1.米ドルLIBORの公表停止に向けたタイムライン
免責事項
1.米ドルLIBORの公表停止に向けたタイムライン
2.契約への対応(移行とフォールバック)
3.契約上必要な手続きの確認フロー
4.米ドルLIBORの代替金利指標 ~「SOFR」とは何か~
5.米ドルLIBORからの移行
①「SOFR」、「SOFRに依拠する金利」、および、「ターム物SOFR」の概要
②SOFRに依拠する金利
③ターム物SOFR
6.ビジネスローンのフォールバックにおける留意事項
①ARRCにおけるフォールバックに関する検討
②フォールバック・レートの推奨内容
③価値の移転とスプレッド調整
➃トリガー・イベント、および、スプレッド調整値の確定
7.ビジネスローンにおける利息計算方式(コンベンション)
(参考資料1)主要法域におけるLIBOR移行対応やターム物金利の構築状況
本資料の利用により、直接または間接にトラブルや損失・損害等が発生しても当協会は一切責任を問わないものとします。
本資料は、原則として2022年1月末時点の情報にもとづき、 2023年6月末に公表停止される米ドルLIBOR(O/N物、および1,3,6,12カ月物)への対応を念頭に作成しています。
本資料は、米代替参照金利委員会(ARRC: Alternative Reference Rates Committee)から公表された資料など、現状で信頼できると考えられる各種情報にもとづいて作成していますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。
本資料は、一般的な情報提供を目的としており、法務、会計、税務その他の専門的助言を提供するものではありません。
金利指標を利用する際には、ライセンス取得が必要になることがあります。
(参考資料2)フォールバック条項の推奨文言(シンジケート・xxx/相対貸出) 実際のご対応、お取引に当たっては、取引金融機関の担当者
(参考資料3)後決め金利の利息計算方式(コンベンション)
(参考資料4)Credit Sensitive Rateについて
(参考資料5)金利推移およびデリバティブ市場での移行状況
(参考資料6)関連リンク集
とご相談のうえ、お手続きを進めていただきますようお願いします。
2022年2月改訂版
米当局やARRC等における検討の結果、米ドルLIBORからの移行に関する一定の整理は、既に完了しています。米ドルLIBOR参照新規取引の停止を前提として、今後は、同参照既存契約の削減を進めていくことが重要です。
マイルストーン
2020年
公表停止時期等の公表(トリガー・イベント)3/5日※1
2021年
米ドルLIBOR参照新規取引の停止
2022年~
12/31日※2
2023.
6.30
当局・制度等
貸出
商品
デリバティブ
指標等
会計基準アップデート(FASB,3月)
移行完了に向けたベストプラクティスのアップデート(8月)
キャッシュ商品のフォールバックにおけるスプレッド調整手法の推奨 (市中協議結果:4月、詳細:6月)
フォールバック条項(推奨文言)の改訂版
(シンジケート・□ーン:6月、相対貸出:8月)
SOFR(後決め)の利用に関するコンベンション (シンジケート・□ーン:7月、相対貸出:11月)
LIBOR対応に係るISDA定義集・プ□トコル最終化(ISDA,10月)
SOFR AveragesおよびSOFR Index公表開始(NY Fed,3月)
は、米代替参照金利委員会
(ARRC)による取組み
会計基準アップデート(FASB,1月)
米ドルLIBORからの移行に関する法律が成立
(セーフハーバー) (NY州,4月)
キャッシュ商品におけるスプレッド調整値の公表主体としてRefinitivを選定 (3月)
フォールバック条項の補完的な推奨文言<シンジケート・□ーン、相対貸出>(3月)
ターム物SOFR、SOFR Averagesの利用に関するコンベンション<シンジケート・□ーン、相対貸出>(7月)
フォールバックの推奨に関するサマリー(10月)
LIBOR対応に係るISDA定義集・プ□トコル発効(ISDA,1月)
SOFRファースト(CFTC MRAC,7月~) ISDA新定義集発効(ISDA,10月)
CME Term SOFR Reference Rates公表開始(CME,4月)
SOFR Averagesの利用ガイド(5月)
ターム物SOFRのユースケース(7月)
ターム物SOFRとしてCME Term SOFR Reference Ratesを推奨(7月)
税務上の取扱いに関する最終規則(IRS,1月)
LIBOR参照既存契約の削減へ
x x 的 な 公 表 停 止
(注)
※1 LIBOR監督当局(FCA)の声明において、公表停止時期等が発表されました(「トリガー・イベント」についての詳細は、P.11をご参照ください)。
※2 米当局からは、例外を除き、2021年末までに、米ドルLIBORを用いる新規取引を停止するよう奨励されています(詳細はP.3をご参照ください)。
(注)米ドルLIBORの一部テナー(1週間物、2カ月物)に関しては、 2021年12月末をもって公表停止されています。 1
XXXXXがxx的に公表停止された場合に備え、LIBORを参照する契約については、「移行」と「フォールバック」という2つの対応が考えられます。
LIBOR参照の既存契約について、LIBORのxx的な公表停止後 に参照する金利(フォールバック・レート)を、契約当事者間で公表停止前にあらかじめ合意しておく対応方法
新規契約・参照金利の変更契約等を行う金融商品・取引について、参照金利をLIBORではなく、代替金利指標を用いる対応方法
②フォールバック
①移行
LIBORを参照する契約への対応
LIBOR参照契約
満了
代替金利指標を参照
代替金利指標にて新規契約
LIBOR参照契約
代替金利指標を参照
金利条件変更契約
代替金利指標へ変更
(契約は継続)
LIBOR参照契約
フォールバック条項の導入
(あらかじめの合意)
代替金利指標へ変更
(契約は継続)
指標を参照
代替金利
LIBOR
を参照
LIBOR
を参照
LIBOR
を参照
