静岡銀行(頭取 柴田 久)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱佐藤工機(社長 佐藤 憲和)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
2022.3.30
㈱xxx機と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静岡銀行(頭取 xx x)では、SDGs への取り組みの一環として、㈱xxx機(社長 xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.契約日 3 月 30 日(水)
2.融資金額 1 億円
3.資金使途 運転資金
4.㈱xxx機の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇同社は、経営方針「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、ものづくりを通じて社会に貢献する」のもと、エアコンの冷凍サイクル部品等を製造するパイプ加工・切削加工業者であり、専門的な技術ノウハウにより大手セットメーカーの高性能製品の基幹部品を生産しています。
〇今回、同社の企業活動が与えるインパクトを、以下のとおり評価しました。
環境面 | ・省エネ製品への貢献(冷凍サイクルの性能向上に資する技術ノウハウの蓄積、セットメーカーへの能動的な改善提案) ・徹底した品質活動によるガスリーク(※)削減(「匠塾」を通じたロウ付け加工の業務平準化、トレーサビリティの徹底) ※パイプ内の冷媒が外部に漏れること ・気候変動への対応(工数削減や歩留まり率向上による CO2 排出量の削減、xxx 発電設備の増設) |
|
社会面 | ・充実した技能教育による多能工化の推進(作業レベル別の教育訓練計画の作成・実施、全従業員の技能習得状況の見える化) ・xxな賃金体系(「職能別力量比較マップ」の作成や給与体系の成果報酬型への見直しなどによる不合理な待遇差の解消) ・ダイバーシティ&インクルージョンの推進による安心・安全で快適な職場づくり(従業員の安全衛生意識や多様性と包摂性の醸成、ワークライフバランスの推進による“ゼロ災”の 達成、「心の健康づくり計画」の策定) |
|
5.その他
(1)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(2)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
【ご参考】㈱xxx機の概要
所 在地 | 富士宮市南陵 10 | 創 業 | 1957 年(昭和 32 年)3 月 |
資 本金 | 20 百万円 | 売 上高 | 2,702 百万円(2021 年 9 月期) |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:株式会社xxx機
2022 年 3 月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
目 次
(6)ダイバーシティ&インクルージョンの推進による安心・安全で快適な職場づくり 22
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 株式会社xxx機(以下、xxx機) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、xxx機の企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシ
アティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用
しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
xxx機は、エアコンの冷凍サイクル部品等を製造するパイプ加工・切削加工業者である。売上のおよそ 9 割が業務用エアコン向けであり、その他、冷蔵庫やエコキュート、オートバイ向けのパイプ加工なども取り扱っている。ユーザー企業の特性に合わせた多品種少量生産が主流の業務用エア
コンにおいて、専門的な技術ノウハウを練達してきたことで、東芝キヤリア株式会社や三菱電機株式会社、日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社といった大手セットメーカーの高性能製品の基幹部品を生産している。
環境面においては、統合マネジメントシステム(ISO14001、QS9001)を基軸として、省エネ
基準を満たしたエアコンのサプライチェーンを支えるだけでなく、徹底した品質活動によってxxxxxの削減に尽力している。また、工数削減や歩留まり率向上に加えて、xxx発電設備を増設するこ とで、CO2(二酸化炭素)排出量の削減に取り組んでおり、製品ライフサイクルや企業活動を通じ
た環境負荷の低減に努めている。
社会面においては、多能工化を推進すべく人材育成に注力しているほか、「職能別力量比較マップ」の作成などによって不合理な待遇差の解消を図っている。また、xx、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しており、ハード・ソフトの両面において、安心・安全で快適な職場環境が形成されている。
このように、xxx機は、経営方針「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、ものづくりを通じて社会に貢献する」を実践している。その他、障がい者雇用の促進や緑地保全活動「富士山南陵の森フォレストセイバープロジェクト」を通して、地域課題の解決にも献身しており、今後も、持続可能な社会の実現に向けた貢献が期待される。
本ファイナンスでは、以下のインパクトが特定され、それぞれに KPI が設定された。
【ポジティブ・インパクトの増大】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | 省エネ製品への貢献 | 冷凍サイクルの性能向上に資する技術ノウハウの蓄積、セットメーカーへの能動的な改善提案 | エアコン部品全体における省エネ基準を満たしたエアコンへの部品供給比率を現状の水 準(90%以上)で 維持する | エネルギー気候変動 | |
社会 | ①2030 年までに、当 | ||||
充実した技能教育による 多能工化の推進 | 作業レベル別の教育訓練計画の作成・ 実施、全従業員の技能習得状況の見える化 | 社の品質影響業務の力量 A ランク取得者を職場ごとに全項目常 時 1 人以上確保する ②2030 年までに、女性役職者を 5 名以上 | 教育雇用 | ||
育成または採用する | |||||
2030 年までに、職能 | |||||
「職能別力量比較 | 別力量取得および当 | ||||
