Contract
2022 年 9 月 30 日
各 位 株式会社 三十三銀行
株式会社エレックス極東との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
株式会社三十三銀行(頭取:xx xx)は、持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、株式会社エレックス極東(社長:xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたのでお知らせいたします。
本件の取り組みにあたっては、株式会社三十三総研(社長:xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。今後も「三十三フィナンシャルグループSDGs宣言」のもと、企業活動を通じてSDGsの達成に貢献することで、持続可能な社会の実現に努めてまいります。
(※) 企業活動が「経済・社会・環境」のいずれかに与えるインパクトを包括的に分析・特定し、ポジティブインパクトが期待できる活動と、ネガティブインパクトを低減する活動を支援するもので、借入人様によるSDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、借入人様から情報開示を受けながら当行がその過程を定期的にモニタリングするものです。
1. 融資概要
(1) 契約日 | 2022年9月30日 |
(2) 融資金額 | 100百万円 |
(3) 期間 | 5年 |
(4) 資金使途 | 運転資金 |
2. 借入人概要
(1) 企業名 | 株式会社エレックス極東 |
(2) 所在地 | 愛知県名古屋市xx区xx3丁目608-1 |
(3) 事業内容 | ・自家用電気工作物及び電気工作物の保安業務 ・建築物の清掃及び建築物の各種設備機器の点検、保守、管理 ・機械保全・電気機械保全 ・電気工事業 |
当社は1963年設立され、現在「電気保安 O&M事業」、「電気設備保全 エンジニアリング事業」、「e-HOANサービス・技術者育成事業」を主業とし、電気保安・メンテナンスから関連工事までの電気にまつわる全てのサービスを一貫して行える体制を整えていることで顧客に満足を提供している。『先進のベストソリュ ーションを、いつもお客様のもとへ』がモットー。 | |
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(当社キャラクター「ホッキョクトウグマ」) (タブレット点検) | |
(4) 従業員数 | 207名(2022年7月時点) |
(5) 資本金 | 30百万円 |
3. 特定インパクトと測定するKPI
(1)経済面・ | 包摂的で健全な経済、雇用(ポジティブ) |
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社会面 | ① 高齢者雇用数を2027年までに125人まで引き上げる。 (2022年9月末実績:92人) | ||
② 在留資格特定技能による外国人雇用を2024年までに5人、20 27年までに12人受け入れる。 (現状:0人) | |||
(2)社会面 | 教育、雇用(ポジティブ) | ||
① 電気保安講習の閲覧者数を2027年までに2,000人までに増加させる。 (2021年実績:1,096人) | |||
② 電気xx技術者の従事資格取得者を2027年までに140人に引き上げる。 (2021年実績:105人) | |||
③ 保安管理業務講習を自社にて実施する。 | |||
エネルギー(ポジティブ) |
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① | 当社が保安管理するxxx発電施設を2027年までに500施設・発電容量170MWまで引き上げる (現状:320施設・発電容量128MW) | ||
雇用(ネガティブ) | |||
① 2027年までに時間外労働を従業員一人当たり10時間/月まで削減する。 (2021年度実績:15時間/月) | |||
② 2027年までに一人当たり有給休暇取得日数を11日/年まで増加させる。 (2021年実績6.6日/年) | |||
(3)環境面 | 資源効率・安全性、気候(ネガティブ) |
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① ② ③ | 売上高1,000万円あたりの紙の使用枚数を2027年度までに年間で60%削減する。 (2021年度実績:売上高1,000万円あたり3,110枚) テレマティクス装置を2027年度までに全車両に設置する。 (2021年度実績:75.6%) 売上高1,000万円あたりの作業車の走行距離を2027年度までに年間で15%削減する。 (2021年度実績:売上高1,000万円あたり2,430km) |
4. お問い合わせ先
(1) 三十三銀行(ソリューション営業部:堀場、連絡先:059-354-7141)
(2) 三十三総研(調査部:別府、連絡先:059-354-7102)
(コンサルティング部:福井、連絡先:059-351-7417)
以 上
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年9月 30 日株式会社三十三総研
三十三総研は、三十三銀行が、株式会社エレックス極東に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、株式会社エレックス極東の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価にあたっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及びESGハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
目次
1.評価対象の概要 2
2.株式会社エレックス極東の概要 2
2-1.基本情報
2-2.経営方針と事業内容
2-3.サスティナビリティに関連する活動
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性 23
3-1.経済面のインパクト
3-2.社会面のインパクト
3-3.環境面のインパクト
4.測定するKPI とSDGsとの関連性 26
4-1.経済面・社会面(ポジティブ)
4-2.社会面(ポジティブ)
4-3.社会面(ネガティブ)
4-4.環境面(ネガティブ)
4-5.その他KPI を設定しないインパクトと SDGsとの関連性
5.サスティナビリティ管理体制 31
6.モニタリング 31
7.総合評価 31
1.評価対象の概要
企業名 | 株式会社エレックス極東 |
借入金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
契約日及び返済期限 | 2022 年9月 30 日 ~ 2027 年9月 30 日 |
2.株式会社エレックス極東の概要
2-1.基本情報
本社 | xxxxxxxxxxxx0xx 000-0 |