LIBOR公表停止後の初回利払い日等のタイミングでフォールバック条項に定めた内容にもとづき金利指標を変更
①移行
新規契約
条件変更
米ドルLIBOR公表停止(2023年6月末以降直ちに(注))
②フォールバック
(注)米ドルLIBORの一部テナー(1週間物、2カ月物)に関しては、 2021年12月末をもって公表停止されています。 2
以下のフロー図をご活用いただき、お客様のご契約において必要なお手続きをご確認ください。
(以下は一例であり、お取引の種類や契約形態等により対応プロセスが異なる場合がありますのでご留意ください。)
新規契約
2023年6月末以降直ちに公表停止となる場合を想定(注)
LIBORを
利用する 契約(予定)
の有無
2023年6月末
(LIBOR公表停止時) に金利条件を変更する場合
2023年6月末より前に金利条件を変更する場合
期日到来後に
改めて契約する場合
移行
対応不要
フォールバック条項導入
2023年6月末以降に
LIBORを参照する契約
期日が 2023年6月末以前の契約
既存契約
対応要
有
移行
無
移行
■ 上図の「新規契約」について、タイムライン(P.1)に記載のとおり、米当局からは、例外を除き(*)、2021年末までに、米ドル
LIBORを用いる新規取引を停止するよう奨励されていることから、2021年末以降は、「移行」の手続きが求められます。
(*)米当局は、新規契約の対象を明確化する観点から、「新規契約には、①監督下の金融機関に対して追加的なLIBORエクスポージャーが発生、または、②既存LIBOR参照契約の期間を延長する契約が含まれている」ことをガイドラインとして公表しており、例えば、LIBORを参照する既存 ポジションの低減またはリスク管理目的等でのデリバティブ取引は新規契約から除かれるほか、「法的強制力のある既存の契約(例えば、コミットメントライン)の利用は、新規契約とはみなされない」ことも併せて示されています。
■ フォールバックに関して、FRB等の当局からは、頑健かつ明確なフォールバック・レートを規定したフォールバック条項を契約に導入する
よう推奨されています。なお、フォールバックでは、 LIBOR公表停止後、同時期に金利指標の切り替え作業が集中するため、事務・システム面の対応には留意が必要です。
(注)米ドルLIBORの一部テナー(1週間物、2カ月物)に関しては、 2021年12月末をもって公表停止されています。 3
米ドルLIBORの代表的な代替金利指標は、ニューヨーク連邦準備銀行より米国政府証券営業日に公表されるリスク・フリー・レート(RFR)であるSOFR(Secured Overnight Financing Rate、担保付翌日物調達金利)です。※1
SOFRは、金融機関同士で取引される米国債を担保にした翌日物のレポ金利の実取引を基に算出されており、算出のベースとなる取引の規模も踏まえると、米ドルLIBORに比べ頑健であり、不正が生じにくいとされています。
SOFRと米ドルLIBORの比較
金利の種類 | SOFR | 米ドルLIBOR |
算出・公表(運営機関) | NY連銀 | IBA(ICE Benchmark Administration) |
期間構造 | なし(翌日物)※2 | あり(O/N,1,3,6,12カ月物)(注) |
銀行の信用リスクプレミアム/ 流動性プレミアム等 ※3 | ほとんど含まない | 含む |
金利の決定プロセス | 実取引を参照 | 実取引、気配値を参照、専門家判断 |
算出のベースとなる取引の規模 | 1兆ドル程度 | 5億ドル程度 (3カ月物のホールセール無担保資金市場の取引量) |
将来予測の有無 | xxxxxx・xxxxx (過去の実績値を反映) | xxxxx・xxxxx (先行きの見通しを反映) |
各通貨において特定された「リスク・フリー・レート」
通貨 | RFR | 公表主体 | 取引タイプ | 期間 | 公表開始時期 |
米ドル | SOFR | NY連銀 | 有担保 | 翌日物 | 2018年4月~ |
英ポンド | SONIA | イングランド銀行 | 無担保 | 翌日物 | 2018年4月~(改革後) |
日本円 | XXXX | 日本銀行 | 無担保 | 翌日物 | 1997年11月~ |
※1 SOFRは、米国政府証券営業日(U.S. Government Securities Business Day:土曜日、日曜日、米国証券業金融市場協会(SIFMA)が推奨する米国政府証券取引休業日を除く日)に公表されるため、米ドル決済可能日であってもSOFRが公表されない日もあり、留意が必要です。
※2 SOFRを貸出契約等で利用する場合は、期間構造を持たせる必要があります(詳細はP.5,6)。
※3 流動性プレミアム等は、一定期間の資金調達を行う際の上乗せコスト(銀行の信用リスクプレミアムを除く)等を指します。
(注)1 週間物、2 カ月物に関しては、2021年12月末をもって公表停止されています。 4
ARRCの検討を踏まえ、米ドルLIBORからの移行に当たって、本資料において紹介する金利は以下のとおりです。
金利の種類 | 期間構造 | 公表主体 | ARRC の推奨等 | 親和性の高い商品 | 備考(適用イメージ等) | |||
Ⅰ.(翌日物)SOFR | なし (翌日物) | NY連銀 | すべての商品で推奨 | ― ※1 | ✓ 「リスク・フリー・レート」として米国政府証券営業日に公表 | |||
Ⅱ.(翌日物)SOFRに依拠する金利 | ||||||||
ⅰ.SOFR日次単利 (後決め) | 要計算 | ― | ※2 | すべての商品で推奨 | 貸出 | 適用イメージ(後決め) ✓SOFRを ✓金利支払日の直前に適用金利決定日次単利/複利計算 適用金利決定 利払い日 金利適用期間 ✓適用期間と参照期間に SOFR参照期間 数営業日のずれが発生 | ||
ⅱ.SOFR複利 (後決め) | 要計算 | ― | ※2 | 貸出、債券、デリバティブ | ||||
