Contract
2022 年 3 月 31 日
各 位 株式会社 三十三銀行
株式会社主婦の店との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
株式会社三十三銀行(頭取:xx xx)は、持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、株式会社主婦の店(社長:xx x)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたのでお知らせいたします。
本件の取り組みにあたっては、株式会社三十三総研(社長:xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。今後も「三十三フィナンシャルグループSDGs宣言」のもと、企業活動を通じてSDGsの達成に貢献することで、持続可能な社会の実現に努めてまいります。
(※) 企業活動が「社会・経済・環境」のいずれかに与えるインパクトを包括的に分析・特定し、ポジティブインパクトが期待できる活動と、ネガティブインパクトを低減する活動を支援するもので、借入人様によるSDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、借入人様から情報開示を受けながら当行がその過程を定期的にモニタリングするものです。
1. 融資概要
(1) | 契約日 | 2022年3月31日 |
(2) | 融資金額 | 100百万円 |
(3) | 期間 | 7年 |
(4) | 資金使途 | 運転資金 |
2. 借入人概要
(1) 企業名
(2) 所在地
(3) 事業内容
株式会社主婦の店
xxxxxxxxxx00x00x
食料品等小売業(スーパーマーケット)
1958年設立。三重xx紀州地域で初のスーパーマーケット「主婦の店(栄町店)」を開業し、現在、2市2町(尾鷲市、熊野市、紀北町、紀宝町)にて加盟しているCGCグループのスケールメリットを生かしたスーパーマーケットを7店舗展開している。同社は事業活動を通じて、東紀州地域の日常を支える「食のライフ
ライン」を担っている。
(4) 従業員数
(5) 資本金
188名
40百万円
3. 特定インパクトと測定するKPI
(1) 経済面 包摂的で健全な経済(ポジティブ)、経済収束(ポジティブ)
① 2027年までに、経営委員における女性割合を50%にする
(現在:25%)
②2029年まで毎年、ローカルブランド商品を10アイテム増加する(現在:300アイテム)
(2) 社会面 食糧(ポジティブ)、保健・衛生(ネガティブ)
①2028年までに、同社が出店する2市・2町との間で災害時の物資供給に関する協定を締結する(現在:2市1町)
②2025年までに、HACCPに基づく衛生管理の手順を整備し、手順書を制定する
③2025年までに、安全・衛生管理に関する勉強会を定例実施する
(3) 環境面 気候(ネガティブ)、廃棄物(ネガティブ)
①2029年まで毎年、再生可能エネルギー以外のエネルギー使用量を前年比1%削減する
②2028年までに、食品廃棄率(廃棄金額÷売上金額×100)を 1.20%以下にする(2021年実績:1.44%)
③2024年度までに、食品循環資源の再生利用等実施率を60%以上にする(2020年度実績:53.5%)
④2027年度までに、売上高1億円あたりの特定容器包装の使用量(回収量を除く)を2020年度比20%削減する(2020年度実績:0.72㌧)
4. お問い合わせ先
(1) 三十三銀行 担当部署担当者 | ソリューション営業部xx・xx | 営業企画部xx・xx |
連絡先 | 059-354-7144 | 059-354-7120 |
(2) 三十三総研 | ||
担当部署 | 調査部 | コンサルティング部 |
担当者 | xx | xx |
連絡先 | 059-354-7102 | 059-351-7417 |
以 上 |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年 3 月 31 日 株式会社三十三総研
三十三総研は、三十三銀行が、株式会社主婦の店に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、株式会社主婦の店の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価にあたっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国際環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及びESGハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
目次
1.評価対象の概要 2
2.株式会社主婦の店の概要 2
2-1.基本情報
2-2.事業内容
2-3.経営方針 事業活動
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性 10
3-1.経済面のインパクト
3-2.社会面のインパクト
3-3.環境面のインパクト
