原則としてJPO モデル契約書の想定シーンを踏襲するが、下記X 社とY 社について、
ライセンス契約書(新素材)の解説
想定シーン
原則としてJPO モデル契約書の想定シーンを踏襲するが、下記X 社とY 社について、
【ケース1】X 社が日本企業、Y 社が中国企業
【ケース2】X 社が中国企業、Y 社が日本企業
という2つの状況を想定し、中国におけラるイセンス契約を想定したものとする。
これら2つのケースが異なることによって、契約書又はその解説に違いがあるについてはそれぞれ解説する。
1. X 社(樹脂に添加可能な放熱に関する新素材を開発した大学発スタートアップ)と
Y 社(自動車部品メーカー)の共同研究開発は順調に進み、研究成果として、樹脂に対して本素材を特定量配合してなる透明性樹脂組成物、その成形体およびそれからなるライトカバーについて、共同研究契約に基づきX 社単独名義で特許出願がなされた。
2. また、本素材を用いた樹脂により形成されるヘッドライトカバーの量産化の目処もついたことから、X 社からY 社に対するライセンスの内容や事業化後の両社の権利関係を協議すること
となった。
3. また、共同研究開発の結果、Y 社においては、当初想定していた製品(ポリカーボネート樹脂
組成物からなるヘッドライトカバー。以下「当初製品」という。)以外の製品(アクリル系樹脂組成物からなるテールランプカバー。以下「応用製品」という。)にも研究成果を活用できると考 えたため、Y 社は、X 社に対し、応用製品についても研究成果の用利許諾を得たいと考える
に至り、本ライセンス契約を締結することとした。
4. ライセンスの条件の概要は以下のとおりである。
① バックグラウンド技術のライセンスは、共同研究開発契約において当初製品について定めたものと同様に、非独占的通常実施権により行うこと。
② 研究成果は汎用性が高く、X 社の利用の自由度を確保しておくため、応用製品については、非独占的通常実施権を設定すること。
③ X 社は、本素材の技術力をブランディングするために取得した登録商X標XX「」を、ヘッドライトカバーとテールランプカバーPRのに使用してもらうことを希望しY 社、もこの点を了承していること。
目次
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前文
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 追記・変更なし。
<ポイント>
z 本モデル契約は、以下の各ライセンスをスタートアップから事業会社に対して行うための契約である。
① 研究開発着手時に想定していなかった製品(応用製品)に、研究成果ならびに共同研究 開発に着手する前にスタートアップが保有していた特許権を利用することについてのライセンス
② 本素材についてスタートアップが保有する技術をブランディングするために保有している商標権のライセンス
z 前提理解のため、知財等と対象用途、規定する契約種別の整理を以下に示す。
対象 知財等 | 本製品 1 (当初製品、共同研究開発契約で対象としたヘッドライトカバー | 本製品 2 (応用製品、本ライセンス契約で ) 対象とするテールランプカバー |
共同研究開発にて、各々が単独で開発・ 取得した知財等 | 使用しない | 使用しない |
共同研究開発の成果として共同で発明された知財等 | 共同研究開発契約にて規定 (本モデル契約でも第2 条で引用) ・●年間は独占的通常実施権 ・ライセンス料:無償など | 本ライセンス契約にて規定 ・非独占的通常実施権 ・ライセンス料:有償など |
共同研究開発に着手 する前にスタートアップが保有していた知 財等 | 共同研究開発契約にて規定。 (本モデル契約でも第2 条で引用) ・非独占的通常実施権 ・ライセンス料:有償など | 本ライセンス契約にて規定 ・上記と同条件 |
本商標 | 本ライセンス契約にて規定 ・非独占的通常使用権 ・無償 |
)
<解説>
z 共同研究開発契約では、共同研究開発に着手する前にスタートアップが保有xxいた特許
権等(以下「本バックグラウンド特許権」という。)および研究成果にかかる発明に関して、研究開発時に想定していた製品(「ヘッドライトカバー」)の製造等についてライセンスする旨の条項を設けている。
z 一方、共同研究開発終了後における、スタートアップの本バックグラウンド特許権や研究成果にかかる発明に関する、応用製品の製造等についてのライセンスは、共同研究開発の結 果によってその要否および内容が異なるため、同契約書には規定されていない。
z そこで、本モデル契約は、応用製品の製造等について①、バックグラウンド特許権およ②び研究成果に関するライセンスを行うものである。
z 本モデル契約(ライセンス契約)においては、許諾条件(独占・非独占の別、許諾範囲、ライセンス料等)、技術情報の提供の有無、改良技術の取扱い等が交の渉ポイントとなる。
1 条(定義)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 特許と専利の違いの解説について追加している。
③コラムについて
z 改良に関する中国の関連規定を追記している。
<ポイント>
z 本モデル契約で使われる主要な用語の定義に関する規定である。
<解説>
本製品の定義
z 「本製品」の定義によって、権利許諾の範囲が確定することとなるため、記載の仕方には注意が必要である。ここでは「本製1品」が共同研究開発の際に想定していた当初製品、「本製2」品
が応用製品を指している。
z 本製品の定義を、「自動車用の樹脂により形成されるヘッドライトカバー」または「自動車用テールランプカバー」とだけ記載した場合、本特許権を実施しない製品
についてもライセンス対象製品に含まれ、ライセンス料の計算に算入されてしまう。
z 一方、「本特許権を実施する自動車用の樹脂により形成されるヘッドライトカバー」等と「本特許権を実施する」という要件も含めて定義した場合、スタートアップは、2本に製本品特許権に
かかる特許発明が実施されていることを確認できない限り、本来ライセンス対象となるべき製品の売上等をライセンス料の計算に算入できない。
z そこで、本モデル契約においては、ライセンスを受ける製品を別紙製品目録において定めることとした。同目録においては、製品名や製品番号等で対象製品を特定することが考えられる。
特許権の定義
z 「本特許権」には、共同研究成果にかかる特許出願または特許権、「本バックグラウンド特許権」には、共同研究開発に着手する前にスタートアップが保xxていた特許権等が含まれるよう、これらを別紙「知的財産目録」に記載する必要がある。
z このように「本特許権」と「本バックグラウンド特許権」を分けるての定は義、す本製品1 にお
いて、「本特許権」については共同研究契約に基づく独占的実施許諾が、「本バックグラウン
ド特許権」については本モデル契約に基づく非独占的実施許諾がなされており、さらに実施許諾地域も異なるなど、実施許諾条件が異なるためである。
本地域の定義
z 「本地域」の定義は、権利許諾の範囲を定めるものである。本条では全世界としているが、特許権は国ごとに発生するものであり、当該発生国においてのみ特許権としての効力を有するので、対象国を列挙することもある(属地主義)。
z 本地域の範囲について、スタートアップが特許権を保有する範囲とすることも考えられる。
特許と専利の違い
z 日本語の「特許・実用新案・意匠」に対応する中国語は「xx専利・実用新利・外観設計専利」であり、「専利」は「特許」に対応する語ではない。契本語版・中国語版においてこの点を明確にしているか否かに注意すべきで。あ