事業所 | 九州:福岡県福岡市博多区博多駅東 1-10-23 新幹線ビル1号館 川崎センター:xxxxxxxxxxxx 0-0 日本生命xxビル7F 岐阜サービスセンター:xxxxxxxxxxx0xx 00-0 xxセンター:xxxxxxxxxxxxxxx 000-00 三河センター・絶縁油解析ラボ:愛知県xx市xx町1番地7 秋田ネットワークセンター:xxxxxxxxxxx0x 00 xxxxx 00 xx6F三重センター:xxxxxxx0-00 エレックス極東北九州:福岡県北九州市xx北区京町三丁目 14-14 xxxビル新館8F エレックス極東 xx(併設)再生エネルギー研修センター『xxハウス』: xxxxxxxxxxxxx 00 xx 四日市サービスセンター:xxxxxxxxx0xx 0-0 第一富士ビル6F 三ケ日ブランチ、高山ブランチ |
従業員数 | 207 名(2022 年7月現在) |
資本金 | 30 百万円 |
業種 | 電気保安業 |
事業内容 | 1.自家用電気工作物及び電気工作物の保安業務 2.建築物の清掃及び建築物の各種設備機器の点検、保守、管理 3.機械保全・電気機械保全 4.電気工事業 |
5.電気通信機器・防災設備・電気設備のメンテナンス工事 6.コンピューターとその関連機器及びソフトウェアの開発、販売並びに情報処理・提供に関する事業 7.コンピューターシステムを利用した情報ネットワークによる情報処理並びに情報提供業務 8.環境衛生・省エネルギーに関するコンサルタント業務 9.環境分析及び作業環境測定業務 10.産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物の収集並びに運搬 11.xxx発電事業 12.xxx発電設備の設計・調達・施工・保守・メンテナンスに関する事業 13.コールセンター及びテレフォンオペレーター業務 14.労働者派遣事業 15.IoTモニタリングサービス 16.前各号に付帯する一切の事業 | |
沿革 | 1963 年 極東電気を設立、重電機器・モートルのメンテナンス及び販売業務を開始 1971 年 絶縁油貯蔵の設備を完備 1973 年 岐阜県に中部極東電氣(現:xxセンター)を設立 1975 年 産業廃棄物収集運搬の許可を取得し業務拡大 1989 年 本社社屋完成 1993 年 MSS(メンテナンスシュミレーションシステム)の開発・販売開始 1994 年 油入変圧器異常診断用「ガス分析装置」を導入(シリンダーピストン方式) 1995 年 Microsoft Windows95 対応の保護協調シュミレーションソフト販売開始 1996 年 代表取締役社長にxxxxが就任 1999 年 国際規格 品質マネジメント(ISO9001)取得 2000 年 社名を極東エレテックに改称川崎サービスセンターを開設 MSSV3 for Windowsの販売開始 2001 年 国際規格 品質マネジメント(ISO14001)取得と同時に、品質マネジメント(I SO9001:2000)に更新認証登録 油入変圧器劣化診断用「フルフラール分析装置」を導入 2002 年 油入変圧器異常診断用「ガス分析装置」を増設導入(バブリング方式) 2003 年 統合マネジメントシステムを構築 特許取得「油中フルフラール類の抽出方法及び抽出装置」 2004 年 電気保安管理業務外部委託先の条件を満たす電気保安法人として経済産業省へ届出 2005 年 特定規模電気事業者(PPS)として経済産業省へ届出 有限会社極東 21 を設立 |
2006 年 PCB分析装置を導入 九州支社を開設する 2007 年 愛知県計量証明事業登録 10kWxxx発電設備を本社屋上に設置 2008 年 岡崎サービスセンターを開設 2009 年 油中ガス分析において、診断方法「様相診断」を導入 2010 年 岐阜北ブランチを開設 環境省「絶縁油中の微量PCBに関する簡易測定マニュアル」に準拠した前処理装置導入 2012 年 社名をエレックス極東に改称 xx県、xx市の誘致企業に認定 2013 年 xx県指定業者に認定 xxセンターに武並ソーラxxx発電所を設置、送電開始(有限会社エレテックサポート) 2014 年 秋田ネットワークセンターを開設 エレックス極東 三重センターを開設 北xx市脇神に燦ソーラー発電所を設置、運用開始(株式会社エレックス東北) 2015 年 エレックス極東 北九州を開設エレックス極東 xxを開設 2016 年 北xx市阿仁xxに阿仁森林xxxxxxx光発電所を設置、送電開始 (有限会社エレテックサポート) 2017 年 秋田ネットワークセンター オフィスフロア増床 北xxxxにxxメガソーラーxxx発電所を設置、送電開始(有限会社エレテックサポート) 三河センター・絶縁油解析ラボ新設、油中ガス分析試験装置を増設導入 iPhone で保護協調 MSS LoglogCurve V3 リリース SFA、MAを導入しCRMを構築 2018 年 トルネード型風力発電機を設置 LoglogCurve V3 英語対応版リリース FiledServiceLingtning型iPad設備点検「eデータ」運用開始 2019 年 北xx市に再生可能エネルギー研修センターを開所 三重県四日市市に四日市サービスセンターを開設秋田コールシステムをクラウド対応CTIに刷新 2020 年 特別高圧対応した保護具耐圧試験室設置 フィールドサービス端末「eデータ2 for iPad」運用開始三河センターに高圧気中開閉器の交換訓練電柱を建柱 |
2021 年 フィールドサービス端末「eデータ3 for iPad」運用開始岐阜サービスセンターを移設開所 有限会社極東 21 を株式会社極東 21 に改称 2022 年 電気保安管理業務をDX化する「e-hoanサービス」トライアル開始 |
2-2.経営方針と事業内容
【経営理念】
「自然との総和」・「社員教育」・「xx・xx・謙虚」
エレックス極東は時代の流れに柔軟に対応し上記3項目に徹し志す会社を目指します。社員ひとり一人が自然との総和に心がけ生かされていることに感謝する。xx・xx・謙虚を軸とし安心・安全の徹底に努め、社員の人格こそが我々の真の商品・技術である。
企業ビジョン
「発変電設備・電気設備の保守・管理の分野において、正しいサービスを創造・提供する会社である」
お客様・社員から「エレックス極東でよかった」といわれ続ける会社を目指します。
社訓
1. 躾・整理・整頓・清掃・清潔 xx! 「5sの実行 xx!」
2. できる やれる やってみよう xx! 「xxを出そう xx!」
3. 納期・期限を守り 時間厳守 xx! 「スピーディーに行こう xx!」
4. 決めたこと ルールを守ろう xx! 「コンプライアンス xx!」
5. 事故 クレーム ミスなし! xx! 「3ゼロの徹底 xx!」
企業行動憲章
社会の信頼と共感を得るために
企業は、xxな競争を通じて利潤を追求するという経済的主体であると同時に、広く社会にとって有用な存在でなければならない。そのため企業は、次の6原則に基づき、国の内外を問わず、人権を尊重し、関係法令、国際ルール及びその精神を遵守するとともに、社会的良識をもって継続可能な社会の創造に向けて自主的に行動する。
1. 社会的に有用な製品・サービスを安全性や個人情報・お客様情報の保護に十分配慮して開発、提供し、消費者・お客様の満足と信頼を獲得する。
2. あらゆる法規と企業倫理の遵守が企業経営の根幹であることを強く認識し、xxさと良識をもって行動する。
3. 社員の多様性、人格、個性を尊重するとともに、安全で働きやすい環境を確保しゆとりと豊かさを実現する。
4. 環境問題への取り組みは人類共通の課題であり、企業の存在と活動に必須の要件であることを認識し、自主的、積極的に行動する。