4.測定するKPI とSDGsとの関連性 13
4-1.経済面(ポジティブ)
4-2.社会面(ポジティブ)
4-3.社会面(ネガティブ)
4-4.環境面(ネガティブ)
4-5.その他KPI を設定しないインパクトについてSDGsとの関連性
5.サスティナビリティ管理体制 18
6.モニタリング 19
7.総合評価 19
1.評価対象の概要
企業名 | 株式会社主婦の店 |
借入金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
契約日及び返済期限 | 2022 年 3 月 31 日 ~ 2029 年 3 月 15 日 |
2.株式会社主婦の店の概要
2-1.基本情報
本社所在地 | xxxxxxxxxx 00 x 00 x |
センター・営業所等 | 本部(尾鷲市)、JV センター(伊勢市) 〈店舗〉 【尾鷲市】セントラルマーケット、サンバースト、せぎやま店 【熊野市】熊野店 【紀北町】xx店、xx店 【紀宝町】パシフィックマーケット |
従業員数 | 188 名(2021 年 8 月 31 日時点) |
資本金 | 40 百万円 |
業種 | 食料品等小売業(スーパーマーケット) |
主要取引先 | ㈱東海シジシー、三菱食品㈱、JA全農、xx中部㈱ |
沿革 | 1958 年 5 月 株式会社主婦の店 設立 1958 年 7 月 尾鷲市に栄町店(1 号店)開店 主婦の店全国チェーンに加盟 1976 年 9 月 主婦の店xx店(海山町)開店 1979 年 3 月 共同仕入機構CGCジャパンに加盟 1979 年 12 月 主婦の店せぎやま店(尾鷲市)開店 1988 年 4 月 主婦の店サンバースト(尾鷲市)開店 1998 年 11 月 主婦の店長島店(xxx島町(現紀北町))開店 2003 年 6 月 愛知県xx市にCGC東海JDセンター完成、共同配送開始 2003 年 11 月 主婦の店熊野店(熊野市)開店 2005 年 11 月 みんなのCGCシステム(SM業務支援システム)稼働 2006 年 11 月 主婦の店セントラルマーケット(尾鷲市)開店 2018 年 5 月 創業 60 周年を迎える 2018 年 6 月 主婦の店パシフィックマーケット(紀宝町)開店 |
2-2.事業内容
株式会社主婦の店(以下、主婦の店)は、1958(昭和 33)年 5 月、尾鷲市内の薬局や衣料品店、菓子店など地域の商店主が共同出資して会社を設立。同年 7 月、三重xx紀州地域で初のスーパーマーケット「主婦の店 栄町店」(尾鷲市)を開業し、現在、2 市 2 町(尾鷲市、熊野市、紀北町、紀宝町)にスーパーマーケット「主婦の店」を 7 店舗展開している。売上構成は、水産・畜産・農産などの生鮮品が約 50%、日配(卵、冷凍食品など)・菓子などのドライグロッサリーが約 50%となっている。域内シェアは、本部を置く尾鷲市内が約 40%、尾鷲市以外の出店地域が約 30%となっている。同社は事業活動を通じて、東紀州地域の日常を支える「食のライフライン」を担っている。
【事業プロセス】
(1)CGC グループ加盟による協業
同社は、1979(昭和 54)年より、全国の中堅・中小スーパーマーケットで構成する協業組織
「CGC グループ」(※)に加盟し、商品仕入、物流、情報システム、営業支援などの分野で同グループのスケールメリットを生かした協業体制のもとで事業活動を行っている。
同社では、生鮮品(水産・畜産・農産)を卸売業者や地元の尾鷲・紀伊xx・鵜殿の各漁港からそれぞれ仕入れ、酒や鶏卵などの地域商材を卸売業者から、ローカルブランド(LB)と呼ばれる地元商材を各生産者から仕入を行っている。これらの食品を除く、全国で販売されているナショナルブランド(NB)商品とプライベートブランド(PB)商品を、CGC グループの共同仕入によって調達し、同グループの物流ネットワークを利用して各店舗まで毎日搬送している。同社では、約 40%の商品をCGC グループの共同仕入によって調達している。
(※)全国 204 社、4,213 店のスーパーマーケットが加盟(2022 年 3 月 1 日時点)。㈱シジシージャパンが本部機能を担い、主に「商品」「物流」「情報システム」「営業支援」の分野で協業活動を行っている。
商材仕入の流れ
(2)業務運営
同社は、全社共通の方針に加えて、店舗毎に水産や畜産など重点強化部門について生産性向上などの活動方針を毎年策定して業務運営を行っている。同社では、商品仕入や在庫管理などの店舗運営、経理や勤怠管理などの本部運営において、業務支援システム「みんなの CGC システム」(みんシス)を活用している。みんシスは、商品の基本情報、取引条件の管理、発注・仕入や在庫、利益管理などの基幹業務に加え、売上実績などの情報分析や、経理、勤怠管理などのバックオフィス機能などを統合した CGC グループ独自のシステムで、同社は 2005(平成 17)年に導入。POS システムと連動した商品の自動発注、販売状況や粗利分析の検証、そのほか社内コミュニケーションツールなど、同社の事業活動を支える情報インフラとしてみんシスを活用して、店舗運営を行っている。
2-3.経営方針 事業活動
【企業理念】
主婦の店は、以下の経営理念などを定めた「企業理念」、経営の基本価値などを定めた「経営価値基準」、経営方針などを定めた「主婦の店ウェイ」の3つの柱で構成する『基本理念』を掲げている。
