清水銀行(頭取 岩山 靖宏)は、お客様の SDG s の達成をご支援するため、各種サステナブルファイナンスの提供に努めており、その一環としてこのたび、株式会社カクニ茶藤(代表取締役社長 森藤 真帆)と「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約を締結いたしました。
株式会社カクニ茶藤 との
「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
清水銀行(頭取 岩山 靖宏)は、お客様の SDG s の達成をご支援するため、各種サステナブルファイナンスの提供に努めており、その一環としてこのたび、株式会社カクニ茶藤(代表取締役社長 森藤 真帆)と「しみずポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約を締結いたしました。
本件の取組みにあたっては、関連会社の株式会社清水地域経済研究センター(代表取締役 田中 昌一)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所(代表取締役社長 髙木 祥吉)がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。
清水銀行では、2021 年 12 月に「環境方針」「責任ある投融資方針」からなる「清水銀行サステナビリティ方針」を策定し、持続可能な社会の実現や社会的課題の解決に向けた取り組みを加速させてまいりました。今後も社会・環境問題の解決に資する取り組みを一層推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
1.契約概要 2.借入人概要
契 約 日 : 令和 4 年 11 月 28 日(月) 企 業 名 : 株式会社カクニ茶藤
融資金額 : 50 百万円 所 在 地 : 静岡県静岡市葵区牧ケ谷 2083
資金使途 : 運転資金 事業内容 : 製茶業
3.借入人の主な取組み(詳細は「ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書」をご参照ください)
(1)特定されたインパクト
ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項 | ・FSSC22000 等の各種認証の継続 ・茶製造量 ・日本茶アドバイザー及び日本茶インストラクター資格取得費用の支援制度確立 ・全従業員の日本茶アドバイザーまたは日本茶インストラクター資格取得 ・自社製品の輸出国の増加 ・女性管理者の増加 ・有機栽培茶の契約農家の増加 |
ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項 | ・労働災害の原因究明と再発防止策 ・労働災害の発生ゼロ ・残業時間の削減 ・廃棄茶の商品化と肥料化 ・廃棄茶の削減 ・本社及び工場の照明設備の LED 化 |
(2)測定する KPI
社会面 | ・FSSC22000、HALAL、USDA/NOP、OK Kosher Certification、有機農業物加工食品認定、有機加工食品生産工程管理者の認証を継続する ・2027 年までに茶製造量を 2021 年度比において倍増させる ・2027 年までに日本茶アドバイザー及び日本茶インストラクター資格取得に係る受講料及び受験料の費用負担を社内規定にて明文化し 、全従業員が日本茶アドバイザーまたは日本茶インストラクター資格を取得する ・2027 年までに自社製品の輸出国を 10 カ国に増加させる ・2027 年までに女性管理者を4名へ増加させる ・災害・事故の原因究明及び再発防止策を講じ、2027 年までに災害・事故の発生ゼロを目指す ・2027 年までに一人当たりの残業を月 15 時間まで削減する |
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環境面 | ・2027 年までに廃棄茶の商品化及び肥料としての活用により、廃棄量を 2021 年度比において 30%削減する ・2027 年までに本社及び工場内の照明設備の LED 化を 100%とする |
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経済面 | ・2027 年までに女性管理者を4名へ増加させる ・2027 年までに有機栽培茶契約農家を 30 軒へ増加させる |
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以 上
<ニュースリリースに関するお問い合せ> 清水銀行 支店営業部 松田 054-366-9990
2022 年 11 月 24 日
株式会社清水地域経済研究センター
目次 | |
1.評価の概要••••••••••••••••••••••••••• | 1 |
2.PIF の概要••••••••••••••••••••••••••• | 2 |
3.企業概要•••••••••••••••••••••••••••• | 2 |
4.包括的分析••••••••••••••••••••••••••• | 5 |
5.サステナビリティ経営体制•••••••••••••••••••• | 15 |
6.インパクトの特定•••••••••••••••••••••••• | 19 |
7.KPI の決定••••••••••••••••••••••••••• | 21 |
8.モニタリング•••••••••••••••••••••••••• | 25 |
清水地域経済研究センターは、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が公表している「ポジティブ•インパクト•ファイナンス金融原則」に則り、株式会社カクニ茶藤(以下、カクニ茶藤という)の包括的なインパクト分析を行いました。
清水銀行は、本評価書で特定されたポジティブ•インパクトの拡大とネガティブ•インパクトの低減に向けた取り組みを支援するため、カクニ茶藤に対してポジティブ•インパクト•ファイナンス(以下、PIF という)を実行します。
1.評価の概要
(企業概要)
