静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、社会医療法人 志仁会(理事長 関伸二)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.6.30
国内初!社会医療法人に対する「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、社会医療法人 志仁会(理事長 xxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
なお、社会医療法人に対する「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約は、国内初の事例になります。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 6 月 30 日(木)
2.融資金額 3 億 4 百万円
3.資金使途 設備資金
4.(医)xx会の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇志仁会は、xx市内で「三島中央病院」と「介護老人保健施設 ラ・サンテふよう」を、沼津市内で「耳鼻科サイラクリニック」を運営し、地域の医師と連携を図りながら、地域に密着した医療・介護サービスを提供しています。
〇本年4月には、静岡県から社会医療法人の認定を受け、より公益性の高い病院として、地域医療を支える重要な役割を果たしています。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・省エネルギー化(エネルギー使用効率の高い「コジェネレーションシステム」の導入、防水・遮熱効果のある屋上塗装による空調効率の改善、空調温度設定の徹底、LED 化) |
|
社会面 | ・切れ目ない医療・介護サービスの提供(急性期から慢性期までの医療の提供、往診や訪問看護の実施など) ・人材育成(研修や勉強会の充実、学会への参加支援、看護師の専門資格の取得支援、奨学金制度、学生の実習受入れ) |
|
社会 ・経済面 | ・救急医療体制の整備(初期救急医療<軽症患者>から、指定病院として第二次救急医療<手術や入院が必要な重症患者>までに対応) ・地域との連携体制の構築(地域連携室の設置・運用、夜間救急におけるxx医師会との協同診療体制の構築など) ・就労環境の改善、働き方改革の推進 |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内
部管理体制のもと、インパクト評価で特定したKPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象法人:社会医療法人 志仁会
2022 年 6 月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目次
1. 事業概要 6
1-1 事業概況 6
1-2 経営理念 8
1-3 業界動向 9
1-4 地域課題との関連性 12
2. サステナビリティ活動 14
2-1 環境面での活動 14
2-2 社会面での活動 16
2-3 社会・経済面での活動 23
3. 包括的分析 27
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析 27
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定 27
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動との関連性 28
3-4 インパクト領域の特定方法 28
4. KPI の設定 29
4-1 環境面 29
4-2 社会面 30
4-3 社会・経済面 32
5. 地域経済に与える波及効果の測定 35
6. マネジメント体制 35
7. モニタリングの頻度と方法 35
静岡経済研究所は、静岡銀行が、社会医療法人 志仁会(以下、志仁会)に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、志仁会の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業1に対するファイナンスに適用しています。
<要約>
志仁会は、xx市でxx中央病院、介護老人保健施設のラ・サンテふようを、沼津市で耳鼻科サイラクリニックを運営し、地域に不可欠な医療・介護サービスを提供している。中核をなす三島中央病院は、一般病床、療養病床、地域包括ケア病棟を有し、急性期から慢性期までの切れ目ない医療サービスを提供している。また、救急医療体制を整備し、数多くの救急患者を受け入れており、2022 年4月には、静岡県から社会医療法人の認定を受け、より公益性の高い病院として、地域の医療を支える重要な役割を果たしている。
志仁会のサステナビリティ活動等を分析した結果、ポジティブ面のインパクト領域では、切れ目な い医療・介護サービスの提供が「住居」、「健康・衛生」に、人材育成が「教育」、「雇用」に、就労環境の整備が「雇用」、「包括的で健全な経済」に、地域に不可欠な救急医療の提供が「健康・衛 生」、「包括的で健全な経済」に、地域連携体制の構築が「健康・衛生」、「教育」、「経済収束」に関するポジティブ・インパクトの増大に資すると評価される。
ネガティブ面のインパクト領域では、コジェネレーションシステムの導入などの省エネルギー対策が「エネルギー」、「気候」に、廃棄物の適正処理等が「廃棄物」に、患者の権利を尊重した医療の提供 が「健康・衛生」、「人格と人の安全保障」に、新型コロナウイルス感染症への対応などが「健康・衛生」に、就労環境の改善が「雇用」、「包括的で健全な経済」に関するネガティブ・インパクトの低減に寄与していると評価される。そのうち、環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、志仁会の経営の持続可能性を高める6つのインパクト領域について、KPI が設定された。
1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
金額 | 304,000,000 円 |
資金使途 | 設備資金 |
モニタリング期間 | 5 年 0 カ月 |
法人概要
法人名 | 社会医療法人 志仁会 |
所在地 | xxxxxxxx 0-00 |
事業所 | 三島中央病院(xxxxx 0-0) 耳鼻科サイラクリニック(xxxxxx 00-00)ラ・サンテふよう(xx市xx 1205-3) |
従業員数 | 549 名 |
業種 | 病院、診療所、介護老人保険施設、居宅サービス等の運営 |
指定・届出 | 〔医療機関〕 病院、無床診療所 〔介護サービス〕 介護老人保健施設、短期入所療養介護、介護予防短期入所療養介護、通所リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション、訪問介護、 居宅介護支援、介護予防支援 |
沿革 | 1977 年 関耳鼻咽喉科開業(19 床) 1989 年 関耳鼻咽喉科から関病院へ名称変更(33 床) 1997 年 ラ・サンテふよう開設 1999 年 ラ・サンテふようデイケアセンター開設 2001 年 関病院を急性期病院として新築・増築(85 床) 2006 年 病院機能評価認定(Ver.5.0)関病院を増築・増床(101 床) 2007 年 関病院から三島中央病院へ名称変更 2010 年 耳鼻科サイラクリニック開設 2013 年 伊豆函南セントラル病院を同一法人化 2015 年 xx中央病院を増床(111 床) 2017 年 伊豆函南セントラル病院を移転、三島中央病院で療養病床稼働(196 床) 2018 年 健診センター本格稼働 三島中央病院で地域包括ケア病棟稼働 2019 年 病院機能評価認定(3rdG:Ver.2.0) 2022 年 社会医療法人に認定 |
