2 前項に規定する表示は、容器等の見やすい所に明りょうに表示するものとし、表示 に使用する文字は、6ポイント(日本工業規格Z8305(1962)に規定するポイントを いう。以下同じ。)の活字以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。ただし、容 量360ml以下の容器にあっては、5.5ポイントの活字以上の大きさとして差し支えない。
(酒類の販売業免許)
第九条 酒類の販売業又は販売の代理業若しくは媒介業(以下「販売業」と総称する。)をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場(継続して販売業をする場所をいう。以下同じ。)ごとにその販売場の所在地(販売場を設けない場合には、住所地)の所轄税務署長の免許(以下「販売業免許」という。)を受けなければならない。ただし、酒類製造者がその製造免許を受けた製造場においてする酒類(当該製造場について第七条第一項の規定により製造免許を受けた酒類と同一の品目の酒類及び第四十四条第一項の承認を受けた酒類に限る。)の販売業及び酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業については、この限りでない。
2~3 (略)
(酒類の販売業免許の取消し)
第十四条 酒類販売業者が次の各号のいずれかに該当する場合には、税務署長は、酒類の販売業免許を取り消すことができる。
一 偽りその他不正の行為により酒類の販売業免許を受けた場合
二 第十条第三号から第五号まで又は第七号から第八号までに規定する者に該当することとなつた場合
x x年以上引き続き酒類の販売業をしない場合
四 酒類業組合法第八十四条第三項(酒税保全のための勧告又は命令)又は第八十六条の四(xxな取引の基準に関する命令)の規定による命令に違反した場合
(製造場又は販売場の移転の許可)
第十六条 酒類製造者、酒母等の製造者又は酒類販売業者は、その酒類、酒母若しくはもろみの製造場又は酒類の販売場を移転しようとするときは、政令で定める手続により、移転先の所轄税務署長の許可を受けなければならない。
(製造又は販売業の廃止)第十七条 (略)
2 酒類販売業者がその販売業を廃止しようとするとき(その販売場の全部又は一部を廃止しようとするときを含む。)は、政令で定める手続により、酒類の販売業免許の取消しを申請しなければならない。
(製造業又は販売業の相続)
第十九条 酒類製造者、酒母等の製造者又は酒類販売業者につき相続(包括遺贈を含む。以下同じ。)があつた場合において、引き続きその製造業又は販売業をしようとする相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)は、政令で定める手続により、遅滞なく、
その旨をその製造場の所在地又はその販売場の所在地(販売場がない場合には、相続人の住所地)の所轄税務署長に申告しなければならない。
(引取りに係る酒類についての課税標準及び税額の申告等)
第三十条の三 関税法第六条の二第一項第一号(税額の確定の方式)に規定する申告納税方式が適用される酒類を保税地域から引き取ろうとする者は、当該引取りに係る酒税を免除されるべき場合を除き、(略)申告書を、その保税地域の所在地の所轄税関長に提出しなければならない。
【関係法令】
○ 酒税法施行令
(引取りに係る酒類についての課税標準及び税額の申告等)
第四十条 法第三十条の三第一項に規定する申告書には、同項第一号から第五号までに掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 申告者の住所及び氏名又は名称
二 引取りに係る保税地域の所在地及び名称三 当該酒類の仕出国名
四 その他参考となるべき事項
2 法第三十条の三第二項に規定する政令で定める事項は、前項各号に掲げる事項とする。
3 前条第三項から第五項までの規定は、法第三十条の三第一項に規定する申告書(同条第三項の場合に限る。)を提出する義務がある者が当該申告書の提出期限前に当該申告書を提出しないで死亡した場合について準用する。この場合において、前条第三項第一号中「氏名、個人番号」とあるのは「氏名」と、「価額(個人番号を有しない者にあつては、住所、氏名、被相続人との続柄、同法第九百条から第九百二条までの規定による相続分及び相続によつて得た財産の価額)」とあるのは「価額」と読み替えるものとする。
(納期限の延長) 第三十条の六 (略)
2 酒類を保税地域から引き取ろうとする者(その引取りに係る酒類につき関税法第七条の二第二項(特例申告)に規定する特例申告を行う者を除く。)が、第三十条の三第一項の規定による申告書を提出した場合において、納期限の延長についての申請書を同項の税関長に提出し、かつ、当該申告書に記載した同項第四号に掲げる酒税額の全部又は一部に相当する担保を当該税関長に提供したときは、当該税関長は、一月以内(酒類の販売代金の回収に相当期間を要することその他これに類する事由により当該担保の額に相当する酒税を一月以内に納付することが著しく困難であると認められる場合にあつては、二月以内)、当該担保の額に相当する酒税の納期限を延長することができる。
3 酒類を保税地域から引き取ろうとする者(その引取りに係る酒類につき関税法第七条の二第二項に規定する特例申告を行う者に限る。以下「特例輸入者」という。)が、第三十条の三第一項の規定による申告書を同条第三項の提出期限内に提出した場合において、前条第一項の納期限内に納期限の延長についての申請書を第三十条の三第一項の税関長に提出し、かつ、当該申告書に記載した同項第四号に掲げる酒税額の全部又は一部に相当する担保を当該税関長に提供したときは、当該税関長は、当該特例
輸入者が酒類の販売代金の回収に相当期間を要することその他これに類する事由により当該担保の額に相当する酒税を当該納期限内に納付することが著しく困難であると認められる場合に限り、一月以内、当該担保の額に相当する酒税の納期限を延長することができる。
(密造酒類の所持等の禁止)
第四十五条 何人も、法令において認められる場合のほか、製造免許を受けない者の製造した酒類、酒母若しくはもろみ又は輸入したこれらのもので関税法第六十七条の規定による輸入の許可を受けないものを所持し、譲り渡し、又は譲り受けてはならない。
(記帳義務)
第四十六条 酒類製造者、酒母若しくはもろみの製造者、酒類の販売業者又は特例輸入者は、政令で定めるところにより、製造、貯蔵、販売(販売の代理又は媒介を含む。以下同じ。)又は保税地域からの引取りに関する事実を帳簿に記載しなければならない。
(申告義務)
第四十七条 (略)
2 (略)
3 酒類販売業者は、その販売業を休止又は開始したときは、遅滞なく、その旨をその販売場の所在地(販売場を設けていない場合には、住所地)の所轄税務署長に申告しなければならない。
4 税務署長は、酒税の取締上必要があると認めるときは、酒類の販売業者に対し、その購入若しくは販売をした酒類又は所持する酒類の数量その他政令で定める事項について、報告を求めることができる。
【関係法令】
○ 酒税法施行令
(異動申告)
第五十四条 酒類製造者、酒母若しくはもろみの製造者又は酒類販売業者は、その住所及び氏名又は名称、個人番号、製造場又は販売場の所在地及び名称並びにこれらの事項以外の事項で前条第一項から第四項までの規定により申告した事項(財務省令で定めるものを除く。)につき異動を生じたとき(製造場又は販売場の移転に伴い異動を生じたときを除く。)は、直ちに、その旨を、その製造場又は販売場の所在地(販売場を設けていない場合には、住所地)の所轄税務署長に申告しなければならない。
(蔵置所の設置等の申告、販売先の報告)
第五十四条の二 法第四十七条第四項に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。一 酒類の販売業者が販売の目的で所持する酒類を貯蔵する場所(保税地域に該当する場所及
び酒類の販売業免許を受けた販売場を除く。)の所在地及び名称
二 酒類の販売業者が酒類を他の酒類の販売業者に払い出した場合における当該他の酒類の販売業者の住所及び氏名又は名称並びに当該酒類の受取先の所在地及び名称
(承認を受ける義務)
第五十条 酒類製造者又は酒類販売業者は、次に掲げる場合(酒類販売業者については、第五号及び第七号に掲げる場合に限る。)においては、政令で定めるところにより、その製造場又は販売場の所在地(酒類販売業者が販売場を設けていない場合には、住所地)の所轄税務署長の承認を受けなければならない。ただし、第四十三条第一項第六号の承認を受けるべき場合には、この限りでない。
一~四 (略)
五 酒類に水その他の物品(酒類を含む。)を混和しようとするときで政令で定める場合。ただし、前各号のいずれかに該当する場合を除く。
六・七 (略)
2 (略)
(届出義務)
第五十条の二 前条第一項各号のいずれかに該当する場合を除き、酒類製造者又は酒類販売業者は、酒類に関し次に掲げる行為をしようとする場合には、政令で定めるところにより、その旨を当該行為をしようとする場所の所在地の所轄税務署長に届け出なければならない。
一 酒類製造者又は酒類販売業者が、酒類の製造場又は保税地域以外の場所で酒類を詰め替える行為
二 (略)
(罰則)
第五十xx xの各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する
一~四 (略)
五 第四十五条の規定に違反した者六・七 (略)
第五十xx xの各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
一~八 (略)
九 第四十六条の規定による帳簿の記載をせず、若しくは偽り、又は帳簿を隠匿した者十 第四十七条第一項から第三項までの規定による申告をせず、又は偽つた者
十一 (略)
十二 第五十条の二第一項又は第二項の規定による届出をせず、又は偽つた者
1 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(酒類業組合法)
(xxな取引の基準)
第八十六条の三 財務大臣は、酒税の保全及び酒類の取引の円滑な運行を図るため、酒類に関するxxな取引につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準(以下「xxな取引の基準」という。)を定めるものとする。
2 財務大臣は、xxな取引の基準を定めるに当たつては、酒類製造業者又は酒類販売業者の適切な経営努力による事業活動を阻害して消費者の利益を損なうことのないように留意しなければならない。
3 財務大臣は、第一項の規定によりxxな取引の基準を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。
4 財務大臣は、xxな取引の基準を遵守しない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その者に対し、当該xxな取引の基準を遵守すべき旨の指示をすることができる。
5 財務大臣は、前項の指示に従わない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その旨を公表することができる。
6 財務大臣は、おおむね五年ごとにxxな取引の基準に再検討を加え、必要があると認めるときは、これを改正するものとする。この場合においては、第二項及び第三項の規定を準用する。
(xxな取引の基準に関する命令)
第八十六条の四 財務大臣は、前条第四項の指示を受けた者がその指示に従わなかつた場合において、酒税の円滑かつ適正な転嫁が阻害され、又は阻害されるおそれがあると認めるときは、その者に対し、当該指示に係るxxな取引の基準を遵守すべきことを命令することができる。
(酒類の品目等の表示義務)
第八十六条の五 酒類製造業者又は酒類販売業者は、政令で定めるところにより、酒類の品目その他の政令で定める事項を、容易に識別することができる方法で、その製造場から移出し、若しくは保税地域(関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二十九条に規定する保税地域をいう。)から引き取る酒類(酒税法第二十八条第一項、第二十八条の三第一項又は第二十九条第一項の規定の適用を受けるものを除く。)又はその販売場から搬出する酒類の容器又は包装の見やすい所に表示しなければならない。
(酒類の表示の基準)
第八十六条の六 財務大臣は、前条に規定するもののほか、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため酒類の表示の適正化を図る必要があると認めるときは、酒類
の製法、品質その他の政令で定める事項の表示につき、酒類製造業者又は酒類販売業者が遵守すべき必要な基準を定めることができる。
2 財務大臣は、前項の規定により酒類の表示の基準を定めたときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。
3 財務大臣は、第一項の規定により定められた酒類の表示の基準を遵守しない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その者に対し、その基準を遵守すべき旨の指示をすることができる。
4 財務大臣は、前項の指示に従わない酒類製造業者又は酒類販売業者があるときは、その旨を公表することができる。
(酒類の表示に関する命令)
第八十六条の七 財務大臣は、前条第三項の指示を受けた者がその指示に従わなかつた場合において、その遵守しなかつた表示の基準が、同条第一項の表示の基準のうち、酒類の取引の円滑な運行及び消費者の利益に資するため特に表示の適正化を図る必要があるものとして財務大臣が定めるもの(以下「重要基準」という。)に該当するものであるときは、その者に対し、当該重要基準を遵守すべきことを命令することができる。
(酒類販売管理者)
第八十六条の九 酒類小売業者(酒類製造業者又は酒類卸売業者であつて酒類製造業者及び酒類販売業者以外の者に酒類を販売する者を含む。以下この条において同じ。)は、販売場ごとに、財務省令で定めるところにより、当該販売場において酒類の販売業務に従事する者であつて、酒類の販売業務に関する法令(酒税法、この法律、未xx者飲酒禁止法(大正十一年法律第二十号)、私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。第九十三条において「私的独占禁止法」という。)、アルコール健康障害対策基本法(平成二十五年法律第百九号)その他の財務省令で定める法令をいう。以下この条において同じ。)に係る研修(小売酒販組合、小売酒販組合連合会又は小売酒販組合中央会その他の法人その他の団体であつて、財務大臣が、財務省令で定めるところにより、酒類の販売業務に関する法令の知識が十分であり、かつ、当該研修を適正かつ確実に行うことができると認めて指定したものが行うものをいう。第六項及び第九項において単に「酒類の販売業務に関する法令に係る研修」という。)を受けたもののうちから酒類販売管理者を選任し、その者に、当該酒類小売業者又は当該販売場において酒類の販売業務に従事する使用人その他の従業者に対し、これらの者が酒類の販売業務に関する法令の規定を遵守してその業務を実施するために必要な助言又は指導を行わせなければならない。
2 酒類小売業者は、酒類販売管理者に選任しようとする者が次の各号のいずれかに該当
する場合には、その者を酒類販売管理者に選任することができない。x xxx者又はxx被後見人若しくは被保佐人である場合
二 酒税法第十条第一号、第二号又は第七号から第八号までに規定する者に該当する場合
3 酒類小売業者は、酒類販売管理者が行う第一項の助言を尊重しなければならず、当該
販売場において酒類の販売業務に従事する使用人その他の従業者は、酒類販売管理者が行う同項の指導に従わなければならない。
4 酒類小売業者は、酒類販売管理者を選任し、又は解任したときは、財務省令で定めるところにより、二週間以内に、その旨を財務大臣に届け出なければならない。
5 財務大臣は、酒類販売管理者が第二項各号のいずれかに該当すると認めたとき、又はその者がその職務に関し酒類の販売業務に関する法令の規定に違反した場合においてその情状により酒類販売管理者として不適当であると認めたときは、酒類小売業者に対し、当該酒類販売管理者の解任を勧告することができる。
6 酒類小売業者は、第一項の規定により選任した酒類販売管理者に、財務省令で定める期間ごとに、酒類の販売業務に関する法令に係る研修を受けさせなければならない。
7 財務大臣は、酒類小売業者が前項の規定を遵守していないと認めるときは、その者に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべきことを勧告することができる。
8 財務大臣は、前項の規定による勧告を受けた者がその勧告に従わないときは、その者に対し、期限を定めて、その勧告に係る措置をとるべきことを命令することができる。
9 酒類小売業者は、財務省令で定めるところにより、その販売場ごとに、公衆の見やすい場所に、酒類販売管理者の氏名及び当該酒類販売管理者が最後に酒類の販売業務に関する法令に係る研修を受けた日その他の財務省令で定める事項を記載した標識を掲げなければならない。
第九十xx xの各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。一 第八十六条の四の規定に違反した者
一の二 第八十六条の五の規定に違反した者
二 第八十六条の七の規定による命令に違反した者
二の二 第八十六条の九第一項の規定に違反して酒類販売管理者を選任しなかつた者二の三 第八十六条の九第八項の規定による命令に違反した者
三 (略)
第百一条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、酒類業組合等の発起人、理事、監事若しくは清算人又は酒類製造業者若しくは酒類販売業者は、十万円以下の過料に処する。
一~十一 (略)
十二 第四十三条第三項(第八十三条において準用する場合を含む。)、第四十六条第二項(第八十三条において準用する場合を含む。)、第八十六条の九第四項又は第八十七条の規定による届出を怠つたとき。
十三~十八 (略)
【関係法令】
○ 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令
(表示の基準)
第八条の四 法第八十六条の六第一項に規定する政令で定める事項は、次に掲げる事項とする。
一 酒類の製法、品質その他これらに類する事項二 未xx者の飲酒防止に関する事項
三 酒類の消費と健康との関係に関する事項
○ 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則
(酒類販売管理者の選任)
第十一条の八 法第八十六条の九第一項の規定による酒類販売管理者の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
x xx販売場において酒類の販売業務を開始するときまでに選任すること。
二 酒類販売管理者として選任した者が欠けるに至つたときは、速やかに選任すること。
三 酒類小売業者に引き続き六月以上の期間継続して雇用されることが予定されている者(酒類小売業者と生計を一にする親族を含む。)のうちから選任すること。ただし、酒類小売業者(法人であるときは、その役員)がその販売場において酒類の販売業務に従事するときは、自ら酒類販売管理者となることを妨げない。
四 他の販売場において酒類販売管理者に選任されていない者を選任すること。
五 過去三年以内に法第八十六条の九第一項又は第六項に規定する酒類の販売業務に関する法令に係る研修(以下「酒類販売管理研修」という。)を受けた者を選任すること。
(酒類販売管理者の選任)
第十一条の九 法第八十六条の九第一項に規定する財務省令で定める法令は、次のとおりとする。
一 酒税法二 法
三 未xx者飲酒禁止法(大正十一年法律第二十号)
四 私的独占の禁止及びxx取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)五 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第xx十四号)
六 資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)
七 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成七年法律第百十二号)
八 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)
九 米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(平成二十一年
法律第二十六号)
十 アルコール健康障害対策基本法(平成二十五年法律第百九号)
(酒類販売管理研修の受講)
第十一条の十 酒類販売管理研修を受けさせようとする者は、別紙様式第十一の五による受講申込書を法第八十六条の九第一項の規定により指定を受けたもの(以下「研修実施団体」という。)に提出しなければならない。