カクニ茶藤は静岡県静岡市葵区牧ヶ谷にある 1977 年創業の日本茶製造業者である。国内部門においてはペットボトル茶の原料を主に製造しており、海外部門については有機栽培を行う契約農家と連携して生産した良質なお茶をアメリカ、EU 等へ輸出するなど、日本茶の魅力を世界に向けて発信している。
また関連会社には茶商•茶農家との共同出資にて設立した「静岡オーガニック抹茶㈱」があり、海外輸出向けを中心とした有機抹茶を製造している。
(インパクト特定)
製茶事業におけるポジティブ•インパクトとして特定した項目は「食糧」「教育」「雇用」
「文化•伝統」「包括的で健全な経済」「経済収束」とし、ネガティブ•インパクトとして特定した項目は「健康•衛生」「雇用」「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」とした。
(KPI の決定)
ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項として、社会面において、「食糧」ではテーマを「品質•安全にこだわった製品の提供」とし KPI は「FSSC22000、HALAL、 USDA/NOP、OK Kosher Certification、有機農業物加工食品認定、有機加工食品生産工程管理者の認証を継続する」「茶製造量を 2021 年度比において倍増させる」とした。「教育」ではテーマを「資格取得による業務のスキルアップ支援」とし KPI は「日本茶アドバイザー及び日本茶インストラクター資格取得に係る受講料及び受験料の費用負担を社内規定 にて明文化し、全従業員が日本茶アドバイザーまたは日本茶インストラクター資格を取得する」とした。「文化•伝統」ではテーマを「日本茶普及に向けた海外輸出の強化」とし KPI
は「自社製品の輸出国を 10 カ国に増加させる」とした。社会面•経済面において、「雇用」
「包括的で健全な経済」ではテーマを「女性管理者増加」とし KPI は「女性管理者を4名へ増加させる」とした。経済面において、「経済収束」ではテーマを「有機栽培茶の促進による茶農家の収入安定化及び販路拡大支援」とし KPI は「有機栽培茶契約農家を 30 軒へ増加させる」とした。
ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項として、社会面において、「健康•衛生」
ではテーマを「労働管理体制の確保」とし KPI は「災害•事故の原因究明及び再発防止策を講じ、災害•事故の発生ゼロを目指す」とした。「雇用」ではテーマを「労働環境の改善」として KPI は「一人当たりの残業を月 15 時間まで削減する」とした。環境面において、「資源効率•安全性」「廃棄物」ではテーマを「廃棄茶の商品化及び肥料化による廃棄物削減」とし KPI は「廃棄茶の商品化及び肥料としての活用により、廃棄量を 2021 年度比において 30%削減する」とした。「気候」ではテーマを「本社及び工場内の照明設備の LED 化による CO2 削減」とし KPI は「本社及び工場内の照明設備の LED 化を 100%とする」とした。
(モニタリング)
モニタリング体制として、統括責任者に森藤社長、プロジェクトリーダーに加藤専務、アドバイザリーに加藤会長を選定し、プロジェクトチームとして総務部内に SDGs 推進チームを組成した。今後少なくとも年 1 回はモニタリングする体制を構築し、進捗状況を確認する。
2.PIF の概要
今回実施予定の融資概要
契約日及び返済期限 | 2022 年 11 月 28 日~2027 年 11 月 25 日 |
金額 | 50,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年 |
3.企業概要
企業名 | 株式会社カクニ茶藤 |
グループ企業 | |
海外拠点 | 無 |
従業員 | 40 名 |
資本金 | 10 百万円 |
業種 | 製茶業 |
事業の内容 | 製茶事業 100% |
主要取引先 | <主要仕入先> ㈱静岡茶市場、静岡オーガニック抹茶㈱、契約農家 他 <主要販売先> 三井農林㈱、RISHI TEA(USA)、クラウン貿易㈱ 他 |
沿革 | 1977 年 静岡市葵区北番町にカクニ茶藤を設立 1982 年 静岡市葵区安西 4 丁目に本社新築移転 1996 年 静岡市葵区牧ヶ谷 2414 に工場移転 2001 年 有限会社に組織変更 2004 年 静岡市葵区牧ヶ谷 2083 に新工場設立、冷蔵庫新築移転 2007 年 株式会社に組織変更 2011 年 有機加工食品生産工程管理者 認定取得 2014 年 FSSC22000 認証、HALAL 認証取得 2015 年 USDA/NOP 認定取得 2016 年 有機加工食品輸入業者 認定取得 2019 年 OK Kosher Certificate 認定取得 2022 年 静岡市葵区飯間 1127-3 に新工場設立(Charm Factory)代表取締役会長に加藤 重樹氏就任 代表取締役社長に森藤 真帆氏就任 |
経営理念 | 【企業理念】 不易流行の精神で 世界へ茶(CHA)を届ける先駆者であり続ける 【価値】 自分•仲間•お客様と誠実に向き合う 自発的に スピード感をもって行動する失敗を恐れず 新しいことに挑戦する 仕事を愛し 変化を楽しみ 人生を謳歌する |
会社名(◎中心企業) | 業種 | 所在地 |
◎㈱カクニ茶藤 | 製茶業 | 静岡市葵区牧ケ谷 2083 |
静岡オーガニック抹茶㈱ | 製茶業 | 榛原郡川根本町👉部 54-1 |
組織図 |
4.包括的分析
(1)業種別インパクトの状況
製茶事業におけるインパクトレーダーの標準値において、ポジティブなインパクトとして発現した項目は「食糧」「雇用」「文化•伝統」「包括的で健全な経済」、ネガティブなインパクトとして発現した項目は「健康•衛生」「雇用」「水(質)」「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」となった。
(2)サプライチェーン全体におけるインパクトの状況
ⅰお茶業界動向
お茶の国内生産高は、2022 年 10 月に農林水産省が公表した「茶をめぐる情勢」において、荒茶段階において直近 5 年間(2016 年~2020 年)の平均で 883 億円の産業規模である。
