BOT方式:Build, Operate and Transfer の略称。民間事業者が施設を建設し、維持・管理及び運営し、事業終了後に管理者等に施設所有権を移転する事業方式。
標準契約書モデル及び
その解説(案)
※本資料は、契約ガイドラインの内容を項ごとに別途検討した章構成に入れ込み、タイトル番号揃え、新規検討分の挿入部分を整理したものである。別添契約例も含め、ドラフト段階のものであり、今後内容を精査する。
参考資料1
本「標準契約書モデル(案)」に引用した法令等は次のとおりである。
法律
・民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(xxxx年七月三十日法律第百十七号):以下「PFI法」と略称。
・地方自治法(昭和二十二年四月十七日法律第六十七号)
・国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)
・行政機関の保有する情報の公開に関する法律(昭和二十四年十二月十二日法律第二百五十六号):以下「情報公開法」と略称。
・会計法(昭和二十二年三月三十一日法律第三十五号)
・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年十一月二十七日法律第百二十七号):以下「入札契約適正化法」と略称。
・公共工事の前払金保証事業に関する法律(昭和二十七年六月十二日法律第百八十四号)
・政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年十二月十二日法律第二百五十六号):以下「支払遅延防止法」と略称。
・国有財産法(昭和二十三年六月三十日法律第七十三号)
・国の債権の管理等に関する法律(昭和三十一年xx二十二日法律第xx四号)
・建築基準法(昭和二十五年xx二十四日法律第二百一号)
・住宅の品質確保の促進に関する法律(xxxx年六月二十三日法律第xxx号)
・民法(民法第一編第二編第三編)(明治二十九年四月二十七日法律第八十九号)
・建設業法(昭和二十四年xx二十四日法律第百号)
・建築士法(昭和二十五年xx二十四日法律第二百二号)
政令
・民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律施行令(xxxx年九月二十二日政令第二百七十九号):以下「PFI法施行令」と略称。
・地方自治法施行令(昭和二十二年xx三日政令第十六号)
・予算決算及び会計令(昭和二十二年四月三十日勅令第百六十五号):以下「予決令」と略称。
・国の債権の管理等に関する法律施行令(昭和三十一年十一月十日政令第xx七号)
・建設業法施行令(昭和三十一年八月二十九日政令第二百七十三号)
その他
・民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針(平成十二年三月十三日総理府告示第十一号):以下「基本方針」と略称。
・PFI事業におけるリスク分担等に関するガイドライン(xxxx年七月二十七日):以下「リスクガイドライン」と略称。
・モニタリングに関するガイドライン(平成十五年六月二十三日)
・公共工事標準請負契約約款(昭和二十五年二月二十一日中央建設業審議会作成 xxxx年三月一日最終改正):以下「標準約款」と略称。
・契約事務取扱規則(昭和三十七年八月二十日大蔵省令第五十二号)
・政府契約の支払遅延防止に対する遅延利息の率を定める件の一部改正について(平成十五年三月三日財務省告示第七十六号)
・国の債権の管理等に関する法律施行令第29条第1項本文に規定する財務大臣が定める率を定める件及び国の債権の管理等に関する法律施行令第37条第1項に規定する財務大臣が定める率を定める件の一部改正について(平成十五年三月二十五日財務省告示xx九号)
本「標準契約書モデル(案)」において使用されている用語の定義は次のとおりとする他、特に断りのない限り、PFI法及び基本方針における定義に従うものとする。
コンソーシアム構成企業:民間事業者の公募にあたり組成される法人格の無い共同企業体
(以下、「コンソーシアム」という。)の構成企業であり、選定事業の落札者となる企業。(選定事業者の設立にあたって出資を行うこととなり、選定事業に係る業務を選定事業者から委託を受け、又は請け負うこととなる。)
受託・請負企業:選定事業にかかる業務を選定事業者から委託を受け、又は請け負う企業
(コンソーシアム構成企業を除く。)
設計企業:コンソーシアム構成企業又は受託・請負企業のうち設計を行う企業
建設企業:コンソーシアム構成企業又は受託・請負企業のうち建設工事を施工する企業
維持・管理、運営企業:コンソーシアム構成企業又は受託・請負企業のうち維持・管理、運営を実施する企業
下請企業:選定事業にかかる業務をコンソーシアム構成企業又は受託・請負企業から委託を受け、又は請け負う企業
サービス対価:管理者等が、施設の設計・建設工事、施設の維持・管理及び運営の実施の対価として、選定事業者がPFI事業契約、入札説明書等及び自らの入札参加者提案に従い業務を適切に実施していることを条件に選定事業者に支払う一定の金額
建設工事費:設計・工事監理費、建設工事費、設備工事費、建中金利等維持・管理費及び運営費:業務委託費、修繕費、人件費、物品購入費等
BOT方式:Build, Operate and Transfer の略称。民間事業者が施設を建設し、維持・管理及び運営し、事業終了後に管理者等に施設所有権を移転する事業方式。
BTO方式:Build, Transfer and Operate の略称。民間事業者が施設を建設し、施設完成直後に管理者等に所有権を移転し、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式。
xxがき
目次
Ⅰ 事業契約
第1章 x x
第2章 施設整備業務(施設整備に係る設計)第3章 施設整備業務(施設整備に係る建設)第4章 運営・維持管理業務
第5章 モニタリングの実施第6章 サービスの対価
第7章 業務等に関する変更等第8章 表明及び保証等
第9章 契約期間及び契約の終了第 10 章 損害賠償等
第 11 章 法令変更第 12 章 不可抗力
第 13 章 協議会等の設置
第 14 章 紛争解決(中立的第三者の関与)第 15 章 直接協定
第 16 章 著作xx第 17 章 雑則
Ⅱ 基本協定
Ⅲ 契約例
・病院事業を想定したPFI事業契約
・基本協定
Ⅰ 事業契約 第1章 x x
1. 事業全体にかかる事項
1.概要
・契約目的、契約書に用いる用語の定義、準拠法、事業概要、事業日程、契約書類相互間の適用関係等、契約全体にかかる事項について規定される。
2.PFI事業契約書作成に関する法令等上の留意点
・PFI法第10条第1項においては、「選定事業は、基本方針及び実施方針に基づき、公共施設等の管理者等及び選定事業者が策定した事業計画若しくは協定又は選定事業者
(当該施設の管理者である場合を含む。)が策定した事業計画に従って実施されるものとする。」と規定されている。また、基本方針においては、「公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意について、xxにより、当事者の役割及び責任分担等の契約内容を明確にすることが必須であり(契約主義)」(基本方針前文)と定められている。