2 研修実施団体は、酒類販売管理研修を受講した者に対して、別紙様式第十一の六による研修受講証を交付しなければならない。
(酒類販売管理者の届出)
第十一条の十六 法第八十六条の九第四項の規定により酒類販売管理者の選任又は解任の届出をしようとする者は、販売場ごとに、別紙様式第十一の九による届出書を、財務大臣に提出しなければならない。
(法第八十六条の九第六項の財務省令で定める期間)
第十一条の十七 法第八十六条の九第六項に規定する財務省令で定める期間は、同項に規定する酒類販売管理者が最後に酒類販売管理研修を受けた日から起算して三年を超えない期間とする。
(標識の掲示)
第十一条の十八 法第八十六条の九第九項の規定により掲げる標識は、同条第一項の規定により酒類販売管理者を選任した後速やかに、当該酒類販売管理者の氏名及び次項に規定する事項を記載した標識をその販売場の公衆の見やすい場所に掲示する方法(当該酒類小売業者が通信販売(不特定かつ多数の者に商品の内容、販売価格その他の条件を提示し、インターネットその他の方法により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従つて行う商品の販売をいう。)をしようとするときは、インターネットその他の公衆の閲覧に供する方法)により行わなければならない。
2 法第八十六条の九第九項に規定する財務省令で定める事項は、次に掲げる事項とす
る。
一 販売場の名称及び所在地
二 酒類販売管理者が最後に酒類販売管理研修を受けた年月日及び当該酒類販売管理者の実施団体名
三 酒類小売業者が酒類販売管理者に受けさせなければならない次回の酒類販売管理研修の期限
2 未成年者の飲酒防止に関する表示基準
(酒類の容器又は包装に対する表示)
1 酒類の容器又は包装(以下「容器等」という。)には、「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示するものとする。
2 前項に規定する表示は、容器等の見やすい所に明りょうに表示するものとし、表示 に使用する文字は、6ポイント(日本工業規格Z8305(1962)に規定するポイントを いう。以下同じ。)の活字以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。ただし、容 量360ml以下の容器にあっては、5.5ポイントの活字以上の大きさとして差し支えない。
3 第1項に規定する表示は、次の各号に掲げる酒類の容器等については、表示を省略しても差し支えない。
(1) 専ら酒場、料理店等に対する引渡しに用いられるもの
(2) 内容量が50ml以下であるもの
(3) 調味料として用いられること又は薬用であることが明らかであるもの
(酒類の陳列場所における表示)
4 酒類小売販売場(酒類製造業者及び酒類販売業者以外の者に酒類を販売する場所をいう。以下同じ。)においては、酒類の陳列場所の見やすい箇所に、「酒類の売場である」又は「酒類の陳列場所である」旨及び「20歳以上の年齢であることを確認できない場合には酒類を販売しない」旨を表示するものとする。
この場合において、酒類の陳列場所が壁等により他の商品の陳列場所と明確に分離されていない場合については、例えば、酒類を他の商品と陳列棚又は陳列ケース等により明確に区分した上で表示するなど、陳列されている商品が酒類であることを購入者が容易に認識できる方法により表示するものとする。
5 前項に規定する表示は、酒類の陳列場所に明りょうに表示するものとし、表示に使用する文字は、100ポイントの活字以上の大きさの日本文字とする。
(酒類の自動販売機に対する表示)
6 酒類小売販売場に設置している酒類の自動販売機には、次の各号に掲げる事項をそれぞれ当該各号に掲げるところにより、当該自動販売機の前面の見やすい所に、夜間でも判読できるよう明りょうに表示するものとする。
(1) 未成年者の飲酒は法律で禁止されていること。
表示に使用する文字は、57ポイントの活字以上の大きさの統一のとれたゴシック体の日本文字とし、「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨を表示する。
(2) 免許者(酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を受けた者をいう。)の氏名又は名称、酒類販売管理者の氏名、並びに連絡先の所在地及び電話番号
表示に使用する文字は、20ポイントの活字以上の大きさの統一のとれた日本文字
とする。
(3) 販売停止時間
表示に使用する文字は、42ポイントの活字以上の大きさの統一のとれたゴシック体の日本文字とし、「午後11時から翌日午前5時まで販売を停止している」旨を表示する。
(酒類の通信販売における表示)
7 酒類小売販売場において酒類の通信販売(商品の内容、販売価格その他の条件を提示し、郵便、電話その他の方法により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う商品の販売をいう。)を行う場合には、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める事項を表示するものとする。
(1) 酒類に関する広告又はカタログ等(インターネット等によるものを含む。)
「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」又は「未成年者に対しては酒類を販売しない」旨
(2) 酒類の購入申込者が記載する申込書等の書類(インターネット等により申込みを受ける場合には申込みに関する画面)
申込者の年齢記載欄を設けた上で、その近接する場所に「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」又は「未成年者に対しては酒類を販売しない」旨
(3) 酒類の購入者に交付する納品書等の書類(インターネット等による通知を含む。)
「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨
8 前項に掲げる事項は、明瞭に表示するものとし、表示に使用する文字は、10ポイントの活字(インターネット等による場合には酒類の価格表示に使用している文字)以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。
(米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律)
(定義)
第二条 この法律において「米穀等」とは、米穀及び米穀を原材料とする飲食料品(米穀並びに薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品及び医薬部外品を除き、料理を含む。以下同じ。)であって政令で定めるものをいう。
2 この法律において「米穀事業者」とは、米穀等の販売、輸入、加工、製造又は提供の事業を行う者をいう。
3・4 (略)
【関係法令】
○ 米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律施行令
(米穀を原料とする飲食料品)
第一条 米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律(以下「法」という。)第二条第一項の政令で定める飲食料品は、次に掲げるものとする。
一~六 (略)七 米こうじ 八 清酒
九 単式蒸留しょうちゅう十 みりん
(取引等の記録の作成)
第三条 米穀事業者は、米穀等について譲受け又は他の米穀事業者への譲渡しをしたときは、主務省令で定めるところにより、その名称(指定米穀等にあっては、その名称及び産地)、数量、年月日、相手方の氏名又は名称、搬入又は搬出をした場所その他の主務省令で定める事項に関する記録を作成しなければならない。
2 (略)
(記録の保存)
第六条 米穀事業者は、第三条第一項及び前条の規定による記録を、当該記録を作成した日から主務省令で定める期間保存しなければならない。
【関係法令】
○ 米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律施行令
(記録の保存期間)
第七条 法第六条の主務省令で定める期間は、三年間とする。(以下略)一 (略)
二 記録を作成した日から賞味期限(定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。)までの期間が三年を超える米穀等 五年間
(一般消費者に対する産地情報の伝達)
第八条 米穀事業者(他の米穀事業者に委託をして指定米穀等の販売又は提供をする場合における当該委託をする米穀事業者を除く。)は、指定米穀等について一般消費者への販売又は提供をするときは、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号)第十九条の十三第一項から第三項までの規定により定められた品質に関する表示の基準又は酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和二十八年法律第七号)第八十六条の六第一項の規定により定められた酒類の表示の基準に従って当該指定米穀等の産地を表示しなければならない場合を除き、主務省令で定めるところにより、その包装又は容器への表示その他の方法により、当該指定米穀等の産地を、当該一般消費者に伝達しなければならない。
2・3 (略)
1 未成年者飲酒禁止法
(未成年者に対する飲酒の禁止)
第一条 満二十年ニ至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス
2 未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者若ハ親権者ニ代リテ之ヲ監督スル者未成年者ノ飲酒ヲ知リタルトキハ之ヲ制止スヘシ
3 営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満二十年ニ至ラサル者ノ飲用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス
4 営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満二十年ニ至ラザル者ノ飲酒ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス
(酒類及び器具の没収・廃き等の処分)
第二条 満二十年ニ至ラサル者カ其ノ飲用ニ供スル目的ヲ以テ所有又ハ所持スル酒類及其ノ器具ハ行政ノ処分ヲ以テ之ヲ没収シ又ハ廃棄其ノ他ノ必要ナル処置ヲ為サシムルコトヲ得
(罰則)
第三条 第一条第三項ノ規定ニ違反シタル者ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス
2 第一条第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ科料ニ処ス
第四条 法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条第一項ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ同項ノ刑ヲ科ス
2 酒類小売業における酒類の表示に関する公正競争規約(公正取引委員会告示)(抄)
(必要な表示事項)第4条
1・2 (略)
3 事業者は、酒類自動販売機(以下「自販機」という。)を設置している場合は、次に掲げる事項を、自販機の見やすい箇所に邦文で明りょうに表示しなければならない。
(1) 自販機による販売停止時間
(2) 自販機の管理責任者等
(3) 未成年者及び自動車運転者の飲酒禁止
4 事業者は、前項第1号の販売時間を厳守しなければならない。
【関係法令等】
○ 酒類小売業における酒類の表示に関する公正競争規約施行規則
(必要な表示事項)第2条
1 (略)
2 規約第4条第3項第1号の「自動販売機による販売停止時間」及び第2号の「自販機の管理責任者等」は、「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」(平成元年 11 月 22 日国税庁告示第9号)により表示するものとする。
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、酒類が国民の生活に豊かさと潤いを与えるものであるとともに、酒類に関する伝統と文化が国民の生活に深く浸透している一方で、不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となり、アルコール健康障害は、本人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や重大な社会問題を生じさせる危険性が高いことに鑑み、アルコール健康障害対策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、アルコール健康障害対策の基本となる事項を定めること等により、アルコール健康障害対策を総合的かつ計画的に推進して、アルコール健康障害の発生、進行及び再発の防止を図り、あわせてアルコール健康障害を有する者等に対する支援の充実を図り、もって国民の健康を保護するとともに、安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「アルコール健康障害」とは、アルコール依存症その他の多量の飲酒、未成年者の飲酒、妊婦の飲酒等の不適切な飲酒の影響による心身の健康障害をいう。
(基本理念)
第三条 アルコール健康障害対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 アルコール健康障害の発生、進行及び再発の各段階に応じた防止対策を適切に実施するとともに、アルコール健康障害を有し、又は有していた者とその家族が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるように支援すること。
二 アルコール健康障害対策を実施するに当たっては、アルコール健康障害が、飲酒運転、暴力、虐待、自殺等の問題に密接に関連することに鑑み、アルコール健康障害に関連して生ずるこれらの問題の根本的な解決に資するため、これらの問題に関する施策との有機的な連携が図られるよう、必要な配慮がなされるものとすること。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、アルコール健康障害対策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第五条 地方公共団体は、第三条の基本理念にのっとり、アルコール健康障害対策に関し、国との連携を図りつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第六条 酒類の製造又は販売(飲用に供することを含む。以下同じ。)を行う事業者は、国及び地方公共団体が実施するアルコール健康障害対策に協力するとともに、その事業活動を行うに当たって、アルコール健康障害の発生、進行及び再発の防止に配慮するよう努めるものとする。
(アルコール関連問題啓発週間)
第十条 国民の間に広くアルコール関連問題に関する関心と理解を深めるため、アルコール関連問題啓発週間を設ける。
2 アルコール関連問題啓発週間は、十一月十日から同月十六日までとする。
第二章 アルコール健康障害対策推進基本計画等
(アルコール健康障害対策推進基本計画)
第十二条 政府は、この法律の施行後二年以内に、アルコール健康障害対策の総合的かつ計画的な推進を図るため、アルコール健康障害対策の推進に関する基本的な計画(以下
「アルコール健康障害対策推進基本計画」という。)を策定しなければならない。
第三章 基本的施策
(不適切な飲酒の誘引の防止)
第十六条 国は、酒類の表示、広告その他販売の方法について、酒類の製造又は販売を行う事業者の自主的な取組を尊重しつつ、アルコール健康障害を発生させるような不適切な飲酒を誘引することとならないようにするために必要な施策を講ずるものとする。
1 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)
(定義)第二条
1~8 (略)
9 この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。ロ 不当な対価をもつて取引すること。
ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。
(不公正な取引方法の禁止)
第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
(課徴金)
第二十条の三 事業者が、次の各号のいずれかに該当する者であつて、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第二号に該当するものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。)における、当該行為において当該事業者が供給した同号に規定する商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三(当該事業者が小売業を営む場合は百分の二、卸売業を営む場合は百分の一とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該行為に係る行為について第七条の二第一項若しくは第四項若しくは次条の規定による命令(当該命令が確定している場合に限る。)、第七条の二第十八項若しくは第二十一項の規定による通知若しくは第五十一条第二項の規定による審決を受けたとき、又はこの条の規定による課徴金の額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一 調査開始日からさかのぼり十年以内に、第二十条の規定による命令(第二条第九項第二号に係るものに限る。次号において同じ。)若しくはこの条の規定による命令を受けたことがある者(当該命令が確定している場合に限る。次号において同じ。)又は第六十六条第四項の規定による審決(原処分の全部を取り消す場合における第二条第九項第二号に係るものに限る。次号において同じ。)を受けたことがある者(当該審決が確定している場合に限る。次号において同じ。)
二 第四十七条第一項第四号に掲げる処分が行われなかつた場合において、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日からさかのぼり十年以内に、第二十条の規定による命令若しくはこの条の規定による命令を受けたことがある者又は第六十六条第四項の規定による審決を受けたことがある者
第二十条の四 事業者が、次の各号のいずれかに該当する者であつて、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第三号に該当するものに限る。)をしたときは、公
正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。)における、当該行為において当該事業者が供給した同号に規定する商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三(当該事業者が小売業を営む場合は百分の二、卸売業を営む場合は百分の一とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、当該事業者が当該行為に係る行為について第七条の二第一項若しくは第四項の規定による命令、同条第十八項若しくは第二十一項の規定による通知若しくは第五十一条第二項の規定による審決を受けたとき、又はこの条の規定による課徴金の額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
一 調査開始日からさかのぼり十年以内に、第二十条の規定による命令(第二条第九項第三号に係るものに限る。次号において同じ。)若しくはこの条の規定による命令を受けたことがある者(当該命令が確定している場合に限る。次号において同じ。)又は第六十六条第四項の規定による審決(原処分の全部を取り消す場合における第二条第九項第三号に係るものに限る。次号において同じ。)を受けたことがある者(当該審決が確定している場合に限る。次号において同じ。)
二 第四十七条第一項第四号に掲げる処分が行われなかつた場合において、当該事業者が当該違反行為について事前通知を受けた日からさかのぼり十年以内に、第二十条の規定による命令若しくはこの条の規定による命令を受けたことがある者又は第六十六条第四項の規定による審決を受けたことがある者