主要産地は静岡県、鹿児島県、三重県、京都府、福岡県となっており、静岡県、鹿児島県、三重県の上位 3 県で全国の栽培面積の約 7 割を占めている。また、「煎茶」を主体とする静岡県、鹿児島県に対し、「かぶせ茶」(煎茶と玉露の中間に位置する日本茶)生産が多い三重県など、県ごとに特色ある茶生産が行われている。茶期別生産量では、主にリーフ茶(茶葉から淹れたお茶)向けの一番茶の生産量は減少しているが、ドリンク等向けに使用される安価な三番茶や四番茶•秋冬番茶の生産は増加傾向にある。また、需要の高まっている「碾茶(てんちゃ)」(緑茶の一種で、挽いて抹茶にするためのお茶)の生産においても増加傾向となっている。国内におけるお茶の総栽培面積は減少傾向にあるが、茶農家 1 戸当たりの栽培面積は拡大している。(図表1~図表7:「茶をめぐる情勢」引用)
図表1
図表2
お茶の価格については、茶種•茶期•品質により大きな差が生じている。なお、ペットボトル系緑茶飲料の需要の伸びに呼応する形で、2004(平成 16)年までは上昇傾向であった。その後、需要の停滞により価格は低下傾向にあったが、在庫の解消が進んだことなどを要因とし、2021 年(令和 3 年)については 2020 年(令和2年)比で大幅に回復した。
図表3
お茶の消費動向としては、リーフ茶については減少傾向にて推移する傍ら、ペットボトル系緑茶飲料については増加傾向にて推移している。1 世帯当たりの年間支出額についても、上記同様リーフ茶は減少傾向にあるが、ペットボトル系飲料が増加しているため、合計支出額は近年増加傾向にある。
図表4
図表5
品質の高い日本産の農産物は世界から注目を集め、輸出額は増加傾向にあり 2021 年には
1 兆円を超えた。政府は 2025 年に輸出額 2 兆円、2030 年には 5 兆円を目標として輸出拡大に取り組んでいる。その取り組みの中で、輸出重点品目(海外で評価される日本の強みがあり、輸出拡大の余地が大きい品目)として「茶」も選定されている。この 10 年間で緑茶の輸出量は大幅に増加し、輸出先の国や地域も拡大している。世界的な日本食ブームやヘルシー志向、飲み物のフレーバーとして抹茶の認知が拡大されていることを背景に、2021(令和 3)年の緑茶輸出額は 204 億円となった。免疫力を高める食品需要が上向く中で、緑茶も特定の健康成分が多く含まれ健康増進にも役立つ「スーパーフード」として最近は人気を集めている。緑茶の形状別の輸出実績において、アメリカでは洋菓子等で使われる「MATCHA」が認知されていることから抹茶を含む「粉末状の緑茶」の輸出量が多く、EU や台湾ではリーフ茶を好む傾向があり「その他の緑茶」の輸出量が多い傾向にある。
図表6
図表7
農林水産省では、2011 年に「お茶の振興に関する法律」を施行した。本法律は、農林水産大臣による基本方針の策定について定めるとともに、生産者の経営安定、消費の拡大及びこれに資するお茶を活用した食育の推進並びに輸出の促進、お茶の伝統に関する知識等の普及の措置等を講じ、茶業の健全な発展及び豊かで健康的な国民生活の実現に寄与することを目的としている。また、同省は 2020 年に近年の茶業をめぐる情勢等の変化を踏まえ、「茶業及びお茶の文化振興に関する基本方針」を策定した。その中で、茶業及びお茶の文化振興の意義として、「国民の豊かで健康的な生活の実現」「中山間地域における重要な基幹作物」「茶業は、裾野が広く、地域経済•雇用確保の観点からも重要な産業」であると位置づけている。
ⅱお茶の種類と製造方法
お茶は製造方法により、大きく不発酵茶「緑茶」、半発酵茶「ウーロン茶」、発酵茶「紅 茶」に大別される。緑茶は製造の第一段階で生茶を「蒸す」または「炒る」工程があるが、日本茶は蒸す工程を経て、製造方法や茶葉の生産方法により「煎茶」「玉露」「かぶせ茶」
「番茶」「碾茶(てんちゃ)」等に仕上げられる。また煎茶は蒸しの強弱により「普通煎茶」と「深蒸し煎茶」となる。お茶の主な種類は以下の通りとなる。
資料:全国茶生産団体連合会
お茶の主な製造方法は以下の通りとなる。
資料:全国茶生産団体連合会
ⅲお茶の効能と味
成分 | 機能性 |
カテキン | 抗酸化、抗突然変異、抗がん、抗動脈硬化、血中コレステロール抑制、抗菌、抗ウイルス、虫歯予防、腸内フローラ改善、消臭、血圧上昇抑制 効果、インフルエンザ予防作用など |
アミノ酸 (テアニン) | 抗ストレス作用、血圧低下、脳神経機能調整、血管性痴呆症予防作用、 肝がん細胞浸潤抑制作用など |
カフェイン | 覚醒作用、強心作用、大脳の刺激、利尿作用など |
ビタミン | 【ビタミン A】抗酸化作用、抗がん作用など 【ビタミン B 群】口角炎予防、抗酸化作用など 【ビタミン C】抗酸化作用、ストレス解消作用、風邪予防、美肌効果等 【ビタミン E】抗酸化作用、老化抑制作用など |
食物繊維 | 便秘予防、大腸がん予防、心疾患予防など |
お茶は、日本や中国において何千年もの間、薬用として用いられてきた。成分としては、カテキン•アミノ酸(テアニン)•カフェイン等が含まれており、人間の健康に良い影響を与えるとされる成分を多く含んでいる。
資料:日本茶業体制強化推進協議会「茶の効果 20 選」
また、2020 年に公立大学法人奈良県立大学より、「お茶による新型コロナウイルスの不活化効果について」が発表され、お茶の新型コロナウイルス感染症対策への寄与の可能性が示されるなど、お茶に関する抗ウイルス研究も進められている。
食品の味は「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の 4 つが基本とされてきたが、1985 年に開催された「第 1 回うま味国際シンポジウム」を機に日本料理に使われる昆布や鰹節等の
「うま味」が加えられた。緑茶はカテキン•カフェイン•ビタミンの苦味、テアニンの甘味•うま味の成分が複雑に作用しあうことで、豊かな風味がつくられている。
ⅳ静岡県のお茶
