Contract
治験実施標準業務手順書
<企業治験>
横浜労災病院
目 次
治験の原則
治験は、次に掲げる原則に則って実施されなければならない。
1. 治験は、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則及び医薬品の臨床試験の実施の規準に関する省令等を遵守して行われなければならない。
2. 治験を開始する前に、個々の被験者及び社会にとって期待される利益と予想される危険及び不便とを比較考慮するものとする。期待される利益によって危険を冒すことが正当化される場合に限り、治験を開始し継続すべきである。
3. 被験者の人権、安全及び福祉に対する配慮が最も重要であり、科学と社会のための利益よりも優先されるべきである。
4. 治験薬に関して、その治験の実施を支持するのに十分な非臨床試験及び臨床試験に関する情報が得られていなければならない。
5. 治験は科学的に妥当でなければならず、治験実施計画書にその内容が明確かつ詳細に記載されていなければならない。
6. 治験は、治験審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して実施しなければならない。
7. 被験者に対する医療及び被験者のためになされる医療上の決定に関する責任は、医師又は歯科医師が常に負うべきである。
8. 治験の実施に関与する者は、教育、訓練及び経験により、その業務を十分に遂行しうる要件を満たしていなければならない
9. 全ての被験者から、治験に参加する前に、自由意思によるインフォームド・コンセントを得なければならない。
10. 治験に関する全ての情報は、正確な報告、解釈及び検証が可能なように記録し、取扱い、及び保存しなければならない。
11. 被験者の身元を明らかにする可能性のある記録は、被験者のプライバシーと秘密の保全に配慮して保護しなければならない。
12. 治験薬の製造、取扱い、保管及び管理は、、「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について」(平成 20 年7月9日付け薬食発第 0709002 号厚生労働省医薬食品局長通知。以下「治験薬GMP通知」という。)を遵守して行うものとする。治験薬は治験審査委員会が事前に承認した治験実施計画書を遵守して使用するものとする。
13. 治験のあらゆる局面の質を保証するための手順を示したシステムが、運用されなければならない。
14. 治験に関連して被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損失は適切に補償されなければならない。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにしなければならない。
第 1 章 目的と適用範囲
(目的と適用範囲)
第 1 条 この規則は、厚生省令第 28 号 (平成 9 年 3 月 27 日)厚生労働省令第171号(平成
16 年 12 月 20 日)、厚生労働省令第 36 号 (平成 17 年 3 月 23 日)、厚生労働省令第 38 号(平
成 17 年 3 月 23 日)、これらの省令の一部を改正する省令と通知等、及び、労xx発 1005(平
成 19 年7月 20 日)、労xx発 1446 (平成 19 年 10 月 29 日)、労xx発 1447 (平成 19 年
10 月29 日)に基づいて、治験の実施に必要な手続きと運営に関する手順を定めるものである。
2 本規定は、医薬品及び医療機器の製造販売承認申請又は承認事項一部変更承認申請の際に提出すべき資料の収集のために行う企業治験に対して適用する。
3 製造販売後臨床試験を実施する場合には、「治験」を「製造販売後臨床試験」と読み替えることにより、本規定を適用する。また、有害事象に関する書式については書式番号を該当する番号に読み替えるものとする。
4 医療機器の治験を実施する場合には、「医薬品」を「医療機器」、「治験薬」を「治験機器」、「治験使用薬」を「治験使用機器」、「被験薬」を「被験機器」、「副作用」を「不具合」と読み替えることにより、本規定を適用する。また、有害事象に関する書式については書式番号を該当する番号に読み替えるものとする。
第 2 章 病院長の業務
(治験委託の申請等)
第 2 条 病院長は、事前に治験責任医師より提出された治験分担医師・治験協力者リスト (書式 2) に基づき、治験関連の重要な業務の一部を分担させる者を了承する。病院長が了承した治験分担医師・治験協力者リスト (書式 2)は治験責任医師および治験を依頼しようとする者
(以下「治験依頼者」という)に各 1 部提出する。
2 病院長は、治験に関する治験責任医師と治験依頼者との文書による合意が成立した後、治験依頼者及び治験責任医師に治験実施依頼書 (書式 3) とともに次に掲げる最新の書類を添えて提出させるものとする。
≪審査に必要な書類≫
1) 治験実施計画書
2) 治験薬概要書及び治験使用薬(被験薬を除く。)に係る科学的知見を記載した文書(既
承認薬の添付文書、インタビューフォーム、学術論文等)
3) 症例報告書の見本(必要時)