ⅲ.SOFR複利 (前決め) | 要計算 (ⅳを利用可) | ― (ⅳを利用可) | 企業間金融、住宅・消費者向け□ーン | 適用イメージ(前決め) ✓金利適用期間開始時点では ✓SOFRを複利計算 適用金利は決定済 適用金利決定 利払い日 SOFR参照期間 金利適用期間 ✓適用期間と参照期間にずれが発生 | ||||
ⅳ. SOFR Averages | 30日、90日、 180日(暦日) | NY連銀 | (ⅲ参照) | ✓ ⅲの利用を促すため、SOFRを所定の期間遡り、複利計算した指標としてNY連銀が公表するもの | ||||
Ⅲ.ターム物SOFR ※3 | 1,3,6,12 カ月物 | CME Group Benchmark Administration | キャッシュ商品のフォールバック等での利用を想定 (限定された利用範囲) | ✓ SOFRを参照するデリバティブに依拠する金利 ✓ LIBORと同じ市場慣行(コンベンション)で利用可能 |
※1 SOFRは、上表のとおり、期間構造のない翌日物金利であるため、貸出等の期間を有する商品に利用する場合、「Ⅱ」のように一定の計算等が必要となります。
※2 自社システムで計算、もしくは、ベンダーが算出・公表する金利を利用することが想定されます。
※3 ARRCは、ターム物SOFRを利用する場合、CMEが構築したCME Term SOFR Reference Rates(本資料公表時点では1,3,6カ月物)を推奨して
います(後述P.7)。なお、同指標の利用に当たっては、その利用目的に応じて、CMEグループからのライセンス取得が必要となる場合があります(P.18参照) 。 5
LIBORにおいて「1カ月物」や「3カ月物」が利用されるように、SOFRを貸出等の期間を有する契約で利用するためには、米国政府証券営業日に公表されるSOFRを都度反映する方法(日次単利)や、複利計算によって 期間構造を持たせる方法があります。
金利の選択に当たっては、LIBORと同様に金利適用期間の当初から利息金額が決定する「前決め」方式と、利払日直前に利息金額が決定する「後決め」方式があることなど、それぞれの特徴を踏まえて検討する必要があります。 ARRCは、基本的に「SOFR」、および、以下の「SOFRに依拠する金利」への移行を推奨しています。
(翌日物)SOFRに依拠する金利の比較
金利の種類 | SOFR日次単利(後決め) | SOFR複利(後決め) | SOFR複利(前決め) |
計算方法 | 米国政府証券営業日に公表される SOFRを都度反映※ | 複利計算 | |
金利決定のタイミング | 「後決め」方式 (利払日の直前) | 「前決め」方式 (金利適用期間開始時点) | |
課題 | 利払い日の直前に金利が決定することに起因して、 ✓ 事務・システム面の対応が必要(例:金利通知の迅速な対応等) ✓ 金利適用期間と金利参照期間に数営業日のずれが発生 | 「前決め」にすることに起因して、 ✓ 金利適用期間と金利参照期間の一定のずれが発生 | |
親和性の高い商品 | 貸出 | 貸出、債券、デリバティブ | 企業間金融、 住宅・消費者向け□ーン |
※ 期間中の残高に変動がない場合は、同期間中に参照する金利(SOFR)を単純平均する方法も考えられます。
SOFR AveragesとSOFR Index
種類 | 利用方法 |
SOFR Averages | ✓ 指標の基準日(各営業日)から遡って30日前、90日前、180日前から基準日までの期間について、それぞれSOFRを日次複利計算したもので、SOFR複利(前決め)に利用可能。 |
SOFR Index | ✓ SOFR公表開始日の2018年4月2日を「1」として運用した場合の基準日の資産評価額。任意の期間においてSOFRを複利計算した金利を比較的容易に算出でき、SOFR複利(後決め)の一定のコンベンションにも利用可能。 |
NY連銀は、上記のSOFR複利(後決め/前決め)を利用しやすくするため、 「SOFR Averages」や「SOFR Index」を公表しています。
6
金融安定理事会や米当局からはSOFRやSOFRに依拠する金利に移行するべきという強い意向が示された一方、特に貸出において、LIBORと同様の期間構造を持つターム物金利構築の要望が寄せられました。
ARRCは、2021年7月、ターム物SOFRを利用する場合には、CMEが公表するターム物SOFRを利用することを推奨するとともに、過剰な利用により基礎となるデリバティブ市場への悪影響等を避けるため、ターム物SOFRの利用範囲に関するベストプラクティス(ユースケース)を示しました。
ターム物SOFR(CME Term SOFR Reference Rates ※1)と米ドルLIBORの比較 金利の構造と各金利指標の関係(イメージ)
期間構造のある金利
(ターム物SOFR、
SOFR複利等)
米ドル
LIBOR
銀行の信用リスクプレミアム/
流動性 プレミアム等
RFR
SOFR
金利の種類 | ターム物SOFR | 米ドルLIBOR |
運営機関 | CME Group Benchmark Administration | IBA(ICE Benchmark Administration) |
ベースとなる取引 | SOFRを参照するデリバティブ ※2 | ホールセール無担保資金 市場の取引 |
期間構造 | あり(1,3,6,12カ月物) ※3 | あり(O/N,1,3,6, 12カ月物)(注) |
銀行の信用リスクプレミアム/ 流動性プレミアム等 | ほとんど含まない | 含む |
金利決定のタイミング | 「前決め」方式(金利適用開始時点) | |
利用可能性 | 限定された範囲に利用可能 | 2021年末以降、新規利用禁止 |
※1 同指標の利用に当たっては、その利用目的に応じて、CMEグループからのライセンス取得が必要となる場合があります(P.18参照) 。
※2 SOFR先物や一定の閾値以上の取引量等の条件を満たしたOISを、算出に当たって利用します。
※3 ARRCは、本資料公表時点では、同指標の1,3,6カ月物を推奨しています。
(注)1 週間物、2 カ月物に関しては、2021年12月末をもって公表停止されています。
取引の種別 | ユースケースにおいて利用を認める分野・商品等 |
