第 9 節 請負契約および類似の契約(第 631 条~第 651m 条)
ドイツ
第 9 節 請負契約および類似の契約(第 631 条~第 651m 条)
第 2 款 旅行契約
1.背景
1979 年 5 月 4 日付けの旅行契約法により民法典に導入された。
1990 年 6 月 13 日 EC パックツアー指令の国内法化により、旅行主催者の破産の場合の消費者保護 651K 条など、内容拡充。
近時も、2001 年 7 月 23 日付け改正旅行契約法(同年 9 月 2 日以降締結された契約に適用)によりホームスティ Gastschulaufenthalte ホームスティについての規定が追加されている (第 651l 条)。
2.旅行契約に関する規定の評価と展望1
消費者保護立法のなかの失敗例として厳しい批判にさられている。幾多の改正を経てもなお法政策的な目的が十分に規定に反映されておらず、また、実際に到達できていない点、さらには、重要な規定の適用範囲が不明確なままである。
一例として、旅行契約法の適用範囲に関する実務の混迷状況を紹介する。
立法者としては、適用範囲をいわゆるパッケージ旅行契約に限定する意図であり、個別の旅行サービスに対して規律を及ぼすことには否定的であった。
しかしながら、本規定施行後しばらくすると、まずは下級審レベルで様々な規定をパッケージ旅行以外に「類推適用」を肯定する判決が相次いだ。判例の動揺は最上級審レベルでも発生している。すなわち、「想定外の立法の不備」を理由に貸別荘契約(Ferienhaus)に旅行契約法の規定の類推適用を肯定する最上級審判決が下され(BGHZ 119, 152, 163 –
v.9.7.1992)、その後あまり時間をおかずに判例変更をしている(BGHZ 130, 128 Segelyacht)。学説も、立法者は個別の旅行サービスを看過していたわけではなく「想定外の立法の不備」はなく、伝統的な解釈方法論に照らして類推適用は否定されるべきという考え方がある一 方、旅行サービスの形態、規模にも変化がみられる現代において、旅行契約法の適用範囲 を拡張するニーズはあるとして、下級審裁判例や旧判例を支持する立場とがある。
いずれの立場からも、判例が定立した「主催旅行」とは「ひろく旅行そのもの」の「具体化」を主催者が約束しているものをいうとの基準は説得力に欠けると批判されている。たしかに、ホテルやキャンピングカーの手配等の個別の旅行サービスを超え、(第 651a 条のいう旅行主催者が負うとされている)「総体としての旅行サービス」とは何か、依然不明
1 Xxxxxx: in Ermann-Kommentar, BGB, Bd.I, 12.Aufl., 2008, Vor §651 a, Rn.7f.
なままである。結局、学説は今日なお適用の有無を決する基準を定立できていない。
3.参考情報
・韓国民法改正試案における評価
「かなりの規定が行政的規定であって(例として第 651a 条第 5 項が連邦司法省の権限、旧第 651k 条第 1 項が旅行主催者の保険加入を扱っていた点を挙げる)、民法の規定としては適切でないことが多いなど、多くの批判がなされている。このようなことを考慮し、民法にはごく一般的な規定だけを設けている2。
4.条文3第 651a 条
(1) 旅行契約により、旅行主催者は、旅行者に対して総体としての旅行サービス(旅行)を提供する義務を負う。旅行者は、旅行主催者に対し同意した旅行代金を支払う義務を負う。
(2) 個別の旅行サービスを実施する者(サービス担当者)との契約を仲介するに留まる旨の意思表示は、他の事情に照らせば、表意者が契約で予定された旅行サービスを自らの責任において提供する旨の外観があると認められる場合には考慮されない(効力を有さない)。
(3) 旅行主催者は、旅行者に対して、契約締結時又は遅滞なく、旅行契約に関する証書 (Urkunde)(旅行確認書)を提供しなければならない。旅行確認書及び旅行主催者が提供していたパンフレットは、民法施行法第 238 条による法規命令が定める事項を記載しなければならない。
(4) 旅行主催者は、新たな価格による計算が予定されている旨が契約xxxされており、それに伴い、運賃の値上げ、港湾・空港手数料といった特定のサービス使用料、又は当該旅行に適用される為替レートに変更がある場合に限り、旅行代金の値上げをすることができる。合意された出発日前 20 日以降になされた値上げは無効である。第 309 条第 1 号の適用は妨げられない。
(5) 旅行主催者は、第 4 項に基づく旅行代金の変更、法的に許容される旅行サービスの本質的な変更、法的に許容される旅行の中止(Absage)がある場合、変更又は中止の原因を認識したら直ちに旅行者に説明しなければならない。100 分の 5 を超える旅行代金の値上げ、又は重要な旅行サービスに重大な変更がある場合、旅行者は契約を解除することができる。この場合、旅行者は、解除に代えて、旅行主催者により旅行が中止される場合と同様、少なくとも同様の価値のある他の旅行への参加を要求することができる。ただし、旅行主催者が、当該代替旅行を、旅行者に対して追加料金なしに自ら提供できる場合に限る。旅行
2 鄭鍾休「韓国民法改正試案について――債権編を中心として」『契約法における現代化の課題』(法政大学出版局・2002 年)171 頁。