〈経営理念(信頼される企業づくり)〉
■「お客様に信頼される、誠実で親切な会社を目指す」
■「お取引先さまに信頼される、誠実で安定成長する会社を目指す」
■「社員に信頼される、誠実でxxな会社を目指す」
■「変化に対応できる攻めの組織と個の力で、企業価値の創造を目指す」
xx社長は、「地域社会への貢献を永続する企業づくりが、私たちの使命です。そのために “思い”を共有する人々が集まり、『基本理念』を守りながら、規律ある成長を続けていく。」としている。
【女性幹部の育成】
同社では、店舗および本部(商品本部・事務本部・CS 本部)の管理責任者として、「経営委員」が中心的な役割を担っており、次世代の経営委員を育成するための「社内リーダー育成研修」を継続的に実施している。会社が指定する研修参加者は、1年間の研修を通して、食品ロス削減、粗利分析、欠品管理、安全管理など事業活動の重要管理項目について履修し、管理能力を高める。同社では全従業員の 70%を占める女性従業員の指導的役割を高めるため、社内リーダー研修に女性従業員を積極的に指名し、経営委員における女性割合を引き上げることによって、多様性のある企業を目指している。
経営委員(全16名)
商品本部マネージャー | 6名(うち女性1名) |
事務本部マネージャー | 2名(うち女性2名) |
店長 | 7名(うち女性0名) |
CS本部トレーナー | 1名(うち女性1名) |
社内リーダー研修
【地産地消の推進】
同社は、健康で豊かな食生活につながる食材の提供を通じて地域経済活性化への貢献を目指し、約 300 アイテムのローカルブランド(LB)商品の取り扱いを通じて、地元食材の地産地消を推進している。また、2008(平成 20)年より、地元ケーブルテレビで東紀州地域の伝統料理・食文化の魅力を紹介する情報番組「しあわせごはん 主婦の店」(15 分、毎月2
しあわせごはん 主婦の店(ZTV)
回更新)を企画・放映し、視聴者に同地域の地元料理・食材への関心を高める取り組みを行っている。
【災害発生時の食糧供給】
同社は、「この地域になくてはならないお店」づくりの一環として、同社が出店する地域で災害が発生した際に、被災地域へ速やかに食糧を供給できる体制を構築している。同社と同じく CGC グループに加盟している県内の同業2社
((株)ぎゅーとら(伊勢市)、(株)マルヤス(津市))と共同で水
2ℓ×1,440 本、パックご飯360 食(いずれも同社備蓄分)を鈴鹿市内の倉庫に備蓄しているほか、尾鷲市、熊野市、紀北町との間で、それぞれ災害時における物資供給に関する協
備蓄食糧(鈴鹿市内の倉庫)
定を締結している。同社は、出店している全ての自治体との間で協定を締結する計画を進めている。
【雇用の創出】
同社は、地元就職、Uターン・Iターン就職希望者を対象に毎年新卒者を新規採用しているが、新卒採用の安定化を図るため、2022 年度より自社 HP とケーブルテレビで放映するリクルート動画の制作を進めている。また、高齢者の雇用創出にも積極的に取り組み、60 歳定年後も 65 歳まで希望者を嘱託雇用し、さらに希望する従業員には 65 歳以上の雇用延長を行い、
「社内マイスター」として、後進指導の役割を担っている。現在、従業員の約 1 割にあたる 23 名
の社内マイスターが在籍している。(2022 年 2 月 28 日現在)
【労働環境の整備】
同社は、基本理念の「経営価値基準」の一つに「Great Place to Work(働きやすい環境づくり)」を掲げ、毎日の終礼開始時刻を繰り上げて定時退社を呼びかけ、所定外労働時間を削減する工夫や、有給休暇制度の充実など就業規則や各規定の見直しと改善など、労働環境の整備に向けた取り組みを継続的に行っている。
【従業員教育の充実】
同社は、従業員のスーパーマーケット業務における知識と技術の向上にも注力している。従業員に能力検定試験
「S検」の取得を推進し、身につけたスキルを生かす機会として、CGCグループが毎年主催する、レジスター業務の接客技術を競うコンテスト「チェッカーフェスティバル」にも参加し、全国大会で上位入賞する社員も輩出している。同社では検定合格者やコンテスト参加に対する成果としてインセンティブを支給している。
【安全・衛生管理の徹底】
同社は、食品を取り扱う事業者として、衛生管理や異物混入対策を厳格に実施している。HACCP に基づく衛生管理のほか、5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)活動を実践し、毎日、担当者が整理整頓、清掃状況、衛生状況など 81項目を点検して店長に報告し、月次で本部の5S委員会が点検・改善指導を行っている。もっとも、同社では、これらの安全・衛生管理業務を、主に項目毎にチェックシート化し、目視、紙ベースで点検・管理を実施しているが、体系的な手
社内接客コンテスト
5S 活動
順書にまとめていないため、手順が曖昧になっていること、従業員が周知するための勉強会などの機会が不定期であるため従業員の安全・管理に対する認識に差が生じることから、安全・衛生管理業務における手順の体系化、従業員に対する勉強会の定例実施など、安全・衛生管理体制を一層強化する取り組みが課題であると認識している。