マップ」の作成や給 | 社が必要とする公的資 | ||||
xxな | 与体系の成果報酬 | 格取得が生産性向上 | 雇用 | ||
賃金体系 | 型への見直しなどによる不合理な待遇 | の成果に貢献する体制を作り、成果を待遇 | 包摂的で 健全な経済 | ||
差の解消 | に反映させる賃金体 | ||||
系にする |
【ネガティブ・インパクトの低減】
分類 | テーマ | 取組内容 | KPI(指標と目標) | インパクトレーダー | SDGs |
環境 | 徹底した | 「匠塾」を通じたロウ付け加工の業務平準化、トレーサビリティの徹底 | |||
品質活動による ガスリーク | 2030 年までに、ガスリーク発生件数を現状よ り 20%削減させる | 大気 気候変動 | |||
削減 | |||||
工数削減や歩留まり | |||||
気候変動への対応 | 率向上による CO2排出量の削減、x xx発電設備の増 | 2030 年までに、CO2排 出 量 を 現 状 よ り 10%削減させる | エネルギー気候変動 | ||
設 | |||||
社会 | ダイバーシティ& | 従業員の安全衛生意識や多様性と包摂性の醸成、ワークライフバランスの推進による“ゼロ災”の達成、「心の健康づくり計画」の策定 | |||
インクルージョン の推進による | 2030 年までに、労働災害ゼロを継続、メンタ | 雇用 | |||
安心・安全で快適な | ル不調者ゼロを達成する | 包摂的で 健全な経済 | |||
職場づくり |
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 | 2022 年 3 月 30 日~2027 年 3 月 30 日 |
金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5 年 0 ヵ月 |
企業概要
企業名 | 株式会社xxx機 |
所在地 | xxxxxxxxx 00 xx 富士山南陵工業団地 |
関連会社 | 【国内】 株式会社 NSM(xxxxxxxx 000-00) 【中国】 広州xx制冷机械有限公司杭州xx制冷机械有限公司xxxx制冷機械有限公司浙江xx制冷機械有限公司 【タイ】 SATOKOKI THAILAND |
従業員数 | 242 名(男性 148 名、女性 94 名)内 外国人 62 名、障がい者 8 名 |
資本金 | 2,000 万円 |
業種 | 製造業(パイプ加工・ロウ付け加工・切削加工業) |
事業内容 | エアコン・給湯器・冷蔵庫等の冷凍サイクル部品の製造 |
認証登録 | ISO14001 登録範囲:空調機器、除湿器、自動販売機、コンプレッサー等の冷凍サイクル部品、車両内部の配管部品及びガス給湯器の各種機械加工部品の製造 ISO9001 登録範囲:空調機器、除湿器、自動販売機、コンプレッサー等の冷凍サイクル部品、車両内部の配管部品及びガス給湯器の各種機械 加工部品の製造 |
主要取引先 | 東芝キヤリア株式会社(神奈川県xx市)三菱電機株式会社(xxxxxx区) 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社(xxx港区)パナソニック株式会社(大阪府門真市) 株式会社 LIXIL(xxxxx区) パーパス株式会社(xxxxxx) |
xx | 0000 年 富士宮市宮町にて創業 1961 年 東芝富士工場協力業者協同組合に加入 1967 年 東芝富士工場重点外注工場に指定 1968 年 有限会社xxx機を設立 1969 年 富士宮市xxに工場を新設移転 1972 年 組立工場を新設 1979 年 株式会社に組織変更 1988 年 表富士工場を新設 2004 年 広州xx制冷机械有限公司を設立 2006 年 SATOKOKI THAILAND を設立 2007 年 弘法公機株式会社を設立 2010 年 富士宮市南陵に工場新設、富士宮市内の 4 工場を集約移転 2011 年 弘法工機株式会社が工場移転、社名を株式会社 NSM に変更 2012 年 SATOKOKI THAILAND AMATANAKON 工場を新設 杭州xx制冷机械有限公司を設立 2015 年 xxxx制冷機械有限公司を設立 2019 年 浙江xx制冷機械有限公司を設立 2020 年 SATOKOKI THAILAND 新工場に統合 |
(2022 年 3 月 30 日現在)
1. サプライチェーンにおける役割および特徴
xxx機は、エアコンの冷凍サイクル部品等を製造するパイプ加工・切削加工業者である。冷凍サイクルとは、温度等を調節して供給するための冷媒(熱を移動させる流体)を室内機と室外機の間で循環させる仕組みであり、同社は、その冷媒が通るパイプ加工およびロウ付け組立加工を主な事業としている。製品別売上構成比は、エアコン冷凍サイクル部品が 9 割を占め、その他冷蔵庫
等の冷凍サイクル部品や給湯器(エコキュート)の配管部品、オートバイやジェットスキーなどのエン
ジン関連のパイプ等が 1 割程度である。
冷凍サイクル部品のイメージ図
家庭用のルームエアコンは中国メーカー等による大量生産が進んでいることから、同社は業務用のパッケージエアコンを主力として取り扱う。パッケージエアコンはユーザー企業の特性に合わせた多品種少量生産が主流であり、自動化設備に依らない人手をかけたマニュファクチャリングが求められる。実際、同社の売上の 8 割以上が 1 ロット 300 個以下の受注である。同社は、そのようなパイプ加工
に特化した技術者集団として、東芝キヤリア株式会社や三菱電機株式会社、日立ジョンソンコント
ロールズ空調株式会社といった大手セットメーカーの高性能製品の基幹部品を生産している。 大手セットメーカーが生産拠点を海外に移したことで、中国とタイに現地法人を設立、海外生産
にも対応している。現地法人は、日系メーカーのみならず、ハイセンスグループ(中国)など地元大手メーカーや欧州系メーカーとも取引を開始しており、xxx機グループ全体で国内外のサプライチェーンに寄与している。
xxx機グループ | 売上高 (直近決算期) | 主要取引先 |
株式会社xxx機 | 27 億円 | 東芝キヤリア、三菱電機、日立ジョンソンコントロールズ空調 |
株式会社 NSM | 37 億円 | 三菱電機、日立ジョンソンコントロールズ空調、東芝キヤリア |
広州xx制冷机械有限公司 | 12 億円 | ジョンソンコントロールズ日立空調、美的集団 |
杭州xx制冷机械有限公司 | 2 億円 | ジョンソンコントロールズ日立空調 |
xxxx制冷機械有限公司 | 2 億円 | ハイセンスグループ |
浙江xx制冷機械有限公司 | 19 億円 | 東芝キヤリア、ジョンソンコントロールズ日立空調 |
SATOKOKI THAILAND | 13 億円 | 東芝キヤリア、三菱電機 |
一般的に、冷凍サイクル部品等の設計はセットメーカーが行い、同社は製造・加工方法を決定する。製造工程としては、材料となる銅管やアルミ管、ステンレス管やバー材(真鍮など)を自給/支給で仕入れ、NC ベンダー・NC 旋盤などの工作機械によりパイプ加工・切削加工を行う。その後ロ