4) 説明文書(説明文書と同意文書は一体化したまたは一式の文書)
5) 治験分担医師となるべき者の氏名を記載した文書
6) 治験の費用の負担について説明した文書
7) 被験者の健康被害の補償について説明した文書
8) 被験者の募集の手順に関する資料(募集する場合)
9) 被験者の安全等に係る報告
10) 治験責任医師となるべき者の履歴書
11) その他治験審査委員会が必要と認める資料
(治験実施の承認等)
第 3 条 病院長は、治験責任医師に対して治験の実施を了承する前に、治験審査依頼書 (書式 4)とともに、第 2 条第 2 項に定める文書を治験審査委員会に提出し、治験の実施について治験審査委員会または労働者健康安全機構(以下、機構本部)が設置する中央治験審査委員会の意見を求めるものとする。また、治験審査委員会より重要な案件と審議された治験について、本院の倫理委員会に治験の実施について意見を求めることができる。
2 病院長は、治験審査委員会が治験の実施を承認する決定を下し、又は治験実施計画書、同意文書及びその他の説明文書並びにその他の手順について何らかの修正を条件に治験の実施を承認する決定を下し、その旨を治験審査結果通知書(書式 5)により通知してきた場合は、これに基づく病院長の指示 ・ 決定を、治験審査結果通知書 (書式 5) または治験に関する指示・決定通知書 (参考書式 1) により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
3 病院長は、治験審査委員会が、修正を条件に治験の実施を承認し、その点につき治験責任医師及び治験依頼者が治験実施計画書を修正した場合には、治験実施計画等修正報告書 (書式 6)とともに該当する資料を提出させ、修正事項が承認の条件を満たしていることを確認するものとする。また、該当する資料を治験審査委員会に提出し、治験審査委員会は修正事項の確認を行う。
4 病院長は、治験審査委員会が治験の実施を却下する決定を下し、その旨を治験審査結果通知書
(書式 5)により通知してきた場合は、治験の実施を了承することはできない。病院長は、治験の実施を了承できない旨の院長の決定を、治験審査結果通知書 (書式 5)により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
5 病院長は、治験依頼者から治験審査委員会の審査結果を確認するために審査に用いられた治験実施計画書等の文書の入手を求める旨の申し出があった場合には、これに応じなければならない。
(治験実施の契約等)
第 4 条 病院長は、治験審査委員会の意見に基づいて治験の実施を了承した後、治験依頼者と治験契約書 (様式 9-1 または 9-2) により契約を締結し、双方が記名又は署名し、捺印と日付を付すものとする。
2 治験責任医師は、契約内容の確認の上、治験契約書に記名・捺印又は署名し、日付を付すものとする。
3 治験審査委員会が修正を条件に治験の実施を承認した場合には、第 3 条第 3 項の治験実施計画修正報告書 (書式 6)が病院長に提出され、修正事項の確認がされた後に、治験契約書により契約を締結するとともに、治験責任医師は本条前項に従うものとする。
4 病院長は、治験依頼者から治験契約書の内容の変更のため、治験に関する変更申請書 (書式 10) が提出された場合、必要に応じ治験審査委員会の意見を聴いた後、覚書 (様式 9-3 または 9-4 等) を締結するとともに、治験責任医師は本条第2項に従うものとする。
(治験の継続)
第 5 条 病院長は、実施中の治験において毎年 6 月に、治験責任医師に治験実施状況報告書 (書 式 11) を提出させ、治験審査依頼書 (書式 4) 及び治験実施状況報告書 (書式 11) の写 しを治験審査委員会に提出し、治験の継続について治験審査委員会の意見を求めるものとする。
2 病院長は、治験審査委員会の審査結果に基づく病院長の指示及び決定を、治験審査結果通知書
(書式 5) または治験に関する指示 ・ 決定通知書(参考書式 1)により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。修正を条件に承認する場合には、第 3 条第 3 項に準じるものとする。
3 病院長は、治験審査委員会が実施中の治験の継続審査等において、治験審査委員会が既に承認した事項の取消し(治験の中止又は中断を含む)の決定を下し、その旨を治験審査結果通知書
(書式 5)により通知してきた場合は、これに基づく病院長の指示及び決定を、治験審査結果通知書 (書式 5)または治験に関する指示 ・決定通知書 (参考書式 1) により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
4 病院長は、治験依頼者から治験審査委員会の継続審査等の結果を確認するために審査に用いられた治験実施計画書等の文書の入手を求める旨の申し出があった場合には、これに応じなければならない。
(治験実施計画書の変更)
第 6 条 病院長は、治験期間中、治験審査委員会の審査の対象となる文書が追加、更新又は改訂された場合は、治験責任医師又は治験依頼者から、それらの当該文書の全てを速やかに提出させるものとする。
