Contract
2022 年 9 月 9 日
各 位 株式会社 三十三銀行
株式会社マルヤスとの「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
株式会社三十三銀行(頭取:xx xx)は、持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、株式会社マルヤス(社長:xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたのでお知らせいたします。
本件の取り組みにあたっては、株式会社三十三総研(社長:xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。今後も「三十三フィナンシャルグループSDGs宣言」のもと、企業活動を通じてSDGsの達成に貢献することで、持続可能な社会の実現に努めてまいります。
(※) 企業活動が「社会・経済・環境」のいずれかに与えるインパクトを包括的に分析・特定し、ポジティブインパクトが期待できる活動と、ネガティブインパクトを低減する活動を支援するもので、借入人様によるSDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、借入人様から情報開示を受けながら当行がその過程を定期的にモニタリングするものです。
1. 融資概要
(1) 契約日 | 2022年9月9日 |
(2) 融資金額 | 300百万円 |
(3) 期間 | 5年 |
(4) 資金使途 | 運転資金 |
2. 借入人概要
(1) 企業名 | 株式会社マルヤス |
(2) 所在地 | xxxxxxxxx00x00x |
(3) 事業内容 | 食料品小売業(スーパーマーケット) |
当社は三重県津市を拠点に高品質・ナチュラル・健康志向をコンセプトに「フレッシュマーケット マルヤス(Maruyasu)」を津市、鈴鹿市に3店舗展開。新鮮・安さを理念とする「ベーシック(BASIC)」を津市、xx市、松阪市に8店舗展開。 2つの異なるコンセプトを持つ地域密着型の食品スーパーマーケット事業、および素材本来の味わいと、心からおいしさが楽しめる「安心」をテーマにした「イタリアンレストラン イタリアーノ(ITALIANO)」を津市に1店舗展開している。
(Maruyasu) (BASIC) | |
(4) 従業員数 | 750名 |
(5) 資本金 | 48百万円 |
3. 特定インパクトと測定するKPI
(1) 経済面 | 包摂的で健全な経済(ポジティブ) |
|
① ダイバーシティの推進 ・2027年までに、管理職に占める女性割合を10%とする。 (2022年8月時点:0%) | ||
(2) 社会面 | 食料、雇用、教育、文化・伝統(ポジティブ) |
|
① 多様な買物環境ニーズへの対応。 ・2027年までに、ネットスーパー対象地域を拡大する。 (2022年8月現在:津市と松阪市の一部) ・2027年までに、移動スーパーの専用車両および巡回ルートを拡充する。(2022年8月現在:車両2台、4ルート巡回) ② 雇用を通じた障害者の自立支援 ・特別支援学校高等部との連携を継続し、障害者雇用率4.7%以上を維持する。(2022年8月現在:障害者雇用率4.72%) ③ 地域社会への貢献 ・食育イベント、「マルヤス杯」、「SUMMER FESTI VAL」を毎年実施する。 | ||
(3) 環境面 | 資源効率・安全性、廃棄物、気候(ネガティブ) |
|
① 食品廃棄物の削減 ・2027年までに、食品廃棄率(廃棄金額÷売上金額×100)を0. 37%以下とする。(2021年度(0.41%)から約10%低減) ② 食品廃棄物の再生利用 ・2027年までに、食品廃棄物の再生利用等実施率を85%以上とする。(2021年度:79.4%) ③ 容器包装資材の使用量削減 ・2027年までに、売上高1億円あたりのプラスチック製容器包装の使用量(回収量を除く)を2020年度比10%以上削減する。(2020年度:売上高1億円あたり0.97㌧) ④ 廃棄物管理体制の強化 ・2027年までにマニフェスト全体件数に占める電子マニフェスト件数の割合を70%以上とする。(2022年度より実施予定) ⑤ 環境負荷の低減 ・2027年までに2店舗をリニューアルし、店舗屋上にxxx発電設備を設置して発電した電力の自店利用と、店舗設備の省エネ化を進める。 |
4. お問い合わせ先
(1) 三十三銀行(ソリューション営業部:xx、連絡先:059-354-7144)
(2)三十三総研(調査部:xx、連絡先:059-354-7102)
(コンサルティング部:xx、連絡先:059-351-7417)
以 上
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年9月9日 株式会社三十三総研
三十三総研は、三十三銀行が、株式会社マルヤスに対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、株式会社マルヤスの活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価にあたっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及びESGハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