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<解説>
z 特許のライセンスのみでは事業会社が本製品の製造ができない場合は、技術情報やノウハウ等も合わせてライセンスすることも考えられる。
z その場合は、技術情報を定義するが、スタートアップとしては、上記の定義を採用した場合には、自 社がブラックボックス化しているノウハウ等の開示と利用許諾を行う義務を負うことになるため、ノウハウの開示が不必要なケースにおいて不用意にノウハウを含んだ技術情報のライセンスに応じる
べきではない。
【コラム】本製品が事後的に改良された場合の扱い
z 上記のようにライセンスの対象とな製る品(本製品)を別紙等で詳細に特定することは通常行われる実務であるが、本製品が将来改良されて、別紙による特定から逸脱することが想定される。
z このような事態を防止するために、別紙による本製品の特定について、ある程度上位概念的に記
載するという方法と、「本製品」をある程度詳細に特定した上で、定義規定にライセンスの対象製品
として、「本製品(基本的な設計思想を同一にする改良品を含む。)」というような表現にする、という方法がある。
z いずれにせよ、ライセンス契約を起案する際には、製品には常に改良が伴いうるということを念頭に、ライセンス対象を特定する必要がある。
z 知的財産目録についても同様の問題がある。すなわち、後に一方当事者が単独で取得した特許権についても、ライセンス範囲とするのかという論点である。
z 本製品の改良を前提としない場合、かかる論点は生じにくいが、そうでない場合は上記と併せて考える必要がある。
中国における技術改良に関する司法解釈
z 中国「技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する最高裁判所の解釈」第10 条によれば、改良を禁止または制限する条項は、民法典 850条の
「技術の違法独占」に該当し、関係約定が無効であると判断されるおそれが。あよって、本製品の改良を禁止できないので、改良後の取り扱いを事前に約定しほうがよい。改良の取り扱いを約定するxxも、平等と公平で約定しなければない。
参照:
中国「技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する最高裁判所の解釈」第10 条
下記の状況は、民法典850条の「技術の違法独占」に該当する。
①契約対象技術の改良、又は改良した技術の使用を制限する条項、または双方改良技術を交換する条件が平等ではない。一方が自ら改良した技術を無償で相手方に提供するよう要求し、お互いに有利な条件ではなく相手方に譲渡し、改術の知財権を無償で独占または共有することを含む。
……
2 条(権利の許諾)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 中国法における専利実施許諾の方式を追記している 。
z 中国では、訂正審判制度がないことを追記している。
③コラムについて
z 地域を限定した独占的通常実施権の設定について追記している。
<ポイント>
z スタートアップから事業会社に対する本特許権、本バックグラウンド特許権および本商標にかかる商標権のライセンスについて定めたものである。
<解説>
特許権の整理
z ①対象製品(本製品1【当初製品】か本製品2【応用製品】)か)お②よ共び同研究開発により
創出された特許権(本特許権)の許諾か本バックグラウンド特許権の許諾か、を記載する必要がある。これを整理したのが以下の表である。
本製品 1 | 本製品 2 | |
共同研究開発の成果として共同で発明された知財等 | 本モデル契約第2 条 1 項および 共同研究開発契約第 7 条第 7 項に規定 ・ライセンス対象:本製品1 の設計・製造・販売 ・●年間は独占的通常実施権その後は非独占的通常実施権 ・ライセンス料:無償 ・地理的範囲:全世界 ・ライセンス期間:本モデル契約期間中または各権利の存続期間満 了までのいずれか早いほう | 本モデル契約第2 条 3 項、4 条に 規定 ・ライセンス対象:本製品2 の設計・製造・販売 ・非独占的通常実施権 ・ライセンス料:有償 ・地理的範囲:本地域(全世界) ・ライセンス期間:本モデル契約期間中または各権利の存続期間のいずれか早いほう |
共同研究開発に着手する前にスタートアップが保有しいた知財等 | 本モデル契約第2 条 2 項および 共同研究開発契約第 7 条 2 項に規定・ライセンス対象:本製品1 の設計・製造・販売 ・非独占的通常実施権 ・ライセンス料:xx(ライセン間中に事業会社の販売するすべての本製品 1 の正味販売価格の●% (外税)) ・地理的範囲:全世界 ・ライセンス期間●:年 | 本モデル契約第2 条 3 項、4 条に 規定 内容は上記と同条件。 |
本ライセンス契約にて規定
・非独占的通常使用権
・無償
本商標
z なお、本条では取り扱っていないものの、共同研究開発においてスタートアップまたは事業会社の単独発明が生じた場合には、共同研究開発契約7 条 1 項に基づき、単独発xxかかる
特許権等の知的財産権のライセンスの有無および条件を別途協議の上定めることとなる。
z ライセンスの条件については、同発明の重要性や本製品との関係性を考慮しながら、独占的ライセンスにするか否か、有償にするか否か、有償にする場合かにないる算定式でライセンス 料を算定するか等を決定する必要がある。
ライセンスの範囲
z ライセンサー(実施許諾者)は、ライセンシー(実施権者)による想定外の実施を防ぐため、ライセンス(許諾)の範囲を限定的に定める必要がある。本条ではライセンスの対象を製品で限定
している。
z 特に、スタートアップは、自社の競争優位性を保つ上で、1特件許あたりの重要性が事業会社
のそれに比して高いことが多いから、ライセンスの対象を過度に広く設定しないよう留意すべきである。
z 逆に、事業会社は、真に自社事業に必要な範囲にライセンス対象を留めるよう配慮することが、スタートアップとの中長期的な関係を築くために重要で。あオるープンイノベーションを通じて自
社の事業を継続的に強化していくための秘訣のひとつであるといえよう。
専用実施権
z 本条では、1 条⑧号所定の本地域内において、本製品2 の製造販売に関する非独占的通常
実施権を許諾している専。用実施権(特許法77 条)が提案されることもあるが、専用実施権を 設定する場合、契約で別段の定めがなければ、特許権者であるスタートアップ自身も実施ができない(通常実施権の場合は、スタートアップ自身も実施ができる。)。
z 事業会社にとって専用実施権を提案する最大のメリットは、事業会社自ら差止請求権を有する、ということである。反面、差止請求権を行使した場合に抗弁的な法的措置として一般的な特許 無効審判は、ライセンサー(スタートアップ)自らが対応しなければならない点には留意が必要である。
z したがって、スタートアップとしては、専用実施権の設定は慎重に判断すべきである。
z なお、専用実施権制度はグローバルには普遍性を有する制度ではないので、この点も留意する必要がある。
中国における3種の使用許諾と司法解釈
z 中国における専利の使用許諾権は3種類があり、それぞれ「普通実施許諾
