Contract
賃金等の変動に対する
工事請負契約書第25条第6項(インフレスライド条項)運用マニュアル(暫定版)
平成26年2月17日
(令和5年2月15日一部改定)
富 山 x x 林 水 産 部
はじめに
本資料は、工事請負契約書第 25 条第6項のインフレスライド条項について、「賃金等の変動に対する工事請負契約書第 25 条第6項の運用について」(以下「本通知」という。)に関するスライド額の算定方法や発注者及び受注者間における協議等についての運用の考え方を整理したものである。
本資料において、出来形数量の確認や残工事量の算出等において疑義が生じた場合は、関係課と必要に応じ相談等を行い、円滑な執行に努められたい。
1 適用対象工事
(1) 契約書第 25 条第6項の請求は、2(3)に定める残工期が2(2)に定める基準日から2ヶ月以上あること。
(2) 発注者及び受注者によるスライドの適用対象工事の確認時期は、賃金水準又は物価水準の変更がなされた時とする。
・ 全体スライド、単品スライド及びインフレスライドの違い
項 目 | 全体スライド (契約書第 25 条第1項から第4項) | 単品スライド (契約書第25 条第5項) | インフレスライド (契約書第25 条第6項) | |
適用対象工事 | 工期が 12 ヶ月を超える工事 但し、基準日以降、残工期が2ヶ月以上ある工事 (比較的大規模な長期工 事) | すべての工事 | すべての工事 但し、基準日以降、残工期が2ヶ月以上ある工事 | |
請負額変更の方法 | 対 象 | 請負契約締結の日から 12 ヶ月経過した基準日以降の残工事量に対する資 材、労務単価等 | 部分払いを行った出来形部分を除く全ての資材(鋼材類、燃料油類等) | 基準日における残工事量に対する資材、労務単価等 |
受発注者の負担 | 残工事費の1.5% | 対象工事費の1.0% (但し、全体スライド又はインフレスライドと併用の場合、全体スライド又はインフレスライド適用期間に おける負担はなし) | 残工事費の1.0% (契約書第29 条「天災不可抗力条項」に準拠し、建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう 定められた「1%」を採用) | |
再スライド | 可 能 (全体スライド又はインフレスライド適用後、12 ヶ月経過後に適用可能) | な し (部分払いを行った出来形部分を除いた工期内全ての資材を対象に、精算変更契約後にスライド額を算出するため、再スライドの必要 がない) | 可 能 |
2 請求日及び基準日等について
請求日及び基準日等の定義は、以下のとおりとする。
(1) 請求日 スライド変更の可能性があるため、発注者又は受注者が請負代金額の変更の協議(以下「スライド協議」という。)を請求した日とする。
(2) 基準日 請求があった日から起算して、14 日以内で発注者と受注者とが協議して定める日とし、請求日とすることを基本とする。
(3) 残工期 基準日以降の工事期間とする。
・請求日について
請求に際しては、残工事の工期が基準日(請求日とすることを基本とする。請求日から 14 日以内の範囲で定めることも可とする。)から2ヶ月以上必要であることに留意すること。
なお、請求日の遡りは認めないこととする。
・基準日について
発注者と受注者とが協議して定める基準日は、請求日を基本とするが、これにより難い場合は、請求日から 14 日以内の範囲で定める。
・残工期について
残工期については、基準日における契約工期の残工事期間を基本とするが、基準日までに変更契約を行っていない場合でも先行指示等(工事打合簿で行う指示とする。)により工期延期が明らかな場合には、その工期延期期間を考慮することができる。
3 スライド協議の請求
発注者又は受注者からのスライド協議の請求は、書面(様式1-1又は様式1-2)により行うこととする。
・スライド対象の確認
スライド判定にあたっては、設計変更に伴う変更契約を行った上で、出来形検査し、変動前と変動後残工事請負代金額により判定することを基本とする。
なお、これによりがたい場合、変更契約を行っていない先行指示数量もスライド判定できることとする。
・スライド協議の請求について
発注者又は受注者からのスライド協議の請求は、書面(様式1-1又は様式1-2)により行うこととする。受注者からの請求にあたっては、基準日における出来形(延長や量、位置等を指す)を確認できる資料として、「インフレスライド工事数量総括表」(様式3)、
