静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、常盤工業㈱(社長 市川浩透)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2021.8.31
xx工業㈱と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、xx工業㈱(社長 xxxx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 8 月 31 日(火)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 設備資金
4.xx工業㈱の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、「地域に愛され社員が誇れる会社」を目指す企業像に掲げ、環境保全に配慮した建築・土木事業を展開するとともに、健康経営やワーク・ライフ・バランスに対する高い意識をもち、働き方改革にも 積極的に取り組まれています。
〇今回、同社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
社会 面 | ・従業員の働きがい醸成(労働環境の整備・改善、女性活躍の推進、人材育成を通じたモチベーションxxx) ・地域に開かれた会社(地域の清掃活動や防災活動への積極的な参画、小中高生向けの SDGs 啓発活動の展開等) ・女性や子供に優しい会社(市民団体やボランティア団体との連携による健康 で文化的な生活の促進) |
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経済面 | ・地域のインフラニーズに対応(メンテナンスしやすくライフサイクルコストを低減した設計・施工) | |
環 境面 | ・ZEB、ZEH などの普及促進(先導的な自然環境配慮型モデルオフィスとして新社屋建設等) ・環境保全に資する工法の採用(地球環境や廃棄物削減等に工法で寄与等) ・環境負荷低減(エコアクション活動の推進、資源の有効活用に資する建物再生事業に注力) |
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5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定したKPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】xx工業㈱の概要
所在地 | xxxxxxxxxxx 000 | 設 立 | 1951 年(昭和 26 年)3 月 |
資 本 金 | 60 百万円 | 売 上 高 | 4,535 百万円(2020 年 9 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2021 年8月 31 日
一般財団法人 静岡経済研究所
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 xx工業株式会社(以下、xx工業) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、xx工業の企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
(企業概要、経営方針と事業活動)
xx工業は老舗の総合建設業者である。左官業を祖業としており、建築事業を中心に土木事業、住宅事業、CS 建物再生事業など、浜松地域を中心とした幅広い建設ニーズに対応している。取引先は民間企業や個人が多く、なかでも、工場や倉庫、オフィスビルなどの事業系建築物や保育施設などの施工実績を多く持ち、長期利用を想定した、メンテナンスしやすくライフサイクルコストを低減した設計・施工の提案に強みがある。また、浜松市をメインに地方自治体との取引も堅調で、公共インフラの構築・整備においても、優良工事表彰を受けるなど高い評価を得てい る。建設業界の課題として挙げられる環境保全や働き方改革、社会資本の老朽化などに対応 するとともに、地域に開かれた会社を目指して行政や NPO 法人等と連携しながら草の根的な活動も積極的に展開している。
(インパクトの特定)
ポジティブなインパクトが期待できる活動として、環境面において、新本社屋の建設に際して先導的な自然環境配慮型モデルオフィス(サステナブル建築物)とし、取り入れた技術を ZEB プランナーとして地域内や首都圏等に普及させていくことや、環境保全に資する工法の採用、ZEHなど環境配慮型住宅の普及促進などが挙げられる。
社会面では、労働環境の整備・改善、女性が生き生きと働ける職場づくり、人材育成によるモチベーション向上、ボランティア休暇の制度化などが、「従業員の働きがい醸成」につながっている。また、地域環境・地域防災への貢献や、次世代を担う地域の子供たちへの学びの場の提供、あるいは新本社屋を地域住民との接点の場として活用することなどは、「地域に開かれた会社」として評価できるほか、女性や子供の健康や文化的な生活、健全な成長への支援活動は、「女性や子供に優しい会社」としてのインパクトを有する。加えて、xxにわたって、道路・鉄道や上下水道など「地域のインフラニーズを支え」、地域経済の成長に寄与してきたことは、地域にポジティブなインパクトを与えている。
一方で、CO2 排出量の削減やコンプライアンスの徹底に取り組む「エコアクション活動の推進」や、ストックビジネスによる資源の有効活用に資する「建物再生事業に注力」している点、あるい
は組織的に安全衛生体制を構築し、「安全施工の徹底」により創業以来死亡災害ゼロを維持していることは、ネガティブ・インパクトの抑制となる。
(インパクトレーダーとの関連性)
特定されたインパクトを UNEP FI が掲げるインパクトレーダーに当てはめると、先導的な自然環境配慮型モデルオフィス(サステナブル建築物)の建築や、ZEB プランナーとして地域内や首都圏等への普及活動、あるいは環境保全に資する工法の採用、ZEH など環境配慮型住宅の普及促進は、「気候変動」や「エネルギー」に関するポジティブなインパクトが想定される。また、労働環境の整備・改善など従業員の働きがい醸成は、「雇用」や「人格と人の安全保障」に該当するほか、地域住民の生活環境の向上や子供たちの成長に資する活動は、「住宅」や「教育」への寄与が認められる。そして、女性や子供の健康や文化的な生活、健全な成長に資する取組み は、「健康と衛生」、「教育」、「文化・伝統」に該当する。さらに、xxにわたって道路・鉄道や上下水道など地域のインフラニーズを支え、地域経済の成長に寄与してきたことは、「移動手段」や
「水」に貢献している。
一方で、CO2 排出量の削減やコンプライアンスの徹底に取り組むエコアクション活動の推進 は、「大気」、「水」、「土壌」、「生物多様性と生態系サービス」、「気候変動」、「廃棄物」などに幅広く該当するほか、建物再生事業に注力している点は、「資源効率・資源安全確保」や「廃棄物」に対するネガティブ・インパクトの抑制となる。また、安全施工の徹底により創業以来死亡災害ゼロを維持していることは「雇用」に該当する。
(SDGs との関連性)
環境面では、先導的な自然環境配慮型モデルオフィス(サステナブル建築物)の建築や、 ZEB プランナーとして地域内や首都圏等への普及活動、あるいは環境保全に資する工法の採用、ZEH など環境配慮型住宅の普及促進は、「ターゲット 7.2」、「ターゲット 13.3」に対するポジティブなインパクトが想定される。一方で、CO2 排出量の削減やコンプライアンスの徹底に取り組むエコアクション活動の推進や、建物再生事業に注力している点は「ターゲット 11.6」、「ターゲット 12.2」に対するネガティブなインパクトを抑制している。
