2-3 CO2 排出係数 10
資 料 3
国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針解説資料(案)
目 次
はじめに 1
Ⅰ.温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本的方向 及び その他温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する重要事項について 1
Ⅱ.電気の供給を受ける契約に関する基本的事項について 6
1.背景と意義 6
1-1 電力の契約において温室効果ガス排出削減に配慮する必要性と意義 6
1-2 本解説資料の使い方 6
2.契約方式の解説 7
2-1 電力の契約に関する契約方式の基本的考え方 7
2-2 裾切り方式 7
2-3 CO2 排出係数 10
2-4 環境負荷低減に係る事業者の取組の評価 11
3.契約方法について 15
3-1 契約の対象 15
3-2 仕様 15
3-3 標準的な手続とスケジュール 15
4.その他 18
4-1 調達者の役割 18
4-2 その他必要な手続 18
Ⅲ.自動車の購入に係る契約に関する基本的事項について 19
1.背景と意義 19
1-1 環境性能を考慮した物品購入の必要性と意義 19
1-2 本解説資料の使い方 19
2.契約方式の解説 20
2-1 自動車の購入に係る契約方式の基本的考え方 20
2-2 対象となる車種 20
2-3 総合評価落札方式 21
2-4 燃費表示モードの移行 29
2-5 標準的な手続とスケジュール 30
3.その他 31
Ⅳ.省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項について 34
1.背景と意義 34
1-1 省エネルギー改修事業の必要性と意義 34
1-2 本解説資料の使い方 34
1-3 ESCO事業の概要 35
2.導入計画 38
2-1 ESCO事業の導入フロー(計画段階) 38
2-2 長期供用計画の作成 39
2-3 ESCO事業導入可能性判断 39
2-4 ESCO事業実施の適否 40
2-5 予算化の手続 42
2-6 プロポーザル方式による導入計画の留意点 44
2-7 その他留意点 45
3.事業者選定・契約 46
3-1 ESCO事業の導入フロー(事業者選定・契約段階) 46
3-2 事業者の応募に関する事項の設定 49
3-3 与条件の設定 54
3-4 予定価格の算定 56
3-5 発注スケジュール等 57
3-6 技術資料作成要領の作成 58
3-7 現地見学等 59
3-8 ヒアリングの実施 59
3-9 事業者の評価 60
3-10 契約書の作成 61
4.事業の実施 66
4-1 監視職員 66
4-2 事業実施計画 68
4-3 ESCO事業対象部位の設計 69
4-4 施工 70
4-5 運転及び維持管理 70
4-6 計測・検証 71
4-7 契約終了 72
Ⅴ.建築物に関する契約に関する基本的事項について 73
1.背景と意義 73
1-1 建築物に係る契約における環境配慮の必要性と意義 73
1-2 本解説資料の使い方 76
2.用語の定義 77
3.要求環境保全性能の規定について 79
3-1 官庁施設の環境保全性に関する基準 79
3-2 住宅の評価方法基準 80
4.優れた環境配慮設計の推奨 81
4-1 環境配慮型プロポーザル方式について 81
4-2 建築の設計におけるプロポーザル方式の意義 82
4-3 建築の設計におけるプロポーザル方式の適用範囲と配慮すべき事項等 83
5.環境配慮型プロポーザル方式における設計者選定の手続 86
5-1 プロポーザルの準備 87
5-2 手続開始の公示 87
5-3 参加表明書の内容 88
5-4 説明書の交付 88
5-5 技術提案書の提出者の選定 89
5-6 選定通知/提出要請書の送付 90
5-7 ヒアリングの実施 90
5-8 技術提案書の特定・通知 90
5-9 審査体制 91
6.環境配慮型プロポーザル方式の推進 92
6-1 フィードバック 92
6-2 環境保全性能の評価 92
6-3 地方公共団体等への支援 92
はじめに
本解説資料は、国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本方針の内容や契約の方法について、環境配慮契約法基本方針検討会における議論を踏まえ、環境省及び基本方針に定められる契約に係る事業を所管する省庁の考え方をまとめた解説資料で、国等が温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を実施する際の参考としていただきたい。
本解説資料に示した事例は参考例であり、具体的には調達者が適切に対応することが必要である。
Ⅰ.温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関 する基本的方向 及び その他温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する重要事項について
1.温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本的考え方
各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、法第6条の規定に基づき、基本方針に定めるところに従い、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
その際、基本方針に定められた基本的考え方に則り、契約を進めていくものとされている。ここでは、基本方針「1.(2)温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基本的考え方」について解説する。
①国等が経済性に留意しつつ価格以外の多様な要素をも考慮することで、環境に配慮した物品や役務など(以下、「物品等」という。)の普及をもたらすのは、通常の経済活動の主体として国民経済に大きな位置を占める、国等の契約の在り方が他の主体の契約の在り方に対しても大きな影響力を有しているため、国等が温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を行うことにより、環境に配慮した物品等が市場において一層普及していくことにつながることが期待されることによるものである。
このため、できる限りxxな分野、すなわち基本方針に具体的に規定された種類、対象以外の契約についても、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の実施に努めることとしている。
②契約において温室効果ガス等の排出の削減に配慮しない場合には、温室効果ガス等の排出の削減が遅れ、結果として対策コストが増大する懸念に十分留意して、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約に努める必要がある。
例えば、建築物の設計段階において環境配慮を実施した場合には、現行の標準的な仕様
の建築物に比べ、単位面積当たり約 10%の二酸化炭素排出削減効果があることが報告されている。建築物寿命を 65 年と仮定し、平成 17 年度において政府実行計画1の対象となった施設(約 1,600 万 m2)が平均して建て替えられるものと仮定して二酸化炭素の削減効果を試算すると、1 年目における年間の二酸化炭素の削減効果は約 1,900t-CO2 であるが、10 年目には年間約 1.9 万 t-CO2、30 年目には年間約 5.7 万 t-CO2 の削減効果となり、立替の完了時点においては年間約 12.4 万 t-CO2 削減効果となる。さらに、建築物は長期にわたり供用されるものであるため、供用期間中を通じて二酸化炭素排出削減効果が累積されることとなり、設計段階において環境配慮を実施した場合の最終的な累積でみると 400 万 t-CO2 を超える二酸化炭素削減効果となる。建築物の設計段階において温室効果ガス等の排出の削減に配慮しなかった場合、400 万 t-CO2 超を他の手段で削減するための対策コストが必要になることになるが、設計段階において温室効果ガス等の排出の削減に配慮した場合にかかる対策コストと比較して大きくなる可能性がある。
(千㌧CO2) (千㌧CO2)
年間削減量(左目盛)累積削減量(右目盛)
140
120
4,000
100
年 80
間
削
減 60
量
3,000
累積削
2,000 減
量
40
1,000
20
0
1 5 10
15 20 25
30 35
40 45
50 55 60
0
65 (年)
図Ⅰ-1 建築物の設計段階において環境配慮を実施した場合の二酸化炭素削減効果の試算
③基本方針で温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の具体的な方法を定める電力供給、自動車購入、省エネルギー改修及び建築物に関わる温室効果ガスの排出量は、政府の温室 効果ガス総排出量の 6 割程度2に関係している。したがって、基本方針に則って温室効果ガ
ス等の排出の削減に配慮した契約を推進することは、政府実行計画に定める目標(平成 13
年度を基準として、平成 22 年度から平成 24 年度までの政府の各行政機関の事務及び事業
1 地球温暖化対策の推進に関する法律(平成 10 年法律第 117 号)第 20 条の 2 第 1 項に基づく「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制等のため実行すべき措置について定める計画」(平成 19 年 3 月 30 日閣議決定。以下、「政府実行計画」という。)
2 政府実行計画に基づく平成 17 年度排出量(確定値)に占める公用車、電気及びエネルギーの利用による温室効果ガス排出量の割合。
に伴い直接的及び間接的に排出される温室効果ガスの排出量の平均を少なくとも 8%削減する)の確実な達成を効果的に推進することに資すると考えられる。また、独立行政法人等においても、地球温暖化対策に関する計画を策定・実行することが期待されている中で、当該計画に定める目標の達成を効果的に推進することにも資すると考えられる。
④調達に当たっては、行政目的を踏まえた要求性能を示す必要がある。この要求性能を明確にして公開することは、その条件の中で温室効果ガス等の排出の削減に配慮した提案等が行われることに寄与すると考えられる。また、契約に係る情報の公開は、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約について、xxな競争が行われていることも明らかにする効果も期待される。
同時に、中小企業者が不利にならないようにするといったxxな競争の確保に留意する必要があるという観点から、要求要件等について、例えば、以下のようなことがないように努める必要がある。
❑ 要求要件において、性能を証明するために過大な試験を求めることや、規模・資本・実績等について不要な条件を設定すること
❑ 評価方法において、契約締結前に過大な負担を負わせるようなことを求めること
❑ 契約手続等において、支払いまでに契約相手方に過大な資金的な負担を負うことを求めること
これらの留意点を始めとして、契約の実施に当たっては、xxな競争の確保の観点から、事業者間の競争を不当に阻害しないことに配慮する必要がある。
⑤会計法(昭和 20 年法律第 35 号)に基づく契約を行う等、他の国等の契約に関する施策との調和を確保する必要がある。
⑥温室効果ガス等の排出の削減に関係のある施策として、エネルギー基本計画等が挙げられ、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に当たっては、国の施策全体が合理的かつ効果的に実施されるように、それらの計画を始めとした温室効果ガス等の排出の削減に関係のある施策との調和を確保する必要がある。
⑦WTO政府調達協定との整合性に配慮するという観点から、要求要件や評価方法を定める際に、外国製品に不利なものとならないようにする等、内外無差別の取り扱いの確保に努めることとする。その他、知的所有権の保護等、契約に関わる他の行政目的の配慮にも努めることとする。
2.その他温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する重要事項
(1)すべての契約における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進
基本方針に具体的に規定された種類、対象以外の契約の具体例としては、庁舎において
自動販売機の設置許可を行う場合、自動販売機の性能等について許可に付随した一定の契約を結ぶことが想定される。その際、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和 54 年
法律第 49 号)に基づく省エネルギー基準を達成している機器を用いることを求めるよう努めることが望ましい。また、庁舎内の店舗等の販売形態(消費者の環境に配慮した行動の励行を含む。)や照明、空調等について、温室効果ガス等の排出の削減に努めることを契約内容に盛り込む等様々な契約において、温室効果ガス等の排出の削減に配慮することも手法の一つと考えられる。
温室効果ガス等の排出の削減が図られるよう契約の内容を確保することの具体例としては、契約の成果が報告書である場合において再生紙の使用を指定する等、直接購入する物品やサービスに関して温室効果ガス等の排出の削減に配慮する取組を求めるほか、購入した物品を輸送する際にアイドリングストップの励行等エコドライブの実施を求める等、契約に基づく事業の実施に際して、温室効果ガス等の排出の削減に配慮するような契約に努めることが考えられる。
温室効果ガス等の排出の削減が図られるよう契約に係る物品等を利用することの具体例としては、国等の側でコピー機のスリープモードの適正使用等物品の使用方法やサービスの活用方法において、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の成果が温室効果ガス等の排出削減に確実に繋がるよう努めることが考えられる。
温室効果ガス等の排出の削減が図られるよう契約に際しての事務を行う具体例としては、不要な資料の提出を減らすことや両面コピーの活用の励行等が考えられる。
に配慮することが望ましい。
民連携)実現に向けて-(平成 19 年 11 月 15 日)において、地球温暖化対策の重要性の観点から、「要求水準書、審査基準に地球温暖化対策につき位置付けることを促進すること等、PFI における具体的な対応策について検討し、速やかに措置を講ずる」と位置付けられたことを踏まえ、本法の趣旨及び同報告書に従って、適切に温室効果ガス等の排出の削減
なお、PFI 事業にあっては、PFI 推進委員会報告-真の意味の官民のパートナーシップ(官
行政分野における温室効果ガス等の排出削減が行政分野以外の温室効果ガス等の排出拡大を招くことのないように配慮することの例としては、使用段階において温室効果ガス等の排出の削減に資するだけでなく、リサイクルが容易な物品を購入することが考えられる。
(2)契約の推進体制の整備
できる限りxxな分野で温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約に努める観点から、各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、局長(官房長)相当職以上の者を体制の長とし、 すべての内部組織が参画する体制を整備する必要がある。特に、この点に関して知見や責 任を有する環境担当部局や会計・調達担当部局が主体的に関与するように努める必要があ る。
(3)締結実績の概要の公表等
法第8条において、各省各庁の長及び独立行政法人等の長は、毎会計年度又は毎事業年
度の終了後、遅滞なく、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の締結の実績の概要を取りまとめ、公表するとともに、環境大臣に通知するものとされている。この公表においては、できる限りわかりやすい形で公表するように努める必要があると基本方針では定めているが、例えば実績の対前年度比を示す等の形が考えられる。
(4)職員に対する温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約推進のための普及啓発等の実施
温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を締結する上では、本基本方針の内容等について、十分な理解が必要になる。また、一定の技術的な評価を行う場合があり、その際には、技術的な知識が必要になる。
具体的には、環境省等が開催する説明会に職員の出席を促す等、契約に関わる職員に対して温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約に係る普及啓発を行うことや、最新の技術的な知識の取得を促進することが必要である。
(5)情報の整理等
環境省において、各省各庁の長及び独立行政法人等の長から通知された温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の締結の実績の概要等を基にして、国及び独立行政法人等の温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の締結に関する状況等について整理及び分析を行う。その上で、国等だけでなく国民一般が温室効果ガス等の排出に配慮した契約を行うことを促進するため、広く、わかりやすい形で関連の情報を公表することとする。
国及び独立行政法人等においては、当該情報や国及び独立行政法人等以外での取組状況その他の情報を十分に活用して、できる限り温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約を行うように努めることとする。
(6)他の施策との連携
環境省は、国及び独立行政法人等の温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の締結に関する状況等について、整理及び分析並びに公表に係る業務を行う際には、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律による環境物品等の調達状況等の整理及び分析並びに公表のための業務と十分調整を図り、国等の業務ができるだけ合理的かつ効率的になるように努めることとする。
(7)基本方針の検討
国及び独立行政法人等の温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の締結に関する状況等を踏まえつつ、基本方針の内容について必要に応じて行う見直しこととは、現行の基本方針の規定を必要に応じて見直すことと、新たに具体的な規定を設けるべき分野について検討を行い、必要に応じて追加することを指す。
Ⅱ.電気の供給を受ける契約に関する基本的事項について
1.背景と意義
1-1 電力の契約において温室効果ガス排出削減に配慮する必要性と意義
庁舎等の国等の施設において使用する電気の供給を受ける契約に当たっては、これまで多くの契約で行われてきた価格のみで判断するのではなく、温室効果ガス等による環境負荷についても適切に考慮した上で、契約を締結することが必要であり、需要側においてこうした環境に配慮した契約を推進することが、環境への負荷の低減を図るとともに、環境と経済が両立する新しい社会づくりに役立つことが期待されるものである。
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた電気の供給を受ける契約に関する基本的事項を踏まえ、調達者が具体的に電気の供給を受ける契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
本解説資料は、電気の供給を受ける契約に当たっての考え方や具体的な内容、実際の事務手続等について説明したものである。
なお、本解説資料に示した事例は参考例であり、当該地域の実情等を踏まえ、調達者が適切に対応することが必要である。
2.契約方式の解説
2-1 電力の契約に関する契約方式の基本的考え方
電力の契約に関する契約方式の基本的な考え方は、以下のとおり。
❑ 温室効果ガス排出削減の観点から、温室効果ガス等の排出の程度を示す係数(二 酸化炭素排出係数)等による裾切り方式を採用(法附則第4項参照)。
❑ xxな競争の確保の観点も踏まえ、裾切りの設定に当たっては原則複数の電気事 業者の参入が可能であることを確保。
❑ 環境への負荷低減に関する電気事業者の取組状況の考慮(未利用エネルギーの活用状況・新エネルギーの導入状況等を評価)。
❑ 一般電気事業者に対して自由化対象の需要家への最終保障義務が課せられていること等、安定供給の確保の観点等も踏まえ、地域ごとに裾切りを設定。
❑ 事業者間の競争を不当に阻害しないことに配慮。
❑ 裾切り方式の基準等については毎年度見直しを検討。
2-2 裾切り方式
本契約方式に係る基本的な考え方等を踏まえ、具体的な裾切り方式について、以下に示すこととする。
現在、各府省等で実施されている裾切り方式を踏まえ、以下の3つの要素をポイント制により評価し、一定の点数を上回る事業者であり、かつ、前年度RPS法第 8 条第 1 項3の勧告を受けていない者に入札参加資格を与えることとする。
① 二酸化炭素排出係数
② 未利用エネルギーの活用状況
③ 新エネルギーの導入状況
各要素の区分値・配点及び裾切り下限値については、入札実施主体がそれぞれ、以下の観点から適切に判断の上、設定することとする。
① xxな競争確保の観点から、原則複数の事業者の参入を確保する。
② 当該地域において電力の供給を行っている一般電気事業者を含む複数の電気事業者の二酸化炭素排出係数を参考とする。その際、当該地域における安定供給の観点に留意。
また、これらの要素による評価の結果、入札参加資格を得ることができない事業者について、入札実施主体の判断により、裾切り方式のオプションとして、グリーン電力証書の
3 電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(平成 14 年法第 62 号)
第8条第1項 経済産業大臣は、電気事業者の新エネルギー等電気の利用をする量が基準利用量に達していない場合において、その達していないことについて正当な理由がないと認めるときは、その電気事業者に対し、期限を定めて、第5条の規定に従って新エネルギー等電気の利用をすべきことを勧告することができる。
調達者への譲渡予定量を評価して加点することができることとする。
なお、電気事業者の二酸化炭素排出係数が毎年変動すること等を考慮し、区分値等については、毎年度見直しを検討することが望ましい。