「工事履行報告書」(実施工程表を添付し、実績が正しく反映されたものとする。)等を添付することとする。
また、基準日設定後に新たに賃金水準等が変更され、かつ、残工事の工期が新たな基準日から2ヶ月以上ある場合には、その都度スライド協議の請求をすることができる。
・スライド額協議開始日について
発注者は、受注者の意見を聴いてスライド額協議開始日を定め、請求日から7日以内に受注者に書面(様式2)により通知する。
・実施フローについて
別添「インフレスライド実施フロー」を参照すること。
4 残工事量の算定
(1) 基準日における残工事量を算定するために行う出来形数量の確認は、発注者が作成するインフレスライド工事数量総括表(様式3)に対応して出来形検査を行うものとすること。
(2) 基準日までに変更契約を行っていないが先行指示されている設計量についても、基準日以降の残工事量についてはスライドの対象とすること。
(3) 現場搬入材料については、認定したものは出来形数量として取り扱うこと。また、下記の材料等についても出来形数量として取り扱う。
ア 工場製作品については、工場での確認又はミルシート等で在庫確保が証明できる材料は出来形数量として取り扱う。
イ 基準日以前に配置済みの現地据付型の建設機械及び仮設材料等(架設用クレーン、仮設鋼材など)も出来形の対象とする。
ウ 契約書にて工事材料契約の完了が確認でき、近隣のストックヤード等で在庫確認が可能な材料は出来形数量として取り扱う。
(4) 工事数量総括表で一式明示した仮設工についても出来形数量の対象とできる。
(5) 出来形数量の計上方法については、発注者側に換算数量がない場合は、受注者側の当該工種に対する構成比率により出来形数量を算出してもよい。
(6) 受注者の責めに帰すべき事由により遅延していると認められる工事量は、増額スライドの場合は、出来形部分に含めるものとし、減額スライドの場合は、出来形部分に含めないものとする。
・出来形数量等の確認方法について
基準日における工事の出来形数量の確認については、本マニュアル記4に基づき実施することを基本とする。
富山県農林水産部の出来形検査は、発注者が作成する「インフレスライド工事数量総括表」(様式3)に対応して行うものとする。発注者は、受注者が作成した資料を基に確認したうえで「インフレスライド工事数量総括表」を作成すること。
なお、発注者側に換算数量がない場合は、受注者に「工事履行報告書(実施工程表を添付)」の提出を求め、これにより工事数量総括表に対応した出来形数量を確認できることと
する。
「工事履行報告書(実施工程表を添付)」による出来形数量の確認
次式により工事数量総括表に対応した出来形を算出する。(ただし、実施工程表は、基準日までに作成されたもので実績が正しく反映されたものとする。)。
出来形数量 = 基準日における設計数量
×(基準日における実施済工程工期/実施工程工期)
本通知に基づくスライド請求を複数回行う場合、2回目以降の基準日における出来形数量の確認方法は、1回目の基準日における確認方法と原則同じ方法によることとする。
なお、基準日以降の賃料等についてもスライドの対象として取り扱うこととする。
・出来形数量等の確認時期について
発注者は、請求日から 14 日以内に出来形検査を行う。
5 請負代金額の変更
(1) 賃金水準又は物価水準の変動による請負代金額の変更額(以下「スライド額」という。)は、当該工事に係る変動額のうち請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額の 100 分の1に相当する金額を超える額とする。
(2) 増額スライド額の算定については、次式により行う。 S増=[P2-P1-(P1×1/100)]
この式において、S増、P1及びP2は、それぞれ次の額を表すものとする。 S増:増額スライド額
P1:請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額 P2:変動後(基準日)の賃金又は物価を基礎として算出したP1に相当する額
(P=Σ(α×Z)、α:落札率、Z:積算額)
(3) 減額スライド額の算定については、次式により行う。 S減=[P2-P1+(P1×1/100)]
この式において、S減、P1及びP2は、それぞれ次の額を表すものとする。 S減:減額スライド額
P1:請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額 P2:変動後(基準日)の賃金又は物価を基礎として算出したP1に相当する額