3 xxxx編『注釈ドイツ契約法』(三省堂・1995 年)447 頁以下[xxxx](ただし、改正前)、xxx「ドイツにおける旅行規定第二次改正法と旅行契約法の改正規定」広島法学 26 巻 1号(2002 年)183 頁以下(その後も改正あり)を参照した。
者は、旅行主催者による説明を受けた後、直ちにこの権利を行使しなければならない。
第 651b 条 契約上の地位の移転(Vertragsübertragung)
(1) 旅行者は、旅行開始時まで、旅行契約に基づく権利及び義務が自己に代わる第三者に生ずることを請求することができる。旅行主催者は、第三者が特別の旅行条件を満たさない、又はその参加が法律上の規定もしくは当局の規制に反する場合、第三者が契約関係に入ること(Eintritt)に異議を唱えることができる。
(2) 第三者が契約関係に入る場合、同人と旅行者は、旅行代金及び第三者の契約参加に伴い発生する追加費用につき旅行主催者に対して連帯して責任を負う。
第 651c 条 救済・対応策(Abhilfe)
(1) 旅行主催者は、旅行が保証された性質(Eigenschaft)を備え、かつ、その価格又は通常もしくは契約上予定された利用に対する適性を欠く、又は損なうような瑕疵のない形で旅行を提供する義務を負う。
(2) 旅行者は、旅行が前項にいう性質を備えていない場合、対応策を講じるよう請求することができる。旅行主催者は、対応策に過分の費用を要する場合、それを拒絶することができる。
(3) 旅行者は、旅行主催者が旅行者の指定した相当の期間内に救済を提供しない場合、自ら対応策を講じ、必要費用の償還を請求することができる。旅行主催者が対応策を講じることを拒絶している場合、又は、旅行者の特別な利益状況により即時の対応策が必要とされている場合、期限を設定することを要さない。
第 651d 条 減額
(1) 旅行に第 651c 条第 1 項にいう瑕疵がある場合、旅行代金は第 472 条の規定に従い瑕疵の存続期間につき減額される。
(2) 旅行者が過失により(schuldhaft)瑕疵の通知を怠ったときは、減額はなされない。
第 651e 条 瑕疵に基づく解約告知(Kündigung)
(1) 旅行が、第 651c 条が定める形態の瑕疵によって著しく侵害されたときは、旅行者は契約を解約告知することができる。同種の瑕疵の結果として、旅行主催者に認識可能な重大な理由により旅行の提供を期待することができない場合も同様とする。
(2) 旅行契約の解約告知は、旅行主催者が、救済を提供しないまま旅行者が定めた相当な期間を経過した場合に初めて許される。救済が不能もしくは旅行主催者によち拒絶されている場合、または、旅行者の即時の解約告知につき特別の利益を有しており、それが正当とされる場合、期間を定めることを要さない。
(3) 契約が解約告知されたときは、旅行主催者は約定された旅行代金を請求する権利を失
う。ただし、旅行主催者は、既に提供済みまたは終了のためになお提供されるべき旅行給付について、第 638 条第 3 項により算定される補償(Entschädigung)を請求することができる。ただし、契約の解消に伴い、これらの給付が旅行者に利益をもたらさない場合(kein Interesse haben)はこの限りではない。
(4) 旅行主催者は、契約の解消により必要な措置を講ずる義務、とりわけ、契約上、帰路運送が含まれている場合、旅行者を帰路運送する義務を負う。増加費用は旅行主催者の負担とする。
第 651f 条 損害賠償
(1) 旅行の瑕疵が旅行主催者の責に帰すべき事由に基づくときは、旅行者は、減額または解約告知とは別に、不履行に基づく損害の賠償を請求することができる。
(2) 旅行が不能または著しく侵害されたときは、旅行者は無益に費消した休暇期間につき相当の補償として金銭の支払いを請求することができる。
第 651g 条 除斥期間、消滅時効
(1) 旅行者は、第 651c 条ないし第 651f 条に基づく請求権を契約上予定された旅行終了後 1 か月以内に行使しなければならない。この場合、第 174 条は適用しない。期間を経過した後は、旅行者が過失なくして期間の遵守を妨げられたときに限り、請求権の行使が認められる。
(2) 第 651c 条ないし第 651f 条に基づく請求権は、2 年間で時効により消滅する。消滅時効期間は、旅行が契約上終了すべき日から起算される。
第 651h 条 許容される責任制限
(1) 旅行主催者は、次の場合、旅行者との合意により、非人身損害についての自己の責任を旅行代金の 3 倍額に制限することができる。
1.旅行者の損害が故意または重大な過失により引き起こされたものではないときまたは
2.旅行サービス提供者の過失によって旅行者に生じた損害につき、旅行主催者が責任を負うとき。
(2) 旅行サービス提供者の履行すべき旅行給付に国際条約またはそれに基づく法規定の適用があり、それによれば、損害賠償請求権が一定の要件もしくは制限の下でのみ成立、請求可能、または一定の要件の下で排除されるときは、旅行主催者も旅行者との関係において当該規定を引き合いに出すことができる。
第 651i 条 旅行開始前の解除
(1) 旅行者は、旅行開始前はいつでも契約を解除することができる。
