○住宅情報を得る y
戸建住宅の
(令和 2 年度 改訂版)
(一財)北海道建築指導センター
戸建住宅の
もくじ
はじめに 1
1.満足できる住宅を取得するために 3
2.契約前にすること 5
3.契約とは何か 7
4.契約書はなぜ必要か 8
5.いつ、どのような契約書を取り交わすか 10
6.工事請負契約書に添付される書類とその役割 20
7.リフォームの契約 22
8.住宅瑕疵担保責任保険 24
9.工事請負契約書などの解説 26
10.契約に関するトラブルの実例 50
11.用語の説明 64
補足資料1 | |
補足資料2 | |
参考1 | |
参考2 | |
参考3 |
………………………………………………………………… 68
………………………………………………………………… 69住宅性能表示制度(住宅性能評価)とは……………………… 71設計住宅性能評価書……………………………………………… 73北方型住宅とは…………………………………………………… 77
はじめに
全ての商取引は、契約によって成り立っていますが、きちんと契約書を取り交わして取引をすることに慣れていない人が多いのも事実です。特に、契約約款*は量も多く、小さい文字で書かれているため、目を通さずに契約してしまった経験は誰にもあると思います。
住宅は高価ですが、建売住宅などの場合を除いては、実物を見ることなしに契約書を取り交わすことになります。その際に、住宅の内容は図面で確認することになりますが、専門家でない人が、図面を正確に読みとるのはかなり難しいことです。
住宅を取得する際に、契約内容を理解したうえで、文書で契約を取り交わすのは大変ですが非常に重要なことです。契約書は、当事者が納得したうえで取り交わしますが、契約書自体はそれぞれの業者が独自に作成するので、その内容は千差万別です。注文者にとって、不利な内容が記載されていても、契約に関する知識が不足していれば分からず、契約後にトラブルが発生することもあります。また、不幸にしてトラブルが生じた場合には、その解決に多大な労力とお金が必要となります。
この本は、住宅を取得する際に締結*する契約書の見方・チェック項目や、契約に関わる基本的
な法律の知識を得て、納得して契約書を取り交わすためのガイドブックです。
住宅に関ることで、契約書を取り交わすケースはいろいろあります。
この本では、戸建住宅の取得とリフォームする際の契約などに関する注意事項についてまとめています。
戸建住宅は、注文住宅・新築建売住宅・中古住宅に分けることができます。
住宅を取得するときに土地の売買を伴うことがありますが、このガイドブックでは、住宅の契約に関することを中心に記載しています。
*印のついた語句は、「11.用語の説明」(P64~67参照)で説明しています。
なお、この本は、2020年4月施行の民法改正に対応した内容となっています。
1.満足できる住宅を取得するために
1 得 す 満る 足た でめ きに る
住宅を取
.
満足できる住宅を取得するためには、注文者側もいろいろな面で努力する必要があります。信頼できる設計者や施工業者をさがすこと、自分がどんな住宅に住みたいのかを考えること、それを的確に相手に伝えること、できた図面の内容を理解することなどが掲げられます。
あなたはどんな住まいを求めていますか?
Aさんは新聞記者で、仕事柄、交通の便のよい場所に住みたいと考え、中古住宅•マンションを対象に不動産屋さんを回って、満足できる中古住宅を取得しました。
Bさんは大手電気メーカーの技術者で、断熱•気密性能が高い住宅を望んでいました。いろいろな業者のパンフレットを比較して、性能値を明示してあるパネル工法の注文住宅を選びました。完成時には気密測定をして、冬を暖かく過ごせる住宅に満足しています。
Cさん夫婦は銀行員と看護師で、勤務時間の違いから、一般的なプランの住宅では住みにくいと感じていました。自分たちの生活に合った住宅を提案してくれる設計事務所を探し、設計に時間をかけて、住宅づくりを進めました。
Dさん夫婦は、子供達が独立した後の家が広すぎ、住みにくくなったと感じ、当初は建て替えを考えました。しかし、家や庭に愛着があり、これからの生活に合わせた大規模なリフォームを行ない、断熱や耐震性能も確保しました。
住宅にも好みがあります
Aさん•Bさん•Cさん•Dさんの例に示したように、住宅に求めるものは、職業•性格•好みなどにより人それぞれで異なります。4つの家族の住宅取得方法が違ってしまうと、決して満足のいく住宅は得られなかったと思います。
注文者も勉強しましょう
1 得 す 満る 足た でめ きに る
住宅を取
.
最近では、家族構成や生活の仕方が多様化しています。これに伴い住宅に対する考え方や要望も多様になってきています。このような状況で、満足して生活することができる住宅を取得するためには、土地や住宅の情報収集など、基礎的な知識を得るよう注文者も努力することが必要です。
信頼できる業者を選びましょう
自分たちがどんな住宅に住みたいのかを検討したり、それを設計者や施工業者に的確に伝えることも重要です。また、設計者や施工者がどのような面に気をつけて住宅の仕事をしているかを確認したり、モデルハウスや過去に手掛けた住宅を見学したり、工事監理の写真を見せてもらうなどして、自分たちに合った、信頼できる業者を選ぶことも重要なポイントです。
現場に行きましょう
分からないからといって、設計や施工を人任せにするのではなく、施工中に現場に足を運び、自分なりにチェックをしたり、疑問点があれば質問することも必要です。図面では気づかなかったことに、実物を見て気づくこともあります。引渡後に、「こんなはずではなかった。」といっても手遅れですが、施工の途中であれば、間に合うこともあります。
大工さんありがとう
注文者が現場に足を運ぶと、現場に良い緊張感やコミュニケーションが生まれます。なかには、「現場には来ないでください。」と拒否する業者もいますが、注文者が現場を確認するのはあたりまえのことです。大工さんが丁寧に仕事をしてくれている姿を見ると、住宅に愛着を感じ、入居後は大切にしようと思う気持ちが生まれてきます。
無理のない資金計画を立てる
必ずしも、収入が確実に上がっていく保証がありませんので、無理のない資金計画を立てることが重要です。
トラブルが発生したら
住宅を取得する際にトラブルが発生した場合、その解決には、法律が大きな役割を果たします。住宅に関する法律は複雑で、「建物」については建
築基準法*など、「設計」「工事監理」については建築士法*、「施工」については建設業法*の適用を受けます。また、「新築建売住宅」や「中古住宅」については、宅地建物取引業法*の対象となります。
2.契約前にすること
住宅の取得やリフォームをしようと思ったら何から始めたらいいのでしょう。
全体のながれを理解しましょう。
1
.
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○住宅情報を得る y
○土地の選定と、住宅の建て方を考える �
�
○住宅のプランと資金計画を立てる �
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○業者を選定する �
○建設
○入居
契約前に
2
契約前にすること
あなたのすべきこと
1つ1つ整理しましょう。
2
始めから何でも、業者にお願いするのはやめ、自分ですべきことは、自分でしましょう。
1 住宅情報を集める。
○住宅雑誌やホームページを見る
○モデルハウスやショールームを見学する
○住宅相談機関を活用する
○最近住宅を建てた人の話を聞く
2 土地の選定と、家の建て方を考える。
○別の更地へ建設するのか
○建売住宅を購入するのか
○今の家を壊して建設するのか
○親の家をリフォームして、二世帯住宅にするのか
○構造の種類をどうするか
(在来木造住宅、ツーバイフォー住宅、プレハブ住宅、コンクリート住宅、ブロック住宅など)
3 住宅のプランと資金計画を立てる。
○プランを作成する(全体面積、階数、部屋の大きさ…)
○優先順位を決める(外観、断熱性能、コスト…)
○建設費の予算•返済計画を立てる
2
契約前にすること
○融資を受ける銀行などを決める
.
○融資保証金、火災保険、家具、外構工事(門•塀など)、引越費用、登記代、税金など、工事金額以外に必要な金額を確保する
4 業者を選定する。
自分で決定すべきことです。
○設計、施工、工事監理の依頼の方法
同一業者(ハウスメーカーなど)に一括で依頼する
設計と工事監理を同一業者(設計事務所)に、施工を別業者とする設計と施工を同一業者に、工事監理を別の設計事務所とする
○複数の業者の話を聞き、会社の規模•仕事の進め方•工事金額•経験•相性などから業者を決める
○知人友人に相談する、評判を聞く
より具体的に考えてみましょう
3
土地の選定と、家の建て方を考えよう。
例えば
1 土地の選択の基準を考える。
新規購入か現地建て替えか
都心•郊外、広さ、平坦地•傾斜地、前面道路、価格
生活環境•利便性(交通•医療•福祉•商店•学校•公園•自然など)
2 優先順位を考える。
新築かリフォームか、全体予算か、親のことかなど
3.契約とは何か
3
契約とは何か
.
契約とは、契約当事者双方が合意することです。双方が合意すれば、文書で契約書を取り交わさなくても、口約束でも契約は成立しますし、それだけで法律的に効力があります。契約書に捺印しなければ、契約が成立していないわけではありません。また、契約書を取り交わしても、商法などの法律に違反している内容であれば、その契約書は無効になります。
それではなぜ、文書で契約書を
取り交わす必要があるのでしょうか?
契約と契約書は別物で、契約は本体であり、契約書はその本体を相互に確認し、契約の存在と内容を立証するための証拠書類です。
口約束だけで住宅の取得を進めて、全くトラブルが生じなければ、問題
はありません。しかし、もしも一方が契約どおり約束を実行しなかった場合、契約書は相手の契約内容の履行*を要求するための証拠となります。口約束だけでは、言った言わないの水掛論になってしまいがちです。このようなとき、何よりも確実で有力な証拠が契約書なのです。
また、契約とはお互いが対等の関係で結ぶもので、当然のこととして責任が伴います。契約書はその責任の証となります。署名•捺印は、契約内容について充分に理解し、納得の上で行うことが必要です。
4.契約書はなぜ必要か
契約書を取り交わすメリット
➍契約の締結*を慎重にし、不利な契約の締結*を回避する。
②契約の成立時期や契約の内容を明確にし、万が一トラブルが生じたときには証拠となる。
4
契約書はなぜ必要か
③民法や商法などに定められている一般的な規準と異なる契約内容(特約)を定めることができる(ただし、強行規定=〝それに反することができない重要な基準"に反する特約は結べない)。
.
➍と②については、説明の必要はないと思いますが、③については、住宅の請負契約で多く見られる例です。商法上は、代金は商品の引渡しと同時に支払うことになっていますが、住宅の建設には相当の期間と材料の調達が必要なので、住宅の請負契約では、特約を定め前払金や部分払金を支払う場合がほとんどです。
特約は、強行規定には設けることはできません。強行規定に特約を設けて契約した場合には、契約の方が無効になります。
住宅取得の資金計画
住宅は高価なもので、ローンを組んで取得する場合もあります。契約書には、代金の支払時期が明示されますが、資金が融資される時期を考えて記載しないと、支払いが滞ってしまいます。
注文住宅
注文住宅では、これからつくられるものに対して契約を結ぶことになります。できあがる住宅の内容は設計図面で確認することになりますが、実際にできあがっていく段階で、不都合を感じる場合もでてきます。このよ
うな場合に、工事の変更に関する内容が契約約款*に定められていないと
トラブルにつながる場合があります。工事着工後に、部屋の入口の位置を変更するように頼んだら、後から数万円の増額を請求された例もあります。このように、些細な変更で、多額の増額を請求されたり、逆に、負担の大きい変更を施工業者に押しつけてしまう場合も考えられます。
新築建売住宅と中古住宅
新築建売住宅や中古住宅の購入の際は、売買契約書を取り交わします。購入物件の状況を目で確認することができますが、構造体や断熱の状況までは見ることができません。設計図面を確認するとともに、実際に住んでから、購入した物件と設計図面、あるいは約束した品質などに相違があった場合にどのように解決するかなどの事項について、確認をしておくことも重要です(P16参照)。
リフォーム
4
契約書はなぜ必要か
.
