(2)「医薬品GCP省令」とは、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令及びこれらに関する通知等(通達、政府指針等)をいう。 (3)「薬事規制法令等」とは、医薬品医療機器等法、同法施行令、同法施行規則及び医薬品GCP省令並びにこれらに関する通知等(通達、政府指針等)をいう。 (11) 「本治験データ」とは、本治験に係る原データ、ケースレポートフォーム(CRF)、解析データセットなど本治験の実施によって得られた一切のデータ及び情報、並びに本治...
医師主導治験に係る契約(案)1
●●[アカデミア側(大学、国立高度専門医療研究センター等)](以下「甲」という。)と●●[製薬企業等](以下「乙」という。)は23、甲及び●●(本治験責任医師)4が本契約書別紙の治験細目(以下「本細目」という。)の内容の医師主導治験(以下「本治験」という。)を実施することに関して、(甲及び乙の役割分担を明確にするべく、)以下の内容の契約(以下「本契約」という。)を締結する。
第1条(定義)5
1 本契約において、以下の各号の用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)「医薬品医療機器等法」とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律をいう。
(2)「医薬品GCP省令」とは、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令及びこれらに関する通知等(通達、政府指針等)をいう。
(3)「薬事規制法令等」とは、医薬品医療機器等法、同法施行令、同法施行規則及び医薬品GCP省令並びにこれらに関する通知等(通達、政府指針等)をいう。
(4)「本治験実施計画書」とは、本治験の目的、方法等を記載した本治験に係る治験実施計画書(治験実施計画書番号:●●●●)(本契約締結後に修正があった場合は、当該修正後のものをいう。電磁的記録を含む。)をいう6。
(5)「本被験薬」とは、本治験実施計画書に定める、本治験の対象である以下の医薬品をいう。
(イ)製剤名 :●●
(ロ)剤型 :●●
(6)「本治験薬」とは、以下のいずれかをいう。
(イ)本被験薬
(ロ)本治験において本被験薬と比較する目的で対照薬(プラセボ薬を含む。)が用いられる場合にあっては、本被験薬及び当該対照薬
(7)「本治験実施医療機関」とは、本治験実施計画書及び本細目第4項に定める、本治験を実施する医療機関をいう。
(8)「本治験実施期間」とは、第6条において定める本治験を実施する期間をいう。
(9)「本治験責任医師」とは、本治験について、自ら治験を実施する者となり、かつ本治験に係る業務を統括する医師をいう。
(10)「本治験総括報告書」とは、本治験に係る総括報告書(電磁的記録を含む。)をいう。
(11)「本治験データ」とは、本治験に係る原データ、ケースレポートフォーム(CRF)、解析データセットなど本治験の実施によって得られた一切のデータ及び情報、並びに本治験実施計画書、本治験総括報告書など本治験の実施のために作成された文書その他の資料(本治験に関して乙が甲に対して提供したデータ及び情報を除く。)をいう7。
2 本契約において使用されている用語で、薬事規制法令等において定義されているものは、本契約に別段の定めがない限り、薬事規制法令等に定義されているところによる。
第2条(法令等の遵守)
甲及び乙は、それぞれ、本契約の履行及び本治験の実施に当たり、薬事規制法令等、個人情報の保護に関する法令8等(法律や命令のほか、通達、政府指針、条例等を含む。以下同じ。)、その他の関係する法令等(いずれも改正後のものも含む。)を遵守しなければならない。
第3条(利益相反等)9
1 甲及び乙は、それぞれ、本治験について、法令等及び自己の内部規則の定めに照らして、利益相反上の問題がないことを確認するとともに、それらの定めに従い、本治験に関する利益相反を適切に管理するための手続を行わなければならない。
2 甲及び乙は、本治験に関し、不公正な利益の供与を約束せず、また、これを行ってはならない。
3 乙は、本治験に関し、甲及び本治験責任医師、本治験における分担医師、協力者、その他の関係者に対し、本契約に基づかない支援の提供を約束してはならない。
4 甲は、本治験に関し、利益相反上の問題若しくは不適切な対応が現実に発生し、又はそのおそれが判明した場合には、直ちに、乙に対し、確認された事例を報告し、その対応について協議する。
第4条(甲の役割)10
1 甲は、本治験に関し、以下の業務を実施する。
(1)薬事規制法令等その他の法令等、本治験実施計画書に従った本治験の実施、本治験の進行の確認
(2)本治験計画届書、本治験実施計画書、ケースレポートフォーム、説明文書及び同意文書等本治験の実施に必要な文書の作成、届出等に関する業務
(3)重篤な有害事象その他手順書に定めた事実(以下「重篤な有害事象等」という。)、医薬品医療機器等法第80条の2第6項に規定する事項の厚生労働大臣への報告
(4)本治験薬の品質確保及び管理に関する業務11
(5)モニタリング及び監査、データ・マネジメント、データの取扱い・統計・解析並びに本治験総括報告書作成に関する業務
(6)記録の保存等に関する業務12
(7)薬事行政当局が薬事規制法令等に基づき実施する、本治験についての調査への協力
(8)その他本治験の実施に必要な業務
2 甲は、前項に定める業務の全部又は一部を、医薬品GCP省令に従うとともに、第15条第2項に基づく対応を行った上で、第三者に委託することができる。第三者に委託する場合には、甲は、当該第三者に対し、法令遵守、秘密保持義務その他本契約に基づいて甲が負うのと同等の義務を負わせなければならない。
