News Release
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各 位
株式会社ムゲンエステートと「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
2024 年 3 月 29 日株式会社 北陸銀行
ほくほくフィナンシャルグループの北陸銀行(頭取 xx x)は、SDGs への取り組みの一環として、株式会社ムゲンエステート(代表取締役社長執行役員 xx xx)とほくほくサステナブルファイナンス「ポジティブ・インパクト・ファイナンス型」※(以下、ほくほく PIF 型)の契約を締結しましたので、その概要をお知らせいたします。
なお、本ファイナンスは、北陸銀行が東京地区でほくほく PIF 型により資金提供を行う第一号 案件となります。
当行は、地域のお客さまとともに、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
※企業活動が環境・社会・経済にもたらす影響を包括的に分析し、特定されたポジティブ・インパクトの拡大とネガティブ・インパクトの緩和に向けた取り組みを継続的に支援する融資
記
1.契約企業:株式会社ムゲンエステートの概要
所在地 | xxxxxxxxxx 0 xx 0 x 0 x | 設立 | 1990 年 5 月 2 日 |
資本金 | 2,552 百万円 | 連結売上高 | 51,640 百万円 |
2.本ファイナンスの概要
実行日 | 2024 年 3 月 29 日(金) | 融資金額 | 500 百万円 |
融資期間 | 2 年 6 か月 | 資金使途 | 賃貸住宅建設資金 |
3.株式会社ムゲンエステート について(詳細は「評価書」をご参照ください)
株式会社ムゲンエステートは、1990 年の創業以来、中古不動産買取再販事業のパイオニアとして「夢現 夢を現実に」を経営理念に掲げ、不動産の買取から企画、施工、管理、リーシング、販売までを一気通貫で対応できる総合力を強みに、お客さまの多様なニーズに合わせた快適な住空間を提供し、人々の豊かな暮らしづくりを支えています。また、現在は東証スタンダード市場に上場し、
商圏エリアを 1 都 3 県から地方都市へと拡大させております。
企業概要
SDGs 達成に向けた取り組み事例
~環境に優しい中古不動産の流通を高め豊かな社会づくりに貢献~
インパクトの種類 | ポジティブ・インパクト |
インパクトエリア/ トピック | 「健康および安全性」「住居」「資源強度」「廃棄物」 |
影響を与える SDGs の目標 |
|
内容・対応方針 | 中古不動産の流通促進、販売強化 |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 買取再販不動産の売上高 54,104 百万円を目指す。 (2023 年度実績 46,163 百万円) |
4.その他
インパクト評価 | 本ファイナンスは、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が公表しているポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に則り、北陸経済研究所が株式会社ムゲンエステートの包括的なインパクト分析を行い、評価しました。また、株式会社日本格付研究所(JCR)から第三者意見(外部レビュー)を取得し、金融原則への適合性の確認と評価の透明性を確保してい ます。 |
モニタリング | 当行は、インパクト評価で特定した株式会社ムゲンエステートの KPI につ いて、融資期間中にわたりモニタリングを行います。 |
5.該当する SDGs の目標
SDGs はSustainable Development Goals の略称で、2015 年に国連で採択された 2030 年までに達成すべき 17 の目標と 169 の具体的なターゲットを定めた「持続可能な開発目標」です。
ほくほくフィナンシャルグループは 2019 年 4 月に「SDGs 宣言」を表明しました。
以 上
<本件に関するお問い合わせ先>
北陸銀行 経営企画部 サステナビリティ推進グループ TEL(076)000-0000
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:株式会社ムゲンエステート
2024 年 3 月 29 日
評価実施機関:
北陸経済研究所は、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)が公表しているポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に則り、株式会社ムゲンエステートの包括的なインパクト分析を行った。
北陸銀行は、本評価書で特定されたポジティブ・インパクトの向上とネガティブ・インパクトの低減に向けた取り組みを支援するため、株式会社ムゲンエステートに対し、ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに係る借入金の概要
借入人の名称 | 株式会社ムゲンエステート |
借入金の資金使途 | 賃貸住宅取得資金 |
借入金の金額 | 500 百万円 |
モニタリング期間 ( 返済期限 ) | 2 年6ケ月(2026 年9月 25 日) |
1.企業の事業概要
⚫ 基本情報
企業名 | 株式会社ムゲンエステート |
代表者 | 代表取締役社長 xx xx |
設立 | 1990 年 5 月 |
事業内容 | 不動産買取再販事業 不動産賃貸事業その他 |
資本金 | 2,552 百万円(2023 年 12 月 31 日) |
売上高 | 連結 51,640 百万円(2023 年 12 月 31 日) |
従業員数 | 連結 363 名(2023 年 12 月 31 日) |
本社所在地 | xxxxxxxxxxxxx0x0xxxxxxxxxxxxxx xxxxxx00 x |
支店/営業所 | <横浜支店> xxxxxxxxxxxxxx 0 x 0 x XXXXX xxxxxx 0 x <営業所> 北千住営業所、船橋営業所、荻窪営業所、xx営業所、池袋営業所、蒲田営業所、大阪営業所、札幌営業所、名古屋営業所、福岡営業所 |
⚫ 沿革
1990 年 | xxx中央区日本橋xx町に株式会社ムゲンエステートを設立 宅地建物取引業免許(xxx知事)を取得 |
1992 年 | xxxxxxxxxxxxに本店移転 |
1997 年 | xxxxxxxxxxxxに株式会社フジホームを設立 |
1999 年 | xxxxx区南平台町にxx支店を設置 |
2002 年 | マンション管理業登録(国土交通大臣) |
2003 年 | xxx中央区日本橋浜町に本店移転 xx支店を本社に統合 |
2005 年 | 一級建築士事務所登録 有限会社ムゲンホームを合併 |
2007 年 | 有限会社ムゲンリフォームを合併 |