目次
1.評価対象の概要 2
2.株式会社マルヤスの概要 2
2-1.基本情報
2-2.経営方針と事業内容
2-3.サスティナビリティに関連する活動
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性 14
3-1.経済面のインパクト
3-2.社会面のインパクト
3-3.環境面のインパクト
4.測定するKPI とSDGsとの関連性 17
4-1.経済面・社会面(ポジティブ)
4-2.社会面(ポジティブ)
4-3.環境面(ネガティブ)
4-4.その他KPI を設定しないインパクトとSDGsとの関連性
5.サスティナビリティ管理体制 22
6.モニタリング 22
7.総合評価 22
1.評価対象の概要
企業名 | 株式会社マルヤス |
借入金額 | 300,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
契約日及び返済期限 | 2022 年9月9日 ~ 2027 年8月 31 日 |
2.株式会社マルヤスの概要
2-1.基本情報
本社所在地 | xxxxxxxxx 00-00 |
従業員数 | 750 名(パート・アルバイト含む) |
資本金 | 4,800 万円 |
業種 | 食料品小売業(スーパーマーケット) |
取引先 | ㈱東海シジシー、xxグループ本社㈱、㈱旭食品、㈱昭和 |
店舗 | 【フレッシュマーケット マルヤス(3店舗)】 橋南店(津市)、山手通り店(津市)、xx店(鈴鹿市) 【ベーシック(8店舗)】 xx店(津市)、xxx店(津市)、一身田店(津市)、芸濃店(津市)、久居インター店(津市)、xx店(xx市)、松阪店(松阪市)、松阪xx町店(松阪市) 【センターキッチン】 第 1 センター、第2センター、米飯センター(津市) 【イタリアンレストラン イタリアーノ(ITALIANO)】山手通り店(津市) |
沿革 | 1946 年4月 津市内にてマルヤス食料品店創業 1968 年4月 現本部/マルヤス橋南店 開店 1969 年1月 (株)マルヤス設立 1987 年2月 資本金 1,200 万円増資 マルヤスフーズパビリオン パレス店 開店 1989 年1月 マルヤス山手通り店 開店 1989 年5月 資本金 4,800 万円増資 |
1994 年4月 マルヤスxx店 開店 1996 年7月 マルヤスxxx店 開店(現在ベーシック) 2006 年3月 コスモスxx店 開店(現在ベーシック) 2008 年6月 コスモス久居インター店 開店 2009 年 11 月 コスモス松阪店 開店(現在ベーシック) 2011 年 10 月 コスモス一身田店 開店(現在ベーシック) 2012 年3月 コスモス松阪xx町店 開店(現在ベーシック) 2018 年4月 マルヤス芸濃店 開店(現在ベーシック) 2018 年 12 月 マルヤスxx店 開店(現在ベーシック) |
2-2.経営方針と事業内容
株式会社マルヤス(以下、マルヤス)は、三重県津市を拠点に「フレッシュマーケット マルヤス
(Maruyasu)」「ベーシック(BASIC)」の2つの異なるコンセプトを持つ地域密着型の食品スーパーマーケット事業、および「イタリアンレストラン イタリアーノ(ITALIANO)」のレストラン事業を展開している。全国の中堅・中小スーパーマーケットで構成する協業組織「CGC グループ」(※)に設立当初より加盟し、全国販売のナショナルブランド(NB)商品とプライベートブランド(PB)商品ではCGCグループの共同仕入を利用している。
(※)全国204 社、4,213 店のスーパーマーケットが加盟(2022 年3 月1 日時点)。㈱シジシージャパンが本部機能を担い、主に「商品」「物流」「情報システム」「営業支援」の分野で協業活動を行っている。
【マルヤスの事業内容】
『フレッシュマーケット マルヤス(Maruyasu)』 高品質・ナチュラル・健康志向をコンセプトに、約 250~ 450 坪の売り場で 5,000~7,000 アイテムの厳選した商品を販売。他店では取り扱いの少ない輸入商品から、地元の商品まで幅広く品揃え。津市、鈴鹿市に3店舗。 | ||
『ベーシック(BASIC)』 新鮮・安さを理念とする。折込チラシやポイントカードを削減することでコストを抑え、より良いものをより安く販売し、日本一の生鮮食品特化型のスーパーマーケットを目指す。津市、xx市、松阪市に8店舗。 | ||
『センターキッチン』 [第 1 センター]精肉加工、惣菜製造 [第2センター]パン製造、鮮魚加工 [米飯センター]米飯製品製造 | ||
『イタリアンレストラン イタリアーノ(ITALIANO)』 素材本来の味わいと、心からおいしさが楽しめる「安心」をテーマにしたイタリアンレストラン。津市に1店舗。 |
同社の売上構成比(2021 年度)
セグメント | 構成比 | |
スーパーマーケット | 水産・畜産・農産などの生鮮品 | 46% |
日配・菓子などのグロサリー | 48% | |
その他 | 6% | |
レストラン | 1%未満 |
【高品質、独創性のある品揃え】
同社は、生鮮食品や加工食品、高級輸入食材など、高品質で独創性のある品揃えを強みとしている。