第5条(乙の役割)
1 乙は、第9条の規定に基づき、甲に対し、本治験薬を無償で提供する。
2 乙は、甲に対し、治験薬概要書を含む本治験の実施のために必要な情報を無償で提供する。乙は、甲及び本治験責任医師が、本治験の実施に必要な範囲で、当該情報を複製し、利用することを認めるものとする。
3 乙は、薬事行政当局が薬事規制法令等に基づき実施する本治験についての調査に協力する。
4 乙は、本契約及び本治験実施計画書、手順書その他本治験の実施に当たり作成された文書に記載されている事項を除き、本治験に関与してはならない。ただし、乙は、本契約及び本治験実施計画書、手順書その他本治験の実施に当たり作成された文書に記載されている事項の範囲内に限って、倫理的、医学的又は科学的な見地から根拠を示したうえで意見を述べることができる。
第6条(本治験実施期間)
1 本治験実施期間は、本細目第3項に定める期間とする。ただし、甲及び乙は、書面による合意により、本治験実施期間を延長することができる。
2 本治験は、本治験実施期間の満了日、又は、本治験実施期間中に、甲及び乙が、本治験が完了したと認めた日に終了する。ただし、第7条の規定により、本治験を中断している場合には、この限りではない。
第7条(本治験の中止、中断等)
1 本治験責任医師は、本治験実施期間に、以下の各号に定める事由のいずれかに該当した場合には、本治験を中止又は中断することができる。
(1)本治験の被験者に健康被害が発生した場合。
(2)重篤な有害事象等が発生した場合。
(3)甲の治験審査委員会から中止意見が出された場合。
(4)第3条に定める利益相反上の問題等が生じ、解消の見込みがないとき。
(5)本治験の実施の継続が倫理的、科学的又は医学的見地から相当でない場合。
(6)天災その他やむを得ない事由により本治験の実施の継続が困難になった場合。
2 甲は、前項各号に定める事由に該当する事実を知ったときは、本治験責任医師に対し、前項に基づく本治験の中止又は中断の検討を行うように指示しなければならない。
3 第1項の規定に基づき、本治験責任医師が本治験を中止又は中断した場合、甲及び乙は、書面による合意により、本契約を解約することができる。なお、甲及び乙は、本項の規定に基づく本契約の終了について、相手方に対し、その責めを負わない。
1 乙は、本治験に係る経費として、●●円(間接経費を含む。また、消費税及び地方消費税を含む。)を負担する。
2 乙は、甲に対し、令和●年●月●日までに、前項に基づいて乙が負担する本治験に係る経費を、下記の口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は、乙の負担とする。
記
銀行名:
支店名:
口座種類:
口座番号:
口座名義:
3 乙は、前項所定の期日までに乙が負担する本治験に係る経費を支払わなかった場合には、甲に対し、当該期日の翌日から支払日までの日数に応じ、未納額に年3%の割合で計算した遅延損害金を支払う。
4 甲及び乙は、第1項に基づき乙が負担する本治験に係る経費には、第14条第2項に定める本治験総括報告書の利用を除き、本治験データ及びそれらに係る知的財産権その他一切の権利等の利用許諾についての対価は含まれていないことを確認する。
第9条(本治験薬の提供等)15
1 乙は、甲の書面による依頼に基づき、甲に対し、甲が指定する場所に、本治験に必要な数量の本治験薬を無償で提供する。当該提供に係る費用は、乙の負担とする。
2 乙は、薬事規制法令等及び治験薬概要書に従って本治験薬を製造(委託製造含む。)し、前項に基づき、甲に対し、本治験薬を提供する。
3 本治験薬の提供に当たり、乙は、本治験薬の輸送中及び保存中の汚染及び劣化を防止するために、適切な包装その他の措置を講じる。
4 甲は、本治験薬を、医薬品GCP省令及び本治験実施計画書に従って使用し、本治験以外の目的での使用及び第三者への貸与、譲渡その他の処分を行ってはならない。
5 本治験薬が、第2項の規定に違反したものである場合には、乙は、甲に対し、速やかに代替となる本治験薬を無償で提供する。
6 甲及び乙は、本条に基づく乙から甲への本治験薬の提供により、本治験薬に係る知的財産権を甲に移転するものではなく、また、本治験における使用を超えた使用許諾等をするものではないことを確認する。
第10条(本治験薬に関する情報提供)
1 乙は、甲が本治験薬に関する治験薬概要書及び本治験実施計画書等を作成し、また、本治験を実施するに当たり、本治験薬に関する情報を無償で提供する。
2 乙は、本治験薬の製造に当たり、医薬品GCP省令第26条の2第5項に規定された記録を作成し、甲に対し、当該記録を無償で提供する。
3 乙は、本治験実施期間中に、本治験薬の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の本治験を適正に行うために重要な情報(医薬品医療機器等法第80条の2第6項に規定する事項を含むがこれに限られない。)を知ったときは、甲に対し、直ちに当該情報を無償で提供する。
第11条(進捗状況、安全性、不適切行為、重篤な有害事象等の報告)
1 甲は、乙に対し、医薬品GCP省令及び本治験実施計画書に従って、本治験の進捗状況及び安全性に関する情報を報告する。
2 甲は、本治験実施医療機関において本治験の実施における不適切な行為があったことを知ったときは、乙に対し、直ちに確認された事例及びその是正措置を報告する。