・会計法においては、契約担当官等は、政令の定めるところにより、契約の目的、契約金額、履行期限、契約保証金に関する事項その他必要な事項を記載した契約書を作成するものと規定されている(会計法第29条の8第1項及び予決令第100条)。
・また、管理者等がPFI事業契約につき契約書を作成する場合においては、会計法の定めに従い、契約担当官等が選定事業者とともに契約書に記名押印しなければ、当該契約は確定しない(会計法第29条の8第2項)1。
1 地方公共団体が管理者等となる場合は、地方自治法第234条第5項に同様の規定がある。
1-1 契約の目的
1.概要
・契約の目的が、管理者等及び選定事業者が相互に協力し、選定事業を円滑に実施するために必要な一切の事項を定めることである旨規定される。
2.趣旨
・契約の目的の記載は、当事者の権利義務を規定するものではないが、当事者が契約を締結する前提を確認する意義がある。
3.関係法令の規定
・会計法において、「契約の目的」が契約書を作成する際に必要な記載事項の一つと規定されている(会計法第29条の8第1項)。
4.条文例
(本契約の目的及び解釈)
第1条 本契約は、本事業における当事者が相互に協力し、本事業を円滑に実施するために必要な合意事項について定めることを目的とする。
2 別段の定めがある場合を除き、本契約において用いられる用語は、別紙2において定められた意味を有する。
3 本契約における各条項の見出しは、参照のための便宜のものであり、本契約の各条項の解釈に影響を与えないものとする。
1-2 事業の趣旨の尊重
1.概要
・選定事業者は、選定事業の公共性を十分理解し、選定事業の実施にあたりかかる趣旨を尊重すること、及び管理者等は、選定事業が民間事業者たる選定事業者によって実施されることを十分理解しかかる趣旨を尊重することが、確認のために規定される。
2.趣旨
・基本方針において、PFI事業は「公共性のある事業(公共性原則)を、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して(民間経営資源活用原則)、民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効率的かつ効果的に実施する(効率性原則)」(基本方針前文)ものであると定められており、この趣旨に従った規定である。
3.条文例
(公共性、経済性及び民間の趣旨の尊重)
第2条 乙は、本件病院施設等が自治体病院としての公共性を有することを十分理解し、本事業の実施にあたっては、その趣旨を尊重するものとする。
2 甲は、本事業が民間事業者によって実施されることを十分理解し、その趣旨を尊重するものとする。
1-3 事業概要
1.概要
・選定事業者がPFI事業契約等に従って実施する義務を負う選定事業の概要が、当事者の確認のために規定される。
・例えば、BTO方式の選定事業の場合には、施設の設計、施設の建設工事、管理者等に対する施設の譲渡、施設の維持・管理、運営、事業実施のための資金調達などといった事業内容の概要が規定される。
2.事業内容の詳細
・事業概要は、技術的な内容を含むことなどから、PFI事業契約書の別紙に記載することが多い。さらに、管理者等の求める業務要求水準を含む事業内容の詳細は、技術的な内容を含む書類となるため、PFI事業契約書の付属資料としてまとめられることが通例である。(関連:1-6 規定の適用関係)
3.関係法令の規定
・支払遅延防止法においては、「給付の内容」が政府契約の必要的内容事項の一つと規定されている(支払遅延防止法第4条)。
・PFI法においては、選定された民間事業者が行う事業は、PFI法第10条第1項に規定する事業計画又は協定において当該民間事業者が行うこととされた公共施設等の整備等であることから、選定事業者が行う選定事業の内容等をPFI事業契約等において特定する必要がある(PFI法第7条第2項)。
4.条文例
(本事業の概要)
第3条 本事業は、統括マネジメント業務、病院施設整備業務及び運営業務その他これらに付随し関連する一切の業務及びこれらの業務実施に係る資金調達から構成される。
(以下略)
1-4 事業日程
1.概要
・選定事業の履行にあたって重要な期日(例えば、施設の設計着手日、建設工事着工日、完工確認及び運営体制確認日、引渡し予定日、維持・管理、運営開始日、維持・管理、運営期間終了日、譲渡前検査及び施設譲渡日等)を事業日程として明示し、選定事業者がこれに従って選定事業を実施する義務が規定される。
2.趣旨
・事業日程の規定は、選定事業の各段階の履行期限を明示するものであり、管理者等による選定事業の日程管理及び履行遅延等による増加費用が発生した場合等の当事者間の権利義務発生の基準時を画する意義を有する。重要な期日の徒過をPFI事業契約の解除事由とすべき場合もあるので、解除事由との関連についても留意する必要がある。但し、P FI事業契約上の明確な基準時点(例えば、施設の完工、施設の引渡し(又は運営開始))を除き、選定事業者に対し、詳細な事業日程に従った設計、建設工事、維持・管理、運営業務の履行を義務付けることは必ずしも適切ではないこともある。管理者等が必ずしも重要ではない日程までをも詳細に選定事業者に対して義務づけた場合、それに対処するための費用が契約金額に転嫁される結果ともなり得ることに留意が必要である。
・リスクガイドラインにおいても「公共施設の管理者等は、個々の選定事業に則して、選定事業者に対する関与を必要最小限のものとすることに配慮しつつ、その権利義務を協定等に明確に規定し、関与の選定事業に与える影響の程度に応じて、公共施設等の管理者等のリスク分担を検討することが望ましい」と定めるとともに、「運営開始までの工程で見込んだ設計等の工程が遅延する場合や設計等費用が見込み金額を超過する場合であっても、選定事業者の対応能力に応じ、運営開始までのxxx自主的な業務の施工に委ねることで選定事業全体に与える影響が小さいと見込まれるときには、(中略)管理者等による細かな報告の求め、指示等が不適当な場合があることに留意することが望ましい。」と定めている(リスクガイドライン二1(2)(参考)②)。
3.関係法令の規定
・会計法において、「履行期限」が契約書を作成する際に必要な記載事項の一つに規定されている(会計法第29条の8第1項)。
支払遅延防止法においても、「給付の完了の時期」が政府契約の必要的内容事項の一つと規定されている(支払遅延防止法第4条)。
4.条文例
(本事業の概要)
第3条 (略)
2 (略)
業 務 等 | 期 日 |
設計図書の提出予定日 | 平成●年●月●日 |
本件工事着工予定日 | 平成●年●月●日 |
本件工事対象施設の引渡予定日 | 平成●年●月●日 |
運営業務開始予定日 | 平成●年●月●日 |
運営業務等終了日 | 平成●年●月●日 |
3 乙は、別紙3に定める日程に従って本事業を実施するものとする。別紙3 日程表
1-5 履行保証
1.概要
・選定事業者は、契約保証金の納付、又は、契約保証金の納付の代替として履行保証保険をxxする等の義務を負う旨規定される。履行保証保険のxxに関する規定は以下のとおりである。
2.設計・建設工事業務の履行保証保険