2 病院長は、治験責任医師及び治験依頼者より治験に関する変更申請書 (書式 10) の提出があった場合には、治験の継続の可否について、治験審査委員会の意見を求め (書式 4) 、病院長の指示及び決定を、治験審査結果通知書 (書式 5) または治験に関する指示 ・決定通知書 (参考書式 1) により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
(緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱)
第 7 条 病院長は、治験責任医師より緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱の報
告 (書式 8) が提出された場合には、治験審査依頼書 (書式 4)及び緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する報告書(書式8)の写しを治験審査委員会に提出し、逸脱の妥当性について治験審査委員会の意見を求めるものとする。病院長は治験審査委員会の審査結果に基づく指示及び決定を、治験審査結果通知書(書式 5) または治験に関する指示 ・決定通知書 (参考書式 1) により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
2 病院長は治験責任医師から提出された緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する報告書 (書式 8) を「被験者の緊急の危険を回避するためその他やむを得ない理由による逸脱」と承認した場合、その後に治験依頼者の合意を緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する通知書 (書式 9) で得なければならない。さらに、入手した緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する通知書 (書式 9) の写しを治験責任医師に提出するものとする。
(重篤な有害事象の発生)
第 8 条 病院長は、治験責任医師より重篤な有害事象発生の報告 (書式 12 あるいは書式 12 及び詳細記載用書式) があった場合は、治験責任医師が判定した治験使用薬との因果関係並びに予測性を確認する。なお、詳細情報「有」の場合は、当該報告書式に代えて使用する適切な理由がある場合のみ、任意書式を使用しても差し支えないものとする。また、治験の継続の可否について、治験審査委員会の意見を求め (書式 4) 、病院長の指示及び決定を、治験審査結果通知書 (書式 5) または治験に関する指示 ・決定通知書 (参考書式 1) により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
(重大な安全性に関する情報の入手)
第 9 条 病院長は、治験依頼者より安全性に関する報告書 (書式 16) を入手した場合は、治験の継続の可否について治験審査委員会の意見を求め (書式 4) 、病院長の指示及び決定を、治験審査結果通知書 (書式 5) または治験に関する指示 ・ 決定通知書 (参考書式 1) により、治験責任医師及び治験依頼者に通知するものとする。
なお、被験者の安全又は当該治験の実施に影響を及ぼす可能性のある重大な情報には、以下のものが含まれる。
(1) 他施設で発生した重篤で予測できない副作用
(2) 重篤な副作用又は治験使用薬及び市販医薬品の使用による感染症の発生数、発生頻度、発生条件等の発生傾向が治験薬概要書又は治験使用薬(被験薬を除く。)に係る科学的知見から予測できないもの
(3) 死亡又は死亡につながるおそれのある症例のうち、副作用によるもの又は治験使用薬及び市販医薬品の使用による感染症によるもの
(4) 副作用又は治験使用薬及び市販医薬品の使用による感染症の発生数、発生頻度、発生条件等の発生傾向が著しく変化したことを示す研究報告
(5) 治験の対象となる疾患に対し効能若しくは効果を有しないことを示す研究報告
(6) 副作用又は感染症によりがんその他の重大な疾病、障害若しくは死亡が発生するおそれがあることを示す研究報告
(7) 当該被験薬と同一成分を含む市販医薬品に係わる製造、輸入又は販売の中止、回収、廃棄その他の保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための措置の実施
(治験の中止、中断及び終了)
第 10 条 病院長は、治験依頼者が治験の中止又は中断、若しくは被験薬の開発中止を決定し、その旨を文書 (書式 18)で通知してきた場合は、治験責任医師及び治験審査委員会に対し、速やかにその旨を文書 (書式 18) の写しにより通知するものとする。なお、通知の文書には、中止又は中断についての詳細が説明されていなければならい。
2 病院長は、治験責任医師が治験を終了若しくは中止又は中断し、その旨を報告 (書式 17) してきた場合は、速やかに治験依頼者及び治験審査委員会に治験終了(中止 ・中断)報告書(書式 17) の写しを提出し、通知するものとする.