3 甲は、本治験実施医療機関において本治験の実施の過程における重篤な有害事象等の発生を知ったときは、乙に対し、手順書に定める方法で当該事実を報告する。
第12条(被験者の健康被害への対応)
1 甲は、本治験を実施するに当たり、予め、本治験に起因して発生した被験者の健康被害に対して補償するために、保険その他の必要な措置を講じるものとする。
2 甲は、本治験に起因して被験者が健康被害を受けたときは、当該被験者に対し、補償、治療その他必要な措置を講ずるとともに、乙に対し、その旨を報告する。
3 本治験に起因して被験者が受けた健康被害の補償責任は、甲が負担する。
4 前項の規定にかかわらず、本治験に起因する被験者の健康被害が乙(又は乙の役員及び従業員(以下、役員及び従業員を総称して「役員等」という。))の故意若しくは重過失又は製造物責任により発生した場合には、乙が、当該健康被害の補償に関する一切の費用(賠償金を含む。)を負担しなければならない。
第13条(記録等の保管)
1 甲は、薬事規制法令等に従って、本治験データを保存しなければならない。
2 乙は、本治験データの保存の必要がなくなったときは、甲に対し、速やかにその旨を通知しなければならない。当該通知を受けた場合には、甲は、前項の規定にかかわらず、薬事規制法令等に違反しない限り、本治験データを消去又は廃棄することができる。
第14条(本治験総括報告書の作成、送付、利用)16
1 甲は、本治験が終了した日から●ヶ月以内に17、本治験総括報告書を作成し、乙に対し、その写しを送付する18。
2 乙は、前項に基づき本治験総括報告書を受領した日から●ヶ月間19(以下「本検討期間」という。)、本治験総括報告書を[本被験薬の医薬品製造販売承認申請を行う/本被験薬について[●●(対象疾患等)]についての次相試験を実施する]かの決定に係る社内検討(以下「本検討」という。)のための資料として利用することができる20。ただし、乙は、甲の書面による同意がなければ、本治験総括報告書を複製してはならない。
3 甲及び乙は、書面による合意により、前項に定める本検討期間を延長することができる。
4 乙は、本検討期間内に、[本被験薬の医薬品製造販売承認申請を行う/本被験薬について[●●(対象疾患等)]についての次相試験を実施する]か否かを決定しなければならない。乙が[本被験薬の医薬品製造販売承認申請を行う/本被験薬について[●●(対象疾患等)]についての次相試験を実施する]旨の決定を行った場合には、本治験総括報告書の利用は原則有償で行われる前提のもと、当該決定の日から6ヶ月以内に21、甲との間で、本治験データの利用や当該利用に係る対価等の条件に関する契約についての交渉を行うものとする。当該決定を行った日から6ヶ月以内に当該契約を締結できなかったときは、乙は、速やかに、本治験総括報告書を甲に対して返還し又はこれを廃棄若しくは消去しなければならない。
5 本検討期間内に、乙が[本被験薬の医薬品製造販売承認申請を行う/本被験薬について[●●(対象疾患等)]についての次相試験を実施する]旨の決定を行わなかったときは、乙は、速やかに、本治験総括報告書を甲に対して返還し又はこれを廃棄若しくは消去しなければならない。
6 甲は、本契約の締結日から、乙が本検討を終了した日又は[本被験薬の医薬品製造販売承認申請を行う/本被験薬について[●●(対象疾患等)]についての次相試験を実施する]旨の決定を行った日から6ヶ月経過した日のいずれか遅い日(ただし、第4項の契約を締結したときは、当該契約を締結した日)までの間、乙以外の第三者に対し、本治験データを開示若しくは提供し、又は利用させてはならない22。ただし、法令等により開示が義務付けられているとき、又は主務官庁若しくは裁判所その他の公的機関から法令等に基づき開示の請求を受けたときはこの限りではない。
第15条(秘密保持)
1 甲及び乙は、以下の各号に定めるものを除き、本治験に関連して相手方から得た一切の情報(以下「本秘密情報」という。)を秘密として保持し、相手方の書面による事前の同意なしに、第三者に対し、本秘密情報を開示又は漏洩してはならない。
(1)相手方から開示を受けた時点で、既に保有していた情報
(2)相手方から開示を受けた時点で、既に公知となっていた情報
(3)相手方から開示を受けた後に、受領者の責めによらずして公知となった情報
(4)本秘密情報から除外することにつき、事前に書面による相手方の同意を得た情報
(5)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に取得した情報
(6)独自に取得した情報
(7)公開することを前提として相手方から開示を受けた文書に記載されていた情報
2 前項の規定にかかわらず、甲は、第4条第2項に基づいて業務の委託をした第三者に対し、当該委託した業務との関係で必要と認められる範囲で、本秘密情報を開示し、提供することができる。ただし、本秘密情報の開示、提供に当たり、甲は、当該第三者との間で、当該第三者並びに当該第三者において本治験の責任医師、分担医師、協力者、その他の関係者に、本契約に基づいて甲が負うのと同等の秘密保持等の義務を負わせるとともに、委託された業務以外での使用を禁止しなければならない。
3 第1項の規定にかかわらず、甲及び乙は、法令等により開示が義務付けられているとき又は主務官庁若しくは裁判所その他の公的機関から法令等に基づき開示の請求を受けたときは、本秘密情報を必要かつ相当な範囲で開示することができる。ただし、甲及び乙は、相手方に対し、秘密保護の措置(開示範囲についての協議を含む。)を行う合理的な機会を与えるよう努めなければならない。
第16条(本治験データの利用許諾をする権利等の帰属)23