静岡県においては、2022 年 3 月に「静岡県茶業振興計画」を策定し、「生産者の経営安定と持続可能な茶業の両立~多様な人々との協働で目指す静岡茶業の再生~」を目指す姿とし、「産業振興の視点」「環境•産業振興の視点」「文化•産業振興の視点」の 3 点を掲げ、2020 年の茶算出額 203 億円、茶輸出額 34.1 億円、有機栽培面積 198ha の実績値に対して、2025 年に茶産出額 287 億円、茶輸出額 58 億円、有機栽培面積 400haを目標値に設定している。静岡県においても、全国と同様に茶販売農家数、荒茶工場数、茶園面積は減少傾向にある。一方、安全•安心な生産管理への意識の高まりにより、JGAP• ASIAGAP1などの GAP 認証取得件数は増加傾向にある。また緑茶の輸出に関しても増加傾向にあり、2021 年には 1,700tと過去最高を記録し、2025 年においては 2,500tへの拡大を目指している。
ⅴ静岡市のお茶
静岡市においては、2010 年に第 1 次計画「静岡市茶どころ日本一計画」を策定し、2020年 4 月からは第 2 次計画(終了年度:2031 年 3 月 31 日)がスタートしている。
第 1 次計画では、基本構想の 100 年後の将来像である「世界中の誰もがあこがれるお茶
のまち」づくりに向けた機運醸成•環境整備を行った。第 2 次計画においては、「第 1 次計画の実績•評価と現在の茶業が抱える課題を踏まえ、選択と集中•ブラッシュアップを行っていく」としている。
静岡市における茶業について、茶栽培農家数は県内 1 位であるが、茶栽培面積は県内 5 位
であり、1 戸当たりの茶栽培面積は県内 13 位(いずれも 2015 年)となっていた。この要因として、静岡市の茶生産が主に急傾斜地で行われ、省力化や作業負担の軽減が進まず、
1 GAP(Good Agricultural Practice)とは適正農業基準のことであり、JGAP とは一般財団法人日本 GAP 協会が認証を行い、食品安全•労働安全•環境保全•人権福祉など持続可能な農場経営への取り組みに関し、日本の標準的な農場にとって必要十分な内容を網羅した基準の
ことである。ASIAGAP についても、JGAP と同様の要素を含んでいるが、GFS(I Global Food
Safety Initiative)から承認を受けた制度であるため、食品安全の要素内に食品安全衛生管理手法である HACCP をベースとした考え方、食品防御や食品偽装防止が含まれている。
その結果、茶園の集約化が進んでいないこと等が挙げられる。また 2019 年には生葉分と荒茶分を合計した茶の産出額で、静岡県は鹿児島県に初めて首位を明け渡した。そこで静岡市は、第 2 次計画の目標像を「茶業の成長産業化~収益力が高く、強く攻めの茶業への
転換~」とし、目標指標を「静岡市の茶産出額 30 億円」「『お茶のまち静岡市』を誇り に思う市民の割合:100%」「首都圏における『お茶のまち静岡市』の想起率:90%」とした。また 3 つの重点施策とその目標指標を「静岡市が掲げる年間農業所得目標(500 万円)を達成した認定農業者(茶)の割合を 25%(2018 年)から 55%(2030 年)とする」
「静岡市事業に係る『静岡市のお茶』の輸出量を 0.58t(2018 年)から 5.5t(2030 年)とする「」1 世帯あたりの緑茶購入数量を2,333g/年(2018 年)から2,600g/年(2030年)とする」とした。
ⅵ事業概要
カクニ茶籐の事業概要
同社は 1977 年静岡市葵区で創業し、2001 年有限会社、2007 年株式会社へ組織変更した。2011 年に有機加工食品生産工程管理者2の認定を取得し、2014 年に FSSC220003及び HALAL 認証4を取得、2015 年に USDA/NOP5の認定を取得、 2016 年に有機加工食品輸入業者6の認定を取得、2019 年に OK Kosher Certification7の認定を取得した。
同社は国内外に 385 先の取引先を有しており、2022 年度売上実績においては国内取引が約 55%、海外取引が約 45%となっている。国内については大手飲料メーカーのペットボトル飲料向けの受注が多く、海外についてはアメリカ、EU 等を中心に現在 6 カ国との取引があり、近年の日本茶需要の高まりを背景に取引高も増加傾向にある。
今後の事業展開として、国内については EC サイト立上げによる B to C 事業の構築や大手飲料メーカーとの取引拡充を図り、海外については東南アジアや中東といった新たなイスラム圏内及びユダヤ圏内のマーケットへの進出を目指していく。
また同社は有機栽培茶にフォーカスし、現在 24 軒の有機栽培茶農家と契約を結んでいる。更なる有機栽培茶の普及を図るべく、静岡県内の茶農家向けに宮崎の有機栽培茶農
2 有機加工食品生産工程管理者とは、JAS 法に基づいて有機加工食品の生産工程を管理し、または把握している者。
3 FSSC22000 とは、Food Safety Certification 22000 の略であり、GFSI が承認する食品安全のためのシステム規格。
4 HALAL 認証とは、対象となる商品•サービスがイスラム法に則って生産•提供されてものであることをハラール認証機関が監査し、一定の基準を満たした場合に発行される認証。
5 USDA/NOP とは、アメリカ農務省(United States Department of Agriculture)傘下の全米オーガニックプログラム(National Organic Program)制度により与えられるオーガニック食品の認証。
6 有機加工食品輸入業者とは、JAS と同等の有機認証制度のもとで格付された外国の有機加工食品を、輸入時に有機JAS マークに貼り替えて、国内に流通させることのできる認証輸入業者。
7 OK Kosher Certification とは、ユダヤ教徒が食べても良いとされる「清浄な食品」であるコーシャを認定する機関の中で、最も主要な認定機関。
家を招きセミナーを開催する等、有機栽培茶を広めより多くの生産者との連携を図り、茶農家の安定した収入増加を目指している。またオーガニック(有機)が主流の海外市場においては、更に有機栽培の日本茶が浸透するよう意欲的に取り組んでいる。
【同社主催の有機栽培茶セミナーのパンフレット】
同社は、会社組織体として 4 部 13 課体制で運営しているが、事業拡大を見据え、各部の管理体制強化を図る為、新たな管理者の登用•配置を検討している。