【環境負荷の低減】
(1)CO2排出量の削減
同社は、環境自主行動計画を策定し、温室効果ガス(CO2)排出の元となるエネルギー使用量削減の目標を掲げ、2010(平成 22)年から、店舗の照明やショーケースなどの設備を省エネ対応設備に切り替える取り組みを行っている。全7店舗のうち、すでに切り替えが完了した5店舗におけるエネルギー削減量は原油換算で累計 2,234
㎘、CO2 排出量削減効果は累計 3,748t‐CO2 となっており、残る2店舗の切り替えを進めている。
〈私たちの環境自主行動計画〉
〈環境理念〉
株式会社主婦の店は、施設運営において排出されるCO2 の低減に努めることが地球環境の保全に寄与することと認識し、温室効果ガス排出の元となるエネルギー使用量の削減について、積極的に取り組んでまいります。
〈数値目標〉
全社でエネルギー使用量(原油換算)を前年比1%削減することを目標とします。
(2)食品廃棄物の削減と再生利用等
同社は、資源の有効活用や環境への配慮から、食品廃棄物の削減に向けた取り組みを行っている。鮮魚の加工(煮付けや焼き物)、畜産ケースを冷蔵から冷凍に変更、真空包装による長期保存など、商品の賞味期限を延長する取り組みにより、食品廃棄物は金額ベースで2年連続減少している。また、食品廃棄物の再生利用等にも取り組み、飼料への再生利用等実施率は 53.5%(2020(令和2)年度)となっているほか、廃油をボイラー燃料として再生燃料化している。同社では、再生利用等実施率について、食品リサイクル法に基づく「2024(令和6)年度までに達成する業界全体目標 60%(食品小売業)」の達成に向け、新たに肥料への再生利用に取り組む予定である。
食品リサイクル法に基づく再生利用事業計画の認定実例(農林水産省)
(3)容器包装資材の使用量削減
同社は、容器包装資材の使用量削減によるゴミ削減に向けた取り組みを行っている。食品トレーの軽量・小型化、リサイクル原料から再生したトレーへの切り替え、食品トレーを使用しない量り売り販売など、使用する容器包装資材の見直しのほか、牛乳パックやトレー、ペットボトルなどリサイクル可能品の回収ボックス設置、買い物レジ袋不要の場合のポイントサービス、お客様を招待してリサイクル工場見学などを通して資源回収の取り組みを実施している。
リサイクル工場見学
【人にやさしい店づくり】
同社は、三重県内でも65歳以上人口の高齢化率が高い東紀州地域のスーパーマーケットとして、全店舗でxxxの段差をなくすバリアフリー対応、専用レジ・トイレ・駐車場の設置など、身体が不自由な方にも気軽に買い物をしてもらえるよう人にやさしい店づくりに取り組んでいる。
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性
※色の濃い項目が同社のインパクト領域
本ファイナンスでは、主婦の店の事業について、国際標準産業分類における「食料品、飲料またはたばこが主な非専門店小売業」として整理された。その前提のもとでのUNEP FIのインパクト分析ツールを用いた結果、「包摂的で健全な経済」「食糧」「雇用」に関するポジティブ・インパクト、「保健・衛生」「雇用」に関するネガティブ・インパクトが分析された。
一方、事業活動等を踏まえ、本ファイナンスで特定された同社のインパクトは以下の通りである。
経済面では、全従業員の 70%を占める女性の指導的役割を重視した女性幹部育成の取り組みが「包摂的で健全な経済」、食材の提供を通じて地域経済活性化への貢献を目指した地元食材の地産地消推進が「経済収束」に関するポジティブ・インパクトであると想定される。
社会面では、食糧備蓄や出店地域の自治体との協定締結など災害発生時の食糧供給が
「食糧」、65歳以上の雇用延長、従業員の業務知識と技術の向上支援に向けた従業員教育の充実が「雇用」に関するポジティブ・インパクトであると想定される一方、HACCPに基づく衛生管理や5S活動による安全・衛生管理の徹底が「保健・衛生」、所定外労働時間の削減や有給休暇制度の充実などに向けた就業規則や各規程の見直しと改善が「雇用」に関するネガティ
ブ・インパクトを低減させている。
環境面では、店舗設備の省エネ対応設備への切り替えによるCO2排出量の削減の取り組みが「気候」、資源の有効活用のための食品廃棄物の削減と再生利用等の取り組み、容器包装資材の使用量削減の取り組みが「廃棄物」、身体の不自由な方に配慮した人にやさしい店づくりが「資源効率・安全性」に関するネガティブ・インパクトを低減させている。
3-1.経済面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ) 包摂的で健全な経済経済収束 | 女性幹部の育成 | ・全従業員の70%を占める女性従業員の指導的役割を高めて、多様性のある企業を目指した女性幹部育成の取り組み |
地産地消の推進 | ・食材の提供を通じて地域経済活性化への貢献を目指し、ローカルブランド(LB)商品の取り扱いを通じて、地元食材の地産地消を推進する取り組み |
3-2.社会面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ)食糧 雇用 | 災害発生時の食糧供給 | ・県内同業者(㈱ぎゅーとら・㈱マルヤス)と共同で、災害時に被災地域に供給する食糧 (水とパックごはん)を備蓄 |