リフォーム工事でも、きちんと契約書を取り交わしましょう(P22~23参照)。
契約内容をきちんと確認した上で契約書を取り交わすことが、トラブルを起こりにくくするとともに、トラブルが発生した場合でも解決しやすくなります。住宅自体には満足していても、代金の支払いや契約不適合*に対する対応などで不愉快な思いをすると、快適な生活を送ることはできなくなってしまいます。
訪問販売で契約をした場合には、条件により、書面により申込みの撤回や契約の解除(クーリングオフ*)ができます。
5.いつ、どのような契約書を取り交わすか
住宅の取得には何通りかの方法があり、それに伴い契約の内容や契約を結ぶ時期が異なってきます。一般的に多く見られる方法について説明します。
注文住宅の場合
1
1 設計と施工を同一の業者に依頼する場合(自社施工)
―工事請負契約書を取り交わす―
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
設計•施工を一環で行っている業者に、設計完了後に住宅の建設を依頼するのが工事請負契約です。図面内容に基づいて工事費の打合せを進め、工事費・工事期間などについて納得した時点で工事請負契約書を取り交わしましょう。
設計業務については、「サービスです」とか「工事請負金額の諸経費に含まれています」と説明される場合や、見積書の中に設計料が明記されている場合があります。
最近では、打合せを開始する時に、仮契約を結んだり、簡単な平面プランに基づいて工事請負契約書を取り交わし、予約金(内金•前金•申込金)を支払った後に具体的な平面図などの打合せを進めるケースがあります。
しかし、本来、工事請負契約は設計図面•仕様書*•見積書などが添付されてはじめて成立するものですから、仮契約というのはあいまいで、トラブ
ルの原因となる場合があります(P52Q&A-2参照)。本来的には、工事請負契約に先立って、独自に設計契約書を取り交わすべきです。
ただし、設計•施工を一環で行っている業者は、その業者が施工する前提で設計業務を行う場合が多く、施工を別業者に依頼
する場合は、設計からやり直しになるケースがほとんどです(P60Q&A-10参照)。
施工が設計図書*のとおりに行われているかどうかを確認する業務を工事監理といいます。建築基準法*では、工事監理者は建築主が定めることになっています。
一般的な契約パターン
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
望ましい契約パターン
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
2 設計・工事監理と施工を別の業者に依頼する場合
―設計・工事監理契約書と工事請負契約書を取り交わす―
設計業者と設計・工事監理契約書を取り交わし、打合せを進めて、設計図書*を作成し、それに基づく見積りをします。設計が完了した後、施工業者を選定し、その施工業者と工事請負契約書を取り交わすパターンです。この場合のメリットは、自分たちの好みにあった設計者に設計を依頼できることと、第三者的立場で工事監理を行ってもらえることです。
設計•工事監理には、敷地調査から基本設計•実施設計、建築確認申請業務、融資手続、見積書のチェック、工事監理、引渡しなどの業務が含まれ、それらの内、必要な業務だけを設計業者に依頼することもできます。
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
一括で依頼すると、設計業者が自分で設計した住宅について、設計図書*のとおり施工されているかどうかを完成までチェックすることになり、責任
.
の所在が明確になります。また、設計の専門業者に設計を依頼すると、建築確認申請*に必要な図面以外も作成することが多く、望んでいる住宅のイメージが、より具体化されます。また、将来のメンテナンスにはもちろん、増改築時や中古売買時に役立ちます。
設計と施工を同一の業者に依頼する場合と異なり、工事請負契約を結ぶときに、その内容をチェックしてもらうこともできます。
工事請負契約書については、後で例を示して、詳しく説明しますので、ここでは、設計•工事監理契約書を取り交わす時に必要なチェックポイントについて説明します。
設計・工事監理契約書を取り交わす時のチェックポイント
設計•工事監理契約は、これから行う図面作成や工事監理など、契約時には目に見えない業務に対して取り交わす契約になります。設計については、設計業者が手がけている住宅と、自分たちが求めている住宅が合っているかどうかが重要です。工事監理は、専門家が注文者の立場で現場のチェックをするものですから、信頼できる設計業者を選ぶ必要があります。
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
依頼しようとしている設計業者の設計した住宅や工事監理の写真を見せてもらい、納得のいくまで打合せを行って、設計や工事監理を頼んでもよいと確信してから、契約書を取り交わします。その際に、設計業務の範囲や、工事監理の内容、現場に出向く頻度などを確認するといいでしょう。設計業者を選定する際には、戸建住宅の設計を手掛けているかどうかを 確認してください。戸建住宅の設計は、他の用途の建築物に比べて、手間が掛かるといわれ、戸建住宅の設計をあまり経験していない設計業者に依頼したために、トラブルを生じるケースもあります。戸建住宅の設計を多く手掛けている設計業者でも、地域になじまない住宅を作っている場合もある
ので、自分たちとの相性をよく考えたうえで契約をした方がいいでしょう。
設計・工事監理契約書
これから実施する設計や工事監理の内容について記載した契約書で、工事名、工事場所、建物の構造•規模、業務内容、注文者名、設計者名、設計及び工事監理の期間、支払方法、契約者の署名•捺印、特記事項などが記載されたものです。
また、契約に先だって重要事項の説明を行うことが建築士に義務づけられており、注文者は説明を聞いた上で、重要事項説明書を受け取りましょう。
設計・工事監理契約約款
契約に付随する事項を箇条書にしたものです。著作権、業務の変更•中断、解除権、契約不適合*などについて記載されています。
※設計における契約不適合*とは、構造計算ミスや、打合せた内容と異なった図面を作成した場合などをいいます。また、工事監理における契約不適合*とは、設計図書*と現場の相違の見落としなどをいい、ともに施工上の契約不適合*は含みません。
※設計•工事監理契約書については、四会連合協定で小規模向けの契約書や約款を用意していますので、それらを活用することができます。
望ましい契約パターン
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
新築建売住宅や中古住宅の場合
2
―売買契約書を取り交わす―
施工が完了した住宅を購入するのが売買契約です。
住宅の形態や状況は見て確認できますが、構造体や断熱などについては実物をチェックすることが難しく、図面や工事写真で確認することになります。
詳細な図面がない場合もありますが、最低限、建築確認申請書やその申請書に添付されている図面には、目を通しましょう。新築建売住宅の場合
は、建築基準法に基づく建築確認申請*に交付される確認済証と完了検査申請に交付される検査済証があるか、融資の対象となるかなどについて確
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
認しましょう。中古住宅の場合は、建築確認申請関係書類が保管されているか、平成 19年以前の住宅であれば、新築時に住宅金融公庫(現「住宅金融支援機構」)の融資を受けているかなどについて確認しましょう。検査済証があれば、建築基準法*に適合した物件であることがわかり、住宅金融公庫の融資を受けていれば、断熱などについて、公庫で定めている基準を満たしている物件であるとの判断ができます。(公庫の基準は、建設年度により内容が異なります。)
新築建売住宅や中古住宅の取引きは、原則として、宅地建物取引業者が行います。宅地建物取引業者は、その物件について、重要事項の説明を行った上で、重要事項説明書を交付することが義務づけられています。説明を受けたときに、重要事項説明書に署名•捺印をします。これは、説明を受けたことの証明で、契約を前提にしたものではありません。
その住宅の性能や状態、その住宅が自分たちの生活に合っているかどうかなど慎重にチェックしてから契約しましょう。
売買契約書
売買契約書には、特に添付書類はなく、契約約款*に当る詳細の内容も契約書の中に書き込まれています。
売主名、買主名、売買価格、支払方法、宅地または建物の引渡時期、移転登記の申請時期、瑕疵担保責任、違
約金*、ローン条項*、買替え条項*、売買物件の表示(土地は所在地•地目*•地積*、建物は所在地•構造•種類•床面積)、売主•買主の署名•捺印、仲介
人の署名•捺印が明記されたものです。
売買契約書の履行*の注意点
売買契約書の履行*にあたっては、次の点に注意をしましょう。
○代金は売主に直接支払い、必ず領収書をもらいましょう。もし、仲介業者に支払う場合は、代理受領権限があることを確認しましょう。
○最終決済日には、所有権移転登記申請書類ができているか、残工事や補修工事が残っていないかを確認しましょう。
○所有権移転登記手続が完了したら、登記済証原本(権利証)をもらい、登記簿謄本*で内容を確認しましょう。
重要事項説明書
宅地建物取引業者は、契約が成立するまでの間に、取引主任者から、法律に規定されている重要事項を説明しなければいけません。
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
具体的な内容としては、登記記録に記載された事項、都市計画法•建築基準法*などの法令に基づく制限、私道負担(敷地の一部が私道となっているケース)に関する事項、代金及び交換差金(不動産を交換する場合の差
額)以外に授受される金額、契約の解除に関する事項、契約不適合責任の履行*に関する措置の概要などが記載されています。
重要事項説明書に記載のない事項
重要事項説明書に記載のない事項でも、個々の取引事情によっては、重大な不利益を被ることから、説明を受けた方がいい事項もあります。重要事項説明書に記載のない事項でも、説明を受けた内容については、書面に明記してもらいましょう。
次のような例があります。
○交通の便 最寄のバス停や駅までの徒歩時間。
○建物の性能 断熱性能の良否などは、断熱に関する図面があれば確認できます。
中古住宅の場合は、新築時に住宅金融公庫(現住宅金融支援機構)対象住宅だったかどうかも、参考になります。
○有害な化学物質を放出する建材の有無(シックハウス*への対応)
○照明器具の有無
○暖房設備の有無及び暖房方法•冷房設備の有無
○カーテンの有無
○固定資産税などの負担区分
固定資産税*•都市計画税*の納税義務は、1月1日現在の所有者が負いますが、契約の時期によっては、応分の負担を求められる場合があります。
中古住宅の場合はさらに次の点について確認しましょう。
法的な義務はありませんが、土地または建物の過去の履歴や契約不適合*など、取引物件の売主や所有者しか分からない事項について、告知書などを作成してもらうと、トラブル防止に役立ちます。
①告知書(物件状況確認書)
告知書の記載事例として、下記の内容が掲げられます。具体的には、雨漏り•結露•不同沈下*•事件•事故•火災などについて売主などが知り得る範囲で記載してもらうといいでしょう。
○土地関係であれば
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
境界確定の状況、土壌汚染などの瑕疵*の存否または可能性の有無、過去の所有者と利用状況、周辺の土地の過去及び現在の利用状況など
.
○建物関係であれば
新築時の設計図書*など、増改築及び修繕の履歴、建物の瑕疵*の存否または可能性の有無、過去の所有者と利用状況など
②付帯設備表
付帯設備表の記載事例としては、給湯暖房設備•キッチン•トイレ•バスなどの状態などが考えられ、設置時期や使用可能かどうかを確認しましょう。
③違反建築ではないか
建築基準法*(建築確認)に基づく完了検査申請に交付される検査済証があれば、基本的には、違反建築ではありませんが、その後の増改築で違反建築になっている場合もあります。確認申請書にない部分が現存している場合には、販売業者に確認するか、専門家に判断してもらう必要があります。違反内容によっては、増改築ができない場合もあります。
④建て替えが可能か
敷地が道路に接していない場合には、今の住宅を建て替えることができません。また、用途地域*が変更されていたりすると、建て替える際に、既存の住宅より小さい住宅しか建たない場合もあります。
⑤現状有姿
土地や建物を何も手を加えず現在の形状のまま引き渡すこと。中古住宅の売買契約書で「現状有姿とする」と記載されていても、「現状有姿=契約不適合*責任を負わない」ということでは必ずしもありません。
⑥リフォーム済みの中古住宅
内装仕上げや外壁のリフォーム済みの中古住宅の場合、雨漏の跡等が見えなくなっています。
リフォーム前の状況について確認しましょう。
⑦インスペクション(建物現況調査)
インスペクションは資格を持った建築士が、実際に建物を見て、現状がどうなっているのか確認する調査です。
5 約 書 いを つ取 、り ど交 のわ よす うか な
契
.
既存住宅のインスペクション(現況調査)には、「北海道住宅検査人によるインスペクション」と「既存住宅状況調査技術者によるインスペクション」とがあります。(P69参照)
*「北海道住宅検査人」は、北海道が推奨する制度で、住宅所有者・不動産事業者・施工業者によらない第三者の立場として、住宅の構造耐力上主要な部分(基礎、壁、柱、小屋組、土台、斜材、はりなど自重若しくは積雪、風圧、又は地震などを支えるもの)や雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁など)だけではなく、断熱材や防湿シートの劣化状況確認、小屋裏や床下の状況などを立入確認し、現況報告をするだけではなく、所有者に対して「長く暮らせる住まい」に必要な改修・改善内容などのアドバイスを
行います。
北海道住宅検査人登録者名簿は、一般社団法人北海道建築技術協会のホームページから確認出来ます。
htps://hobea.or.jp/reformmember/inspectorkensanintourokusha/
6.工事請負契約書に添付される書類とその役割
工事請負契約書を取り交わす場合は、添付書類が完備されていて、必要事項が明記されていることを確認して、記載内容について、疑問点をなくしておくことが必要です。工事請負契約書のチェック項目については後で述べますが、ここでは、工事請負契約書に添付される書類とその役割について説明します。
工事請負契約書には、契約の根幹となる項目だけが記載されますので、
具体的な工事の内容などについては、添付書類がなければ判断できません。特に設計図書*は重要で、記載内容が詳しいほど、トラブルになったときに解決の手がかりになります。
工事請負契約書(P51Q&A-1参照)
6
さ れ 工る 事
書 請
類 負と 契そ 約の 書役 に割 添
付
.