以下に、上記の観点を踏まえて、70 点以上の電気事業者に入札参加資格を与えることとした場合の、具体的なポイント制の区分・配点の例を示す。
◇ポイント制の区分・配点の例1
要 素 | 区 | 分 | 例 | 配点例 | |
① 前年度1kWh当たりの二酸化炭素排出係数 (単位:kg-CO2/kWh) | 0.300 未満 | 60 | |||
0.300 以上 | 0.450 | 未満 | 50 | ||
0.450 以上 | 0.600 | 未満 | 40 | ||
0.600 以上 | 0.750 | 未満 | 30 | ||
0.750 以上 | 0.900 | 未満 | 20 | ||
0.900 以上 | 0 | ||||
② 前年度の未利用エネルギー活用状況 | 1.35 %以上 | 20 | |||
0 %超 | 1.35 | %未満 | 10 | ||
活用していない | 0 | ||||
③ 前年度の新エネルギー導入状況 | 1.0 倍以上 | 20 | |||
0.8 倍以上 | 1.0 | 倍未満 | 10 | ||
上記①~③の計 | - | 100 |
(上記の例において、②で 10 点、③で 20 点を獲得した場合、裾切り基準を①から③で満た
すために必要な排出係数は 0.600 未満となる)
◇ポイント制の区分・配点の例2
要 素 | 区 | 分 | 例 | 配点例 | |
① 前年度1kWh当たりの二酸化炭素排出係数 (単位:kg-CO2/kWh) | 0.275 未満 | 70 | |||
0.275 以上 | 0.300 | 未満 | 65 | ||
0.300 以上 | 0.325 | 未満 | 60 | ||
0.325 以上 | 0.350 | 未満 | 55 | ||
0.350 以上 | 0.375 | 未満 | 50 | ||
0.375 以上 | 0.400 | 未満 | 45 | ||
0.400 以上 | 0.425 | 未満 | 40 | ||
0.425 以上 | 0.450 | 未満 | 35 | ||
0.450 以上 | 0.475 | 未満 | 30 | ||
0.475 以上 | 25 | ||||
② 前年度の未利用エネルギー活用状況 | 1.35 %以上 | 15 | |||
0 %超 | 1.35 | %未満 | 10 | ||
活用していない | 0 | ||||
③ 前年度の新エネルギー導入状況 | 1.0 倍以上 | 15 | |||
0.8 倍以上 | 1.0 | 倍未満 | 10 | ||
上記①~③の計 | - | 100 |
④ グリーン電力証書の調達者への譲渡予定量(予定使用電力量の割合) | 5.0 % | 10 |
2.5 % | 5 |
【上記基準によって裾切り基準に満たない事業者に対して、グリーン電力証書の譲渡予定量を加点項目として設定する場合】
(上記の例において、②で 10 点、③で 15 点を獲得した場合、裾切り基準を①から③で満た
すために必要な排出係数は 0.400 未満となる)
◇ポイント制の区分・配点の例3
要 素 | 区 | 分 | 例 | 配点例 | |
① 前年度1kWh当たりの二酸化炭素排出係数 (単位:kg-CO2/kWh) | 0.350 未満 | 70 | |||
0.350 以上 | 0.375 | 未満 | 65 | ||
0.375 以上 | 0.400 | 未満 | 60 | ||
0.400 以上 | 0.425 | 未満 | 55 | ||
0.425 以上 | 0.450 | 未満 | 50 | ||
0.450 以上 | 0.475 | 未満 | 45 | ||
0.475 以上 | 0.500 | 未満 | 40 | ||
0.500 以上 | 0.525 | 未満 | 35 | ||
0.525 以上 | 0.550 | 未満 | 30 | ||
0.550 以上 | 25 | ||||
② 前年度の未利用エネルギー活用状況 | 1.35 %以上 | 15 | |||
0 %超 | 1.35 | %未満 | 10 | ||
活用していない | 0 | ||||
③ 前年度の新エネルギー導入状況 | 1.0 倍以上 | 15 | |||
0.8 倍以上 | 1.0 | 倍未満 | 10 | ||
上記①~③の計 | - | 100 |
④ グリーン電力証書の調達者への譲渡予定量(予定使用電力量の割合) | 3.0 % | 10 |
1.5 % | 5 |
【上記基準によって裾切り基準に満たない事業者に対して、グリーン電力証書の譲渡予定量を加点項目として設定する場合】
(上記の例において、②で 10 点、③で 15 点を獲得した場合、裾切り基準を①から③で満た
すために必要な排出係数は 0.475 未満となる)
◇ポイント制の区分・配点の例4
要 素 | 区 | 分 | 例 | 配点例 | |
① 前年度1kWh当たりの二酸化炭素排出係数 (単位:kg-CO2/kWh) | 0.300 未満 | 60 | |||
0.300 以上 | 0.350 | 未満 | 55 | ||
0.350 以上 | 0.400 | 未満 | 50 | ||
0.400 以上 | 0.450 | 未満 | 45 | ||
0.450 以上 | 0.500 | 未満 | 40 | ||
0.500 以上 | 0.550 | 未満 | 35 | ||
0.550 以上 | 0.600 | 未満 | 30 | ||
0.600 以上 | 0.650 | 未満 | 25 | ||
0.650 以上 | 0.700 | 未満 | 20 | ||
0.700 以上 | 0 | ||||
② 前年度の未利用エネルギー活用状況 | 1.350 %以上 | 20 | |||
0.675 %以上 | 1.350 | %未満 | 15 | ||
0 %超 | 0.675 | %未満 | 10 | ||
活用していない | 0 | ||||
③ 前年度の新エネルギー導入状況 | 1.0 倍以上 | 20 | |||
0.8 倍以上 | 1.0 | 倍未満 | 10 | ||
上記①~③の計 | - | 100 |
④ グリーン電力証書の調達者への譲渡予定量(予定使用電力量の割合) | 1.0 % | 10 |
0.5 % | 5 |
【上記基準によって裾切り基準に満たない事業者に対して、グリーン電力証書の譲渡予定量を加点項目として設定する場合】
(上記の例において、②で 15 点、③で 20 点を獲得した場合、裾切り基準を①から③で満た
すために必要な排出係数は 0.550 未満となる)
※調達者においてグリーン電力証書の譲渡予定量を加点項目として設定する場合、過去の入札における落札額・他の事業者の入札額等を踏まえ、適切な区分を設定する必要がある(ある中央省庁の庁舎の例で、グリーン電力証書を予定電力使用量の1%分購入することとなった場合の電気事業者の負担を試算すると、落札額の約 0.4%分となった(グリーン電力証書の単価を 1kWh=4.5 円と仮定)。)。
入札参加資格の要件(下限値)は、前述のとおり、入札実施主体が適切に設定することとなるが、現在各府省等で実施されている裾切り方式においては、70 点(70 点以上の電気事業者に入札参加資格を与える)を裾切り基準としているものが多い。
図Ⅱ-2-1 は、70 点を裾切り基準とした場合の具体的な参加資格のイメージである。
100
95
85
70
で裾
ク切リりア基し準たを事①業
者③
70 裾切り基準を① ~③ 及び加点④でクリアした事業者
60
50
裾
切り基準
①排出係数
②未利用エネルギー
③新エネルギー
④グリーン電力証書
10 ③
10 ②
30 ①
15 ③
10 ②
35 ①
10 ④
10 ③
10 ②
40 ①
15 ③
10 ②
45 ①
15 ③
10 ②
60 ①
10 ③
15 ②
70 ①
15 ③
15 ②
70 ①
百点満点
A社
B社
~
C社
【
D社
E社
】
F社
0 20 40 60 80 100 (点)
図Ⅱ-2-1 裾切りによる参加資格のイメージ
2-3 CO2 排出係数
裾切りの設定においては、最も重要な要素の一つとして、二酸化炭素排出係数を位置づける必要がある。
契約の入札参加要件の評価における裾切りに利用する二酸化炭素排出係数の当面の扱いについては、以下のとおりとする。
⭘ 電気の入札に当たって使用する排出係数については、地球温暖化対策の推進に関する法
律(以下「温対法」という。)に基づき環境大臣及び経済産業大臣によって電気事業者ごとに個別に公表された係数(以下、「電気事業者ごとの排出係数」という。)又は国等において把握できる係数(各電気事業者がそのホームページで公表しているもの、地方公共団体がその地域に存する事業者向けに公表しているもの等)として適切と認められるもの(以下、「国等において把握できる係数として適切と認められるもの」という。)を用いることとする。
⭘ 電気事業者が取得した京都メカニズムのクレジットについては、温対法の算定・報告・公表制度において、電気事業者ごとの排出係数に反映させる方策について、本年度中に十分に検討が行われ、結論について関係者に周知を図ることとされている。国等において把握できる係数として適切と認められるものについては、その結論を受け、環境配慮契約法に基づく契約において京都メカニズムのクレジットを織り込む方策について検討することとする(現状においては、当該係数について、京都メカニズムのクレジットを織り込むことは認められない。)。
また、電気事業者の二酸化炭素排出係数は、それぞれ異なっていることから、地域における裾切り基準(区分・配点等)は、当該地域における電力供給が可能な電気事業者の二酸化炭素排出係数を踏まえて設定することが適当である。
2-4 環境負荷低減に係る事業者の取組の評価
二酸化炭素排出係数とともに、電気事業者の環境への負荷低減に向けた取組を積極的に評価し、入札参加資格の緩和につなげる等の目的で、事業者の未利用エネルギーの活用状況や新エネルギーの導入状況を入札参加資格の評価へ活用することとした。
また、これらの要素による評価の結果、入札参加資格を得ることができない事業者について、入札実施主体の判断により、グリーン電力証書の調達者への譲渡予定量を加点項目として評価することを可能とすることとした。
(1)未利用エネルギー4の活用状況
未利用エネルギーの有効活用の観点から、前年度における未利用エネルギーの活用比率を使用する。算出方法は、以下のとおり。
前年度の未利用エネルギーによる発電電力量(kWh)を前年度の供給電力量(需要端)
(kWh)で除した数値
4 未利用エネルギーとは、発電に利用した次に掲げるエネルギー(他社電力購入に係る活用分を含む。(ただし、一般電気事業者からの購入電力に含まれる未利用エネルギー活用分については趣旨から考慮し、含まない。))をいう。
①工場等の廃熱又は排圧
②廃棄物の燃焼に伴い発生する熱(RPS 法で定める新エネルギーに該当するものを除く。)
③高炉ガス又は副生ガス
(算定方式)
前年度の未利用エネルギーの活用状況(%) =
前年度の未利用エネルギーによる発電電力量前年度の供給電力量(需要端)
×100
未利用エネルギーによる発電を行う際に、他の化石燃料等の未利用エネルギーに該当しないものと混燃する場合は、以下の方法により未利用エネルギーによる発電量を算出する。
①未利用エネルギー及び未利用エネルギーに該当しない化石燃料等の双方の実測による燃焼時の熱量が判明する場合は、発電電力量を熱量により按分する。
②未利用エネルギーの実測による燃焼時の熱量が判明しない場合は、未利用エネルギーに該当しない化石燃料等の燃焼時の熱量と当該発電機の効率から未利用エネルギーに該当しない化石燃料等の燃焼に伴う発電量を算出し、当該数値を全体の発電量から除いた分を未利用エネルギーによる発電分とする。
(2)新エネルギーの導入状況
化石燃料に代わる新エネルギーの導入促進の観点から、前年度における新エネルギーの利用量を使用する。算出方法は、以下のとおり。
新エネルギーの導入状況とは、以下の項目を算定方式に示す方法により算出した数値をいう(単位はすべて kWh)。
①前年度自社施設で発生した RPS 法で定める新エネルギー等電気の利用量(以下、「新エネ利用量」という。)
②前年度他社より購入した新エネ利用量及び新エネルギー電気相当量(RPS 法施行規則第
1条第2項に定めるものをいう。以下、「新エネ相当量」という。)
③前年度他社に販売した新エネ利用量及び新エネ相当量
④一昨年度からバンキングした新エネ相当量
⑤本年度にバンキングした新エネ相当量
⑥資源エネルギー庁が発表した RPS 法第4条及び附則第3条に定める方式により算出した前年度の当該電気事業者の基準利用量
(算定方式)
前年度の新エネルギーの導入状況 =
①+②-③+④-⑤
⑥
(3)グリーン電力証書の加点項目としての評価
以下に、グリーン電力証書の仕組みを簡単に説明し、入札におけるオプションとして、入札実施者の判断により、グリーン電力証書を活用する場合の方法について示す。
ア.グリーン電力証書制度5
グリーン電力価値の取引制度(グリーン電力証書制度)とは、グリーン電力価値の購入を希望する需要家が一定のプレミアムを支払うことにより、電気とは切り離されたグリーン電力価値を証書等の形で保有し、その事実を広く社会に向けて公表できるというものである。
イ.グリーン電力証書の仕組み
以下は、グリーン電力証書システムの仕組みである(図Ⅱ-2-2)6。
図Ⅱ-2-2 グリーン電力証書システムの仕組み
① 環境価値購入者がグリーン電力の利用契約を締結
② グリーン電力認証機構の設備認定を得たグリーン電力発電者に発電を委託
③ グリーン電力発電者は契約に基づき発電を実施し、グリーン電力価値を移転
④ グリーン電力認証機構が発電実績を認証
⑤ 発電実績を「グリーン電力証書」として環境価値購入者へ発行。環境価値購入者は発電量の実績に基づき委託費の支払
⑥ 発電した電気自体は地域の電力会社へ販売または発電事業者自ら使用
ウ.グリーン電力認証機構7
グリーン電力認証機構は、グリーン電力に対する社会的認知度の向上や、グリーン電力価値の取引における信頼度の向上を目的とし、発電事業者・グリーン電力価値取引事業者
(申請者)・グリーン電力価値購入者等とは独立した形(第三者)で設立されたグリーン電力価値の認証を行う機関であり、グリーン電力価値の認証に伴う以下の役割を担っている。
① グリーン電力発電設備に関する認定基準の策定・管理
6 グリーン電力認証機構ホームページより引用
② グリーン電力価値に対する認証
③ グリーン電力価値所有者の公表
④ グリーン電力の有する環境的・経済的付加価値に関する調査・提言
エ.グリーン電力証書の調達者への譲渡量を評価する方式
裾切りにおいて使用する要素として、①二酸化炭素排出係数、②未利用エネルギーの活用状況、③新エネルギーの導入状況に加え、④グリーン電力証書の調達者への譲渡予定量を加点項目として評価することとする。
ただし、入札参加資格を厳しく設定することで、グリーン電力証書の調達が、事業者にとって過度な負担とならないよう配慮する必要がある。具体的には、上記の①~③の 3 つ
の要素に係る評価点の合計が 100 点となるポイント制で評価し、原則複数の電気事業者の参入が可能となる条件を確保した上で、これら評価点の合計が裾切りの基準を下回る事業者に対してのみ、④を加点項目として評価する。
グリーン電力証書の譲渡予定量を加点項目として評価することによって入札参加資格を得た事業者は、契約した際に調達者に証書を無償譲渡することとする。
なお、調達者においてグリーン電力証書の譲渡予定量を加点項目として設定する場合、過去の入札状況等を踏まえ、適切な区分を設定する必要がある(ある中央省庁の庁舎の例で、グリーン電力証書を予定電力使用量の 1%分購入することとなった場合の電気事業者の負担を試算すると、落札額の約 0.4%分となった(グリーン電力証書の単価を 1kWh=4.5 円と仮定)。)。
3.契約方法について
3-1 契約の対象
電力供給が可能な事業者が3社以上存在する場合に、本契約方式を適用することとする。
3-2 仕様
裾切り方式により、電気の供給を受ける契約に係る仕様書の構成及び記載する内容例は、表 3-1 のとおりである。なお、裾切り要件、当該要件を満たすことを証明する書類の提出方法等については、入札公告及び入札説明書の中で必要事項を記載する。
表Ⅱ-3-1 仕様書の構成及び記載内容の例
記 載 項 目 | 記 載 x x 等 ( 例 ) |
件名 | (契約予定施設名)における電気の供給を受ける契約の旨記載 |
需要場所等 | 需要場所、業種及び用途を記載 |
契約期間 | 契約開始日から契約終了日 |
供給電気方式等 | 供給電圧、計量電圧、供給電気方式、標準周波数等 |
契約電力 | 契約電力(最大電力) |
予定使用電力量 | 予定使用電力量 |
電力量等の検針 | 自動検針装置の有無、電力会社の検針方法、計量器の構成 |
需給地点 | 需給地点の記載 |
電気工作物の財産分界点 | 電気工作物の財産分界点の記載 |
保安上の責任分界点 | 保安上の責任分界点の記載 |
燃料費、力率 | 燃料費、力率の変動による契約価格の改定について記載 |
電力使用実績 | 各月の最大電力の実績データ 電力使用量の実績データ(月別・日別・時間別等) |
3-3 標準的な手続とスケジュール
本契約方式を適用する場合の標準的な流れ及び要する期間は、図Ⅰ-3-1 のとおりである。
以下に、図Ⅱ-3-1 に沿って、各段階における手続の概要を示す。
(1)入札準備
入札準備段階は、①裾切り要件の設定、②仕様書の作成、③予定価格の作成、④入札実施に必要な事項の調整を実施する。
① 「裾切り要件の設定」については、前述「2-2 裾切り方式」を参考とし、適切に裾切り要件を設定する。
② 「仕様書の作成」については、上記「3-2 仕様」を参考とし、必要事項を記載した仕様書を作成する。
③ 「予定価格の作成」については、前年度における電力使用量の実績データ等を踏まえ、適切に予定価格を作成する。
④ 「入札実施に必要な事項の調整」については、必要に応じ実施する。
■入札準備
入札実施に必要な事項の調整
予定価格の作成
仕様書の作成
裾切り要件の設定
■入札公告・資格審査
入札参加資格の審査
入札公告
■事業者決定・契約
契約
開札(事業者決定)
入札
図Ⅱ-3-1 裾切り方式に係る入札手続
(2)入札公告・資格審査
入札公告・資格審査段階は、①入札公告、②入札参加資格の審査を実施する。
① 「入札公告」については、裾切り方式による入札参加資格の審査及び入札までに要する期間を勘案して、適切に実施する。
② 「入札参加資格の審査」については、上記「(1)①裾切り要件の設定」におい
て設定した裾切り要件に照らし、入札参加希望者から提出された参加資格に係る審査書類に基づき審査を実施する(審査結果については、入札参加希望者に対し、速やかに通知する。)。
(3)事業者決定・契約
事業者決定及び契約段階は、①入札及び開札(事業者決定)、②契約を実施する。
① 「入札及び開札(事業者決定)」については、裾切り方式による入札参加要件を満たした事業者の中から最低価格落札方式によって決定する。
② 「契約」については、落札者と落札決定から定められた期間内に契約を実施する。
4.その他
4-1 調達者の役割
調達者は、前項までの事項を踏まえ、以下の点に留意しながら契約業務を行うものとする。
❑ xxな競争の確保のため、裾切りの内容(区分・配点等)について当該地域の状況を勘案し、適切に設定する。
❑ 電気の合理的かつ適切な使用等に努め、特別な事情がない限り、使用する電力量は予定使用電力量を上回ってはならない。
4-2 その他必要な手続
調達者が契約業務を実施するに当たって、その他に留意すべき手続や内容について例示する。
❑ 仕様書の作成に当たっては、電気需給契約書(電気事業者と締結している契約書)等を参考に現行の契約内容を把握することが可能である。
❑ 入札参加資格の審査に当たっては、入札参加希望者に対し、参加資格に係る審査書類について、その根拠資料とともに提出を求め、入札実施主体が設定した裾切りを満足するか確認する。
❑ 年間契約の場合の予定使用電力量は、原則として前年の年間使用電力量を上回らない範囲において、適切に設定するものとするが、契約期間内において契約施設の増改築や設備の拡張・更新等の前年の使用電力量から大幅に変動することが予め判明している場合にあっては、当該事情を考慮した予定使用電力量を設定する。
Ⅲ.自動車の購入に係る契約に関する基本的事項について
1.背景と意義
1-1 環境性能を考慮した物品購入の必要性と意義
自動車の購入に係る契約に当たっては、初期費用のみを考慮した調達を行うのではなく、供用期間中における燃料の使用に伴う温室効果ガス等の排出や燃料費用の支出等についても適切に判断した上で、契約を締結することが温室効果ガスの排出抑制の観点等から必要である。調達者側においてこうした環境に配慮した契約を推進することが、環境への負荷の低減を図るとともに、環境と経済が両立する新しい社会づくりのために役立つことが期待される。
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、自動車の購入に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、調達者が具体的に自動車の購入に係る契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
なお、本解説資料に示した事例は参考例であり、調達者は調達条件を踏まえて適切に対応することが必要である。
2.契約方式の解説
2-1 自動車の購入に係る契約方式の基本的考え方
本契約方式は、購入後にエネルギーを大量に使用する自動車の調達に係る契約に適用するものであり、調達に当たっては、購入価格のみならず、使用に伴い排出される温室効果ガスに関する環境性能(燃費)を総合的に評価する。本契約方式の基本的な考え方は、以下のとおり。
① 契約締結の選定基準
❑ 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以下、グリーン購入法という。)の特定調達品目に該当する場合は、自動車の判断の基準を満足する製品であることが前提条件。
❑ 価格のほかに価格以外の要素(環境性能)を評価の対象に加えて評価し、環境性 能と価格の両面から評価した結果として最も評価の高い案を提示した者と契約を締結(総合評価落札方式)。
② 入札時の考慮事項
❑ 調達時の要求性能等に関しては、必要以上に入札を制限することがないように配慮しつつも、行政目的等が確実に達成できるように適切に勘案し、入札者等に誤解の生じないよう明確に定めること。
❑ 当分の間、燃料種別ごとに入札条件を設定すること。
❑ 具体的な条件については、使用状況を踏まえつつ、調達者において設定すること。
2-2 対象となる車種