(1)産地から食卓へ
同社は、徹底した品質管理と鮮度管理を最大のセールスポイントとしている。野菜、果物はよりよい品質の物を生産する生産農家を開拓、産地直送を行っており、海産物は最もおいしい時期を見極め、全国の漁港より最高の鮮度で取り寄せ、牛、豚、鳥などの食肉は徹底した飼育管理のもとで最高の品質のみを選び、最も美味しい状態で提供している。また、地元の生産者が丹精込めて作った安全で安心な野菜などの地場産食品を取りそろえた「xxの恵み」コーナーを設置している。こうした産地との連携により多くの地産品を積極的に取り扱うことによって、顧客にお値打ちに高鮮度の商品を提供するとともに、生産者と継続的な取り組みの中で安定した取引が可能となる。
(2)商品開発と直輸入商品
同社は、「食の安全・安心」を最重要コンセプトと位置づけ、地域の方々の健康で豊かな暮らしを作り上げるというポリシーのもと商品開発を進めている。そのため、農産物は産地を限定し、生産者を指定して栽培飼育から出荷までを十分確認して、直送することで安全な農作物の提供を可能としている。また、水産物は漁港を厳選して、水産加工場での徹底した鮮度管理から、輸送まで管理することによって最も良い状態の商品提供が可能となる。
一方、グループ会社のファインフーズジャパン㈱では、全国各地の味・香り・風味のよい加工食品を厳選し、オリジナルブランドを付けて一括生産することによって製造・配送コストを抑え、リーズナブルな価格で提供している。加えて、世界中のより良い食材(イタリアのオリーブオイルやパスタ、フランスのジャムやワイン、アメリカのチョコレートやピーナッツバター、イギリスの最高級紅茶やチョコレートなど)を探求し、現地と直接交渉して一括直輸入することでコストを抑え、海外の高品質食材をリーズナブルな価格で提供している。そのほか、ファインフーズジャパン㈱では 10 種類以上のスパイスをブレンドした人気商品の万能系調味料「魔法のスパイス」を製造・販売し、同商品を使ったオリジナルレシピ「魔法のレシピ」をHPで紹介している。
<こだわりの品揃え>
精肉 | 最高等級 A5ランクの松阪牛を年間 100 頭販売。独自の契約牧場で雌・未経産にこだわったマルヤス牧場黒毛和牛、名古屋コーチン、イタリア直輸入のサン・ダニエーレ産生ハムなど、厳選した極上の品質を 提供。 |
鮮魚 | 地元三重・南伊勢をはじめ、北海道から九州まで全国各地の漁港や市場より旬の鮮魚を直送。xxの本マグロなどのブランド魚や、あまり市場に出回らない希少な種類も独自の目利きで厳選して提供。 |
オーガニック野菜・地場産食品 | 安全・安心にこだわった、からだにやさしいオーガニック野菜・JAS 認定野菜をはじめ、地元生産者から毎朝届く新鮮なローカル野菜などを豊富に取り揃え。 |
果物・ ヘルシーフード | 地域で最も早くフルーツ専門店を開店。以降、独自の目利きで他にはない高品質でみずみずしいフルーツ、栄養価の高い旬のフレッシュフルーツや野菜を 100%使った生フレッシュジュース、その場で作る無塩・無糖の 100%ピーナッツバターなどを豊富に品揃え。 |
チーズ&ワイン・高級食材 | 約 400 種類以上の本格派チーズや世界のワイナリーから低温コンテナで直輸入するワイン、トリュフなどの高級食材など自社輸入品を含め豊富に品揃え。 |
できたての美味しさ | 自店で焼き上げる焼きたてパンや、特製窯で高温・短時間で一気に焼き上げる本格ピッツァなど、専門店の味を家庭で手軽に味わえるでき たてメニューを提供。 |
【ウェルネス提案企業】
同社を中核企業とするマルヤスグループでは、マルヤスのほか、調味料「魔法のスパイス」などのオリジナル食品を製造・販売するファインフーズジャパン㈱、フィットネスジム「レクシーフィット
(LeXy Fit)」を運営するワークエル㈱、エステティックサロン「オリエンタル・スタイル(ORIENTAL STYLE)」を運営する㈱シャンヴル・スフレなどのグループ企業を傘下に持つ。マルヤスグループは、安全・安心な食材提供のスーパーマーケット事業、およびグループ会社の事業を通じて、「健康でいたい」という基盤的な欲求に対する価値提供を継続しつつ、より上位の欲求、すなわち「より健康で美しく、精神的豊かさを追求したい」という「ウェルネス」への欲求に対して、「ウェルネスフード(食)」・「フィットネス(健康)」・「ビューティー(美)」の3つの切り口から、地域社会に新たな価値を提案するxxxxx(※)提案企業を目指している。
(※)xxxxxとは、xxxxxxとともに 1980 年代後半から米国で一般に使用されるようになった、人々が病気をしないで過ごせる様な健康と積極的なライフスタイルを追求することを意味する新用語。「身体の健康、精神の健康、環境の健康、社会的健康を基盤にして、豊かな人生をデザインしていく、自己表現(2017 年 琉球大学 xxxx)」と提唱される。
【グループ会社】
企業名 | 主な事業内容 |
マルヤスホールディングス㈱ | 持株会社 |
ファインフーズジャパン㈱ | 「魔法のスパイス」などのオリジナル食品の製造・加工・販売、 輸入商材の卸売、コンサルティング事業。 |
ワークエル㈱ | フィットネスジム「レクシーフィット(LeXy Fit)」を展開。津市、鈴鹿市、松阪市に3店舗。 |