工事名、工事場所、建物の構造及び規模、発注者名、請負者名、支払方法、契約者の署名・捺印、特記事項などが明記されたもので、とても重要な書類です。
工事請負契約約款
契約に付随する事項を箇条書にしたものです。不可抗力*による損害、履行遅延違約金*、契約の解除、契約不適合責任*、紛争の解決方法などが明記されたもので、工事請負契約書の内容を補足する重要な書類です。
専門用語が使われていたり、表現が難解な場合もありますので、時間をかけて目を通し、疑問点は質問して、しっかりと理解するようにしましょう。
設計図書*(P53Q&A-3参照)
設計図面と仕様書*です。これから建築する住宅の構造・形状・性能・使用材料などについて詳しく図面化されたものです。これから施工される住宅の根拠となり、工事監理は設計図書*と現場を照合して行います。
68ページの表に、設計図書*として添付される主要な図面を示します。
見積書
設計図書*を基に工事費を積算したもので、契約金額の根拠となるものです。工事費内訳書と内訳明細書より構成されます。
内訳明細書とは、各工事の内容を細分化し、それぞれの項目の材料費や
手間賃を数量・単価から計算したものです。
見積書の書式や数量計算方法は業者によって異なるので、複数の業者の見積書がある場合のチェックには、かなりの時間がかかりますが、契約金額について納得するためには必要な作業です。
以下の書類は、引渡しの際に受け取るものですが、契約の際に内容を確認しておくといいでしょう。
保証書
建物の部位毎に、請負業者が無償の修理を保障する年数や基準などが明記されたものです。
保証約款
保証書に付随する事項を箇条書にしたものです。
免責事項
6
さ れ 工る 事
書 請
類 負と 契そ 約の 書役 に割 添
付
.
保証書の内容に当てはまらない場合を箇条書にしたものです。
【重要ポイント】
工事請負契約書と添付書類(設計 図面、仕様書、見積書など)(P68参照)は工事完了後も大切にずっと
保管しましょう!
契約書や添付書類などを長期間、電子データで保管できる「きた住まいるサポートシステム」があります(P77参照)
北海道が運用するサポートシステムの詳しい情報はこちらから
htps://support.kita-smile.jp/
7.リフォームの契約
必ず契約書を取り交わしましょう。
契約は、誰が(注文者)誰に(施工者)、いつからいつまでに(工期)、どのような工事を(設計図書*)、いくらで(契約金額・見積書)頼んだのかを書類にする、とても大事な手続きです。「リフォームだから」「小額工事だから」「信用しているから」「親戚だから」というのは、契約しなくていい理由にはなりません。
小額の工事の場合に、注文書・請書などの書類を契約書の代わりとする場合がありますが、その場合も、同様に記載項目を確認しましょう。
初めて見に来て、その場で見積り、その場で契約はありえません。業者は現状を確認して会社に持ち帰り、後日、見積書を提出します。その金額を見て家族などと相談した上で、契約するかどうかの返事をしましょう。
契約書類
7
リフォームの契約
.
新築時と同じく、工事請負契約書・工事請負契約約款・設計図書*・見積書などをそろえて契約します。
契約書
住宅リフォーム推進協議会のリフォーム工事標準契約書式を参考にして下さい。(P23参照) htp://www.j-reform.com/publish/pdf shosiki.uke.pdf
契約書で確認すべき項目
工期
リフォームでは新築以上に重要な項目です。契約の前後に工程表を受け取りましょう。工程表は工事中の各日にちに、どのような工事を行うかの予定表です。特に住みながら水回りのリフォームをする際には、水が使えない日の確認などに、重要な役割を果たします。
見積書
契約書に記載された金額の裏づけとなる重要な書類です。工事箇所や工事項目が確認できる内訳明細書のついた見積書を受け取りましょう。内訳明細書のない一式見積りでは、工事の中身がわからず、後々のトラブルのもとです。
内訳明細書は面積と単価の掛算で、それが分かっていると変更が生じた場合も、変更金額の増減がわかります。
設計図書*
工事内容・施工箇所を確認する重要な書類です。小規模のリフォーム工事の場合、新築当初の確認申請の図面コピーに工事内容・施工箇所をメモす
るだけでも、契約内容の確認になります。設計図書*で、どことどこを、どのようにリフォームするのかを確認し、工事終了後に「、この工事もやってもらえ
ると思っていたのに」といった思い違いによるトラブルの防止になります。
<住宅リフォーム推進協議会のリフォーム工事標準契約書式>
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7
リフォームの契約
.
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8.住宅瑕疵担保責任保険
「住宅瑕疵担保履行法」に対応した保険です。
住宅瑕疵担保履行法により、平成 21年 10月より新築住宅を引き渡す場合に、新築住宅を供給する住宅事業者は、雨漏りや住宅の傾きなどの基本構造部分に「瑕疵」が発見された場合に備えて、保険への加入または保証金の供託のいずれかの資力確保措置義務が必要となりました。
新築住宅を購入または建設予定の方は住宅事業者に対応方法や保険内容を確認しましょう。
新築住宅引渡しから 10年間に品確法で定められた基本構造部分(構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分)に瑕疵が見つかった場合、住宅事業者が負担する補修費用などに対して保険金が支払われます。
もしも、新築住宅の基本構造部分に瑕疵が見つかり、住宅瑕疵担保履行法により資力確保措置義務の対象となっている住宅事業者が倒産した場合には、住宅取得者は直接、補修費用などの支払いを受けることができます。
※新築住宅… 竣工後1年以内かつ人の居住の用に供したことのない住宅。
※住宅事業者… 建設業者・宅地建物取引業者。
※瑕疵… 引渡す住宅の品質・性能として、当初約束されたものと異なること。
8
険
住宅瑕疵担保責任保
※品確法… 住宅の品質確保の促進等に関する法律。
.
※資力確保措置義務……「保険への加入」または「保証金の供託」
工事中に現場検査を実施します
保険に加入した住宅は、各保険法人が定める設計施工基準に基づき、工事中に専門の検査員(建築士)による現場検査が行われます。
※現場検査……保険契約を締結する住宅については施工状況を現地において確認。例)木造2階建て戸建~1回目の検査…基礎配筋工事完了時
2回目の検査…屋根工事完了時から内装下張り直前の工事完了時までの間。
契約前に、保険内容の確認を忘れずに
注文者は、注文住宅の場合は工事請負契約時に、分譲住宅の場合は売買契約時に、保険の内容を確認し、引渡し時には保険付保証明書を忘れずに受け取りましょう。
任意加入の保険
リフォームする住宅や中古住宅を対象とした、住宅瑕疵担保責任保険と同じ目的の任意加入の保険があります。
リフォーム保険(リフォーム工事が対象)
リフォーム工事部分に瑕疵*が見つかった場合の補修費用をまかなうための保険です。その補修費用などに対する保険金は、リフォーム事業者(被
保険者)に支払われますが、万が一、リフォーム事業者が倒産などにより瑕疵担保責任を履行*できない場合は、注文者に保険金が支払われます。
既存住宅保険(中古住宅が対象)
宅地建物取引業者などが販売した既存住宅に瑕疵*が見つかった場合の補修費用をまかなうための保険です。
宅地建物取引業者(被保険者)が倒産などにより瑕疵担保責任を履行*できない場合には、買主に対して直接保険金が支払われます。
8
険
住宅瑕疵担保責任保
.
保険のしくみ(売主が宅地建物取引業者の場合)
施工業者の倒産などに備える保証制度があります。
住宅完成保証制度(注文住宅が対象)
施工業者が倒産などにより工事を継続できなくなった場合に、注文者の負担を最小限に抑える制度です。
また、注文者の希望により工事を引き継ぐ業者を紹介します。
※これらの保険や保証制度について詳しく知りたい場合は、(一財)北海道建築指導センター(審査部審査課[保険]011-271-9980)に聞きましょう。
工事請負契約書・特記事項と約款
1
9.工事請負契約書などの解説
工事請負契約書には、施工業者が独自で制作した書式など、いろいろな書式があります。使用される場合が多い、民間(七会)連合協定の契約書は戸建住宅以外の大規模工事を主に対象にしているため、戸建住宅にはなじまない項目もあります。住宅用の工事請負契約書・工事請負契約特記事項・工事請負契約約款を記載して、分かりやすく解説します。
工事請負契約書を取り交わす際に、参考にしてください。
○できるだけ分かりやすく、読みやすいものにするために、難しい表現もできるだけ避けています。
なお、本書では、発注者=注文者、受注者=請負者と表記します。
○工事請負契約書は、工事場所や請負代金額など、契約の際に必ず記入をして確認しなければならない内容について記載する書類です。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
○工事請負契約特記事項は、今までどの契約書にも見られなかったものですが、工事に関係する設計者や工事監理者、施工に関する責任者の名前を明示することで、責任の所在を明らかにし、検査時期などについて記入することで、双方の認識の食い違いをなくそうというもので、ここに記載されている事項が、契約内容に明記されることには、大きな意味があります。
○工事請負契約約款は、工事内容の変更や工事の中断などが生じたときに、どのような手続きが必要か、あるいはどのような責任が発生するかなどについて記載している書類です。ここで提示してある約款は、いつ、どんな場面で関わってくる条文かを分類して記載しているのが特徴です。
工事請負契約書・特記事項と約款の解説
2
契約書を取り交わす条件が整っていますか
工事請負契約書などのチェックポイントについて説明をする前に、契約書を取り交わして問題ない状況になっているかどうか、以下に示す項目について確認してみるといいでしょう。
○契約には責任が伴います。契約内容をしっかり理解しましたか?
○住宅の平面図や使用材料などが決まっていないのに、金額の入った工事請負契約書を取り交わそうとしていませんか?
○図面がそろっていますか? その内容に問題はありませんか?
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
○金額・着工日・完成日は打合せた内容と合っていますか?
請負業者の都合で
急がされていませんか?
1 工事請負契約書の解説
工事請負契約書に記載をする時には、次のような点を確認しましょう。
印紙
工事請負契約書(住宅用)
注文者 と請負者 は、この契約書の条項、工事請負契約特記事項、工事請負契約約款、添付の図面 枚及び仕様書 冊、設計住宅性能評価書 (若しくはその写し)、並びに工事費内訳書によって工事請負契約を結ぶ。
1.工事名 工事
2.構造及び規模 造 階建 延べ面積 平方メートル
3.工事場所
4.工期 | 着工 | 年 | 月 | 日 |
完成 | 年 | 月 | 日 |
5.検査の時期 関係法令により指定された時期にこれを行う。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
6.引渡しの時期 建築物が完成し、関係法令に基づく竣工時の検査に合格した後 日以内
7.請負代金
金 円
(うち消費税相当額) 円
住宅性能表示制度(P71参照)を利用する場合に必要です。
図面と合っていますか。
住居表示ではなく、登記簿上の地番を記入します。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
予定に合っていますか。工事に無理のない日程になっていますか。引越しを考えている時期と合っていますか。
.
見積書・資金計画と合っていますか。
8.支払方法 | ||
第1回 | この契約成立のとき | 円 |
第2回 | 円 | |
第3回 | 円 | |
第4回 | 円 | |
最終回 | 円 | |
完成引渡しのとき | 円 |
この契約の証として本書2通を作成し、当事者及び保証人が署名、捺印して当事者各1通を保有する。
年 月 日
注文者 住 所
氏 名 印
同保証人(保証人をおく場合に記載する)住 所
氏 名 印
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
請負者 住 所
氏 名 印
同保証人または完成保証人(保証人をおく場合に記載する)住 所
氏 名 印
1.融資を受ける場合は、融資の支払時期・金額に合せて記入しましょう。
支払方法は、工事の進捗と注文者から請負者への支払いが常に一致していればお互い損得なく過払い(払い過ぎ)も請負者の資金不足もないのですが、現実には限られた回数の支払いのため、中間時点ではどちらかに有利な状態となります。
着工時、上棟時、完成時にそれぞれ 1/3ずつ支払う方式は、よく行なわれますが(P 56Q&A-6参照)、過払いが多く、請負者に有利な支払方式です。このようなことを念頭に支払方法や回数はよく検討してから請負者と協議して決めましょう。
2.頭金や中間時の支払いにつなぎ融資を利用する場合は、一般的に金利が高いので、しっかり確認して利用しましょう。
3.融資の資金交付後に引渡を条件にしている請負者があるので、事前に確認しましょう。
収入印紙を貼る契約書の部数ですが「本書1通を作成し、当事者及び保証人が記名・押印して注文者(または請負者)がこれを保有し、請負者(または注文者)はその写しを保有する。」としてもいいでしょう。
契約金の支払いに対する保証人です。融資の保証人とは異なります。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
注文者側に保証人をおくように要求された場合は、請負者側にも完成保証人をおくように要求しましょう。
請負者が法人の場合、その代表者個人に完成保証人になってもらうことができます。
2 工事請負契約特記事項の解説
ここでは、特に契約時に確認しておきたいことを、特記事項という形にまとめました。
工事請負契約特記事項
工事に関して次の事項を定める。
1.公的な制度の利用
この工事は、○をつけた制度を利用する。
・住宅性能表示制度 ・長期優良住宅 ・低炭素住宅
・住宅瑕疵担保責任保険(保険会社名: )
・住宅完成保証制度
・その他( )
2.設計者
この住宅の設計者は次の者とする。事務所名
(事務所登録 )
氏 名
(建築士登録 )
3.工事監理者
9 の 解 工説 事
請負契約書など
注文者は次の者を工事監理者として定める。事務所名
.
