Ⅳ 期限の利益と支払の猶予 V むすび
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消費者消費貸借と貸金業法(2・完)
▇ ▇ ▇ ▇※
Ⅰ はじめに
Ⅱ 契約の方式と解約(以上6 巻2 号)
Ⅲ 抗弁の切断と手形・小切手の禁止、遅延利息
Ⅳ 期限の利益と支払の猶予 V むすび
付・現代化法試訳(消費者消費貸借)(以上本号)
Ⅲ 抗弁の切断と手形・小切手の禁止、遅延利息
1 抗弁の放棄の制限
⑴ 消費貸借契約上の債権が譲渡されると、抗弁が切断される。抗弁の切断は、債務者にとって不利なことが多く、それとの関係で、わが貸金業法でも債権譲渡には、一定の制限がある(24 条)。重要な論点ではあるが、それ自体はそれほど新奇なことではないので、以下では、あまり立ち入らず、2以下と関連する限度で言及するにとどめる。
他方、現代化法は、496 条において、抗弁の放棄を制限し、あわせて消費者契約において、手形および小切手の利用を制限している。すなわち、借主が貸主に対して有する抗弁を404 条により譲渡債権者〔債権の譲受をうけた債権者〕にも
対抗し、または貸主に対して借主に帰属する債権をもって406 条により譲渡債権者に対しても相殺する抗弁のための権利を放棄する合意は、無効とする(1 項)。すなわち、抗弁の接続を否定する合意は、制限されるのである。
⑵ 現代化法の債権総論404 条、406 条では、債務者は、債権譲渡の場合または法定の債権譲渡(412 条)のさいに新債権者に対する抗弁権、相殺権を行使できるが、これらの保護は、任意規定であり、契約的に放棄することが可能である。そこで、496 条1 項は、旧消費者信用法10 条1 項を受け継ぎ、これらの規定を消
『一橋法学』(一橋大学大学院法学研究科)第6 巻第3 号2007 年11 月 ISSN 1347 - 0388
※ 一橋大学大学院法学研究科教授
費者消費貸借に関して強行法としている。この保護がないと、債務者保護規定が契約により放棄された場合に、消費者は、新債権者に対し消費貸借契約上の義務を履行する義務をおうことになり、損害賠償請求権と返還を、たんに旧債権者としての貸主に対してしか主張できなくなるからである47)。
2 手形・小切手の制限
⑴ ア 抗弁権の切断の手段としては、しばしば手形・小切手が用いられる。借主は、有価証券が譲渡されると、第三者との関係において、手形法17 条、小
切手法22 条の人的な抗弁を失う可能性があり、貸主との関係でも、手形訴訟において防御の機会を制約される。また、有価証券の交付は、抗弁の説明や証明責任の転換をもたらす。
わがくにでは、一連の貸借において、前の取引との関係が明らかになると、借
47) この404 条、406 条とは異なり、407 条〔従来の債権者に対する法的行為〕は強行法規とされていないが、▇▇上の観点から、その1 項も類推適用しなければならない。Dauner- Lieb (▇▇▇▇), S.661; Palandt (Putzo), S.694.
また、物品供給と結合した消費貸借の効力も問題である。抗弁の接続の問題は、わがくにでは、部分的に割賦販売法30 条の4(1984 年改正)で採用されたが、種々の問題が残されている。指定商品以外のものが対象とされていないことから、被害が生じた後に後追い的に拡大適用される傾向があり、また、立替え払いやローン提携販売以外の契約方式が包含されない。カードによらない、買い物のたびに契約を結ぶ個品割賦で、近時、被害が多発している。割賦の形式が必要であり、ボーナス一括払いでは対象とならない。管轄の省庁間のみぞが大きいことにも由来する。とりわけ大きな問題は、適用される場合でも、抗弁の接続に限られ、既払金の返還請求ができないことである。解釈論には限界があるため(最判平2・2・20 判時1354 号76 頁参照)、包括的な消費者信用法が必要である(後述Ⅴ2参照)。
現代化法358 条では、⑴消費者が、事業者による物の引渡またはその他の給付の履行に関する契約締結に向けられた意思表示を有効に撤回したときには、その消費者は、その契約の締結と結合した消費者消費貸借契約に向けられた自分の意思表示に拘束されない。