ウ付けによりパイプ部品等を接合し、組立品としてセットメーカーに納入することも多い。
同社がパイプ加工の手法として特に注力しているのがバルジ加工(ハイドロフォーミング)である。バルジ加工とは、金型内に置いたパイプに超高圧の液体を充填しながら両端を圧縮する成形技術であり、大手セットメーカーから求められる複雑な形状に対応してきたことで、ハイレベルな技術ノウハウを蓄積。スピニング加工や切削加工技術なども洗練しており、加工の多様性で他社との差別化を図っている。
バルジ加工品 バルジ加工+ロウ付け加工品
製造工程で使用する有害物質や生産活動よって生じる廃棄物については適切に処理(廃棄物のリサイクル率は 98%超)、個別に目標を立てて削減活動に取り組んでいる。水質汚染や土壌汚染、大気汚染などへの対策も法令遵守を徹底しており、企業活動から生じる環境負荷の低
減に努めている。
同社は、経営理念として、「報恩感謝」、顧客満足に最善を尽くすことを掲げており、ISO14001および ISO9001 認定を取得。現在は、統合マネジメントシステムのもと、環境にやさしいものづくりと確かな品質の両立を追求している。エアコン業界では、モデルチェンジの度に省エネ性の基準が厳
格化される中、同社は、技術の練達に加えて、セットメーカーに対する能動的な性能改善提案を行い、顧客満足度の向上に努めている。
2. 業界の動向
【エアコン市場】
エアコンは空調機器の一種であり、対象とする空間の温度等を調節して供給するための機器である。一般的に、家庭用エアコン(ルームエアコン)は、居住空間の快適性を確保するために使用されるのに対して、業務用エアコン(パッケージエアコン)は、労働環境の維持のほかに、製品等の品質管理・保持などの目的のためにも使用される。
エアコンの市場規模をみると、一般社団法人日本冷凍空調工業会(JRAIA)が集計した主
要日系企業の 2020 年度の国内出荷台数は、家庭用エアコンが 1,010 万台、業務用エアコン が 81 万台となっている。家庭用エアコンは、気候変動や省エネ性能ニーズの高まりを受けて逓増傾向にある一方、業務用エアコンは、景気の影響を受けながらも比較的安定して推移している。
(万台)
1,200
家庭用エアコン(ルームエアコン)国内出荷実績
(万台)
120
業務用エアコン(パッケージエアコン)国内出荷実績
1,000 100
800 80
600 60
400 40
200 20
1986
88
90
92
94
96
98
2000
02
04
06
08
10
12
14
16
18
20
1986
88
90
92
94
96
98
2000
02
04
06
08
10
12
14
16
18
20
0 0
(年度) (年度)
資料:一般社団法人日本冷凍空調工業会「家庭用エアコン(ルームエアコン)国内出荷実績」 一般社団法人日本冷凍空調工業会「業務用エアコン(パッケージエアコン)国内出荷実績」
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のエアコン需要は、新興国の経済成長に伴い、 2050 年に現在の 3 倍まで増加する見通しである。業務用エアコンが主力のxxx機グループも、
その基幹となる冷凍サイクルの配管部品の製造を通じて、今後一段と多くの場面でライフラインとしての役割が期待されるエアコンとともに成長を続けていく。
【エアコンの省エネ性能】
エネルギーの安定供給確保と地球温暖化防止の観点から省エネの必要性が高まる中、エアコンに求められる省エネ性能基準も厳格化されている。家庭用エアコンをみると、経済産業省が定めた現在の省エネ性能の目標基準は 2006 年度に定められたもので、国内で販売されている全機種で
数値基準を達成している。一方、セットメーカーは、消費者の省エネ性能ニーズの高まりを受けて、モ
デルチェンジの度にエネルギー消費効率の高いエアコンを開発してきた。そのような中、経済産業省 は、2022 年度に省エネ性能の目標基準を 15 年ぶりに改正する方針を固めている。トップランナー方式に基づいて、上位機種 1 割が達成している性能を残りの9割にも要求。2027 年度までに、
消費電力の大きいエアコンに対して現在より最大 3 割高い省エネ性能を求めることで、2050 年カーボンニュートラルへ向けた動きを加速させる。
業務用エアコンに求められる省エネ性能も高まっている。業務用エアコンは、2006 年に、COP
(定められた温度条件でのエアコンの運転効率)に加えて、APF(1 年を通して、ある一定の条件での消費電力 1kWh 当たりのエアコンの運転効率)の表示を開始。実際の使用実態に近いエネルギー消費効率が開示されたことで、セットメーカーはユーザー企業に適した省エネ性能をもつエアコ
ンの開発を進めた。現行の目標基準値は 2015 年度基準だが、近年、世界的な SDGs の推進や脱炭素の潮流を受け、企業の省エネ意識が高まっており、一段と環境負荷の低い業務用エアコン
需要が拡大している。
xxx機は、環境と品質の統合マネジメントシステムのもと、洗練された加工技術と品質管理体制に基づき、時代のニーズである省エネ化・コンパクト化に合わせた加工法へ進化。ディストリビューター(分流器)の機能向上や軽量で頑強なパイプ部品の製造に取り組んでいる。
資料:資源エネルギー庁
以上のように、xxx機の企業概要や特徴および同社が属する業界動向を総合的に勘案した上で、UNEP FI のインパクト評価ツールを用いて網羅的なインパクト分析を実施し、ポジティブ・ネガティブ両面のインパクトが発現するインパクトカテゴリーを確認した。そして、同社の活動が、環境・社
会・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に貢献すべきインパクトを次項のように特定した。
3. インパクトの特定および KPI の設定
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>エネルギー、気候変動
<SDGs との関連性>
7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全て
の国々は各国の能力に応じた取組を行う。
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
エアコン部品全体における省エネ基準を満たしたエアコンへの部品供給比率を現状の水準(90%以上)で維持する
<インパクトの内容>
冷凍サイクルの性能はエアコンの省エネ性能に直結する。そのため、モデルチェンジの度に、省エネ性能を向上すべくパイプ加工を複雑化したり、軽量化のために材料を銅からアルミへ変更したり、寸法精度をいっそう厳格化したりと、セットメーカーから部品メーカーへさまざまな要求が提示される。
