(注)企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面に与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの増大とネガティブインパクトの減少に向けた取 組みを支援する融資手法。企業による SDGs 達成への貢献度合いを評価指標とし、その過程を開示します。
各 位
株式会社八十二銀行
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約締結について
八十二銀行(頭取 xx xx)と一般財団法人xx経済研究所(理事長 xx xx)は、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(注)」の融資契約をベイクックコーポレーション株式会社(代表取締役社長 xx x)と締結いたしました。
以下に概要をお知らせいたします。
(注)企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面に与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの増大とネガティブインパクトの減少に向けた取組みを支援する融資手法。企業による SDGs 達成への貢献度合いを評価指標とし、その過程を開示します。
1. 概要
契 | 約 | 日 | 2024 年1月 31 日(水) |
契約先 | 名称 | ベイクックコーポレーション株式会社 | |
所在地 | xxxxx 0000 xx | ||
設立年月 | 1996 年6月 | ||
資本金 | 450 百万円 | ||
金 | 額 | 100 百万円 | |
資金使 途 | 事業資金 | ||
モニタリング | 八十二銀行および一般財団法人xx経済研究所は、ポジティブインパクト金融原則に基づき構築した実施態勢に従い、インパクト評価を踏まえベイクックコーポレーション株式会社が設定した KPI を、融資期間中におけるパフォーマンスとしてモニタリングします。 | ||
評価の対象 | ベイクックコーポレーション株式会社 |
2. ベイクックコーポレーション株式会社の取組み(※ 詳細は別紙をご参照ください。)
(1) ベイクックコーポレーション株式会社は、「豊かな食生活」、「食べる人の健康」、「人や地域との繋がり」、
「暮らしやすい環境」が持続されるxxを共に創るという Vision のもと、農家の方々が丹精込めたxxxを必要とする方へ届けることを通じて社会的課題に取り組んでいます。
(2) インパクト評価では、ポジティブインパクトが期待できる主な活動として、米文化の伝承を通じた
「食育への取り組み」や生産者との直接取引件数増加による「生産農家支援による稲作振興」、女性管理職の登用による「ジェンダーレスな組織の実現」などが挙げられました。
(3) ネガティブインパクトを低減する活動としては、有給休暇の取得促進や健康経営優良法人認定取得の継続による「労働環境の維持向上」や、食品残渣廃棄量削減などによる「環境負荷軽減」に取り組まれます。
以 上
評価対象兼借入人 ベイクックコーポレーション株式会社貸付人 株式会社八十二銀行
評価書作成者 一般財団法人xx経済研究所評価基準日 2023 年 12 月 31 日
目次
4.特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動等との関連性 26
一般財団法人xx経済研究所は株式会社八十二銀行がベイクックコーポレーション株式会社(以下、
「当社」という)に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、当社の活動が、社会・環境・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価した。
分析評価は、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI )が策定した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則っている。
本ファイナンスの概要
契約期間 | 2024 年1月 31 日~2029 年1月 31 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年間 |
会社名 | ベイクックコーポレーション株式会社 | |||
本社所在地 | xxxxxxxx 0000 xx | |||
代表取締役社長 | xx x | |||
設立 | 1996 年6月1日 | |||
資本金 | 450 百万円 | |||
業種 | 米穀卸・炊飯加工品販売業 | |||
事業内容 | 玄米・精米※1の販売、搗精※2、仲介及び出荷米穀加工及び販売 炊飯、炊飯加工品製造及び販売 麦製品、雑穀、砂糖、小麦粉、油脂類、その他飲料の販売麺・餅等の食品販売、餅の委託加工、石油製品の販売他 | |||
単体売上高 | 5,538 百万円(2023 年3月期) | |||
従業員数 | 84 人(パート・アルバイト含む)(2023 年 12 月 31 日現在) | |||
主要取引先 | 米穀 事業 | 仕入 | JA 全農、xx県集荷組合、米穀卸売業者、xx県内稲作農家他 | |
販売 | イオン、西友、綿半、デリシア、原信、いちやまマート他 | |||
炊飯 事業 | 販売 | 西友、綿半、xx県学校給食会、マルイチ産商、アスザックフー ズ、JR 東日本クロスステーション他 | ||
関連組織 | 名称 | 業種 | 所在 | 当社事業との関連 |
有限会社エースxx | 米穀集荷業 | xx県xx市 | 米穀仕入の連携 |
※1「精米」とは、玄米を白くする「工程」と精白された白米「モノ」の両方を意味し、※2「搗精」(とうせい)とは、玄米を白くする「工程」のみ意味する。
年 | 概要 |
1996 年5月 | xx県内の米穀卸業者(長水食糧販売事業協同組合・松筑食糧卸事業協同組 合・東信米穀卸事業協同組合)が対等合併し、「協同組合しなの」を設立 |
同年6月 | 「協同組合しなの」の出資により、xx市xxにて当社設立 |
1997 年9月 | 営業所統合〔埴科→上田支店、xx・中野→本社兼xx支店(xx市)〕 |
2002 年3月 | ∙ 現本社所在地に社屋及び精米工場を新設し、本社移転 ∙ 併せて長野支店・松本支店・上田支店・佐久支店を本社に集約 |
2002 年9月 | xx市北xxに炊飯工場を新設し、炊飯事業開始 |
同年同月 | 炊飯工場において、炊飯製品 HACCP 認定を取得 |