また、⑵消費者が、消費者消費貸借契約の締結に向けられた自分の意思表示を有効に撤回したときには、その消費者は、その消費者消費貸借契約と結合した物の引渡またはその他の給付を履行する契約の締結に向けられた自分の意思表示にも、拘束されない。消費者が結合契約の締結に向けられた意思表示を撤回できる場合には、1 項のみが適用され、495 条1 項による撤回権は、行使できない。消費者が、消費者消費貸借契約の撤回を表示したときには、1 項による事業者に対する結合契約の撤回とみなす、として、売買契約と消費貸借契約との、いずれに向けられた意思表示も、その一方が撤回されたときには、他の意思表示も拘束力をもたないとしている。
り換えとして、過払い利息の元本への充当が行われることから、これを潜脱するために手形が用いられることもある。手形の濫用といえるものであり、実質的な借り換えが行われた場合には、手形は手段にすぎず、元本充当が行われる必要がある48)。このような手形が一般に流通することは、実質的にはありえない。
イ 消費者金融会社が私製手形を濫用したことが問題となったこともある。譲渡による抗弁の切断というよりも、簡易な取立方法としてである。
2003 年、東京地裁は、旧商工ファンドの手形訴訟の受理を拒絶した。同社の融資は債務者から約束手形を借用書代わりに取るシステムをとっており、裁判が強引な取り立てに利用されてきた。同社による手形訴訟の提起は2002 年だけで
1500 件を超え、同地裁の手形訴訟の8 割を占めたといわれる。手形訴訟は、裏書きなど一定の形式的要件を満たしていれば、原則として抗弁が制限され、弁論も一回で結審するケースが大半であり、業者側は、簡易に勝訴判決を取得してただちに強制執行の手続に入ることができる。
東京地裁は、①借用書代わりの約束手形を一般の手形と同一視して、即決手続に乗せるべきではない、②手形の支払地が東京だという理由で、北海道から九州まで全国の債務者の裁判を東京で行うのは、借り手側の防御権を事実上奪う結果となることを問題とした。
また、東京地判平15・11・17 判時1839 号83 頁では、商工ローン会社Xが貸付にさいし主債務者と連帯保証人から共同振出しさせている私製手形による手形金請求の手形訴訟が、手形制度および手形訴訟制度を濫用したものとして不適法と
48) この場合の貸付の仕組みは、当初の借入にさいして交付した手形(①額面をたとえば
10 万円とする)の満期直前に、借主Xが貸金業者Yに満期日を4 か月先とする同額面の手形(②額面10 万円)を送付すると、Yは、額面額から、4 か月間の利息などを差し引いた金をXの口座に振込み(金額は天引後の額9 万円)、Xは、額面額と振込金の差額
を他から調達して口座に入金し、当初の手形を決済する(額面10 万円を返還)。この手形①②が別個の貸付か一連の貸付かが問題となる。たとえば、東京高判平12・3・29 判時1712 号137 頁、これにつき、▇▇・私法判例リマークス2001 年46 頁。その後、最判
平15・7・18 民集57 巻7 号895 頁は、実質的な取引の一連性を肯定した。
なお、手形の濫用は中世に遡るものであり、そこでは、利息の禁止または制限を潜脱するために用いられた。もっとも単純なものは、利息を加えた金額を返還額として手形券面上に記載してしまう方法である。【利息】79 頁参照。わが貸金業法17 条、18 条の書面要件は、これを防止するためのものである。
された49)。
しかし、制度の濫用による受理の拒否や一般条項による制限だけではなく、正面から制限することが効果的であり、透明な制度として構築することも望ましい。
⑵ ア 現代化法は、496 条2 項によって、もっと直接に手形の利用を制限している。すなわち、借主は、消費者消費貸借契約による貸主の請求権について手形上の拘束を生じさせる義務をおわない(1 文)。また、貸主は、消費者消費貸借契約から生じる自分の請求権を担保するために、消費者から小切手をうけ取ってはならないとされる(2 文)。そして、借主は、貸主に対し、1 文または2 文の規定に反して交付された手形または小切手の返還を、いつでも請求することができる(3 文)。貸主は、手形または小切手の交付によって借主に生じたすべての損害につき責任をおう(4 文)。
この2 項は、旧消費者信用法10 条2 項を引き継ぎ、EU の消費者信用指令10 条の要請を満たしている。手形の利用制限と同じ保護目的から、ドイツ法上の抽象的債務約束(780 条)と債務承認(781 条)にも、2 項が類推適用される50)。