xxx機は、充実した技能教育・技能承継によって、そうした技術力に関する柔軟な対応に強みがあり、大手セットメーカーのサプライチェーンに貢献している。たとえば、アルミ加工については、当分野で最先端を行くセットメーカーなどと足並みを揃えて部品開発に着手。銅管とアルミ管を溶接する共晶接合や銅・ステンレス・アルミのロウ付け加工に関して、世界でも指折りの技術力を培い、エア
コンの冷凍サイクルにおける銅管のシェアが 99%とされる中、有限資源かつリサイクル率が高くないと
される銅に代わって、次世代素材となるアルミ管加工の黎明期を支えてきた。
また、顧客満足度向上のために、新製品開発等に関するセットメーカーのニーズをいち早く掴み、設計の段階から同社のノウハウで改良可能な部分について提案している。特に、機能向上が求められるディストリビューター(分流器)に対して同社の技術ノウハウで工夫できる形状を積極的に明示するなど、能動的な改善活動を実践している。そうした取組みは大手セットメーカーにも評価され、 数々の品質表彰やベストサプライヤー表彰などを受賞しており、省エネ製品の開発・供給に十分な関与が認められる。
その他、同社が部品供給する製品で、近年受注が増加しているのが電気ヒートポンプ式給湯器
(エコキュート)である。エコキュートは、エアコンの冷凍サイクルと同じ原理で湯を沸かし、タンクに貯
水する製品だが、冷媒としては CO2(二酸化炭素)を使用しており、オゾン層を破壊する恐れはない。加えて、使用する電気エネルギーの 3 倍以上の熱エネルギーを生成できる仕組みとなっており、非常に効率的な省エネ製品とされている。
その市場動向をみると、2011 年の東日本大震災を受けて、オール電化に対する逆風が強まったことで一時的に需要が減退したものの、省エネ志向の高まりを受けて持ち直している。同社は、今 後、業績拡大と環境負荷低減の両立を実現可能なエコキュート配管部品の製造を続けていく方
針であり、エコキュートの普及等を通じた省エネへの貢献も期待される。
(台)
600,000
家庭用ヒートポンプ給湯器(エコキュート)国内出荷実績
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
2002 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
(年度)
資料:一般社団法人日本冷凍空調工業会「家庭用ヒートポンプ給湯機(エコキュート)国内出荷実績」
このように、同社は、企業のライフラインとなるエアコンの冷凍サイクル部品等を製造。高度な技術ノウハウにより省エネ製品へ貢献しており、こうした取組みは、インパクトレーダーの「エネルギー」や「気候変動」に資するポジティブなインパクトである。
静岡銀行は、xxx機の「省エネ製品への貢献」による環境への貢献度を定量的に確認するために、主力製品であるエアコン部品全体における省エネ基準を満たしたエアコンへの部品供給比率をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>教育、雇用
<SDGs との関連性>
4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。
<KPI(指標と目標)>
①2030 年までに、当社の品質影響業務の力量 A ランク取得者を職場ごとに全項目常時 1人以上確保する
②2030 年までに、女性役職者を 5 名以上育成または採用する
<インパクトの内容>
xxx機が製造する冷凍サイクル部品は、中国メーカー等による自動化設備を用いた大量生 産が進んでいる。同社は、そうした大手メーカーとの差別化を図るべく、自動化しづらい小ロット品をメインターゲットとしている。特に、同社が部品供給する列車用エアコンなどは、その品質が多くの人々に影響を与えるため、鉄道会社からの要請もあり、製造にかかわる全ての作業者が登録制となって おり、セットメーカーから熟練技術者の指名が入ることも珍しくない。そうした受注に対応し続けるためにも、技術力の底上げは極めて重要であり、同社は全従業員の技能教育に時間をかけている。ま た、現代の社会的課題である人手不足は同社にとっても大きな課題であり、多能工化を促進し、 助け合いの文化を醸成することで、全体の業務平準化による従業員の負担軽減や繁忙期における業務処理能力向上を図っている。
技能教育にあたっては、製品品質に影響する作業の力量管理を目的とした「品質影響業務一覧表」を規定、グループごとに各作業に必要な能力を明文化している。「品質影響業務一覧表」では、作業範囲を A ランク(作業者指導レベル)から Z ランク(基本作業レベル)まで 2~6 段階
に分類しており、作業別に充足すべき力量の教育訓練計画を作成、実施している。作業範囲の認
定(ランク付け)については、部長職による承認を必要としており、正社員だけでなく有期社員やパート社員を含めた全従業員の技能を「職能別力量比較マップ」(17 頁参照)で管理することで、習得状況を見える化している。
「品質影響業務一覧表」は毎年見直しを行い、時流に合った内容であるか確認している。また、高いレベルでの業務標準化を推進するために、標準化が進んでいない業務を洗い出し、標準作業・
標準工数を決め、個別に作業指導書を作成のうえ技能教育を実施している。技能レベルに差が出やすいロウ付け加工については、毎月、全ロウ付け作業従事者を対象に「匠塾」(19 頁参照)を開催し、時間も人手も惜しまず、人材育成を行っている。
パイプグループの「品質影響業務一覧表」の一部
同社では、プレス機械作業xx者やガス溶接作業xx者、職長教育といった業務関連資格・講習の取得で求められる水準より高度なレベルを目指すために社内認定を設けているが、OJT では不十分と考える分野については、外部の専門家による講習会の受講を推進している。たとえば、ポリ
テクセンター静岡の技能講習やコンサルタントによるリーダー研修を活用しており、従業員の能力開発において積極的な投資をしている。その他、ノウハウの蓄積に関して「知識一覧表」を運用しており、作業工程ごとに必要な知識や技能、成功事例/失敗事例などを、全従業員がいつでも追加、確認できるようにしている。
人手不足だからこそ多様な人材の活用も必要になるが、同社には、外国人や障がい者、女性従業員が多数在籍。xxにわたり多様性に富んだ人材の雇用を継続していることから、従業員の包摂性が養われており、人材育成の面で障壁はなく、全ての従業員に対する充実した技能教育が推進されている。今後は、そうした人材からも熟練技術者を育てることで、外国人・障がい者・女性雇用のロールモデルを確立し、人材獲得にも結び付けていく方針であり、人手不足という経営課題に 対して、技能教育を通して“質”と“数”の両面での解決を模索している。なお、既に女性役職者は 3 名に及ぶ。このように、同社は、インパクトレーダーの「教育」や「雇用」に関するポジティブなインパク
トを増大させている。