(直接閲覧)
第 11 条 病院長は、治験依頼者によるモニタリング及び監査並びに治験審査委員会及び国内外の規制当局による調査を受け入れるものとする。これらの場合には、モニター、監査担当者、治験審査委員会又は国内外の規制当局の求めに応じ、原資料等の全ての治験関連記録を直接閲覧に供するものとする。
第 3 章 治験審査委員会
(治験審査委員会及び治験審査委員会事務局の設置)
第 12 条 病院長は、治験を行うことの適否その他の治験に関する調査審議を行わせるため、治験審査委員会を院内に設置する。また、機構本部が設置する中央治験審査委員会に治験を行うことの適否等の調査審議を委任のうえ行わせることも可能とする。
2 病院長は、治験審査委員会の委員を指名し、治験審査委員会との協議の上、治験審査委員会の運営の手続き及び記録の保管に関する業務手順を定めるものとする。なお、治験依頼者等から、治験審査委員会の業務手順書及び委員名簿の提示を求められた場合には、これに応ずるものとする。
3 病院長は、自らが設置した治験審査委員会委員になることはできない。
4 病院長は、治験審査委員会の業務の円滑化を図るため、治験審査委員会の運営に関する事務及び支援を行う者を指名し、治験審査委員会事務局を設置するものとする。ただし、機構本部が設置する中央治験審査委員会を用いる場合にはこの限りではない。
第 4 章 治験責任医師の業務
(治験責任医師の要件)
第 13 条 治験責任医師は、以下の要件を満たさなくてはならない。
(1) 治験責任医師は、教育・訓練及び経験によって、治験を適正に実施しうる者でなければな
らない。また、治験責任医師は、このことを証明する最新の履歴書(書式 1)、並びに治験分担医師を置く場合には、治験分担医師の氏名リストを作成する。なお治験依頼者より求めがあった場合は治験分担医師の履歴書(書式 1)を作成し、治験依頼者及び病院長に提出するものとする。
(2) 治験責任医師は、治験依頼者と合意した治験実施計画書、最新の治験薬概要書、製品情報及び治験依頼者が提供するその他の文書に記載されている治験使用薬の適切な使用法に十分精通していなければならない。
(3) 治験責任医師は、医薬品、医療機器の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第 14
条第3項及び第 80 条の2に規定する基準並びにGCPを熟知し、これを遵守しなければならない。
(4) 治験責任医師は、治験依頼者によるモニタリング及び監査並びに治験審査委員会及び国内外の規制当局による調査を受け入れなければならない。治験責任医師は、モニター、監査担当者、治験審査委員会又は国内外の規制当局の求めに応じて、原資料等の全ての治験関連記録を直接閲覧に供しなければならない。
(5) 治験責任医師は、合意された募集期間内に必要数の適格な被験者を集めることが可能であることを過去の実績等により示すことができなければならない。
(6) 治験責任医師は、合意された期間内に治験を適正に実施し、終了するに足る時間を有していなければならない。
(7) 治験責任医師は、治験を適正かつ安全に実施するため、治験の予定期間中に十分な数の治験分担医師及び治験協力者等の適格なスタッフを確保でき、また適切な設備を利用できなければならない。
(8) 治験責任医師は、治験関連の重要な業務の一部を治験分担医師又は治験協力者に分担させる場合には、分担させる業務と分担させる者のリスト(書式2)を作成し、予め病院長に提出し、その了承を受けなければならない。
(9) 治験責任医師は、治験分担医師、治験協力者等に、治験実施計画書、治験使用薬及び各人の業務について十分な情報を与え、指導及び監督しなければならない。
(治験責任医師の責務)
第 14 条 治験責任医師は次の事項を行う。
(1) 治験実施計画書の被験者の選択・除外基準の設定及び治験を実施する際の個々の被験者の選定にあたっては、人権保護の観点から及び治験の目的に応じ、健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師等との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮し、治験に参加を求めることの適否を慎重に検討すること。
(2) 同意能力を欠く者については、当該治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原則として被験者としないこと。
(3) 社会的に弱い立場にある者を被験者とする場合には、特に慎重な配慮を払わなくてはならないこと。