新規取引 | ✓ LIBORから(翌日物)SOFRやSOFRに依拠する金利への移行が難しく、ターム物金利の利用が有用な分野。 ―― 例えば、multi-lender facilities, middle market loans, trade finance loans ✓ デリバティブにおいては、多くがSOFR複利(後決め)を利用していることから、ターム物SOFRの幅広い利用はサポートしない。 |
既存取引 | ✓ ARRCによるフォールバック条項(推奨文言)において、ターム物SOFRを第1順位としている商品(貸出・債券等)。 |
ターム物SOFRの利用範囲に関するベストプラクティス(ユースケース)
7
ARRCにおける、米ドルLIBORを参照するビジネスローンのフォールバックに関する検討項目について、推奨内容等の概要は下表のとおりです。
FCAによる公表停止時期等に関する声明(2021年3月5日)は、「公表停止トリガー」または「公表停止前トリガー」に該当しており、スプレッド調整値は既に確定しているため、今後は、ARRCの推奨文言に沿ったフォールバック条項を契約書に導入した時点で、後継金利(フォールバック・レート+スプレッド調整値)が確定します。
ビジネスローン | 詳細 | |||||
シンジケート・ローン | 相対貸出 | |||||
フォールバック・レート | ◼ SOFRに依拠する金利やターム物SOFRを利用する ウォーターフォール構造(以下の優先順位) | 同左 | P.9 | |||
第1順位 | ターム物SOFR | 第1順位 | ターム物SOFR | |||
第2順位 | SOFR日次単利(後決め) | 第2順位 | SOFR日次単利(後決め) | |||
第3順位 | 借入人およびエージェントが選択したレート | 第3順位 | 貸付人が選択したレート | |||
スプレッド調整値 | ◼ ISDAデリバティブにおいて「過去5年中央値アプローチ」により算出されたスプレッド調整値と同値 ✓ スプレッド調整値は、「トリガー」への該当時にすでに確定 ✓ スプレッド調整値は、Refinitivより公表 | 同左 | P.10 | |||
トリガー・イベント (フォールバックの発動条件) | ◼ 「公表停止トリガー」および 「(指標性喪失に係る)公表停止前トリガー」 ✓ いずれのトリガーも2021年3月5日付で該当済 | 同左 | P.11 | |||
フォールバック条項 | ◼ 推奨文言を公表 ✓ シンジケート・□ーンのフォールバック条項(推奨文言)の改訂版(20/6月) ✓ シンジケート・□ーンのフォールバック条項の補完的な推奨文言 (21/3月) | ◼ 推奨文言を公表 ✓ 相対貸出のフォールバック条項(推奨文言)の改訂版(20/8月) ✓ 相対貸出のフォールバック条項の補完的な推奨文言 (21/3月) | P.11, 14 |
8
ARRCにより推奨された、代替金利指標(フォールバック・レート)のウォーターフォール構造(優先順位)は、
以下のとおりです。なお、当事者間の合意により、推奨内容と異なる内容の契約を締結することは妨げられていません。
ARRCにより推奨されたフォールバック・レート(※1)のウォーターフォール構造
シンジケート・ローン | 相対貸出 | |
第1順位 | ターム物SOFR※2 | ターム物SOFR※2 |
第2順位 | SOFR日次単利(後決め) | SOFR日次単利(後決め) |
第3順位 | 借入人およびxxxxxxが選択したレート | 貸付人が選択したレート |
■ ARRCは、頑健性等の観点から、(翌日物)SOFRやSOFRに依拠する金利の利用を推奨していますが、市場参加者が既存契約の円滑なフォール バックのためにターム物SOFRの利用を選好していることを踏まえ、ウォーターフォール構造の第1順位にターム物SOFRが設定されています。
■ 計算の簡便さの観点から、第2順位として「SOFR日次単利(後決め)」が推奨されていますが、「SOFR複利(後決め)」の方が、時間価値をより正確に反映するほか、ISDAデリバティブのフォールバック・レート(以下、ご参考)とも整合的であり、ヘッジのベーシスが小さいことが指摘されています。
※1 フォールバックの際に選択される代替金利指標のことを、「フォールバック・レート」と呼びます。
※2 ARRCは、CMEが構築したターム物SOFR「CME Term SOFR Reference Rates」(本資料公表時点では1,3,6カ月物)を推奨しています。
ISDAデリバティブ |
米ドルの場合、標準的には、 SOFR複利(後決め) |
(ご参考)ISDAデリバティブ(※3)のフォールバック・レート
■ 標準的な「SOFR複利(後決め)」以外のフォールバック・レートを利用する場合等には、デリバティブの時価調整によるコストが発生する可能性があります。
※3 ISDAマスター契約に準拠するデリバティブ。LIBORを参照する既存契約については、円滑な移行対応のため、ISDAが定めるプ□トコル(2021年1月25日発効)への批准が推奨 されています。ただし、当事者間の個別合意により、別途のフォールバック条項を規定することは妨げられていません。
9
LIBORとフォールバック・レートの間には、通常、差異(スプレッド)があるため、フォールバック時には、契約当事者間で利益または損失(=価値の移転)が発生する可能性があります。したがって、価値の移転を最小化するためのスプレッド調整を行う必要があります。
ARRCでは、米ドルLIBORを参照するビジネスローンのフォールバック・レートとしてSOFRに依拠する金利やターム物 SOFRを参照する場合のスプレッド調整値については、以下のとおり、 ISDAデリバティブにおいて「過去5年中央値アプローチ」により算出されたスプレッド調整値と同値を採用することが適当と整理され、推奨されています。
IBORからのフォールバックのイメージ
スプレッド調整値
正負どちらも
あり得ます
フォールバック・レート
具体的な
手法については、右記のとおり
米ドルLIBORのフォールバックにおけるスプレッド調整手法の特徴等