・管理者等が、施設の建設工事の施工期間中の選定事業者のPFI事業契約上の義務の履行の担保や選定事業者の債務不履行による契約解除に対して備える目的で、建設工事の再度発注等に要する費用を填補するために、選定事業者に対し履行保証保険への加入義務を課すことが規定される。
・①選定事業者が施設の建設工事について、管理者等又は選定事業者を被保険者とする履行保証保険契約を締結しなければならないこと、②選定事業者は、施設の建設工事の着工までに履行保証保険契約を締結し、かかる保険証券又はその写しを速やかに管理者等に提出すること、③選定事業者は、履行保証保険にかかる保険金請求権に、PFI事業契約が選定事業者の責めに帰すべき事由により解除された場合に管理者等が選定事業者に対して有する違約金支払請求権を被担保債権とする質権を管理者等のために設定すること等が規定される。
3.維持・管理業務及び運営業務の履行保証保険
・維持・管理、運営業務の履行保証保険のxxについては、①選定事業者により提供される公共サービスの水準が要求水準を満たさない場合には一定の手順を経て「サービス対価」の減額措置を実施すること、②選定事業者の債務不履行により契約解除に至った場合には選定事業者に対し違約金等が課されること、③契約解除時の違約金等債権回収の実現可能性等を踏まえつつ、会計法等適用法令に基づき管理者等が自らの責任により合理的に判断する必要がある。(関連:4-2「サービス対価」の減額、5―5 違約金)
4.会計法令等の規定
・会計法は、契約上の義務の完全な履行の担保と損害の填補の手段として、契約担当官等は、国と契約を結ぶ者をして、①契約金額の100分の10以上の契約保証金を納めさせなければならないとし、原則として契約保証金制度を採用している。(会計法第29条の
9第1項)。また、②国債等の有価証券や金融機関の保証等を担保として提供することによって契約保証金の納付に代えることができることとされているほか(会計法第29条の
9第2項、予決令第100条の4及び契約事務取扱規則第16条)、③履行保証保険契約
が締結された場合等には、契約保証金を免除できる(会計法第29条の9第1項但し書及び予決令第100条の3)と規定されている2。
5.履行保証保険の内容等
・契約保証金の納付の代替として選定事業者に建設工事業務の履行保証保険に加入させる場合、建設工事の履行保証保険は、建設工事期間中をxx期間とし、建設工事費に相当する額の100分の10(場合によってはこれ以上に相当する額)を保険金額とすることが通例である。
・履行保証保険の対象契約については、PFI事業契約とする場合と、選定事業者と建設企業との間の請負契約とする場合がある。前者の場合には、管理者等が被保険者となるが、後者の場合には、選定事業者が被保険者となるので管理者等には保険金請求権がない。したがって、後者の場合には、管理者等は選定事業者の保険金請求権に質権を設定する規定を置く必要がある。
・選定事業者は履行保証保険の内容について管理者等の確認を受けてから加入することとし、その保険証券の写しを管理者等に提出するなどの規定を置く必要がある。
・維持・管理、運営期間に維持・管理及び運営業務の履行保証保険を選定事業者に加入させる場合、そのxx期間を一年間とし、毎年更新すること、填補限度額を一事業年度の維持・管理費及び運営費に相当する額の100分の10以上を保険金額とすることを義務付ける場合もある。管理者等は、履行担保のための保険料負担が契約金額に転嫁される結果ともなり得ることに留意しつつ、選定事業者に対してxxを義務付ける履行保証保険の内容について、選定事業者の履行能力を評価の上、その効果とかかる費用とを見極めて個々に検討することが望ましい。
6.条文例
(契約の保証)
第5条 乙は、次項各号の期間の開始日までに、次の各号のいずれかに掲げる保証を付さなければならない。ただし、第6号の場合においては、当該履行保証保険契約の締結後、直ちにその保険証券を甲に寄託しなければならず、第7号の場合においては、当該保証契約に係る銀行、金融機関又は保証事業会社(公共工事の前払保証事業に関する法律(昭和 27 年法律第 184 号)第2条第4項に規定する保証事業会社をいう。以下同じ。)の、第8号の場合においては、当該履行保証保険契約に係る保険会社の異議なき承諾でかつ確定日付ある書面による債務者対抗要件及び第三者対抗要件を具備しなければならない。
(1) 契約保証金の納付
2 地方公共団体が管理者等となる場合は、地方自治法第234条の 2 第 2 項及び地方自治法施行令第167条の16において、契約保証金について規定されている。
(2) 国債又は地方債の提供
(3) 政府の保証のある債券の提供
(4) 資金運用部資金法(昭和 26 年法律第 100 号)第7条第1項第9号の規定による金融債の提供
(5) 本契約による債務の不履行により生ずる損害金の支払を保証する銀行、甲が確実と認める金融機関の保証
(6) 甲を被保険者とする履行保証保険契約の締結
(7) 乙が、建設協力企業をして、当該建設協力企業の債務不履行により乙に生ずる損害金の支払を保証する保証契約を銀行、甲が確実と認める金融機関又は保証事業会社との間で締結させ、乙が自己の費用において当該保証契約に基づき乙が有する保証金支払請求権の上に、第 95 条第1項に規定された乙の甲に対する違約金支払債務を被担保債権とする質権を甲のために設定すること
(8) 協力企業の全部又は一部が、乙を被保険者とする履行保証保険契約を締結し、乙が自己の費用において当該履行保証保険契約に基づき乙が有する保険金請求権の上に、第 95 条第1項に規定された乙の甲に対する違約金支払債務を被担保債権とする質権を甲のために設定すること
2 前項の保証に係る契約保証金の額、保証金額又は保険金額(第4項において「保証の額」という。)は、次の各号の期間に応じ、当該各号に定める金額の 10 分の1以上としなければならない。
(1) 本件工事着工日から本件工事対象施設引渡日まで
別紙1の施設整備業務費相当額から本件工事対象施設の設計業務費相当額及び工事監理業務費相当額を控除した額。
(2) 本件工事対象施設引渡日の翌日から運営業務等終了日まで
契約金額から別紙1の内訳金額のうち、運営期間開始予定日以前に実施される統括マネジメント業務費相当額、施設整備業務費相当額及び本事業の業務範囲となる計画修繕業務費相当額を除いた額の 238 分の 12 に相当する額
3 第1項の規定により、乙が同項第2号から第5号に掲げる保証を付したときは当該保証は契約保証金に代わる担保(当該担保の価値は、第2号の債券にあっては額面金額とし、第3号及び第4号の債券にあっては額面金額(発行価格が額面金額と異なるときは、発行価格)の 10 分の8をもって換算した額とし、第5号の規定による担保の価値は、その保証する金額とする。)の提供として行われたものとし、同項第6号ないし第8号に掲げる保証を付したときは契約保証金の納付を免除する。
4 第2項各号に定める金額の著しい変更があった場合には、保証の額が変更後の当該各号の金額の 10 分の1に達するまで、甲は、保証の額の増額を請求することができ、乙は、保証の額の減額を請求することができる。
1-6 許認可の取得
1.概要