イ ここでは、手形と小切手を区別する必要がある。2 項1 文による手形債務
49)「それにもかかわらず、Xが主債務者及び連帯保証人をして私製手形を振出させているのは、手形訴訟により、同人らの抗弁を封じ、かつ、簡易・迅速に債務名義を取得して、同人らに対して強制執行手続をし、又は、同手続をすることを示して圧力をかけて金銭の取立てをすること(同人らをしてXに有利な和解をさせることなどを含む。)を目的としているものと認めざるを得ない。
手形訴訟制度が証拠制限をし、簡易・迅速に債務名義を取得させることとしているのは、手形の信用を高め流通を促進するために、その簡易・迅速な金銭化が強く要請されるからであるところ、私製手形が手形の信用と流通とは無縁のものであることは、以上の認定・説示から明らかである。
以上に認定・説示したところを併せ考慮すると、Xが使用する私製手形は、手形訴訟を利用するために手形制度を濫用(悪用)しているものというべきで、このような私製手形によりXの提起する手形訴訟)は、手形訴訟制度を濫用(悪用)したものというべきである。
したがって、本件各手形により提起した本件各手形訴訟は、手形制度及び手形訴訟制度を濫用(悪用)したものとして、不適法なものというべきである」。
また、横浜地決平15・7・7 判時1841 号120 頁も、商工ローンの手形が、手形訴訟の立法趣旨に反する、としたものである。
50) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.661; Jauernig (▇▇▇▇▇▇), S.595.抽象的債務約束(780 条)と債務承認(781 条)は、ドイツ法に特有の制度であり、原因と無関係に、債務のみを負担する行為である。原因関係が切断される点では、手形と異ならない。
の負担の禁止は、一般的な禁止であり、消費者がみずからした「任意の」手形の交付も制限される。
これに対し、2 項2 文による小切手の禁止は、必ずしも一般的な禁止ではなく、貸主に、消費者消費貸借契約上の自分の請求権の担保として小切手を受領することのみを禁じているにとどまる。禁じられた担保というのは、借主が、期限前に小切手を付与したり、小切手が先日付にされる場合である(vordatiert, 小切手法 28 条、29 条)。1 文と2 文の禁止の範囲の違いから、支払手段としての小切手の機能は、なお残されている。すなわち、担保のみが禁止されるから、たとえば、借主が支払のさいに、現金でなく、小切手で支払うことは許される51)。
⑶ 法の制限に反して、有価証券が交付されたときには、民法総則の134条(強行法規違反の無効)によって、義務の引受と担保設定の合意のみが無効となる。すなわち、貸主との関係でだけ無効となり、第三者との関係では有効である。抽象的な手形ないし小切手の義務そのものは、有効である。そこで、借主の保護のために、3 文は、貸主から、いつでも違法な手形や小切手の返還を請求できるとする。さらに、貸主は、借主に、違法な手形と小切手を交付したことによる損害を賠償しなければならない。このような損害は、とくに、手形が譲渡され、借主が、取得者から有価証券の支払請求をうけた場合に生じる。この場合に、借主は、 4 文の無過失の担保請求権によって(auf den verschuldensunbahängigen Garan- tieanspruch)、貸主に求償することができる。貸主の無過失の絶対的責任が定められているのである。
⑷ 消費者が手形の振出を求められ、その手形が金融業者に譲渡されて予期しない不利益を受けるケースは、欠陥商品の引渡や商品の引渡がない場合の抗弁の切断と共通した問題である。販売業者に対する抗弁をもって手形所持人に対抗することは、困難となる。
ドイツ以外の諸国でも、消費者手形について特別な法的取扱いをし、特別法を制定する例が増加してきた。たとえば、消費者手形の利用を禁止する(アメリカ統一消費者信用法)、手形面に消費者手形であることの表示を義務づけ、その手
51) また、貸主は、期限のきた支払義務の履行のために借主が与えた小切手を受領することもできる。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.661; Palandt (Putzo), S.694.