(4) 治験実施計画書及び症例報告書について治験依頼者と合意する前に、治験依頼者から提供される治験実施計画書案、症例報告書案及び最新の治験薬概要書その他必要な資料・情報に基づき治験依頼者と協議し、当該治験を実施することの倫理的及び科学的妥当性について十分検討すること。その結果に従って、治験実施計画書及び症例報告書を作成(確定)し、治験実施計画書、症例報告書及び本治験実施標準業務手順書を遵守して治験を実施することについて、治験依頼者と合意すること(合意文書)。治験実施計画書及び症例報告書
が改訂される場合も同様である。
(5) 治験実施の申請をする前に、治験依頼者の協力を得て、被験者から治験の参加に関する同意を得るために用いる同意文書及びその他の説明文書を作成すること。
(6) 治験実施前及び治験期間を通じて、治験審査委員会の審査の対象となる文書のうち、治験責任医師が提出すべき文書を最新のものにすること。当該文書が追加、更新又は改訂された場合は、その全てを速やかに病院長に提出すること。
(7) 治験審査委員会が治験の実施又は継続を承認し、又は何らかの修正を条件に治験の実施又は継続を承認し、これに基づく病院長の指示及び決定が文書(書式 5 または参考書式 1)で通知された後に、その指示及び決定に従って治験を開始又は継続すること。又は、治験審査委員会が実施中の治験に関して承認した事項を取消し(治験の中止又は中断を含む)、これに基づく病院長の指示及び決定が文書(書式 5 または参考書式 1)で通知された場合には、その指示及び決定に従うこと。
(8) 治験責任医師は、治験審査委員会が当該治験の実施を承認し、これに基づく病院長の指示及び決定が文書(書式 5 または参考書式 1)で通知され、契約が締結されるまで、被験者を治験に参加させてはならない。
(9) 本手順書第17 条で規定する場合を除いて、治験実施計画書を遵守して治験を実施すること。
(10)治験使用薬を承認された治験実施計画書を遵守した方法のみで使用すること。
(11)治験使用薬の正しい使用法を各被験者に説明、指示し、当該治験使用薬にとって適切な間隔で、各被験者が説明された指示を正しく守っているか否かを確認すること。
(12)実施中の治験において毎年6月に、または治験審査委員会の求めに応じて、病院長に治験実施状況報告書 (書式 11) を提出すること。
(13)治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更を行った場合には、病院長に速やかに治験に関する変更申請書(書式 10)を提出するとともに変更の可否について、病院長の指示 (書式 5 または参考書式 1) を受けること。
(14)治験実施中に重篤な有害事象が発生した場合は、重篤で予測できない副作用を特定した上で速やかに病院長及び治験依頼者に文書 (書式 12 あるいは書式 12 及び詳細記載用書式)で報告するとともに、治験の継続の可否について病院長の指示 (書式 5 または参考書式 1)を受けること。
(15)治験が何らかの理由で中止又は中断された場合には、被験者に速やかにその旨を通知し、被験者に対する適切な治療及び事後処理を保証すること。
(16)治験実施計画書の規定に従って正確な症例報告書を作成し、署名し、治験依頼者に提出すること。また治験分担医師が作成した症例報告書については、それらが治験依頼者に提出される前にその内容を点検し、問題がないことを確認した上で署名するものとする。
(17)治験責任医師、治験分担医師及び CRC は、原データが帰属性、判読性、同時性、原本性、正確性及び安全性を満たすように努める。原データを変更した場合、その過程をさかのぼることができるとともに、変更前の記載内容が不明瞭とならないよう注意する。また、当該変更は監査証跡等により説明できるようにする。
(18)治験終了後、速やかに病院長に治験の終了(中止 ・ 中断)報告書(書式 17)を提出すること。なお、治験が中止又は中断された場合においても同様の手続きを行うこと。
(被験者の同意の取得)
第 15 条 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者が治験に参加する前に、被験者に対して同意文書及びその他の説明文書を渡して十分に説明し、治験への参加について自由意思による同意
を文書により得るものとする。