静岡オーガニック抹茶㈱の事業概要
静岡オーガニック抹茶㈱(以下、SOMA という)は、2020 年に茶の輸出の拡大に取り組む茶商と有機栽培茶の生産に取り組む茶農家組織から共同出資を募り、カクニ茶藤が 20%を出資して設立された。静岡県の中西部に位置する川根本町にある SOMA は、国内でも最大級の抹茶の生産能力(約 300t/年)を誇り、栽培から輸出までワンストップで行う事業体である。国内外の有機栽培茶の需要に向け、静岡県中西部の川根本町、島田市、藤枝市を中心に、広域で競争力のある生産体制の構築を目指している。また、相場に左右されない安定収入を生産者へ還元すること、茶業を担う後継者を育成するこ
と、荒廃茶園を救済しサステナブルな茶業の推進を図ること、を目指している。
【SOMA 全景】
ⅶサプライチェーンの概要
カクニ茶藤におけるサプライチェーンは、茶農家が生産した茶葉である「生葉」を荒茶製造業者が「荒茶」に加工し、JA 等を通じて荒茶を仕入れている。その後、仕入れた荒茶を火入れ、乾燥し、選別した上でブレンドを行い商品化し、卸売業者や小売業者に販売を行っている。生葉の収穫から消費者に製品が届くまでの一連の工程において、同社は荒茶を加工しお茶の味•風味•香り等を決め仕上茶として製品化を行う業務を担っている。
同社は現在 24 軒の有機栽培茶農家と契約を結んでいる。SOMA を通して茶農家の安定した収入増加や茶業を担う後継者を育成する観点からも海外市場への進出を強化しており、海外でニーズの高い有機栽培茶の更なる普及を図るべく、静岡県内の茶農家向けに宮崎の有機栽培茶農家を招きセミナーを開催する等、より多くの茶農家との連携を深めている。今後も茶業界全体が盛り上がっていくよう茶農家を巻き込み意欲的に取り組んでいる。
5.サステナビリティ経営体制
(1)サステナビリティ経営方針
同社の企業理念は、「不易流行の精神で 世界へ茶(CHA)を届ける先駆者であり続ける」としており、本業である「茶」を通して、安全•安心な製品の提供はもとより、抗ストレス性•抗ウイルス性の側面も持つことから、「日本茶」を欧米圏のみならず、イスラム圏•ユダヤ圏へも「日本茶文化」の輸出に取り組んでいる。
また、同社における価値については、「自分•仲間•お客様に誠実に向き合う」「自発的に スピード感をもって行動する」「失敗を恐れず 新しいことに挑戦する」「仕事を愛し 変化を楽しみ 人生を謳歌する」としている。従業員のステークホルダーに対する誠実性•忠実性を前提に掲げ、弛まぬチャレンジによる自己実現の達成を目指し、CS(顧客満足度)向上だけでなく ES(従業員満足度)向上に取り組んでいる。
また同社では、労働者の人権に関する方針、環境保護基本方針、個人情報保護方針を定めている。
労働者の人権に関する方針では、「強制労働の禁止」「児童労働の禁止」「労働時間への配慮」「適切な賃金」「非人道的な扱いの禁止」「差別の禁止」「従業員の団結権」「安全•健康な労働環境」を掲げている。
環境保護基本方針では、「地球環境保護に貢献する技術や製品の提供」「製品ライフサイクルにおける環境負荷の低減」「事業活動での環境負荷の削減」「法規制•基準の順守」
「環境マネジメントシステムの確立と継続的改善」「従業員の意識向上と社会貢献」「コミュニケーションの推進」を掲げている。
個人情報保護方針では、個人情報保護の仕組みを構築し、全従業員に個人情報保護の重要性の認識と取り組みを徹底させることにより、個人情報の保護を推進している。
(2)社会面における対応
〈食糧に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、品質•安全にこだわったお茶を製造し、安定して供給する体制を構築している。 2011 年有機農業物加工食品認定及び有機加工食品生産工程管理者の認証を受け、有機加工食品の生産工程を管理する仕組みづくりに取り組んでいる。2014 年にはFSSC22000の認証を受け、食品安全のためのシステム構築に取り組んでいる。また同年 HALAL 認証を受け、イスラム法に則った生産体制を構築している。2015 年には USDA/NOP の認証を受け、アメリカにおけるオーガニック食品としての認証も受けている。また 2019 年 OK Kosher Certification の認証を受け、ユダヤ教徒が食べても良いと認定される生産体制を構築している。前述の通り、日本茶の成分には抗ウイルス及び抗ストレス効果も認められ、日本茶の摂取によりウイルス感染防止及びストレス低減効果が期待できる。同社は緑茶ペットボトル飲料の原料も提供しており、上記の認証から製品の品質•安全性が評価され、ナショナルブランドを展開するメーカーから間接的に原料の供給増加に関する要請も受けている。同社は、更なる高品質•高安全性の製品提供を行っていくことから、上記
の FSSC22000 等は継続して認証を受けていく必要性を確認した。またペットボトル飲料を含めた茶製造量については 2021 年度実績 479tに対し、2027 年度までに倍増させる方向性を確認した。
〈健康•衛生に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、業務の従事中での事故発生ゼロを目指して取り組んでいるが、2021 年度で3件、 2022 年度で2件の労災事案が発生している。2021 年度は階段での転倒、テープ等の開閉時の切創•擦過傷等が発生し、2022 年度はトラックからの商品積み下ろし作業中の転落事案、仕上げ加工の製造時における清掃時のローラー巻き込まれ事案が発生している。原因は、作業手順の逸脱、環境の問題、掃除怠慢、不注意等であるが、根本的な改善とま では至っていない。軽微な事故が重大事故に繋がる危険性を孕んでいることから、事故の原因究明を行い、再発防止策を策定する必要性を確認した。
〈教育に関して取り組んでいる項目、課題等〉
インパクトレーダーにおいて、「教育」は標準値として発現していないが、同社は資格取得による業務のスキルアップ支援に取り組んでいる。2022 年 4 月時点における資格取得者数は、日本茶アドバイザー3 名、日本茶インストラクター6 名となっている。同社の経営理念である「世界へ茶(CHA)を届ける先駆者であり続ける」には、従業員が同社のメイン商品である日本茶を熟知することが重要であるとの認識から、従業員が日本茶アドバイザーまたは日本茶インストラクター8資格を取得するための支援制度を確立する必要性 を確認した。