(事務所登録 )
氏 名
(建築士登録 )
4.現場代理人
請負者は次の者を現場代理人として定める。(定めない場合は記載しない。)氏 名
5.主任技術者
請負者は次の者を主任技術者として定める。主任技術者 氏 名
(資格 )
それぞれの制度により手続きや検査が異なるため、何を利用して建築するのかの確認項目です。
地方公共団体が認定する、耐久性能・耐震性能・断熱性能などを高めた住宅です。所得税減税などが受けられます。
P24参照
建築物には必ず設計者が存在し、設計上の責任を負います。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
注文者の立場に立った工事監理者を定めることは、とても重要なことです。役割については工事請負契約約款第4条に明記しています。建築士法*で、建築物が木造で2階建て以下かつ 100m워以下の場合の他は建築士の資格が必要です。
この建築現場の請負者側の責任者で大きな権限を持ちます。役割については工事請負契約約款第5条に明記しています。
建設業法*で定める資格(一定の経験年数か、1・2級建築士または1・2級施工管理技士の資格を持っていること)が必要な、現場の技術的責任者です。主任技術者は全ての建築工事で定める必要があります。
6.検査時期 建築基準法(建築確認)・住宅瑕疵担保責任保険が指定する時期及び完成引渡しの時期のほか、○をつけた時期に、注文者または工事監理者が検査をする。 ・着工時 ・基礎配筋完了時 ・基礎工事完了時 ・軸組完了時 ・屋根工事完了時 ・断熱気密工事施工時 ・内装下地張り直前工事完了時 ・その他( ) | |||
7.瑕疵担保責任の範囲と期間 請負人が瑕疵の責任を負う期間は、以下の項目について定める期間とする。 ➍ 「構造耐力上主要な部分または雨水の進入を防止する部分のうち住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令(平成 12年4月1日政令第 64号)に定める部分」については、 年 ② その他の部分は、 年 | |||
8.支給材料 支給材料は( ・ある、 ・ない)支給材料 支給方法 9.その他 融資を利用する場合は、請負者は建築物の完成後、直ちに注文者が表示登記を行うことを承諾する。 |
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
住宅新築工事でポイントとなる時点での検査の予定を示すものです。主として専門知識を持った工事監理者が検査をしますが、注文者も立ち会い、注文者にしかチェックできないこともあるので現場に足を運びましょう。
建築基準法(建築確認)の完了検査は、申請と同じ形態になっているかどうかの検査です。図面どおりの施工が確実に行われて、断熱性能などの大切な性能が確保されているかどうかをチェックするのは、工事監理者の仕事です。第三者的立場に立った工事監理をするために、施工業者とは別の工事監理者に依頼する方法もあります。
工事監理者には、左記の項目は全て検査してもらいましょう。また、雨漏りの原因になる可能性のある部分などの検査もしてもらいましょう。
※検査 建築基準法(建築確認) 1回 完成時
住宅瑕疵担保責任保険 2回 基礎配筋工事完了時
(P24参照) 屋根工事完了時から内装下地張り直前の工事完了時までの間
住宅性能表示制度の建設評価 4回 基礎配筋工事完了時 (P71参照) 躯体工事の完了時
下地張り直前の工事完了時完成時
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
平成 12年4月1日から施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律により、「構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分のうち一定部分」については、最低 10年と定められましたが、「構造耐力上主要な部分などを含めて全ての部分」について、条件付(定期的に有料のメンテナンスをすることなど)で最大 20年まで延長することができます。(P47参照)
3 工事請負契約約款の解説
工事請負契約約款
―契約時に確認する内容― (総 則)
第1条 注文者と請負者は、おのおの対等な立場でたがいに協力して信義をまもり、誠実にこの契約を履行する。
2 契約の履行にあたっては、工事請負契約書、工事請負契約特記事項、設計図面、仕様書に特記のない限りこの約款の規定による。
3 設計図面及び仕様書 または住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「住宅品質確保促進法」という)第5条第1項にもとづく指定住宅性能評価機関から交付された設計住宅性能評価書(以下「設計住宅性能評価書」という)に明示されていない事項や記載内容に相違があるときは、設計者に確認し決定する。ただし、軽微なものまたは工事費内訳書と相違を生じる場合は、注文者と請負者及び工事監理者が協議をして決定する。
4 注文者が工事の内容や進め方に疑問を感じたときは、請負者または工事監理者(最終的な責任は請負者にある)は疑問点について適切に説明しなければならない。
5 請負者は、設計図面及び仕様書に基づく工程表を作成し、契約締結後すみやかに注文者または工事監理者に提出して承認を受ける。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
6 契約の目的物の性能は、設計住宅性能評価書により、注文者と請負者双方が承諾した上で、契約書に設計住宅性能評価書を添付してこの契約を締結する。
.
(保証人)(保証人をおかない場合には削除する。)
第2条 保証人は、この契約から生じる責務について保証の責任を負う。
2 保証人がその義務を果たせないことが明らかになったとき、当事者は、相手方にその交代を求めることができる。
3 この契約に前払金の定めをするとき、注文者は、請負者が次のどちらかの保証人を立てることを求めることができる。
➍ 責務の不履行によって生じる損害金の支払いを保証する者
② 請負者に代わって工事を完成する他の建設業者
(権利義務の譲渡など)
第3条 この契約によって生じる権利や義務は、第三者に譲渡や承継することはできない。ただし、相手方の書面による承諾を得た場合は可能である。
2 当事者は、この契約の目的物を第三者に売却や貸与したり、または抵当権その他の担保の目的に使用してはいけない。ただし、相手方の書面による承諾を得た場合はこの限りではない。
どの時点、どんな時にかかわってくる条文かを示しています。
工事を円滑に進めるための大原則です。
住宅性能表示制度(P71参照)を利用した場合の項目です。
設計図面は完全なものではない場合もあります。設計図面に明示がない場合などはこのような扱いを定めます。
トラブルは些細なことから広がる場合もあります。注文者は、疑問を感じた時は遠慮しないで確認しましょう。請負者は手がけている多くの住宅のひとつと思わないで、注文者にとっては唯一の大切な住宅との認識を持って対応して下さい。
工事監理者は、請負者の施工計画を検討し助言する立場です。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
工事がどのように進むのか、いつ現場に出向いたらいいのかなどを確認できます。住宅性能表示制度(P71参照)を利用した場合の項目です。
(工事監理者)
第4条 工事監理者は、注文者の委任を受けて次の事項を行う。
➍ 設計意図を正確に実現するため、請負者と打合せ、必要に応じ説明図・詳細図などを、工程表に基づき請負者が必要な時期に、請負者に渡す。
② 請負者の施工計画・工程管理・品質管理などを検討し、助言する。
③ 設計図書に基づき施工に立ち会い、請負者の作成する施工図(原寸図など)・工事材料・建築設備の機器及び仕上げ見本などを検査・検討し、承認する。
④ 工事の内容が設計図面、仕様書または設計住宅性能評価書などこの契約に合致していることを確認する。
⑤ 工事の内容・工期または請負代金額の変更に関する書類を技術的に審査し、承認する。
⑥ 工事の完成を確認し、契約の目的物の引渡しに立ち会う。
2 注文者は前項以外のことを工事監理者に委任した場合は、請負者に 書面 で通知する。
3 請負者がこの契約に基づく指示・検査・試験・立会・確認・審査・承認・意見・協議などを求めたときは、工事監理者はすみやかに対応する。
4 当事者は、この契約に定める事項を除き、工事について当事者間で通知・協議を行うときは、通知は工事監理者を通じて、協議は工事監理者を参加させて行う。
5 工事監理者は、請負者に対する指示・確認・承認などを書面により行う。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
(現場代理人・主任技術者など)第5条
.
請負者は、現場代理人を定めることができる。
2 現場代理人は、工事現場いっさいの事項を処理し、その責任を負う。
また、次の事項を除き、この契約に関する請負者のいっさいの権限を行使することができる。
➍ 請負代金額の変更
② 工期の変更
③ 請負代金額の請求または受領
④ 第7条第1項の請求の受理
⑤ この契約の解除
3 請負者は、工事現場の施工の技術上の管理を行う主任技術者を定める。
4 現場代理人、主任技術者はこれを兼ねることができる。
工事監理者の役割について書いてあります。
工事監理者は注文者が委任します。
工事監理者は、注文者の立場で工事に加わる専門家ですから工事を円滑に進める上でとても重要です。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
書面とは、発行年月日が記載され署名・捺印された文書です。 工事監理者の対応が悪いと工事が遅れてしまうこともあります。
現場代理人の役割について書いてあります。主任技術者の役割について書いてあります。
(工事関係者についての異議) 第6条 注文者は、請負者の現場代理人や主任技術者について、工事の施工または管理について、著しく不適任と思われるときには、請負者にその理由を明示した書面で、交代を求めることができる。 2 請負者は、注文者が定める工事監理者について、著しく不適任と思われるときには、注文者に、その理由を明示した書面で、交代を求めることができる。 ―工事中の変更などに関する事項― (設計図書に適合しない施工) | |||
第7条 工事の材料及び施工が設計図書に適合しない場合は、注文者及び工事監理者は、設計図書どおりに改めるように請求することができ、請負者はこれに 従わなければいけない。この際の費用は、請負者の負担とする。 | |||
(工事の変更・中止など) | |||
第8条 注文者は、必要がある場合には、工事内容を変更したり、工事を一時中断したり、または工事を打切ることができる。この場合で、請負代金額や工期を変更する必要があるときには、当事者が協議をして、書面で変更する。 2 請負者または工事監理者が、両者協議の上、工事内容を変更する必要があると判断した場合は、その内容を注文者に伝え、了承を得た上で変更することができる。この場合で、請負代金額や工期を変更する必要がある時には、当事者が協議をして書面で変更する。 3 前項の場合で、請負者が損害を受けるときには、注文者は、その損害金を賠償する。また、注文者が損害を受けるときは、請負者がその損害金を賠償する。 賠償額は注文者と請負者が協議をして決定する。 | |||
4 第1条6項で定めたこの契約書に添付した設計住宅性能評価書などの内容に変更が生じた場合は、前項を適用して変更評価申請または再度、設計住宅性能 評価申請を行う。 | |||
(請負者の請求による工期の延長) 第9条 請負者は、工事に支障のある天候の不良など、やむをえない理由により、工期内に工事を完成することができないときには、注文者に工期の延長を求めることができる。延長の日数は、注文者と請負者が協議して、書面で変更する。 |
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
工事は設計図書*に基づいて進められます。請負者は勝手に変更することはできません。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
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住宅性能表示制度(P71参照)を利用した場合の項目です。
現場が進んでいくと、図面では分からなかったことに気がつくこともあります。自分の
大切な住宅ですから、不都合を感じた場合は話し合ってみましょう。簡単に解決する場合もありますし、請負代金を増額したり、工期を延ばしたりすることで解決する場合もあります。請負代金や工期などの変更は書面で行いましょう。
―工事中の損害などに関する事項― (損害の防止など) 第 10条 請負者は、工事の引渡しまで、請負者の費用負担で、契約の目的物、工事材料その他工事施工に関する損害や第三者に対する損害の防止に必要な措置をする。 (第三者の損害) | |||
第 11条 施工のため、第三者の生命、身体に災害を及ぼしたり、財産などに損害を与えたとき、または、第三者との間に紛争を生じたときは、請負者がその処理にあたる。ただし、注文者の責任による事項によって生じたときは、注文者 がその処理にあたる。 | |||
2 前項に要した費用は、請負者の負担とし、工期は延長しない。ただし、注文者の責任による事項によって生じたときは、その費用は、注文者が負担し、請負者は、必要に応じて工期の延長を求めることができる。 (一般損害の負担) 第 12条 工事の完成・引渡しまでに契約の目的物または工事材料その他施工一般について、注文者及び工事監理者以外の責任により生じた損害は、請負者の負担とし、そのために工期を延長しない。 2 注文者及び工事監理者の責任により生じた損害については、注文者または工事監理者の負担とし、請負者は、必要に応じて工期の延長を求めることができる。 (危険負担) | |||
第 13条 注文者にも請負者にも責任のない、天災地変など不可抗力によって工事の既成部分や工事現場に搬入した工事材料に損害を生じたときは、請負者は、事実発生後すみやかにその状況を注文者に通知し、その損害額に対する注文者 と請負者の負担額について、両者で協議し決定する。 | |||
2 火災保険その他損害を補塡するものがあるときは、それらの額を損害額から 控除した額を前項の損害額とする。 | |||