(2) 旅行者が契約を解除したときは、旅行主催者は、合意した旅行代金を請求する権利を失う。ただし、旅行主催者は、相当額の損害の賠償(Entschädigung)を請求することができる。賠償額は、旅行代金から、旅行主催者が節約した出費および旅行主催者が旅行サービスをほかに用いることで通常認められるべき填補可能性については控除するものとする。
(3) 損害賠償額は、個々の旅行態様毎に、通常節約されるべき出費および旅行サービスをほかに用いることで通常認められるべき填補可能性を考慮した上、契約において旅行代金の百分率をもって定めることができる。
第 651j 条 不可抗力に基づく解約告知
(1) 旅行が契約締結時には予見できない不可抗力により著しく困難、危殆化、または侵害されるときは、旅行主催者および旅行者は本条により契約を解約告知することができる。
(2) 契約が第 1 項により解約告知されたとき、第 651e 条第 1 項第 1 文および第 2 文、ならびに第 4 項第 1 文の規定を適用する。帰路運送のための増加費用は、当事者双方が各々が折半して負担する。その他の増加費用は旅行者の負担とする。
第 651k 条 保証、支払
(1) 旅行主催者は、旅行者に次の各号に定めるものが償還されるよう、保証しなければならない。
1.旅行主催者の資産につき支払不能または破産手続が開始した結果、旅行サービスが中止された限りにおいて、支払済みの旅行代金 および
2.旅行主催者の資産につき支払不能または破産手続が開始した結果、帰路旅行のために旅行者に生ずる必要費用。
旅行主催者は、第 1 文の定める義務を次の方法によって履行しなければならない
1.本法の適用領域において営業資格を有する保険会社の保険による または
2.本法の適用領域において営業資格を有する信用機関の支払約束による。
(2) 保険者または信用機関(顧客金保証者 Kundengeldabsicherer)は、本法に基づき償還すべき金額の総計を 1 年間で 1 億 1000 万ユーロに制限することができる。顧客金保証者が本法に基づき償還すべき金額の総計が 1 文にいう限度額を超えるときは、個々の償還請求権は、その金額の総計が限度額に対する比率に応じて減額されるものとする。
(3) 旅行主催者は、第 1 項にいう義務の履行につき、顧客に対して顧客金保証者への直接請求権を与え、その証拠として顧客金保証者自身またはその委託により発行された確認書 (保証証書)を引き渡さねばならない。顧客金保証者は、保証証書の引渡しを受けた旅行者に対して、顧客金保証契約から生じる抗弁を援用することも、保証証書が顧客金保証契約の終了後に発行された旨の抗弁を主張することもできない。第 2 文が定める場合、顧客金保証者が旅行者に満足を与えた限りにおいて、旅行者の旅行主催者に対する請求権は顧客金保証者に移転する。旅行仲介者が保証証書を旅行者に引き渡すときは、旅行仲介者は、旅
行者に対して保証証書の有効性を審査する義務を負う。
(4) 旅行主催者および旅行仲介者は、保証証書が旅行者に引き渡された場合に限り、旅行終了前に旅行代金の支払を請求または受領することができる。旅行仲介者については、旅行仲介者が保証証書を引渡し、またはその他、旅行主催者の責に帰すべき事由により旅行主催者のために旅行契約を仲介する旨の委託を受けていると目されるときは、旅行主催者から旅行代金の支払いの受領権限を付与されているものとみなす。ただし、旅行仲介者が旅行代金の支払を受領することが、旅行者との関係で強調された形で排除されているときは、この限りではない。
(5) 旅行主催者が、契約締結時点においてヨーロッパ共同体の他の加盟国またはヨーロッパ経済領域協定の他の締約国に本店を置く場合、旅行主催者は、旅行者に対して当該国の規定に沿った保証を提供し、かつ、それが本条第 1 項第 1 文の要件に適っている場合、第 1項の規定する義務を果たしているものとする。第 4 項の規定は、旅行者に対する保証の提供が証明されなければならないとの条件のもので適用される。
(6) 次の場合、本条第 1 項ないし第 5 項の規定は適用されない
1.旅行主催者が、時折、その営業活動外でしか旅行を主催しないとき
2.旅行が 24 時間を超えず、宿泊を含まず、かつ旅行代金が 75 ユーロを超えないとき
3.旅行主催者が、その資産につき倒産手続を開始することが許されない公法上の法人であるとき。
第 651l 条 留学滞在(Gastschulaufenthalte)
(1) 3 か月以上継続し、xxの学校滞在と結合した留学生の外国での(受入国)受入家庭(ホスト・ファミリー)における滞在を目的とする旅行契約には、以下の規定が適用される。短期の留学滞在(第1 文)またはxxの実習と結合した受入国内の受入家庭での滞在を目的とする旅行契約については、合意がある場合に限り、以下の規定が適用される。
(2) 旅行主催者は、次の義務を負う。
1.留学生の協力のもとで、受入国の事情に照らして適切な宿泊、監督、世話が留学生に対して受入家庭においてなされるよう配慮すること および
2.留学生が受入国におけるxxの学校滞在のための前提条件を整備すること。
(3) 旅行者が旅行開始前に契約を解除したとき、旅行主催者が遅くとも旅行開始の 2 週間前までに旅行者に対して次の事項につき情報提供をせず、滞在のための準備を適切に行わなかった場合、第 651i 条第 2 項第 2 文および第 3 文ならびに第 3 項の規定は適用しない。
1.到着後の留学生のために定められた受入家庭の名前および住所