〈雇用に関して取り組んでいる項目、課題等〉
全従業員 34 名の合計残業時間は 2021 年度において 694 時間/月であり、1人当たり平均残業時間は20時間/月である。残業時間については従業員ごとに時間数に大きな差があり、要因については個人の業務スキル格差等が挙げられる。今後は従業員各個人のスキルアップを図り、従業員間の残業時間の平準化及び一人当たりの業務負担軽減の必要性を確認した。
〈文化•伝統に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、SOMA にて製造した有機抹茶を海外顧客に販売することで日本茶の輸出促進に取り組んでいる。有機栽培茶の安全性と健康面の有効性を訴え、同社の企業理念に「不易流
8 日本茶アドバイザーとは、NPO 法人日本茶インストラクター協会が認定する資格であり、消費者への日本茶に関する指導•助言やインストラクターのアシスタントとしての適格性を備えた初級指導者のこと。
日本茶インストラクターとは、日本茶に対する興味•関心が高く、日本茶の全てにわたる知識及び技術の程度が、消費者や初級指導者(日本茶アドバイザー)を指導する適格性を備えた中級指導者のこと。
行の精神で 世界へ茶(CHA)を届ける先駆者であり続ける」とあるように、日本茶文化を世界に発信している。海外顧客に対しては同社の日本語版ホームページ(HP)と同内容の英語版HPを整備し、海外からの問合せ等に対しては、日本茶を知ってもらうきっかけ作りとして、抹茶を使用した菓子やクラフトビールの紹介や日本茶の製造工程を動画等で配信するなど日本茶に対する認知を高める努力を行っている。現在の輸出国はアメリカ、ドイツ、オランダ、オーストラリア、インドなど6カ国となっている。同社は HALAL 認証、Kosher 認証も受けており、イスラム圏、ユダヤ圏への輸出も含めて、今後は輸出国 も増加させて日本茶文化を更に発信していく方向性を確認した。
(3)社会面•経済面における対応
種類 | 男性 | 女性 | 合計 |
役員 | 4 | 2 | 6 |
管理者 | 3 | 2 | 5 |
一般 | 17 | 12 | 29 |
合計 | 24 | 16 | 40 |
男女比率 | 60% | 40% | 100% |
〈雇用、包括的で健全な経済に関して取り組んでいる項目、課題等〉従業員の状況は以下の通りである。
同社の女性管理者は現在2名であり、全管理者 5 名に対し女性管理者比率は 40%である。同社はダイバーシティの推進及び事業拡大における組織拡充の面から、2030 年までに女性の管理者を4名まで高めていく必要性を確認した。
(4)環境面における対応
〈水(質)に関して取り組んでいる項目、課題等〉
インパクトレーダーにおいて、「水(質)」が標準値として発現したが、同社事業遂行において水(質)を大量に使用する業種でないことから、環境に与える影響は限定的である。
〈資源効率•安全性及び廃棄物に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、日本茶製造工程において廃棄茶が毎年約 2.5t 発生する。現状において、廃棄茶は廃棄物として廃棄業者へ処分を依頼しているが、同社の調査•研究により一部については粉茶での商品化の目処がついた。また、牧場や農業等で使用する肥料として有効活用できる方向性の目処もついた。これにより、廃棄茶の廃棄物としての削減も併せ、資源として再利用する方向性を確認した。
〈気候に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、本社工場及び本社内の照明の LED 化に取り組んでいる。現状では LED 化は約 50%対応済である。今後については 100%まで LED 化を進めていく必要性を確認した。
(5)経済面における対応
〈経済収束に関して取り組んでいる項目、課題等〉
同社は、高級茶の産地として 800 年の歴史を持つ静岡市の本山地区の茶農家と連携して、本山有機化プロジェクトを立ち上げ、農薬栽培から有機栽培への切り替えを進めている。 農地の土壌改良には 3 年を要するが、切り替えによって 1 反(300 坪)当たりの収入を、 100~150 千円/kg から 450 千円/kg 程度へ 3 倍から 4 倍以上の収益性向上を目指している。また同社は、九州有機茶農家と新たな連携を構築することにより九州地域の茶農 家の生産性向上と収入増加に貢献することを目的に有機栽培への切り替えを推奨してい
る。有機栽培への切り替えにより、安定収入を農家へ還元し、茶業を担う後継者を育成するとともに、荒廃茶園を救済し、サステナブルな茶業を推進している。同社は現状 24 軒の有機栽培の契約農家と連携しているが、更に連携を高めていく取り組みを行う方向性を
確認した。
6.インパクトの特定
(1)インパクトの特定分析
UNEP FI のインパクトレーダーにおける標準値を基に、前記の分析を踏まえ、下記のプレ審査シートにて個社別の状況を考慮して、インパクトと KPI 設定対象を特定した。
(2)インパクト特定
インパクトレーダーの標準値として発現した項目に、包括的分析を行い、サステナビリティ経営体制において分析した結果、ポジティブでは「教育」「経済収束」を追加し、ネガティブでは製茶過程において水の使用量が多くないことから、「水(質)」を削除してインパクトを特定した。
特定したインパクト
ポジティブ:「食糧」「教育」「雇用」「文化•伝統」「包括的で健全な経済」
「経済収束」
ネガティブ:「健康•衛生」「雇用」「資源効率•安全性」「気候」「廃棄物」
(3)インパクトレーダーにおけるマッピング
特定したインパクトをもとにインパクトレーダーで発現したインパクト•マップは以下の通りとなる。
7.KPI の決定
(1)ポジティブなインパクトの成果が期待できる事項
ⅰ社会面
テーマ | 品質•安全にこだわった製品の提供 |
インパクトレーダー | 食糧 |
取組内容 | FSSC22000 等の各種認証の継続 茶製造量の増加 |