社会面では、労働環境の整備・改善、女性が生き生きと働ける職場づくり、人材育成によるモチベーション向上、ボランティア休暇の制度化など従業員の働きがい醸成は、「ターゲット 8.5」に 資するものである。また、地域環境・地域防災への貢献や、次世代を担う地域の子供たちへの学びの場の提供、新本社屋を地域住民との接点の場として活用するなど地域に開かれた会社であることは、「ターゲット 11.7」や「ターゲット 4.7」に関するポジティブなインパクトが想定される。そし て、女性や子供に優しい会社を標榜し、実践していることは、女性や子供の健康や文化的な生活、健全な成長に資する取組みであり、「ターゲット 3.1」、「ターゲット 4.5」、「ターゲット 5.1」に該当する。さらに、組織的に安全衛生体制を構築し、安全施工の徹底により創業以来死亡災害ゼロを維持していることは「ターゲット 8.8」に対するネガティブ・インパクトの低減となる。
経済面では、xxにわたって地域のインフラニーズに対応し、地域経済成長に寄与してきたことは、「ターゲット 9.1」に貢献している。
(地域課題との関連性)
xx工業が取り組む環境保全活動は、浜松市の「第2次浜松市環境基本計画 改定版」で主要施策とする、大気汚染対策や水質保全対策、産業廃棄物対策、再生可能エネルギーなどの導入に貢献するとともに、静岡県が「改定版 第3次静岡県環境基本計画」で掲げる自 然環境や生活環境、地球環境等の保全に資するものであり、県内自治体が目指す行政と事業者が一体となった環境保全の取組みを実践している。
また、静岡県は、建設産業における新4K(給料・休暇・希望・きれい)の実現と夢や誇りのもてる魅力ある産業への転換を目指すことを目的に、「ふじのくに建設産業働き方改革推進宣 言」を発表しているが、xx工業もこの宣言に賛同・実行している。
さらに、県内自治体は SDGs を積極的に推進しているが、なかでも浜松市は「SDGs xx都市」に選定され、「浜松市 SDGs 推進プラットフォーム」を立ち上げて、会員同士の交流や情報 交換などパートナーシップを促進する場としての土台を構築している。xx工業もこのプラットフォームの会員であり、自社の取組みを発表するなど他の企業のロールモデルとなっている。
(KPI の設定とマネジメント体制)
特定したインパクト(環境面、社会面、経済面)ごとに、KPI(指標と目標)を設定する。 推進体制としては、xxxx社長(以下、xx社長)が統括責任者となり、SDGs 担当者が実務レベルで社内調整を行いながら、KPI の達成に向けた「SDGs 推進委員会」を新たに設置 し、推進体制を構築していく。こうした推進委員会で議論された内容は、全社員が集う半年に1回の社員総会、月に1回の朝礼や教育訓練日を利用するほか、SDGs ワークショップなどを開催することで、全社員に周知・浸透させていく。また、県や市などの自治体、地元自治会、学校、金融機関、市民団体、ボランティアサークルなど、多くの関係者とこれまで以上に連携を図ることでネットワークを広げていく。
(モニタリング)
KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行とxx工業の担当者が、少なくとも年に 1回の会合の場を設け、共有する。静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2021 年 8 月 31 日~2026 年 8 月 31 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 設備資金 |
モニタリング期間 | 5 年 0 ヵ月 |
企業概要
企業名 | xx工業株式会社 |
所在地 | xxxxxxxxxxx 000 |
住宅展示場 | xx展示場(浜松市東区和田町) |
従業員数 | 93 人 |
資本金 | 60 百万円 |
業種 | 総合建設業 |
事業の内容 | 建築事業 51%土木事業 18% CS 建物再生事業 16% 住宅事業 15% |
官民工事割合 | 民間工事7割 公共工事3割 |
沿革 | 1926 年 個人事業として左官業を創業 1951 年 xx工業株式会社を設立 2000 年 ISO9001 認証取得 2012 年 エコアクション 21 認定取得 2013 年 男女共同社会づくり 宣言事業所 登録 浜松市 新エネ・省エネ対策トップランナー 認定取得 2016 年 静岡県次世代育成支援事業 認証取得 2017 年 浜松市ワーク・ライフ・バランス等推進事業所 認証取得 2018 年 浜松市エコドライブ実践事業所 認定取得 2019 年 健康経営優良法人 2019 認定取得 浜松市エコドライブ優良事業所 認定取得 2021 年 新本社屋建設(11 月竣工予定) |
(2021 年 8 月 31 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および強み
【浜松を代表する老舗の総合建設業】
xx工業は、1926 年創業の老舗の総合建設業者である。左官業を祖業としており、売上構成の半分を建築事業が占めているが、そのほかにも、公共工事を中心とする土木事業や、個人向けの住宅事業、ストックビジネスとしての CS 建物再生事業など、浜松地域を中心とした幅広い建設ニーズに対応している。
建築工事を得意としているため、取引先は民間企業や個人が多く、官民割合は 7 対 3 と民間工事が多い。なかでも、工場や倉庫、オフィスビルなどの事業系建築物や保育施設などの施工実績を多く持ち、長期利用を想定した、メンテナンスしやすくライフサイクルコストを低減した設計・施工の提案に強みがある。また、浜松市をメインに地方自治体との取引も堅調で、公共インフラの構築・整備においても優良工事表彰を受けるなど高い評価を得ている。さらに、建設業許可に加えて、一級建築士事務所や宅地建物取引業の認可を得て、土地探しから企画立案、設計・施工、アフターメンテナンスまでの一貫サービスを実現しており、顧客とは長期的なリレーションを構築している。これまでに、地域を代表する企業の工場、店舗や、保育園、学校等の新築・改修・耐震補強工事のほか、土木工事では、浜松環状線などの道路改良や鉄道の高架化工事、大規模用水路の改修工事など、地域のインフラ整備に大きく貢献している。
近年では、国が推進する「i-Construction※2」などの取組みに呼応する形で、xx工業においても BIM※3を活用しており、ICT 化の促進および生産性の向上に努めているほか、VE※4の考え方を取り入れ、単なる価格合わせでなく、顧客一人ひとりに見合った機能とコストを踏まえて、「お客様価値」の最大化を目指している。
建築事業xxxノ宮保育園新築工事
遠州鉄道鉄道線鉄道高架工事連続立体交差事業
※2 「ICT の全面的な活用(ICT 土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取組み。
※3 「Building Information Modeling」の略称で、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、xxの名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築すること。
※4 製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、 システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法。
2. 業界・取引先からの要望・ニーズ
【業界全体で環境保全意識を高める】
建設業界の全国的組織である一般社団法人日本建設業連合会(日建連)では、2021年4月、「建設業の環境自主行動計画 第 7 版」を策定し、テーマとして「環境経営および個別3テーマ(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現に向け、業界内外のステークホルダーとの連携が必要な横断的な取組みを検討し、実施体制を構築する」を掲げた。住みよい社会の構築を担う建設業界は、一方で多くの原材料やエネルギーを使い、時には自然環 境に害をなすこともあり得るだけに、業界全体で環境保全意識を高めている。
xx工業では、エコアクション活動に積極的に取り組み、自社で排出する二酸化炭素や廃棄物の抑制に努めるとともに、建物再生事業への注力や省エネ効果の高い住宅の普及促進、新本社屋をモデルとした ZEB やサステナブル建築物の横展開などを通じて、こうした業界の方向性に沿った事業活動を実践している。
【働き方改革の推進】