2007 年9月 | 精米工場において、精米工場品質システム(JRQS)認定を取得 |
2011 年3月 | 東日本大震災の被災地域へ食糧(精米)支援実施 |
同年同月 | xx県北部地震被災地域(xx県栄村)へ食糧(炊飯・加工品商品)支援実施 |
2017 年 12 月 | 精米工場において、精米 HACCP 認定を取得 |
2019 年5月 | 炊飯工場において、炊飯加工品 HACCP 認定を取得 |
2019 年 10 月 | 台風 19 号の被災地域(xx県xx市)へ食糧(炊飯・加工品商品)支援実施 |
2020 年4月 | 「災害時における食料等の供給及び運搬に関する協定」をxx市と締結 |
同年同月 | xx県 SDGs 推進企業登録制度に登録 |
2022 年3月 | 健康経営優良法人 2022(中小規模法人部門)に認定 |
2023 年3月 | 健康経営優良法人 2023(中小規模法人部門)に認定 |
本社・精米工場 | 炊飯工場 | |
所在 | xxxxx 0000 xx | xxxxxx 0000 xx0 |
機能 | 管理・営業・精米・その他 | 炊飯・炊飯加工品製造 |
事業セグメント | 事業内容 | 2023 年3月期 売上構成(%) |
精米事業 | 玄米・精米の販売・仲介 | 79.0 |
搗精 | ||
米穀加工及び加工食品販売他 | ||
炊飯事業 | 炊飯販売 | 7.9 |
炊飯加工品製造及び販売 | ||
その他事業 | 麦製品・雑穀・小麦粉等の販売 | 13.1 |
砂糖・油脂類・飲料等の販売 | ||
麺・餅等の食品販売、餅の委託加工 | ||
石油製品の販売他 |
(1) 精米・玄米ブランド
以下は、当社の主要精米ブランドでxx県産を中心に総数約 250 アイテムを取り扱う。
⮚ xx県産(代表ブランド)
xx県産こしひかり | 幻の米 | 浅間のx | xxx野産こしひかり | xx産 こしひかり |
⮚ xx県外産(代表ブランド)
新潟県産こしひかり | 新潟県魚沼産こしひかり | 北海道産ゆめぴりか | 北海道産xxつぼし | 北海道産えみまる |
⮚ 特別栽培米・無洗米他
特別栽培米 安曇野産こしひかり | 特別栽培米 木島平米こしひかり | 無洗米 xx県産あきたこまち | 無洗米 xx県産風xxx | もち米 |
⮚ 玄米(xx県内外産)
xx県産 コシヒカリ特A | xx県産 あきたこまち | xx県産コシヒカリ特栽米 | 新潟県魚沼産コシヒカリ | 新潟県産コシヒカリ |
(2) 炊飯・加工商品
白飯 | しゃり玉・酢飯等 | おにぎり | 寿司セット |
(3) その他商品
切りもち | 善光寺縁起そば |
当社の精米・炊飯事業フローは以下のとおり。精米・炊飯事業ともに大型設備投資により効率化・品質維持向上、ならびに高いレベルでの食品安全対策が図られている。
(1) 精米事業概要(フロー内表示 CCP: 食品安全衛生管理上の危害要因排除のための重要管理点)
1.玄米受入・保管 2.玄米投入 3.玄米精選
4.石抜き
5.精米
6.ふるい選別
7.色彩選別(CCP)
8.ガラス選別
9.無洗米加工
10. 金属検出(CCP)
11.糠玉除去
12.計量・包装
13.金属検出(CCP) 14.出荷 15.品質管理
(2) 炊飯事業概要(フロー内表示 CCP:食品安全衛生管理上の危害要因排除のための重要管理点)
1.色彩選別 2.金属検出 3.洗米・浸漬
4.炊飯(CCP)
5.蒸らし
炊飯白米フロー
6.ほぐし
7.コンテナ詰め・計量
8.金属検査(CCP)
9.保管・温度管理
10.出荷
酢飯・寿司フロー
6.酢合わせ
7.ほぐし
10.冷却
8.コンテナ詰め・計量
9.金属検査(CCP)
11.成形・加工
12.容器詰め
13.金属検査(CCP)
14.保管・温度管理
15.出荷
(1)主な流通ルート
農協販売
卸売業者 | |
一般消費者等 |
下図に示すとおり、米の流通は、2004 年4月の改正食糧法の施行以来、多様なルートを通じて、様々な価格で取引されている。なお、当社のポジションを図表上の2重囲みで示す。
生産
集荷・精米・出荷
精米・販売・消費
生産者
農協
全農・経済連等販売委託
卸売業者 |
主食用のうち加工用等 |
政府米向け |
※
全集連系業者
全集連系業者販売
※全集連系業者:全集連(全国主食集荷協同組合連合会)を構成する全国 34 の道県組合に所属する米麦等を集荷する業者(業者数は約 1,000)
その他業者
販売
販売
卸売業者
卸売業者 |
小売業者 |
卸売業者 |
小売業者 |
外食・中食事業者等 |
一般消費者等 |
(資料)農水省公表資料「米をめぐる状況」を参考にxx経済研究所で作成
(1) 作付農家数の推移
⮚ 稲作農家数の急激な減少
2000 年 | 2005 年 | 2010 年 | 2015 年 | 2020 年 | 2000 年比 | ||||
総農家数 | 3,120 | 2,848 | 2,528 | 2,155 | 1,747 | ▲44.0% | |||
販売農家数 | 2,337 | 1,963 | 1,631 | 1,330 | 1,028 | ▲56.0% | |||
水稲作付農家数 | 1,744 | 1,402 | 1,159 | 940 | 699 | ▲59.9% | |||
主業農家数 | 321 | 269 | 217 | 170 | 127 | ▲60.4% | |||
準主業農家数 | 502 | 373 | 323 | 209 | 110 | ▲78.0% | |||
副業的農家数 | 920 | 761 | 620 | 561 | 461 | ▲49.8% |
2020 年現在、国内の総農家数は 2000 年比で約 44%減少し、さらに水稲作付農家数はこれを上回り約 60%減少している。稲作を主業とする主業農家数も同水準で減少しており、稲作の担い手は急激に減少している。 (単位:千戸)
販売農家:経営耕地面積が 30a 以上又は過去 1 年間の農産物販売金額が 50 万円以上の農家主業農家:農業所得が主で、65 歳未満の農業従事 60 日以上の者がいる農家
準主業農家:農外所得が主で、65 歳未満の農業従事 60 日以上の者がいる農家副業的農家:65 歳未満の農業従事日数 60 日以上の者がいない農家
(資料)農林水産省「農林業センサス」からxx経済研究所で作成
(2) 基幹的農業従事者※の年齢構成
⮚ 農業従事者は高齢化、今後急速に減少
(資料)農林水産省「農林業センサス」からxx経済研究所で作成
70歳以上
51.1%
60-69
50-59
40-49
30-39
n=136.2 万人
29歳以下
0
10
