同社は、ポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域のテーマに「若者の育成」を、ネガティブ・インパクトを低減する領域のテーマに「廃水の中和処理による環境負荷の軽減 」、「CO₂排出量削減と大気中へのNOx排出をなくす」を、ポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域とネガティブ・インパクトを低減する領域の両方に関連する領域の テーマに「責任ある鉱物調達への取組みを継続する」、「仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境を整備する」、「最終廃棄物削減とペーパレス化の促進」を特定し、それ...
xx貴金属工業株式会社との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約締結について
~持続可能な地域社会の実現に向けてお客さまのサステナビリティ経営を支援~
南都銀行(頭取 xx xx)は、2024 年 3 月 25 日にxx貴金属工業株式会社(以下、同社)と自行組成の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結いたしましたのでお知らせいたします。
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」は、お客さまの企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブならびにネガティブな影響を特定し、ネガティブな効果を緩和しながらポジティブな効果を増大させることで、持続的な社会の実現を目指すご融資です。
同社は、ポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域のテーマに「若者の育成」を、ネガティブ・インパクトを低減する領域のテーマに「廃水の中和処理による環境負荷の軽減」、「CO₂排出量削減と大気中へのNOx排出をなくす」を、ポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域とネガティブ・インパクトを低減する領域の両方に関連する領域のテーマに「責任ある鉱物調達への取組みを継続する」、「仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境を整備する」、「最終廃棄物削減とペーパレス化の促進」を特定し、それぞれに目標とKPIを設定しました。当行は、定期的に達成状況や管理状況を確認し、対話やフォローアップを通じてサステナビリティ経営の実現をサポートします。
なお、本件及び本制度のフレームワークが国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の提唱する「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合していることについて、株式会社日本格付研究所により第三者意見を取得しています。
当行グループは本商品を通じて地域全体でのSDGs達成に向けた取組をリードしていくことで、持続可能な地域の成長・発展に貢献してまいります。
【本件の概要】
契約日 | 2024 年 3 月 25 日 | |
契約先 | 住所 | xxxxxxxxxx 000 xx |
企業名 | xx貴金属工業株式会社 | |
代表者 | 代表取締役 xx xx | |
設立年月日 | 1975 年 3 月 24 日 | |
資本金 | 25 百万円 | |
融資金額 | 500 百万円 | |
資金使途 | 運転資金 |
【本件に関するお問合せ先】
法人ソリューション部 xx・xx ℡ 0000-00-0000
こうむら
経営企画部(広報担当)xx・xx
℡ 0000-00-0000
評価対象企業:xxx金属工業株式会社
2024年3月25日
南都コンサルティング株式会社
1.借入金の概要 | 2 |
2.事業概要 | 2 |
企業理念等 | 3 |
事業概要 | 4 |
サステナビリティ基本方針 | 12 |
サステナビリティ活動 | 12 |
3.包括的分析 | 16 |
UNEP FIの定めたインパクト評価ツールにより確認したインパクト一覧 | 16 |
xx貴金属工業の個別要因を加味したインパクトの特定 | 17 |
インパクトに係る戦略的意図やコミットメント | 19 |
4.KPIの決定 | 20 |
ポジティブインパクトとネガティブインパクトの内容 | 22 |
5.インパクトの種類、SDGs、貢献分類、影響を及ぼす範囲 | 26 |
6.サステナビリティ経営体制(推進体制、管理体制、実績) | 29 |
7.南都銀行によるモニタリングの頻度と方法 | 29 |
南都コンサルティング株式会社は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が公表しているポジティブインパクトファイナンス原則に則り、xx貴金属工業株式会社の包括的なインパクト分析を行った。
株式会社南都銀行は、本評価書で特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援するため、xx貴金属工業株式会社に対し、ポジティブインパクトファイナンスを実施する。
1.借入金の概要
借入人の名称 | xx貴金属工業株式会社 |
借入金の金額 | 500,000,000円 |
借入金の資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 3年 |
2.事業概要
企業名 | xx貴金属工業株式会社 |
本社所在地 | xxxxxxxxxx000xx |
従業員数 | 42名(2023年12月末) |
売上高 | 332億円(2023年3月期) |
資本金 | 25百万円 |
主たる事業内容 | 貴金属地金の売買 貴金属地金の加工及び合金の製造販売貴金属の精製 貴金属を原料とする化学薬品の製造販売 歯科医療用貴金属合金の製造販売 |
所属団体 | 一般社団法人日本金地金流通協会日本歯科材料工業協同組合 貴金属化成品協会 |
沿革 | 1963年 xx貴金属工業所創立 1971年 本社屋及び第一工場開設 1975年 xx貴金属工業株式会社へ法人成 2007年 xxx工場開設 2022年 技術センター開設 |
◼ 企業理念等
xx貴金属工業株式会社(以下、xx貴金属工業)は、貴金属の専門メーカーとして、より豊かな暮らしを支える製品を提供できるようにすると共に、希望あるxxに貢献したいとの願いを込め、以下の経営理念を掲げている。
経営理念 |
1. 貴金属が持つ機能と魅力を限りなく追及しお客様に提供する 2. すべての社員が自らの能力をその職務において存分に発揮できるように、職務、職場、身辺を整える 3. 地域ひいては社会全体の利益となり、かつ決して害を及ぼさないように広い視野を持って企業活動を行う |
また同社は、社会的責任を果たすため、「環境理念」「品質・環境包括方針」を以下の通り定めている。
環境理念 |
世界遺産の宝庫、xx奈良に立地する当社は、環境保全を最も重要な課題とし、環境負荷の低減に積極的に取り組み、周辺地域に密着した環境の保全に努めます。 |