5. 経営トップは、xxxの精神の実現が自らの役割であることを認識し、率先垂範の上社内に徹底するとともに、グループ企業や取引先に周知させる。また、社内外の声を常時把握し、実効ある社内体制の整備を行うとともに、企業倫理の徹底を図る。
6. xxxに反するような事態が発生した時には、経営トップ自らが問題解決にあたる姿勢を内外に明らかにし、原因究明、再発防止に努める。また、社会への迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行し、権限と責任を明確にした上、自らを含めて厳正な処分を行う。
【事業内容】
株式会社エレックス極東(以下、エレックス極東)は、1963 年に極東電気株式会社として設立され、2000 年に株式会社極東エレテックへ、2012 年にはエレックス極東へ商号変更し、現在に至っている。
同社の主な事業は、「電気保安 O&M事業」、「電気設備保全 エンジニアリング事業」、「e-H OANサービス・技術者育成事業」の3事業と、関連会社によるxxx発電事業等の「グループ会社事業」で展開される。
「電気保安 O&M事業」は、工場や事業所の電気保安管理や電気設備のメンテナンスを契約期間内に定額制で利用できるサービスである。なお、O&Mとは、“Operation:運用管理”と “Maintenance:保守管理”を意味する。同社のネットワークセンターでは、顧客の受変電設備を 24 時間 365 日、常時モニタリングを行っており、異常を感知すれば直ちに顧客に連絡するとともに、不具合箇所の調査や緊急処置、復旧までの電力対応等、幅広くサポートしている。
「電気設備保全 エンジニアリング事業」では、コンビナートや工場等のプラント設備における電気設備の保全に加え、ICT機器の開発・運営のほか、電気系統解析アプリの提供等を展開している。なかでも、変圧器内部の絶縁油の分析・試験に関しては、年間1万件超の受託実績を誇り、全国の事業者にサービスを展開している。
「e-HOANサービス・技術者育成事業」では、電気保安現場とバックオフィスを結ぶ独自のクラウドシステム「e-HOANサービス」の提供を通じて、現場の効率化を支援している。また、技術者不足や高齢化といった電気保安業界が抱える課題を解決すべく、電気技術者育成のための教育・研修プログラムを構築し提供している。
「グループ会社事業」では、xxx発電所をはじめとする再生可能エネルギー発電所の設計や施工、保守・管理・メンテナンスを行うほか、同社の関連会社2社(有限会社エレテックサポート、株式会社エレックス東北)でも、xxx発電所を運営している。
これらの事業に関する具体的な内容については次の通りである。
電気保安 O&M事業
1.電気保安管理業務委託サービス
保安管理の契約を結んだ顧客の受変電設備を、同社のネットワークセンターが 24 時間 365日、常時モニタリングを実施している。異常を感知した場合には、即座に顧客に連絡を取り、同社の電気技術者が異常の原因を解析・対応する。また、月次や年次といった定期的な点検を実施し、設備の保全管理を行うほか、電気事故やトラブルが発生した際には、ワンストップで復旧工事を行う。
2.高圧・特別高圧 電気設備メンテナンス
電気設備の経年劣化や損傷による事故・被害を防止するため、顧客の高圧・特別高圧の受電設備を点検する業務を行っている。また、変圧器内部の絶縁油が劣化した場合、絶縁性能の低下等が引き起こされるため、絶縁油の分析及び交換を定期的に実施し、顧客の電気機器を正常な状態に保っている。
そのほか、特別高圧変電所から低圧回路まで、電気設備の新設や増設工事時には、絶縁耐力試験や受入検査、シーケンス試験等、各種保護継電器試験を行っている。多岐に渡る項目の点検・試験・測定を通じ、設備の性能や安全性の確認に寄与している。
3.修理修繕、災害・事故緊急応動サービス
同社の資材センターには、特別高圧ガス遮断器、特別高圧変圧器、移動用発電機等、様々な電気機器、備品がストックされている。これにより、顧客の電気設備トラブルが発生した際には、ワンストップで速やかな復旧支援を実現している。
4.再生可能エネルギー発電設備 O&Mサービス
1963 年の創業より、受発電設備のメンテナンス会社として蓄積した経験と実績を活かし、様々なリアルタイム監視ツールを発売している。顧客が所有するxxx発電所等の発電設備に対し、点検や除草、セキュリティといった定期業務から、異常・故障時の駆けつけ、除雪作業等の突発業務に至るまで、あらゆる業務をワンストップサービスで提供する。また、顧客の発電設備から送られる情報を常時モニタリングすることで、発電量の低下や発電停止といったトラブルを早期に発見し、復旧対応できるよう体制を整えている。
電気設備保全 エンジニアリング事業
1.絶縁油分析試験
2017 年に絶縁油解析ラボを新設し、油入変圧器内部の異常や劣化の発見・調査を目的とする絶縁油の分析試験を年間1万件超受託している。また、法に基づいて厳格に取り扱う必要があるPCB(ポリ塩化ビフェニル)の残留測定も実施している。
2.絶縁用保護具耐電圧試験
作業者の身体を守るゴム手袋やヘルメット等の絶縁用保護具は、劣化や損傷があった場合、感電して重大な事故につながる恐れがある。そのため、法律(労働安全衛生規則)によって、定期的な自主点検が義務付けられており、同社はそれら保護具の検査を行い、合格した製品においては合格証を発行するとともに、試験結果を示した成績表を顧客に提出している。
3.ICT機器開発 運営
クラウドを活用し、電気保安管理や電気設備のメンテナンス現場で稼働する各種センサーから得られる様々な管理データを、トータルで集計・管理するシステムを構築し顧客へ提供している。また、高圧・特別高圧の電気料金のうち、基本料金の算出基準となる「デマンド(需要電力)」を監視する装置を顧客の事業所に設置する「デマンドレスポンスサービス」を展開する。電気使用量を日夜監視し、デマンド値を超過しないよう顧客に警報メールを送信することで、節電に貢献している。
いかに電力量料金を抑えるか
いかに基本料金を抑えるか
4.電気系統解析アプリ
xxの受変電設備メンテナンス業務を通じて蓄積したノウハウを活かし、メンテナンスシュミレーションシステム(MSS)を開発・販売している。1993 年の販売開始より 30 年余りが経過した現在、保護協調シュミレーションソフト「MSS V3」は全国のプラント工場や重電メーカー、設計会社などで採用され、技術者教育の現場でも活用されている。また、2017 年には、iPhoneアプリ「MSS LoglogCurve V3」をリリースし、現場での作業の効率化を支援している。
e-HOANサービス・技術者育成事業
1.電気保安法人サポートセンター
技術者不足や技術者の高齢化、電力の多様化等、電気保安業界が抱える課題の解決に向け、ICTやクラウドを駆使したプラットフォームを提供している。同社が展開する「e-HOANサービス」は、電気保安管理の現場からデータ入力等の事務作業までをスマート化することで効率化を実現するサービスである。電気保安の現場では、作業者はタブレット端末を使用し、デジタルセンサーにより点検設備を実施することで、設備に接触することなく安全に点検作業が行え、入力の手間も省くことが可能となる。また、バックオフィスでは、保安現場から取り込んだ点検データをクラウド上でxx管理し、効率的な監視とスケジュール管理を実現している。
2.技術者育成
