・ 原始的不能のドグマのインパクトは非常に強く CISG 等と異なるところとして強調されがちな点なので、明文で規定することに意味がある。
71-5
「民法(債権関係)の改正に関するxxxx」に対して寄せられた意見の概要(各論4)
(前注)
○ この資料は、xxxx第26から第33までに関する意見を内容としている。
○ 略語及び団体名等の略称は、部会資料71-1参照。
目 次
第 26 契約に関する基本原則等 1
1 契約内容の自由 1
2 履行請求権の限界事由が契約成立時に生じていた場合の契約の効力 3
3 付随義務及び保護義務 5
4 xxx等の適用に当たっての考慮要素 10
第 27 契約交渉段階 15
1 契約締結の自由と契約交渉の不当破棄 15
2 契約締結過程における情報提供義務 20
第 28 契約の成立 26
1 申込みと承諾 26
2 承諾の期間の定めのある申込み(民法第521条第1項・第522条関係)27
3 承諾の期間の定めのない申込み(民法第524条関係) 29
4 対話者間における申込み 31
5 申込者及び承諾者の死亡等(民法第525条関係) 32
6 契約の成立時期(民法第526条第1項・第527条関係) 34
7 懸賞広告 36
第 29 契約の解釈 39
第 30 約款 45
1 約款の定義 45
2 約款の組入要件の内容 49
3 不意打ち条項 53
4 約款の変更 55
5 不当条項規制 59
第 31 第三者のためにする契約 63
1 第三者のためにする契約の成立等(民法第537条関係) 63
2 要約者による解除権の行使(民法第538条関係) 67
第 32 事情変更の法理 68
第 33 不安の抗弁権 70
第 26 契約に関する基本原則等
【全体に関する意見】
・ 争いにならないことを、あえて規定をする必要はないし、条文に規定することが望ましいとは思えない。基本原則といいつつ、「限界事由」「契約の趣旨」などという、意味不明の概念を持ち出すことは、なんら市民にとって利益にならない。
合意があったか否かという判断をするのが事実認定をする者の責任であり、その責任を回避させるような規定を置くべきではない。
情報や交渉力に差があるということと、xxxとは、まったく関係がなく、関係があるとすれば、良俗の問題である。契約のみについて、民法第1条に関し、特別の定めを置く理由もない。また、民法に、消費者法などを持ち込むべきではない。
(個人)
1 契約内容の自由
契約の当事者は、法令の制限内において、自由に契約の内容を決定することができるものとする。
【賛成】
沖縄弁法制委、大阪弁、東弁、一弁、東弁倒産法、慶大、ファンの会、大分弁、日弁連、xx総合、日弁連消費者委、全相協関東、愛知弁司法制度調査委、ドイツ研、埼玉青年書士、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、個人2名
・ 契約自由の原則の明文化については、基本原則の明文化であり、分かりやすい民法の観点から、賛成する。
・ 契約内容決定の自由という自由主義経済の根幹をなす原則と、強行法規といったこの自由を規制する原則との関係を明確しておくために、必要な条項である。
契約自由の原則に対する制約に関する意見
・ 契約自由の原則の明文化と併せて、制約原理を規定すべきである。
・ 制約原理の規定の方法としては、公序良俗、強行規定に反しないことを明示するという考え方や、民法 90 条、91 条をレファレンスするとの考え方の方がより分かりやすいとも考えられる。
・ 「公序良俗」等の特定の要素のみを抽出して明記するよりも、端的に「法令の制限内」とし、具体的な内容はそれぞれの法令に委ねる方が妥当である。
補足意見
・ なぜ、内容決定の自由のみを取り上げるのか疑問もある。
・ 「契約を締結し又は締結しない自由(契約締結の自由)」、「契約の相手方を選択する自由(相手方選択の自由)」、「契約締結の方式の自由(方式の自由)」については、その規定の私法上の権利義務に関する要件・効果は観念しにくく、原則や理念を述べたにとどまることになるとの指摘や、制約原理をどのように規定するかが難しい、
といった問題点が指摘されているため、あえて明文化する必要はない。
・ 契約内容の自由な決定を強調すると、当事者が選択した法的構成を無視して担保の実質に即した法的構成を付与することまでもが否定される根拠となってしまうおそれがあるため、ここにいう契約内容の自由には、いわば法的構成の選択の自由を含まない旨が明らかとなるような配慮が必要ではないかとの意見があった。
【反対】
xx弁、東地税調査研究部、愛媛法学会、早大、改めて見直す会、個人2名
・ 規定を設ける必要性はない。
・ 裁判所が契約書の形式的文言に縛られ合理的意思解釈に消極的になったり、事業者による消費者に対する不合理な契約条項の効力の押し付け等の悪用を招くおそれがある。
・ 強行規定による制限だけであれば明記する意味は小さい。強行規定違反は無効を意味し、オール・オア・ナッシングである。契約をでき得る限り当事者の本意に沿う内容の範囲内で成立させるという趣旨から、「ただし、契約の内容を変更すれば法令の制限を受けないものであるときは、制限外で契約内容を決定されたものとすることができる。」という規定を追加すべきである。
・ 内容決定の自由についてだけ規定して法律上の根拠を明確にし、そのほかの事由については暗黙の前提とするのは適切性に欠ける。契約自由の原則はすでに原則として確立しているものであるから、一部について規定する条文を置くよりは条文を置かないほうが勝る。
・ 契約内容の自由だけを規定するとの考え方には疑問がある。契約の自由原則は、契約締結の自由、相手方選択の自由、内容決定の自由、方式の自由を含むとされていることにほぼ異論はない。このうち、内容決定の自由だけをとくに規定する趣旨であるとされるが、契約締結の自由については、xxxx・第 27 が当然の前提とする原則であると解されるから、むしろ、相手方選択の自由をことさらに排除するという面が強い。原則ルールが何かといえば、どの相手方と契約を締結するかは当事者の自由に委ねられているというのが出発点であり、また、その自由には一定の制限があることは、内容決定の自由においても同様であるから、そのような制限がある趣旨をあわせて規定すれば足りるのではないか。
【その他の意見】
・ 契約の自由の原則が過度に強調されると、立場の強い者による濫用の懸念がある。そこで、例えば「契約当事者は自由に契約内容を合意することができる」とするなど、契約内容の自由の前提に当事者の合意が必要なことを明示するべきである。(日商・東商)
・ 契約締結の自由を規定しないことと、後記第27、1本文の規定を置くこととの整合性が理解できない。(沖縄弁法制委)
・ 契約内容の自由以外の契約自由の原則についても、可能な限り明文化を検討したほうがよい。(大阪弁、個人)
・ 相手方選択の自由と契約締結の自由は契約内容という法的効果の発生を直接規定
する内容決定の自由と比較すると私法上の効果は間接的であり、内容決定の自由のみを規定するという提案内容についても首肯できる。(東弁)
・ 契約自由の原則を明文化することは分かりやすい民法に資すると考えるが、そもそも「自由」という概念自体が流動的なものであるので、現時点で明文化することに対しては慎重な意見もある。(横浜弁)
・ 反対しないが、法令の制限内という法令については、罰則のある取締規定も含むことを明記すべきである。(コンビニ問題弁連)
・ 立場の強い者からの強制が排除されることを明らかにして頂きたい。(全中)
・ 取引上不利な立場に置かれる中小企業の意思の自由が前提であることがわかるように規定して頂きたい。(全中)
・ 契約締結の自由をここに入れるべきである。また、ヨーロッパ契約法原則のように、xxな取引慣行に従わなければならないことも明記すべきである。(個人)
・ 罰則のある取締規定に反してはならないことを明示すべきである。(個人)
2 履行請求権の限界事由が契約成立時に生じていた場合の契約の効力
契約は、それに基づく債権の履行請求権の限界事由が契約の成立の時点で既に生じていたことによっては、その効力を妨げられないものとする。
(注)このような規定を設けないという考え方がある。
【賛成】
大阪弁、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、ファンの会、大分弁、日弁連、xx総合、ドイツ研、二弁、堂島、日大、親和会、個人5名
・ 履行請求権の限界事由が契約成立時よりも前か後かという偶然によって、契約の有効性や損害賠償の範囲等について結論が大きく異なるのは妥当でない。
・ 常に有効とするデフォルトルールを設定することはできない。有効となるか無効となるかは、当事者のリスク負担に関する合意によって決定するという提案であれば、賛成することができる。
・ 原始的不能のドグマのインパクトは非常に強く CISG 等と異なるところとして強調されがちな点なので、xxで規定することに意味がある。
・ 債権の履行請求権の限界事由が契約の成立の時点で既に生じていたことが容易にわからないケースもあると考えられるし、債務の履行が行われずその契約の目的が達成できないのであれば、解除をすればよいことであると考えられるからである。
・ 無効にする必要は無く、意思表示の瑕疵、契約の解釈で解決した方が妥当である。補足意見
・ 「限界事由」という文言には問題がある。
【反対】
xx弁、沖縄弁法制委、一弁、車販協、xx弁、貿易会、経団連、三菱電機、愛知弁司法制度調査委、虎門、埼玉青年書士、チェーンストア協、日司連、改めて見直す会、最高裁(相当数)、立大、個人2名
規定の必要性、有用性に関する意見
・ 解釈によって対応しており、本項のような条文を設ける必要はない。
・ 原始的に不能であることを想定して契約が締結されることは少なく、原始的に不能な契約を無効とすることが当事者の通常の意思に合致すると考えられるので、これに従って原始的に不能な契約は原則として無効として扱い、必要があれば個々の契約に応じてその効力につき解釈で対応すれば足りる。
・ 履行請求権の限界事由が生じているのであれば、仮に契約を有効なものとして扱うとしても、解除をすることは可能であると考えられるが、自己が取得することとされていた債権について限界事由が生じていた契約当事者が、自己の債務を免れるために、わざわざ解除の意思表示をしなければならないというのは迂遠であって、原始的に不能な契約の効力を認めることに実益があるのか疑問である。
規定の内容に関する意見
・ 契約成立時点で目的物が存在しない以上は、当事者の合理的意思としては、その契約を成立させない、という意思が推定できる。そのため、むしろ無効推定を原則とすべきである。
・ 原始的不能のドグマは否定されるべきであるが、原始的不能であっても有効とするのが当事者の合理的意思のデフォルトであるとは言えない。
・ 実務上、原始的に履行請求権の限界事由が生じている場合には、契約は無効であるという考え方が定着している。履行請求権の限界事由が生じていた場合であっても契約の効力が生じるとすることは、従前の実務と異なる取扱いを条文xxxするものであって、不要な混乱を招く恐れがあることから、規律を設けるべきではない。
・ 従来は信頼利益に限られた損害賠償の範囲についても履行利益まで含まれうる結果となり、債務者にとって過酷な結果を招きかねない。
・ このような条文がおかれることによって、たとえば、契約の前日に売買目的物である建物が滅失し、滅失について債務者に帰責事由がない場合には、(信頼利益)賠償が認められなくなる。
・ 原始的不能の契約は錯誤により無効とすべきである。その他
・ 契約の性質、履行請求権の内容、不能(限界事由)の生じた原因、取引の慣行等より、契約の当事者が、不能(限界事由)が成立の時点で生じていたことを知っていた場合には契約をしなかったものと合理的に考えられる場合には、契約を無効とする旨の規定を設けることを検討すべきである。
【その他の意見】
・ 履行請求権の限界事由という文言を用いることは、妥当ではない。(東弁)
・ 第8から第13までの債務不履行の関連規定として位置づけるべきではないか、また、契約の効力が妨げられる場合における法的手当て(条件・錯誤、契約の前提ないし基礎の欠缺による無効)に関する検討を深めなくてよいか、疑問である。(慶大)
・ いわゆる原始的不能の給付を目的とする契約であっても、それを理由として当然
に無効とはならないとする原則を定めることにはそれなりの意味があると考えられ るが、かつてのドイツ民法のように、xxの規定で無効の効果を規定していた法制 とは異なり、日本の民法においては、単に解釈理論のレベルでそのような主張がか つて支配的であったというにすぎないから、そのような一般的な宣言自体の効果は 限定的である。むしろ、契約成立の当初から履行請求権の限界事由がある場合に、 具体的にどのような要件の下でどのような効果が生ずるかを明らかにすべきであり、そのような具体的な規定を欠いたまま、一般的な理念だけを宣言する規定を置く実 益は乏しいのではないか。(早大、個人)
・ 本改正においては、契約の趣旨を中心として、契約や債務内容を詳しく検討する方向性があるように思われるところ、この提案だけ「その効力を妨げられない」と言い切るのは硬直的である。そこで、「契約の趣旨に照らし」という用語を、ここでも使用し、契約は、契約の趣旨に照らし、履行請求権の限界事由が契約の成立の時点で既に生じていたことによって、その効力を妨げられないものであるときは、無効とはならない、と規定してはどうか。(個人)
3 付随義務及び保護義務
(1) 契約の当事者は、当該契約において明示又は黙示に合意されていない場合であっても、相手方が当該契約によって得ようとした利益を得ることができるよう、当該契約の趣旨に照らして必要と認められる行為をしなければならないものとする。
(2) 契約の当事者は、当該契約において明示又は黙示に合意されていない場合であっても、当該契約の締結又は当該契約に基づく債権の行使若しくは債務の履行に当たり、相手方の生命、身体、財産その他の利益を害しないために当該契約の趣旨に照らして必要と認められる行為をしなければならないものとする。
(注)これらのような規定を設けないという考え方がある。
全体について
・ 契約当事者間においてxxxを根拠に各種の付随義務、安全配慮義務、保護義務等の存在が認識されており、これに関する規律を予定するxxxxの考え方自体には異論はない。ただし、以下のような疑問点がある。
第1に、種々の付随義務に関する規定と並び(むしろその前に)当事者の合意に基づく給付義務に関する規定を置くべきである。今日、契約債務関係については、当事者の合意を基礎とする義務とxxx上の義務をも関連づけた構造把握が必要である。したがって、本来的義務(給付義務)に関する規律と、これに対比させたxxな債務関係上の義務に関する規律の両方が検討されるべきである。
第2に、契約義務(債務)構造に関する基本的な理解が明らかではない。本規律 (1)は、「当該契約によって得ようとした利益」に奉仕する義務が、同(2)では「相手方の生命、身体、財産その他の利益」に奉仕する義務が想定されているが、これだ
けでは契約義務構造は明らかではない。おそらく(1)は給付利益(給付結果)の保護を、(2)は契約当事者の現状利益(完全性利益)の保護を考慮しているようではあるが、契約義務構造の理解及び不法行為規範との関係に関する検討が前提とされるべきである。今日、「給付義務」(「主たる給付義務」と「従たる給付義務」に細分)・付随的義務、さらに完全性利益保護義務に分けた理解が一般的であるが、学説においてはもちろん、判例・裁判例においてもその理解をめぐり混乱がみられ、慎重な検討が必要である。
第3は、細分化された契約義務を前提とするときには、それぞれの義務違反の効果に関する規定を整備する必要がある。損害賠償の他、解除、履行請求権(追完請求権)等の要件・内容を検討する必要がある。
以上の諸観点に関しては、各種の給付障害を包括する統一概念(「義務違反」)を採用するとともに義務の存立根拠規定を設けたドイツ債務法が1つの解決モデルを提供しており、参照すべきである。(改正研)
(1)について
【賛成】
大阪弁、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、ファンの会、労働弁、日弁連、福岡弁、xx総合、日弁連消費者委、コンビニ問題弁連、愛知弁司法制度調査委、ドイツ研、群馬弁、二弁、堂島、日司連、個人8名
・ 判例・学説上、一般に認められているところであり、市民に分かりやすい民法の観点からも明文化した方がよい。
・ 労働者は作成に関与できない就業規則によって契約内容を規律されており、労働者の利益を図るための使用者の付随義務がxxで認められることは重要である。安全配慮義務以外にも、人事考課にあたってのxx評価義務、男女雇用配慮義務、セクハラ防止義務などの付随義務等も観念できる。
・ 付随義務や保護義務が明文化された場合には、社会的強者が社会的弱者に対して自己に有利な契約を押しつけることに対する抑止力が働くことも期待し得る。
補足意見
・ 「相手方が当該契約によって得ようとした利益を得ることができるよう」という規定文言については、「これまでxxxに基づいて当事者に課されてきた義務を表現しようとしたものであり、従来の義務の範囲を超えてより広い義務を当事者に負担させようという趣旨ではない。」とされているものの、依然として範囲が広すぎるという意見もあるため、これまでの判例等の趣旨を踏まえ、更に適切な文言・要件を検討すべきである。
・ 予見可能性を高めるため、また、当事者の属性等に応じた適切なxxxxの原則の解釈運用を図るため、xxxxの原則の判断要素として、「契約の目的・内容・性質」「各当事者の地位・属性・専門性」「当事者間の情報の質、量、情報処理能力及び交渉力の格差」「契約交渉経緯」等を列挙すべきである。
・ 付随義務はxxxに基づき発生する義務であり、義務の存否、内容、程度は個別
具体的事実関係によって決定されるものであり、条文化に際しては柔軟な解釈を可能とする規定ぶりとすべきである。
・ 「相手方が当該契約の目的を達成することができるよう、当該契約の趣旨に照らして必要な配慮をするものとする」としてはどうか。
【反対】
沖縄弁法制委、一弁、全銀協、大分弁、自工会、車販協、xx弁、生保協、貿易会、国際企業法務、流通クレ協、全信組協、サービサー協、経団連、経済法令研、全宅連、三菱電機、損保協、建築士協、新経連、アンダーソンxxxx、建設コンサル協、電情産協、クレ協、クレカ協、日建連、xxx、不動産流通協、虎門、信販協、埼玉青年書士、全中、早大、xxxxxx、日本GE、チェーンストア協、JCFA、貸金業協、日証協、改めて見直す会、最高裁(相当数)、個人4名
・ 付随義務を認めた裁判例は限界的な事例にすぎず、明文化するに足る立法事実があるとはいえない。
・ 個別の事案ごとによって契約上の解釈によって対応し、解釈によって導きえないときにはxxxの適用によって対応すれば足り、条文を設ける必要はない。
・ 原則は当事者間で合意された義務を履行すればよく、その付随義務を履行することまで明文化する必要はない。
・ 義務の内容・程度は、当事者の属性や相互の関係、交渉経緯などにより個別の事案ごとに異なるから、一般的な規定を設けることはそもそも困難であり、むしろ個別の事象に即した妥当な解決を阻害するおそれがある。
・ 明文化により、濫用的な請求につながることが懸念される。
・ 「相手方が当該契約によって得ようとした利益」という文言を用いると、従来認 められていたよりも相当xxに付随義務が認められるとの誤解を与える懸念がある。
・ 当事者間の合意により成立するという契約行為の性質上、基本的に、当事者は、双方合意した内容以上の義務は負わないのが大原則であるところ、明示又は黙示に合意されていない事項についてまで「契約の趣旨」に照らした義務を課すことは、契約リスクの外延が不明瞭になり、そのことによる管理コストの増加や紛争の増加が懸念される。
・ 当事者間に生じる責任の内容が不明確であり、自由を原則とする交渉実務に支障が生じるうえ、当該義務の履行に要する手間や費用が事業者のコストに反映されてしまい、市場に悪影響を及ぼす可能性がある。
・ 「相手方が当該契約によって得ようとした利益」とはどういったものであるのか、必ずしも明確ではなく、「当該契約の趣旨に照らして必要と認められる行為」についてもその範囲・外延が明確ではない。
・ 契約者間で契約書に定めたこと以外の債務を負わないといういわゆる完全条項も含む、その他の契約の規定の解釈との関係等について、慎重に検討すべきである。
・ 当初想定していた利益を得られなかった契約当事者が、中小企業に対して、不当な義務を負わせるよう求めるおそれがある。
・ 契約関係に基づいて債権者・債務者が負うべき義務は多種多様であり、中心的な
債務とそれ以外の債務という区別自体も、限定的な意味しか持ち得ないのではないか。とくに、複雑な契約関係になればなるほど、このような区別の重要性は後退する。これらの問題は、契約の解釈やxxxを通じて、個別に判断されるべきものであり、xxxx(1)のような規定を置くことに、どれほどの意味があるか疑問である。
・ 何ら合意していないことを法的に義務付けられることになり、不当である。
・ 契約解釈との関係が不明である。
【その他の意見】
・ 「相手方が当該契約によって得ようとした利益を得ることができるよう」との表現では、外部要因によって当初想定していた利益を得られなかった契約当事者が、相手方に不当な義務を負わせるよう求めることが考えられるので、この部分を削除すべきである。(日商・東商)
・ 趣旨は賛成するが文言はさらに検討すべきである。「相手方が当該契約によって得ようとした利益を得ることができるよう」という文言ではその内容が不明確であり、当該文言は削除するほうがよいと考える。(親和会)
・ 合意内容とされていない二次的な債務に関する規定は、第 29・契約解釈による内容確定(本来的債務)の後に補足規定として置くべきである。(慶大)
・ 運用上の問題ではあるが、不法行為責任との機能配分を明確にすべきである。(慶大)
・ 提案の「相手方が当該契約によって得ようとした利益を得ることができるよう」という文言は、同語反復的である。また、この文言では、利益を得られるように、ありとあらゆることをするように求められるような語感であり、「契約の趣旨に照らし」という言葉がかかるにしても、水準が高くなるように感じられる。そこで、「契約の当事者は、当該契約において明示又は黙示に合意されていない場合であっても、当該契約の趣旨に照らして、契約上の利益を確保[実現]し又は毀損しないために必要と認められる行為をしなければならないものとする。」としてはどうか。(個人)
(2)について
【賛成】
大阪弁、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、ファンの会、労働弁、日弁連、福岡弁、xx総合、日弁連消費者委、コンビニ問題弁連、愛知弁司法制度調査委、ドイツ研、群馬弁、二弁、堂島、日司連、親和会、個人8名
・ 付随義務も保護義務も、判例・学説上も、一般に認められているところであり、市民に分かりやすい民法の観点からも明文化した方がよい。
・ 付随義務や保護義務が明文化された場合には、社会的強者が社会的弱者に対して自己に有利な契約を押しつけることに対する抑止力が働くことも期待し得る。
補足意見
・ 予見可能性を高めるため、また、当事者の属性等に応じた適切なxxxxの原則の解釈運用を図るため、xxxxの原則の判断要素として、「契約の目的・内容・性質」「各当事者の地位・属性・専門性」「当事者間の情報の質、量、情報処理能力及
び交渉力の格差」「契約交渉経緯」等を列挙すべきである。
・ 保護義務に反する場合の損害賠償義務についても規定を設けるべきである。
・ 保護義務はxxxに基づき発生する義務であり、義務の存否、内容、程度は個別具体的事実関係によって決定されるものであり、条文化に際しては柔軟な解釈を可能とする規定ぶりとすべきである。
・ 「相手方の生命、身体、財産その他の正当な利益を害しないよう、当該契約の趣旨に照らして必要な配慮をするものとする」と規定してはどうか。
【反対】
沖縄弁法制委、一弁、全銀協、大分弁、自工会、車販協、xx弁、生保協、貿易会、国際企業法務、流通クレ協、全信組協、サービサー協、経団連、経済法令研、全宅連、三菱電機、損保協、建築士協、新経連、愛媛法学会、電情産協、クレ協、日建連、不動産流通協、虎門、信販協、青年書士、早大、xxxxxx、日本GE、チェーンストア協、改めて見直す会、JCFA、最高裁(相当数)、個人2名
・ 付随義務を認めた裁判例は限界的な事例にすぎず、明文化するに足る立法事実があるとはいえない。
