては、残工事の工期が基準日(請求日とすることを基本とする。請求日から14日以内の範囲で定めることもできる。)から2か月以上必要であることに留意すること。
・基準日について
発注者と受注者とが協議して定める基準日は、請求日を基本とするが、これにより難い場合は、請求日から14日以内の範囲で定める。
・残工期について
残工期については、基準日における契約工期の残工事期間を基本とするが、基準日までに変更契約を行っていない場合でも先行指示等により工期延期が明らかな場合※は、その工期延期期間を考慮することができる。
※工期延期が明らかな場合とは、打合せ記録簿等文書で確認できる場合を指す。
3.事務手続きの流れ (スライド協議の請求)
発注者又は受注者からのスライド協議の請求は、契約締結の日から12か月経過後に書面により行うことする。
受注者は、全体スライド条項適用の請求をする場合には、適用の可否や請求予定日
(基準日)について、事前に工事担当課に相談すること。
・スライド対象の確認
発注者は工期内で請負契約締結の日から12か月を経過(または、前回スライド基準日以降12か月)した段階で、スライド判定を行い、スライド協議の請求について判断することとする。
スライド判定にあたっては、設計変更に伴う変更契約を行った上で、出来高を確認し、変動前と変動後残工事契約金額により判定することを基本とする。
・xxxx協議の請求について
受注者又は発注者からのスライド協議の請求は、書面(別紙様式1-1又は1-2)により行うこととする。
・スライド額協議開始日について
発注者は、受注者の意見を聴いてスライド額協議開始日を定め、請求日から7日以内に受注者に書面(別紙様式2)により通知する。
・実施フローについて
別紙1「工事請負契約約款第26条第1項~第4項に伴う実施フロー」を参照すること。
4.契約金額の変更
(1)賃金等の変動による契約金額の変更額(以下「スライド額」という。)は、当該工事に係る変動額のうち契約金額から基準日における出来形部分に相応する契約金額を控除した額の1000分の15に相当する金額を超える額とする。
(2)増額スライド額については、次式により行う。 S増=[P2-P1-(P1×15/1000)]
この式において、S増、P1及びP2は、それぞれ次の額を表すものとする。 S増:増額スライド額
P1:契約金額から基準日における出来形部分に相応する契約金額を控除した額 P2:変動後(基準日)の賃金等を基礎として算出したP1に相当する額
(P=(α×Z)、α:当初落札率、Z:市積算額)
(3)減額スライド額については、次式により行う。 S減=[P2-P1+(P1×15/1000))]
この式において、S減、P1及びP2は、それぞれ次の額を表すものとする。 S減:減額スライド額
P1:契約金額から基準日における出来形部分に相応する契約金額を控除した額 P2:変動後(基準日)の賃金等を基礎として算出したP1に相当する額
(P=(α×Z)、α:当初落札率、Z:市積算額)
(4)スライド額は、労務単価、材料単価、機械器具損料並びにこれらに伴う共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の変更について行われるものであり、歩掛の変更については考慮するものではない。
※算定にあたって
α:当初落札率は当初契約金額(税込)/当初設計額(税込)で算出し、それ以外の数値は、税抜額で算出後、消費税率を掛けたものを加算する。
・基準日における特別調査又は見積価格採用単価について
特別調査又は見積価格採用単価については、原則見直さないこととする。ただし、価格変動が著しく、物価変動率等から客観的変動額が算出可能と判断される場合は、協議により見直すことができる。
5.出来高の確認
(1)基準日における残工事量を算定するために行う出来形数量の確認は、数量総括xx※1に対応して出来高確認を行うものとする。
(2)現場搬入材料については、認定したものは出来形数量として取り扱うこと。また、下記の材料等についても出来形数量として取り扱うものとする。
・工場製作品については、工場での確認又はミルシート等で在庫確保が証明できる材料は出来形数量として取り扱う。
・基準日以前に配置済みの現地据付型の建設機械及び仮設材料等(架設用クレーン、仮設鋼材など)も出来形の対象とする。ただし、基準日以降の賃料等については、スライド対象とする。
・契約書にて工事材料契約の完了が確認でき、近隣のストックヤード等で在庫確認が可能な材料は出来形数量として取り扱う。
(3)数量総括xxで一式明示した仮設工についても出来形数量の対象とできる。
(4)出来形数量の計上方法については、発注者側に換算数量がない場合は、受注者側の当該工種に対する構成比率により出来形数量を算出してもよい。
(5)受注者の責めに帰すべき事由により遅延していると認められる工事量は、増額スライドの場合は、出来形部分に含めるものとし、減額スライドの場合は、出来形部分に含めないものとする。
(6)基準日までに変更契約を行っていないが先行指示※2されている設計量については、スライドの対象とすることができる。
※1数量総括xxとは、建築一式工事における内訳書を含む。
※2先行指示とは、打合せ記録簿等文書で確認できる場合を指す。
・出来形数量等の確認方法について
基準日における工事の出来形数量の確認については、本マニュアル記5.に基づき実施することを基本とする。
なお、迅速かつ確実な執行が求められることから、当面、受注者に「工事出来高内訳書」等の提出を求め、これにより、数量総括xxに対応した出来高を確認できることとする。
・出来形数量等の確認時期について
発注者は、請求日から14日以内に出来高確認を行う。
6.物価指数
発注者は、積算に使用する単価を用いた変動率を物価指数とすることを基本とする。なお、受注者の協議資料等に基づき双方で合意した場合は別途の物価指数を用いることができる。
・積算に使用する単価について
変動後の価格を算定する際に用いる材料単価等については、発注者が積算に使用している物価資料等の基準日における価格を基礎とする。