建設業界の大きな課題として、労働環境の整備が挙げられる。日建連でも 2020 年9月に、業界の課題として「長時間労働」、「高年齢化」、「少ない休日」を示し、建設業界の働き方改革として「長時間労働の是正」、「建設現場の週休2日」、「適正な工期の設定」の三位一体の活動を推進している。日建連発行の「建設業ハンドブック 2020」によると、建設業就業者は 55 歳以上が約 35%、29 歳以下が約 12%と他産業に比べて高齢化が著しい。また、建設業の労働時間は他産業よりも長く、2019 年調査では調査産業計に比べて約 300 時間増の長時間労働となっているほか、年間出勤日数は調査産業計に比べて 30 日間多く、建設現場において週休2日が定着していないことが要因と指摘している。
こうした中、xx工業では、原則週休2日としており、月に1度の土曜出勤日も清掃活動や教育訓練に充てているほか、育児・介護休暇やボランティア休暇などの休暇制度も充実させ ている。また、工事現場や事務所の作業環境改善に取り組みつつ、中高校生の職場体験を受け入れたり、国・自治体から CSR や健康経営、ワーク・ライフ・バランス等の認定を取得するな ど、業界のイメージアップに貢献している。
【社会資本の老朽化問題】
高度成長期以降に整備された道路や橋、トンネルなどの公共インフラは、今後 20 年で建設後 50 年以上経過する割合が加速度的に高まり、こうした施設の維持管理・更新費は、不具合が発生する前に修繕等の対応をする「予防保全」の考え方を基に試算した場合、2048 年度に約 5.9 兆円~6.5 兆円と推計されている。ただし、不具合が生じた後に修繕する「事後 保全」の考え方では 10.9 兆円~12.3 兆円と大きなコスト高となってしまい、予防保全の必要性が指摘されている。こうした考え方は民間建築物にも当てはまり、xx工業の CS 建物再生事業はこうした社会的ニーズに即した事業といえる。
3. 経営方針と事業活動
【経営理念と社員の拠りどころ】
xx工業は、目指す企業像としてのビジョンに「地域に愛され 社員が誇れる会社を目指す」を掲げる。つまり、「利他」の積み重ねにより、地域から愛され尊敬される存在となり、顧客が溢れるようになる。そして、そのことが「自利」につながり、従業員が各人の人生を懸けるにふさわしい職場環境が整備され、xx工業の一員であることが誇りに思えるようになる。そうした魅力的で立派な会社を目指すとしている。ここで挙げられる「自利 利他」は、同社の大方針である社是として定めている。
また、「顧客満足」、「永続的発展と雇用の創出・維持」、「地域社会への貢献」、「共存共 栄」、「業界地位の向上」の5つを会社が果たすべきミッションとしている。常に顧客目線で心を込めた“いい仕事”を提供するとともに、事業を通じて利益を上げ、安定的な事業活動を継続する。そして、自社のことだけでなく、地域社会への貢献やパートナー企業との緊張感と信頼感のある関係の維持、さらには建設・不動産業のイメージを変える存在になることで、業界地位の向上に寄与するとしている。
さらには、こうした会社の方針を実現するために、従業員が守るべき3つの指針として、創業の精神である「和」、「情熱」、「自己変革」を社訓としているほか、31 カ条からなる「TOKIWA PHILOSOPHY」を制定している。この「TOKIWA PHILOSOPHY」は、たとえば「1.人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」や、「6.土俵の真ん中で相撲をとる」、「28.試練を歓迎する」など、従業員が業務を遂行する上で常に基軸となるべき行動指針を示しており、従業員間で異なる意見を調整する際や、判断に迷う際の拠りどころとして、一人ひとりに確実に浸透している。
【安全な施工体制の確立】
xx工業では、事故のない安全な施工を第一に考えている。全社的に安全衛生面を統括する「安全管理者」と「衛生管理者」をそれぞれ任命しているほか、事業部ごとに「安全衛生管理 者」を配置するなど組織的に体制を整備し、全社員に浸透させている。毎年度「安全衛生年間計画書」を作成し、安全衛生水準の向上や法令の遵守、安全衛生教育の徹底などを掲げた
「安全衛生基本方針」の下、「安全衛生管理目標」や「安全衛生活動」など、実際の目標や活動に落とし込み、毎月の実施事項として担当者が中心となって取り組んでいる。
たとえば、「安全衛生委員会」は、委員長が担当となり毎月開催、毎年6月には協力企業も参加する「協力会総会」や「安全大会」も開催している。また、「安全衛生パトロール」は、安全衛生委員会が担当となって毎月実施し、現場の指導や支援に当たっている。特に夏場は「熱中症予防月間」として注意喚起を徹底するほか、年末年始は「無災害運動」を展開、こうした運動は業界団体や行政等とも連携しながら実施している。さらに、総務担当では毎月、長時間労働の是正のための「時間外勤務調査」や安全衛生に関する各種講習会を行っている。
こうした組織的な活動が奏功し、xx工業では創業以来 95 年間、「死亡災害ゼロ」を継続している。
【品質管理の徹底】
xx工業では、社内で策定した「施工管理規定」に則って、工事ごとに施工プロセスを管理、監視、改善することで、品質の向上に努めてきた。同規定では、工事ごとに責任と権限を明確にし、実施事項として、施工プロジェクトの発足、施工プロジェクトのインプット、工事着工前検討会議の開催などを定めている。また、「施工計画書」を作成し、工事の進行に応じて適宜更新するとともに、適切な段階で検査・試験の実施も求めている。
同規定では、不適合品の管理について責任者や管理手順を定め、組織としての処置方法を明確にしているほか、付帯サービスや品質記録の管理など、施工後の顧客対応やデータ保存についても適切な対応をとっている。なお、工事完成リポートを工事完成後2カ月以内に作成し、事業部会や工事反省会にて発表することで、社内の共有化、経験・ノウハウの継承に努めている。
【環境配慮への取組み】
①エコアクション活動の推進
xx工業では、2012 年に「エコアクション 21」を認定取得し、本格的に環境経営をスタートさせた。xx社長を代表者とし、総務本部に事務局を置いて、全組織・全活動を対象として進めている。具体的な環境経営計画としては、二酸化炭素総排出量の削減といった「目的」ごとに、消灯の徹底や高効率照明機器の導入などの「取組内容」を明確にし、それぞれの取組内容ごとに「責任者・担当者」と、「活動時期」を設定することで、誰が、いつ、どのように実施するかを見える化している。
直近の「環境経営レポート 2020」では、事務所と建設現場それぞれに、二酸化炭素総排出量や電力使用量、ガソリン使用量などの環境経営目標を設定し、実績について4段階で自己評価している。全 12 項目のうち、目標に対する達成率 110%超が 7 項目、100~110%が 3 項目、90~100%未満が 2 項目、90%未満が 0 項目となったが、全項目について数値上の評価をするだけでなく、未達の場合はその要因分析をしっかりと行い、対策を講じるとともに、当活動の代表者であるxx社長が全体に対する総括を行うことで、PDCA を回して実効性を高めている。
このエコアクション活動を進める中で、二酸化炭素総排出量の削減(照明、空調など電力使用量および乗用車、トラック、重機などのガソリン、軽油使用量の削減など)や、廃棄物のリサイクル(事務所におけるペーパーレス化や建設現場における建設副産物のリサイクルなど)、節水
(事務所および建設現場における節水の徹底や節水トイレの導入など)、グリーン購入等の資材購入(環境ラベル対応品の購入や建設資材の返品率減少など)、環境配慮(特定工事での施工計画への反映や環境配慮工事の提案など)といった地球環境の保全につながる実績を上げている。
また、環境関連法規等の遵守も、エコアクション活動を通じて徹底している。「建設リサイクル法」や「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、「騒音規制法」、「大気汚染防止法」など、建
設業として遵守すべき法規・条例・規制等を列挙し、それぞれについて実施事項と遵守状況、評価結果について確認することで、コンプライアンスに関しては網羅的に対応している。こうした活動を通じて、大気や土壌、水質等の地球環境のみならず、騒音や振動など地域住民の生活環 境、生態系の維持や文化財の保護など、全方位的に法令を遵守した事業活動を徹底してお り、違反、訴訟等はない。
②環境保全に資する工法