1 本治験データの利用権限(利用許諾をする権利を含む。)及び本治験データそのものに係る知的財産権(不正競争防止法による保護の対象を含む。また、海外の知的財産権を含む。ただし、第三者に帰属するものは除く。)その他一切の権利は、甲に帰属するものとする。
2 本治験の過程において本治験に関連して発明等が生じたときは、その取扱いにつき甲、乙で別途協議するものとする24。
3 第14条第2項に基づく本治験総括報告書の利用を除き、本契約は、乙に対し、本治験データに係る知的財産権その他一切の権利(不正競争防止法による保護の対象を含む。また、海外の知的財産権を含む。)について、利用その他いかなる権限を付与するものではない。
第17条(本治験に係る成果の発表等)
1 甲は、本治験データに含まれる医学的に又は臨床上有益な情報(本被験薬の安全性又は有効性に関する否定的なデータを含む。以下「本研究成果」という。)を、発表、公開又は公表(以下「発表等」という。発表等には、学会発表の発表要旨の提出や学術誌等への論文の掲載も含まれる。)をする場合には、当該発表等の予定日の1ヶ月前までに、乙と当該発表等について協議しなければならない25。
2 甲は、本研究成果の発表等を行うときは、第15条に定める本秘密情報の秘密保持義務を遵守しなければならない。
3 甲は、本研究成果の発表等を行うときは、本被験者のプライバシー及び人権の保護のために必要な措置を講じた上で、当該発表等を行わなければならない。
第18条(本契約の有効期間)
本契約は、その締結の日から、乙が本検討を終了した日又は乙が第14条第4項の決定を行った日から6ヶ月経過した日(ただし、同項の契約を締結したときは、当該契約を締結した日)のいずれか遅い日までの間、有効とする26。
第19条(本契約の解約)
1 甲は、以下の各号のいずれかに該当する事由が生じたときは、乙に対し書面により通知することにより、本契約を変更または解約することができる。この場合、本契約は、当該通知が乙に到達した日に終了する。なお、甲及び乙は、本項の規定に基づく本契約の終了について、相手方に対し、その責めを負わない。
(1) 本治験責任医師が退職し又は甲以外の外部の機関等へ異動したとき。
(2)第1号に定めるほか、本治験の実施が著しく困難になったとき。
(3)本治験の被験者の安全の確保その他本治験の適正な実施の観点から、本治験を中止すべき、開始できない、又は変更すべきとする、甲の治験審査委員会の判断を得た場合。
(4)第3号に定めるほか、本治験の実施が相当性を欠くと認められるとき。
2 乙は、本治験実施期間に、以下の各号に定める事由のいずれかに該当した場合には、本契約を解約することができる。
(1)乙が、本治験データを被験薬に係る医薬品製造販売承認申請書に添付しないことを決定した場合。
(2)被験薬に係る次相試験を行わないことを決定した場合。
3 本契約が解約された場合(第7条第3項に基づく場合を含む。)、相手方から開示を受けた情報等や未使用分を含めた治験薬[(もしあれば。)]27の返還又は処分の内容や時期について、甲乙協議の上、取り決めるものとする。
第20条(本契約の解除)
1 甲及び乙は、それぞれ、相手方が本契約に違反し又は本契約に基づく債務を履行しない場合には、相当期間を定めて催告し、当該期間内に是正されないときは、本契約を解除することができる。
2 甲及び乙は、以下の各号のいずれかに該当する場合には、何らの催告を要せず、直ちに本契約の解除をすることができる。
(1)相手方が本契約の締結又は履行に関し不正な行為をしたとき。
(2)相手方が本契約の履行に関し、自己の名誉、信用又は評価を毀損したとき。
(3)相手方が本契約の履行に関し、重大な背信行為をしたとき。
(4)相手方が監督官庁から営業停止、営業許可の取消しその他これらに準ずる処分を受けたとき。
(5)相手方が合併によらず解散する旨の決議を行ったとき。
(6)相手方が本契約に係る事業を廃止したとき。
(7)相手方が、事前に書面による同意を得ずして、合併又は本契約に係る事業の全部又は一部の譲渡その他本契約上の地位の移転をもたらす行為をしたとき。
(8)相手方が、自ら振り出し若しくは引き受けた手形若しくは小切手の不渡りが生じ、又は手形交換所の取引停止処分を受け、若しくは当該処分を受けるべき事由が生じたとき。
(9)相手方が、その財産について、仮差押え、仮処分、強制執行若しくは競売その他これらに類する手続の申立てを受け若しくは租税公課に係る滞納処分を受け、又は当該申立て若しくは処分を受けるべき事由が生じたとき。
(10)相手方が、破産法に基づく破産手続開始、会社更生法に基づく更生手続開始、民事再生法に基づく再生手続開始、若しくは会社法に基づく特別清算開始の申立てを受け、若しくは自ら当該申立てを行い、又は当該開始の決定があったとき。
(11)前各号に定めるほか、相手方において本契約を継続し難い重大な事由が発生したとき。
3 本条に定める解除権の行使は、当該解除権を行使した当時者が相手方に対して損害賠償の請求をすることを妨げない。
4 本条に定める解除権を行使した当事者は、本条に基づく解除により相手方に生じた損害について、賠償する責めを負わない。
5 本契約が解除された場合についても前条第3項の規定を準用する。
第21条(反社会勢力の排除)
1 甲及び乙は、甲においては自己、本責任医師、分担医師及び協力者、並びに乙においては自己及び自己の役員等が、現在、暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等、その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力」という。)のいずれでもなく、また、反社会的勢力が経営に実質的に関与している法人等に属する者ではないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約する。