2 同意文書には、説明を行った治験責任医師又は治験分担医師並びに被験者が署名し、各自日付を記入するものとする。なお、治験協力者が補足的な説明を行った場合には、当該治験協力者も署名し、日付を記入するものとする。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者が治験に参加する前に、前項の規定に従って署名と日付が記入された同意文書の写し及びその他の説明文書を被験者に渡さなければならない。また、被験者が治験に参加している間に、同意文書及びその他の説明文書が改訂された場合は、その都度、第1項の規定に従って同意を得るとともに、署名と日付を記入した同意文書の写し及び改訂されたその他の説明文書を被験者に渡さなければならない。
4 治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者は、治験への参加又は治験への参加の継続に関し、被験者に強制又は不当な影響を及ぼしてはならない。
5 同意文書及びその他の説明文書並びに説明に関して口頭で提供される情報には、被験者に権利を放棄させるかそれを疑わせる語句、又は治験責任医師、治験分担医師、治験協力者、医療機関、治験依頼者の法的責任を免除するかそれを疑わせる語句が含まれていてはならない。
6 口頭及び文書による説明並びに同意文書には、被験者が理解可能で、可能な限り非専門的な言葉が用いられていなければならない。
7 治験責任医師又は治験分担医師は、同意を得る前に、被験者が質問をする機会と、治験に参加するか否かを判断するのに十分な時間を与えなければならない。その際、当該治験責任医師、治験分担医師又は補足的説明者としての治験協力者は、全ての質問に対して被験者が満足するよう答えなければならない。
8 被験者の同意に関連しうる新たな重要な情報が得られた場合には、治験責任医師は、速やかに当該情報に基づき同意文書及びその他の説明文書を改訂し、予め治験審査委員会の承認を得なければならない。また、治験責任医師又は治験分担医師は、すでに治験に参加している被験者に対しても、当該情報を速やかに被験者に伝え、治験に継続して参加するか否かについて、被験者の意思を確認するとともに、改訂された同意文書及びその他の説明文書を用いて改めて説明し、治験への参加の継続について被験者から自由意思による同意を文書で得なければならない。
9 治験に継続して参加するか否かについての被験者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には、治験責任医師又は治験分担医師は、当該情報を速やかに被験者に伝え、治験に継続して参加するか否かについて被験者の意思を確認しなければならない。この場合、当該情報が被験者に伝えられたことを文書に記録しなければならない。
10 被験者の同意取得が困難な場合、非治療的治験を実施する場合、緊急状況下における救命的治験の場合及び被験者が説明文書等を読めない場合及び被験者が同意説明文書を読むことはできるものの疾病等の影響で自ら同意文書に署名できない場合については、医薬品GCP省令第
50 条第 2 項及び第 3 項、第 52 条第 1 項、第 3 項及び第 4 項、第 55 条及びそのガイダン
ス、並びに医療機器 GCP 省令第 70 条第 2 項及び第 3 項、第 72 条第 3 項及び第 4 項、
第 75 条及びそのガイダンスを遵守しなければならない。
11 治験を製造販売後臨床試験に切り替え継続実施する場合、製造販売承認日以降、速やかに被験者に対して当該医薬品が承認された旨が記載された説明文書を交付し、製造販売後臨床試験に参加することについて文書により改めて同意を取得する。なお、治験の同意説明文書において、当該治験を製造販売後臨床試験として継続する旨の同意が得られている場合には、被験者から製造販売後臨床試験に継続して参加することを確認し、その記録を残しておくこととし、文書により改めて同意を取得することを必要としない。
(被験者に対する医療)
第 16 条 治験責任医師は、治験に関連する医療上の全ての判断に責任を負うものとする。
2 病院長及び治験責任医師は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となる全ての有害事象に対して、十分な医療が被験者に提供されることを保証するものとする。また、治験責任医師又は治験分担医師は、有害事象に対する医療が必要となったことを知った場合には、被験者にその旨を伝えなければならない。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者に他の主治医がいるか否かを確認し、被験者の同意のもとに、主治医に被験者の治験への参加について知らせなければならない。