「独占実施許諾」、「排他的実施許諾」という。「普通実施許諾」は日本実施権に相当し、専利権者は被許諾者に規定する範囲に専利権の実施を許諾するが、当該範囲において専利権者の自己の実施権及び第三者への許諾の権利を保留する。「独占実施許諾」は、日本の専用実施権に相当し、専者は被許諾者に規定する範囲に専利権の使用を許諾するが、専利権者自己も当該範囲において当該専利権を実施できず、第三者への許諾する権利もしない。「排他的実施許諾」は、の日「本独占的通常実施権」に相当し、専利者は被許諾者に規定する範囲に専利権の使用を許諾するが、当該範囲において専利権者の自己が当該専利権を実施できるが、第三者へ許諾することできない。関連規定について、下記司法解釈を参照。
z したがって、中国法における「独占実施許諾」は日本の専用実施権に相当ため、翻訳ミスなどを留意する必要がある。また、スタートアップ自身のを残しておいたほうがよい観点からみれば、専用実施権、つまり中国法にる「独占実施許諾」を約定しないほうがよい。
z なお、中国では、独占実施許諾の実施権者は自ら差止請求権と損害賠償請求権を有し、独立して訴訟またはほかの権利行使行為を実施できるが、排的実施許諾の実施権者は専利権者が権利行使しない場合、独立して訴訟またはほかの権利行使行為を実施できる。普通実施許諾の実施権者は専利権者と共同して権利行使できるか、または専利権者からの明確の授権を受けら、独立して訴訟またはほかの権利行使行為を実施できる。
参照:「最高人民法院による技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する解釈」
第二十五条 専利実施許諾には以下の方法を含む。
(一)独占実施許諾とは、許諾者が専利実施の許諾の約定範囲内に、当該専利 1 人の被許諾者の実施のみ許諾し、許諾者は約定に従い、当該専利を実施してならない。
(二)排他的実施許諾とは、許諾者が専利実施の許諾の約定範囲内に、当該専を1 人の被許諾者の実施のみ許諾し、許諾者は約定に従い、当該専利を自己実施できる。
(三)普通実施許諾とは、許諾者が専利実施の許諾の約定範囲内に、当該専利実施を他人に許諾し、かつ許諾者自己も当該専利を実施できる。
当事者は専利実施許諾の方法について約定しなかった又は約定が不明な場合、普通実施許諾と見なす。専利実施許諾契約書に、被許諾者が他人の専利実施を許諾できると約定した場合、当該再許諾普は通実施許諾と見なす。但し当事者間で別途約定がある場合を除く。
技術秘密の使用許諾方法については、本条第一項、二項の規定を参照して確定する。
商標等の許諾
z 本条では、スタートアップが保有する特許および技術のブランド化の観点から、同技術等に関する商標権をスタートアップが保有していることを前提に、事業会社に対して同商標権の使用許諾を行なっている。
z スタートアップとしては、コアとなる技術のブランディングの観点から、当該技術の名称等につき商標登録を行い、商標権を取得することも検討すべきである。
z なお、本件の場合、スタートアップは事業会社に本商標を使用させるということを超えて、より積極的に、ブランディングの観点から本商標を事業会社に使用させたいという意向があること を前提として、事業会社に対して、本製品に本商標を付する努力義務を課している。
z 商標の使用許諾までは行わない、類似のブランディング方法としては、製品の説明書やウエブサイトに「この製品○は○社の α 技術を採用しております。」「この製○品○は社と共同して開
発した成果を利用しております。」との記述をしてもらうことである。このような記述がブランディングのみならず、資金調達等に及ぼすプラスの影響は計り知れない。
訂正審判等の承諾
z 本条 7 項は、訂正審判等に関する事前承諾を定めたものである。
z 特許法 127条は、「特許権者は、専用実施権者、質権者または・・・通常実施権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、訂正審判を請求することができる。」と定めている。
z そのため、訂正審判等の必要性を考え、上記条項を設けている。
中国では訂正審判制度がないことについて
z 中国専利法及び関連法律において、訂正審判制度が規定されておらず、つまり、法律上、基本的に権利化されてから自の発的な訂正が不可能である。ま た、無効審判段階において、補正を行うことが可能であるが、補正の方式限られる。
参照:「専利審査指南」
4.6.3補正方式の制限
専利復審委員会で審査決定を下すまでに、専利権者は請求項又は請求項に含まれる技術方案を削除することができる。
下記 3 つの状況についての答弁期間以内に限って、専利権者は併合の方式によって権利要求書を補正することができる。
(1)無効宣告請求書に対するもの
(2)請求人が追加した無効宣告事由又は補充した証拠に対するもの
(3)専利復審委員会が引用した、請求人が言及していない無効宣告事由又証拠に対するもの。
【コラム】独占的な実施権
z 独占的な実施権は、第三者に対する参入障壁となるので、実施権者に対して、いわば「商圏を与える」という趣旨を持つ。
z 手元資金の厚さが企業存続に影響を及ぼすスタートアップは、時として、特許の実施許諾と引き換えに一時金の獲得を目指すことがあるが、そのような場合には独占的な実施権の付与を 前提に、「年間△△万円のリターンが得られる商圏を獲得するために一時○金○万円を支払う、
設備投資のようなものですよ。独占期間内●の年間で十分に回収可能です。」という提案をしていくことになる。
ライセンスにおける地理的範囲のオプション
z なお、共同開発契約書において「全世界に対する非独占的通常実施権を設定る」以外のオプションとして示したとおり、「地理的範囲」を限定した独占xxを設定する、例えば、事業会社の所在する国・地域(【ケース2】であ本国」とする)のみ独占的通常実施権を設定し、その他の地域について非独通常実施権を設定することとして、事業会社に配慮する手段もある。
3 条(禁止事項)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 再許諾に関する中国の規定を追加している。
<ポイント>
z ライセンシーの禁止事項を定める条項である。
<解説>
z 本件では、事業会社が自ら製造を行うことを想定していることから、事業会社による第三者へのサブライセンスを禁止している(本1 条号)。
ただし、ライセンシーは自社の子会社や関連会社で製造販売を行うことも考えられるため、これらを第三者の範囲から除いている。
z しかし、「関連会社」の定義はあいまいであるため、「関連会社」という文言を使用するときは、これを定義規定や別紙等で特定する必要がある(本モデル契約においては別紙で特定する
形式にしている(第1 条第 10 号)。
z なお、子会社または関連会社以外にサブライセンスの必要があることが契約締結までに判
明している場合は、別紙等で当該サブライセンス先を特定した上で、サブライセンスを許可することもありえよう本。条 2 号は、許諾された権利の譲渡、移転、担保設定等を禁止する一般
的規定である。
本条 2 号は、許諾された権利の譲渡、移転、担保設定等を禁止する一般的規定である。
z 中国法において、被許諾者が契約書に約定されている者以外の第三者への当該専利の許諾を禁じられている。つまり、再許諾権を明記しない限り、ないと見なされる。事業会社が関連会社への再許諾を実施しようとすれば予め本契約において明記しなければならない。具体的には民法典xxx六十七条及び専利法第十二条を参照。
参照:
z 「中国民法典」
xxx六十七条 専利実施許諾契約書の被許諾者は約定に従い、専利を実施しなければならず、契で約規定された以外の第三者に対して当該専利の実施を許諾してはならない、かつ約定に従い、使用料を支払う。