第二十条の六 事業者が、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第五号に該当するものであつて、継続してするものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。)における、当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受ける相手方に対するものである場合は当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額とし、当該行為の相手方が複数ある場合は当該行為のそれぞれの相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額又は購入額の合計額とする。)に百分の一を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。
2 不公正な取引方法
(昭和 57 年6月 18 日 公正取引委員会告示第 15 号)改正 平成 21 年 10 月 28 日 公正取引委員会告示第 18 号
(共同の取引拒絶)
1 正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
一 ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
二 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
(その他の取引拒絶)
2 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。
(差別対価)
3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「法」という。)第二条第九項第二号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。
(取引条件等の差別取扱い)
4 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。
(事業者団体における差別取扱い等)
5 事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。
(不当廉売)
6 法第二条第九項第三号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
(不当高価購入)
7 不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
(ぎまん的顧客誘引)
8 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。
(不当な利益による顧客誘引)
9 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。
(抱き合わせ販売等)
10 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。
(排他条件付取引)
11 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。
(拘束条件付取引)
12 法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。
(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。
(競争者に対する取引妨害)
14 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。
(競争会社に対する内部干渉)
15 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。
3 不当廉売に関する独占禁止法上の考え方
(平成21年12月18日 公正取引委員会)
改正 平成23年6月23日
1 はじめに
不当廉売は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)において、不公正な取引方法の一つとして禁止されている。不当廉売の規定は、平成21年法律第51号及び不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)の改正によって、次のようになった。
① 独占禁止法第2条第9項第3号
正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
② 不公正な取引方法第6項
法第2条第9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
このうち、独占禁止法第2条第9項第3号に規定する不当廉売(以下「法定不当廉売」という。)を行った事業者が、過去10年以内に法定不当廉売を行ったとして行政処分を受けたことがあるなど一定の条件を満たす場合には、課徴金の納付が命じられることになった(注1)。このため、不当廉売に係る法運用の透明性、事業者の予見可能性を向上させる観点から、公正取引委員会は、法定不当廉売の要件のうち、特に「供給に要する費用を著しく下回る対価」に重点を置いて、不当廉売に関する独占禁止法上の考え方を従前よりも明確化するため、「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(昭和59年11月20日公正取引委員会事務局)を一部改定することとした。
なお、これは不当廉売の規定の適用に当たり、留意すべき事項を示したものであり、具体的なケースについては、個々の事案ごとに判断を要するものであることはいうまでもない。
(注1) 法定不当廉売に該当する行為に対しては、独占禁止法第2条第9項第3号の規定だけを適用すれば足りるので、当該行為に不公正な取引方法第6項の規定が適用されることはない。
2 不当廉売規制の目的
独占禁止法の目的は、いうまでもなく公正かつ自由な競争を維持・促進することにあり、事業者が創意により良質・廉価な商品又は役務(以下単に「商品」という。)を供給しようとする努力を助長しようとするものである。この中でも、企業努力による価格競争は、本来、競争政策が維持促進しようとする能率競争(良質・廉価な商品を提供して顧客を獲得する競争をいう。)の中核をなすものである。この意味で、価格の安さ自体を不当視するものではないことは当然であるが、逆に価格の安さを常に正当視するものでもない。企業の効率性によって達成した低価格で商品を提供するのではなく、採算を度外視した低価格によって顧客を獲得しようとするのは、独
占禁止法の目的からみて問題がある場合があり、そのような場合には、規制の必要がある。正当な理由がないのにコストを下回る価格、いいかえれば他の商品の供給による利益その他の資金を投入するのでなければ供給を継続することができないような低価格を設定することによって競争者の顧客を獲得することは、企業努力又は正常な競争過程を反映せず、廉売を行っている事業者
(以下「廉売行為者」という。)自らと同等又はそれ以上に効率的な事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあり、公正な競争秩序に影響を及ぼすおそれがある場合もあるからである。
3 独占禁止法第2条第9項第3号の規定
独占禁止法第2条第9項第3号の規定は、次のとおりである。
三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
同号の要件は、①廉売の態様(価格・費用基準及び継続性)、②「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」、③正当な理由の三つの面からとらえることができる。
(1) 廉売の態様
ア 価格・費用基準
(ア) 価格・費用基準すなわち「供給に要する費用を著しく下回る対価」という要件は、前記
2の不当廉売規制の目的に即して解釈すべきである。
(イ) すなわち、不当廉売規制の目的の一つは、廉売行為者自らと同等又はそれ以上に効率的 な事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるような廉売を規制することにある。仮に、廉売行為者自らと同等に効率的な事業者、例えば、廉売行為者と同じ費用で商品を供給す ることができる事業者が存在し、又は参入を検討していたとしても、商品の供給が増大す るにつれ損失が拡大するような価格でしか供給することができないのであれば、むしろ、供給をしない方が費用の負担を免れることができることから、供給を継続せずに撤退し、又は参入を断念する方がよいことになる。つまり、廉売行為者自身がその費用すら下回る 価格で供給を行えば、他の事業者も廉売行為者と同じ価格で供給せざるを得なくなり、仮 に、他の事業者が同じ費用で供給することができたとしても、早晩、撤退又は参入断念を 余儀なくされることを意味する。このように、廉売行為者自らと同等に効率的な事業者の 事業の継続等に係る判断に影響を与える価格であるかどうかは、それが当該廉売行為者自 身にとって直ちに損失をもたらす水準にあるかどうかに左右されることになる。したがっ て、「供給に要する費用」とは、廉売行為者の「供給に要する費用」であり、業界一般の
「供給に要する費用」又は現実に存在する特定の競争者の費用ではない。
(ウ) 前記2の不当廉売規制の目的からみて、事業者が自らの企業努力又は正常な競争過程を反映した価格設定を行うことは妨げられていない。例えば、商品の価格が「供給に要する費用」、すなわち総販売原価(注2)を下回っていても、供給を継続した方が当該商品の供給に係る損失が小さくなるときは、当該価格で供給することは合理的である。このような観点から、価格・費用基準は、廉売行為者にとって明らかに経済合理性のない価格設定であるかを判断することができるものとすることが適切である。この点、商品の供給が増大するにつれ損失が拡大するような価格設定行動は、特段の事情がない限り、経済合理性のないものであるということができる。したがって、価格設定についての経済合理性の有無は、廉売の対象となった商品(以下「廉売対象商品」という。)を供給することによっ
て発生する費用と価格との比較により判断することが適当である(注3)。これにより、事業者が採算に合うと考えて設定した価格が違法とされることを懸念し事業活動に影響が生じる可能性をできるだけ少なくすることができる。
(注2) 総販売原価とは、廉売対象商品の供給に要するすべての費用を合計したものであり、通常の製造業では、製造原価に販売費及び一般管理費を加えたもの、通常の販売業では、仕入原価に販売費及び一般管理費を加えたものである。
ここでの「製造原価」とは、当期の製造活動によって完成した全製品の製造に要した費用の合計である製造原価報告書上の当期製品製造原価ではなく、当該廉売によって販売された製品の製造に要した費用の合計額のことである。仕入原価、販売費及び一般管理費についても同様であり、当該廉売によって販売された製品の仕入れ、販売及び管理に要した費用の合計額のことである。
販売費及び一般管理費のように複数の事業に共通する費用については、これが各事業にどのように配賦されるかが問題となるところ、企業会計上は、当該費用の発生により各事業が便益を受ける程度等に応じ、各事業者が実情に即して合理的に選択した配賦基準に従って配賦されることが一般的である。複数の事業に共通する費用の配賦基準については、このほかにも様々な方法があるが、廉売行為者が実情に即して合理的に選択した配賦基準を用いていると認められる場合には、当該配賦基準に基づき各事業に費用の配賦を行った上で、総販売原価の算定を行うものとする。その上で、複数の商品に共通する費用についても、実情に即して合理的に配賦することにより、廉売対象商品の総販売原価の算定を行うものとする。
また、研究開発費等のように一括して計上される費用については、廉売行為者が実情に即して合理的な期間において当該費用を回収することとしていると認められる場合には、当該期間にわたって費用の配賦を行った上で、廉売対象商品の総販売原価の算定を行うものとする。
(注3) 経済合理性があるかどうかについては、概念的には、設定された価格が平均回避可能費用(廉売行為者が廉売対象商品の追加供給をやめた場合に生じなくなる廉売対象商品固有の固定費用及び可変費用を合算した費用を追加供給量で除することによって得られる廉売対象商品一単位当たりの費用をいう。)を回収することができるかどうかによって判断される。実務上は、これに相当するものとして、後記(エ)に示した考え方を用いる。
(エ) 総販売原価を著しく下回る価格であるかどうかは、廉売対象商品を供給することによって発生する費用を下回る収入しか得られないような価格であるかどうかという観点から、事案に即して算定されることになる。この算定に当たっては、次の点に留意する。
a 供給に要する費用には、廉売対象商品を供給しなければ発生しない費用(以下「可変的性質を持つ費用」という。)とそれ以外の費用とがある。可変的性質を持つ費用でさえ回収できないような低い価格を設定すれば、廉売対象商品の供給が増大するにつれ損失が拡大する。したがって、可変的性質を持つ費用を下回る価格は、「供給に要する費用を著しく下回る対価」であると推定される(他方、可変的性質を持つ費用以上の価格は「供給に
要する費用を著しく下回る対価」ではないので、その価格での供給は、法定不当廉売に該当することはない。)。
b 可変的性質を持つ費用に該当する費用かどうかについては、廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用か、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点から評価する。
(a) 変動費(操業度に応じて総額において比例的に増減する原価をいう。)は、可変的性質を持つ費用となる。また、明確に変動費であると認められなくても、費用の性格上、廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減するとみられる費用は、特段の事情(注4)がない限り、可変的性質を持つ費用と推定される。例えば、変動費としては製品の製造に直接用いられる材料費や仕入価格が挙げられ、費用の性格上廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減する費用としては運送費、検収費等の商品仕入れに付随する諸経費が挙げられる。
さらに、費用の性格からそのように推定するまでは至らないものであっても、個別の事案において、廉売期間中、供給量の変化に応じて増減している費用は、原則として、可変的性質を持つ費用として取り扱われる。
(注4) 継続的な廉売ではあるものの、廉売期間が比較的短く、期間中の廉売対象商品の供給によってはその費用が増減し得ないといった事情は、特段の事情に該当する事由である。
(b) 企業会計上の各種費用項目のうち、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用項目は、以下に示すように、可変的性質を持つ費用となる又は推定される場合がある。
(i) 製造原価
製造原価は製造業者が廉売を行うことにより販売した当該製品の「売上原価」を構成する重要な一要素である。製造原価は、製造業者が、ある製品について廉売を行った場合に、当該製品の供給と密接な関連性を有するものとして算定される費用項目であり、その性格上、特段の事情(注5)がない限り、可変的性質を持つ費用と推定される。製造原価のうち製造直接費(直接材料費、直接労務費及び直接経費)は、可変的性質を持つ費用となる。
(注5) 特段の事情に該当する事由としては、製造原価の中に、明らかに当該製品の供給と関連性のない費用項目があるといった事情(例えば、当該製品を製造する工場敷地内にある福利厚生施設(テニスコート、プール等)の減価償却費が製造原価に含まれている場合)が挙げられる。
(ⅱ) 仕入原価
仕入原価とは、仕入価格(注6)と、運送費、検収費等の仕入れに付随する諸経費との合計額である。仕入原価は、販売業者が、ある製品について廉売を行った場合に、当該製品の供給と密接な関連性を有するものとして算定される費用項目であり、その性格上、特段の事情がない限り、可変的性質を持つ費用と推定される。仕入原価のうち仕入価格は、可変的性質を持つ費用となる。
(注6) ここでの「仕入価格」とは、名目上の仕入価格ではなく、実際の取引において当該製品に関して値引き、リベート、現品添付等が行われている場合には、これらを考慮に入れた実質的な仕入価格をいう。
(ⅲ) 営業費
営業費は、販売費及び一般管理費から構成されるところ、これに含まれる費用項目のうち、廉売対象商品の注文の履行に要する費用である倉庫費、運送費及び掛売販売集金費は、事業者が、ある商品について廉売を行った場合に、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有するものとして算定される費用項目であり、その性格上、可変的性質を持つ費用となる。
(c) 廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用か、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点から、費用の性格上、特段の事情がない限り可変的性質を持つ費用には該当しないと推定される費用(注7)又は可変的性質を持つ費用とはならない費用(注8)がある。
(注7) 廉売対象商品の注文の獲得に要する費用(例えば、広告費、市場調査費、接待費)は、特段の事情がない限り、可変的性質を持つ費用には該当しないと推定される。特段の事情に該当する事由としては、廉売対象商品の供給を開始又は継続するために不可避的に発生した費用であるといった事情が挙げられる。
例えば、廉売対象商品の需要創出のために発売開始前に集中的に支出した宣伝広告費については、その費用の支出なくして廉売対象商品の供給自体が行われなかったと認められる場合があり得る。このような廉売対象商品の供給を開始又は継続するために不可避的に発生した費用であるといった事情があれば、当該費用は、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用であり、廉売対象商品を供給しなければ発生しなかったものとして、可変的性質を持つ費用とされる。
(注8) 本社組織である人事部や経理部における人件費、交通費及び通信費は、費用の性格上、廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用ではなく、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用でもないので、可変的性質を持つ費用とはならない。
イ 継続性
前記2のとおり、不当廉売に該当するためには、廉売が廉売行為者自らと同等に効率的な事業者の事業の継続等に係る判断に影響を与え得るものである必要がある。したがって、不当廉売となるのは、一般的には、廉売がある程度「継続して」行われる場合である。このため、独占禁止法第2条第9項第3号の規定は、「供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給すること」と規定している。
「継続して」とは、相当期間にわたって繰り返して廉売を行い、又は廉売を行っている事業者の営業方針等から客観的にそれが予測されることであるが、毎日継続して行われること
を必ずしも要しない。例えば、毎週末等の日を定めて行う廉売であっても、需要者の購買状況によっては継続して供給しているとみることができる場合がある。
(2) 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」
ア 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある」にいうところの「他の事業者」とは、通常の場合、廉売対象商品について当該廉売を行っている者と競争関係にある者を指すが、廉売の態様によっては、競争関係にない者が含まれる場合もあり得る。例えば、卸売・小売業者による廉売によって製造業者等の競争関係に影響が及ぶ場合であれば、「他の事業者」に、廉売対象商品と同種の商品を供給する製造業者等が含まれる場合もある。
イ 「事業活動を困難にさせるおそれがある」とは、現に事業活動が困難になることは必要なく、諸般の状況からそのような結果が招来される具体的な可能性が認められる場合(注9)を含む趣旨である。このような可能性の有無は、他の事業者の実際の状況のほか、廉売行為者の事業の規模及び態様、廉売対象商品の数量、廉売期間、広告宣伝の状況、廉売対象商品の特性、廉売行為者の意図・目的等を総合的に考慮して、個別具体的に判断される。
(注9) 例えば、有力な事業者が、他の事業者を排除する意図の下に、可変的性質を持つ費用を下回る価格で廉売を行い、その結果、急激に販売数量が増加し、当該市場において販売数量で首位に至るような場合には、個々の事業者の事業活動が現に困難になっているとまでは認められなくとも、「事業活動を困難にさせるおそれがある」に該当する。
(3) 正当な理由
前記(1)及び(2)の要件に当たるものであっても、廉売を正当化する特段の事情があれば、公正な競争を阻害するおそれがあるものとはいえず、不当廉売とはならない。例えば、需給関係から廉売対象商品の販売価格が低落している場合、廉売対象商品の原材料の再調達価格が取得原価より低くなっている場合において、商品や原材料の市況に対応して低い価格を設定したとき、商品の価格を決定した後に原材料を調達する取引において、想定しがたい原材料価格の高騰により結果として供給に要する費用を著しく下回ることとなったときは、「正当な理由」があるものと考えられる(注10)。
