静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、株式会社ソフテック(社長 前嶋俊映)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.6.30
(株)ソフテックと「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(xx xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、株式会社ソフテック(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 6 月 30 日(木)
2.融資金額 1 億 5,000 万円
3.資金使途 設備資金
4.(株)ソフテックの取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、自動車の外装用品であるエアロパーツの開発、設計、製造を手がけるプラスチック製品製造業で、主要取引先である大手自動車メーカーに純正のオプションパーツを供給しています。
〇また、取引先やユーザーの想いを「カタチ」にするため、難易度の高いデザインにも対応できる技術力を有するとともに、省エネ設備の導入や LED 照明への切替などを通じて、CO2 排出量の削減に努めています。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・CO2 排出量の削減(省エネ性能の高い設備の導入) ・廃棄物の削減(プラスチック端材のリサイクル促進や廃棄物となるプラスチック素材の削減、協力会社との連携による不良率の削減) ・塗装レスパーツの製造(塗装レス樹脂外装技術の用途開発、取扱品目の増加) |
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社会面 | ・雇用の拡大(新卒社員の採用再開、若手人材の育成と技能の伝承) ・情報セキュリティの徹底(情報漏洩対策の実施など) |
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経済面 | ・想いをカタチにするモノづくり(高い技術力と対応力による高品質な製品の提供) |
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内
部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:株式会社ソフテック
2022 年 6 月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
<要約> 3
1. 事業概要 5
1-1 事業概況 5
1-2 経営理念 7
1-3 業界動向 7
1-4 地域課題との関連性 8
2. サステナビリティ活動 10
2-1 環境面での活動 10
2-2 社会面での活動 13
2-3 経済面での活動 16
3. 包括的分析 19
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析 19
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定 19
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性 20
3-4 インパクト領域の特定方法 20
4. KPI の設定 21
4-1 環境面 21
4-2 社会面 23
4-3 経済面 24
5. 地域経済に与える波及効果の測定 25
6. マネジメント体制 25
7. モニタリングの頻度と方法 25
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社ソフテック(以下、ソフテック) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、ソフテックの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
ソフテックは自動車の外装用品であるエアロパーツの開発、設計、製造を主として営むプラスチック製品製造業である。製造しているエアロパーツは主に、車両下部に取り付けられるスポイラーで自動車のデザイン性向上に貢献している。同社の主要取引先は大手自動車メーカーがほとんどで、Tier
1の立場で純正のオプションパーツを供給している。また、要求水準は非常に高いため、難しいデザインをカタチにできる技術力や品質へのこだわり、スピード感のある対応が可能とする納期、高い情報セキュリティなど様々な強みを有している。
ソフテックのサステナビリティ活動等を分析した結果、ポジティブ面では「健康・衛生」、「教育」、
「雇用」、「エネルギー」、「包括的で健全な経済」、「経済収束」が、ネガティブ面では「健康・衛生」、
「雇用」、「情報」、「大気」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」がインパクト領域として特定され、そのうち、環境・社会・経済に対して一定の影響が想定され、ソフテックの経営の持続可能性を高める6つのインパクト領域について、KPI が設定された。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
金額 | 150,000,000 円 |
資金使途 | 設備資金 |
モニタリング期間 | 5年 0 カ月 |
企業概要
企業名 | 株式会社ソフテック |
所在地 | xxxxxxxxxxxx 0000-0 |
従業員数 | 58 名(男性 37 名、女性 21 名) |
資本金 | 2,000 万円 |
業種 | プラスチック製品製造業 |
事業内容 | 自動車用プラスチック製品成形事業 産業機械用プラスチック部品製造事業 |