2010 年 | 宅地建物取引業免許を国土交通大臣免許に変更 xxxxxxxxxxxに横浜支店を設置 |
2013 年 | xx xxが代表取締役会長に就任 xx xxxが代表取締役社長に就任 |
2014 年 | 東京証券取引所 マザーズ市場に上場 |
2015 年 | xxx新宿区西新宿に新宿支店を設置 |
2016 年 | 東京証券取引所 市場第一部に上場 |
2018 年 | 不動産特定共同事業許可取得(xxx知事)ムゲン投資顧問株式会社を設立 株式会社ムゲンファンディングを設立 |
2020 年 | xxxxxx区大手町(現所在地)に本店移転 新宿支店を本社に統合/日本橋支店を本社に統合 |
2021 年 | xxxxx区千住に北千住営業所を開設xx県船橋市本町に船橋営業所を開設 xxx杉並区荻窪に荻窪営業所を開設 xxx北区xxにxx営業所を開設 xxxxx区西池袋に池袋営業所を開設 |
2022 年 | xxxxx区蒲田に蒲田営業所を開設 |
2023 年 | 大阪府大阪市北区に大阪営業所を開設 東京証券取引所 スタンダード市場へ移行 |
2024 年 | 北海道札幌市北区に札幌営業所を開設 愛知県名古屋市中区に名古屋営業所を開設福岡県福岡市中央区に福岡営業所を開設 |
⚫ 事業活動・事業概要
株式会社ムゲンエステート(以下、ムゲンエステート)は、現会長であるxx xxによって 1990 年に設立された。バブル期もあり、高価で新築は買えない人が少なくなかった。そこで中古を手に入れやすい価格で提供し、住まいを持ちたいと願う人を支援することが社会貢献になるとの思いから事業を始めたという。主力の「不動産買取再販事業」は、商圏エリアを1都3県から地方都市へと拡大させることで居住用・投資用不動産の取引量を増やし、事業の成長につなげており、この他に「不動産賃貸事業」「不動産開発事業」「不動産特 定共同事業」を展開している。
「不動産買取再販事業」では、中古不動産を買取し、グループ会社の株式会社フジホーム(以下、フジホーム)にて不動産内外装工事や高品質かつ時代に合った設備等を施し、不動産価値・収益性を高めて販売している。例えば、トイレ・バスなどの水回りなどは、節水型の仕様で環境に配慮した製品を導入している。またそれらは、一棟賃貸マンション、一棟オフィスビルを中心とした投資用不動産と、主にファミリータイプのマンションを 1 室単位から取り扱う居住用不動産からなっている。
いずれも中古不動産に工夫を凝らして新たな価値を創造する事業であり、少子高齢化や空き家が大きな社会問題になっている今日、事業それ自体が大きな社会貢献につながっている。
(出所:ムゲンエステート HP)
「不動産賃貸事業」は、ムゲンエステートが所有する投資用不動産及び固定資産物件を賃貸し、不動産賃貸収入を得るストック型ビジネスである。フジホームの賃貸管理部門と連携することで、収益性の向上と、不動産買取再販事業における販売活動の効率化を推進している。
「不動産開発事業」では、東京都内を中心に、開発用地の仕入から企画立案、設計、工事監理、リーシング、販売まで行っている。中でも力を入れているのが、蓄光タイル・保水タイル等、環境に優しい商品を搭載した「SIDEPLACE」シリーズであり、環境に配慮した取り組みとなっている。
「不動産特定共同事業」は、不動産特定共同事業法に基づき、許可を受けた事業主が、投資家から資金を集めて不動産売買や賃貸等などの取引を行い、その収益を投資家に分配する事業である。特に少額の資金で不動産投資ができる商品を不動産xxx商品といい、ムゲンエステートでは「ブドーさん 備える不動産xx投資」として提供している。
キャラクターの「ブドーさん」
(出所:ムゲンエステートより)
(出所:ムゲンエステート HP)
⚫ 企業理念
新規事業の立ち上げ、仲介会社向け物件情報サイトによる販売チャネルの拡大、財務健全性の向上、働き方改革の推進などの第一次中期経営計画の成果を踏まえ、2022 年 12 月にさらなる飛躍を期して企業理念を以下の通り刷新している。
(出所:ムゲンエステート「第二次中期経営計画(2022 年 12 月)」)
ムゲンエステートのロゴマークは、大きな視野で事業展開を推進することにより社会的な役割を果たす企業姿勢を球体の形状に込め、その球体を彩る動きのあるブルーのストライプに顧客への多様で柔軟なサービス精神を託すというコンセプトに基づきデザインされている。
(出所:ムゲンエステートより)
● サステナビリティ経営の推進
ムゲンエステートでは、第二次中期経営計画の中で事業拡大と経営基盤の強化とともに、サステナビリティや株主還元も意識した経営方針、施策を掲げている。
(出所: ムゲンエステート「第二次中期経営計画(2022 年 12 月)」)
(出所: ムゲンエステート「第二次中期経営計画(2022 年 12 月)」)
特にサステナビリティに関しては、国際連合が提唱する SDGs(持続可能な開発目標)の趣旨に賛同し、
「サステナビリティ基本方針」を策定して、以下の取り組みを行っている。
【サステナビリティへの取り組み 環境(Environment)】
「環境に配慮した事業活動」では、「いいものを作り、きちんと手入れをして、長く使う」を方針として掲げ、中古不動産の再生、環境に配慮した商品づくりを推進している。また事業活動において排出される廃棄物は産業廃棄物マニフェスト(産業廃棄物管理票)によって管理されることとしている。
「気候変動問題への対応」では、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、シナリオ分析を踏まえて「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の 4 項目について、ムゲンエステートの気候変動対応状況を開示している。さらに、Scope1・2 については、自社エネルギー使用量、温室効果ガス排出量の実績は算出しており、削減目標も設定済みで、2024 年 3 月にはScope3 についても温室効果ガス排出量の実績値を開示し、サプライチェーン全体で GHG 排出量の削減を目指している。
【サステナビリティへの取り組み 社会(Social)】
「すべての人の豊かな暮らしの実現」のために、中古不動産の価値を高めるとともに、安全性・環境性・利便性に優れた不動産の提供に力を注いでいる。
また地域や社会への貢献として、日本サッカー協会の「JFA xxxのプロジェクト」に参加している。xxを担う子どもたちに「夢を持つことや、その夢に向かって努力することの大切さ」「仲間と協力することの大切さ」などを伝える「夢の教室」を、ムゲンエステートの冠授業としてxx回開催している。
さらにスタートアップ企業への出資を通じて新たな付加価値の創造にも取り組んでいる。
「働きがいの提供 多様な人材の活躍推進」の面では、「人的資本化の強化」を目標に、経営戦略と連動した人材戦略を構築するべく「人材ビジョン」「求める人物像」「人材ポリシー」を策定している。
(出所:ムゲンエステート HP)