20
30
40
50
60
70
80 (万人)
※基幹的農業従事者:農業就業人口のうち、仕事として主に自営農業に従事している者
平均年齢 67.8 歳
28.8%
基幹的農業従事者の年齢構成(2020 年)
(年齢)
国内農業の担い手である基幹的農業従事者全体では、以下のとおり高齢化が進んでいる。今後は高齢を理由とした廃業等により、基幹的農業従事者の急激な減少が予想される。
(3) 米の生産コスト
⮚ 改善の進まないコスト削減
政府は高コスト・低収益体質の稲作農業に対し、生産コスト引き下げ目標として、生産単位あたり 16,000 円/60 ㎏から 9,600 円/60 ㎏への目標を掲げたが、全国平均はもとより、大規模化により効率化されている認定農業者においてもこの水準には至っていない。
米の生産コストの推移
上段青線:全国平均
下段青点線:認定農業者(15ha 以上)平均
実績・全国平均 令和4年(2022 年)
15,261 円/60 ㎏
基準値
平成 23 年(2011 年)実績
16,001 円/60 ㎏
実績・認定農業者令和4年(2022 年)
10,807 円/60 ㎏
目標値・全国平均令和4年(2022 年)
9,600 円/60 ㎏
(資料)農林水産省「稲作とその現状とその課題について」にxx経済研究所で注釈加筆
(4) 主食である米の需要
⮚ 減少が続く米の需要
米の需要は食生活の変化により、平成 25 年(2013 年)以降は年間 10 万トンのペースで減少している。
平成 8 年(1996 年)実績
944 万トン
26.8%
減少
令和4年(2022 年)実績
691 万トン
(資料)農林水産省「米をめぐる状況について」にxx経済研究所で注釈加筆
(5) 気候変動による影響
⮚ 高温障害による品質の低下
農林水産省は、毎年「地球温暖化影響調査レポート」において農作物の高温影響を報告している。この中で主な水稲の産地で白未熟粒・胴割粒・害虫被害等の高温障害が増加し、水稲うるち玄米の一等米※比率が低下していることを報告している。
水稲の高温による主な影響(整粒との比較)
(資料)農林水産省「地球温暖化影響調査レポート」より
※一等x
x粒歩合(すべての米粒から被害粒や未熟粒等を除いた整粒の割合)について、70%以上、60%以上、45%以上、45%以下が、それぞれ一等米、二等米、三等米、規格外」となる。(農林水産省玄米検査規格による)
⮚ 長期的地域ごとの収量の変化
また、農業・食品産業技術総合研究機構では、品種や移植時期を現行とし、1986 年から 2005 年の平均気温に比べ 2100 年における世界の平均気温が2℃程度上昇する場合の水稲の収量将来予測(2041 年~2060 年)を報告している。これによれば、北日本や 東日本山間部では、気温上昇による冷害の解消や CO2 濃度の上昇により増収と予測される一方、東日本xx部から西の地域では、CO2 濃度の上昇による増収よりも、さらなる高温により、生育期間の短縮や高温不稔の発生の影響が上回り、減収が予測されている。
水稲の 2041 年~2060 年の収量予測
収量増加
収量減少
(資料)農業・食品産業技術総合研究機構報告資料より
(1) 当社の基本理念の構成
ヒアリングにより確認した当社の基本理念の概念・考え方は以下のとおり。
Value
Mission・ Vision を達成するための手段・行動指針・価値観
Vision
会社が目指すところ
・長期的ゴール・将来像
Mission
会社の存在意義・使命
何のために当社は存在しているのか
基本理念概念図
考え方 | |
Mission | お米やごはんの更なる可能性を見出し、それをより多くの人に知ってもらうよう努め、食べる機会をこれまで以上に拡げることで、お米やごはんに関わる人の人生を豊かにする。 |
Vision | 「豊かな食生活」、「食べる人の健康」、「人や地域との繋がり」、「暮らしやすい環境」が持続されるxxを共に創る。 「豊かな食生活」 ∙ ごはん食の副菜の多彩さは美味しさ、笑顔、幸せをもたらす。 「食べる人の健康」 ∙ 白米(糖質)の可能性、玄米や雑穀を加えた時のバリエーション、それぞれが健康に繋がる。 「人や地域との繋がり」 ∙ 地域、特に地域農業や生産者との繋がりを維持しながら、消費者にもその繋がりに参画してもらう。 「暮らしやすい環境」 ∙ 稲作で発生する温室効果ガス(メタンガス)削減を、生産者と共に他に先駆けて進める。 |
Value | ∙ 新しい価値や基準、知見には常に積極的に。 ∙ エンドユーザーが求める声にこそ耳を傾ける。 ∙ お米やごはんのプロであれ。 |
(資料)ヒアリング・社内資料から当研究所で作成
(2) 重要課題の特定
分野 | 重要課題 |
環境 (Environment) 当社の活動が自然活動に与える影響 | 商品ライフサイクルを踏まえた環境負荷の軽減 |
社会 (Social) 当社が人々やコミュニティに与える影響 | ∙ 地域の稲作農業振興 ∙ お米の消費増加への貢献 ∙ 消費者へのお米の持続的な提供 |
企業統治 (Governance) 組織の運営と管理に関する要因 | 安全な食品提供のための食品安全衛生管理体制の維持 |
当社では、上記経営思想を踏まえ、国内稲作を取り巻く厳しい状況や、サステナビリティ(持続可能性)の観点から当社の取り組むべき重要課題を以下のとおり、環境・社会・企業統治(ESG)の三分野で特定している。
(資料)ヒアリング・社内資料から当研究所で作成
また以下のとおり、それぞれの重要課題に対するテーマを明確化している。
重要課題 | テーマ |
環境 商品ライフサイクルを踏まえた環境負荷の軽減 | 商品ライフサイクルでの環境負荷軽減自社製造過程廃棄物の削減・活用 エネルギー使用量の適正管理 |
社会 ∙ 地域稲作農業振興 ∙ お米の消費増加への貢献 ∙ 消費者へのお米の持続的な提供 | 稲作の振興 稲作の省力化支援地産地消促進 顧客満足 安全な食品の提供お米の消費拡大 食育 地域コミュニティ支援労働環境への配慮 定年年齢の見直し |
企業統治 安全な食品提供のための食品安全衛生管理体制の維持 | 精米 HACCP に基づく食品安全衛生管理炊飯 HACCP に基づく食品安全衛生管理米飯食味評価士有資格者の配置 第一種安全衛生管理有資格者2名の配置お米の安定流通のための社内体制構築 |
(資料)ヒアリング・社内資料から当研究所で作成
当社では設定したテーマに沿い、以下のとおり取り組み項目を具体化している。
⮚ 各分野・テーマごとの取り組み一覧
分野 | テーマ | 取り組み項目 |
共通 | SDGs 達成への貢献 | xx県 SDGs 推進企業への登録及び取り組み |