xx工業ではこれまでに、さまざまな工法を採用することで、地球環境の変化への対応や廃棄物の削減・資源効率向上に貢献してきた。
たとえば、老朽化した水路や上下水道の改修工事において、既設の管渠を効率的に更生させる「ダンビー工法」を採用。同工法は、既設の管渠内面に硬質塩化ビニル樹脂製の帯板をスパイラル状に巻き立て、それらをかん合させることで連続した管体を形成。新たに作った管体と既設管渠との隙間に充填剤を注入することで、既設管渠と更生部材とが一体となった更生管となり、高い強度と水密性、また優れた耐震性を発揮するものである。直近の農業用水工事では、直径 1,500 ㎜、延長約 130m の管再生工事を、省資源、短期間、低コストで施工した。
また、近年、台風や長雨によって河川の氾濫や都市部における水害が深刻化しており、雨水流出抑制の必要性が高まっている。xx工業では、倉庫や保育園の新築に伴う造成工事において、「プラスチック製雨水貯留浸透槽」を活用し、集中豪雨時に地中に雨水を一時的に貯留することで浸水被害緩和に貢献している。
さらに、建物の建築において最も重要となる地盤については、近年、地震や液状化等への対 策が求められているが、xx工業では天然砕石パイル工法「HySPEED 工法」を採用することで地震時の衝撃に強く、液状化を抑制する地盤改良工事を実施している。同工法は、硬化剤を一切使用せず天然の砕石しか使わないため土壌汚染や住む人の健康被害等の心配もなく、産業廃棄物として扱われないため将来的な産廃費用が発生せず、他の工法に比べて CO2 排出が少ないなど、環境や健康、コスト面に優れた工法である。xx工業では、保育園や住宅等での施工実績がある。
③ストックビジネスによる資源の有効活用
既存の建物の再生を担う「CS・建物再生部」を 2007 年に設置し、老朽化した建物の補強工事や改修・リノベーション工事など、建物をより強く、きれいに、使いやすく再生する事業を行っている。学校や保育園、オフィスビル、倉庫などの耐震補強や外装塗装、屋上防水改修など、建物種類にも工事ニーズにも幅広く対応しており、年間受注件数は 400 件超に上る。
こうした再生工事によって、解体に伴う廃棄物の排出や使用資源・エネルギーの抑制につながり、地球環境の負荷低減に貢献している。xx工業では、新築受注にこだわることなく、長期的な視点に立って建築インフラを見ることで、地球環境に配慮しつつ建設ニーズに対応している。
➃環境配慮型住宅の普及促進
住宅事業部で展開する個人向け住宅「トキノハウス」は、長期優良住宅かつ耐震等級3を標準仕様としている。環境に優しい ZEH※5を商品として加え、普及に努めているほか、顧客の住まい方や要望に合わせて、コンパクトで快適に暮らせる設計を行うとともに、電力使用量を見える化する HEMS※6や、電気をクリーンにつくるxxx発電による創エネなども提案し、エネルギーを上手に使う経済的な環境配慮型住宅を提案している。
※5 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅。
※6 Home Energy Management Service の頭文字をとったもの。家庭内で電気を使用している 機器について、一定期間の使用量や稼働状況を把握し、電力使用の最適化を図るための仕組み。
⑤環境配慮企業として浜松市から認定
環境負荷低減に努める企業風土や事業活動が評価され、浜松市から環境に優しい企業として認定されている。
1)「浜松市 新エネ・省エネ対策トップランナー」(2012 年度認定取得)
エネルギー使用量の低減に率先的に取り組んだ事業者として「エコ事業所部門」の AAクラスに認定。節電改修工事の実施(空調3台、LED 照明 241 灯)や、節電実績、エコアクション 21 の認証・登録などが評価された。
2)「浜松市 エコドライブ優良事業所」(2018 年度から継続認定)
環境に配慮したエコドライブに継続的に取り組む事業所を認定する当制度に、2018 年度から継続して認定されている。xx工業では、エコアクション活動に取り組む中で、乗用車やトラック、重機などのガソリン、軽油の削減に注力しており、こうした活動の成果として継続的に高い評価を得ている。
こうした環境配慮への取組みを積極的に展開していることは、UNEP FI が建設業者に指摘する環境負荷低減の項目の中で、大気、水、土壌、生物多様性と生態系サービス、資源効率・資源安全保障、気候変動、廃棄物に関する対応が認められる。
【サステナブル建築物のモデルとして新本社を建設】
xx工業では、2021 年 11 月の竣工を目指して新本社屋を建設している。同社敷地内に建設中の新本社屋は、延べ床面積 1,771 ㎡、鉄筋コンクリート造り 2 階建てで、執務環境、地域環境、地球環境にとって先導的となる「環境配慮オフィス」をテーマとしている。
まず、「執務環境」については、従業員の働きやすさを最大限に考慮した作業環境を整える。 ABW※7を取り入れてフリーアドレスとし、業務内容に応じて生産性が最も高まる環境を用意することで、従業員がストレスなく、高いパフォーマンスを維持できる職場とする。
また、「地域環境」としては、1 階部分を中心とした敷地内の一部をxx工業と地域住民との接点を設けるためのオープンスペースとし、地域の情報提供コーナーや、同社主催のセミナー・イベント・展示会等の場として活用する。地域との交流をコンセプトとし、日頃から気軽に立ち寄ってもらう場所にすることで、地域住民との距離を近づけて信頼関係を継続していくことを目的としてい る。その一環として、2021 年 4 月には、地域住民や浜松市市民協働センター職員、同社の社員などによる、新本社屋をテーマとした SDGs ワークショップを開催した。新本社屋建設工事とその後の活用方法を説明した後で、SDGs のゴールを想定したポジティブ、ネガティブそれぞれの影響について考え、意見交換をすることで、理解が深まったという。ワークショップでの意見を基に、工事見学会や地域との防災・交通安全の取組みなどの実施を検討している。
そして、「地球環境」としては、高い日照率や豊富な地下水、豊富な風力といった「浜松の地域特性を生かした自然エネルギーの利用」による省 CO2技術を余すことなく採用し、地産地消型の ZEB を目指している。具体的には、屋上緑化による断熱性の向上、庇による日射遮蔽、 RC 造りによる外断熱等によって、xxの日射遮蔽と冬季の断熱・蓄熱による快適な室内環境を目指す。また、自然光を利用することで、xxx発電による創エネやライトシェルフ、トップライトによる採光も採用している。熱源設備については、太陽熱や井戸水熱を利用するために、xxx集熱パネルや放射パネル、熱交換器などを設置することで、自然熱を利用した空調が可能となる。そして、風の圧力差や温度差による熱対流を利用した自然換気として、バランス式逆流防止自然換気窓なども設置する。
こうした自然の力を活用するさまざまな技術を集めることで、同社では、標準事務建物に比べて CO2 排出量を 62%削減できると試算しているほか、xxx発電によるエネルギー供給も合わせて ZEB 目標を 75%削減とし、Nearly ZEB として BELS 最高ランクの★★★★★の評価を受ける。
この新本社屋建設は、国土交通省の「令和元年度(第2回)サステナブル建築物等先導事業(省 CO2 先導型)」に採択されており、同プロジェクトの趣旨に則って、常盤工業においても、新本社屋をモデル事務所としても活用し、顧客に提案していく方針である。2021 年5月には ZEB プランナーとして登録しており、今後は新本社屋の省エネルギー技術を公表して ZEB の普及を目指していく。また、ZEB やサステナブル建築物の普及活動は、これまでの営業エリアを越えて首都圏なども視野に入れており、企業成長のツールとしても積極的に活用していく方針であ る。
こうしたサステナブル建築物の建設は、UNEP FI が掲げるインパクトレーダーにおいて、特にエネルギーや気候変動など環境面に資するものである。
※7 働く人が仕事の変化に対応するため、仕事内容に応じて働く場所を自ら選ぶことができる働き方。作業をするために、最適な場所を自分で選ぶことができるワークスタイル。
新本社屋の完成イメージ
【従業員の働きがいの醸成】