z 「中国専利法」
第十二条 いかなる単位又は個人も、他人の専利を実施する場合は専利権者実施許諾契約を締結し、専利権者に専利使用料を支払わなければならない。許諾者は、契約で規定された以外のいかなる単位又は個人に対しても当該専の実施を許諾する権利を持たない。
4 条(本製品2 に関するライセンス料)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 第 6 項として、対価支払うための必要な手続きがある場合の協力義務項を追記している。
②解説について
z 技術輸出入関係と届け出手続きを追記している。
z 中国から海外へ送金するときの実務について追加している。
z 技術契約の認定登録に関する内容を追記している。
<ポイント>
z 本モデル契約におけるライセンス(本製2品についての本特許権および本バックグラウンド
特許権の非独占ライセンス)の対価としてのライセンス料の金額、支払時期および支払方法を定める条項である。
z ライセンス料(率)を決定するためには、スタートアップが提供する特許等の希少性や重要性、
本製品の市場規模、販売価格や製品寿命、あるいは本製品の付加価値における当該特許等の貢献度など、個別のケースに応じた幅広な検討が必要である。
z また、上記条項では、ランニングロイヤルティの算定を本2製の品正味販売価格(総販売価
格から運賃や保険料および梱包費などの経費を控除した販売価格)に基づき行っているが、販売価格を基準にすることもありうる。
<解説>
ライセンス料設定の考え方
z ライセンス料については①、ライセンス契約締結時にまとまった額を支払い(イニシャルフィー)、②その後は実施量に応じて定期的に支払う(ランニングロイヤルティ)のが一般的である。
z 交渉においては、イニシャルフィーとランニングロイヤルティの料率がトレードオフの関係にな
ることがある。その際、ランニングロイヤルティに重きをおいてハイリスクハイリターンを狙うか、イニシャルフィーに重きを置いて足元のキャッシュフローを固めるか、という判断が必要にな
る。
ランニングロイヤルテ:ィライセンス対象製品の製造販売量が少なけれラばイセンス料が少なくなるが、製造販売量が多ければライセンス料が多くなる。
イニシャルフィー:ライセンス対象製品の製造販売量に関わらず、契約締結時点で一定のまとまった額が入ることとなる。
z 本件では独占的通常実施権を設定していないが、独占的通常実施権を設定する場合におい ては、他社へライセンスできないことに対する補償として、対象製品の製造販売の数量に関
わらず、一定のライセンス料を最低額として(ミニマムギャランティとして)設定した上でランニングロイヤルティを設定することもありうる。
z ランニングロイヤルテはィ、年度ごとや、半期ごとの報告・支払いを義務付けるものが多いといえるが、四半期ごと、毎月というものも存在する。
z ランニングロイヤルティを規定する場合、その支払い金額を裏付ける報告義務を課すことが通常である。当該報告義務の対象は、ランニングロイヤルティを計算するに必要最小限の範囲を定めることが原則となる。
逆に言うと、「ライセンス料の計算基準=報告監査可能」という公式を満たすように、ライセンス料の計算基準を決めることがセオリーとなる。
技術輸出入関係及び届け出手続き
z 契約の両方当事者は中国企業と日本企業であり、双方の間の権利帰属、譲渡、実施許諾はいずれも技術輸出入に該当する可能である。中国「技術輸入管理条例」によれば、技術輸出入の場合、技術分野によって、輸出入禁止、輸出入制限、輸出入自由の三種類がある。本件の技術分野は基本的には輸出入自由の技術に該当すると考えるが、具体的には、開発できた技術容を中国政府が発行した輸出入の制限・禁止リストに参照する必要がある輸出自由技術に該当する場合、事前に政府の許可を貰う必要がないが、中国企業の現地商務部門に契約を届け出る必要がある。輸出入禁止、輸出入制限の技術に該当する場合、国務院による「知的財産権対外譲渡の関連作業弁法(試行)」に基づい、て現地商務部門に輸出申請し、審査を受ける必要がある。
z ケース1は、甲が日本企業であり、乙が中国企業である。その際に、
¾ 第 2 条第 2 項、第3 項に規定されている甲が保有している本特許権、本バックグラウンド特許を権乙に実施許諾することは、技術輸入に該当する。技術輸入契約を乙の所在地の商務部門に届出るべきである。同届出証明はライセンス料を日本に振り込む際に、銀行から要求される可性がある。よって、届け出しない場合、ライセンス料の送金に影響をるおそれがある。商務部門での届出について、契約締結日より3 か月以 内に実施すべきであるが、ランニングロイヤルティ方式の場合、支払う額の計算基準が形成してから3 か月以内に届け出る必要がある。なお、実施許諾契約として国家知識産権局に届出るべきである。届出しなくも、契約の有効性に影響を与えないが、善意第三者に対抗できない。
¾ 第 2 条第1項に規定されている本製品1 の製造・販売のための本特許権の通常実施権の許諾について、共同研究開発契約第7 条 1 項および第 7 項の規定によれば、無償に実施許諾するとなっているため、技術入に該当する。理論上、技術輸入契約を乙の所在地の商務部門に届出るべきであるが、無償なので、送金の問題がなく、届け出しなくてもな影響がない。なお、実施許諾契約として国家知識産権局に届出るべである。届出しなくても、契約の有効性に影響を与えないが、善意第に対抗できない。
z ケース2は、甲が中国企業であり、乙が日本企業である。その際に、
¾ 第 2 条第 2 項、第3 項に規定されている甲が保有している本特許権、本バックグラウンド特許を権乙に実施許諾することは、技術輸出に該当
する。技術輸出契約を甲の所在地の商務部門に届出るべきである。なお、実施許諾契約として国家知識産権局に届出るべきである。届出しくても、契約の有効性に影響を与えないが、善意第三者に対抗できない。
¾ 第 2 条第1項に規定されている本製品1 の製造・販売のための本特許権の通常実施権の許諾について、共同研究開発契約第7 条 1 項および第 7 項の規定によれば、無償に実施許諾するとなっているため、技輸出に該当する。理論上、技術輸出契約を甲の所在地の商務部門に届出るべきであるが、無償である場合、届け出ができない。なお、実諾契約として国家知識産権局に届出るべきである。届出しなくても、の有効性に影響を与えないが、善意第三者に対抗できない。
中国から海外への送金における注意点
z 中国では、海外へ送金するとき、中国国家税務総局国家外匯管理局及び銀行などの審査を受けて、その要求に従い、関連資料を提出する必要があり銀行などの審査に合格することで無事に送金できることになる。こたのめ、予め利用する中国側の銀行へ関連必要書類を打診し、準備したほうが望まい。また、甲の協力が必要な場合、双方で友好的に協議したうえ、協力して連手続きを行ったほうがよい。
中国における技術契約の認定登録手続き
z 中国では、技術契約の認定登録手続きもある。同手続きが中国企業の所在地の商務部門に実施するべきである。技術契約として認定登録されたら、技の収入につき、税金の優遇措置を求めることができる。甲はロイヤルティけるので、ケース2の場合、中国企業である甲は技術契約を認定登録すれば、受けたロイヤルティについて、税金の優遇措置を求めることができる。
5 条(監査)
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 追記・変更なし。