環境 | 商品ライフサイクルでの環境負荷軽減 | 無洗米商品の開発・製造・販売 |
特別栽培米(減農薬減化学肥料栽培米)の積極的 取り扱い | ||
炊飯加工商品容器のポリエチレン使用量削減 | ||
炊飯工場使用水の節水 | ||
米袋にバイオマス素材・インキの採用 | ||
精米時期新表示基準への対応(年月日→旬)によ る廃棄ロス削減 | ||
お米由来原料使用のボールペン・名刺の採用 | ||
自社製造過程廃棄物の削減 ・活用 | 廃棄物の分別細分化(約 25 種類) | |
炊飯事業で発生する食品残渣※の削減(※食品残渣:炊飯事業で残った炊飯米の他に、加工食品の 食材等を含む) | ||
米糠のキノコ培地への活用(精米事業) | ||
食品残渣の養鶏飼料としての提供(炊飯事業) | ||
エネルギー使用量の適正管理 | 精米工場へのデマンドコントローラー導入 | |
社会 | 稲作の振興 | xx県産米の積極的取り扱い |
低コスト生産米への積極的取り組み | ||
稲作の省力化支援 | 直播栽培米への積極的取り組み | |
地産地消促進 | xx県産米の積極的県内販売 | |
顧客満足 | 米飯食味評価士有資格者の配置 | |
安全な食品の提供 | 精米 HACCP 認定の取得 | |
炊飯 HACCP 認定の取得 | ||
お米の消費拡大 | ホームページでお米に関する幅広い情報発信 | |
食育 | 地元小学生を対象とした工場見学の開催 | |
地域コミュニティ支援 | 被災地域への食糧支援 | |
自治体との災害時の食料支援協定締結 | ||
労働環境への配慮 | 健康経営優良法人の認定取得 | |
第一種安全衛生管理有資格者2名の配置 | ||
定年年齢の見直し | 社員・パート従業員の定年 65 歳への引き上げ | |
企業統治 | 食品安全・品質管理の徹底 | 精米 HACCP に基づく食品安全衛生管理 |
炊飯 HACCP に基づく食品安全衛生管理 |
人材の育成 | 米飯食味評価士有資格者の配置 | |
第一種安全衛生管理有資格者2名の配置 | ||
主食の安定供給対策の構築 | お米の安定流通のための社内体制構築 |
以下に各分野・テーマごとの主な取り組みのみ記載する。
(1) 共通
⮚ SDGs 達成への貢献
xx県では県内企業・事業所の SDGs への理解と活動を促進するため、2017 年に「xx県 SDGs 推進企業登録制度」を設け、SDGs に積極的に取り組む企業の登録・公表制度をスタートさせている。当社は本制度第4期(2020 年4月)に登録し、SDGs への取り組みを進めてきている。以下は当社の推進企業登録の概要である。
【SDGs 達成に向けた経営方針等】
おけるジェンダーレスを達成します。
また男女の差別がなく各人が力を発揮出来、その成果に報いることが出来る企業を目指し、社内に
務領域の中で「非持続的」な部分を排することで SDGs の達成に貢献します。
2000 年以上に渡って持続的再生産を続けてきたコメ。その米にxx携わってきた当社として、業
【重点的な取り組み】
No. | 取り組み | 2030 年に向けた指標 |
1 | 炊飯工場で発生する食品ロス削減 | 2030 年までに炊飯ライン廃棄量を 10 トンまで 削減(2020 年時点で 30 トン) |
2 | 製品容器に使用しているプラスチック (ポリエチレン)の使用量削減 | 2030 年までにポリエチレン使用量を 10 トンまで 削減(2020 年時点で 33 トン) |
3 | 女性管理職の登用 | 2030 年までに女性管理職の比率を 30%に高め る(2020 年時点で 0%) |
◀xx県 SDGs 推進企業登録証登録番号:第4期 351 番
(2) 環境
⮚ 無洗米商品の開発・製造・販売
無洗米とは、研ぎ洗いしていた肌糠(精白米の表面に残っている粘着性の高い糠)をほぼ完全に除去した米のことである。精米した白米の表面には、通常の精米装置では取り切れない肌糠が残っており、この肌糠を取り除くために、精米した白米を炊く前は研ぎ洗いが必要となる。無洗米は精米の工程で肌糠を除去しているため、ほとんど研ぎ洗いが不要なため、以下のメリットがある。
∙ 調理時間の短縮
∙ 水の使用量や排水の低減
∙ 洗米による栄養価(水溶性ビタミンやミネラル等)流失の低減等
当社では環境に配慮した米として、自社精米工場で無洗米を製造、自社ブランドで積極的に販売展開している。
◀自社無洗米ブランド
⮚ 特別栽培米(減農薬減化学肥料米)の積極的取り扱い
特別栽培米とは生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べ、節減対象農薬の使用回数が 50%以下、かつ化学肥料の窒素成分量が 50%以下で栽培された米である。また、農薬と化学肥料の使用量が少ないことから、xxや周辺の水質環境への負荷軽減にも寄与する。
当社では、農家の生産段階から農薬使用に積極的に関与し、商品化・自社ブランド化することで減農薬減化学肥料農業を進めている。
◀自社特別栽培米ブランド
⮚ 炊飯加工商品容器のポリエチレン使用量削減
製品容器に使用しているプラスチック (ポリエチレン)の使用量削減 | 2030 年までにポリエチレン使用量を 10 トン まで削減(2020 年時点で 33 トン) |
炊飯事業部商品で製造販売している寿司商品等には、ポリエチレン容器を使用している。これらは製造・廃棄段階で多量の温室効果ガスを排出し、環境負荷が大きい。このため、当社ではxx県 SDGs 推進企業登録の際、これらの削減目標を掲げ、削減に取り組んでい る。
▲xx県 SDGs 推進企業登録での重点的な取り組み目標の No.2
⮚ 炊飯加工商品へのバイオマス包装用フィルム使用
炊飯事業においても環境負荷軽減を目的に、上述のバイオマス素材を使用した包装用フィルムを 2021 年 11 月から採用し、使用量は 2022 年度において約 11 万枚に達している。
⮚ 炊飯工場使用水の節水
炊飯事業では洗米・製造機器類洗浄段階で多量の水を使用している。排水による環境負荷削減のため、高濃度気泡発生装置の導入による洗米方法の工夫や QC 活動等により、水使用量の削減を進めている。
⮚ 米袋にバイオマス素材・インキの採用
当社では、米袋製造・廃棄時の環境負荷軽減を目的に、一部の精米商品の米袋にバイオマスフィルム(サトウキビ等、植物由来の原料を利用して作られているプラスチックフィルム)、またはバイオマスインキ
(インキ中の樹脂の一部に、再生可能な有機資源を使用)を 30%使用した「バイオマス米袋」を導入している。
バイオマーク表示商品▶
⮚ 炊飯工場での食品残渣廃棄の削減