品質・環境包括方針 |
xx貴金属工業株式会社は、お客様に満足していただける製品・サービスを継続的、安定的に提供すると共に、環境保全にかかわる事業活動を通じて循環型社会の形成に努めます。 1. 品質・環境包括マネジメントシステムを構築し、継続的に改善を図り、顧客満足度の向上と、環境汚染の予防に努めます。 2. 法的要求事項、及び当社が同意するその他の要求事項を遵守します。 3. 当社の事業活動が品質・環境に与える影響を考慮し、目標を定め、定期的に見直します。 ① お客様のご要望を理解し、製品に反映する活動を重点テーマとします。 ② 誠実な営業・技術サービス活動、品質管理の徹底を通じて、製品及びサービスの安全性を確保します。 ③ 地球温暖化防止のため、省エネルギーに努めます。 ➃ 環境汚染予防のため、有害な化学物質の管理及び削減に努めます。 ⑤ 持続可能な資源の利用のため、リサイクル及び有効活用を推進します。 ⑥ 環境保全活動を通じ、生物多様性の保全及び生態系の保護に努めます。 4. この品質・環境包括方針は一般に公開し、教育を通じて全社員に周知徹底を図ります。 |
◼ 事業概要
xx貴金属工業の事業は、4事業で構成されている。具体的には、①貴金属地金の販売買取及び加工品の製造販売を行う「貴金属地金事業」、②貴金属を原料とした試薬や工業薬品の製造販売を行う「貴金属化成品事業」、③歯科用貴金属合金の製造販売を行う「歯科用貴金属合金事業」、➃貴金属含有製品のリサイクルを中心とした「貴金属リサイクル事業」である。①・②は主に工業用であり、③は医療用で使用されている
何れの事業分野においても、厳しい品質管理に基づき製品を製造すると共に、営業スタッフと技術スタッフがきめ細やかに連携し、顧客のニーズを的確に捉え迅速な販売を行っている。加えて、貴金属のリサイクルにも取組んでおり、「貴金属」という限りある資源を守り、「貴金属」を通じて人々の豊かな暮らしに貢献すべく事業を展開している。
以下で各事業分野の詳細を説明する。
【①貴金属地金事業:主に工業用で使用】
貴金属地金事業では、主に貴金属地金の加工品製造販売と貴金属地金の販売買取を行っている。地金製造部門では、多種の加工設備を有し、冶金技術に長けた熟練の職人により、熱間加工・冷間加工を施し、圧延、笹吹き加工をはじめ線材、フープ材など用途に応じてあらゆる形状・サイズに加工を行っている。常に安定した品質の製品を顧客へ届けることを重視し作業スタッフの多能工化や技術伝承に取り組んでいる。材料については国際的に信用の高い調達先とのみ取引を行うなど、半世紀以上かけて築き上げてきた信頼をゆるぎないものとし事業に取り組んでいる。
また、金地金の健全な取引きと正しい知識の普及を図るために設立された「一般社団法人日本金地金流通協会」に加入し、厳しい審査基準をクリアした会員にのみ認められる正会員(全国で23社が正会員として認定されている)に認定され、同社が取扱う金地金(インゴット)には信頼のシンボルとなる刻印が打たれており、不変の価値ある資産として顧客へ提供している。
貴金属地金の加工品
製品 | 内容 |
蒸着材料 | パソコンのメモリやCPUなどで使用されガラスやシリコン基板の上に置く薄膜を蒸着法で形成する際に使用する材料 各種貴金属薄膜や真空蒸着用として、99.99%の銀粒などを製造販売 |
メッキ材料 | 薄い金属の膜を金属や非金属の製品表面に加工した材料 当社では、主にメッキ液への銀補充用の銀板として使用されるメッキ用銀極板(アノード)を製造販売している お客様のニーズに基づき、金属を柔らかくする「焼なまし」といった熱処理や穴あけ加工を実施 |
その他材料 | コンクリート製品の補強用に使用される線材、プレス加工で使用されるフープ材、装飾・宝飾用の各種貴金属合金の製造販売を実施 |
貴金属地金の販売買取
金地金の購入売買 | 金地金の健全な取引きの普及を目的とする、一般社団法人日 本金地金流通協会の正会員として、金地金をはじめ、銀地金、プラチナ地金、パラジウム地金の売買を行っている |
【②貴金属化成品事業:主に工業用で使用】
貴金属化成品事業では、工業用・装飾用メッキ材料導電ペースト、写真感光材、試薬などに利用されている銀化合物を主力商品として、硝酸銀やシアン化銀カリウム、硫酸銀等の薬品を、管理されたプラントで製造している。また、金、プラチナ、パラジウムを使用したシアン化第一金カリウム、塩化白金(Ⅳ)酸・六水和物、塩化パラジウム等の高品質な製品も提供している。同社は、長い業歴の中で培った経験と高度な製造ノウハウを用いて、品質の安定性を確保するとともに、少量多品種から大量生産まで顧客のあらゆる要望に応えるべく事業に取り組んでいる。
貴金属化成品
製品 | 使用用途など |
硝酸銀 | 銀ペースト材料、試薬、写真感光材、銀鏡等に使用
|
シアン化銀 | 銀メッキ材料、電気接点材料、LED反射板などに使用
|
シアン化銀カリウム | 銀メッキ材料、電気接点材料、LED反射板などに使用 |
硫酸銀 | 試薬、触媒、着色剤などに使用
|
使用用途など | |
酸化銀 | 酸化銀電池、銀ペースト材料、触媒、試薬などに使用 |
銀粉 | 装飾用、粉末冶金用材料などに使用 |
シュウ酸銀 | 銀ナノ粒子、銀ペースト材料、導電材料、医薬などに使用 |
シアン化第一金カリウム | 金メッキ材料、電子工業製品、装飾品などに使用
|
亜硫酸金ナトリウム溶液 | 金メッキ材料などに使用 |
塩化パラジウム 他 | 触媒製造、試薬、メッキ材料、導電塗料、導電ペーストなどに使用
|
【③歯科用貴金属合金事業:主に医療用に使用】
歯科用貴金属合金事業では、医療機器の品質保証に対する国際標準規格であるISO13485の品質マネジメントシステムや「医薬品・医療機器等の品質、有効性、及び安全性の確保等に関する法律」に基づき、金銀パラジウム合金やメタルセラミック修復用貴金属材料など、安全性に優れた信頼性の高い多彩な歯科用貴金属合金を開発・提供している。独自の冶金技術を用いて、強度、鋳造性、審美性、コストなど、顧客の様々なニーズに応えるべく豊富な商品ラインナップを整えて、事業を行っている。
(金銀パラジウム合金・銀合金・銀パラジウム合金)
製品 | 特色など |
オオウラニューキャスト12 | 微結晶質で鋳造性・操作性を向上させた、扱いやすい金銀パラジウム合金 |
オーラル3 | 優れた鋳造性と強度を持った、経済的なメタル |
オーラルライト | 高い強度、粘靭性を有し、充分な縁端強度が得られる銀合金 |
クリエイトシルバー | 白金族元素を含まず、経済性を追求したスタンダードクラス |
特色など | |
P・Gシルバー | パラジウムとガリウムを添加し、耐蝕性を追求した銀合金 |
ライトプラス | パラジウム配合の特性を維持し硬さHv180のハードタイプ |
オーラルシルバーP | パラジウムを配合し、強度と耐変色性に優れ、研磨性にも優れた銀合金 |
マイティーシルバー | プラチナとインジウムの配合により、耐変色性・粘り強さ・伸びに優れ、メタルコアー・インレーに適したハイクラス銀合金 |
インパラロイ タイプ3 | 銀・パラジウムを主成分とした、スタンダードな銀パラジウム合金 |
(金合金・白金加金合金)