2.受入国において救済を請求することができる相談者の名前と連絡先。
(4) 旅行者は旅行が終了するまでいつでも契約を解約告知することができる。旅行者が解約告知したときは、旅行主催者は、合意された旅行代金から節約された費用を控除した金額の支払を請求することができる。旅行主催者は、解約告知に伴い必要となる措置を講ず
る義務、とりわけ、帰路運送が契約に含まれている場合には留学生を帰路運送する義務を負う。増加費用は旅行者が負担する。上記の定めは、旅行者が第 651e 条または第 651j 条により解約告知できるときには適用しない。
第 651m 条 異なる合意
第 651a 条ないし第 651l 条の規定は、旅行者の不利益に変更することはできない。
第 10 節 仲立契約(第 652 条~第 656 条)
第 1 款 一般規定
第 652 条 報酬請求権(Lohnanspruch)の成立
(1) 契約締結の機会を斡旋し、または、契約を仲介したことにつき仲立報酬(Mäklerlohn)を約束した者は、仲立人の斡旋または仲介によって契約が成立した場合にのみ報酬を支払う義務を負う。契約が停止条件付きで締結された場合、仲立報酬は、条件が成就してはじめて請求することができる。
(2) 費用は、合意があるときには仲立人に償還する。契約が成立しなかった場合についても同様とする。
第 653 条 仲立報酬(Mäklerlohn)
(1) 仲立人に委託された給付が諸事情に照らして報酬と引き換えにのみ期待できるというべきときは、仲立報酬が黙示的に合意されたものとする。
(2) 報酬金額の定めがない場合、公定価格があるときはそれにより、そのような公定価格がないときは通常の報酬額が合意されたものとみなす。
第 654 条 報酬請求権の喪失
仲立人が契約内容につき相手方の利益のためにも行動していたと目される場合、仲立報酬および費用償還を請求するはできない。
第 655 条 仲立報酬の減額
雇用契約締結の機会の斡旋または雇用契約の仲介につき、不当に高額の仲立報酬が合意されている場合、当該報酬は、債務者の申立てにより判決によって相当な金額に減額され得る。ただし、報酬が支払われた後は、減額できない。
第 2 款 事業者・消費者間の消費貸借仲介契約
* 債務法現代化法による消費者信用法の民法典への編入に伴い、仲立契約のなかに移
行された(旧消費者信用法第 1 条 3 項、第 3 条、第 15 条ないし第 17 条)。とはいえ、立
法者は、特に理由を明らかにしないまま、旧消費者信用法第 1 条 3 項がカバーしていた支払猶予、その他の金融支援については削ぎ落して、「消費貸借」の仲介に限定している。これに伴い、ファイナンス・リース等は適用範囲から落ちる結果となっている。
(Xxxxxx/Xxxxxxx, in Ermann, BGB, Vor §655a Rz.1.)
第 655a 条 消費貸借仲介契約
事業者が、報酬と引き換えに消費者に対して消費者消費貸借契約を仲介し、または、消費者に対して消費者消費貸借契約を締結する機会をあっせんすることを目的とする契約には、本条第 2 文の場合を除き、以下の規定が適用される。このことは、本法第 491 条 2 項の定める限りにおいては妥当しない。
第 655b 条 書面方式
(1) 消費貸借仲介契約は、書面方式によらなければならない。情報提供義務に加えて、契約においては、とりわけ消費貸借仲介者の報酬が消費貸借金額を基礎に百分率で記載されなければならない;消費貸借仲介者が事業者との間においても報酬の合意をしたときは、当該報酬についても記載することを要する。契約は、金銭消費貸借の委託と結合していてはならない。消費貸借仲介者は、消費者に対して契約内容をテキスト方式で通知することを要する。
(2) 消費貸借仲介契約で第 1 項第 1 文ないし第 3 文の要件を満たさないものは、無効とする。
第 655c 条 報酬
消費者は、消費貸借仲介者により消費者への貸付けが仲介または斡旋(Nachweis)がなされ、かつ、第 355 条による消費者の撤回権行使ができなくなった後でない限り、報酬を支払う義務を負わない。消費者消費貸借契約が他の消費貸借からの期限前償還(借り換え)を目的としていることを消費貸借仲介者が知っているときは、報酬請求権は、実質年利率または当初の実質年利率を引き上げないときにのみ、成立する;償還される消費貸借の実質年利率または当初の実質年利率の算定にあたっては仲介費用は考慮しないものとする。
第 655d 条 付随的対価
消費貸借仲介者は、消費者消費貸借契約の仲介または消費者消費貸借契約の締結機会を斡旋に伴う給付につき、第 655c 条第 1 文が定める報酬以外の対価を合意してはならない。ただし、消費貸借仲介者に生じた必要費の償還を合意することは妨げられない。
第 655e 条 異なる合意、開業者への適用
(1) この款の規定と異なり、消費者により不利なものは合意はしてはならない。この款の規定は、他の法形式によって回避する時も適用される。
(2) この款は、事業者と第 507 条にいう開業者との間で締結された消費貸借仲介契約にも適用される。
第 3 款 婚姻仲立
* 債務法現代化法により、消費貸借仲介契約が仲立契約の特別類型として規定が置かれたことから、第 3 款として独立している。
第 656 条 婚姻仲立