・尾鷲市、熊野市、紀北町との間で、災害時における物資供給に関する協定締結 | ||
雇用の創出 | ・65歳以上の雇用延長による後進指導(マイスター制度) | |
従業員教育の充実 | ・能力検定「S検定」の推進、チェッカーフェスティバルへの参加による業務知識と技術の向上支援とインセンティブ支給 |
(ネガティブ)保健・衛生雇用 | 安全・衛生管理の徹底 | ・HACCPに基づく衛生管理、異物混入対策の実施 |
・全店舗での5S活動、および5S委員会による改善指導の取り組み | ||
労働環境の整備 | ・終礼時、定時退社の呼びかけによる所定外労働時間の削減、有給休暇制度の充実など就業規則や各規定の見直しと改善 |
3-3.環境面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ネガティブ)気候 廃棄物 資源効率・安全性 | CO2排出量の削減 食品廃棄物の削減と再生利用等 | ・店舗設備の省エネ対応設備への切り替え ・鮮魚の加工や冷蔵ケースから冷凍ケースへの変更などにより商品の賞味期限を延長して、食品廃棄物を削減する取り組み |
・食品廃棄物の肥料、飼料への再生利用および、廃油のボイラー燃料への再生燃料化 | ||
容器包装資材の使用量削減 | ・食品トレーの軽量化、エコトレーへの切り替え、量り売り販売、牛乳パックや食品トレーの回収などの取り組みによる容器包装資材の使用量削減 | |
人にやさしい店づくり | ・バリアフリー対応、専用レジ・トイレ・駐車場の設置など、身体が不自由な方にも配慮した人にやさしい店づくり |
4.測定するKPIと SDGsとの関連性
主婦の店は、本ファイナンス期間において以下の通りKPIを設定する。
経済面では、①全従業員の 70%を占める女性従業員の指導的役割を高める女性幹部育成の取り組みが、同社の多様性につながると期待できることから、経営委員における女性割合、②地元食材の地産地消の推進が、食材の提供を通じて地域経済活性化への貢献に期待できることから、ローカルブランド商品のアイテム数を目標として設定する。
社会面では、①食糧の備蓄や自治体との物資供給に関する協定を通して、災害発生時に被災地域に対する食糧供給の貢献が期待できることから、協定を締結する自治体の拡大、
②食品の取扱における安全・衛生管理体制の強化を図る取り組みを目標として設定する。環境面では、①店舗設備の省エネ対応設備への切り替えが、CO2排出量削減への貢 献に期待できることから、エネルギー使用量、②食品廃棄物の削減と再生利用等の取り組みを通して廃棄物削減への貢献が期待できることから、食品廃棄割合と食品循環資源の再生利用等実施率、③容器包装資材のリサイクルを通して廃棄物削減への貢献が期待でき
ることから容器包装資材使用量を目標として設定する。
同社では、現時点では具体的な出店に伴う増員計画はなく、従来より通年で採用活動を実施しているほか、65歳以上の雇用延長を希望者全員に実施していること、同じく通年で従業員に対する能力検定の推奨と接客技術を競うコンテストに毎年参加していることから、雇用に関するポジティブ・インパクトの目標を設定せず、モニタリングを通じて雇用状況を確認する。また所定外労働時間の削減や有給休暇制度の充実に向けた就業規則や各規程の見直し・改善による労働環境の整備についても適宜実施しているため、雇用に関するネガティブ・インパクトの目標を設定せず、モニタリングを通じて労働環境整備の実施状
況を確認する。さらに、店舗のバリアフリー対応や専用レジなど身体が不自由な方に配慮した人にやさしい店づくりの取り組みについても適宜実施しているため、資源効率・安全性に関するネガティブ・インパクトの目標を設定せず、モニタリングを通じて人にやさしい店づ
くりの実施状況を確認する。
4-1.経済面(ポジティブ)
特定インパクト | 包摂的で健全な経済 | |
取組、施策等 | 【女性幹部の育成】 ・全従業員の70%を占める女性従業員の指導的役割を高めて、多様性のある企業を目指した女性幹部育成の取り組み | |
借入期間におけるKPI | ・2027 年までに経営委員における女性割合を50%(現在25%) | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社 会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
特定インパクト | 経済収束 | |
取組、施策等 | 【地産地消の推進】 ・食材の提供を通じて地域経済活性化への貢献を目指し、地元食材の地産地消を推進 | |
借入期間におけるKPI | ・2029 年まで毎年、ローカルブランド(LB)商品を 10 アイテム増加 (現在約 300 アイテム) | |
関連するSDGs | 2.3 2030 年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。 9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及びGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後 発開発途上国については同割合を倍増させる。 |