<ポイント>
z 第 4 条のライセンス料の計算が正しいことを確認するための監査の方法を定めた規定である。
<解説>
z 監査の費用については、原則はライセンサー(実施許諾者)が負担することを原則としつつも、監 査の結果、不正が発生した場合はライセンシー(実施権者)が負担することとしている。ただし、不正の定義で争いが生じることもあるため、ライセンス1料0%の以内の誤差は除くものとしている。
z スタートアップがライセンサーの場合、監査費用の負担が困難なケースも少なくなく、監査請求が実質的な解決策にならない場合もある。そのめた、報告されたライセンス料が正しいことについて、一定の手数料をスタートアップが負担することで、事業会社名義の意見書の提出を求めることができるようにする等、異なる監督手段を設けることも考えられる。
z ランニングロイヤリティの支払いが適正でなかった場合には、未払い分につき遅延損害金1年4.利
6%が発生することとなり(本モデル契4約条 5 項)、これが実質的なペナルティとなっている。
6 条(ライセンス料の不返還)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 中国法において、悪意がある場合の例外状況を追加している 。
<ポイント>
z 支払われたライセンス料についての不返還を定めた条項である。
<解説>
z 支払済みの対価の返還については、出願中の特許に拒絶査定が出て特許が成立しない、対象となる特許が無効審判により無効にされてしまった場合などに問題が生じやすい。
ライセンス料不返還に関する悪意がある場合の例外
z 中国専利法によれば、権利者の悪意がある状況を除き、権利が無効された場合既に支払ったライセンス料などを返還する必は要ない。よって、本条の規定は特に法律に違反しないが、甲は確かに悪意がある場合、例えば、本特許権が無効すべきであると明らかに知りながら、実施許諾してライセンス料得をる場合、返還 を求めることが可能かは議論になる可能性がある。
(次頁に続く)
参照:「中国専利法」
第四十七条 無効宣告された専利権は初めから存在しなかったものと見なされる専利権無効宣告の決定は、専利権無効宣告の前に人民法院が下し、かつ既に執行された専利権侵害の判決及び調停書、既に履行又は強制執行された専利権侵害紛争の処理決定、及び既に履行された専利実施許諾契約又は専利譲渡契約に対して、遡及力を持たないものとする。但し、専利権者の悪意により他者に損もたらした場合は、賠償しなければならない。
前項の規定に従い、専利権侵害の賠償金、専利使用料、専利権譲渡料を返還せず、xxの原則に明らかに違反している場合は全額又は一部を返還しなければらない。
z 本条を認める代わりに、以下のオプション条項のとおり、特許登録前後でライセンス料率に差を設けるということも考えられる。オプション条項では出願中の特1 許つがであることを前提としている。
出願中の特許が複数ある場合は、そのうちの一部のみが特許として登録される可能性がある点に留意されたい。
【第4 条 1 項変更オプション条項:未登録特許のロイヤル、テ➨ィ6 ᮲㸦ࣛࢭࣥࢫᩱࡢ
㏉㑏㸧ࡢ௦᭰】
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7 条(改良技術)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 改良技術に関する中国法規定を追加している。
<ポイント>
z 当事者が、ライセンス対象の特許を基本特許として、応用・改良技術を開発した場合の取り扱いを定めた規定である。これを整理したのが以下の表である。
ライセンサー(スタートアップ)にる改良 | ¾ 通知義務無し、事業会社が要求した場合は開示義務あり ¾ 事業会社に非独占的権利を許諾、無償 |
ライセンシー(事業会社)による改良 | ¾ 通知義務あり、開示義務あり ¾ スタートアップに非独占的権利を許諾、無償 |
外国出願の取り扱い | ¾ ライセンシー(事業会社)が特定の国への出願を希望した場合、ライセン (スタートアップ)に対し、事前に出願内容を開示 |
z 例えば、ライセンシーによる改良技術の取り扱いについて定めていなかった場合、数年後、ライセンシーが基本特許の周辺に100件を超える応用・改良特許を出し願、これら改良特許のライセンスと
のクロスライセンスを提案してくるということもあるため、改良技術の取り扱いを定めておくことは重要である
z 共同研究開発契約 7 条 12 項でも改良技術の取り決めがなされているが、同条項のみでは、共同研究開発契約の契約期間満了後に改良結果が生じた場合に対応できなくなるため、ライセンス契約において改めて改良技術が生じた場合の取り決めを定めておく必要がある。
<解説>
ライセンサーの改良技術
z 1 項および2 項は、ライセンサー(スタートアップ)が改良技術を開発した場合でのあ規る定。
本項では、ライセンサーに改良技術の通知の裁量を与えつつ、ライセンシー(事業会社)が要請した場合には、本製品の製造販売についての非独占的権利が許諾されるとしている。
z 2 項では、改良技術のライセンスについて特段追加のライセンス料を必要としないこととしているが、追加のライセンス料その他の条件の見直しについて定めることも考えられる。
z なお、改良発明に関する事業会社による国外での出願について、スタートアップに対し、当該出願(または登録後の権利)の買取の優先交渉権を与えることも考えられる。
改良技術に関する中国法規定・司法解釈
z 中国民法典第 875条に改良技術に関して規定している本。契約xxx規 定は中国法に違反する点は特にないが、参照のため、中国の関連法規定を下記のとおり紹介する。
参照:中国民法典
第 875条 当事者は、相互利益の原則に従い、専利を実施し、ノウハウを使用して からの改良技術成果の共有方法を契約書において約定することができる約定がない場合、又は約定が不明な場合、本法第五百一十条に基づいても確定できない場合、一方の当事の改良した技術成果は、他方当事者が共有する権利を有しない。
z なお、前述のとおり、中「国技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する最高裁判所の解釈」第10 条 1 項 1 号にも、改良技術の取り扱いについて規定している。つまり、改良を禁止または制限できず、改良技術の権利帰属と使用権利などについて、平・xx平に約定しなければならない。
【追加オプション条項:ライセンス料等の見直し】
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<ポイント>
z 本オプション条項を追加する場合、2第項の次に配置することになる。
ライセンシーの改良技術
z 3 項以下は、ライセンシー(事業会社)が改良技術を開発した場合の規定である。
z ライセンシーには、改良技術の通知義務を課すとともに、ライセンサーに対し、非独占的権利を無償で許諾することとしている。また、xxxxxxの改良技術の特許出願については、事前にライセンサーに対し出願内容の詳細を開示するとともに、当該特許の買い取りに関する優先交 渉権を与えることとしている。
8 条(本商標)
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 追記・変更なし。
<ポイント>
z ライセンサーが保有技術についての商標を有する場合に、この商標の使用方法について定めた規定である。