製品 | 特色など |
OSG-72 | 時効硬化性を持ち、幅広い症例に対応するパラジウムフリー の黄金色ハイカラットメタル |
特色など | |
OSG-56 | 明るい淡金色を持ち、密度が小さく経済的なメタル |
OP-K18 | xxな黄金色を持ち、経済性を追求した18金のスタンダード |
(メタルセラミック修復用貴金属材料)
製品 | 特色など |
ステップ53 | トータルバランス(機械特性・経済性)に優れた、ミディアムクラスの代表的な製品 |
セレクト50 | ろう着操作が容易な、経済性に優れたメタル |
ステップ39 | 金、プラチナ合計40%upの含有で50%クラスと変わらない操作性を実現 |
ステップ12 | 金の含有が12%で、密度が小さく経済的な低カラット系メタル |
製品) | 特色など |
ファインステージ | 鋳造性・操作性に優れたパラジウム系メタル |
【➃貴金属リサイクル事業】
xx貴金属工業は、「貴金属は産出量が限られた天然資源であり、それらを有効活用する循環型社会を形成することで、供給の安定化を図り、地球環境の保全に貢献することが、専門メーカーである当社の責務である」と考えている。この責務を果たすために同社では、これまで培ってきた技術と信用を生かし、貴金属含有製品を効率的に回収・精製・分析し、製造原料として顧客へ返却することにより、ランニングコストの低減をはかれることから、顧客へのメリットも大きいリサイクル事業の強化に取り組んでいる。
◼ サステナビリティ基本方針
xx貴金属工業は、2023年8月7日に、国連が提唱する
「持続可能な開発目標(SDGs)の趣旨に賛同し、事業活動を通じて、SDGs達成に向けた取り組みを継続することを目的に、「SDGs行動宣言」を発表している。
行動宣言では、「効率的な働き方を心がけるとともに、従業員が働き続けられる職場環境づくりを進めること」、
「人と環境にやさしい安心・安全なものづくりに取り組み循環型社会の形成に努めること」、「環境に配慮した製品を提供するとともに、社内にてコンプライアンスを徹底すること」を宣言している。
このような取り組みを行うことで、「お客様や地域社会に貢献できる企業」、「従業員が安心して働き続けられる企業」となり、サステナブルな社会の実現に貢献する方針を示している。
◼ サステナビリティ活動
xx貴金属工業は、社外・社内で様々なサステナビリティ活動を行っている。
【地域xx牽引企業に選定】
xx貴金属工業は、地域経済の好循環を実現するとともに地域経済を活性化することが、地域社会の持続的な発展につながると考え事業活動を行ってきた。その結果、2018年12月25日、経済産業省より「地域xx牽引企業」に選定されている。
【地域の清掃活動を実施】
定期的に事務所や工場周辺の水路、地元の公園の清掃活動に全社員が取り組んでいる。この清掃活動を通じて街を美しくすることに貢献するとともに、地域の方々との交流を深めている。
【地域の住環境に配慮した騒音対策】
xx貴金属工業の事務所・工場の周辺には、住宅も多数立地している。同社は貴金属を取扱うため工場内から騒音が発生するが、その騒音を極力抑えるべく「防振装置」や「防音カバー」の設置により、騒音発生を抑制し、地域住民に配慮して事業活動を行っている。
【環境に配慮した適切な廃水の処理】
製品の製造過程で発生する廃水について、従前は法令・条例に則り河川放流を行っていたが、下水道と接続し、法令・条例に加え厳しい社内基準をクリアした廃水のみを排出することで、水質保全と生物の生態系保護に取り組んでいる。
【CO2排出削減への取組み】
製品の製造過程において、従前は重油を燃焼して加熱する「重油炉」を使用していたが、CO2排出削減を目的に「電気炉」へ変更し、CO2排出量を削減することで、地球温暖化防止に取り組んでいる。
【環境保全への取組み】
自然環境への影響に配慮し、国際標準化機構(ISO)により設けられた環境保全を目的とする
ISO14001の認定を受け、環境理念を定め、品質・環境包括方針を定め環境保全に努めている。
【品質マネジメントシステムの認証取得】
貴金属専門メーカーとしての社会的責任を果たすために、品質マネジメントシステムである ISO9001をはじめ、医療機器に対する品質マネジメントシステムのISO13485を取得し、品質・環境包括方針を定め、環境保全に努めている。
【紛争鉱物への取組み】
非人道行為と武装勢力の資金源を断つことを目的に2010年に米国で成立した「金融規制改革法」において、コンゴ民主共和国や周辺国で採掘された、金をはじめ、スズ、タンタル、タングステンの 4種類の鉱物について調査し、顧客に報告することが必要となった。
xx貴金属工業は、金の調達において、人権侵害やテロ、マネーロンダリング等が横行する紛争地域および高リスク地域からの調達を避け、環境、倫理などに配慮する目的で責任ある鉱物イニシアチブ(RMI: Responsible Minerals Initiative)の責任ある鉱物調達に関る基本方針を作成し、責任ある鉱物調達(RMAP:Responsible Minerals Assurance Process)の認定を受けている。
責任ある鉱物調達に関わる基本方針
OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデューデリジェンスガイダンス(OECD指針)に従い、OECD指針の附属書IIに提示される全てのリスクに関わる
金、およびそれらの鉱石ならびに派生物を、紛争地域および高リスク地域から直接的または間接的に原料として購入、又は使用しないよう努めます。
1.総則
当社は、人権侵害、テロリストへの資金提供、マネーロンダリング、汚職、その他違反行為などのあらゆるリスクや不正に関わる組織の資金源となる恐れのある紛争地域及び高リスク地域(CAHRA
)からの鉱物(金)の採掘、取引、取り扱い、輸出に関して、直接的・間接的に支援しません。リスクや不正は次の内容を含みます。
1.■鉱物の採掘、輸送、取引に関連した人権侵害
1. ① あらゆる形態の拷問、残虐、非人道的で品位を傷付ける扱い。
2. ② あらゆる形態の強制労働。これは懲罰の脅威のもとで何者かに強要されたものであり、当人が自発的に行なうものではない労働やサービスの提供である。
3. ③ 最悪の形態の児童労働。
4. ➃ xxな性的暴力など、その他の著しい人権侵害および虐待。
5. ⑤ 戦争犯罪もしくはその他の深刻な国際的人道法の違反行為、人道に対する犯罪、もしくは集団虐殺。 2.■非政府武装集団に対する直接的または間接的支援 3.■違法行為を行う公的または民間の保安隊に対する直接的または間接的支援
4.■贈収賄および鉱物原産地の詐称
5.■政府に支払うべき税金、手数料、採掘権料の隠蔽
2.管理体制
本方針を実施するためのマネジメントシステムを構築します。マネジメントシステムを管理運用し、システム全体のレビューに関する責任を負うものとして、責任者を選任します。
3.高リスク調達に関わる判断基準
当社は、CAHRAを特定するための手順を定めて実施します。CAHRAからの金、およびそれらの鉱物ならびに派生物の調達を高リスクの原料調達と判断します。
4.調達経路及びサプライヤーの評価