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
例えば、工事用の足場が倒れて、隣の住宅の外壁を破損した場合は、請負者の責任ですが、もとから設置されていた塀が、工事とは無関係に倒れて同様のことが生じた場合は、注文者の責任になります。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
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例えば、洪水(自然災害)が発生して施工済の柱が破損した場合は、その損害額を注文者が負担するのが原則です。搬入した資材が使えなくなった場合は、その管理に落ち度
(シートを掛ける・2階に移すなど)がなかったかを確認した上で、注文者の負担となります。
火災については、工事中は請負者の管理責任となり、引渡後は注文者の管理責任となります。
―検査や引渡しに関する事項―
(現場の検査)
第 14条 請負者は、工事請負契約特記事項の6に定める検査時期を事前に通知し、注文者または工事監理者の立会により、検査を受けなければならない。
2 請負者は、工事が完成したときは、引渡しに先立って注文者または工事監理者に立会を求め、設計図書、仕様書との適否の確認を行う。
3 検査に合格しないとき、請負者は、遅滞なく補修などを行い、再検査を受ける。この際の補修などに必要な費用は請負者が負担する。
4 請負者は工事請負契約に添付または交付した設計住宅性能評価書に記載された性能表示項目については、指定住宅性能評価機関から交付された建設住宅性能評価書により確認し、注文者にその結果を報告する。この場合、建設住宅性能評価書の内容が設計住宅性能評価書と異なるときは、請負者は、遅滞なく補修などを行い、再検査及び再評価を受ける。この際の補修などに必要な費用は請負者が負担する。
(引渡し)
第 15条 引渡しの時期は、工事請負契約書に定める時期とする。引渡しを受けたときは注文者は請負者に受領書を渡すものとする。
2 引渡しに際し、請負者は、鍵や必要書類を注文者に渡すとともに、設備機器などについての使用方法など必要な事項について説明する。
(請負代金の支払い)
9 の 解 工説 事
請負契約書など
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第 16条 工事が工事請負契約書に定めた支払時期に達したときは、注文者は、請負者の請求により、請負代金を支払う。
2 注文者は、工事施工済部分のうち、請負者に支払った金額に相当する部分は、その都度、注文者の所有となるものとし、請負者は工事が完成し引渡しが完了するまでの間、当該部分について、善良なる管理者の注意をもって管理するものとする。
現場で行う公的な制度以外の検査について定めています。
住宅性能表示制度(P71参照)で建設住宅性能評価を受けた場合の項目です。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
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建設中は請負者に管理責任があり、引渡後は注文者にその責任が移りますので、引渡日は明確にする必要があります。
請負代金の支払いや、中間払いをした時の扱いについて定めています。
―契約不適合に関する事項― (契約不適合責任) | |||
(契 | 第 17条 注文者は、引き渡された工事目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という)であるときは、請負者に対し、書面をもって、目的物の補修又は代替物の引き渡しによる履行の追完を請求することができる。 2 注文者は、請負者が契約期間内に目的物を引き渡すことができない場合や、目的物に契約不適合がある場合等に、請負者に損害賠償請求をすることができる。 3 注文者は、請負者に対して、代金の減額請求ができる。 4 注文者は、書面をもって請負者に通知して、工事を中止、または契約を解除することができる。 | ||
約不適合責任期間) 第 18条 注文者は、引き渡された工事目的物に関し、契約不適合を知った日から 1年以内に請負者にその旨を通知しなければ、契約不適合を理由とした履行の追完請求、損害賠償請求、代金の減額請求、契約の解除をすることができない。 | |||
―瑕疵に関する事項― (瑕疵担保責任) 第 19条 工事目的物が住宅の場合、品質確保促進法により、請負者は、注文者に住宅を引き渡した日から 10年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として次の各号に定める一定部分の瑕疵(構造耐力または雨水の侵入に影響のないものを除く。)について担保の責任を負う。 ➍構造耐力上主要な部分 住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材、その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版または横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧または地震その他振動若しくは衝撃を支える部分とする。 ②雨水の浸入を防止する部分以下の各部分とする。 イ 住宅の屋根若しくは外壁または外壁の開口部に設ける戸、わくその他の建具 ロ 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部または屋内にある部分 |
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
17条-1 追完*請求については、細かく条件や但し書きがありますので、確認して下さい。
17条-2 損害賠償請求については、細かく条件や但し書きがありますので、確認して下さい。
損害賠償請求の中には、契約期間内に引き渡すことができない場合の履行遅延違約金*があります。延滞日数に応じて計算されますが、利率を確認しましょう。
17条-3 代金の減額請求については、細かく条件や但し書きがありますので、確認して下さい。
17条-4 工事の中止、契約の解除については、細かく条件や但し書きがありますので、確認して下さい。
18条 契約不適合責任*期間については、細かく条件や但し書きがありますので、確認して下さい。
○木造(在来軸組工法)の戸建住宅の例 【構造耐力上主要な部分】
2階建ての場合の骨組(小屋組、軸組、床組)の構成
【雨水の浸水を防止する部分】
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
構造耐力上主要な部分とは
基礎 | A |
壁 | B |
柱 | C |
小屋組 | D |
土台 | E |
斜材 | F |
床板 | G |
屋根板 | H |
横架材 | I |
屋根の仕上げ・下地など | J |
外壁の仕上げ・下地など | K |
(請負者の解除権)
第 20条 注文者が、前金払、部分払の支払いを遅延し、相当の期間を定めて催促しても、なお支払わないときは、請負者は工事を中止できる。
2 次の各号の一に該当するときは、請負者は契約を解除することができる。
➍請負者の責任ではない工事の遅延または中止期間が工期の3分の1以上または2ヶ月に達したとき。
②注文者が工事を著しく減少したため、請負代金が3分の2以上減少したとき。
③注文者がこの契約に違反し、その違反により契約に履行ができなくなったと認められるとき。
④注文者が請負代金の支払い能力を欠くことが明らかになったとき。
3 前2項によるとき、請負者は注文者に損害の賠償を求めることができる。
4 第2項による契約解除の時は、第 19条第3項の規定を準用する。ただし、利息については適用しない。
(紛争の処理)
第 21条 この契約について、当事者間に紛争が生じたときは、当事者の双方または一方から、相手方の承認する第三者を選んで、これにその解決を依頼するか、工事請負契約にあっては、北海道 建設工事紛争審査会(以下「紛争審査会」という)の斡旋または調停によって解決をはかる。なお、住宅品質確保促進法第
6条第3項に定める建設住宅性能評価書が交付された住宅については、当事者はこの規定にかかわらず、申請により同法第 62条第2項に基づく指定住宅紛争処理機関(以下「指定住宅紛争処理機関」という)の斡旋、調停または仲裁によって解決を図るものとする。
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
2 当事者の双方または一方が前項により、紛争を解決する見込みがないと認めるか、紛争審査会あるいは指定住宅紛争処理機関が斡旋または調停をしないものとしたときや打ち切ったときは、当事者は仲裁合意書に基づいて、紛争審査会あるいは指定住宅紛争処理機関の仲裁に従うことができる。
―その他の事項―
(補 則)
第 22条 この契約書・特記事項・約款に定めていない事項については、必要に応じて、注文者と請負者の協議により定める。
注文者がこのような行為を行った場合には請負者が工事を中止したり、契約を解除することができます。また、損害賠償を求められても仕方ありません。
悪徳業者がわざと東京など、工事場所から遠い場所を記載していた例があります。まさかとは思いますが確認してください。
万が一請負者とトラブルになったときには、住宅相談窓口を持っている機関に相談するといいでしょう。話し合いによる解決が困難になってしまった場合には、工事請負契
9 の 解 工説 事
請負契約書など
.
約においては、北海道建設工事紛争審査会の調停*・仲裁*・斡旋*や、裁判所の判断を仰ぐことになります。 (P62Q&A-12参照)
例えば、建替工事が、請負者の責任で遅延した場合の仮住い費用は、請負者が負担しま
す。
また、店舗併用住宅の工事が、請負者の責任で遅延した場合、開店日が遅れたことによる損害費用は、請負者が負担します。
10.契約に関するトラブルの実例
住宅相談などの実例から、契約に関するトラブルや解決策などの例を Q&Aの形で紹介します。
10
ル の 契実 約例 に
関するトラブ
.
トラブルの例ですので、悪い業者や悪い営業マン、あるいは悪い注文者が登場しますが、もちろん、良心的な仕事をしている方々がたくさんいることを申し添えます。
Q1 顔見知りの工務店に契約書なしで依頼
Aさんは、昔から顔見知りのB工務店に住宅の建て替えを依頼しました。予算が 2200万円だと話したところ「大丈夫!」と言われ、打合せが進み、設計図面ができあがり4月に着工しましたが、工事請負契約書は取り交わさず、見積書もありませんでした。子供の学校の夏休みに引越ししたいと伝えてありましたが、工事が終了したのは秋も深まる 11月です。仮住いの家賃も予定より 24万円も多くかかってしまいました。工事の遅れについて、B工務店に苦情を言うと、逆に、「こちらは、予算に合わせて仕事をしてやったんだ。本当は足を出しているので、あと 200万円ほど請求したいくらいだ。」と言われてしまいました。Aさんは、引越しが遅れたことについても工事のことについても納得できません。どうしたらいいでしょうか。
A1 顔見知りだからといって、「大丈夫」という言葉をうのみにして契約書も取り交わさず、見積書も確認しないまま工事を進めてしまったのが間違いです。Aさんが納得できないのはあたりまえですが、交渉をしようにもその根拠となるものがありません。話し合いをしても、水掛論になってしまい、さらにいやな思いをしそうです。
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ル の 契実 約例 に
関するトラブ
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引渡後もメンテナンスが必要ですし、不具合が生じる場合もありますので施工業者とは引渡後も良好な関係でいたいものですが、このような状況になると、これまでの関係も崩れてしまいます。
注
トラブルが生じたときに、契約書がないと解決のよりどころをなくしてしまいます。住宅は高額ですから、たとえ親戚や親友が契約の相手であっても、必ず契約書を取り交わしましょう。契約内容の中で大切なことの一つが施工期間です。特に、建替工事の場合は、仮住いが必要になりますので、契約書に工期を明記して守ってもらいましょう。工事の遅れや注文者の支払い
の遅れに対応する方法として、履行遅延違約金*の条項があります。
意
!
Q2 前払金が戻ってこない!
Aさんは、住宅展示場で気に入った3社に平面図と概算見積りの提示を依頼しました。そのうちの2社は、仮契約や前払金については必要ないと言われましたが、Bホームには、「打合せ前に仮契約を結ばないと、平面図を提示できない。」と言われ、仮契約をし、前払金として 50万円を支払いました。Aさんは、家具を予約したときの内金の感覚で、解約したときには、全額戻ってくるものと思いこんでいました。平面図や見積金額を比較検討した上で、C建設に頼もうと思い、他の2社に断りの連絡を入れたところ、Bホームの前払金は全額戻ってこないと言われ、Aさんは困り果ててしまいました。どうしたらいいでしょうか。
A2 工事を依頼する業者が正式に決まらないうちに、仮契約など何らかの契約をするのは望ましくありません。3社のうち、特にBホームに依頼したい気持ちが強くなかったのであれば、Bホームを除外して考えた方がよかったのかもしれません。仮契約を結ぶ前に、契約の内容や前払金の扱いについて確認しなかったのも失敗です。
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ル の 契実 約例 に
関するトラブ
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このような状況では、先に支払った 50万円を考慮して、Bホームに依頼するかC建設に依頼するかをもう一度考えるしかありません。C建設に頼みたい気持ちが強ければ、高い授業料だと思って 50万円をあきらめるしかありません。
注
仮契約はあいまいでトラブルの原因となります。お金の支払いを伴う仮契約を結ぶと言われたら、仮契約の目的や前払金が何に必要なお金なのか、仮契約を解除するときに前払金が戻ってくるのか、本契約の際に工事請負金額の一部として扱われるのかなどについてきちんと確認しましょう。
仮契約が設計契約で前払金が設計料であれば、その
意味も理解しやすく誤解することもなかったのではないでしょうか。
意
!
