Contract
サブリースの場合の敷金の取り扱い
第〇条 (敷金の預託と精算)
1.サブリース会社乙が、入居者から敷金の預託を受けたときは、預託を受けた敷金の半額をオーナー甲に預託する。
2.人居者が退去するため敷金の精算が必要となった場合には、サブリース会社乙は、オーナー甲に対し敷金精算のため、オーナー甲へ預託している敷金の返還を求めることができ、オーナー甲は、預託を受けている敷金をサブリース会社乙に返還するものとす る。
◆ 個々の契約においては入居者が退去する以前に賃料を滞納した場合においてもサブリース会社が敷金から控除することを希望する場合もあると思われます。この場合には、2項は「人居者が退去、あるいは賃料の滞納等により敷金の控除・精算が必要となった場合には、サブリース会社乙は、オーナー甲に対し敷金からの控除、敷金精算のため、オーナー甲へ預託している敷金の返還を求めることができ、オーナー甲は、預託を受けている敷金をサブリース会社乙に返還するものとする。」と特約することになると思われる。
(解 説)
サブリースの実務を見るとサブリース会社が入居者から預託された敷金の取扱いについては様々な形態があるようです。
(1)サブリース会社は入居者からサブリース会社に預託した敷金を一切オーナーに再預託しない形態
この形態は、敷金の管理をサブリース会社の独自の判断で行えることで、入居者の退去の際、サブリース会社と入居者の合意で、敷金の返還ができるメリットがあります。
しかし、この形態では、サブリース会社の信用が低く、倒産をした場合などは、入居者は退去に当たり、敷金の返還を受けられないこともあります。しかし、サブリース会社が倒産してもほとんどの場合、オーナーと入居者は直接契約に切り替えることになり、結局はオーナーの負担で敷金分の精算がおこなわれているようです。
また、この形態は、オーナーにとっても、サブリース会社が賃料を滞納した場合の敷金による担保がないということになります。但し、
この形態は、オーナーが倒産した場合でも、サブリース会社は入居者の退去に当たり、敷金を返還することができることになります
(2)サブリース会社が、入居者からサブリース会社に預託された敷金の全部又は一部をサブリース会社のオーナーに対する敷金として再預託する形態
この形態をとる場合の一つ特約例が上記の文例ですが、この形態のメリットは、サブリース会社の信用が低く、倒産した場合でも、入居者が法的な手続をとれば、サブリース会社のオーナーに対する敷金返還請求権を差し押さえて、自己の敷金(全額でないにしても)を回収できる可能性がある点にあります。但し、サブリース会社が破産したような場合には、破産管財人が、サブリース会社のオーナーに対する差入れ敷金を回収することになるでしょう。この場合には、入居者の敷金の返還にのみ充てられるわけではなく、広く一般債権者に対する配当財源になっていまい、必ずしも入居者が常に保護されるわけではありません。また、この形態でオーナーが倒産した場合、サブリース会社は、敷金の全額の回収が困難なことが多く、他方、入居者の関係では、入居者の退去に当たっては、敷金の全額を返還しなければならないというリスクがあるということです。
(3)サブリース会社が、入居者からの敷金の預託の有無に関わらず、定額の敷金をサブリース会社のオーナーに対する敷金として預託する形態
この形態の場合、オーナーにとってサブリース会社が倒産した場合でも、オーナーは、サブリース会社の賃料滞納があっても、敷金の担保があるので、被害が少なくなるメリットがあります。また、入居者が法的な手続をとれば、サブリース会社のオーナーに対する敷金返還請求権を差し押さえて、自己の敷金の回収をなし得る可能性があります。この形態の場合、オーナーが倒産した場合、サブリース会社は、敷金の全額の回収が困難なことが多く、他方、入居者の関係では、入居者の退去に当たっては、敷金の全額を返還しなければならないというリスクがあるということです。
なお、入居者が差し入れた敷金をオーナーに再預託する上記(2)の形態と、サブリース会社が定額をオーナーに預託する(3)の形態の差異は、(2)の場合には、入居者が実際に入居してサブリース会
社に敷金が預け入れられた場合にのみ、オーナーに再預託することになり、サブリース会社の資金繰りに負担がないのに対し、後者の場合は、入居者の有無に関わらず、サブリース会社は独自に資金繰りをして、敷金を捻出しなくてはならない点にあります。