・ 個別の事案ごとによって契約上の解釈によって対応し、解釈によって導きえないときにはxxxの適用によって対応すれば足り、条文を設ける必要はない。
・ 保護義務の規定は、そもそも不法行為をも構成する重複規定であり、敢えてここに設ける必要性はない。
・ 義務の内容・程度は、当事者の属性や相互の関係、交渉経緯などにより個別の事案ごとに異なるから、一般的な規定を設けることはそもそも困難であり、むしろ個別の事象に即した妥当な解決を阻害するおそれがある。
・ 明文化により、濫用的な請求につながることが懸念される。
・ 「当該契約の趣旨に照らして必要と認められる行為」の範囲・外延が明確でなく、拡大して解釈されるおそれがある。
・ 債権回収の場面においては、債権者による正当な権利行使の範囲内の行為であっても、債務者の権利等を害しているとの主張につながりかねない懸念がある。
・ 当事者間の合意により成立するという契約行為の性質上、基本的に、当事者は、双方合意した内容以上の義務は負わないのが大原則であるところ、明示又は黙示に合意されていない事項についてまで「契約の趣旨」に照らした義務を課すことは、契約リスクの外延が不明瞭になり、そのことによる管理コストの増加や紛争の増加が懸念される。
・ 当事者間に生じる責任の内容が不明確であり、自由を原則とする交渉実務に支障が生じるうえ、当該義務の履行に要する手間や費用が事業者のコストに反映されてしまい、市場に悪影響を及ぼす可能性がある。
・ 保護義務を負担するとしても、それが債務不履行責任を生じさせるのか、不法行為責任を生じさせるのか明らかでない。このような点を明確にしないと規定を置く意味はない。
・ 保護義務の発生根拠が何か、保護義務の及ぶのは契約当事者だけに限られるのか
等の問題を十分に検討する必要がある。契約交渉過程において、保護義務が認められるのか、契約の無効・取消しの場合にも保護義務は契約の効力とは無関係に存続するのか、契約に基づいて給付された目的物により契約当事者の家族が損害を被った場合に、保護義務はそこに及ぶのか等の具体的な問題を明らかにすることがより重要であり、契約当事者に限定した保護義務を提案のような形で規定することは疑問である。
4 xxx等の適用に当たっての考慮要素
消費者と事業者との間で締結される契約(消費者契約)のほか、情報の質及び量並びに交渉力の格差がある当事者間で締結される契約に関しては、民法第
1条第2項及び第3項その他の規定の適用に当たって、その格差の存在を考慮しなければならないものとする。
(注)このような規定を設けないという考え方がある。また、「消費者と事業者との間で締結される契約(消費者契約)のほか、」という例示を設けないという考え方がある。
【賛成】
沖縄弁法制委、大阪弁、横浜弁、東弁倒産法、慶大、ファンの会、仙台弁、労働弁、日弁連、xx弁、全相協、xx総合、日弁連消費者委、全相協関東、NACS、コンビニ問題弁連、ドイツ研、群馬弁、埼玉青年書士、二弁、電話リース大阪、消費者機構日本、堂島、親和会、個人19名
・ 市民社会自体が多様化した現在、現実の社会においては、消費者と事業者との間だけではなく、事業者間においても非対等な契約関係が存在している。一般私法たる民法の基本ないし原則となる法規範は、契約自由の原則や契約の拘束力のみを強調したものであってはならず、契約弱者の利益にも配慮したものでなければならない。
・ 民法が市民生活に関わる基本的なルールを定めるものである以上、格差のある当事者間での契約においては、対等な当事者間の契約とは異なる考慮がはたらくという原則を明確にしておくことは重要である。
・ 現行民法においても、xxxや権利濫用規定の適用にあたっては、契約当事者間の非対等性、情報・交渉力格差の存在、契約弱者の保護の必要性といった観点が考慮要素として斟酌されてきている。
・ 情報・交渉力・判断力の不均衡が構造的に存在する現代社会において、劣位者の自律的な決定への法的支援がなければ、実質的には自由な自己決定が保障されないこととなるが、これは、実質的に私的自治・契約xxに反することとなる。
・ 対等平等という前提の崩れた現代社会において、私人の権利行使によるxxな市場・社会の実現が重視されてきていることよりすれば、情報等格差の是正という競争法的課題について、民事実体法は重要な位置づけを有する。
・ 現代社会における市場の高度化・専門化に伴う消費者の事業者への依存とかかる
市場に参入することに伴う事業者の社会的責任ということに、xxx等により、消費者の情報の収集や分析等の失敗の不利益を事業者に転嫁することの正当化の根拠を見いだすことができる。近代から現代への社会の変化を踏まえ、自己決定を実質的に保障し、自己責任の基盤を整備することは、近代民法の基本原理の制約ではなく、その発展・現代化であり、このようなものとして、xxx等が展開してきたものである。
・ 変化の激しい現代の情報社会において、情報が富と力の源泉であるところ、情報の獲得や交渉力に大きな格差が生じており、将来、その傾向が一段と進行することが予想される。民法が適用されるいかなる場面においても、契約当事者が対等な権利主体どうしであることを前提とすることがもはや適切ではないことは明らかであり、格差の是正というテーマは、今般の法改正において目指されるべき重要な方向性である。
・ xxx等を柔軟に適用できることを明確にすることで、消費者が相手方事業者から事業性のある契約の勧誘を受け、それによって紛争に至った場合や、零細・小規模事業者の紛争においても相手方と格差があることを踏まえた解決が可能となる。
・ 消費者と事業者の格差を日々実感している。商品、サービスの複雑化のみならず、電子マネー、カード決済等決済方法も多様化している。規定は民法総則のxxxの所に入れてほしい。
補足意見
・ ①消費者契約にとどまらない契約法一般における基本原則として位置づける意義はあるのか、②情報提供義務ないし説明義務に関する個別規定を導く原則規定にすぎないのか、につきさらなる検討を要する。
【反対】
一弁、札幌弁、全銀協、経営法友会、全不協、森xxxx、立大、自工会、車販協、アトリウム、東地税調査研究部、同友会、生保協、貿易会、国際企業法務、土地総合研、流通クレ協、全信組協、サービサー協、経団連、経済法令研、全宅連、三菱電機、xxxxx、損保協、農中、JR、TOA、愛知弁司法制度調査委、愛媛法学会、VC協、不動産証券化協、電情産協、クレ協、クレカ協、日建連、xxx、不動産流通協、丸の内総合、虎門、日xx、信販協、損保労組、早大、xxxxxx、チェーンストア協、 JCFA、貸金業協、日証協、日大、改めて見直す会、最高裁(相当数)、個人2名
・ 消費者保護などの政策を目的とするものとしては、消費者契約法等が存在している。一般法たる民法にこのような立法趣旨を拡大解釈されかねない規律を重ねて導入する必要はない。民法は、私法の一般法として抽象的な「人」概念を前提に私人間の法律関係を規律するものであり、民法に特定の属性に基づく規律を設ければ、民法の基本法としての性質を大きく修正することになりかねない。特定の政策目的を有する規律については特別法で定めるべきである。
・ xxxや権利濫用等の規定の適用に当たっては一切の事情が考慮されるのであり、考慮要素としては様々なものがあり得るのであるから、情報及び交渉力の格差だけを特別視して規定化すべきではない。具体的な事案の解決に当たって当該格差を考
慮するかどうかは、裁判所の裁量に委ねるべきである。
・ 自由競争を原則とする取引社会のルールとしては、一定の格差があっても当事者間で合意すれば契約が有効に成立するのが原則であり、法による交渉力格差の是正は、格差が著しくて固定的な場合や構造的な格差であるような一定の条件がある場合に限定されるが、「格差を考慮しなければならない」という規定を設けると、わずかな格差の存在によっても常に契約の効力に影響することになりかねない。
・ 自由な経済活動において、企業が他より多くの有用な情報を収集・分析し、様々な努力により交渉力を強めることは事業活動を有利に展開するための最も基本的で重要な要素であり、そのような企業の正当な行為に対して制限を加えようとする意図であれば反対せざるを得ない。
・ 情報の質、量、交渉力を得るために努力した場合にはそれによって利益を得ることが認められてしかるべきであるし、不足分を補うために、経済力を使って情報を購入したり弁護士に依頼して交渉を行ったりすることも努力の一環であり、それが認められるべきである。本提案によると、そうした努力を怠り、あえて情報を仕入れない、交渉力を身につけないなどといった行動を採った方が、格差が存在するとして、法の適用において有利な場面が得られることになってしまっている。
・ 現代社会では、インターネット等の普及により、情報収集のための手段が格段に発展した。消費者と事業者との間であっても、「情報の質及び量」や「交渉力」に関する格差が縮小する傾向すら見受けられるのであって、現代における民法において、殊更このような規定を設ける必要性は減少している。かえって、抽象的な規定を設けることにより、契約をめぐった不要な紛争が惹起されるおそれさえある。
・ 「格差の存在を考慮」する旨を明確化する目的で規定を設けたとしても、その規定がなお抽象的なものにとどまるのであれば、契約自由の原則が例外的に修正されることとなる範囲が不明確なままとなり、当事者にとっての予測可能性は高まらない一方、この規定の適用場面が予期しないかたちで拡大し、または濫用的な主張の余地が大きくなることによって、かえって実務が混乱し、事業活動が萎縮することが懸念される。
・ 情報の質及び量並びに交渉力の格差というあいまいな法律要件が規定されることにより、恣意的な法解釈が成り立つおそれがある。
・ 「その他の規定」の適用範囲は本文中からは不明であり、契約の解釈(第 29)その他の規定への適用がある場合には、契約関係が極めて不安定になることが懸念される。
・ 従来認められてきた内容と同じ内容を規定するにとどまるのであれば、敢えて規定を追加する必要はないように思われる。
・ xxx等の適用に当たって、例えば、禁反言が問題になる事例では、格差を考慮する必要がない場合も多いのではないか。このような事例においても、常に格差を考慮しなければならないということには疑問がある。
・ 事業者といっても個人と大差のない事業者も多数存在する中で、「事業者」と一括りにした上で、本文のような抽象的かつ適用範囲も不明確な規定を設けることは、
予測できない不当な結論を招くおそれがある。
・ このような規定は業者側の義務を常に重く考える解釈を招きがちである。
・ 消費者契約法における事業者と消費者の「格差」は、個別の消費者契約において現実にどのような格差が存在するかを問題とすることなく、いわば画一的・定型的に、両者の属性の相違をもって格差が存在するとみるものである。これに対して、そのような定型化された格差を離れて、個別・具体的な当事者の格差を問題とすることになると、どの程度の情報の質・量の格差、どの程度の交渉力の格差等があるかを確定する必要があることにもなりかねない。こうした格差が、たとえば情報提供義務に影響を及ぼし、あるいは暴利行為に当たるとする評価をもたらすことはありうるが、「その格差の存在を考慮しなければならない」という命令規範としての意味を持たせることには、もともと無理があるのではないか。
・ 消費者契約についての考慮要素として挙げるならばまだよいが、事業者間契約の場合を含めてこのような一般規定を設けると、この規定が紛争の種となり、むしろ弊害を生じるのではないか。また、仮に規定を置くとしても、その位置は、xxx規定(1条2項)と併せて置くべきであるとの意見があった。
・ 格差を勘案しようとする場面では、法の適用だけではなく、契約の解釈などの分野にも及ぶように思われるので、かかる規定では限定的に過ぎる懸念があり、条文を設けることで、かえって不当な扱いになるように思われる。
【その他の意見】
消費者契約を例示することについて
・ 「消費者」と「事業者」という概念を民法に採り入れることに反対である。(自工会、同友会、JCFA、丸の内総合)
・ 「消費者」「事業者」の定義が置かれないまま、「消費者と事業者の間で締結される契約」という例示を置くことに反対する。(全銀協)
・ 事業者間の取引においても情報力・交渉力の格差が存在しているため、一般的なルールを定める民法においては、消費者と事業者の契約という例示を設けるべきではない。(日商・東商、東弁、愛媛法学会、立大、埼玉青年書士、個人)
・ 当事者間の対等を阻害している場合には具体的な取引において是正すれば足り、消費者、事業者というカテゴリーを設ける必要はない。(日建連)
・ 消費者契約の例示があることで、かえって消費者契約法との差がなくなっており、規定の存在意義が不明である。(アトリウム)
・ 「消費者契約」を例示として提案しているが、常に民法の抽象的な規定の解釈に反映すべき程度の「格差」があるとは言えない。特に、近年では、様々な業法による情報提供義務に関する規制が強化される一方で、非対面取引の増加により、事業者側が消費者に関する情報を入手することは困難になっている。(経団連、JR)
・ あたかも消費者契約においては常に格差が存在するかのような規定を設けるべきではない。(丸の内総合)
・ 消費者契約を特に明記する必要性があるとは思われない。(親和会)
・ 消費者契約を例示しないとすると、構造的格差、類型的格差を示すものではなく
なるから、規定の持つ意味は完全に変容してしまうこととなる。構造的・類型的格差を対象とするものでもなく、また、格差を不当に利用した状況を対象とするものでもなく、ただ格差があれば配慮するとするのであれば、そのことがどのように法理論的に基礎づけられるのかは定かではなく、法的介入の指標足り得ず、情緒的、道徳的な意味以上のものを持ちえないものになるものと考えられる。(沖縄弁法制委)
具体的な消費者保護規定について
・ 抽象的な解釈規定のほか、具体的な消費者保護規定が必要である。また、業者間契約においても一定の場合には消費者保護規定の準用ができる旨のxx規定を設けるべきである。このような規定の立法化についても、今回の民法改正において引き続き検討されるべきである。(大阪弁)
その他
・ 規定の適用範囲は、xxxの具体化の場面に限定すべきである。(日商・東商)
・ 適用範囲が広がると濫用的な主張が増える懸念があるので、契約当事者間に情報の質及び量並びに交渉力に「大きな」格差がある場合に、適用範囲を限定するなど工夫をするべきである。(日商・東商)
・ この規律が設けられたとしても現在と大きく状況が変わることはないと思われ、反対はしないが、他にも多数存在するxxxの考慮要素のうち格差だけを取り出し、しかも、「考慮しなければならない」との義務的な規律にまでする必要があるのかという点について、十分に明確な説明がされているとはいえない。(TMI)
・ 情報格差の存在だけではなく、当事者のおのおのが情報格差をうめるために支払った努力をもxxxの考慮要素とする必要がある。これによって、当事者間の双方向のコミュニケーションが必要な取引における情報提供のインセンティブを高めることにつながる。(情報サービス協)
・ ある程度の格差が大きい場合にのみ適用されることがわかるように検討して頂きたい。(全中)
・ 個人事業者と大企業などの事業者間の取引においても適用されることがわかるよう規定して頂きたい。(全中)
・ ①「消費者」、「事業者」、「消費者契約」の各用語については消費者契約法に明確な定義が定められているところ、単に「消費者と事業者との間で締結される契約(消費者契約)」とはせずに、意見の趣旨のとおりの記載とすれば例示の対象が明確となること、②消費者契約法は、その目的規定に契約当事者間に格差の存在が明記され、同法に関する裁判例は同規定を根拠とした判断を示しているものも少なくないことから本規定の例示として適格であることからすれば、「消費者契約法(平成12年5月12日法律第61号)第2条3項に規定する消費者契約のほか、情報の質及び量並びに交渉力の格差がある当事者間で締結される契約に関しては、民法第1条第2項及び第3項その他の規定の適用に当たって、その格差の存在を考慮しなければならないものとする」とすべきである。
第 27 契約交渉段階
【全体に関する意見】
・ 問題が生じた場合、契約交渉についての合意(契約)があったと考えるか、不法行為で処理すればよく、特別の規定を設ける必要があるとは思えない。(個人)
・ 契約の成立に向けての新しい規制として基本的に重要な改正である。(個人)
1 契約締結の自由と契約交渉の不当破棄
契約を締結するための交渉の当事者の一方は、契約が成立しなかった場合であっても、これによって相手方に生じた損害を賠償する責任を負わないものとする。ただし、相手方が契約の成立が確実であると信じ、かつ、契約の性質、当事者の知識及び経験、交渉の進捗状況その他交渉に関する一切の事情に照らしてそのように信ずることが相当であると認められる場合において、その当事者の一方が、正当な理由なく契約の成立を妨げたときは、その当事者の一方は、これによって相手方に生じた損害を賠償する責任を負うものとする。
(注)このような規定を設けないという考え方がある。
【賛成】
日商・東商、大阪弁、東弁、一弁、横浜弁、東弁倒産法、TMI、慶大、ファンの会、全不協、大分弁、労働弁、日弁連、xx総合、日弁連消費者委、NACS、アンダーソンxxxx、愛知弁司法制度調査委、ドイツ研、群馬弁、埼玉青年書士、全中、二弁、早大、堂島、日大、個人7名
・契約を締結するか否かは本来自由であるから、これを本文でうたったうえ、ただし書で一定の要件を満たす例外的な場合に限り、賠償義務を認めるとするのが相当である。契約締結が自由である以上、契約の成立が確実なわけでもないのに先行して費用を投資した場合は、あえて投資した方が契約不成立時のリスクを負うべきである。①成立が確実と信じた場合、②信じることが相当と認められるにもかかわらず、
③正当な理由なく成立を妨げることを例外の要件とするのは相当である。
・ xxxxの原則の具体的な適用局面が明示されることによって、契約交渉段階における誠実性という行為規範が明示されることの意義は、積極的に評価されるべきである。
・ 交渉を不当に破棄した者に責任が負わせるべきことについては判例でも認められ、学説上異論はない。
・ 中小企業が仕事を受注する際、納期等の関係で早めに仕事に着手し、契約書の締結等は後回しになるケースが多い。一方、発注側が受注側に契約締結について期待を抱かせながら、一方的に契約交渉を中止する事案も頻繁に見受けられる。このような発注側の指示を信頼した中小企業を守る必要性は高い。
第1文について
・ 当事者は、別段の義務を負う場合を除き、交渉の開始、継続、破棄は自由である
(あるいは契約締結の義務を負わない)旨を規定するべきである。
・ 事業者が、直接消費者の元に足を運んで説明に時間をかけた場合でも、消費者が契約を断ると、事業者に今までの手間暇をかけたことについて損害賠償を請求されると脅される危惧がある。したがって、原則として責任を負わないと明言することは意味があると考える。
第2文について
・ 「正当な理由」の解釈によっては、契約交渉の不当破棄が認められる範囲が、現 在の判例より狭くなる懸念がある。「当事者が契約を締結しようとした趣旨に照らし、正当な理由がない場合」等、「正当な理由」の解釈が広がらないようにすべきである。
・ 損害賠償請求者において、契約成立が確実であることの信用、及び、信用の相当性だけでなく、契約の成立を妨げたことについて正当理由のないことについてまで立証責任を負うということになれば、請求者の立証の負担が加重となって適切でない。
・ xxxを具体化した形で規定を設けることが提案されており、当事者の一方が賠償義務を負う場合が例外的な場合に限られることが文言に現れていることから、提案に賛成する。
・ 実務上は不法行為責任構成が採られることが多い中、これを契約法中に規定することで、契約責任構成として理解されることにならないかにつき疑問が呈されたほか、これだけの規定では、賠償範囲が信頼利益か履行利益かが明らかでなく、中途半端であるとの意見があった。これらを踏まえて、適切な要件・効果を規定すべきである。
補足意見
・ 契約交渉過程における一般不法行為に基づく損害賠償責任と本試案による損害賠償責任との関係が本試案の規定上必ずしも明確ではなく、一般不法行為責任が生じる場合と、本試案による損害賠償責任が生じる場合の区別を明確化することが望ましいと考えられる。
・ xxxの内容を具体化してxxとすることにより、条文に明記されなかった内容については重視されるべきでないなど、新たな解釈適用上の議論がなされて、混乱が生じるおそれも否定はできないため、要件の過度な精緻化は避けることが望ましい。
・ 契約の成立が確実であると信じたという主観的事情と、そのように信じた事情についての客観的な相当性、そして、相手方により契約の成立を妨げたという事情がある場合に限り、例外として損害賠償請求を認める規定を設けるべきであると考える。
・ この責任の法的性質については、さらに整理する余地があるように思われる。この規定が「契約」の章に設けられることとなれば、この責任を一種の「契約責任」として位置づける理解を支持する論拠となろう。しかし、この責任の法的性質については、これを不法行為責任の一種と解するものもきわめて有力であり、実際、不法行為の消滅時効期間を適用する裁判例が少なくない。本試案は、不法行為に固有
の時効期間を残すことを提案しているから(第7-4)、この責任を一種の契約責任として位置づけることによって、現状よりも時効期間が長期化される事例が生じかねない。加えて、『補足説明』(「補足説明」欄3(3))においては、本規定が想定する以外の不誠実な行為につき、(xxxではなく)不法行為法によって対応すべきことが示唆されている。そうすると、特に本条が定める場合についてのみ、その他の不誠実な行為とは異なる効果を認める余地が残されていることとなろうが、その当否も疑問である。責任の法的性質を確定することは要しないまでも、時効期間を統一するための対応を検討することは考慮に値すると考える。
・ 契約締結自由と交渉破棄の賠償責任はやや次元の異なる事柄であり、両者を並べて規定してよいかにつき疑問が呈された。
【反対】
沖縄弁法制委、全銀協、自工会、車販協、ACCJ、xx弁、貿易会、土地総合研、サービサー協、経団連、全宅連、xxxxx、損保協、全相協関東、TOA、改正研、V C協、不動産証券化協、xxx、不動産流通協、虎門、日xx、信販協、xxxxxx、かわさき、東地税制度部、日本GE、チェーンストア協、JCFA、貸金業協、日証協、日司連、改めて見直す会、最高裁(相当数)、個人4名
・ 契約交渉の不当破棄については、民法第1条第2項という一般的な規定があれば足り、上記のように特定の場面についてのみxxxを具体化した規定を設けることによってかえって柔軟な解決が阻害されるおそれがある。
・ 損害賠償義務を負うべき場合についてはxxxの規定により判断すれば足り、あえて損害賠償義務を負う可能性を明文化することは、消費者による交渉破棄を萎縮させるおそれがある。
・ 損害賠償が認められる場面が狭くなるおそれがある。
・ 紛争を誘発し、自由な交渉を萎縮させる弊害がある。
・ 要件が不明確であり、濫用的な請求につながることが懸念される。
・ 契約交渉過程で当事者が過度に注意深くなり過ぎて、まだ何の約束もしていないという確認の覚書の類いが増えることや、正当なプロセスで交渉をしているにも拘わらず、当事者の一方がこの規定を盾に、自己に有利な交渉をすることなどにより、実務に混乱をきたすことが懸念される。
・ 契約交渉の破棄による損害賠償が争われている事案の本質は、契約交渉過程において契約が成立することが確実であると信じて投資し又は費用を負担した者が被った損害につき、相手方はいかなる場合にかかる投資や支出をやめるように言うべきかという問題(すなわち、一方当事者に生じた費用・損失についての責任分担の問題)であり、正当な理由なく契約の成立を妨げたか否かの問題ではないように思われる。しかし、いかなる場合にこのようなことを相手方に伝えるべきか(費用・損失を分担するのが適切か)は事案により千差万別であって、これを一律に規定することは困難であると思われる。
・ 相手方に契約成立が確実であると信じるような相当な理由があった場合、承諾を拒否するには理由を説明しなければならない必要が出てくるが、理由を説明するこ
と自体が過酷な負担となる。
・ 要件が緩やかに過ぎる。
・ 契約締結の自由及びそれに対するxxx上の制約が認められることに異論はない。しかし、このような規定を設けることによって、不当に契約交渉を破棄したとして、不要に紛争が惹起されるおそれがある。仮にこのような規律を設けた場合には、交渉段階において何らの約束もしていないという確認の覚書の類が増えることが懸念される等、通常の取引に影響を与えることを懸念する。
