Contract
21 協力及び能力開発
A) 協力及び能力開発の目的、方法、分野(21.1 条~21.2 条)
締約国は、この協定の実施及びこの協定の利益の増大を支援するための協力及び能力開発の活動であって、経済成長及び開発を加速させることを目的とするものを行い、及び強化する(21.1 条 1)。締約国は、協力及び能力開発の活動を二以上の締約国間で相互の合意に基づいて行うことができることを認め、当該締約国間の現行の協定又は取決めを補完し、及び強化するよう努める(21.1 条 2) *。
協力及び能力開発の活動に含まれる分野の例としては、(a)農業、工業及びサービスの部門、(b)教育、文化及び性の平等の促進、(c)災害リスクの管理が挙げられる(21.2 条 2)。
B) 資源の提供(21.5 条)
締約国は、締約国間の開発の水準の相違を認め、協力及び能力開発の活動のための適当な資金又は現物の資源を、各締約国の相対的な能力及び資源の入手可能性の範囲内で提供するよう努めなければならない(21.5 条) *。
C) 連絡部局(21.3 条)
各締約国は、協力及び能力開発の活動の調整に関する事項についての連絡部局を指定し、及び通報する(21.3 条 1)。締約国は、他の締約国に対し、この協定に関する協力及び能力開発の活動の要請を、連絡部局を通じて行うことができる(21.3 条 2)。
D) 協力・能力xxx委員会(21.4 条)
各締約国の政府の代表者から成る、協力及び能力開発に関する小委員会を設置する(21.4条 1)。この小委員会の活動には、(a)様々な分野における締約国間の情報交換を円滑にすること、(b)将来の協力及び能力開発の活動に関する問題又は提案を検討すること、などが含まれる(21.4 条 2)。
E) 紛争解決の不適用(21.6 条)
* xxx xxより/北海道大学大学院法学研究科・公共政策学連携研究部准教授
# *=「II. 解説・コメント」の対象となる条文・記述。
この章の規定の下で生ずる事項について、第 28 章(紛争解決)の規定による紛争解決を求めることはできない(21.6 条) *。
II. 解説・コメント
《協力章の位置づけ》 これまで日本が締結した経済連携協定(EPA)においても、特に相手国が発展途上国である場合には、協力や能力開発に関する章が設けられてきた。幅広い分野をカバーする EPA を実施ないし利用するうえで、発展途上国の行政府や民間部門は必ずしも十分な能力を備えていないため、先進国による能力開発支援がこうした協定を機能させるための重要な要素になる。もっとも、協力や支援の内容は条約上で詳細に定めず、状況に応じた政策判断に委ねることがほとんどである。TPP でも、協力のための資源提供は努力規定にとどまり(21.5 条)、具体的な協力・支援内容は個別の国々の間で柔軟に取り決めることが想定されている(21.1 条 2)。こうした性格ゆえに、本章の規定は紛争解決手続の対象からも除外されている(21.6 条)。
III. 備考および更新情報該当情報なし。