(1) 婚姻成立の機会を斡旋すること、または婚姻の成立を仲介することにつき、報酬の約束しても、債務(Verbindlichkeit)は発生しない。約束に基づき給付されたものは、債務がないことを理由に返還請求をなすことができない。
(2) 前項の規定は、相手方が約束の履行を目的として仲立人に対して債務を負う合意、とりわけ債務承認についても適用される。
第 12 節 委任、事務処理契約および決済サービス(Zahlungsdienste)
* 決済サービス指令の国内法化に伴うドイツ民法典の改正(2009 年 11 月 1 日施行)に伴う第 12 節の改正について
第 1 款 委任
第 662 条~第 674 条
第 2 款 事務処理契約
第 675 条 有償事務処理第 675a 条 情報提供義務
第 675b 条 システム内における証券譲渡の指図
第 3 款 決済サービス第 1 目 総則
第 675c 条 決済サービスおよび電子マネー
第 675d 条 決済サービスに際しての情報提供第 675e 条 異なる合意
第 2 目 決済サービス契約
第 675f 条 決済サービス契約
第 675g 条 決済サービス枠契約の変更
第 675h 条 決済サービス枠契約の通常解約告知権第 675i 条 少額商品および電子マネーに関する例外
第 3 目 決済サービスの実行および利用
第 1*Unterkapitel 決済取引の権限認証:決済認証第 675j 条 同意および同意の撤回
第 675k 条 利用制限
第 675l 条 決済認証手段に関する支払人の義務
第 675m 条 決済認証手段に関する決済サービス業者の義務:送信のリスク第 2*Unterkapitel 決済取引の執行
第 675n 条 決済指図の到達第 675o 条 決済指図の拒絶
第 675p 条 決済指図の撤回不可能性第 675q 条 決済取引の報酬
第 675r 条 顧客コードに基づく決済取引の執行第 675s 条 決済取引の執行期限
第 675t 条 入金記帳日付および資金の利用可能性第 3*Unterkapitel 責任
第 675u 条 無権限の決済取引に対する決済サービス業者の責任第 675v 条 決済認証手段の濫用的使用に対する支払人の責任 第 675w 条 権限認証の証明
第 675x 条 権限ある決済取引が受取人により、または受取人につき解約された場合の払戻義務
第 675y 条 決済サービス業者の決済指図の不執行または執行に瑕疵があった場合の責任;調査義務
第 675z 条 決済指図の不執行もしくは執行に瑕疵があった場合、または無権限の決済取引が行われた場合の決済サービス業者の責任
第 676 条 決済取引の執行の証明
第 676a 条 補償請求
第 676b 条 無権限または執行に瑕疵のある決済取引の表示第 676c 条 免責
第 12 節 委任、事務処理契約および決済サービス(Zahlungsdienste)(抄訳)
第 1 款 委任(第 662 条~第 674 条)
第 2 款 事務処理契約
xxは、次のヨーロッパ共同体指令を国内法化したものである。
1. 国境を越えた振込に関する 1997 年 1 月 27 日付けのヨーロッパ議会および理事会の指令 97/7/EG(EG 官報第 L43 号 25 頁)
2. 支払および証券決済システムにおける決済の実効性に関する 1998 年 5 月 19 日付けのヨーロッパ議会および理事会の指令 98/26/EG の第 3 条~第 5 条(EG 官報第 L166 号 45頁)
第 675 条 有償事務処理
(1) 事務処理を目的とする雇用契約または請負契約については、xxにおいて別段の定めがない限り、第 663 条、第 665 条ないし第 670 条、および第 672 条ないし第 674 条の規定を準用し、かつ、義務者が解約告知期間の定めにかかわらず解約告知する権利を有するときについては、第 671 条第 2 項に規定も準用する。
(2) 他人に助言または推奨をおこなう者は、契約関係、不法行為またはその他の規定に基づき責任を負う場合を除き、助言または推奨に従ったことで生じた損害を賠償する義務を負わない。
第 675a 条 情報提供義務
事務処理を公に任じられ、または、事務処理の引受けを公に申し出た者は、通常実施される標準的事務(標準事務)につき、書面により、または適切な場合には電磁的方式により、報酬および事務処理費用に関する情報を無償で提供しなければならない。ただし、第 315条による価格の確定がおこなわれる場合および報酬と費用が法律により拘束的に規制されている場合はこの限りではない。
第 3 款 決済サービス第 1 目 総則
第 675c 条 決済サービスおよび電子マネー
(1) 決済サービスの実行を目的とする事務処理契約については、xxにおいて別段の規定のない限り、第 663 条、第 665 条ないし第 670 条、および第 672 条ないし第 674 条の規定を準用する。
(2) xxの規定は、電子マネーの発行および利用に関する契約にも適用される。
(3) 信用制度法および決済サービス監督法の定義規定は、本法にも適用される。
第 675d 条 決済サービスに際しての情報提供
(1) 決済サービス業者は、決済サービスの実行に際して、民法施行法第 248 条 1 乃至 16条が定める事項につき同条所定の方式により、決済サービス利用者に対して通知しなければならない。ただし、ヨーロッパ経済圏外の国の通貨による決済サービスの実行または、支払人の決済サービス業者もしくは受取人がヨーロッパ経済圏外に存在している場合については、この限りではない。