主要取引先 | ㈱トヨタカスタマイジング&ディベロップメントヤマハ発動機㈱ 三菱自動車工業㈱ ほか |
沿革 | 1993 年 ㈱ソフテック設立 1994 年 自社製品「FISLAND」(ルーフボックス)発売 1999 年 浜松市中区向宿に向宿研究所を開設ウレタン低圧S-RIM 成形を開始 2002 年 浜松市西区xx町の浜松湖南工業団地内に工場を開設 真空成形を開始 2004 年 資本金 2,000 万円に増資 2012 年 xxx工場(現工場)へ全面移転 2013 年 香港に子会社 想富技術(香港)有限公司を設立 2017 年 子会社 ソフテック AOI㈱設立 2018 年 M&A により、プラモ㈱をグループ企業とする 2021 年 大型真空成形機増設 |
(2022 年 6 月 30 日現在)
1. 事業概要
1-1 事業概況
ソフテックは、1993 年に浜松市で創業した。当初は、ファブレス企業として歩みを始め、94 年に自社ブランド製品「FISLAND」(自動車用ルーフボックス)を開発、99 年に同市の中区向宿に研究所を開設し、自社内での製造を始めた。2002 年には業容拡大に伴い浜松湖南工業団地内に工場を建てた。11 年の震災以降、沿岸部にほど近い立地での事業継続に危機感が募り、翌年には西区xxx町にある浜松木工団地への全面移転を実施した。
現在、売上高のほとんどを占めるのはプラスチック樹脂加工製品で、その 8 割は自動車用のカスタムパーツであり、名だたる自動車メーカーに Tier1の立場で純正用品として納品している。ソフテックが製造しているのは、エアロパーツという自動車のデザイン性を高めるドレスアップパーツで、空気力学にも配慮している外装の自動車用品である。なかでも車両前方下部に取り付けるフロントスポイラーや側面下部に取り付けるサイドスポイラーが主力となっている。そのほかに産業機械用のプラスチック部品や自動車向け LED 用品パーツなどの製造も行っている。
主要取引先は㈱トヨタカスタマイジング&ディベロップメントや三菱自動車工業㈱など大手企業で あり、主要取引先 5 社で売上の9割近くを占める。ソフテックが、これらの大手企業と直接取引でき ている理由は、品質や納期、技術力、情報セキュリティにおいて高いレベルを維持していることに加え、同業他社にない優位性を持つ“提案力とスピード”対応という強みを有しているからである。ソフテックは、ただ単に受注を獲得するのではなく、取引先の達成目標を理解して目指す方向性を共有したう えで、効率的な開発案や実現可能性の高い設計案を提示するほか、従業員一人ひとりが大きな裁量を持ち、社⾧に直接判断の可否を仰ぐ風土が醸成されているためスピード感のある対応ができ る。また、自社内で試作品の製造や測定・検査を行えるうえ、地域の協力企業と連携体制が確立 されており、開発から量産まで一貫した体制である。これらの強みが、大規模な競合先がひしめく自動車業界において大手メーカー各社の信頼を勝ち得る要因となっている。
受注段階でお客さまの目標を共有 積極的に開発提案やサポートを実施
お客さまのイメージをカタチにしていく開発品質向上を考慮した設計
実際に成形を行い、製品を試作
自社で所有する測定・検査設備を使用して検証
<安心の一貫体制>
営業
開発・設計
試作・検証
企業ネットワークや経験、ノウハウ、技術を駆使して、
量産
少量多品種から量産までニーズに合わせ対応
ソフテックは取引先の要望に応えるため、様々な加工技術を獲得してきた。主力は真空成形で、板状のプラスチック樹脂材料などを機械の上下に付いたヒーターで熱することで、軟化させたのち、金型に密着させる際に板材料と金型の間の空気を吸引して型を取る加工方法である。この成形方法は、自動車のバンパーや機械用カバーといった容積の大きい部品の製造に向いた加工方法である。
<真空成形工程>
材料受入
成形加工
トリミング
仕上げ
検査
サンディング
塗装
組立
検査
納品
<真空成形加工イメージ>
形状が複雑な部品や生産量の多い部品は、射出成形にて加工を行う。溶解した樹脂材料を金型に高圧で射出・充填し型を取る成形方法で、比較的小型の部品を、大量に製造することに向いた加工方法である。ソフテックでは、主にめっき部品や精密部品で同製法を用いている。
<射出成形工程>
材料受入
成形加工
検査
塗装・めっき
組立
そのほか、ブロー成形やレーザー加工、子会社にて低圧リム加工といった加工技術を有し、取引先の要望する製品に合わせた加工を施すことができる。
1-2 経営理念
【かかわるすべての人が笑顔になれる会社を目指す】
ソフテックの経営理念は「かかわるすべての人が笑顔になれる会社を目指す」であり、お客様の満足を得る製品作りを基本とし、常に顧客対応と品質向上に努めることで取引先やエンドユーザーに安心・安全・感動を届け、信用と信頼を得ることを目指している。
また、 “かかわるすべての人”には取引先やその先のユーザーだけでなく、従業員本人やその家族、仕入先といったステークホルダー全体が含まれており、そのすべての人が笑顔になれるよう、従業員が一体となり事業を営んでいる。
【その想いはxxを作る】
ソフテックは 2021 年に代表取締役社⾧が交代し、新たにxxxx社⾧が就任した。xx社
⾧は「モノづくりには想いがある」という方針を掲げている。これは先の見えない変化の激しい現代において 10 年後も確かに存続できる企業で在るため、取引先から要求された物体としての“物”を量産するだけの企業ではなく、相手が目指す想いを実現する“モノ”をカタチにすることを重視していくという考えから生まれている。ありとあらゆる可能性を模索していく中で、製造業にとどまらず事業の多角化なども視野に入れ、柔軟な発想で将来を見据えている。
1-3 業界動向
① 自動車市場のユーザー動向