4 その理由を明らかにする必要はないが、治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の権利を十分に尊重した上で、その理由を確認するための適切な努力を払わなければならない。なお、この場合であっても前条第4項を遵守しなくてはならない。
(治験実施計画書からの逸脱等)
第 17 条 治験責任医師又は治験分担医師は、治験依頼者との事前の文書による合意及び治験審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画書からの逸脱又は変更を行ってはならない。ただし、被験者の緊急の危険を回避するためのものであるなど医療上やむを得ないものである場合又は治験の事務的事項(例えば、電話番号の変更)のみに関する変更である場合には、この限りではない。
2 治験責任医師又は治験分担医師は、承認された治験実施計画書から逸脱した行為を全て記録しなければならない。ただし治験の進行には影響しない軽微な逸脱(書式 8 による緊急の危険回避の場合の報告以外が相当する)に関しては診療録等の院内記録のみに留める。
3 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の緊急の危険を回避するためのものである等医療上やむを得ない事情のために、治験依頼者との事前の文書による合意及び治験審査委員会の事前の承認なしに治験実施計画書からの逸脱又は変更を行うことができる。その際には、治験責任医師は、逸脱又は変更の内容及びその理由を記した緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する報告書(書式 8)並びに治験実施計画書の改訂が適切な場合には、その案を可能な限り早急に病院長及び病院長を経由して治験審査委員会に提出してその承認を得
る(書式 5 の写し)とともに、病院長の了承及び病院長を経由して治験依頼者の同意を文書(書式 9)で得なければならない。
第 5 章 治験使用薬の管理
(治験使用薬の管理)
第 18 条 治験使用薬の管理責任は、病院長が負うものとする。
2 病院長は、治験使用薬を保管、管理させるため薬剤部長を治験薬管理者とし、院内で実施される全ての治験の治験使用薬を管理させるものとする。なお、治験薬管理者は必要に応じて治験薬管理補助者を指名し、治験使用薬の保管、管理を行わせることができる。
3 治験薬管理者は、治験依頼者が作成した治験使用薬の取扱い及び保管、管理並びにそれらの記録に際して従うべき指示を記載した手順書に従って、またGCP省令を遵守して適正に治験使用薬を保管、管理する。なお、治験薬以外の治験依頼者が交付しない治験使用薬であって、当院が在庫として保管するものの中から使用する治験使用薬については、当院において定められた取扱い、保管、管理、処方等に係る手順等に基づき対応する。
4 治験薬管理者は次の業務を行う。
(1) 治験使用薬を受領し、治験使用薬受領書を発行する。
(2) 治験使用薬の保管、管理及び払い出しを行う。同意能力を欠く者については、当該治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原則として被験者としないこと。
(3) 治験使用薬管理表を作成し、治験使用薬の使用状況及び治験進捗状況を把握する。
(4) 被験者からの未服用治験使用薬の返却記録を作成する。
(5) 未使用治験使用薬(被験者からの未服用返却治験使用薬、使用期限切れ治験使用薬、欠陥品を含む)を治験依頼者に返却し、未使用治験使用薬返却書を発行する。
(6) その他、第3項の治験依頼者が作成した手順書に従う。
5 治験薬管理者は、治験実施計画書に規定された量の治験使用薬が被験者に投与され、全ての治験使用薬の数量が正しく管理されたことを示す記録を作成し保管する。
第 6 章 治験事務局
(治験事務局の設置及び業務)
第 19 条 病院長は、治験の実施に関する事務及び支援を行う者を指定し、治験事務局を設けるものとする。なお、治験事務局は治験審査委員会事務局を兼ねるものとする。ただし、機構本部が設置する中央治験審査委員会を用いる場合にはこの限りではない。
2 治験事務局は、次の者で構成する。
(1) 治験事務局長 : 薬剤部長
(2) 治験事務局員 : 薬剤師、会計課長、事務職員若干名
(3) その他、病院長が指名したもの
3 治験事務局は、病院長の指示により、次の業務を行うものとする。
(1) 治験審査委員会の委員の指名に関する業務(委員名簿の作成を含む)
(2) 病院長の業務に関する事務及び支援
(3) 治験実施に関する記録の保存
(4) 治験の実施に必要な手続きの連絡事務
(5) 治験依頼者に対する必要書類の交付と治験依頼手続きの説明