(2022 年6月末現在)
1. 事業概要
1-1 事業概況
志仁会は、三島中央病院、耳鼻科サイラクリニックにおいて医療サービスを、介護老人保健施設であるラ・サンテふようにおいて介護サービスを提供している。2022 年4月には、静岡県から社会医療法人の認定を受け、より公益性の高い病院として、地域の医療を支える重要な役割を果たして いる。
(1)医療サービス
三島中央病院(xx市)、耳鼻科サイラクリニック(沼津市)を運営する。
① xx中央病院
外 来 診 療 科 (13 科目) | 内科、循環器内科、消化器内科、外科、消化器外科、肛門外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、整形外科、泌尿器科、麻酔科、 救急科 |
病 床 (全 196 床) | 一般病床 111 床、療養病床 45 床、地域包括ケア病棟 40 床 |
志仁会の中核をなす三島中央病院は、一般病床、療養病床、地域包括ケア病棟を有し、急性期から慢性期までの切れ目ない医療サービスを提供している2。また、救急医療体制を整備し、数多くの救急患者を受け入れている。
外来は、内科、循環器内科、外科、消化器外科、耳鼻咽喉科など 13 の診療科を有する。中でも、同院の位置する地域では消化器疾患の専門医が少ないため、同院では消化器疾患の専門
2 医療は大きく、急性期(早急な治療が必要な病気や怪我を治療する時期)、回復期(急性期治療を終え在宅復帰に向けて医療を受ける時期)、慢性期(病状は比較的安定しているものの、長期にわたる治療が必要な時期)に分けられ、適切な入院治療を行えるよう、患者の種類ごとに入院する病床が区分されている。
∙ 一般病床:急性期の患者に対し、病気診断、治療を行う病床
∙ 療養病床:慢性期の状態や要介護状態で入院医療が必要な患者が入院する病床
∙ 地域包括ケア病棟:急性期の治療を終了し病状が安定した患者に対して、在宅復帰に向けて医療管理、リハビリ、退院支援など効率的かつ密度の高い医療を提供するため、また軽微な入院加療を必要とする在宅生活中の人への入院医療を提供するための 2 つの役割を担う病床
医資格保持者を複数名配置し、高度な専門医療を提供することで、地域医療において重要な役割を果たしている。
入院は、一般病床 111 床、療養病床 45 床を有するほか、2018 年に地域包括ケア病棟 40床の運用を開始している。病状が進行し早急な治療が必要な急性期から、急性期を終えた回復 期、そして長期療養が必要な慢性期まで対応できる病床を有することで、さまざまな段階の患者に合わせたシームレスな入院診療を提供している。
患者の来院経路として、外来患者は大きく、直接の来院、地域の診療所や他病院からの紹介、救急車での搬送がある。外来での診療後は、同院へ入院して入院治療を行う、同院に通院し外 来診療を継続する、同院での治療を終え紹介を受けた診療所へ戻して治療を継続するなど、患者の状態に合わせて最善の方法を取る。
入院患者の来院経路は、一般病床については、地域の診療所や他病院からの紹介、救急車での搬送、同院の外来からの入院が多い。入院治療後は、退院して自宅復帰するケース、リハビリが必要で同院の地域包括ケア病棟へ移るケースなどさまざまである。地域包括ケア病棟の入院経路は、同院の一般病床から移るケースと、院外の病院や介護施設などから移るケースがある。入院治療後は、自宅復帰のほか、老人保健施設のような介護施設へ移るなど、個々の症状や事情を勘案した上で、適切な方法を選択してもらう。療養病床については、院外の病院、介護老人保健施設などの介護施設から入院するケースが多い。
② 耳鼻科サイラクリニック(沼津市)
耳鼻科サイラクリニックは耳鼻咽喉科の無床診療所である。xx中央病院は耳鼻咽喉科の診療所として始まったことから、同科の診療で豊富な知見を有しており、2010 年以前は、沼津市からの来院患者が多かった。志仁会では、沼津市における耳鼻咽喉科分野の診療体制を強化する必要性を感じ、2010 年に、当時の三島中央病院の耳鼻咽喉科部長が院長となり、同院を開設した。
耳鼻科サイラクリニックでは、アルゴンプラズマ、重心動揺検査、X 線室、ファイバーおよびファイバー洗浄機などの機器を装備し、自院で耳鼻咽喉科の診療を行う。さらに、三島中央病院と連携し、手術や入院治療が必要な患者についてはxx中央病院へ紹介することで、地域に必要な適切な医療サービスを提供している。
(2)介護サービス
介護老人保健施設 ラ・サンテふよう(xx市)を運営する。
ラ・サンテふよう(xx市)
ラ・サンテふようは、1997 年の開設以来 20 年以上の業歴を有する介護老人保健施設であり、 100 名が入所可能である。また、短期入所療養介護、介護予防短期入所療養介護、通所リハビ
リテーション、介護予防通所リハビリテーション、訪問介護、居宅介護支援、介護予防支援の介護サービスを提供することで、入所のみならず、地域の高齢者の在宅生活を総合的にサポートしてい る。さらに、xx市よりxx市北上地区地域包括支援センターの運営を受託し、介護予防支援や相談業務などを通して、地域の高齢者の生活を支えている。
1-2 経営理念
志仁会は、「医療・介護を中心に個々のケースに対応できる組織を目指します。また、地域の医師との連携を強め地域に密着した医療を推進します。」を、法人全体の理念に掲げた上で、より具体的な、病院理念、病院運営方針、看護部理念を制定し、あるべき姿や目指すべき方向性を内外に明確に示している。
志仁会理念 | 当法人は医療・介護を中心に個々のケースに対応できる組織を目指します。また、地域の医師との連携を強め地域に密着した医療を推進します。 |
病院理念 | 親切・丁寧・確実な医療を提供し地域全体を支える病院を目指します。 |
病院運営方針 | 1. 患者さんの権利を十分尊重し、心のこもった安全な医療を実践します。 2. 親切・丁寧・確実な医療を提供します。 3. 地域に開かれ貢献できる医療を目指します。 4. 情報提供に基づき、十分な説明と同意による医療を心がけます。 5. 職員が地域医療に貢献していることに誇りをもてる医療を実践します。 |
看護部理念 | 三島中央病院の看護職員は、患者さんが安全かつ確実な治療を受けられ、自然治癒力が十分に働くように最良の条件を作り出す援助をします。また、地域の健康への期待と医療の発展に寄与できる専門職としての看護実践を目指しま す。 看護の基本方針 1. 私達は、患者さんの安全を守るためのルールを遵守し、診療チームの一員として協働します。 2. 私達は、「ナイチンゲール思想」を基に患者さんの生活を創造的かつ健康的に整え、患者さんの『持てる力』が十分に発揮できるように生活過程を整えます。 3. 私達は、患者さん・ご家族の痛み・辛さ・心配や不安をxxできる環境作りとそれを軽減するための努力を惜しみません。 4. 私達は、患者さん・ご家族の疑問点等に対して、理解していただける言葉で丁寧に説明する努力をします。 5. 私達は、患者さん・ご家族に『第一級の看護』が贈れるよう、常に謙虚に自 己研鑽します。 |
1-3 業界動向
① 効率的で質の高い医療体制構築、地域包括ケアシステムの構築