常盤工業は、経営目的に「全従業員の物心両面の幸福を実現する」を掲げ、従業員が仕事そのものにやりがいを感じ、仕事を楽しむことで充実感を得るとともに、働く環境や福利厚生が快適に整備され、安定かつ満足できる報酬を得ることが、会社の存在理由としている。その目的を達成するために、常盤工業では従業員の働きやすさやモチベーション向上のために、さまざまな配慮をするとともに、そうした活動が数多くの公的認定を受けている。
①労働環境の整備・改善
業種的に屋外での現場作業が多く、厳しい作業環境を強いられるケースも多いため、労働環境の整備や改善にも努めている。夏の作業服としてファンの付いた空調服を支給したり、現場の 休憩室やトイレをきれいで快適なものとしたり、足場などの安全管理も現場監督や安全管理者が必ずチェックすることで徹底している。
また、事務系の作業においても、前述した新本社屋では ABW を取り入れて、仕事に集中しやすい場所、ディスカッションしやすい場所、交流しやすい場所などを設けることで、従業員がモチベーション高く、生産性の上がる職場環境の実現を目指している。
②女性が生き生きと働ける職場づくり
常盤工業では、女性が活躍できる職場づくりを推進し、事務系だけでなく、技術系にも女性社員を配置して、適材適所で能力開発を進めている。現在、現場監督2名、設計担当6名、積算担当1名と、技術系の女性社員は 9 名(全社員の約1割)にまで増えた。前述した職場環境の改善を進めたり、結婚、出産等のライフイベントを経ても働き続けられる制度を整えること で、女性が働きやすい環境整備に努めている。実際に、育児休暇や短時間勤務の制度を最大限に活用したり、職場内の協力を得て子供の夏休み期間中に1カ月程度の休みを取ったりすることで、結婚を機に一度退職した社員が復職して、子育てをしながら働き続けている女性社員もいる。また、指導的立場にある女性も2名おり、女性の登用にも積極的に取り組んでいる。
③人材育成によるモチベーション向上
常盤工業では、従業員の人材育成にも注力している。一級建築士を始め、建設業者にとって必要な建築施工管理技士、土木施工管理技士、舗装施工管理技士、造園施工管理技士、管工事施工管理技士などの資格取得に、積極的にチャレンジする土壌がある。また、顧客の多様な相談・ニーズに対応するため、社会保険労務士や宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランニング技能士、インテリアコーディネーターなどの資格を持つ者もいる。こうした資格取得者には、取得時の一時金や資格手当を支給することでインセンティブを与えたり、社内で称揚することで挑戦意欲を高めている。
さらに、月に1度、土曜日に半日をかけて行う全員参加の「教育訓練日」を設けている。 SDGs や保険運用、情報セキュリティ、ハラスメントなど、外部講師を招聘しながら、人間力を磨くための幅広い講義を実施している。
➃ボランティア休暇
社員一人ひとりが地域コミュニティに貢献できる機会を増やせるようにとの考えから、2019 年4月よりボランティア休暇制度を導入。有給休暇とは別に、年間5日間の特別休暇として制度化 している。当休暇制度を利用してマイクロプラスチック問題を考えるイベントをサポートしたり、障がい者福祉施設の手伝いをするなど、社員にも浸透しつつある。
⑤公的機関の認証も数多く取得
従業員の働きやすさを追求した経営は、国、県、市といった公的機関からも認められている。
1)「健康経営優良法人」(経済産業省、2019 年、2020 年、2021 年)
<常盤工業の健康経営に関する取組み例>
・ワーク・ライフ・バランスの推奨(有給休暇の「ポジティブ・オフ制度」の導入)
・社内コミュニケーション(家族懇親会「常盤会」の開催)
・食生活の改善(ヘルシー弁当の提供)
・運動促進(スポーツジム「エスポ」の法人会員)
・感染予防対策(アルコール消毒・加湿器などの設置)
・受動喫煙対策(屋内禁煙の実施)
2)「静岡県次世代育成支援企業(こうのとりカンパニー)」(静岡県、2019 年)
出産、子育て、介護を理由に退職した従業員の再雇用の実施、配偶者出産休暇(特別休暇制度)、家族懇親会「常盤会」の実施、男女差別のない人事評価制度などが評価されたほか、働き方の見直しや仕事と子育て等の両立を図るための職場環境づくりを推進し、男女がともに活躍できる社会づくりに積極的に取り組んでいる企業として認証された。
3)「浜松市ワーク・ライフ・バランス等推進事業所」(浜松市、2019 年)
従業員の仕事と家庭生活の両立支援のための工夫、男女問わず能力発揮・職域拡大に努めていること、女性の活躍促進に積極的に取り組んでいる事業所として評価を受けた。
4)「浜松市 CSR 活動表彰」(浜松市、2016 年度以降 5 年連続)
ホワイトリボンランへの協賛活動、消防団協力事業所加盟、ボランティア休暇制度の導入、アルミ缶やプルタブ回収活動の実施、会社周辺や神社等の清掃活動など、企業として積極的に CSR 活動を実施していることが評価され、2016 年度以降毎年表彰されるとともに、 2019 年度、2020 年度は優秀賞を受賞。
常盤工業のこうした CSR 活動は他の模範になるとして、「浜松市 SDGs 推進プラットフォーム」で事例発表をしたほか、浜松市市民協働センターが発行した「協働のタネ CSR 取組紹介ハンドブック」等でも紹介されている。
こうした従業員の働きがいの醸成に資する取組みは、UNEP FI が掲げるインパクトレーダーにおいて、雇用や人格と人の安全保障におけるインパクトが期待できる。
【地域に開かれた会社】
学校や福祉施設、道路や橋梁など、地域の公共インフラを長年守ってきた常盤工業は、地域に愛され、地域に溶け込んだ経営を目指している。本社が立地する地元の自治会や浜松市などと連携して、地域住民の安心・安全に寄与したり、地域の子供たちに成長の場を提供するなど、地域の理解を得ながら本業を推進している。
①地域の清掃活動
2001 年から続く地域の清掃活動は、月に1度の土曜出勤日の朝に 30 分間、周辺道路のゴミ拾いや雑草取りなどを実施するほか、年に1度、地元神社の大祭前には、神社や自治会館の清掃と屋根や壁等の修理を行っている。
また、工事現場においても、整理整頓や清掃などの 5S を徹底しているほか、安心・防災面での活動として、周辺の通学路看板の補修やカーブミラーの清掃なども実施している。
②消防団との協定締結
地元の消防団からの依頼に応じる形で、2019 年に災害時や訓練時における発電機等の資機材の無償提供に関する協力事業所として覚書を締結。またその際に、同社社員が2名、自発的に消防団に入団し、団員として活動している。
③小中高生向けの SDGs 講演やキャリア講座の開催、職場体験の受入れ
浜松市教育委員会が事務局となる「はままつ人づくりネットワークセンター」に、「持続可能な社会を考える SDGs 講座」を登録している。SDGs for school 認定エデュケーターの資格を持つ社員が講師となり、浜松市内の小学校で、SDGs の基礎を学ぶワークショップ型の講座を実施しているほか、学童保育や発達支援教室等でも同様の講座を開催している。
また、市内の中学校や工業高校、商業高校の生徒向けのキャリア教育として、出前授業の実施および職場体験やインターンシップ等の受入れを行っている。特に、工業高校の建築科や土木科の生徒に対しては、建築士や施工管理技士など専門知識のある社員が担当し、次代を担う若者の建設分野に関する興味・関心の醸成や、将来のキャリアに対するイメージ作りに貢献している。
このように、地域住民の生活環境を向上させ、次世代を担う子供たちに建設産業を中心とした教育の場を提供していることは、UNEP FI が掲げるインパクトレーダーの「住宅」や「教育」に資する取組みである。
【女性や子供に優しい会社】
常盤工業は、幼稚園、保育園などの建設や改修・修繕工事を数多く手掛けるなど、本業においても女性の活躍や子育て支援に貢献しているが(幼稚園、保育園の累計施工実績 50 件超、園児定員約 6,000 人)、市民団体やボランティア組織と連携することで、以下のような活動にも積極的に関わっている。こうした支援活動に積極的に取り組むことで、女性や子供の視点に立った提案・設計に生かしたり、施設が抱える課題を社員が認識できるようになるなど、本業に還元できている。
①ホワイトリボンラン