㈱シャンヴル・スフレ | エステティックサロン「オリエンタル・スタイル( ORIENTAL STYLE)」を展開。東京エリア、名古屋エリア、大阪エリア、兵 庫エリア、京都エリア、福岡エリアに 13 店舗。 |
【社是・経営理念】
《社是》
地域の皆まさの暮らしの向上に日々勤め、お客様に信頼される誠実な企業でありたい。
《経営理念》
マルヤスは、食を通して、地域の方々の、健康で豊かな暮らしの、お役にたてることを、目的としています。
同社は、「地域の方々の健康で豊かな暮らしづくりのお手伝い」を基本理念に、地域密着型スーパーマーケット事業を通して人々の暮らしの源となる「食」に全力でこだわり、創業以来変わらない新鮮で安全・安心、美味しい商品をお届けするというコンセプトはもちろん、世界中からセレクトした輸入食品や時代を先取りする最新食材を取り扱うなど、顧客の食卓をより豊かに彩るための工夫と努力を続けている。
2-3.サスティナビリティに関連する活動
【多様な買物環境ニーズへの対応】
(1)ネットスーパー
マルヤスは、2013 年より津市・松阪市エリア(一部を除く)を配達エリアとするネットスーパー事業を展開している。インターネット、電話、FAX を通じて 24 時間注文を受け付け、最短で当日配達が可能である。買い物に出かけることが困難、買物をする時間がないという住民が自宅にいながら同社の新鮮な食材を購入することができ、毎日、約 40 件の配送を行っている。
(2)移動スーパー事業
同社は、2018 年より移動スーパー事業を展開している。週5日、2台の専用車両が高齢者の多く住むエリアなどを中心に4つのルートを巡回し、買物に出かけることが困難な住民向けサービスの充実を図っている。
(3)代行サービス事業
ネットスーパーの配送
移動スーパー
同社は、ネットスーパーや移動スーパーによる自社の商品販売だけでなく、自社で取り扱っていない商品の買物や提携クリーニング店利用の代行サービス「まごころ便」を 2017 年より実施している。定期的な訪問を通して、一人暮らしの高齢者の見守りに貢献している。
【食品衛生管理】
同社は、安全・安心な商品を提供するため、HACCP の考え方を取り入れた食品衛生管理を実施している。店舗およびキッチンセンターのグロサリー、精肉、青果、鮮魚、惣菜の部門別に制定した手順書に沿って、清掃、消毒、温度管理などの衛生管理を実施している。
【安全衛生管理】
清掃手順書
同社は、安全衛生の基本方針を掲げ、従業員が心身ともに健康で安全に勤務できる環境作りを進め、労働災害の防止に努めている。毎月、店舗毎に開催する安全衛生委員会にて、従業員の健康状態と労働時間の状況を把握し、勤務シフトの見直しやフロア業務における部門間での協力体制の構築などにより長時間労働の防止を図っている。また、2022 年9月に完成予定の本社
では、身体に障害を持つ従業員が安心して業務に従事できるようバリアフリーを充実させる。そのほか、従業員の健康促進のため、グループ会社のワークエル㈱が運営するフィットネスジム「レクシーフィット(LeXy Fit)」を無料で利用できる福利厚生制度を設けている。
フィットネスジム内部
【ダイバーシティの推進】
同社は、出産や育児にあたる従業員が職場復帰しやすい環境を実現するため、休暇制度の充実、本人の希望に応じた柔軟な勤務地異動を実施している。また、同社では全従業員のうち女性が 65%の割合を占めるものの、管理職は全て男性が就いているため、多様な人材が活躍できる企業を目指して、CGC グループが開催する接客コンテストや管理職育成研修に女性従業員を積極的に参加させることで、女性の管理職育成に取り組んでいる。
【雇用を通じた障害者の自立支援】
令和元年度 障害者雇用優良企業表彰式
同社は、社会に貢献できる仕事、人生を賭けて悔いのない仕事を求める人に対して、やりがいを与えることを方針として掲げ、2010 年より、県内5校の特別支援学校高等部と連携して、生徒の卒業後の雇用を前提として職場実習を受け入れている。生徒たちは、実際に事業所等で働く職場実習を通して、働くことの意義や喜び、職業人としての心得や態度など必要な資質について学習することができる。また、保護者や学校は、生徒にとってどのような仕事に適性があるのか、将来の職業生活のためには今後どのような指導に重点を置くのかについて見極めることができる。この職場実習を通じて、2011 年以降、毎年、連携校より卒業生を採用し、本人の希望や障害の種類、程度を考慮した上で、職場実習を通じて得られた生徒の適性や特質等に応じた部署に配属している。さらに知的障害者の雇用に関しては、国の職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業を活用して専門的な支援のもと、担当する作業を確実に
遂行できるようになるまで丁寧に指導するなど、障害者の自立支援を継続して取り組んでいる。現在、
17 名の障害者が在籍し、実雇用率は 4.72%と、 2021 年三重県内の卸売業、小売業における実雇用率 1.94%(※)を上回っている。こうした取り組みが評価され、同社は 2019(令和元)年度障害者雇用優良事業所等厚生労働大臣表彰を受賞している。
※ 「令和3年 三重県内の障害者雇用状況 一般民間企業における産業別障害者の雇用状況」(三重労働局)より
ベトナムからの研修生
【外国人研修生の受け入れ】