さらに、「人的資本の強化・人材戦略」を支えるものとして、「人材獲得の強化」「人材育成の強化」「リテンションの強化」の 3 つの柱を掲げている。
■人材獲得の強化
この点については、第一に「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」を推し進めている。たえず変化し続ける社会や多様な価値観に対応していくには、潜在的な市場を発掘できる新たな価値の創出が欠かせない。だがそれには、従業員自体に、多様な価値観、ジェンダー、世代、民族、言語、文化、障がいの有無、ライフスタイルなどを活かす視点や発想が求められる。そこで今までの常識や既成概念にとらわれない発想を継続的に生み出すことができる組織の形成に取り組んでいる。
第二は「女性活躍推進」である。2023 年 12 月時点で、女性の従業員構成比率は 32.0%、女性管理職比率は 4.1%となっているが、この比率を高めつつ女性がさらに活躍できるよう、子育てサポート企業として
「プラチナxxxん認定」(「xxxん認定」は 2023 年 4 月取得済)を目標に職場環境の充実に取り組んでいる。具体的には育児・介護休業法で定められた短時間勤務の対象年齢の拡充がある。また子どもを安心して出産し育てられる職場環境づくり、出産祝金制度、さらに女性が能力を十分に発揮できるような研修やコミュニティづくりなど、キャリア支援にも力を入れている。
第三は「外国籍従業員の活躍推進」である。ムゲンエステートでは、日本で働く外国籍(日本国籍外)従業員の採用を 2005 年から本格的に開始している。待遇は社員一律とし、xx性・平等性を担保している。さらに、外国籍社員はなるべく同じ部署に配置するなど働きやすい環境整備にも努めている。
■人材育成の強化
掲げている企業理念を実現していくには、従業員一人ひとりに高い能力が求められる。またそのためには、し っかりとした育成プログラムを構築し、従業員を鼓舞するとともに手厚く支援していくことが大事になる。ムゲンエステートでは、「階層別研修」「人材育成研修」「目的別研修」「職能別研修」の研修体系を設けている。またあらゆる階層の従業員に幅広く育成の機会を提供し、多様な人材がやりがいと誇りを持って仕事に勤しめることや、能力を最大限に発揮しながら継続的に成長・活躍できることをねらいとしてさまざまな取り組みに挑戦して いる。例えば、顧客への適切な情報提供にもつながる宅地建物取引士の資格支援制度を設置している。また従業員がたえず学び、成長していくことができるように各種資格取得についても助成を行っている。
(出所:ムゲンエステートより)
どれほど優れた人を採用、育成しても、働きにくかったり、働きがいがなければ人は離れていく。それでは企業理念の実現は難しい。「リテンションの強化」は重要である。ムゲンエステートでは、人材のリテンションについて重点的に次の施策を行っている。
「ワークライフバランスの推進」
妊娠(配偶者の妊娠を含む)・出産・育児・介護・疾病治療など、ライフステージのさまざまな変化に左右されることなく、一人ひとりが持っている能力を存分に発揮できるよう、多様で柔軟な働き方が可能な環境整備を行っている。
「男性育児休業取得促進」
男性の育児参画を推進することも重要である。育児休業については、社内啓発や社内研修などを通して男性社員の取得を促している。育児休業以外にも、有給休暇、短時間勤務、有給の介護・看護休暇など育児目的に使用できる制度を充実させており、制度を組み合わせながら男性も積極的に育児に関わることを推奨 している。
「有給休暇の取得❹向上」
社員の健康維持や心身のリフレッシュに向けて、有休奨励日を設定し休暇の取得が促進されるよう取り組んでいる。
「残業時間の抑制(ノー残業デーの導入)」
ノー残業デーへの取り組みを強化するのみならず、あわせて従業員自身の働き方の見直しや能力の向上を図り、より効率的に業務を行うことによって、労働時間の短縮を目指している。
「健康経営への取り組み」においても、全従業員が、心身ともに健康でやりがいをもって働き、「この会社で働いて良かった。有意義な時間を過ごせて良かった」と思える職場になるよう、さまざまな取り組みを行っている。具体的には健康企業宣言に目標を定めて活動を展開している。
安全衛生規程の制定、安全衛生委員会の開催・報告、また社内イントラを使ったxx・衛生に関するxxxxを進めている。また産業医の指導のもと、健康診断受診率向上と受診後のフォローアップとして再診の徹底を行い、社員の健康に配慮した環境作りを力強く進めている。メンタルヘルス対策としても年に一回ストレスチェックを実施し、社員からの個別相談を受け付ける相談窓口を設置している。
【サステナビリティへの取り組み ガバナンス(Governance)】
先に示した企業理念を実現するために重要な施策の一つが、経営の透明性と健全性の確保及び環境の変化に迅速・適切に対応できる経営機能の強化であり、コーポレート・ガバナンスの確立である。ムゲンエステートでは、(1)業務執行責任者に対する監督・牽制の強化、(2)情報開示による透明性の確保、(3)業務執行の管理体制の整備を推進している。
具体的には、コンプライアンス規定を策定し、関連情報を社内に掲示するとともに適宜研修を行い、さらにコンプライアンス違反に関する社内・社外通報窓口を開設している。個人情報の扱いについても規程を策定済 みで、社内掲示にて個人情報などの取扱いについて注意喚起を促す呼びかけを行っている。事故・災害・感染症等の発生に備えて事業継続のための BCP(事業継続計画)も整備済みで、定期的に安否確認や避難訓練を実施している。
また、事業を通して持続可能な社会の実現を推進するため、xxxx代表取締役社長を委員長とした
「サステナビリティ委員会」を設置している。同委員会は原則年に 2 回以上開催され、気候変動課題を含むムゲンエステートのサステナビリティ課題について、審議・検討を行い、サステナビリティ活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行っている。サステナビリティ委員会で審議された重点課題及び対応方針については、取締役会にその推進状況を報告し、必要に応じて取締役会において審議及び対応の決定を行っている。
2.株式会社ムゲンエステートの包括的分析
⚫ 業種別インパクトの状況
≪産業分類別に特定したインパクト一覧≫
(出所:UNEP FI 分析ツールより北陸経済研究所が作成)
PIF 原則及びモデル・フレームワークに基づき、北陸経済研究所が定めるインパクト評価の手続きを実施した。
まず、ムゲンエステートの事 業については、国際標準産業分類における「所有または賃貸物件を伴う不動産業」、「手数料または契約ベースの不動産活動」、「建築物の建設業」として整理された。事業別の UNEP FI の分析ツールによるポジティブ、ネガティブな項目の判定結果は、以下の通りである。各インパクトエリア内で該当したインパクトトピックの内訳は別表1の通り。
これらの集約結果、及びムゲンエステートの個別要因を加味した修正値は、以下の通りである。インパクトトピック単位での修正内容は、別表2の通り。