静岡銀行は、xxx機の「充実した技能教育による多能工化の推進」への貢献度を定量的に確認するために、品質影響業務の力量 A ランク取得者数および女性役職者数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ポジティブ・インパクトの増大
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>雇用、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、職能別力量取得および当社が必要とする公的資格取得が生産性向上の成果に貢献する体制を作り、成果を待遇に反映させる賃金体系にする
<インパクトの内容>
xxx機は、2018年、働き方改革関連法へ対応すべく、xxな賃金体系の実現に向けた取組みに着手した。厚生労働省管轄の働き方改革推進支援センターの専門家派遣制度を活用。専門家である社会保険労務士とともに、社内6名のプロジェクトチームを立ち上げ、厚生労働省の
「同一労働同一賃金ガイドライン」や「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」に従っ
て、不合理な待遇差の解消を目的とした「職能別力量比較マップ」を作成した。
同社は、職務ごとに、組立グループやパイプグループ、切削グループやバルジグループといった“グループ”として組織している。「職能別力量比較マップ」では、各グループに必要な職能を細かく分類した「品質影響業務一覧表」(15頁参照)をもとに、従業員ごとに各業務に対して概ね6段階のラ
ンク付けをしている。間接業務についても、「間接業務力量評価一覧表」をもとに、各部門長が従
業員ごとに力量ランクを3段階で評価している。これにより、従事する職務や役割の根拠を明示。加えて、雇用形態にかかわらず同等の職能をもつ従業員を判別、賃金差の解消を図ることができるようになった。
また、給与体系を「年功序列型」から「成果報酬型」へ見直し。通勤手当等も雇用形態に依らず同一支給としたほか、子供手当を拡充するなど、福利厚生も時代に合わせた見直しを行った。こうした取組みにより、従来の不合理な待遇差を解消し、均等・均衡待遇を確保している。
xxな待遇の実現は、従業員の意識変革を促し、多能工化の推進や労働生産性の向上につながっている。また、従業員の成長が促進されることで、正社員登用制度を活用して正社員を目指す有期社員やパート社員の増加も見込まれる。同社では、正社員化には部門長の推薦と6カ月間
の教育訓練、筆記試験を必要とするが、毎年3名程度の非xx社員が正社員に雇用転換を行っ
ている。特に、外国人労働者の雇用転換が多く、国籍や性別、障がいの有無にかかわらない評価も浸透している。こうした取組みは、インパクトレーダーの「雇用」や「包摂的で健全な経済」に資するポジティブなインパクトであり、経済産業省「ミラサポplus」や厚生労働省「CASE STUDY」において
も、同一労働同一賃金も含めた働き方改革関連法への対応の好事例として紹介されている。
パイプグループの「職能別力量比較マップ」の一部
役職 | リーダー | 個人C | 氏名 | 雇用形態 | NC | NC | NC | 端末 | 端末 | 手曲 | 手曲 | |
業務 → | NC曲げ (Cu) | NC曲げ (Sus) | NCロボ操作 | 端末加工 (xx記念) | 端末加工 (xx・xx) | 電動ベンダー (手曲げ) | 油圧ベンダー (手曲げ) | |||||
ショップ↓ | P-1 | P-2 | P-3 | P-4 | P-5 | P-6 | P-7 | |||||
○ | 正 | NC | B | D | C | |||||||
正 | NC | B | C | |||||||||
正 | NC | B | E | |||||||||
班長 | 正 | NC | A | A | D | |||||||
正 | NC | B | D | C | ||||||||
正 | NC | |||||||||||
有 | NC | E | ||||||||||
有60↑ | NC | E | ||||||||||
有 | NC | |||||||||||
実 | NC | |||||||||||
実 | NC | |||||||||||
パ | NC | E | ||||||||||
パ | NC | |||||||||||
正 | 端末 | D | ||||||||||
正 | 端末 | D | ||||||||||
○ | 正 | 端末 | ||||||||||
有 | 端末 | B | C | |||||||||
有60↑ | 端末 | E | ||||||||||
有60↑ | 端末 | B | E | |||||||||
有 | 端末 | C | E | |||||||||
有 | 端末 | |||||||||||
有 | 端末 | |||||||||||
有 | 端末 | |||||||||||
嘱 | 端末 | A | Z | |||||||||
パ | 端末 | B | ||||||||||
パ | 端末 | D | ||||||||||
正 | 手曲 | D | C | |||||||||
正 | 手曲 | A | C | |||||||||
正 | 手曲 | C | E | |||||||||
○ | 正 | 手曲 | A | |||||||||
正 | 手x | |||||||||||
x | 手曲 | |||||||||||
有 | 手曲 | E | E | D | ||||||||
有 | 手曲 | D | ||||||||||
有 | 手曲 | D | ||||||||||
実 | 手曲 | |||||||||||
パ | 手曲 | E | D |
静岡銀行は、xxx機の「xxな賃金体系」による社会への貢献度を確認するために、成果を待遇に反映させる賃金体系となっているかをモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>大気、気候変動
<SDGs との関連性>
9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロ
セスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。
11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うこ
とによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。
12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上
適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び
適応力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、ガスリーク発生件数を現状より 20%削減させる
<インパクトの内容>