・選定事業の実施に必要な許認可等の選定事業者による取得義務及びそれに対する管理者等の協力義務、並びに、管理者等による同取得義務及びそれに対する選定事業者の協力義務が規定される。
2.許認可取得の責任分担
・許認可取得の責任と費用負担の義務が選定事業者にあることを規定することにより、選定事業者が必要な許認可の一部を取得できないことを理由としてPFI事業契約上の義務を履行できない場合には、その責任を選定事業者が負うこととなる。具体的には、選定事業者による許認可取得の遅延に伴う増加費用の負担、許認可取得の遅延を原因とした施設完成遅延に対する遅延損害金の支払等が考えられる。また、管理者等は選定事業者から許認可の取得に協力を求められた場合、必要な資料の提出など、必要に応じて、これに協力する義務を負う旨規定される(そもそも民間事業者が監督官庁の事業許認可を得るいわゆる各業法に係る事業等の許認可については、民間事業者のみが自己の責任をもって取得すべきことは当然であるが、各業法の適用を受けない公共施設等の整備に係る許認可については、公共が主体であるため不必要であった許認可を選定事業者が取得すべき場合等において、管理者等が必要に応じ協力することとなる。)。但し、管理者等が取得すべき許認可については、管理者等がこれを取得する義務を負い、選定事業者はこれに協力する義務を負う旨規定される。なお、管理者等による許認可の取得遅延があった場合は、引渡し(又は運営開始)予定日を延期する等の対応が考えられる。
・リスクガイドラインにおいては、許認可等の取得について、「工事の着手、運営の開始までに経ておくべき法令等に定められた手続の完了の遅れ、又はその更新の遅れ、手続を経た結果による公共施設等の内容の変更、また工事の着手、運営の開始までに経る地元関係者との交渉等の完了の遅れ、当該交渉等による公共施設等の内容の変更によって、設計等、用地確保、建設、維持管理・運営の各段階の中断・遅延や、各段階で必要となる費用が約定金額を超過することが起こることがある。したがって、どの段階でどのような手続等が必要であるか、手続等が必要である場合又は必要となった場合に当該手続等を公共施設等の管理者等と選定事業者のいずれが責任をもって行うか、その遅延、公共施設等の内容の変更に係る措置をあらかじめ検討し協定等に規定しておくことが望ましい。」と定められている(リスクガイドライン二6(4))。
3.条文例
(許認可及び届出等)
第6条 本契約に基づく義務を履行するために必要となる一切の許認可は、乙が自己の責任及び費用により取得するものとする。また、乙が本契約に基づく義務を履行するために必要となる一切の届出及び報告は、乙がその責任において作成し、提出するものとする。ただし、甲が許認可の取得又は届出をする必要がある場合には、甲が必要な措置を講ずるものとし、当該措置について乙の協力を求めた場合には、乙はこれに応じるものとする。
2 甲は、乙が甲に対して書面により要請した場合、乙による許認可の取得について、法令の範囲内において必要に応じて協力するものとする。
3 乙は、第1項ただし書に定める場合を除き、本契約に基づく義務の履行に必要な許認可の取得・維持に関する責任及び損害(許認可取得の遅延から生じる増加費用を含む。以下、本条において同じ。)を負担するものとし、その遅延が当該許認可権限を有する者の責めに帰すべき事由による場合には、甲及び乙の間でその責任及び損害の負担について協議するものとする。
4 甲が、その単独申請又は届出に係る許認可の取得又は届出若しくは報告を遅延した場合又は甲が第2項の協力を怠ったことにより乙が申請すべき許認可の取得又は届出若しくは報告が遅延した場合、甲は、乙に対し、当該遅延により乙に生じた損害を賠償する。
5 乙は、本件事業の実施に係る許認可の取得に関する書類を作成し、提出したものについては、その写しを保存するものとし、事業期間終了時に甲に提出するものとする。
6 乙は、本件事業の実施に係る許認可の原本を保管し、甲の要請があった場合には原本を提示し、又は原本証明付の写しを甲に提出するものとする。
1-7 選定事業者の資金調達
1.概要
・選定事業者の資金調達義務について規定される。また、選定事業に対する財政上又は金融上の支援の適用について選定事業者の努力義務が規定される場合、かかる手続きに対する管理者等の協力義務が規定されることもある。
2.趣旨
・PFI事業においては、従来型の公共工事の請負契約と異なり、施設の建設工事等選定事業の実施に必要な資金調達のリスクを選定事業者が担う。すなわち、管理者等からの「サービス対価」は公共サービスの提供が開始された後に、一般的には平準化して支払われるため、施設の設計・建設業務、維持・管理業務及び運営業務の実施による公共サービス提供にかかる必要な資金は自己の責任において調達することを基本とする。
・従来型の公共工事の請負契約においては、請負者は、公共工事の前払金保証事業に関する法律第2条第4項に規定する保証事業会社と保証契約を締結して発注者に対し前払金を請求できること(標準約款第34条第1項)、出来形部分と一定の工事材料について部分払の請求を行うことができること(標準約款第37条)、施設の完成検査合格後、請負者の発注者に対する請負代金の支払い請求から40日以内に発注者が請負代金を支払うことが規定されている(標準約款第32条)。また、請負者が建設工事期間中に負う費用についても、建設工事の完工前に出来形部分等に相当する額の部分払いを請求できる制度
(標準約款第37条)等があることから、請負者のかかる負担は大きくない。
・PFI事業は民間の資金を活用する事業であることから、選定事業者は選定事業の実施 に係るすべての費用にかかる資金調達は自らの責任において行うことを基本とする。但し、管理者等はPFI事業契約の当事者双方の対応が、選定事業者による資金調達の金額、期 間、費用その他の条件に大きな影響を与えることに留意し、適切かつ明確な規定内容とす るよう努める必要がある。
3.資金調達の考え方
(1)資金調達の手法
・選定事業を実施するために新設された株式会社が選定事業者である場合、コンソーシアム構成企業等の出資や劣後融資、加えて、金融機関等からの融資によって、選定事業に要する資金調達を行うことが通例である。ここで、管理者等は、選定事業者の自己資本比率が、選定事業者の事業に要する費用に影響を与え、ひいては契約価格にも影響を与える可能性がある点に留意が必要である。
・特に、コンソーシアム構成企業による出資額の多寡は、選定事業者の融資の元利返済の
負担に影響を与えるとともに、選定事業への一定の関心又は関与を保証する役割を果たすことから、管理者等は留意する必要がある。
・選定事業者が金融機関等からプロジェクトファイナンスにより資金調達を行う場合は、金融機関等は、原則として、選定事業から生じるキャッシュフローを借入元本返済及び利払いの原資とする融資を行い、その担保を当該選定事業に関連する資産に依拠することとなる。しかしながら、選定事業に関連する資産は、融資金融機関等が担保権を取得していても売却処分により融資を回収することが困難なものであることが多い。このため、金融機関等は、選定事業者のキャッシュフローが安定的であることを融資の重要な条件と考えて、PFI事業契約等の内容、なかでも、「サービス対価」の支払メカニズムに関する規定や選定事業が停滞した場合に管理者等が講じる措置に関する規定を一層重視する傾向がある。