同社は、2017 年から毎年、研修生としてベトナムから技能実習生を受け入れ、接客をはじめサービスや販売技術など多面的に能力を身に付けるとともに、世界の舞台で活躍できる人材の育成に努めている。さらに、特定技能外国人など人材の多様化によって、固定概念に捉われない多様な価値観を大切にし、サービスの向上につなげている。同社では、研修生の生
活面を支援するため、住宅と自転車の補助、通訳のサポートを行っている。現在、精肉や惣菜など4部門に 59 名の研修生が在籍している。
【食品廃棄物の削減】
同社は、資源の有効活用や環境への配慮から、食品廃棄物削減に向け取り組んでいる。セン ターキッチンから惣菜などの搬入回数を増やし、商品陳列数の適正化を図るよう努めているほか、鮮魚、精肉、青果などの加工による賞味期限の延長や、つまなし刺身の販売など、事業から発生する食品廃棄物を削減するとともに、顧客の家庭から出る廃棄物の削減にもつながる取り組みを行っている。そのほか、商品棚の手前にある商品から手に取る「てまえどり」を啓発し、顧客とともに食品廃棄物削減を進める事業活動を目指している。
【食品廃棄物の再生利用】
同社は、各店舗で発生する野菜くずや魚アラなどの食品廃棄物をリサイクル業者に委託して、肥料として再生利用する取り組みを行っている。この取り組みを通して、同社の食品循環資源再生利用等実施率は 79.4%(2021 年度)と、食品リサイクル法に基づく「2024 年度までに食品小売業界全体の目標 60%」を上回る水準を達成している。
【容器包装資材の使用量削減】
食品トレー回収ボックス
回収したトレーの洗浄、仕分け
同社は、容器包装資材の使用量の削減を通じてゴミの削減に取り組んでいる。使用する食品トレーの薄肉化やサイズ変更、エコトレーの導入、トレーを使用しない冷凍肉や量り売り販売などの取り組みにより使用量の削減を図っている。そのほか、各店舗にて使用済みの食品トレー、ペットボトル、アルミ缶、プラスチック透明容器などのリサイクル可能品の回収ボックスを設置し、資源の回収を推進している。
【廃棄物管理体制の強化】
廃棄物を排出する事業者には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)において、事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理することが義務付けられている。同社では、食品廃棄物等の収集運搬および処分を業者に委託し、廃棄物を業者に引き渡す際に交付する産業廃棄物管理票(マニフェスト)の運用を通して、自社が排出した廃棄物の処理が適正に実施されたかどうかを確認している。こうした管理体制のもと、同社が交付するマニフェストは全て紙ベースで作成され、処理状況の確認から期日管理、報告書作成、文書類の保管といった管理業務が大きな負担となっている。同社では、廃棄物の管理体制強化および、管理業務にかかる労働時間削減を図るため、2022 年より、紙マニフェストにかわる電子マニフェストの導入を計画している。
【環境負荷の低減】
同社は、事業活動を通じて排出されるCO2排出量を削減するため、現在6店舗において太陽光発電設備を導入し、発電した電力を自店で利用している。同社では、店舗リニューアルにあわせて太陽光発電設備の設置を進めており、将来的に全店での設置を目指している。そのほか、店内設備においては、冷凍・冷蔵ケース、空調、照明など省エネ機器をリニューアル時に導入し、エネルギーの使用効率向上に努めている。
【地域社会への貢献】
(1)食育イベント
「料理をする人の応援」をテーマに、食材の調達から調理、食事に至る、食の過程においての大切な家族のつながりや、地域の未来を担っていく子供たちにスポットをあて、子供たちに食を通じて豊かな感性をもった大人に育ち、地域の未来を明るくしていってほしいとの思いから、親子で楽しく学べる料理教室やお魚教室といった食育イベントを定期的に開催している。新型コロナウイルス感染拡大以降は開催が困難となっているが、コロナ収束後に再開を予定している。
食育・Health セミナー
子ども料理教室
(2)スポーツ支援
スポーツを通して、子供たちの心と体の育成、健全な地域社会づくりへの貢献として、地元津市や松阪市の中学生による軟式野球やサッカーの大会「マルヤス杯」を毎年開催している。そのほか、2017 年より地元津市内のゴルフ場に所属する女子プロゴルファーとスポンサー契約を結び、夢を追いかけるアスリートを支援している。
マルヤス杯 濱田茉優選手
(3)SUMMER FESTIVAL
SUMMER FESTIVAL
地元への感謝として、毎年、縁日や盆踊りなどのプログラムに大人から子どもが参加できる夏祭り「SUMMER FESTIVAL」を開催している。新型コロナウイルス感染拡大以降は開催が困難となっているが、コロナ収束後に再開を予定している。
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性
※色の濃い項目が同社のインパクト領域
本ファイナンスでは、マルヤスの事業を国際標準産業分類における「食料品、飲料またはたばこが主な非専門店小売業」として整理した。その前提のもとでUNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、「包摂的で健全な経済」「食料」「雇用」に関するポジティブ・インパクト、「保健・衛生」