Q3 図面や見積書がないまま契約すると
Aさんは約 40坪(約 130m워)の住宅を 2300万円程度の予算で建てたいと考え、Bハウスに相談したところ、「坪当たり約 55万円(40坪×55万円=2200万円(消税別))になるので、建設可能ですよ。住宅フェアを行っているので、今月中に契約すると安くすることができます。」と言われ、図面や見積書がない状態で、工事請負金額 2100万円(消税別)で工事請負契約書を取り交わしました。
その後、打合せを進め、希望を入れた住宅の図面ができあがりましたが、面積は 42坪(約 140m워)になりました。営業マンには、面積も増えたし、外装材も標準より高いものを選んだので、工事請負金額は 2500万円(消税別)にアップすると言われました。さて、どう対応したらよいでしょうか。
A3 営業マンは実績づくりのために、早めに契約書を取り交わしたがる場合もありますが、打合せ開始時に図面もないのに契約書を取り交わすとこのような問題が生じます。契約を急いだことで、Aさんも営業マンも気まずい状況になっています。
今後の対応については、大きく分けて3通りの方法があります。
➍当初の予算に合わせるよう、設計図面を変更することです。外装材などの使用材料をBハウスの標準的な仕様にすることが、一番簡単な方法です。
②希望を入れた図面の金額に合わせて資金計画を練り直すことです。この場合、提示された金額をうのみにするのではなく、希望を入れた図面とBハウスの標準的な仕様の違いを確認して、差額を明示してもらい、増額について納得したうえで、工事を進めるべきです。
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ル の 契実 約例 に
関するトラブ
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どちらの方法をとっても、当初の契約の根拠となる図面も見積書もないので、すっきりしない結果となり、不満が残ることになります。
③金銭的な負担を負う可能性もありますが、契約約款*の契約解除の条項を確認した上で、契約を解除する方法があります。最初からやり直すのも、一つの方法かもしれません。
意
!
注 工事請負契約には、契約解除の項目がありますが条件があります。金銭的負担なく契約解除できるかどうか、法律相談が必要な場合もあります。一度契約を取り交わすと解約には手間がかか
りますので、契約図書・金額・工期等が決まってから工事請負契約を交わしましょう。
住宅の予算を考える時に、よく坪単価が使われますが、坪単価は大まかな予算をつかむためのもので、契約の根拠にはなりません。契約金額の根拠として見積書が必要です。
Q4 工事完成時に多額の追加請求が…
Aさんは、B工務店と住宅の平面について何回かの打合せを重ね、納得のいく平面が提示された時点で工事請負契約書を取り交わしました。Aさんの結んだ工事請負契約書には、工事請負契約約款だけが添付され、それ以外には、図面も見積書も添付されていませんでした。工事が進み、外装材や内装材などはB工務店から提示されたものの中から選びましたが、システムキッチンだけはB工務店から提示されたものの中には気に入るものがなく、自分が使いたい製品を指定して納入してもらいました。また、打合せの平面図にはなかった棚を物置に作ってもらいました。工事完成時に、AさんにB工務店から、棚だけではなく、キッチンや内外装材についても多額の追加料金の請求が来ましたが、どうしたらいいでしょうか。
A4 契約の内容を明確にするために、契約書には図面や見積書を必ず添付します。工事の途中で、追加や変更をしたいというのはよくあることですが、この場合、設計図面などの添付書類がないために、当初の契約内容が不明確で事態を難しくしています。
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ル の 契実 約例 に
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追加工事や工事の変更については、一般的に、事前にこれが追加工事であること、そして別途代金を支払うことを明示または黙示に合意していない限り、当初の契約書で決めた請負代金の中に含まれるというのが原則です。従って、内外装材については、B工務店が提示したものから選んでいるので、追加料金の請求には応じる必要はありません。また、物置の棚やキッチンについては、追加工事であることの説明やこれだけお金がかかるというような話があったかどうかをお互いに確認しながら話し合い、解決するといいでしょう。
注
着工するまでに何度も打合せをして、図面も変っていくので、どの設
計図書*に対する契約か、どの見積書に対する契約かがわからなくなります。契約の明確な根拠として、契約書には設計図書*などを添付します。こうすることで、工事途中で追加や変更をしても、スムーズに話し
合うことが可能になります。
また、追加や変更が生じたときには、請負金額の中でできるのか、金額の変更を伴うのかをきちんと確認し、変更を伴う場合は書面を取り交わしましょう。
意
!
Q5 建築確認申請書提出後に解約
Aさんは、設計契約は取り交わさないでB社と打合せを進め、住宅の内容がほぼ決まり、それに基づいた見積りを出してもらい、予算と合えば工事請負契約書を取り交わす約束をしました。この時点で、B社から建築確認申請*を提出してもいいかと言われ、Aさんは承諾しました。その後、見積書が提出されましたが、予算をかなり超えていたため、B社に断る旨を伝えたところ、「建築確認申請*を提出したので、当社で建築しなければならない」と言われました。どうしたらいいでしょうか。
A5 建築確認申請*は、その建築物の計画が建築基準法*に適合しているかどうかを事前に審査するものです。原則として建築主が申請者となりますが、実際の手続きは設計業者が行う場合がほとんどです。
申請書には、設計者、工事監理者及び工事施工者の名前を記載します。建築確認申請*は設計に対する審査ですから、設計者名は必ず記載しますし、変更することはできません。工事監理者や工事施工者
名は、決まっていれば記載をしますし、決まっていなければ「未定」で提出でき、変更することも可能です。
このように、建築確認申請書は施工を約束するものではありませんので、B社で施工する必要はありません。ただしこの場合、B社が設計者になっていると思われますので、別の会社で建設する場合には、先に提出した申請書を取り下げ、新たに申請し直す必要があります。
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ル の 契実 約例 に
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一番問題だったのは、契約をするかどうかわからない業者なのに確認申請書の提出を承諾してしまったことです。また、設計契約もしていないのに、B社は建築確認申請*までの設計業務を行ってい
.
ます。設計については無料またはいくらと明確に約束をしていれば
問題ありませんが、事前に取り決めをしていなかった場合は、申請料を含めて、B社とはその精算について話し合いをする必要があるでしょう。
意
!
注 設計と施工が別の業者の場合はもちろんですが、設計と施工を同一の業者に依頼する場合でも、設計契約をするとこのような問題が生じません。設計契約を結んだ業者が建築確認申請*の手続
きをするのが一番望ましい方法ですが、設計・施工が同一の業者で設計契約をしていない場合は、
設計完了時に工事請負契約書を取り交わしてから、建築確認申請などの業務を行うべきです。
Q6 工事中に施工業者が倒産した!
Aさんは、地元のB建設に住宅の建替工事を依頼しました。2100万円(消税別)で契約書を取り交わし着工しましたが、基礎工事まで進んだ後、工事がストップしてしまいました。不安になったAさんはB建設に何度も連絡を入れましたが、その都度あいまいな返事が返ってくるだけで、一向に工事が進みません。その内、B建設が倒産したことが分かりました。工事の内 1400万円は支払済みです。この後の工事はどうなるのでしょうか。
A6 施工業者の倒産に備える保険(住宅完成保証制度・P25参照)に加入していなければ、後を引き受けてくれる業者を探して、工事を継続するなどの対応を自分で判断して進めるしかありません。基礎工事までの施工金額は、杭工事がなければ 150万円程度の場合が多く、支払済みの金額に比べてあまりに少ない額で過払いの状態になっています。冷静に考えて差額(過払分)が戻ってくる可能性はほとんどありません。
次の業者が見つかったとしても、残っている工事の見積金額は、当初より割高になりがちで、引渡しも遅れそうです。融資を受ける資金計画の場合は、被害をこうむった金額(過払分)をどうするか、途方にくれることになります。
このような状況に追い込まれてからできることは、ほとんどありませんので、契約時に良く考えて、次のような備えをする事が大切です。
➍工事請負契約上大切なことは、支払条件の適切な設定です。工事の進捗に合わせた設定をしましょう。契約時に 20%、中間時
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ル の 契実 約例 に
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(上棟時)に 30%、完成時に 50%程度が、過払いを少なくする設定ですが、融資の有無などによっても変化します。
②もう一つは、住宅完成保証制度などの保険対応です。保険金は建築主が支払い、手続きは施工業者が行うことがほとんどです。契約相手の倒産を疑う保険ですから、話をしにくい面はありますが、現実になると、大変な状況に追い込まれますので、冷静に考慮して対応しましょう。(P25参照)
Q7 自分で書いたメモがそのまま図面に!
Aさんは、B設計事務所と設計・工事監理契約書を取り交わしました。打合せの際に、自分たちが考えている間取りを、簡単に図面にして渡したところ、次回の打合せに出てきた図面は、その間取りを清書しただけのものでした。Aさんは物足りなさを感じましたが、その図面のまま着工に至りました。工事が始まり、Aさんは何度も現場に行きましたが、B設計事務所の人には会いません。工務店の人に聞いても、電話は時々あるが現場にはあまり来ていないとのことです。工事監理とはこんなものでしょうか。
A7 設計と施工を別の業者に依頼するケースでは、設計のプロとしての提案も期待して、自分たちに合った住宅を、時間をかけて設計してほしいと望んでいる場合が多いと思います。Aさんのケースでは、図面を渡す際に、その図面が単に所要室と大まかな広さを示す程度のものなのか、こだわりのある図面だとすればどの点にこだわっているのか、どのような面で別の提案を期待しているのかなどを整理して説明すべきでした。
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関するトラブ
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工事監理には、建物配置の確認・コンクリート打設前の鉄筋検査・断熱材や気密層の施工の良否の確認など、現場においてチェックする大切なポイントがあります。設計・工事監理契約書を取り交わす前に、どの程度の頻度で現場に出向き、どのようなチェックを行うのかを確認すべきでした。いずれにしても、B設計事務所が適正な工事監理をしていないことは明らかなので、工事監理をきちんとするように強く求めましょう。
注
生活が多様化し、住宅に対する要望も複雑になっていますので、住宅の設計はますます手間の掛かるものになってきています。注文者も自分たちがどんな住宅を望んでいるかを的確に伝える努力が必要です。
工事監理の面でも、「断熱の施工についてはきちんと確認してください。」とか「住宅の配置については自分でも確認します。」などの要望を事前に工事監理者に伝えるとよいでしょう。
設計事務所を選ぶ際にも、過去に手がけた住宅や工事監理の写真を見せてもらうなどの確認を
して、慎重に選定する必要があります。
(一財)北海道建築指導センター発行(無料)の「建主も現場へ行こう 住宅のチェックシート」
を参考にして下さい。
意
!
Q8
現場に行ってみると窓の方位が違う!
Aさんは、B工務店と工事請負契約書を取り交わしました。工事着工時にB工務店から「現場のことは我々に任せて下さい。仕上げ材を選ぶ時期まであまり現場に来なくても大丈夫ですよ。」と言われ、安心していました。着工後1ヶ月半経って現場に行ってみると、寝室の窓が手元にある図面と違う方位に設置され、収納の奥行も狭くなっていました。慌ててB工務店に電話したところ、担当者は、
「そうした方がいいと思って変更しました」と言います。どうしたら
いいでしょうか。
A8
どの契約約款*にも明記されているとおり、設計内容を勝手に変更することは許されません。事後になっても、担当者に変更した理
由をきちんと説明してもらいましょう。窓の方位が変わると陽の入り方や家具の配置などに影響します。収納の奥行が狭くなると、予定していたものが入らなくなるかもしれません。説明を受けて納得できない事項については、遠慮なく施工者負担で、設計図面どおりに施工し直してもらいましょう。
注
「現場を見てもわからないので現場には行かない」と言う注文者がいますが、現場を見てはじめて気がつく場合もあります。技術的なことで分からない点について現場で説明を受けることもできますし、住宅の建設過程を自分の目で確かめ、写真などの記録を残すだけでも、現場に行く価値はあります。
「注文者はなるべく現場に来ないで下さい。」とか、「現場に来るときには必ず事前に連絡して下さい。」と言う施工者もいます。契約しようとしている業者がそのような対応をした場合は、その業者との契約を再考しましょう。
工事が始まると、設計図面どおりでは不都合が生じる場合や設計図面相互で記載が相違している場合もあります。このような場合には、施工者はまず設計者の見解を確認した上で、必ず注文者の了解を得て工事を進めます。
工事監理とは、本来、注文者の立場で設計図書*のとおり工事が施工されていることを確認する業務です。施工と工事監理を別の業者に依頼すると、この質問のようなトラブルは避けることが
できます。設計と施工が同一業者の場合でも工事監理だけは別の設計事務所に依頼するのも一つの方法です。
意
!
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関するトラブ
.
Q9 瑕疵担保期間中なのに有料と言われた!