関連サプライヤーにデューデリジェンスを実施し、サプライヤーおよび調達経路に関するリスク評価を継続的に行ないます。もしサプライヤーが高リスクに関わっていることが明らかになった場合
、適切なリスク軽減措置を実施します。
1.5.取引のモニタリングと記録
1. (1) 当社では、受領した金、およびそれらの鉱物ならびに派生物が、サプライヤーから入手した情報と整合性が取れていることを確認します。
2. (2) 金、およびそれらの鉱物ならびに派生物の受領から出荷に至る工程の日付、質量を記録し、保管します。
6.教育訓練の実施
責任ある鉱物の調達に関わる全ての従業員に、必要とされる教育訓練を実施します。
7.第三者監査の実施
本方針に関わる事項が確実に実行されていることを確認するため、定期的に第三者監査を実施します。
以上
2013年6月20日制定
2023年9月8日改訂
【ユースエール認定の取得】
xx貴金属工業では、若者の採用・育成に積極的に取り組み、青少年の雇用促進に努めた結果、2022年8月1日に厚生労働省より、「ユースエール認定」を取得している。
「ユースエール認定」とは、若者の採用
・育成に積極的で、若者の雇用管理の状況などが優良な中小企業に対し、「青少年の雇用の促進等に関する法律(通称:若者雇用促進法)」に基づき、2015年10月より厚生労働大臣が認定している制度である。
【なら女性活躍推進倶楽部への登録】
「なら女性活躍推進倶楽部」とは、奈良県が主体となり、行政・関係団体等が一緒になって、「男性も女性も働きがいを感じ、いきいきと働き続けることができる職場をつくる」ことを目的に発足した組織である。大浦貴金属工業は、上記の目的に賛同し会員登録を行い、「男性も女性も誰もが働きやすい職場環境づくり」に取り組んでいる。
<大浦貴金属工業の女性活躍推進宣言>
・産休・育休を取得しやすいように、職場環境を整えます。
・重量物の運搬を減らし、身体への負担を軽減します。
・衛生面を整え、気持ちよく働ける職場にします。
【奈良県社員・シャイン職場づくり推進企業の認定取得】
奈良県は、2007年度より育児・介護との両立や仕事と家庭の両立、ワーク・ライフ・バランスなど、柔軟かつ多様な働き方を推進し、良質の雇用環境整備に取り組んでいる県内企業を「奈良県社員・シャイン職場づくり推進企業」として、登録している。大浦貴金属工業では、「奈良県社員・シャイン職場づくり推進企業」の趣旨に賛同し、登録申請を行い、2018年5月31日に認定を取得している。
取組内容
労働関係法令を遵守し、次の取組を推進している。
1.仕事と家庭の両立を推進している
・育児のための勤務時間短縮等の措置短時間勤務制度(3歳未満)
所定外労働をさせない制度(小学校就学始期まで)
2.雇用の継続、創出を推進している
・若年者の雇用対策として、過去3年間にインターンシップの受け入れ実績がある(高校生1名の受け入れ)
3.ハラスメント対策を推進している
・パワーハラスメント対策を推進している
【くるみん認定取得】
次世代育成対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業に対し、厚生労働省が「子育てサポート企業」として認定を行っているが、大浦貴金属工業はこの基準を満たし、2023年4月27日に厚生労働省より「くるみん認定」を取得している。
3.包括的分析
PIF原則およびモデル・フレームワークに基づき、南都コンサルティング株式会社が定め、所定のインパクト評価の手続きを実施した。
評価に際し使用した業種は、「2420基礎貴金属およびその他の非鉄金属の製造」と「38廃棄物の収集、処理、処分活動。材料回収」である。
まず、UNEP FIの定めたインパクト評価ツールを用い、ポジティブインパクトおよびネガティブインパクトが発現するインパクトトピックとして「健康および安全性」「水」「エネルギー」「健康と衛生」「コネクティビティ」「文化と伝統」「雇用」「賃金」「社会的保護」「零細・中小企業の繁栄」「インフラ」「気候の安定性」「水域」「大気」「土壌」「生物種」「生息地」「資源強度」
「廃棄物」を確認している。事業別にUNEP FIの分析ツールによりポジティブ、ネガティブな項目を判定したものが以下となる。
◼ UNEP FIの定めたインパクト評価ツールにより確認したインパクト一覧
インパクトエリア | インパクトトピック | ポジティブ | ネガティブ |
人格と人の安全保障 | 紛争 | ||
現代奴隷 | |||
児童労働 | |||
データプライバシー | |||
自然災害 | |||
健康および安全性 | 健康および安全性 | ||
資源とサービスの入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 | 水 | ||
食料 | |||
エネルギー | |||
住居 | |||
健康と衛生 | |||
教育 | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
コネクティビティ | |||
文化と伝統 | |||
ファイナンス | |||
生計 | 雇用 | ||
賃金 | |||
社会的保護 | |||
平等と正義 | ジェンダー平等 | ||
民族・人種平等 | |||
年齢差別 | |||
その他の社会的弱者 | |||
強固な制度・平和・安定 | 法の支配 | ||
市民的自由 | |||
健全な経済 | セクターの多様性 | ||
零細・中小企業の繁栄 | |||
インフラ | インフラ | ||
経済収束 | 経済収束 | ||
気候の安定性 | 気候の安定性 | ||
生物多様性と生態系 | 水域 | ||
大気 | |||
土壌 | |||
生物種 | |||
生息地 | |||
サーキュラリティ | 資源強度 | ||
廃棄物 |
◼ 大浦貴金属工業の個別要因を加味したインパクトの特定
「紛争」「現代奴隷」「児童労働」:責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)の責任ある鉱物調達の認定を受けるなど、ネガティブインパクトの抑制に資する取り組みがあるため追記する。
「水」:貴金属リサイクル事業において抽出されているが、当該事業において水のアクセスにつながるものなどポジティブインパクトに資する取り組みがないことから削除する。
「エネルギー」:貴金属リサイクル事業において抽出されているが、当該事業においてエネルギー創出は手がけておらず、非有害物質の処理と処分でバイオマスへのアクセスにつながる可能性も低いことからポジティブインパクトに資する取り組みがないものと判断し削除する。
「健康と衛生」:貴金属リサイクル事業において抽出されているが、事業としてヘルスケア関連の提供などがなく、ポジティブインパクトに資する取り組みがないことから削除する。
「教育」: 「青少年の雇用の促進等に関する法律(通称:若者雇用促進法)」に基づく「ユースエール認定」を2022年8月1日に取得するなど、ポジティブインパクトに資する取り組みがあることから追記する。
「コネクティビティ」:貴金属事業において抽出されているが、情報通信関連の提供などポジティブインパクトに資する取り組みがないことから削除する。
「文化と伝統」:貴金属リサイクル事業において抽出されているが、文化遺産保存への寄与などポジティブインパクトに資する取り組みがないため削除する。