当分の間、何らかの基準により燃費が公表されているものに限ることとする。車種等の具体的な条件については、クリーンディーゼル乗用車の普及促進、新技術の実証実験の支援といった行政目的を持つ場合は、その目的に対応した条件を設定すること。また、そのような特殊な目的でない場合にあっても、当該自動車を使用する行政目的や使用状況を踏まえつつ、調達者において条件を設定し、その条件の下で選定基準に基づき契約者を選定する。
また、入札のxxな実施を確保するため、排気量、使用目的、要求性能等の入札条件を事前に明確に示す必要がある。
ハイブリッド自動車については、ガソリンにより電気を生み出していることから、行政目的によって特別な条件設定を行わない場合は、ガソリン車と同一に扱うことができることとする。また、ガソリンエンジン及び電気モーターを組み合わせ動力性能が高いことから、排気量は 1~2 クラス程度上のクラスと同等として扱うことが適当である。
なお、燃料種の異なる自動車については、燃費以外の環境性能について現状では一定の差があること等から、当分の間は同一基準による入札を実施しないことを原則とする。
2-3 総合評価落札方式
(1)総合評価落札方式の考え方
総合評価落札方式は、入札価格に係る評価点(入札価格点)のほかに、価格以外の要素に係る評価点(技術点)を評価の対象に加えることで品質を総合的に評価し、技術と価格の両面を評価した結果として最も優れた者を落札者として決定する方式である。
自動車の購入に係る契約において、価格以外の要素として評価する環境性能として、本契約方法にあっては、当分、二酸化炭素排出量の削減とする。
自動車の使用段階における二酸化炭素排出量は、燃料使用量と恒等であり、また、燃料使用量は貨幣換算することができる。このため、自動車の環境性能の評価項目に係る指標は「燃 費(km/㍑)」とする。
ア.評価方式の概要
総合評価落札方式においては、提案の内容は評価指標をもとに得点に換算され、この得点と入札価格を比較した評価値を求めることによって、最もコストパフォーマンスの優れた提案を判断する。具体的な評価値は、以下の方法で算定する。
あらかじめ定めた計算方法により提案内容を得点換算
評価値が最も高い者が落札者
評価値 =
得点 入札価格点
・・・(式 1)
たとえば、1万円を1点にするなど入札価格を点数化する
イ.評価の考え方
本契約で用いる評価方式は、入札説明書等に記載された要求要件(=調達者が示す標準案の状態)を満足しているかを判断し、満足している場合には、標準点(=100 点)を与える。さらに、環境性能について標準案の状態を上回る部分に対して、標準点を基準として、評価に応じた加算点を与えるものとする。
具体的な得点は、標準点と加算点の合計とする(式 2)。
得点 = 標準点+加算点 ・・・(式 2)
ウ.標準点と加算点
上記のとおり、要求要件(=調達者が示す標準案の状態)を満足している場合の標準点 を 100 点とする。
また、加算点については、行政目的、使用状況等を踏まえ、以下の内容について調達者
が適切に設定する必要がある。
❑ 評価指標 燃費(燃料1㍑当たりの走行距離)
❑ 標 準 点 要求要件水準を満たしている場合の得点
❑ 換算方法 評価指標を用いて最低限の要求要件を満足する状態を基準(標準点が付与される状態)として環境性能の向上に応じて評価指標の数値に比例して加算点を与える方法
エ.選定方法
本評価方式の場合、クリアすべき最低要件として、
① 入札価格が予定価格の制限の範囲内であること
② 技術提案が評価項目に関する最低限の要求要件を満たしていること
③ 評価値が基準評価値を下回っていないこと
④ その他、行政目的に応じて設定された基準に合致していること
があげられる。
上記①~④を満足するものの中から評価値の最も高いものを落札者とする。本方式の評価値を用いた落札者選定のイメージは、図Ⅲ-2-1 のとおり。
100点+α
☆ B
◆ C
α
○ A
● D
基準評価値
予定価格
評価値
標準点+加算点
100
(標準点)
0
:要件①を満足しない領域(入札価格が予定価格を超過)
:要件②を満足しない領域(「最低限の要求水準」を満たさない)
例えば、Cは予定価格を超過、Dは標準点の状態を満たしていない。
Aは基準評価値を上回るが、評価値がBを下回る。よって、Bが落札者となる。
入札価格
図Ⅲ-2-1 総合評価落札方式で行う評価値を用いた落札者選定のイメージ
(2)評価値の算定例
○2,000cc クラスの 3BOX ガソリン自動車の例
以下に、具体的な評価値の算定例を示す。算定に当たっては、2,000cc クラス(概ね車両重量 1,266kg 以上 1,516kg 未満)の 3BOX のガソリン乗用車で仮定の例を示すこととする。
試算対象となる自動車の仕様は、表Ⅲ-2-1 のとおりである。
表Ⅲ-2-1 試算の対象となる自動車
車名 | 排気量※1 (cc) | 車両重量 (kg) | 燃費(10・15 モード) (km/㍑) | 燃費(JC08 モード)※2 (km/㍑) | 入札価格 (万円) |
A | 1,496 | 1,280 | - | 29.6(JC08 表示使用) | 263 |
B | 1,998 | 1,360 | 14.2 | 12.8(JC08 換算使用) | 193 |
C | 1,998 | 1,400 | 14.2 | 12.8(JC08 換算使用) | 225 |
D | 1,339 | 1,280 | - | 25.7(JC08 表示使用) | 242 |
E | 1,998 | 1,280 | 13.6 | 12.2 (JC08 換算使用) | 224 |
※1:車名 A、D はハイブリッド自動車であり、排気量は 2,000cc クラスに該当しないが、動力性能から 2,000cc クラス同等として扱う。
※2:JC08 モード燃費を公表していない車名(B・C・E)は 10・15 モードの燃費に 0.9 を乗じて設定している。
ア.目標値に対する燃費の達成度合いから加算点を設定する場合
例えば、対象のクラスにおける最も燃費効率の良い自動車の燃費を燃費目標値として、加算点を設定すると以下のとおりとなる。この際、加算点の満点については、燃費基準値に対する燃費目標値の改善割合が 100%以上である場合は 50 点とし、改善割合が 100%未満である場合は、改善割合を基に最高点を設定する。試算条件は次のとおりとする。
❑ 燃 費基準 値:11.7km/㍑(JC08 モード)(グリーン購入の基準値、2,000cc クラスの 3BOX のガソリン自動車の 13.0km/㍑8(10・15 モード)から換算)
❑ 年間走行距離:11,000km/年9
❑ 供 用 期 間:7 年
❑ 燃 費目標値:29.6km/㍑(同クラスの市販車の最高レベルから設定)
❑ ガソリン価格:136 円/㍑10
❑ 加算点の満点:50 点
加算点は、当該自動車が評価指標において、目標値と基準値の間のどの位置にあるのかを評価する。具体的には以下の方法で求める。
8 グリーン購入法のガソリン乗用車に係る 10・15 モードの燃費基準(車両重量 1,266kg 以上 1,516kg 未満の判断の基準)
9 平成 17 年度において公用車で使用した燃料のうち、ガソリン自動車の燃料使用量は 23,386kl、同年度のガソリン自動車の保有台数は 24,087 台(政府の実行計画による平成 17 年度実績値(平成 18 年 10 月))からガソリン自動車 1 台当たりの年間燃料使用量は 971 ㍑であり、燃費基準値(11.7km/㍑)を乗じて年間走行量を約 11,000km とした
10 燃料価格は、当該地域(都道府県別)の前年度平均価格を使用することを基本とする
加算点 = 加算点の満点 ×
評価指標の提案値-標準案の値目標状態の値-標準案の値
・・・(式 3)
自動車の購入に係る契約における評価指標は燃費である。標準値はグリーン購入法における区分ごとの燃費基準値とし、目標状態を燃費目標値とすると、上式は次のように表される。
加算点 = 加算点の満点 ×
提案車の燃費-燃費基準値燃費目標値-燃費基準値
・・・(式 4)
上記の式を2,000cc クラスのガソリン乗用車に当てはめ、加算点の満点を50 点とすると、
加算点 = 50 × 提案車の燃費-11.7 ・・・(式 4)
29.6-11.7
なお、上記の試算条件から、燃費目標値の自動車を使用した場合は、燃費基準値の自動車を使用した場合と比べて燃料の削減は約 54 万円(3,980 ㍑×136 円/㍑=54 万円)分となる。
上記の算定結果から加算点を加え、評価値を算定すると以下のとおり。
◇車名 A
標準点:100 点 加算点:50 点×(29.6-11.7)/(29.6-11.7)=50 点 ←式 4
得 点:100 点+50 点=150 点 ←式 2
評価値:150 点/263 万円=0.570 ←式 1
◇車名 B
標準点:100 点 加算点:50 点×(12.8-11.7)/(29.6-11.7)=3.1 点得 点:100 点+3.1 点=103.1 点 評価値:103.1 点/193 万円=0.534
◇車名 C
標準点:100 点 加算点:50 点×(12.8-11.7)/(29.6-11.7)=3.1 点得 点:100 点+3.1 点=103.1 点 評価値:103.1 点/225 万円=0.458
◇車名 D
標準点:100 点 加算点:50 点×(25.7-11.7)/(29.6-11.7)=39.1 点得 点:100 点+39.1 点=139.1 点 評価値:139.1 点/242 万円=0.575
◇車名 E
標準点:100 点 加算点:50 点×(12.2-11.7)/(29.6-11.7)=1.4 点得 点:100 点+1.4 点=101.4 点 評価値:101.4 点/224 万円=0.453
評価値は、D>A>B>C>E となり、評価値が最も高い車名 D を提案した者と契約を結
ぶことになる。環境性能を加点することにより、値段のみの順位では4番目のものが選定された。
イ.燃費に対して一定の環境価値を認めた点数換算する場合
以下に、標準点及び加算点の具体的な設定例について示す。
【例:2,000cc クラスの 3BOX ガソリン乗用車の場合】
設 定 項 目 | 設 定 x x |
①評 価 指 標 | 燃費(燃料 1 ㍑当たりの走行距離) |
②標 準 点 | 燃費基準値 11.7km/㍑(JC08 モード) |
③換 算 方 法 | 燃費 1km/㍑について加算点 2.5 点(JC08 モード)とする。 |
① 評価指標については環境性能として定量的に評価可能な「燃費」を設定
② グリーン購入法の特定調達品目に該当することから、自動車の判断の基準を満足する製品であることを最低限の要求要件とし、グリーン購入法の判断の基準を満たす自動車(JC08 モード燃費換算の基準値 11.7km/㍑)に標準点 100 点を付与する
11
③ 燃費(燃料 1 ㍑当たりの走行距離)1km/㍑について加算点を設定
まず、加算点の仮の満点について設定する。この際、燃費基準値に対して、同クラスで最も燃費効率の良い自動車の燃費の改善割合が 100%以上である場合は 50 点とし、改善割合が 100%未満である場合は、改善割合を基に仮の最高点を5点刻み程度の適当な得点で設定する。その上で、最も燃費効率の良い自動車が仮の最高点程度になるように燃費1km/㍑当たりの得点を設定するものとする。
例えば、上記のような場合、最高レベルの燃費が 29.6 km/㍑(燃費基準値は 11.7km/㍑)であるから、燃費基準値に対して 100%以上の改善となり、仮の最高点は50 点とする。燃費1km/㍑につき2.5~3 点と設定すれば最高レベルの29.6km/
㍑(JC08 モード)の得点が(29.6-11.7)×2.5=44.75 点あるいは(29.6-11.7)
×3=53.7 点となる。50 点を超えない範囲で適切な値を設定することから、1km/
㍑当たり 2.5 点とする。
仮定の場合、JC08 モード燃費 1km 当たり加算点 2.5 点から、評価値を算定すると以下のとおりとなる。
◇車名 A
11 グリーン購入法の特定調達品目に該当する場合は、自動車の判断の基準を満足する製品であることが前提条件である。2,000cc クラスの 3BOX のガソリン乗用車の車両重量を 1,266kg 以上 1,516kg 未満と想定し、燃費基準値 11.7km/㍑を満たす自動車に一律 100 点を与える
得 点:100 点+(29.6-11.7)×2.5 点=144.8 点 (加算点の上限 50 点)評価値:144.8 点/263 万円=0.551 ←式 1
◇車名 B
得 点:100 点+(12.8-11.7)×2.5 点=102.8 点評価値:102.8 点/193 万円=0.533
◇車名 C
得 点:100 点+(12.8-11.7)×2.5 点=102.8 点評価値:102.8 点/225 万円=0.457
◇車名 D
得 点:100 点+(25.7-11.7)×2.5 点=135 点評価値:135 点/242 万円=0.558
◇車名 E
得 点:100 点+(12.2-11.7)×2.5 点=101.3 点評価値:101.3 点/224 万円=0.452
評価値は、D>A>B>C>E となり、評価値が最も高い車名 D を提案した者と契約を結ぶことになる。環境性能を加点することにより、値段のみの順位では 4 番目のものが選択された。
○1,500cc クラスの 2BOX ガソリン自動車の例
2,000cc クラスに続き、1,500cc クラス(概ね車両重量 1,016kg 以上 1,266kg 未満)の 2BOX
ガソリン乗用車の仮定の算定例を示す。
試算対象となる自動車の仕様は表Ⅲ-2-2 のとおりである。
表Ⅲ-2-2 試算の対象となる自動車
車名 | 排気量 (cc) | 車両重量 (kg) | 燃費(10・15 モード) (km/㍑) | 燃費(JC08 モード)※1 (km/㍑) | 入札価格 (万円) |
A | 1,496 | 1,170 | - | 15.5(JC08 表示使用) | 151 |
B | 1,498 | 1,150 | 19.4 | 17.5(JC08 換算使用) | 163 |
C | 1,499 | 1,080 | 17.6 | 15.8(JC08 換算使用) | 152 |
D | 1,498 | 1,170 | - | 15.5(JC08 表示使用) | 159 |
E | 1,498 | 1,090 | 18.0 | 16.2 (JC08 換算使用) | 169 |
F | 1,495 | 1,070 | 16.0 | 14.4 (JC08 換算使用) | 145 |
G | 1,490 | 1,030 | 16.4 | 14.8 (JC08 換算使用) | 142 |
※1:JC08 モード燃費を公表していない車名(B・C・E・F・G)は 10・15 モードの燃費に 0.9
を乗じて設定している。
ア.目標値から加算点を設定する場合
この場合、燃費基準値に対する燃費目標値の改善割合は、17.5/15.5-1で約2 割となる。そのため、50 点の2割の 10 点を加算の満点とする。この前提で、加算点を設定すると以下のとおりとなる。試算条件は次のとおりとする。
❑ 燃 費基準 値:14.4km/㍑(JC08 モード)(グリーン購入の基準値、1,500cc クラスの 2BOX のガソリン自動車の 16.0km/㍑12(10・15 モード)から換算)
❑ 年間走行距離:14,000km/年13
❑ 供 用 期 間:7 年
❑ 燃 費目標値:17.5 km/㍑(同クラスの市販車の最高レベルから設定)
❑ ガソリン価格:136 円/㍑
❑ 加算点の満点:10 点
2,000cc クラスと同様に考え、
加算点 = 加算点の満点 ×
提案車の燃費-燃費基準値燃費目標値-燃費基準値
加算点 = 10 × 提案車の燃費-14.4
17.5-14.4
上記の算定結果から加算点を加え、評価値を算定すると以下のとおり。
◇車名 A
標準点:100 点 加算点:10 点×(15.5-14.4)/(17.5-14.4)=3.5 点得 点:100 点+3.5 点=103.5 点 評価値:103.5 点/151 万円=0.685
◇車名 B
標準点:100 点 加算点:10 点×(17.5-14.4)/(17.5-14.4)=10 点得 点:100 点+10 点=110 点 評価値:110 点/163 万円=0.675
◇車名 C
標準点:100 点 加算点:10 点×(15.8-14.4)/(17.5-14.4)=4.5 点得 点:100 点+4.5 点=104.5 点 評価値:104.5 点/152 万円=0.688
◇車名 D
標準点:100 点 加算点:10 点×(15.5-14.4)/(17.5-14.4)=3.5 点得 点:100 点+3.5 点=103.5 点 評価値:103.5 点/159 万円=0.651
12 グリーン購入法のガソリン乗用車に係る 10・15 モードの燃費基準(車両重量 1,016kg 以上 1,266kg 未満の判断の基準)
13 ガソリン自動車 1 台当たりの年間燃料使用量の 971 ㍑に燃費基準値(14.4km/㍑)を乗じて年間走行量を約
14,000km とした。
◇車名 E
標準点:100 点 加算点:10 点×(16.2-14.4)/(17.5-14.4)=5.8 点得 点:100 点+5.8 点=105.8 点 評価値:105.8 点/169 万円=0.626
◇車名 F
標準点:100 点 加算点:10 点×(14.4-14.4)/(17.5-14.4)=0 点得 点:100 点+0 点=100 点 評価値:100 点/145 万円=0.690
◇車名 G
標準点:100 点 加算点:10 点×(14.8-14.4)/(17.5-14.4)=1.3 点得 点:100 点+1.3 点=101.3 点 評価値:101.3 点/142 万円=0.713
評価値は、G>F>C>A>B>D>Eとなり、評価値が最も高い車名 G を提案した者と契約を結ぶことになる。環境性能を加点したが、値段が最も低いものが選択された。
イ.燃費に対して一定の環境価値を認めた点数換算する場合
【例:1,500cc クラスの 2BOX ガソリン乗用車の場合】
設 定 項 目 | 設 定 x x |
①評 価 指 標 | 燃費(燃料 1 ㍑当たりの走行距離) |
②標 準 点 | 燃費基準値 14.4km/㍑(JC08 モード) |
③換 算 方 法 | 燃費 1km/㍑について加算点 3 点(JC08 モード)とする。 |
① 評価指標については環境性能として定量的に評価可能な「燃費」を設定
② グリーン購入法の特定調達品目に該当することから、自動車の判断の基準を満足する製品であることを最低限の要求要件とし、グリーン購入法の判断の基準を満たす自動車(JC08 モード燃費換算の基準値 14.4km/㍑)に標準点 100 点を付与する
③ 燃費(燃料 1 ㍑当たりの走行距離)1km/㍑について加算点を設定
要求水準を満たした場合を 0 点とし、最高水準の場合が 50 点以下になる範囲で
適当な値を設定する(簡単化のため最高得点の設定は 5 点刻みとする)。具体的 には、最高レベルの燃費(17.5 km/㍑)の市販車が燃費基準値(14.4 km/㍑)と 比較して約2割効率が良くなるため(17.5 km/㍑-14.4 km/㍑/14.4 km/㍑=0.22)、仮の最高点を 10 点(50×0.2)とする。燃費目標値の自動車に加算点 10 点を与 えることとし、燃費 1km/㍑当たりの得点を設定すると 3.2 となることから、この クラスでは燃費 1km/㍑につき 3 点と設定する。
仮定の場合、JC08 モード燃費 1km 当たり加算点 3 点から、評価値を算定すると以下のとおりとなる。
◇車名 A
得 点:100 点+(15.5-14.4)×3 点=103.3 点
評価値:103.3 点/151 万円=0.684
◇車名 B
得 点:100 点+(17.5-14.4)×3 点=109.3 点評価値:109.3 点/163 万円=0.671
◇車名 C
得 点:100 点+(15.8-14.4)×3 点=104.2 点評価値:104.2 点/152 万円=0.686
◇車名 D
得 点:100 点+(15.5-14.4)×3 点=103.3 点評価値:103.3 点/159 万円=0.650
◇車名 E
得 点:100 点+(16.2-14.4)×3 点=105.4 点評価値:105.4 点/169 万円=0.624
◇車名 F
得 点:100 点+(14.4-14.4)×3 点=100 点評価値:100 点/145 万円=0.690
◇車名 G
得 点:100 点+(14.8-14.4)×3 点=101.2 点評価値:101.2 点/142 万円=0.713
評価値は、G>F>C>A>B>D>E となり、評価値が最も高い車名 G を提案した者と契約を結ぶことになる。環境性能を加点したが、値段が最も低いものが選択された。
2-4 燃費表示モードの移行
自動車カタログの燃費表示は、2007 年 7 月から従来の 10・15 モードと、新しい JC08 モードがxx併記され、2011 年 4 月から JC08 モードに一本化される。
JC08 モードの特徴として、10・15 モードよりも実態に即した燃費値であることが挙げられる。その結果、車両により異なるものの、JC08 モード燃費の方が 10・15 モード燃費よりも概ね 1 割程度低くなる傾向があるといわれている。このため、JC08 モードを採用することにより、環境負荷量(CO2 排出量)をより重視した評価となること、生涯費用の実態をより反映した見積もりが可能になることが期待される。
したがって、生涯費用、環境負荷量の把握の観点からは、早急に 10・15 モードから JC08モードへ移行することが望ましい。現時点では JC08 モードが公表されているのは一部の車種に止まっているため JC08 モードによる比較考慮は困難な状況であるが、早い段階で JC08 モードによる評価に移行するのが適当である。燃費表示の移行期間について、10・15 モードによる燃費と JC08 モードによる燃費を比較する必要が生じた際には、10・15 モードの燃費に
0.9 を乗じることで JC08 モードの燃費とみなすこととする。
2-5 標準的な手続とスケジュール
自動車の購入に係る契約の標準的な手続とスケジュールは、以下のとおり。
入札公告から入札までの日数は 10 日以上必要であること、入札公告時には、年間走行距離、供用期間、車両形式や排気量等の仕様、使用目的、要求性能等の入札条件を明示することに注意を要する。
標準的日数
仕様書の作成
予定価格の作成
約 15 日
入札実施に必要な事項の調整
入札公告
入札説明書の交付
入札書(車両価格)及び維持費用に係る資料の提出
10 日以上
入札・開札
契約
約 5 日
図Ⅲ-2-2 本契約方式による入札に係る手続
