ver.2.0
オープン
イノベーション促進のためのモデル契約書
ver.2.0
解説パンフレット
AI 編
目次
第 1 章
第 2 章
はじめに •••••••••••••••••••••••••••••••••••• 03
各契約種別のモデル契約書ガイド•••••••••••• 07
モデル契約書(AI 編)における想定シーンの場面設定 ••••••••• 08
用語の定義の解説 ••••••••••••••••••••••••••••••••• 10
秘密保持契約(NDA) •••••••••••••••••••••••••••••• 12
技術検証(PoC)契約 •••••••••••••••••••••••••••••• 14
共同研究開発契約 ••••••••••••••••••••••••••••••••• 16
利用契約 ••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• 18
第 3 章
交渉シーン及び交渉ノウハウの紹介
••••••••• 21
利用条件の交渉シーン 場面設定••••••••••••••••••••••• 22利用条件の交渉シーン 第1回交渉•••••••••••••••••••••• 24第1回交渉のポイント••••••••••••••••••••••••••••••• 28利用条件の交渉シーン 第2回交渉•••••••••••••••••••••• 29第2回交渉のポイント••••••••••••••••••••••••••••••• 31
利用条件の交渉シーン 最終回交渉 ••••••••••••••••••••• 32
最終回交渉のポイント••••••••••••••••••••••••••••••• 35
02 03
はじめに
第 1 章
第
章
1 本パンフレットについて
改めて「オープンイノベーション」を 1
第
章
進める上で大事なこととは
本パンフレットのターゲット(想定読者)
本パンフレットは、「研究開発型スタートアップと事業会社のオープンイノベーション促進のためのモデル契約書 ver2.0(以下、「モデル契約書」)」の理解を深めることを目的として、要点のみに絞って記載されています。特に、以下の方々の内、オープンイノベーションの経験がまだ浅い方や、進めるにあたってのノウハウを整理したいという方等を対象に、役立つ情報を掲載しています。
事業会社
(現場担当、知財・法務担当など)
スタートアップ
(特に、新規性のあるコア技術を基に事業を興そうとするスタートアップ)
スタートアップ支援者
中長期的な目線
オープンイノベーションは単発で終わるものではなく、中長期的な価値創造パートナー を探索する活動であり、双方の適切なリスク分配のもと、協調的に協力することでユニークな価値を生み出し、その対価を適切にシェアし、もって新たな活動に繋げていく取組です。そして、そのような好循環を実現することがオープンイノベーションの目指すところです。このため、「次も一緒に協業したい」と思わせるような関係を構築することも重要です。
「この企業とは二度と一緒に
単発の協業で終了
やりたくない」と思われ、ネガ
ティブ•レピュテーションに
よって OI の機会を損失
オープンイノベーション(OI)の失敗例の特徴
双方が自社の利益のみを追求
事業
片方が不利益を被る
(VC など)
スタートアップ X社
不平等な契約
事業会社 Yx
xパンフレットを読むにあたって
本パンフレットは、モデル契約書の概要を紹介するものとなっています。このため、本パンフレットを読んで、より詳細を知りたいと思った場合には、該当するモデル契約書にも目を通すことが望ましいでしょう。
また、本パンフレットは「モデル契約書(AI 編)」の概要について解説していますが、別冊子にて「モデル契約書(新素材編)」の概要を解説しているパンフレットも併せて公表しています。
これらのモデル契約書に関連する情報は下記の特許庁 HP から入手できます。 xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxxx/xxxx-xxxxxxxxxx-xxxxxx/xxxxx.xxxx
意識すべき「価値軸」
上記のような前提のもと、特許庁•経済産業省では、オープンイノベーションにおいて協業する双方において常に意識され、拠り所とすべき価値観=「価値軸」として以下を掲げています。
スタートアップと事業会社の連携を通じ、
知財等から生み出される事業価値の総和を最大化すること
本パンフレットを読む際にも常に上記の価値軸を意識しながら読み進めることで、より内容を理解できるでしょう。
特許庁「オープンイノベーション
04 ポータルサイト」 QR コード
モデル契約書(新素材編)
解説パンフレット 05
1
第 章
モデル契約書を利用する際に留意すべきこと
(ゴールデンスタンダードではなく、新たな選択肢)
前提として、モデル契約書はゴールデンスタンダードではなく、従来の常識とされていた 交渉の落とし所ではない新たな選択肢を提示したものであるということを認識する必要があります。
モデル契約書の「逐条解説あり」バージョンでは、冒頭に「想定シーン」として、当該モデル契約書がどのような状況下での交渉を経たものなのかを示したうえで、各条項についてポイントと解説が詳細に付されています。
モデル契約書は、この「想定シーン」の設定があるが故に、各条文において
具体度の高い実践的な考え方の解説が可能となっています。反面、実際には前提条件が異なる様々なケースがあり、それらのケースではモデル契約書が必ずしも最適な契約内容とならない可能性もある点には、十分ご留意いただきたいです。
20
06 07
各契約種別の モデル契約書ガイド
第 2 章
2
第
章
概要
第
章
概要
2 モデル契約書(AI 編)における想定シーンの場面設定
秘密保持契約(