(注10) 生鮮食料品のようにその品質が急速に低下するおそれがあるものや季節商品のようにその販売の最盛期を過ぎたものについて、見切り販売をする必要がある場合は、可変的性質を持つ費用を下回るような低い価格を設定することに「正当な理由」があるものと考えられる。きず物、はんぱ物その他の瑕疵のある商品について相応の低い価格を設定する場合も同様に考えられる。
4 不公正な取引方法第6項の規定
(1) 不公正な取引方法第6項の規定は、次のとおりである。
(不当廉売)
6 法第2条第9項第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。
法定不当廉売の要件である価格・費用基準及び継続性のいずれか又は両方を満たさない場合、すなわち、廉売行為者が可変的性質を持つ費用以上の価格(総販売原価を下回ることが前提)で供給する場合や、可変的性質を持つ費用を下回る価格で単発的に供給する場合であっても、廉売対象商品の特性、廉売行為者の意図・目的、廉売の効果、市場全体の状況等からみて、公 正な競争秩序に悪影響を与えるときは、不公正な取引方法第6項の規定に該当し、不当廉売と して規制される。
(2) 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の有無については、前記3(2)イに掲げる事項を総合的に考慮して、個別事案ごとに判断することとなるが、例えば、市場シェアの高い事業者が、継続して、かつ、大量に廉売する場合、又はこのような事業者が、他の事業者にとって経営上重要な商品を集中的に廉売する場合は、一般的には、他の事業者の事業活動に影響を与えると考えられるので、可変的性質を持つ費用以上の価格での供給であっても、不公正な取引方法第6項の規定に該当する場合がある。この場合には、廉売対象商品の供給と関連のある費用(製造原価又は仕入原価及び販売費)を下回っているかどうかを考慮する。
5 廉売問題に関連するその他の規制
廉売問題に関連する独占禁止法上の規制のうち、主要なものを挙げると次のとおりである。
(1) 差別対価、取引条件等の差別取扱いア 独占禁止法が禁止する差別対価等
差別対価については、独占禁止法第2条第9項第2号において「不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と(注11)、不公正な取引方法第3項において「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条第9項第2号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。」と規定されている。独占禁止法第2条第9項第2号は、商品を供給するケースに限られ、供給を受ける行為は含まれていないことに留意する必要がある。
また、取引条件等の差別取扱いについては、不公正な取引方法第4項において、「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利又は不利な取扱いをすること。」と規定されている。
(注11) 独占禁止法第2条第9項第2号に規定する差別対価を行った事業者が、過去10年以内に同号に規定する差別対価を行ったとして行政処分を受けたことがあるなど一定の条件を満たす場合には、課徴金の納付が命じられる。
独占禁止法第2条第9項第2号に規定する差別対価に該当する行為に対しては、同号の規定だけを適用すれば足りるので、当該行為に不公正な取引方法第3項の規定が適用されることはない。
イ 差別対価等の規制の基本的な考え方
(ア) 経済活動において、取引数量の多寡、決済条件、配送条件等の相違を反映して取引価格に差が設けられることは、広く一般にみられることである。また、地域による需給関係の
相違を反映して取引価格に差異が設けられることも通常である。
このような観点からすれば、取引価格や取引条件に差異が設けられても、それが取引数量の相違等正当なコスト差に基づくものである場合や、商品の需給関係を反映したものである場合等においては、本質的に公正な競争を阻害するおそれがあるとはいえないものと考えられる。
しかし、例えば、有力な事業者が、競争者を排除するため、当該競争者と競合する販売地域又は顧客に限って廉売を行い、公正な競争秩序に悪影響を与える場合は、独占禁止法上問題となる。
また、有力な事業者が同一の商品について、取引価格やその他の取引条件等について、合理的な理由なく差別的な取扱いをし、差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合にも、独占禁止法上問題となる。
(イ) 個々の行為がどのような場合に独占禁止法上の差別対価等に該当するかは、個別具体的な事案において、行為者の意図・目的、取引価格・取引条件の格差の程度、供給に要する費用と価格との関係、行為者及び競争者の市場における地位、取引の相手方の状況、商品の特性、取引形態等を総合的に勘案し、市場における競争秩序に与える影響を勘案した上で判断されるものである。
(2) 優越的地位の濫用行為
自己の取引上の地位が相手方に優越している事業者が、その地位を利用して、取引の相手方に対し、自己に対する低価格での納入や自己の決算対策のための協賛金の支払いを強要すること等は、独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当するおそれがある。
公正取引委員会は、「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日公正取引委員会事務局)、「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針(平成10年3月17日公正取引委員会)、「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の運用基準(平成17年事務総長通達第9号)、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年11月30日公正取引委員会)で明らかにした考え方等を踏まえ、厳正に対処する(注12)。
(注12) 独占禁止法第2条第9項第5号に規定される優越的地位の濫用を行った事業者に対しては、当該行為が継続してするものであるなど一定の条件を満たす場合には、課徴金の納付が命じられる。
4 酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応について
(平成21年12月18日 公正取引委員会)
改正 平成23年6月23日
第1 不当廉売への対応について
1 不当廉売の規制の内容
(1) 独占禁止法が禁止する不当廉売
不当廉売については、独占禁止法第2条第9項第3号において「正当な理由がないのに、 商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と規定され、同項第6号に基づく 不公正な取引方法(昭和57年公正取引委員会告示第15号)第6項において「法第2条第9項 第3号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業 活動を困難にさせるおそれがあること。」と規定されている。
また、公正取引委員会では、不当廉売の規制の考え方を明らかにした「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(平成21年12月18日公正取引委員会。以下「一般不当廉売ガイドライン」という。)を発出している。
(2) 酒類の取引実態を踏まえた考え方
問題となる廉売の態様としては、「正当な理由がないのに、供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」する場合(独占禁止法第2条第9項第3号)と、「不当に低い対価で供給」する場合(不公正な取引方法第6項)の2つがあり、このような廉売によって、
「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」がある場合に不当廉売に該当する。
この不当廉売の規制基準に関し、酒類の取引実態に即した考え方は、次のとおりである。
ア 「供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」する場合 (ア) 「供給に要する費用を著しく下回る対価」の考え方
a 一般不当廉売ガイドラインでは、「供給に要する費用を著しく下回る対価」にいう
「供給に要する費用」とは、総販売原価であるとし、通常の販売業における総販売原価とは、仕入原価に販売費及び一般管理費を加えたものであるとしている(注1)。また、廉売対象商品を供給しなければ発生しない費用(以下「可変的性質を持つ費用」という。)を下回る価格は、「供給に要する費用を著しく下回る対価」であると推定されるとしている。
(注1)ここでの「総販売原価」とは、当期の販売活動全体に要した費用のことではなく、廉売対象商品の販売に要した費用の合計額のことである。
販売費及び一般管理費のように複数の事業に共通する費用については、これが各事業にどのように配賦されるかが問題となるところ、企業会計上は、当該費用の発生により各事業が便益を受ける程度等に応じ、各事業者が実情に即して合理的に選
択した配賦基準に従って配賦されることが一般的である。複数の事業に共通する費用の配賦基準については、このほかにも様々な方法があるが、廉売行為者が実情に即して合理的に選択した配賦基準を用いていると認められる場合には、当該配賦基準に基づき各事業に費用の配賦を行った上で、総販売原価の算定を行うものとする。その上で、複数の商品に共通する費用についても、実情に即して合理的に配賦することにより、廉売対象商品の総販売原価の算定を行うものとする。
b どのような費用が可変的性質を持つ費用となるかについては、廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用か、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点から評価される。
c 廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用かという観点からは、変動費(操業度に応じて総額において比例的に増減する原価をいう。)は、可変的性質を持つ費用となる。また、明確に変動費であると認められなくても、費用の性格上、廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減するとみられる費用は、特段の事情がない限り、可変的性質を持つ費用と推定される(注2)。さらに、費用の性格からそのように推定するまでは至らないものであっても、個別の事案において、廉売期間中、供給量の変化に応じて増減している費用は、原則として、可変的性質を持つ費用として取り扱われる。
(注2)大規模な小売業者は、物流センターを設置し、酒類卸売業者に対して、当該物流センターへの納入を求めるとともに、当該物流センターの使用料(センターフィー)を徴収していることがある。酒類卸売業者が物流センターの使用料として納入金額に比例して支払うセンターフィーは、費用の性格上、廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減するとみられる費用であるので、特段の事情がない限り、酒類卸売業者の可変的性質を持つ費用と推定される。
d 廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点からは、仕入れに係る費用項目のうち、仕入原価は、特段の事情がない限り、可変的性質を持つ費用と推定され、仕入原価のうち仕入価格は、可変的性質を持つ費用となる。また、販売費のうち、運送費等の廉売対象商品の注文の履行に要する費用は、可変的性質を持つ費用となる。
(a) 仕入原価とは、仕入価格と運送費等の仕入れに付随する諸経費との合計額である。
(b) 仕入価格については、名目上の仕入価格ではなく、廉売対象商品に関する値引き等
(実質的な値引きと認められるリベートを含む。)を考慮に入れた実質的仕入価格で判断することとしている。酒類の仕入価格は、小売業者により様々であり、メーカー又は卸売業者から多種多様なリベートが供与されたり、金銭でなく商品が添付されることがあるが、こうしたリベート等のうち、例えば、次のようなものについては、廉売対象商品についての実質的仕入価格の判断において仕入価格の引下げ(値引き等)として考慮しないこととする。
○ 廉売対象商品の仕入れの際に添付される他の商品(食料品、廉売対象商品以外の酒類等)
○ 年度末等に事後的に額が判明するリベート
○ メーカー又は卸売業者によって広告費や販売活動の補助として供与されるチラシ協賛金、出店協賛金、販売員等
(c) 小売業者は、商品を販売する際に、消費者に対し販売価格の一部又は全部の減額に充当できるポイント(1ポイントを一定の率で金額に換算するなどの方法による。)を提供する場合がある。
酒類についてのこのようなポイントの提供については、①ポイントを利用する消費者の割合、②ポイントの提供条件(購入額の多寡にかかわらず提供されるものか、一定金額の購入を条件として提供されるものか等)、③ポイントの利用条件(ポイントが利用可能となるタイミング、ポイントの有効期限、利用に当たっての最低ポイント数の設定の有無等)といった要素を勘案し、ポイントの提供が値引きと同等の機能を有すると認められる場合は、「対価」の実質的な値引きと判断される。
(イ) 「継続して」の考え方
「継続して」とは、相当期間にわたって繰り返し廉売を行い、又は廉売を行っている事業者の営業方針等から客観的にそれが予測されることであるが、毎日継続して行われることを必ずしも要しない。例えば、ビール・発泡酒等については、ある程度買置きが可能であり、週末に24缶入りの箱又は6缶パックなどでまとめて購入するケースも多くなっている。このような週末に消費者の購入が多い酒類については、週末ごとに行う廉売であっても、継続して供給しているとみることができる。また、ビール・発泡酒等の廉売において日替わり・週替わりでその銘柄を変える場合があるが、このように廉売対象となる酒類について、その銘柄が異なる場合であっても一連の行為としてとらえることができる。
イ 「他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれ」の考え方
(ア) 廉売によって他の酒類販売業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるかどうかについては、次の事項等を総合的に考慮して判断することとなる。
○ 廉売を行っている事業者(以下「廉売行為者」という。)の事業の規模及び態様(事業規模の大きさ、多店舗展開の状況、総合量販店であるかなど)
○ 廉売対象商品の数量、廉売期間(廉売対象となっている酒類の品目数、販売数量、箱売り等の販売単位、廉売期間の長さ等)
○ 広告宣伝の状況(新聞折込広告で広範囲に広告しているかなど)
○ 廉売対象商品の特性(廉売対象となっている酒類の銘柄等)
○ 廉売行為者の意図・目的
○ 周辺の酒類販売業者の状況(事業規模の大きさ、事業に占める廉売対象商品の販売割合、廉売行為者と周辺の酒類販売業者との販売価格差の程度、他の廉売業者の有無、廉売対象商品の売上高の減少の程度等)
(イ) 例えば、ビール・発泡酒等については、酒類販売において売上高の大きな割合を占めること、実質的仕入価格に格差が生じていることから、周辺の酒類販売業者よりも安く仕入れている酒類販売業者がその実質的仕入価格を下回る価格で継続して販売する場合には、一般的には、周辺の酒類販売業者の事業活動に影響し、特に、大規模な事業者が
実施する場合や繰り返し実施する場合には、特段の事情がない限り、周辺の酒類販売業者の事業活動に対する影響が大きいと考えられる。
ウ 「不当に低い対価で供給」する場合
(ア) 「不当に低い対価で供給」する場合に該当し得る行為態様としては、酒類販売業者が可変的性質を持つ費用以上の価格(総販売原価を下回ることが前提)で販売する場合や、可変的性質を持つ費用を下回る価格で短期間販売する場合がある。このような場合であっても、廉売対象商品の特性、廉売行為者の意図・目的、廉売の効果、市場全体の状況等からみて、周辺の酒類販売業者の事業活動を困難にさせるおそれが生じ、公正な競争秩序に悪影響を与えるときは、不公正な取引方法第6項の規定に該当し、不当廉売として規制される。
(イ) 周辺の酒類販売業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるかどうかについては、前記イ(ア)に掲げる事項を総合的に考慮して、個別事案ごとに判断することとなるが、例えば、周辺の酒類販売業者の経営上ビールが重要な商品である場合において、多店舗展開を行っている大規模な事業者、一定の商圏において市場シェアの高い事業者等が、ビールを集中的に廉売する場合は、一般的には、周辺の酒類販売業者の事業活動に影響を与えると考えられるので、可変的性質を持つ費用以上の価格での販売であっても、不公正な取引方法第6項の規定に該当する場合がある。この場合には、廉売対象商品の供給と関連のある費用(仕入原価及び販売費)を下回っているかどうかを考慮する。
(3) なお、前記(2)の考え方は、複数の酒類販売業者が相互に対抗して廉売を繰り返す、いわゆる対抗廉売の場合にも該当する。
2 公正取引委員会の対応
公正取引委員会は、前記1の考え方を踏まえて、酒類の不当廉売事案に関して、次のような対応を行うこととする。
(1) 申告のあった事案に関しては、処理結果を通知するまでの目標処理期間を原則2か月以内として、迅速に処理を行う。その際、過去に注意を受けたがなお再び注意を受けるような事業者に対しては、事案に応じて、①責任者を招致した上で直接注意を行うほか、②周辺の酒類販売業者に対する影響が大きいと考えられる場合には、簡易迅速な処理によるのではなく、次の(2)により、厳正に対処する。
(2) 大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の酒類販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては、周辺の酒類販売業者の事業活動への影響等についても調査を行い、問題のみられる事案については厳正に対処し、排除措置命令や警告に至らない場合であっても、責任者を招致するなどした上で、文書により厳重に注意する。
(3) 具体的な事実を摘示して行われた不当廉売事案の申告については、当該申告をした者に調査結果を通知するとともに、通知を受けた申告者から当該通知の内容について問い合わせがあった場合には、事業者の秘密や今後の審査活動に支障を及ぼす事項を除き、可能な範囲で説明する。
(4) 警告、注意等を行った事業者に対しては、再発防止、違反行為の未然防止等の観点から、その後の価格動向について情報収集を行う。
第2 差別対価等への対応について
1 差別対価等の規制の内容
(1) 独占禁止法が禁止する差別対価等
差別対価については、独占禁止法第2条第9項第2号において「不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」と規定され、不公正な取引方法第3項において「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第2条第9項第2号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。」と規定されている。
また、取引条件等の差別取扱いについては、不公正な取引方法第4項において「不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利又は不利な取扱いをすること。」と規定されている。
(2) 差別対価等の規制の基本的な考え方
経済活動において、取引数量の多寡、決済条件、配送条件等の相違を反映して取引価格に差が設けられることは、広く一般にみられることである。また、地域による需給関係の相違を反映して取引価格に差異が設けられることも通常である。
このような観点からすれば、取引価格や取引条件に差異が設けられても、それが取引数量の相違等正当なコスト差に基づくものである場合や、商品の需給関係を反映したものである場合等においては、本質的に公正な競争を阻害するおそれがあるとはいえないものと考えられる。
しかし、例えば、有力な事業者が、競争者を排除するため、当該競争者と競合する販売地域又は顧客に限って廉売を行い、公正な競争秩序に悪影響を与える場合等は、独占禁止法上問題となる。