3.その他
調達者は、前項までの事項を踏まえたうえで、次の点に留意しながら契約業務を行うものとする。基本的な事項は、以下のとおり。
❑ xxな競争の確保のため、算定方式及び評価結果について情報公開を行う。
❑ 選定した自動車が購入後に適切な使用状況にあることを監視し、燃料使用量の削減を推進する。
◇資 料 編
(1)燃料価格
資料表 1 燃料の平均価格(店頭価格、平成 18 年度)
都道府県 | レギュラーガソリン (円/㍑) | ハイオクガソリン (円/㍑) | 軽油 (円/㍑) |
北海道 | 136 | 146 | 115 |
青森県 | 134 | 144 | 111 |
岩手県 | 135 | 147 | 112 |
xx県 | 135 | 145 | 112 |
xx県 | 134 | 146 | 113 |
山形県 | 135 | 146 | 112 |
xx県 | 136 | 147 | 114 |
茨城県 | 000 | 000 | 000 |
栃木県 | 132 | 143 | 111 |
群馬県 | 131 | 142 | 111 |
埼玉県 | 133 | 144 | 111 |
xx県 | 133 | 144 | 111 |
xxx | 138 | 149 | 116 |
神奈川県 | 135 | 145 | 114 |
新潟県 | 136 | 147 | 115 |
xx県 | 140 | 152 | 117 |
山梨県 | 136 | 147 | 114 |
静岡県 | 137 | 148 | 114 |
愛知県 | 135 | 146 | 113 |
岐阜県 | 137 | 148 | 115 |
三重県 | 135 | 147 | 114 |
富山県 | 000 | 000 | 000 |
xx県 | 137 | 147 | 115 |
xx県 | 135 | 148 | 114 |
滋賀県 | 133 | 144 | 111 |
京都府 | 136 | 147 | 114 |
奈良県 | 135 | 146 | 114 |
大阪県 | 135 | 146 | 113 |
兵庫県 | 136 | 147 | 114 |
和歌山県 | 136 | 147 | 114 |
鳥取県 | 135 | 145 | 115 |
島根県 | 000 | 000 | 000 |
岡山県 | 136 | 147 | 117 |
広島県 | 136 | 147 | 115 |
xx県 | 137 | 148 | 115 |
徳島県 | 137 | 149 | 114 |
香川県 | 135 | 146 | 113 |
愛媛県 | 139 | 150 | 115 |
高知県 | 135 | 146 | 113 |
福岡県 | 136 | 147 | 113 |
佐賀県 | 139 | 149 | 115 |
長崎県 | 145 | 156 | 123 |
熊本県 | 137 | 148 | 113 |
大分県 | 142 | 153 | 117 |
xx県 | 139 | 150 | 116 |
鹿児島県 | 000 | 000 | 000 |
沖縄県 | 134 | 144 | 115 |
全国平均 | 136 | 147 | 114 |
最高価格 | 145 | 156 | 123 |
最低価格 | 131 | 142 | 110 |
(2)総合評価落札方式による一般競争入札に付する事項(例)
入札公告時に入札条件として明示する事項の例を以下に示す。
資料表 2 総合評価方式による一般競争入札に付する事項の例
名称 | 自動車購入契約 |
購入物品の名称及び数量 | 乗用自動車(新車(未登録車に限る) 1 台 |
購入物品の特質等 | ・ 車体の形状:セダン ・ 総排気量:2,000cc クラス以上 ・ 使用燃料:レギュラーガソリン ・ 駆動方式:四輪駆動 ・ 変速機:AT または CVT ・ グリーン購入法により定められた自動車の判断基準を満たすこと ・ 年間走行距離:10,000km とする ・ 供用期間:7 年とする その他詳細は別に示す仕様書のとおり |
納入期限 | 平成 20 年○月○日 |
納入場所 | ○○省車庫 |
Ⅳ.省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項について
1.背景と意義
1-1 省エネルギー改修事業の必要性と意義
環境配慮契約法第5条第2項第3号において、省エネルギー改修事業(以下、「ESCO事業」という。)とは「事業者が、省エネルギーを目的として、庁舎14の供用に伴う電気、燃料等に係る費用について当該庁舎の構造、設備等の改修に係る設計、施工、維持保全等(以下この号において「設計等」という。)に要する費用の額以上の額の削減を保証して、当該設計等を行う事業をいう。」とされている。「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制のため実行すべき措置について定める計画(政府実行計画)」(平成 19 年3月
30 日閣議決定)においても、「ESCO事業導入のフィージビリティ・スタディを実施し、可能な限り幅広く導入する」としているところである。15
ESCO事業は、施設管理者において新たな改修資金を必要としない省エネルギー推進方法として注目されている。このような状況を踏まえ、国等の機関がESCO事業を推進することは、環境への負荷の低減を図るとともに、環境と両立する新しい経済づくりに役立つことが期待されるものである。
なお、環境配慮契約法第7条の規定により国のESCO事業の契約に当たっては、10 箇年度以内の債務負担が可能となったところである。
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、発注者が具体的にESCO事業に係る契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
本解説資料は、省エネルギー改修事業に係る契約に当たっての考え方や具体的な内容、実際の事務手続等について説明したものであり、国土交通省の「官庁施設のESCO事業実施マニュアル」16及び(財)省エネルギーセンターの「ESCO導入のてびき(自治体向け)」
17をもとに、作成したものである。
14 本資料における庁舎とは、宿舎以外の建築物とする。
15 参考:「政府実行計画」(平成 19 年3月 30 日閣議決定)
2 建築物の建築、管理等に当たっての配慮
(2) 既存の建築物における省エネルギー対策の徹底
② ESCO事業導入のフィージビリティ・スタディを実施し、可能な限り幅広く導入する。
16 「官庁施設のESCO事業実施マニュアル」(平成 18 年 3 月):国土交通省官庁営繕部ホームページ
xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxx/xxxxx.xxx
17 「ESCO導入のてびき(自治体向け)」(平成 18 年 8 月):(財)省エネルギーセンターホームページ
なお、本解説資料に示す内容は参考例であり、企画立案、発注等は諸条件を踏まえて適切に対応することが必要である。
1-3 ESCO事業の概要
(1)ESCO事業の概要
ESCO事業は、設計、施工、及び保守・運転管理等を含む複数年のサービスを提供するものであり、事業費の支払いに当たっては、定期的に省エネルギー効果の計測・検証を行い、保証された効果を確認することにより契約された額を毎年度支払うこととなる。
なお、更新時期を迎えた設備機器がある場合は、設備機器の更新を条件としたESCO事業(設備更新型ESCO事業※1)を行うことができる。
ESCO事業総事業費
設備更新費※2
ESCO 前の光熱水費から削減が保証
ESCO事業者の経費
返済分
光熱水費
+
維持保全に係る 費用
改
修前
改修後
ESCO
前
ESCO
期間中
ESCO
終了後
通常の設備改修の場合
設備更新型ESCO事業の場合
図Ⅳ-1-1 通常の設備改修と設備更新型ESCO事業についての概念図
※1 条件とした設備の更新に要する費用は、環境配慮契約法第5条第2項第3号でいう「維持保全等」及び「電気、燃料等」に係る費用に含まれる。
※2 条件とした設備の更新に要する費用は、一括払い。
(2)契約に関する留意事項
① 一括契約について
ESCO事業の契約は、設計業務、施工(設備システムなどの改修)及び維持管理業務等を一括として締結するものであるため、事業の全てを一社で実施することは少なく、複
xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxx/xxxxx/00/xxxxx.xxxx
数の企業から構成されるコンソーシアム等と契約を結ぶことが一般的である。
国等及び地方公共団体においては、コンソーシアム等と契約を結ぶ際の制度として、以下のように整理された設計・施工一括発注方式が導入されているところ18。ESCO事業においても、設計・施工一括発注方式の整理を準用し、コンソーシアムの各構成員の責任を明確にする必要がある。
[契約の性格]
❑ 設計は準委託契約(ただし、詳細設計は請負的性格が強い)
❑ 施工は請負契約
❑ 契約は設計の部分と施工の部分からなる一本の契約(価格は設計と施工それぞれに定める)
[企業連合の性格]
❑ 建設コンサルタントは設計の責任を負い施工に関する連帯責任を負わないことを、建設会社は施工の責任を負い設計に関する連帯責任を負わないことを明記する。
[瑕疵責任の考え方]
❑ 発注者は自らの指示による瑕疵については責任を負う。
❑ それ以外の瑕疵については、コンソーシアムの構成員のいずれかの瑕疵であり、設計の瑕疵については建設コンサルタントが、施工の瑕疵については建設会社が負う。
② 政府調達に関する協定
ESCO事業の契約は、設備改修、維持管理及び運用等を対象とするものであることから、「政府調達に関する協定」(平成 7 年条約第 23 号)が適用される調達の対象となるサ
ービス(「サービス」の適用範囲は、政府調達協定付属書Ⅰ付表 4 に特定されており、E SCO事業に直接・間接に関連すると考えられるサービスの例としては、建設工事、建設のためのサービス、エンジニアリング・サービスその他の技術的サービス19が考えられる)及び対象外のサービスの双方を包含する混合的な契約になる可能性がある。そのため、E SCO事業の実施に当たっては、省エネルギー診断の結果を踏まえて、いずれのサービスに該当するかを判断する必要がある。
18 中央建設業審議会ワーキンググループ第二次中間とりまとめ」(平成 19 年 3 月 15 日)
19 建設サービスに関連する建築のためのサービス、エンジニアリング・サービスその他の技術的サービスに限る。ただし、独立して調達される場合の次のサービスを除く。
・建築設計サービスの実施設計サービス
・契約管理サービス
・基礎及び建築構造物の建設のためのエンジニアリングデザイン・サービス、建築物の機械及び電気の設備のためのエンジニアリングデザイン・サービス又は土木建設工事のためのエンジニアリングデザイン・サービスのうちいずれかの実施設計、仕様書の作成及び費用の見積りの一又はこれらの組合わせからなる設計サービス
・建設及び設置工事段階におけるその他のエンジニアリングデザイン・サービス
③ 契約方式
ESCO事業の契約方式には、表Ⅳ-1-1 に示す2つの方式がある。なお、これら2つの方式を1つにまとめた形で契約した事例もある。20
表Ⅳ-1-1 ESCO事業の契約方式の比較
契約方式 | 特 徴 |
ギャランティード・セイビングス契約 | ・国が初期投資(設計・施工)に係る資金調達を行う。 ・国はESCO事業者と光熱費等の削減保証を行うためのパフォーマンス契約を結ぶ。 ・初期投資年度の予算支出が突出する。 |
シェアード・セイビングス契約 | ・ESCO事業者が初期投資を含め必要な資金調達を行う。 ・国はESCO事業者と光熱費等の削減保証を行うためのパフォーマンス契約を結び、改修等の費用の対価を分割で支払う。 ・契約期間内で予算支出の平準化が可能である。 |
20 公立大学法人北九州市立大学において実施されたESCO事業は、ギャランティード・セイビングス契約及びシェアード・セイビングス契約をまとめた形の事例である。
2.導入計画
2-1 ESCO事業の導入フロー(計画段階)
ESCO事業の計画段階の概略のフローは図Ⅳ-2-1 のとおりであるが、ESCO事業の範囲又は事業者選定方式(総合評価落札方式又はプロポーザル方式)によって、予算化の手続等が異なるため、計画段階において事業の全体を詳細に検討することが重要である。
既存施設の実態把握
ESCO事業導入可能性判断
簡易な診断
予算化の手続
ESCO事業実施の適否
詳細な診断
長期供用計画の作成
図Ⅳ-2-1 ESCO事業の導入フロー(計画段階)
ESCO事業導入の検討に当たっては、まず既存施設の実態把握が必要である。そのため、以下に示す項目等を調査、整理を行うことが望ましい。
[調査項目]
❑ 建物概要
❑ 設備概要
❑ 施設の運用状況
❑ 過去3箇年のエネルギー種別ごとの消費量及び水の消費量
❑ 設備の運転状況
❑ 改修履歴、改修計画予定
[診断方法]
❑ 設計図書又は完成図を基に、現状を把握する。
❑ 省エネルギー技術をリストアップする。
❑ リストアップした省エネルギー技術に関する必要なデータ整理し、エネルギー消費傾向を把握する。
❑ リストアップした省エネルギー技術に関するヒアリング項目を整理し、必要に応
じ現地調査を行う。
❑ 省エネルギー技術ごとにおおよその費用対効果を算出する。
なお、国土交通省がグリーン診断を実施した官庁施設においては、各施設のグリーン診断結果を分析することで、改修施設の実態のおおよその把握が可能である。
また、平成 19 年 3 月 30 日の地球温暖化対策推進本部幹事会申合せにおいて、延床面積が 5,000m2 以上のもので建築年数が 10 年以上経過している国の機関の建物については早急に簡易ESCO診断を行うことが申し合わされている。
2-2 長期供用計画の作成
公共機関においては、行政改革の中で今後も効率化が推進され組織の再編等が活発に行われていく可能性がある。
ESCO事業は長期にわたる事業であるため、ESCO事業の実施に当たっては、組織変更や事業の見直し等によるリスクについても留意する必要がある。
このため、当該施設の長期的視点に立った運用のための計画に加え、周辺の他の国有施設全体の運用計画の中で、適切な当該施設の供用計画(長期供用計画)を立案する必要がある。
2-3 ESCO事業導入可能性判断
エネルギー多消費傾向が見られる施設から、xx、ESCO事業の導入可能性判断を行うことが望ましい。
国の機関にあっては簡易な診断の結果を基に、xx、ESCO事業の導入可能性判断を行うこと。
(1)省エネルギー技術の精査
当該施設への導入が見込めそうな省エネルギー技術について、次の①及び②に従いESC O事業への採用の可能性を検討する。
① 運用時に計測・検証が可能な技術であること
計測・検証が著しく困難なもの以外をすべて抽出する。計測・検証方法については、「3
-3(3)計測・検証方法」による。この際、他の改修計画がある場合は、これが実施された時の省エネルギー効果への影響についても可能な限り考慮する。
② 費用対効果があること
①により抽出された省エネルギー技術ごとに、それぞれ光熱水費削減額、改修工事費、投資回収年数等を算出し、費用対効果のあるものを採用の可能性が高い技術とする。
(2)導入可能性判断
「(1)①」により抽出された技術のうち、「(1)②」により採用の可能性が高いとし
た技術を中心に集約し、さらに次の条件を満たす場合は、国等の機関にあってはESCO事業の導入可能性を検討する。
①建物全体のエネルギー消費量が一定割合以上削減されること
②ESCO事業としてのふさわしい事業規模が確保されること
③集約した技術全体の改修工事費を適宜想定した事業期間内の光熱水費削減額・設備の単純更新に係る費用で賄えること
④その他、施設ごとに必要とされる与条件を総合的に判断し、事業化が適切であること
2-4 ESCO事業実施の適否
導入可能性判断の結果を受けて、事業実施の適否について判断するが、国の機関にあっては、ESCO事業導入のフィージビリティ・スタディを実施する。
(1)フィージビリティ•スタディ
国の機関にあっては、可能な限り幅広くESCO事業を導入するため、導入の可能性のある施設に対して、ESCO事業の規模(事業実施にかかる総費用)、効果の計測検証方法、 ESCO事業実施にかかる与条件等について適切に整理、検討し、民間の優れた事業提案を極力幅広く受け入れらよう与条件整理を行うことを目的とした、フィージビリティ・スタディを実施する21。
フィージビリティ・スタディの実施者は次の要件を全て満たす者の中から適切に選定する。
①建築設計、建築設備設計及び積算業務に精通している者
②グリーン診断あるいは省エネルギー診断を行った実績を有する者
③その他、必要な要件を満たす者
なお、設備更新型ESCO事業を検討する場合は、次に留意する。
・原則として、条件とした設備機器の更新の有無にかかわらずESCO事業として成立すること。
・条件とした設備機器の更新において、事業者の創意工夫の余地があり、かつ、創意工夫による相乗効果により、ESCO事業の効果量(二酸化炭素排出削減量及び光熱水費削減
額)を一定以上向上させる可能性があること。
・条件とした設備機器更新にかかる費用と、それ以外の当該ESCO事業の施工に係る費用とのバランスを十分考慮すること。
(2)ESCO事業の適否の検討
フィージビリティ・スタディの結果を踏まえ、発注者の責任において適切にESCO事業実施の適否を検討する。検討に当たっては、以下の要件を考慮するものとする。
❑ フィージビリティ・スタディで選定された技術に加え、その他当該施設又は設備
21 「政府実行計画」(平成 19 年 3 月 30 日閣議決定)において、「ESCO事業導入のフィージビリティ・スタディを実施し、可能な限り幅広く導入する」こととされている
に関連する技術等について検討し、事業として成立しうる技術を仮決定する。
❑ 仮決定した技術をもとに、事業期間を考慮し、CO2 削減効果が最大となる組み合せにより、事業規模を算定する。
❑ 可能な限り幅広い技術の事業への採用可能性を確保する観点から事業の対象範囲・工種等について適切に配慮すること。
❑ 事業規模の算定に当たっては、次の費用を含める。
・現地調査、設計図書等の作成及びその関連業務に係る費用
・省エネルギー改修工事及びその関連業務に係る費用
・設備の維持管理に係る費用
・計測・検証に係る費用
・金利、その他
❑ 二酸化炭素排出量削減の原単位については地球温暖化対策の推進に関する法律を、光熱水費削減額の原単位については次の例を参考に適切に設定する。その他、必要な項目があれば、これらに準じて適切に設定するものとする。
① 電気
光熱水費削減額の原単位については、単位は[円/kWh]とし、必要な場合は各月別または技術毎に設定する。ただし、各月別の削減量が一定と見込まれる場合は、年間平均単価としてもよい。
② ガス
光熱水費削減額の原単位については、単位は[円/Nm3]とし、一般用と空調用を設定する。また、空調用については、必要な場合は季節ごとに設定する。
③ 上下水
光熱水費削減額の原単位については、単位は[円/m3]とし、上水十下水の削減額として設定する。
検討の結果、ESCO事業として成立し、かつ、ESCO事業としてふさわしい事業規模が確保される場合は、ESCO事業の導入が適当であると判断する。
また、管理官署が異なる複数の施設を一つのESCO事業とする可能性についても検討する。
階において、ESCO事業への入札の可否に関する条件を明確に示すことが必要である。
その場合、診断等の公募段
なお、ESCO事業実施の適否を判断した後にESCOの導入に進む場合には、公募に際して診断等を実施した事業者が有利にならないように、診断等の内容の公表に努め、ESC O事業の公募における情報のxx性に十分注意を払う。xx性が確保できない場合には、診断等を実施した事業者をESCO導入事業の入札から排除する。
2-5 予算化の手続
(1)事業スキームの整理
国の機関においては、予算要求に当たって、ESCO事業導入の検討結果を踏まえ、ES CO事業を実施する際の事業スキームを整理する必要がある。整理すべき事項は、概ね次のとおりである。
①契約方式
②事業方式
③事業期間
④事業スケジュール
⑤官民のリスク分担
⑥業績監視
⑦予算種別
なお、上記項目の整理に当たっては、次を考慮する。
① 契約方式
ESCO事業の契約方式には、ギャランティード・セイビングス契約及びシェアード・セイビングス契約があり、それぞれの特徴を考慮の上、方式を選択する。
② 事業方式
事業方式には、BTO(Build-Transfer-Operate)方式及びBOT(Build-Operate-Transfer)方式があり、それぞれの特徴を考慮の上、方式を選択する。
なお、国が実施している「経済産業省総合庁舎ESCO実証事業」(平成 17 年 2 月実施)においては、BTO方式を採用している。
表Ⅳ-2-2 事業方式の比較
事業方式 | 特 徴 |
BTO方式 | ・設備等の完成後、所有権を国に移転する。 ・国が設備等を所有するので、設備等の所有に伴う税金の負担は事業者に生じない。 |
BOT方式 | ・事業の終了後、所有権を国に移転する。 ・事業者が設備等を所有するので、設備等の所有に伴う税金の負担が事業者に生じる。 ・国が所有する施設において、一部設備等を事業者が所有すること になるので、管理が複雑になる可能性がある。 |
③ 事業期間
ESCO事業の事業規模に基づき、10 箇年度を限度して事業期間を設定する。
④ 事業スケジュール
契約、設計・建設及び維持管理をどの時期に行うかにより、予算の年度配分額に影響が
出る。このため、予算要求段階に事業スケジュールを整理する。
⑤ 官民のリスク分担
官民のリスク分担により、事業者が負担するリスク対策費を、事業費に積む必要がある項目を整理する。
⑥ 業績監視
業績監視を行う際に、財務状況等の監視のために、アドバイザーと契約する必要がないかを整理し、必要な場合はその予算確保に留意する。
⑦ 予算種別
ESCO事業を実施する際の予算の種別は、施設整備費、施設施工庁費等が考えられるが、調整を要するので留意する。
(2)予算要求項目
ESCO事業の実施に当たっては、設計、施工、維持管理業務等を一括で行う複数年契約となることを踏まえて予算要求を行う。
ESCO事業の対象とするべき項目については、施設の修繕計画との調整を図り、改修内容の重複等が起こらないようする。なお、主な項目は、次のとおり。
❑ 現地調査、設計図書等の作成及びその関連業務に係る費用
❑ 省エネルギー改修工事及びその関連業務に係る費用
❑ 設備の維持管理に係る費用
❑ 計測・検証に係る費用
❑ 金利
❑ その他
(3)設備更新型ESCO事業における予算化に係る留意点