(2) 通知の適法性につき争いがあるときは、決済サービス業者が立証責任を負う。
(3) 決済サービス業者は、情報が決済サービス利用者の要請に基づき提供され、かつ、以下に掲げるいずれかの場合に該当する場合に限り、決済サービス利用者との間で通知についての対価を合意することができる。
1.決済サービス業者が、民法施行法第 248 条第 1 乃至第 16 条が定めるものよりも頻繁に情報を提供する場合
2.決済サービス業者が、民法施行法第 248 条第 1 乃至第 16 条が定めているものよりも広範囲の情報を提供する場合
3.決済サービス業者が、民法施行法第 248 条第 1 乃至第 16 条が定めているものとは異なる通信手段によって情報を提供する場合
対価は、適正でなければならず、決済サービス業者に実際に生ずる費用に応じたものでなければならない。
(4) 受取人および第三者は、民法施行法第 248 条第 17 条および第 18 条が定める事項について通知するものとする。
第 675e 条 異なる合意
(1) 特段の定めがある場合を除き、xxの規定よりも決済サービス利用者に不利な変更をしてはならない。
(2) 第 675d 条第 1 項第 2 文にいう決済サービスについては、第 675q 条第 1 項および第 3項、第 675s 条第 1 項、第 675t 条第 2 項、第 675x 条第 1 項、第 675y 条第 1 項および第 2項、ならびに第 675z 条第 3 文の規定は適用しない。さらに、当該決済サービスがヨーロッパ経済圏外の一国の通貨で実行されるときは、第 675t 条第 1 項も適用しない。その他、第 675d 条第 1 項第 2 文にいう決済サービスについては、xxの規定よりも決済サービス利用者に不利に変更することができる。ただし、当該決済サービスがユーロ、ヨーロッパ連合
の一加盟国またはヨーロッパ経済圏協定の締約国の通貨で実行される場合については、第 675t 条第 1 項第 1 文および第 2 文、ならびに同条第 3 項については、これとは異なるものとする。
(3) ユーロで実施されない決済取引については、決済サービス利用者は自己の決済サービス業者との間で、第 675t 条第 1 項第 3 文および同条第 2 項の規定の全部または一部につき適用しない旨の合意をすることができる。
(4) 決済サービス利用者が消費者でないときは、当事者は、第 675d 条第 1 項第 1 文、同条第 2 項ないし第 4 項、第 675f 条第 4 項第 2 文、第 675g 条、第 675h 条、第 675j 条第 2項および第 675p 条、ならびに第 675 条ないし 676 条の規定について、その全部または一部を適用しない旨の合意をすることができる。同人らは、第 676b 条が規定する期間を変更する旨の合意をなすこともできる。
第 2 目 決済サービス契約 第 675f 条 決済サービス契約
(1) 個別決済契約(Einzelzahlungsvertrag)により、決済サービス業者は、決済サービスを支払人、受取人またはその双方の立場を要求する者(決済サービス利用者)のために、決済取引を執行する義務を負う。
(2) 枠決済サービス契約(Zahlungsdiensterahmenvertrag)により、決済サービス業者は、決済サービス利用者に対して、個別またはそれに続けておこなわれる決済取引を執行する義務を負い、場合により、ひとりまたは複数の決済サービス利用者の名において、決済サービス利用者のために継続的決済口座を管理する義務を負う。枠決済サービス契約は、他の契約の一部を構成し、または別の契約と密接に関連することを妨げない。
(3) 決済取引とは、資金を預入れ、移動し、または引き出すためのあらゆる行為をいい、支払人と受取人との間における法的原因関係は問わない。決済指図とは、支払人が自己の決済サービス業者に対して決済取引の執行する旨の委託をいい、その形式、および、それが直接または受取人を介して間接的に伝達されるかは問わない。
(4) 決済サービス利用者は、決済サービス業者に対して執行された決済サービスに合意した報酬を支払う義務を負う。xxの定める付随的義務の履行については、それが許容される限りにおいて、決済サービス利用者と決済サービス業者との間で合意がなされた場合にのみ、決済サービス業者は報酬を請求することができる。その報酬は適正で、かつ、現実に生ずる決済サービスの費用に照準を合わせたものであることを要する。
(5) 受取人と決済サービス業者との間の枠決済サービス契約においては、受取人が、特定の決済認証手段の利用について支払人に軽減措置を提供する権利を排除してはならない。
第 675g 条 決済サービス枠契約の変更
(1) 決済サービス業者が主導して行う枠決済サービス契約の変更には、提案されている発効期日の少なくとも 2 カ月前までに決済サービス利用者に対して民法施行法第 248 条第 2条及び第 3 条所定の方式により、企図されている変更内容が提供されていることを要する。