「雇用」に関するネガティブ・インパクトが分析された。
一方、事業活動等を踏まえ、本ファイナンスで特定された同社のインパクトは以下の通りである。
3-1.経済面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ) 包摂的で健全な経済 | ダイバーシティの推進 | ・出産や育児にあたる従業員が職場復帰しやすい環境を実現するための休暇制度の充実、本人の希望に応じた柔軟な勤務地異動の実施 |
・多様な人材が活躍できる企業を目指した女性管理職の育成 |
3-2.社会面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ)食料 | 多様な買物環境ニーズへの対応 | ・津市、松阪市エリア(一部を除く)を配達エリアとするネットスーパー事業の取り組み |
・高齢者の多く住むエリアなどを中心に4つのルートを巡回する移動スーパー事業の取り組み | ||
・自社で取り扱っていない商品の買物や提携クリーニング店利用の代行サービス「まごころ便」の取り組み | ||
雇用 | 雇用を通じた障害者の自立支援 | ・特別支援学校高等部と連携して、生徒の卒業後の雇用を前提とした職場実習の受け入れ |
外国人研修生の受け入れ | ・研修生としてベトナムから技能実習生を毎年受け入れ | |
ダイバーシティの推進 | ・出産や育児にあたる従業員が職場復帰しやすい環境を実現するための休暇制度の充実、本人の希望に応じた柔軟な勤務地異動の実施 | |
・多様な人材が活躍できる企業を目指した女性管理職の育成 | ||
教育 文化・伝統 | 地域社会への貢献 | ・親子で楽しく学べる料理教室やお魚教室など食育イベントの開催 ・津市、松阪市の中学生による軟式野球、サッカー大会「マルヤス杯」の開催 ・津市内のゴルフ場に所属する女子プロゴルファーとのスポンサー契約 ・地域住民参加の「SUMMER FESTIVAL」の開催 |
(ネガティブ)保健・衛生 | 食品衛生管理 | ・店舗およびキッチンセンターにて HACCP の考え方を取り入れた食品衛生管理を実施 |
保健・衛生雇用 | 安全衛生管理 | ・安全衛生委員会による従業員の健康状態と労働時間の状況把握 |
・2022 年9月完成予定の本社建物のバリアフリー化により、身体に障害を持つ従業員が安心して業務に従事できる職場環境の整備 | ||
・従業員の福利厚生としてグループ会社が運営するフィットネスジム「レクシーフィット」の無料利用 |
3-3.環境面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ネガティブ) 資源効率・安全性 廃棄物 | 食品廃棄物の削減 | ・商品棚の手前にある商品から手に取る「てまえどり」の啓発、つまなし刺身の販売など、店舗および家庭から発生する食品廃棄物を削減する取り組み |
食品廃棄物の再生利用 | ・野菜くずや魚アラなどの食品廃棄物を肥料として再生利用する取り組み | |
容器包装資材の使用量削減 | ・使用するトレーの薄肉化、エコトレーの導入、トレーを使用しない販売、使用済みトレーの回収などにより包装容器使用量削減の取り組み | |
廃棄物管理体制の強化 | ・紙ベースの産業廃棄物管理票(マニフェスト)に替えて電子マニフェストを導入 | |
気候 | 環境負荷の低減 | ・一部店舗の屋上に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を自店利用 ・店内設備で、冷凍・冷蔵ケース、空調、照明など省エネ機器を導入 |
4.測定するKPI とSDGsとの関連性
マルヤスは本ファイナンス期間において以下の通りKPI を設定する。
4-1.経済面・社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 包摂的で健全な経済 雇用 | |
取組、施策等 | 【ダイバーシティの推進】 ・多様な人材が活躍できる企業を目指す | |
借入期間におけるKPI | ・2027 年までに、管理職に占める女性割合を 10%とする (現在0%) | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的 な包含を促進する。 |
4-2.社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 食料 | |
取組、施策等 | 【多様な買物環境ニーズへの対応】 ・インターネット、電話、FAX によるネットスーパーの実施 ・高齢者が多く住むエリアを中心に巡回する移動スーパーの実施 | |
借入期間におけるKPI | ・2027 年までに、ネットスーパー対象地域を拡大する (現在、津市と松阪市の一部) ・2027 年までに、移動スーパーの専用車両および巡回ルートを拡充する(現在、専用車両2台、4ルート巡回) | |
関連するSDGs | 11.2 2030 年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者及び高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセ スを提供する。 |