一般社団法人日本自動車工業会「2021 年度乗用車市場動向調査 報告書」によると、 2021 年の乗用車世帯保有率は 77.9%と、13 年をピークに高止まりの傾向にある。一方で、ユーザー層に大きな変化が出ている。主運転者の世帯ライフステージをみると、高齢期(子は結婚して別居している世帯、または子がいないか単身で 55 歳以上の世帯)が 13 年調査では 25%だったが、21 年調査では 34%となっている。また、60 歳以上の高齢層は約4割となっており、国内の自動車所有者の高年齢化が進行している。
ただし、若年層においても関心・購入意向ともに約4割と一定の自動車への購買意欲はみられる。また、車選びにおいて、若年層は「外観のデザイン・スタイル」や「内装のデザイン・スタイル」を重視するとの回答がともに7割近く、全体よりも2割程高いことから、見た目を重視している傾向にある。
所有者の高齢化が進行しているほか、レンタカーやカーシェアリングなど所有以外の選択肢が増えているが、自動車市場の維持拡大のためには、新たなユーザーとなる若年層を所有者として取り込むことが欠かせない。
ソフテックではオプションパーツを製造しているが、デザインを重視する傾向が他の世代よりも強い若年層においては、見た目を手軽に変更できるドレスアップパーツの意義は大きく、購入の動機付けのひとつとなる。
② 自動車業界の環境対応への取組み
主要取引先のひとつである㈱トヨタカスタマイジング&ディベロップメントは、トヨタ自動車㈱を親会社とするカスタムパーツメーカーである。トヨタ自動車㈱では、「トヨタ環境チャレンジ 2050」を発表しているほか、「第7次トヨタ環境取組プラン」では、2025 年までの環境目標を掲げ国内自動車メーカーの筆頭として自動車業界の CO2 排出量削減を推進している。
2025 年目標に「ライフサイクル(製造+走行時)CO2 ゼロチャレンジ」を掲げており、その中で “自動車ライフサイクルでの CO2 排出量 18%以上削減(13 年比)”を打ち出している。この取組みの範囲には、購入部品の製造時 CO2 排出量まで含まれており、同社に部品を供給している企業も対象となっている。さらに、環境配慮設計を強化する方針であり、技術開発の推進として、低 CO2 材料の開発・使用拡大、材料使用量削減、部品点数削減、リサイクル材料使用拡大を挙げている。
主要サプライヤーを対象に、CO2 削減に向けた活動を推進すると明言しており、完成車メーカーを中心に、自動車産業全体が脱炭素化に向けて動き出している。
1-4 地域課題との関連性
① 自動車産業の集積地域における次世代自動車への対応
静岡県西部地域には自動車産業が集積しており、完成車メーカーをはじめ自動車部品メーカーが多く立地している。現在、自動車産業は次世代自動車開発に向け環境が激変しており、県内企業においても CASE への対応等が大きな課題となっている。特に EV 化に伴う部品の変更・減少による売上への影響や新たな設備投資への負担増が懸念されている。そこで同地域では浜松市が中心となり、自動車産業を取り巻く変化に対応している。
2018 年に公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構が「次世代自動車センター浜松」を開設し、中小製造業者への技術的な支援や情報の提供、人材育成、販路開拓などのサポートを行っている。また、「浜松市実証実験サポート事業」の一環として、ベンチャー企業や地場の大企業、浜松市が連携して行う「浜松自動運転やらまいかプロジェクト」がある。自動運転技術を活用したス マートモビリティーサービスの事業化を目的に、22 年5月には第3回目の実証実験を行った。このよ うに地域全体として、地場に根付いた自動車産業の活性化に取り組んでいる。
<自動車部分品・付属品製造業における製品出荷額等上位県(2019 年実績)>
都道府県 | 事業所数(所) | 従業員数(人) | 製造品出荷額等(万円) |
愛知県 | 1,434 | 243,962 | 1,927,284,605 |
静岡県 | 871 | 66,071 | 229,657,902 |
群馬県 | 406 | 33,659 | 169,445,722 |
三重県 | 224 | 26,101 | 122,420,910 |
埼玉県 | 425 | 31,049 | 112,497,272 |
資料:経済産業省「2020 年工業統計調査 地域別統計表」
② 浜松市のエネルギービジョン
「浜松市エネルギービジョン(令和2年4月改訂版)」によれば、浜松市は 2014 年~18 年の5年間の平均日照時間が 2,291.16 時間/年(全国5位)と全国トップクラスを誇っている。
18 年度時点で既に浜松市で導入されているxxx発電は、住宅・非住宅を合わせ 577,832MWh と推計しており、この発電量は当初エネルギービジョンを策定した 11 年度時点
(51,084MWh)の約 11 倍となり、策定当初の 30 年度目標である 574,000MWh を既に達成している。
この推進力となっていたのが、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)や同市の積極的な再生可能エネルギー導入施策の実施であったが、今後は、FIT の買取り価格の低下や市内における適地の減少などにより導入鈍化が予想されている。
浜松市ではさらなる導入のために FIT 売電だけでなく、発電した電力を自らの施設で消費する自家消費型のxxx発電についても促進を図っていく方針を打ち出している。この取組みにより、 2030 年度 720,000MWh(電力自給率 15.3%相当)、50 年度 800,000MWh(同
17.8%相当)の導入目標を掲げた。
浜松市で事業を営むソフテックでも、自家消費型のxxx発電設備を導入し、地域の課題解決に貢献している。
2. サステナビリティ活動
2-1 環境面での活動
(1)省エネ設備の導入による CO2 排出量削減