電気技術者育成のための教育・研修プログラムやサポートシステムを構築している。同社が積み上げてきたノウハウを広く普及させることで、技術者の養成に貢献している。
グループ会社事業
1.再生可能エネルギー発電事業
同社は、xxxデベロップメント(EPC事業)及びO&Mサービスとして、全国各地のxxx発電所をはじめ、風力発電所、バイオマス発電所等の設計・調達・施工・保守管理・メンテナンスをワンストップで提供している。土地の調達からxxxパネルの調達、稼働後のモニタリングやメンテナンスに至るまで、顧客のニーズに沿い包括的に支援することで、質の高いサービスを実現している。
【グループ会社】
同社はホールディングス会社である株式会社極東 21 のもとで、事業拡大に向けて子会社を設立し、グループが一体となった事業活動を行っている。
会社名 | 所在地 | 業務内容 |
株式会社極東 21 | xxxxxxxxxxxx0xx 000-0 | 電気設備の測定 器具の点検・保守・管理業ほか |
株式会社エレックス東北 | xxxxxxxxxxxxx 00 xx | 発電事業 |
有限会社エレテックサポート | xxxxxxxxxxxxx 00 xx | 貿易、発電事業 |
2-3.サスティナビリティに関連する活動
【高齢者雇用の促進】
電気設備の保安業務に欠かせない電気xx技術者の有資格者は社会にとって大切な人材である。同社では、電気保安業務に関する技術や知識などのキャリアを有する人材を積極的に採用している。この業務で身につけたxxxxは年齢を問わず活かすことができるため、中途入社する従業員は他社を定年退職した人材が多い。
同業他社の場合
一般に、同業他社でこうした人材を活用する場合には、事業者と従事者本人が下請け契約を結ぶ形態を取ることから、保安業務以外の事務的な処理について従事者自らに負担がかかるケースが多くなる。一方、同社では従事者本人を社員として雇用する形態をとるため、従事者にとっては保安業務以外の事務処理にかかる負担が殆ど発生しない。従事者がその知識や経験を活かして保安業務に専念できるように、事務処理などの面を社内全体でバックアップする環境が整備されている。このように、同社ではキャリアを有する定年退職者がその能力を活かして働きやすい職場づくりが行われていることから、全従業員 197 名のうち 65 歳以上の高齢者が 88 名(全体の 45%)在籍している。
エレックス極東では
【外国人雇用の促進】
同社では、2013 年より公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)が主管する「外国人技能実習制度」を活用して、外国人材の雇用を行ってきた。この制度は、外国人技能実習生の滞在期間
が法令で3年と定められているなか、その期間内で先進国の最新の技能・技術・知識を習得し、発展途上国の経済発展・産業振興の担い手となる人材育成を目的としている。
同社では、ベトナム国内及び日本国内の専門機関で日本語教育を受けて、その中から選抜された技能実習生を受け入れている。
教育機関の学校においては、「高圧危険」や「頭上注意」などの標識のほか、正しい挨拶の仕方やお辞儀の方法等がイラスト付で貼り出されており、危険を伴う作業現場においても日本語で正しい現況確認ができるための訓練がなされている。
こうした教育訓練を受けて技能実習生として受け入れた人材は、同社での入社式を終えた後、会社の経営方針や規則等についての研修が行われる。また、指差呼称や電気設備の安全作業についての研修も実施する。日々、日本語や日本文化・風習など日本の慣習を学ぶとともに、電気についての専門用語や機器についての学習も行っている。
こうして訓練を終えた技能実習生は保安管理業務の担当者の作業補助として、顧客の事業場へ同行することもあり、保安管理業務担当者と作業責任者の指示のもと、点検機材の搬出入や検査補助、電気設備の清掃作業を行っている。
同社では、外国人従業員の雇用安定化に加え、自社の人材の多様化を目指して、今後は 2019 年4月から始まった在留資格である「特定技能」における受け入れを準備している。
【安全な業務遂行に向けた取り組み】
学習風景
試験風景
経営方針・規則・安全作業の研修終了辞令交付
同社では、月に1回「従事者会議」を開催し、電気保安管理業務に従事する技術者が集まり、安全な業務の遂行に向けて打合せ、を行っている。同会議においては、電気に関わる業務で発 生しやすい事故の事例や注意点等を参加者で共有し、各作業従事者に対して安全な業務の遂行に向けた取り組みを啓蒙している。
電気設備の点検作業には、主に毎月または隔月に行う定期点検と年1回の精密点検の二種類がある。精密点検時には設備を停止し電気を停めた状態で点検作業を行うが、定期点検においては電気を停めずに通電した状態で点検作業を行っている。そのため、定期点検では作業の過程において感電等の危険性を伴う場合があるため、現在、同社ではICT機器を活用して非接触で点検を行う仕組みを取り入れるための準備を行っている。
また、点検作業で契約企業を巡回する際には作業車両を運転する機会が多くなるため、作業車両にテレマティクス装置を導入し、運行時の速度超過の監視を行っている。違反者への注意喚起や運転時の注意事項の徹底を図るなど、交通安全面にも留意した業務遂行を行っている。
【教育クラウドシステムを通じた従業員教育の見える化・高度化】
同社では、スマホやタブレットを通じて、いつでも、どこでも社内教育を受講することができる教育クラウドシステム「myTrailhead」を導入している。同システムにより提供されているコンテンツは同社の従業員が作成しているため、同社の業務実態に合わせた具体的な教育プラグラムの構築を実現している。また、作業手順などの技術面の教育だけに留まらず、従業員向けのマナーや社内慣習的な項目、さらには熱中症予防対策など実用的なものも取り入れるなど、社内の幅広い用途に対応できるように作成されている。これらの内容を網羅したものを書類として持ち歩く場合は相当なボリュームとなるが、スマホやタブレットから必要な情報を必要な時にアクセスできることで従業員の利便性は向上している。現在もコンテンツは日々増加かつ内容面でも進化しており、こうしたコンテンツの蓄積は将来的に社内の暗黙知を顕在化させて、従業員全員がいつでも、どこでもさまざまな知識を習得できる「社内の知の宝庫」となる可能性も有している。
従業員は教育プログラムの受講を終了する都度、バッジが獲得できる仕組みとなっており、教
育プログラムの進捗状況が本人・管理者の双方で認識できるようになっている。この取り組みによって、社内教育状況の「見える化」を実現している。
myTrailheadのポータル画面等 受講の様子
【DX化の推進による業務効率・作業環境の改善とワークライフバランスの推進】
(1)DX化の推進による業務効率の改善
最新のテクノロジー・AIを活用しDX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進することで、業務全体の効率化や従業員の働き方改革を進めている。具体的には、先進の顧客管理システムやクラウド型のプラットフォームの導入
により顧客とのコミュニケーションをスムーズにするとともに、勤怠管理や営業活動・電気設備のメンテナンス点検、保安管理サービスなどを効率的に管理しており、業務の効率化を進めている。
(2)ICT活用による技術者の働く環境をサポート