z 日本商標法 53 条は、「専用使用権者または通常使用権者が指定商品もしくは指定役務またはこれらに類似する商品もしくは役務についての登録商標またはこれに類似する商標の使用
であって商品の品質もしくは役務の質の誤認または他人の業務に係る商品もしくは役務と混同 を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と定めているため、本商標の登録の取消事由が発生することを防止する2 項べく、
の規定が設けられている。
z また、本商標のブランド価値の棄損を防止するべ3く項、では、商標の信用失墜行為を禁止している。
9 条(第三者の権利侵害に関する担保責任)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 第三者の権利侵害に関する中国法規定を追加している。
<ポイント>
z ライセンス対象となる特xx等の非保証を定めた規定である。
z 1 項の特許非保証を前提として2、項は、xxxxxxが第三者から訴訟提起された場合のライセンサーの協力義務を定めたものである。
<解説>
z ライセンスの対象となる特許等については、第三者の権利侵害がないことを保証する(いわゆる「特許保証」)のが当然だという考え方になりがちである。
z しかし、特許保証を行うことは、下記コラムに記載のとおり、ライセンサーのリスクが非常に高い。スタートアップと事業会社の間の適切なリスク分配という観点からは、特許保証までは行わないという前提で他の条件を定めることが適切である。
仮に、特許保証をするにしても、「甲が知る限り権利侵害はない」「甲は権利侵害の通知をこれまで受けたことはない」ことの表明にとどめるべきである。
z 中国民法典第 874条に第三者の権利侵害に関して規定している本。契約 の本条規定は現行「民法典」や「技術輸出入管理条例」に違す反ることは特にないが、改正前の「技術輸出入管理条例」第 27 条において第三者xx 利侵害責任は許諾者が負担すると規定されていた2。019年「技術輸出入管理条例」が改正した際に、同条項が削除された。現在、技術輸入であも、当事者双方は第三者の権利侵害責任を自由的に約定できる参。照の ため、中国民法典の関連法規定を下記のとおり紹介する。
参照:中国民法典
第 874条 受譲者又は被許諾者は約定に従い、専利を実施し、ノウハウを使用るとき、他人の合法的権利を侵害した場合、譲渡者又は許諾が者責任を負う。ただし、当事者の間に別途約定がある場合を除く。
第三者の権利侵害に関する中国法規定
【コラム特】許保証をするとライセンサー(特許権者)のリスクが高い理由
z 特許紛争が生じた場合、特許保証を前提とすると、理屈上、ライセンサーは必ず損をする(少なくとも得はしない)。
z 今、スタートアップが事業会社に対して特許ライセンスをして、事業会社が本1製億品円を売り上げたとする。この場合、スタートアップが得るロイヤルティは、ライセ3ン%とスす料る率と300万円である。他方、事業会社に対して、第三者がその保有する特許に基づいて特害許を侵主張した場合、当該1 億円の売り上げに対する損害額は、
① ライセンス料相当額(特許法102 条 3 項参照)で計算して300 万円、
② 得べかりし利益(同2 項)で計算して限界利益率を10%と仮定すると
1000万円、ということになる。
z 特許保証とは、これらの損害額についてライセンサーが保証すべきというものなので、ライセンサーはライセンス料として300 万円獲得し、特許保証で300 万円または1000 万円を支払うと
いう計算になるから、理屈上得はしない。
10 条(秘密情報、データおよび素材等の取扱い)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 契約終了後の本条項の存続期間に関する解説を追記する。
<ポイント>
z 相手から提供を受けた秘密情報等の管理方法に関する条項である。
<解説>
従前に締結した秘密保持条項との関係整理
z 秘密保持契約、PoC契約や共同研究開発契約に引き続いてライセンス契約を締結する場合、ライセンス契約よりも前に締結した契約における秘密保持条項とライセンス契約における秘密保持条項の関係が問題となる。
z ライセンス契約において秘密保持条項を設けずに前者が引き続き適用されるとすることもあるが、本モデル契約においてはライセンス契約内の秘密保持条項が、すでに締結されている秘 密保持条項を上書きすることを9 項で明記している。
z なお、既存の秘密保持条項およびライセンス契約の秘密保持条項の内容次第では、既存の秘密保持条項よりも、ライセンス契約の秘密保持レベルが落ちる性可が能あるため、その点に留 意した上で優先関係を定めることが望ましいであろう。
秘密情報の定義(秘密である旨の特定の要否)
z 秘密情報の定義については、当事者間でやりとりされる情報を包括的に対象とする場合と、個別に秘密である旨の特定を要求する場合があるが、技術情報提供のために各種の情報、デー タ、素材等がやりとりされることがあるライセンス段階において、秘密であ特る定旨をの忘れるこ
とによるリスクを避けるため、前者を採用している。
z 他方で、秘密情報を「一切の情報」と包括的に定義すると、範囲が広過ぎるとして有効性が争わ れ、逆に保護の範囲が狭まってしまう(秘密情報とは保護に値する情報を意味すると限定解釈さ れる)リスクが発生する。このリスクを排除するためには、「秘密を指定」する条文を採用すればよい。
z なお、「秘密を指定」する条文オプションとその背景となる秘密情報の範囲に関する考え方につ
いては、「秘密保持契約」のモデル契約書に詳細に解説しているため、そちらも参考にされたい。
z 契約期間のみならず、契約期間終了後に、どの程度の期間秘密保持義務を負担するかについても注意が必要である。契約期間が3 か月など短く設定されていても、残存条項により10 年など契約終了後も長期間に亘って秘密保持義務を負うケースもある。
z 残存条項の期間は厳しい交渉が行われる項目のひとつである。期間2は~3 年 と することが多いが、ビジネスおよび開示等される情報の性質(対象とな密情報等が陳腐化する期間はどの程度かなど)により調整が必要である。本約においては、残存期間を5 年間としているが、関係情報が公知情報になるで秘密保持義務を有すると約定することも考えられる。そのような約定は、開示方にとって有利である。
本契約終了後の秘密保持期間
11 条(期間)
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 追記・変更なし。
<ポイント>
z 契約の有効期間を定めた一般的条項である。
<解説>
z ライセンシーの場合は、契約期間を「対象となる全ての特許が満了等により消滅するまで」と規定し、更新時の再交渉を避けるというのがセオリーである。
z もっとも、xxxxxxは特許権に係る発明を実施するために相当程度の額をかけて設備投資をすることとなるため、合理的な理由なくして一定●期年間間()でライセンスを含めた本モデル
契約の有効期間が満了してしまうことは大きなリスクとなる。そこで、本条においては、契約期間を●年としつつ、更新拒絶がない限り自動更新することとし、合理的な理由なくして更新拒絶できないこととした。
12 条(解除)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 不争条項に関するコメント追を記する。
<ポイント>
z 契約解除に関する一般的規定である。