炊飯工場で発生する食品ロス削減 | 2030 年までに炊飯ライン廃棄量を 10 ト ンまで削減(2020 年時点で 30 トン) |
炊飯事業では年間約 20 トン(2023 年実績)の食品残渣が発生しており、経営上の課題として認識している。食品ロス削減や環境負荷軽減のため、これらの発生削減や養鶏飼料としての提供等、新たな用途発掘に取り組んでいる。
▲xx県 SDGs 推進企業登録での重点的な取り組み目標の No.1
⮚ 米糠のキノコ培地(キノコを栽培する土台)への活用
精米の過程で多量に発生する米糠も破棄段階で環境への負荷が大きい。活用策として、地域のキノコ生産農家でのキノコ培地としての活用が進んでおり、当社で発生する米糠の約 99%が活用されている。
⮚ 温室効果ガス排出量削減への取り組み
当社の事業活動による主な温室効果ガスの排出源としては、本社・精米工場内での電気の使用が挙げられる。本社・精米工場ではデマンドコントローラーを導入済みで、ピークシフトやピークカット等、細かな電力使用量管理を実践することで節電意識を向上させている。今後はこれらの活動結果を見える化(数値化)することで、電気使用量節減による温室効果ガス削減に繋げる予定である。
この他に、サプライチェーンでの温室効果ガス排出削減に関連し、玄米・精米の受入れ、および精米の出荷に関わる輸送過程で、これら運送会社の輸送体制合理化に伴う車両削減に応じ、当社側でも受入れ・出荷体制を変更し、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減に取り組んでいる。
(3) 社会
⮚ xx県産米の積極的取り扱い
当社で取り扱う精米ブランドは 250 アイテムで、このうち 160 アイテムがxx県産米である。年間の精米・玄米売上のうち、約 70%を占めており、地域企業として積極的に仕入れ、県内外で販売を行っている。
⮚ 低コスト生産米への積極的取り組み
(直播栽培米への積極的取り組み)
、
国内の稲作農業が抱える課題として生産コストの低減があげられるが、この対応策の一つに低コスト生産米がある。低コスト生産米とは、作業工程を大幅に減らし、少ない労働力で作付面積を維持、または拡大する生産方法である。田植えまでに必要な苗箱の準備土づくり、種播き、育苗といった作業を省略し、田んぼに直接種を播く方法でコストを削減し、持続可能な米作りとして北海道で生産されている。品種は「えみまる」で、当社でも作付け増加等の生産者支援に積極的に取り組んでいる。
▴農作業の省力化を実現する直播栽培米
⮚ 米飯食味評価士有資格者の配置
米飯食味評価士とは、日本産業規格(JIS)官能評価を基に所定の研修を経て試験に合格し、食味試験の適正な評価者と判定され、且つ食味評価の試験方法及び実施方法を習得した者である。精米から炊飯事業まで米飯に関わる当社では、商品の品質維持・向上のため、本資格の有資格者を2人配置している。
⮚ 精米 HACCP 認定の取得
精米 HACCP とは食品の安全を確保するために、世界標準である HACCP 手法を精米製造に採り入 れたものである。精米工場は米の生産から消費 に至るフードチェーンの一環を担っており、そ の役割は大きく、当社では、精米の安全性確保 の徹底を図るため、2017 年 12 月精米工場にお いて(一社)日本精米工業会から精米 HACCP 認 定を取得し、精米の HACCP に取り組んでいる。 ちなみに 2023 年 12 月 15 日現在、全国では 178 社 202 事業所(精米工場)が精米 HACCP を取得 している。
⮚ 炊飯 HACCP 認定の取得
炊飯 HACCP とは主に炊飯製品または米飯加工品の安全確保を目的に HACCP 手法を炊飯事業に取り入れたものである。当社では、炊飯製品及び米飯加工品の安全性確保の徹底を図るため、 2002 年9月炊飯工場において(公社)日本炊飯協会から炊飯製品 HACCP 認定を、2019 年5月に炊飯加工品 HACCP 認定をそれぞれ取得し、炊飯事業の HACCP に取り組んでいる。
⮚ 地元小学生を対象とした工場見学の開催主食としての米の重要性の理解を
広めるため、当社では毎年定期的に小学生を対象とした工場見学と食育授業を開催している。2023 年度は 21
校 1,341 人の小学生を招いており、好評なことから今後も継続予定である。
⮚ 自治体との災害時の食料支援協定締結
当社では、過去の大規模自然災害発生時に被災地向けに食料支援を実施している。2020年にはxx市からの要請を受け、主食である米の供給を通じ、地域の支援を目的とした「災害時における食料等の供給及び運搬に関する協定」を締結している。
⮚ 健康経営優良法人の認定取得
従業員の労働環境の維持改善を進めており、2022 年・2023 年と連続で健康経営優良法人に認定されている。2022年度の当社の有給休暇取得率(対付与日数)は 30.8%で、今後も更に取得増加を予定している。なお、この他に時間外労働は法令範囲内以内にある等、法定基準を満たしていることを確認している。
⮚ 65 歳定年制による就業機会の提供と地域経済への貢献
当社では、人材活用と地域の雇用促進を目的に、パート従業員まで含めた全従業員を対象に定年年齢を 65 歳へ引上げ済みであり、60 歳以上の従業員は 25%(基準日現在)を占め、地域における雇用機会の創出を実現し、地域経済へ貢献している。
⮚ 精米事業における大型先端器導入による従業員の安全確保と省力化
玄米は、搬入時に 30 ㎏から 1,020 ㎏の専用袋で搬入され、精米は主に 10 ㎏単位で搬出されている。これらを扱う従業員の体力的負担軽減と危険排除のため、大型先端機器を導入している(P3工場内写真・P6精米事業フロー写真参照)。
⮚ ジェンダーレスな組織の実現(女性管理職の登用)
当社では、性別に関わらず全ての従業員が能力を発揮できるよう、2020 年4月のxx県 SDGs 推進企業登録を機会に女性の管理職登用を進めている。この時点では女性管理職は0%であったが、取り組みの結果により 2022 年度末時点で 12.5%となっており、今後更に運用を進める予定である。
(4) 企業統治
⮚ 精米 HACCP・炊飯 HACCP に基づく食品安全衛生管理
HACCP に基づく食品管理においては、単にその安全性を確保するだけでなく、その生産現場で働く従業員一人ひとりが HACCP7原則 12 手順を十分理解し、これを実践することでマネジメントシステムとして有効に機能し・改善につなげることが求められている。定期的に認定機関の審査を受け、認定を維持するためには、以下の項目への対応が求められており、厳しい基準に合致した社内体制の構築が必要である。精米事業では 2017 年から6