また、有力な事業者が同一の商品について、取引価格やその他の取引条件等について、合理的な理由なく差別的な取扱いをし、差別を受ける相手方の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合にも、独占禁止法上問題となる。個々の行為がどのような場合に独占禁止法上の差別対価等に該当するかは、個別具体的な 事案において、行為者の意図・目的、取引価格・取引条件の格差の程度、供給に要する費用と価格との関係、行為者及び競争者の市場における地位、取引の相手方の状況、取引形態等を総合的に勘案し、市場における競争秩序に与える影響を勘案した上で判断されるものであ
る。
2 公正取引委員会の対応
(1) 調査開始基準の明確化
不当廉売事案の調査結果等によれば、酒類の取引においては、小売業者間において、仕入価格に格差が生じている状況がみられる。また、メーカーや卸売業者が供与するリベートについては、その供与の基準が不明確なものが存在している状況もみられる。
公正取引委員会としては、酒類の取引における差別対価等の問題については、申告の疎明資料等により、次のような事実があると思料する場合には、必要な調査を開始し、前記1の考え方に照らし判断することとする。
ア メーカー・卸関係
(ア) メーカーA社と継続的な取引関係にある卸売業者甲社及び乙社が同一の商圏内に所在している場合において、A社と甲社及び乙社との同一商品の取引内容(取引高、決済条件、受発注条件、配送条件、容器の種類等。以下同じ。)が同等とみられるにもかかわらず、A社の甲社及び乙社に対する実質的な販売価格(リベート等を考慮したもの。以下同じ。)に著しい相違がみられる疑いがある場合
(イ) メーカーA社と継続的な取引関係にある卸売業者甲社及び乙社が同一の商圏内に所在している場合において、A社と甲社及び乙社との同一商品の取引内容が同等とはみられないものの、A社の甲社及び乙社に対する実質的な販売価格にその取引内容の相違を超えた著しい相違がみられる疑いがある場合
(ウ) その他メーカーA社の卸売業者甲社及び乙社に対する同一商品の取引条件について、前記(ア)又は(イ)に類似する著しい相違がみられる疑いがある場合
イ 卸売(小売業者と直接の取引がある卸売業者を指す。)・小売関係(注3)
(ア) 卸売業者A社と継続的な取引関係にある小売業者甲社及び乙社が同一の商圏内に所在している場合において、A社と甲社及び乙社との同一商品の取引内容が同等とみられるにもかかわらず、A社の甲社又は乙社に対する実質的な販売価格に著しい相違がみられる疑いがある場合
(イ) 卸売業者A社と継続的な取引関係にある小売業者甲社及び乙社が同一の商圏内に所在している場合において、A社と甲社及び乙社との同一商品の取引内容が同等とはみられないものの、A社の甲社又は乙社に対する実質的な販売価格にその取引内容の相違を超えた著しい相違がみられる疑いがある場合
(ウ) その他卸売業者A社の小売業者甲社及び乙社に対する同一商品の取引条件について、前記(ア)又は(イ)に類似する著しい相違がみられる疑いがある場合
(注3)卸売業者から小売業者へのリベートの供与等について差別対価等に該当するか否かを判断するに際しては、メーカーから小売業者に対して供与されているリベート等の状況を考慮に入れる必要がある。
また、メーカーから小売業者に対して供与されているリベート等が前記イ(ア)から (ウ)までと同様に著しく相違する疑いがあるときは、メーカーによる取引条件等の差別取扱いに該当するおそれもある。ただし、その判断に際しては、卸売業者から小売業者に対するリベートの供与等の状況についても考慮に入れる必要がある。
(2) リベート等の供与基準の明確化
供与基準の不明確なリベートが裁量的に提供される場合、特にそうした不透明なリベートが取引の相手方のマージンにおいて大きな割合を占めている場合には、独占禁止法に違反する取引条件等の差別取扱いが生じたり、取引の相手方の事業活動を制限するおそれがある。
このため、メーカー又は卸売業者が供与するリベート等については、独占禁止法に違反する行為の未然防止という観点からは、供与の基準を明確にし、これを取引の相手方に示すことが望ましい。
第3 廉売問題に関連するその他の規制
有力な小売業者が卸売業者又はメーカーに対し、購買力を濫用して行き過ぎた低価格での納入を強要することや、不当に不利益を与えることとなるような協賛金の負担を要請すること等は、独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当するおそれがある。
公正取引委員会は、有力な小売業者による卸売業者に対する優越的地位の濫用行為に対し、
「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月11日公正取引委員会事務局)、
「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の運用基準(平成17年事務総長通達第9号)、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(平成22年11月30日公正取引委員会)で明らかにした考え方等を踏まえ、厳正に対処することとする。
5 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方
平成22年11月30日 公正取引委員会
はじめに
優越的地位の濫用は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)において、不公正な取引方法の一つとして禁止されている。優越的地位の濫用の規定は、独占禁止法の一部を改正する法律(平成21年法律第51号。以下「独占禁止法改正法」という。)によって、独占禁止法第2条第9項第5号として法定化された(注1)。
(注1)独占禁止法第2条第9項第5号のほか、同項第6号の規定により公正取引委員会が指定する、①すべての業種に適用される「不公正な取引方法」(昭和57年公正取引委員会告示第15号)第13項(取引の相手方の役員選任への不当干渉)、及び②特定業種にのみ適用される不公正な取引方法(以下「特殊指定」という。)にも、優越的地位の濫用の規定が置かれている。
なお、優越的地位の濫用の規定がある特殊指定は次のとおりである。
○ 新聞業における特定の不公正な取引方法
(平成11年公正取引委員会告示第9号)
○ 特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法
(平成16年公正取引委員会告示第1号)
○ 大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法
(平成17年公正取引委員会告示第11号)
独占禁止法第2条第9項第5号の規定は、次のとおりである。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件
を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
独占禁止法改正法が成立したことにより、独占禁止法第2条第9項第5号に該当する優越的地位の濫用であって、一定の条件を満たすものについて、公正取引委員会は、課徴金の納付を命じ
なければならないこととなった(注2)。そこで、優越的地位の濫用に係る法運用の透明性、事業者の予見可能性を向上させる観点から、公正取引委員会は、独占禁止法第2条第9項第5号に該当する優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方を明確化するため、この「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を策定する(注3)(注4)。
(注2)独占禁止法第2条第9項第5号に該当する優越的地位の濫用に対しては、同号の規定のみを適用すれば足りるので、当該行為に独占禁止法第2条第9項第6号の規定により指定する優越的地位の濫用の規定が適用されることはない。
(注3)公正取引委員会は、特定の業種等における優越的地位の濫用等の独占禁止法違反行為の未然防止を図るため、次のガイドライン等を策定・公表してきている。
<優越的地位の濫用に係る主なガイドライン等>
○ 「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の運用基準(平成17年事務総長通達第9号)
○ フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(平成14年4月24日公正取引委員会)
○ 役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針(平成10年3月17日公正取引委員会)
(注4)以下、第1から第4までにおける「優越的地位の濫用」とは、独占禁止法第2条第9項第5号に該当する優越的地位の濫用を指す。
第1 優越的地位の濫用規制についての基本的考え方
1 事業者がどのような条件で取引するかについては、基本的に、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものである。取引当事者間における自由な交渉の結果、いずれか一方の当事者の取引条件が相手方に比べて又は従前に比べて不利となることは、あらゆる取引において当然に起こり得る。
しかし、自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、当該取引の相手方の自由かつ自主的な判断による取引を阻害するとともに、当該取引の相手方はその競争者との関係において競争上不利となる一方で、行為者はその競争者との関係において競争上有利となるおそれがあるものである。このような行為は、公正な競争を阻害するおそれがあることから、不公正な取引方法の一つである優越的地位の濫用として、独占禁止法により規制される(注
5)。
どのような場合に公正な競争を阻害するおそれがあると認められるのかについては、問題となる不利益の程度、行為の広がり等を考慮して、個別の事案ごとに判断することになる。例えば、①行為者が多数の取引の相手方に対して組織的に不利益を与える場合、②特定の取引の相手方に対してしか不利益を与えていないときであっても、その不利益の程度が強い、又はその行為を放置すれば他に波及するおそれがある場合には、公正な競争を阻害するおそれがあると認められやすい。
(注5)当事者間の取引が、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号。以下「下請
法」という。)にいう親事業者と下請事業者の取引に該当する場合であって、下請法に規定する①製造委託、②修理委託、③情報成果物作成委託、④役務提供委託に該当する場合には、下請法の規制の対象となる。下請法に関しては、運用に当たっての基本的な考え方を定めた「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年事務総長通達第18号)を策定・公表している。
2 優越的地位の濫用として問題となる行為とは、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」行われる、独占禁止法第2条第9項第5号イからハまでのいずれかに該当する行為である。
そこで、以下、第2及び第3において、この「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に」の考え方を示した上で、次に、第4において、独占禁止法第2条第9項第5号イからハまでのそれぞれに該当する行為の態様ごとに、優越的地位の濫用の考え方を示す。
また、第2以下において、どのような行為が優越的地位の濫用に該当するのかについて具体的に理解することを助けるために、「具体例」及び「想定例」を掲げている。「具体例」とは、過去の審決又は排除措置命令において問題となった行為等の例である。また、「想定例」とは、あくまでも問題となり得る仮定の行為の例であり、ここに掲げられた行為が独占禁止法第2条第9項第5号に該当すれば、優越的地位の濫用として問題となる。
なお、ここに示されていないものを含め、具体的な行為が優越的地位の濫用として問題となるかどうかは、独占禁止法の規定に照らして個別の事案ごとに判断されるものであることはいうまでもない(注6)。
(注6)親子会社間の取引が優越的地位の濫用として規制の対象となるかについては、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(平成3年7月11日公正取引委員会事務局)の
「(付)親子会社間の取引」記載のとおりである。
第2 「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」の考え方
1 取引の一方の当事者(甲)が他方の当事者(乙)に対し、取引上の地位が優越しているというためには、市場支配的な地位又はそれに準ずる絶対的に優越した地位である必要はなく、取引の相手方との関係で相対的に優越した地位であれば足りると解される。甲が取引先である乙に対して優越した地位にあるとは、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため、甲が乙にとって著しく不利益な要請等を行っても、乙がこれを受け入れざるを得ないような場合である。
2 この判断に当たっては、乙の甲に対する取引依存度、甲の市場における地位、乙にとっての取引先変更の可能性、その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実を総合的に考慮する
(注7)。
(注7)甲が乙に対し、取引上の地位が優越しているかどうかは、次の(1)から(4)までに記載された具体的事実を総合的に考慮して判断するので、大企業と中小企業との取引だけで
なく、大企業同士、中小企業同士の取引においても、取引の一方当事者が他方の当事者に対し、取引上の地位が優越していると認められる場合があることに留意する必要がある。
(1) 乙の甲に対する取引依存度
乙の甲に対する取引依存度とは、一般に、乙が甲に商品又は役務を供給する取引の場合には、乙の甲に対する売上高を乙全体の売上高で除して算出される。乙の甲に対する取引依存度が大きい場合には、乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
(2) 甲の市場における地位
甲の市場における地位としては、甲の市場におけるシェアの大きさ、その順位等が考慮される。甲のシェアが大きい場合又はその順位が高い場合には、甲と取引することで乙の取引数量や取引額の増加が期待でき、乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
(3) 乙にとっての取引先変更の可能性
乙にとっての取引先変更の可能性としては、他の事業者との取引開始や取引拡大の可能性、甲との取引に関連して行った投資等が考慮される。他の事業者との取引を開始若しくは拡大 することが困難である場合又は甲との取引に関連して多額の投資を行っている場合には、乙 は甲と取引を行う必要性が高くなるため、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが 事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
(4) その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実
その他甲と取引することの必要性を示す具体的事実としては、甲との取引の額、甲の今後の成長可能性、取引の対象となる商品又は役務を取り扱うことの重要性、甲と取引することによる乙の信用の確保、甲と乙の事業規模の相違等が考慮される。甲との取引の額が大きい、甲の事業規模が拡大している、甲が乙に対して商品又は役務を供給する取引において当該商品又は役務が強いブランド力を有する、甲と取引することで乙の取り扱う商品又は役務の信用が向上する、又は甲の事業規模が乙のそれよりも著しく大きい場合には、乙は甲と取引を行う必要性が高くなるため、乙にとって甲との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すことになりやすい。
<具体例>
① X社は、チェーン店を全国に6,649店展開しており、その店舗数は我が国におけるコンビニエンス・ストア・チェーン業界において第2位の地位にある。X社のチェーン店の年間売上高の合計は約1兆1,000億円であり、これは、コンビニエンス・ストア・チェーン業界においては第2位、小売業界全体においては第5位の地位を占めている。X社チェーン店の店舗数及び売上高は、毎年増加している。また、X社のチェーン店は、消費者から需要の多い商品をそろえているものとして高い信用を得ている。
X社は、全国的に店舗を展開し、それらの売上高が多く、X社チェーン店が取り扱う日用雑貨品の製造販売業者又は卸売業者(以下「日用品納入業者」という。)にとって極めて有力な取引先であるとともに、日用品納入業者は、自己の販売する商品がチェーン店において取り扱われることにより当該商品に対する消費者の信用度が高まること等から、X社との納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため、X社と継続的な取引関係にある日用品納入業者の大部分は、X社との納入取引を継続する上で、納入する商品の品質、納入価格等の取引条件とは別に、X社からの種々の要請に従わざるを得ない立場にある(平成10年7月30日勧告審決・平成10年(勧)第18号)。
② X銀行は、その年度末の総資産額が約91兆円であり、総資産額につき我が国の銀行業界において第1位の地位にある。
X銀行と融資取引を行っている事業者、特に中小事業者の中には、
・ 金融機関からの借入れのうち、主としてX銀行からの借入れによって資金需要を充足している
・ X銀行からの借入れについて、直ちに他の金融機関から借り換えることが困難である
・ 事業のための土地や設備の購入に当たってX銀行からの融資を受けられる旨が示唆された後、当該土地や設備の購入契約を進めたことから、当該融資を受けることができなければ他の方法による資金調達が困難である
など、当面、X銀行からの融資に代えて、X銀行以外の金融機関からの融資等によって資金手当てをすることが困難な事業者(以下「融資先事業者」という。)が存在する。融資先事業者は、X銀行から融資を受けることができなくなると事業活動に支障を来すこととなるため、融資取引を継続する上で、融資の取引条件とは別に、X銀行からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり、その取引上の地位はX銀行に対して劣っている(平成17年12月26日勧告審決・平成17年(勧)第20号)。
③ X社が自ら経営するコンビニエンスストア(以下「直営店」という。)及びX社のフランチャイズ・チェーンに加盟する事業者(以下「加盟者」という。)が経営するコンビニエンスストア(以下「加盟店」という。)は、一部の地域を除き全国に所在している。店舗数は、直営店が約800店、加盟店が約1万1,200店の合計約1万2,000店であり、年間売上額は、直営店が約1,500億円、加盟店が約2兆4,200億円の合計約2兆5,700億円であるところ、X社は、店舗数及び売上額のいずれについても、我が国においてコンビニエンスストアに係るフランチャイズ事業を営む者の中で最大手の事業者である。これに対し、加盟者は、ほとんどすべてが中小の小売業者である。
X社は、加盟者との間で、加盟店基本契約を締結しているところ、同契約においては、加盟店基本契約の終了後少なくとも1年間は、コンビニエンスストアに係るフランチャイズ事業を営むX社以外の事業者のフランチャイズ・チェーンに加盟することができないこととされている。
X社は、加盟店基本契約に基づき、加盟店で販売することを推奨する商品(以下「推奨商品」という。)及びその仕入先を加盟者に提示している。加盟者が当該仕入先から推奨商品を仕入れる場合はX社のシステムを用いて発注、仕入れ、代金決済等の手続を簡便に
行うことができるなどの理由により、加盟店で販売される商品のほとんどすべては推奨商品となっている。
X社は、加盟店が所在する地区に経営相談員を配置し、加盟店基本契約に基づき、経営相談員を通じて、加盟者に対し、加盟店の経営に関する指導、援助等を行っているところ、加盟者は、それらの内容に従って経営を行っている。
以上の事情等により、加盟者にとっては、X社との取引を継続することができなくなれば事業経営上大きな支障を来すこととなり、このため、加盟者は、X社からの要請に従わざるを得ない立場にある。したがって、X社の取引上の地位は、加盟者に対し優越している(平成21年6月22日排除措置命令・平成21年(措)第8号)。
3 また、優越的地位にある行為者が、相手方に対して不当に不利益を課して取引を行えば、通常、「利用して」行われた行為であると認められる。
第3 「正常な商慣習に照らして不当に」の考え方
「正常な商慣習に照らして不当に」という要件は、優越的地位の濫用の有無が、公正な競争秩序の維持・促進の観点から個別の事案ごとに判断されることを示すものである。
ここで、「正常な商慣習」とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるものをいう。したがって、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならない。