少子高齢化が急速に進む中、医療をとりまく環境が大きく変化している。2020 年の日本の総人口は1億 2,615 万人、そのうち 65 歳以上人口は 3,603 万人(28.6%)であり、静岡県においても、総人口 363 万人のうち、65 歳以上が 108 万人(30.1%)を占める。団塊の世代が 75 歳以上の後期高齢者となる 2025 年以降、医療・介護需要のさらなる増加が見込まれ、限られた資源で対応していくため、今後は、これまで以上に医療と介護の連携が重要になるとされる。そうした中、静岡県は、地域において必要な医療および介護を総合的に確保していくため、「効率的で質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」を、並行して推進する必要があるとしている。
まず、効率的で質の高い医療体制の構築について、静岡県は 2018 年3月に「第8次静岡県保健医療計画」(計画期間:2018~2023 年度)を策定し、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律に基づいて地域医療構想を導入し、構想区域ごとに各医療機能の将来の必要量を定め、医療機能の分化と連携を進めることを目指すとしている。具体的には、県内を8つの圏域に分け、急性期、回復期、慢性期機能は構想区域内で確保し、高度急性期機能は、構想区域を超えた広域で対応するというものである。そして、地域医療構想の実現に向けては、病床の機能分化・連携の推進、在宅医療等の充実、医療従事者の確保・養成、介護従事者の確保・養成、住まいの安定的な確保が必要であるとしている。
病床の機能分化
資料:静岡県 HP
そして、地域包括ケアシステムの構築である。これは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介 護、介護予防、住まいおよび自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制と定義される。地域包括ケアシステムは、おおむね 30 分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域を単位として想定している。ただし、地域によって高齢化の状況や、医療や介護の資源などの状況が異なることから、保険者である市町が、地域の特性に応じ、自主性や主体性に基づき実現していくことになる。
志仁会は、三島中央病院における急性期から慢性期までの医療サービスの提供、地域包括ケア病棟の運営、在宅療養支援病院としての訪問診療や訪問看護の実施、地域包括支援センター や居宅介護支援事業所の運営などを通し、静岡県が推進する効率的で質の高い医療の提供、地域包括支援システムの構築に大きく貢献している。
資料:厚生労働省 HP
② 新型コロナウイルス感染症への対応
2019 年末に中国武漢市で報告された肺炎が、新型コロナウイルス(COVID-19)であることが判明し、2020 年 1 月には WHO が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を、3 月にはパンデミックを宣言した。日本でも、1月 16 日に初の感染者が確認された後、2月1日には指定感染症に指定され、全国に感染が拡大した。WHO の集計によると、2022 年 6 月 8 日時点の世界の新型コロナウイルスの感染者数は約5億 3,090 万人、死亡者数は 630 万人、日本国内では、陽性者数 899 万人、死亡者数3万 818 人と報告されている。現在、国内では3回目のワクチン接種が進み、大幅な感染拡大は抑えられているものの、日常生活が制約される状況が続いている。
静岡県では現在、新型コロナウイルス感染症に関し、発熱等の症状が出た人は指定された発熱等診療医療機関を受診し、陽性であった場合は、症状に応じて、自宅や指定医療機関など療養先を決定する体制を取っている。そして、新型コロナウイルス感染症患者の入院を受け入れる医療機関として、重点医療機関、協力医療機関、その他医療機関3を指定するとともに、感染状況に 基づく国の評価レベルなどを参考に、病床フェーズを3段階に分け、受入病床の確保に努めている。
志仁会は、ワクチンの集団接種を行うほか、コロナ感染症患者専用病床を設けるなど機動的な対応を行うことで、感染症の拡大を防ぎ地域の人々の健康を守る重要な役割を果たしている。
3 重点医療機関:新型コロナウイルス感染症患者専用の病棟を有する医療機関
協力医療機関:新型コロナウイルス感染症患者としての確定診断がつくまでの間、新型コロナ疑い患者専用の個室を有して当該患者を受け入れ、必要な救急医療等を提供する医療機関 その他医療機関:上記以外で新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる病床を有する医療機関
1-4 地域課題との関連性
① 第8次静岡県保健医療計画
静岡県は、保健医療に関する基本指針である「第8次静岡県保健医療計画」の中で、地域医療構想を導入し、構想区域ごとに各医療機能の将来の必要量を定めている。その中で、包括的な保健医療サービスを提供する圏域として県内を8つの圏域に区分しており、志仁会が位置するxx市と沼津市は、駿東xx圏域4に属する。
地域医療構想において、駿東xx圏域の 2025 年の必要病床数は 4,929 床と推計され、内訳は、高度急性期 609 床、急性期 1,588 床、回復期 1,572 床、慢性期 1,160 床となっている。2020 年時点の稼働病床数は 6,569 床、内訳は、高度急性期 869 床、急性期 2,748 床、回復期 970 床、慢性期 1,982 床となっており、回復期の不足が 602 床ある一方、他の病床は余剰となっている。
在宅医療等については、高齢化の進行に伴う利用者の増加や、病床の機能分化・連携に伴い生じる追加的対応により、需要増加が見込まれており、2025 年の在宅医療等の必要量は 7,186 人と推計される。これに対し、2020 年度の提供見込み量は 5,596 人と、サービスの拡充が必要となっている。
構想の実現に向けては、公的病院をはじめ勤務医不足が課題であり、医師の確保・定着に向けた取組みのほか、看護職員等の人材確保のための勤務環境改善が必要である。また、在宅医療推進のため、在宅医療を担う人材確保、急変時等の時間外診療体制の整備、病病・病診連携、多職種連携などが必要になっている。
志仁会の事業活動の方向性は、第 8 次静岡県保健医療計画に沿ったものであり、同計画の実現において重要な役割を果たしているといえる。
② 第9次静岡県長寿社会保健福祉計画
静岡県では、団塊の世代が 75 歳以上になる 2025 年に向けて、医療、介護、介護予防、住まいおよび自立した日常生活の支援が総括的に確保される地域包括ケアシステムを実現するため、
「第9次静岡県長寿社会保健福祉計画」(2021~2023 年度の 3 年間)を策定している。当計画では、「地域で支え合い、健やかに、安心して最期まで暮らせる長寿社会の実現」を理念に、①誰もが暮らしやすい地域共生社会の実現、②健康づくりと介護予防・重症化防止の推進、
③在宅生活を支える医療・介護の一体的な提供、➃認知症とともに暮らす地域づくり、⑤自立と尊厳を守る介護サービスの充実、⑥地域包括ケアを支える人材の確保・育成の6つを柱として施策を推進する。
4 伊豆市、伊豆の国市、沼津市、xx市、裾野市、函南町、xx町、長泉町、御殿場市、xx町
そして本計画においても、高齢者保健福祉圏域として県内を8圏域に区分しており、これは、保健、医療、福祉が連携し、総合的・一体的な推進を図るため、静岡県保健医療計画の 2 次保健医療圏と同一の区分けとなっている。
志仁会が位置する駿東xx圏域は、2019 年の総人口は 643 千人と、人口規模で県内8圏域中3番目に位置し、65 歳以上の高齢者は 190 千人、高齢化率 29.7%と県平均 29.