・ いかなる場合に「相手方が契約の成立が確実である」と信じ、「そのように信ずることが相当」と言えるかは個々の当事者によって異なるものであり現行法と同様に、xxxの解釈に委ねた方がより柔軟に問題に対処が可能である。
・ 契約交渉を不当に破棄した者に対して一定の場合に損害賠償責任を負わせること自体については賛成であるが、以下に挙げる問題点を解消できない限り、これを立法化することには反対である。
まず、隣接領域の明確化が必要性であり、契約交渉不当破棄の責任を立法化する前に、既存の法制度ではこの問題を処理できない範囲を明らかにすべきである。①たとえば、締約意思がないのに漫然と交渉を継続する場合には、契約自由の原則の埒外として違法性を認め、不法行為責任を問うことも可能である。重複して規定するというのなら、不法行為との関係、棲み分けを明確にすべきである。②契約成立論との関係も曖昧な点が多くある。まだ申込みに至らない段階での交渉破棄と、申込み段階での破棄(申込みの撤回)とはどのような関係にあるのか。③本来の予約についての明文化は検討されていないようであるが、交渉段階における当事者の合意が本来の予約にあたるのはどのような場合で、どのような効果が認められるのか。これと交渉不当破棄の責任とは、どのような関係に立つのか。
次に、仮に立法化するとしても、他の制度との関係でその責任の法的性質を明確にすべきではないか。xxxに基づく責任というだけでは不明確ではないか。
・ 「事業者間」取引についても、消費者契約法並みの規定を目指しているように見受けられるが、かえって法的安定性を欠くおそれがある。
・ 仮に、これに類する規定を設けるのであれば、場合には、①条件の折り合いがつかず成約見込みの低い取引について、粘り強く交渉する行為や②交渉過程で相手方が反社会的勢力に該当することやローン審査が通らないことが判明し、契約を取りやめた場合などが不当と評価されないよう、契約交渉の破棄が原則自由であることを前提に、要件を厳格化する等の慎重な検討すべきである。
・ 建物賃貸借においては、賃貸人と入居希望者の間で契約成立に至るまでに、賃料交渉から、賃貸借契約期間の条件、賃貸物件ごとの入居に関する諸条件などについての各種取り決めを確認・交渉する中で、全ての契約交渉が必ずしも成立するとは限らない。その際に、成立しなかった交渉のどれが不当だったのかについて客観的に判断することは難しい。
・ 建物賃貸借においては、同時並行で検討する入居希望者の実態・また、近年賃貸市場は供給過多の状況にあり、入居希望者が多くの物件を同時並行で検討している
ケースも多数見受けられる。しかし、不当破棄に関する本規定が明文化されることにより、入居希望者が入居を検討した物件に関して条件等を交渉したうえで検討する方法は困難になり、自由選択権を阻害することにも繋がる。
・ 建物賃貸借においては、入居希望者の自由な選択により、市場が活発化していることや、供給側のサービスがより向上する一面もあるため、不当破棄に関する本規定が明文化されることに反対する。
・ 「正当な理由なく契約の成立を妨げたときは」という表現を用いると、一定の場合には交渉により契約締結義務が発生することを認めるように読めるが、そのような規定は不適当と思われる。
・ 民法以外の法律で規定すべきである。
・ 契約成立に対する合理的期待については、契約締結前に事前に当事者間で予備的合意を交わすなどの措置を講じることで対応可能であり、当事者が不測の損害を被ることを回避すべく合理的な努力を尽くすべきであって、かかる措置を怠った当事者を契約締結の自由を制約してまで救済しなければならない必要性には乏しい。
【その他の意見】
・ 契約成立が確実であると信じた場合のみならず、xxxに反する交渉、交渉破棄があった場合に損害賠償責任を負う旨を規定すべきである。(大阪弁、東弁)
・ 契約締結に向けた協議等を委縮させたり、交渉段階における協議が実質的内容に立ち入ることを妨げることが懸念されるため、明文化に際しては慎重な検討がなされるべきである。(東弁倒産法)
・ より積極的に、「締結過程における交渉に関する当事者間の権利義務関係」に関する規律について検討されてよい。(慶大)
・ 損害賠償は、履行利益ではなく、信頼利益であることも規定すべきである。(立大)
・ 消費者紛争の実態から言って、悪質事業者が規定を単純化して乱用する危険性が大きく、例外規定を設けることを含めさらに慎重な検討をするべきである。
・ 「相手方に生じた損害」の賠償責任を規定するが、信頼利益の賠償に限定しないという趣旨か明らかでない。いわゆる内定取り消し問題が生じたことがあるが、今後は転職の機会が増加し、それに伴い交渉の不当破棄のケースも増えることと思われる。そのようなケースで信頼利益の賠償にとどめることは合理性に欠けるように思われる。そのため、信頼利益の賠償に限定しないほうが適切であるように思われる。(愛媛法学会)
・ 本文部分をわざわざ設ける必要はなく、契約が成立しなかった場合、相手方に対し損害賠償責任を負う場合がありうることを明らかにすることで足りる。また、要件については更に検討が必要である。(親和会)
・ これまでの判例実務を前提とすると、契約の成立を期待して一定の費用を支出したところ、契約が不成立のために損害を被ったというケースについて、契約の成立を期待させた相手方に責任があることを認めつつ、費用を支出した側においても、過失があったとして、過失相殺が認められることが多い。この実務を前提とすると、損害を被った交渉当事者が、「そのように信ずることが相当である」とまではいえな
い場合でも損害賠償請求が認められているのではないか。このような理解を前提とすると、契約の成立を信じたことについて過失があっても、なお、契約の成立を信じたことが相当であると解される場合がありうることになる。そのような趣旨をより明確に表現する必要があるのではないか。(個人)
2 契約締結過程における情報提供義務
契約の当事者の一方がある情報を契約締結前に知らずに当該契約を締結したために損害を受けた場合であっても、相手方は、その損害を賠償する責任を負わないものとする。ただし、次のいずれにも該当する場合には、相手方は、その損害を賠償しなければならないものとする。
(1) 相手方が当該情報を契約締結前に知り、又は知ることができたこと。
(2) その当事者の一方が当該情報を契約締結前に知っていれば当該契約を締結せず、又はその内容では当該契約を締結しなかったと認められ、かつ、それを相手方が知ることができたこと。
(3) 契約の性質、当事者の知識及び経験、契約を締結する目的、契約交渉の経緯その他当該契約に関する一切の事情に照らし、その当事者の一方が自ら当該情報を入手することを期待することができないこと。
(4) その内容で当該契約を締結したことによって生ずる不利益をその当事者の一方に負担させることが、上記(3)の事情に照らして相当でないこと
(注)このような規定を設けないという考え方がある。
【賛成】
東弁倒産法、TMI、慶大、ファンの会、福岡弁、xx総合、日弁連消費者委、NAC S、アンダーソンxxxx、愛知弁司法制度調査委、ドイツ研、埼玉青年書士、二弁、早大、かわさき、東弁全期会、堂島、日司連、個人6名
・ xxxxxx則の具体的な適用局面が明示されることによって、契約交渉段階における誠実性という行為規範が明示されることの意義は、積極的に評価されるべきである。
・ 本文の考え方は、判例・学説上確立したものといえ、その要件も適切であると考えられる。
・ 契約を締結するか否かの判断の基礎となる情報は各当事者がそれぞれの責任において収集すべきであるものの、一定の場面でその原則が変容を受けることについてはxxxの一つのあらわれとして受け入れられている。
・ 消費者の情報力格差は歴然だが、適切な情報提供がなされないケースが多い。条文に入れば現場で使いやすい。
補足意見
・ 契約自由の原則・自己決定権の尊重といった理念は、非対称性取引においては、情報優位者から劣位者に対して、適切な情報が提供されることにより、はじめて機能する理念であるといえる。
・ 錯誤・詐欺による原状回復との機能配分につき、明確にすべきである。
・ (1)の「知ることができた」の要件が緩やかに解釈された場合、損害賠償責任が認められる場合が過度にxxとなるおそれがある。その他の要件についても、従前の裁判例を踏まえて、本試案の要件のように一般化できるか否かさらに検討が必要であると考えられる。
・ xxxの内容を具体化してxxとすることにより、条文に明記されなかった内容については重視されるべきでないなど、新たな解釈適用上の議論がなされて、混乱が生じるおそれも否定はできないため、要件の過度な精緻化は避けることが望ましい。
・ 一般的に契約締結過程における情報提供義務を規定するとしても、労働契約については、別途の考慮が必要である。例えば、労働契約法 4 条 1 項は、「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。」と定めているが、これは努力義務を定めた訓示規定と解されている。これに対し、本規定を導入すれば、労働契約法 4 条 1 項が対象とする事項についても損害賠償義務が生ずる可能性がある等、労働契約に関する情報提供義務の範囲が不当に拡大されるおそれがあるので、労働契約は適用除外すべきである。
・ (3)の要件は厳しすぎるので、「通常期待し得ない」という表現を用いた最判平成 24 年 11 月 27 日金法 1959 号 30 頁を参考にして要件を緩和し「期待するのが相当ではないこと」としてはどうか。
・ 錯誤無効(取消し)との関係を検討する必要があろう。例えば、表意者(錯誤者)に重過失があるが、しかし、その錯誤を相手方も認識していた場合、取消しもできるし損害賠償請求もできることになるように思われる。
・ 売主の説明義務について、「特段の法領域を設定して、その発生要件、内容等を明確にした上で、契約法理に準ずるような法規制を創設する」作業を速やかに行ってもらいたい。
・ この責任の法的性質については、さらに整理する余地があるように思われる。この規定が「契約」の章に設けられることとなれば、この責任を一種の「契約責任」として位置づける理解を支持する論拠となろう。しかし、この責任の法的性質については、これを不法行為責任の一種と解するものもきわめて有力であり、実際、不法行為の消滅時効期間を適用する裁判例が少なくない。本試案は、不法行為に固有の時効期間を残すことを提案しているから(第7-4)、この責任を一種の契約責任として位置づけることによって、現状よりも時効期間が長期化される事例が生じかねない。加えて、『補足説明』(「補足説明」欄3(3))においては、本規定が想定する以外の不誠実な行為につき、(xxxではなく)不法行為法によって対応すべきことが示唆されている。そうすると、特に本条が定める場合についてのみ、その他の不誠実な行為とは異なる効果を認める余地が残されていることとなろうが、その当否も疑問である。責任の法的性質を確定することは要しないまでも、時効期間を統一するための対応を検討することは考慮に値すると考える。
・ あえて本文を定める必要は無く、ただし書き以下を定めることで十分といえる。
【反対(注に賛成)】
沖縄弁法制委、大阪弁、一弁、札幌弁、経営法友会、全不協、大分弁、連合、労働弁、立大、自工会、車販協、ACCJ、xx弁、同友会、生保協、国際企業法務、国際取引、流通クレ協、全相協、共済協、全信組協、サービサー協、経団連、全宅連、三菱電機、xxxxx、損保協、知財協、日弁連消費者委、農中、全相協関東、コンビニ問題弁連、新経連、TOA、改正研、不動産証券化協、建設コンサル協、電情産協、日建連、xxx、不動産流通協、虎門、日xx、証券問題研、信販協、群馬弁、xxxxxx、消費者機構日本、日本GE、チェーンストア協、JCFA、貸金業協、日証協、改めて見直す会、最高裁(相当数)、個人21名
・ 義務の内容・程度は、当事者の属性や相互の関係、交渉経緯などにより個別の事案ごとに異なるから、一般的な規定を設けることはそもそも困難であり、むしろ個別の事象に即した妥当な解決を阻害するおそれがある。
・ 裁判例が一般的な規範を提示するにまでは至っていない状況で、情報提供義務が 明文化され行為規範化されると、義務の内容が固定化され、個別事案の中で妥当だ とされた範囲を超えて事業者側で情報提供義務を過度に負担する可能性が発生する。
・ 特別法上の情報提供義務との関係で問題がある。例えば、金融商品取引法では、特定投資家への説明義務・情報提供義務の免除が定められているが、このような場合であっても、民法上では違反とされる可能性があり、法的安定性を阻害する要因となりかねない。
・ 契約を締結するために必要な情報収集は、あくまで自己責任によって行うことが経済取引における原則である。情報提供義務を認めることは、かかる原則を歪め、情報収集のために必要な自助努力を怠った当事者をいたずらに保護することになりかねない。
・ 事業者間取引においては、消費者取引のように類型的に情報格差が著しいとは言えず、情報格差がある場合でも、一般に情報それ自体に財産的価値があり、事業者は必要な情報を収集するための努力をそれぞれ行っていることから、そのような情報格差が存在する中で交渉し契約を締結していることが通常である。たとえ、ただし書の形であっても、民法上情報提供義務を一般的な義務として規定することは、実務の感覚から妥当でないと考える。
・ 消費者の権利の尊重などといった特定の政策目的の規律としては既に消費者契約法等が存在しており、その規律に従って安定的に実務は進められている。一般法たる民法にこのような立法趣旨を拡大解釈されかねない規律を重ねて導入する必要はないし、むしろ、民法の基本法としての性格を歪めかねない。また、民法は、私法の一般法として抽象的な「人」概念を前提に私人間の法律関係を規律しているからこそ、消費者契約法などの特別法との関係でも基準としての機能を果たしてきた。民法に特定の属性に基づく規律を設ければ、このような機能を大きく阻害する。特定の政策目的を有する規律については特別法で定めるべきであり、民法に規律を導入することに強く反対する。
・ 濫用のリスクを排除するためには、情報提供義務の範囲や責任について明確かつ
詳細に規定する必要があるが、契約当事者の属性、契約内容等によって異なり得る詳細な規定を、一般法である民法に置くことは不適当である。
・ 基準が不明確で、かえって予測可能性に欠ける。損害賠償の範囲についても規定されておらず、このような規定をおく意味はない。
・ 当事者間に生じる責任の内容が不明確であり、自由を原則とする交渉実務に支障が生じるうえ、当該義務の履行に要する手間や費用が事業者のコストに反映されてしまい、市場に悪影響を及ぼす可能性がある。
・ xxxxの要件は、従来の判例より情報提供義務の範囲が広がる懸念があり、企業が法的トラブルを回避するために必要以上に情報提供を行う結果、契約交渉の煩雑化と取引コストの増大を招き、経済に悪影響を与える恐れがある。
・ 情報提供義務が規定されれば、契約内容の交渉段階に入る前に、交渉段階で当事者間で開示されるべき情報の範囲を画定するための事前交渉や、自ら開示する情報の範囲を吟味する作業が必要になってしまい、迅速かつ活発な経済活動が阻害される。
・ 設計契約の場合、その成立前に当事者双方から必要な情報をすべて提供するのは不可能である。したがって、契約交渉段階の破棄責任や情報提供義務の規定が設けられると、実務が混乱することが予想される。
・ 契約後に発覚した些細な誤解・誤認について説明義務違反を追及されるケース等が生じると、取引の安定を害し、事業者の活動に不当な萎縮効果を与えるおそれもある。
・ (1)から(4)までの要件の解釈次第では、情報提供義務が広く認められてしまう可能性がある。
・ (2)の要件については、相手方の主観的事情によって情報提供義務の範囲が異なる可能性があり、情報提供義務の範囲を客観的に判断することが困難である。本来、契約締結交渉において当事者間でどのような情報のやりとりを行うかは、私的自治の原則の下、当事者の自由意思に基づく判断に委ねられるべきであって、これに反して、私法の一般法である民法にxxな格差是正を目的とした規定を設けることは、自由な市場競争を不当に阻害することに繋がるおそれがある。
・ 立法化する場合、説明義務・情報提供義務を負う対象事項を一定の範囲に限定することは必要であるが、特にxxxx(4)の要件は、曖昧すぎて限定の役割すら果たせないのではないか。
・ 従来認められてきた内容と同じ内容を規定するにとどまるのであれば、敢えて規定を追加する必要はない。
・ 消費者契約法においては重要事項に該当しない情報も情報提供義務の対象になる場合、当該顧客の特殊性に配慮しなければならず、加えて故意要件から過失要件になっている分、事業者側の責任は過大になる。
・ 「契約の当事者の一方が、ある情報を契約締結前に知っていればその内容で当該契約を締結しなかったと認められる場合」を契約時に関知することは困難である。
・ 賃貸借契約において、多様な価値を持つ賃借人は、どのような情報を(2)「契約締
結前に知っていれば当該契約を締結せず、又はその内容では当該契約を締結しなかった」とするのかについて、特定することは難しい。また情報の内容によっては、個人情報保護および近隣住民や前住居人のプライバシー保護に抵触することを考えると、ただし書き以降の内容についての、実務上の対応は困難であると言わざるを得ない。
・ 守秘義務など「情報保持者側の事情」が情報提供義務の成立の要素とされていない。
・ 濫用的な請求につながることが懸念される。
・ 問題があれば意思表示の瑕疵に関する規定で対応することができる。
・ 錯誤や不実表示の規定との関係が不明確である。
・ 労働者が採用時に不利な情報を提供しなければならないこととなるおそれがある。情報提供義務の要件が厳格であることを理由とする意見
・ 判例・実務上、情報提供義務、説明義務は認められており、原則として情報提供が義務づけられないという考え方は誤りである。原則として情報提供義務がないこと、例外的に情報提供義務違反による損害賠償義務を相当限定された要件のもとで負うことだけを規定するのでは、情報提供は限定された場面でしか行う必要がないとの誤ったメッセージを与える可能性が高い。
・ 説明義務又は情報提供義務の根拠がxxxにある以上は、事案に応じて柔軟な判断がなされることとなる。提案では「例外」としての情報提供義務を(1)ないし
(4)の「いずれにも」該当する場合にのみ認めるという規定ぶりとなっているが、情報提供義務を例外的かつ制限的なものに貶めている点で、これまで積み重ねられた判例・実務や立法を後退させ、判断も硬直的なものとなってしまう。xxxに基づき一定の場合に情報提供義務が発生すること、情報提供義務が発生するか否かの判断における具体的な考慮要素、及びその違反の効果が損害賠償義務であることを示すにとどめるべきであり、(1)から(4)のような要件を定めるべきではない。
・ (1)から(4)までの要件が厳格に過ぎ、これまでの判例を後退させることになる。
・ 今回の試案が条文化されれば、情報の質・量、交渉力において劣後する当事者が情報提供義務が発生する要件を主張・立証しなければならないことになるが、当事者の情報の質・量等が対等でないからこそ情報提供義務が議論されているのであり、高いハードルを越えなければ情報提供義務が課せられないというのは本末転倒である。
・ 本規定の本文柱書第1文は、契約当事者は契約締結前に互いに他方当事者に対して情報提供義務を負わず、また、情報提供をしなかったことにより他方当事者に生じた損害について責任を負わない、とするものである。民法において説明義務ないし情報提供義務を原則として否定する規定がxxで設けられることとなれば、従来のようなxxxを根拠とする説明義務を肯定する考え方は、本規定と明らかに抵触することとなるのであるから、説明義務に関する従来の判例法理の法解釈が重要な影響を受けることは、火を見るより明らかであり、金融商品取引業者の説明義務が軽減され、最悪の場合には説明義務自体が否定されることとなるおそれは非常に高
いものと言わざるを得ない。金融商品取引業者の説明義務を原則として否定する本規定によれば、説明義務の前提となる適合性原則も否定されることとなり、適合性原則の前提となる「顧客を知るべき原則」も否定されることになる。また、後述するとおり例外的に情報提供義務を認めるための本規定(1)乃至(4)の要件が非常に厳格であり、現在の説明義務に関する判例法理と全く整合しない。
・ 本文柱書第1文の規定を置くことに強く反対する。投資商品の勧誘における説明義務、不動産取引における情報提供義務、医療現場におけるインフォームド・コンセント等の場面は情報提供義務や説明義務があることが原則であり、これらの義務がないことが原則ではない。また、今後の社会・経済の発展のなかで、新たに情報提供義務や説明義務が措定される領域が拡大することは容易に想定できるが、本文柱書第1文は、このような進歩の障害となりかねない。一般の取引場面を想定しても、契約当事者間においてお互いに積極的に情報を提供して、共通の認識のもとに契約関係を締結することは、xxxに基づく取引関係の円滑を図る観点からも極めて重要である。
【その他の意見】
・ 民法1条2項よりは抽象度の低い理念的規定(いわば中間的な一般条項)を置くことも検討されるべきである。(沖縄弁法制委)
・ 情報提供義務と説明義務が異なるものとして理解されているところ、上記提案では両者の違いが不明であることや、労働契約における労働者に情報提供義務を課す場合は、労働者に対し、同人の思想、信条、病歴等の情報提供を強いることになるおそれがあるので、要件についてはさらに検討すべきである。(東弁)
・ 「契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、契約の性質、各当事者の地位、当該交渉における行動、交渉過程でなされた当事者間の取り決めの存在及びその内容等に照らして、xxxxxx則に従って、当該契約を締結するか否かに関する相手方の判断に影響を及ぼすべき情報を提供しなければならないにもかかわらず、当該情報を提供しなかった場合」のように、一定の抽象度を維持して規定することを検討すべきである。(森xxxx)
・ (3)の要件で考慮される事情として「当事者が情報を入手するためにした行為」を例示すべきである。情報サービス取引においては、ユーザ自身も積極的に行動しなければ必要な情報収集ができないが、情報提供義務の規定が設けられるとユーザのインセンティブが低下することが懸念されるので、「当事者が情報を入手するためにした行為」を例示することによってユーザのインセンティブを維持することができる。(情報サービス協)
・ 仮に本文のような規定を設ける場合、たとえば「相手方が知ることができた」の要件に関して、相手方が情報の収集や調査を行う義務を負う場合であって、その義務が適切に果たされたならば知ることができたときに限定するなど、情報提供義務の範囲を適切に画する必要性が大きい。(損保協)
・ 要件・効果ともに十分に確立したものではないように思われる。たとえば、効果について、必要ない契約を締結してしまった場合について、損害賠償では対応する
ことができない。このような場合には取消権を認める必要があるように思われる。
(愛媛法学会)
・ 契約交渉における当事者の関係は多様であるが、現在の取引において情報の格差が著しいことから、情報提供義務・説明義務が認められるべき場合を規定して頂きたい。(全中)
・ 情報提供義務を規定することには賛成するが、本試案では、情報提供は原則として義務付けられないことと、例外的に情報提供義務違反による損害賠償義務を相当限定された要件のもとで負うことだけを規定するのであって、不十分である。「当事者間の情報の質、量、情報処理能力、及び、交渉力の格差」「各当事者の属性・専門性」その他一切の事情を踏まえ、情報提供義務を負うことを明記すべきである。(かわさき、個人)
・ 趣旨は賛成するが、規定の仕方についてはさらに検討するべきである。情報提供義務があることを明らかにすることは、特に当事者間に大きな情報格差が存在する場合に、有益であるが、原則として損害賠償義務がないことを明記する点や、(1)から(4)までの要件によって損害賠償義務が認められる範囲を限定しているとも考えられる点は適切とはいえない。(親和会)
第 28 契約の成立
1 申込みと承諾
(1) 契約の申込みに対して、相手方がこれを承諾したときは、契約が成立するものとする。