公益財団法人ジョイセフが主催する「ホワイトリボンラン」とは、世界の女性がより健康に、自分らしく生きることを支援する運動である。妊産婦死亡のない世界の実現を目指し、国際女性デーに向けて世界各地で同じ大会公式Tシャツを着て走ることで、エントリー費の一部がチャリティーとして、開発途上国の女性の命と健康を守ることができる。
全国各地に拠点があり、常盤工業は、浜松市の拠点を運営している NPO 法人浜松男女共同参画推進協会と連携して、2020 年より参加している。2021 年3月のイベントでは、メイン協賛企業として SNS の投稿による募金活動を企画したり、ラジオに出演して参加を呼び掛けたりしたほか、地元企業にスポンサー参加を呼びかけ、パートナー企業の増加に貢献した。当日は 同社の社員やその家族も 15 名ほど参加し、イベントを盛り上げた。
②チャリティーサンタ
NPO 法人チャリティーサンタが主催する「チャリティーサンタ」は、クリスマスイブの夜にサンタクロースに扮したボランティアが、小さな子どものいる家庭にプレゼントを届ける「サンタ活動」と、さまざまな困難を抱える家庭・子どもに支援を行う「チャリティー活動」を実施している。
常盤工業では、浜松支部の活動に参加しており、運営面の協力として、告知のための募集用映像の制作や、ボランティア説明会のための会場提供、保育園等への告知依頼など、多方面でサポートしている。また、市川社長や社員がサンタやトナカイに扮して家庭を訪問し、子供たちに夢を与えている。
③女子野球チーム「浜松リッターズ」
地元浜松に女子野球チームが存在せず、野球をやりたい女子が中学や高校進学時に県外に活躍の場を求めたり、やむなく他の競技に移っている中、市川社長が発起人となって 2019 年 12 月、小学生、中学生の女子野球チーム「浜松リッターズ」を立ち上げた。常盤工業は、チームの立上げに関わる諸事、練習環境の確保および整備、HP や SNS、掲示板等を活用した連絡および広報活動、活動経費の一部負担などでチームをサポートしている。
同チームは、浜松軟式野球連盟少年部に加盟し、2021 年 10 月には念願の初公式戦として、「第6回全日本中学女子軟式野球代替大会」に出場予定である。
こうした女性や子供の健康や文化的な生活、あるいは健全な成長に資するチャリティー活動 は、同社の企業イメージの向上や、従業員の会社に対するロイヤリティの醸成につながり、長期的視点での企業成長に資する取組みである。また、UNEP FI が掲げるインパクトレーダーにおいては、健康と衛生、教育、文化・伝統に該当する。
企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブ・ネガティブなインパクト
【ポジティブなインパクトが期待できる活動】
テーマ | 活動内容 |
<環境面> サステナブル建築物の建設 ZEB プランナーとして普及活動環境保全に資する工法環境配慮型住宅の普及促進 | ①サステナブル建築物の建設 ・環境に優しいサステナブル建築物のモデルとして新本社屋を建設 ・モデル事務所として、顧客に提案 ②ZEB プランナーとして普及活動 ・地域内および新たな営業エリアも視野に入れた ZEB の普及促進 ③環境保全に資する工法 ・地球環境の変化や廃棄物削減・資源効率向上に工法で寄与 ➃環境配慮型住宅の普及促進 ・長期優良住宅と耐震等級3を標準仕様 ・環境に優しい ZEH や HEMS、太陽光発電などを普及促進 |
<社会面> 従業員の働きがい醸成地域に開かれた会社女性や子供に優しい会社 | ①従業員の働きがい醸成 ・労働環境の整備・改善 ・女性が生き生きと働ける職場づくり ・人材育成によるモチベーション向上 ・ボランティア休暇の制度化 ②地域に開かれた会社 ・地域環境・地域防災に貢献 ・次世代を担う子供たちに建設産業を中心とした教育の場を提供 ・新本社屋を地域住民との接点の場として活用 ③女性や子供に優しい会社 ・女性や子供の健康や文化的な生活、健全な成長への支援活動 |
<経済面> 地域のインフラニーズに対応 | ①地域のインフラニーズに対応 ・公共インフラや民間設備投資に対応し、地域経済成長に寄与 |
【ネガティブなインパクトを低減する活動】
テーマ | 活動内容 |
<環境面> エコアクション活動の推進建物再生事業に注力 | ①エコアクション活動の推進 ・二酸化炭素排総出量の削減、廃棄物のリサイクル、節水、グリーン購入等の資材購入、環境配慮などに実績 ・環境関連法規等の遵守 ②建物再生事業に注力 ・ストックビジネスによる資源の有効活用 |
<社会面> 安全施工の徹底 | ①安全施工の徹底 ・組織的な安全衛生体制の構築により、死亡災害ゼロ |
(1)UNEP FI が掲げるインパクトレーダーとの関連性
常盤工業の企業活動は、新社屋の建設に際して先導的な自然環境配慮型モデルオフィス
(サステナブル建築物)とし、取り入れた技術を ZEB プランナーとして地域内や首都圏等に普及させていくことや、環境保全に資する工法の採用、ZEH など環境配慮型住宅の普及促進は、
「気候変動」や「エネルギー」に関するポジティブなインパクトが想定される。また、労働環境の整 備・改善、女性が生き生きと働ける職場づくり、人材育成によるモチベーション向上、ボランティア休暇の制度化など従業員の働きがい醸成は、「雇用」や「人格と人の安全保障」に該当する。さらに、地域環境・地域防災への貢献や、次世代を担う地域の子供たちへの学びの場の提供、あるいは新本社屋を地域住民との接点の場として活用するなど地域に開かれた会社であることは、地域住民の生活環境の向上や子供たちの成長に資するものであり、「住宅」や「教育」への寄与が認められる。そして、女性や子供に優しい会社を標榜し、実践していることは、女性や子供の健康や文化的な生活、健全な成長に資する取組みであり、「健康と衛生」、「教育」、「文化・伝 統」に該当する。加えて、長年にわたって、道路・鉄道や上下水道など地域のインフラニーズに対応し、地域経済の成長に寄与してきたことは、「移動手段」や「水」などに貢献している。
一方で、CO2 排出量の削減やコンプライアンスの徹底に取り組むエコアクション活動の推進 は、「大気」、「水」、「土壌」、「生物多様性と生態系サービス」、「気候変動」、「廃棄物」などに幅広く該当するほか、ストックビジネスによる資源の有効活用に資する建物再生事業に注力している点は、「資源効❹・資源安全確保」や「廃棄物」に対するネガティブ・インパクトの抑制となる。また、組織的に安全衛生体制を構築し、安全施工の徹底により創業以来死亡災害ゼロを維持
していることは「雇用」に該当する。
利用可能性、アクセス性、価格の手頃さ、品質 | 質(物理的・化学的性質)と有効利用 | 環境の制約内で人のニーズを満 たす手段としての、人々・社会のための経済的価値創出 |
水 | 大気 | 包摂的で健全な経済 |
食料 | 水 | 経済の収れん |
住宅 | 土壌 | |
健康と衛生 | 生物多様性と生態系サービス | |
教育 | 資源効率・資源安全保障 | |
雇用 | 気候変動 | |
エネルギー | 廃棄物 | |
移動手段 | ||
情報 | ||
文化・伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
司法 | ||
強固な制度、平和、安定 |
(2)SDGs との関連性
常盤工業の企業活動は、まず環境面では、新本社屋の建設に際して先導的な自然環境配慮型モデルオフィス(サステナブル建築物)とし、取り入れた技術を ZEB プランナーとして地域内や首都圏等に普及させていくことや、環境保全に資する工法の採用、ZEH など環境配慮型住 宅の普及促進は、「ターゲット 7.2」、「ターゲット 13.3」に対するポジティブなインパクトが想定される。一方で、CO2 排出量の削減やコンプライアンスの徹底に取り組むエコアクション活動の推進や、ストックビジネスによる資源の有効活用に資する建物再生事業に注力している点は「ターゲット 11.6」、「ターゲット 12.2」に対するネガティブなインパクトを抑制している。