(2) 決済サービス業者と決済サービス利用者は、決済サービス利用者が、提案されている変更の発効日までに異議を唱えない限り、本条第 1 項にいう変更に対する決済サービス利用者の同意がなされたものとみなす旨を同意することができる。当該合意がなされる場合、決済サービス利用者には、提案されている変更の発効日までに、枠決済サービス契約を催告なしに解約告知する権利が与えられなければならない。決済サービス業者は、決済サービス利用者に対して、契約の変更の申し出と共に、決済サービス利用者が沈黙した場合の効果、および、無料かつ無催告で解約告知をなす権利を有する旨を指摘する義務を負う。
(3) 利率および為替相場の変更は直接、かつ、事前の通知なく効力を生ずる。ただし、その旨枠決済サービス契約において合意がなされ、かつ、当該変更がそこで合意された基準利率(Referenzzinssätzen)または基準為替相場(Referenzwechselkursen)の変動に準拠している場合に限る。基準利率とは、利息計算にあたり基準とされる利率で、公に入手可能で決済サービス契約の双方当事者にとって検証可能な情報源に由来するものをいう。基準為替相場とは、あらゆる通貨交換の基準とされる為替相場で、決済サービス業者が入手可能または公に入手可能な情報源に由来するものをいう。
(4) 決済サービス利用者は、本条第 3 項による計算により不利益を受けることはない。
第 675h 条 決済サービス枠契約の通常解約告知権
(1) 決済サービス利用者は、枠決済サービス契約において解約告知期間に関する合意がない限り、いつでも解約告知期間を定めることなく枠決済サービス契約を解約告知することができる。契約において特定の契約締結期間についての定めがあった場合も同様とする。1月以上の解約告知期間の合意は無効とする。
(2) 決済サービス業者は、枠決済サービス契約の期間について定めがなく、解約告知権について合意がある場合に限り、枠決済サービス契約を解約告知することができる。解約告知期間は 2 カ月を超えてはならない。解約告知の意思は、民法施行法第 248 条第 2 条ないし第 3 条所定の方式によって表示されなければならない。
(3) 解約告知がなされた場合、通常生ずる報酬は、契約が終了する時点までについて割合的に計算する。事前に支払われていた報酬で、契約終了後に期限が到来するものについては、割合的に償還されなければならない。
第 3 目 決済サービスの実行および利用
第 1*Unterkapitel 決済取引の権限認証:決済認証(第 675j 条~第 675m 条)第 2*Unterkapitel 決済取引の執行
第 675n 条 決済指図の到達
(1) 決済指図は、支払人の決済サービス業者に到達したときに効力を生ずる。到達の時点が支払人の決済サービス業者の営業日でないときは、決済指図は翌営業日に到達した者とみなす。決済サービス業者は、営業日が終了する間際の時点で到達した決済指図については、第 675s 条第 1 項の目的のため、翌営業日に到達したものとみなすことができる。営業日とは、決済取引の執行に参加する決済サービス業者が決済取引の執行に必要な営業活動をおこなう日をいう。
(2) 決済取引を起動させた決済サービス利用者、または同人についての決済取引が起動しているような決済サービス利用者が自己の決済サービス業者との間で、特定の日もしくは特定の期間の終了時、または支払人が決済サービス業者に必要な資金を入金した日をもって、決済指図の執行を開始する旨の合意をしたときは、第 675s 条第 1 項の目的のためには、当該合意された日を到達時とみなす。合意された日時が支払人の決済サービス業者の営業日でないときは、第 675s 条第 1 項の目的のためには、翌営業日を到達時とみなす。
第 675o 条 決済指図の拒絶
(1) 決済サービス業者が決済指図の執行を拒絶したときは、決済サービス利用者に対して、遅滞なくその旨を通知しなければならない。当該通知は、いかなる場合においても、第 675s条第 1 項の期間内におこなわなければならない。通知においては、可能な限りにおいて、拒絶の理由、および、拒絶するに至った間違い等の可能性についての報告も記載することとする。理由については、それが他の法令の規定に違反する可能性があったことによる限り、記載しないでおくことができる。決済サービス業者は、枠決済サービス契約において決済サービス利用者との間で、正当な拒絶についての通知についての報酬を合意することができる。
(2) 支払人の決済サービス業者は、権限認証のなされた決済指図の執行については、それが枠決済サービス契約で規定された執行条件を満たしており、かつ、その執行が他の法令の規定に違反することがない限り、拒絶することができない。
(3) 執行が正当な理由に基づき拒絶された決済指図は、第 675s 条、第 675y 条、および第
675z 条の目的との関係では、到達しなかったものとみなす。
第 675p 条 決済指図の撤回不可能性
(1) 決済サービス利用者は、本条第 2 項ないし第 4 項の場合を除き、支払人の決済サービス業者への到達後は決済指図を撤回することができない。
(2) 決済取引が受取人から起動され、または受取人のために起動した場合、支払人は、支払指図または受取人への決済取引の執行につき同意を通知した後は、支払指図を撤回することができない。ただし、ラストシュリフトにおいては、支払人は自己の権利を損なうことなく第675x 条に従い合意された満了日の前日の営業日の終了までは決済指図を撤回する