2 甲又は乙は、相手方が以下の各号のいずれかに該当する場合には、通知、催告その他の手続きを行うことなく、直ちに本契約の全部又は一部を解除することができ、当該解除により相手方に損害が生じた場合にも、これを賠償することを要しない。また、相手方は他方当事者に発生した一切の損害を直ちに賠償しなければならない。
(1)前条に違反していると認められるとき。
(2)相手方の経営に反社会的勢力が実質的に関与していると認められるとき。
(3)相手方が反社会的勢力を利用していると認められるとき。
(4)相手方が反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められるとき。
(5)相手方又はその役員若しくは相手方の経営に実質的に関与している者が反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有しているとき。
(6)自ら又は第三者を利用して、暴力的な要求行為、不当な要求行為、脅迫的な言動、暴力、風説の流布、偽計及び威力を用いた信用棄損及び業務妨害並びにその他これらに準ずる行為をしたとき。
第22条(存続条項)
本契約が終了(解除や解約による終了を含む。)した場合であっても、本条のほか、第12条(被験者の健康被害)、第13条(記録等の保存)、第15条(秘密保持)、第23条(損害賠償)、第24条(不可抗力)及び第27条(準拠法及び裁判管轄)は、当該条項の対象事項がすべて消滅するまでなお有効に存続する。
第23条(損害賠償)
1 甲及び乙は、本契約の違反により直接かつ通常生ずべき範囲に限り、当該相手方に対し、その賠償をしなければならない。当事者の予見し得ない特別の事情から生じた損害、当該損害の原因となった本契約上の義務違反に他の事情が介在して更に生じた間接的な損害並びに逸失利益、機会損失、営業損失、人件費、再調達費用及び派生的損害については、責任を負わないものとする。
2 前項に基づいて甲が負う責任は、第8条第1項に基づいて乙が負担する本治験に係る経費に相当する金額を上限とする。
第24条(不可抗力)
天災、戦争、内乱、暴動等、当事者の責めに帰すべからざる事情により、本契約の履行が中断又は遅延した場合、当該中断又は遅延をした当事者は、その責任を負わないものとする。
第25条(契約上の地位等の移転の禁止)
甲及び乙は、事前に書面による相手方の同意を得ることなく、第三者に対し、本契約上の地位又は本契約に基づく権利若しくは義務を承継(合併等による承継を含む。)し、譲渡(本治験に係る事業の全部又は一部の譲渡を含む。)し、移転し、若しくは担保に供し、又はその他の処分をしてはならない。
第26条(誠実協議)
本契約に定めのない事項及び疑義が生じた事項については、甲及び乙が、誠実に協議を行った上で、これを解決するものとする。
第27条(準拠法及び裁判管轄)
1 本契約は、日本国の法律に準拠する。
2 本契約に関する訴えは、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
甲及び乙は、本契約の締結を証するため、本契約書2通を作成し、それぞれ各1通を保管する。
令和●年●月●日
(甲)[アカデミア側(大学、国立高度専門医療研究センター等)]
(乙)[製薬企業等]
私、薬事関係法令等、本治験実施計画書及び本契約を遵守して本治験を実施いたします。
[令和●年●月●日
本治験責任医師(自ら治験を実施する者):●●]28
本「医師主導治験に係る契約(案)」は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)が平成30(2018)年度に実施した「医師主導治験データの導出に向けた知財契約等に関する調査研究」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)受託)における調査及び同調査の一環で設置された委員会(ARO協議会知的財産専門家連絡会メンバーと弁護士で構成:石埜正穂(委員長・札幌医科大学)、高橋亨(東北大学)、服部華代(京都大学)、堀田行久(千葉大学)、水落登希子(慶応義塾大学)、東崎賢治・羽鳥貴広(長島・大野・常松法律事務所))における議論等を踏まえて作成された「治験データに関する契約ひな形案の構成・ポイント」に基づき、同委員会委員でもあった東崎・羽鳥両弁護士が作成し、さらに同連絡会有志(石埜正穂、高橋亨、服部華代、水落登希子、吉田宏治(九州大学))による現状の実務に沿った修正、同連絡会及びAMED実用化推進部における検証を経て纏めたものである。
治験細目29
1.治験の題目 |
●● |
2.治験の目的・内容 |
●● |
3.治験実施期間 |
●● |
4.治験実施医療機関 |
●● |
5.治験担当者/治験協力者 |
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なお、本治験の詳細については、本治験実施計画書等に記載のとおりである。