・ここでキャッシュフローの安定性確保の観点から、金融機関等は、「サービス対価」の支払いとともに、PFI事業契約上発生する増加費用を管理者等が負担する場合の支払い時期及び方法についても重視する。選定事業者が余剰資金を保持しておらず、加えて、不足資金を補填する仕組みが不十分な場合、管理者等が負担する増加費用が適時に支払われない時に、選定事業者は資金不足に陥り、選定事業全体の運営に支障が生じるリスクがある。一方、管理者等による増加費用の支払い時期及び方法については、当然に、予算措置に応じたものである点に留意が必要である。
・なお、プロジェクトファイナンスの組成には相当の期間を要する。そこで、管理者等は、選定事業者の公募からプロジェクトファイナンス組成に関連する諸契約の締結に至るまで関係者間の調整に要する期間が確保されるよう努める必要がある。
(2)金利の固定
・管理者等は、財政支出の平準化を図るため、選定事業者に対して支払う借入金利相当の対価を一定期間固定する場合が多い。この場合、選定事業者は、事業期間中の借入金利水準の変動による自らの借入金利負担の変動を回避するため、固定金利による資金調達を行うことが通例である。
・管理者等が選定事業者に対して支払う対価のうちの金利相当額を取り決めるにあたっては、①融資金融機関等は、選定事業者に対する融資の可否及び融資条件(貸出金利の水準及び償還条件等)を決定するため、PFI事業契約の詳細について十分な審査を必要とすること、②選定事業者による固定金利での資金調達の期間には市場の制約がかかることに留意する必要がある。また、融資金融機関等による貸出金利が確定する日は融資実行日であり、貸出金利は金融市場の動向に従って(金利スワップによる金利固定化を行う場合には金利スワップ市場の動向も加味され)定まるものであることにも留意が必要である。
・管理者等が支払う選定事業者による借入金利相当の対価は、融資金融機関等による貸出金利を前提として決定される。融資金融機関等により貸出金利が確定される日は、融資実
行日であり、融資実行は施設の引渡し日など、PFI事業契約締結日からは相当の期間が 経過していることが通例である。その間、市場の金利は日々変動するため、PFI事業契 約締結日には、選定事業者は融資金融機関等により確定される貸出金利を正確に想定する ことが困難である。しかしながら、仮に、PFI事業契約締結日に、管理者等から選定事 業者に支払う借入金利相当の対価を固定することとした場合、選定事業者は、この時点に おいて、融資金融機関等により確定される貸出金利について想定値をおかざるを得ない。このため、実際の融資金融機関による貸出金利が、この選定事業者による想定値とは異な るものとなる。金利上昇局面においては、選定事業者がその金利差相当を負担することに より資金調達費用を高めるリスクが存在し、ひいては、こうしたリスクが契約金額に転嫁 される結果ともなり得る。この間の金利変動リスクの管理は管理者等自らが担うこととし、管理者等が選定事業者に支払う借入金利相当の対価を確定する日を、PFI事業契約締結 日以降において別途定める日(基準日)とし、かつ、その基準日を融資金融機関等により 貸出金利が確定される日に出来るだけ近接した日に設定する考え方もある。
(3)関心表明書
・民間事業者の公募の際、管理者等は入札参加者に対し、金融機関等の関心表明書の提出を義務付けることがある。入札参加者による提案の提出の段階においては、金融機関等はプロジェクトファイナンスの組成に向けた選定事業のリスク分析や当該選定事業に関連する諸契約の交渉等を行なうために必要な情報が揃わないことから、関心表明書は融資予約の性格を有するものとはならない。したがって、関心表明書の提出をもって当該金融機関等による融資が確約されたものではない点に留意する必要がある。
4.補助金交付等支援措置
・選定事業に対する財政上又は金融上の支援の適用について選定事業者の努力義務が規定される場合、かかる手続きに対する管理者等の協力義務が規定されることもある。
・適用可能な補助金等の交付若しくは公的金融機関等による無利子融資又は低xx融資の交付に関するリスク分担については、入札参加者間の競争条件の確定等のため、民間事業者の提案の前提条件として管理者等が入札説明書等に提示することが望ましい。
・民間事業者の公募からPFI事業契約の締結までの間に、補助金等の交付等支援措置が可能となった場合、これによる金融費用の減少分の「サービス対価」への反映方法等についても、管理者等が入札説明書等に提示することが望ましい。
・補助金交付等支援措置の有無により、選定事業者が想定していた融資金融機関等からの借入金額を変更する場合に留意を要する点は以下のとおりである。
①必要な借入金額が増加した場合、融資金融機関等は与信判断の前提としていた資金調達計画に齟齬をきたし、改めて与信判断を行う必要がある。この場合、新たな与信判断に時間を要するばかりでなく、場合によっては融資が困難になる可能性もある。
②融資実行後に借入金額を変更する場合、それに伴い発生する増加費用(融資解約手数料、金利スワップ解約費用等)がある。
・公的支援の実現の可否は、民間事業者の入札参加者提案の提出時までに確定されないことにも留意し、適切なリスク分担(選定事業者に生じた資金調達のための増加費用や資金調達の遅延に対する対応)をあらかじめ検討し、入札説明書等に明示することが望ましい。
5.税制関連法令の適用
・民間事業者の公募の段階においては、選定事業について、税制関連法令の適用される事実関係が判然としない場合がある。このような場合であって、かつ当該税務に関する入札参加者間の競争条件の確定を図ることが相当と認められる場合には、管理者等は全ての入札参加者が税制関連法令の適用に関し共通の解釈に基づく提案ができるよう、こうした税目に関連する法令について、税務当局が最終的な解釈を行うこととなるものの、一定の前提を置かざるを得ない。その上で、この前提が実現しなかった場合に生じる増加費用の当事者間での分担については、あらかじめ検討し、入札説明書等に明示するなどの措置を講じることも考えられる。
6.条文例
(乙の資金調達)
第7条 本事業の実施に関連する一切の費用は、本契約において甲が負担する費用を除き、すべて乙が負担する。
2 本事業に関する乙の資金調達は、すべて乙が自己の責任及び費用において行うものとする。ただし、甲の協力が必要な場合、甲は可能な限りその協力を行うものとする。
(起債・補助金申請への協力)
第8条 乙は、甲による本事業に係る起債又は補助金の申請について、書類作成等への協力を行う。
2 乙の責に帰すべき事由により、乙が前項の規定に従い作成又は作成に協力すべき書類の提出を遅延した場合、乙は、甲に対し、当該遅延により甲に生じた損害を賠償する。
3 前項の場合を除き、甲が行う本事業に係る起債又は補助金申請に関して損害が発生した場合の責任は、甲が負うものとする。
1-8 規定の適用関係
1.概要
・選定事業にかかるPFI事業契約等の各種規定の適用関係を整理する規定がされる。
・選定事業者は、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案に従って選定事業を実施するものとした上で、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案の内容に相違が生じる場合を想定し、これらの文書の適用関係が規定される。