ICTを駆使した監視システム、クラウドを活用した管理データの集計・管理サービスなどを統合した同社独自のプラットフォーム「e-HOAN」を活用することで、人の五感に頼った人力による点検からデジタル技術を活用したスマート化が進んでいる。受配電盤の扉を開けることなく、タブレット端末を用いたスマート点検を行うことができるなど、安全かつスピーディーな業務につながり、技術者の作業環境は大きく改善している。
秋田ネットワークセンター タブレット点検
(3)働きやすい職場環境づくりの取り組みによるワークライフバランスの推進
上記のような最新のデジタル技術による職場環境の改善により、技術者不足の中での働き方改革の推進につながり、従業員が働きやすい環境づくりを可能としている。この結果、定時退社日、フレッシュアップウィークの設定が可能となり、従業員の時間外労働の削減や有給休暇の取得推進を通じてワークライフバランスの取り組みにつながっている。
ちなみに、従業員一人当たりの有給休暇取得日数は 2019 年 1.7 日/年、2020 年 5.8 日/ 年、2021 年 6.6 日/年と着実に増加しており、今後もさらに有給休暇取得日数の増加を図るべく改革を進めていく予定である。
【従業員の資格取得支援の推進】
電気の保安管理業務を行っていくうえで、本業務を実施するための独占的資格である電験三 種(第一種~第三種電気xx技術者)の有資格者の存在は必要不可欠なものとなっており、同社では業務を行っていくうえで必要な資格取得について、従業員のサポートを行っている。
電気xx技術者の資格を取得する際や資格の更新時には定められた講習を受ける必要がある。しかしながら、現在、技術者不足を背景に講習の提供機会が減少しており、講習のニーズに対して提供される講習機会が不足している。同社が自ら講習の提供者となることで、同社が抱える多くの技術者に対して講習機会を提供できるとともに、同社以外の会社に所属する技術者に対しても資格取得をサポートする機会を提供できる。
【電気保安に関する教育の実施】
同社では、契約企業や工場のxx技術者等に対して年1回電気保安講習会を開催し、電気事故や電気に関する知識を周知・普及する活動を継続的に行っており、電気保安管理に関連する技術者のスキルアップを支援する役割を担っている。
今後も継続的に技術者教育の機会を提供していく予定であるが、近年はいわゆるリアル開催の形式ではなく、オンライン等による動画配信の形式で実施される機会も増えている。これによ
り、契約企業等以外にも電気保安管理に関心のある一般の方々が視聴できる環境となっている。今後は受講者の利便性も踏まえて、オンライン形式での開催に注力していく予定である。
また、電気に関する様々な事項をまとめて顧客に配布する冊子を紙媒体として年4回程度発行していたが、顧客の利便性や資源効率等も踏まえてPDF化したものに切り替えを進めている。
【災害に強い電力インフラの実現】
近年、気候変動の影響を受けて自然災害は激しさを増しており、こうした災害に備えて電力設備を強化することは、企業の事業環境を維持し、ひいては社会の持続可能性を高めることに貢献することになる。
水害に対する予防としては構築物の基礎の高さをかさ上げすることが重要であり、暴風雨に対しては強靭なキュービクルの設置が欠かせない。また、落雷への対応としては、避雷器内蔵の開閉器の設置が効果を発揮する。同社では、50 年以上電気設備のメンテナンスに携わっている経験から、こうした自然災害に強い電力設備の提案・改修をサポートしている。
基礎上げしたキュービクル 避雷器内蔵の開閉器
実際に災害が発生した際には素早い電力インフラの復旧が求められるため、発災時には「人」と「モノ」を迅速に手配し、作業を指示するとともに、早期に施設が再開できるように電気設備の復旧対策に当たっている。「xx資材センター」には大型ローリー、大型クレーン、高所作業車、大型変圧器、高圧線などを常に準備し、「秋田ネットワークセンター」では、24 時間 365 日、全国の顧客の電力設備を常時モニタリングしている。
xx資材センター 秋田ネットワークセンター
【安定的かつ効率的な電力供給への寄与】
同社では、契約している企業が保有している高圧電気設備に対して、電力の使用量を把握することができるデマンド監視システムを設置している。これにより、顧客の電力使用状況が常時見える化されることになり、省エネのポイントが明確化される。電力使用状況が異常となっている場合には即座に顧客に通知し、電気の使い過ぎとならないよう注意を促している。
電気設備についても、変圧器のロスによる電力使用の無駄をなくすため、待機電力の少ない高効率の変圧器や省エネタイプの開閉器、遮断器などへの交換を提案・推進しており、これにより電気設備全体の省エネ化を推進している。
また、同社では契約企業の工場やビルの定期点検および自社で開発した絶縁監視システム「T J3GW」により、遠隔にあっても顧客の発電設備の状況を随時把握することができる。例えば、落雷等で発電設備が止まった場合等でも同社で即座に認識することができるため、再稼働に向けた迅速な対応を行い、顧客の発電機会の逸失を防止することができる。
省エネタイプの遮断機 省エネタイプの変圧器
【自社のカーボンニュートラルへの取り組み】
(1)xxx発電設備の設置
同社では地球温暖化防止への貢献を目指し、これまでに自社でメガソーラー発電所を4カ所開設している。2007 年に本社社屋の屋上に 10kWの余剰xxx発電設備を導入して以来、2014 年からはxx県北xx市にメガソーラー発電所を3カ所、岐阜xxx市の当社事業所内には出力 70kWのソーラー発電所をxx設置している。これらの出力を合計すると年間発電量は 5.17M Whとなり、これは CO2 排出量 2,496t(2021 年実績)の削減に相当する。またxxx発電に加
敷地面積 :3.1ha、発電設備容量:約 1.6MW
敷地面積:3.2ha、発電設備容量: 約 1.0MW
え、風力、水力、バイオマスを用いた再生可能エネルギーの発電にも注力している。
阿仁森林メガソーラ
xxメガソーラー
燦ソーラ
xxセンター
敷地面積:4.2ha、発電設備容量 約 2.0MW
発電設備容量:約 70kW
また、本社社屋の屋上や各拠点にもxxxパネルを設置しており、自社で消費する電力を再生可能エネルギーに置き換えることで、年間 4.5t の CO2 削減に取り組んでいる。
本社
三河センター
発電設備容量:約 10kW
発電設備容量:約4kW
(2)超高効率、省エネ、環境に優しい機器への更新
無負荷損(磁束の通路である鉄心に発生する鉄損)は変圧器に常に一定の損失を与える。同社では、それを大幅に低減し、かつ省エネ性能に優れたアモルファス変圧器や、絶縁油に生分解性に優れたパーム油を使用した変圧器、省メンテナンスを実現したハイブリッド形VCBなどの環境に優しい機器への更新を推進している。これらの取り組みを通じて環境保全に貢献している。
(3)エコドライブの推進
同社では、定期保安用の業務用車両の点検スケジュールを作成する際、地図連携を行うことで車両が最短で移動できるようネットワークセンターにおいて日々スケジュールを調整している。
また、同社が管理する 50 台以上の作業車両にテレマティクス装置を導入し、アイドリングが長時間になるとエンジン停止を促す仕組みや、日時単
xxネットワークセンターから指示
位での移動距離の把握を行うことで、同社が管理する車両におけるガソリン使用量の削減を図っている。
テレマティクス装置を導入 テレマティクス装置による地図画面
【顧客のカーボンニュートラルの取り組みへの貢献】