秘密保持契約(
登場するプレイヤーの概要 各契約フェーズの概要
)
)
NDA
NDA
双方が開示する(特に Y 社から提供する)秘密情報の取扱い条件の設定
技術検証(
スタートアップ X
)契約
PoC
動画•静止画から人物の姿勢をマーカーレスで推定す
機器メーカ Y
「見守りカメラシステム」の製造販売を検討している介護施
秘密保持契約
(NDA)
X社
秘密情報(サンプルデータ)の提供
技術検証(
)契約
PoC
Y社
共同研究開発契約
共同研究開発契約
る高度な AI 技術を持つスタートアップ
設向けリハビリ機器の製造販売メーカー
カスタマイズモデルのプロトタイプの作成並びに推定精度の検証
AI 技術、ベースモデル
動画データ・ノウハウ
技術検証(PoC)契約
X社
動画データの提供、委託料の支払
検証結果の共有
Y社
利用契約
取り組む開発内容
共同研究開発
見守りカメラシステムに利用するカスタマイズモデルの研究開発
利用契約
動画データの提供、開発対価の支払
契約 X社
開発したカスタマイズ
モデル、連携システム Y社
「見守りカメラシステム」の開発
X 社の保有する「人体の姿勢推定 AI 技術」を用いた、介護施設における被介護者の見守り用の高機能カメラシステム
利用契約
カスタマイズモデルを用いたサービス
「3章 交渉シーン」で扱う契約
(データ処理サービス、追加学習サービス)の提供
サービス利用料の支払、動画データの提供
データ解析サービス、
X社 追加学習サービス Y社
08 09
第
章
概要
第
章
概要
2 用語の定義の解説 2
秘密保持契約(
全契約共通
X社
技術検 証(PoC )契約 、共同研究開発契約
秘密保持契約(
NDA
対象データ
)
)
NDA
動画•静止画から人物の姿勢をマーカーレスで推定する高度な AI 技術を持つ AI スタートアップ
技術検証や、共同研究開発に用いられているデータ
技術検証(
Y社
PoC
介護施設向けリハビリ機器の製造販売メーカ
本学習用データセット
技術検証(
)契約
PoC
対象データを本共同開発のために整形または加工したデータ
)契約
共同研究開発契約
本見守りカメラシステム
XY が共同開発する、介護施設における被介護者の見守り用のカメラシステム
本学習済みモデル(カスタマイズモデル)
共同研究開発契約
共同で開発する、学習済みモデル(特定の機能を実現するために学習済みパラメータを組み込んだプログラム)
知的財産権
利用契約
特許権、実用新案権、意匠権、著作権その他の知的財産に関して法令により定められた権利(特許を受ける権利、
実用新案登録を受ける権利、意匠登録を受ける権利を含む。)
本連携システム
利用契約
本見守りカメラシステムに搭載される、本学習済みモデルと Y社システムを API 連携するためのシステム
利用契約
データ解析サービス
対象データについて同データ内の対象者の状態推定を行い、その推定結果を Y 社に提供するサービス
追加学習サービス
X 社が本学習済みモデルに追加学習を行うサービス
追加学習済みモデル
本学習済みモデルに追加学習を行うことで生成された学習済みモデル
10 11
第
章
概要
2 case
秘密保持契約(NDA) 2
あるある交渉事例
第
章
概要
01
Y 社が X 社に対して提供するデータを X 社が保有する学習済みモデルに入力して得られた出力結果を評価し、X 社が保有する AI 技術を Y 社の介護事業における見守り業務への導入可能性を検討する目的で、双方が相手方に開示等する秘密情報の取扱いについて、秘密保持契約を締結する。
秘密保持契約
(NDA)
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 機器メーカ Y
Y 社
協業にあたって、
まずは NDA の内容を検討しましょう。 NDA を締結して御社に行って頂ける作業としてはどのようなものがありますでしょうか。
Y社
技術検証(
)契約
PoC
X 社
交渉のポイント
1
秘密保持契約(
NDA を締結して行う無償の業務の範囲は?
)
技術検証(
)契約
NDA
PoC
AI 開発の前提として NDA を締結して無償で行う業務の範囲は、スタートアップの実作業をほとんど必要としないものに限定して、実作業を必要とするものは有償の PoC にて実施すると整理することが重要である。そのため、本事例においても、NDA を締結した上での無償でのアセスメントの対象は、「X 社がもともと保有している姿勢推定モデルに、Y 社が既に保有する少量のカメラデータ(動画データ)を入力することによって、被介護者の状態推定の前提となる、被介護者の基本的な姿勢推定(寝ている、立っている、歩いている等)が可能かどうか」までとしている。
無償での業務範囲は、スター
トアップが実作業をほとんど
必要としないものに限定
NDA
(参考:「はじめに」)
X社
無償で行う業務ですので、当社がもともと保有している姿勢推定モデルに、 御社が既に保有する少量のカメラデータを入力することによって、
被介護者の基本的な姿勢推定(寝ている、立っている、歩いている等)が可能か
どうかとするのはどうでしょう。
1
2
共同研究開発契約
共同研究開発契約
秘密情報の範囲設定はどの程度が適切?
その方針で問題ありません。秘密情報の範囲は
いかがいたしましょうか。
Y社
利用契約
利用契約
開示した情報の内、秘密情報である旨が明記された情報を秘密情報として定義する他、対象外の情報も定義するなど、自社の管理能力に応じた秘密情報 の範囲の広狭を明確に NDA にて定めるのが望ましい。
(参考:1条「秘密情報の定義」)
秘
X社
提供データを含む秘密情報について、漏洩リスクを冒さないためにも、
弊社で管理できる範囲までに制限する方針でお願いしたいです。
2
or
情報内で明記
秘
別の文書で明記
3
提供データの利用に関するトラブルを防止するには?