特定インパクト | 雇用 | |
取組、施策等 | 【雇用を通じた障害者の自立支援】 ・特別支援学校高等部と連携して、生徒の卒業後の雇用を前提に職場実習の受け入れ | |
借入期間におけるKPI | ・特別支援学校高等部との連携を継続し、障害者実雇用率 4.7%以上を維持する。(現在、障害者実雇用率 4.72%) | |
関連するSDGs | 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的 な包含を促進する。 |
特定インパクト | 教育 文化・伝統 | |
取組、施策等 | 【地域社会への貢献】 ・地元への感謝として、親子参加の食育イベント、中学生の軟式野球、サッカー大会「マルヤス杯」、地域住民参加の 「SUMMER FESTIVAL」の実施 | |
借入期間におけるKPI | ・食育イベント、「マルヤス杯」、「SUMMER FESTIVAL」を毎 年実施する | |
関連するSDGs | 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な 知識及び技能を習得できるようにする。 |
4-3.環境面(ネガティブ)
特定インパクト | 資源効率・安全性 廃棄物 | |
取組、施策等 | 【食品廃棄物の削減】 ・「てまえどり」の啓発、つまなし刺身の販売などの取り組みにより、店舗および家庭から発生する食品廃棄物を削減 【食品廃棄物の再生利用】 ・野菜くず、魚アラなどの食品廃棄物を肥料として再生利用 【容器包装資材の使用量削減】 ・使用するトレーの薄肉化、エコトレーの導入、トレーを使用しない販売、使用済みトレーの回収などにより、包装容器使用量を削減 【廃棄物管理体制の強化】 ・紙ベースの産業廃棄物管理票(マニフェスト)に替えて電子マニフェスト導入により、管理体制を強化 | |
借入期間におけるKPI | ・2027 年までに、食品廃棄率(廃棄金額÷売上金額×100)を 0.37%以下とする(2021 年度(0.41%)から約 10%低減) ・2027 年までに、食品廃棄物の再生利用等実施率を 85%以上とする(2021 年度 79.4%) ・2027 年までに、売上高1億円あたりのプラスチック製容器包装の使用量(回収量を除く)を 2020 年度比 10%以上削減する(2020 年度 売上高1億円あたり 0.97 ㌧) ・2027 年までに、マニフェスト全体件数に占める電子マニフェスト件数の割合を 70%以上とする(2022 年度より実施予 定) | |
関連するSDGs | 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物 の発生を大幅に削減する。 |
特定インパクト | 気候 | |
取組、施策等 | 【環境負荷の低減】 ・店舗屋上に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を自店利用 ・冷凍・冷蔵ケースや空調など店舗設備に省エネ機器を導入 | |
借入期間におけるKPI | ・2027 年までに2店舗をリニューアルし、店舗屋上に太陽光発電設備を設置して発電した電力の自店利用と、店舗設備 の省エネ化を進める | |
関連するSDGs | 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な使用を達成する。 |
その他、同社がインパクトとして特定した項目の中でKPIとして目標を設定しなかったものについては以下の通りであり、引き続きそれぞれの取り組みを確認していく。
4-4.その他KPIを設定しないインパクトとSDGsとの関連性
事業活動 | 関連するSDGsのターゲット | SDGsの ゴール |
〈社会面〉 外国人研修生の受け入れ | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 | |
食品衛生管理 | 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄 物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 | |
安全衛生管理 | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金 を達成する。 |
5.サスティナビリティ管理体制
マルヤスでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、坂崎社長を最高責任者とし、中村社長室室長が中心となって日々の業務やその他活動を棚卸し、自社の事業活動とインパクトレーダー、SDGsの 17 のゴール・169 のターゲットとの関連性について検討を行った。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行後、返済期限までの間において、代表取締役を筆頭に構成される役員会で KPI の達成状況を定期的に確認・協議を行うなど、推進体制を構
築し、各部署において実行していく。
最高責任者 | 代表取締役社長 坂崎 公亮 |
管理責任者 | 社長室室長 中村 龍平 |
担当部 | 社長室 |
6.モニタリング