設備更新型ESCO事業とする場合、以下の点に注意する必要がある。
❑ ESCO事業期間中に発生する費用は、サービスへの対価であり、設備更新費とは予算項目が異なることがあるため、財務省担当部局と調整する必要がある。
❑ 予算化された設備更新費と予定価格の差額により、予算に残額が発生した場合、その残額を設備更新費以外に流用することは原則認められない。22
22 「財政法」(昭和 22 年 3 月 31 日法律第 34 号)第 33 条 2 項:各省各庁の長は、各自の経費の金額については、財務大臣の承認を経なければ、目の間において、彼此流用することができない。
予定
されている設備更新費
組み合わせて大きな事業に
ESCO事業者の経費
返済分
光熱水費
+
維持保全に係る 費用
光熱水費
+
維持保全に係る 費用
改修前
改修後
ESCO
前
ESCO
期間中
ESCO
終了後
図Ⅳ-2-1 予定されている設備更新と他の省エネルギー技術を組み合わせた場合の経費のイメージ
(4)その他
通常、事業を実施する場合は、原則として予算要求時と同じ工事種目で事業を実施する必要がある。このため、ESCO事業の実施において、予算要求時段階と事業実施段階での工事種目が異なることが想定される場合は、財務省担当部局と協議が必要となる場合がある。
2-6 プロポーザル方式による導入計画の留意点
(1)ESCO事業の適否の検討
一般には、プロポーザル方式により事業者を選定する場合は、詳細な省エネルギー診断及び最終的なESCO事業実施の適否の検討については、事業提案を行った応募者の中から、優先交渉権者を決定した後に、優先交渉権者が行うことになる。
(2)プロポーザル方式における予算化の手続
ESCO事業者をプロポーザル方式で選定する場合であっても、整理すべき事業スキームや予算要求項目は前述「2-5」と基本的に同様であるが、次の点に留意する。
① 予算項目
事業者選定前に予算要求を行う場合にあっては、予算項目は、特定の手法に偏ったものとならないように十分配慮し、事業者の創意工夫の余地を適切に確保すること。
② 予算化スケジュール
技術提案の募集を行う前に、事業者の創意工夫を反映できるように的確な予算化のスケ
ジュールを検討すると共に、予算化上対応が困難な事項については、提案募集時に与条件として、提案者に提示を行うこと。
なお、地方公共団体においては事前に提案公募に係る経費のみを予算化した上で、最優秀提案に基づく金額によって予算額を設定した事例23もある。
ESCO事業公募
優先交渉者権決定
詳細診断契約
詳細診断検収
ESCO事業予算化
予算案議会承認
(補助金申請)
ESCO契約
着 工
工事終了
ESCOサービス開始
3年目
事業計画
詳細診断
予算要求 契約準備
工 事
ESCOサービス
2年目
初年度
地方公共団体
図Ⅳ-2-2 地方公共団体のESCO導入(プロポーザル方式)の予算化スケジュール例
2-7 その他留意点
フィージビリティ・スタディの検討結果は事業の適否及びその後の事業の要件等に大きな影響を与えるため、継続的にその精度向上に努めることが望ましい。
23 例えば、大阪府立羽曳野病院ESCO事業では、大阪府が、最優秀提案を行った提案者と詳細協議した上で予定価格を作成し、予算化している。
3.事業者選定・契約
3-1 ESCO事業の導入フロー(事業者選定・契約段階)
(1)入札契約方式について
「省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項」では、「ESCO事業者の決定に当たっては、価格のみならず、その施設の設備システム等に最も適し、かつ、創意工夫を最大限に取り込む技術提案その他の要素について総合的に評価を行うこと」とされている。当該基本的事項に則る方式として、総合評価落札方式とプロポーザル方式が考えられる。
これらの方式については、表Ⅳ-3-1 のような特徴があり、法令等の制約の範囲内で、適切な方式を選択する。
表Ⅳ-3-1 入札契約方式の比較
契約方式 | 概要 | メリット | デメリット |
総合評価落札方式 | ○技術提案とともに公示価格を含めて事業者を選定 | ○技術提案内容と価格との関係における透明性が確保 ○発注者が想定する省エネルギー効果等を上回る優れた技術提案に対し、価格を踏まえた評価が可能 | ○評価の低い提案でも低価格の事業者が選定されるおそれがあり、その対策が必要 ○提案時の技術提案の内容を原則変更できないので、公募時に詳細な調査・ 診断結果が必要 |
プロポーザル方式 | ○技術提案に基づき、事業者を選定 | ○最も省エネルギー効果が期待できる事業の提案が可能 | ○事業化のための予算が内部の事務費であるため、内部の合意形成に時間がかかる ○事業者特定段階で提案内容の実施が確約されてい ない |
なお、プロポーザル方式は、技術提案を公募して、提出された技術提案書に基づき事業者を選定し、随意契約を行う方式であるが、採用に当たっては以下の整理が必要である。
❑ 随意契約の理由
🡺 事業内容は、施工の占める割合が最も大きいが、技術資料を作成する者が施工を行うのに最も適している、という理由に関する整理
❑ 技術提案書の時点で事業内容が確定していないなどの事業者選定上の問題
🡺 不確定な技術提案書により事業者を決定すると、適切な提案をした者より、結果として実施が困難な提案をした者を選定してしまうおそれがあることに対する整理
(2)総合評価落札方式によるESCO事業の導入フロー例
x 約
契約書の作成
事業者決定
入 札
提案内容等の審査
ヒアリングの実施
技術提案書の受領
質疑回答
現地見学等
公 告
技術資料作成要領の作成
予定価格の算定
与条件の設定
審査内容の設定
参加要件の設定
・・・ 3-2(1) 参照
入札準備
・・・ 3-2(2) 参照
・・・ 3-3 参照
・・ ・3-4 参照
・・・ 3-6 参照
入札公告・提案審査
・・・ 3-7 参照
・・・ 3-8 参照
事業者決定
・・・ 3-9 参照
x 約
・・・ 3-10 参照
図Ⅳ-3-1 総合評価落札方式による、ESCO事業の導入フロー例(事業者選定・契約段階)
(3)プロポーザル方式によるESCO事業の導入フロー例
①募集要項及び資料配布
質問受付
②説明・質問回答書配布
③参加表明書及び資格審査書類の受付
④資格審査結果及び提案要請書の送付
図面等資料の配布
⑤現場ウォークスルー調査
⑥ESCO提案書の受付
⑦優先交渉権者の選定、審査講評、結果通
⑧詳細診断・契約書作成協議
ESCO契約書締結
図Ⅳ-3-2 プロポーザル方式による、ESCO事業の導入フロー例(事業者選定・契約段階)
※募集要項及び資料配布以降の手順について
① 募集要項の配布と質問等の受付
ESCO事業提案を募集するに当たり、事業概要及びその他応募条件等を示す募集要項を作成し、関連資料とともに配布する。
② 説明・質問回答書配布
応募を検討している事業者からの募集要項に関する疑問点や質問を受け付け、説明をし、質問へ回答する。
③ 参加表明書及び資格審査書類の受付
参加を希望する事業者からの参加表明書及び応募条件や資格要件の確認に必要な書
類等を受付け、応募者の資格審査を行う。
④ 資格審査結果及び提案要請書の送付
資格審査結果及び提案要請書を送付する。また、次項に示す資料等を配布する。
(参考)主な配布資料
❑ 施設概要
❑ 過去3年間の月別光熱水費(電気、ガス、油、水道)及び使用量、供給約款形態
❑ 建物外観図(平面図、立面図)
❑ 各階平面図(ダクト図、照明機器配置図)
❑ 系統図(電気、衛生、空調)
❑ 完成図(電気、衛生、空調)
❑ 単線結線図
❑ 機械室配置図(熱源機械室、空調機械室)
❑ 機器リスト
❑ 設備稼働状況データ
❑ 事前省エネルギー診断調査資料 など
⑤ 現場ウォークスルー調査
参加事業者が提案書作成のために最低限必要な1日程度の現地調査を実施する。
⑥ ESCO提案書の受付
30(実労働)日間程度を提案書作成期間として設け、ESCO提案書を受け付ける。
⑦ 優先交渉権者の選定、審査講評、結果通知
予め評価委員会等の承認を経た提案書審査評価xxに従い、最優秀の提案を行ったE SCO事業者を選定し、その後速やかに審査の講評や事業者への結果の通知を行う。
⑧ 詳細診断・契約書作成協議
詳細診断に基づいて包括的エネルギー管理書等を作成し、契約書作成に係る詳細協議に入る。
3-2 事業者の応募に関する事項の設定
(1)ESCO事業者の役割と求められる要件
事業者の応募に関しては、広く提案を求めるために、入札参加希望者が不当に参加を制限されることのないようxxに配慮することが重要である。
一方、施設が必要とするサービス水準を確保するためには、競争参加者に対し、事業実施に必要な業許可及び類似の経験についての要件設定を行う必要がある。
ESCO事業を実施する事業者は、設計、工事及び導入した設備等の維持管理業務に加え、資金調達や事業計画の立案等の包括的なサービスを提供することから、一社で全てを実施する他に、代表企業と構成企業による企業グループ(コンソーシアム)を構成することや、特別目的会社(SPC)等の特定のESCO事業を目的とした法人を構成することが考えられる。ESCO事業のように小規模なプロジェクトでは、特別目的会社(SPC)等は一般的
ではなく、通常、企業グループで実施される。
したがって、各役割及び各役割に対する要件の設定は以下を参考として設定し、必要に応じ下記の役割以外についても適宜追加すること。
① 設計役割
設計役割は、設計業務の技術上の管理及び統括に関する業務を担う。
設計役割には、建築コンサルタントとしての能力が求められるため、通常の設計委託業務と同等の要件を設定することが考えられる。
② 工事役割
工事役割は、ESCO事業の実施に必要な、施設の設備システム等の改修工事を担う。工事役割には、品質の確保のために、対象となる改修部位等の規模及び技術的難易度に 応じた技術力が求められる。このため、工事実績(建物用途、施設規模、工事種別)、配
置予定技術者の工事経験等、必要な要件を設定する。
なお、ESCO事業の事業費は、省エネルギー効果による光熱水費等の削減額で事業費をまかなうことから、対象となる設備システム等全体の新設(あるいは全面的な更新)に要する費用に比べ少額となる。このため、場合によっては、単純に改修工事に要する金額に応じた発注標準に見合う工事業者のみでなく、上位の発注標準に位置する工事業者にも参加資格を与えることが考えられる。
③ 維持管理役割
導入した設備に係る維持管理の他、計測・検証に必要な業務等を担う。このため「役務の提供等」の資格を要件として設定することが考えられる。
なお、ESCO事業実施の適否を判断した後にESCOの導入に進む場合には、公募に際して診断等を実施した事業者が有利にならないように、診断等の内容の公表に努め、ESC O事業の公募における情報のxx性に十分注意を払う。xx性が確保できない場合には、診断等を実施した事業者をESCO導入事業の入札から排除する。
この他、省エネルギー保証を含む事業全体の調整や資金調達のみを担う役割を設定する場合は、不良不適格業者の参入排除に十分に留意する必要がある。
(2)総合評価落札方式における事業提案の審査内容の設定
総合評価落札方式により事業者を決定するに当たっては、提案された技術についての採否の判定及び当該施設に適した技術について評価を行うための審査が必要になる。
このため、当該施設に求めている改修内容を想定し、提案の採否の判断及び優秀な提案における採点基準及び加算点を事前に決定しておく。
事業のxx性の観点から応募者の提出する技術資料についての審査項目及び審査方法につ
いては、公表しておくことが重要である。
なお、提案された技術が、「2-4」において事業規模を算定するためにフィージビリテ
満たす範囲内であれば、適切に評価を行う。
ィ・スタディの結果を踏まえ選定された技術と異なる場合であっても、設定された与条件を
〔必須事項の審査の例〕
① 提案技術の実現可能性
すでに当該施設に採用されているものと同様の技術が提案される場合もある。このため、提案技術の内容を十分に把握し、実現可能性の分析を行い、実現可能性のない技術は不採用とする。
② 計測・検証の可否
ESCOサービス料の支払いに当たっては、削減効果の実績値に基づき支払額が決定されるため、計測・検証を確実に行うことが必須条件となる。
一般に、施設全体のエネルギー消費量からの削減効果が大きい場合は、ベースラインを用いて施設全体の使用量から把握できる場合もあるが、事務庁舎などの業務特性からエネルギー使用量が少ない傾向のある施設は、削減効果を施設全体のエネルギー使用量全体から把握することが困難な場合も多い。
このため、技術資料においては導入する省エネルギー技術の計測・検証方法の記載を求め、審査時において提案された方法により検証可能か判断し、採否を決定することが重要である。例えば、効果量を計算のみにより推計するものなど、計測できない技術は不採用とする。
なお、ベースラインを用いて全体量から把握する場合もベースラインの補正方法などを審査する必要がある。
③ 光熱水費削減額及び二酸化炭素排出削減量の確認
光熱水費削減額及び二酸化炭素排出の削減量が、入札条件で設定した最低ラインを超えているかを確認する。なお、必要に応じ削減量等の算定根拠をヒアリング等で確認する。
〔加算対象の例〕
① 二酸化炭素排出量の削減
省エネルギー技術においては、光熱水費の削減と二酸化炭素の削減は単純に比例しないため、特に二酸化炭素の削減を重点的に評価する場合は二酸化炭素排出量について加点評価を行う。
② 長期耐用性
ESCO事業により導入した機器等は、事業期間終了後も削減効果があることを考慮すると、長寿命の機器の方が発注者にとって有利となる。このため、長期耐用性の観点から評価を行い、長寿命の機器を導入しているものを高く評価する。
③ 既存設備に対する影響
ESCO事業により導入される技術は、システムの一部のみ更新される場合や機器の追加となる場合がある(図Ⅳ-3-3)。このため、導入した機器が、更新していない部分に与える影響を考慮し、他の機器の故障を引き起こすおそれの無い技術や故障時に責任分担が明確なものを高く評価する。
既存機器1 | 追加機器 | 既存機器2 | |||
※既存機器2の故障時に原因が不明確となる。
図Ⅳ-3-3 既存設備に対する影響例
④ 保全性能の確保
提案技術の維持管理は、事業期間中はESCO事業者が行うものの、事業期間終了後には施設管理者(または維持管理等業務を外注している場合はその受注者)が行うこととなる。このため、提案技術に必要な維持管理が施設管理者にとって過度な負担とならないかなどの長期的視点から評価し、負担の少ないものは高く評価する。
⑤ 事業者の構成
各役割の業務が明確となる体制を組んでいる事業者を高く評価する。
(3)総合評価落札方式における事業者の選定方法
総合評価落札方式は、応募者から提出される技術資料により提案内容の評価を行い、入札価格が予定価格の制限の範囲内にあるもののうち、評価値の最も高いものを落札者とする方式である。評価値の算出方法としては、加算方式と除算方式があるが、事業内容等を考慮し適切に選定する。
なお、技術評価点の検討に当たっては、技術提案内容が適切に評価される必要があり、入札価格の評価のみが特に高くなることの無いよう配慮すること。
国の機関においては、評価の方法について財務省担当部局との個別協議が必要になる。 ESCO事業は、自由な提案を求めるため、省エネルギー技術の想定により事業に要する
費用が変動する。ただし、総合評価落札方式においては予定価格以上の入札を行った者は欠格となるため、標準案の提示などにより過度な提案がされないように配慮する必要がある。
① 除算方式
価格以外の要素を数値化した技術評価点を入札価格によって除算することにより評価する方式(評価値=技術評価点÷入札価格)を除算方式といい(図Ⅳ-3-4)、技術評価点は基礎点(要求要件を満たしている場合に与えられる得点)及び加算点(必須とする項目以外について与えられる得点)からなる。
この方式においては、より効果的な事業を行なう技術提案が高く評価されるように、加算対象となる項目を十分検討し、適切に加算点の配分を設定することが重要となる。
なお、等評価値線(技術評価点を入札価格で除した値がなす直線)は、原点と各点を結ぶ放射状の直線であり、この傾きが大きいものほど評価値が高い。
●D
●B
●A
●C
評価値大
最低限の要求水準を満たさない領域
入札価格が予定価格の範囲外の領域
基礎点
基礎点+加算点
予定価格 入札価格 B(落札者)>A>C(欠格D)
図Ⅳ-3-4 除算方式のイメージ
② 加算方式
価格以外の要素を数値化した技術評価点と、入札価格を数値化した価格評価点を加算することにより評価する方式(評価値=技術評価点+価格評価点)を加算方式という(図Ⅳ
-3-5)。
一般的に、価格評価点は入札価格が低いほど大きくなるため、等評価値線(技術評価点と価格評価点を加算した値がなす直線)は右上がりの平行線(傾きは入札価格の数値化の方法により決まる)となり、評価値線が左上にあるものほど評価値が高い。
評価値大
●D
●B
●A ●C 入札価格が予定価格の
範囲外の領域
価格評価点大
技術評価点
予定価格 入札価格 B(落札者)>A>C(欠格D)
図Ⅳ-3-5 加算方式のイメージ
(4)プロポーザル方式における事業者の評価項目
国においては、現段階までプロポーザル方式によってESCO事業者を選定した事例がないため、地方公共団体における評価項目の例を示す。
例を参考にしてプロポーザル方式における評価基準を適宜設定すること。
①事業期間内の利益総額が大きいこと。
②契約期間中の各年の自治体の利益がある程度見込まれること。
③光熱水費削減保証額が高いこと。
④資金調達計画が信頼できること。
⑤契約期間が可能な限り短いこと。
⑥ESCO 事業に係る補助金等の可能性の提案があること。
⑦対象建物全体の省エネルギー率が 0%以上であり、省エネルギー効果が充分にあること。
⑧二酸化炭素排出の削減効果が高い等、地球温暖化対策が考慮されていること。
⑨NOx,SOx,ばいじん、騒音等についての環境性が配慮されていること。
⑩技術・提案に具体性・妥当性があること。
⑪提案に独自性や特殊なノウハウが含まれること。
⑫既設機器の更新に係る改修が考慮されていること。
⑬設備維持管理、計測・検証方法及び運転管理方針の提案に具体性・妥当性があること。
⑭優れた品質管理を行い、期限までに確実に工事を完了し、自治体に ESCO サービスが提供できること。
⑮ESCO契約期間終了後の対応について提案があること。
⑯提案が全体としてバランスが良く優れていること。 なお、④、⑦、⑩に失格規定が設けられている事例もある。
3-3 与条件の設定
(1)施設に要求される水準
ESCO事業では、事業の内容により施設の室内環境の性能が変化することがあるため、事前に要求される性能の水準を与条件として設定する。
室内環境の性能としては、照度、温度、空気環境等が考えられるが、各室の用途に応じて必要な性能を適切に設定し、与条件として明記する。現状を維持するのであれば、現在の施設が有している性能水準を設定し、現状より水準を向上させる必要がある場合には、必要な性能水準を設定する。
その他、各室の使用時間、人員密度、OA機器の配置等、要求される水準を設定する。 なお、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に規定された水準(二酸化炭素
の含有率、温度、相対湿度など)により設定することも考えられる。
また、現在の水準と異なる条件を設定する場合は、計測・検証に係るベースラインが異な
ることになるため、効果の算出・検証方法について、適切に検討しておくこと。
(2)提案対象範囲の設定
提案技術の範囲は、必ずしも「2-5 予算化の手続」で予算要求時に仮定した技術に限定し、設定する必要はない。しかし、通常の工事では、原則として、予算要求時と同じ工種 で事業を実施する必要がある。このため、予算要求時の工種と、事業実施段階での工種が異なることが想定される場合は、財務省担当部局と協議が必要になる場合がある。
提案対象の範囲としては、次の点に注意しながら、事業者の創意工夫々技術力を活かせるように、適切に設定するものとする。
① 改修対象範囲
技術提案が行われても採用できない部分を除いた範囲とし、事前に事業対象外である部分は明記する。
② 提案技術の範囲
事業対象施設の固有の事案を勘案し、事業者が技術提案を行うに当たって前提とすべき諸条件を、必要に応じ明記する。
③ 必須の提案技術
当該施設が特に必要としている技術については、必須項目として設定する。
(3)計測•検証方法
計測・検証方法に関する与条件設定については、計測・検証が確実に行えることが原則であることに留意し、適切に設定する。
また、改修対象範囲毎または提案技術毎に、計測・検証方法を指定する必要がある場合には、次の代表的な4つのオプション(選択肢)を参考に、適切に設定する。ただし、「3-
2(2)事業提案の審査内容の設定」との整合についても留意する。
なお、オプションは省エネルギー対策範囲のエネルギー用途、機器の特性及びかけられるコストを考慮して選択しなければならない。
1)オプションA
省エネルギー対象機器毎のエネルギー消費量の差を算出するのに、設備容量、稼働時間、及び省エネルギー率を乗じて省エネルギー効果を評価する。設備容量の設定は、省エネルギー対策の前後に1回又は短期の実測を行う場合と、メーカーのカタログデータを使用して推定する場合がある。
〔ベースラインの設定例〕
・一定消費電力機器、器具、システムの場合=対策前機器の消費電力×
機器数×稼働時間
2)オプションB
省エネルギー対策前後に、対象機器の出力(能力)、エネルギー消費などを一定期間あるいは長期計測する。
〔ベースラインの設定例〕
・一定消費電力機器、器具、システムの場合=対策前機器の消費電力×
機器数×稼働時間
・負荷連動機器 =相関が強いパラメータを用いた統計解析モデル式
3)オプションC
施設全体のエネルギーまたは系統別エネルギー消費の実測結果、あるいはエネルギー供給会社の料金請求書をもとに統計的処理を行なう。
〔ベースラインの設定例〕
相関が強いパラメータを用いた統計解析モデル式
4)オプションD
空調熱負荷シミュレーター、空調用エネルギー消費シミュレータ一等を使用し、熱負荷又はエネルギー消費を推計して、省エネルギー効果を求める。
(4)光熱水の原単位の設定
光熱水の原単位は、「2-4(2)」と同様に適切に設定する。
3-4 予定価格の算定
国の事業では、会計法により予定価格の範囲内で契約を締結すること24となっており、予算決算及び会計令において予定価格を作成すること25となっているため、採用する入札方法に応じた適正な予定価格を入札前までに作成することが必要である。
予定価格の積算については、予算化された項目に基づき、フィージビリティ・スタディの積算結果を精査する。
24 「会計法」(昭和 22 年 3 月 31 日法律第 34 号)第 29 条の 6 第 1 項