(P=Σ(α×Z)、α:落札率、Z:積算額)
(4) スライド額は、労務単価、材料単価、機械器具損料並びにこれらに伴う共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の変更について行われるものであり、歩掛の変更については考慮するものではない。
・受注者の負担割合
受注者の負担割合については、工事請負契約書第 29 条の「不可抗力による損害」に準拠し、建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう定められた「100 分の1」としている。
・基準日における特別調査又は見積価格採用単価について
再調査や再見積に多大な労力又は日数を必要とする場合には、当初積算時の類似単価の物価変動率により算定することができる。ただし、当該材料等の工事費全体に占める割合が大きい場合は、別途考慮する。
・複数回スライドを行う場合について
スライド請求を複数回行う場合におけるスライド額の算出も上記に基づき同様に実施するものとする。なお、その場合基準日における請負代金額には、それまでに実施したスライド額を含むものとする。
6 物価指数
発注者は、積算に使用する単価を用いた変動率を物価指数とすることを基本とする。なお、受注者の協議資料等に基づき双方で合意した場合は別途の物価指数を用いることがで
きる。
・積算に使用する単価について
変動後の価格を算定する際に用いる材料単価等については、発注者が積算に使用している物価資料等の基準日における価格を基礎とする。
・基準日における特別調査又は見積価格採用単価について
再調査や再見積に多大な労力又は日数を必要とする場合には、当初積算時の類似単価の物価変動率により算定することができる。ただし、当該材料等の工事費全体に占める割合が大きい場合は、別途考慮する。
7 変更契約の時期
スライド額に係る契約変更は、精算変更時点で行うことができる。
スライド額に係る変更契約の締結は、精算に係る変更契約時に併せて行うことができるものとする。
・スライド額確定後の変更について
スライド額確定後に残工事量が変更となった場合は、変更契約に併せて変更できるものとし、スライド額を再算定したスライド額調書(様式4-2)及びインフレスライド工事
数量総括表(様式3)を設計図書として添付するものとする。
8 全体スライド及び単品スライド条項の併用
(1) 契約書第 25 条第1項から第4項までに規定する全体スライド条項に基づく請負代金額の変更を実施した後であっても、本運用によるスライドを請求することができる。
(2) 本運用に基づき請負代金額の変更を実施した後であっても、契約書第 25 条第5項に規定する単品スライド条項に基づく請負代金額の変更を請求することができる。
・契約書第 25 条第6項に規定するインフレスライド条項は、材料価格を含む物価や賃金等の変動に伴う価格水準全般の変動について対応するものであることから、単品スライド条項の適用となっている材料を含めて、まずインフレスライド条項によるスライド額を算出することが基本となる。その上で、インフレスライド条項との重複を防止するため、インフレスライド条項の対象とした数量については、変動前の単価をインフレスライド条項の適用日の単価として単品スライド条項のスライド額を算出することとなる。
・また、インフレスライド条項と単品スライド条項とをそれぞれ単独で考えれば、前者においては残工事費の1%、後者においては対象工事費の1%、それぞれで受注者の負担が生じることとなる。両スライドのルールをそのままそれぞれ適用した場合には、受注者にリスクを重複して負担させることになり、結果的にリスク負担が過大なものとなる。
・このような過大なリスク負担を回避するため、単品スライド条項のみが適用される期間においては当該期間の工事費の1%を受注者の負担とするが、インフレスライド条項と単品スライド条項が併用されている期間においては、インフレスライド条項の適用により受注者が負担する残工事費の1%をもって既に単品スライド条項に係るリスク負担がなされているとの考え方に基づき、単品スライド条項に係る1%分の負担を求めないこととした。
・さらに、単品スライド条項に係る対象工事費は基本的には最終的な全体工事費であり、インフレスライド条項と併用した場合の対象工事費はインフレスライド条項に係るスライド額を含む変更後の総価となる。