エアコン等の冷凍サイクルを循環する冷媒として一般に用いられているのはフロンガスである。オゾン層破壊物質である特定フロンは廃止されているが、現在の代替フロンにおいても CO2(二酸化炭素)の数百~数万倍の温室効果があり、ガスリークが大きな問題となっている。ガスリークとは、パイ
プの内部を循環する冷媒が何らかの配管の欠陥によって外部に漏れることを指す。本来、エアコン等に充填される冷媒は、エアコン等の耐用年数まで補充する必要がない。しかし、xxxxxが生じる と、想定以上の冷媒が必要となり、エアコン等の性能が低下し、地球温暖化を助長することとなる。
xxx機は、そうした問題意識を背景に、徹底した品質活動でガスリークの削減に取り組んでいる。当然、納品前に十分な検査を実施するが、機械振動や周辺環境の変化によって、ガスリークが生じるリスクは常に伴う。そのため、同社では、検査より技術でガスリークを削減しようと、品質目標のひとつとして「リーク件数」を設定し、月次で管理・評価を実施するとともに、技能教育を強化してい る。
特に、xxxxxの原因となり易いのが、ロウ付けの不備である。同社では、毎月、全ロウ付け作業従事者を対象にロウ付け「匠塾」を開講。インストラクター(熟練技能者)による指導のもと、技能習得状況の確認を行っている。具体的には、毎月、全員がサンプルのパイプでロウ付けを実施。ロウ
付け加工後のサンプルをカットして断面の“浸透度”を確認している。浸透不具合者には追試験を設け、個別にウィークポイントを指摘、全ロウ付け作業従事者の業務標準化に取り組んでいる。なお、ロウ付け浸透度確認のエビデンスとして、「匠塾」でサンプルカットしたものはすべて断面写真として記録し、一人ひとりの“カルテ”として、技能習得状況の見える化を図っている。
ロウ付け浸透度確認の断面写真
実際の部品加工においては、トレーサビリティを徹底しており、全ての製品の加工担当者を把握。工場には、作業者ごとのガスリーク発生件数を一覧表にして掲示することで、従業員の品質意識の向上を促している。xxxxx等不良発生時には迅速に対応。「夜店朝市」と称して、不良が発生した翌朝には関係者が集まり是正処置に取り組んでいる。また、不良の発生原因を追究したら、発生対策を立てるだけでなく、類似製品への水平展開を即座に検討・実施している。
このように、同社は、統合マネジメントシステムを厳正に運用し、徹底した品質活動を通じて、製品から生じる環境への悪影響の最小化に取り組んでおり、インパクトレーダーの「大気」や「気候変動」に関するネガティブなインパクトを低減している。
静岡銀行は、xxx機の「徹底した品質活動によるガスリーク削減」による環境への貢献度を定量的に確認するために、ガスリーク発生件数をモニタリングしていく方針である。
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>環境
<インパクトレーダーとの関連性>エネルギー、気候変動
<SDGs との関連性>
7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、CO2 排出量を現状より 10%削減させる
<インパクトの内容>
xxx機は、2050 年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業活動から生じる CO2(二酸化炭素)排出量の削減に努めている。同社では、電力使用量やガソリン使用量、溶接用のガス使用量などのエネルギー消費量をもとに CO2 排出量を算出して管理。工数の削減や歩留まり率向 上への改善運動、節電やアイドリングストップに関する意識変革を厳達することで、従業員がxxと
なって排出量削減に取り組んでいる。
本社工場は LED 化を進めており、数年内に全施設の切り替えを目指す。また、2013 年には、xxx発電設備を導入、売電を開始している。2022 年xxには、自家消費型xxx発電設備を新設予定であり、業者試算によると、自家消費率は 85%、年間予測発電量にて CO2 排出量を 84t 削減できる見込み。なお、本件は J-クレジット制度を活用する予定であり、業者を介し て、環境価値化で得た収益を地元自治体などへ寄付するものである。
このように、同社では、会社を挙げた気候変動への対応が認められ、インパクトレーダーの「エネルギー」や「気候変動」に関するネガティブなインパクトを低減している。
静岡銀行は、xxx機の「気候変動への対応」による環境への貢献度を定量的に確認するために、CO2 排出量をモニタリングしていく方針である。
(6)ダイバーシティ&インクルージョンの推進による安心・安全で快適な職場づくり
<インパクトの別>
ネガティブ・インパクトの低減
<分類>社会
<インパクトレーダーとの関連性>雇用、包摂的で健全な経済
<SDGs との関連性>
8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。
<KPI(指標と目標)>
2030 年までに、労働災害ゼロを継続、メンタル不調者ゼロを達成する
<インパクトの内容>
xxx機は、直近事業年度(2021 年 9 月決算期)において、初めて「1 年間労働災害ゼロ」を達成した。安全衛生委員会を中心とした啓発活動を恒常化したことで、現場における作業者同士の声掛けや、5S 活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)が活性化されるなど、安全衛生に対する全従業員の意識変革が結実した。
労働環境の改善には、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂性)の推進も求められ る。同社は、62 名の外国人と 8 名の障がい者を雇用しており、製造現場でも数多くの人材が活躍している。一般的に、外国人労働者に関しては、コミュニケーションの齟齬から発生する事故が少なくない。しかし、同社は、1980 年代より外国人の雇用を開始、拡大させており、外国人とのコミュニケ
ーションを当たり前と捉える文化が醸成されている。障がい者雇用に関しては、2010 年に 1 階建
て・段差なし・スロープありの完全バリアフリーの本社工場を新設し、ハード面で働きやすい環境を整備した。加えて、工程管理を工夫したり(24 頁参照)、従業員から INAS(国際知的障害者スポーツ連盟)サッカー選手権の日本代表が選出された際は、会社を挙げて応援したりするなど、ソフ
ト面でも障がい者をサポートする風土を形成している。また、パイプ加工は比較的軽作業のため、女性従業員も以前から多数在籍しており、定着率も高い。人事面においては、各従業員の能力や特性を勘案して配属を決定するだけでなく、一定期間ごとに適性の見直しを実施している。従業員ごとに個別面談を行うことで、作業遂行上の問題点や要望事項を確認し、過重な負担を排除。別途教育訓練を実施したり、配置転換を検討したりすることで、働きやすい職場環境を維持し、全従業員が能力を最大限に発揮できるよう努めている。