1 医師主導治験の実施によって得られた治験データ等を製薬企業等が利用するための条件(利用条件やその対価等)については、当該製薬企業等とアカデミア側との共同研究の状況、医師主導治験における治験薬や当該治験に係る費用の提供状況などの事情によって異なるところであり、製薬企業等とアカデミア側はもちろんのこと、アカデミア側の内部においても様々な意見の相違が見られるところである。このような条件や意見の相違は、医師主導治験の実施や当該治験の実施により得られた治験データ等の利用の許諾に関し、①治験当初からアカデミア側と製薬企業等が契約を締結する場合、②当初はアカデミア側のみで治験を開始し、その途中から製薬企業等が医師主導治験に関与する場合、③アカデミア側のみで治験を行った上で、当該医師主導治験の実施により得られた治験データ等を製薬企業等が利用をしようとする場合など、様々な場合があるにもかかわらず、そのような前提の違いを踏まえることなく議論を行ってきたためと思われる。また、当初から製薬企業等と医師主導治験に係る契約を締結する場合であっても、治験薬、治験に係る費用、治験データの利用の対価、附随研究に係る費用等の提供の有無などの違いにより、様々なケースが存在するためとも思われる。
このような状況に鑑みて、医師主導治験に係る契約及び当該医師主導治験により得られた治験データ等の利用許諾に係る契約(治験データ等利用許諾契約)のひな形(医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案))の作成に当たっては、議論が拡散してしまうのを防ぐ趣旨で、
①医師主導治験の実施に当たり、当該治験を実施する前に、製薬企業等とアカデミア側とが医師主導治験に係る契約を締結すること、
②当該契約と同時に、又は後日治験データが得られた段階のうち、製薬企業等が、当該医師主導治験の実施により得られた治験データ等を利用することを決定した段階で、当該段階における事情を踏まえて、医師主導治験に係る契約とは別に、治験データ等利用許諾契約(治験データ等の提供や利用の許諾についての契約)を締結すること、そして、
③医師主導治験に係る契約においてアカデミア側に対して製薬企業等から治験に係る費用、研究費等が提供されているとしても、当該費用等には治験データ等の提供や利用の許諾に関する対価が含まれていないと双方が合意して締結すること
を前提とすることとした。
また、医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)は、附随研究の実施を前提とするものではなく、附随研究に関する条項を特に設けないこととした。医師主導治験に関して附随研究を実施する場合には、医師主導治験に係る契約及び治験データ等利用許諾契約に附随研究に関する条項を設ける、附随研究の実施に関する契約を別途締結することなどの対応をとることが考えられよう。
なお、医師主導治験に係る契約と治験データ等利用許諾契約を別に締結する場合においては、治験データ等利用許諾契約書の案を、医師主導治験に係る契約の別紙として添付し、製薬企業等が当該治験データを利用すると決定した場合には、アカデミア側と製薬企業等との間で、当該契約書案に基づく治験データ等利用許諾契約を締結するというアレンジも考えられる。
医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)は以上のような前提に基づくものであるが、そもそも、アカデミア側が治験薬を作り、治験費用を公的な研究資金で自ら賄って、医師主導治験を実施した場合のように、治験データの利用の許諾に係る契約は存在するが、医師主導治験に係る契約は存在しない(必要がない)ケースもある。また、医師主導治験に係る契約において、治験データ等の利用許諾の対価や利用条件を定めているケースもあり、そのような契約を締結することももちろん差し支えない。もっとも、これらのケースについても、医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)における条項や留意点等は参考になると思われる。
また、医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)は、その対象として医薬品を想定しているものの、医師主導治験によってアカデミア側が収集したデータを製薬企業等に提供し、製薬企業等がこれらを利用することができるようにするための契約であるから、その条項や留意点等は医療機器を対象とする場合においても参考になると思われる。
なお、医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構平成30年度医師主導治験データの導出に向けた知財契約等に関する調査研究委員会における、医師主導治験の実施により得られた治験データやそれに係る知的財産権等の帰属や当該治験データの提供や利用許諾、これらに対する対価に係る議論を踏まえて、主として、これらについての条項案や議論の背景、留意点を示すことを念頭に置いて作成したものである。例えば、医師主導治験に係る契約(案)における甲(アカデミア側)や乙(製薬企業等)の義務のように、当該議論とは直接関係しないものは、一例を挙げたものにすぎず、当該委員会において、詳細に議論を行ったものではない。
2 医師主導治験に係る契約や治験データ等利用許諾契約の契約主体を病院とする例がある。しかし、アカデミア側の附属病院それ自体に法人格はなく、契約主体となる可能性がないため、契約主体はアカデミア側の法人とすることが適当である。そのため、医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)においては、それらの契約主体を、「アカデミア側の法人」及び「製薬企業等」としている。
なお、多施設共同治験の場合については、治験の実施により得られた治験データをどの機関に帰属させるのか、当該治験データの利用等を許諾する場合に、各治験実施機関と製薬企業等との間で個々に契約を締結するのか、代表となる機関に治験データを集約した上で、当該機関(アカデミア側)と製薬企業等との間でのみ、治験データ等利用許諾契約を締結するのかなど、別途検討すべき事項があることに留意すべきである。