同社では自社でのxxx発電設備の設置以外にも、顧客に対する再生可能エネルギーによる発電の提案・サポート等を通じて持続的なエネルギーの確保やカーボンニュートラルの推進に向けた取り組みを支援している。
顧客の工場の屋根やビルの屋上へのxxx発電設備の設置など再生可能エネルギー導入の提案を行っており、既に全国で多くの計画・施工の実績がある。
また、同社では 1963 年の創業時から、受発電設備のメンテナンス会社として蓄積してきた豊富な実績とソフトウェア開発事業での実績を活かして、数々の再生可能エネルギー発電所の保安管理を手掛けている。再生可能エネルギーを有効に活用するためには、発電設備の保守・管理、安定した運用が重要となるため、同社では、xxx発電所のリアルタイム監視ツールを開発し、発電設備の保安管理(定期点検)、発電量のモニタリング(発電量監視)、PVメンテナンス(ドローン点検)、緊急応動(異常あれば即出動)など、xx的なO&Mにより安定運営を支援している。
こうした再生可能エネルギーの普及・支援活動により、同社が保安管理業務を通じて支援を行っている再生エネルギー発電所は 320 施設、発電容量 128MWに達している(2022 年9月6日時点)。
【安全・安心な電気設備の提供】
電気設備の事故やトラブルは企業の事業活動に大きな影響を及ぼすため、同社では契約企業の電気設備の事故やトラブルが発生した場合には、すみやかに応動し、不具合箇所の調査から緊急処置までを確実に行う体制を構築している。さらに、緊急用の特別高圧・高圧用予備設備を各種保管することで、設備復旧までの間の顧客の電力ニーズに対応できる体制を整備している。
【省エネルギーの推進】
(1)省燃費タイプの点検機材への更新
同社では、2021 年に試験機器の使用に必要な電源をガソリン式携帯発電機からポータブルバッテリーに置き換える取り組みを始めている。こうした省燃費タイプの点検機材への更新を進めることで点検現場での CO2 排出を低減する取り組みを進めている(CO2 年間削減量約 14t、ガソリン年間使用量約 6,000ℓ削減)。またポータブルバッテリーに切り替えることで発電機からのエンジン音がなくなり、夜間点検時の騒音低減にもつながっている。
さらに、ポータブルバッテリーへの充電についても、作業車両のルーフキャリヤにソーラーパネルを着脱可能な形で設置することにより、xxxエネルギーを用いた充電を行うことができる仕組みを構築している。
左:ポータブルバッテリー 右:ガソリン式携帯発電機 車両ソーラーパネル
(2)デジタル化による紙書類枚数の削減
これまで顧客向けに交付していた様々な紙の書類を徐々にPDF形式での交付に切り替えを進めていることに加え、技術者向けに年4回程度配布していた冊子についても、今後はPDF形式のものをHP上で公開する形に切り替えている。
【PCB残留測定を通じた特定産業廃棄物処理の支援】
顧客の工場や事業所等で用いられている油入変圧器やコンデンサなどの絶縁油に微量でもP CB(ポリ塩化ビフェニル)が含有されている場合、その所有者は確実かつ適正に保管、届出し処理する義務が課せられている。同社では、最新の設備による前処理と高性能な分析装置、そして熟練の技術者により短時間で制度の高い分析を行い、顧客の効率的かつ確実な処理をサポートしている。
また、こうした廃棄物は特定産業廃棄物のため一般の産業廃棄物に比べて処理費用が高くなるため、顧客の適正な管理を同社がサポートすることで、特定産業廃棄物の削減にとどまらず、顧客の廃棄物処理コストの低減につながっている。
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性
※色の濃い項目が同社のインパクト領域
本ファイナンスでは、エレックス極東の事業を、国際標準産業分類における「電気設備工事業」として整理した。その前提のもとでの UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、
「住居」「教育」「雇用」「エネルギー」「情報」に関するポジティブ・インパクト、「雇用」「資源効率・安全性」「気候」「廃棄物」に関するネガティブ・インパクトが分析された。
一方、事業活動等を踏まえ、本ファイナンスで特定された同社のインパクトは以下の通りである。
3-1.経済面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
〈ポジティブ〉 | ||
包摂的で健全な経済 | 高齢者雇用の促進 | ・キャリアを活かして働く定年退職者が適切に |
能力を発揮できるよう社内でのバックアップ | ||
環境の整備 | ||
外国人雇用の促進 | ・外国人技能実習生の受け入れと今後の特定 | |
技能への切り替えを準備 |
経済収束 | 災害に強い電力インフラの実現 | ・自然災害に強い電力設備の提案・改修 ・発災時には「人」と「モノ」を迅速に手配・作業指示を行い、早期の施設再開に向けた復旧対策 |
3-2.社会面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
〈ポジティブ〉教育 | 電気保安に関する教育の実施 | ・顧客や工場のxx技術者等に対して電気事故や電気に関する知識の周知・普及活動を 継続的に実施(近年は動画配信にシフト) |
教育雇用 | 教育クラウドシステムを通じた従業員教育の見える化・高度化 | ・社内の教育クラウドシステムを用いて、スマホやタブレットを通じた社内教育を実施。受講状況を管理者・本人が認識できるなど社内教育状況の「見える化」に寄与。 |
従業員の資格取得支援の推進 | ・資格取得と更新には講習を受ける必要があるが、講習ニーズに対して講習提供が不足しており、同社が講習提供側にまわることで 資格取得者のサポートを実施。 | |
雇用 | 高齢者雇用の促進 | ・キャリアを活かして働く定年退職者が適切に |
能力を発揮できるよう社内でのバックアップ | ||
環境の整備 | ||
外国人雇用の促進 | ・外国人技能実習生の受け入れと今後の特定 | |
技能への切り替えの検討 | ||
エネルギー | 安定的かつ効率的な電力供給への寄与 | ・保安管理業務を通じた再エネ普及促進(320施設、128MW) ・xxx発電量の可視化クラウドシステムによる発電ロスの削減 ・省エネ機器の推進(変圧器のロスが多いため無駄をなくす提案) |
顧客のカーボンニュートラルの取り組みへの貢献 | ・再生可能エネルギー発電設備の導入提案 ・再生可能エネルギー発電設備のxx的な安定運営の支援 |
〈ネガティブ〉保健・衛生 | 安全な業務遂行に向けた取り組み | ・月1回の従事者会議により保安業務における事故発生の防止や交通安全等の教育の実施 ・作業車両へのテレマティクス装置の導入によ る速度超過等の監視 |
雇用 | DX化の推進による業務効率・作業環境の改善とワークライフバランスの推進 | ・DX化の推進による業務効率の改善 ・ICT活用による技術者の作業環境の改善 ・働きやすい職場環境づくりの取り組みによるワークライフバランスの改善 |
3-3.環境面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
〈ポジティブ〉 資源効率・安全性 | 安全・安心な電気設備の提供 | ・電気設備の事故・トラブル時に不具合箇所調査から緊急処置まで確実に実施 ・緊急用の特別高圧・高圧用予備設備を保管 し、設備復旧まで顧客の電力ニーズに対応 |