「賃金」:ポジティブインパクトに資する取り組みがなく、低収入や不規則な収入といったネガティブインパクトにも該当しないことから、両インパクトを削除する。
「ジェンダー平等」:次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」を2023年4月27日に取得するなど、ネガティブインパクトの抑制に資する取り組みがあるため追記する。
「インフラ」:貴金属事業において抽出されているが、インフラ建設への提供などポジティブインパクトに資する取り組みがないことから削除する。
「水域」:貴金属リサイクル事業においてポジティブインパクト、全事業においてネガティブインパクトが抽出されている。当該事業において水質の改善につながるポジティブインパクトに資する取り組みがないが、全事業において環境負荷軽減に向けた取り組みがあることから、ネガティブインパクトのみ特定しポジティブインパクトは削除する。
「大気」:貴金属リサイクル事業においてポジティブインパクト、全事業においてネガティブインパクトが抽出されている。当該事業において大気汚染の改善につながるポジティブインパクトに資する取り組みがないものの、全事業においてNOxの排出抑制を行うなど、ネガティブインパクトの抑制に資する取り組みがあることから、ポジティブインパクトのみ削除する。
「土壌」:貴金属リサイクル事業においてポジティブインパクト及びネガティブインパクトが抽出されているが、同社の事業において土壌汚染の発生がなく、事業との関連性がないことからポジティブインパクトおよびネガティブインパクトともに削除する。
「生物種」「生息地」:貴金属リサイクル事業においてポジティブインパクトおよびネガティブインパクトが抽出されているが、同社の行っている事業内容と関連性がないことから、両インパクトを削除する。
各インパクトトピックに対して、ポジティブインパクトの増大やネガティブインパクトの低減に貢献すべき活動内容を確認すると共に、SDGsのゴール及びターゲットへの対応関係についても併せて評価した。特定したインパクト一覧は、次頁の通りである。
インパクトトピック | ポジティブ | ネガティブ |
紛争 | ● | |
現代奴隷 | ● | |
児童労働 | ● | |
健康および安全性 | ● | |
教育 | ● | |
雇用 | ● | |
社会的保護 | ● | |
ジェンダー平等 | ● | |
零細・中小企業の繁栄 | ● | |
気候の安定性 | ● | |
水域 | ● | |
大気 | ● | |
資源強度 | ● | ● |
廃棄物 | ● | ● |
◼ インパクトに係る戦略的意図やコミットメント
インパクトとPIF原則及びモデル・フレームワークにより特定したインパクトの項目の関連は以下になる。
№ | インパクト | 特定したインパクトの項目 |
① | 責任ある鉱物調達への取組みを継続する | ポジティブインパクト「零細・中小企業の繁栄」 ネガティブインパクト「紛争」「現代奴隷」 「児童労働」 |
② | 仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環 境を整備する | ポジティブインパクト「雇用」 ネガティブインパクト「健康および安全性」 「社会的保護」「ジェンダー平等」 |
③ | 廃水の中和処理による環境負荷の軽減 | ネガティブインパクト「水域」 |
➃ | 若者の育成 | ポジティブインパクト「教育」「雇用」 |
⑤ | CO2排出量削減と大気中へのNOx排出をなくす | ネガティブインパクト「気候の安定性」「大気」 |
⑥ | 最終廃棄物削減とペーパレス化の促進 | ポジティブインパクト「資源強度」「廃棄物」 ネガティブインパクト「資源強度」「廃棄物」 |
4.KPIの決定
大浦貴金属工業の事業活動が経済・社会・環境に影響を与えるインパクトについて、重点目標に基づく取り組みと指標を設定した。以下がその要約となる。
テーマ | 内容 | KPI | SDGs |
責任ある鉱物調達への取組みを継続する | サプライチェーン上滞りな く貴金属地金が流通するよ う、複数の大手企業を介し、原産地を世界各国に分散し ながら調達することを継続 する 社員に対し責任ある鉱物調達に関する教育の実施 取引先に対し「責任ある鉱物調達に関する取組み」を要請する | 責任ある鉱物調達(RMI)の責任ある鉱物保証プロセス(RMAP)の認定を継続する | |
仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境を整備する | 安全衛生委員の巡回を実施、労働環境の改善と労働災害 を減少させる 自社の両立支援制度の利用状況と成果の確認 年次有給休暇取得の推奨 | 労災事故発生件数0件にする 2027年3月までに「健康経営優良法人」の認定取得 | |
廃水の中和処理による環境負荷の軽減 | 法令より厳しい社内基準を クリアした廃水のみ排出 | 社 内 基 準 で あ るpH6 ~ pH8 を 100%維持する |
内容 | KPI | SDGs | |
若者の育成 | 高校生インターンシップ等の就業体験機会を提供する 社員に対するOJTの実施人事面談の実施 | 高校生インターンシップ等の就業体験者を年1人以上を受け入れるインターンシップ体験者やインターンシップを輩出した学校の生徒の中から3年間で1名以上採用する | |
CO2排出量削減と大気中へのNOx排出をなくす | CO2 排出量削減のため CO2排出量の可視化を行い、CO2排出量削減を意識させる NOxについては、回収装置を用いて適切に処理し大気中に排出しない | 2024年からCO2排出量の可視化に取り組み、2030年までに2024年度比10%削減する | |
最終廃棄物削減と ペーパレス化の促進 | 循環型社会を促進するため、貴金属のリサイクルに取り組むとともに、調達する貴金属もリサイクル由来の比率を増やし、新たな資源開発による環境負荷を低減する 社内資料の電子化を進めペーパレスを促進する | 総地金投入量に占める、自社リサイクル品を含むリサイクル地金の比率を2030年までに2024年度比 10%高める 紙の使用量を2023年度比5%削減する |
◼ ポジティブインパクトとネガティブインパクトの内容責任ある鉱物調達への取組みを継続する
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブインパクト・ネガティブインパクト |
インパクトトピック | ポジティブインパクト「零細・中小企業の繁栄」 ネガティブインパクト「紛争」「現代奴隷」「児童労働」 |
影響を与えるSDGsの目標 |
|
内容・対応方針 | • サプライチェーン上滞りなく貴金属地金が流通するよう、複数の大手企業を介し、原産地を世界各国に分散しながら調達することを継続する • 社員に対し責任ある鉱物調達に関する教育を行い、責任ある鉱物の取り組みに関する理解と意欲の向上を図る • 取引基本契約の中で、責任ある鉱物に関する取り組みを求める • 顧客に対して紛争非関与に向けた取り組みを要請する |
毎年モニタリングする目標とKPI | 責任ある鉱物調達( RMI ) の責任ある鉱物保証プロセス (RMAP)の認定を継続する |