社会面では、労働環境の整備・改善、女性が生き生きと働ける職場づくり、人材育成によるモチベーション向上、ボランティア休暇の制度化など従業員の働きがい醸成は、「ターゲット 8.5」に資するものである。また、地域環境・地域防災への貢献や、次世代を担う地域の子供たちへの学びの場の提供、新本社屋を地域住民との接点の場として活用するなど地域に開かれた会社であることは、「ターゲット 11.7」や「ターゲット 4.7」に関するポジティブなインパクトが想定される。そして、女性や子供に優しい会社を標榜し、実践していることは、女性や子供の健康や文化的な 生活、健全な成長に資する取組みであり、「ターゲット 3.1」、「ターゲット 4.5」、「ターゲット 5.1」に該当する。さらに、組織的に安全衛生体制を構築し、創業以来死亡災害ゼロを維持していることは「ターゲット 8.8」に対するネガティブ低減となる。
経済面では、長年にわたって、道路・鉄道や上下水道など地域のインフラニーズに対応し、地
域経済成長に寄与してきたことは、「ターゲット 9.1」に貢献している。
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<環境面> 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効❹的な利用を達成する。 新本社屋の建設に際して先導的な自然環境配慮型モデルオフィス(サステナブル建築物)とし、取り入れた技術を ZEB プランナーとして地域内や首都圏等に普及させていく。 |
さまざまな工法を採用することで、地球環境の変化への対応や廃棄物の削減・資源効率向上に貢献しているほか、ZEH など環境配慮型住宅の普及促進やエコアクション活動を推進し、CO2 排出量や廃棄物排出量の削減などに全社を挙げて取り組んでいる。また、建物再生事業に注力し、ストックビジネスによる資源の有効活用に貢献している。 <社会面> 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。 労働環境の整備・改善や女性が生き生きと働ける職場づくり、人材育成によるモチベーション向上、ボランティア休暇の制度化など、従業員の働きがいを醸成するためにさまざまな配慮をしている。 11.7 2030 年までに、女性、子供、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 清掃活動や消防団との協定締結など、地域環境・地域防災に貢献している。また、小中高生向けの SDGs 講演やキャリア講座、職場体験の受入れなど、地域の子供たちに教育の場を提供している。新本社屋を地域住民との接点の場として活用する。 3.1 2030 年までに、世界の妊産婦の死亡❹を出生 10 万人当たり 70人未満に削減する。 4.5 2030 年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障害者、先住民及び脆弱な立場にある子供など、脆弱層があらゆるレベルの教育や職 業訓練に平等にアクセスできるようにする。 5.1 あらゆる場所における全ての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。 ホワイトリボンラン、チャリティーサンタ、女子野球チームへの協賛や活動支援な ど、女性や子供の健康や文化的な生活、健全な成長を支えている。 |
<経済面>
9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。
長年にわたって地域の公共インフラや民間設備投資に対応し、地域経済成長
に寄与してきた。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
組織的に安全衛生体制を構築し、創業以来死亡災害ゼロを維持している。
(3)地域課題との関連性
①地域経済に与える波及効果の測定
常盤工業は、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、第4次中期経営計画が終了する8年後(2029 年度)の売上高を 100 億円に、従業員数を 150 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、こ
の目標を達成することによって、常盤工業は、静岡県経済全体に年間 155 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
②地域の独自課題への貢献
【浜松市および静岡県の環境施策】
〈浜松市〉
浜松市では、「第2次浜松市環境基本計画 改定版」(2019 年度~24 年度)におい て、これからの環境施策の方針として、「健康で安全な生活環境を保全する都市」、「資源を有効に活用する循環型都市」、「気候変動に適応しエネルギーを効率的に利用する都市」、「多様な環境と人々のくらしが共存する都市」、「環境活動を実践する人が育つ都市」の5つの基本方針を掲げ、大気汚染対策や水質保全対策、産業廃棄物対策、再生可能エネルギーなどの導入などを主な施策としている。その中で、2024 年度までに重点的に取り組むべき指標の1つに、
「市域の温室効果ガス排出量の削減目標を基準年度比 19%削減」と設定し、二酸化炭素排出量の削減に取り組んでいる。
こうした計画の推進には、市民や事業者などの積極的な参加が不可欠とし、事業者の行動指針として、廃棄物の適正処理や省資源、省エネルギーや再生可能エネルギーの活用などを推進して環境負荷軽減に取り組むほか、環境配慮経営を行うことで、企業の成長とともに循環型都 市の発展への貢献が求められている。
〈静岡県〉
静岡県でも、「改定版 第3次静岡県環境基本計画」(2016 年度~20 年度、2020 年
3月に1年延長)において、「環境の理想郷“ふじのくに”の創造」を基本目標に掲げ、自然環境や生活環境、地球環境等の保全に取り組んでいる。具体的な行動として、環境に配慮した事業活動の促進や環境・エネルギー分野への参入・技術支援など「環境と経済の両立」や、事業 所の省エネ化、環境産業の創出など「環境と経済を両立するビジネススタイルの促進」、あるいは
「循環資源の3R の推進」や「廃棄物適正処理の推進」など、企業が取り組むべき課題も数多く設定している。
こうした基本計画を達成するための目標として、県では「ふじのくに地球温暖化対策実行計 画」を策定し、2005 年度を基準に、21 年度の県内温室効果ガス排出量を△21.0%削減する目標を掲げている。このうち、「産業部門」では、事業所の自主的削減の促進や ESG 金融の普及促進などによって△23.6%、「業務部門」では、業務用建築物の省エネ化促進によって△
12.1%、「運輸部門」では、EVなど次世代自動車の普及促進などによって△19.2%と、事業分野に対する削減の期待は大きい。
2021 年2月には、静岡県の川勝平太知事が、県全域での脱炭素社会の実現を目指すため「2050 年温室効果ガス排出量実質ゼロ」を表明したほか、2021 年度に新たな「静岡県地球温暖化対策実行計画(区域施策偏)」の策定を行い、脱炭素社会の実現に向けた新たな取組み等について検討し、県民や事業者、市町と協力して推進していくとしている。
常盤工業のエコアクション活動は、二酸化炭素や廃棄物の排出量を減らす取組みであり、静岡県や浜松市の目指す脱炭素社会に向けて大きく貢献しているとともに、浜松市の「新エネ・省エネ対策トップランナー」や「エコドライブ優良事業所」にも認定されているなど、まさに静岡県や浜松市が目指す行政と事業者が一体となった取組みを実践しているといえる。
【ふじのくに建設産業働き方改革推進宣言】
静岡県は 2020 年 10 月、建設産業に携わる関係者が一体となって働き方改革を進め、建設産業における新4K(給料・休暇・希望・きれい)の実現と夢や誇りのもてる魅力ある産業への転換を目指すことを目的に、「ふじのくに建設産業働き方改革推進宣言」を発表した。この中で具体的な取組みとして、長時間労働の是正や週休2日の確保、ワーク・ライフ・バランスの推進、工場現場への「快適トイレ」の設置、工事現場における労働安全・衛生環境の整備などの実行を宣言している。2021 年5月現在、常盤工業も含む静岡県内 37 社の建設業者が宣言に賛同している。
【SDGs の推進】
静岡県は「SDGs のフロントランナー」を標榜しているほか、県内5市(静岡市、浜松市、富士市、掛川市、富士宮市)が内閣府の「SDGs 未来都市」に選定されるなど、県内自治体は SDGs を積極的に推進している。