≪株式会社ムゲンエステートで特定したインパクト一覧≫
ポジティブ・インパクト及びネガティブ・インパクトが発現するインパクトエリアとして、「健康および安全性」、「資源とサービスの入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質」、「生計」、ポジティブ・インパクトとしては「健全な経済」、「インフラ」、ネガティブ・インパクトとしては「人格と人の安全保障」、「平和とxx」、「強固な制度・平和・安定」、「気候の安定性」、「生物多様性と生態系」、「サーキュラリティ」を確認した。一方、ムゲンエステートの事業活動を踏まえ、以下の修正を行った。
・ムゲンエステートは、人格や自由に配慮しつつ適切に事業活動を行っており、「人格と人の安全保障」エリアにおいて、「現代奴隷」のネガティブ・インパクトを、「平等とxx」エリアにおいて、「民族・人種平等」と「その他の社会的弱者」のネガティブ・インパクトを削除した。また「人格と人の安全保障」エリアの「自然災害」のネガティブ・インパクトについても、事業活動が自然災害の誘発をもたらさないことから削除した。
・ムゲンエステートでは、従業員が働きがいをもつことができる仕事環境づくりを重視しており、「生計」エリアにおいて「雇用」のネガティブ・インパクトを追加した。
・ムゲンエステートでは、採用から処遇に至るまで、女性社員と男性社員の平等に向けて積極的に取り組んでいることから、「平等とxx」のエリアにおいて「ジェンダー平等」のネガティブ・インパクトを追加した。
・「資源とサービスの入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質」エリアにおいて、ムゲンエステートでは主たる事業が居住用・オフィス等の不動産の取り扱いであり、エネルギー創出や医療サービス事業を提供する不動産の取り扱いではないことや、エネルギーへのアクセスを阻害することがないことから、「エネルギー」のポジティブ・インパクトとネガティブ・インパクト、および「健康と衛生」のポジティブ・インパクトを削除した。また、手ごろな価格の住宅へのアクセスを阻害することがないことから「住居」のネガティブ・インパクトを削除した。さらに取り扱った不動産が交通混雑等を引き起こすことはなく「移動手段」を、歴史的xx物等有形文化遺産の売買がなく、開発においても破壊することはないことから「文化と伝統」のネガティブ・インパクトを削除した。
・ムゲンエステートでは、すでにコンプライアンス規定を設けてその徹底を推進しており、また違法な開発などがないことから「強固な制度・平和・安定」エリアにおいて「法の支配」のネガティブ・インパクトを削除した。
・ムゲンエステートは、上場した大企業であり、販売先は主に個人顧客であることから、「健全な経済」エリアの
「零細・中小企業の繁栄」のポジティブ・インパクトを削除した。
・ムゲンエステートでは、輸送や送電等のシステム開発に係わっていないことから、「インフラ」のポジティブ・インパクトを削除した。
・ムゲンエステートの不動産買取再販事業では、汚水や土壌汚染物質の排出、新たな森林伐採等の開発がないことから、「生物多様性と生態系」のインパクトエリアで、「水域」、「大気」、「土壌」、「生物種」、「生息地」のネガティブ・インパクトを削除した。
・ムゲンエステートの中古不動産の買取再販事業は、新築に比して廃棄物の抑制になるととともに、社会的 資産である中古不動産を再生し、流通させることから、「サーキュラリティ」のインパクトエリアの「資源強度」、「廃棄物」のポジティブ・インパクトを追加した。
(出所:UNEP FI 分析ツールより北陸経済研究所が作成)
以上の結果に基づき、各インパクト・カテゴリーに対して、ネガティブ・インパクトとその低減策、ポジティブ・インパクトとその向上に資するムゲンエステートの活動をプロットし、さらにSDGs のゴール及びターゲットへの対応関係についても評価した。なお、「資源強度」、「廃棄物」のネガティブ・インパクトについては、すでにペーパーレス化の促進、事務用品の再利用等に継続的に取り組むとともに、事業活動において排出される廃棄物はマニフェストにて管理し、具体的な種類と量を把握して削減に努めていることから目標設定の対象としない。また、「雇用」
「賃金」「社会的保護」については、「生計」のインパクトエリアに対して目標を設定する。
⚫ インパクトに係る戦略的意図やコミットメント
インパクトテーマと、PIF 原則及びモデル・フレームワークにより特定したインパクトエリア/トピックの関連は、以下の通り。
インパクトテーマ | 特定したインパクトエリア/トピック | |
Ⅰ | 環境に優しい中古不動産の流通を高め豊かな社会づくりに貢献 | PI「健康および安全性」、「住居」、「資源強度」 「廃棄物」 |
Ⅱ | 環境負荷を低減するための取り組み推進 | PI「資源強度」 NI「気候の安定性」 |
Ⅲ | 多様性が活かされ、働きがいがあふれる職場環境の構築 | PI「教育」、「生計」 NI「健康および安全性」、「生計」、「ジェンダー平等」 |
※PI:ポジティブ・インパクト、NI:ネガティブ・インパクト
3.株式会社ムゲンエステートに係る本ポジティブ・インパクト・ファイナンスにおける KPI の決定
以下より特定したポジティブ・インパクトとネガティブ・インパクトの内容を記載する。また、目標に達したものについては、再度目標設定等を検討する。
Ⅰ.環境に優しい中古不動産の流通を高め豊かな社会づくりに貢献
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブ・インパクト |
インパクトエリア/トピック | 「健康および安全性」、「住居」、「資源強度」、「廃棄物」 |
影響を与えるSDGs の目標 |
|
内容・対応方針 | 中古不動産の流通促進、販売強化 |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 買取再販不動産の売上高 54,104 百万円を目指す。 (2023 年度実績 46,163 百万円) |
【中古不動産の流通促進】
ムゲンエステートは、中古不動産を買い入れ、リフォームを施して再販する事業を中心に展開している。この事業は、資源(不動産ストック)の有効利用や廃棄物削減の点で新築より環境に貢献する。国としても、
「不動産ストックビジネスの発展と拡大に向けて~今後の方向性と先進的な取組事例について~」(国土交通省 土地・建設産業局不動産市場整備課 2016 年 3 月)にある通り、かねてからこうした取り組みを推奨している。そこで当事業による社会的なインパクトを高めるため、「買取再販不動産の売上高」を目標とした。
【居住用中古不動産の再生】
