Contract
平成 30 年度 コンテンツ産業新展開強化事業
(我が国コンテンツの海外展開を図るための多様な資金調達手法に関する検証事業)
虎ノ門協同法律事務所 弁護士 xx xx |
目 次
1. はじめに
映画の製作には少なからぬ資金が必要となります。マンガ、小説、ゲームなどを基にした映画を製作しようとする際に、いきなり高額な使用料を支払って原作使用許諾契約を締結するのはリスクが高いため、あらかじめその映画がビジネスとして成立するかを検証する必要が生じます。一定の期間、原作を使用して、その映画化がビジネスとして成立するのかを検討し、そのうえで原作使用許諾契約を締結するかどうかのオプション (選択権) を付与する契約がオプション契約です。
オプション契約の内容として、オプション権行使後の原作使用許諾契約の内容が確定していない場合と確定している場合があります。前者の場合は、オプションを行使した後に改めて原作使用許諾契約の内容について交渉しなければなりません。後者の場合は、あらかじめ原作使用許諾契約の内容が確定しているため、オプションを行使すれば、当該原作使用許諾契約が有効となります。
なお、本契約書サンプルはあくまでもひとつの例であり、このまますべてのケースで使用できるものではありません。実際に契約交渉や取引を行う際には、弁護士などの専門家にご相談のうえ、それぞれの事情を踏まえた契約書を作成して使用するようにしてください。
オプション契約書サンプル
原作者 (以下「甲」という。) と製作会社 (以下「乙」という。) とは、xが創作した下記の著作物 (以下「本著作物」という。) を原作として使用する劇場用実写映画の製作及び利用に関し、以下のとおり合意する (以下「本契約」という。)。
記
作品名 | 《対象となる著作物のタイトルを記入》 |
出版社 | 《対象となる著作物の出版社名を記入》 |
以 上
ここでは、あらかじめ原作使用許諾契約の内容が確定していることを前提としたオプション契約を解説します。
• 契約書のタイトルで契約内容が決まるものではありませんが、内容に沿って適切・簡潔なタイトルとするのがよいでしょう。
• 前文は、契約内容ではありませんので、簡潔に、当事者を記載し、どのような内容の契約を取り交わすかを明記すればよいでしょう。
• 本契約書サンプルでは、前文において、契約の対象となる原作を特定しています。ここには、契約の対象となる原作が特定できる事項が明記されていれば十分であり、一般的には、原作の題名と出版社を記載すれば事足りると思います。
第1条 甲は乙に対し、本著作物に関し、本契約に添付された原作使用許諾契約 (以下「本原作使用許諾契約」という。) の予約完結権 (以下「本オプション権」という。) を独占的に付与するものとし、乙は甲に対しその対価を支払う。
オプションの契約の主となる約束を明記しています。
原作者は、製作会社に対し、原作使用許諾契約の予約完結権を付与することを約束しています。予約完結権とは、その権利を有する者が予約完結の意思表示 (予約完結権の行使) をすれば、契約が成立するという内容です。これをオプション権として定義づけています。
原作使用許諾契約の内容については、別途提示している原作使用許諾契約書サンプルを前提とし、内容が確定した原作使用許諾契約書を、オプション契約書の別紙として添付して原作使用許諾契約の内容を特定する方法をとっています。
そしてこれに対して、製作会社は、原作者に対し、オプション権付与の対価を支払うことを約束しています。
第2条 乙が甲に対して、本契約に基づき本オプション権を行使することができる期間は、本契約締結の日から1年間とする。
2 乙は、前項の期間満了までに乙に対して書面により通知することにより、本契約に基づき本オプション権を行使することができる期間を前項の期間満了日から更に6カ月間延長することができる。
• 第1項では、製作会社が独占的に原作の映画化を検討できる期間を定めています。期間は 1
年程度が一般的です。
• 第2項において、1 回に限り、オプション権の有効期間を 6 カ月間延長することを可能にしています。
第3条 乙は甲に対し、前条第1項の期間にかかる本オプション権の対価として、金●●●●万円 (消費税別) を、本契約締結の日から7日以内に、甲の指定する銀行口座に振り込む方法により支払うものとする。振込送金に要する費用は乙の負担とする。
2 前条第2項に基づき本オプション権の有効期間を延長した場合、乙は甲に対し、当該延長期間にかかるオプション権の対価として、金●●●●万円 (消費税別) を、延長期間の開始日から7日以内に、甲の指定する銀行口座に振り込む方法により支払うものとする。振込送金に要する費用は乙の負担とする。
3 前2項に基づく本オプション権の対価の支払は、別添原作使用許諾契約第8条第1項に定める対価の支払の一部に充当される。
オプション権付与の対価 (オプション料) を定めています。
• 第1項、第2項において、オプション権の有効期間に対応したオプション料を定めています。オプション料は、原作使用許諾契約で支払う対価 (別途提示している原作使用許諾契約書サンプルで言えば第8条第1項に定める対価) の 10%程度が一般的とされています。