3 医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)における目的は一例にすぎず、個別の事案の内容に応じて、適切に設定する必要がある。もっとも、医師主導治験に係る契約(案)や治験データ等利用許諾契約(案)の目的は、乙(製薬企業等)の社内検討や利用等の許諾の範囲などにも関係するものであるため、医師主導治験に係る契約(案)及び治験データ等利用許諾契約(案)を踏まえた契約を締結する場合には、当事者双方で契約の目的について慎重に検討する必要があろう。
4 前文に治験責任医師の名前を記載することによって治験責任医師も契約当事者であるように誤解される懸念もあるので、ここには記載せず、必要に応じて別紙で治験責任医師を特定する等の方法も考えられる。
5 契約書において頻繁に使用する用語については、契約書の初めの方で、当該契約書における当該用語の定義についての条項を定めることが望ましい。医師主導治験に係る契約(案)は、参考の意味も兼ねて、比較的詳細に用語の定義を定めているが、どの程度の用語を契約書において定義するかは、当事者間で協議して定めることになろう。
6 医師主導治験に係る契約(案)に基づいて、アカデミア側が製薬企業等に対して提供するものが本治験総括報告書であることを踏まえると、本治験総括報告書にいかなる情報を記載するかに関係する本治験実施計画書における「評価項目」などについては、アカデミア側と製薬企業等との間で十分に協議をした上で、慎重に定める必要があろう。また、本治験総括報告書に、本治験実施計画書において定めた「評価項目」などに関するデータが掲載されていないことが認められた場合には、アカデミア側が本治験総括報告書の修正に応じることとなろう。
7 治験データ等の利用許諾に係る契約は、医師主導治験に係る契約に基づいて作成された治験総括報告書を踏まえて、製薬企業等が治験データ等の利用許諾を受ける場合において、当該製薬企業等が利用等の許諾を受ける治験データ等の範囲を定めるものである。医師主導治験に係る契約及び治験データ等利用許諾契約において、アカデミア側が特定のデータや文書に限って製薬企業等に提供し、これらの利用の許諾をする場合には、利用許諾等の対象について、疑義のないように定める必要があることに留意すべきである。
8 個人情報の保護に関して、例えば、「甲及び乙は、本治験に関して相手方から開示を受けた情報に個人情報が含まれていた場合には、その保管や取扱いについて個人情報の保護に関する法令等を遵守し、滅失、毀損、盗難、漏洩等のないように措置を講じるものとする」という規定を設けることも考えられる。
9 本治験が、製薬企業等の製品の共同プロモーションに関するものや当該製薬企業等を有利に取り扱おうとするものではないことを明記することも考えられる。
10 アカデミア側や製薬企業等の責務として、本被験薬の製造販売承認申請に係る業務を記載することも考えられる。
11 治験薬の回収等について、製薬企業等の責務とする例もある。
12 医師主導治験に係る契約において、記録の保存に関してより具体的な内容を定めることも考えられる。
13 医師主導治験に係る契約(案)は、製薬企業等が負担する本治験に係る経費のみを明記しているが、アカデミア側と製薬企業等の双方が本治験に係る経費を負担する場合には、それぞれが負担する経費を契約書において明記することも可能である。もちろん、本治験に係る経費について、どちらか一方だけが負担する場合や、本治験に係る経費の全部又は一部に公的資金を充当する場合も考えられる。
負担する経費の額に加えて、本治験に係る経費の全部又は一部に公的資金を充当した(する)場合については、どちらの経費負担をどの程度軽くするのかなどの取扱いについて定めておくことも考えられる。そのほかにも、本治験に係る経費が不足した場合に、製薬企業等に対し、当該不足の理由を説明しつつ、追加の負担に係る協議を行う旨を定めることも考えられる。
乙の経費の支払方法について、医師主導治験に係る契約(案)においては、一括払いとなっているが、これは一例であり、分割払いやマイルストーンごとの支払も考えられる。
なお、脚注1において述べたとおり、医師主導治験に係る契約(案)には、アカデミア側に対して製薬企業等から研究費等が提供されているとしても、当該研究費等には治験データ等の提供や利用の許諾に関する対価が含まれていないことを前提としている。
14 脚注1において述べたとおり、医師主導治験に係る契約(案)では、附随研究を実施することを前提とはしていないが、仮に、医師主導治験だけではなく、附随研究を実施することを前提とし、当該附随研究に関して、製薬企業側がアカデミア側に対して何らかの支援等を行う場合には、その内容について、別途契約を締結するか、医師主導治験に係る契約において明記すべきであろう。
15 本治験薬の提供に関して、本治験薬の規格、提供数量、提供時期、搬入先、搬入方法、保管・管理方法等を詳細に規定した条項や、これらの事項を当事者双方で協議の上決定する旨の条項を設けることも考えられる。また、アカデミア側が製薬企業等に対して提供の依頼を求める書面において、必要な数量等を明記する旨の条項を設けることも考えられる。