年、炊飯事業では 2002 年から 21 年認定継続している当社では食品安全管理者が中心となり、精米・炊飯事業とも高いレベルでマネジメントシステムが運用されている。
【HACCP システムに求められる基本手順および原則】
(抜粋)
HACCP チームの編成製品についての記述意図する用途の特定
製造工程一覧図(フローダイヤグラム)作成製造工程一覧図の現場での確認
ハザード(危険要因)の分析重要管理点(CCP)の決定
管理基準の設定
モニタリング方法の設定改善措置の設定
検証方法の設定
文書化及び記録の保持
当社の事業活動全体に対する包括的分析を実施し、インパクトを特定する。
側面 | インパクト領域 | ポジティブ | ネガティブ | |
社会 | 入手可能性 、ア クセス可能性 、手 ごろさ 、品 質 | 水(使用可能性) | ||
食糧 | ● | |||
住居 | ||||
xx・xx | ● | |||
教育 | ||||
雇用 | ● | ● | ||
エネルギー | ||||
移動手段 | ||||
情報 | ||||
文化・伝統 | ● | |||
人格と人の安全保障 | ||||
xx・xx | ||||
強固な制度・平和・安定 | ||||
環境 | 質 (物 と 理 有 的効 ・化利 学 用 的 特性 ) | 水(質) | ● | |
大気 | ● | |||
土壌 | ||||
生物多様性と生態系サービス | ● | |||
資源効率・安全性 | ● | |||
気候 | ● | |||
廃棄物 | ● | |||
経済 | 人と社会のための 経済的価値創造 | 包摂的で健全な経済 | ● | |
経済収束 | ● |
当社の事業について国際標準産業分類(ISIC:International Standard Industrial Classification of All Economic Activities)における「農産品原料及び生き物卸売業」と「調理食品製造業」として整理され、その前提のもと、UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、ポジティブ・インパクト●及びネガティブ・インパクト●が下表のとおり分析された。
国別インパクトについて、日本では「住居」、「雇用」、「エネルギー」、「情報」、「文化・伝統」、「移動手段」、「水(質)」、「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」、「包摂的で健全な経済」のニーズが高く設定されている。
ここまでの分析を踏まえ、業種・国の観点から推定された当社の事業に係るインパクト領域は、下図のとおりである。
4.特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動等との関連性
UNEP FI のインパクト分析ツールから示されたインパクト領域と当社の事業活動・業種特性等から、インパクト領域を特定する。
⮚ ポジティブ・インパクト
事業活動等の内容 | インパクト領域 | 分野 |
∙ 安心安全な米の提供 (特別栽培米の取り扱い、精米 HACCP 及び炊飯HACCP 認定による食品安全衛生への取り組み) | 食糧 保健・衛生 | 社会 |
∙ 環境に配慮した米の安定的供給 (無洗米商品・特別栽培米の取り扱い) | 食糧 | 社会 |
水(質) 生物多様性と生態系サービス | 環境 | |
∙ xx県産米の積極的取り扱いによる生産 農家支援 | 食糧 | 社会 |
包摂的で健全な経済 | 経済 | |
∙ ジェンダーレスな組織の実現 (女性管理職の登用) | 雇用 | 社会 |
包摂的で健全な経済 | 経済 | |
∙ 65 歳定年制導入による就業機会の提供と 地域経済への貢献 | 雇用 | 社会 |
包摂的で健全な経済 | 経済 | |
∙ 食の重要性及び米文化の伝承のための小 学生向け工場見学開催 | 文化・伝統 | 社会 |
∙ 精米過程で発生する米糠のキノコ培地への活用(販売) ∙ 食品残渣の養鶏飼料としての提供(販売) | 資源効率・安全性(追加)廃棄物(追加) | 環境 |
∙ xx県産米の積極取り扱いによる地域x x農業及び経済への貢献 | 経済収束(追加) | 経済 |
⮚ ネガティブ・インパクト
事業活動等の内容 | インパクト領域 | 分野 |
∙ 精米事業における大型先端器導入による従業員の安全確保と省力化 ∙ 安全衛生管理者有資格者2名配置(労働者数 200 人までは1名で要件充足) ∙ 健康経営優良法人申請を通じた労働環境 のチェックと課題把握 | 保健・衛生 | 社会 |
∙ 有給休暇の取得促進 | 雇用 | 社会 |
∙ 無洗米商品の取り扱い ∙ 精米工場での使用水量管理による節水及び排水量削減 ∙ 特別栽培米(減農薬減化学肥料栽培米)の 取扱い | 水(質) 生物多様性と生態系サービス | 環境 |
∙ バイオマス米袋の採用、炊飯加工商品容器のポリエチレン使用削減およびバイオマス包装用フィルム採用による焼却廃棄時 の大気汚染物質排出抑制 | 大気 気候 廃棄物 | 環境 |
∙ バイオマス米袋の採用、炊飯加工商品容器のポリエチレン使用削減およびバイオマス包装用フィルム採用による石油由来資 材の使用量削減 | 資源効率・安全性 | 環境 |
∙ 温室効果ガス排出量削減への取り組み | 気候 | 環境 |
∙ 炊飯工場での食品残渣の廃棄量の計測及 び削減への取り組み | 廃棄物 | 環境 |
なお、ネガティブ・インパクトの経済収束については、サプライチェーンにおいて不当な取引等は確認されず、ネガティブの抑制が十分になされていることから、インパクトの特定はするものの、KPI の設定はしない。
側面 | ポジティブ・インパクト | ネガティブ・インパクト |
社会 | 食糧 保健・衛生(追加) 文化・伝統雇用 | 保健・衛生 雇用 |
水(質) | ||
大気 | ||
生物多様性と生態系サービス | ||
環境 | ||
資源効率・安全性(追加) | 資源効率・安全性 | |
気候 | ||
廃棄物(追加) | 廃棄物 | |
経済 | 包摂的で健全な経済経済収束(追加) | 経済収束(KPI 設定せず) |
業種別インパクトを基に、当社の事業特性・活動状況等を考慮した包括的分析の結果、当社のインパクトを下図のとおり特定する。
Ⅵ.特定したインパクトと設定 KPI
No. | 1 | |
インパクトエリア | 食糧(ポジティブ)、保健・衛生(ネガティブ) | |
目的・テーマ | 安全・安心な食品の提供 | |
取り組み内容 | 精米 HACCP 及び炊飯 HACCP 認定の継続取得(xx的施策) | |