LIBOR
後継金利
ARRCにおける
スプレッド調整手法 | 計算方法等 |
過去5年中央値 アプ□ーチ | ✓ 過去5年間の米ドルLIBORレートとフォールバック・ レートの差の中央値にもとづいて計算する手法。 ✓ ISDAデリバティブにおいては、本手法によりSOFR複利(後決め)をフォールバック・レートとした場合のスプレッド調整値がすでに確定。 ✓ ARRCは、ビジネスローン等のキャッシュ商品においてSOFR に依拠する金利やターム物SOFRをフォールバック・レートとして利用する場合、ISDAデリバティブのスプレッド調整値 (※1)と同値を利用することを推奨。 ✓ ARRCが推奨するビジネス□ーン等のスプレッド調整値の公表主体としてRefinitivを選定。※2 |
スポット・スプレッドアプローチ | ✓ トリガー・イベント発動直前(数営業日前)の米ドルLIBORとフォールバック・レートの金利差にもとづいて計算する手法。 |
フォワードアプローチ | ✓ トリガー・イベント発動時点における、市場で観測される米ドル LIBORとフォールバック・レートのそれぞれの「フォワードレート」との間における金利差にもとづいて計算。 |
推奨等、具体的な内容については、 P.9へ
■ 可能な限り価値の移転を最小化するよう、フォールバック・レートと それに応じたスプレッド調整について、契約当事者間で合意します。ただし、価値の移転を完全に排除できるものではないことには留意 が必要です。
■ 過去5年中央値アプ□ーチによりISDAデリバティブにおいて算出さ れるスプレッド調整値は、2021年3月5日付で確定しているため、後継金利の推移や水準が、LIBORの利用において契約時点に 当事者が想定していた水準とは相違する可能性があります。
※1 Bloombergより公表。xxxxx://xxxxxx.xxxxx.xx/xxxxxxxxxxxx/xxxxx/00/XXX
※2 xxxxx://xxx.xxxxxxxxxx.xxx/xxxxxxxxxxxx/Xxxxxxxxxx/xxxx/xxxxx/0000/00000000-xxxxx-xxxxxxx-Xxxxxx-Xxxxxxxxxx-Xxxxxx-Xxxxxxxxx.xxx 10
フォールバックの発動条件のことを「トリガー・イベント」と呼びます。ARRCは、米ドルLIBORを参照するキャッシュ商品について、2種類のトリガー(公表停止トリガー、公表停止前トリガー)を設定することを推奨しており、両トリガーのいずれかに該当すると、フォールバックが発動し、スプレッド調整値が確定します。
FCAによる公表停止時期等に関する声明(2021年3月5日)を受け、米ドルを含め、LIBORの全通貨・テナー が「公表停止トリガー」または「公表停止前トリガー」に該当しており、スプレッド調整値は既に確定しています。※
ARRCにおいて推奨されたトリガー・イベント等について
■ ARRCにおいては、ビジネス□ーンにおけるトリガー・イベントとして、「公表停止トリガー」および「公表停止前トリガー」を設定することが推奨されています。
■ 2021年3月5日付のLIBOR監督当局(FCA)の公表停止時期等に関する声明を受けて、米ドルを含むLIBORの全通貨・テナーが、トリガーに 該当(FCAの同声明が、以下、図表の下線箇所に該当)しており、その結果、スプレッド調整値が確定しました。
■ これを踏まえ、ARRCからは、フォールバックに係る補完的な推奨文言が公表されています。(概要はP.14へ)
【ARRCで推奨されたトリガー・イベント(フォールバックの発動条件)の種類】
種類 | 内容(発動条件) | 該当 |
公表停止トリガー | ✓ LIBOR運営機関(IBA:ICE Benchmark Administration)が、LIBORの公表停止または公表停止予定を発表した場合 ✓ LIBOR監督当局(FCA)が、LIBORの公表停止または公表停止予定を発表した場合 | LIBORの 全通貨・テナーが トリガーに該当済 (3/5日付) ↓ スプレッド調整値が確定済 |
公表停止前トリガー | ✓ LIBOR監督当局(FCA)が、LIBORが市場の実態を表さない旨または市場の実態をxxx い予定である旨を発表した場合 |
■ Refinitivは、米ドルLIBORのフォールバック・レートとしてSOFRに依拠する金利やターム物SOFRを参照しているキャッシュ商品について、スプレッド調整値および後継金利の公表主体としてARRCから選定されています。
■ 2023年6月末以降直ちに公表が停止される米ドルLIBORの一部テナーを含む、LIBORの全通貨・テナーについて、スプレッド調整値が確定しています。
■ なお、フォールバックにおける当該スプレッド調整値は、今後再計算されることはありません。
※ 実際の適用等は、フォールバック条項等の内容に従います。 11
ビジネスローンにおける利息計算方式(コンベンション)は、各種金利の特性(後決め/前決め)等に応じて、
ARRCによって推奨されています。
分類/指標 | テナー/期間 | ARRCが推奨するコンベンション | イメージ | 備考 | ||||||
後決め金利 | ||||||||||
SOFR 日次単利 | ― | “Lookback without observation shift”を推奨 ✓ 金利の参照期間と金利の計算期間の日数を一致させ、金利の参照期間を数営業日前にスライドする方法。 | 適用金利決定 金利(利息)計算期間金利参照期間 単利/複利の計算期間 | 利払い日 | 「後決め金利」に関するその他のコンベンションについては、 P.15を参照。 | |||||
SOFR 複利 | ||||||||||
前決 | め金利 | |||||||||
ターム物 SOFR | 1カ月物、 3カ月物、 6カ月物、 12カ月物 | LIBORと同様の コンベンションを推奨 ✓ 金利の計算期間初日の 2営業日前(米国政府証券営業日ベース、図表中※)に公表され、金利の計算期間全体にわたって維持されるレートを使用する方法。 | 適用金利決定 | 利払い日 | ― | |||||