9%と同水準である。要支援・要介護認定者数は 28 千人、認定率 14.4%と、認定率は8圏域の中で最も低水準である。
同圏域の認知症の推計人数は、2020 年度の 32,333 人から、2025 年度には 35,850 人へ増加する見込みである。また、在宅サービスの利用者は、2019 年度の 15,556 人から、2023年度には 18,067 人に、施設・居住系サービスの利用者は、7,338 人から 8,108 人へと増加を見込む。そして、要介護認定者に占める在宅サービス利用者の割合は、2019 年の 55.5%から 2023 年は 58.1%と、在宅で介護サービスを利用しながら暮らす高齢者の割合が増える見込みである。
同圏域の課題として、在宅医療・介護連携については、入退院時における多職種連携、在宅療養における薬剤師の支援、在宅医療・介護サービスの一体的な提供などが挙げられる。また認知症施策については、認知症への正しい理解の推進、住民や地域の能力向上、かかりつけ医との連携などが必要となっている。
志仁会の事業活動は、在宅医療体制の整備、認知症施策のための連携強化など、第9次静岡県長寿社会保健福祉計画に沿ったものであり、駿東xx圏域の地域包括ケアシステム構築に大きく貢献している。
2. サステナビリティ活動
2-1 環境面での活動
(1) 省エネルギー化
志仁会は、省エネルギー化などの環境負荷の低減に積極的に取り組んでいる。
2017 年に建設した新病棟(S 棟)では、エネルギ-効率に優れたコジェネレーションシステムを導入している。これは、クリーンな都市ガスで原動機を駆動させて発電するとともに、発生する排熱を回収して給湯や暖房などに再利用することで、エネルギーの使用効率を高めたシステムである。ま た、S 棟では、設置段階からすべての照明に LED を採用しているほか、既存の A 棟や管理棟でも蛍光灯から LED への交換を進め、現在はすべてを LED 照明に切り替えている。
さらに、2018 年に病院屋上の塗装を行った際に、防水効果に加え遮熱効果のある特殊な塗装を行った。メーカーの試験では、鉄筋コンクリートの建物にこの塗装を施すことで、塗装面の表面温度を 10℃以上、室内温度を5℃程度低く抑える効果があったとしており、xx中央病院でも、塗装前よりxxの室内の気温上昇が抑えされ、空調効率が向上している。また、運用面でも、院内のエアコンの設定温度を冬 22 度、夏 28 度とし、エアコンのリモコンに推奨温度を記載するほか、医療廃棄物処理委員会やエコ委員会を通じて注意喚起を行うなど、病院全体で省エネに取り組んでいる。
そして、さらなる環境対策として、将来的に、病棟の空調設備システムの、GHP(ガスモーター)から EHP(電気モーター)への変換を検討しているほか、xx中央病院とラ・サンテふようの屋上にxxx発電設備を設置し、再生可能エネルギーの活用を始める計画である。
(2) 廃棄物の適正処理
志仁会では、排出するすべての廃棄物について、専門の事業者との間で収集・運搬・処理契約を締結し、法律に則り適切に処理している。医療機関から出る廃棄物には、生ごみや紙くずなどの一般廃棄物のほかに、注射器やレントゲン定着液といった医療廃棄物があり、医療廃棄物はさら に、非感染性廃棄物と感染性廃棄物5とに分けられる。具体的には、一般廃棄物については一般廃棄物収集・運搬・処分業者へ、非感染性の産業廃棄物については、産業廃棄物収集運搬・処分業者へ委託している。また、厳格な管理が求められる感染性廃棄物については、密閉容器に内容物を明記して保管した上で、資格を有する特別管理廃棄物収集運搬・処分業者へ処分を委 託している。そして、年に一度、各処分場を視察し、専門業者に引き渡した産業廃棄物が、収集運搬から最終処分まで適切に管理されていることを確認している。
5 医療機関などから生じ、人が感染し、もしくは感染するおそれのある病原体が含まれ、もしくは付着している廃棄物、またはこれらのおそれのある廃棄物
そして、院内に「医療廃棄物処理委員会」を設置して毎月委員会を開催し、安全確保のためのゴミ袋の重量制限の設定や、新入職員に対する廃棄物の分別方法の周知など、廃棄物を適切に処理するための社内体制の整備に努めている。
(3) 廃棄物の削減
志仁会では、廃棄物の削減についてもさまざまな取組みを行っている。
xx中央病院は、2014 年の電子カルテ導入に伴い、カルテそのものの電子化はもちろん、従来は紙で運用していた案内文書や医療行為に関する同意書なども可能な限り電子化した。これによ り、院内の紙使用量を大幅に削減し、紙資源への印刷発注は従来の1/3程度となった。また、電子カルテの利用が定着した現在も、院内の業務改善委員会で全部署にペーパーレスの推進を呼びかけるなど、紙使用量削減に向けた取組みを継続している。
さらに、医療廃棄物処理委員会を通じ、ゴミの分別推進を周知するとともに、新入職員でも理解しやすいよう、ゴミの収集場所に、缶、ビン、プラスチックなどゴミの分類別表を画像付きで掲示している。これにより、排出したゴミをできる限り分別し、可能な物は再利用につなげることで、最終的な廃棄物の排出削減に取り組んでいる。
廃棄物の処理状況確認のための処分場の視察 院内での廃棄物の分別回収
2-2 社会面での活動
(1) 切れ目ない医療・介護サービスの提供
志仁会では、利用者が望むサービスをスムーズに利用できるよう、切れ目ない医療・介護サービスを提供している。
たとえば三島中央病院では、入院機能として、一般病床111床、療養病床45床を有するほか、地域包括ケア病棟40床を運用する。早急な治療が必要な急性期から、急性期を終えた回復期、そして長期療養が必要な慢性期まで対応できる病床を備えることで、さまざまな段階の患者の治療に対応している。
また、厚生労働省が進める地域包括ケアシステムの考えに則り、在宅療養支援病院6として、 2016年5月より訪問診療を開始し、24時間いつでも往診や訪問看護を提供できる体制を整えている。今後、院内に新たに訪問看護ステーションを開設し、地域包括ケアシステムの肝となる在宅医療の提供体制をさらに拡充する方針である。
そして、xx市内に老人保健施設ラ・サンテふようを備え、自宅での療養が困難な高齢者に入所サービスを提供している。さらに、短期入所、通所リハビリテーション、訪問介護、介護予防等の幅広いサービスを提供することで、介護が必要な高齢者の在宅復帰や在宅療養の支援を行っており、介護・医療の両面から地域を支えている。
医師による訪問診療
6 24 時間 365 日体制での往診や訪問看護、緊急時の入院受け入れ等により、患者の在宅療養を支援する病院
(2) 患者中心の医療サービスの提供
三島中央病院は、病院の運営方針において、「患者さんの権利を十分尊重し、心のこもった安全な医療を実践します」を第一に掲げ、「患者の権利に関するWMAリスボン宣言」7の精神に基づき、「患者さんの権利」を明示し、医療の中心はあくまで患者であることを深く認識し、患者の権利を十分に守り、最良の医療を提供することを表明している。さらに、自身の健康・生命を守る最高の担い手は患者自身であるとの考えのもと、「患者さんとのパートナーシップを強化するため に」、「患者さんへのお願い」を提示し、患者の医療への主体的な参加による医療機関との協働 を呼びかけている。同院のこうした考えは、ホームページのほか、定期的に発行する「xx中央病院だより」に毎号必ず掲載し、常に院内外への周知と実践に努めている。
そして、情報開示やセカンドオピニオンなどの権利擁護を適切に実施しているほか、患者への説明や同意についても、方針や手順を明確に定めて運用している。また、疾患別パンフレット、 クリニカル・パス8、入院案内等を提供し、患者との情報共有を適切に行っている。さらに、施設や設備は、患者や家族が快適に利用できるよう整備している。
また、患者意見箱を設置し、患者から寄せられた投書に対し、必ず担当部署の所属長が回答する体制を取っている。特に、苦情に対しては、院内で具体的な改善策を検討するとともに、病院内の十数カ所に内容を掲示し、職員にも共有している。
さらに、年2回、入院・外来別の患者満足度調査、外来の待ち時間調査を実施している。患者満足度調査では、特定の日にアンケート票を渡し、医師や看護職員、事務職員の対応のほか、施設管理などについて5段階で評価してもらう。外来の待ち時間調査では、特定の日に、受付から会計終了まで、どの部署でどのくらい時間がかかったかを、全患者について調査する。調査結果は、さらなるサービス改善のための参考指標として活用するほか、HP上で公開している。 2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響でやむなく中止したが、環境が改善したら再開する予定である。