「平成 30 年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によれば、欧米と比べて日本の中古住宅の流通シェアは著しく低い。その向上を図ることは日本にとって大きな課題となっている。ムゲンエステートでは、買取再販不動産事業を拡大するとともに居住用不動産の比率を、2023 年度までの 4 ヶ年平均実績 36.4%/年から 40%/年以上にまで高めることを目指している。
中古の居住用不動産は、新築に比して手ごろ感があり、住宅へのアクセスに貢献する。また、再生に際して施されるリフォーム、リノベーションは、従来品より機能的に優れた内外装材、設備等を活用することで、健康や安全を高めることにもつながっている。ムゲンエステートでは、「上質」をキーワードにバリューアップを図り、顧客満足につながる取り組みを進めている。
【流通を促進する取り組み】
流通を促進する対策は、物件のバリューアップだけではない。
ムゲンエステートでは、安心して中古不動産が購入できるよう、購入後のリフォームが正しく工事がなされているかを確認する検査を行うとともに、保証書の発行やアフターサービス点検(希望された方向け)の実施、あんしん住宅瑕疵保険への加入(旧耐震は対象外。他加入条件有)を進め、長く安心して居住できる取り組みに力を入れている。
さらにインターネット等のデジタルツールを活用し、スピーディーに必要な情報が提供できる仕組みを設けてい る。特に遠方に居住しているため内見ができない顧客に対しては、物件のイメージが描きやすいように VR(バーチャルリアリティ)の技術等を積極的に取り入れ、中古不動産へのアクセスのしやすさに取り組んでもいる。
既存住宅流通シェアの国際比較
100%
19
14.1
80%
30.2
60%
85.5
40%
81
85.9
69.8
20%
14.5
0%
日本 アメリカ イギリス フランス
中古住宅 新築住宅
※「平成三十年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)をもとに北陸経済研究所にて作成。
(出所:ムゲンエステート HP)
Ⅱ.環境負荷を低減するための取り組み推進
(A)環境負荷を低減した中古不動産再生の推進
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブ・インパクト |
インパクトエリア/トピック | 「資源強度」 |
影響を与えるSDGs の目標 | |
内容・対応方針 | 環境に配慮した設備等による不動産のリフォーム |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 節水、節電に配慮した設備を活用したリフォーム件数 540 件実現する。 (2023 年度までの 4 ヶ年平均実績 364 件/年) |
【環境に配慮した中古不動産再生への取り組み】
中古不動産の再生は、既存の資源を丁寧に長く有効に活用することにつながる。また再生のための内外装をはじめ、設備を中心としたリフォームを適切に行うことは、環境や省エネ等に好ましい影響を与えることにもな る。実際、人々の意識の高まりとともに、そうした配慮がなされたリフォームが求められつつもある。そこで、節水、節電などに配慮したリフォーム件数を目標として掲げることにした。
具体的な一例をあげれば、便器では従来品と比べて 50 パーセント以上の節水、節電となるエコ機能を備
えた製品を活用している。また節水、省エネ率が従来品と比して 35 パーセントから 48 パーセントとなるシャワー設備を用いている。
またムゲンエステートにおいて、中古不動産の売買後に顧客の要望に応じてリフォームをする場合も少なくない。そこでリフォーム等の相談があれば、環境に配慮した資材の活用について、適切な情報提供を積極的に行うとともに、その活用を進めることにしている。
(B)自社の二酸化炭素排出量の削減
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブ・インパクト |
インパクトエリア/トピック | 「気候の安定性」 |
影響を与えるSDGs の目標 |
内容・対応方針 | 温室効果ガス削減ヘの取り組みを推進 |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 2030 年度に売上高あたり温室効果ガスの排出量(Scope1・Scope2)を 46%削減(2021 年度比)する。 |
ムゲンエステートでは、事業の成長や新規事業への参入に伴う GHG 排出量の増加を想定しつつ、再生エネルギーの導入や非化石証書利用の検討も視野にいれ、長期的な目標としてはパリ協定の目標を参考に、 2050 年度カーボンニュートラルを掲げている。
2022 年度の Scope1 排出量は 27.1t-CO2 で、2021 年度の 25.9t-CO₂から微増したものの、2023年度では 24.7t-CO2 と減少している。これは、営業活動において公共交通機関やカーシェア、シェアサイクルの利用を促進する取り組みでガソリン消費量が低減したことによる。
Scope2 は、2021 年 9 月以降に開所した 6 営業所やその他固定資産の増加により、2022 年度では 2021 年度に比べ増加したが、固定資産の一部を再生エネルギー由来の電力調達に変更し、さらに固定資産の一部を販売用不動産に切り替えるなどの取り組みによって、2023 年度には 145.9t-CO2 と低減している。Scope1・2 合計で 2021 年度は 192.7t-CO₂であった。これを基準に、事業所や固定資産でさらに再生可能エネルギーへの切り替えを進めることなどに取り組み、中期的な削減目標としては売上高あたり 46%削減を掲げることにした。
またScope3(自社以外の間接排出量)の排出量の削減については重要な課題と認識しており、ムゲンエステートグループの排出量実績の把握、削減方法を検討し、2024 年 3 月には開示することにしている。
Ⅲ.多様性が活かされ、働きがいがあふれる職場環境の構築
(A)従業員の成長と働きがいの向上
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブ・インパクト |
インパクトエリア/トピック | 「教育」、「生計」 |
影響を与えるSDGs の目標 |
|
内容・対応方針 | 教育投資額を高めて働きがいのある職場づくり |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 専門性の深化やマネージメント力、営業力、従業員エンゲージメントのxxxに資する年間教育投資額を 2,700 万円に高める。 (2023 年度 600 万円) |
年齢、性別、障がいの有無等を問わず、仕事を通じて成長することは、働きがいや生きがいを高めるうえできわめて重要である。日々の仕事の中ではもちろんだが、必要に応じて資格を取得し、それらを実践で活用することはさらに教育効果が高い。特に不動産事業を営むムゲンエステートでは、宅地建物取引士や不動産流通実務検定等の資格は、顧客に適切な情報を伝えるとともに満足度を高める仕事につながっていく。そこで所定の資格については資格手当を支給し、モチベーションの向上を図っている。