金利(利息)計算期間 | ||||||||||
金利参照期間 | ||||||||||
※ 2営業日前 例:3カ月間 | ||||||||||
SOFR 複利 ここではSOFR Averagesの利用を想定 | 30日、 90日、 180日 (暦日ベース) | 適用金利決定 | 利払い日 | 例えば、 30日(暦日)の SOFR Averagesが、 1カ月間の(もしくは他の)金利計算期間に利用されることもある点に留意。 | ||||||
例:30日(暦日) | 金利(利息)計算期間 | |||||||||
金利参照期間 | ||||||||||
※ 例:30日(暦日) 2営業日前 |
■ コンベンションに関するARRCの公表資料 …コンベンションの詳細(端数処理や休日調整などを含む)については、以下のリンクよりご確認ください。
・ 2020年7月
・ 2020年11月
・ 2021年7月
シンジケート・□ーンにおけるSOFR(後決め)の利用に関するコンベンション 相対貸出におけるSOFR(後決め)の利用に関するコンベンション
シンジケート・□ーンおよび相対貸出におけるターム物SOFR、SOFR Averages(前決め)のコンベンション
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7.ビジネスローンにおける利息計算方式(コンベンション)
主要法域では、LIBOR公表停止までのマイルストーンが設定され、移行が進められてきました。
米ドルと同様、各通貨において「ターム物リスク・フリー・レート」が構築(算出・公表)されています。
主要法域の当局、検討体におけるLIBOR移行対応のマイルストーン
通貨 | 公表停止時期 | 新規取引の停止時期 | 既存契約 | |
ビジネスローン | デリバティブ※1 | |||
米ドル ※2 | 2023 年6月末以降直ちに | 2021年12月末 | 既存契約を不確実性から守るため、早期の頑健なフォールバック条項導入を推奨。 | |
英ポンド | 2021年12月末 | 2021年3月末 | 線形: 2021年3月末非線形: 2021年6月末 | 2021年9月末…実行可能な全ての契約について事前移行を完了させることを目標(事前移行できない場合には、頑健なフォールバック条項をできる限り導入するよう推奨)。 |
日本円 | 2021年6月末 | 2021年9月末 | 2021年9月末…キャッシュ商品について既存契約の顕著な削減を目標。 |
※1 LIBORを参照する既存ポジションのリスク管理目的等でのデリバティブ取引は除く。
※2 米ドルLIBORの一部テナー(1週間物、2カ月物)に関しては、2021年12月末をもって公表停止。なお、ARRCは、FCAによる公表停止時期等に関する声明
(2021年3月5日)以前に、2021年12月末以降直ちにすべてのテナーが公表停止することを前提として、新規取引の停止時期として「2021年6月末」を設定するとともに、既存契約を不確実性から守るため、頑健なフォールバック条項の早期導入を推奨。
主要法域におけるターム物金利(ターム物リスク・フリー・レート)※3
通貨/指標名 | 米ドル | 英ポンド | 日本円 | |
CME Term SOFR Reference Rates | ICE Term SONIA Reference Rates | Refinitiv Term XXXXX | Tokyo Term Risk Free Rate(TORF) | |
運営機関 | CME Group Benchmark Administration | IBA(ICE Benchmark Administration) | Refinitiv | QUICK Benchmarks |
ベースとなる取引 | SOFRを参照するデリバティブ | SONIAを参照するOIS等 | XXXXを参照するOIS | |
テナー | 1,3,6,12カ月物※4 | 1,3,6,12カ月物 | 1,3,6カ月物 |
※3 ターム物金利の利用に当たっては、米ドルではP.7の整理や、ユースケースをご参照ください。また、米ドルと同様、英ポンド、日本円においても、当局や検討体等における整理や運営機関のライセンス規約等を踏まえ、利用することが望ましいと考えられます。
※4 ARRCは、本資料公表時点では、同指標の1,3,6カ月物を推奨しています。 13
ARRCによるフォールバック条項の推奨文言、および、それにもとづく金利変更までの流れのイメージと主な用語との対応は以下のとおりです。なお、当事者間の合意により異なる内容の契約を締結することは妨げられていません。
ARRCにより推奨されたフォールバック条項(推奨文言)
シンジケート・ローン | 相対貸出 | |
20年 | ||
21年 |
フォールバックによる金利変更までの流れのイメージ (注)実際の適用等は、フォールバック条項等の内容に従います。
米ドルLIBOR公表停止
2021年3月5日 2023年6月末※
公表停止後の
1 トリガー・イベント
フォールバック条項を
初回利払い日
(フォールバックの発動条件) 導入し、契約締結
参照金利
3 米ドルLIBOR
後継金利
(フォールバック・レート
+スプレッド調整値)
2
スプレッド調整値が確定済
4 後継金利が確定
(フォールバック・レート
+スプレッド調整値)
参照金利が変更
※ 米ドルLIBORの一部テナー(1週間物、2カ月物)に関しては、2021年12月末をもって公表停止されています。
主な用語 | 用語の内容 | 上記イメージとの対応 |
“Benchmark Transition Event“ | ✓ 2021年3月5日、FCA・IBAから公表された、LIBORの全ての通貨・テナーに係るxx的な公表停止(または指標性の喪失)予定に関する発表のこと。 | 1 のトリガー・イベント |
“The Spread Adjustment“ | ✓ フォールバック・レートに加算するスプレッド調整値のこと。Refinitivが値を公表。 | 2 のスプレッド調整値 |