ことができる。
(3) 決済サービス利用者が自己の決済サービス業者との間で決済指図の執行につき特定の期日を合意していたときは(第 675n 条第 2 項)、決済サービス利用者は、合意した日の前日の営業日の終了までは決済指図を撤回することができる。
(4) 決済指図は、本条第 1 項ないし第 3 項が定める時点以降は、決済サービス利用者が自己の決済サービス業者との間で合意した場合に限り、撤回が認められる。本条第 2 項所定の場合については、更に、受取人が撤回に同意していることを要する。決済サービス業者は、決済サービス利用者との間で、枠決済サービス契約において本項の撤回処理のための報酬を合意することができる。
(5) 決済流通システムへの参加者は、当該システムの規則で定められた時点以降は、他の参加者のための指図を撤回することができない。
第 675t 条 入金記帳日付および資金の利用可能性
(1) 受取人の決済サービス業者は、決済サービス業者の口座に入金がなされた後、遅滞な く決済取引金額を利用可能にする義務を負う。決済取引金額が受取人の支払口座に入金記 帳されるべきときは、記帳が事後的になされる場合もふくめ、決済サービス業者が支払口 座への一定金額の入金記帳または引落記帳の利息計算の基準時(入金記帳日付)は、遅くとも、受取人の決済サービス業者の口座に入金がなされた営業日中とする。第 1 文は、受取人が 決済取引口座を有していないときにも適用する。
(2) 消費者が決済サービス業者の支払口座に当該支払口座の通貨の現金で入金するときは、当該決済サービス業者は、その資金を受領した後遅滞なく、受取人が利用可能となるよう 入金処理を行うことを保証しなければならない。決済サービス利用者が消費者でないとき は、遅くとも受領の翌営業日には受取人に資金が利用可能となるよう入金処理を行わなけ ればならない。
(3) 支払人の決済取引口座からの引落記帳は、その記帳日付が当該支払口座に決済取引金額の引落があった時点以降となるように行わなければならない。
第 14 節 寄託
第 688 条 寄託により契約類型上発生する義務
寄託契約により、受寄者は、寄託者から引き渡された動産を保管する義務を負う。
* 通説は寄託契約を諾成契約であると解している第 693 条 費用の償還
受寄者が寄託の目的において、諸事情に照らして必要とされる出費をなしたときは、寄
託者は償還する義務を負う。
第 694 条 寄託者の損害賠償義務
寄託者は、寄託物の性状により受寄者に生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、寄託に際して、その物の性状に照らし差し迫った危険を認識せず、かつ、認識すべき義務もなかった場合、または、寄託者が受寄者に対して当該危険を通知し、もしくは受寄者が通知なしにその危険を認識していた場合はこの限りではない。
第 695 条 寄託者の返還請求権
寄託者は、寄託につき期間を定めたときも、何時でも寄託物の返還を請求することができる。寄託物返還請求権の消滅時効は、返還請求時より起算される。
●補論:ライセンス契約の取扱いについて
特許、商標、登録意匠などの産業上の権利を、他人に(ときに独占的に)使用させる契約である。その法的性質について、通説はライセンス契約を「独自の契約」と解しているが、権利賃貸借契約(Pachtvertrag)と権利売買の要素を備える混合契約とした判例がある
(BGH NJW 70, 1503)。同判決で準用された条文としては、以下のものがある。(BGH NJW 70, 1503, Palandt/ Weidenkaff, BGB, 66.Aufl., 2007, §Einf 581 Rn.7)。
ドイツ民法第 536 条 (物および権利に瑕疵がある場合の賃料減額)
(1) 賃借物が賃借人に引渡される時点において瑕疵があった場合において、当該瑕疵が契約で目的とされた使用への適格性を欠き、または、賃借期間中に当該瑕疵が生じたために適格性を欠くことになったときは、賃借人は賃料の支払いを免れる。適格性が減少した期間については、賃借人は、相当に減額された賃料のみを支払う義務を負う。軽微な適格性の減少は、考慮しない。
(2) 本条第 1 項第 1 文および第 2 文は、保証された性質を欠く場合または後に欠くに至った場合についても適用する。
(3) 第三者の権利により、賃借人の契約上目的とされた使用の全部または一部が妨げられる場合、本条第 1 項および第 2 項の規定を準用する。
(4) 住居を目的とする賃貸借関係において、賃借人に不利に変更する合意は無効とする。
ドイツ民法第 536a 条 (瑕疵がある場合における賃借人の損害賠償請求権および費用償還請求権)
(1) 第 536 条にいう瑕疵が契約締結時に存していた場合、または、事後的に賃貸人の責に
帰すべき事情により瑕疵が生じた場合、もしくは、賃貸人が瑕疵の除去を遅滞した場合、賃借人は、第 536 条の定める権利を妨げられることなく、損害賠償を請求することができる。
(2) 賃借人は、次に掲げるいずれかの場合、自らその瑕疵を除去し、それに必要な費用の償還を請求することができる
1.賃貸人が瑕疵の除去を遅滞しているとき
2.賃借物の状態を維持または回復するために、速やかな瑕疵の除去が必要とされているとき
(xxxxx)