ソフテックの事業活動においてエネルギーを最も使用するのは、主力設備である真空成形機である。真空成形機は、プラスチック板材を加熱して軟化させる工程があることから、設備の上下にヒーターが付いており大量の電力を使用する。特に、旧式のものはセラミックヒーターが発熱体に使われていることに加え、稼働させている間は常に発熱していなければならない。一方で、最新式の真空成形機はカーボンヒーターが用いられ、発熱効率が良く速暖性にも優れており、こまめにオンオフができる機能が備わっているため、旧式の機械と比べるとおよそ 40%の電力消費量に抑えられる。ソフテックでは7台の真空成形機を所有するが、このうち 2021 年に導入した大型真空成形機がこの最新型である。そのほか、19 年に導入したモデルは、発熱体こそセラミックを用いているが、事前に次の板材を予熱しておくことができるなど加熱段取りに優れており、電力消費は旧式比のおよそ 65%に抑えられる。今後も、主要設備の更新時に省エネ性能の良い設備を積極的に導入することでエネルギー使用量を抑制していく方針である。
また、社屋や工場事務所で利用する照明や空調設備についても、省エネ性能の高い設備に更新することで CO2 排出量を削減している。照明設備は、検査工程で蛍光灯が必要な場所などを除き LED 照明に変更し、CO2 排出量を従来に比べ 47%削減している。空調設備は、省エネ性能の高い機種に変更し、CO2 排出量を 18%削減している。
そのほか使用電力についても、CO2 排出係数の低い関西電力㈱を選好して契約している。関西電力㈱では 2020 年度の CO2 排出係数(調整後)が 0.351kg-CO2/kWh と大手電力会社の中で低い値となっている。また、関西電力㈱は「ゼロカーボンビジョン 2050」を掲げ、発電事業を始めとする事業活動全体に伴う CO2 排出を 2050 年までにゼロとすることを目標としているほか、顧客とも連携して進めていく方針を打ち出している。ソフテックは、このようなゼロカーボンに向けた取組みに賛同することで、自社の CO2 排出量削減も推進していく方針である。
<2020 年度 CO2 排出係数> (単位:kg-CO2/kWh)
電気事業者名 | 基礎排出係数 | 調整後排出係数(残差) |
関西電力株式会社 | 0.362 | 0.351 |
中部電力ミライズ株式会社 | 0.406 | 0.379 |
東京電力エナジーパートナー株式会社 | 0.447 | 0.443 |
東北電力株式会社 | 0.476 | 0.457 |
資料:環境省「電気事業者別排出係数 令和2年度実績」
(2)再生可能エネルギーの利用推進
再生可能エネルギー利用を推進するため、2022 年6月にxxxパネルを設置した。工場屋根に、設置面積 1,131 平方メートル 600 枚のパネルを設置することで 223,240kWh/年の電力を生みだす。発電した電力は自社で消費するが、その電力量は現在の総使用電気量の約 20%に相当する。今後は、設置したxxx設備の稼働状況を見極め、さらなる設置を検討していく。
(3)自社の廃棄物の削減および適切な処理
プラスチック製品製造を主業とするソフテックでは、事業を営むうえで廃棄物が出てしまうことは避けられないが、最大限リサイクルを行い、廃棄物を削減させる取組みを徹底している。特に主力とする真空成形では、製品よりも大きなプラスチック板材に加工を施して成形するため、トリミング工程でプラスチック端材が多量に出てしまうが、このような端材については全量リサイクルしている。
具体的には、ソフテックが、プラスチック板材の製造元にプラスチック端材を戻す際、製造元の協力企業を通じて原材料化される。プラスチック板材の原材料のひとつとしても利用されるため、一定の資源循環が図られている。また、その他の部品では 100%リサイクル材の取扱いも積極的に行っている。
そのほか、ソフテックでは不良品に対するコスト意識の改革に努めている。従来は、不良品と判定した時点までの原材料費や人件費、電気料金などの製造コストや事務処理に係るコスト、廃棄費用を損失額として算出していた。同社では、不良品にかかる損失は不良品と判定した時点までのコストだけではないと考えており、納品予定数量を満たすために生じる追加製造にかかる“目に見えないコスト”まで含めた損失額を独自の“不良品額”として算出する試みをしている。具体的には、資材の調整や生産準備など新たな生産のための段取りを行うコストや追加製造に対応する人員投入コストなどがある。特に人員面では、生産計画外の業務である追加製造は、たとえ定時内に作り直せたとしても残業と同様の見方をする必要があるとして割増の人件費で考えている。ソフテックでは、売上高に占める“不良品額率”を正確に算出することで、従業員の意識を向上させ不良品の削減を推進していく。
(4)協力企業での不良率の低減による廃棄物削減
塗装を施した後の段階では、リサイクル材として適さなくなってしまうため、塗装工程での不良率を抑制する取組みを図っている。ソフテックでは、塗装工程を協力企業に委託しているが、塗装後の製品に問題があった際は、問題点を詳細に伝え原因を明らかにすることで不良品を削減している。また、後述するような大手企業の厳しい品質基準をクリアするため、不良品削減方法を協力企業全社で共有するほか、他社で発生した実例についても企業名を伏せたうえで注意喚起している。この取組みにより同業者よりも低い不良率に抑えている。
めっき加工を施した製品については、再加工が行えないため取扱いに細心の注意を払う必要がある。光にかざすことでようやく見えるような傷でも、主要取引先である大手企業が要求している水準の品質を満たさなくなるため、協力企業においてもソフテックと同水準の取扱いや検品の精度を要請
することで、取引先からの要求水準の共有を図っている。めっき加工前にバフ掛けを念入りに行うことや、加工後はなるべく人の手や物と接触しないよう横持ちの箱に入れて移動させるほか、運送や梱包方法を工夫している。こうした取組みにより、廃棄物となってしまう不良品の排出を同業他社比およそ 6 割に抑えている。
(5)塗装レスパーツの製造