7 1981 年にリスボンで開催された第 34 回世界医師会総会で採択された宣言。患者の、良質な医療の提供を受ける権利、選択の自由の権利、自己決定の権利などを掲げる。
8 ある疾患に関して入院から退院までに行う治療や検査の工程を時間軸に沿って記載した計画x
xx会が公表する患者さんに関する考え方
患者さんとの パートナーシップを強化するために | 医療の質と患者さんの安全確保は、医療提供者のみによる取り組みだけでなく、患者さんと医療提供者とが互いの信頼関係に基づき協働して作り上げていくものであり、患者さんの医療への主体的な参加をもって、より確実なものとなると考えていま す。 当院では、“良質な医療を受ける権利” “医療に関する説明や情報を得る権利”など医療者として十分守るべき「患者さんの権利」を明示するとともに、“自分自身の健康・生命を守る最高の担い手は患者さんです”という考えのもと「患者さんへのお願い」を提示させていただきました。わからないことがあれば納得するまで質問してくださ い。安全確保のためにアレルギー歴などをきちんとお伝えください。いろいろな場所で名前を名乗っていただいたり、点滴の確保をしていただくなどの形で診療に参加していただきます。 お困りの点、お気づきの点などありましたら担当看護師等にお申し付けください。投 書をいただいても結構です。是非、より良いパートナーシップを築いていきたいと思います。 |
患者さんの権利 | 当院は、医療の中心はあくまでも患者さんであることを深く認識し、「患者の権利に関する WMA リスボン宣言(世界医師会)」の精神のもと、患者さんの権利を十分守り最良の医療を提供いたします。 1. 良質な医療をxxに受ける権利 だれでも、どのような病気にかかった場合でも、良質かつ適切な医療をxxに受ける権利があります。 2. 医療に関する説明や情報を得る権利 病気・検査・治療・見通しなどについて、理解しやすい言葉や方法で、納得できるまで十分な説明と情報を受ける権利があります。また、自分の診療記録の開示を求める権利があります。 3. 医療を自己決定する権利 十分な説明と情報提供を受けたうえで、治療方法などを自らの意志で選択する権利があります。 4. 機密保持に関する権利 医療の過程で得られた個人情報の秘密が守られ、病院内での私的な生活を可能な限り他人にさらされず、乱されない権利があります。 5. 尊厳を保つ権利 だれもが 1 人の人間として、いかなる状態にあっても、その人格・価値観などを尊重される権利があります。 |
患者さんへのお願い | 当院は、医療における医師及び医療従事者と患者さんの信頼関係が築けるよう患者さんにも協力をお願いしています。 1. 自分自身の健康・生命を守る最高の担い手は患者さんです。その患者さんと共に私たちは医療を進めていることをご理解ください。 2. 良質な医療を実現するために、医師をはじめとする医療従事者に対し、患者さん自身の健康に関する情報をできるだけ正確にお伝えください。 3. 納得できる医療を受けるために、医療に関する情報が良く理解できない場合は納得できるまでお尋ねください。 4. 医療の安全性を保ち、他の患者さんの安寧を損なわないように定められた規則をお守りください。 5. 医療の安全性を高めるための努力を最大限に行っていますが、あらゆる医療行為は本質的に不確実であり、意図せざる結果を生じる可能性があることをご理解ください。 |
(3) 人材育成
三島中央病院では、職員が職務を円滑に行うために必要な知識を習得できるよう、人材育成に積極的に取り組んでいる。
看護部では、年間の学習計画を策定し、充実した研修を行っている。たとえば、階層別に5 段階に分け、1 年目では、BLS(一次救命処置)、PPE(個人防護具)の取扱いなど、3年目ではリーダーシップやコーチングなど、入職年次別にきめ細かな学習計画を策定し実施してい る。また、看護助手向けの基礎知識、管理者向けの労務管理、現任者向けの救急や認知症、
じ ょ く そ う
褥瘡に関する研修など、職能に合わせた多様なコースを設け、2021 年度は全 66 回の充実し
た研修を実施している。
また、認定看護師など9の専門資格取得に関し、学費や交通費の支給、学習環境の提供を通じて、必要講座の受講や資格取得を積極的に支援している。認定看護師については、認知症看護分野で、日本看護協会が定める 510 時間以上の教育過程を経て、1名が資格を取 得している。また、特定看護師についてもすでに 2 名が研修を修了し、現在新たに2名が研修を受講している。さらに、管理者としての能力が求められる認定看護管理者についても、1 名が資 格を取得し、現在9名が教育課程を受講し資格取得を目指している。
さらに、リハビリテーション課では、課員を対象に、基本動作介助量の軽減に関する新人向けの症例検討会、自宅復帰者の動作自立に関する症例検討会などを毎月開催するほか、院内の他部署の勉強会にも積極的に参加し、知識や技術の向上に努めている。また、1人当たり年1回、研修会や講習会に参加できる制度を設け、学習内容を課内勉強会で共有している。また、新人教育については、独自の研修カリキュラムを作成し、資格取得後3年以上経過した職員が教育係となり、カリキュラムに沿って1年間丁寧に指導している。
その他、薬局や放射線課、言語聴覚課など、各課が所属する専門学会の学会費を病院が負担することで、職員が普段の業務では知りえない最新の理論や取組みを吸収できる環境を整えている。
そして、地域の医療・介護人材の育成支援にも積極的に取り組んでいる。毎年、地元の看護学校や専門学校から、看護師、理学療法士、医療事務などの医療関連職の実習生を受け入
9 認定看護師:高度化し専門分化が進む医療現場で、水準の高い看護を実践できると認められた看護師。認知症看護、救急看護など、21 分野で日本看護協会が認定。
特定看護師:医師又は歯科医師の判断を待たずに、手順書により、脱水時の点滴など一定の診療の補助を行う看護師。特定行為を行うための高度な知識と技術を指定機関で学び終了認定を受ける。
認定看護管理者:病院などの管理者として必要な知識を持ち、質の高いサービス提供のため組織を改革し発展させる能力を有する看護師。日本看護協会の認定資格。
れており、今年度は、現時点で県立看護専門学校から 45 名の受入れが確定しているほか、他の学校からも受入れ要請が来ている。また、卒業後に同法人で就労する看護専門学校などへの進学者に対し、学費や生活費を貸与する奨学金制度を 2004 年度から運用しており、現時点で職員 39 名、学生8名が同制度を利用中である。
院内の研修の様子
(4) 医療安全管理
三島中央病院では、適切な安全管理を実施し、医療の安全を守っている。医療法では、病院等の管理者に、医療事故の報告および調査実施のほか、医療安全の指針の策定、従業者に対する研修など、患者の安全を確保するための措置を講じるよう定められている。
同院は、院長直轄の医療安全管理室を設置し、医療安全専任の医師1名、医療安全専従の看護師1名を配置している。医療安全管理室では、医療安全に関する目標設定、ラウンドと呼ばれる院内の見回り、院内研修、医療安全に関する各種委員会の開催等を行っている。
医療安全管理室目標については、2021 年度は、誤認防止、転倒転落事故防止などの目標を設定した。患者の誤認防止については、看護部の全職員に2回の誤認防止研修を行い、他部署でもマニュアルの改訂や業務改善を行った結果、点滴・注射・内服薬剤に関する誤認をゼロにすることができた。また、転倒や転落防止については、毎月、多職種でベッドの周囲やトイレなどの環境が整っているかを確認する「転倒、転落予防ラウンド」を実施し、各部署に結果を還元した結果、転倒・転落件数や転倒率を前年度より減少させることができた。
院内ラウンドについては、2021 年度は、全般を見る院内安全ラウンド、転倒、転落防止ラウンドなどを、それぞれ月1回のペースで実施した。また、医療安全に関する各種委員会について は、医療安全管理対策委員会(月1回)、リスクマネジメント委員会(月2回)、医療安全カンファレンス(週1回)、薬剤部と看護部の会(隔月)、リスクマネージャーの会(隔月)などを開催し、医療事故につながる恐れのある事例やインシデント・アクシデント事例について、発生
報告、再発防止策の立案、実施後の評価などを適切に行っている。また、職員の安全管理に関する意識向上のため、院内医療安全ニュースを計 15 回発行した。
(5) 新型コロナウイルス対策