(6) 治験契約締結に係わる事務手続き等の業務
(7) 治験契約に基づく研究費及び諸経費等の請求及び収納確認並びに出納簿の作成と出納整理業務
(8) 治験終了(中止)報告書の受領及び治験終了(中止)通知書の交付
(9) その他治験に関する業務の円滑化を図るために必要な事務及び支援
4 治験事務局は、本治験実施標準業務手順書を当院ホームページに公表する。
第 7 章 記録の保存
(記録の保存責任者)
第 20 条 病院長は、当院において保存すべき必須文書の保存責任者を指名するものとする。
2 文書・記録ごとに定める保存責任者は次のとおりとする。
(1) 治験に関する受託研究費の出納記録 ・ 契約書等 : 会計課長
(2) 治験受託に関する文書 (治験実施計画書等) : 治験事務局長
(3) 治験使用薬に関する記録 (治験使用薬管理表、被験者からの未服用返却治験使用薬記録、治験使用薬納品書、未使用治験使用薬受領書等): 治験薬管理者
(4) 診療録 (同意文書を含む)、その他診療録に関するもの及び診療費明細書 : 医事課長
3 病院長又は記録の保存責任者は、当院において保存すべき必須文書が第 21 条第1項に定める期間中に紛失又は廃棄されることがないように、また、求めに応じて提示できるよう措置を講じるものとする。
(記録の保存期間)
第 21 条 病院長は、当院において保存すべき必須文書を(1)又は(2)の日のうち、後の日までの間保存するものとする。なお、製造販売後臨床試験の場合は(3)の日まで保存するものとする。ただし、治験依頼者がこれよりも長期間の保存を必要とする場合には、保存期間及び保存方法について治験依頼者と協議するものとする。
(1) 当該被験薬に係る製造販売承認日 (開発が中止された場合には開発中止が決定された日か
ら 3 年が経過した日)
(2) 治験の中止又は終了後 3 年が経過した日
(3) 製造販売後臨床試験の場合は、再審査または再評価の終了した日(ただし GPSP 省令施行以前の実施中の試験は再審査または再評価の終了後 5 年が経過した日)
2 病院長は、治験依頼者より前項にいう承認取得あるいは開発中止(書式 18)の連絡を受けるものとする。
3 病院長は、治験依頼者が承認取得あるいは開発中止の報告 (書式 18) をしてきた場合は、治験審査委員会及び治験責任医師に対し、速やかに開発の中止等に関する報告書 (書式 18)の写しを提出し、通知するものとする。
第 8 章 業務の委託
(業務の委託)
第 21 条 治験責任医師又は病院長は、治験の実施に係る業務の一部を委託する場合には、次に掲げる事項を記載した文書により当該受託者との契約を締結しなければならない。
(1) 当該委託に係る業務の範囲
(2) 当該委託に係る業務の手順に関する事項
(3) 前号の手順に基づき当該委託に係る業務が適正かつ円滑に行われているかどうかを治験責任医師または医療機関が確認することができる旨
(4) 当該受託者に対する指示に関する事項
(5) 前号の指示を行った場合において当該措置が講じられたかどうかを治験責任医師または医療機関が確認することができる旨
(6) 当該受託者が治験責任医師または医療機関に対して行う報告に関する事項
(7) 治験の実施の準備及び管理に係る業務を委託する場合には当該委託する業務に係る被験者に対する補償措置に関する事項
(8) その他当該委託に係る業務について必要な事項
2 受託者は、当該受託業務をGCP 省令に従って行わなければならない。
第 9 章 その他
(秘密の保持)
第 22 条 委員会の委員及び治験業務に係わった職員 (嘱託職員等) は、業務遂行上知り得た治験使用薬、被験者及び治験書類等に関する情報を他に漏らしてはならない。
附 則
本手順書の改正は治験審査委員会で協議し、病院長の承認を必要とする。本手順書は、平成 10 年 4 月 1 日より実施する。
平成 11 年 4 月 1 日 改正
平成 13 年 8 月 1 日 改正
平成 17 年 5 月 1 日 改正
平成 19 年 4 月 1 日 改正
平成 20 年 5 月 1 日 改正
平成 20 年 8 月 1 日 改正
平成 20 年 11 月 4 日 改正
平成 21 年 3 月 1 日 改正
平成 21 年 3 月 31 日 改正
平成 23 年 5 月 2 日 改正
平成 24 年 4 月 1 日 改正
平成 26 年 3 月 12 日 改正
平成 27 年 2 月 2 日 改正
平成 28 年 3 月 31 日 改正
平成 28 年 11 月 25 日 改正
平成 30 年 10 月 1 日 改正
令和 2 年 10 月 1 日 改正
令和 4 年 4 月 1 日 改正