(2) 上記(1)の申込みは、それに対する承諾があった場合に契約を成立させるのに足りる程度に、契約の内容を示したものであることを要するものとする。
(1)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、一弁、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(多数)、個人3名
・ 分かりやすい民法という観点から、基本ルールを明確にする必要性がある。その他の意見
・ 交渉による合意形成に基づく契約の成立に関する規律も必要ではないか。
・ 申込が契約の内容を示し、その内容を承諾していた場合であっても、契約締結権を保留していることもあり得るので、当事者の特別の定めを例外規定として置くことを検討する必要がある。
・ 承諾の定義規定も置いた方がさらに分かりやすい。
【反対】
早大、チェーンストア協、xx弁、個人4名
・ 申込み・承諾以外の成立形態をも包含し得る表現を用いることが望ましい。
・ いわゆるミラーイメージ・ルールや書式の戦いを明文化することで、ウィーン売買条約 19 条等と整合させるべき。
・ これによって申込みと申込みの誘因とを明確に区別できるわけではなく、さほどの意味はない。
・ 案は循環論法であり、このような規定は作るべきではない。
(2)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、一弁、大阪弁、東弁、横浜弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、二弁、日司連、日大、親和会、個人3名
・ 分かりやすい民法という観点から、特に申込みは契約の成立要件として重要な概念となるため、明確にする必要性がある。
・ 一定の具体性がなければ法的拘束力のある合意にはならないということを示すことの意味はある。
【反対】
連合、堂島、xx弁、個人4名
・ 労働契約についてもその成立要件がこれまでより厳格に解されるおそれがある。その結果、採用内定の場合について、被採用者に労働契約上の地位が認められなくなってしまう危険性がある。
・ 契約を成立させるにたりる程度に、契約の内容を示すということが何を意味するかは十分に明らかになっているとはいえない。何が申込みに当たるかどうかを正確に定義することは困難であり、種々の事例を通じて説明するほかはない。
・ 申込と申込の誘因の区別について、基準は、意思表示を行った者が、承諾を受ければただちに契約を成立させる趣旨であったかどうかによるべきである。
【その他の意見】
・ 当該規定が存在することを理由に、条件交渉等の局面における担当者による条件の打診・提案等の一定の言動について、契約が成立したとの主張を誘発するおそれがある。(サービサー協)
・ 取引分野によっては契約の内容の一部が未確定であっても契約の申込みとして取り扱うべきケースもある。(損保協)
・ 契約が成立するためにどのような「契約の内容を示」す必要があるかが十分に明らかにされておらず、そのために規定の意味内容が乏しくなっている。この点については、『中間論点整理』第 22-2に示されていたように、当事者の意思およびその契約の性質に照らして定められるべき事項を中核とする定義を示すことが、積極的に検討されてよいのではないか。(早大)
2 承諾の期間の定めのある申込み(民法第521条第1項・第522条関係)
(1) 民法第521条第1項の規律を改め、承諾の期間を定めてした契約の申込
みは、申込者が反対の意思を表示した場合を除き、撤回することができないものとする。
(2) 民法第522条を削除するものとする。
(1)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、三菱電機、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(多数)、早大、個人3名
・ 現行民法において複数の見解がありうる、撤回可能性を留保していた場合に撤回できることを明文化することが相当である。
・ 申込者の意思を尊重すべきであり、申込みの撤回をすることができる意思を表示していたとき、申込みの撤回を認めたとしても相手方に不当な損害を及ぼすことはないと考えられるので、撤回を認めない合理的理由がない。
・ 民法第524条の規律を「隔地者」に限定する必要はない。その他の意見
・ 「申込者が反対の意思を表示した場合」という文言が、申込時において撤回の権利を留保している場合に限られず、申込み後、申込者はいつでも反対の意思を表示すれば撤回することができると拡大解釈され得るため、このような解釈を排除する文言になるよう再検討すべきである。
【反対】
xx弁、個人 1 名
・ 改定の必要がない。
(2)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(多数)、早大、個人3名
・ 承諾について到達主義をとる以上、承諾の到達遅延は、承諾者の責任というべきであり、民法第522条第1項本文の規律は不要である。
・ 現代において承諾が延着する現実的可能性はない。
・ 現522条の内容が不明確である。
【反対】
改めて見直す会、xx弁、個人2名
・ 国際動産売買に関する国連条約は、承諾の到達主義を採用しているにもかかわらず、遅延した承諾に関してわが国の民法522条と同様の規定を置いており、到達主義を採用するから当然に削除するという理由付けは不適当。
・ 到達主義とするのは不適当である。
3 承諾の期間の定めのない申込み(民法第524条関係)民法第524条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができないものとする。ただし、申込者が反対の意思を表示したときは、その期間内であっても撤回することができるものとする。
(2) 上記(1)の申込みは、申込みの相手方が承諾することはないと合理的に考えられる期間が経過したときは、効力を失うものとする。
(注)民法第524条の規律を維持するという考え方がある。
(1)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、三菱電機、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 相手方において承諾の可否について調査を行う等の準備行為をする利益を害さないようにするという要請は、隔地者間に限られない。
・ 申込者の意思を尊重すべきであり、申込みを撤回できる旨の意思表示をしているのであれば、被申込者も申込みが撤回されるリスクについて覚知しているのであるから、撤回可能性を否定すべき合理的理由はない。
・ 撤回可能性を留保していた場合に撤回できることを明確化することが相当である。その他の意見
・ (1)の相当期間と(2)の合理的期間と関係が判然としないので、(1)の相当期間は(2)の合理的期間の範囲内であることが分かる規定とすべきである。
・ 「申込者が反対の意思を表示した場合」という文言が、申込み後、申込者はいつでも反対の意思を表示すれば撤回することができると拡大解釈され得るため、このような解釈を排除する文言になるよう再検討すべきである。
・ 労働者からの労働契約の合意解約の申込の撤回については、民法第524条を削除しても、錯誤などの他の理由による取消等により解決が可能である。
【反対】
連合、労働弁、改めて見直す会、xx弁、個人3名
・ 労働者は退職願いを提出した後であっても人事権者がこれを受理するまではその退職願いを自由に撤回することができるとするこれまでの判例法理が維持できなくなる危険性が大きい。
・ 労働者側からの労働契約の合意解約以外の契約でも申込みの撤回が制約されるのは相当でない同様の問題は生じ得る。
・ 契約締結の場合と、継続的な契約を合意解約する場合には、利害状況が異なるため手当てが必要。
その他の意見
・ ①申込みの撤回の制限に関する条項の適用対象を契約成立の場面に限定し、合意解約の場面については適用除外とするか、②労働契約や賃貸借契約等の継続性のある契約についての合意解約の申込みに関して、承諾がなされるまでは自由に撤回できる旨の規定を設けるか、③「xxxx」の注記にあるとおり規定創設を見送って民法第 524 条を維持するか、のいずれかを採用すべきである。
(2)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日司連、日大、最高裁(比較的多数)、慶大、早大、個人3名
・ 承諾期間の定めのない場合に、申込みの効力がいつまでも持続するのは適切ではなく、その存続期間を明確にする必要性がある。
(1)の「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間」と(2)の「申込みの相手方が承諾 することはないと合理的に考えられる期間」の関係について
・ 「申込みの相手方が承諾することはないと合理的に考えられる期間」を(1)の文言と対比すれば、ここでの期間が承諾適格の存続期間よりも長期であることを読み取ることができ、かかる規律は合理的である。
・ (2)の「合理的に考えられる期間」と(1)の「相当な期間」の関係が明らかでないため、条文化に際しては、(2)の期間が(1)の期間よりも長いことが明らかとなるように、表現を工夫すべきである。
・ 例えば商取引においては、迅速判断が要請されることから、期間の定めのない申込みの拘束力と承諾適格の期間が一致することもあり得るから、後者の期間が前者の期間よりも常に長いことを前提とした条文化には慎重を期すべきである。
・ 「合理性」を基準とすることで、申込みの態様に応じた柔軟な判断を望み得ると解される点で、適切な表現であると考える。
「申込みの相手方が承諾することはないと合理的に考えられる期間」の文言について
・ 「合理的」という概念は、現行民法において使用されていないところ、その内容を確定することが困難な概念であると思われるので、表現についてさらに吟味すべきである。
【反対】
改めて見直す会、xx弁、個人4名
・ 「相手方が承諾することはないと合理的に考えられる期間」との文言は不明確である。
・ もともと任意規定とは意思表示の補充を目的とするものであるから、具体的な期間を決め、異なる場合は当事者が別の意思表示をすれば良い。
4 対話者間における申込み
(1) 対話者間における申込みは、対話が終了するまでの間は、いつでも撤回することができるものとする。
(2) 対話者間における承諾期間の定めのない申込みは、対話が終了するまでの間に承諾しなかったときは、効力を失うものとする。ただし、申込者がこれと異なる意思を表示したときは、その意思に従うものとする。
(1)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、個人3名
・ 対話中は相手の反応を察知して新たな内容の提案をするなど、申込み内容が変動することも十分にあり得るところであり、対話中はいつでも申込みは撤回できるとするのが当事者の意思に合致する。
・ 対話者間では、対話継続中に承諾のために何らかの準備をすることを考えにくく、撤回によって被申込者が害される可能性が乏しいので、妥当である。
・ 分かりやすい民法の実現の観点から、対話者間の規律を明確にすべきである。その他の意見
・ 両当事者の会話は続いているが、話題が変わった場合、それは対話が終了したというのかを明確にするべき。
【反対】
改めて見直す会、xx弁、早大、個人4名
・ 「対話」にインターネット等を通じたやり取りが含まれるかどうかや、「対話が終了するまでの間」の解釈を巡り、混乱が生ずるおそれがある。
・ オークションや、生鮮食品の競りなどでは、口頭で行われるが、一旦申込みをすると、撤回できないことになっており、案の文言では不適当である。
・ 「相手の反応を察知して新たな内容の提案」をする余地を残してなされる提案はそもそも申込みの誘引があると認められるにすぎない場合が多いのではないか。
・ (1)の想定する場面のうち、対話者間でなされた承諾期間の定めのある申込みは、第 28-2(1)にいう「反対の意思を表示した場合」に該当し得るものと解すれば足りるのではないか。
・ 第 28-4(1)があることにより、撤回権の放棄を明示して申込みをしたような場合にも、対話が終了するまではなお申込みの撤回が認められることになりそうだが、撤回権が放棄された場合には当該期間内における申込みの撤回は許されないものとする余地を認めてよい。
【その他の意見】
・ 申込みと承諾のルールに関して、「申込者ないし承諾者が反対の(異なる)意思を表示したときは」という例外が明示されているが、申込みや承諾について、一般的
に表意者の異なる意思が優先する趣旨を定めた方が分かりやすいのではないか。現在のスタイルで規定すると、その例外が明示されていないときには、表意者の意思は考慮されないという意味で受けとめられる可能性があるように思われる。(個人)
・ 「対話者間」という用語を事前に説明しておくべきである。(個人)
(2)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、早大、最高裁(比較的多数)、個人3名
・ 対話者間の規律を明確にすべきである。
・ 対話者間に特に反対の意思を表示した場合を除き、対話中に最終的な意思決定を行うことが期待され、対話が終了した時点で申込みの効力が失われると考えられるのが通常と思われる。
・ 対話者間において直ちに被申込者が承諾しないのであれば、申込者は、被申込者が承諾をしなかったことを前提として新たな契約の相手を探す等の行動に移るのが通常であることから、対話中に承諾しない場合、承諾適格がなくなるとするのが相当である。
【反対】
札幌弁、xx弁、個人2名
・ 商法507条の規定が常識に沿うように思われるので、これと同様の規定を設けるべきである。
5 申込者及び承諾者の死亡等(民法第525条関係)
民法第525条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失した常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、相手方が承諾の通知を発するまでにその事実を知ったときは、その申込みは、効力を有しないものとする。ただし、申込者が反対の意思を表示したときには、この限りでないものとする。
(2) 承諾者が承諾の通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失した常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、その承諾の通知が到達するまでに相手方がその事実を知ったときは、その承諾は、効力を有しないものとする。ただし、承諾者が反対の意思を表示したときには、この限りでないものとする。
(1)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、
慶大、日弁連、xx総合、改正研、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 申込者の通常の意思に合致すると解される。
・ 法的安定性のためには、死亡者、制限行為能力者との契約関係の成立を狭める方向で調整することが適切である。
・ 申込みの意思表示の相手方がこのような事実を知ったのであれば、いったん申込みの効力がなくなるものとして、必要があれば再度申込みをしてもらえば足りる。
「申込者が反対の意思を表示した場合」との文言を削除することについて
・ 民法第525条の「申込者が反対の意思を表示した場合」は当然のことを定めたものではあるが、これをわかりやすく注意的に規定することに意味もあり、削除すべき特段の理由もないため、削除することには反対。
申込者が意思能力を喪失した場合の規律を付け加え、「行為能力の喪失」という文言を「行 為能力の制限」に改めることについて
・ 意思能力の欠如の立証困難性に対応して創設されたのが制限行為能力制度である以上、意思能力の欠如への対応もなされるべきである。
・ 意思能力を喪失した場合も、判断能力を欠く状態であるという点では行為能力喪失と同じであるから、意思能力喪失時を加えるべきである。
・ 意思表示を取消し得る事情を長期的に存続させることは法的安定牲を欠き適切でないことを考慮すれば、妥当である。
承諾者が申込者の死亡等の事実を知る時期について
・ 未だ承諾が発信されない段階で、相手方が申込者の死亡等を知ったときに、申込みの効力を維持し、契約の成立を認めるべき必要性がいかほどあるのかについては疑問があり、このような場合に申込みの効力が失われるとすることには合理性がある。
その他の意見
・ 市民にとってわかりやすい民法の観点からは、民法第525条の例外規定としての定め方は改めるべきである。
・ 本xxxxを前提とすれば、民法第525条は民法第97条2項の単なる特則として位置づけられるのではなく、申込みと承諾による契約の成立に関して独立した規定と解されることから、ただし書きにおいて「申込者が反対の意思を表示したとき」、民法第525条の規律を排除できることを明示することは重要と思われる。
【反対】
xx弁、個人3名
・ 契約が成立しないことで損失が出ることもあるため、案のような規定が保護につながるとは言えない。申込者の意思を尊重して、申込みの効力が失われないことを原則とし、反対の意思表示があった場合に撤回されたとみなされることにすべきではないか。
・ (1)に意思能力を喪失した常況にある場合の規律を付け加えることについては、承諾到達時における申込者の意思表示の受領能力の問題として処理すれば足りる。
【その他の意見】
・ 「常況」という用語を事前に説明しておくべきである。(個人)
・ 意思能力と行為能力に関する規定を論じるためには、その前提として、xx後見制度の見直しを必要とする。その検討をしないまま、意思能力と行為能力について論じても無意味である。(個人)
(2)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、改正研、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 到達主義を採用すると、承諾者の死亡等についても規律を設けることが必要となる。
・ 承諾の発信前に死亡や行為能力の喪失を知っていた場合にまで、契約を成立させる必要性がない。
【反対】
日司連、xx弁、個人3名
・ 当事者の意思を合理的に解釈するならば、申込者が契約の申込をし、承諾者がその発信をするという事実は、事実上、契約当事者が契約の成立に向けて行動を起こしているのであるから、これらの者に契約の成立を認める方向で評価をするべきである。
・ 仮に契約を成立させるべきでない局面が存在したとしても、その判断については、申込者が承諾者の死亡又は意思能力の喪失等を知ったか否かを基準とすべきではなく、契約当事者(ないしその相続人)の意思や契約の内容等を解釈に委ねることが妥当であると考える。
6 契約の成立時期(民法第526条第1項・第527条関係)
(1) 民法第526条第1項を削除するものとする。
(2) 民法第527条を削除するものとする。
(注)上記(1)については、民法第526条第1項を維持するという考え方がある。
(1)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、TMI、慶大、日弁連、経団連、xx総合、虎門、二弁、堂島、日司連、日大、親和会、早大、最高裁(多数)、個人3名
・ 通信手段の発達した現代社会においては、承諾についてのみ発信主義を採用する必要性は高くない。
・ 現行民法において承諾について発信主義の例外が採用されていること自体の合理性も疑わしく、承諾の発信主義の採用が、申込みと承諾に関する規定の解釈を錯綜させる一因にもなっている。
・ 実務においては、事務処理・契約管理等の観点から、契約の成立について発信主義を採ることが必要となる場合もあると思われるが、このような場合であっても、予め当事者間で契約の成立時期について発信主義を採る旨を合意することが認められていれば足り、実務上大きな支障はないと考えられる。
その他の意見
・ 契約の成立時を一律に把握する必要性から、実務上、発信主義を用いる場合があることから、この規定は任意規定であり、別段の合意により、発信主義をとることが妨げられない旨を明らかにすべきである。
・ 約款において、当該約款に基づく契約の成立について発信主義を採る旨の規定が設けられている場合があるが、このような規定も有効とされるべきである。また、このような規定が、民法第97条1項に反するものではないことはもちろん、不意打ち条項や不当条項、消費者契約法第10条にも該当しないことが解釈上、明らかにされていることが望ましい。
【反対】
生保協、流通クレ協、改めて見直す会、xx弁、個人3名
・ 契約年月日は、法定書面への記載や指定信用情報機関への登録が義務づけられている。契約年月日を確定するために、承諾した旨の通知を受け取った日付を確認する作業は煩雑を極め、実務運営が困難となる。
・ 現状の実務において、わざわざ到達主義に変更しなければならない理由はない。
・ 例えば火災保険契約のような契約の成立時点の前後で大きな違いを生じる契約を考えた場合、承諾の到達時点は承諾者からは分からないし、郵送事情で遅れることもあるが、郵送事情で遅れている間に事故が起きれば、トラブルが起きる。
【注に賛成】
生保協
・ 保険契約のように申込者は速やかな契約関係の成立を求めていると考えられる契約類型もあること、通信事情の発達した今日でも未だ連絡先の誤記等による不着という問題は存在することに鑑みると、隔地者間の契約の成立時期を発信主義とする現行規定は未だ合理的であるものと考える。仮に隔地者間の承諾を到達主義と改める場合であっても、申込者の了解により発信主義を維持することが可能であることを明確化することを要望する。
【その他の意見】
・ 契約の成立時期につき、承諾の意思表示の到達時とされることについては、これが強行規定である場合には賛成できない。民法第526条第1項を削除するとしても、意思表示により現行の民法第526条第1項と同様の取扱いをすることも可能となる旨を明確にしていただきたい。(クレ協、信販協、クレカ協、JCFA、貸金業協)
・ 到達主義を採用する場合、電子メールのような高度な通信手段の不着や延着に関する規定が必要と考える。(電情産協)
(2)について
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、一弁、札幌弁、東弁倒産法、慶大、日弁連、xx総合、改正研、二弁、堂島、日司連、日大、横浜弁、早大、最高裁(多数)、個人3名
・ 申込みの撤回の到達遅延は申込者の責任として、承諾の到達との先後で決するのが簡明である。
・ (1)で到達主義を採用すれば、撤回の意思表示の延着と承諾の意思表示の到達のいずれが早いかについて承諾者は判断できないため、民法第527条を維持することは困難となる。
・ 当事者の選択により発信主義を採用する場合のリスクは当事者において分担を取り決めれば足り、あえて明文化する必要はない。
【反対】
xx弁、個人3名
・ 民法527条は、承諾の発信主義を規定した条文ではなく、削除する理由とはならない。承諾の到達主義を採用する国際動産売買に関する国連条約においても、申込みの撤回は、承諾の「発信」の前に到達しなければその効力を生じないとしている。
7 懸賞広告
懸賞広告に関する民法第529条から第532条までの規律を基本的に維持した上で、次のように改めるものとする。
(1) 民法第529条の規律に付け加えて、指定した行為をした者が懸賞広告を知らなかった場合であっても、懸賞広告者は、その行為をした者に対して報酬を与える義務を負うものとする。
(2) 懸賞広告の効力に関する次の規律を設けるものとする。
ア 懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めた場合において、当該期間内に指定した行為が行われなかったときは、懸賞広告は、その効力を失うものとする。
イ 懸賞広告者がその指定した行為をする期間を定めなかった場合において、指定した行為が行われることはないと合理的に考えられる期間が経過した ときは、懸賞広告は、その効力を失うものとする。
(3) 民法第530条の規律を次のように改めるものとする。
ア 懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めた場合には、その懸賞広告を撤回することができないものとする。ただし、懸賞広告者がこれと反対の意思を表示したときは、懸賞広告を撤回することができるものと