大浦貴金属工業は、サプライチェーン上で滞りなく貴金属地金が流通するよう、複数の大手企業を介し、原産地を世界各国に分散しながら調達することを継続するとともに、顧客へ安定供給し続けることで同社の事業安定化も図られている。
また、責任ある鉱物調達に関しては、コンゴ民主共和国および周辺地域におけるタングステン、タンタル、金、スズの鉱物資源の採掘は紛争の資金源になる可能性が指摘されている。紛争に伴う児童労働や強制労働などの人権侵害を防止するため、経済協力開発機構(OECD)による「紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス
」が制定され、企業にサプライチェーンでの責任ある取り組みが求められている。また2010年に米国で成立した「金融規制改革法」において、非人道行為と武装勢力の資金源を断つことを目的にタングステン、タンタル、金、スズの4種類の鉱物について調査し顧客に報告することが必要となった。
大浦貴金属工業は、金の調達において、人権侵害やテロ、マネーローンダリング等が横行する紛争地域及び高リスク地域からの調達を避け、環境・倫理などに配慮する目的で責任ある鉱物イニシアチブ( RMI : Responsible Minerals Initiative ) の責任ある鉱物保証プロセス( RMAP : Responsible Minerals Assurance Process)の認定を継続し、ネガティブインパクトである
「紛争」「現代奴隷」「児童労働」へ対応する方針を示している。
仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境を整備する
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブインパクト・ネガティブインパクト |
インパクトトピック | ポジティブインパクト「雇用」 ネガティブインパクト「健康および安全性」「社会的保護」 「ジェンダー平等」 |
影響を与えるSDGsの目標 |
|
内容・対応方針 | • 仕事と家庭の両立を目的に自社で定めた両立支援制度の利用状況とその成果等を把握し、改善点がないか毎年検討する • 残業時間については、法令遵守はもとより多能工化やDX化による業務の効率化を進め残業自体の発生を抑制する • 安全衛生委員が職場内の巡回を実施し、労働環境の改善と労働災害を減少させる • 年次有給休暇の取得状況を確認し、取得を促す • 全社員が定期健康診断を受診し、健康の保持増進に努める • 「くるみん認定」を継続し、女性も含め誰もが働きやすい職場の維持に取り組む • 上記取り組みを通じて、最終的に「健康経営優良法人」認定を 取得する |
毎年モニタリングする目標とKPI | • 労災事故発生件数0件にする • 2027年3月までに「健康経営優良法人」認定を取得する |
大浦貴金属工業では、「仕事と家庭の両立を支援することで誰もが働きやすい職場環境を創出した
い」との思いから、同社独自で「両立支援制度」という制度を整えている。この両立支援制度では、
「育児休暇・介護休暇・病気やけがによる休暇」を取得しやすい環境づくりを行うと共に、休業・休職中の社員の職場復帰がスムーズに進むよう、定期的に社内情報の共有等を行っている。また残業時間に関しては、法令を遵守(36協定の遵守)していることはもとより、今後社内のDX化と多能工化による業務の効率化を進め、残業自体の発生を抑制する。
労災事故発生の未然防止策として、安全衛生委員による職場内の定期巡回と改善指導を徹底し、事故発生の未然防止を図っている。また事故が発生した場合には、すぐに同社内で安全衛生委員会を開き安全衛生管理委員と現場管理者・担当者間で、徹底した原因の追究と改善策を練り、社内で共有するとともに、PDCAを回すことで事故の再発防止を図っている。
健康や社会的保護の取り組みとして、法令遵守はもとより、年次有給休暇の取得日数を1人当たり平均10日以上取得することを目標に定め、その取得状況の把握と取得の促進を図っている。また全社員の健康保持・増進を目的とした定期健康診断の受診促進、「くるみん認定」継続などに取り組み、最終的に「健康経営優良法人」の認定を取得することで、誰もが安心・安全に働き続けられる雇用環境の整備に努める方針を示している。
(年次有給休暇の1人当たり平均取得日数の推移) (単位:日)
2019年度実績 | 2020年度実績 | 2021年度実績 | 2022年度実績 | 2023年度見込 | 2024年度目標 | 2025年度目標 | 2026年度目標 |
12.9 | 10.3 | 10.4 | 14.0 | 10.0 | 10.0 | 10.0 | 10.0 |
廃水の中和処理による環境負荷の軽減
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブインパクト |
インパクトトピック | ネガティブインパクト「水域」 |
影響を与えるSDGsの目標 |
|
内容・対応方針 | • 工場から排出される廃水を、中和処理により中和したうえで下水道へ排出することにより、環境への負荷を軽減する |
毎年モニタリングする目標とKPI | • 毎日水質管理を行い社内基準であるpH6~pH8を100%維持する |
大浦貴金属工業では、工場内で発生する廃水に対し、法令より厳しい社内基準を設け、中和処理により中和した廃水のみ排出している。法令より厳しい基準をクリアした廃水のみを排出することにより、環境負荷の軽減に貢献している。
若者の育成
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブインパクト |
インパクトトピック | ポジティブインパクト「教育」「雇用」 |
影響を与えるSDGsの目標 |
|
内容・対応方針 | • 地元の高校生に対しインターンシップ等の就業体験機会を提供 する • インターンシップ体験者やインターンシップを輩出した学校の生徒の中から採用(地元採用)を実施し地域の雇用創出に貢献する • 入社した社員に対するOJTを実施する • 人事面談を通じて社員の意識や悩みを共有する |
毎年モニタリングする目標とKPI | • インターンシップ等の就業体験者を年1人以上を受け入れる • インターンシップ体験者やインターンシップを輩出した学校の生徒の中から3年間で1名以上採用する |
大浦貴金属工業では、2017年から奈良県内の高校を訪問し、高校生インターンシップが受入可能であることを提示している。この取り組みを通じて、「働くことの意義」や「経済的な自立と様々なことにチャレンジする大切さ」を伝えていきたいと考えている。また、学生に同社の仕事への理解と興味を持ってもらい、その中から人材を採用することで、地域の雇用創出にも貢献したいと考えているため、今後も上記取り組みを継続していく方針を示している。
また入社した社員向けのOJTについては、製造工程において各作業ごとに熟練した指導者が丁寧に伴走し指導する体制を整えている。加えて人事担当者との定期的な面談を実施し、課題や悩み共有すると共に、悩みについては指導者へフィードバックし指導に活かすなど、人材の育成に