4-2.社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 食糧 | |
取組、施策等 | 【災害発生時の食糧供給】 ・尾鷲市、熊野市、紀北町との間で、災害時における物資供給に関する協定締結 | |
借入期間におけるKPI | ・2028 年までに、同社が出店する2市・2町との間で災害時の物資供給に関する協定を締結する (現在、2市1町と協定締結) | |
関連するSDGs | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 2.c 食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食料市場及びデリバティブ市場の是正な機能を確保するための措置を講じ、食料備蓄などの市 場情報への適時アクセスを容易にする。 |
4-3.社会面(ネガティブ)
特定インパクト | 保健・衛生 | |
取組、施策等 | 【安全・衛生管理の徹底】 ・HACCPに基づく衛生管理、異物混入対策 ・全店舗での5S活動および5S委員会による点検・改善指導 | |
借入期間におけるKPI | ・2025 年までに、HACCPに基づく衛生管理の手順を整備し、手順書制定 (現在、項目毎にチェックシート化、目視、紙ベースで点検・管理) ・2025 年までに、安全・衛生管理に関する勉強会の定例実施 (現在、勉強会を不定期に実施) | |
関連するSDGs | 3.3 2030 年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への 放出を大幅に削減する。 |
4-4.環境面(ネガティブ)
特定インパクト | 気候 | |
取組、施策等 | 【CO2 排出量の削減】 ・CO2排出量削減のため、店舗設備の省エネ対応への切り替え | |
借入期間におけるKPI | ・2029 年まで毎年、再生可能エネルギー以外のエネルギー使用量 を前年比1%削減 | |
関連するSDGs | 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改 善率を倍増させる。 |
特定インパクト | 廃棄物 | |
取組、施策等 | 【食品廃棄物の削減と再生利用等】 ・鮮魚の加工や冷蔵ケースから冷凍ケースへの変更などにより商品の賞味期限を延長して、食品廃棄物を削減 ・食品廃棄物の肥料、飼料への再生利用および、廃油のボイラー燃料への再生燃料化 【容器包装資材の使用量削減】 ・食品トレー等の軽量・小型化、再生トレーへの切り替え、食品トレーを使用しない量り売り販売、牛乳パックやトレーなどリサイクル可能品の回収、買い物レジ袋不要時のポイントサービスなどによる、容器包装資材の使用量削減 | |
借入期間におけるKPI | ・2028 年までに、食品廃棄率(廃棄金額÷売上金額×100)を 1.2%以下 (2021 年 1.44%) ・2024 年度までに、食品循環資源の再生利用等実施率を 60%以上 (2020 年度 53.5%) ・2027 年度までに、売上高1億円あたりの特定容器包装の使用量 (回収量を除く)を 2020 年度比 20%削減 (2020 年度 0.72 ㌧) | |
関連するSDGs | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な使用を達成する。 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に 削減する。 |
4-5.その他KPIを設定しないインパクトについて SDGsとの関連性
事業活動 | 関連するSDGsのターゲット | SDGsの ゴール |
〈社会面〉雇用の創出 | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 | |
従業員教育の充実 | 8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。 | |
労働環境の整備 | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金 を達成する。 | |
〈環境面〉 人にやさしい店づくり | 11.7 2030 年までに、女性、子ども、高齢者及び障害者を含め、人々に安全で包摂的かつ利用が容易な緑地や公共スペースへの普遍的アクセスを提供する。 |
5.サスティナビリティ管理体制
主婦の店では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、北裏社長を責任者とし、事務本部が主体となって日々の業務やその他活動を棚卸することで、自社の事業活動とインパクトレーダーとの関連性について検討をした。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行後、返済期限までの間においても、社長と事務
本部を中心に、KPIの達成を図っていく。
最高責任者 | 代表取締役社長 北裏 大 |
管理責任者 | 取締役事務マネージャー 大山かづい |