2.趣旨
・PFI事業においては、管理者等が民間事業者の募集にあたって示した入札説明書等、選定事業者が管理者等に提出した入札参加者提案、PFI事業契約、選定事業者がPFI事業契約等に従って作成する設計図書の順に、選定事業の内容を、xx、詳細かつ具体的に補完することとなる。このため、これらの文書の記載内容に相違が生じる事態を想定し、あらかじめPFI事業契約にこれらの文書の適用関係を規定することが望ましい。
3.適用関係
・PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案の内容に相違がある場合、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案の順に優先して適用されるものとすることが通例である。
・また、入札参加者提案と入札説明書等の業務要求水準書との適用関係については、入札参加者提案において提案されたサービス水準が入札説明書等のそれを上回る場合に限り、入札参加者提案が優先して適用される旨規定することにより、管理者等が入札説明書等の要求水準書に示したサービス水準と選定事業者が提案したサービス水準に相違がある事項についていずれか高い水準を確保することができる。
なお、入札説明書等の質問回答書は入札説明書等と一体のものと考えられる。
4.条文例
(優先関係)
第9条 本契約、要求水準書、入札説明書等及び事業者提案の記載内容に矛盾又は齟齬がある場合は、この順に優先して適用されるものとする。
2 入札説明書等の各書類間で疑義が生じた場合は、甲及び乙の間において協議のうえ、かかる記載内容に関する事項を決定するものとする。
3 事業者提案と要求水準書の内容に差異があり、事業者提案に記載された性能又は水準が、要求水準書に記載された性能又は水準を上回るときは、第1項の規定にかかわらず、その限度で事業者提案の記載が要求水準書の記載に優先するものとする。
第2章 施設整備業務(施設整備に係る設計)
2-1 施設の設計にかかる事項
1.概要
選定事業者は、PFI事業契約、入札説明書等、及び入札参加者提案に従って、自らの責任と費用負担において施設の設計を実施する義務を負う旨規定される。
2.条文例
(設計業務の実施)
第 14 x xは、本契約締結後速やかに、設計協力企業をして、本契約、要求水準書及び事業者提案に従って、本件工事対象施設の設計業務を実施せしめる。
2-2 施設の設計、設計図書の提出
1.概要
・①選定事業者から管理者等への設計図書の提出及び確認、②提出図書の内容と入札参加者提案等との不一致の場合の当事者の対応、③施設の設計の第三者への委託等について規定される。
2.設計図書の提出及び確認
・選定事業者は、自らの責任と費用負担において、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案に従って施設の設計を行う義務を負う。選定事業者は、設計の開始後、管理者等による設計の状況についての確認を受けつつ、又は管理者等と設計の状況について打ち合わせを行ないつつ、設計を行う旨規定される。基本設計及び実施設計が選定事業に含まれる場合には、選定事業者は基本設計及び実施設計のそれぞれが完成した段階で、管理者等にそれぞれの設計図書等を提出し、管理者等による確認等を受けることが規定される。管理者等は一定期間以内に又は速やかに確認等を行ない、選定事業者により提出された図書の内容がPFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案に適合していることを確認した上で、その旨通知する。
・一方、選定事業者の提出図書の内容とPFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案の間に不一致があることが判明した場合、管理者等は、選定事業者に対して速やかにかかる不一致の内容を通知するものとする。管理者等は、打ち合わせを行ったこと、図書を受領したこと、PFI事業契約等と提出された図書との間の不一致の内容を通知したことのいずれを理由としても、施設の設計及びかかる設計に基づく建設工事について何らの責任を負担するものではない旨規定される。
3.設計図書の提出義務及びPFI事業契約等と内容不一致の場合の是正責任
・選定事業者については、基本設計図書及び実施設計図書のそれぞれが完成した段階で速やかに管理者等にこれらを提出し、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案との整合性について確認を受けること、管理者等による確認通知を受領した段階で、選定事業の次の工程に着手できることが規定される。一方、管理者等については、選定事業者から提出を受けた図書の内容を一定の期間以内又は速やかに確認し、選定事業者の提出した設計図書の内容とPFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案との間に不一致があると判断した場合、その不一致の内容を選定事業者に通知することが規定される。
・選定事業者の提出した設計図書の内容とPFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案との間に不一致が判明した場合、選定事業者が不一致の内容についてその責任と費用負担により是正し、是正したものを管理者等に再度提出し、確認を受けることが規定
される。選定事業における設計図書は、工程を経るなかでxx詳細化及び補完されていくことから、管理者等による内容の不一致の判断について当事者間で合意が得られない場合が想定される。このため、設計期間中に当事者が定期的に打ち合わせを行うこと等が規定されるとともに、管理者等が通知した不一致の内容に対し、選定事業者が意見を述べること、及び管理者等が選定事業者の意見が合理的と認めた場合には、選定事業者は是正を行う必要のないことなどの規定が置かれることが通例である。
・また、PFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案と基本設計図書の内容又は実施設計図書の内容との不一致の是正等に起因し、設計の後段階の事業日程が遅延する場合の措置、当事者間の責任分担、増加費用負担についてPFI事業契約に規定される。設計段階において、選定事業者の責に帰すべき事由により施設の引渡し(又は運営開始)といった設計の後段階の事業日程が遅延するとき、その責任とかかる増加費用を選定事業者が負担すること、管理者等がかかる遅延による損害金の請求権を得ることが規定される。
4.設計図書の確認と設計にかかる責任との関係
・管理者等が、①設計の状態について確認すること又は設計の状態について選定事業者と打ち合わせをすること、②選定事業者から提案を受けた設計図書の内容を確認等した旨通知すること、③選定事業者から提案を受けた設計図書の内容とPFI事業契約等との間の不一致の内容について選定事業者に通知すること、④選定事業者のVE(value engineering)提案に対する審査をすること等をもって、選定事業者の施設の設計及びかかる設計に基づく建設工事についての責任が軽減又は免除されるものではない旨規定する必要がある。