浜松市は、「森林」、「エネルギー」、「多文化共生」に関する取組みが評価され、最も早い 2018 年に「SDGs 未来都市」に選定された。なかでも、「エネルギー」では、全国 1 位の規模を持つ太陽光発電を軸に、再生可能エネルギーによる低炭素社会の実現を目指し「浜松市域 “RE100”宣言」を掲げている。2019 年に、地方創生・SDGs 推進グループを設置し、「浜松市 SDGs 推進プラットフォーム」を立ち上げて、会員同士の交流や情報交換などパートナーシップを促進する場としての土台を構築している。常盤工業もこのプラットフォームの会員となり、2020 年 12 月に開催された会員同士のオンライン発表会では、自社の取組みを発表している。このよう に、常盤工業の SDGs の取組みが他の企業のロールモデルとなることが期待される。
4. インパクトを測定する KPI(指標と目標)※2029 年度は第4次中期経営計画終了年度
特定されたインパクト | KPI(指標と目標) | 関連する SDGs |
・新本社屋をモデル建築物として活用し、2029 年度までに、 | ||
80 件の視察を受け入れ、ZEB プランナーとしての提案 30 | ||
<環境面> | 件、環境配慮型建築物の受注 15 件を達成する。 | |
大気 | ・新本社屋の CO2 排出量を、創エネによる効果も含めて、標 | |
水 | 準事務建物比 75%削減する。 | |
土壌 | ・サステナブル建築の受注につなげるため、SDGs for school 認定エデュケーターの資格を持つ社員を中心に SDGs に関す | |
生物多様性と 生態系サービス | る講座、ワークショップ、説明会などを年5回以上実施する。 ・エコアクション活動における環境経営目標 12 項目のうち、毎 | |
資源効率・ 資源安全確保 | 年 10 項目について 100%以上達成する。 ・2029 年度までに、事業で使う電力を全量、再エネ由来に切 | |
気候変動 | り替える。 | |
廃棄物 | ・2029 年度までに、CS 建物再生事業の年間受注金額 10 | |
エネルギー | 億円以上を達成する。 | |
・個人向け住宅で、環境配慮型住宅(長期優良住宅、 | ||
ZEH、HEMS、太陽光発電等)の普及促進を維持する。 | ||
<社会面> | ・保育園・幼稚園や学校、医療・福祉施設等の建築・改修工事を継続的に受注し、こうした施設の維持・充実を図る。 ・女性が生き生きと働ける職場づくりを目指し、2029 年度までに、女性の技術系社員を 20 人に増やすとともに、女性の管理職を誕生させる。 ・2029 年度までに、有給休暇の取得率を 70%以上とする。 ・ボランティア休暇制度を浸透させることで、年間 10 件以上の 取得を 2029 年度まで維持する。 ・新本社屋のオープンスペースで、常時セミナー・イベント・展示会等を開催し、地域の交流の場としての存在感を高める。 ・女性や子供に対する支援活動を継続して実施し、社員の参 加率を高める。 | |
住宅 | ||
健康と衛生 | ||
教育 | ||
雇用 | ||
文化・伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
<経済面>水 移動手段 | ・ZEB やサステナブル建築をツールとし、2029 年度までに営業エリアを首都圏などに拡大する。 ・後継者不在で事業継続が困難な建設業者の事業を引き継 ぎ、地域の雇用やインフラの維持に努める。 |
5. マネジメント体制
常盤工業では、市川社長が陣頭指揮を執り SDGs を推進している。また、社長直下の部署である社長室に SDGs に関する実務担当者を置いている。この担当者は、SDGs for school認定エデュケーターの資格を持ち、ワークショップ等を通じて社内に SDGs を浸透させている。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたっても、市川社長と SDGs 担当者が中 心となり、各グループのマネージャークラスと連携を取りながら、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、市川社長が統括責任者となり、SDGs担当者が実務レベルで社内調整を行いながら、KPI の達成に向けた「SDGs 推進委員会」を新たに設置し、推進体制を構築していく。こうした推進委員会で議論された内容は、全社員が集う半年に 1 回の社員総会、月に 1 回の朝礼や教育訓練日を利用するほか、SDGs ワークショップなどを開催することで、全社員に周知・浸透させていく。
一方で、KPI 達成のためには、自社内の経営資源だけでは困難なケースも想定される。特に、新本社移行後は、地域住民との積極的な交流も念頭に入れており、県や市などの自治体、地元自治会、学校、金融機関、市民団体、ボランティアサークルなど、多くの関係者とこれまで以上
に連携を図ることでネットワークを広げていく方針である。
統括責任者 | 代表取締役社長 市川 浩透 |
担当部 | 社長室 SDGs 担当者 SDGs 推進委員会 |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と常盤工業の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つ
ネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
以 上
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する常盤工業から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 調査グループ長 森下 泰由紀
〒420-0853
静岡市葵区追手町 1-13 アゴラ静岡 5 階 TEL:054-250-8750 FAX:054-250-8770
第三者意見書
2021 年 8 月 31 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 常盤工業株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナ
ンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が常盤工業株式会社(「常盤工業」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包摂的 で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体 である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的 とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、常盤工業の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、常盤工業がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
お客さま | ①PIFの申込み | 当行 | ②PIF評価依頼 | 静岡経済研究所 | レビュー依頼 | JCR |
③インパクトの包括分析・特定 | ||||||
⑤目標・KPI等の協議 | ④インパクトの還元 ⑥目標・KPI等の報告 | コメントバック レビュー依頼 | ||||
⑨融資実行 PIF評価書交付 | ⑧PIF評価書作成 | ⑦目標・KPI等の評価 コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100人以下など。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である常盤工業から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲
で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価本部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
梶原 敦子
丸安 洋史
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026