その方針で問題ありません。
弊社としても、無駄なリスクは負いたくないですし。
なお、提供するデータについて、今回のアセスメント以外の用途での利用、 例えば御社のAIモデルの学習等に用いることは避けていただきたいです。
3
Y社
第三者への開示の禁止、開示範囲の設定に加え、受領者内部での利用目的を今回のアセスメントに限定することで、スタートアップが受領データを他の目的に流用することを防ぐことが可能となる。
(参考:3条「目的外使用の禁止」)
X社
承知いたしました。その旨についても
契約書で記載させていただきます。
スタートアップ側での
アセスメント以外の用途での
(例 : ベースとなる AI モデルの
データ利用
学習)は不可
アセスメントへの利用
データ提供
12 13
第
章
概要
2 case
技術検証(PoC)契約 2
第
章
概要
02
X 社が保有する AI 技術の、Y社の介護事業における見守り業務への導入可能性に関する検証について、 PoC 契約を締結する。
(PoC)契約
技術検証
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 機器メーカ Y
Y 社
技術検証(
X 社
交渉のポイント
1
あるある交渉事例
秘密保持契約(
NDA を締結してデータのやりとりをすればすぐに PoC に入れる?
)
NDA
検証に際して、検証にあたって前段階の作業が必要となることがある。この場合、その点についての役割分担や費用についてきちんと交渉し契約上明確 化しておく必要がある。(参考:前文)
先日の無償アセスメントの結果を踏まえますと、今後、弊社が所有するカメラデータを提供して、御社で学習作業を行えば、被介護者の状態推定が可能な高精度な学習済みモデルができるという理解で良いでしょうか。
Y社
検証にあたって、前段階で必要な作業
生データの取得方法の試行錯誤
正解データの作成(アノテーション)
技術検証(
)契約
)契約
PoC
PoC
技術検証(PoC)
契約内容に反映
X社
いえ、弊社の既存の領域特化モデルをカスタマイズする必要があります。 カスタマイズの際には良質なカメラデータが必要不可欠であり、そのデータを取得するため、カメラの設置場所や撮影方法について一定期間試行錯誤して検討する必要があります。
2
共同研究開発契約
共同研究開発契約
PoC で開発した学習済みプログラム等は提供すべき?
なるほど、弊社が保有しているカメラデータは、量が多いもののカメラの種類やアングル、精細度がバラバラであることから、そのままでは利用が難しいため、撮影•生成の必要性を検討するということでしょうか。
Y社
X社
はい、そしてその際には御社に作業へのご協力をお願いしたいと考えています。というのも、弊社の領域特化モデルに学習させる正解データを作る作業が今後必要となります。その際に介護業務への知見を持つ御社に関与いただきたく、その作業を実施する有償の技術検証(以下、 PoC)を提案しますが、どうでしょうか。
1
PoC の目的を達成する(=検証結果を判断する)ためには、検証内容•結果を記載した報告書があれば十分であろう。であれば、学習済みプログラム等はそもそも提供物には含む必要性はないだろう。
利用契約
利用契約
また、X 社は提供データの誤り等による本検証の遅延、不適合等の責任を負 わないことも規定しておけば、検証に関する不合理な責任を負う事態を回避できる。(参考:3条「本検証」)
承知しました。本 PoC 終了時に、御社に検証結果をご提供いただく形となりますが、その際に報告書と共にソースコードは提出可能でしょうか。社内説明用にあるとありがたいのですが。。
Y社
報告書を提出
データの誤り、提供の遅れがあった場
合、検証の不備、遅れの責任を負わない
学習済みモデルのソースコードの引
き渡しは不要
データの提供
3
X社
この AI モデルこそが弊社の競争力の源泉なので、ソースコードの提供は難しいです。もし検証用であればこの点は報告書の記載事項で十分かと思われます。
2
知的財産権の帰属先はどうすればよい?
なるほど。。
なお、報告書を含む成果物の知財帰属について、委託料を支払っている上、弊社の検証用に用いたく弊社帰属を想定していますが、それでよいでしょうか。
Y社
X社
この委託料は弊社の検証作業への費用分で考えています。また、導入の可否の検討に向けた検証には、報告書の利用ができれば問題ないかと思われます。
3
作業主体が X 社であること、並びに Y 社は今回の検証には報告書の利用のみで十分であることから、報告書および本検証で生じた知的財産権は全て X 社に帰属としてよいだろう。(参考:11 条「本報告書等の知的財産権」)
X 社に帰属
確かにそうですね、わかりました。一旦いただいた内容で社内で相談してまた結果を共有いたします。
Y社
知的
財産権
PoC にて創出
14 15
第
章
2 case
共同研究開発契約 2
第
章
概要
概要
03
本学習済みモデルおよび本連携システムの開発に関して、共同研究開発契約を締結する。
共同研究
開発契約
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 機器メーカ Y
Y 社
まずは、各成果物の権利の帰属先を話し合いましょう。
弊社データを用いて作成されたカスタマイズモデルの著作権について、弊社に帰属すると考えていますがいかがで
しょうか。
Y社
1
技術検証(
)契約
PoC
X 社
交渉のポイント
1
あるある交渉事例
秘密保持契約(
成果物及び生じた著作権や特許権の帰属はどう決定する?