“Benchmark” | ✓ 基準金利の決定において参照されている金利のこと。 ✓ 金利変更前は米ドルLIBORのこと。参照金利変更後は、後継金利のこと。 | 3 の米ドルLIBOR (参照金利変更後は後継金利) |
“Benchmark Replacement” | ✓ 貸手(シンジケート・□ーンの場合はエージェント)によって決定される、利用可能 な後継金利のうち、(ウォーターフォール構造の)優先順位で最も上位となるもの。 | 4 の後継金利 |
ARRCによるフォールバック条項(推奨文言)との対応関係(シンジケート・□ーン/相対貸出共通)(注)詳細は上記リンクより原文をご確認ください。
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「後決め金利」を利用する場合には、Lookback方式以外にも商品や通貨に応じて、以下の利息計算方式が検討されています。こうした推奨や整理の内容を参考に、事務・システム対応を進めておくことが必要です。
主な計算方式
Lookback方式
(Lookback without observation shift/ Lookback with no observation shift)
Observation Period Shift方式
(Backward-shift/
Lookback with observation shift)
Payment Delay
方式
Lockout方式
内容
金利の参照期間と金利の計算期間の日数を一致させ、金利の参照期間を数営業日前にスライドする方法。
※1
金利の計算期間全体を数営業日前倒し、当該金利参照期間に対して複利計算する方法。※2
金利の参照期間と金利の計算期間を一致させ、金利支払日を後倒しする方法。
金利の参照期間を数営業日短縮する方法。
国内外における検討結果等
✓ ARRCでは、貸出について、単利/複利の Lookback方式を推奨。(事例では5営業日のLookbackを提示)
• 英RFRWGでは、貸出について、5営業日の
Lookback方式を推奨。
• 本邦検討委員会※3傘下の貸出サブグループで圧倒的多数の先から同手法に賛同あり。
• SOFR Indexから算出できない。
✓ ISDAデリバティブの標準的なフォールバックも同手法に類似した手法。
✓ ARRCでは、変動利付債(FRN)で同方式を推奨。一方、傘下のWGでは、レンダー間取引や早期償還の可能性を踏まえ、貸出では最も適当なコンベンションとは言えないとの見解。
✓ ISDAデリバティブ市場で標準的な手法。
(ISDA定義集に記載、ISDAデリバティブの 標準的なフォールバックについては、上記、 Observation Period Shift方式をご参照)
✓ グ□ーバルには、債券での利用事例がみられる。
イメージ(複利の場合)
利払い日
金利(利息)計算期間
金利参照期間
複利の計算期間
利払い日
金利(利息)計算期間 | |||
金利参照期間 | |||
複利の計算期間 |
利払い日
金利(利息)計算期間
金利参照期間
複利の計算期間
金利(利息)計算期間 | |||
金利参照期間 | |||
複利の計算期間 |
利払い日
※1 金利計算期間の休祝日を勘案し、複利計算します。※2 金利参照期間の休祝日を勘案し、複利計算します。
※3 日本円金利指標に関する検討委員会(事務局:日本銀行)
(注意)SOFRは、米国政府証券営業日(U.S. Government Securities Business Day:土曜日、日曜日、米国証券業金融市場協会(SIFMA)
が推奨する米国政府証券取引休業日を除く日)に公表されるため、米ドル決済可能日であってもSOFRが公表されない日もあり、留意が必要です。 15
SOFR等(※)には、公表停止となるLIBORに含まれている「銀行の信用リスクプレミアムや流動性プレミアム等
(以下、銀行の信用リスクプレミアム等)」が含まれていません。こうしたSOFR等の特性を踏まえ、米国では「クレジット・センシティブ・レート(CSR)」の利用について議論されています。
もっとも、証券監督者国際機構(XXXXX)は、「CSRは、公表停止となるLIBORと同様の脆弱性を持つ」と懸念 を表明しており、金融安定理事会(FSB)も金利指標の頑健性の観点から、この表明を支持しています。利用に当たっては、契約当事者間で十分な留意が必要と考えられます。(詳細はXXXXX声明/FSB声明を参照。)
クレジット・センシティブ・レート(CSR)を巡る議論の背景・経緯
契約時
■ SOFR等のリスク・フリー・レートには、LIBORに含まれている「銀行の信用リスクプレミアム等」が含まれていません(P.7右図を参照)。
■ SOFR等を利用する場合、本来変動する銀行の信用リスクプレミアム等が、適用金利のスプレッド部分に織り込まれるかたちでのプライシング(値決め・金利交渉)が想定されますが、こうしたプライシングでは、例えば、先行きの景気変動や銀行の資金調達環境が変わる局面において、銀行の信用リスクプレミアム等の変化が適用金利に反映されない可能性が
あることが、一つの論点として指摘されてきました(右図②) 。
―― 景況悪化に伴い、銀行の資金調達環境が悪化した局面でプライシングを行う場合等に、銀行の信用リスクプレミアム等の合理的な水準を測ることが難しいこと等も、論点として挙げられます。
■ そこで、米国では、SOFR等に含まれていない銀行の信用リスクプレミアム等を補完する観点から、民間の運営機関より、銀行の信用リスクプレ
ミアム等を反映するレートとして「CSR」が提供されており(以下の図表)、一部での利用がみられます。
ージ | ||||||||
スプレッド | ||||||||
スプレッド | ||||||||
銀行の信用 < 銀行の信用 リスクプレミアム等 リスクプレミアム等 | ||||||||
LIBOR LIBOR |
① 適用金利のイメ
L
I
B ✓銀行の信用 O リスクプレミアム R 等はLIBORにの 含まれている場 【変動する】
合 適用金利
② 適用金利のイメージ
銀行の信用 リスクプレミアム等
S
金利更改時等(景況悪化を想定)