z 4 号においては、ライセンス対象となっている本特許権および本バックグラウンド特許権の有効性を争った場合には、契約を解除できることとしている(いわゆる不争条項)。
<解説>
不争条項と中国の関連規定
z 中国では、「技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する最高裁判所の解釈」第10 条によれば、技術の譲受側が契約の目的である技術の知的財産権の有効性に対し異議を申し立てることを禁止する又は異議申に条件を付加する条項(いわゆる不争条項)は、民法典850条の「技術の違法独占」に該当し、関係約定が無効であるよ。って、本条4号の不争条項は無効であると判断されるおそれがある。
参照:
中国「技術契約紛争事件審理の法律適用における若干問題に関する最高裁判所の解釈」
第十条下記の状況は、民法典850条の「技術の違法独占」に該当する。
Ś 契約対象技術の改良、又は改良した技術の使用を制限する条項、または双は改良技術を交換する条件が平等ではない。一方が自ら改良した技術を無で相手方に提供するよう要求し、お互いに有利な条件ではなく相手方に譲し、改良技術の知財権を無償で独占または共有することを含む。
② 他の供給先からの技術に類似し又は競合する技術の取得を制限する条項
③ 市場ニーズに基づき合理方式で契約対象技術の実施を妨害し、契約対象技術製品の製造数、品種、または販売価格、販売ルート、輸出市場に明らか不合理的に制限することを含む。
④ 技術の実施にとって必須でない技術、原料、製品、設備またはサービス、人の購入を要求する条項
⑤ 原材料、部品、製品または設備を購入するルートへの不合理な制限に係る項
ᶊ 技術の譲受側が契約の目的である技術の知的財産権の有効性に対し異議を申し立てることを禁止する又は異議申立に条件を付加する条項
z 以下のように、いわゆるチェンジオブコントロCーOルC)(が解除事由として定められることがある。しかし、そうするMと&、A が解除事由となりかねず、上場審査やデューデリジェンスにおいてリスクと評価され得る。
z したがって、スターアトップとしては、解除事由CにOC が含まれている場合、それによる支障を説明し、削除を求めることを検討すべきである。
【解除事由としてのCOC 条項の例】
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13 条(契約終了後の措置)
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 追記・変更なし。
<ポイント>
z 本条は、契約終了時のライセンシーの義務を定めたものである。
<解説>
z 本条では、製品の販売等の禁止とともに、製品在庫その他の商材の引き渡し、破棄義務を定めている。
14 条(損害賠償)
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 変更オプションを追記する。
<ポイント>
契約違反が生じた場合に違反行為の停止等および損害賠償請求ができることを規定している条項である。
<解説>
z 損害賠償責任の範囲・金額・請求期間は、xxxxxの内容やコストの負担、ライセンス料の額等を考慮して当事者間の合意により決められる。
z 本モデル契約は、迅速な被害回復が必要とされる知的財産権に関する契約であることから、 本条では、損害賠償だけでなく違反行為の停止または予防および原状回復の請求が行えるこ ととしている。具体的には、特定の行為を求める仮処分や訴訟手続きなどを行うこととなる。
【変更オプション1】4条(違約責任)
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<ポイント>
z 本条は、本モデル契約の履行に関しての違約責任について規定している。
<解説>
z 損害賠償の責任のみを規定する場合、追及する際に、損失を齎したことを明する必要がある。それに対し、違約金を規定すれば、相手は違約行為がることを証明できれば、違約金を追及できるので、守約方にとって有利で
z 違約金の金額について、ライセンス料の額等を考慮して約定できると考えが、違約金では補償不足の損失部分について、損害賠償を求めることができる。
15 条(存続条項)
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<JPO モデル契約書との相違点>
z 追記・変更なし。
<ポイント>
z 契約終了後も効力が存続すべき条項に関する一般的規定である。
16 条(準拠法および紛争解決手続き)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 準拠法について、執行性を考慮して被告地主義等に基づくオプションを加している。
z 仲裁条項を追記し、仲裁地としての香港の例示及び被告地主義等に基づオプションを追加している。
②ポイント・解説について
z 準拠法、調停及び国際仲裁についての解説を追加している。
<ポイント>
z 準拠法および紛争解決手続きに関して裁判管轄を定める条項である。
<解説>
z クロスボーダーの取引も想定し、準拠法を定めている。
z 紛争解決手段については、上記のように裁判手続きでの解決を前提に裁判管轄を定める他、各種仲裁によるとする場合がある。
z 中国企業と日本企業とのライセンス契約であってJもP、O モデル契約書のよう に、日本国法を準拠法とし、日本の裁判所を管轄裁判所として約定することは、中国の法律規定に違反せず、有効な約定である。
z しかし、日本と中国の間では判決執行協力条約が存在しないため、日本裁判所による判決は中国で強制執行できない。よって、契約紛争について、日本判決を中国で執行できない虞があることを留意すべきであり、好ましいとはない。
z したがって、オプション1として、被告地主義の条項を追加した。
z また、オプション2として、本研究についx、X 社主(に乙)の場所で進める前提であれば、専利権の許諾実施の密接関係地は Y 社の所在地であると考える。証拠収集、訴訟便利と判決執行の面からY、社の所在地裁判所を管轄地とす る約定するとも考えられる。
z なお、日本国法を準拠法とする場合であっても、本契約の履行などは中国の制法律法規を違反することはできない。例えば、技術輸出入に該当するため中国の「技術輸輸入管理条例」などの法律法規を遵守しなければならない。
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 中国での知財調停について追記している。
<解説>
z 紛争解決手段について、どの裁判管轄ないし紛争解決手段が適切かは一概には決められず、当事者の話し合いで決定するのが望ましい。話し合いによる解決を目指す場合、東京地方裁判所および大阪地方裁判所において創設された知財調停を利用することが考えられる。
z 「知財調停」は、ビジネスの過程で生じた知的財産権をめぐる紛争を取り扱う制度であり、仲裁手続き同様、非公開・迅速などのメリットがあるだけでなく、専門的知見を有する調停委員会の助言や見解に基づく解決を行うことができ、当事者間の交渉の進展・円滑化を図ることができ るというメリットがある。
z 運用面では、原則として3、回程度の期日内で調停委員会の見解を口頭で開示することにより、迅速な紛争解決の実現を目指すとされており、迅速に解決でき、コストや負担を軽減できる可能性がある。
z 知財調停を利用するためには、東京地方裁判所または大阪地方裁判所いずれかを,合意により調停事件の管轄裁判所とする必要がある。