)
技術検証(
NDA
PoC
AI モデルの開発では、著作権と特許権を分けて成果物の権利の整理をするのが望ましい。例えばカスタマイズモデルについては、著作権が主な争点となる。カスタマイズモデルの著作権については、帰属と利用条件を一体的に交渉す ることで、両者にとって合理的な条件設定が導き出せることがある。本契約では、双方のビジネスモデルや開発への貢献度を考慮して、例えば、帰属を X社に単独に設定する一方で、サービスの利用料を他社より低価格でサービスを利用できる条件とすることで両者の利害を調整している。
)契約
(参考:17 条「本件成果物等の著作権の帰属」)
共同研究開発契約
他方で特許権については、AI モデルの開発過程で発生するか不明瞭なことが多い。そのため、帰属は発明者主義に従うとし、主張があればその帰属を調整して規定すればよいだろう。
(参考:18 条「本件成果物等の特許xxの帰属」)
AI モデルの開発における成果物の権利の整理方針
共同開発の
成果物の権利
著作権の帰属(X 社単独帰属)
X社
開発に貢献いただいた観点は理解しています。
他方で、この AI モデルは弊社の競争力の源泉であるため、帰属先を弊社にしたいのですがどうでしょうか?
仮に著作権の帰属がなくとも、この AIモデルを用いたサービスが利用できれば問題ないかと思います。
うーむ。。
弊社の貴重なデータを提供したことを踏まえると、その開発への貢献度に見合った条件になっていないように思われるのですが。。
Y社
特許権(発明者主義で整理)
共同研究開発契約
著作権(帰属と利用条件で整理)
利用契約
著作権の利用条件(別途検討)
2
X社
そこで、カスタマイズモデルの著作権は弊社帰属とさせていただく一方で、御社が有利な条件でサービスを利用できる形で整理する方針でいかがでしょうか。
1
利用契約
カスタマイズモデルをはじめ、
利用条件次第ですが、ご提案いただいた内容で進めましょう。
Y社
各成果物の提供方法をどう設定すべき?
X社
承知しました。
成果物の著作権以外の知的財産権は、共同研究で発生するかも不明なため、特許法の原則に則り、発明者に帰属する方針でお願いします。
1
開発後に X 社が成果物を提供(納品)する際、成果物ごとに帰属先や知的財産権の保護強度を考慮して、提供方法を慎重に検討して条文に落とし込む必要がある。
また、今回の共同研究で開発したカスタマイズモデルを納品いただいた後、どのような方法で確認する形になりますでしょうか。
Y社
例えば、X 社の競争力の源泉であるコア技術の秘匿化のため、カスタマイズ モデルは、出力結果のみを提供するとして十分に保護しつつ、カスタマイズモデルを Y 社の見守りカメラシステムと連携させるシステム(連携システム)は、ソースコードを提供すると規定するのが一案である。
X社
他業界の会社と連携した際も、モデルによる処理結果を API 提供する形で行っており、これまで特段トラブルも起きておりませんので、こちらの方法でお願いいたします。
2
(参考:10 条「本件成果物の提供および業務終了の確認」)
成果物の提供
確認書の交付
16 17
第
章
概要
2 case
利用契約 2
第
章
概要
04
X 社 Y 社間で締結した共同研究開発契約に基づいて共同開発された、本学習済みモデルを用いたサービスに関する条件等を定めるため、 利用契約を締結する。
利用契約
秘密保持契約(
)
NDA
スタートアップX 機器メーカ Y
Y 社
カスタマイズモデルを利用したデータ解析サービスについて、
その解析精度は保証いただけるということでよろしいでしょうか。
Y社
技術検証(
PoC
X 社
交渉のポイント
1
あるある交渉事例
秘密保持契約(
Y 社のサービス利用時の精度保証は必要?
)
NDA
AI を用いたサービスでは出力精度の保証が難しい点について、コミュニケーションを通じて双方が理解して、契約に落とし込むことが重要である。その一案として、本契約では、「X 社は本サービスが Y 社の特定の目的に適合するこ とを保証しない」と規定している。
技術検証(
)契約
PoC
知財の非侵害保証は、X 社には開発以外に多大なリソースをかけることになるため、その必要性を吟味することが重要である。例えば第三者の特許xxを 侵害しないことを保証しないとしつつ、Y 社が警告を受けた場合、X 社は情報提供に努めるといった程度にとどめるのが良いだろう。
(参考:12 条「非保証」)
X社
そもそもですが、AI の性質上、出力精度の保証が難しいので、サービスが一定の精度を持つことを保証するのは難しい点はご理解いただきたいです。
1
なるほど 。それではサービス利用により、第三者からの知財侵害があった場合、どのような対応を御社で実施いただけるのでしょうか。
非侵害の保証は可能ですかね?
Y社
)契約
共同研究開発契約
②通知
③訴訟の防禦活動に必要な情報を提供
①権利侵害を理由とした
警告
共同研究開発契約
第三者
2
X社
特許侵害調査に加え非侵害保証も行うとなると多額の費用がかかります。一方でモデルは発展途上であることから頻繁な改良が見込まれ、調査結果が無駄になる可能性が高く、費用対効果上、不合理と考えられますので行わないこととさせて下さい。
Y 社から提供されたデータの利用用途の範囲をどう設定する?