自動車部品におけるプラスチック製品は、耐久性や完成車の色味の統一感などから塗装を施すパーツが多い。一方で、塗装工程では VOC(揮発性有機化合物)が発生してしまうリスクがあり、光化学スモッグを引き起こす要因といわれている。塗装レスの製品は従前よりあるものの、その利用には課題が残る製品が多く、たとえば発色が良いアクリル素材は衝撃を受けると割れやすく、鋭利な断面になる傾向があるなど、普及が進んでいなかった。
ソフテックでは、㈱タジマモーターコーポレーションと共同で、塗装レス樹脂外装技術の用途開発を行っている。同技術は着色層とクリア層からなるプラスチック板材を用いることで、塗装不要の外観を実現している。塗装レス製品の製造加工技術を向上させ、その用途開発を促進し塗装済み製品と遜色ない幅広い提案を実現することで、取引先の選択肢を広げる取組みを今後も推進していく方針である。
2-2 社会面での活動
(1)高度な人材の活用と若手人材の育成
ソフテックは、自社の技術力を常に向上させるため、高度な技術を有した人材の採用に積極的である。これまでに中途採用で優秀な人材を6名獲得することで、取引先への提案力や高度な開発設計能力などのコア技術を確立している。そうした技術的な成⾧に余念がないからこそ、大手自動車メーカー各社との継続的な直接取引が可能となっており、また、このような経験豊富な人材は既存社員の専門性を高めるなど社内に好影響を与え、顧客からの要求に応えられる人材の増加に繋がっている。
ソフテックでは若手人材の採用・育成にも力を入れている。業容を拡大させるためには、人材の力は必須であることから、従業員数の増大を図ると同時に部署ごとに 20 代の社員を配置することで、次世代を担うコア人材の育成も行っている。開発部では、外部で学べない実務が多いため現場での経験が重要であり、一人ひとりへのきめ細かな指導が必要である。1案件のサイクルが 1 年近くに及ぶため、3 年目にして補助が務まるようになり、5 年目にしてようやく職務を遂行できる技能が身に付くようになる。また、製造部ではソフテックが取扱う多様な加工方法を習得する必要があるうえ、真空成形加工一つを取っても機械の大きさや種類が異なるためそれぞれの操作方法を覚えなくてはならない。品質管理部では、検査方法や注意して見るべき箇所を身に着けるためのノウハウの蓄積が重要となっている。そのため早くから技能習得に向け動き出す取組みを行っている。
(2)新卒社員の雇用と自社の認知度向上
さらなる人材強化を図るため、ソフテックは7年ぶりに新卒社員の採用を再開する。2023 年度 は2名の採用を予定しており、すでに 24 年度の採用計画も準備している。新卒社員を迎えるにあ たり、社内の教育制度を拡充するとともに外部研修などを活用した人材育成のプログラムを作成した。また、入社後に本人の希望や適性に応じて部署の異動が起こる可能性も考慮し、部署ごとに異な るスキルマップを作成しており、成⾧に必要な目標を明確にして着実にレベルアップが図れるようにし ている。また、指導を担当する社員に対しても管理職セミナーや部下教育など外部の講習を受講さ せるなど教育を施し、育成面での不安を払拭している。
ただし、ソフテックでは取扱う製品が大手企業の発売前の外装品などであることから、徹底した情報管理を行う必要がある。たとえソフテックが製造している製品でも、許可なく公表ができないため、外部に向けて自社をアピールすることが難しく、会社説明会等でも十分に魅力を伝えられていなかった。そこで新卒採用再開を機に、自社を紹介するうえで魅力が伝わる要素を洗い出し、企業紹介動画やパンフレットの刷新など新たな PR 素材を用意した。これらの取組みにより、多くの人材に魅力を伝えられるほか、自社の認知度向上にもつながっている。
(3)多様な人材の活躍
若手人材以外の活躍も後押ししており、65 歳以降も再雇用を行い、高齢な従業員の就労機会を維持している。現在 65 歳以上の従業員は7名働いており、最高齢の 72 歳の従業員は製造現場で活躍している。このほか女性社員も主任として3名が活躍している。一方で、製造業という業種もあり、女性社員の雇用比率が低くなってしまう傾向にある。そこでソフテックは、前述した認知度向上によるイメージ改善や後述する福利厚生制度の整備などにより、雇用比率の偏りを是正していく方針である。また、派遣社員の正社員登用も積極的に行っており、これまでに5名の正社員登用の実績がある。
また、従業員全員に対し、多様な従業員が円滑に仕事に励めるよう、マナーやパワハラ防止といった社会人教養などの外部研修を会社が費用を負担して、積極的に推進している。これらの取組みは従業員の働きやすい環境の醸成に寄与している。
(4)充実した福利厚生制度
多様な人材の活躍を目指すうえで、福利厚生制度も厚く整備している。休日は原則週休 2 日制とGW、夏期および年末年始休暇などで 115 日と、社内一斉有給取得日5日で年間 120 日を設けているほか、産前産後休暇や育児休暇、介護休暇に加えバースデー休暇や特別休暇(慶弔、ワクチン休暇)も整備している。
コロナ禍においては慰労として家族で楽しめるような食品を配る取組みをしたり、毎週水曜日には従業員間のコミュニケーションの機会が生まれるよう菓子を支給しているほか、会社所有の会員リゾート権やプレジャーボートを希望者が利用できる制度もある。また、季節ごとに BBQ やボーリング大会、忘年会など従業員と家族が一緒に参加できるイベントも社内で企画している。このようにソフテックでは、従業員とその家族が一緒に楽しみ、笑顔になれることを大切にして福利厚生の充実に取り組んでいる。
(5)安全衛生の徹底
主要取引先の基準に準ずる安全性を確保するよう努めている。工場内では、資材などが高く積み上がらないように余裕のある設備配置を行うほか、フォークリフトと従業員の通路を床に明示し衝突の危険が無いようにしている。また、朝礼等で、機械音や振動、臭いに異常があればすぐに報告するよう日々の声掛けを行うほか、年末年始やGW、夏期休暇などの⾧期休暇の前後や期の変わり目には、全体集会を実施し従業員全員に対して安全面の配慮を徹底している。