する。
イ 懸賞広告者は、その指定した行為をする期間を定めなかった場合には、その指定した行為を完了する者がない間は、その懸賞広告を撤回することができるものとする。
ウ 懸賞広告の撤回は、前の広告と同一の方法によるほか、他の方法によってすることもできるものとする。ただし、他の方法によって撤回をした場合には、これを知った者に対してのみ、その効力を有するものとする。
(1)について
【賛成】
大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 報酬の負担者である懸賞広告者からみれば、客観的には懸賞広告者の期待が実現されているから、懸賞広告者に報酬支払義務を負わせても特段の問題はない。
・ 本条項が定められれば、従来から疑義があった点につきxxで解決される。その他の意見
・ (1)の規律は、懸賞広告は単独行為であるとの理解を前提にし、(2)及び(3)の規律は、懸賞広告は契約であるとの理解を前提にしているように見受けられ、両者は整合性を欠いているように見受けられる。
【反対】
愛知弁司法制度調査委、一弁、xx弁、個人2名
・ 懸賞広告を知らずに指定行為を行うという事態は考えにくく、明文化する必要性について疑問がある。
・ 懸賞広告の趣旨は競争を通じて良質な指定行為が実現されることを目指しており、懸賞広告を知らずに指定行為を行った者に対して報酬を与えるのは趣旨に反する。
・ 懸賞広告は、これによって指定行為を促進するために行うものであり、懸賞広告を知らない者が偶然に指定行為をした場合に報酬を与える必要はない。
【その他の意見】
・ 懸賞広告に関する規定を存続させる必要性はどの程度あるのか、契約の成否に関して立法を要する重要事項は他にないのか、疑問である。(慶大)
・ 懸賞広告者の義務の内容や条件が懸賞広告に定めたところによることについて条文上より明確に規定することは、法律関係の安定に資することになるので、懸賞広告者は、広告で定めた内容条件に従って義務を負うことを文理上明確に規定していただきたい。(貸金業協、JCFA)
(2)アについて
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 懸賞広告の効力の存続期間に関するxxの規定を設けることで、分かりやすい民法の実現に資する。
【反対】
xx弁、個人2名
・ 改定の必要がない。
(2)イについて
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、東弁、大阪弁、沖縄弁法制委、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 懸賞広告の効力の存続期間に関するxxの規定を設けることで、分かりやすい民法の実現に資する。
・ 契約の申込みに関し承諾適格の存続期間の規定を設けるのであれば、懸賞広告についてもパラレルな規定を設けるのが相当である。
その他
・ 期間の定めのない懸賞広告については、不特定多数の者に対してなされることもあり、法的安定性が求められる場面もあるが、この点は「指定した行為が行われることはないと合理的に考えられる期間」の認定において考慮すれば足りる。
【反対】
改めて見直す会、xx弁、個人3名
・ 当然に効力失うのは不当である。懸賞したのと同じ方法で撤回させるべきである。
・ 「指定した行為が行われることはないと合理的に考えられる期間」の意義が不明確である。
・ もともと任意規定とは意思表示の補充を目的とするものであるから、具体的期間を決め、異なる場合は当事者が別の意思表示をすれば良い。
(3)アについて
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、東弁、大阪弁、沖縄弁法制委、一弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 懸賞広告の期間を定めた場合、その期間中に指定された行為を行った者は、報酬が発生すると期待するので、その期待を保護すべきである。
・ あらかじめ広告者が反対の意思表示を行っている場合には、懸賞広告が撤回されるリスクを覚知できるので、指定行為を行う者の信頼を保護する必要性はなく、広告者の意思が尊重されるべきである。
【反対】
xx弁、個人2名
・ 改定の必要がない。
(3)イについて
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、札幌弁、東弁倒産法、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 着手しても完了するとは限らないこと、ある者が着手したとしてもそれ以外の者が報酬を取得する可能性があるため、着手したにとどまる者の期待可能性を保護する必要性に乏しい。
・ 指定行為の期間を定めていない場合、指定行為に着手する者は、懸賞広告の効力が気付かぬうちに消滅している可能性があることを織り込んで指定行為に着手しているものと思われるので、現行民法を維持すべきである。
・ 期間の定めのない懸賞広告については広告の相手方が決まっていないので懸賞広告者の自由を拘束する必要がない。
・ 着手されれば撤回できないとすれば、広告者を長期に拘束することになる。
・ 着手者の存在によって撤回の効力が生じないとすると、偶々他の着手者がいたことで、撤回後に指定行為に着手して完了した者が報酬請求権を取得することになり妥当でなく、着手者との関係において撤回の効力が生じないとするのも、法的安定性を損なうから、現行法と同様に指定行為を完了する者がいない間は撤回可能とすることでよい。
【反対】
xx弁、個人2名
・ 改定の必要がない。
(3)ウについて
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、大阪弁、沖縄弁法制委、東弁、横浜弁、東弁倒産法、札幌弁、日弁連、xx総合、二弁、堂島、日大、親和会、最高裁(比較的多数)、早大、個人3名
・ 撤回を知った者に対してのみ効果を有するのであれば、懸賞広告が撤回されていないと信じて指定行為を行う者に不測の損害を与える結果とはならない。
・ 懸賞広告者が、他の方法により撤回してその効力が制限されることのリスクを負担するのか、そのようなリスクを回避するべく懸賞広告と同一の方法によって撤回するのかは、その自由な判断にゆだねるべき問題である。
【反対】
xx弁、個人2名
・ 改定の必要がない。
第 29 契約の解釈
1 契約の内容について当事者が共通の理解をしていたときは、契約は、その理解に従って解釈しなければならないものとする。
2 契約の内容についての当事者の共通の理解が明らかでないときは、契約は、当事者が用いた文言その他の表現の通常の意味のほか、当該契約に関する一切の事情を考慮して、当該契約の当事者が合理的に考えれば理解したと認められる意味に従って解釈しなければならないものとする。
3 上記1及び2によって確定することができない事項が残る場合において、当事者がそのことを知っていれば合意したと認められる内容を確定することができるときは、契約は、その内容に従って解釈しなければならないものとする。
(注)契約の解釈に関する規定を設けないという考え方がある。また、上記3のような規定のみを設けないという考え方がある。
規定を設けることについて
【賛成】
東弁倒産法、慶大、福岡弁、三菱電機、早大、チェーンストア協、堂島、個人2名
・ 契約解釈が契約に基づく法律関係を明らかにするうえで重要な役割を担っていることからすると、それがどのような考え方に従って行われるべきかについての基本原則を条文上明確にしておくことには意味がある。
・ どのような表示行為がなされたかを確定する作業は事実認定であり、その点については依然として裁判官が証拠に基づいて判断すべきことになると解されるから、解釈に関する規定を明示することが直ちに「解釈の硬直化」を招くとは解し難い。これに対し、事実認定を超えて、「表示行為にどのような意味を与えるべきか」という(固有の意味での)解釈の問題が生じるときには、むしろ本提案が示すような指針に従った解決がなされることが望まれよう。
・ 本試案において新設が検討されている規律のなかには、契約または契約の「趣旨」の解釈を前提とするものが少なくない(第5-1、第8-1、第 10-1、第 32 等)。それらの基礎にある当事者の意思の探求がどのような指針に従って行われるかを明示することも、契約の解釈に関する規定を設けることの重要な意義の一つであると考えられる。
補足意見
・ 解釈によって契約内容を確定するのであるから、「解釈しなければならない」ではなく、「解釈し契約の内容を確定する」としてはどうか。
【反対】
沖縄弁法制委、一弁、兵庫弁、札幌弁、TMI、全銀協、経営法友会、xx他、アトリウム、xx弁、貿易会、経団連、三菱電機、VC協、改めて見直す会、最高裁(非常に多数)、個人5名
・ 裁判実務における契約解釈は、基本的には、契約書に用いられた文言等の客観的事情を出発点にして、通常人であればそれをどのように理解するかを検討するという形で、表示の客観的意味を探求する作業として行われており、当事者が表示の客観的意味とは異なる内心を有していた場合については、例外的な事象として、錯誤等による処理が行われている。これに対して、提案されている規律は、表示の客観
的意味内容の確定に先立って当事者の内心に着目する点及び通常人ではなく当該契約の当事者を基準に解釈を行う点において、現在の裁判実務における一般的な契約解釈の手法と食い違っている。
・ 裁判実務においては、表示の内容を合理的に解釈することによって、事案に応じた妥当な解決を行うこともあるが、提案されている規律が採用された場合には、このような解釈手法を採ることが困難になる。
・ 一般規定としても実務感覚に必ずしも合致しない。
・ xxxxのアプローチは企業実務の感覚に照らして違和感がある。
・ 当然の事項を規定しており、契約解釈に関する規定を設けることで、かえって事案ごとの個別の解釈に応じて柔軟にされるべき、契約解釈という作業の硬直化を招く。
・ xxxxの 1 に記載されていることは正しいが、これは契約当事者間の行為を規律するものとして機能することはなく、紛争が生じた際に、裁判官の行為規範としてのみ機能するものである。しかし、この規範内容は法律家の共通の理解であり、あえて、民法にxxで定める必要はない。
・ 契約解釈は、事実認定の問題と密接に関連しており、自由心証主義と関係するので、契約解釈に関する規定を民法に置くことが相当であるのか疑問である。
・ この規定は、「解釈しなければならないものとする」という規定ぶりからも、裁判所に対して解釈規範を示し、これに従う必要性があるという趣旨を述べるものとなっているが、当事者間の権利義務関係を規定する民法の性格からいって、やや異質であり、また、ここで示された解釈方法については、裁判所にとってとくに必要な規定であるとは思われず、削除してもいいのではないか。
・ 誰に対する解釈準則であるか不明確である。仮に、裁判所に対する解釈準則と考えるのであれば、むしろ裁判所にとっては自明の理であり、条文として記載する必要性はない。
・ 裁判外における契約解釈については当事者が柔軟に解釈・交渉すれば足るし、訴訟では弁論主義・証拠の採否・処分証書の解釈・自由心証などの問題であり実体法にこのような契約解釈指針を置くことは誤解を生む。
・ 契約解釈に関する規定を設けなくても実務的な支障は生じない。
・ 契約とは合意のことであり、「共通の理解が明らかでない」とはそもそも合意に齟齬が生じており、合意が存在しないということである。そうであればその条項は無効である。契約書は単なる証拠であり、その文言は契約とイコールではない。契約書の文言から契約の内容をどう推定するかは「証拠の評価」の問題であり、「契約の解釈」の問題ではない。口頭で契約が交わされた場合、内心と意思表示の違いは、錯誤や心裡留保の問題であって解釈の問題ではない。
・ 提案されている規律は、契約の成否(意思の合致の有無)を問題にしているようにも読め、適用場面が明確ではない。
・ 契約の解釈については、学説においても変遷があり、契約の解釈の在り方を条文化して固定することは相当ではない。
・ 紛争解決にあたっては、契約に限らず、あらゆる文言を解釈しなければならないが、その一般原則など確立できないし、確立する必要もない。また、債権が、債権者の資力等について対外的に信用を与える効果があることを考えれば、どのような場合であっても文言の社会常識的な理解よりも当事者の共通理解が優先すると決めつけてよいのか、十分検討したとは思えない。
・ 「事業者間」取引についても、消費者契約法並みの規定を目指しているように見受けられるが、かえって法的安定性を欠くおそれがある。
【その他の意見】
・ 4として、3によっても確定することができない事項が残る場合においては、慣習・任意規定・条理により解釈すべき旨の規定を追加すべきである。(親和会)
1について
【賛成】
大阪弁、東弁、横浜弁、東弁倒産法、慶大、ファンの会、日弁連、xx総合、愛知弁司法制度調査委、埼玉青年書士、二弁、堂島、日司連、個人3名
・ 当事者の意思が合致しているなら、合致した意思に従って契約を解釈すべきである。
【反対】
最高裁(非常に多数)、経営法友会、愛媛法学会、個人1名
・ 当然のことであり、規定する必要はない。
・ 民法は裁判規範であるから、契約内容について当事者が共通の理解をしていたときについては規定の必要はないように思われる。
・ 契約解釈が問題になるのは、契約解釈について当事者間に争いがある場合であって、1の規律は解釈の指針として役に立たないばかりか、抽象的な規定を設けると、契約内容に不満を持つ当事者に契約内容を不当に争う口実を与えることになり、また、解釈規定の解釈を巡る争いが起こり、無用な混乱が生ずる。
・ 1の規律は、契約当事者の内心を重視しすぎており、これが採用されると、契約外の第三者との関係で、取引の安全が害されるおそれがある。
・ 1の規律が虚偽表示の規定を存置することと両立するのが疑問である。補足説明
361頁には、「当事者が100万円で目的物を売買するつもりであったのに、契約書にはあえてその代金額として「100万ドル」と記載した事例…が虚偽表示に該当するという理解に従うと」、虚偽表示により無効となる代金100万ドルの売買契約と真意に基づく代金100万円の売買契約の二つが成立すると考えることになるのに対して、「当事者間の特殊な記号として100万円を意味するために「100万ドル」という表現を用いていた場合」には代金100万円の売買契約のみが成立するとの記載があるが、上記二つの場合をどのように区別するのかは明確でない。
2について
【賛成】
東弁、横浜弁、東弁倒産法、慶大、ファンの会、日弁連、xx総合、愛知弁司法制度調査委、埼玉青年書士、二弁、堂島、日司連、個人3名
・ 契約当事者がその意思に基づいて契約することにより法律関係を形成するのであるから、示された表示内容の理解については当該契約の目的など一切の事情を考慮して当事者にとって合理的であったかどうかを考えるのが相当である。
・ 当事者の共通の意思を原則とし、補充的に契約の趣旨に照らして当事者の意図をできるだけ尊重するという原則を明確にする点で意味がある。
・ 実務で行われる解釈と整合的である。補足意見
・ 少なくとも当事者のどちらか一方が実際に意図していた意味内容を指すのか、実 際にはどちらも意図していなかった内容が合理的意思として契約内容とされるのか、
「当該契約に関する一切の事情」とは何を指すのか、交渉経緯あるいは背景事情のみならず、帰責事由の有無や格差なども含まれるのか、明らかにすべきである。
・ 「当該契約に関する一切の事情」を「契約の目的や当該契約に至る交渉の経緯などを踏まえた、当該契約に関する一切の事情」と修正すべきである。
【反対】
大阪弁、一弁、経営法友会、xxx、愛媛法学会、改めて見直す会、個人2名
・ 共通の理解が明らかでないときについては、当事者の意思を偏重しているように思われる。たとえば当事者のxxを根拠に解釈することも許されるべきであるように思われる。そのように解釈した場合に、当事者意思がフィクションとして使われることになるにすぎないように思われる。
・ 「当事者の共通の理解が明らかでないとき」について定めるが、共通の理解が明らかでないときには、共通の理解が存在しないときもある。共通の意思が存在しない場合には、そもそも両当事者が異なることを考えていた場合と、両当事者ともその点については何も考えていなかった場合がある。いずれの場合も当事者が契約時にどのような意思を有していたかを明らかにする作業が必要である。その作業には、当事者が用いた文言の他、契約の性質、契約の目的、契約締結に至る経緯、その当時の取引慣行、取引通念を考慮して各当事者の意思を明らかにする必要がある。そうして、その意思が、食い違っていればその点については合意がないものとして、任意法規で処理すべきである。当事者が、その点について想定せず、厳格に言うと意思がない場合も任意法規によるべきであるが、当事者が、契約時にその問題を意識したならどのように考えたかを合理的に判断し、契約内容を補充することも考え得る。その場合も、当事者が用いた文言、契約の性質、契約の目的、契約締結に至る経緯、その当時の取引慣行、取引通念から、当事者の合理的意思を補充することとなる。
合理的な人を基準とすべきであるという意見
・ 当事者は既に当事者なりに(合理的に)判断して意思表示しているから、更に当事者基準で解釈することは困難である。表示の通常の意味や契約に関する一切の事情を考慮するのは妥当としても、契約当事者と同種の合理人を基準とすべきではあ
る。
3について
【賛成】
ファンの会、xx総合、愛知弁司法制度調査委、二弁、堂島、個人2名
・ 当事者の共通の意思を原則とし、補充的に契約の趣旨に照らして当事者の意図をできるだけ尊重するという原則を明確にする点で意味がある。
補足意見
・ 事後的に当事者の仮定的意思を確定することの困難性について十分検討すべきである。
・ 文言がややわかりにくく、当事者の目的や意図を尊重して解釈するという趣旨も読み取りにくい。例えば、(1) 上記1及び2によって契約内容を確定することができないときは、契約は、当事者が契約を締結した目的、意図に従って解釈しなければならないとし、(2) 1に従って導かれた解釈と異なる慣習がある場合においても、
1の解釈に従うという趣旨の規定を設けてはどうか。
【反対】
東弁、一弁、横浜弁、東弁倒産法、経営法友会、仙台弁、xx他、日弁連、貿易会、三菱電機、虎門、埼玉青年書士、チェーンストア協、日司連、改めて見直す会、個人3名
・ 当事者の意思に基づかない内容を確定するものであり、当事者が意図を尊重しない解釈がされることになるし、契約の拘束力の根拠は当事者の意思にあることに反している。
・ 1、2のいずれによっても契約内容を確定できないような場合に契約当事者の仮定的な意思を事後的に判断することは困難である。そのような場合は、従前どおり慣習、任意規定や条理を契約解釈の基準とすべきである。
・ 当事者が知っていればそういった合意をしたであろう、というものが、通常は、慣習や条理と呼ばれているものと考えられ、契約解釈の問題ではない。
・ 「当事者がそのことを知っていれば合意した」ということは、契約の解釈の限界を超えている。
・ 当事者の仮定的な意思を事後的に認定することは当事者の意思の解釈とは言えない。
・ 1、2と比較して必ずしも広く受け入れられた契約解釈指針ではない。
・ 成立した契約を補充的に解釈する問題ではなく、これは、契約の効力の問題ではないか。契約の要素以外の付随的部分の内容を確定するための契約解釈は、契約の目的が円滑に実現するよう履行過程をコントロールしたり、あるいは債務不履行の有無を判断するための前提として行われるだろう。それは、むしろ契約の効力の問題といえる。
【その他の意見】
・ xxxxよっても補充できない場合にどのように取り扱うかが問題として残る。かかる場合には、契約当事者と同種の合理人を基準に判断すべきであり、かかる内
容の予備的な規定を設けることも検討すべきである。また、任意規定との関係も問題であり、任意規定を排斥しないように配慮すべきである。(大阪弁)
・ 「当事者の合理的意思解釈」に関する規定であるので、「当事者がそのことを知っていれば合意したと認められる内容を確定することができるとき」ではなく「この事項について当事者が合意したはずであろうと合理的に推測できる内容が確定できるとき」と規定してはどうか。(福岡弁)
第29に関するその他の意見
・ 消費者契約、約款利用の場面でも、力関係の差・当事者の意思の希薄・修正等が困難な契約過程といった事情があることが多い。そして、xxの観点から、是正すべき場面も多い。さらに、条項使用者不利の原則は、明確な解釈原則であるから、これを明文化すべきである。(大阪弁、日弁連消費者委、コンビニ問題弁連、個人2名)
・ 契約が当事者の意図とは異なる内容に解釈され得るような規律となった場合、取引の法的安定性が確保されないこととなるおそれがある。取引に関する法的安定性が損なわれることがないよう、丁寧に検討していただきたい。(損保協)
第 30 約款
1 約款の定義
約款とは、多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的として使用するものをいうものとする。
(注)約款に関する規律を設けないという考え方がある。
約款の規定を設けることの是非について
【賛成】
アンダーソンxxxx、日商・東商、大阪弁、全中、大阪弁、金融法委、慶大、全相協、全相協関東、NACS、国際企業法務、ファンの会、仙台弁、TMI、ドイツ研、東弁倒産法、かわさき、消費者機構日本、消費者支援福岡、xx弁、日弁連、日弁連消費者委、労働弁、xx総合、親和会、広大、ヤフー、損保協、横浜弁、早大、埼玉青年書士、広島弁、個人16名
約款を用いる取引について法的安定性の確保が必要であるとする意見
・ 当事者の合意がない契約条項は拘束力を有しないのが民法の原則である以上、約款の拘束力の根拠がxxにないことは望ましいことではない。
・ 民法において、約款に関する明確な規律を設けることによって、約款による契約の効力・有効性に関する予測可能性が高まり、安定的に取引を行うことができれば、大量取引を迅速かつ効率的に行うという約款使用者の合理化利益にも適うことになる。
・ 約款に法的拘束力が認められる要件が法定されることは、約款取引の安定や無用なトラブルの回避に繋がる点において、約款使用者(事業者)においても有益である。
行政規制等による規律では不十分であるとする意見
・ 行政規制は、必ずしも全ての業種・企業に及んでいるわけではなく、また、認可約款であるからといって相手方の権利利益の保護という観点から十分な内容であるとは限らない。
・ 事業者間の取引であっても経済的な優位的地位を利用すれば、対消費者取引と同様の危険が生じるのであるから、約款についての規制を消費者保護を目的とした特別法に委ねるべきではなく、取引の一般法である民法の規定することは必須である。
約款を使用される側からの意見
・ 消費者は約款の存在もどこにあるのかも知らずに契約をしている例がある。契約をした場合に約款が契約内容になるかについて、疑問を抱く消費者も多い。合理的な経済活動に不可欠なら必ず民法に記載してほしい。
・ 明文化されれば、今後の消費者教育の現場で「約款とは何か?」について、より啓発しやすくなる。
・ 消費者にとって不利益な契約条項が入らないように、あらかじめ適正な約款を仕組む必要がある。
その他の意見
・ 現代社会において、約款に関する法規範は、ヨーロッパ諸国のみならず、韓国・台湾といったアジア諸国でも存在している。また、それらの国では約款規定を前提に経済活動が現に円滑に営まれており、日本企業もそのようなルールのもとで国際競争を行っている。日本国内においてのみ弊害を主張する論旨は、説得力に欠ける。
・ 特別法による約款規制あるいは、既存の契約法の準用でなく、民法典に正面から盛り込む以上、規律の基礎となる約款論においてどのような立場に立つかにつき、基本方針を明らかにする必要がある。
【反対】
JR、電情産協、ガス協、クレ協、日建連、資金決済協、車販協、一弁総研、経営法友会、リース事業協、信販協、xx連、東地税調査研究部、虎門、クレカ協、経団連、同友会、日証協、チェーンストア協会、改めて見直す会、流通クレ協、不動産証券化協、 TOA、個人2名
約款の法的拘束力について問題が生じていないとする意見
・ 約款使用者と相手方との取引において、約款の内容が当事者間の法律関係に組み入れられ、法的拘束力を有する規範として機能することは、世の中で広く受け入れられていることであり、実務上、約款の法的安定性について問題は生じていない。