第4 優越的地位の濫用となる行為類型
ここでは、優越的地位の濫用につながり得る行為であることが、独占禁止法第2条第9項第5号イからハまでの規定から明らかな行為を中心に、行為類型ごとに、優越的地位の濫用の考え方について明らかにする。
なお、優越的地位の濫用として問題となるのは、これらの行為類型に限られるものではない。優越的地位の濫用として問題となる種々の行為を未然に防止するためには、取引の対象となる商品又は役務の具体的内容や品質に係る評価の基準、納期、代金の額、支払期日、支払方法等について、取引当事者間であらかじめ明確にし、書面で確認するなどの対応をしておくことが望ましい。
1 独占禁止法第2条第9項第5号イ(購入・利用強制)
独占禁止法第2条第9項第5号イの規定は、次のとおりである。
イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
この規定における「当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務」には、自己の供給する商品又は役務だけでなく、自己の指定する事業者が供給する商品又は役務が含まれる。
また、「購入させる」には、その購入を取引の条件とする場合や、その購入をしないことに対して不利益を与える場合だけではなく、事実上、購入を余儀なくさせていると認められる場
合も含まれる(注8)。
(注8)独占禁止法第2条第9項第5号ロにおける「提供させる」の考え方も、これと同様である。
(1) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務の購入を要請する場合であって、当該取引の相手方が、それが事業遂行上必要としない商品若しくは役務であり、又はその購入を希望していないときであったとしても、今後の取引に与える影響を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
(2) 他方、取引の相手方に対し、特定の仕様を指示して商品の製造又は役務の提供を発注する際に、当該商品若しくは役務の内容を均質にするため又はその改善を図るため必要があるなど合理的な必要性から、当該取引の相手方に対して当該商品の製造に必要な原材料や当該役務の提供に必要な設備を購入させる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
<想定例>
① 購入しなければ相手方との取引を打ち切る、取引数量を削減するなど、今後の取引に影響すると受け取られるような要請をすることにより、購入させること。
② 購買担当者等取引の相手方との取引関係に影響を及ぼし得る者が購入を要請することにより、購入させること。
③ 取引の相手方に対して、組織的又は計画的に購入を要請することにより、購入させること。
④ 取引の相手方から購入する意思がないとの表明があった場合、又はその表明がなくとも明らかに購入する意思がないと認められる場合に、重ねて購入を要請することにより、又は商品を一方的に送付することにより、購入させること。
⑤ 自己が部品の加工を発注する取引の相手方に対し、自己の取引先であるメーカーの製品の販売先を紹介するよう要請し、販売先を紹介することができなかった取引の相手方に対して、当該製品を購入させること。
⑥ 取引の受発注を電子化するに当たって、取引の相手方はその電子化に対応し得るインタ ーネットサービスを既に別の事業者と契約しその提供を受けているため、新たに同サービ スの提供を受ける必要がないにもかかわらず、今後取引を継続しないことを示唆しながら、自己の指定するより高価なインターネットサービスを提供する事業者を利用することを 要請し、当該事業者から利用させること。
<具体例>
① X社は、道内6ホテルにおいて、閑散期における稼働率の向上及び収益確保を目的として、一定期間に限り当該ホテルで使用できる宿泊券について、納入業者等に対し、あ
らかじめ納入業者等ごとに購入を要請する枚数を設定し
・ 文書で宿泊券の購入を要請し、購入の申込みが無いなどの場合には、事業部長ら納入取引等に影響を及ぼし得る者から購入するよう重ねて要請する
・ 宿泊券の購入を要請する文書とともに購入を要請する枚数の宿泊券を納入取引等に影響を及ぼし得る者から手渡す
等の方法により宿泊券を購入するよう要請している。これらの要請を受けた納入業者等の多くは、X社との納入取引等を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされている(平成16年11月18日勧告審決・平成16年(勧)第31号)。
② X銀行は、融資先事業者から新規の融資の申込み又は既存の融資の更新の申込みを受けた場合に、融資に係る手続を進める過程において、融資先事業者に対し、金利スワップの購入を提案し、融資先事業者が同提案に応じない場合に
・ 金利スワップの購入が融資を行うことの条件である旨、又は金利スワップを購入しなければ融資に関して通常設定される融資の条件よりも不利な取扱いをする旨明示する
・ 担当者に管理職である上司を帯同させて重ねて購入を要請するなどにより、金利スワップの購入が融資を行うことの条件である旨、又は金利スワップを購入しなければ融資に関して通常設定される融資の条件よりも不利な取扱いをする旨示唆する
ことにより金利スワップの購入を要請し、融資先事業者に金利スワップの購入を余儀なくさせる行為を行っている(平成17年12月26日勧告審決・平成17年(勧)第20号)。
③ X社は、Y店及びZ店において、毎年開催する販売企画を約1か月間実施するに際し、あらかじめ店舗ごとに設定した販売目標金額を達成するため、Y店及びZ店の仕入担当者から、Y店又はZ店において販売される商品の納入業者及び当該納入業者の従業員に対し、電気製品、衣料品等を購入するよう要請していた。この要請を受けた納入業者及び当該納入業者の従業員の多くは、納入業者がX社との取引を継続して行う立場上、こうした要請に応じざるを得ない状況にあり、当該商品を購入していた(平成21年3月5日排除措置命令・平成21年(措)第3号)。
2 独占禁止法第2条第9項第5号ロ
独占禁止法第2条第9項第5号ロの規定は、次のとおりである。
ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
この規定における「経済上の利益」の提供とは、協賛金、協力金等の名目のいかんを問わず行われる金銭の提供、作業への労務の提供等をいう。
(1) 協賛金等の負担の要請
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、協賛金等の名目
による金銭の負担を要請する場合であって、当該協賛金等の負担額及びその算出根拠、使途等について、当該取引の相手方との間で明確になっておらず、当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、当該取引の相手方が得る直接の利益(注9)等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり、当該取引の相手方に不利益を与えることとなる場合(注10)には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
(注9)「直接の利益」とは、例えば、広告に取引の相手方の納入する商品を掲載するため、広告を作成・配布する費用の一部を協賛金として負担させることが、取引の相手方にとってその納入する商品の販売促進につながる場合など実際に生じる利益をいい、協賛金を負担することにより将来の取引が有利になるというような間接的な利益を含まない。
(注10)この場合は、協賛金等の負担の条件について取引の相手方との間で明確になっていても優越的地位の濫用として問題となる。
イ 事業者が、催事、広告等を行うに当たり、取引の相手方に対し、その費用の一部として協賛金等の負担を要請することがある。このような要請は、流通業者によって行われることが多いが、流通業者が商品の納入業者に協賛金等の負担を要請する場合には、当該費用を負担することが納入商品の販売促進につながるなど当該納入業者にとっても直接の利益となることがある。協賛金等が、それを負担することによって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして、取引の相手方の自由な意思により提供される場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
<想定例>
① 取引の相手方の商品又は役務の販売促進に直接寄与しない催事、売場の改装、広告等のための協賛金等を要請し、これを負担させること。
② 決算対策のための協賛金を要請し、取引の相手方にこれを負担させること。
③ 自己の店舗の新規オープン又は改装オープンに際し、当該店舗の利益を確保するため、事前に負担額、算出根拠、目的等について明確にすることなく、一定期間にわたり、取 引の相手方からの当該店舗に対する納入金額の一定割合に相当する額を協賛金として 負担させること。
④ 一定期間に一定の販売量を達成した場合にリベートの提供を受けることをあらかじめ定めていた場合において、当該販売量を達成しないのに当該リベートを要請し、負担させること。
⑤ 自己の店舗の新規オープンセール又は改装オープンセールにおける広告について、当該広告を行うために実際に要する費用を超える額の協賛金を取引の相手方に要請し、負担させること。
⑥ 物流センター等の流通業務用の施設の使用料(センターフィー)について、その額や算出根拠等について納入業者と十分協議することなく一方的に負担を要請し、当該施設
の利用量等に応じた合理的な負担分を超える額を負担させること。
⑦ 継続して行ってきた取引について、専ら「新規導入協賛金」という名目で金銭を得るために、商品の納入の受入れをいったん取りやめた後、同一の商品につき納入を再開させることにより、取引の相手方に金銭の提供を要請し、これを負担させること。
<具体例>
X社は、自社及び子会社3社の店舗の開店に際し、惣菜等の各仕入部門に係る納入業者に対し、当該店舗の粗利益を確保するため、事前に算出根拠、目的等について明確に説明することなく、「即引き」と称して、開店に当たって当該納入業者に納入させる商品のうち特定のものについて、その納入価格を通常の納入価格に一定割合を乗じた価格等通常の納入価格より低い価格とすることにより、当該価格と通常の納入価格との差額に相当する経済上の利益の提供を要請していた。この要請を受けた納入業者の多くは、X社との納入取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされ、経済上の利益を提供していた(平成20年6月23日排除措置命令・平成20年(措)第15号)。
(2) 従業員等の派遣の要請
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、従業員等(注11)の派遣を要請する場合であって、どのような場合に、どのような条件で従業員等を派遣するかについて、当該取引の相手方との間で明確になっておらず、当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合や、従業員等の派遣を通じて当該取引の相手方が得る直接の利益(注12)等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担となり、当該取引の相手方に不利益を与えることとなる場合(注13)には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
取引の相手方に対し、従業員等の派遣に代えて、これに相当する人件費を負担させる場合も、これと同様である。
(注11)「従業員等」には、当該取引の相手方が当該要請に応じるために雇用したアルバイトや派遣労働者等が含まれる。
(注12)「直接の利益」とは、例えば、取引の相手方の従業員等を小売店に派遣して消費者に販売させることが、取引の相手方が納入する商品の売上げ増加、取引の相手方による消費者ニーズの動向の直接把握につながる場合など実際に生じる利益をいい、従業員等の派遣をすることにより将来の取引が有利になるというような間接的な利益を含まない。
(注13)この場合は、従業員等の派遣の条件について取引の相手方との間で明確になっていても優越的地位の濫用として問題となる。
イ メーカーや卸売業者が百貨店、スーパー等の小売業者からの要請を受け、自己が製造した商品又は自己が納入した商品の販売等のためにその従業員等を派遣する場合がある。こうした従業員等の派遣は、メーカーや卸売業者にとって消費者ニーズの動向を直接把握できる、小売業者にとって専門的な商品知識の不足が補われる等の利点を有している場合が
ある。従業員等の派遣が、それによって得ることとなる直接の利益の範囲内であるものとして、取引の相手方の自由な意思により行われる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。また、従業員等の派遣の条件についてあらかじめ当該取引の相手方と合意(注14)し、かつ、派遣のために通常必要な費用を自己が負担する場合も、これと同様である。
(注14)「合意」とは、当事者の実質的な意思が合致していることであって、取引の相手方との十分な協議の上に当該取引の相手方が納得して合意しているという趣旨である。
「返品」(第4の3(2))における「合意」の考え方も、これと同様である。
<想定例>
① 取引の相手方に対し、派遣費用を負担することなく、自己の利益にしかならない業務を行うよう取引の相手方に要請し、その従業員等を派遣させること。
② 自己の店舗の新規オープンセール又は改装オープンセールに際し、販売業務に従事させるために納入業者の従業員を派遣させ、当該納入業者の納入に係る商品の販売業務に併せて他の納入業者の商品の販売業務にもその従業員を従事させることにより、その従業員を派遣した納入業者に対して、直接の利益等を勘案して合理的であると認められる範囲を超えた負担をさせること。
③ 取引の相手方が従業員等を派遣するための費用を自己が負担するとしながら、派遣費用として一律に日当の額を定めるのみであって、個々の取引の相手方の事情により交通費、宿泊費等の費用が発生するにもかかわらず、当該費用を負担することなく、従業員等を派遣させること。
④ 取引の相手方が従業員等を派遣するための費用を自己が負担する場合において、日当、交通費、宿泊費等の費用を負担するとしながら、日当については、当該従業員等の給与 や当該派遣に係る業務の内容に見合った適正な額を下回る額に一律に定めること。
⑤ 自己の棚卸業務のために雇用したアルバイトの賃金を取引の相手方に負担させること。
⑥ 契約上、取引の相手方が自己の倉庫まで運送することのみが契約内容とされている場合において、当該取引の相手方に対して、あらかじめ契約で定められていない自己の倉庫内における荷役等の業務について、無償で従事させること。
<具体例>
X社は、店舗の新規オープン及び改装オープンに際し、納入業者に対し、当該納入業者の納入に係る商品であるか否かを問わず、当該店舗における商品の陳列、商品の補充、接客等の作業(以下「オープン作業」という。)を行わせることとし、あらかじめ当該納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく、オープン作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗、日時等を連絡し、その従業員等を派遣するよう要請している。この要請を受けた納入業者の多くは、X社との納入取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされ、その従業員等を派遣しており、X社は、当該派遣のために通常必要な費用を負担していない(平成20年6月30
日排除措置命令・平成20年(措)第16号)。
(3) その他経済上の利益の提供の要請
ア 協賛金等の負担の要請や従業員等の派遣の要請以外であっても、取引上の地位が相手方に優越している事業者が、正当な理由がないのに、取引の相手方に対し、発注内容に含まれていない、金型(木型その他金型に類するものを含む。以下同じ。)等の設計図面、特許権等の知的財産権、従業員等の派遣以外の役務提供その他経済上の利益の無償提供を要請する場合であって、当該取引の相手方が今後の取引に与える影響を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる(注15)。
(注15)無償で提供させる場合だけでなく、取引上の地位が優越している事業者が、取引の相手方に対し、正常な商慣習に照らして不当に低い対価で提供させる場合には、優越的地位の濫用として問題となる。この判断に当たっては、「取引の対価の一方的決定」
(第4の3(5)ア)に記載された考え方が適用される。
イ 一方、前記アに列記した経済上の利益が無償で提供される場合であっても、当該経済上の利益が、ある商品の販売に付随して当然に提供されるものであって、当該商品の価格にそもそも反映されているようなときは、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
<想定例>
① 取引に伴い、取引の相手方に著作権、特許権等の権利が発生・帰属する場合に、これらの権利が自己との取引の過程で得られたことを理由に、一方的に、作成の目的たる使用の範囲を超えて当該権利を自己に譲渡させること。
② 発注内容に金型の設計図面を提供することが含まれていないにもかかわらず、取引の相手方に対し、金型の設計図面を無償で提供させること。
③ 補修用部品、金型等自己が保管すべきものについて、自己の一方的な都合により、取引の相手方に無償で保管させ、また、保管に伴うメンテナンス等をさせること。
④ 自己が支給した部品・原材料の不具合、自己が行った設計の不備等自己に責任があるにもかかわらず、最終ユーザーからクレームがあった際、自己は一切責任を負わず、取引の相手方に最終ユーザーに対する損害賠償を含むクレーム対応を無償ですべて行わせること。
⑤ 商品を納入するに当たって、取引の相手方と十分協議することなく一方的に、当該取引の相手方が回収する義務のない産業廃棄物や他の事業者の輸送用具等を取引の相手方に無償で回収させること。
3 独占禁止法第2条第9項第5号ハ
独占禁止法第2条第9項第5号ハの規定は、次のとおりである。
ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
この独占禁止法第2条第9項第5号ハには、「受領拒否」、「返品」、「支払遅延」及び「減額」が優越的地位の濫用につながり得る行為の例示として掲げられているが、それ以外にも、取引の相手方に不利益を与える様々な行為が含まれる。
(1) 受領拒否
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方から商品を購入する契約をした後において、正当な理由がないのに、当該商品の全部又は一部の受領を拒む場合(注 16)であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる(注17)。
(注16)「受領を拒む」とは、商品を納期に受け取らないことである。納期を一方的に延期すること又は発注を一方的に取り消すことにより納期に商品の全部又は一部を受け取らない場合も、これに含まれる。
(注17)取引の相手方から役務の提供を受ける契約をした後において、正当な理由がないのに、当該役務提供の全部又は一部の受取りを拒む場合については、独占禁止法第2条第9項第5号ハ「その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を(中略)変更し、又は取引を実施すること」として優越的地位の濫用の問題となり得る(第4の
3(5)ウ参照)。
イ 他方、①当該取引の相手方から購入した商品に瑕疵がある場合、注文した商品と異なる商品が納入された場合、納期に間に合わなかったために販売目的が達成できなかった場合等、当該取引の相手方側の責めに帰すべき事由がある場合、②商品の購入に当たって当該取引の相手方との合意により受領しない場合の条件を定め、その条件に従って受領しない場合(注18)、③あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て(注19)、かつ、商品の受領を拒むことによって当該取引の相手方に通常生ずべき損失(注20)を負担する場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(注18)当該商品について、正常な商慣習の範囲内で受領を拒む条件を定める場合に限る。
(注19)「同意を得て」とは、了承という意思表示を得ることであって、取引の相手方が納得して同意しているという趣旨である。「返品」(第4の3(2))、「支払遅延」(第
4の3(3))及び「やり直しの要請」(第4の3(5)イ)における「同意を得て」の考え方も、これと同様である。
(注20)「通常生ずべき損失」とは、受領拒否により発生する相当因果関係の範囲内の損失