5.設計の第三者への委託等
・第三者たる設計企業に設計を委託し、又は請け負わせることについて、管理者等への事前の通知又は管理者等の承諾を義務とする旨規定される。
・選定事業者が設計をコンソーシアム構成企業(又は受託・請負企業)の設計企業に委託し又は請け負わせる場合、その設計業務委託契約などの規定にかかわらず、管理者等との関係では当該設計企業の責めに帰すべき事由は全て選定事業者の責めに帰すべき事由とみなされる旨規定される。
・さらに、選定事業者が使用する一切の第三者の責めに帰すべき事由は、すべて選定事業者の責めに帰すべき事由とみなして、選定事業者が責任を負うものとすることなどが規定される。
6.共通仕様書
・選定事業者が設計において達成すべき整備水準については、PFI事業契約において関
係法令に関する規定の他、施設に求める機能、性能等の設定を目的として、共通仕様書等の各種技術基準を参考にすること等が考えられる。
なお、公共建築に関する事業においては、官庁営繕関係統一基準を参考にすることが考えられる。
7.選定事業者によるVE提案
・PFI事業における設計業務については、PFI事業契約、設計条件を含む入札説明書等及び施設の基本的な考え方やデザイン等いわゆる企画設計図書を含む入札参加者提案に従って、選定事業者が施設の設計を選定事業内容の一部として行うことが基本である。
・しかしながら、施設の設計業務を選定事業の内容に含めず、あらかじめ管理者等から示す施設の基本設計図書及び実施設計図書をPFI事業契約書の一部又は付属資料とし、かかるPFI事業契約、入札説明書等及び入札参加者提案に従って、選定事業者が施設の建設工事を施工する旨規定された上で、選定事業者がVE提案によって管理者等の示した設計図書を変更することができる旨規定される場合(契約後VE)もある。
・上述のPFI事業契約締結後の選定事業者のVE提案は、民間技術の積極的活用により建設工事、維持・管理、運営の費用の縮減を図ることを狙いとしている。VE提案を求める範囲は、施工の確実性、安全性が確保され、かつ、設計図書に定める工事の目的物と比較し、機能、性能等が同等以上で経済性が優位であると判断されるものとする。
・選定事業者のVE提案により実現できる建設工事費用の縮減金額のすべてを「サービス対価」のうち建設工事費に相当する支払い対価の減額に反映させるならば、選定事業者が VE提案を行う経済的動機付けを失ってしまう可能性がある。このため、VE提案により減額する建設工事費に相当する支払い対価の一定割合に相当する金額を減額しない。例えば、VE提案により請負代金が低減すると見込まれる額の10分の5に相当する金額(「V E管理費」という。)を削減しないこととする取り決めも考えられる。
8.条文例
(設計業務の第三者による実施)
第 15 条 乙は、設計協力企業を変更又は追加してはならない。ただし、やむを得ない事情が生じた場合であって、甲の事前の書面による承諾を得た場合はこの限りではない。
2 乙は、設計協力企業が第三者に本件工事対象施設の設計業務の全部又は主たる部分を委託し又は請け負わせないようにしなければならない。
3 本件工事対象施設の設計業務実施に関する設計協力企業その他第三者の使用は、すべて乙の責任において行うものとし、設計協力企業その他設計業務の実施に関して乙又は設計協力企業が使用する一切の第三者の責めに帰すべき事由は、すべて乙の責めに帰すべき事由とみなして、乙が責任を負う。
(設計図書の提出)
第 22 条 乙は、設計業務の完了後遅滞なく、別紙4に規定する設計図書を甲に提出し、設計協力企業をして、設計図書の内容を説明させなければならない。設計図書の変更を行う場合も同様とする。
2 前項の場合における設計図書の提出は、別紙3の日程表に従うものとする。
3 甲は、第1項に基づき提出された設計図書が本契約、要求水準書、入札説明書等、事業者提案若しくは甲と乙の設計打ち合わせにおいて合意された事項に従っていない、又は提出された設計図書では、本契約、要求水準書、入札説明書等、事業者提案若しくは甲と乙の設計打ち合わせにおいて合意された事項において要求される仕様を満たさないと判断する場合には、乙と協議の上、乙の負担において修正を求めることができる。甲は、かかる修正を求めない場合は、提出された設計図書の確認を乙に通知するものとする。
4 乙は、甲からの指摘(前項による甲の修正の求めを含む。)により、又は自ら設計に不備・不具合等を発見したときは、自らの負担において速やかに設計図書の修正を行い、修正点について甲に報告し、その確認を受けるものとする。設計の変更について不備・不具合を発見した場合も同様とする。
5 前項に規定する修正の結果、本件工事対象施設の引渡しが遅延した場合には、第 54 条第4項の規定を適用する。
2-3 設計の変更、法令変更による設計の変更
1.概要
・①管理者等又は選定事業者からの求めによる設計変更が可能な範囲、②設計変更が求められた場合の相手方による当否の検討、承諾等の手続き、③設計変更が行われた場合の増加費用の負担割合等について規定される。併せて、法令変更に伴う設計変更による増加費用の分担等について規定される。
2.管理者等の求めによる設計変更
・管理者等は、必要があると認める場合、設計変更を選定事業者に求めることができる旨規定される。その際、設計変更の限界として、民間事業者の入札参加者提案を逸脱する設計変更、又は工期の変更を伴う変更を求めることはできない旨規定されることが通例である。場合によっては、工期の変更を伴う設計変更等に関し、管理者等が選定事業者に対し協議を求めることができる旨の規定が置かれる場合がある。
・具体的な手続きについては、管理者等が選定事業者に対し設計変更を求めた場合、選定事業者は当該変更の当否の検討を行ない、その結果を一定期間以内に管理者等に通知し
(ここで、選定事業者は当該変更の当否とともに、当該変更により予想される増加費用等についても検討し、その内容を通知内容に含めることが考えられる。)、管理者等はこれを踏まえて設計変更の要否を決定し、選定事業者に通知することとされ、選定事業者はこれに従うものと規定される。
・管理者等の求めによる設計変更に起因する増加費用については、選定事業者との帰責の割合に応じて、管理者等と選定事業者がかかる費用を分担して負担する旨規定されることが通例である。設計変更に起因する増加費用としては、設計費用、建設費用、将来の維持・管理、運営にかかる費用及び金融費用(追加の資金調達に要する金利負担等の各種費用)などが想定される。なお、選定事業者が作成した設計図書の内容とPFI事業契約等、入札参加者提案又は入札説明書等との間に不一致がある場合は、当然ながら管理者等の帰責性は認められず、この場合、選定事業者は自己の費用と責任において当該不一致を是正することとなる。
・管理者等の求めによる設計変更があった場合、それに起因する増加費用とあわせて、引渡し(又は運営開始)予定日の延期についての検討が同時に必要である点に留意を要する。対応の選択肢としては、当初設定した引渡し(又は運営開始)予定日は変更せず、その引渡し(又は運営開始)予定日までに施設を完成させることを前提とした増加費用を管理者等が負担するという対応と、逆に合理的な期間、引渡し(又は運営開始)予定日を延期した上で、その引渡し(又は運営開始)予定日までに施設を完成させることを前提にした増加費用を管理者等が負担する、という対応が考えられる。一定の期日まで