志仁会では、2019 年に東京医療保健大学感染制御学教育センターへ職員を派遣し、 600 時間の研修を受講して感染対策の専任資格である「感染制御実践看護師」資格を取得させ、2020 年4月に三島中央病院内に、院長直轄の感染制御室を開設した。奇しくも、新型コロナウイルス感染症の拡大時期と重なったことから、同院では、感染制御室が主導して、感染 拡大防止のためのさまざまな対策を取っている。
同院では、新型コロナウイルス発生当時より正面玄関に職員を配置し、同院への来訪者全員への検温と問診による全患者のトリアージを行い、動線を分けて診察してきた。検温は、早期にサーモグラフィを導入して検温時間を短縮するとともに、トリアージでは、来訪者の訪問目的を確認の上、新型コロナウイルス用チェックリストの項目を満たした人のみ院内に入るようにした。さらに、 2020 年6月から、県の要請を受けて発熱外来を設置し、同院の患者だけでなく他院からの紹介や警察などからの依頼に対し、即座に診察や検査ができる体制を整備した。2022 年4月時点で、発熱外来で 3,822 名の患者を受け入れ、うち 640 名ほどの陽性患者の対応をしてお り、今後も発熱外来を継続していく方針である。
次に、入院病床での対応として、保健所からの要請を受け、夜間の救急の輪番体制に参加するとともに、入院患者を常時受け入れられるよう病床の改築と職員配置の見直しを行い、2022年 4 月から新型コロナウイルス入院患者の受入病院として病床2床を登録している。
また、感染対策の要であるワクチン接種については、企業や高齢者施設、xx市の接種会場等へ医師や看護師を派遣し、ワクチン接種を行ってきた。2021 年6月からは同院を集団接種会場とし、一日最大 300 名ほど、延べ 53,300 回の接種を行い、市内のワクチン接種を推進している。
そのほかにも、救急外来に換気扇を増設し、救急室内の空気が院内に拡散しないようにしたほか、消化器内視鏡、健診センターの内視鏡室に換気扇を増設し、1分以内に室内の空気が換気されるようにしている。さらに、消毒用アルコールの不足懸念があったことから、非電解次亜塩素酸水の生成装置を導入して大量生成できる体制を整え、アルコールと併用している。また、非電解次亜塩素酸水について、xx医師会を通じてxx市内の全医療機関へ配布を申し出て、これまでに 40 施設以上の医療機関、消防署、学校、幼稚園、保育園などへ配布している。
その他、感染症対策指針を改定し、新型コロナウイルスに関するマニュアルを策定したほか、全職員に対し、新型コロナウイルス対策や手指衛生をテーマとしたビデオ研修や資料配布を行うことで、職員への教育を強化している。
病院入口での来訪者への検温や問診の様子
2-3 社会・経済面での活動
(1) 地域の救急医療を支える
三島中央病院は、救急医療の提供によって、地域住民の命を守る重要な役割を果たしている。同院は、第二次救急医療10において、駿豆圏域の内科と外科の指定病院として、月の約2
/3は救急患者を受け入れている。また、xx市の初期救急医療の提供体制が手薄なことから、同院が市内の初期救急患者の6割超を受け入れている。その結果、同院は、2019年以降、夜間休日の救急車搬送を年間900件以上と非常に高い水準で受け入れており、地域の人々の健康・安全を守る重要な役割を担っている。
また、同院では、救急医療体制拡充のため、院内に「救急委員会」を設置している。毎月委員会を開催し、救急搬送の適正性を検証し、搬送不可症例の事例検討などを行っている。さらに、全職員を対象とした救急救命に関する研修や、看護師を対象に心肺停止または呼吸停止に対する一時的救命処置のフォローアップ研修を行うほか、突然の心停止に対する蘇生トレーニングの研修も年3~4回開催し、救急医療に関する職員のスキル向上を図っている。また、救 急隊との合同症例検討会を開催し、具体的な症例をもとに救急隊と議論することで、患者搬送時に必要な情報を共有し、迅速かつ的確な対応につなげている。さらに、救急医療では医療機器の画像診断が大変重要となるため、20年に80列CT、21年に1.5テスラMRIと最新機種に更新することで、患者負担を大幅に軽減し、早期に的確な診断を行える体制を整えている。
そして志仁会は、2022年4月、救急医療の要件で社会医療法人11の認定を受けた。社会医療法人とは、従来自治体病院が中心に行っていた公益性の高い医療の担い手として位置づ けられる医療法人である。志仁会は、夜間休日の救急搬送受入れ件数が年間750件以上という救急医療の要件を高い水準で達成しており、今後も、救急医療体制の一層の充実を図ることで、基幹病院として地域の医療を支えていく方針である。
10 救急医療は、軽症で入院治療の必要がない患者に対する初期救急医療、入院や手術を要する重症患者に対する第二次救急医療、第二次救急では対応不可能な重篤疾患などに対する第三次救急医療の3段階に分かれている。都道府県の作成する医療計画において、各段階の救急医療に対応する医療機関が定められている。
11 医療提供体制に関して、都道府県や市町村、公的病院の機能を代替するものとして、公的医療機関と並ぶ 5 事業(救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療)を担う主体として、国・都道府県・市町村と並ぶ「地域医療支援病院」の開設主体として位置づけられる医療法人制度。
(2) 地域との連携体制の構築
超高齢社会に突入した現在、地域の限られた医療資源を有効に活用するため、医療機関の機能分化と連携が不可欠となっている。こうした社会的要請に応えるべく、志仁会では、地域の連携体制強化に向けたさまざまな取組みを実施している。
三島中央病院は、 “地域全体が一つの医療機関”という考えのもと、地域が一体となって医療を展開できるよう、院内に「地域連携室」を設置している。地域連携室には、MSW と呼ばれる専門の相談員4名、専従の看護師1名、訪問診療を担当する看護師2名を配置し、各医療機関や福祉施設、役所などと連携する体制を整えている。同院は、急性期から慢性期までさまざまな段階の患者に対応できることから、地域連携室では、他の病院や診療所からの受入れを始 め、同院を退院後の受入れ先の探索、紹介患者の診療所への逆紹介など、地域の医療機関 や介護施設、行政と連携し、患者の状態や事情を考慮した上で、最善のケアを行うようサポートしている。また、新任の医師が着任したり新たな診療科を開設する際には、必ず近隣の診療所を訪問し、スムーズに相互に患者を紹介し連携できるような関係づくりを行っている。
また、夜間の救急対応において、xx医師会と独自の協同診療体制を構築している。これ は、平日夜間や休日の診察を行うxx医師会メディカルセンターにおいて、高度な検査や治療 などが必要になった際に、xx中央病院または三島総合病院で受け入れる仕組みである。患者はほとんどの診療をかかりつけ医で受けるものの、病院でしかできない検査や治療が必要になった場合に、スムーズに検査や治療を受けることができる。
また、ラ・サンテふように地域包括支援センター12を設置し、xxケアマネージャー、社会福祉 士、看護師3名を配置し、地域の高齢者の総合的な相談対応、地域ケア会議の開催、ケアマネ-ジャーへの個別相談などの業務を行うことで、個々の高齢者が地域内で必要なサービスを受けられるよう支援している。
また、同院は、最高水準の医療安全対策を行う医療機関として認定されていることから、地域の同水準の病院と情報交換を行いレベルアップを図るとともに、その他の病院に対してアドバイスを行うことで、地域全体の医療安全水準が向上するよう活動している。さらに、地域の医療機関と連携して合同カンファレスなどを実施し、地域の感染拡大防止にも取り組んでいる。
そして、地域との連携を円滑に行うために、同院の医師が講師となって地域住民を対象とした健康教室を開催したり、地域の医療機関や住民向けに、同院の活動を紹介する「xx病院だより」を定期的に発行するなど、情報提供や広報活動などを積極的に行うことで、地域との関係強化に努めている。
12 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活していくために総合的な支援を行う拠点。介護保険法第 115 条の 46 に基づき、2006 年度に新設。
資料:志仁会 HP
(3) 誰もが働きやすい就労環境の整備
志仁会では、職員が長期的に安心して働き続けられるよう、適切な就労環境の整備を進めている。