✓LIBORの上昇に織り込まれるかたちで銀行の信用リスクプレミアム等が上昇
適用金利
✓本来変動して
【図表】 公表されている主なCSR
O ✓銀行の信用 F リスクプレミアム R 等はスプレッドに等 含まれている
SOFR等
の
AMERIBOR® | Bloomberg Short-Term Bank Yield Index (BSBY) | |
運営機関 | American Financial Exchange(AFX) | Bloomberg Index Services Limited (BISL) |
特徴 | 米国の数千ある中小・地域金融機関の借入時のコストを反映 | ホールセール市場における銀行の無担保資金調達コストを反映 |
テナー | 翌日物, 30日, 90日ターム物 | 翌日物, 1, 3, 6, 12か月物 |
場合
③ 適用金利のイメージ
C
S ✓銀行の信用
を
R リスクプレミアム
スプレッド
適用金利
スプレッド
銀行の信用
スプレッド
=
銀行の信用 リスクプレミアム等
適用金利
スプレッド
銀行の信用
< リスクプレミアム等
いる銀行の信用リスクプレミアム等が変わらない可能性
SOFR等
✓プライシングに当たって合理的な銀行の信用リスクプレミアム等の水準は不確か
✓CSRで計測された銀行の信用リスクプレミアム等の上昇分を反映
✓ただし、CSRは、
※ SOFR、SOFRに依拠する金利、ターム物SOFRを含みます。
等を反映する利 レートを利用用 【変動する】
リスクプレミアム等
CSR
適用金利
CSR
適用金利
公表停止となる LIBORと同じ構造で脆弱性があると
指摘されている 16
米ドルLIBOR
CME Term SOFR Reference Rate SOFR複利(後決め)
4
米ドル金利指標(3カ月物)
(%)
米ドルLIBOR
CME Term SOFR Reference Rate SOFR複利(後決め)
4
米ドル金利指標(6カ月物)
3 3
2 2
1 1
0
16/1 17/1 18/1 19/1 20/1 21/1 22/1
年/月
0
16/1 17/1 18/1 19/1 20/1 21/1 22/1
年/月
(%)
SOFRファースト
28
25
19
13
15 16
7
45
RFR Adoption Indicator (米ドル)
(主要CCPに清算集中された店頭及び上場デリバティブ取引データに占めるDV01ベースでのRFR参照デリバティブ取引の割合)
30
15
0
18/7 18/10 19/1 19/4 19/7
19/10
20/1 20/4
20/7
20/10
21/1
21/4
21/7
21/10
22/1
(出所)Bloomberg 、 ISDA-Clarus RFR Adoption Indicator
年/月
(注) 直近は、2022年1月末。CFTC MRAC(市場リスク諮問委員会)により推奨された「SOFRファースト(ディーラー間取引の慣行を米ドルLIBORからSOFRに切り替える市場ベストプラクティス)」は、線形スワップを対象に、2021年7月26日以降実施(通貨スワップは2021年9月21日以降(2021年12月13日以降対象追加)、非線形デリバ
ティブは2021年11月8日以降実施)。 17
関連リンク | |
米検討体 | ◼ Alternative Reference Rates Committee (ARRC、米代替参照金利委員会) |
米当局等 | ◼ Federal Reserve Board(FRB、連邦準備制度理事会) ◼ Federal Reserve Bank of New York(NY Fed、ニューヨーク連邦準備銀行) ◼ Commodity Futures Trading Commission(CFTC、商品先物取引委員会) ◼ Financial Accounting Standards Board(FASB、財務会計基準審議会) ASU No.2020-04—Reference Rate Reform(金利指標改革に伴う会計基準のアップデート) |
海外当局・国際機関 | ◼ Financial Stability Board(FSB、金融安定理事会) ◼ International Organization of Securities Commissions(IOSCO、証券監督者国際機構) ◼ Financial Conduct Authority(FCA、英国金融行為規制機構:LIBOR監督当局) ◼ International Swaps and Derivatives Association(ISDA、国際スワップ・デリバティブズ協会) Benchmark Reform and Transition from LIBOR InfoHub(特設サイト) |
指標運営機関等 | ◼ ICE Benchmark Administration(IBA、LIBOR等の運営機関) ◼ CME Group Benchmark Administration(ターム物SOFR等の運営機関) |
指標・ 公示スプレッド等 | ◼ Secured Overnight Financing Rate Data(SOFRの公表ページ) ◼ SOFR Averages and Index Data(SOFR Averages および SOFR Indexの公表ページ) ◼ CME Term SOFR Reference Rates Benchmark Methodology(ターム物SOFRのメソド□ジー) CME Term SOFR Reference Rates-Frequently Asked Questions (ターム物SOFRに関するFAQ) ◼ Refinitiv USD IBOR Cash Fallbacks (キャッシュ商品のフォールバック関係情報) ◼ Bloomberg Announcement on the Spread Adjustment Fixing (ISDAスプレッド(過去5年中央値)) |
(注)リンク先の情報は、各サイトの運営者の責任で提供されています。 18