・ 業法の規定が、約款の作成と使用を間接的に請負契約の各当事者に促しているものと評価できる場合がある。このような実態において、債権法において改めて約款の規定を設ける必要性が感じられない。
・ 定式化された契約条項が記載された書面に通常の契約と同じ形式で署名(記名捺
印)をして締結する方法や、パソコンのディスプレイに契約条項が表示され、同意ボタンをクリックする方法など明示的な合意がなされる場合もあり、このような場合は契約条項にまで合意の効力が及んでいると考えられる。
・ 事業者間の取引において、事業者と取引の相手方は、契約時に契約書に記載された契約内容を確認し、双方合意の上で各種契約を締結していることから、当該契約に係る法的有効性の問題は生じることがない。
行政規制等による規律で足るとする意見
・ 消費者取引に用いられる約款については消費者契約法の枠組みで消費者保護を図るなど、懸念事項に対しては特別法による対応が現状とられており、私法一般法である民法に約款に関する一律規定を設ける必要性は低い。
・ 現在各種業法に規律がなく、現状として約款に関する紛争が生じている場合があるのであれば、当該取引の具体的な態様、生じている問題点に着目をして、具体的な立法事実に即して特別法等で対応を検討した方がより問題の解決に資する。
約款に関する規律が経済活動を阻害するとする意見
・ 却って、約款の定義、組入要件、個別条項に関する法的紛争を惹起させることになり、取引の安定性や迅速性を損ない、経済活動の効率化を阻害する要因となりかねない。
約款の規律が消費者の不利益になるとする意見
・ほとんどの契約が約款にあたることになる結果、「知る機会」があれば個別の交渉や具体的説明がなくとも契約の内容に取り込まれることになり、かえって消費者の利益にならない。
【その他の意見】
・ 約款には様々な類型(様式、内容及び使用方法等)があり、民法で一律に規制すると、必ずしも各約款の取引実態に即した有効な規制にならない。そこで、民法には約款の定義規定及び組入要件を規定するに留めるべき。(JCFA)
・ 現に一般的に使われている「約款」との間に相違があると思われ、混乱を招くので、「約款」という用語を別のものに変更するべきである。(個人)
定義について
【賛成】
信託協、全銀協、外国損保協、経済法令研、愛知弁司法制度調査委、沖縄弁法制委、大分弁、全相協、コンビニ問題弁連、仙台弁、二弁、TMI、東弁、東弁倒産法、堂島、消費者支援福岡、xxxxxx、日大、日弁連、日弁連消費者委、xx他、xx総合、改正研、ヤフー、埼玉青年書士、早大、東弁全期会、横浜弁、個人13名
・ 契約書のひな形や業界団体が使用するサンプル書式等は、これまで理解されてきた「約款」とは異なるものであるため、その定義から除外されるべきであるが、本文の定義であれば、約款から除外されると理解でき、本文の内容であれば、実務における約款の理解との齟齬はないと考えられる。
・ 約款規制が求められる根拠は、交渉力の格差及び内容を十分に認識し得ず希薄な
意思しか認められないことにあるものと考えられる。交渉の余地がなく、意思が希薄である場合をとらえるものとして、試案の定義は相当である。
・ 個別の契約条項の内容によって画するのではなく、目的で画することが妥当である。潜脱を防止するために、約款を準備した者の主観によるのではなく、客観的に判断される必要がある。
交渉の余地がないことを明示すべきであるとする意見
・ 約款を対象とした特別の規制を根拠づけるもっとも重要な要素が、「相手方の個別の意思を契約内容に反映できない」という点にあることを考えると、端的に、相手方との交渉による修正が予定されておらず、相手方はそのまま受け入れるか、契約しないかの自由しかない契約に用いられという点を要件を明記した方が、より、適切に「約款」の範囲を画することができる。
・ 保険、公共交通機関、電気、ガス、通信等のように、多数の契約当事者を画一的な規定に従って処理すべき特殊な事情(認可等)があり、個別の契約条件の交渉が一切予定されていない特殊な契約だけに限るようにするべき。
その他、定義を改める必要があるとする意見
・ 日常生活で「約款」を呼ばれていない、「約款」という表題が付いていない、約款条項が別冊となっている、といった形式的な理由で、約款規制が及ばなくならないことを名文で明らかにしておくことが望ましい。
・ 個別に交渉した条項については、約款規制の対象とならないものと考えられるが、実際上どのような交渉がなされれば個別交渉があったと認められるかは検討する必要があるのではないか。
・ 1つの契約書面に個別合意条項と定型的契約条項が混在する場合の定型的契約条項の位置づけを明確にすべき。
・ 契約条項の総体の一部について変更が行われた場合やひな形外の合意により契約内容が修正されることが予定されている場合には契約全体について約款法理の適用がないことを明確にすべき。
・ 約款使用者が、同一書式を相手方(ないしそのグループ)によって交渉に応じるか否かを使い分けている場合、同書式は交渉を予定していない相手方に対しても、約款にはあたらないと解されるのか、明らかでない。
その他の意見
・ 約款規制を就業規則に及ぼした場合は、労働者の権利が弱められるおそれがあるので、就業規則には適用されない旨の規定を設けるべきである。
【反対】
サービサー協、ガス協、xxx、不動産証券化協、不動産流通協、国際企業法務、TO A、日証協、経営法友会、全宅連、リース事業協、JR、xx連、一弁、JCFA、チェーンストア協会、改めて見直す会、
・ 民法の適用対象を定める約款の定義は約款の特徴に関する実務上の他の共通感覚
(契約条項の多さ)をも反映した定義づけを行うべきである。
・ 多数の相手方とは、具体的にどの程度の数を指すのかが明確ではない。
・ 「画一的に定めることを目的とする」という点に関しては、例えば、①契約書の条項に複数の条件案を記載して相手方に選択させるケースと、条項には1案のみを設けてそれぞれの案が記載された複数の契約書から相手方に1つの契約書を選択させるケース、②交渉ポジションによって交渉を予定しているかどうかが変わるケースなど、交渉経緯及び最終の契約案文がどのような状態であれば取引対象の契約書が「画一的に定めることを目的」としているとして約款に該当するのかどうかが、条項使用者および条項を提示された相手方のいずれにとっても、判然としない(または双方の認識が一致しない)おそれがある。
・ 3以下の約款に関する規律(約款の変更および不当条項規制)は、全て「約款が前記2によって契約内容となっている場合」を対象としているのに、提案されている定義が組入要件と関連していない。敢えて効果よりも広い定義を置くことは不可解であると考える。
約款にあてはまることで容易に契約内容となることを危惧する意見
・ 準備しておいたひな形を利用して契約締結を行うことが多いが、現実の取引の場面では契約締結過程において交渉の余地が認められず、ひな形の内容通りで締結を求められることも多くこのような傾向は大手企業において顕著である。約款の内容変更が認められていないような場合には、いわゆるひな形でも約款に該当するうえ、組入要件も満たされ、結果的に当該ひな形の内容が契約内容となってしまう。
【その他の意見】
・ 提案されている約款の定義では、同じくひな形であっても、約款に該当するものもあれば、該当しないものもある。そのために、たとえば、ひな形を用いると、容易に、約款の定義を潜脱し、約款規制を免れることができるように思われる。(立大)
2 約款の組入要件の内容
契約の当事者がその契約に約款を用いることを合意し、かつ、その約款を準備した者(以下「約款使用者」という。)によって、契約締結時までに、相手方が合理的な行動を取れば約款の内容を知ることができる機会が確保されている場合には、約款は、その契約の内容となるものとする。
(注)約款使用者が相手方に対して、契約締結時までに約款を明示的に提示することを原則的な要件として定めた上で、開示が困難な場合に例外を設けるとする考え方がある。
【賛成】
アンダーソンxxxx、共済協、損保協、外国損保協、慶大、経済法令研、全相協、国際企業法務、沖縄弁法制委、NACS、コンビニ問題弁連、仙台弁、損保労組、二弁、 TMI、東弁、東弁倒産法、東弁全期会、堂島、かわさき、xxxxxx、日大、日弁連、日弁連消費者委、xxxx、親和会、改正研、ヤフー、横浜弁、早大、埼玉青年書士、xx他、広島弁、個人14名
・ 現行民法では、約款が確実にお客様との間で契約内容となっているかどうか分か
らないことがビジネス上のリスク要因となっている。また、万が一約款の組入れが否定されてしまうと、当初予定していたサービスの基本的構成自体が否定されてしまうおそれがある。
・ 契約の相手方としても、約款の組入要件が明確になっていれば、自分の契約内容がどうなるのかについて、明確になる。
・ 約款に法的拘束力が認められる要件が法定されることは、約款取引の安定や無用なトラブルの回避に繋がる点において、約款使用者(事業者)においても有益である。
約款を用いることの合意についての意見
・ 約款を使用した契約においても、契約である以上はその法的拘束力の正当化根拠は約款を組み入れることに対する契約当事者の合意である。
・ 当事者においてサービス提供者が定める約款が存在することを全く意識していない場合、約款を用いることを合意していないとして約款は契約内容とならないということになってしまうのか、現状約款どおりの取引が当然に行われている実態に混乱をきたさないのか、という問題が発生する。
・ 約款はサービス提供者にとって多数の相手方の取扱いを一律に規律するものであり、約款の組入についても個別の相手方の合意の有無で異なる取り扱いをするべきではなく、「相手方が合理的な行動を取れば約款の内容を知ることができる機会が確保されていること」という類型的な要件だけで十分なのではないか。
・安易に黙示の合意などという解釈論を展開すべきではない。たとえば、約款使用者が相手方に対し、その契約に約款を用いることを告知するとの要件とすることや、告知により合意を推定するとの規定を設けることも考えられるのではないか。
・ 機会が確保されていたとしても、利用者が取引の事前に都度約款内容を確認することはごく稀であることから、組入要件に単に合意という意思を要求するのではなく、約款取引の利用を以って合意とみなすような、広い定義付けが必要と考える。
・ どのような場合に黙示の合意があると認定されるかは必ずしも明らかではないため、この点についてさらに議論がなされるべきである。
約款の内容を知ることができる機会の確保についての意見
・ xxxxでは常に約款の事前開示を求めるのではなく、約款のウェブサイトへの掲載や支店への備置等で足りるとされており、実務に支障が生じる可能性は低いと考えられる。
・ 約款の事前交付が原則として必要であるなどと解されることのないよう、「相手方が約款の内容を知りたいと考えた場合に」との要件の付加を再度検討し、原則として記録媒体に約款の内容を記録して交付する方法や、ウェブでの事前開示によって当該要件は充足されること等を明確化すべきである。
・ 約款による取引が行われることが社会通念上周知の事実になっているような契約類型については、約款が適用される相手方がその内容を知りたい場合に、約款の開示を求められれば開示できる状況にあることで足りると考える。
・ 「合理的な行動」という要件が不明確であるのみならず、理解の仕方によっては
相手方に重い負担を課するおそれがある点で賛成できない。一般的・平均的な顧客を基準として判断することを明記、明確化すべき。
・ 団体が策定し、当該団体と契約を締結する者に対して遵守することを求めるガイドラインや仕様の中には、厳格な機密保持の観点から、契約締結時においては「団体所定の仕様等に従う」等の記載でしか示すことができず、契約を締結して初めて具体的な内容の開示が行われるものも存在する。「約款」に該当する場合であっても、合理的な理由によって契約締結前に開示することが困難であるものについては、組入要件の例外を認めて頂くよう検討して頂きたい。
・ 約款の内容を知りうる時期が契約締結時までとすると、実質的には契約締結を行うことがほぼ合意された段階で初めて約款が提示されるケースが出てくることが懸念される。このようなタイミングで約款を提示されても消費者は十分な検討ができないので、吟味のための一定の期間を確保するべきである。
・ 合理的であれば、相手方に物理的懸隔地へのアクセス(書面を取りに行く、書面を取り寄せる)を要求してよいと読める内容となっている。これでは、使用者側に、相手方のアクセシビリティを向上させる努力を促す効果はほとんど無いものと思われる。
・ 民事訴訟法第 228 条第 4 項は、少なくとも物理的に 1 つの文書について署名又は押印が存在する場合は、当事者がその内容全体を認識した上でこれを承認したものと評価しうることに基づくものと考えられる。契約条項が明記された書面に署名又は押印があれば書面記載の契約条項全体に個別合意が認められ、不意打ち条項等の約款規制は適用されないことを明らかにすべきである。
【注に賛成する意見】
大分弁、大阪弁、沖縄弁法制委、NACS、コンビニ問題弁連、仙台弁、二弁、ドイツ研、かわさき、消費者支援福岡、日弁連、日弁連消費者委、労働弁、広島弁、愛知弁司法制度調査委、個人6名
・ 約款の法的拘束力の根拠が当事者の合意である以上、約款に法的拘束力が認められるためには、原則として、約款使用者が契約締結時までに相手方に対し約款の内容を開示していることが必要と考えるべきである。
・ 原則として開示を求めつつ、交通機関の運送契約や各種ライフラインの供給契約など、多数を相手に画一の詳細な約款で取引をするなど、当該約款取引の性質上、原則によることが著しく困難である場合についての例外を定めるべきである。
【注に反対する意見】
全信組協、共済協、生保協、xx他、TMI、
・ 厳格な開示を求めることは相手方にとって煩雑でメリットが乏しい反面、約款使用者にとって取引コストを不必要に高めるとともに約款取引が事後的に覆滅される可能性を高め法的安定性を損なう。
・ 現代において、少なくとも技術的な意味において開示が困難という場面はなかなか考えにくい。注の考え方を取った場合、かえって硬直的に過ぎ、社会的なニーズ
にそぐわないことも考えられる。見かけだけの明示ばかりが横行する危険性もある。
・ 広く普及し、通信ツールとして定着したインターネットやCD-ROM等を約款の配付・開示方法に用いることは、合理的な方法であると考えられるが、明示的な提示を原則形として固定してしまう場合、技術の発展等に伴う取引実務の発展を制約し、約款による取引の利便性の向上を阻害する事態を招くことが懸念される。
【反対】
JR、新経連、xx連、クレ協、クレカ協、日建連、資金決済協、貿易会、xxx、不動産証券化協、経営法友会、信販協、改めて見直す会、流通クレ協、一弁、個人2名 約款は当然に契約内容になっているとする意見
・ 特に、公共交通機関の運送契約のように、不特定多数の相手方に画一的なサービスを迅速に提供することを義務付けられている取引においては、運送契約上の権利義務関係を規律する約款が存在し、それが当然に運送契約の内容となることが、過去の多数の裁判例においても認められている。
約款を用いることの合意についての意見
・ 合意を求めると、事理弁識能力のない未xx者、知覚障碍者、外国人等については約款による取引の効果を認めないということになるが、実務上交通機関の利用など未xx等であっても約款による取引は広く認められており、実務に対する影響が大きい。
・ 一般原則による合意形成がされている(約款の不当条項規制の適用を受けない)といえるために、現在実務で行われている合意手続に変更を伴う趣旨なのであれば、そもそもどのような合意があれば契約が成立するのか、という一般原則についての議論がなされる必要がある
・ 具体的な当事者の合意の有無を判断するのではなく、社会的に見て約款を使用することが合理的に推認し得る場合や、行政機関による認可等約款取引が社会的に要請されており、かつ、内容の合理性に一定の担保がある場合には、特段の事情がない限り合意の存在を推定するなど、合意の成立について客観的・規範的に判断するべきである。
・ 約款使用者である前払式支払手段発行者は、約款に服する相手方を特定することができないのが通常である。そのため、前払式支払手段発行者が契約の相手方から約款を契約の内容とする旨の合意を取得することは、実務上難しいという取引実態がある。
約款の内容を知ることができる機会の確保について
・ 約款使用者の相手方が合理的に期待することができる行動は一律に定まるものではないため、事業者は事実上、組入れ要件組入要件を否定されるリスクを抱えながら大量の定型的取引を行わなければならないことになってしまう。
その他の意見
・ 例えば地震等の突発事態により約款の内容を時間的・物理的に知ることが不可能な状態で契約を取り交わした場合、または電子機器等の故障により約款の閲覧が一定時間不可能な状態で契約を取り交わした場合等、本xxxxの規定を根拠に、当
該約款は契約の内容ではないと、相手方は主張することが可能となる。
・ 約款の拘束に関するリーディングケース(大判大正4・12・24 民録 21 輯 2182 頁)は、約款による取引が行われることが世間一般に承認されていることおよび約款の内容が合理的であることを前提としたうえで、約款による取引を行う意思をもって契約したことを推定することを判示するが、既に確定したこの法理を明文化する限りでは、企業法務の観点からそれほど違和感はない。
【その他の意見】
・ 組入要件を満たしていないという主張は、通常、その契約の内容を争う相手方がすることになるであろうから、その立証責任も相手方が負うとするのが相当であると考える。(日司連)
・ 約款の定義に該当する場合であっても、組入要件条項によるのではなく、個別の合意による方法で、約款を契約の内容とすることは可能であることを規定上も明確にするよう要望する。(ACCJ)
・ 「機会が確保されていること」が相手方に明示されていることが独立の要件と解釈されたり、約款の内容を知ることができる機会が約款使用者以外の者(例えば業界団体)により与えられていた場合を排除するように解釈される懸念がある。よって、「契約の当事者にその契約に約款を用いる合意がある場合において、契約締結時までに、相手方が合理的な行動を取れば約款の内容を知ることができる場合には、約款は、その契約の内容となるものとする」と修正することを提案する。(全銀協)
・ 仮に補足説明のような抽象的な基準とせざるを得ないのであれば、少なくとも、一定の要件を充足する場合には組入要件を満たす旨の、セーフハーバー・ルールを設けることが妥当であると思われる。具体的には、例えば、①事業所に当該約款を備え置き、かつ、②相手方から要求された場合に提示することのできる態勢を整えている場合には、組入要件を満たすものとしてご検討頂きたい。(全信組協)
3 不意打ち条項
約款に含まれている契約条項であって、他の契約条項の内容、約款使用者の説明、相手方の知識及び経験その他の当該契約に関する一切の事情に照らし、相手方が約款に含まれていることを合理的に予測することができないものは、前記2によっては契約の内容とはならないものとする。
【賛成】
愛知弁司法制度調査委、沖縄弁法制委、大分弁、大阪弁、慶大、経済法令研、全相協、 NACS、コンビニ問題弁連、埼玉弁、仙台弁、一弁、二弁、ドイツ研、東弁、東弁倒産法、東弁全期会、堂島、かわさき、消費者支援福岡、日大、日弁連、日弁連消費者委、労働弁、xx総合、親和会、改正研、横浜弁、早大、埼玉青年書士、xx他、埼玉青年書士、広島弁、個人18名
・ 交渉の経緯、通常の取引慣行、契約の目的などからみて、顧客がその存在を到底予測できないような異例な約款の契約条項は、不意打ち条項として、組入れ袋件を
満たしたとしても、採用合意の及ぶところではなく、契約に取り込まれず、その拘束力が否定されるべきである。
・ 約款の内容が不意打ちとなる場合、契約に組み入れしないとすることは、契約の内容を確定するための交渉が行われていない実態に鑑みると、相手方を保護するという観点から相当である。
・ 実際問題として、真っ当な事業者の正当な事業活動において、かかる不意打ち条項が問題となるような事態は、まず心配いらないものと考えられる。
不意打ち条項と不当条項の関係についての意見
・ 不当条項と必ずしも重複するものではなく、同条項では対処できない場合が生じる可能性がある以上、不意打ち条項として独立に規定を設けるべきである。
その他の意見
・ 予測することが著しく困難であるものに限定すべきである。
【反対】
日商・東商、新経連、信託協、全銀協、全信組協、全信協、ガス協会、クレ協、クレカ協、日建連、資金決済協、車販協、貿易会、不動産証券化協、xxx、流動証券協、xx、経営法友会、国際企業法務、JR、信販協、一弁総研、TMI、虎門、xxxxx、貸金業協、経団連、日証協、JCFA、チェーンストア協会、マルチペイ協、丸の内総合、改めて見直す会、森xxxx、流通クレ協、個人2名
不意打ち条項に当たるかを一般的に判断するべきとする意見
・ 不意打ち条項が、約款の組入要件を満たしていながら、約款使用者の相手方の事情によっては契約の内容とならないということになると、結果として画一的な対応が出来なくなってしまうことになり、そもそも約款の意味がなくなってしまう。
不意打ち条項と不当条項の関係についての意見
・ 不意打ち条項のみを見れば内容が不当ではない場合であっても、約款全体の趣旨や内容からすれば、当該条項の存在により本来の約款の趣旨からは予測されない義務を負担することになる場合には、当該条項は不当条項にも該当すると考えられるのであって、あえて別個の規制として設ける必要性は乏しい。
行政規制等による規律で足るとする意見
・ 説明義務・情報提供義務違反の問題として処理することができることから、敢えて不意打ち条項に関する規定を設ける必要はないと思われる。
・ 相手方に不利益を与える可能性のある条項については、消費者契約法や業法、監督官庁による行政的コントロールが及び得ることから、民法に不意打ち条項の規律をあえて設けることは不要と考える。
・ 現行の民法第90条、消費者契約法第10条等の規制によって対応すれば十分と考えられる。
・ 行政機関の認可、登録などにより、内容の合理性が担保されている場合には、不意打ち条項の適用はされない旨を明文化すべきである。
相手方による濫用を懸念する意見
・ 相手方から、合理的に予測できなかったと殊更に主張し得る余地を残し、無用の
争いの素となりかねない。
・ 現実に当該条項についての説明または約款の提示を受け、当該条項を検討する機会があった場合においてもなお、不意打ち条項に関する主張ができることとされた場合、契約締結に向けて情報の収集や交渉が真摯に行われないなどモラルハザードを来すおそれがある。
その他の意見
・ 不意打ち条項に関する規定を設けると、企業は法的なリスクを回避するため、不意打ち条項に該当しそうな内容については、個別に説明をすることになり、 約款の利便性を大きく損ねる。
・ 特定の条項が不意打ち条項と判断され契約内容にならないとなった場合に、契約自体はそのまま継続しなければならないとなると、約款使用者が意図しない変則的な契約を続けなければならないことにもなってしまう。
・ 事業者は、その締結する契約がその事業にとって重要な契約であればその内容を十分に検討すべきであり、重要性に劣ると判断してその内容を検討しないのであればその判断を誤ることのリスクは当該事業者自身が負担すべき。
・ どのような条項が不意打ち条項となるか要件が抽象的で不明確であり、約款利用者の予測可能性を害し、約款を用いた取引の法的安定性を害する。
【その他の意見】
・ 相手方は、約款使用者が大企業であるとか、他にも多数の契約を問題なく結んでいるとかの事情によって、約款使用者を信頼し、約款使用に合意することが多いことを踏まえると、不意打ち条項となる要件に「約款使用者に対する信頼」をも加えることが望ましいと考える。(日司連)
4 約款の変更
約款の変更に関して次のような規律を設けるかどうかについて、引き続き検討する。
(1) 約款が前記2によって契約内容となっている場合において、次のいずれにも該当するときは、約款使用者は、当該約款を変更することにより、相手方の同意を得ることなく契約内容の変更をすることができるものとする。
ア 当該約款の内容を画一的に変更すべき合理的な必要性があること。
イ 当該約款を使用した契約が現に多数あり、その全ての相手方から契約内容の変更についての同意を得ることが著しく困難であること。
ウ 上記アの必要性に照らして、当該約款の変更の内容が合理的であり、かつ、変更の範囲及び程度が相当なものであること。