同会では、医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ケアマネ-ジャ-、介護福祉士、管理栄養士、栄養士、調理師、診療情報管理士、医師事務作業補助者など、専門知識を有するさまざまな職種の職員が、それぞれの部署で業務に当たっている。そのため、こうした多様な職員が各部署でスキルアップできる体制を整えるとともに、意欲や能力のある職員に責任ある業務を任せ、明確な報酬体系のもと職種や 職階に応じて適切な報酬を支払うなど、職員が長期的に意欲を持って就労できる環境を提供している。その結果、たとえば役職者の6割以上を女性が占めるなど、年齢、性別などの区別なく、職員がそれぞれの持ち場で遺憾なく能力を発揮し、職務を遂行している。
さらに、育児支援や高齢者雇用など、タイバーシティの推進にも取り組んでいる。2000 年に三島中央病院内に保育所を開設し、現在、医師や看護師など職員の子ども8名が利用してい る。また、2021 年8月に育児短時間勤務制度を設け、法定では子どもが3歳までしか利用できない時短勤務を、志仁会では小学校卒業まで利用できるようにし、2022 年 4 月現在 36 名が利用している。こうした取組みの結果、同法人では、看護職の離職率が業界平均を下回り、 定着率が高まっている。また、高齢者雇用については、60 歳の定年後も、本人が希望すれば 65 歳まで勤務を継続できるほか、65 歳を超えても本人の能力や意欲を勘案して雇用契約を
締結しており、現在、60 歳以上の職員(パート含む)が 80 人以上就労し、同法人の業務を支えている。
また、2017 年に院内に業務改善委員会を設置し、各部署でさまざまな業務改善や意識改革に取り組んでいる。業務改善委員会は、他部署との連携による業務改善を目的に設置した が、実際には、職員同士で面識がないケースが多かったことから、まずは、毎月さまざまな職種の 職員が接する機会を作り、相互交流を深めるところから始めた。その結果、職員同士で面識ができ、異なる部署との連携が取りやすくなるなど、業務円滑化の効果が出始めており、現在も取組みを継続している。また、誰でも匿名で改善提案ができる、業務改善オファーシートという制度を 新設。寄せられた提案に対し、該当部署や所属長が回答するようにしたところ、現場からの具体的な提案に基づいた業務の改善が進むとともに、これまで意見しづらかったことへの回答が得られ、業務への納得感が高まるといったプラスの効果も出ている。
そして、働き方改革や業務負担の軽減にも積極的に取り組んでいる。
看護部では、定時就業の習慣化を目的に、2017 年5月より毎週木曜日をノー残業デーに制定するとともに、業務改善委員会の活動を通じてさまざまな業務改善や意識改革に取り組んできた。その結果、1人当たり月間超過勤務時間が、2016 年度の7時間から 2021 年度には 1.4 時間に減少している。
また、内科病棟において、入院患者の高齢化で要介護状態の入院患者が増えており、看護師や看護助手の身体的負担が大きくなっていることから、2021 年 4 月、介護支援ロボット HAL®を1台導入した。患者のベッドから車いすへの移乗、前傾姿勢でのケア時に使用することで、看護者の腰部の負担軽減につながっている。
医師の働き方改革については、厚生労働省が 2024 年度から時間外労働の上限規制や連続勤務時間制限などの適用を開始する予定となっている。現段階では改革内容の全容は不明だが、志仁会では、2024 年の運用開始に向け、まずは医師の執務状況を精緻に把握する必要があると考え、2022 年4月から、IC カードによる就労時間のデータ化を開始している。
3. 包括的分析
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いて、病院、老人保健施設の業種に関するインパクト分析を実施した。その結果、ポジティブ・インパクトとして「住居」、「健康・衛生」、「雇用」、「人格と人の安全保障」が、ネガティブ・インパクトとして、「健康・衛生」、「雇用」、「人格と人の安全保障」、
「気候」、「廃棄物」、「包括的で健全な経済」が抽出された。
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定
志仁会の個別要因を加味して、同法人のインパクト領域を特定した。その結果、ポジティブ・インパクトのうち「人格と人の安全保障」は該当しないため削除した。一方、同法人のサステナビリティ活動に関連のあるポジティブ・インパクトとして「教育」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」を、ネガティブ・インパクトとして「エネルギー」を追加した。
【特定されたインパクト領域】
UNEP FI のインパクト分析ツールにより抽出されたインパクト領域 | |||
ポジティブ | ネガティブ | ||
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 (一連の固有の特徴がニーズを満たす程度) | |||
水 | |||
食糧 | |||
住居 | |||
健康・衛生 | |||
教育 | |||
雇用 | |||
エネルギー | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
文化・伝統 | |||
人格と人の安全保障 | |||
xx | |||
強固な制度・平和・安定 | |||
質(物理的・化学的構成・性質)の有効利用 | |||
水 | |||
大気 | |||
土壌 | |||
生物多様性と生態系サービス | |||
資源効率・安全性 | |||
気候 | |||
廃棄物 | |||
人と社会のための経済的価値創造 | |||
包括的で健全な経済 | |||
経済収束 |
個別要因を加味し 特定されたインパクト領域 | |
ポジティブ | ネガティブ |
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動との関連性
志仁会のサステナビリティ活動のうち、ポジティブ面のインパクト領域としては、切れ目ない医療・介護サービスの提供が「住居」、「健康・衛生」に、研修の実施や学会への参加支援、学生の実習受入れなどの人材育成が、「教育」、「雇用」に該当する。また、託児所の設置や育児のための時間短縮勤務制度、高齢者雇用などの就労環境の整備は、「雇用」、「包括的で健全な経済」に該当するほか、地域に不可欠な救急医療の提供が「健康・衛生」、「包括的で健全な経済」に資すると考えられる。さらに、地域連携室の設置や地域包括支援センターの運営を通じた地域との連携体制の構築は、「健康・衛生」、「教育」、「経済収束」に貢献している。
一方、ネガティブ面においては、コジェネレーションシステムの導入や屋上の遮熱塗装による空調効率の改善などの省エネルギー対策が「エネルギー」、「気候」に該当するほか、廃棄物の適正処理、電子カルテ導入による紙の使用量削減などが「廃棄物」に該当する。また、患者の権利を尊重する医療の提供は「健康・衛生」、「人格と人の安全保障」に該当するほか、新型コロナウイルス感染症への対応や、医療法に則った安全対策の実施は「健康・衛生」に該当する。さらに、従業員の職能に見合った適正な処遇や、残業の削減、介護支援ロボットの導入などの就労環境の改善は「雇 用」、「包括的で健全な経済」に関するネガティブ・インパクトを低減していると評価できる。
3-4 インパクト領域の特定方法
UNEP FI のインパクト評価ツールを用いたインパクト分析結果を参考に、志仁会のサステナビリティに関する活動を同法人の HP、提供資料、ヒアリング等から網羅的に分析するとともに、同法人を取り巻く外部環境や地域特性等を勘案し、同法人が環境・社会・経済に対して最も強いインパクトを与える活動について検討した。そして、同法人の活動が、対象とするエリアにおける環境・社会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に最も貢献すべき活動を、インパクト領域として特定した。
4. KPI の設定
特定されたインパクト領域のうち、環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、志仁会の経営の持続可能性を高める項目について、以下の通り KPI が設定された。
4-1 環境面
インパクトレーダーとの関連性 | エネルギー、気候 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 省エネルギー化 |
取組内容 | ・コジェネレーションシステムの導入 ・屋上塗装による空調効率の改善 ・空調温度設定の徹底 ・LED 化 |
SDGs との関連性 | 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 |