担当部署 | 事務本部 |
6.モニタリング
本件で設定したKPIの進捗状況は、主婦の店と三十三銀行の担当者が年に1回以上の会合を設けることで確認する。モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、三十三
銀行は、主婦の店に対して適切な助言・サポートを行い、KPIの達成を支援する。
7.総合評価
本件はUNEP FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」に準拠した融資である。主婦の店は、上記評価の結果、本件融資期間を通じてポジティブな成果の発現とネガティブな影響の低減に
努めることを確認した。また、三十三銀行は年に1回以上その成果を確認する。
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、三十三総研が、三十三銀行から委託を受けて作成したもので、三十三総研が三十三銀行に対して提出するものです。
2.三十三総研は、依頼者である三十三銀行および三十三銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する主婦の店から供与された情報と、三十三総研が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
〈本件問合せ先〉
株式会社三十三総研
調査部 主任研究員 中田 丈仁
〒510-0087
三重県四日市市西新地 10 番 16 号第二富士ビル4階
TEL:059-354-7102 FAX:059-351-7066
第三者意見書
2022 年 3 月 31 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社主婦の店に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社三十三銀行 |
評価者:株式会社三十三総研 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、三十三銀行が株式会社主婦の店(「主婦の店」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社三十三総研による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定したPIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。三十三銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際 し、三十三総研と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国 内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分 析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、 中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、三十三銀行及び三十三総研 にそれを提示している。なお、三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義 を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義 する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
三十三銀行及び三十三総研は、本ファイナンスを通じ、主婦の店の持ちうるインパクトを、 UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析 を行った。
この結果、主婦の店がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、三十三銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:三十三銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、三十三銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、三十三銀行からの委託を受けて、三十三総研が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て三十三総研が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、三十三総研が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である主婦の店から貸付人である三十三銀行及び評価者である三十三総研に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
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