また、細かいプラスチック端材が出るサンディング工程では、作業員ごとに集塵機を稼働させ、耳栓と防護ゴーグル、手袋の着用を徹底させているほか、特殊工程を担当する従業員には、健康診断の際に追加受診項目を設け安全衛生を図っている。
(6)徹底した情報セキュリティ環境
ソフテックは、大手企業と取引をするにあたり情報セキュリティを徹底している。メールの送受信に関するソフトやデータの書き込みを防ぐセキュリティなどでウイルスの侵入を防止するほか、万が一、侵入があった場合でもデータが漏洩しない仕組みを導入している。データの保全面でも、一部のデータをサーバーを独立させることで機密性を確保し、多重のミラーリングを行うことで完全性を高めている。サーバールームには権限を有する者しか入室が出来ないようになっており、入室記録が残る物理的なセキュリティも整備している。また、協力企業などと情報流出に関する情報交換を行い、事例の共有もしている。
2-3 経済面での活動
(1)想いをカタチにするモノづくり
大手自動車メーカーからの要望をカタチにできる技術力を有しており、難易度の高いデザインについても対応できる設計開発体制が整っている。真空成形の分野で強みがあり、なかでも車体の下部分に取り付けるスポイラーの設計を得意とし、デザイン性が高いフロントスポイラーでもハイクラスモデルの車種まで手掛けている。
ソフテックは、デザイン案の段階から開発設計に携わり、製造方法や素材、生産体制、法規など、蓄積してきた開発能力を存分に発揮し、深く検討して提案を行っている。たとえば、具現化が難しい デザイン案では実現可能な代替案を提示し、強度に課題があるデザイン案では材質や製造方法を提示している。この提案が取引先の納得性を高め、満足のいく製品の実現を可能とし信頼を勝ち得ている。
(2)品質へのこだわり
「お客さまに安心していただける品質管理」を指針として、常に品質の向上を目指している。製品の企画段階から、ノウハウや蓄積された技術をもとに、不良率が低くなる加工を用いた設計をすることで、品質向上に資する作り込みをしているほか、提示された最低限の基準を満たすのみの守りの品質管理ではなく、要求されるよりも厳しい基準を設けた攻めの品質管理を行うことで妥協を許さない体制を敷いている。
ソフテックは高い品質を確保するうえで、コストと製造方法、納期は不可分であるとして、技術者だけでなく、営業担当者や品質管理者などが一体となり案件に関わる仕組みづくりが構築されている。月 1 回以上開催される部課⾧会議では、部署を横断した意見交換がなされ、現場での些細な意見や、部署間の調整で改善が必要な案件などの解決がこまめに図られ、連携が取りやすい風土が醸成されている。
また、社⾧への相談や改善提案などは常に門戸が開かれているほか、製造会議などの会議が別途設けられており、意思疎通は十分に行われている。
品質方針
◦「かかわるすべての人が笑顔になれる会社を目指す」をモットーにお客様の満足を得る製品作りを基本とする
◦常にコンプライアンスの順守とサービス、品質向上に努め、お客様に安心・安全・感動を与え、信用、信頼を得ることを目指します
行動指針
◦品質は製品企画段階で造りこみ
◦目指すは常に品質向上
◦守りの品質管理ではなく、攻めの品質管理の実践
◦お客様に安心していただける品質管理
◦お客様だけでなく、かかわるすべての人が笑顔になれる製品作り
(3)サプライチェーンにおける役割
主力製品であるカスタムパーツは、自動車に必ずしもなくてはならない部品ではないが、製品のさらなる高付加価値化や購入者の満足度向上に大きく寄与する製品である。完成車メーカーはモデルチェンジや新車種の投入などで、顧客の購買意欲を刺激する販売戦略をとる一方で、消費者ニーズに応えるには限りがある。車種以外の選択肢としてオプションを揃えることで、カスタマイズの選択肢の幅を広げさらなる購買意欲向上につなげている。特に人気車種では、売上が伸びるとともに購入を検討しているエンドユーザーにおいては、他のユーザーとの差別化を意識するようになる。ソフテックの作る製品は純正品のオプションにまで及ぶため、新規購入者の差別化の選択肢を広げ、売上拡大に寄与しており、完成車メーカーのサプライチェーンとしても大きな役割を果たしている。
(4)地域企業と連携したモノづくり
ソフテックより半径 15km 圏内に協力企業を多く持ち、多品種小ロットから量産まで対応できる、顧客ニーズに応じた生産体制を実現している。地域企業の技術力維持のため、自社の製造能力がフル稼働していない状態でも協力を依頼し、ある程度の金額までは営業担当が判断を行えるよう権限移譲を進めることで、コスト面との両立を図っている。
これらの取組みは、短納期での開発という強みにも繋がっており、企画立ち上げから納品まで、通常1年以上かかる開発期間を平均8カ月で対応している。受注段階から提案を行い、開発・設計に関与することで技術者の理解が進んだ状態であるほか、経営層と現場社員間の風通しが良く、大規模企業では難しい柔軟な経営判断を早く行えることが短納期開発を可能としている。さらに、自社内で試作品を作り、測定・検査まで行える設備を有している。
また、こうした多くの協力企業を有しているため、ソフテックはプラスチック製品の加工において一次加工を専門に、塗装やめっきなどの二次加工については委託する体制を敷き、ネットワーク全体で高い品質の継続を実現している。
3. 包括的分析
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いて、同社のプラスチック製品製造事業を中心に、網羅的なインパクト分析を実施した。分析の結果、ポジティブ・インパクトとして「雇用」、「包括的で健全な経済」が、ネガティブ・インパクトとして「健康・衛生」、「雇用」、「水(質)」、「大気」、「土壌」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」が抽出された。
3-2 個別要因を加味したインパクト領域の特定