KPI | 2028 年度まで認定継続取得(2023 年度まで認定取得継続中) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧 困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 |
No. | 2 | |
インパクトエリア | ① 保健・衛生(ネガティブ) ② 雇用(ネガティブ) (各取り組み内容・KPI を対応番号①②で示す) | |
目的・テーマ | 労働環境の維持向上 | |
取り組み内容 | ① 健康経営優良法人認定取得の継続 ② 有給休暇の取得促進 | |
KPI | ① 2028 年度まで認定継続取得(2023 年度まで認定取得継続中) ② 付与日数に対する有給休暇取得率 40%以上(期限 2028 年度) (2022 年度実績 30.8%) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、x x・安心な労働環境を促進する。 |
No. | 3 |
インパクトエリア | 文化・伝統(ポジティブ) |
目的・テーマ | 食育への取り組み |
取り組み内容 | 米文化の伝承 |
KPI | 工場見学実施回数平均 20 回以上維持 (2022 年度実績 15 回) |
対応する SDGs (ターゲット) | 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 |
No. | 1 | |
インパクトエリア | 食糧(ポジティブ) 水(質)(ネガティブ)、生物多様性と生態系サービス(ネガティブ) | |
目的・テーマ | 米の研ぎ洗いに使用する水及び発生する排水の抑制(商品消費段階) | |
取り組み内容 | 無洗米商品の販売量増加 | |
KPI | 無洗米取扱量割合 20%までの引き上げ(期限 2028 年度) (2022 年度実績 6.6%) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 15.1 2020 年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、xx及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 |
No. | 2 | |
インパクトエリア | 食糧(ポジティブ) 水(質)(ネガティブ)、生物多様性と生態系サービス(ネガティブ) | |
目的・テーマ | 米の生産過程での農薬及び化学肥料由来窒素の使用量削減 | |
取り組み内容 | 特別栽培米の販売量増加 | |
KPI | 特別栽培米の販売量 150 トンまでの引き上げ(期限 2028 年度) (2022 年度実績 131 トン) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 3.9 2030 年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 15.1 2020 年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、xx及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続 可能な利用を確保する。 |
No. | 1 | |
インパクトエリア | 食糧(ポジティブ)、包摂的で健全な経済(ポジティブ) | |
目的・テーマ | 生産農家支援による稲作振興 | |
取り組み内容 | 生産者との直接取引件数の増加 | |
KPI | 生産者との直接取引件数 50%増加(期限 2028 年度) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 2.3 2030 年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。 2.4 2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、 |
洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農 業を実践する。 |
No. | 2 | |
インパクトエリア | 雇用(ポジティブ)、包摂的で健全な経済(ポジティブ) | |
目的・テーマ | ジェンダーレスな組織の実現 | |
取り組み内容 | 女性管理職の登用 | |
KPI | 管理職に占める割合 30%までの引き上げ(期限 2028 年度) (2022 年度実績 12.5%) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。 5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。 |
No. | 1 |
インパクトエリア | 資源効率・安全性(ネガティブ) |
目的・テーマ | 環境負荷軽減 |
取り組み内容 | ① バイオマス米袋の使用量増加 ② 炊飯事業でのバイオマス包装用フィルム使用量増加 |
KPI | ① 取り扱い量 60%増加(期限 2028 年度) (基準:2022 年度使用量 24.6 万枚) ② 取り扱い量 80%増加(期限 2028 年度) (基準:2022 年度使用量 11.0 万枚) |
対応する SDGs (ターゲット) | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
No. | 2 | |
インパクトエリア | 気候(ネガティブ) | |
目的・テーマ | 温室効果ガス排出量の削減 | |
取り組み内容 | スコープ1・2・3での排出量削減(外部専門家機関も活用) | |
KPI | ① 2024 年度温室効果ガス排出量算定開始 ② 2025 年度温室効果ガス排出量削減計画立案・削減に着手 ③ 2026 年度以降、削減に向けた取り組みの推進 | |
対応する SDGs (ターゲット) | 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
No. | 3 | |
インパクトエリア | 廃棄物(ネガティブ) | |
目的・テーマ | フードロス削減 | |
取り組み内容 | 炊飯事業での食品残渣廃棄量削減 | |
KPI | 食品残渣年間廃棄量 14.0 トンまでの削減(期限 2028 年度) (2022 年度実績 20.3 トン) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及 び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