SDGs との関連性 | 2.4:2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 |
KPI | FSSC22000 、 HALAL 、 USDA/NOP 、 OK Kosher Certification、有機農業物加工食品認定、有機加工食品生産工程管理者の認証を継続する 2027 年までに茶製造量を2021 年度比において倍増させる |
テーマ | 資格取得による業務のスキルアップ支援 |
インパクトレーダー | 教育 |
取組内容 | 日本茶アドバイザー及び日本茶インストラクター資格取得費用の支援制度確立 全従業員の日本茶アドバイザーまたは日本茶インストラクタ ー資格取得 |
SDGs との関連性 | 4.4:2030 年までに、技術的•職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び企業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 |
KPI | 2027 年までに日本茶アドバイザー及び日本茶インストラクター資格取得に係る受講料及び受験料の費用負担を社内規定にて明文化し、全従業員が日本茶アドバイザーまたは日本茶 インストラクター資格を取得する |
テーマ | 日本茶普及に向けた海外輸出の強化 |
インパクトレーダー | 文化•伝統 |
取組内容 | 自社製品の輸出国の増加 |
SDGs との関連性 | 2.3: 2030 年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。 8.9:2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興•産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。 |
KPI | 2027 年までに自社製品の輸出国を 10 カ国に増加させる |
ⅱ社会面•経済面
テーマ | 女性管理者増加 |
インパクトレーダー | 雇用、包括的で健全な経済 |
取組内容 | 女性管理者の増加 |
SDGs との関連性 | 4.4:2030 年までに、技術的•職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び企業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.5:2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。 |
KPI | 2027 年までに女性管理者を4名へ増加させる |
ⅲ経済面
テーマ | 有機栽培茶の促進による茶農家の収入安定化及び販路拡大支 援 |
インパクトレーダー | 経済収束 |
取組内容 | 有機栽培茶の契約農家の増加 |
SDGs との関連性 | 2.3: 2030 年までに、土地、その他の生産資源や、投入財、知識、金融サービス、市場及び高付加価値化や非農業雇用の機会への確実かつ平等なアクセスの確保などを通じて、女性、先住民、家族農家、牧畜民及び漁業者をはじめとする小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。 2.4:2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践 する。 |
KPI | 2027 年までに有機栽培茶契約農家を 30 軒へ増加させる |
(2)ネガティブなインパクトの低減が必要となる事項
ⅰ社会面
テーマ | 労働管理体制の確保 |
インパクトレーダー | 健康•衛生 |
取組内容 | 労働災害の原因究明と再発防止策 労働災害の発生ゼロ |
SDGs との関連性 | 3.d:全ての国々、特に開発途上国の国家•世界規模な健康危険因子の早期警告、危険因子緩和及び危険因子管理のための能力を強化する。 |
KPI | 災害•事故の原因究明及び再発防止策を講じ、2027 年まで に災害•事故の発生ゼロを目指す |
テーマ | 労働環境の改善 |
インパクトレーダー | 雇用 |
取組内容 | 残業時間の削減 |
SDGs との関連性 | 8.2:高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 |
KPI | 2027 年までに一人当たりの残業を月 15 時間まで削減する |
ⅱ環境面
テーマ | 廃棄茶の商品化及び肥料化による廃棄物削減 |
インパクトレーダー | 資源効率•安全性、廃棄物 |
取組内容 | 廃棄茶の商品化と肥料化 廃棄茶の削減 |
SDGs との関連性 | 12.5:2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
KPI | 2027 年までに廃棄茶の商品化及び肥料としての活用によ り、廃棄量を 2021 年度比において 30%削減する |
テーマ | 本社及び工場内の照明設備の LED 化による CO2削減 |
インパクトレーダー | 気候 |
取組内容 | 本社及び工場の照明設備の LED 化 |
SDGs との関連性 | 13.3:気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
KPI | 2027 年までに本社及び工場内の照明設備の LED 化を 100%とする |
(3)地域において認識される社会的課題•環境問題への貢献
•同社の品質、安全にこだわったお茶の提供は、消費者の健康増進やウイルス滅菌効果による感染症等の予防につながることから社会への貢献が期待できる。
•従業員の健全な労働環境の整備や、ダイバーシティ経営の実現により、女性の活躍を促し、多様な人材の有効活用及び雇用の安定を図ることで社会への貢献が期待できる。
•静岡市の主要産業であるお茶について、生産者に対して有機栽培を推奨することで近年需要が高まっている日本茶の海外取引を強化している。そういった取り組みにより、茶農家の安定した収入増加を支援するだけでなく、日本茶文化を海外に向けて発信し、