ソフテックの個別要因を加味して、同社のインパクト領域を特定した。その結果、製造工程において工業用水を使用していないこと、土壌汚染の要因となる有害物質を排出していないことから、ネガティブ・インパクトのうち「水(質)」、「土壌」は削除した。一方で、同社のサステナビリティ活動に関連のあるポジティブ・インパクトとして「健康・衛生」、「教育」、「エネルギー」、「経済収束」を、ネガティブ・インパクトとして「情報」を追加した。
【特定されたインパクト領域】
UNEP FI のインパクト分析ツールにより抽出されたインパクト領域 | |||
ポジティブ | ネガティブ | ||
入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 (一連の固有の特徴がニーズを満たす程度) | |||
水 | |||
食糧 | |||
住居 | |||
健康・衛生 | |||
教育 | |||
雇用 | |||
エネルギー | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
文化・伝統 | |||
人格と人の安全保障 | |||
正義 | |||
強固な制度・平和・安定 | |||
質(物理的・化学的構成・性質)の有効利用 | |||
水 | |||
大気 | |||
土壌 | |||
生物多様性と生態系サービス | |||
資源効率・安全性 | |||
気候 | |||
廃棄物 | |||
人と社会のための経済的価値創造 | |||
包括的で健全な経済 | |||
経済収束 |
個別要因を加味し 特定されたインパクト領域 | |
ポジティブ | ネガティブ |
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性
ソフテックのサステナビリティ活動のうち、ポジティブ面のインパクト領域としては、再生可能エネルギ ーの積極的な利用推進は「エネルギー」に該当するとともに、中途採用により高い技術力を有した人材を積極的に取り込むことで若手社員の成⾧を促進したり、新卒社員の採用を再開することや、多様な人材が活躍できる労働環境の整備は「雇用」や「教育」、「包括的で健全な経済」に関する取組みと評価される。また、充実した福利厚生制度を備えていることは「健康・衛生」や「雇用」に該当するほか、難度の高い依頼に応え高付加価値の製品製造に寄与する事業や地域企業との連携、高い品質へのこだわりによる取引の継続性確保は「経済収束」に資する取組みと評価される。
一方、ネガティブ面においては、CO2 排出量削減のために省エネ性能の高い機械への切り替えは
「気候」への貢献が認められるほか、多様な塗装レスパーツの製造品目を有し、塗装工程による大気汚染を削減していることは「大気」に該当する。また、廃棄物を可能な限りリサイクルし、削減に向けて取り組んでいる点が「資源効❹・安全性」や「廃棄物」に資する取組みと評価される。加えて、工場内の高い安全衛生基準は「健康・衛生」や「雇用」に該当する。さらに、徹底した情報管理体制が「情報」に資する取組みと評価される。
3-4 インパクト領域の特定方法
UNEP FI のインパクト評価ツールを用いたインパクト分析結果を参考に、ソフテックのサステナビリティに関する活動を同社の HP、提供資料、ヒアリング等から網羅的に分析するとともに、同社を取り巻く外部環境や地域特性等を勘案し、同社が環境・社会・経済に対して最も強いインパクトを与える活動について検討した。そして、同社の活動が、対象とするエリアやサプライチェーンにおける環境・社会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に最も貢献すべき活動を、インパクト領域として特定した。
4. KPI の設定
特定されたインパクト領域のうち、環境・社会・経済に対して一定のインパクトが想定され、ソフテックの経営の持続可能性を高める項目について、以下の通り KPI を設定した。
4-1 環境面
インパクトレーダーとの関連性 | 気候 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | CO2 排出量の削減 |
取組内容 | 省エネ性能の高い設備に更新することで CO2 排出量削減を 図る。 |
SDGs との関連性 | 13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適 応の能力を強化する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2022 年内に、社内の GHG 排出量管理体制を整備する。 ② GHG 排出量を 2023 年に 21 年比 15%削減、25 年 に 21 年比 20%削減する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 資源効率・安全性、廃棄物 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 廃棄物の削減 |
取組内容 | プラスチック端材のリサイクル促進や廃棄物となるプラスチック素材の削減。協力会社との知見共有や連携による不良率削 減。 |
SDGs との関連性 | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生 を大幅に削減する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2023 年までに、不良品発生による損失額の算出方法を見直し、27 年までに、“不良品額率”を 23 年比 30%削 減する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 大気 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 塗装レスパーツの製造 |