エ 当該約款の変更の内容が相手方に不利益なものである場合にあっては、その不利益の程度に応じて適切な措置が講じられていること。
(2) 上記(1)の約款の変更は、約款使用者が、当該約款を使用した契約の相手方に、約款を変更する旨及び変更後の約款の内容を合理的な方法により周知することにより、効力を生ずるものとする。
変更に関する規定を設けるべきかについて
【賛成】
全銀協、損保協、損害保険協、外国損保協、沖縄弁法制委、愛知弁司法制度調査委、大分弁、大阪弁、慶大、経済法令研、全相協、NACS、コンビニ問題弁連、仙台弁、一弁、二弁、TMI、東弁、東弁倒産法、東弁全期会、堂島、かわさき、xxxxx、貸金業協、日司連、日弁連、日弁連消費者委、労働弁、xx他、xx総合、親和会、改正研、横浜弁、早大、広島弁、個人14名
約款を変更する必要性についての意見
・ 約款を使用した取引においては、法令の変更があった場合など、約款条項を変更しなければならない場面が必然的に生じる。相手方から個別の同意を得ることが実際上困難であることから、いかなる場合に約款を有効に変更できるのかという点を法律において明定しておくことは、約款取引の安定・相手方保護という観点から、非常に重要である。
・ 約款を使用した契約関係は長期間継続される場合もあるため、社会状況の変化などに合わせて、一定の場合には変更することを認めるべきである。実際、約款の変更は頻繁に行われており、実務上の必要性も高い。
変更の要件についての意見
・ 約款使用者の相手方の保護のため、内容の合理性や必要性に加えて手続的保障を確保すべきである。
・ 約款使用者が約款変更に基づいて約款を一方的に変更することができるのは、約款使用者の約款変更の必要性の内容・程度と、変更により相手方が受ける不利益の内容・程度を総合考慮し、個別具体的な約款の変更が合理的であると認められる場合であると考えるのが相当である。
・ 規定化にあたっては、相手方にとって有利な変更を行う場合にまで約款使用者に過度な負担がかかることのない規律とすべきである。
その他の意見
・ 約款に含まれる契約条項のうち当事者が個別に合意したことにより契約内容となったものでも、約款の内容を画一的に変更すべき必要性が生じるのは異なるところはなく、例えば契約締結時までに個別の契約条項について丁寧に説明したために(個別の合意があったと評価され)却って本提案の対象外になることのないよう慎重に検討することを要望する。
【反対】
建設コンサル協、新経連、クレ協、資金決済協、貿易会、xxx、不動産証券化協、国際企業法務、JR、信販協、ドイツ研、クレカ協、兵庫弁、改めて見直す会、流通クレ協、埼玉青年書士、ビル協、JCFA、個人4名
約款は変更条項に基づいて有効にできるとする意見
・ 約款の内容変更は、約款に設けられた変更条項に基づいて、大きなトラブルもなく行われており(変更後の内容の当否について争われることはありうるが、それは
変更の効力の問題とは区別すべき問題である)、規定が存在しないために取引の安定性が害される、という事態は生じていない。
・ 契約の成立当初に約款による合意を認める以上、当該契約に規定された変更規定についても、有効な合意が成立していると解するべきであり、当該変更規定に従って約款を変更している以上は、その有効性を肯定すべきである。xxxxのような厳格な要件を課すべきではない。
約款に変更条項が設けられていることを要件とする意見
・ 約款に基づいて長期間にわたる契約関係を形成しようとする場合には、約款使用者は条項の変更可能性について特別の条項を設けることができるのであるから、そのような条項なしに一方的に契約条件を変更できるとすることには合理的な理由がない。
より緩やかに変更を認めるべきとする意見
・ 相手方が変更内容に納得が出来ない際に、他に選択肢があり契約からの自由な離脱が確保されている場合には、変更を規制する必要はないと思われる。
個別の合意がない変更を認めるべきでないとする意見
・ 約款を用いた契約であっても、契約であることには変わりがない。契約締結後にその内容の変更がある場合においては、当事者間の合意が必要であり、約款を用いた取引であるからと言って、相手方の同意を得ることなくその内容を変更することは許されないものと考える。
・ 建設コンサルタントの設計契約の場合、合理性を前提にしたとしても、一方的に契約内容を変更することを認めると、受任者に損害が生じる可能性がある。
その他の意見
・ 「約款の変更」は、約款論の中でも議論が熟しておらず、判例の蓄積も乏しい現状にある。この論点について引き続き検討することは有益であるが、時期尚早の感がある。
・ 約款の変更内容、タイミングは多岐に亘り、関連法規の改正、社会・経済状況の変化、企業情勢などに応じて変更される可能性があるが、その変更が合理的であるか否かは、当事者の立場によって異なるものであり、一律に規定することは困難と考える。
【その他の意見】
・ 約款の変更について業法等に規定が置かれている約款と本提案とが、どのような関係に立つか不明確である。業法等の規制において既に相手方保護に配慮した約款変更手続が規定されている場合に、さらに本提案による規制をかけることは、約款使用者に過度の負担を強いることになるため、妥当でない。(アンダーソンxxxx、x融法委、ガス協)
・ 「相手方の不利益の程度に応じて適切な措置が講じられていること」を担保するために時間的、金銭的コストをかけた変更を行うことは、迅速性、画一性といった約款のメリットを失わせるだけでなく、変更を見込んだ取引価格の設定に繋がる可能性もあり、取引の相手方にとっても望ましいとは言えないものである。(ガス協)
・ 既に契約が成立している約款を変える場合は(A)契約者の同意を得る、(B)契約者に異議の申し出を催告し、異議がなければ同意したものとみなす、(C)公共の福祉の要請により、契約者の同意なしに一方的に変更する、のどれかになると思われる。案はそのように変更すべきである。(個人)
(1)について
【イについて】
・ 「多数」とは、「複数」であることを意味すると解釈すべきである。相手方に行方不明者がいる等、全員から個別合意をとることが著しく困難な場合には、複数個の契約を個別合意によることなく画一的に約款を変更する要請が高い。
・ 「著しく」困難との要件は、変更に極めて高いハードルを課すものといえる。改正が実現した場合、業者側は紛議を恐れて個別同意の獲得を余儀なくされ、そのことが徒なコスト増大、ひいては価格転嫁による消費者の不利益に繋がることが懸念される。
【ウについて】
・ 当該条項で求められる合理性・相当性の内容をより明確化し、不当条項に関する約款の規制との違いを明らかにすべき。
・ 約款使用者の相手方の利益を保護する観点から変更内容の「合理性」が要件とされるのであれば、それ以外に「変更の範囲及び程度の相当性」の要件を求める必要性は乏しいと考える。
【エについて】
・ 「不利益の程度」と相関関係にある「適切な措置」の解釈として、実質的に当事者から同意を得るのと変わらないような厳格な措置を求めることにならないよう、現行の実務上の取扱いに留意の上、より明確化された規定振りとなるよう、更なる検討をすべき。
・ 取締法規等の改正によって行った規約の改正が、相手方に不利益になった場合にも「適切な措置」を講じなければならないとするのも合理性がない。
・ 一方的な不利益変更がおよそ許されないという見解及び不利益の程度に応じた措置を必須の要件とする見解には反対であり、不利益変更に伴う代替措置については、要件ウの一要素として判断すべきである。
・ 変更後の約款内容に異議ある個々の相手方には変更後の約款内容に基づく契約関係から対価負担なく離脱する権限を認めるべきと考える。また、経済的損害を伴う場合には、相手方にその損害の賠償請求権を認めるべきと考える。
・ いかに希薄な合意であっても、「その契約」を維持する利益は存在する。したがって、不利益のない離脱権があれば変更を認めるという考え方は取られるべきではない。
・ 約款の変更内容が、相手方全体としては「有利」であるが、個々の相手方で考えたときには有利・不利が生じることがありうる。このような場合をどのように考えるかにつき、可能な限り明確になるよう検討することを要望する。
【その他の意見】
・ ア、ウについては、立証責任も配慮した規定とすべきである。客観的に見て特段の不合理はないものを、積極的に合理性を主張・立証しなければならないとすると、負担が大きい。
・ 仮に(1)ア乃至ウの要件を不要とした場合であっても、(1)エ及び(2)の要件を満たす必要があるとしておけば、実際上、相手方に不利益が生ずることは避けることができるものと思われる。
(2)について
・ 約款の変更要件を検討する以上、効果の発生時期についても検討すべき。また、周知させるため、少なくとも通知はすべき。
・ 約款変更の手続要件として、約款利用者の権利・利益の保護という観点から、約款組入要件に準じ、原則として約款変更の事前開示を要件としたうえで、契約の性質上それが困難な場合について例外規定を設けるべきである。
・ 変更した約款を送付する等、より進んで消費者等に覚知させることが容易な取引類型もあることが指摘されていることから、効力を生じさせる方法として「合理的な方法による周知」だけで足りるかどうか、引き続き検討すべきである。
・ いかなる方法により周知すれば「合理的な方法により周知」したものといえるのかについて、明確化して頂きたい。
・ 通知方法については、変更の内容や程度を考慮して、「ウェブサイトに変更の通知とその内容を掲載して相手方が確認する機会を設ける」といった方法も可能とすることが妥当。
5 不当条項規制
前記2によって契約の内容となった契約条項は、当該条項が存在しない場合に比し、約款使用者の相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重するものであって、その制限又は加重の内容、契約内容の全体、契約締結時の状況その他一切の事情を考慮して相手方に過大な不利益を与える場合には、無効とするものとする。
(注)このような規定を設けないという考え方がある。
【賛成】
情報サービス協、沖縄弁法制委、ファンの会、大分弁、大阪弁、慶大、経済法令研、全相協、NACS、コンビニ問題弁連、埼玉弁、仙台弁、一弁、二弁、ドイツ研、東弁、東弁倒産法、東弁全期会、堂島、かわさき、消費者支援福岡、日司連、日弁連、日弁連消費者委、労働弁、xx他、xxxx、親和会、改正研、横浜弁、広島弁、早大、個人21名
・ 約款が使用された契約では、当事者間での契約内容に関する実質的な交渉が行われておらず、一方当事者が一方的に契約内容を決定し、他方の当事者は契約内容の
形成に関与することができないため、契約自由の前提が失われている。よって、約款条項どおりの合意の拘束力を他方当事者に強要する場合には、他方当事者にとって酷であり、法による契約内容への介入(不当条項規制)が正当化されると考える。この点、約款規定において、不当条項規制は、必要不可欠な重要な要素である。
・ 相手方が消費者である場合には約款によって契約の内容となったものであっても、消費者契約法の不当条項に基づき無効と認められる場合があるが、相手方となるのは消費者に限られないため、希薄な合意という約款の特性を踏まえ、相手方の属性を問わずに不当条項の規律を定める必要があると考える。
不当条項の判断方法について
・ 原則的な権利義務関係というものは、法令中のxxの任意規定だけでなく、判例等によって確立しているルール、xxのない基本原理などによって決まるものである。したがって、比較の対象を任意規定に限るような考え方は妥当ではない。端的に当該契約条項の内容と当該契約条項が存在しない場合の当事者の権利義務関係を比較すべきである。
・ 顧客が自らに不利な条件について、本件規定に基づきいたずらに無効を主張し、無用な紛争が発生する可能性も否定は出来ないので、本件規定に「xxx違反」といった要件を追加し、本規定の趣旨をより明確化することにより、本件規定のより安定的な運用が行われることを期待する。
不当条項のリストについての意見
・ 包括規定だけでは、そのあいまいさの故に、実際の消費者紛争の場面等での適用の困難さが予測される。むしろ、不当と考えられる条項等について規定する、いわゆる不当条項リストを設けることと合わせてこそ、事業者・消費者の両方にとって市場を透明化し、事前に紛争を予防することが出来る。
・ヨーロッパ諸国を始め、アジア諸国でも、典型的な不当条項をリスト化することで、予見可能性を高めている。本試案後の立法に向けた作業においては、代表的な不当条項のリスト化が併せ検討されるべきと考える。
・ 不当条項のブラック・リスト及びグレー・リストについては、これらのリストが民法にもし設けられたとすれば、不当性の判断が硬直化するおそれがある。
その他の意見
・ 約款であっても当事者が合意した内容は基本的に尊重されるべきであるから、例えば金融機関同士の再保険契約や債券貸借契約のように、契約の締結に熟練した当事者が対等の立場で締結しているようなものについて、不当条項規制を根拠に履行を拒絶するようなことは認めるべきではない。
・民法に不当条項規制を規定することには賛成するが、約款を使用した場合に限定しない不当条項規制とすべきである。
【反対】
経団連、全銀協、損害保険協、アンダーソンxxxx、愛知弁司法制度調査委、信託協、全信組協、全信協、ガス協、クレ協、クレカ協、日建連、資金決済協、車販協、損保協、
貿易会、不動産証券化協、xxx、流動証券協、xx、経営法友会、国際企業法務、J R、生保協、信販協、新経連、xx連、損保労組、虎門、xxxxxx、貸金業協、日証協、JCFA、チェーンストア協会、丸の内総合、改めて見直す会、流通クレ協、埼玉青年書士、外国損保協、アトリウム、個人2名
不当条項規制の必要性に関する意見
・ 約款を利用するためには、約款を利用する旨の合意が必要である。その際には、約款の内容を確認しうる状況に供するのであるから、仮に過大な不利益を与える条項があったとしても、それを以てして個別の契約条項を無効とすべきではないと考える。
・ 消費者契約についてはすでに不当条項規制が存在するため、約款に不当条項規制を設けることの固有の意味は、事業者間取引において用いられる約款に不当条項規制を及ぼす点にあると考えられるが、相手方事業者に内容を把握する機会が与えられている以上は、少なくとも事業者間取引については自己責任の原則が妥当すべきであると考えられる。
不当条項規制を設けた場合の弊害に関する意見
・ 約款が契約内容となった場合であっても、不当条項規制によって個別に無効となる可能性が生じることから、不当条項規制に係るリスクの総量が事前に把握できず、実務上の弊害が大きい。
・ 不当条項規制を導入した場合、不当か否か、当該条項についての個別の合意があったか否かを契約締結時に確定的に判断することの難しさから、当事者が必要以上の取引コストをかけてこれらの不確実性を排除しようとする可能性があり、結果的に約款取引の迅速性や効率を阻害するおそれがある。
・ クレームや訴訟などが出やすい環境が醸成され、契約内容が不安定なものとなり円滑な貯金取引を行ううえで支障をきたすことが懸念される。
・ 契約締結に向けて情報の収集や交渉が真摯に行われないなどモラルハザードを来すおそれがある。
・ 「その他一切の事情」を考慮するとされているところ、係る判断が個別の相手方ごとに行われるときには、相手方によって契約内容が異なることとなり、約款を用いる意義を損なうことになる。
要件が抽象的過ぎるとする意見
・ 本文の「一切の事情を考慮して相手方に過大な不利益を与える」は、文言が抽象的であるため、約款使用者の不当性判断は困難なものとなり実務を混乱させる。
・ 本規定が確認的規定だとした場合、提言内容は、「過大な不利益」とあり、なお抽象的である。xxx、公序良俗という現行法の基準をもって個別事案に即して判断されるのと何ら変わらず、ここでこれを規定したところで、特段の意味があるとは思われない。
行政規制等による規制で足るとする意見
・ 一般条項(xxx、権利濫用、公序良俗違反)等によって個別に解決可能であり、それで十分と考える。
・ 消費者契約法、独占禁止法、下請法等特別法により適切に規制されていると思われる。社会・経済の急速な変化に応じ、新たに生じた個別具体的な課題に対処するためには、一般法によるのではなく、引続き特別法により行う方が迅速かつ効果的ではないかと考える。
・ 不当条項規制は、情報や交渉力において劣位にある当事者の保護を目的としたものであり、一般法たる民法中に規定することについては慎重であるべき。
・ 法令に基づく認可の審査等を受けた約款については、重ねて民法に不当条項規制についての規定を設ける必要性は極めて小さい。
不意打ち条項で対応するべきとする意見
・ 約款について不当条項規制を及ぼす根拠は、契約当事者が個別の条項について了知していない可能性がある点に求められると説明されているが、このような観点からの規制は、別途不意打ち条項の要否という観点から、当事者への拘束力の有無の問題として論じられるべきものと考えられる。
その他の意見
・ 不当条項規制が実際に立法化された場合、立法担当者の意図如何にかかわらず、裁判所によって民法第90条を適用する場合よりも幅広く適用されることになるのは、消費者契約法第10条の例からも明らかと考えられる。
・ 不当な契約条項が確認的規定加重的規定なのかがはっきりしない。
・ 暴利行為(xxxx第1 2(2))との関係も整理されていない。
・ 仮に不当条項規制を設けるとしても、不当性の判断については、多数の相手方を想定して画一的に判断すべき。個々人を基準に判断することにより判断基準があまりに不明確になることに加え、xxxxの定義にもあるように約款は画一的な処理を行うために用いられるものであるから、相手方によって当該条項が有効であったり無効であったりすると使用者としては一律に当該条項を削除する必要が生じ、結果として最も立場の弱い相手方を基準としなければならなくなるからである。
【その他の意見】
消費者契約法第10条との関係についての意見
・ 文言上消費者契約法 10 条よりも緩やかな要件になっており、少なくとも「民法第
1条第2項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害する」といった限定の仕方をするべき。(日商・東商、全中、ヤフー)
・ 民法に約款の条項に対する不当条項規制を設けるのであれば、消費者契約法 10 条とのデマケーションが明確となるような規定振りとされたい。(TMI)
条項使用者不利の原則についての意見
・ ヨーロッパ諸国のみならず、中国・韓国・台湾といったアジア諸国の法令にも既に存在し、条項使用者不利の原則がなければ、xxな契約とはいえないというのが国際的にも常識である。(コンビニ問題弁連)
・ 合理的な解釈が複数存在しうるような約款においては、約款を作成し使用する側
(使用者)がその責任を負うのがxxxからも当然と思われるが、xx規定がないために解決が非常に困難である。よって、使用者不利の原則を明確に規定すること
を切に望みたい。(全相協、全相協関東、個人)その他の意見
・ 「契約の中心部分に関する条項」については、双方当事者が契約内容の形成に関与しており、不当条項規制の対象としないことを明示すべきである。(経済法令研)
・ 契約形態はさまざまであり、不当性について形式的に判断できるような基準を一律に設定することは困難であるから、約款に含まれる条項の不当性を判断するに当たっては、取引種類ごとに業界ガイドラインであるとかモデル約款であるとか、標準となる契約条項を工夫する必要があるのではないかと考える。(経済法令研)
第 31 第三者のためにする契約
【全体に関する意見】 改正の必要性について
・ あえてこのような規定を設ける必要性は認められない。(xx弁)
1 第三者のためにする契約の成立等(民法第537条関係)民法第537条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者(以下「受益者」という。)は、その当事者の一方(以下「諾約者」という。)に対して直接にその給付を請求する権利を有するものとする。
(2) 上記(1)の契約は、その締結時に受益者が胎児その他の現に存しない者である場合であっても、効力を生ずるものとする。
(3) 上記(1)の場合において、受益者の権利は、その受益者が諾約者に対して上記(1)の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生するものとする。
(4) 上記(1)の場合において、上記(1)の契約の相手方(以下「要約者」という。)は、諾約者に対し、受益者への債務の履行を請求することができるものとする。
(1)について
【賛成】
沖縄弁法制委、東弁、xx総合、アンダーソンxxxx、東地税制度部、親和会、日司連、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(比較的多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、札幌弁、慶大、二弁、個人3名
・ 受益者、諾約者、要約者という表現を用いることについては、かかる用語は定着していると評価することができる。
【反対】
xxx、x人2名
【その他の意見】
・ 「給付を請求する権利」ではなく、「給付を受ける権利」とすべきである。(個人)
(2)について
【賛成】
沖縄弁法制委、東弁、xx総合、アンダーソンxxxx、東地税制度部、親和会、日司連、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(比較的多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、札幌弁、慶大、二弁、個人3名
【反対】
早大、xx弁、個人2名改正の必要性について
・ 「胎児その他の」の限定がどのような趣旨で付加されているか不明である。この限定が、胎児は受益者となり得るが、いまだ胎児にもなっていない、単に将来生まれることが期待される子供を受益者とすることはできないとする趣旨を含むのであれば、その趣旨をより明確に示す必要がある。また、民法において、胎児に権利能力が認められる場合は限定的に列挙されているから、胎児が受益者となり得ることを明らかにするのであれば、民法第886条に対応する規定を置く必要があるのではないか。これと反対に、胎児になっている必要はないという考え方をとるのであれば、「胎児その他の」という例示は誤解を招くものであり、無用である。
【その他の意見】
・ 第三者のためにする契約締結時に受益者が現存しなくても良いが、諾約者が、受益者が現れるまでの間、長期間、当該契約に不当に拘束されることのないような規定振りとすべきである。
例えば、「契約締結時に第三者が現に存しない場合であっても契約は効力を有するが、諾約者は【その契約の趣旨に照らし適当な時期】までに第三者が現存する見込みがない場合は、その契約を解除(撤回)することができる。」旨の規定をすべきである。例えば、甲乙間の不動産の売買契約において、甲は、乙又は乙の指定する第三者に対し本物件の所有権を移転する旨の契約をした場合には、乙が所有権移転先の指定をせずに時が経過すると、諾約者甲にとっては、所有権移転義務を履行できず、場合によっては、時期を逃して結局不動産を売却できない(乙が第三者を見付けることができず、乙も自ら買うこともせずに契約解除となる)可能性がある。このようなことが起こらないような規定とすべきである。(全国青司協)
・ 「胎児その他の」を付加する趣旨が不明である。この限定が、胎児は受益者となり得るが、いまだ胎児にもなっていない、単に将来生まれることが期待される子供を受益者とすることはできないとする趣旨を含むのであれば、その趣旨をより明確に示す必要がある。また、民法において、胎児に権利能力が認められる場合は限定的に列挙されているから、胎児が受益者となり得ることを明らかにするのであれば、民法第886条に対応する規定を置く必要があるのではないか。これと反対に、胎児になっている必要はないという考え方をとるのであれば、「胎児その他の」という例示は誤解を招くものであり、無用である。(個人)
・ 「現に存しない者」の意義は不明確であるし、およそ出現し得ない者を受益者と
する契約の成立を認める必要はないから何らかの限定をすべきであるとの指摘もあった。(裁判所)
・ 「現に存しない者」との意味を説明すべきである。(個人)
(3)について
【賛成】
沖縄弁法制委、東弁、xx総合、損保協、アンダーソンxxxx、東地税制度部、親和会、日司連、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(比較的多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、札幌弁、慶大、二弁、個人3名