他に、ワークライフバランスの推進も寄与している。総務部が全従業員の労働時間を徹底管理、各月の残業が一定値を超えた場合はアラームを出し、トップダウンで促進している多能工化の推進による助け合い体制のもと、特定の従業員に業務が偏ることで労働事故が誘発されないように努めている。
このように、同社では、安全衛生意識の啓発や多様性と包摂性の醸成、ワークライフバランスを推進してきたことで、直近事業年度の“ゼロ災”を実現。現在は、1 年間「労働災害ゼロ」を継続するだけでなく、「メンタル不調者ゼロ」を達成することを目標として掲げている。同社では、近年の心理的 負荷による精神疾患の増加という社会的問題を受けて、2021 年 8 月に「心の健康づくり計画」を策定した。産業医とも連携して、相談窓口を設置したり、職場巡視を強化したりすることで、安心・
安全で快適な職場づくりを進めている。
令和3年度 心の健康づくり計画
作成日 令和3年8月30日
1 基本方針
従業員の心の健康は、従業員とその家族の幸福な生活、活気のある職場のために重要な課題であると共に、より良い製品づくりを進める為の基礎であることを認識し、精神疾患の予防や職場のコミュニケーションの活性化など広く心の健康づくりに取組む。
2 目標
① 管理監督者を含む従業員全員が心の健康問題について理解し、心の健康づくりにおけるそれぞれの役割を果たせるようにする。
② 円滑なコミュニケーションの推進により活気ある職場づくりを行う。
③ 管理監督者と従業員全員による職場環境改善により心の健康増進を図る。
3 推進体制・役割
2の目標を達成するために推進体制及びその役割を明確にする。(別紙1)
4 取組み事項
2の目標を実現するために年次計画表を作成する。(別紙2)
5 取り組み事項の評価・改善
4の.取組み事項の達成状況について評価し、今後の課題の抽出及び改善を行う。
同社のこうした取組みは、インパクトレーダーの「雇用」や「包摂的で健全な経済」に関するネガティブなインパクトを低減している。
静岡銀行は、xxx機の「安心・安全で快適な職場づくり、ダイバーシティ&インクルージョンの推進」による社会への貢献度を定量的に確認するために、労働災害の件数およびメンタル不調者の人数をモニタリングしていく方針である。
4. 地域課題との関連性
xxx機は、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 30 億円に、従業員数を 260 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、この目標を達成することによって、xxx機は、静岡県経済全体に年間 49 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
【障がい者雇用の促進】
静岡労働局によると、2021 年の県内民間企業の雇用障がい者数は 13,686.5 人、実雇用率は 2.28%と、雇用障がい者数が 12 年連続、実雇用率が 9 年連続で過去最高を更新した。静岡県では、都道府県ごとに策定が義務付けられる障害福祉計画等として、「ふじのくに障害者し
あわせプラン」を策定。就労移行支援などを拡充することで、県内企業の障がい者雇用を推進している。雇用障がい者数や実雇用率が逓増傾向にある一方で、法定雇用率達成企業割合は 51.9%(前年比▲0.4 ポイント)と、制度改定の影響もあり伸び悩んでいる。厚生労働省の調
査によると、「会社内に適当な仕事があるか」や「障がい者を雇用するイメージやノウハウがない」とい
った理由により、障がい者雇用に二の足を踏む企業が多いことが実態として挙げられている。
xxx機は「静岡県障害者就労応援団登録企業」として、職場見学を希望する事業所の受入および障がい者雇用を検討している事業所に対する助言、職場実習を希望する障がい者就労支援機関の障がい者の受入を実施している。xxxx社長は、特別支援学校の卒業式に来賓として参加したことを機に、障がい者の自立支援に積極的に関与。同社においても、2006 年に障が
い者雇用を開始し、現在は 8 名の障がい者を雇用、2022 年度にはさらに 1 名を採用する予定で
ある。
同社は、静岡県からの依頼で「障がい者雇用促進セミナー」を開催。xxxx社長が、基本的な考え方や採用プロセスのポイントだけでなく、実際の雇用経験に基づいて、トラブル事例や有効な作業指示の手法などを開示している。たとえば、工程管理については、指示書として文章で伝えるだけでなく、形状やマークを図示。図形や色分けにより、知的障がい者にもやさしいものづくり工程を提示している。その他、定期的な面談やチューター制度を通じた信頼関係の構築にも努めており、障がい者に対する合理的な配慮を実施することの必要性や、問題が生じた際には外部支援機関の活 用を徹底することなども啓発している。
人手不足が深刻化する現代において、障がい者を含めた多様な人材の活用はますます重要となっている。同社は、障がい者雇用を拡大することで、雇用の選択肢を増やすだけでなく、製造工程の改善(ポカヨケ)による品質向上、従業員の包摂性を醸成。そのノウハウを地域へ還元することで、持続的な社会の実現に向けて貢献している。
知的障がい者にやさしいものづくり工程
【持続可能な森づくり活動】
xxx機は、「富士山南陵の森フォレストセイバープロジェクト(FSPJ)」に参画することで、緑地保全活動に従事している。FSPJ とは、「”富士山南陵の森”を地域の様々な人々をつなぐコミュニ
ティの森として活用し、「森を守り育てる人づくり」を目指し、企業活動と地域が一体となり、皆で参加する森づくり活動」である。近隣の工業化に伴い、緑地や希少動植物の減少が進行した富士山南陵の森において、その保全・再生活動を図っている。
同社が位置する富士山南陵の森工業団地は、『緑』と『人』と『生産』を融合する拠点づくり・環境共生を目指す『新しいものづくりの場』を提供・持続型社会につながる自然と人との関係構築、をコンセプトとした環境共生型工業団地『Eco-Factory Mt.Fuji』であり、進出企業は環境にやさし
いものづくりを実践している事業者に限られる。また、FSPJ への資金援助や従業員の活動参加によ
り、持続可能な森づくり活動に携わる。
同社では、企業イメージの向上に資する CSR 活動としてだけでなく、従業員に対する福利厚生や環境教育、コミュニケーション活性の場として、FSPJ を積極的に支援している。FSPJ では、植栽や動植物の保護に加え、NPO 法人ホールアース研究所による自然学校の開催なども行われる。そのため、従業員にとっては、自然体験・自然教育というレクリエーション要素が強く、家族を連れて参
加したり、社員同士のコミュニケーションを増やしたりできる機会になっており、自発的な参加が助長されている。
FSPJ は、2019 年度に、工業団地進出企業が敷地内緑化ではなく、周辺の緑地保全のため