取組内容 | 塗装レス製品の技術開発を促進、取扱い品目を増やす。 |
SDGs との関連性 | 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土 壌への放出を大幅に削減する。 |
KPI(指標と目標) | ① 2030 年までに、塗装レス製品を現在の2品目から 20 品目増やす。 |
4-2 社会面
インパクトレーダーとの関連性 | 教育、雇用、包括的で健全な経済 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 雇用の拡大 |
取組内容 | 新卒社員の採用再開。従業員を増加させるとともに、若手人材に対して社会人教育や技能訓練を施し、技能伝承を図る。 |
SDGs との関連性 | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減ら す。 |
KPI(指標と目標) | ① 毎年、新卒社員を2名以上採用する。 ② 2027 年までに、従業員数を現状の 58 名から 80 名以上に増やし、開発設計を行えるコア人材についても現状の 6名から9名まで増加させる。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 情報 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 情報セキュリティの徹底 |
取組内容 | 最新の情報管理リスクを早期に把握し、対策を施している。 |
SDGs との関連性 | 9.1 全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なイ ンフラを開発する。 |
KPI(指標と目標) | ① 自社が要因となる情報漏えい発生ゼロを維持する。 |
4-3 経済面
インパクトレーダーとの関連性 | 経済収束 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 想いをカタチにするモノづくり |
取組内容 | 大手メーカーへの提案、大手メーカーからの依頼を通じ、難度の高い開発設計に寄与。高付加価値の製品製造を行う。 |
SDGs との関連性 | 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済 生産性を達成する。 |
KPI(指標と目標) | ① 年間およそ 10 件獲得している自社設計の案件数を 2025 年までに年間 15 件まで増やす。 |
5. 地域経済に与える波及効果の測定
ソフテックは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、5年後の売上高を 30 億円に、従業員数を 80 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、ソフテックは、静岡県経済全体に年間 45 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
6. マネジメント体制
ソフテックでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、前嶋俊映 代表取締役社⾧が中心となって、社内制度や計画、日々の業務、諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、前嶋社⾧ が責任者として陣頭指揮を執り、日々の活動においては部署を横断して構成された SDGs委員会とともに行っていく。また、現状や将来的な方向性、設定した KPI の背景などについて、朝礼や定例会の機会を利用して全従業員との共有を図り、KPI 達成に向けて全員が一丸となって実行していく。
責任者 | 代表取締役社⾧ 前嶋 俊映 |
委員会 | SDGs委員会 |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とソフテックの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認す る。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行とソフテックが協議の上、再設定を検討する。
以 上
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するソフテックから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 研究員 後藤 裕大
〒420-0853
静岡市葵区追手町 1-13 アゴラ静岡 5 階 TEL:054-250-8750 FAX:054-250-8770
第三者意見書
2022 年 6 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社ソフテックに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社ソフテック(「ソフテック」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、ソフテックの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、ソフテックがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しなが
ら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるソフテックから貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
梶原 敦子 川越 広志
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026