KPI(指標と目標) | 2025 年までに、三島中央病院とラ・サンテふようにおいて、xxx発電設備を設置し、再生可能エネルギーを年間 18 万 kwh 以上発電し利用する。 |
4-2 社会面
インパクトレーダーとの関連性 | 住居、健康・衛生 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 切れ目ない医療・介護サービスの提供 |
取組内容 | ・急性期から慢性期までの医療の提供 ・往診や訪問看護の実施 ・老健を運営し介護サービスを提供 |
SDGs との関連性 | 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 11.1 2030 年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 |
KPI(指標と目標) | 2025 年までに、三島中央病院内に訪問看護ステーションを新規開設し、在宅医療の提供体制をさらに強化する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 教育、雇用 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 人材育成 |
取組内容 | ・研修や勉強会の充実 ・学会への参加支援 ・看護師の専門資格の取得支援 ・奨学金制度、学生の実習受入れ |
SDGs との関連性 | 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 4.3 2030 年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 4.5 2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにす る。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同 一労働同一賃金を達成する。 |
KPI(指標と目標) | ① 日本看護協会の認定看護管理者について、ファーストレベル、セカンドレベルの教育過程の受講者を、毎年各1名輩出する。 ② 特定行為研修を受講した特定看護師を、毎年1名輩出 する。 |
4-3 社会・経済面
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、包括的で健全な経済 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 救急医療体制の整備 |
取組内容 | ・指定病院として第二次救急医療に対応 ・xx市の初期救急医療に対応 ・救急医療の要件で社会医療法人に認定 |
SDGs との関連性 | 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバー サル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 |
KPI(指標と目標) | 夜間・休日の時間外救急搬送を、年間 900 件以上受け入れる体制を維持する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康・衛生、教育、経済収束 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 地域との連携体制構築 |
取組内容 | ・地域連携室の設置、運用 ・三島医師会との協同診療体制構築 ・地域包括支援センターの運営 ・他病院との連携による地域の医療レベル向上 ・地域住民への情報提供 |
SDGs との関連性 | 3.3 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染 症に対処する。 3.8 全ての人々に対する財政リスクからの保護、 質の高い基礎的な保健サービスへのアクセス及び安全で効果的かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンへのアクセスを含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。 17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会 のパートナーシップを奨励・推進する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2025 年までに、三島中央病院に居宅介護支援事業所を新設し、地域の高齢者が適切に介護サービスを利用できるよう支援する。 ② 地域住民を対象とした健康提案に関するセミナーを、オンライン形式も含めて毎年4回以上開催する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 雇用、包括的で健全な経済 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 就労環境の改善、働き方改革の推進 |
取組内容 | ・職能に見合った適切な処遇 ・業務改善委員会による改善活動 ・看護部でのノー残業デーの設定 ・介護支援ロボットの導入 |
SDGs との関連性 | 5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、並びに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不 安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
KPI(指標と目標) | 職員の身体的負担軽減のため、2024 年までに、法人全体で介護支援ロボットを計5台導入する。 |
5. 地域経済に与える波及効果の測定
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を算出すると、志仁会は現在、静岡県経済全体に年間 88 億円の波及効果を与えていると試算される。
6. マネジメント体制
志仁会では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xxx理事長が陣頭指揮を取り、xxxx事務長が中心となって、法人内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、最高責任者である関理事長、実行責任者であるxx事務長の指揮のもと、部長、課長やチームリーダーが中心となって、各部署、各チームで、KPI の達成に向け、課題の抽出、対策の検討、施策の実行を行うものとする。
最高責任者 | 理事長 x xx |
実行責任者 | 事務長 xx xx |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と志仁会の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行と志仁会が協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する志仁会から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
調査グループ xx研究員 xx xxx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 6 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 社会医療法人 志仁会に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が社会医療法人 志仁会(「志仁会」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、志仁会の持ちうるインパクトを、 UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析 を行った。
この結果、志仁会がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しなが
ら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である志仁会から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000