25 「予算決算及び会計令」(昭和 22 年 4 月 30 日勅令第 165 号)第 79 条
3-5 発注スケジュール等
一般競争総合評価落札方式の場合の標準的な発注スケジュール例を図Ⅳ-3-6 に示す。
競争参加資格の内容の審査
技術資料作成要領の審査
入札・契約手続運営委員会
(競争参加資格の決定)
公 告 案 の 検 討
公 告 | |
標準的日数
競争参加資格確認資料、技術資料等の提出期限
技 術 資 料 の x x 説 明現 地 見 学
入札説明書(技術資料作成要領を含む)の交付
公告後速やかに
10 日
30 日
20 日
競争参加資格確認資料の審査
提案内容と評価結果案の審査
技術資料のヒアリング
20 日
入札・契約手続運営委員会 (競争参加資格の有無の決定) | |
競争参加資格の確認結果の通知 | |
7 日※
競争参加資格がないと認めた理由の説明要求 | |
10 日
理由の説明要求に係る回答 | |
1日
質問書の提出期限 | |
5日
質問書に対する回答期限 | |
3日
入 札 | |
※は、土曜日、日曜日、祝日等を含まない
注)本表は会計法に基づいた例であり、PFI法に基づく場合は「官庁施設のPFI事業手続き標準」に準じて実施するものとする
(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxx/xxx.xxx)
図Ⅳ-3-6 一般競争総合評価落札方式の場合の標準的な発注スケジュール例
3-6 技術資料作成要領の作成
技術資料作成要領には、「3-2 事業者の応募に関する事項の設定」及び「3-3 与条件の設定」の内容に加え、次の項目について記載する。
その他、追加項目が必要な場合は、適宜、記載する。
① 全体スケジュール
ESCO事業のサービス期間は、BTOの場合、工事が終了し財産の引渡しを受けた後から開始されるため、事前に引渡し日を明確にする。なお、工事の遅延等により定められた日に引き渡されなかった場合には、サービス期間が短くなるため契約金額の変更等が生じるおそれがある。
② 予想されるリスクに対する責任分担
事前に発生が予想されるリスクに対しては、発注者または事業者のどちらに責任があるのかを明記する。なお、各リスクについては契約時点で契約書として明記されることとなる。
③ 苦情の申立てについて
技術資料作成要領には、応募者の参加資格が認められなかった場合または技術提案が不採用であった場合には、応募者は説明を要求することができることを明記する。
④ 施工の条件
改修工事に当たっては、居ながらの改修になるため事務xxにおける平日の作業は困難となる場合が多い。このため、作業時間等に施工上の制約がある場合には、その条件を明記する。また、施設の改修計画との整合によりシステム一体として改修するなどの条件がある場合は記載する。
⑤ 資料
フィージビリティ・スタディにて調査した事項のうち、技術資料の作成に必要となる、施設概要、平面図、主要機器リスト、エネルギー使用量、実施済改修工事リスト等を資料として添付する。
なお、事業の与条件等の設定根拠についても資料として提示を行うことが望ましい。
3-7 現地見学等
事業者の創意工夫を最大限に活用するには、応募者が施設の状況を十分把握したうえで提案を求めることが必要である。このためには、次の手続きを実施することが有効である。
(1)現地見学
実際の既存設備システムの見学を行うことにより、既存設備システムの把握、改善余地の確認、新設する設備機器の設置場所の確認などが可能となる。
(2)エネルギー使用実績の閲覧
電気、ガス、油、水等の使用量とその詳細データを閲覧し、消費傾向の確認々運用方法の確認などを行うことにより、省エネルギー技術の適否の判断、削減効果の精査などが可能となる。
なお、フィージビリティ・スタディの際に収集した詳細データが古くなってしまった場合等は、必要に応じ、最新のデータを準備する。
(3)過去の工事の完成図の閲覧
過去の工事の完成図を閲覧することにより、既存設備システムの詳細の把握や既存機器の設置時期の把握及び新設する設備機器の設置場所の確認などが可能となる。
なお、これらの手続きを実施した後には、応募者が技術資料を作成するのに十分な日程を確保する必要がある。
3-8 ヒアリングの実施
提出された技術資料についてヒアリングを実施することは、技術資料の内容を審査担当者が十分理解するとともに、正確でxxな評価を行う上で有効である。このため、必要に応じ、技術資料に関してヒアリングを実施するものとする。
ヒアリングは、提出された技術資料の記載内容を変更することはできないが、提出された技術資料だけでは不明な点を補足するために行う。なお、ヒアリングした事項が口約束とならないために、両者で合意した議事録を残すなど、回答された内容を担保することが必要である。
3-9 事業者の評価
(1)提案内容の審査
提出された技術資料について、「3-2 (2)事業提案の審査内容の設定」で設定した内容に従い、提案内容の審査を行う。
提案内容の審査については、ESCO事業の技術について専門的な知見を有する有識者等からなる「ESCO事業有識者委員会」を設置する、入札時VE審査委員会等既存の枠組を活用するなどにより、提案内容の評価を決定する。
なお、工事の総合評価落札方式の場合、技術提案の内容の一部を改善することで、より優れた技術提案となる場合などに、技術提案の審査において、提案者に当該技術提案の改善を求める、または改善を提案する機会を与えることができる仕組みがあるなど、工事内容に応じて、その手続きの仕方が工夫されている。このため、ESCO事業においても有効と思われる手続きについては、積極的にこれを検討することとする。
(2)競争参加資格の確認
提出された技術資料の審査結果を踏まえ、競争参加資格の確認を行う。
なお、競争参加資格の確認結果は書面により通知する。競争参加資格がないと認められた者に、その理由について一定期間以内に説明を求めることを可能とする。
3-10 契約書の作成
(1)契約書に記載する事項
ESCO事業は、設計、工事、維持管理業務などを包括的に実施し、長期間に亘りサービスの提供を行うものである。このため、契約書に記載する内容については、業務の内容を十分踏まえ、業務の各段階において行うべき事項、問題発生時の対応方法などを明らかにしておく必要がある。次に、ESCO事業の契約として、特徴的な主な事項を示す。
① 実施計画書の作成に関すること
ESCO事業の実施体制、保全計画書、運転管理方針、計測・検証計画、ベースラインの設定方法、ベースラインの調整方法などESCO事業期間全体を通してESCOサービスに関する基本的事項を定めるために、実施計画書の策定を義務付けておく。
② 維持管理に関すること
ESCO事業により設置された設備等は、既存の設備等に混在して設置される場合があるので、当該設備等の維持管理に関する責任や当該設備等が第三者に損害を及ぼした場合の責任など、その所在(あるいは分担)を明らかにしておく。
③ 計測・検証方法に関すること
ESCO事業では、計測・検証の結果により、事業者に支払われるESCOサービス料が減額される場合がある。このため、どのような方法により削減効果を計測し、その結果をどのような条件の下で算定、評価するか、あらかじめ明らかにしておく。なお、ESC Oサービスによる削減効果の保証額(あるいは量)は、総合評価落札方式の場合、技術提案書に記載された額(あるいは量)となる。
④ ペナルティに関すること
ESCO事業では、事業者が削減効果の計測・検証を毎年度実施し、保証された削減効果が達成されていない場合、発注者は事業者に対してペナルティを課すことになる。このため、ペナルティの算定方法やその額についてあらかじめ明らかにしておく。また、総合評価落札方式の場合は、事業者の技術提案の評価において、加点した内容についてもペナルティの対象となるので、提案内容を満たさなかった際の処置についてもあらかじめ明らかにしておく。
⑤ 業績の監視に関すること
発注者が行う業績監視について、その方法、時期などについて定めておく。
⑥ 構成員の変更に関すること
構成員の変更の可否および構成員の破産または解散が生じた際の対応について定める。
(2)各段階のリスク分担
リスクとは、事業の実施にあたり、契約の締結の時点ではその影響を正確には想定できない不確実性のある事由によって、損失が発生する可能性をいう。
リスク分担の設定に当たっては、一方的に民間事業者に過度な負担を求めることのないよう適切に設定すること。
ESCO事業に限らず一般的に論じられるリスクとしては、表Ⅳ-3-2 に示すものがある。これらはESCO事業実施の各段階に共通なリスクである。
表Ⅳ-3-2 各段階に共通なリスク
リスクの種類 | リスクの性質 | リスク分担の考え方 |
制度関連リスク | 税制を含む法令の変更や許認可の取得などの制度に関わる要因に関して想定されるリスク | ・民間事業者の努力によって回避または軽減することが不可能であるため、民間事業者には負担が困難な場合が多いことを考慮 ・事業期間中に発生可能性のあるリスクについては、事前に検討 ・契約時点で想定することが困難なものについて は、協議や補償の可能性を示す記述を盛り込む |
経済リスク | 民間事業者の資金調達にかかる金利及び物価(主に光熱水費)の変動リスク | ・金利の設定時期並びに見直しの有無及びその時期の設定により、リスクの負担度合いを考慮 ・発注者側の事由により事業が大幅に遅延し、融資契約の解約等に件う解約手数料が発生する場合等は、遅延可能な期間の期限の設定の有無等に よる条件変更の可能性等も考慮し検討 |
債務不履行リスク | 起因事由を分類項とするリスク | ・起因者によってリスク負担を検討 |
不可抗カリスク | 誰も管理不可能なリスク | ・事業の継続が可能な程度の損害の場合等は、損害拡大の阻止や事業の早期復旧 ・継続に向けて効果的なリスク負担の方法を検討 ・事業の終丁となるような場合等は、お互いに妥当な費用負担や損害の補てんの方法をあらかじめ定める ・不可抗力であっても保険による対処が可能なリ スクもあるため、保険市場における動向を勘案して、適切な負担方法を定める |
事業の適正かつ確実な実施を確保するために、これらの一般的なリスク負担の考え方に基づき、事業実施の各段階について、リスクが顕在化した場合の責任の所在及び対処方法を整理し、契約書に記載する。
① 調査・設計段階に想定されるリスク
リスクが顕在化する原因としては、提案内容の不備、発注者の指示による提案の変更等が考えられる。リスクを最小化する観点から、このリスクは起因者が負担することが望ましい。
調査・設計段階の物価変動リスクには、契約時点以降の物価変動に起因する調査・設計費用の増加等がある。現在の設計業務委託においては、物価変動による業務委託金額の変更は契約書に明記されていないが、契約期間は単年であることが多く、契約期間内の経済リスクは設計業務を受注した者が負担している。
② 施工段階に想定されるリスク
施工段階に関するリスクは、その内容、起因により多岐にわたるが、ESCO事業においては基本的に設計図書どおりの施工をおこなうため、建設工事の請負契約に用いられている公共工事標準請負契約約款におけるリスク分担を参考に検討を進めることが、効率的かつ効果的である。
[施設所有者の事由に帰するリスク]
施設改修については、重要な会議等で改修が行えない場合など、予期せぬ施設の所有者の事由により工事が着手できず要求水準に不適合となった場合は発注者の負担とする。
[施設損傷・第三者への損害リスク]
施設損傷、第三者への損害リスクは、まず発注者から施工に関する特別な指示のない限り、起因性の観点から事業者が負担することが通常と考えられる。なお、従来型の工事同様に保険のxxを義務づけることも一つの方策と考えられる。
[金利変動リスク]
建設期間中の金利変動リスクには、金利の設定時期が大きく影響する。
金利の設定時期は、入札時、契約締結時、着工時、完工時などいくつかの時点が考えられるが、設定時点が後になればなるほど、発注者が完工までの金利の変動リスクを負担することになる。
[物価変動リスク]
建設段階においては物価変動に伴う工事費の増加がリスクとして想定される。当該物価変動リスクの分担方法としては、以下の方法が考えられ、事業期間等を考慮して決定する。
・ 全額事業者の負担とする
・ 一定範囲内の物価変動は事業者の負担とする
③ 維持管理運営段階に想定されるリスク
維持管理運営段階のリスクは、施工段階に比してその発生要因が多岐にわたるとともに、その期間が長期に及び、利用者、管理者、業務従事者など多くの者の関与が想定されるこ
とから、起因者の特定が困難である場合が想定される。このため、起因者の特定が困難な場合を中心に、事前の想定によりいくっかの場合に分類し、その類型ごとに負担方法を定めておくことが重要となる。
[性能に関するリスク]
性能に関するリスクには、要求水準への不適合、瑕疵、性能変更等のリスクxxx、性能及び仕様の決定プロセスに基づいて負担者を決定することが一般的である。
要求水準に対する不適合については、基本的には、起因性及びリスク最小化努力の観点から、仕様を決定し、施工した事業者がリスクを負担することが適切である。ただし、事業期間中の社会状況の変化等に伴う性能変更の場合は、原則として変更を希望する発注者のリスク負担となる。
[設備等の所有に伴うリスク]
設備等の所有に伴うリスクは、基本的に設備等の所有者の負担とする。
[施設損傷・第三者xxxx]
施設損傷のリスクにおいて起因者が明確である場合は、起因者が負担することが原則である。第三者による施設損傷等については、求償措置をとる者のリスクとすることが適切である。また、不可抗力による場合等求償措置をとることができない場合は、発注者のリスクとすることも考えられるが、施設損傷については保険のxxが可能な場合もあることから、保険でカバー可能な範囲を検討し、そのコストと比較考量した上で最終的な負担方法を決定すること。
[金利変動リスク]
金利変動リスクの検討に当たっては、事業の内容(サービスの継続性・持続性や公共施設等の管理者等、サービスの対価の支払者の信用力等)及び事業スキームの内容(事業の類型、事業期間、事業方式、支払方法、減額措置等)に対する市場の評価と、当該時点での金融の市場動向か大きく影響することに十分留意するとともに、将来における財政負担変動への対応可能性の有無にも配慮すること。
[物価変動リスク]
物価変動リスクの分担方法としては、以下の方法が考えられる。
・ 一定範囲内の物価変動は民間事業者の負担とする
・ 数年後ごとに物価変動指数に連動した見直しを行う
維持管理期間中の物価変動リスクは、長期間となることからその動向の見極めが困難であるため、実施するESCO事業の事業期間を考慮した上でその負担方法を検討すること。
[不可抗カリスク]
不可抗カリスクのうち施設に関するものについては、通常は施設の所有者がその責任を
負うことが一般的である。このため、BTOの場合は、施設の所有者である国が施設に関するリスクを負担することとなるが、BOTの場合は特段の定めがなければ事業者がそのリスクを負担することとなる。
しかし、現実的には事業者にとって管理不可能なリスクであるため、当該リスクを負担することが適切であるか検討する必要がある
④ 事業終了時に想定されるリスク
事業終了時に維持しておくべき施設の性能に係るリスクについては、事業終了後の施設の扱いや大規模改修の発生時期等によって、その負担のあり方が異なる。一般に事業終了後も引き続き同様の使い方が想定される場合には、民間事業者の負担とすることが、合理的である。その際、維持しておくべき施設の範囲や期間、性能の程度を決めておく必要がある。
一方、事業終了後は、使い方が異なるあるいは同様の使い方とする事が必ずしも明確ではないような場合には、国の負担とすることが、合理的と考える。
なお、事業期間終了時に、大規模改修が重なるような場合には、そのリスク負担も同様の考え方とする。さらに、国の負担とする場合には、事業終了時に一時的に改修のための費用が集中することになりかねないことに留意すること。
事業の終了時の手続きに関する諸費用の発生や事業会社の精算に必要な費用は、民間事業者の提案によって異なるため、民間事業者が負担することが望ましい。
4.事業の実施
4-1 監視職員
発注者は事業の実施状況等を確認するため、必要に応じ、契約及びこれに基づき締結される一切の合意に定めるもののうち発注者の権限とされる事項について、その一部を発注者の職員(以下「監視職員」という。)に委任する。この場合、発注者は監視職員の氏名及び委任する事務の範囲その他必要な事項を事業者に通知する。
(1)監視職員の権限
監視職員は、発注者が必要と認めて委任したもののほか、次の権限を有する。
①契約の義務履行に係る事業の実施状況の監視
②契約の履行に関する事業者又は事業者の現場代理人に対する請求、通知、確認、承認又は協議
③事業者が作成及び提出した資料の確認
(2)事業実施における発注者又は監視職員の職務
事業実施における発注者又は監視職員の行う職務のフローを図Ⅳ-4-1 に示す。
事業者実施
ESCO事業契約
発注者実施
実施計画書の策定 設計実施工程表の作成設計業務計画書の作成 設計業務の実施設計業務終了 工事実施工程表及び施工計画書の提出施工 施工の完了 業務計画書の提出運転及び維持管理 計測・検証結果の報告年間業務報告書の提出 契約終了 | 監視職員の設置 確認・検査確認 確認検査確認確認 完工検査承認 確認検査 引き継ぎ |
図Ⅳ-4-1 業務監視に係るフロー
4-2 事業実施計画
(1)実施計画書
事業者は、契約の締結後速々かに、事業関係図書に基づき、事業の実施体制、事業概略工程表、運転管理方針、保全計画書、計測・検証計画、ベースライン及びその計算方法、ベースラインの調整方法等、ESCOサービスに関する基本的事項を定めるために、実施計画書を策定する。
次に実施計画書の記載内容の主な概要を記載する。
① 事業計画
○事業実施体制
・各役割の業務実施体制等
○事業概略工程表
・事業終了までの事業計画の概要(設計・施工スケジュールを含む)
② 総合仮設計画
○総合仮設計画書
・現場代理人、監理技術者、技能士等の通知書
・施工体制台帳
・緊急連絡先等
③ 省エネルギー技術概要
・光熱水費削減予想額及び保証額
・二酸化炭素排出削減予想量及び保証量 等
④ 維持管理等計画
○保全計画書
・ESCO事業対象設備等の点検項目、点検内容、点検周期等
・ESCO事業対象設備等の保守(消耗品等の交換など)等の計画
○運転管理計画
・運転管理体制
・導入した設備等の運転管理に関する計画
・非常時のバックアップ体制
・既存機器の運転管理に関する省エネルギー提案があった場合、当該技術の具体的方法
⑤ 計測・検証計画
・計測方法、計測場所、計測時期、計測器の精度等
・得られたデータから効果量を検証する具体的方法
・ベースラインを用いる場合には、その設定方法及び調整方法等
⑥ その他必要と認められるもの
事業者は、実施計画書の策定を完了したと判断するとき、当該実施計画者を添えて業務完了報告書を発注者に提出する。
発注者は、一定期間以内に、その内容が契約及び事業関係図書に適合するか否かを検査し、事業者に書面で通知する。このとき、当該実施計画書の内容が、契約及び事業関係図書に適合しないと認めるときは、事業者に是正を求めることができる。
4-3 ESCO事業対象部位の設計
(1)設計実施工程表の確認
事業者は、設計実施工程表及び設計業務計画書を発注者に提出する。
発注者は、設計実施工程表及び設計業務計画書の提出を受けた場合、一定期間以内に確認を行う。
(2)設計業務の実施
発注者は、設計業務の着手後、定期又は随時に、当該業務の進捗状況について確認を行う。
(3)設計図書の提出及び検査
事業者は、設計業務を終了したと判断するときは、設計図書その他の関係資料(以下「設計図書等」という。)を添えて、発注者に業務完了報告書を提出する。
発注者は、設計業務完了報告書又は設計図書の受領後、一定期間以内に、その内容が契約及び事業関係図書に適合するか否かを検査し、事業者に書面で通知する。
このとき、発注者は、当該実施計画書の内容が、契約及び事業関係図書に適合しないと認めるときは、事業者に是正を求めることができる。
次に設計図書の主な検査項目を記載する。
① 図 面改設図
・工事仕様書において、使用材料の仕様、設計用標準震度、発生材の処分方法等が適切に記載されているか。
・各階設備等平面図(事業対象フロア)において、事業を行わない部位との取り合い、事業範囲、養生範囲等が適切に記載されているか。
・機器仕様(新設及び改設する機器の名称、仕様、数量)において、設計計算書に基づく適切な記載がされているか。
・各種システム系統図において、事業を行わないシステムに影響を与えるものでないか。
・各平面詳細図・断面図等において、必要な点検スペースが適切に確保されているか。
撤去図
・既存機器等の撤去を行うフロアの平面図において、撤去を行わない機器等に与える影響がないか。
・撤去する機器の名称、仕様、数量、発生材の処理(引渡し・廃棄の別)等が適切に記載されているか。
② 設計計算書等
・各種計算書が適切なものとなっているか。
・各種技術資料の内容が適切なものとなっているか。
・工事種目別積算資料及び内訳書に誤りがないか。
4-4 施工
(1)工事実施工程表
発注者は、事業者が施工に先立ち作成された工事実施工程表の提出を受ける。このとき発注者は、必要に応じて、工事実施工程表の補足として、週間又は月間工程表、工種別工程xxの作成及び提出を求め、施設管理者と工程についての調整を行う。
(2)施工計画書
発注者は、事業者が施工に関する総合的な計画をまとめた総合施工計画書、品質計画、安全計画、搬入計画、試運転計画及び工程の施工の確認を行う段階及び施工の具体的な計画を定めた工種別の施工計画書の提出を受け、使用材料、施工方法、安全対策等が適切に記載されているか確認する。
(3)施工確認
発注者は施工計画書に基づいて次の項目について確認、検査等を行う。
①工事記録・工事写真・打合せ議事録
②工事実施工程表
③施工状況
(4)完工検査
発注者は事業者及び現場代理人立会いの上、完工検査を実施し、設計図書等の通り施工が完了-したと確認したときに完工確認通知書を事業者に交付する。
主な完工検査の内容を次に記載する。
・機器類、配管類、ダクト類、電線類の据付、固定状態
・機器類及びシステムの稼働状態
・騒音、振動の発生状況
・室内環境測定データ、試運転データ
4-5 運転及び維持管理
(1)事業者の報告義務
事業者は、運転及び維持管理期間中において行うESCO事業対象部位の日常点検、定期点検、修理、その他の運転及び維持管理のための作業の内容及び発注者が必要と認めて報告を求めた事項について、遅滞なく発注者に対して報告を行う。
(2)業務計画書の提出及び承認
事業者は、毎年度開始前又は前月末までに実施計画書で定められた運転管理方針及び保全計画書に基づき、当該年度又は月次等の業務計画書を作成し発注者に提出する。