それ以外の資格でも、社会の多様なニーズに応えていくために大きな力となることが想定される。従業員の就労意欲を高め、それぞれの個性を生かすうえで、資格取得の支援には大きな意義がある。
ムゲンエステートの企業理念の Value には、「常に挑戦心を持ち、自身を向上させよう なぜなら、挑戦の先に夢の実現が待っているから」と掲げられている。また、第二次中期経営計画においても、「求める人物像」「人材ポリシー」を明示し、「人材育成の強化」を強く打ち出している。従業員の教育、育成は、事業活動の要に位置づけられているといえる。
令和4年度「能力開発基本調査」(2023 年 6 月 30 日 厚生労働省)によれば、「不動産業,物品賃貸業」で「OFF-JT に支出した費用」の「一社当たり平均額」は、317.9 万円であった。「自己啓発支援に支出した費用」は、116.4 万円で、合計すると 434.3 万円である。また、企業規模別では、ムゲンエステートが該当する「100~299 人」では、「OFF-JT に支出した費用」の「一社当たり平均額」は 181.5 万円で、
「自己啓発支援に支出した費用」は 64.5 万円であった。あわせると 246 万円となる。
いずれと比較しても、ムゲンエステートの 2023 年度の支出額である 600 万円は大きく上回っている。しかし、現状に甘んじることなく、それを基準額として 2,700 万円を目途に教育の一層の充実を図ることとした。
(B)従業員の健康保持、増進
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブ・インパクト |
インパクトエリア/トピック | 「健康および安全性」、「生計」 |
影響を与えるSDGs の目標 |
|
内容・対応方針 | 全従業員のワークライフバランスを進める制度の運用 |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 ①全従業員の月間残業平均時間を 16 時間以下に維持する。 ②管理職の有給取得率 80 パーセント以上を目指す。 (2023 年度までの 4 ヶ年平均実績 69.9 パーセント) |
ムゲンエステートでは、賃金格差が生じないよう配慮することはもとより、従業員が健康的に安心して暮らすことができる各種社会保険、各種諸手当(子供手当、禁煙推奨金等)、看護休暇や介護休業、介護休暇
(年間 5 日間まで有給)制度等の充実と法令に基づいた運用に取り組んでいる。また女性の活躍促進、外
国籍社員(2023 年 12 月 31 日時点 6 名)の活用など、多様な人材が力を発揮できるような制度の拡充も図っている。
とりわけムゲンエステートでは、従業員の健康保持、増進については、積極的に取り組んできた。法令を順守しつつ啓発を図ることによって、管理者を除く従業員の月平均残業時間は、2021 年から 3 年間の平均が
16.3 時間となっている。2023 年度実績では、有給取得率についても 91.7 パーセントを上回っており、定期健康診断受診率は 81.8 パーセントとなっている。
こうした取り組みの成果を維持し、さらに促進することを狙いとして、残業時間については 16 時間以下を維持することとし、さらに率先垂範すべき管理職まで対象を広げて有給取得率の向上に取り組むことにした。
(C)仕事と暮らしの調和がとれた働きやすい職場づくり
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブ・インパクト/ネガティブ・インパクト |
インパクトエリア/トピック | PI 「雇用」、「賃金」 NI 「社会的保護」、「ジェンダー平等」 |
影響を与えるSDGs の目標 |
|
内容・対応方針 | 育児休業取得率、従業員の女性比率・管理職比率の向上 |
毎年モニタリングする目標と KPI | 【KPI】 ①2025 年度までに「プラチナxxxん」認定取得 ②男性従業員の育児休業取得率 50%以上 (2023 年度までの 4 ヶ年平均実績 44.4 パーセント) ③女性の雇用を積極的に進め、グループ人員数の内の女性比率 35.0 パーセントを目指す。 (2021 年度 26.3 パーセント、2022 年度 26.4 パーセント、2023 年度 32.0 パーセント) ➃女性管理職比率を 8%以上とする。 |
育児休業取得率の推移
100%
82.2% 83.0%
81.6%
85.1%
80.2%
75%
50%
25%
6.16%
7.48%
12.65% 13.97% 17.13%
0%
2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
男性
女性
社会の一員である多様な従業員が、それぞれの状況に合わせて柔軟に働くことができるような制度、またその運用を図ることは、企業の社会的責任として欠かすことができない。とりわけ少子高齢化の日本では、育児支援につながる取り組みは重要である。
企業などで働く男性の育児休業の取得率は年々改善し、2022 年度には 17.13%にまで達しているが、国が 2025 年の目標としている 50%には遠く及ばない。「不動産業、物品賃貸業」で見れば、12.99パーセントとなっている。(「令和 4 年度雇用均等基本調査」(厚生労働省))。
ムゲンエステートでは、男性従業員の育児休業を一層促進するため、過去 4 年の実績の平均を上回
るとともに国が掲げている 50 パーセント以上を目標とした。
※「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)をもとに北陸経済研究所にて作成。
ムゲンエステートでは、事業の進展に合わせ、さらに女性従業員に活躍の場を提供することに取り組んでいる。
「令和元年経済センサス基礎調査」によれば、ムゲンエステートの主たる事業である不動産買取再販事業に
近い「建物売買業、土
地売買業」で、なおかつ同規模の企業での女性従業員比率をみると、
35.6 パーセントとなっている。そこで女性の採用促進をさらに積極的に努めることで、女性従業員の比率を同水準まで高めることを目標に掲げることにした。
建物売買業、土地売買業の従業員規模別女性従業
※「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)をもとに
北陸経済研究所にて作成。
※「令和元年経済センサス基礎調査」をもとに北陸経済研究所にて作成
また、「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)によれば、「不動産業、物品賃貸業」で「係長相当職以上(役員含む)に占める女性の割合」は 15 パーセントであり、「課長相当職以上(役員含む。)