本件で設定したKPIの進捗状況は、マルヤスと三十三銀行の担当者が年に1回以上の会合を設けることで確認する。モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、三十三
銀行は、同社に対して適切な助言・サポートを行い、KPIの達成を支援する。
7.総合評価
本件はUNEP FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」に準拠した融資である。マルヤスは、上記評価の結果、本件融資期間を通じてポジティブな成果の発現とネガティブな影響の低減に
努めることを確認した。また、三十三銀行は年に1回以上その成果を確認する。
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、三十三総研が、三十三銀行から委託を受けて作成したもので、三十三総研が三十三銀行に対して提出するものです。
2.三十三総研は、依頼者である三十三銀行および三十三銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するマルヤスから供与された情報と、三十三総研が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
〈本件問合せ先〉
株式会社三十三総研
調査部 主任研究員 中田 丈仁
〒510-0087
三重県四日市市西新地 10 番 16 号第二富士ビル4階
TEL:059-354-7102 FAX:059-351-7066
第三者意見書
2022 年 9 月 9 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社マルヤスに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社三十三銀行 |
評価者:株式会社三十三総研 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、三十三銀行が株式会社マルヤス(「マルヤス」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社三十三総研による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定したPIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。三十三銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際 し、三十三総研と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国 内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分 析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、 中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、三十三銀行及び三十三総研 にそれを提示している。なお、三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義 を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義 する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
三十三銀行及び三十三総研は、本ファイナンスを通じ、マルヤスの持ちうるインパクトを、 UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析 を行った。
この結果、マルヤスがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、三十三銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:三十三銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、三十三銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、三十三銀行からの委託を受けて、三十三総研が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て三十三総研が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、三十三総研が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるマルヤスから貸付人である三十三銀行及び評価者である三十三総研に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評
価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
梶原 敦子 川越 広志
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026