をいう。例えば、①商品の市況の下落、時間の経過による商品の使用期限の短縮に伴う価値の減少等に相当する費用、②物流に要する費用、③商品の廃棄処分費用が挙げられる。「返品」(第4の3(2))、「支払遅延」(第4の3(3))及び「やり直しの要請」(第4の3(5)イ)における「通常生ずべき損失」の考え方も、これと同様である。
<想定例>
① 取引の相手方が、発注に基づき商品を製造し、当該商品を納入しようとしたところ、売行き不振又は売場の改装や棚替えに伴い当該商品が不要になったことを理由に、当該商品の受領を拒否すること。
② あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして、発注内容と異なること又は瑕疵があることを理由に、当該商品の受領を拒否すること。
③ 特定の仕様を指示して商品の製造を発注した後であるにもかかわらず、自己の顧客から当該商品の注文が取り消されたことや、自己の販売計画を変更したことを理由に、当該商品の受領を拒否すること。
④ 取引の相手方が仕様の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なく仕様を明確にしないまま、取引の相手方に継続して作業を行わせ、その後、取引の相手方が商品を納入しようとしたときになって、発注内容と異なることを理由に、当該商品の受領を拒否すること。
⑤ 発注した後になって、あらかじめ合意した納期を、取引の相手方の事情を考慮せず一方的に短く変更し、その納期までに納入が間に合わなかったとして商品の受領を拒否すること。
⑥ ロット単位で商品の検査を行い、不良品があったロットのみ受領しない契約であるにもかかわらず、あるロットで不良品が見つかった際、他のロットの検査をせず、すべてのロットの受領を拒否すること。
⑦ 取引の相手方に対し、特定の仕様を指示して継続的に部品の製造を発注しているところ、従来の納入時には仕様を満たしているとして検査に合格させていた部品と同水準の部品について、自己の一方的な都合により不要になったことから、耐久性、耐靱性等の部品の性能に全く影響を及ぼさない微細な傷、打痕等を理由に、当該部品の受領を拒否すること。
(2) 返品
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、当該取引の相手方から受領した商品を返品する場合であって、どのような場合に、どのような条件で返品するかについて、当該取引の相手方との間で明確になっておらず、当該取引の相手方にあらかじめ計算できない不利益を与えることとなる場合、その他正当な理由がないのに、当該取引の相手方から受領した商品を返品する場合であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
イ 他方、①当該取引の相手方から購入した商品に瑕疵がある場合、注文した商品と異なる商品が納入された場合、納期に間に合わなかったために販売目的が達成できなかった場合等、当該取引の相手方側の責めに帰すべき事由により、当該商品を受領した日から相当の期間内に、当該事由を勘案して相当と認められる数量の範囲内(注21)で返品する場合、
②商品の購入に当たって当該取引の相手方との合意により返品の条件を定め、その条件に従って返品する場合(注22)、③あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て、かつ、商品の返品によって当該取引の相手方に通常生ずべき損失を自己が負担する場合、④当該取引の相手方から商品の返品を受けたい旨の申出があり、かつ、当該取引の相手方が当該商品を処分することが当該取引の相手方の直接の利益(注23)となる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
(注21)「相当の期間」については、個々の事情により判断されるべきであるが、例えば、直ちに発見できる瑕疵がある場合や注文品と異なっている場合には、商品の受領後、検品に要する標準的な期間内に速やかに返品する必要がある。「減額」(第4の3(4))における「相当の期間」の考え方も、これと同様である。
また、相当の期間内に返品する場合であっても、無制限に返品することは認められない。例えば、瑕疵のある商品や注文と異なる商品であれば、その商品を返品することは認められるが、これに併せて他の商品も(セットでなければ販売の用をなさないものを除く。)返品することは、「相当と認められる数量の範囲内」の返品とは認められない。
(注22)当該商品について、その受領の日から一定の期間内における一定の数量の範囲内での返品又は受領した商品の総量に対して一定の数量の範囲内での返品が、正常な商慣習となっており、かつ、当該商慣習の範囲内で返品の条件を定める場合に限る。
(注23)「直接の利益」とは、例えば、取引の相手方の納入した旧商品であって取引先の店舗で売れ残っているものを回収して、新商品を納入した方が取引の相手方の売上げ増加となるような場合など実際に生じる利益をいい、返品を受けることにより将来の取引が有利になるというような間接的な利益を含まない。
<想定例>
① 展示に用いたために汚損した商品を返品すること。
② 小売用の値札が貼られており、商品を傷めることなくはがすことが困難な商品を返品すること。
③ メーカーの定めた賞味期限とは別に独自にこれより短い販売期限を一方的に定める場合において、この販売期限が経過したことを理由に返品すること。
④ 自己のプライベート・ブランド商品を返品すること。
⑤ 月末又は期末の在庫調整のために返品すること。
⑥ 自己の独自の判断に基づく店舗又は売り場の改装や棚替えを理由に返品すること。
⑦ セール終了後に売れ残ったことを理由に返品すること。
⑧ 単に購入客から返品されたことを理由に返品すること。
⑨ 直ちに発見できる瑕疵であったにもかかわらず、検品に要する標準的な期間をはるか
に経過した後になって、瑕疵があることを理由に取引の相手方に返品すること。
<具体例>
X社は、店舗の閉店又は改装に際し、当該店舗の商品のうち、当該店舗及び他の店舗において販売しないこととした商品について、当該商品の納入業者に対し、当該納入業者の責めに帰すべき事由がなく、あらかじめ当該納入業者との合意により返品の条件を定めておらず、かつ、当該商品の返品を受けることが当該納入業者の直接の利益とならないにもかかわらず、当該商品の返品に応じるよう要請している。この要請を受けた納入業者の多くは、X社との取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされ、当該商品の返品を受け入れており、X社は、当該商品の返品によって当該納入業者に通常生ずべき損失を負担していない(平成21年6月19日排除措置命令・平成21年(措)第7号)。
(3) 支払遅延
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、正当な理由がないのに、契約で定めた支払期日に対価を支払わない場合であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
また、契約で定めた支払期日より遅れて対価を支払う場合だけでなく、取引上の地位が優越している事業者が、一方的に対価の支払期日を遅く設定する場合や、支払期日の到来を恣意的に遅らせる場合にも、当該取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題となりやすい。
イ 他方、あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て、かつ、対価の支払の遅延によって当該取引の相手方に通常生ずべき損失を自己が負担する場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
<想定例>
① 社内の支払手続の遅延、製品の設計や仕様の変更などを理由として、自己の一方的な都合により、契約で定めた支払期日に対価を支払わないこと。
② 分割して納入を受ける取引において、初期納入分の提供を受けた後に対価を支払うこととされているにもかかわらず、一方的に支払条件を変更し、すべてが納入されていないことを理由として対価の支払を遅らせること。
③ 商品の提供が終わっているにもかかわらず、その検収を恣意的に遅らせることなどにより、契約で定めた支払期日に対価を支払わないこと。
④ 取引に係る商品又は役務を自己が実際に使用した後に対価を支払うこととされている場合に、自己の一方的な都合によりその使用時期を当初の予定より大幅に遅らせ、これを理由として対価の支払を遅らせること。
⑤ 非常に高額な製品・部品等の納入を受けている場合において、当初、契約で一括払いとしたにもかかわらず、支払の段階になって自己の一方的な都合により数年にわたる分割払いとし、一括払いに応じないこと。
(4) 減額
ア 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、商品又は役務を購入した後において、正当な理由がないのに、契約で定めた対価を減額する場合であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる。
契約で定めた対価を変更することなく、商品又は役務の仕様を変更するなど対価を実質的に減額する場合も、これと同様である。
イ 他方、①当該取引の相手方から購入した商品又は提供された役務に瑕疵がある場合、注 文内容と異なる商品が納入され又は役務が提供された場合、納期に間に合わなかったため に販売目的が達成できなかった場合等、当該取引の相手方側の責めに帰すべき事由により、当該商品が納入され又は当該役務が提供された日から相当の期間内に、当該事由を勘案し て相当と認められる金額の範囲内(注24)で対価を減額する場合、②対価を減額するため の要請が対価に係る交渉の一環として行われ、その額が需給関係を反映したものであると 認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越 的地位の濫用の問題とはならない。
(注24)相当の期間内に対価を減額する場合であっても、無制限に対価を減額することは認められない。例えば、商品に瑕疵がある場合であれば、その瑕疵の程度に応じて正当に評価される金額の範囲内で減額を行う必要があるが、これを超えて減額を行うことは、「相当と認められる金額の範囲内」の対価の減額とは認められない。
<想定例>
① 商品又は役務の提供を受けた後であるにもかかわらず、業績悪化、予算不足、顧客からのキャンセル等自己の一方的な都合により、契約で定めた対価の減額を行うこと。
② あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして、発注内容と異なる又は瑕疵があることを理由に、納入価格の値引きをさせること。
③ 自己の一方的な都合により取引の対象となる商品若しくは役務の仕様等の変更、やり直し又は追加的な提供を要請した結果、取引の相手方の作業量が大幅に増加することとなるため、当該作業量増加分に係る対価の支払を約したにもかかわらず、当初の契約で定めた対価しか支払わないこと。
④ セールで値引販売したことを理由に、又は当該値引販売に伴う利益の減少に対処するために、値引販売した額に相当する額を取引の相手方に値引きさせること。
⑤ 毎月、一定の利益率を確保するため、当該利益率の確保に必要な金額を計算して、それに相当する額を取引の相手方に値引きさせること。
⑥ 商品の製造を発注した後であるにもかかわらず、自社で策定したコスト削減目標を達成するために必要な金額を計算して、それに相当する額を取引の相手方に値引きさせること。
⑦ 自己の要請に基づいて設備投資や人員の手配を行うなど、取引の相手方が自己に対する商品又は役務の提供の準備のための費用を負担しているにもかかわらず、自己の一方
的な都合により、当該商品又は役務の一部の取引を取りやめ、契約で定めた対価から取引の減少分に係る対価の減額を行うこと。
⑧ 同一商品が他店で安く販売されていることを理由に、納入業者と協議することなく、自店と他店の販売価格の差額分を納入価格から差し引いた対価しか支払わないこと。
⑨ 消費税・地方消費税相当額を支払わないことにより、又は支払時に端数切捨てを行うことにより、契約で定めた対価の減額を行うこと。
⑩ 自己の一方的な都合による設計変更、図面提供の遅延等があったにもかかわらず、取引の相手方の納期延長を認めず、納期遅れのペナルティの額を差し引いた対価しか支払わないこと。
<具体例>
X社は、食品、菓子及び雑貨の各仕入部門が取り扱っている商品について、商品回転率が低いこと、店舗を閉店することとしたこと、季節商品の販売時期が終了したこと又は陳列棚からの落下等により商品が破損したことを理由として、商品の割引販売を行うこととし、割引販売を行うこととした商品の納入業者に対し、その納入価格から当該割引販売前の価格に100分の50を乗じるなどの方法により算出した額の値引きをするよう要請していた。この要請を受けた納入業者の多くは、X社との納入取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされ、値引きをしていた(平成20年5月23日排除措置命令・平成20年(措)第11号)。
(5) その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等
前記第4の1、第4の2及び第4の3(1)から(4)までの行為類型に該当しない場合であっても、取引上の地位が優越している事業者が、取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、優越的地位の濫用として問題となる。
一般に取引の条件等に係る交渉が十分に行われないときには、取引の相手方は、取引の条件等が一方的に決定されたものと認識しがちである。よって、取引上優越した地位にある事業者は、取引の条件等を取引の相手方に提示する際、当該条件等を提示した理由について、当該取引の相手方へ十分に説明することが望ましい。
ア 取引の対価の一方的決定
(ア) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、一方的に、著しく低い対価又は著しく高い対価での取引を要請する場合であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念して当該要請を受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる(注25)。
この判断に当たっては、対価の決定に当たり取引の相手方と十分な協議が行われたかどうか等の対価の決定方法のほか、他の取引の相手方の対価と比べて差別的であるかどうか、取引の相手方の仕入価格を下回るものであるかどうか、通常の購入価格又は販売価格との乖離の状況、取引の対象となる商品又は役務の需給関係等を勘案して総合的に
判断する。
(注25)取引の対価の一方的決定は、独占禁止法第2条第9項第5号ハの「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定(中略)すること。」に該当する。
(イ) 他方、①要請のあった対価で取引を行おうとする同業者が他に存在すること等を理由 として、低い対価又は高い対価で取引するように要請することが、対価に係る交渉の一 環として行われるものであって、その額が需給関係を反映したものであると認められる 場合、②ある品目について、セール等を行うために通常よりも大量に仕入れる目的で、通常の購入価格よりも低い価格で購入する場合(いわゆるボリュームディスカウント)など取引条件の違いを正当に反映したものであると認められる場合には、正常な商慣習 に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
<想定例>
① 多量の発注を前提として取引の相手方から提示された単価を、少量しか発注しない場合の単価として一方的に定めること。
② 納期までの期間が短い発注を行ったため、取引の相手方の人件費等のコストが大幅に増加したにもかかわらず、通常の納期で発注した場合の単価と同一の単価を一方的に定めること。
③ 通常の発注内容にない特別の仕様を指示したり、配送頻度の変更を指示したりするなどしたため、取引の相手方の作業量が増加し、当該取引の相手方の人件費等のコストが大幅に増加したにもかかわらず、通常の発注内容の場合の単価と同一の単価を一方的に定めること。
④ 自己の予算単価のみを基準として、一方的に通常の価格より著しく低い又は著しく高い単価を定めること。
⑤ 一部の取引の相手方と協議して決めた単価若しくは不合理な基準で算定した単価を他の取引の相手方との単価改定に用いること、又は取引の相手方のコスト減少を理由としない定期的な単価改定を行うことにより、一律に一定比率で単価を引き下げ若しくは引き上げて、一方的に通常の価格より著しく低い若しくは著しく高い単価を定めること。
⑥ 発注量、配送方法、決済方法、返品の可否等の取引条件に照らして合理的な理由がないにもかかわらず特定の取引の相手方を差別して取り扱い、他の取引の相手方より著しく低い又は著しく高い対価の額を一方的に定めること。
⑦ セールに供する商品について、納入業者と協議することなく、納入業者の仕入価格を下回る納入価格を定め、その価格で納入するよう一方的に指示して、自己の通常の納入価格に比べて著しく低い価格をもって納入させること。
⑧ 原材料等の値上がりや部品の品質改良等に伴う研究開発費の増加、環境規制への対策などにより、取引の相手方のコストが大幅に増加したにもかかわらず、従来の単価と同一の単価を一方的に定めること。
⑨ ある店舗の新規オープンセールを行う場合に、当該店舗への納入価格のみならず、
自己が全国展開している全店舗への納入価格についても、著しく低い納入価格を一方的に定めること。
⑩ 取引の相手方から、社外秘である製造原価計算資料、労務管理関係資料等を提出させ、当該資料を分析し、「利益率が高いので値下げに応じられるはず」などと主張し、著しく低い納入価格を一方的に定めること。
<具体例>
X社は、年2回行われる特別感謝セール及び年間約50回行われる火曜特売セールに際 し、一部の店舗において、売上げ増加等を図るため、当該店舗の仕入担当者から、仲卸 業者に対し、当該セールの用に供する青果物について、あらかじめ仲卸業者との間で納 入価格について協議することなく、例えば、火曜特売セールの前日等に、チラシに掲載 する大根、きゅうり、トマト等の目玉商品を連絡し、同商品について仲卸業者の仕入価 格を下回る価格で納入するよう一方的に指示する等して、当該セールの用に供する青果 物と等級、産地等からみて同種の商品の一般の卸売価格に比べて著しく低い価格をもっ て通常時に比べ多量に納入するよう要請している。この要請を受けた仲卸業者の多くは、 X社との納入取引を継続して行う立場上、その要請に応じることを余儀なくされている
(平成17年1月7日勧告審決・平成16年(勧)第34号)。
イ やり直しの要請
(ア) 取引上の地位が相手方に優越している事業者が、正当な理由がないのに、当該取引の相手方から商品を受領した後又は役務の提供を受けた後に、取引の相手方に対し、やり直しを要請する場合であって、当該取引の相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなり、優越的地位の濫用として問題となる(注26)(注27)。
(注26)「やり直し」は、独占禁止法第2条第9項第5号ハの「取引の相手方に不利益となるように取引の条件を(中略)変更し、又は取引を実施すること。」に該当する。
(注27)取引の相手方から商品を受領する前又は役務の提供を受ける前に、給付内容を変更し、当初の給付内容とは異なる作業をさせる場合については、「減額」(第4の
3(4)参照)又は「その他取引の相手方に不利益となる取引条件の設定等」(第4の3(5)ウ参照)として優越的地位の濫用の問題となり得る。
(イ) 他方、①商品又は役務の内容が発注時点で取り決めた条件に満たない場合、②あらかじめ当該取引の相手方の同意を得て、かつ、やり直しによって当該取引の相手方に通常生ずべき損失を自己が負担する場合、③具体的な仕様を確定させるために試作品を作製することを含む取引において、当該試作品につきやり直しを要請し、かつ当該やり直しに係る費用が当初の対価に含まれていると認められる場合には、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとならず、優越的地位の濫用の問題とはならない。
<想定例>
① 商品又は役務の受領前に、自己の一方的な都合により、あらかじめ定めた商品又は役務の仕様を変更したにもかかわらず、その旨を取引の相手方に伝えないまま、取引の相手方に継続して作業を行わせ、納入時に仕様に合致していないとして、取引の相手方にやり直しをさせること。
② 委託内容について取引の相手方に確認を求められて了承したため、取引の相手方がその委託内容に基づき製造等を行ったにもかかわらず、給付内容が委託内容と異なるとして取引の相手方にやり直しをさせること。
③ あらかじめ定められた検査基準を恣意的に厳しくして、発注内容と異なること又は瑕疵があることを理由に、やり直しをさせること。