確かに仰る通りですね。
非侵害保証もなしで大丈夫です。続いて、データの利用範囲を決めましょう。弊社の重要なデータなので利用範囲は限定していただきたいです。
2
Y社
利用契約
利用契約
提供するデータが目的外利用されることを避けたいと Y 社が考える一方、提供するサービス内容と齟齬がないよう、データの利用範囲は、サービス内容に沿う形で、明瞭に規定する必要がある。特に、追加学習サービス利用時におけ る、データの利用範囲が今回の交渉の論点であり、その内容を踏まえた範囲設定の必要がある。(参考:5条「対象データの利用」)
対象データ
3
弊社の希望としては、弊社のカスタマイズモデル開発への貢献度を踏まえ、このモデルを独占的に利用したいと考えています。
また、弊社が提供するデータは、弊社用モデル学習のためにのみ使ってほしいと考えています。
Y社
X社
この点は、実際に御社に提供するサービス内容の検討と併せて、データの利用用途の範囲の広狭を設定するのがよさそうです。
現時点での希望はいかがでしょうか?
両者が Win-Win なサービスをどう規定するのか?
X社
なるほど 。ただその形式ですと実は御社の利益も最大化しないため、
①モデルは非独占的に各社に提供、
②追加学習に用いるデータは非限定と
いう形を提案します。
3
X 社が提供するサービス(データ解析サービス、追加学習サービス)に関する交渉、及びサービス内容の詳細は、3章をご参照いただきたい。
AI モデルの利用条件を検討する際、双方がお互いのビジネスモデルを理解したうえで内容を検討することが重要である。特に AI モデルの特性上、サービスにおけるモデルの利用方法と追加学習の内容を併せて検討する必要があり、データ解析サービスにおいては「カスタマイズモデルの非独占での提供」 として、追加学習サービスにおいては「非限定的なカスタマイズモデルの学習」とする形を提案している。また、サービス提供にあたり、Y 社の共同開発での貢献度を踏まえた設定を検討する場合には、利用料に最恵待遇条項を適用するのが一つの解決策であろう。(参考:2条「データ解析サービスの内容」、
18 3条「非独占」、4条「追加学習サービスの内容」、8条「サービス利用料」) 19
交渉シーン及び
交渉ノウハウの紹介
第 3 章
20 21
3
1
2
3
1
2
第
章
概要
第
章
概要
利用条件の交渉シーン場面設定
第
第
登場人物 利用条件の交渉の流れ
回交渉
第
回交渉
第
各交渉の論点
最終回
スタートアップ X
動画•静止画から人物の姿勢をマーカーレスで推定する高い AI 技術を保有するスタートアップX社
X システム
姿勢推定モデル X社が元々保有しているモデル
SaaS 契約
見守りカメラシステム
動画データ
機器メーカ Y
介護施設における被介護者の見守り用にAIを活用した高度な機能を持つ
「見守りカメラシステム」の製造販売を検討中の機器メーカY 社
回交渉
第1回交渉
第 2 回交渉
最終回
カスタマイズモデルの提供時に
回交渉
最終回
独占/非独占のいずれの提供パターンを選択すべきか。
Y 社のカスタマイズモデル開発への貢献度をどう契約内容に反映させるのか。
追加学習サービスの提供にあたり、追加学習に用いるデータを、
Y 社データのみに限定するか、他社データも用いるか。
連携システム
カスタマイズモデルと Yシステムとの連携の仕組み(X 社作成)
Yシステム
カスタマイズモデル
X 社独自開発の学習 済みモデルをベースに Y 社データを利用したモデル(X 社作成)
処理結果(「事故発生」等)を API 経由で提供
22 23
3
1
2
1
第
章
利用条件の交渉シーン第1回交渉
概要
X 社のCEOとY 社の事業部長は、カスタマイズモデルを用いたサービスの 利用契約締結にあたって、利用条件(独占/非独占)に関する交渉を行った。
第
X 社 Y 社
回交渉
利用条件について、改めて
弊社がデータや各種ノウハウ等を提供した結果、共同開発された学習済みモデルであることを踏まえて、
今回のサービスは、弊社のみに独占的に利用させて欲しいのですがどうでしょうか。
事業部長
Y 社の
弊社の貴重なデータやリハビリ時の社外秘のノウハウを提供したのだから、それらを用いて開発された学習済みモデルを独占的に利用する権利はあるはずだ。
御社の希望をお聞きしたいのですが。
3
第
章
概要
第
X 社 Y 社
X社の
CEO
たとえば、弊社が A 社、B 社、C 社それぞれからデータを受領してカスタマイズモデルを共同開発し、各カスタマイズモデルについて独占利用契約を締結した場合、以下の提供形態となります。
回交渉
1
第
回交渉
X社の CEO
Y 社の 2
この仕組みの
何が問題なのでしょうか。
第
回交渉
最終回
最終回
事業部長
X社の
CEO
なるほど。
御社に共同開発にて貢献いただいた旨は十分理解しています。
他方で、独占的利用となると、実は御社が不利益を被り得るのですが、その点は認識されていますか?