z 知財調停は、当事者双方が話合いによる解決を図る制度であるため、当事者が合意できず調停不成立となった場合は、訴訟等の手続きにより別途紛争解決が図られることとなる。
z また、仲裁手続きは、裁判と比べて非公開・迅速などのメリットもあることから、スタートアップのような事案では、本条に変えて下記のような仲裁条項に変えるという選択肢もある。
z 訴訟と同様に、日本の裁判所における民事調停の和解結果について中国xx x行力を持たない、つまり、民間調停による通常の和解と同様の効果しか得ないことに留意すべきである。
z 中国で知財調停の申立をする場合、裁判所に提訴してから、知財調停を申してることができるし、裁判の全過程の何時の時点でも調停を申し立てること能である。裁判所のほか、直接所在地の人民調停委員会に調停を申し立てるとができる。2019年 12 月 6 日中国特許保護協会は、中国特許保護協会標準
「知識産権紛争調停管理規範」を発布した。
(xxxx://xxx.xxxx.xxx.xx/xxxx/xxxxxx- 203.htm)l 当該規範は、人民調停委員会が知的財産権紛争(知的財産権関連の契約紛争、権利所属、侵害紛争及びそれに関連する競争紛争等が含まれる)の関係者が調停を申請する場合や関係当事者が調停に同意する場合に適用される。規範には、知的財産権紛争の調に関する基本原則、受理、企画、実施、書類管理などについて定めている。
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<ポイント>
z 紛争解決手続きとして仲裁を指定する条項である。
<解説>
z 仲裁手続きは、裁判と比べて非公開・迅速などのメリットもあることから、スタートアップのような事案では、本条に変えて仲裁条項に変えるという選択肢もある。
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(次頁に続く)
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(参照)JETRO地域・分析レポート
「グローバルな知財紛争解決に「香港仲裁」の魅力20」22(年 2 月 8 日)
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z オプションでは、主に仲裁地について着目Aし:第、三国・地域(香港等を想定)、 B:被告地主義、C: 主に開発を行う場所としたが、これ以外にも、準拠法・手語・௰ᶵ㛵࣭仲裁人の人数や国籍(本条項案では定めていない)等について 仲裁条項の交渉対象となりうる。
z 例えば準拠法について、オプショAンでは日本国法としたが、本件が知的財産権に関連する契約であることを踏まえると、主な紛争対象となる知的財産権の根拠となる国・地域の法律を準拠法とすること、つまり、仲裁地を第三国・しつつもオプショBンや C のように準拠法のみを被告地主義や主に開発を行う場所(契約履行地や証拠収集の観点)に基づいた条項とすることも一案であ
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17 条(協議解決)
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 協議を経ても解決できない場合に前条での紛争解決手続きに進むことを確化している
②解説について
z x条とxxとの関係について追記している。
<ポイント>
z 紛争発生時の一般的な協議解決の条項である。
<解説>
z 通常、本契約に定めのない事項または疑義が生じた事項がある場合、まずは事者双方の協議で解決することであり、協議によって解決できない場合には拠法を利用して、法的アクションを通じて解決することになる。よっ16て条、と第第 17 条の順番を変更することも考えられる。
契約言語
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 契約書の締結言語、本数などを追記している。
②解説について
z 日中企業間の契約の言語、効力を追記している。
<解説>
z 日中企業間の契約として、契約の言語、効力について約束することもある来紛争解決の必要性に応じても、実効性のある契約書を締結するのであれば、お互いの母国語である「日本語及び中国語で契約書を締結することがも適切と考える。両言語で契約を締結する場合、どちらxx本とするか、x本となる場合、どちらを準することを明確に約定したほうがまよたい、。本件の場合、中国商務局などに届出する必要があるため、契約書数を2各通としている。
参照:
日本の「民事訴訟規則」第138条1項
「外国語で作成された文書を提出して書の証申出をするときは、取調べを求める分について、その文書の訳文を添付しなければならない。」
中国の「民事訴訟法の適用に関する解釈」第527条 1 項
「当事者が人民法院に提出する書面の資料が外国語である場合、同時に人民法院に中国語翻訳文を提出しなければならない。」
年 月 日
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その他のオプション条項
本技術情報
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<JPO モデル契約書との相違点>
①条文について
z 追記・変更なし。
②解説について
z 中国民法典における技術提供義務について追加している。
<ポイント>
z 特許のライセンスにおいては、ライセンサーからライセンシーに対して技術ノウハウの提供も行うことがある。本条は、かかる技術ノウハウの提供に関して定めた条項となる。
<解説>
z 技術情報の範囲については、本条では1 条⑪号所定の「本技術情報」としつつ、一定期間以内に異議を述べない場合、提供義務は履行されたものとみなすとしている。
z これに対し、本技術情報の範囲に争いが生じないよう1に条、⑪号の定義を修正し別紙記載のものとして特定するという方法もある。
z また、技術情報の提供方式は、「文書または電子媒体」とし、技術指導は含まれていない。技術指導が必要な場合は以下のような条項を追加することが考えられる。
z 本条 4 項および5 項は、ライセンサーの技術情報についての免責規定である。
z これに対し、ライセンサーの技術ノウハウについては、第三者の権利侵害がないことを保証するのが当然だという考え方がある。しか9し条、の解説で述べたのと同様に、特許や技術ノウ
ハウについて権利非侵害の保証を行うことは、ライセンサー側のリスクが非常に高く、オープンイノベーションの阻害因要となりかねない。
スタートアップと事業会社の間の適切なリスク分配という観点からは、かかる保証までは行わないという前提で他の条件を定めることが適切である。
z 中国民法典において、専利実施許諾契約書の許諾者の技術資料の交付、技術指導の提供義務を規定している。
参照:中国民法典
第 866条 専利実施許諾契約書の許諾者は、約定に従い、許諾者に専利の実施を許諾し、専利実施に関する技術資料を交付し、必要な技術指導を提供しなけばならない。
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z 技術情報の提供後も、ライセンシーとしてはライセンサーからの助言や指導が必要なことも多い。その場合、技術情報の提供とは別に技術コンサルティング契約を締結する場合がある。前条 3 項はこの点について定めている。