Aさんは、工事引渡後8年経った住宅のあちこちの不具合をチェックし、施工業者に補修をお願いしました。その項目は、
➍子供部屋のドアの汚れ
②風向きにより屋根から雨漏り
③蛇口の締りの悪さ
④クロスの剥がれ の4点です。
契約書で、請負者には品確法で 10年間の瑕疵担保責任があることを確認し、全ての項目が無料で補修してもらえると思っていましたが、無料の項目と、有料の項目があると言われました。どういうことでしょうか。
A9 瑕疵担保責任というのは、完成引渡後明らかになった欠陥に対する保証責任です。契約書や保証書の中に、瑕疵担保責任の範囲と期間が定められています。Aさんがお願いした補修の中で、瑕疵担保責任の期間内である項目については、無料で直してくれますが、瑕
疵*に該当しない項目(➍子供部屋のドアの汚れ)や期間が経過してしまっている項目については、有料になります。
住宅の品質確保の促進等に関する法律により、構造耐力上主要な部分と雨水の侵入を防止する部分については、瑕疵担保責任の期間が 10年と定められましたので、「②風向きにより屋根から雨漏り」については契約書などに明示がなくても無料で補修してもらえます
(平成 12年4月1日以降に工事請負契約書を取り交わした住宅について適用されます)。
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ル の 契実 約例 に
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「③蛇口の締りの悪さ」については、保証期間内であれば無料の場合もありますが、8年経っていれば経年劣化によるものと考えられ、有料の補修になる場合がほとんどです。
「④クロスの剥がれ」については、その原因が、構造耐力上主要な部分か雨水の侵入を防止する部分の瑕疵*が原因であれば無料の補修になりますが、経年劣化や故意による破損が原因であれば、有料
の補修になります。
注
品確法で瑕疵担保責任の期間が定められているからといって、その期間中はどんなことでも、無料で補修してくれるわけではありません。瑕疵担保*の意味をよく理解し、何でも業者に要求するのはやめましょう。
意
!
Q10
複数の業者にプランと見積を依頼したが…
Aさんは、新築工事の依頼先を決定するため、設計上の要望をま
とめて、3社に平面プランと概算見積書の作成を依頼しました。B社の平面プランが気に入りましたが、見積金額が高かったため、内容は違うものの、延べ面積がほぼ同じで、予算にあった見積金額を提出したC社と、C社の金額・B社の平面プランで契約しようと考えましたが、問題ないでしょうか。
A10
複数の業者に平面プランと概算見積書を提出してもらい、正式に
依頼する業者を決定するのは、納得して業者を選定する一つの方法です。
大まかな工事金額を予想する際に、よく坪単価が用いられますが、面積が同じでも内容が異なると見積金額にも影響します。異なる平面プランを延べ面積が同じだからと言って、同じ金額で契約することには、無理があります。
また、他の業者が作成した平面プランに基づき、別の業者と契約するのは、倫理的な問題があります。請負業者にとって不快な方法ですから、トラブルの芽を生じかねない進め方と言えます。
Aさんと異なる進め方で、予算を優先して、気にいらない平面プランのまま、C社と契約するケースもよく見られます。
注文者が労を惜しまず、安易に妥協しないことで、より納得した住宅づくりが可能です。
この場合には、B社には減額案の提示を、C社には平面プランのどこに不都合があるかを伝えた上で平面プランの再提出を求め、再度検討して業者を決めるといいでしょう。
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ル の 契実 約例 に
関するトラブ
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そもそも概算見積りの金額は、そのまま契約金額とはなりません。契約は、設計図書*がそろい、見積金額が決まってからです。
注
坪単価で工事 を算出することがありますが、坪単価は大まかな工事費を想定することしかできません。
工事金額は、設計図書*がそろって、詳細見積りをしてはじめて決まるものです。
意
!
Q11 訪問販売業者にリフォームを勧められた!
築 25年の住宅に住んでいるAさんは、最近洗面所の排水がつまりがちなのを気にしていました。ちょうどそんな時、訪問販売業者が訪れ、床下の点検を勧められました。高齢のAさんは、自分で床下をチェックするのは難しいと感じていたので、点検してもらいました。
点検を終えた業者は「洗面所だけではなく、すべての排水管が傷んでいます。土台も腐っているから、取り替えて床下に換気扇を付ける必要があります。」と言い、さらにその場で 100万円弱の見積書を作成し、「今日契約すれば、明日から工事ができます。」と勧めま
す。どうしたらいいでしょうか。
A11
訪問販売でリフォーム工事を行う施工業者とトラブルになる可能
性は非常に高いと言わざるを得ません。通常、現地を確認したその場で見積書を提示することはありません。契約や工事を急ぐこの業者は、「リフォーム詐欺」かもしれません。相手のペースにのせられて契約をすることは避け、家族で相談したり、知人から推薦を受けるなどして選んだ別の業者に、現状の確認と見積書の提出を依頼しましょう。見積書の見方がわからない場合には、住宅の相談窓口で
チェックしてもらうといいでしょう。
注
リフォーム工事の中には、新築以上に難しく専門知識と技術が要求される工事もあります。事業者のレベル差は非常に大きく、会社の規模に関わらず、リフォームに精通した業者から、リフォーム詐欺まがいの工事を行う業者まで様々です。また、リフォーム工事は住みながら施工を進めることも多く、業者との信頼関係は、より重要です。
※リフォーム詐欺の特徴的な手口として次のような事項が掲げられます。
①話を長引かせ家の中に入りたがる。
②床下・小屋裏・設備配管など、普段は見えない部分の点検をしたがる。
③事前に別の場所で準備した悪い状態の写真や腐った木材の破片を見せて、危機感をあおる。
④その場で見積金額を提示するなど、契約や工事を急ぎたがる。
リフォーム詐欺に会わないためには、うかつに契約しないことはもちろんですが、安易に初対面の業者を家に入れないなど、普段からの心がけが重要です。
意
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関するトラブ
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Q12
請負業者とトラブルに!
Aさんは、B建設と工事請負契約書を取り交わして住宅を新築し
ましたが、契約前までの親切な対応とは裏腹に、現場を見に行くと迷惑がるなど、施工中の対応の悪さにうんざりしていました。引越後、近くを大きな車が通ると住宅が揺れるのに気づき、B建設に相談しましたが、「そんなことはありえない。」の一点張りで、まともな対応をしてくれません。Aさんは住宅相談の窓口に行き、設計図面を見てもらったところ、相談員から、「図面のとおり施工されていれば、筋かいの量がかなり足りない。構造的にはかなり危険な状態で、住宅が揺れるのはこれが原因ではないか。」と言われました。B建設にその旨を伝えると、筋かいは図面どおりに施工していることは認めましたが、それ以上の対応はいっさいしてくれません。今後どのように解決を図っていくとよいでしょうか。
A12
このような住宅では安心して住み続けることはできません。B建
設の対応にも全く誠意が感じられないので、公的な場で解決を図るしかないでしょう。公的な場としては、裁判所と建設業法*に基づいて北海道が設けている「北海道建設工事紛争審査会」(窓口は北海道建設部建設政策局建設管理課、以下「紛争審査会」といいます。)があります。
紛争審査会での解決方法には「仲裁*」「調停*」「斡旋*」の3通りの方法があります。どの方法を選択するかは、北海道の建設管理課で相談することもできます。
裁判所での解決方法には、調停*と訴訟*の二通りの方法があります。相手に歩み寄りの姿勢が見られないときには、訴訟*を起こすことになるでしょう。
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関するトラブ
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いずれにしても、このようなトラブルを自分一人で解決するのは大変ですので、どこでどのような解決方法をとるかを含めて、弁護士に依頼するのもひとつの方法です。
注
公的な場でトラブルを処理するには、大変な労力がかかります。このような状況に追い込まれる前に、第3者の立場の専門家にアドバイスを求めることも可能です。下記に住宅について相談できる窓口を設けている機関を紹介します。
住宅に重大な欠陥がある場合や、感情的にこじれて当事者だけでは解決が難しい場合は、公的な場で、どちらの負担でどのような修繕をするのか、または損害賠償について判断を仰ぐことになります。
引渡前に重大な欠陥に気づいた場合は、業者に補修を求め、業者が満足のいく対応をしてくれないうちは、引渡しを拒否し、入居しないほうがいいでしょう。入居してしまうとその欠陥を許容したと判断されてしまう場合もあります。公的な場で解決を図る場合には、それまでの交渉内容や対応方法が問題になりますので、当事者だけでは解決できないと判断した場合は、早めに弁護士に相談したほうがよいでしょう。
例示した内容の他、請負業者と深刻なトラブルになりやすい例として、地盤や基礎の強度不足により、不同沈下*するなどの構造上の問題がある場合や、断熱工事の施工不良により寒いとか結露する場合などが掲げられます。
リフォーム工事では、構造チェックも重要です。見た目や使い勝手だけを考えて、構造的に重要な外壁や間仕切壁を、必要な補強なしに撤去して、危険な状態になることがあります。
また、増築を伴うリフォームでは、建築基準法*で定める容積率・建ぺい率、外壁後退、高さ制限などの規定に反しない注意も必要です。
意
!
住宅に関する相談コーナーを持つ機関
一般財団法人北海道建築指導センター(住宅一般の相談)
一般社団法人北海道建築士事務所協会(住宅一般の相談・現地調査)北海道立消者生活センター(消者保護の相談)
各地消者センター(消者保護の相談)
北海道マイホームセンター(住宅一般の相談)各地弁護士会法律相談センター(法律相談)
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ル の 契実 約例 に
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.
NPO法人さっぽろ住まいのプラットフォーム(住宅一般の相談・現地相談)
11.用語の説明(あいうえお順)
本文中に出てくる専門用語をわかりやすく説明します。
■斡旋 (あっせん)
紛争当事者の一方または双方の依頼により斡旋者が双方の言分を聞き、紛争が解決するように努力すること。
■違約金 (いやくきん)
契約において、債務不履行*の場合に支払うものとして、あらかじめ定めた金銭。
■買換え条項 (かいかえじょうこう)
売買契約の場合に、現在住んでいる住宅を売却して、新しい物件の購入代金に充てる際、期日までに売却ができなかったときの契約の消滅と、違約金*は対象とならないことを明記した項。
■瑕疵 (かし)
引渡す住宅の品質・性能として、当初約束されたものと異なること。
■瑕疵担保 (かしたんぽ)
請負契約において、完成引渡後に契約目的物に欠陥があった場合に、請負者が注文者に対して負う保証(修理・賠償金など)。
■クーリングオフ (くーりんぐおふ)
11
用語の説明
.