独占的利用を認めると、
このカスタマイズモデルを利用した、それ以外のビジネスチャンスも犠牲になるから避けたい。。
各社にカスタマイズモデルを独占的に提供するパターン
データ
学習&強化
A社
カスタマイズ
モデル
A
A社のみに独占提供
A社
既存モデル
データ
学習&強化
B社
カスタマイズ
モデル
B社のみに独占提供
X社
データ
学習&強化
C社
B
B社
カスタマイズ
モデル
C
C社のみに独占提供
C社
おお、、
それはどういうことでしょうか。
X社の
CEO
御社への独占的な利用を認めますと、 御社以外の、学習用のデータを提供したユーザに対しても、共同開発したカスタマイズモデルをそれぞれ独占的に提供するというビジネスモデルになります。
X社の
CEO
この仕組みのもと、弊社がベースモデルのアップデートや、様々なユーザーとのカスタマイズモデルの生成を実施した場合、並立している全カスタマイズモデルにメンテナンスを行う必要があり、管理コストが著しく上昇することになります。
さらに、当社としては、このようなスキームを想定していなかったため、もしこのようなスキームにするとなると、スキーム実現のためのシステム開発期間が今から最低でも半年くらいかかってしまうと思われます。
Y 社の 事業部長
ふむふむ。
その結果、ユーザごとのカスタマイズモデルが並立して、
弊社がそのすべてのモデルを管理して各ユーザに提供することになります。
X社の CEO
Y 社の事業部長
それは想定していなかったです。。
Y 社の事業部長
24 25
3
1
2
第
章
第
章
利用条件の交渉シーン 3
2
概要
概要
第1回交渉
第
第
X 社 Y 社 X 社 Y 社
回交渉
回交渉
1
回交渉
X社の CEO
その結果、当該管理コストを負担するため、各社との SaaS 契約における利用料にそれを転嫁せざるを得なくなります。
利用料は各社が受け入れ可能な金額を設定する必要があり、管理コストが高いと、利用料で賄えなくなり、我々のビ
第
なるほど、高額の利用料の支払いは事業リスク上、受け入れがたいです。 また、見守りシステムについては提供
各社にカスタマイズモデルを非独占的に提供するパターン
第
A社に非独占提供
回交渉
A社 2
B社に非独占提供
ジネスモデルが成立しなくなるので、
最終回
絶対避けたい。。
開始時期について既にプレスリリースも打っていますので、さらに半年間もの開発期間がかかるのは困りますね。
Y 社の事業部長
既存モデル
A社データ
学習&強化
C社データ
学習&強化
カスタマイズモデル
B社
最終回
C社に非独占提供
X社 B社
学習&強化 C社
X社の CEO
仰ることも理解できます。
このため「非独占的な組み方」が互いのリスクを下げる意味でも合理的ではないかと考えています。
サービスのニーズの有無も不明だから、事業リスク相当の妥当な金額設定なのか社内に説明できなさそうだ。。
X社の
この組み方は、御社に対して該当カスタマイズモデルをAPI 経由で提供すると同時に、御社以外の第三者に対しても非独占的にAPI 経由で提供する仕組みです。
CEO
こちらの組み方についても 詳細を説明いただけますか。
独占性を確保できないと、うちの収益性が
本当に確保できるのかが不安だ。
Y 社の事業部長
データ
A~C 社:カスタマイズモデル生成の際にデータ提供あり D、E 社:カスタマイズモデル生成の際にデータ提供なし
D社に非独占提供
D社
E社に非独占提供
E社
内容は承知しました。
リスクとxxxxxxが見合ったものなのかが不透明なこともありますので、一旦持ち帰り、後日の議論でよいでしょうか。
事業部長
Y 社の
承知しました、
連絡をお待ちしています。
X社の
CEO
大まかな内容は理解したが、ただ、本当に非独占の提供で良いのだろうか…。
社内で相談しよう。
開発への貢献度の話があったし、その点をどう考慮すべきか、次回の打合せでの Y 社への提示案を検討しよう。
また、カスタマイズモデル生成の際のデータ提供はしませんが、サービスのみ利用したい事業者も想定されることから、データを提供しない事業者にもサービスを提供する仕組みです(次頁参照)。この仕組みについて検討可能でしょうか。
これで非独占の組み方でもメリットがあることは 伝えられたので、ご快諾いただけるはず。
X社の CEO
この日は交渉終了。Y 社事業部長は戻ってすぐ、部下と議論を開始。
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3
1
2
第
章
概要
第1回交渉のポイント
第
回交渉
第
回交渉
カスタマイズモデルの利用条件を独占的な内容とする場合と、非独占的な内容とする場合、それぞれのパターンにおける特徴は下記の通り整理される。表の通り、ごく例外的な場合を除いて、カスタマイズモデルの利用条件を非独占的な内容と するのが合理的である。
最終回
他方で、非独占的な提供をベースにした場合でも、ある特定の事業領域については独占利用を認めるように事業会社から要請されることがある。かかる要請に応じるかどうかはスタートアップにおいて極めて慎重な検討を要する。
特定の事業領域であれ独占利用を認めることは、当該領域における他の事業者との取引機会を失うだけでなく、中間事業者とパートナーシップを組んで事業拡大させるというスタートアップの事業戦略の根幹を毀損する可能性がある。ただし、いかなる場合であっても非独占にすることが望ましいというわけではなく、スタートアップが戦略的な判断として、独占パターンを採用することもありうる。
ビジネス面における特徴 AI モデルの開発面における特徴