取り組んでいる。
CO2排出量削減と大気中へのNOx排出をなくす
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブインパクト |
インパクトトピック | ネガティブインパクト「気候の安定性」「大気」 |
影響を与えるSDGsの目標 | |
内容・対応方針 | • CO2排出量削減のためCO2排出量の可視化を行い、CO2排出量削減を意識する • NOxも排出されるが、廃ガス回収装置を用いて適切に処理し回収することで、大気中にNOxを排出しないようにする |
毎年モニタリングする目標とKPI | • 2024年からCO2排出量の可視化に取り組み、2030年までに 2024年度比10%削減する |
大浦貴金属工業では、現在CO2可視化に向けてソフトウェア導入を検討している。今後、CO2の可視化ができるソフトウェアを導入し早期にCO2の可視化を行うと共に、2030年までにCO2排出量を 2024年度比10%削減を目指している。この取り組みを継続することで、地球温暖化防止に貢献する方針である。またNOxについても、回収装置を用いて適切に処理しており、今後も大気中に排出しない方針である。
最終廃棄物削減とペーパレス化の促進
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブインパクト・ネガティブインパクト |
インパクトトピック | ポジティブインパクト「資源強度」「廃棄物」ネガティブインパクト「資源強度」「廃棄物」 |
影響を与えるSDGsの目標 | |
内容・対応方針 | • 循環型社会を促進するため、貴金属のリサイクルに取り組むとともに、調達する貴金属もリサイクル由来の比率を増やし、新たな資源開発による環境負荷を低減する • 社内資料の電子化を進めペーパレスを促進する |
毎年モニタリングする目標 とKPI | • 総地金投入量に占める、自社リサイクル品を含むリサイクル地金の比率を2030年までに2024年度比10%高める • 紙の使用量を2022年度比5%削減する (2022年度実績292㎏) |
大浦貴金属工業では、鉱山から採掘され、精製された純度の高い貴金属を外部から調達して製品に加工している。加えて、貴金属を含有したスクラップを顧客から預かり、自社で精製する事業も行っている。調達する貴金属を鉱山由来のものを減らしてリサイクル由来の比率を高めることで、地球環境の保全に貢献する方針を示している。また、社内資料においてもDX化を進め電子化することで ペーパレスを促進し自社の廃棄物削減を行う方針を示している。
5.インパクトの種類、SDGs、貢献分類、影響を及ぼす範囲
大浦貴金属工業の事業活動は、SDGsの17のゴールと169のターゲットに以下のように関連している。
責任ある鉱物調達への取組みを継続する
SDGsの17目標 | ターゲット | 内容 |
8.7 | 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。 | |
12.2 | 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 | |
15.c | 持続的な生計機会を追求するために地域コミュニティの能力向上を図る等、保護種の密猟及び違法な取引に対処するための努力に対する世界的な支援を強化する。 | |
16.2 16.4 16.A | 子供に対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。 2030年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆるレベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。 |
期待されるターゲットの影響:人権侵害やテロ、マネーロンダリング等が横行する紛争地域及び高リスク地域からの調達を避け、鉱物資源の健全な取り引きを行うことに貢献する。
仕事と生活の調和を図り働きやすい雇用環境を整備する
SDGsの17目標 | ターゲット | 内容 |
3.4 | 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 | |
5.1 5.5 | あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 | |
8.5 8.8 | 2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、 並びに同一労働同一賃金を達成する 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にあ る労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 | |
10.2 | 2030年までに、年齢、差別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
期待されるターゲットの影響:全ての年代、性別などの社員が生きいきと働き続けられる職場づくりを通じて、地域の発展に貢献する。
廃水の中和処理による環境負荷の軽減
SDGsの17目標 | ターゲット | 内容 |
6.3 | 2030年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・ 物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用 と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 | |
14.1 | 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。 |
期待されるターゲットの影響:法令の基準より更に厳しい社内基準を設け廃水処理を行うことで水質の改善に取り組み、環境保全に貢献する。
若者の育成
SDGsの17目標 | ターゲット | 内容 |
4.3 | 2030年までに、全ての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。 | |
8.5 8.8 | 2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、 並びに同一労働同一賃金を達成する 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にあ る労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
期待されるターゲットの影響:若手社員の育成することに加え、将来就労を検討する地域の高校生に就労体験をして頂く機会を提供し、地元人材の雇用を促進し地域の発展に貢献する。
CO2排出量削減と大気中へのNOx排出をなくす
SDGsの17目標 | ターゲット | 内容 |
13.3 | 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
期待されるターゲットの影響:CO2の排出量を可視化し削減に取り組むことで地球温暖化防止に貢献する。