<ネガティブ>資源効率・安全性 | 省エネルギーの推進 | ・省燃費タイプの点検機材への更新 ・デジタル化による紙書類枚数の削減 |
気候 | 自社のカーボンニュートラルに向けた取り組み | ・xxx発電施設の設置 ・超高効率、省エネ、環境にやさしい機器への更新 ・エコドライブの推進 |
廃棄物 | PCB残留測定を通じた特定産業廃棄物処理の支援 | ・顧客の変圧器やコンデンサの絶縁油に含有するPCB残留測定を通じて適正な廃棄物の処理を支援 |
4.測定するKPIと SDGsとの関連性
エレックス極東は本ファイナンス期間において以下の通り KPI を設定する。
4-1.経済面・社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 包摂的で健全な経済 雇用 | |
取組、施策等 | 【高齢者雇用の促進】 ・技能キャリアを有する高齢者が能力を発揮できる環境を整備し、高齢者の雇用を推進する 【外国人雇用の促進】 ・外国人が安定した雇用環境を確保できるように在留資格を技能実習から特定技能に切り替えた受け入れを推進する | |
借入期間におけるKPI | ・高齢者雇用数を 2027 年までに 125 人まで引き上げる (2022 年 9 月末実績:92 人) ・在留資格特定技能による外国人雇用を 2024 年までに5人、2027 年までに 12 人受け入れる(現状:0 人) | |
関連するSDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不 安定な雇用状態にある労働者など、すべて |
の労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的 な包含を促進する。 |
4-2.社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 教育 | |
取組、施策等 | 【電気保安に関する教育の実施】 ・配信・公開された電気保安講習の閲覧者数・アクセス件数の増加による教育支援の拡大 | |
借入期間におけるKPI | ・電気保安講習の閲覧者数を 2027 年までに 2,000 人にまで増加させる(2021 年実績:1,096 人) | |
関連するSDGs | 4.3 2030 年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等な アクセスを得られるようにする。 |
特定インパクト | 教育 雇用 | |
取組、施策等 | 【従業員の資格取得支援の推進】 ・電気xx技術者の従事資格取得者数を増やすための支援を行う ・保安業務従事者の要件として義務付けられている実務経 験の期間を短縮できる講習の受講を自社にて受講できる環境を整備する | |
借入期間におけるKPI | ・電気xx技術者の従事資格取得者を2027 年までに140 人に引き上げる(2021 年実績:105 人) ・保安管理業務講習を自社にて実施する | |
関連するSDGs | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成 人の割合を大幅に増加させる。 |
特定インパクト | エネルギー | |
取組、施策等 | 【顧客のカーボンニュートラル取り組みへの貢献】 ・同社が保安管理する再生可能エネルギーの施設数・発電出力を増加させることで、再生可能エネルギーを通じた安定的かつ効率的な電力供給を促進する | |
借入期間におけるKPI | ・同社が保安管理するxxx発電施設を 2027 年までに 500施設・発電容量170MWまで引き上げる(現状:320 施設・発 電容量 128MW) | |
関連するSDGs | 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じ た取組を行う。 |
4-3.社会面(ネガティブ)
特定インパクト | 雇用 | |
取組、施策等 | 【DX化の推進による業務効率・作業環境の改善とワークライフバランスの推進】 ・働き方改革を推進することで、時間外労働の削減や有給休 暇の取得を促進し、従業員の働きやすい環境を整備する | |
借入期間におけるKPI | ・時間外労働の削減 ⇒2027 年までに時間外労働を従業員一人当たり 10 時間 /月まで削減する(2021 年実績:15 時間/月) ・有給休暇取得日数の増加 ⇒2027 年までに一人当たり有給休暇取得日数を 11 日/年まで増加させる(2021 年実績:6.6 日/年) | |
関連するSDGs | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労 働環境を促進する。 |
4-4.環境面(ネガティブ)
特定インパクト | 資源効率・安全性 | |
取組、施策等 | 【省エネルギーの推進】 ・顧客へ交付する書面を紙の書類からPDFに切り替えて、配信または顧客によるダウンロード形式にすることで紙の使用枚数を削減する | |
借入期間におけるKPI | ・売上高 1,000 万円あたりの紙の使用枚数を 2027 年度までに年間で 60%削減する (2021 年度実績:1,000 万円あたり 3,110 枚) | |
関連するSDGs | 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 8.4 2030 年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する 10 年計画枠組みに従い、経済成長と環境 悪化の分断を図る |
特定インパクト | 気候 | |
取組、施策等 | 【CO2 排出削減に向けた取り組み】 ・テレマティクス装置の車両への導入を進め、走行距離を削減することにより、CO2 排出量の削減に取り組む | |
借入期間におけるKPI | ・テレマティクス装置を 2027 年までに全車両に設置する (2021 年実績:75.6%) ・売上高 1,000 万円あたりの作業車の走行距離を 2027 年度までに年間で 15%削減する (2021 年度実績:売上高 1,000 万円あたり 2,430km) | |
関連するSDGs | 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及 び制度機能を改善する。 |
その他、同社がインパクトとして特定した項目の中でKPIとして目標を設定しなかったものについては以下の通りであり、引き続きそれぞれの取り組みを確認していく。
4-5.その他KPIを設定しないインパクトについて SDGsとの関連性
事業活動 | 関連するSDGsのターゲット | SDGsの ゴール |
〈経済面〉 災害に強い電力インフラの実現 | 11.b 2020 年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靭さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組 2015-2030 に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。 13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害 に対する強靭性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 | |