・ 受益者が望まない債権を取得する可能性を排除するためにも、受益者が単に権利を取得する場合であっても、特別法で規定がない限り、受益の意思表示が必要であるとすることが妥当であると考える。
・ 第三者による受益の意思の表示を不要とする類型に関する規定を設けないことに賛成する。こうした類型に関する規定を設けるにあたっては、保険法第8条、第2
7条など特別法の規律や関連する実務との関係について十分な検討が必要である。保険法第8条は、民法第537条第2項の特則を規定している。また、保険法第2
7条は、第三者のための保険契約を解除するにあたり被保険者の同意を要するものとは定めていない。現行の実務もこの特別法の規定に沿ったものである。
受益の意思表示の必要性について
・ 基本的に賛成する。しかし、受益者の不利益がない場合について、規範的な評価によって黙示の意思表示を認定することで妥当な結論が導かれている事案も存することに留意し、受益者に不利益がない場合には意思表示を不要とする余地がないかについて検討すべきである。
・ 具体的な条文案の作成にあたっては、受益の意思表示を不要とする場面もあることなどに留意すべきである。
【反対】
xxx、x人2名
【その他の意見】
・ 受益の意思表示を事前に要求しないドイツ民法のように、遡及効をもった規定を第三者のためにする契約とするのが望ましいとの意見もあった。その際は、保険法や信託法などとも整合性がとれるような一定の配慮が求められることになる。(日大)
・ (1)から(3)までは、現行民法の立場を基本的に維持した上で、必要な規定の手当てを置くものである。しかし、民法第537条にいう受益の意思表示については、学説の多数は、同条第2項は契約当事者の「普通の意思」を推定したものにすぎず、その意思が不明の場合を規律する補充的な任意規定であるから、当事者が別段の意思表示をした場合にはそれに従って第三者の権利の取得が認められるべきであるとして、受益の意思表示を不要とする特約も有効としている。また、保険法や信託法などにおいては、保険金受取人や受益者は受益の意思表示なく当然に権利を取得す
ると規定されていることから、これらの規定とのバランスにも考慮する必要がある。確かに、利益といえども強制されるべきではなく、権利の放棄に遡及効が認められていない以上、権利取得の強要は第三者に不当な損害をもたらすこと、保険契約のように受益の意思表示を不要とする場合が法律のxxで規定されていることは、それ以外の場合にまで受益の意思表示を不要とすること許さない趣旨であるという解釈もあり得る。しかし、今日、契約当事者が合意により契約から生ずる法律効果を第三者に帰属させようとするときは、その意思を尊重し、第三者に対する効果を認めても、私的自治(意思自律)の原則から言って差し支えないように思われる。さらに進んで、契約当事者の合意を根拠に、受益の意思表示なくして第三者の権利が発生することも導くことも可能というべきであろう。もし不都合があるというのであれば、自ら権利の取得を望まない第三者に権利の放棄を認め、かつ、その効果に遡及効を与えることで(ドイツ民法第328条、第333条参照)、第三者の利益保護は十分に図れるものと思われる。第三者のためにする契約は、贈与、売買などの典型契約と並べられるような具体的な契約類型ではなく、それを使って複雑な三面関係を作り出すことのできる有用な枠組みを提供するものである。第三者のためにする契約を活用するならば、保険、信託、供託など、三当事者間に関する法律関係をうまく作り出すことに寄与することや、複雑な非典型契約の法的性質を分かりやすく説明することが可能となる。第三者のためにする契約の機能を多角的視点から見直し、新たなルールを盛り込んでいくことが、今後の課題であるといえる。xxxxの立場を否定するものではないが、上記のような観点から更に一歩進めた方向での検討を望みたい。(改正研)
(4)について
【賛成】
沖縄弁法制委、東弁、xx総合、東地税制度部、親和会、日司連、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(比較的多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、札幌弁、慶大、二弁、個人3名
・ 実務慣行及び判例を明文化するものとして、異論はない。
・ 既判力の及ぶ範囲やその執行方法、受益者による履行請求訴訟との関係等の問題点については、現在も論点として存在するものであり、その整理や解決は必要である。しかし、その整理、解決が十分にされていないからといって、要約者の諾約者に対する請求の必要性との対比においては、規定すること自体を否定しなくてはいけないものではない。
・ 諾約者の履行を確保するには、要約者が諾約者に対して受益者への履行を請求することができることを条文上も明記する必要がある。そのためには、要約者による履行請求訴訟の既判力の及ぶ範囲やその執行方法、受益者による履行請求訴訟との関係などについても、併せて整理することが求められる。
【反対】
xxx、x人2名
その他の意見について
・ xxxxを採用するのであれば、これが強行規定なのか、任意規定なのかをまずは明確にしてほしい。すなわち、仮に、民法第537条を任意法規と解するのであれば、受益の意思表示を事前に要求することを特約で排除できることになる。そうであるとすれば、あえてこの規定を置く意味や必要性がどれほどあるのか疑問であるため、その点を明確に示した上で、慎重に議論を進めてほしい。(日大)
2 要約者による解除権の行使(民法第538条関係)
民法第538条の規律に付け加えて、諾約者が受益者に対する債務を履行しない場合には、要約者は、受益者の承諾を得て、契約を解除することができるものとする。
【賛成】
沖縄弁法制委、東弁、xx総合、改正研、東地税制度部、日大、親和会、日司連、愛知弁司法制度調査委、日弁連、大阪弁、裁判所(比較的多数)、一弁、横浜弁、東弁倒産法、札幌弁、慶大、二弁、個人3名
・ 要約者は契約の当事者であるが、受益者の利益も考慮すると、受益者の承諾を条件として、解除権を認めるのが相当である。
・ 要約者において解除をする必要性があり、他方、受益者の承諾があれば認めることによる不都合も想定できない。
・ 要約者が、諾約者に対して、反対給付義務を負う場合は、受益者の承諾なく解除することを認めるべきかとも思えるが、要約者と受益者との間の対価関係の清算のために、敢えて「第三者のためにする契約」という契約形態を選択しているのであるから、解除のための要件として、「受益者の承諾」を必要であるとしてもよいと思われる。
【反対】
早大、xx弁、個人3名
・ 要約者がその債務を履行しない場合には、諾約者が受益者の承諾を得ることなく、契約を解除して受益者の権利を消滅させることは可能であると考えられるが、そうであるとすれば、諾約者の不履行によって、要約者が契約の目的を達成することができない場合にも同様に、受益者の承諾がなくても、契約を解除できると考えるべきである。
・ 補足説明において対立する考え方が示されているが、受益者の承諾を必要としないと解するべきである。要約者がその債務を履行しない場合には、諾約者が受益者の承諾を得ることなく、契約を解除して受益者の権利を消滅させることは可能であると考えられるが、そうであるとすれば、諾約者の不履行によって、要約者が契約の目的を達成することができない場合にも同様に、受益者の承諾がなくても、契約を解除することができると考えるべきである。現行民法第538条は、いったん発
生した受益者の権利を任意に奪うことを認めないとする趣旨にとどまり、要約者・諾約者間の契約の無効・取消しによるのと同様に、債務不履行解除による権利の消滅を排除するものとは思われない。
・ 要約者が諾約者に対し反対給付を負っている場合など、受益者の承諾を必要とすることにより不合理な結論となる場合が想定されるとの指摘もあった。
【その他の意見】
・ 催告なしに解除することができるように読めるが、なぜ催告が不要となるのか。(個人)
第 32 事情変更の法理
契約の締結後に、その契約において前提となっていた事情に変更が生じた場合において、その事情の変更が次に掲げる要件のいずれにも該当するなど一定の要件を満たすときは、当事者は、[契約の解除/契約の解除又は契約の改訂の請求]をすることができるものとするかどうかについて、引き続き検討する。ア その事情の変更が契約締結時に当事者が予見することができず、かつ、当
事者の責めに帰することのできない事由により生じたものであること。
イ その事情の変更により、契約をした目的を達することができず、又は当初 の契約内容を維持することが当事者間のxxを著しく害することとなること。
【解除・契約の改訂の双方を効果とする案に賛成】
福岡弁、改正研、親和会、早大、日建連、日司連、xx総合、埼玉青年書士、個人3名
・ 事情変更の法理自体は判例・学説上異論なく認められているので、これを明文化すべきである。
・ 明文化に際して、例外的な法理であることを強調し、要件も明確にすれば、濫用はされないのではないか。判例上異論なく認められている以上、明文化を回避することで事情変更の法理を国民一般から見えにくくし、訴訟で援用される機会を減らそうと意図することには、賛成できない。
・ 要件についてはほぼ通説的なものが固まっているから、それらに従う内容で、明文化するべきである。
・ 「当初の契約内容を維持することが当事者間のxxを著しく害することになること」という、様々な要素を考慮可能な要件が設定されていることから、要件として適切でないとはいえない。
・ 解除では対応できない事態があり得るから、契約の改訂も効果として認めるべきである。仮に解除のみとする規定が設けられると、事情変更の法理に基づく契約改訂を認めることが事実上困難となり、その結果、事情変更の法理が不必要に硬直化されるおそれがある。
・ 契約の改訂についてのみ裁判上の行使に限定すべきである。
・ 工事請負契約は長期間にわたるため、契約当初の事情が変わることも多く、震災等の発生により、労務費が急騰するなどの事情が生ずることがあるが、契約金額の
増額等が認められるケースは少ない。事情変更の法理が規定されることで、増額請求が認容されるケースが増え、発注者・請負人間の対等な関係維持が可能になる。
条件付きで賛成
(事情変更の法理が例外であることをxxxxxすることを条件とする意見)
・ 濫用防止及びその適用範囲について誤ったメッセージを与えない観点から、契約締結後に生じた事情の変更は契約の拘束力に影響を及ぼさないという原則をまず明記すべきである。
(要件をより限定的にすることを条件とする意見)
・ 事情変更の法理は、極めて例外的な場合にしか適用されない法理であると考えられるから、その趣旨をより明確にするべく、要件をより限定的にすべきである。
・ 例えば、「極めて」著しい変更があった場合で、その変更が「当事者に起因しない原因」によって生じ、当事者がその変更を「まったく予知」できず、「当初の契約内容を維持することが一方当事者に極めて大きな負担を強いることとなる」とするなど、他の条文には現れない表現を採用するべきである。
(契約解除等は裁判上の行使に限定することを条件とする意見)
・ 事情変更の法理は例外的な法理であるから、濫用を防ぐため、これに基づく解除xxの行使は裁判上行うものとすべきである。
(労働契約への適用を除外することを条件とする意見)
・ 労働契約については、適用すべきでない。
【解除のみを効果とする案に賛成】
札幌弁、横浜弁、東弁倒産法、仙台弁、東弁、日弁連、愛知弁司法制度調査委、二弁、個人2名
・ 裁判所が契約の改訂を命じることは司法の限界を超えるものである。
・ 解除という重大な効果と結びついていることで、その適用が非常に例外的になる一方、当事者は和解で適切な解決を模索することとなり、妥当な解決が得られる。裁判所に契約変更権を認めることは、契約という当事者の意思に基づく行為の解決としては不適切である。
※ 【解除のみを効果とする案に賛成】についても、【解除・契約の改訂の双方を効果とする案に賛成】の「条件付きで賛成」と同様の意見があった。
【効果を具体的に規定しない案に賛成】大阪弁
・ 契約の改訂について議論が尽くされていないものの、将来の議論を縛ることなく、xxxの適用としての柔軟な解決が図られるようにするため、事情変更の法理の効果は具体的に規定しないこととすべきである。
【引き続き検討すべきとする意見】
日弁連消費者委、沖縄弁法制委、大分弁、TMI、全中、損保協、全信組協
【反対】
日商・東商、生保協、国際企業法務、貿易会、土地総合研、ガス協、立大、広島弁、全宅連、サービサー協、xx他、虎門、車販協、広大、電情産協、日本GE、堂島、JC
FA、日大、xxxxxx、新経連、改めて見直す会、経営法友会、労働弁、連合、全銀協、一弁、最高裁(非常に多数)、xx弁、経団連、VC協、不動産証券化協、不動産流通協、虎ノ門国際、チェーンストア協、日証協、貸金業協、自動車リース協、自工会、個人4名
・ 事情変更の法理は、xxxの具体化として認められたケースもあるが、最高裁での肯定事例はなく、契約の拘束力を否定する極めて例外的な法理であるから、このような法理を明文化する必要に乏しく、かえって広く適用可能性があるとの誤解を与える。
・ 事情変更の法理が明文化された場合、債務の履行拒絶や弁済条件の変更などに関して、訴訟の内外を問わず、濫用的な主張や独自の主張を招く危険性が高い。
・ 事情変更の法理を明文化する必要性は低く、これが適用されるべき事案においてはxxxに基づき個別具体的事情に即して妥当な解決を図るとすることで十分であり、かつ、適切であるから、一律のxxの規定を設けることには適さない。
・ 事情変更の法理を適切に限定的な要件の下で明文化することは困難である。
・ あまりに厳格な要件や手続の下で明文化した場合には、特に長期継続契約においては契約の前提となった事情が著しく変化することもあり得るところ、逆に不合理な結果となることも懸念される。
・ 契約実務上、事情変更の原則をxxで規定し、その効果について個別の事案に応じて設定しているという場合もあり、民法で規定すると実務の運用に支障が生ずるおそれがある。
・ 「契約の改訂」については、第三者である裁判官が適切に改訂することができるのか疑問があるし、当事者の予測可能性を著しく損なう。
・ 労働契約の分野にも事情変更の法理が適用されるとすれば、使用者に新たに労働条件変更の手段を与えることになるし、労働組合の意見・協議手続を組み入れるなど、特別法(労働契約法)の中で慎重な検討が不可欠である。そうした検討を欠いたまま、民法に総則的規定を置くのは安易に過ぎる。
・ 効果が解除だけであれば、引き続きxxxに委ねればよく、契約の改訂まで含めるのであれば、継続的契約の規律をブラッシュ・アップする方向で検討すればよいのではないか。
【その他の意見】
・ 当事者の再交渉を要件とするか否かについては、再交渉が拒絶された場合の効果等につき、さらに学説・判例における議論を尽くす必要があり、今般の立法によって一定の方向性を示すことは控えるべきである。(早大)
・ 規定の位置付けとしては、例外的な契約の履行障害事由として、契約の履行・解除に関する補足規定とすべきではないか。(慶大)
第 33 不安の抗弁権
双務契約の当事者のうち自己の債務を先に履行すべき義務を負う者は、相手方につき破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てがあったこと
その他の事由により、その反対給付である債権につき履行を得られないおそれがある場合において、その事由が次に掲げる要件のいずれかに該当するときは、その債務の履行を拒むことができるものとする。ただし、相手方が弁済の提供をし、又は相当の担保を供したときは、この限りでないものとする。
ア 契約締結後に生じたものであるときは、それが契約締結の時に予見することができなかったものであること
イ 契約締結時に既に生じていたものであるときは、契約締結の時に正当な理由により知ることができなかったものであること
(注)このような規定を設けないという考え方がある。また、再生手続又は更生手続が開始された後は、このような権利を行使することができないものとするという考え方がある。
【賛成】
親和会、日大、日司連、日弁連消費者委、国際取引、堂島、早大、虎門、埼玉青年書士、日建連、阪大、日弁連、仙台弁、全銀協、札幌弁、横浜弁、東弁、個人3名
・ 実際に下級審裁判例で適用された実例もあり、分かりやすい民法の観点から明文化には賛成である。
補足的意見
・ 柱書き(本文)の「その他の事由」には、反対給付の意思・能力に欠ける場合も含まれるとすべきである。
・ 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立てに相当する具体的な事由が存在することを要件としている旨を明確にするため、柱書き(本文)の「その他の事由により」との表現を改め、「準じた事由」などとすべきである。
・ 「相手方が倒産手続開始を申し立てたとき」、「相手方の財産に対する強制執行があったとき」、「相手方の支払不能又は支払の停止」のように、具体的・限定的に列挙すべきであり、「その他の事由」という抽象的な要件を定めるべきではない。
・ 再建型の倒産手続開始の申立てがあった場合に、先履行義務者に債務不履行の損害賠償責任を課す仕方で義務の履行を強いることはxxでないから、再建型の倒産手続開始の申立てがあった場合を例示することは適切である。
・ 柱書き(本文)の「履行を得られないおそれがある場合」では誤解のおそれがあるため、「履行を得られないであろうことが客観的に明瞭な場合」とすべきである。
・ アにおいて、反対給付請求権の危殆化事由が契約締結の時に予見することができなかったこと(予見不可能)を要件とせず、予見していた場合のみを除外することとすべきである。
・ イは、契約締結時に生じていた事情を認識していなかったという場合であり、これは、他の事情についての認識の欠如と同じく、錯誤、不実表示、詐欺、情報提供義務等の一般法理に従って解決されるべき問題ではないか。
・ 信用不安の事情が生じたのが契約締結前であるか否かは、抗弁権を行使したい者にとっては変わりがないから、イのように、契約締結時に存在した事情で正当な理
由により認識できなかったものについては、不安の抗弁権を認めるべきである。
・ 不安の抗弁権の濫用を防ぐ観点から、柱書き(ただし書)の「相手方が弁済の提供をし、又は相当の担保を供したとき」に加え、「その他の事由により履行を得られないおそれが解消されたと認められるとき」を要件とし、相手方が対抗できる余地を広げておくべきである。
・ 柱書き(ただし書)の「相当の担保を供した」との要件については、「相当」の解釈について担保価値の変動をカバーし得るのか、また、そもそも当該担保提供が倒産法上の否認等の対象とならないか等の問題がある。
【明文化をするのであれば、要件を再検討すべきであるとする意見】
クレ協、JCFA、xxxxxx、信販協、国際企業法務、クレカ協、貸金業協、愛知弁司法制度調査委、xxxxx、大阪弁、二弁
・ 「不安」という主観に左右されかねない要素が入り込むことにより、不測の抗弁権を受けるおそれがあるから、要件をより明確にすべきである。
・ 抽象的な要件とすべきではなく、要件は具体的かつ限定的なものとすべきである。
・ 相手方に破産手続開始等の法的手続開始の申立てがあった場合など不安の抗弁権を主張できる時期が著しく限定されているが、明文化することにより適用可能性が制限されてしまうのであれば、明文化しないことも含めて検討すべきである。
【反対】
改正研、新経連、改めて見直す会、xxx、損保協、日本GE、全中、全宅連、土地総合研、預保、生保協、虎ノ門国際、丸の内総合、不動産証券化協、経団連、xx弁、xx他、立大、経営法友会、兵庫弁、一弁、沖縄弁、日商・東商、個人3名
・ 個別事情に基づき総合的に判断されるべき問題であり、この考え方は一般規定を置くほどその要件や効果についての考え方が確立したものとはいえず、かえって濫用の危険がある。
・ 不安の抗弁権は、下級審裁判例において極めて限定的な場面でしか適用されておらず、明文化する必要性はないのではないか。
・ 不安の抗弁権が条文xxxされると、債務者が規定を盾に抗弁権を主張しやすくなるものと考えられ、不当な履行拒絶(納入拒否等)を誘発し、実務に悪影響を及ぼす懸念がある。
・ 先履行を約束した当事者は、本来的に先履行によるリスクを負担しており、それはすなわち相手方当事者の財産状態悪化リスクを負担しているといえる。
・ 先履行権利者における財政状態の悪化ないし信用不安のおそれから生じる場合に備えておく方法は、契約類型によって異なり、個々のケースによっても異なるようであるから、不安の抗弁権を行使しうる場合を一律に定型的に定めるよりも契約当事者の自治に委ねるのが妥当である。
・ 提案されている要件は、抽象的であり、このような規定が設けられれば、広い範囲で不安の抗弁権が認められるとの解釈又は誤解が生じ、濫用的なものも含めて、不安の抗弁権が安易に主張されることになるし、主張の当否を判断することも困難になる。
・ 相手方の信用不安を理由とする先履行義務の拒絶が広く正当化されるとの理解の下に不安の抗弁権が行使されると、そのことが倒産を誘発するおそれがあるし、賃貸借契約において、賃料が支払われないおそれがあることを理由に賃貸人が賃貸目的物の使用を妨げる(賃貸建物への立入りを禁止する)などの自力救済を誘発するおそれもある。
・ 不安の抗弁権を認めると、破産手続開始決定等の前に相手方に解除権を与えるのと同様の結果になると考えられるが、そのことは、破産管財人に契約を解除するか履行をするかの選択権を認める破産法53条や継続的給付の義務を負う相手方による履行拒絶を認めない同法55条等との整合性を欠くことになるのではないか。
・ 倒産手続において相手方の債権は共益債権又は財団債権として完全に履行される可能性が高いにもかかわらず、相手方に不安の抗弁権を認めることは過大な保護であり、不安の抗弁権の基礎であるxxxないしxxの法理に反する。特に再建型の倒産手続の開始の申立てを不安の抗弁権の原因事由として列挙することは、債務者の事業の再生を目的とする再建型倒産手続において債務者の資金繰りを著しく逼迫し、再建型倒産手続の目的である「事業再建」を害する危険性が極めて高いのではないか。
・ 倒産手続開始の申立てを例示すると、これらの申立てが不安の抗弁権の行使を誘発することになるが、仮に不安の抗弁権の主張が理由のないものであったと事後的に判断されたとしても、履行を拒絶されている間に企業価値が劣化してしまえば取り返しがつかず、事業再生や事業譲渡が妨げられることになるおそれがある。
・ 破産手続においても、事業継続が許可される場合があり、相手方に事実上不安の抗弁権を認めることは適当でない。
・ 財産状況が悪化する可能性は、抽象的には、常に存在するから、アの予見可能性は、要件として機能しないのではないか。
・ ア又はイの認識・予見可能性と一概に言っても、その蓋然性により契約に盛り込むか否かは異なると思われるし、契約当事者の交渉上の立場の強弱によって、契約書に適切に織り込むことができないケースも十分に想定される。それにもかかわらず、一律に、契約時に認識又は予見が可能であれば、不安の抗弁権の行使が制限されるとすると、不合理な結果となるケースがないか、懸念がある。
【その他の意見】
・ (注)に関し、再生手続又は更生手続が開始された後は、不安の抗弁権は行使することができないものとすべきである。(日司連、愛媛法学会)
・ (注)に関し、再生手続又は更生手続が開始された場合であっても、共益債権が弁済されない可能性を基礎付ける具体的事情やxxxないしxxの観点から不安の抗弁権を認めるべき具体的事情がある場合には、不安の抗弁権の行使を否定するべきではない。(東弁倒産法部)
・ 現在の実務において不安の抗弁権が適用される場面は双務契約に限られているわけではなく、例えば、「期限の利益の請求喪失事由発生後・相殺適状前」の預金の拘束や、消費貸借契約が諾成契約化された場合にも適用され得るものとする配慮が必
要である。(全銀協)
・ 同時履行関係にある場合であっても、一方当事者が履行のために準備を要する場合には、不安の抗弁権による履行準備の停止権を認めるべきである。(個人)
・ 契約の相手方の状況をつぶさに把握していないために不安の抗弁権を行使することができなくなるという不都合を回避するため、「履行を得られないおそれがある場合」に該当するか否かを把握するための調査要請に応じる義務を相手方に課すべきである。(JCFA)