利用条件の交渉シーン 3
1
第
章
第 2 回交渉
概要
X 社の CEO と Y 社の事業部長は、カスタマイズモデルを非独占的に提供する場合に、 Y 社によるモデル開発への貢献をどう反映させるか、議論を開始した。
第
X 社 Y 社
社内で議論した結果、非独占的な組み方のメリットは理解できたものの、 この組み方では、共同開発への貢献に対する見返りがないように見受けられます。この点はどう考えていますか。
事業部長
Y 社の
事業開始時点では、サービスのニーズに関する今後の見通しが不透明なので、よりこのサービスで得られる利益を少しでも高める必要がありそうだ。
回交渉
1
第
回交渉
最終回
2
御社の貢献を反映させる必要性はもちろん理解しています。
その点も非独占的な組み方への反映が可能だと考えています。
他社比較で、データを提供してくれた Y 社に十分な利益がある点を丁寧に伝える必要がありそうだ。
X社の CEO
それは具体的には
どういうことでしょうか。 Y 社の事業部長
X社の
CEO
非独占の場合、独占の場合より管理コストが下がり、かつ様々な(開発時のデータ提供の有無に関わらない)第三者に、高精度なカスタマイズモデルを提供可能になります。
独占的な提供 | 一定期間、X 社は Y 社以外の第三者に対してカスタマイズモデルの提供ができないため、X社の事業拡大の可能性が乏し くなる | 特定の企業のデータだけを用いた、十分な性能のない小さい 学習済みモデルが複数存在する |
非独占的な提供 | X 社のカスタマイズモデルを用いた事業展開に制約がなくなるため、事業拡大・収益拡大の 可能性が高まる X 社による管理コストが一定の 範囲に抑えることができることから、将来的な発展可能性を確保できる | (非限定的な追加学習と組み合わせることで)より高精度な学習済みモデルを広い範囲のユーザに提供することができる |
なるほど。
Y 社の事業部長
X社の
CEO
このため、当社と御社間における組み方の変更によりサービスの事業規模•収益機会が拡大することに繋がりますので、双方に合理的なリスク•ベネフィット分配を実現する仕組みの設定が可能になるでしょう。
確かに納得感があります、具体的な内
容はどのようなものでしょうか。 Y 社の事業部長
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3
1
2
第
章
概要
利用条件の交渉シーン第 2 回交渉
X社の
CEO
具体的には、下記2点を設定することを検討しています。
1 カスタマイズモデル生成時の Y 社の寄与度に見合った経済的便益(例:一定期間、サービス利用料を介護領域の最安値からさらに軽減する)を、一定期間 Y社に提供する。
2 X 社のY社に対するカスタマイズモデルの提供に際しても、初期費用の負担は求めない。
第
回交渉
第
回交渉
X 社 Y 社
事業部長
なるほど。。
たしかにこの組み方なら、弊社の開発への貢献に対する見返りも考慮されていますね。期間や軽減率の数字の目安はどの程度なのでしょうか。
Y 社の
最終回
割引率は、事業分野ごとに決定していますので、別途相談させてください。
1 最恵待遇(MFN)条項の採用
一定期間のサービス利用料を、その他のサービス提供者との利用料と比較した際に最安値に設定する方法
割引期間は、AI 領域の陳腐化の速度を踏まえると、3 年程度が目安と考えています。
3
第
章
概要
第 2 回交渉のポイント
第
回交渉
カスタマイズモデルの共同開発におけるY社のデータやノウハウ面での寄与を反映 1
第
させる方法として、X 社がY社の当該寄与に見合った経済的便益をY社に提供する方法がある。その方法は下記の通り整理される。なお、本契約交渉では、「最恵待
回交渉
遇条項+ディスカウント条項」を採用している。 2
最終回
条件設定は、実際の Y 社の貢献度に応じた条件設定をすることが望ましい。具体的には、Y社の貢献としては、①当初のモデルの共同開発への貢献や、②追加データの提供による貢献が考えられるが、長期間にわたって多数の第三者が提供したデータによる追加学習が行われた場合、初期のユーザが提供したデータがカスタマイズモデルの精度向上に寄与する割合は逓減していくことを考えると、経過年数に応じてディスカウント率を下げていくことも考えられよう。
カスタマイズモデルの共同開発に対する Y 社の貢献度を契約条件に反映する方法
X社の CEO
X社の CEO
割引期間は、もう少し短くしたいが現実的な設定はこの程度だろう。
割引率は、介護領域の平均利益率などの数値を集めてから議論だな。
承知しました。
引き続き連絡をお待ちしています。
それぐらいなら妥当な設定でしょうか。本日の内容をベースに、サービス締結が可能か、社内で確認の上でご連
絡いたします。 Y 社の
事業部長
この利用条件であれば、社内の法務部の承諾も取れるだろう。
これで一安心だ。
1 -1 最恵待遇条項のみを採用
(例:「●年間、サービス利用料を、介護分野における最安値とする。」)
1 - 2 最恵待遇条項+
ディスカウント※条項の設定
(例:「●年間、サービス利用料を、介護分野におけるサービス利用料の最安値の 10% 引きとする。」)
2 プロフィットシェア方式の設定
カスタマイズモデルからX 社が得た売上の一部をプロフィットプールとし、同プロフィットプールを一定のルールに従って分配する方法
※ ディスカウント率を設定する際、
①当該事業領域における利益率、
②事業会社による見込利用量、
③スタートアップにおけるコスト構造
(特に AI スタートアップの場合は研究開発に要するコストが大きい。)