発注者は、事業者から業務計画書の提出を受けたときは、遅滞なく事業者及び施設管理者と協議し承認を行う。また、発注者は、実施計画書で定められた運転管理方針及び保全計画書で定める条件を変更しようとするときは、あらかじめ事業者に対して通知し、事業者と協議しなければならない。
(3)運転管理
事業者は、実施計画書で定められた運転管理方針に基づきESCO事業により設置された設備の運転管理を自らの責任と負担で行う。その運転管理状況について、定期的に発注者に報告する。
また、運転は改修前の室内環境水準を遵守するように行うが、これが守れなくなった場合及び設備の不具合、故障等が発生した場合、速やかに発注者に報告する。
(4)維持管理
事業者は、実施計画書で定められた保全計画書に基づきESCO事業対象部位の維持管理を自らの責任と負担で行い、その維持管理状況について、定期的に発注者に報告する。
(5)発注者の通知義務
発注者は、事業実施期間中、次の事項について事業者に通知する義務を負う。
①発注者が、ESCO事業対象部位の故障又は不具合を発見したときは、速やかに通知。
②当該施設へのエネルギー供給が中断したときは、速やかに通知。
③事業者の改修工事の完了日の属する翌月以降、毎月、当該施設に係る光熱水費の実績をその翌月に通知。
4-6 計測・検証
事業者は、運転及び維持管理中、光熱水費削減額及び二酸化炭素削減量が計画通り守られていることを証明するため、実施計画書で定められた計測・検証計画に基づき、計測・検証を行う。
(1)計測•検証結果の確認
発注者は、事業者が行う対策後の定期的な達成省エネルギー量のレビュー(計画省エネルギー量との差の検証等)から、省エネルギー対策後に機器が正しい運転がされているか、パラメータとした要因以外にエネルギー消費に大きな変動を与える要因に変化がないか確認する。運転や管理に問題があり、保証されたエネルギー削減量等が計画通りに達成されていない場合は、事業者に是正措置を検討させる。
また、発注者は、事業者から報告される計測・検証を行った結果の二酸化炭素削減量や光熱水費削減額の確認を必要に応じて定期的に行う。
(2)年間業務報告書の提出及び検査
事業者は、「業務の監視及び改善要求措置要領」に定めるところにより計測・検証結果を年間業務報告書として取りまとめ、発注者に提出する。
発注者は、年間業務報告書の提出を事業者から受けたときは、一定期間以内に、光熱水費削減額及び二酸化炭素削減量が計画通り守られているか否か検査し、その結果を、事業者に書面で通知する。
4-7 契約終了
(1)維持管理マニュアルの作成及び引き継ぎ
実施された技術提案内容の維持管理・運用は、事業期間中はESCO事業者が行うものの、事業期間終了後には施設管理者(または維持管理等業務を外注している場合はその受注者)が行うので、事業者は、事業終了前に、施設管理者等に維持管理業務を引き継ぐために必要な作業手順、管理項目等をまとめたマニュアルを作成する。
施設管理者等は、当該マニュアルについて、事業者から説明を受ける。
(2)ESCO事業対象部位の確認
契約終了時、発注者は、ESCO事業対象部位の状況を検査し、完工時以降に損傷及び不具合等が発生していないか確認を行う。
Ⅴ.建築物に関する契約に関する基本的事項について
1.背景と意義
1-1 建築物に係る契約における環境配慮の必要性と意義
(1)我が国の二酸化炭素排出の状況
我が国の業務その他部門の二酸化炭素排出量は 1990 年度以降ほぼ一貫して増加を続けている(図Ⅴ-1-1)。2005 年度においては、1990 年度比で 44.6%の大幅な増加となっており、当該部門における実効性の高い対策が極めて重要である。
(百万t-CO2)
エネルギー転換部門産業部門
運輸部門
業務その他部門家庭部門
238
164
500
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05
図Ⅴ-1-1 我が国における部門別エネルギー起源二酸化炭素排出量の推移
出典:温室効果ガスインベントリオフィス
(2)政府における温室効果ガス排出の状況
政府では「政府がその事務及び事業に関し温室効果ガスの排出の抑制のため実行すべき措置について定める計画(政府実行計画)」(平成 19 年 3 月 30 日閣議決定)において、平成
13 年度を基準として、政府の事務及び事業に伴い間接的及び直接的に排出される温室効果ガ
スの平成 22 年度から平成 24 年度までの総排出量の平均の温室効果ガス排出量を平成 13 年度に比べて 8%削減することを目標としたところである。平成 17 年度における政府の事務及び事業に伴い排出された温室効果ガスの総排出量は 1,971 千t-CO2 と平成 13 年度比で 1.2%の減少となっているが、施設におけるエネルギーの総使用量は、13,035TJ と平成 13 年度比で逆に
1.2%の増加となっている。
表Ⅴ-1-1 政府の事務及び事業における温室効果ガス総排出量及びエネルギー総使用量の推移
H13 | H14 | H15 | H16 | H17 | H17/H13 | |
温室効果ガス総排出量(千 t-CO2) | 1,995 | 1,926 | 1,929 | 1,978 | 1,971 | ▲1.2% |
施設のエネルギー総使用量(TJ) | 12,880 | 12,907 | 13,041 | 13,205 | 13,035 | +1.2% |
出典:政府の実行計画の実施状況について(平成 18 年 10 月地球温暖化対策推進本部幹事会)
(kWh/m2)
203.4
203.8
192.3
196.9
174.8
113.5
111.0
115.5
119.0
119.7
107.9
111.9
111.0
104.1
108.0
政府全体本府省
地方支分部局等
200
150
100
50
平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度
図Ⅴ-1-2 事務所の単位面積当たり電気使用量の推移
出典:政府の実行計画の実施状況について(平成 18 年 10 月地球温暖化対策推進本部幹事会)
こうした状況を踏まえ、政府実行計画においては、既存の建築物における省エネルギー対策の徹底とともに、建築物の建築における省エネルギー対策を徹底し、温室効果ガスの排出の削減等に配慮したものとして整備することとしている。
(3)建築物の設計における環境配慮の考え方
図Ⅴ-1-3 に示すように、環境に配慮した設計を行うことにより、建築物(3,000m2 クラスの庁舎の例)の二酸化炭素排出原単位の大幅な削減が可能であるという試算結果もある。建築物は、通常の物品等の購入とは異なり、設計者が発注者の企画意図を的確に把握し、 様々な要求事項を総合的にバランスさせて作成した設計図によって単品生産されるものである。他方、建築物は何十年にわたり長期に供用されるものであるため、設計段階において温室効果ガスの排出の削減等への配慮が不十分である場合は、その負の影響も長期にわたることになる。すなわち、環境保全性能の高い建築物の実現のためには、設計段階において設計者に対し十分な環境配慮を求めることが極めて重要であり、建築物の設計を建築物に係る契
約において基本方針を定める対象とすることとした。
LCCO2(kg-CO2/年㎡)
0 20 40 60 80 100
▲15%
▲10%
▲5%
1990年水準
タイプ1
現行の標準的な仕様相当
タイプ2
設計監理 新営 修繕 改修 運用 維持管理 廃棄
タイプ1から更にグリーン化を図った仕様
図Ⅴ-1-3 建築物の CO2 排出原単位削減効果の試算例
出典:「グリーン庁舎基準及び同解説(官庁施設の環境保全性に関する基準及び同解説)」(社)公共建築協会
建築物における温室効果ガス等の排出の削減を推進するためには、最低限、全ての設計に対し一定の環境保全性能を求め全体の環境保全性を高めるとともに、建築物における環境保全性を一層高めるため、建築又は大規模な改修の場合にあっては、設計者に対し積極的に温室効果ガス等の削減に関する技術提案を求め、環境保全に関する優れた技術力を持つ設計者を積極的に活用することが適切と考えられる。
また、継続的な環境配慮技術の活用を行い、適切に評価をしていくことで、環境に配慮した設計技術の向上が期待される。
このため国等の機関の建築物の建築又は大規模な改修に係る設計を委託する場合には、次の2段階の環境配慮を求めることとし、以下では、その内容及び手続について説明することとする。
⭘ 要求環境保全性能の規定
⇒ 全ての設計業務を発注する際に環境保全性能を求めることにより、全ての設計の環境保全性能を一定の水準まで向上させる
⭘ 優れた環境配慮設計の推奨
⇒ 環境配慮型プロポーザル方式の導入により選定された環境保全に対し優れた創造性、技術力、経験等を有する設計者により、優れた手法を発掘し、建築物の環境保全性能を向上させる
2段階の環境配慮によって建築物の環境保全性能の向上を図る
本解説資料の対象
レベルアップ
環境配慮型プロポーザル方式の導入による技術力向上
→環境配慮型プロポーザル方式を活用することにより、環境保全に対し優れた創造性、技術力、経験等を有する設計者を選定し、優れた手法の発掘と環境配慮設計技術の向上を図り、建築物の環境保全性能の向上を推進する。
ボトムアップ
環境保全性能を求めることによる全ての設計の環境保全性能向上
→全ての建築物で最低限満たすべき水準を規定し、確実に環境と調和の取れた施設整備を推進する。
要求環境保全性能の規定
優れた環境配慮設計の推奨
建築物の環境保全性能
図Ⅴ-1-4 建築物の設計における環境配慮のイメージ
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、建築物に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、発注者が具体的に建築物に係る契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
本解説資料は、建築物の設計業務に係る契約に当たっての考え方や具体的な内容、実際の事務手続等について説明したものである。
なお、本解説資料に示した事例は参考例であり、当該地域の実情等を踏まえ、発注者が適切に対応することが必要である。
2.用語の定義
本解説資料において使用している用語の定義は、以下のとおりである。
建築物
建築物とは、建築基準法上の「建築物」をいう。
🡺 建築基準法第 2 条第 1 号において「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨線橋、プラットホームのxx、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」と定められている。
建築
建築とは、建築基準法上の「建築」をいう。
🡺 建築基準法第 2 条第 13 号において「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう。」と定められている。
大規模な改修
大規模な改修とは、建築基準法上の「大規模の修繕」及び「大規模の模様替」をいう。
🡺 建築基準法第 2 条第 14 号において「大規模の修繕」とは「建築物の主要構造部
の一種以上について行う過半の修繕をいう。」第 15 号において「大規模の模様替」とは「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。」と定められている。
環境保全性能
「官庁施設の環境保全性に関する基準」に準拠することとし、長寿命、適正使用・適正処理、エコマテリアル及び省エネルギー・省資源より構成される環境負荷低減性並びに地域生態系保全及び周辺環境配慮により構成される周辺環境保全性により構成される。
🡺 「3.要求環境保全性能の規定について」を参照
契約図書
「公共建築設計業務委託共通仕様書」(官庁営繕関係統一基準)の定義に従う。
「公共建築設計業務委託共通仕様書」(官庁営繕関係統一基準)より抜粋
1.2 用語の定義
4.「契約図書」とは、契約書及び設計仕様書をいう。
5.「設計仕様書」とは、質問回答書、現場説明書、別冊の図面、特記仕様書及び共通仕様書をいう。
6.「質問回答書」とは、別冊の図面、特記仕様書、共通仕様書及び現場説明書並びに現場説明に関する入札等参加者からの質問書に対して、発注者が回答した書面をいう。
7.「現場説明書」とは、設計業務の入札等に参加する者に対して、発注者が当該設計業務の契約条件を説明するための書面をいう。
8.「別冊の図面」とは、契約に際して発注者が交付した図面及び図面のもとになる計算書等をいう。
9.「特記仕様書」とは、設計業務の実施に関する明細又は特別な事項を定める図書をいう。
10.「共通仕様書」とは、設計業務に共通する事項を定める図書をいう。
プロポーザル方式と設計競技方式(コンペ方式)
プロポーザル方式は、そのプロジェクトにとって最も適切な創造力、技術力、経験などを持つ「設計者(人)」を選ぶ方式。コンペ方式は、最も優れた「設計案」を選定する方式。
両方式は、選定する対象が「設計者(人)」か「設計案」かという明確な違いがある。
🡺 プロポーザル方式については、「4-2 プロポーザル方式の意義」及び「4-
3 プロポーザル方式の適用範囲と配慮すべき事項等」を参照
環境配慮型プロポーザル方式
建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務の発注に当たって、温室効果ガス等の排出の削減に配慮する内容(自然エネルギーの積極的な利用を含む。)をテーマとした技術提案を求め、総合的に最も優れた者を特定するプロポーザル方式。
🡺 「4-1 環境配慮型プロポーザル方式について」を参照
生涯二酸化炭素排出量(LCCO2)
建設・運用・廃棄など建築物のライフサイクルを通じて排出される CO2 の総量をいう。
3.要求環境保全性能の規定について
建築物の設計については、建設地の立地・入居者の使用目的・地域との調和・予算等様々な設計条件を総合的に検討し、それらを高度にバランスさせた状態で取りまとめていくものである。このため、総合的には優れていても環境への負荷が比較的大きな設計となる場合が起こりえる状況にある上に、設計者の考え方によってそのバランスが一様ではなく、バラツキをもっている状況にある。温室効果ガス等の削減は、地球環境に対して極めて重要な課題であり認識も高くなりつつあるが、もっぱら総合性能に着目した自由な競争のみでは温室効果ガスの排出増加を抑えることが困難である。このため、建築物の建築又は大規模な改修の委託を行う際にあっては、最低限必要とする環境保全性能を設計委託段階で指定し、契約要件とすることで、著しく環境保全性能の悪い設計を排除することが必要である。
建築物の環境保全性能に関する規定として、「官庁施設の環境保全性に関する基準」(平成 17 年 3 月 31 日国営環第 7 号)や住宅の用途にあっては「住宅の品質確保の促進等に関す
る法律」(平成 11 年法律第 81 号)に基づく「評価方法基準」(平成 13 年 8 月 14 日国土交
通省告示第 1347 号)があり、これらを参考に建築物の設計業務の環境保全性能に求める最低水準を定めることが考えられる。以下に、各基準の概要を示す。
なお、研究施設及び医療施設等の特殊性のある建築物については、これらの基準に準拠して、環境保全性能に求める最低水準を適切に規定する必要がある。
3-1 官庁施設の環境保全性に関する基準
「官庁施設の環境保全性に関する基準」は「官庁施設の基本的性能基準」(平成 13 年 6 月
26 日国営建第 32 号、国営設第 39 号)に定められる性能のうち環境保全性について定めたものであり、グリーン化に係る性能に関する水準及び技術的事項として、次の5項目について規定している。
❑ 長寿命
❑ 適正使用・適正処理
❑ エコマテリアル
❑ 省エネルギー・省資源(負荷の低減、自然エネルギーの利用、エネルギー・資源の有効活用)
❑ 周辺環境保全
建築物(住宅の用途以外)の設計を委託する場合に契約図書に定める環境保全性能として、これらの5項目の全てを求めるべきかどうかについては、建築物の用途等によって必要とされる要件が異なることから、求める項目を適切に選択することが重要である。
また、次に示すように具体的な検討項目について、契約図書に明確に含めることも考えられる。
❑ 建設地の立地条件を踏まえ、日射や室内外の温度差が低減される建物配置、建物形状(平面形状、断面形状)であること
❑ 居室、廊下やコア等の配置、窓の向きや大きさなどの工夫により、熱負荷を低減させる建築計画であること
❑ 室の用途や地域の環境特性に配慮した上で、半地下や屋根散水等、熱負荷の低減に有効な手法を検討すること
3-2 住宅の評価方法基準
「評価方法基準」(平成 13 年 8 月 14 日国土交通省告示第 1347 号)は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、表示すべき住宅性能に関する基準を定めるものであり、評価の方法の基準(総則)として次の3項目の基準を規定している。
❑ 設計住宅性能評価
❑ 新築住宅に係る建築住宅性能評価
❑ 既存住宅に係る建築住宅性能評価
また、設計住宅性能評価は、設計図書を評価基準(新築住宅)に照合して行うこととされており、評価の方法の基準(性能表示事項別)として 10 項目の基準を規定し、そのうち、住宅の環境保全性能に関する項目として次の4項目がある。
❑ 温熱環境に関すること
❑ 空気環境に関すること
❑ 光・視環境に関すること
❑ 音環境に関すること
評価の方法の基準(性能表示事項別)の中では「温熱環境に関すること」が温室効果ガス等の排出の削減に最も影響が大きいと考えられることから、「省エネルギー対策等級」の規定における要件を契約図書に含めることも重要である。
表Ⅴ-3-1 省エネルギー対策等級(「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」より)
項 目 | 結 果 | 適用範囲 | ||
5.温熱環境に関するこ と | 5-1 省エネルギー対策等級 | 暖冷房に使用するエネルギーの削減のための断熱化等による対策 の程度 | 戸建又は共同各戸 | |
地域区分[Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ] | ||||
4 | エネルギーの大きな削減のための対策(エネルギーの使用の合理化に関する法律の規定による建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準に相当する程度)が講じられている | |||
3 | エネルギーの一定規模の削減のための対策が講じられている | |||
2 | エネルギーの小さな削減のための対策が講じられている | |||
1 | その他 |
4.優れた環境配慮設計の推奨
4-1 環境配慮型プロポーザル方式について
(1)趣旨
建築物に要求される性能は、環境保全性、社会性、安全性、機能性、経済性など多岐にわたる。このため、建築物の設計に当たって一律に環境保全性能を求める訳にはいかないものの、温室効果ガス等の環境負荷低減の観点からは、設計者においては、様々な要求事項の中で環境と高度に調和のとれた設計を行う高い技術力が要求される。このような状況から建築物の設計にあっては、温室効果ガス等の排出削減に関する内容を盛り込んだ技術提案を求めることが適切である。
また、より質の高い設計を進めていくためには、可能な限り事業の早い段階において環境配慮に関する意思決定がなされることが重要である。環境に配慮された設計については、設計の初期の段階から意匠・構造・設備等からなる設計チームのバランスが取れた環境配慮に対する提案・検討がなされ、実現されていくことが重要であり、これらの取組が推進されるように十分に配慮する必要がある。
このような要請がある中、プロポーザル方式は、設計者や設計組織の持つ創造力や確かな技術力、これまでの経験の蓄積に基づく専門家としての豊かなノウハウを技術提案書から評価し設計者を選定するものであり、とりわけ建築物の設計において、敷地の条件や各種の要求性能を考慮し、温室効果ガス等の排出量を有効に削減していく設計を行っていくには、立地の特性等を踏まえた高度な技術的判断が必要なため、その活用が適切である。
しかしながらプロポーザル方式の運用に当たっては、極めて高いxx性・透明性・客観性が必要である26。
このような観点から、環境配慮型プロポーザル方式の運用に当たっても、その基礎として、xx性・透明性・客観性の高い手続のあり方について改善を逐次重ねている国土交通省で採用されているプロポーザル方式に準じた運用を行うこととする。
(2)適用範囲
建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務を発注する場合は、原則として、環境配慮型プロポーザル方式を採用すること。ただし、当該事業の主目的に照らして温室効果ガス等の排出の削減以外の項目が特に優先される事業、温室効果ガス等の削減について、設計上の工夫の余地がほとんどない事業等27についてはこの限りではない。
なお、環境配慮型プロポーザル方式の手続終了後に行われる契約手続は会計法令等に基づ
先する事業、設計業務発注前に多くの項目について意思決定がなされ優先されるべき事項が決定している事業、宿舎等で一連の施設群に対し最初の設計を基に連続的に設計を行う事業、及び特段の事情により採択できない理
27 温室効果ガス等の削減について、極めて高度な特定の機能に対する要求性能が温室効果ガス等の排出削減に優
由を事前に公表している事業
26 一部の事業においては、適切な情報公開がなされていない等により、十分な透明性が確保されていない事例もあり、一層の留意が必要である
いて行うべきものであること及び本手続を採用できるのは、会計法第 29 条の 3 第 4 項の契約の性質又は目的が競争を許さない場合に限られることに留意されたい。
建築物の設計において温室効果ガス等の排出削減に関する内容について、それぞれの建築物の立地条件や様々な要求性能を考慮し、高度な技術的判断を必要とする設計の場合には、環境配慮型プロポーザル方式の対象とした。
また、環境配慮型プロポーザル方式の実施に当たっては、当該建築物の要求事項から設定される技術提案項目のうち、必ず1つ以上に、温室効果ガス等の排出削減に関する内容(パッシブ手法の省エネルギー対策や自然エネルギー利用を含む。)を盛り込むこととする。
❑ 各省庁等は、毎年度環境配慮型プロポーザル方式を行う業務を指定し、その業務の概要とともに環境配慮型プロポーザル方式を行う旨を公表28するものとする。
❑ 環境配慮型プロポーザル方式を行う旨公表した業務について、変更があった場合には、変更後の概要を公表するものとする。
4-2 建築の設計におけるプロポーザル方式の意義
一般に、建築設計は、発注者の企画目的を実現するため、設計条件を基に設計者が創意工夫をもって施設の空間構成を具体化するものであり、成果物が必ずしもあらかじめ特定できない業務である。このため、建設される建築物の質や経済性等は設計者の選定によって大きく左右される。
