Alice テストの要件をシミュレーションすべからず: 抽象概念の応用だけでは特許不適格な主題を特許適格な主題に変化させることはできない
秘密保持契約はその契約に基づき受領された秘密情報から生じた特許の所有権も支配する
Federal Circuit は、Sionyx LLC v. Hamamatsu Photonics K.K. (Appeal No. 19-2359) において、NDA に従い秘密情報を開示した当事者は、被開示当事者が出願した合衆国特許および外国特許が開示当事者が提供した秘密情報から生じたものであり、かつ、秘密情報から生じた特許の所有権が開示当事者の所有となることが NDA の条件により規定されている場合には、たとえ被開示当事者の従業員がその特許発明に寄与していたとしても、それらの特許の所有権を持つ資格がある可能性があると判示した。
SiOnyx LLC は、新規な電子的特性を有するシリコンを製造する特許取得済みプロセスの商用化を目的として設立された。浜松ホトニクスは、この技術の共同開発について話し合うために SiOnyx と秘密保持契約 (NDA) を締結し、秘密情報を受領した。NDA には、秘密情報中に存在するか秘密情報から生じているすべての特許権の所有権は開示当事者が所有すると規定されていた。浜松ホトニクスは、SiOnyx が所有権を持つプロセスを使用することを最終的に辞退した。しかし、浜松ホトニクスはその後も SiOnyx の秘密情報を利用した光検出器の開発を続け、合衆国とその他の数か国でそれらの機器の特許を取得した。
浜松ホトニクスが製品の商用化を開始した後、SiOnyx は、契約違反、不当利得、特許侵害を理由とし、かつ浜松ホトニクスの合衆国特許の発明者訂正を求めて、浜松ホトニクスを提訴した。裁判終了後に陪審が SiOnyx に有利な認定をし、特に、浜松ホトニクスが SiOnyx の秘密情報を利用することによって NDA に違反したことと、 SiOnyx の創業者の 1 人が浜松ホトニクスの合衆国特許の共同発明者であったことを認定した。裁判後の申立てにおいて、SiOnyx は、浜松ホトニクスの合衆国特許および外国特許について SiOnyx に単独所有権があることの確定を求めた。地裁は、浜松ホトニクスの合衆国特許所有権に関する SiOnyx の申立ては認めたが、外国特許に関する申立ては退けた。
上訴審において、Federal Circuit は合衆国特許の所有権の移転を命じた地裁判決を維持し、外国特許については地裁判決を覆した。Federal Circuit は、NDA に基づけば、この契約に従い交換された開示当事者の秘密情 報から生じた特許は開示当事者が所有していたと認定した。浜松ホトニクスは、SiOnyx から受領し不当に流用した情報以外に自社が NDA の条件に基づいて本件特許に秘密情報を寄与したという証拠は提示できなかった。 Federal Circuit は、共同発明者に関する陪審の認定によりクレーム対象の発明に浜松ホトニクスの従業員が寄与したことが示唆されていた可能性があることには触れたが、発明者性は所有権とは異なることを指摘した。さらに裁判所は、従業員の権利は NDA の契約当事者であった浜松ホトニクスに移転されたと認定した。Federal Circuit は、浜松ホトニクスの従業員からの寄与に基づきクレームが修正されたことは、SiOnyx に対するxx法上の救済を否定する正当な理由とはならない、と判示した。浜松ホトニクスの外国特許について、Federal Circuitは、本件合衆国特許についての SiOnyx の単独所有権を立証する証拠は外国特許の所有権にも適用され、ま た、地裁は浜松ホトニクスに対する地裁の権限の行使として本件外国特許の所有権の移転を強制することが可能だったと認定した。
Alice テストの要件をシミュレーションすべからず: 抽象概念の応用だけでは特許不適格な主題を特許適格な主題に変化させることはできない
Federal Circuit は、Simio, LLC v. Flexsim Software Products, Inc. (Appeal No. 20-1171) において、クレーム中の唯一の発明概念が従来的で十分に理解されている技法を用いた抽象概念の応用であるクレームは、そのクレームを特許適格な概念に変化させるのに十分でない、と判示した。
Simio は、ユーザーがコーディングの代わりに図形を用いて従来より簡単にシミュレーションを構築できるようにするオブジェクト指向シミュレーションの生成を対象とする特許を侵害しているとして、FlexSim Software Products (以下「FlexSim」) を提訴した。FlexSim は、請求の趣旨不十分を理由とする訴え却下の申立てを行 い、Xxxxx のクレームは特許法 101 条でいう特許不適格な抽象概念であったと主張した。地裁は、Xxxxx のクレームは Xxxxx 判決で示された 2 段階の判断枠組みに照らして特許適格でなかったと認定し、訴えを却下した。その後 Xxxxx は再検討を求める申立てを行ったが、地裁はこれを却下した。Xxxxx は上訴した。
Federal Circuit は本件のxxxxが特許不適格な主題を対象としていたと判断し、地裁判決を維持した。 Federal Circuit は、本件のクレームが 1980 年代および 1990 年代から使用されてきたオブジェクト指向シミュレーションをプログラミングの代わりに図形を用いて生成するという抽象概念を対象としていたという点には同意した。しかしその一方で、本件のクレームによって向上するのはユーザー体験であってコンピューター自体の機能性ではなかったため、クレームが従来のシミュレーションの機能性を向上させたという Xxxxx の主張は認めなかった。また、Federal Circuit は、本件のクレームには発明概念も有効なクレームとして存続させられるだけの意義のある抽象概念の応用も欠けていたため、本件のクレームによって抽象概念が特許適格な発明に変化してはいなかった、と判示した。したがって、本件のクレームは特許不適格と判断された。