申込みや契約をした後でも、一定の期間内であれば条件により契約の解除ができる制度のこと。
■契約不適合 (けいやくふてきごう)
引渡された住宅の種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しないものであるとき。
■契約不適合責任 (けいやくふてきごうせきにん)
住宅に契約不適合があった場合の業者の責任。注文者は、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・契約解除ができるが、条件や期間制限がある。
■契約約款 (けいやくやっかん)
契約の内容を箇条書きにまとめたもの。
■建設業法 (けんせつぎょうほう)
建設工事の適正な施工を定めた法律。
■建築確認申請 (けんちくかくにんしんせい)
設計された建物が、建築基準法*上問題がないかどうかの確認のために、管轄の役所などへ書類・図面などを提出すること。
■建築基準法 (けんちくきじゅんほう)
建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低の基準を定めた法律。
■建築士法 (けんちくしほう)
建築物の設計・工事監理などを行う技術者の資格を定めて、その業務の適正をはかる法律。
■固定資産税 (こていしさんぜい)
市町村が固定資産(土地・家屋など)に対して課する税。住宅新築後に市町村が訪問により評価額を査定し、課税価格を決定する。
■債務不履行 (さいむふりこう)
契約内容など実際に行うべき義務を行わないこと。
■シックハウス (しっくはうす)
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用語の説明
工事で使用した建材や接着剤から出る物質に反応して、頭痛、目の痛みなどの症状がでること。
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■仕様書 (しようしょ)
設計図面に明示できない構造、施工方法、材料、品質、部品、設備、製造所、仕上げ程度などを記載。
■設計図書 (せっけいとしょ)
建築物の工事実施のために必要な図面と仕様書*。
■訴訟 (そしょう)
裁判所が事実を認定し、法律を適用して(この裁判所の判断を「判決」と言う)、紛争を解決する手続き。
■宅地建物取引業法 (たくちたてものとりひきぎょうほう)
宅地・建物の取引の公正を図ることを目的として制定された法律。
■地積 (ちせき)
登記簿上の一筆の土地の面積。
■地目 (ちもく)
土地の利用状況を示す、登記簿上の分類項目。住宅を新築するのに適さない地目の土地に新築する場合は、地目変更の手続きが必要となる。
■仲裁 (ちゅうさい)
紛争当事者間の和解を促進するための手続きで、予め紛争当事者が仲裁案に従うことを同意した上で、仲裁者の案によって争いを終わらせること。
■調停 (ちょうてい)
第三者の仲介によって、当事者が互いに譲歩して紛争解決の合意をすること。調停者が強制することはできない。
■追完 (ついかん)
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用語の説明
引き渡された目的物が契約不適合の場合に、目的物の補修・代替物の引き渡し・不足分の引き渡をすることで、後から契約内容に合うようにすること。
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■締結 (ていけつ)
契約書などの約束事を結ぶこと。
■抵当権 (ていとうけん)
債務不履行*の場合、他の債権者に優先して担保を弁償として受けとる権利。
■登記 (とうき)
建物の場合、その構造・面積・所有者を明記したものを法務局に申請すること。表示登記と保存登記が必要。
(権利書―保存登記申請書に法務局の赤印のあるもので、所有権を証明する大事な書類。)
■登記簿謄本 (とうきぼとうほん)
私法上の権利の事実関係を公示・保護するために、法務局に備え付けられている帳簿(これを登記簿と言う)の写し。住宅取得時に関わるのは土地と建物の登記簿。
■都市計画税 (としけいかくぜい)
都市計画事業・土地区画整理事業の費用に当てるための市町村税。固定資産税の評価額から、課税価格が決まる。
■不可抗力 (ふかこうりょく)
注文者でも請負者の責任でもない天災・自然的・人為的理由。
■不同沈下 (ふどうちんか)
建物の基礎が傾いて沈下すること。
■用途地域 (ようとちいき)
建築基準法*により、建物の用途・高さ・建ぺい率・容積率などを制限した区分け。
■履行 (りこう)
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用語の説明
契約の履行*とは、契約当事者が取り決めたことを現実に実行していくこと。
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■履行遅延違約金 (りこうちえんいやくきん)
施工業者の都合で工事が遅れた場合や、注文者が代金の支払いを完了しない場合などの損害金。
■ローン条項 (ろーんじょうこう)
売買契約の場合に、銀行などの住宅ローンを利用する際、期日までに融資が決定しなかったときの契約の消滅と、違約金*は対象とならないことを明記した項。
補足資料 1
設計図書*として契約に添付される図面
■設計図書*として契約に添付される図面(○印は主要な図面)
補足資料
名 称 | 主な記載内容 |
○付近見取図 | 建物の敷地の所在位置、形状、方位、縮尺などを記載(縮尺 1/2,500程度)。 |
○仕様書(特記仕様書を含む) | 設計図面に明示できない構造、施工方法、材料、品質、部品、設備、製造所、仕上げ程度などを記載。 |
○仕上表 | 内外各部の材料、仕上げ、下地などを一覧表として記載。 |
○床面積求積図 | 床面積の求積に必要な建築物の各部分の寸法及び算式を記載。 |
○配置図 | 敷地の形状・寸法・面積、方位、縮尺、周囲との高低差、建物の外形、隣地や道路から建物までの距離、出入口の位置、前面道路の幅などを記載。 |
○各階平面図 | 各階の間取り、柱(通し柱の位置)、壁(筋交いの位置・種類)、開口部(出入口・窓・換気口など)、階段、建具などの上からみた位置関係、寸法を記載。 |
○立面図(2面以上) | 各方向から見た外壁、屋根、軒、ひさし、とい、開口部(出入口・窓・換気口など)などの形状や位置など外から見える姿を記載。 |
断面図(2面以上) | 建物を垂直に切断し、横から見た地盤、基礎、床、壁、天井、屋根などの断面形状を表した図に床高(地盤~床)、階高(床~床)、天井高(床~天井)、主な壁間の寸法、軒の高さ、軒の出、最高の高さ、屋根勾配などを記載。 |
○平面詳細図 | 各階の平面図を拡大し、柱の寸法、床の仕上げ材料、壁などの内部構造や下地・仕上げ材料、建具の平面的な収まりなどの詳細を記載。 |
○矩計図(又は断面詳細図) | 建物の一般的な部分の断面について、基礎の鉄筋コンクリートの形状や配筋状況、土台・柱・などの断面形状や寸法、床・壁・天井・小屋裏・屋根などの内部構造や下地・仕上げ材料、床高・天井高などの各部の高さなどを記載。 |
基礎伏図 | 基礎の位置、形状、寸法、配筋状態、アンカーボルトの位置、床下換気口の位置、土間コンクリートなどを上から見た状態を記載。 |
各階床伏図 | 柱、土台、火打、、胴差、大引、根太などの配置・寸法・材質を記載。 |
小屋伏図 | 小屋、桁、小屋束、母屋、棟木、垂木などの配置・寸法・材質を記載。 |
構造詳細図 | 構造耐力上主要な部分である軸組、継手又は仕口の材料の種別、寸法及び構造方法などを記載。 |
構造計算書等 | 一般的な2階建てまでの木造住宅(建築基準法第6条第1項第4号建築物)では、壁量 (軸組)計算書、耐力壁のバランス検討(4分割法若しくは偏心率チェック)、柱頭・柱脚金物の検討などの計算書等。 |
電気設備図 | 電気幹線の敷地内への引き込み方法及び分電盤の位置、配線経路・種類、スイッチの種類・位置、コンセントの種類・位置、電気器具などを記載。 |
給排水衛生設備図 | 敷地内への給水の引き込み位置、メーター類の位置、配水管の接続方法及び給湯設備機器・衛生設備機器・ガス機器などのそれぞれの内容・位置並びに給水・排水管経路、ガス配管経路などを記載。 |
暖房・換気設備図 | 暖房機器、換気機器などのそれぞれの内容・位置並びに暖房配管や換気経路などを記載。 |
補足資料 2
北海道住宅検査人と既存住宅状況調査技術者によるインスペクションの比較表
北海道住宅検査人によるインスペクション(推奨) | 既存住宅状況調査技術者によるインスペクション | |
業務範囲 (活用範囲) | ■宅建業法に基づくインスペクション (既存住宅状況調査資格を兼ねている場合に限る) ■北海道R住宅専用ローン適用のための現況調査、評価 ■きた住まいるブランド住宅の「北海道R住宅」登録のための既存状況の調査報告 ■長期優良住宅リフォーム推進事業におけるインスペクション(平成 31年度まで) | ■宅建業法に基づくインスペクション |
調査部位 | ■構造耐力上主要な部分 ■雨水の侵入を防止する部分 ■小屋裏の原則立入確認(小屋組み、通気措置、断熱材等) ■床下の原則立入確認(カビ臭、土台不朽、土の状態等) ■断熱材、防湿シートの劣化状態確認 ■内装材、建具等の劣化状態確認 | ■構造耐力上主要な部分 ■雨水の侵入を防止する部分 |
基礎と傾斜の調査方法 | ■基礎は目視の他、鉄筋探査(鉄筋探知機による基礎配筋の確認) ■床、柱の傾斜は計測して確認 (床はレーザーレベルにより傾きを確認(各室び各階の四隅)) | ■基礎は目視の他、劣化事象があった時に鉄筋探査(鉄筋探知機による基礎配筋の確認)を実施 ■床、柱の傾斜は計測して確認 |
調査報告 | ■調査対象部位の劣化事象の有無 ■調査結果評価、改修アドバイス ■断熱性、気密性等の改修アドバイス | ■調査対象部位の劣化事象の有無 |
補足資料
※インスペクション(建物現況調査)についてはP19を参照。
参考
参考1 ◆ 住宅性能表示制度(住宅性能評価)とは
参考2 ◆ 設計住宅性能評価書参考3 ◆ 北方型住宅とは
P71
P73
P77
参考 1
住宅性能表示制度(住宅性能評価)とは
個々の住宅のもつ性能の水準がどの程度であるかの評価を共通のものさしを使って注文者に情報を提供する仕組みです。
この評価は、注文者あるいは施工業者が有料で、第三者機関(登録住宅性能評価機関、以下「評価機関」という)へ申請することにより、設計が完了した段階での設計評価と、工事が完成した時点での建設評価を、評価機関が国土交通大臣が定める基準により行います。
この評価機関が発行する評価書は、工事請負契約時に添付、または注文者にその写しを交
付した場合には、その表示された内容を施工業者が履行*することを契約したものとみなされます。
注1)評価とはどのようなことか
設計段階では、構造の安定、火災時の安全、温熱環境など 10項目について設計図面や申請書によりその性能等級を評定し設計住宅性能評価書を発行します。
また、建設評価では、工事施工途中に基礎配筋完了時、躯体工事完了時、下地張り直前の工事完了時、完成時に検査を行い、引渡しの際に建設された住宅に関わる住宅性能評価書(建設住宅性能評価書)の交付を受けます。
また、紛争が発生した場合、建設評価を受けていると、弁護士会等により設立された指定住宅紛争処理機関に斡旋*、調停*などの申し出ができます。
評価を受けた住宅に関わる裁判外紛争処理機関の設立
住宅をめぐるトラブルを解決する手法としては、民事訴訟の仕組みがありますが、この紛争解決はお金も時間もかかります。このようなトラブルに斡旋*、調停*及び仲裁*を行う機関(指定住宅紛争処理機関)が設立されました。この機関は建設住宅性能評価を受けた住宅に対し、低料金で紛争の処理を行います。
注2)現在の建設工事紛争審査会との関係
現在、住宅に関して、裁判外紛争処理機関としては、建設業法に基づく建設工事紛争審査会が国土交通省や都道府県によって設置されていますが、この制度はこれまでどおり建築工事や
土木工事を含め請負契約に関する紛争について斡旋*、調停*及び仲裁*を行いますが、売買契約に関する紛争は扱いません。
参考
確認しておきましょう
住宅性能表示制度を利用する場合
■評価は2種類あります
性能評価は設計段階と建設段階の2つの評価があります。この評価は、注文者でも施工業者でも申請できます。
■性能評価の利用は計画段階で決定
性能評価を受けるかどうかは計画段階で検討します。また、その費用負担を誰がするのかを決めておきます。
■設計契約などに明示する
評価を受ける場合、申請には書類や図面が必要で、その作成にはかなりの労力が掛かります。性能評価を受ける場合は、設計契約書などに明示しましょう。
注文者の要望で性能評価を受ける場合、その費用は原則として注文者が負担します。費用や支払い方法などを、設計契約書などに記載しましょう。
■評価書を契約書に添付する
設計段階の性能評価を受けた場合、その評価内容で契約するかどうかをあらかじめ施工業者と確認し、評価内容を実現しようとする場合は、設計住宅性能評価書を工事請負契約書に添付して契約を取り交わしましょう。
■変更は双方協議の上で
設計内容の変更をする場合は、その内容を注文者、設計者、施工業者で確認し、変更設計評価申請をするかどうかを決定します。
■完成後の評価が異なった場合の措置
設計住宅性能評価を行い、契約書に添付して建設段階の性能評価を受けた場合、工事完成後の建設評価の結果が設計評価と異なった場合の措置について、施工業者が責任を持っ
参 て設計評価の内容を実現することを確認しておきましょう。
参考 2
参考
別記第3-1号様式
参考
参考 3
北方型住宅とは
北方型住宅とは、産学官の連携のもと、北海道が昭和 63年から開発・普及に取り組む、北海道の気候風土に根ざした豊かな暮らしを実現する住宅です。
北方型住宅は、性能や品質の基準としての「4つの基本性能」に加え、それらを支える「3つのしくみ」により、安心で良質な家づくりを実現します。
○4つの基本性能
北方型住宅は、高断熱・高気密といった高い性能とともに、地域性などにも配慮し、質の高い暮らしを目指します。
⑴長寿命
ライフステージの変化にも対応し、世代を超えて引き継がれる高い耐久性と耐用性を持つ住宅
⑵安心・健康
災害に強く、安全で健康に過ごすことのできる暮らしを守る器としての住宅
⑶環境との共生
寒さや雪などの気候特性に配慮しながら環境負荷を低減する持続可能な社会と暮らしを支える住宅
⑷地域らしさ
景観やまちなみに配慮し、積極的に地域材を活用するなど地域らしさを育む住宅
○3つのしくみ
北方型住宅を支えるしくみ「きた住まいる制度」により、道に登録された住宅事業者「きた住まいるメンバー」が設計、施工、維持保全を適切に行います。
⑴専門技術者の関与
室内の熱環境や断熱・気密に関する専門的な知識と技術をもつ技術者である BIS資格者による設計・施工
⑵住宅性能の見える化
性能など住宅に関する情報は「住宅ラベリングシート」で、事業者に関する情報は「メンバーシート」で見える化
⑶住宅履歴情報の保管
「きた住まいるサポートシステム」(WEB上の専用システム)で住まいの情報を 30年間保管することで、計画的・効率的な修繕、維持保全が可能。
(北方型住宅として住宅履歴情報を保管するメリット>
・性能だけでなく、地域性などにも配慮した質の高い住宅が実現します。
・住宅性能や事業者情報が専用シートで確認できます。
・高い断熱性能と気密性能により、光熱費も安く住み、長く住むほど経済的です。 参
・図面や施工時の写真など新築時の住宅の仕様や性能に関する記録、修繕等の履歴が保管さ 考
れるので、リフォームの際に活用できます。また、売買の際には中古住宅としての資産価
戸建住宅の契約ガイドブック(令和 2年度改訂版)
平成 12年 12月 初版平成 16年 10月 改版平成 23年 12月 改版令和 3 年 1 月 改版
企画 | ╱ | 北海道建設部住宅局建築指導課 |
発行 | ╱ | (一財)北海道建築指導センター |
編集 | ╱ | (有)奈良建築環境設計室 |