に占める女性の割合」は 12.4 パーセントであった。また規模別でみると、「課長相当職以上(役員含む。)に占める女性の割合」についてみると、「100~299 人」では 9.5 パーセントで、「300~999 人」で 6.2 パーセントとなっている。ムゲンエステートでは、女性従業員の思いや考えを柔軟に受け入れつつ、適切な制度設計やその運用を検討し、着実にその割合を高めていくこととし、女性管理職(課長職以上)の比率を業界・規模 基準に近い 8 パーセントにまで高めることにした。
4.本ファイナンスで KPI を設定したインパクトの種類、SDGs 貢献分類、影響を及ぼす範囲
株式会社ムゲンエステートの事業活動は、SDGs の 17 のゴールと 169 のターゲットに以下のように関連している。
Ⅰ.環境に優しい中古不動産の流通を高め豊かな社会づくりに貢献
ターゲット | 内容 | |
3.9 | 2030 年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。 | |
11.1 | 2030 年までに、全ての人々の、適切、安全かつ安価な住宅及び基本的サービスへのアクセスを確保し、スラムを改善する。 | |
11.6 | 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 | |
12.2 | 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 | |
12.4 | 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 | |
12.5 | 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
期待されるターゲットの影響としては、中古不動産の再生を行う「不動産買取再販事業」を通して、社会における資源の有効活用を促進するとともに、廃棄物の低減化に貢献している。また、健康的で安全な居住用不動産へのアクセスを高めることにもつながっている。
Ⅱ.環境負荷を低減するための取り組み推進
ターゲット | 内容 | |
12.2 | 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 | |
12.5 | 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 | |
13.1 | 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 |
期待されるターゲットの影響としては、中古不動産の再生において環境に配慮したリフォームを推進することで、節水、省エネ等を促進し、環境負荷の低減に寄与している。また、温室効果ガスへの取り組みを通じて気候変動対策にも貢献している。
Ⅲ.多様性が活かされ、働きがいがあふれる職場環境の構築
ターゲット | 内容 | |
3.4 | 2030 年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 | |
4.4 | 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 | |
5.5 | 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 | |
8.5 | 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。 | |
10.2 | 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
期待されるターゲットの影響としては、従業員一人ひとりが働きがいをもって健康に安全に働き続けることができる職場環境を構築することで、仕事と家庭生活の適切なバランスをとるとともに、就労意欲を高めることにつながる。また年齢、性差、障がいの有無等にかかわらず、すべての従業員に対し、充実した教育を行うことで、社会の健全な発展に貢献している。
⚫ 企業の所在地において認識される社会的課題・環境問題への貢献
【中古不動産の流通を高めて住まいを確保】
不動産経済研究所の「首都圏新築分譲マンション市場動向 2023 年のまとめ」によれば、戸当りの平均価格
は 8,101 万円で、前年比では 1,813 万円(28.8%)上昇しており、5 年連続最高値を大幅に更新してい
る。また、公益財団法人東日本不動産流通機構株式会社が、2023 年 4 月 18 日に公表した「首都圏不動産流通市場の動向(2022 年度)」によれば、中古マンションの成約物件価格は 10 年連続で上昇し、4,300万円台であったという。首都圏に住まいを求める人々にとっては厳しい傾向にある。
住まいの不安定化は、高齢者や子育て中の家族にとって大きな問題である。中古不動産の再生を行う「不動産買取再販事業」によって多様な住まいを流通に乗せることは、首都圏で暮らす人々を守ることにつながるといえる。「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会報告書 平成 25 年 6 月 26 日」には、「買取再販ビジネスは、適確なリフォームの実施、中古住宅の二次市場の拡大等が流通市場を活性化させる上で重要な可能性を有したビジネスモデルであると言える」とある。もとよりそれはムゲンエステート創業の思いそのものである。
特に中古住宅を有効に活用することで、消費者が住宅に投資する費用を大幅に削減することができる。それは生活にゆとりを生みだす一因となり、社会の生活基盤を下支えすることにもつながっている。
【首都圏に顕著なヒートアイランド対策】
「令和 3 年度首都圏整備に関する年次報告」(第 208 回国会(常会)提出)には、「首都圏においても地球温暖化の進展に伴う気候変動が進んでおり、関東地方の平均気温は 50 年当たり 1.2℃のペースで上昇している。東京圏を中心に都市化の影響によるヒートアイランド現象も見られる」との指摘がある。東京では、過去 40 年間で、熱帯夜(日最低気温が 25℃より下がらない日)の日数が約 2 倍になっているとの報告もある。
こうした気温の上昇は、高齢化が進む日本では大きな健康被害を招く。もとより多方面からの取り組み、対策が求められているが、その一つとして、既存の中古不動産の設備の刷新がある。中古不動産の資材、設備は古く、エネルギー効率が芳しくない場合が少なくないため、場合によっては冷暖房の電気代等がかかってしまう。そうした問題を少しずつでも解決していくには、中古不動産を売買する折に適切な設備に補修、リフォームすることが重要であ る。ムゲンエステートでは、そうした観点に立って再生に取り組んでおり、事業の適切な運営を通じて、首都圏の環境に貢献することになる。
5.株式会社ムゲンエステートのサステナビリティ経営体制(推進体制、管理体制、実績)