・基準日における特別調査又は見積価格採用単価について
特別調査又は見積価格採用単価については、原則見直さないこととする。ただし、価格変動が著しく、物価変動率等から客観的変動額が算出可能と判断される場合は、協議により見直すことができる。
7.全体スライド及び単品スライド条項の併用
(1)工事請負契約約款第26条第1項から第4項までに規定する全体スライド条項に基づく契約金額の変更を実施した後であっても、本運用によるスライドを請求することができる。
(2)本運用に基づき契約金額の変更を実施した後であっても、工事請負契約約款第26条第5項に規定する単品スライド条項に基づく契約金額の変更を請求することができる。
・工事請負契約約款第26条第1項から第4項に規定する全体スライド条項は、材料価格を含む物価や賃金等の変動に伴う価格水準全般の変動について対応するものであることから、単品スライド条項の適用となっている材料を含めて、まずインフレスライド条項によるスライド額を算出することが基本となる。その上で、インフレスライド条項との重複を防止するため、インフレスライド条項の対象とした数量については、変動前の単価をインフレスライド条項の適用日の単価として単品スライド条項のスライド額を算出することとなる。
・また、インフレスライド条項と単品スライド条項とをそれぞれ単独で考えれば、前者においては残工事費の1%、後者においては対象工事費の1%、それぞれで受注者の負担が生じることとなる。両スライドのルールをそのままそれぞれ適用した場合には、受注者にリスクを重複して負担させることになり、結果的にリスク負担が過大なものとなる。
・このような過大なリスク負担を回避するため、単品スライド条項のみが適用される期間においては当該期間の工事費の1%を受注者の負担とするが、インフレスライド条項と単品スライド条項が併用されている期間においては、インフレスライド条項の適用により受注者が負担する残工事費の1%をもって既に単品スライド条項に係るリスク負担がなされているとの考え方に基づき、単品スライド条項に係る1%分の負担を求めないこととした。
・さらに、単品スライド条項に係る対象工事費は基本的には最終的な全体工事費であり、インフレスライド条項と併用した場合の対象工事費はインフレスライド条項に係るスライド額を含む変更後の総価となる。
工事請負契約約款
全体スライド
(賃金又は物価の変動に基づく契約金額の変更)
第26条 発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から12月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により契約金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して契約金額の変更を請求することができる。
2 発注者又は受注者は、前項の規定による請求があったときは、変動前残工事代金額
(契約金額から当該請求時の出来形部分に相応する契約金額を控除した額をいう。以下この条において同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下この条において同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の 1000 分の 15 を超える額につき、契約金額の変更に応じなければならない。
3 変動前残工事代金額及び変動後残工事代金額は、請求のあった日を基準とし、物価指数等に基づき発注者と受注者とが協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
4 第1項の規定による請求は、この条の規定により契約金額の変更を行った後再度行うことができる。この場合において、同項中「請負契約締結の日」とあるのは、「直前のこの条に基づく契約金額変更の基準とした日」とするものとする。
5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を 単
品
生じ、契約金額が不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定によるほ スイ か、契約金額の変更を請求することができる。 ラ
ン イ
フ 6 予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なイン ド
レ フレーション又はデフレーションを生じ、契約金額が著しく不適当となったときは、発
ス
ラ 注者又は受注者は、前各項の規定にかかわらず、契約金額の変更を請求することができ
イ る。
ド
7 前2項の場合において、契約金額の変更額については、発注者と受注者とが協議し
て定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
8 第3項及び前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、 受注者に通知しなければならない。ただし、発注者が第1項、第5項又は第6項の請求 を行った日又は受けた日から7日以内に協議開始の日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。
工事請負契約約款第26条第1項から第4項に伴う実施フロー
別 紙 1
期限等 手続き項目 様式 備 考
事 前 相 談
請 求 日
7日
以内
スライド額協議開始日の通知
14日
以内
基 準 日
・出来高確認
・残工事量算定
・スライド額(案)算定
スライド額協議開始
14日
以内
スライド額確定
スライド変更契約
工 期 末
様式1-1様式1-2
様式2
・発注者又は受注者から請求
・発注者から受注者に通知
2ヶ月以上
※)契約書で規定
※)本通達又は本資料で規定
様式3-1様式3-2
・受発注者で協議書取り交わし
※)契約約款で規定
※)本マニュアルで規定