に施設の運営を開始することを重視するならば、前者が選択される。但し、この場合、 増加費用の負担は相対的に大きくなることが一般に予想される。これに対し、後者を選 択した場合、引渡し(又は運営開始)予定日を延期する以上、当然に「サービス対価」 の支払開始も遅れることになる。従って、この「サービス対価」の支払開始の遅延が選 定事業者による融資返済にどのような影響を与えうるのかについて留意する必要がある。
・上記に関し、引渡し(運営開始)予定日を延期した場合、それに伴って維持・管理、運営期間の終期も同様に延期するのか、あるいは維持・管理、運営期間の終期は変更せず、維持・管理、運営期間を短縮することとするのか、という問題について検討を要する。前者を選択した場合、維持・管理、運営の期間は変わらないが、「サービス対価」の支払が全体として遅くなり、後者の場合には、維持・管理、運営期間の短縮の結果、選定事業者が失うことになる「サービス対価」をどのように考えるかについて検討を要する。(関連:1-4 事業日程)
・管理者等の求めによる設計変更に起因して、選定事業者が負担すべき施設整備にかかる費用が減少した場合は、合理的な範囲内において当該費用の減少分を「サービス対価」から減額することが考えられる。
・管理者等の求めによる設計変更を認めない場合、管理者等が望まない施設が建設されることも想定され、これは経済合理性に欠くといえる。このため、工期の変更を伴わない範囲の設計変更については、増加費用を管理者等が負担する限り、選定事業者の承諾は必要とされないと考えられる。
3.選定事業者の求めによる設計変更
・選定事業者の求めによる設計変更については、提案審査のxx性の確保等を勘案して、上記の入札参加者提案からの逸脱の有無等に関わりなく、管理者等の事前の承諾が必要とされる。また、かかる設計変更に起因して選定事業者に生じた増加費用については、管理者等と選定事業者が、帰責の割合に応じて、かかる費用を分担して負担する旨規定されることが通例である。
4.法令変更による設計変更
・法令変更に対応するための増加費用の考え方については、当該選定事業に直接関係する法令を特定し、かかる法令の変更に基づく増加費用は管理者等の負担とし、広く民間企業一般に影響を及ぼすような法令変更に基づくものについては、選定事業者の負担とする考え方がある(関連:5-3 不可抗力等の場合の解除xx)。
・当該選定事業に直接関係する法令の変更による設計変更の場合、上記2.の場合と同様に引渡し(又は運営開始)予定日の延期についての検討が同時に必要である点に留意を要する。それ以外の法令の変更による設計変更の場合には、選定事業者のリスク負担として引渡し(又は運営開始)予定日は変更されないことが通例であると考えられる。
5.増加費用の負担に代える設計変更
・管理者等が契約上の別の規定により増加費用を負担すべき事実が生じた場合、特別な理由があるときは、予算xxxの観点から当該負担に代えて、減額を目的とした実施設計図書の変更ができる旨規定することも考えられる。
6.標準約款上の規定(参考)
・従来型の公共工事の請負契約においては、発注者は、必要があると認めるときは、設計図書の変更内容を請負者に通知して、設計図書を変更することができ、この場合において、発注者は、必要があると認められるときは工期若しくは請負代金額を変更し、又は請負者に損害を与えたときは必要な費用を負担しなければならないとしている(標準約款第19条)。また、請負代金額の変更に代える設計図書の変更について、発注者は、請負代金額を増額すべき場合又は費用を負担すべき場合において、特別の理由があるときは、請負代金額の増額又は負担額の全部又は一部に代えて設計図書を変更することができ、設計図書の変更内容は、請負者と協議して定めるとしている(ただし、協議開始後一定期間に協議が整わない場合には、発注者が定め、請負者に通知するとしている)(標準約款第30条)。
7.条文例
(乙による事業者提案又は設計の変更)
第 19 x xは、あらかじめ甲の承諾を得た場合を除き、事業者提案又は設計図書の変更を行うことはできない。
2 前項の規定に従い乙が甲の承諾を得て事業者提案又は設計図書の変更を行う場合において、当該変更により乙に増加費用が発生したときは、乙が当該増加費用を負担するものとし、費用の減少が生じたときは協議により施設整備業務費の支払額を減額するものとする。
(甲の指示による事業者提案又は設計の変更)
第 20 条 甲は、乙に対し、事業者提案又は設計図書の変更が必要であると認めるときは、施工計画書の変更を伴わずかつ事業者提案の範囲を逸脱しない限度で、乙に対して事業者提案又は設計図書の変更内容を記載した書面を通知し、事業者提案又は設計図書の変更を求めることができる。この場合、乙は、当該書面を受領した日から 14 日以内にその事業者提案又は設計図書の変更の当否を甲に対して書面により通知しなければならない。xは、当該通知を受領した日から7日以内に、事業者提案又は設計図書の変更の要否を決定し、乙に通知する。乙は、かかる甲の決定に従うものとする。
2 前項の規定に基づき、乙が事業者提案又は設計図書の変更を行う場合において、当該
変更により乙に増加費用が生じたときは、当該変更が乙の責めに帰すべき事由による場合を除き、甲が当該費用を合理的な範囲で負担するものとし、費用の減少が生じたときは施設整備業務費の支払額を減額する。
3 第1項の規定にかかわらず、基本設計完了前に甲の要求により入札説明書等及び事業者提案に基づく設計条件の主旨を損ない又は工期の変更を伴う設計条件の変更を行う場合、甲と乙は、当該設計条件の変更に係る本件工事対象施設の施設整備業務費の調整に関する協議を行い、当該調整後の費用が調整前の費用を超えるときは、甲は、乙に対し、超過部分の費用を、本件工事対象施設の施設整備業務費に加算して支払う。
(法令変更等による設計変更等)
第 21 条 建築基準法、消防法(昭和 23 年法律第 186 号)、医療法(昭和 23 年法律第 205号)等の法令制度の新設又は改正等により、事業者提案若しくは設計図書又は本件工事の変更が必要となった場合、乙は甲に対し、事業者提案若しくは設計図書又は本件工事の変更の承諾を求めることができ、甲は、必要かつ相当と判断したときはこれを承諾する。
2 各本件工事対象施設の竣工までに、入札説明書等に明示されていない本件土地又は本件工事対象施設の瑕疵(本件土地の地中に存する建物等の基礎及び杭等で本件工事対象施設の建設に支障をきたすものを含む。)に起因して、事業者提案若しくは設計図書又は本件工事の変更が必要となった場合、乙は甲に対し事業者提案若しくは設計図書又は本件工事の変更の承諾を求めることができ、甲は、必要かつ相当と判断したときはこれを承諾する。
3 第1項又は第2項に基づく変更に起因する設計、本件工事、工事監理、運営及び資金調達に係る乙の費用が増加したときは、当該変更が乙の責めに帰すべき事由による場合を除き、甲が当該費用を合理的な範囲で負担するものとし、費用の減少が生じたときは施設整備業務費の支払額を減額する。