<社会面> 教育クラウドシステムを通じた従業員教育の見える化・高度化 | 4.3 2030 年までに、すべての人々が男女の区別なく、手の届く質の高い技術教育・職業教育及び大学を含む高等教育への平等なアクセスを得られるようにする。 | |
安定的かつ効率的な電力供給への寄与 | 7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率 を倍増させる。 | |
安全な労働環境の整備 | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利 を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 | |
〈環境面〉 安全・安心な電気設備の提供 | 7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 | |
顧客の特定産業廃棄物排出のサポート | 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減す る。 |
5.サスティナビリティ管理体制
エレックス極東では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、品質検査部を中心に組織横断的なプロジェクトチームを結成。xx社長を責任者とし、日々の業務やその他活動を棚卸することで、自社の事業活動とインパクトレーダーとの関連性について検討をした。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行後、返済期限までの間においても、xx社長や品質検査部、関係部署などとの連携体制を構築することでKPIの達成を図っていく。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxx |
管理責任者 | 品質検査部長 xxxx |
担当部署 | 品質検査部 |
6.モニタリング
本件で設定したKPIの進捗状況は、xxxxx極東と三十三銀行の担当者が年に1回以上の会合を設けることで確認する。モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、三
十三銀行は、同社に対して適切な助言・サポートを行い、KPIの達成を支援する。
7.総合評価
本件はUNEP FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」に準拠した融資である。エレックス極東は、上記評価の結果、本件融資期間を通じてポジティブな成果の発現とネガティブな影響の低
減に努めることを確認した。また、三十三銀行は年に1回以上その成果を確認する。
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、三十三総研が、三十三銀行から委託を受けて作成したもので、三十三総研が三十三銀行に対して提出するものです。
2.三十三総研は、依頼者である三十三銀行および三十三銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するエレックス極東から供与された情報と、三十三総研が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
〈本件問合せ先〉
株式会社三十三総研
調査部長 主席研究員 xx xx
〒510-0087
三重県四日市市西xx 10 番 16 号第二富士ビル4階
TEL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 9 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社エレックス極東に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社三十三銀行 |
評価者:株式会社三十三総研 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、三十三銀行が株式会社エレックス極東(「エレックス極東」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社三十三総研による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。三十三銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際 し、三十三総研と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国 内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分 析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、 中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、三十三銀行及び三十三総研 にそれを提示している。なお、三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義 を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義 する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1 定義
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
三十三銀行及び三十三総研は、本ファイナンスを通じ、エレックス極東の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、エレックス極東がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2 フレームワーク
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、三十三銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:三十三銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、三十三銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、三十三銀行からの委託を受けて、三十三総研が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て三十三総研が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、三十三総研が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるxxxxx極東から貸付人である三十三銀行及び評価者である三十三総研に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評
価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000