• 第3項において、オプション権を行使した場合、オプション料は原作使用許諾の対価 (別途提示している原作使用許諾契約書サンプルで言えば第8条第1項に定める対価) に充当されることを定めています。
第4条 第2条に定める有効期間内に、乙が甲に対し本オプション権を行使する旨を書面で通知することにより本オプション権が行使される。
2 前項の通知が甲に到達した時に本原作使用許諾契約が有効に成立するものとする。
オプション権行使の方法及び原作使用許諾契約が有効になる時期を定めています。
第5条 甲は、本オプション期間内は、乙以外の者に対して、本著作物を原作として、劇場用実写映画化する権利又はそのオプション権を付与しない。
2 甲は乙に対し、本契約締結時点において、乙以外の者に対して、本著作物を原作として劇場用実写映画化する権利又はそれらのオプション権を付与しておらず、又本オプション期間内は自ら劇場用実写映画化しないことを保証する。
オプション権の付与の独占性を確保するための規定です。第三者に原作の実写映画化やオプション権を付与しないこと、また、既にそうした権利を第三者に付与しておらず、原作者自らも実写映画化していないことを確認しています。
第6条 本著作物に基づき劇場用アニメーション映画を製作・利用する権利は、甲に留保される。
原作者として留保しておきたい権利を規定しています。このオプション契約では、原作の劇場用実写映画に関する権利許諾やその前提としてオプション権を付与していますが、これらは劇場用アニメーション映画には及ばないことが明記されています。
第7条 甲は、乙に対し、本オプション権の有効期間中、乙による本著作物の使用に関して、著作者人格権を行使しないことを約する。
オプション権の有効期間中、製作会社による原作の使用について著作者人格権を行使しないことを約束しています。映画化の検討のため、原作を基にいろいろな観点から原作を改編するなどの試みをすることが想定されますので、こうした条項を設けておく意義があります。
第8条 甲及び乙は、相手方からの事前の書面による同意なしに、本契約に基づく権利又は義務の全部又は一部を第三者に譲渡し、又は担保に供することはできない。
一般的な権利譲渡等の禁止条項です。例えば、製作会社は、原作者に無断で、この契約で得たオプション権を第三者に譲渡することはできません。また、原作者は、製作会社に無断で、製作会社に対する債権 (オプション料の請求権) を第三者に譲渡できません。
第9条 甲及び乙は、本契約の条件及び本契約を履行するうえで知り得た相手方の秘密の事項に関して、本契約の有効期間中はもちろん、本契約の終了後●年間は、秘密を遵守する義務を負い、相手方の事前の書面による承諾なく、第三者に開示又は漏洩してはならないものとする。
一般的な守秘義務を定めたものです。
第 10 x x又は乙のいずれかが本契約に違反した場合、相手方当事者は、相当の期間を定めて催告するものとし、催告期間を経過してもなお当該違反が是正されないときは、本契約を解除することができる。この場合、契約に違反した当事者は、相手方当事者に対し、相手方当事者が被った一切の損害を賠償する義務を負う。
2 相手方当事者に次の各項に定める事由のひとつが発生した場合、甲又は乙は、何らの通知催告を要せず、直ちに本契約を解除することができる。
(1) 支払停止状態に陥った場合、その他財産状態が悪化し又はそのおそれがあると認められる相当の理由があるとき
(2) 手形交換所の取引停止処分を受けたとき
(3) 差押、仮差押、仮処分、競売又は租税滞納処分の申立を受けたとき
(4) 破産手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始もしくは民事再生手続開始の申立を受け、又は自ら申立をしたとき
(5) 上記のほか、財産状態、信用状態又は事業内容に重大な変更が生じ、本契約の債務の履行が困難と認められる客観的な事情が生じたとき
契約の解除事由を定めたものです。
• 第1項は、いずれかの当事者が契約に違反した場合の解除の手続を定めています。
• 第2項は、いずれかの当事者の信用状態が悪化した場合の解除の手続を定めています。
第 11 条 甲及び乙は、本契約の各条項を誠実に履行し、本契約に規定のない事項又は本契約の各条項の解釈もしくは履行に疑義が生じたときは、xxxxの原則に基づき協議を行い、その解決を図る。
一般的な協議条項です。具体的に予想されるリスクについては、この条項で解決を図るのではなく、どのように処理するのかを交渉して、具体的な条項として定めるべきです。
第 12 条 本契約の準拠法は日本法とし、本契約から生じる一切の紛争については、東京地方裁判所を第xxの専属的合意管轄裁判所とする。
準拠法を日本法とし、第xxの裁判管轄を東京地方裁判所のみと指定しています。
本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名又は署名捺印のうえ各1通を保有する。
20●●年●●月●●日
(甲) 《住所を記載》
《企業・団体名を記載》
《代表者役職・氏名を記載》
(乙) 《住所を記載》
《企業・団体名を記載》
《代表者役職・氏名を記載》