④ 取引の相手方が仕様の明確化を求めたにもかかわらず、正当な理由なく仕様を明確にしないまま、取引の相手方に継続して作業を行わせ、その後、取引の相手方が商品を納入したところ、発注内容と異なることを理由に、やり直しをさせること。
ウ その他
(ア) 前記第4の3(1)から(4)まで並びに第4の3(5)ア及びイの行為類型に該当しない場合であっても、取引上の地位が優越している事業者が、一方的に、取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合に、当該取引の相手方に正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることとなるときは、優越的地位の濫用として問題となる。
(イ) 次に掲げる想定例は、通常、これまでに述べた行為類型のいずれにも当てはまらないものと考えられるが、独占禁止法第2条第9項第5号ハに該当すれば、優越的地位の濫用として問題となる。
<想定例>
① 取引の相手方が取引に係る商品を実際に使用し、又は役務の提供を実際に受けた後 に対価の支払を受けることとされている場合において、自己の一方的な都合により、当該取引の相手方がまだ実際に商品を使用していない又はまだ役務の提供を実際に 受けていないにもかかわらず、当該取引の相手方に対価を前倒しして支払わせること。
② 特定の仕様を指示して部品の製造を発注し、これを受けて取引の相手方が既に原材料等を調達しているにもかかわらず、自己の一方的な都合により、当該取引の相手方が当該調達に要した費用を支払うことなく、部品の発注を取り消すこと。
③ 取引の相手方に対し、新たな機械設備の導入を指示し、当該機械設備の導入後直ちに一定数量を発注することを説明して発注を確約し、当該取引の相手方が当該機械設備の導入等の取引の実現に向けた行動を採っているのを黙認していたにもかかわらず、自己の一方的な都合により、発注数量を著しく減少する又は発注を取り消すこと。
④ 取引の相手方に対し、債務超過等業績が不振な会社の振り出した手形、手形サイトが著しく長い手形等の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難な手形を交付し、通常よりも割高な割引料を負担させること。
⑤ 取引の相手方に対し掛け売りに伴う債権保全のために必要な金額を超えた、著しく
高額な保証金を一方的に定め、当該保証金を預託させること。
⑥ 取引の相手方が納期までに納品できなかった場合又は取引の相手方が納入した商品に瑕疵があった場合に、当該取引の相手方に対して課すペナルティについて、その額や算出根拠等について当該取引の相手方と十分協議することなく一方的に定め、納品されて販売していれば得られた利益相当額又は当該瑕疵がなければ得られた利益相当額を超える額を負担させること。
(ウ) なお、次のとおり、フランチャイズ・チェーンの本部が、加盟者に対し、見切り販売の取りやめを余儀なくさせ、加盟者が自らの合理的な経営判断に基づいて自己の負担を軽減する機会を失わせている行為が、優越的地位の濫用として問題となったことがある
(注28)。
(注28)このような行為も、独占禁止法第2条第9項第5号ハに該当する行為である。なお、フランチャイズ取引における優越的地位の濫用についての考え方の詳細については、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(平成 14年4月24日公正取引委員会)」を参照されたい。
<具体例>
X社は、自己のフランチャイズ・チェーンの加盟者が経営するコンビニエンスストアで廃棄された商品の原価相当額の全額が加盟者の負担となる仕組みの下で、
ア 経営相談員は、加盟者がデイリー商品(品質が劣化しやすい食品及び飲料であって、原則として毎日店舗に商品が納入されるものをいう。以下同じ。)の見切り販売を行おうとしていることを知ったときは、当該加盟者に対し、見切り販売を行わないようにさせる
イ 経営相談員は、加盟者が見切り販売を行ったことを知ったときは、当該加盟者に対し、見切り販売を再び行わないようにさせる
ウ 加盟者が前記ア又はイにもかかわらず見切り販売を取りやめないときは、経営相談員の上司に当たる従業員らは、当該加盟者に対し、加盟店基本契約の解除等の不利益な取扱いをする旨を示唆するなどして、見切り販売を行わないよう又は再び行わないようにさせる
など、見切り販売を行おうとし、又は行っている加盟者に対し、見切り販売の取りやめを余儀なくさせ、もって、加盟者が自らの合理的な経営判断に基づいて廃棄に係るデイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせている(平成21年6月22日排除措置命令・平成21年(措)第8号)。
6 不当景品類及び不当表示防止法(抄)
(景品類の制限及び禁止)
第三条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
(不当な表示の禁止)
第四条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
2 内閣総理大臣は、事業者がした表示が前項第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、第六条の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示とみなす。
(協定又は規約)
第十一条 事業者又は事業者団体は、内閣府令で定めるところにより、景品類又は表示に関する事項について、内閣総理大臣及び公正取引委員会の認定を受けて、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択及び事業者間の公正な競争を確保するための協定又は規約を締結し、又は設定することができる。これを変更しようとするときも、同様とする。
7 一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限
(昭和 52 年3月1日 公正取引委員会告示第5号)改正 平成8年2月 16 日 公正取引委員会告示第2号
平成 19 年3月7日 公正取引委員会告示第9号
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第三条の規定に基づき、一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限を次のように定め、昭和五十二年四月一日から施行する。
1 一般消費者に対して懸賞(「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(昭和五十二年公正取引委員会告示第三号)第一項に規定する懸賞をいう。)によらないで提供する景品類の価額は、景品類の提供に係る取引の価額の十分の二の金額(当該金額が二百円未満の場合にあつては、二百円)の範囲内であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない。
2 次に掲げる経済上の利益については、景品類に該当する場合であつても、前項の規定を適用しない。
一 商品の販売若しくは使用のため又は役務の提供のため必要な物品又はサービスであって、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
二 見本その他宣伝用の物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
三 自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
四 開店披露、創業記念等の行事に際して提供する物品又はサービスであつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの
備考 不当景品類及び不当表示防止法第三条の規定に基づく特定の種類の事業における景品類の提供に関する事項の制限の告示で定める事項については、当該告示の定めるところによる。
8 懸賞による景品類の提供に関する事項の制限
(昭和 52 年3月1日 公正取引委員会告示第3号)改正 昭和 56 年6月6日 公正取引委員会告示第 13 号
平成8年2月 16 日 公正取引委員会告示第1号
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第三条の規定に基づき、懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和三十七年公正取引委員会告示第五号)の全部を次のように改正する。
1 この告示において「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。
一 くじその他偶然性を利用して定める方法
二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法
2 懸賞により提供する景品類の最高額は、懸賞に係る取引の価額の二十倍の金額(当該金額が十万円を超える場合にあつては、十万円)を超えてはならない。
3 懸賞により提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の百分の二を超えてはならない。
4 前二項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合において、懸賞により景品類を提供するときは、景品類の最高額は三十万円を超えない額、景品類の総額は懸賞に係る取引の予定総額の百分の三を超えない額とすることができる。ただし、他の事業者の参加を不当に制限する場合は、この限りでない。
一 一定の地域における小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合
二 一の商店街に属する小売業者又はサービス業者の相当多数が共同して行う場合。ただし、中元、年末等の時期において、年三回を限度とし、かつ、年間通算して七十日の期間内で行う場合に限る。
三 一定の地域において一定の種類の事業を行う事業者の相当多数が共同して行う場合
5 前三項の規定にかかわらず、二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供は、してはならない。
9 商品の原産国に関する不当な表示
昭和 48 年 10 月 16 日 公正取引委員会告示第 34 号
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第四条第三号の規定により、商品の原産国に関する不当な表示を次のように指定し、昭和四十九年五月一日から施行する。
1 国内で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品が国内で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの
一 外国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示二 外国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示
三 文字による表示の全部又は主要部分が外国の文字で示されている表示
2 外国で生産された商品についての次の各号の一に掲げる表示であつて、その商品がその原産国で生産されたものであることを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの
一 その商品の原産国以外の国の国名、地名、国旗、紋章その他これらに類するものの表示二 その商品の原産国以外の国の事業者又はデザイナーの氏名、名称又は商標の表示
三 文字による表示の全部又は主要部分が和文で示されている表示
備考
1 この告示で「原産国」とは、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行なわれた国をいう。
2 商品の原産地が一般に国名よりも地名で知られているため、その商品の原産地を国名で表示することが適切でない場合は、その原産地を原産国とみなして、この告示を適用する。
10 おとり広告に関する表示
(平成5年4月 28 日 公正取引委員会告示第 17 号)
制定 昭和 57 年6月 10 日 公正取引委員会告示第 13 号全部変更 平成5年4月 28 日 公正取引委員会告示第 17 号
不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)第四条第三号の規定に基づき、おとり広告に関する表示(昭和五十七年公正取引委員会告示第十三号)の全部を次のように変更し、平成五年五月十五日から施行する。
一般消費者に商品を販売し、又は役務を提供することを業とする者が、自己の供給する商品又は役務の取引(不動産に関する取引を除く。)に顧客を誘引する手段として行う次の各号の一に掲げる表示
一 取引の申出に係る商品又は役務について、取引を行うための準備がなされていない場合その他実際には取引に応じることができない場合のその商品又は役務についての表示
二 取引の申出に係る商品又は役務の供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
三 取引の申出に係る商品又は役務の供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品又は役務についての表示
四 取引の申出に係る商品又は役務について、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品又は役務についての表示
1 資源の有効な利用の促進に関する法律
(事業者等の責務)
第四条 工場若しくは事業場(建設工事に係るものを含む。以下同じ。)において事業を行う者及び物品の販売の事業を行う者(以下「事業者」という。)又は建設工事の発注者は、その事業又はその建設工事の発注を行うに際して原材料等の使用の合理化を行うとともに、再生資源及び再生部品を利用するよう努めなければならない。
2 事業者又は建設工事の発注者は、その事業に係る製品が長期間使用されることを促進するよう努めるとともに、その事業に係る製品が一度使用され、若しくは使用されずに収集され、若しくは廃棄された後その全部若しくは一部を再生資源若しくは再生部品として利用することを促進し、又はその事業若しくはその建設工事に係る副産物の全部若しくは一部を再生資源として利用することを促進するよう努めなければならない。
(指定表示事業者の表示の標準となるべき事項)
第二十四条 主務大臣は、指定表示製品に係る再生資源の利用を促進するため、主務省令で、指定表示製品ごとに、次に掲げる事項につき表示の標準となるべき事項を定めるものとする。
一 材質又は成分その他の分別回収に関し表示すべき事項
二 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して指定表示製品の製造、加工又は販売の事業を行う者(その事業の用に供するために指定表示製品の製造を発注する事業者を含む。以下「指定表示事業者」という。)が遵守すべき事項
2 (略)
2 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(抄)
(定義)
第二条 この法律において「容器包装」とは、商品の容器及び包装(商品の容器及び包装自体が有償である場合を含む。)であって、当該商品が費消され、又は当該商品と分離された場合に不要になるものをいう。
2 この法律において「特定容器」とは、容器包装のうち、商品の容器(商品の容器自体が有償である場合を含む。)であるものとして主務省令で定めるものをいう。
3 この法律において「特定包装」とは、容器包装のうち、特定容器以外のものをいう。
4~10 (略)
11 この法律において「特定容器利用事業者」とは、その事業(収益事業であって主務省令で定めるものに限る。以下同じ。)において、その販売する商品について、特定容器を用いる事業者であって、次に掲げる者以外の者をいう。
一 国
二 地方公共団体
三 特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人又は特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、政令で定めるもの 四 中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第五項に規定する小規模企業者その他の政令で定める者であって、その事業年度(その期間が一年を超える場 合は、当該期間をその開始の日以後一年ごとに区分した各期間)における政令で定め
る売上高が政令で定める金額以下である者
12 この法律において「特定容器製造等事業者」とは、特定容器の製造等の事業を行う者であって、前項各号に掲げる者以外の者をいう。
13 この法律において「特定包装利用事業者」とは、その事業において、その販売する商品について、特定包装を用いる事業者であって、第十一項各号に掲げる者以外の者をいう。
(特定容器利用事業者の再商品化義務)
第十一条 特定容器利用事業者は、毎年度、主務省令で定めるところにより、その事業において用いる特定容器(第十八条第一項の認定に係る特定容器及び本邦から輸出される商品に係る特定容器を除く。次項第二号ロを除き、以下この条において同じ。)が属する容器包装区分に係る特定分別基準適合物について、再商品化義務量の再商品化をしなければならない。
2・3 (略)
(特定容器製造等事業者の再商品化義務)
第十二条 特定容器製造等事業者は、毎年度、主務省令で定めるところにより、その製造等をする特定容器(第十八条第一項の認定に係る特定容器及び本邦から輸出される特定容器を除く。以下この条において同じ。)が属する容器包装区分に係る特定分別基準適合物について、再商品化義務量の再商品化をしなければならない。
2 (略)
(特定包装利用事業者の再商品化義務)
第十三条 特定包装利用事業者は、毎年度、主務省令で定めるところにより、その事業において用いる特定包装(第十八条第一項の認定に係る特定包装及び本邦から輸出される商品に係る特定包装を除く。以下この条において同じ。)が属する容器包装区分に係る特定分別基準適合物について、再商品化義務量の再商品化をしなければならない。
2 (略)
(再商品化したものとみなされる場合)
第十四条 特定事業者が、前三条に規定する再商品化義務量の全部又は一部の再商品化について指定法人と第二十三条第一項に規定する再商品化契約を締結し、当該契約に基づく自らの債務を履行したときは、当該特定事業者は、その委託した量に相当する当該特定分別基準適合物の量について再商品化をしたものとみなす。
(自主回収の認定)
第十八条 特定事業者は、その用いる特定容器、その製造等をする特定容器又はその用いる特定包装を自ら回収し、又は他の者に委託して回収するときは、主務大臣に申し出て、その行う特定容器又は特定包装の回収の方法が主務省令で定める回収率を達成するために適切なものである旨の認定を受けることができる。
2~5 (略)
【関係法令】
○ 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律施行規則
(自主回収率)
第二十条 法第十八条第一項の主務省令で定める回収率は、おおむね百分の九十とする。
(帳簿)
第三十八条 特定容器利用事業者、特定容器製造等事業者及び特定包装利用事業者は、主務省令で定めるところにより、帳簿を備え、特定容器を用いた商品の販売、特定容器の製造等又は特定包装を用いた商品の販売及び分別基準適合物の再商品化に関し主務省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない。
3 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(抄)
(目的)
第一条 この法律は、食品循環資源の再生利用及び熱回収並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量に関し基本的な事項を定めるとともに、食品関連事業者による食品循環資源の再生利用を促進するための措置を講ずることにより、食品に係る資源の有効な利用の確保及び食品に係る廃棄物の排出の抑制を図るとともに、食品の製造等の事業の健全な発展を促進し、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
(基本方針)
第三条 主務大臣は、食品循環資源の再生利用及び熱回収並びに食品廃棄物等の発生の抑制及び減量(以下「食品循環資源の再生利用等」という。)を総合的かつ計画的に推進するため、政令で定めるところにより、食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めるものとする。
2~4 (略)
(事業者及び消費者の責務)
第四条 事業者及び消費者は、食品の購入又は調理の方法の改善により食品廃棄物等の発生の抑制に努めるとともに、食品循環資源の再生利用により得られた製品の利用により食品循環資源の再生利用を促進するよう努めなければならない。
【メ モ】