公共施設は国民共有の資産として質の高さが求められることから、その設計業務を委託しようとする場合は、設計料の多寡のみによる選定方法によって設計者を選定するのではなく、設計者の創造性、技術力、経験等を適正に審査の上、その設計業務の内容に最も適した設計者を選定することが極めて重要である 。
プロポーザル方式は建築物の質の高さに重点を置いており、そのプロジェクトにとって最も適切な創造力、技術力、経験などを持つ「設計者(人)」を選ぶ方式である。質の高い建築設計を行うために最も重要なのは、設計者の能力や経験などの資質である。具体的には、設計者や設計組織(チーム)の持つ創造力や確かな技術力、これまでの経験の蓄積に基づく専門家としての豊かなノウハウが、発注者が要求する性能・品質を有する建築物を実現する上で必要である。そうした設計者の選定方法として望ましいのが「プロポーザル方式」である。プロポーザル方式は、設計案を作っていく上で発注者との共同作業を進めるパートナーとして、もっとも適した設計者を選定しようとするものである。
なお、平成 3 年 3 月建築審議会答申「官公庁施設の設計業務委託方式の在り方」では3つ
の選定方式が示された。
28 既に各府省庁においては、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成 12 年 11 月 27 日法律第 127 号)の規定等により、発注予定案件が四半期ごとに公表されていることから、こうした仕組みを利用するこが考えられる。なお、該当案件については、一般的に年度当初に公表されている。
❑ 設計競技方式:提出された具体的な設計案を審査し、設計者を選定する方式
❑ プロポーザル方式(註 狭義のプロポーザル方式):提出された設計対象に対する発想・解決方法等の提案を審査し、設計者を選定する方式
❑ 書類審査方式:当該業務の工程計画、設計チームの構成、設計者の経歴・作風等に関する資料を提出させ、必要に応じ面接・ヒアリングを行ってこれを審査し、設計者を選定する方式
ここでいう「プロポーザル方式」(現在、国土交通省で実施されている方式)は、狭義のプロポーザル方式と書類審査方式を併用し総合的な評価を行うものであり、提案内容と設計チームの構成や経歴等を総合的に評価するものである。
いずれにせよ、設計競技方式(コンペ方式)は、具体的な設計案を提案者に求めることから、プロポーザル方式の運用とは異なる点を十分理解する必要がある。
平成 17 年に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成 17 年 3 月 31 日
法律第 18 号)の第 8 条第 1 項に基づく「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針」においても「公共工事に関する調査・設計の契約においても、価格のみによって契約相手を決定するのではなく、技術提案を求め、その優劣を評価し、最も適切な者と契約を結ぶこと等を通じ、その品質を確保することが求められる。」とされている。
国においては、国土交通省で平成 3 年 3 月の建築審議会の答申を受け、建築設計業務委託
に関する制度の充実に努め、平成 6 年には設計者の選定にプロポーザル方式を導入し、その後、この方式の普及と運用上の改善等を行い、官庁施設の設計において、プロポーザル方式が広く適用され、建築物の質に重点を置く設計の推進が図られてきた。
4-3 建築の設計におけるプロポーザル方式の適用範囲と配慮すべき事項等
(1)プロポーザル方式の適用範囲
「公共事業の入札・契約手続きの改善に関する行動計画」(平成 6 年 1 月 28 日閣議了解)
において、「国及び一定の政府関係機関の公共事業に係る設計・コンサルティング業務で 45万 SDR 以上のものの調達については、公募型プロポーザル方式又は公募型競争入札とする」とされている。
また、プロポーザル方式の手続終了後に行われる契約手続きは会計法令等に基づいて行うべきものであり、本手続を採用できるのは、会計法第 29 条の 3 第 4 項の契約の性質又は目的が競争を許さない場合に限られる。
これを受け国土交通省では、プロポーザル方式の対象業務は表Ⅴ-4-1 に掲げる業務のうち、地方整備局長又は事務所長が必要と認める業務について行うものとされ、入札・契約手続の適正化に努めている(ただし、特許、著作権、非公開情報等を必要とする業務を除く。)
29。
29 「プロポーザル方式に基づく建設コンサルタント等の特定手続について」(平成 6 年 6 月 21 日付け建設省厚発第 269 号、建設省技xx第 135 号、建設省営建発第 24 号)
表Ⅴ-4-1 プロポーザル方式の対象業務
(1) | 都市計画調査、地域計画調査、総合開発計画調査、環境影響調査、広報計画調査、意向調査、社会経済計画調査、複数の分野にまたがる調査等xxかつ高度な知識と豊かな経験を必要とする業務 |
(2) | 重要構造物の計画調査、大規模かつ複雑な施工計画の立案、景観を重視した施設設計、高度な構造計算を伴う設計、高度な解析を伴う地質調査等比較検討又は新技術 を要するものであって高度な知識と豊かな経験を必要とする業務 |
(3) | 景観調査、大規模な軟弱地盤対策調査、密度流の二・xxx解析調査、技術・管理システム等の評価検討調査、既設施設の機能診断、先端的な計測・試験を含む地質調査等先例が少なく実験解析又は特殊な観測・診断を要する業務 |
(4) | 計画から設計まで一貫発注する業務 |
(5) | 象徴性、記念性、芸術性、独創性、創造性等を求められる設計業務及び高度な技術的判断を必要とする設計業務(いわゆる設計競技方式の対象とする業務を除く。) |
(6) | その他プロポーザルに基づき執行することが適当であると地方建設局長等が認める業務 |
上記の(1)から(5)に規定されている業務に加え、標準的な業務の実施手法が定められていない業務については、原則としてプロポーザル方式が適用されている30。
表Ⅴ-4-1 の業務のうち予定価格が 7,200 万円以上のものは公募型プロポーザル方式の対象であり31、予定価格が 5,000 万円以上、7,200 万円未満のものは簡易公募型プロポーザル方式の対象とされている32。
公募型 | 標 | 準 | ||
簡易公募型 | ||||
標 | 準 |
(万円)
7,200
5,000
政府調達協定対象業務
政府調達協定対象外業務
図Ⅴ-4-1 予定価格に応じたプロポーザル方式の分類
※上記「公募型」「簡易公募型」「標準」とは「建設コンサルタント業務等の入札・契約手続きの運用について」(平成 12 年 12 月 6 日付け、建設省厚xx第 43 号、建設省技xx第 191 号、建設
省営建発第 70 号)に規定されたプロポーザル方式。
30 「建設コンサルタント業務等の入札・契約手続の改善について」(平成 12 年 7 月 26 日付け、建設省厚xx第
25 号・技xx第 119 号・営建発第 47 号)
31 「公募型プロポーザル方式に基づく建設コンサルタント等の選定・手続について」(平成 6 年 6 月 21 日付け、建設省厚発第 270 号、建設省技xx第 136 号、建設省営建発第 25 号)
32 「簡易公募型プロポーザル方式に基づく建設コンサルタント等の選定・特定手続について」(平成 8 年 9 月 26
日付け建設省厚xx第 38 号、建設省技xx第 169 号、建設省営建発第 92 号)
(2)プロポーザル方式で配慮すべき事項等
国土交通省においては、(1)に示したとおり、プロポーザル方式の運用が適切に図られているところであり、プロポーザル方式の適切な運用を図っていくため、以下の点について十分な配慮がなされている。
① xx性、透明性の確保
プロポーザル方式では、一般競争入札方式のように単に入札金額で落札者を決定するものではないため、設計者の提案を適切な体制で審査し、xx性、透明性、客観性を確保しながら進めている。
併せて、提案者が審査結果に対して説明を求めること、及び一連の手続に関して苦情を申し立てることができる仕組みが導入されている。
② 設計意図の継承
プロポーザル方式では、提案された技術提案書を審査し、当該業務に対し最も適した技術提案者として選定された設計者と契約を締結し、設計業務を実施していく。
その実現には、設計の各段階及び施工・運営段階において、設計の意図が適切に継承され、一貫した考え方で実施されていることが重要である。
このため、基本設計、実施設計、施工、監理の段階において、適切に設計意図が継承されるように十分配慮された発注が行われている。
5.環境配慮型プロポーザル方式における設計者選定の手続
プロポーザル方式の手続の流れは図Ⅴ-5-1 のとおりである(各方式は「4-3(1)」参照)
公募型(簡易公募型)
標 準
プ ロ ポ ー ザ ル の 準 備
手 続 x x の 公 示
説 明 書 の 交 付
参加表明書の受領
技 術 提 案 書 の 提 出 者 の 選 定
選定通知/
提出要請書の送付
選定通知/
提出要請書の送付
受 注 意 思 確 認
技 術 提 案 書 の 受 領
ヒ ア リ ン グ の 実 施
技 術 提 案 書 の 評 価
技 術 提 案 書 の 特 定 ・ 通 知
契
約
の
締
結
■結果の公表について
建設コンサルト業務における入札及び契約の過程並びに契約の内容等に係る情報の公表について(平成 14 年9 月5 日付け国官会第1211 号、
国地契第 34 号を参照)
図Ⅴ-5-1 プロポーザル方式の手続の流れ
5-1 プロポーザルの準備
プロポーザルの準備に当たっては、与条件等の整理が重要となる。少なくとも以下に示す項目を適切に整理して、プロポーザルの提案者に提示する必要がある。
❑ 基本構想又は整備方針(建築又は大規模な改修の目的等)
❑ 敷地概要(所在地、敷地面積、用途地域、建ぺい率、容積率、防火地域の指定、上下水道及びガス等の供給処理施設及び交通条件等)
❑ 施設概要(用途、構造、利用状況及び今後の利用予測及び計画所要xx)
❑ 大規模な改修の場合にあっては、現施設の概要等
❑ 実施スケジュール(基本設計業務期間、実施設計業務期間、施工期間、供用開始時期及び地質調査時期等)
❑ 利用者、利用予定者等からの要望事項等
❑ 技術提案を求める各テーマ(環境配慮を含む。)に関する項目
❑ 審査基準及び審査体制
5-2 手続開始の公示
① 公募型又は簡易公募型プロポーザルの場合は、技術提案書の提出者を選定するため、本手続への参加の希望を表明する書類(以下「参加表明書」という。)の提出を求めるものとする。
② 参加表明書の受領期限は、原則として、「5-4 ①」の説明書の交付を開始した翌日から起算して 10 日とする。
③ 参加表明書の提出を求める場合には、官報等に次に掲げる事項を公示するものとする。
1) 業務名、業務内容及び履行期限
2) 技術提案書の提出者に要求される資格及び技術提案書の提出者を選定するための基準
※評価項目、評価の着目点、判断基準、評価のウェート
3) 技術提案書を特定するための評価基準
※評価項目、評価の着目点、判断基準、評価のウェート
4) 担当部局
5) 説明書の交付期間、場所及び方法
6) 参加表明書の受領期限並びに提出場所及び方法
7) 技術提案書の受領期限並びに提出場所及び方法
8) 手続において使用する言語及び通貨
9) 契約書作成の要否
10) 関連情報を入手するための照会窓口
11) その他発注者が必要と認める事項
④ ③の公示において、次に掲げる事項を英語により記載するものとする。
1) 業務名
2) 参加表明書及び技術提案書の受領期限
3) 説明書を入手するための照会窓口
⑤ ③の公示は、標準公示例を参考にすること。
5-3 参加表明書の内容
参加表明書には、当該業務の特性に応じて次に掲げる事項の中から選択したものを記載させるものとする。
① 建築士法(昭和 25 年法律第 202 号)第 23 条に基づく登録状況等
② 保有する技術職員の状況
③ 同種又は類似の業務の実績
④ 当該業務の実施体制
⑤ その他必要と認められる事項
5-4 説明書の交付
① 手続開始の公示後速やかに、②に掲げる事項を記載した説明書の交付を開始するものとし、技術提案書の受領期限の日の前日まで交付するものとする。
② 説明書には、「5-2 ③」(「5-2 ③ 5)」を除く。)に掲げる事項及び次に掲げる事項を記載するものとする。
1) 業務の詳細な説明(要求すべき環境保全性能を含むものとする。)
2) 参加表明書及び技術提案書の作成様式、記載上の留意事項及び問い合わせ先
3) 説明書に対する質問の受領期間、提出場所、提出方法及びその回答方法
4) 支払条件
5) 審査基準等
6) その他必要と認められる事項
③ ②に掲げるもののほか、説明書において、次に掲げる事項を明らかにするものとする。
① 1) 受領期限までに参加表明書が到達しなかった場合及び技術提案書の提出者として選定された旨の通知を受けなかった場合は、技術提案書を提出できないこと
② 2) 参加表明書及び技術提案書の作成及び提出に係る費用は、提出者の負担とすること
③ 3) 提出された参加表明書は、返却しないこと
④ 4) 提出された参加表明書及び技術提案書は、技術提案書の提出者の選定及び技術提案書の特定以外に提出者に無断で使用しないこと
⑤ 5) 受領期限以降における参加表明書及び技術提案書の差し替え及び再提出は認めないこと。また、参加表明書及び技術提案書に記載した配置予定の技術者
は、変更することはできないこと
⑥ 6) 参加表明書又は技術提案書に虚偽の記載をした場合は、参加表明書又は技術提案書を無効とするとともに、虚偽の記載をした者に対して指名停止を行うことがあること
④ 説明書は、別冊として、手続開始の公示の写し、契約書案、見積心得、図面(必要な場合のみ。)、仕様書及び現場説明書を含めるものとする。
⑤ 説明書において、「政府調達に関する苦情の処理手続」(平成 7 年 12 月 14 日付け政府調達苦情推進本部決定)により、政府調達苦情検討委員会に対して苦情を申し立てることができる旨を明らかにするものとする。
5-5 技術提案書の提出者の選定
① 手続開始の公示及び説明書において明示した技術提案書の提出者に要求される資格及び技術提案書の提出者を選定するための基準に基づき、参加表明書を提出した者の審査を行い、参加表明書を提出した者の中から技術提案書の提出者を 3 から 5 社程度選定し、技術提案書の提出者として選定した旨の通知を行うとともに、技術提案書の提出要請書を送付するものとする。
② ①の通知から技術提案書の提出までの期間は、公募型の場合は原則として、40 日間以上とする(簡易公募型の場合は 15~40 日間。)。
③ 技術提案書の提出者に要求される資格及び技術提案書の提出者を選定するための基準の決定並びに参加表明書を提出した者の審査に当たっては、「5-9」の審査委員会を活用するものとする。
④ 技術提案書の提出者に要求される資格及び技術提案書の提出者を選定するための基準は、「5-3」に掲げる事項について定めるものとする。
⑤ 参加表明書を提出した者のうち、当該業務について技術提案書の提出者として、選定しなかった者に対して、選定しなかった旨及び選定しなかった理由(以下、「非選定理由」という。)を書面により通知するものとする。
⑥ ⑤の通知を受けた者は、通知をした日の翌日から起算して 7 日(行政機関の休日に関する法律(昭和 63 年法律第 91 号)第一条に規定する行政機関の休日を含まない)以内に、書面により、非選定理由についての説明を求めることができるものとする。
⑦ 非選定理由についての説明を求められたときは、説明を求めることができる最終日の翌日から起算して 10 日以内に、書面により回答するものとする。
⑤から⑦までに掲げる事項については、説明書において明らかにするとともに、⑥に掲げる事項については、⑤の通知において明らかにするものとする。
⑨ ⑤の通知は、①の通知と同時に行うとともに、非選定理由については、公示及び説明書において明示した技術提案書の提出者に要求される資格及び技術提案書の提出者を選定するための基準の各項目のいずれの観点から選定しなかったかを明らかにするものとする。
⑦の回答内容を「5-9」の審査委員会に報告するものとする。
5-6 選定通知/提出要請書の送付
技術提案書の提出要請書に次に掲げる事項を記載するものとする。
なお、技術提案書を特定するための評価基準については、「5-9」の審査委員会を経て決定するものとする。
① 業務の詳細な説明
② 技術提案書の作成様式及び記載上の留意事項
③ 技術提案書の提出方法、提出先及び提出期限
④ 技術提案書を特定するための評価基準
⑤ 技術提案書の提出要請書に不明の点がある場合の質問の受付方法、受付窓口、受付期間及びその回答方法
⑥ 書類等の作成に用いる言語、通貨及び単位
⑦ 契約書案、仕様書案
その他必要と認められる事項
なお、提出書類の簡素化等を図るため、業務内容に応じて具体的な技術提案を求めるテーマを示し、当該テーマに対する提案を求めるものとする。この場合において、提出を要求する書類は、必要最小限とするものとする。また、説明書及び技術提案書の提出要請書に提出書類の様式を定め、ページ数や図表枚数等を規定するものとする。
なお、技術提案のテーマ設定に当たっては、温室効果ガス等の排出削減に関する内容(自 然エネルギー等の積極的な利用を含む。)を含めるものとする。
5-7 ヒアリングの実施
原則として配置予定管理技術者又は担当技術者を対象に技術提案書の内容についてヒアリングを実施するものとする。
5-8 技術提案書の特定・通知
① 提出された技術提案書について、技術提案書を特定するための評価基準に基づき、
「5-9」の審査委員会の審査を経て、当該業務について技術的に最適なものを特定するものとする。
② ①により特定した技術提案書の提出者に対して、技術提案書を特定した旨の通知を行うものとする。
③ 技術提案書を提出した者のうち技術提案書を特定しなかったものに対して、技術提案書を特定しなかった旨及び特定しなかった理由(以下「非特定理由」という。)を書面により通知するものとする。
④ ③の通知を受けた者は、通知をした日の翌日から起算して 7 日(行政機関の休日に関する法律(昭和 63 年法律第 91 号)第一条に規定する行政機関の休日を含まない。)
以内に、書面により、非特定理由についての説明を求めることができるものとする。
⑤ 非特定理由についての説明を求められたときは、説明を求めることができる最終日の翌日から起算して 10 日以内に、書面により回答するものとする。
⑥ ③から⑤までに掲げる事項については、技術提案書の提出要請書において明らかにするとともに、④に掲げる事項については、③の通知において明らかにするものとする。
⑦ ③の通知は、②の通知と同時に行うとともに、非特定理由については、技術提案書を特定するための評価基準の各項目のいずれの観点から特定しなかったかを明らかにするものとする。
⑤の回答内容を「5-9」の審査委員会に報告するものとする。
5-9 審査体制
① 審査委員会を組織し、次に掲げる事項を調査審議し、報告するものとする。
1) 技術提案書を特定するための評価基準の決定
2) 技術提案書の提出を依頼する者の選定
3) 技術提案書の特定
② ①の審査委員会には技術提案を適切に審査できることが可能な各種技術力のある人員を適切なバランスで配するものとし、必要があると認めるときは、委員以外の者の意見を求めるものとする。
また、審査委員会の構成についても、xx性・透明性確保の観点から、必要に応じて第三者の専門家などを加えるとともに、公表されることが望ましい。
6.環境配慮型プロポーザル方式の推進
6-1 フィードバック
プロポーザル方式では、実現性の伴わない技術提案がなされる可能性も懸念される。
このため、環境配慮型プロポーザル方式を実施した建築物において、環境保全性能に係る情報の蓄積を図り、その評価結果を公表するとともに、発注者は、以後の事業に対しフィードバックしていくことが重要である。
6-2 環境保全性能の評価
環境配慮契約法の目的より、設計された建築物の環境評価については、LCCO2 や省エネ性能等を的確に評価項目に含む手法を採用する事が重要である。
国等の施設の評価手法としては、「官庁施設の環境保全性に関する基準33」、「官庁施設の環境保全性に関する診断・改修計画基準34」及び住宅の用途にあっては「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「評価方法基準35」が既に国土交通省によって策定されている。
また、建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)36等も普及しており、環境配慮型プロポーザル方式によって設計者が選定された施設に関しても、これらの基準によって評価を行うことを推奨する。
6-3 地方公共団体等への支援
環境配慮契約法第 11 条において、地方公共団体及び地方独立行政法人は、「当該地方公共団体及び地方独立行政法人における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する方針」を作成するよう努めるものとされている。
しかしながら、地方公共団体等にあっては、環境配慮型プロポーザル方式を推進していく体制を構築することが困難である場合も考えられるため、可能な限り国が支援することが重要である。
(1)国からの情報提供
環境配慮契約法第 10 条において、「国は、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に資するため、国及び独立行政法人等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の締結に関する状況等について整理及び分析を行い、その結果を広く提供するものとする。」とされているため、提供する情報の項目、内容等の検討し、速やかに公表するものとする。
33 「官庁施設の基本的性能基準及び同解説」(社団法人公共建築協会)。概要は「2-1」を参照
34 「グリーン診断・改修計画基準及び同解説」(財団法人建築保全センター)
35 「日本住宅性能表示基準・評価方法基準 技術解説 2006」(工学図書株式会社)。概要は「2-2」を参照
36 CASBEE ホームページ:xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/XXXXXX/
(2)留意点
環境配慮型プロポーザル方式を今後実施していくに当たっては、専門の知識を持った技術者が発注組織側に必要となるが、例えば既存のプロポーザル方式に対する支援体制の活用や、第三者性の確保を前提として民間の専門家を発注者の支援者として登用するなど、発注者として構想段階から民間の設計事業者又は設計事業者チームと連携を図っていくことも考えられ、官民協働の体制づくりを検討する必要がある。