当社では、本ファイナンスに取り組むにあたり、xxx代表取締役社長が陣頭指揮を執り、PIF委員会が中心となって、社内制度・計画・日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、社内の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxx |
担当部署 | PIF 委員会 |
本ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とし、PIF 委員会(SDGs・HACCP責任者等、組織横断的に任命された7名で構成)が中心となり、KPI 達成に向けて役員会議をはじめとした諸会議・ミーティングで社内浸透させることで各部署へ施策を展開する。
本ファイナンスの実行にあたり設定した KPI については、当社と(株)八十二銀行ならびに(一財)xx経済研究所が少なくとも年に1回の頻度でその進捗状況及び達成状況を確認・共有する。
(株)八十二銀行は、自行が持つノウハウやネットワークを活用し、当社のKPI の達成を適宜サポートする予定である。
モニタリング期間中に一度達成した KPI については、その後も引き続き達成水準を維持していることを確認する。なお、当社の事業環境の変化等により設定した KPI が実情にそぐわなくなった場合には、当社と(株)八十二銀行ならびに(一財)xx経済研究所が協議し、再設定を検討する。
本評価書の記載のとおり、当社の企業活動は、社会・環境・経済に対するポジティブな成果の伸長とネガティブな影響の緩和・軽減に寄与するものであり、これらを支援するためのサステナビリティ推進及びモニタリング体制についても十分であると、(一財)xx経済研究所では判断する。
なお、本評価書の十分性を含め、ファイナンス全体に係る UNEP FI の「ポジティブ・インパクト金融原則」等への準拠性については、別途、(株)日本格付研究所の第三者意見書により確認を受けるものである。
以 x
1. 本評価書は、(一財)xx経済研究所がベイクックコーポレーション(株)から委託を受けて作成したもので、(一財)xx経済研究所がベイクックコーポレーション(株)に対して提出するものです。
2. 本評価書の評価は、依頼者であるベイクックコーポレーション(株)から供与された情報と、(一財)xx経済研究所が独自に収集した情報に基づく基準日現在での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、(一財)xx経済研究所は本評価書を利用したことにより発生するいかなる費用または損害について一切責任を負いません。
<本評価書に関するお問い合わせ先>
x000-0000 xxxxx 000-00 xxxxx0x一般財団法人xx経済研究所
経営相談部 コンサルティンググループ上席コンサルタント xx x
Tel:000-000-0000 Fax:000-000-0000
第三者意見書
2024 年 1 月 31 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: ベイクックコーポレーション株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社八十二銀行 |
評価者:一般財団法人xx経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、八十二銀行がベイクックコーポレーション株式会社(「ベイクックコーポレーション」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、xx経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ
(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。八十二銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、xx経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、八十二銀行及びxx経済研究所にそれを提示している。なお、八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体で
ある。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1 定義
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
八十二銀行及びxx経済研究所は、本ファイナンスを通じ、ベイクックコーポレーションの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、ベイクックコーポレーションがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2 フレームワーク
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、八十二銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:八十二銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、八十二銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、八十二銀行からの委託を受けて、xx経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全てxx経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、xx経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面の
インパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるベイクックコーポレーションから貸付人である八十二銀行及び評価者であるxx経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト
xx xx
担当アナリスト
xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000