を考慮して決定する必要がある。
この日は交渉終わり。
X 社 CEO は、Y 社へのサービス提供に向けた社内の手続きを進め始めた。
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3
1
2
第
章
利用条件の交渉シーン最終回交渉
概要
X 社とY 社は、データ解析サービスに加え、追加学習サービスの提供が可能か、並びにどの範囲のデータを追加学習対象とするのかの議論を開始した。
第
回交渉
X 社 Y 社
3
第
章
概要
第
X 社 Y 社
X社の
CEO
なるほど、
そのような追加学習サービスの提供は可能ですが、データ解析サービスの非独占的な利用条件を踏まえると、データの利用について限定を設けない方が御社にとっても良いのではないかと考えられます。
回交渉
1
社内確認の結果、データ解析サービスの利用条件は合意が取れました。
その上で、追加のサービス提供を依頼したいです。
事業部長
Y 社の
第
回交渉
第
回交渉
2
X社の
承知しました。具体的にはどういう内容なのでしょうか。
今後当該サービスを利用する際、
処理対象の動画データを送信しますが、そのデータを利用してカスタマイズモデルの精度の維持•向上(追加学習)サービス提供もお願いしたいです。
事業部長
Y 社の
最終回
CEO
それは
最終回
どういうことでしょうか。 Y 社の事業部長
先日、非独占的な組み方の合理性を説明しましたが、
この組み方は、柔軟な形での追加学習の実施を前提としております。
つまり、以下の 2 点を前提として、非限定的な追加学習をすることで、
御社にて高精度•高価値のモデルを利用可能となります。
1 Y 社が提供したデータを、Y 社に対するサービスにおいてだけでなく弊社において広く追加学習に利用可能。
2 Y社の提供データだけでなく、第三者の提供データを用いた、当初のカスタマイズモデルの追加学習が可能。
弊社の重要なデータを提供しているため、最大限そのデータの価値をサービスに活用させたい。
X社の CEO
X社の
CEO
なるほど。
それは可能です。サービスの具体的な内容はどのような想定でしょうか。
要望としては、弊社が提供したデータは、弊社用の個別の見守りサービス•追加学習サービスのみに利用してほしいです。
確かに事業実施において非独占的な組み方の場合、その方が合理的ですね。 ただ、この場合、提供データが第三者にわたってしまうということでしょうか。そうだとすると、この条件への合意はかなり厳しくなります。。
事業部長
Y 社の
他者に提供データがわたるとなれば、弊社のデータやノウハウの流出リスクがあるので、絶対に避けたい。
Y 社の事業部長
他社より、サービスの質を上げるためにも他社にはデータを提供したくないし、他社のデータを学習したくない。
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1
2
2
第
章
概要
利用条件の交渉シーン最終回交渉
その点は、重々承知しています。
こちらは下記2点のデータの管理方針を契約書に記載する方針ですが、問題ないでしょうか。
1 提供されたデータは、弊社内でモデル学習用のみに使われ、提供されたデータそのものは第三者に提供されない。
2 Y 社から送信されたデータについて、弊社にて安全管理措置を実施する。
X社の
CEO
出来る限りモデルの精度を上げるために、非限定的な形で合意したい。
そのためにもこの対応は必須だろう。
第
回交渉
第
回交渉
X 社 Y 社
3
第
章
概要
最終回交渉のポイント
第
回交渉
追加学習に関する契約交渉では、主に3つの点について、サービス提供者と利用者 1
第
と合意を得る必要がある。そして、追加学習条件は、カスタマイズモデルの利用条 件と密接に関連していることから、併せて検討することが望ましい。その一例とし
回交渉
て本契約交渉では、下記の通り合意に至った。 2
最終回
学習済みモデルを利用したデータ処理サービスにおいてはデータを大量に処理することになるが、それら処理対象データに対して一定の品質を維持した処理を行うためには、xxのデータを含む追加データにより学習済みモデルを追加学習しその精度の維持•向上を図ることが必要となる 。その意味で AI システムは「いっ たん納品したら終わり」というシステムではなく、追加学習を継続することでその性能を維持・向上する必要があるシステムといえる。
承知しました。
その内容であれば我々も問題ございませんので、ご提示いただいた内容で手続きを進めたいです。
事業部長
Y 社の
これで確認すべき項目のチェックが終わった 。ようやくサービス提供を受けられそうだ…!
最終回
追加学習に関して合意すべき事項 本契約交渉での合意方針
追加学習に使用するデータの範囲
Y 社から処理のために提供された データ、及び Y 社以外から提供されたデータ
承知しました。
引き続き連絡をお待ちしています。
X社の
CEO
大手企業と開発からサービス化まで進めた…!新たな連携事例として発信できそうだ!
Y社からX 社にデータ処理のために提供されたデータの利用目的
Y社を含めた利用者に広く提供するためにX 社が生成する高精度なカスタマイズモデルの生成
非独占的な利用条件を設定して、複数の事業会社から提供を受けたデータを利用して1 つの高精度なモデルを生成
追加学習を行った結果、精度が向上した学習済みモデルの 権利帰属•利用条件
交渉終了。この交渉をもって、具体的な契約手続きに進むことに。
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