文化•技術を伝承、発展させることが期待できる。
8.モニタリング
(1)モニタリング体制
同社では、本 PIF の組成にあたり横断的なプロジェクトチームを組成した。統括責任者に森藤社長、プロジェクトリーダーに加藤専務、アドバイザリーに加藤会長を選定し、プロジェクトチームを総務部内に SDGs 推進チームを組成した。同社の企業理念、経営方針を基に、事業実績、企業活動等の棚卸しを行い、本 PIF のインパクトの特定及び目標と KPI の策定を行った。
本 PIF 実行後においては、決定したインパクトの内容や KPI を営業会議•朝礼等で社員へ周知し、関連するサプライチェーンへも通達し、達成に向けた連携を図り、プロジェクトチームを中心に同社全体で KPI の達成に向けた推進体制を構築していく。
統括責任者
代表取締役社長 森藤 真帆氏プロジェクトリーダー
専務取締役 加藤 希氏プロジェクトチーム
総務部 SDGs 推進チームアドバイザリー
代表取締役会長 加藤 重樹氏
(2)モニタリングの頻度と方法
本 PIF で設定した KPI 及び進捗状況については、同社と清水銀行及び当社の担当者が定期的な場を設け、共有する。会合は少なくとも年に 1 回は実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
本評価に関する説明
1.本評価書は、清水地域経済研究センターが、清水銀行から委託を受けて実施したもので、清水地域経済研究センターが清水銀行に対して提出するものです。
2.清水地域経済研究センターは、依頼者である清水銀行及び清水銀行がポジティブ•インパクト•ファイナンスを実行するカクニ茶藤から供与された情報やカクニ茶藤へのインタビュー等で収集した情報に基づいて、現時点での状況を評価したものであり、将来における実現可能性、ポジティブな成果•見通し等を保証するものではありません。
3.清水地域経済研究センターが本評価に用いた情報は、信頼できるものと判断したものではあるものの、その正確性等について独自に検証しているわけではありません。清水地域経済研究センターはこれらの情報の正確性、適時性、完全性、適合性その他一切の事項について、何ら表明または保証するものではありません。
4.本評価は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した PIF 原則及び PIF 実施ガイド、ESG 金融ハイレベル•パネルにおいてポジティブインパクトファイナンスタスク
フォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則って行っております。
〈評価書作成者〉
〒424-0941
静岡市清水区富士見町 2 番 1 号
株式会社清水地域経済研究センター取締役 福井 茂
Tel 054-355-5510、Fax 054-353-6011
第三者意見書
2022 年 11 月 28 日
株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社カクニ茶藤に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社清水銀行 |
評価者:株式会社清水地域経済研究センター |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、清水銀行が株式会社カクニ茶藤(「カクニ茶藤」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社清水地域経済研究センターによる分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。清水銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、清水地域経済研究センターと共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、清水銀行及び清水地域経済研究センターにそれを提示している。なお、清水銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。 JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則
との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
清水銀行及び清水地域経済研究センターは、本ファイナンスを通じ、カクニ茶藤の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、カクニ茶藤がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、清水銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 清水銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:清水銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、清水銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、清水銀行からの委託を受けて、清水地域経済研究センターが分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て清水地域経済研究センターが作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、清水地域経済研究センターが、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるカクニ茶藤から貸付人である清水銀行及び評価者である清水地域経済研究センターに対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト 担当アナリスト
川越 広志 新井 真太郎
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026