に出資、その活動の担い手になっていることが評価され、国土交通省などが主催する「中部のxx創造大賞」優秀賞を受賞。2020 年度に、環境配慮型の工業団地というハード面と、産民官学が一体となった森づくり活動というソフト面が評価され、一般財団法人エンジニアリング協会「エンジニアリング功労者賞」を受賞。2021 年度には、新しい工業団地開発のかたちを示したことが評価され、公益財団法人土木学会「土木学会賞」環境省を受賞するなど、確かな森づくり活動として表彰さ
れている。
現在、FSPJ は、運営体制の改革に取り組んでいる。同社は、2030 年までに、FSPJ の活動を継続するための工業団地内の運営組織を作り、工業団地内の全事業者が取り組む活動として定
着させることで、絶滅危惧種のキンランや森林に棲息する希少なヒメボタルなどの野生生物保護に貢献することを目標に掲げており、こうした取組みは、SDGs のゴール 15「陸の豊かさも守ろう」に資するものである。
5. マネジメント体制
xxx機では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xxxx社長が陣頭
指揮を執り、xxx常務取締役とxxxx ISO システム室長が中心となって、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xxxx社長を最高責任者とし、xx
x常務とxxxxx長を実行責任者とした ISO システム室を中心として、全従業員がxxとなって、KPI の達成に向けた活動を実施していく。なお、KPI は統合マネジメントシステムの長期目標の位置付けとし、部門ごとに達成のための実施計画を立案し実行していく。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxx |
実行責任者 | 常務取締役 xxx |
ISO システム室長 xxxx | |
担当部署 | ISO システム室 |
6. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と佐藤工機の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI に関しては、達成後もその水準を維持していることを確認する。なお、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、静岡銀行と佐藤工機が協議の上、再設定を検討する。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するxxx機から供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
研究部 研究員 xx xx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x XXX:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 3 月 30 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社xxx機に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社静岡銀行 |
評価者:一般財団法人静岡経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、静岡銀行が株式会社xxx機(「xxx機」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、静岡経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。静岡銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し静岡経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、静岡銀行及び静岡経済研究所にそれを提示している。なお、静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC の定義に拠っている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では
52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
静岡銀行及び静岡経済研究所は、本ファイナンスを通じ、xxx機の持ちうるインパクトを、UEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、xxx機がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、静岡銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 静岡銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
①PIFの申込み | ②PIF評価依頼 | レビュー依頼 | ||||
③インパクトの | ||||||
包括分析・特定 | ||||||
お客さま | ⑤目標・KPI等の協議 | 当行 | ④インパクトの還元 | 静岡経済研究所 | コメントバック | JCR |
⑥目標・KPI等の報告 | レビュー依頼 | |||||
⑨融資実行 | ⑦目標・KPI等の | |||||
PIF評価書交付 | 評価 | |||||
⑧PIF評価書作成 | コメントバック |
(出所:静岡銀行提供資料)
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(2) 実施プロセスについて、静岡銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、静岡銀行からの委託を受けて、静岡経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て静岡経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、静岡経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるxxx機から貸付人である静岡銀行及び評価者である静岡経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で
対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
Japan Credit Rating Agency, Ltd.
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000
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