16 医師主導治験の実施後に、製薬企業等が、アカデミア側に対し、本検討等のために、本治験総括報告書に加えて、アカデミア側が保有する本治験データの中から適当なものを閲覧するか否かを協議することを要請できるようにすることも考えられる。その場合、例えば、「乙は、甲に対し、本治験総括報告書に記載されている内容に係る原データや解析の過程についての情報等の閲覧についての協議の申し入れをすることができる。当該協議の結果、甲が乙に対して情報の全部又は一部の閲覧を認めた場合、乙は、閲覧した当該情報等を、第4項各号に定める決定をするか否かを検討するためにのみ用いることができ、その他の目的で使用してはならない。また、甲の事前の書面による同意なしに、第三者に対し、当該情報等を開示、提供、漏洩してはならない。」というような内容の条項を設けることが考えられよう。また、本検討等のためだけに、製薬企業等に閲覧を許しているにすぎないことに鑑みて、確認の趣旨で、複写、複製、記録などを禁止する条項を設けることも考えられよう。
17 具体的な期間については、実施する治験の内容などを踏まえつつ、アカデミア側と製薬企業等との間で協議して決めるものである。
18 第Ⅲ相試験等の場合、当該治験結果を受けて、被験薬について、医薬品製造販売承認や上市の投資可否について社内検討するための情報・期間が必要であることも考えられる。この点を踏まえて、必要に応じて、アカデミア側の本治験総括報告書の作成、提供よりも前に、使用目的を制限した上で、製薬企業等に対し、本治験総括報告書に掲載する予定のデータの一部を先行的に閲覧させることについての規定を設けることも考えられる。
19 具体的にどの程度の期間を本検討期間とするのかについては、個別具体的な事情を踏まえて、アカデミア側と製薬企業等との間で協議して確定することになろう。
20 承認申請に使用しない場合であっても重要なデータに変わりないので、検討のための利用についても課金対象として記載しておいても良い。どういった利用について使用料をとるかについては、明確にしておく必要があるかもしれない。
21 本項及び第6項における「6ヶ月」はあくまでも一例であり、実際にどの程度の期間にするかは、アカデミア側と製薬企業等との間で協議の上で定めることになろう。
22 製薬企業等が検討を行っている間に、アカデミア側が他の製薬企業等に対して本治験データを開示等した場合、医師主導治験に係る契約の当事者である製薬企業等が、その結果を利用して得ようと考えていた利益が得られなくなる可能性が高まる。製薬企業側としては、そのような事態を防止するために、一定の期間について、アカデミア側が、第三者に対して、本治験データを開示等するのを制限する規定を設けることが考えられる。医師主導治験に係る契約(案)においては、製薬企業等が本検討を行っている間や本治験データの提供、利用許諾に係る契約を交渉するための期間について、アカデミア側が他の製薬企業等に本治験データを開示又は提供し、その利用の許諾についての打診を行わない期間(独占的・優先的交渉期間)を定めている。
23 医師主導治験である本治験は、本治験責任医師の責任の下でアカデミア側が実施するものであるから、本治験データの利用権限(利用許諾をする権利を含む。)及び本治験データそのものに係る知的財産権(不正競争防止法による保護の対象を含む。また、海外の知的財産権を含む。ただし、第三者に帰属するものは除く。)その他一切の権利は甲に帰属することになると考えるのが適当である。また、それに係る知的財産権についてもアカデミア側に帰属し、本契約がこれらについての利用を許諾するものではない。このことを規定したのが、本規定である。
なお、本治験の実施過程において、アカデミア側(又は治験責任医師等)が本治験とは直接関係のない発明等をすることも想定される。もっとも、そのような事態は珍しいことと考えられる。また、本治験の実施過程で発明等されたものとはいえ、本治験の実施そのものとは直接関係のない発明等は、本治験の実施過程において、当該発明等を自発的に成し遂げたアカデミア側(又は治験責任医師等)によるものであることは明らかであると思われる。したがって、通常、当該発明等はアカデミア側(又は治験責任医師等)に帰属することになると考えるのが適当であり、製薬企業等との間で権利の帰属が問題となることは少ないと思われる。医師主導治験に係る契約(案)においては、このような発明等に係る知的財産権その他一切の権利の帰属について、特に定めを設けていないが、個別の事情等によっては、製薬企業等とアカデミア側との間で十分に検討することが必要であろう。
24 発明は自然に出てくるものではなく努力して創作されることを考えれば、大学の寄与分を適正に評価することにより大学に発明へのインセンティブを与えWIN-WINの関係を築くほうが得策といえる。
25 医師主導治験に係る契約(案)では、本研究成果の発表等に関して、事前に協議を行うべき義務を定めたが、例えば、相手方の同意を得るべき義務を規定することも考えられる。なお、本項の「1ヶ月」は一例にすぎず、具体的な期間については、個別の事情に鑑みて、アカデミア側と製薬企業等との間で協議の上の決めるべきものである。
26 本条における「6ヶ月」は第14条の一例に合わせたものである。
27未使用分の研究経費に関しても返還の必要性がある場合には定めておく。
28 治験責任医師の署名は契約上不要で、責任医師が契約当事者であるかのような誤解を招きかねない懸念さえあるが、必要に応じて署名欄を設けることは可能である
29 医師主導治験に係る契約(案)の治験細目に記載した項目は、あくまでも一例である。本文中に掲載した項目以外にも、本治験責任医師の氏名、本治験の担当者や協力者の氏名、実施予定症例数、それぞれの治験施設や設備、本治験に係る費用の負担額などを記載することも考えられる。
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