最終廃棄物削減とペーパレス化の促進
SDGsの17目標 | ターゲット | 内容 |
12.4 12.5 | 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再 利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
期待されるターゲットの影響:貴金属のリサイクルを通じて、限りある天然資源を守ると共に、廃棄物の発生削減に貢献する。
6.サステナビリティ経営体制(推進体制、管理体制、実績)
本ポジティブインパクトファイナンスに取り組むにあたり、大浦貴金属工業では、大浦良幸代表取締役を最高責任者とし、事業活動とインパクトレーダー、SDGsとの関連性、KPIの設定について検討を重ね、取組内容の抽出を行っている。本ポジティブインパクトファイナンス実行後においても、社員一人一人が目標達成に向けて取り組み、社会的な課題の解決への貢献とともに持続的な経営の実現を 目指していく。各KPIは品質保証部が統括し、達成度合いをモニタリングしていく。
大浦貴金属工業では下記推進体制の構築により、地域における社会的課題や環境問題にも積極的に取り組み、奈良県内をリードしていく企業を目指す。バリューチェーンの観点では、環境汚染や人権問題等に配慮された調達・製造・販売・使用・処分を行なうことが責務であるとの認識のもと、環境
・健康配慮を徹底した事業展開を実施していく。
大浦貴金属工業株式会社の最高責任者 | 代表取締役 大浦良幸 |
大浦貴金属工業株式会社のモニタリング担当者 | 品質保証部部長 |
担当部 | 品質保証部 |
7.南都銀行によるモニタリングの頻度と方法
本ポジティブインパクトファイナンスで設定したKPIの達成及び進捗状況については、南都銀行と大浦貴金属工業の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
具体的には決算が3月のため、6月に関連する資料を南都銀行が受領し、モニタリングとなる指標についてフィードバック等のやりとりを行う。南都銀行は、KPI達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは南都銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI達成をサポートする。
モニタリング方法 | 対面、Web会議等、モニタリング方法の指定はない定例訪問などを通じて情報交換を行う |
モニタリングの実施時期、頻度 | 毎年6月に、年1回程度実施する |
モニタリングした結果のフィードバック方法 | KPI等の指標の進捗状況を確認する 必要に応じてKPI達成のために必要なノウハウの提供、外部資源とのマッチングを検討するなど、KPI達成をサポートする |
以上
1. 本評価書は、南都コンサルティング株式会社が、南都銀行から委託を受けて実施したもので、
南都コンサルティング株式会社が南都銀行に対して提出するものです。
2. 南都コンサルティング株式会社は、依頼者である南都銀行および南都銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する大浦貴金属工業から供与された情報と、南都コンサルティング株式会社が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3. 本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した
「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<本件に関するお問い合わせ先>南都コンサルティング株式会社 マネージャー 大谷 岳
〒630-8677
奈良県奈良市橋本町16
TEL:0742-93-3102 FAX:0742-93-3103
第三者意見書
2024 年 3 月 25 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 大浦貴金属工業株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社南都銀行 |
評価者:南都コンサルティング株式会社 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、株式会社南都銀行(「南都銀行」)が大浦貴金属工業株式会社(「大浦貴金属工業」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、南都コンサルティング株式会社(「南都コンサルティング」)による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。南都銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、南都コンサルティングと共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、南都銀行及び南都コンサルティングにそれを提示している。なお、南都銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体で
ある。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
南都銀行及び南都コンサルティングは、本ファイナンスを通じ、大浦貴金属工業の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、大浦貴金属工業がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、南都銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(1) 南都銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
(出所:南都銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、南都銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、南都銀行からの委託を受けて、南都コンサルティングが分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て南都コンサルティングが作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、南都コンサルティングが、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である大浦貴金属工業から貸付人である南都銀行及び評価者である南都コンサルティングに対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
梶原 敦子 川越 広志
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026