ムゲンエステートは、藤田進一代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ委員会を設置している。同委員会では、サステナビリティの課題について、審議・検討を行い、サステナビリティ活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行っている。また、そこで審議された重点課題及び対応方針については、 取締役会にその推進状況が報告され、必要に応じて審議及び全社的な対応を決定している。取り組み施策等は前段に記載した内容である。本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、藤田進一代表取締役社長を最高責任者として全従業員が一丸となり、KPI の達成に向けた活動を実施し、社会的な課題解決への貢献とともに持続的な経営を実現していく。各 KPI は前述の推進体制に基づき各部門が中心となって取り組み、経営企画部が統括し、達成度合いをモニタリングしていく。
このような推進体制を構築することで、地域における社会的課題や環境問題にも積極的に取り組み、地域をリードしていく企業を目指す。
株式会社ムゲンエステートの責任者 | 藤田 進一 代表取締役社長 |
株式会社ムゲ ン エ ステ ート のモニタリング担当部 | 経営企画部 |
銀行に対する報告担当部 | 経営企画部 |
6.北陸銀行によるモニタリングの頻度と方法
上記目標をモニタリングするタイミング、モニタリングする方法は以下の通りである。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成及び進捗状況については、北陸銀行とムゲンエステートの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は年に1回以上実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。具体的には、決算後 5 ヶ月以内に関連する資料を北陸銀行が受領し、モニタリングとなる指標についてフィードバック等のやりとりを行う。
北陸銀行は、KPI 達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは北陸銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。また、モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、北陸銀行は、同社に対して適切な助言・サポートを行う。
モニタリング方法 | 対面、テレビ会議等の指定はない。 定例訪問等を通じて情報交換を行う。 |
モニタリングの実施時期、頻度 | 年 1 回以上実施する。 |
モニタリングした結果のフィードバ ック方法 | KPI 等の指標の進捗状況を確認しあい、必要に応じて対応策 及び外部資源とのマッチングを検討する。 |
以 上
【別表1】
(出所:UNEP FI 分析ツールより北陸経済研究所が作成)
【別表2】
(出所:UNEP FI 分析ツールより北陸経済研究所が作成)
第三者意見書
2024 年 3 月 29 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社ムゲンエステートに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社北陸銀行 |
評価者:一般財団法人北陸経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、株式会社北陸銀行(「北陸銀行」)が株式会社ムゲンエステート(「ムゲンエステート」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、一般財団法人北陸経済研究所(「北陸経済研究所」)による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。北陸銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、北陸経済研究所・株式会社道銀地域総合研究所・株式会社浜銀総合研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、北陸銀行及び北陸経済研究所にそれを提示している。北陸銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。なお、ムゲンエステートは会社法の定義する大企業に該当するが、サステナビリティについての開示情報のレベルやサステナビリティ体制の強度などを総合的に勘案し、中小企業向けのインパクト分析ツールを活用してインパクト評価を行った。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則
との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
北陸銀行及び北陸経済研究所は、本ファイナンスを通じ、ムゲンエステートの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、ムゲンエステートがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、北陸銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(1) 北陸銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
PIF実施 制図
モニタリング
KPI達成支援
第三者意見書提出
PIF評価書、第三者意見書の提供
PIF実行
包括分析結果、
KPI協議
包括分析
KPI協議
借入人
株式会社
日本格付研究所
第三者意見書申込
PIF申込
北陸銀行グループ
研究所
(評価実施)
北陸銀行
(PIF契約締結、融資実行)
※研究所:北陸経済研究所・道銀地域総合研究所・浜銀総合研究所
(出所:北陸銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、北陸銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、北陸銀行からの委託を受けて、北陸経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て北陸経済研究所が作成した評価書を通して北陸銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、北陸経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるムゲンエステートから貸付人である北陸銀行及び評価者である北陸経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト
川越 広志
担当アナリスト
菊池 理恵子
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026