形の抗弁切断機能を否定する(カナダ手形法)、割賦販売では指図禁止手形のみ利用を認める(オーストリア割賦販売法)などである52)。しかし、日本には、消費者手形に関する特別な法制度は現在ない。前述の裁判例にみられるように、濫用が問題となっている。
上述のオーストリア法をも参考とすると、1916 年に改正されたオーストリア一般民法典(ABGB, 1811 年)879 条は、一般的に暴利行為を禁止したが、1979年3 月8 日の消費者保護法は、より具体的に以下の規定をおき、その11 条で、手形の使用を制限している53)。
消費者保護法(Konsumentenschutzgesetz, Bundesgesetz vom 8.3.1979 BGBl 140, mit dem Bestimmungen zum Schutz der Verbraucher getroffen werden) 11 条(Verbot des Orderwechsels)
「事業者が、消費者に対する自分の債権のために、消費者の手形債務を負担させうるのは、事業者が手形取得者(1955 年手形法1 条6 号、75 条5 号)となり、かつ手形上に「指図禁止」(nicht an Order)の文言、または同旨の記入がされた場合のみである。
前項に違反した場合には、手形を振り出した消費者は、事業者に、償還額の範囲で(Rückgriffssumme)支払の請求権を有する。ただし、消費者が手形債務の引受または履行により、手形なしでも生じた義務から免責されていること〔つまり、事業者が消費者にもはや請求しないこと〕を、事業者が立証した場合はこの限りではない」。
すなわち、裏書きが制限され、人的抗弁の切断は認められていない。また、手形金を支払った場合には、原因債権の消滅が担保されているのである。
52) アメリカのConsumer Credit Protection Act(U.S. Code, Title 15, Chapter 41)1601条、 1666条以下、1692f 条(Credit Billing)。カナダのBills of Exchange Act(R.S., 1985, c.B.4)では、188 条以下(Part V, Consumer Bills and Notes)。なお、手形の制限については、これ以上立ち入らない。【利息】79 頁、378 頁、412 頁、415 頁、438 頁参照。
53) 1979年には、ABGB 934条が強行法規化され、消費者保護が強化された。【利息】132頁、また、オーストリア法における暴利禁止規定の発展についても、【利息】131頁以下参照。 153 頁、183 頁をも参照。
3 遅延利息の限度と充当
⑴ 遅延利息は、それが多額になると、消費者の利益を害する。わが利息制限法4 条は、賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が利息制限法1 条1
項の率の1.46 倍を超えるときには、その超過部分を無効とする。すなわち、最高利率である2割の1.46倍である2.92倍は、出資法の最高限度と同率となることから、出資法の最高利率が下げられた2000 年施行の貸金業法の改正のさいに、改めら
れたのである。他方、消費者契約法9 条2 項は、損害賠償額の予定または違約金を定める条項では、年利14.6%をもって限度とする。利息制限法の制限の率が、いぜんとして高いことが問題である(結果として損害賠償額の制限も緩い)。 2006 年の改正の途中では、特例金利など種々の問題が登場し、おおむね削除されたが、損害賠償額の予定は、あまり考慮されなかったのである54)。
54) 2006 年改正時における特例金利などの議論については、▇▇▇▇▇「金利引き下げ問
題をめぐる情勢について─正念場を迎えた金利引き下げ問題」消費者法ニュース69 号
48 頁、▇▇「改正貸金業法の位置づけと概要」日本司法書士会連合会編・実務のための新貸金業法(2007 年)28 頁以下参照。
⑵ ア 現代化法497 条1 項によれば、借主は、消費者消費貸借契約にもとづいて負担した支払を遅滞したときには、負担した金額(geschuldeter ▇▇▇▇▇▇, 元本)につき288 条1 項により利息〔288 条1 項の遅延利息は、基礎利率に5%をプラスしたもの〕を支払わなければならない。ただし、これは、不動産担保つきの消費貸借契約には適用されない(2002 年8 月1 日改正(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)前は、「491 条3 項1 号による土地担保権により担保された消費者消費貸借契約は(grundpfandrechtlich gesicherter Verbraucherdarlehensvertrag)、この限りでない」)。この契約では、遅延利息の利率は、その年の基礎利率に2.5%をプラスしたものとする。
同条は、旧消費者信用法11条に相当する規定である。EUの消費者信用指令は、この点に関する基準を包含していないから、497 条では、消費者信用指令15 条で認められたよりも進んだ規定となっている。1 文は、いわゆる通常の貸借
(Standarddarlehen)に関する規定であり、2 文は、物的貸借(Realdarlehen, 内容的には物的担保のある貸借である)に関する規定である。
イ 通常の貸借において、基礎利率に5%を上乗せする規定は、債権総論の 288 条(履行遅滞の場合の賠償額)と同様である。そこで、立法の過程では、討議草案501 条にも、確定草案KF494 条にも相当の規定はなかった。Bülowは、これを批判し、旧消費者信用法11 条1 項は、遅延利息の限度のみならず▇▇の禁止にも意味があるとし、これをうけて、政府草案では、497条1項1文が付加された。 1 項1 文前段は、借主は、約定の債務額に288 条1 項に従って利息をつけなければ
ならないと定めた。491 条3 項1 号において土地債務で担保された貸借が問題となる後段では適用されない55)。
物的(物的担保のある)貸借について、旧消費者信用法は、遅滞後の利息のつき方につき特別の規定をもたなかった。2文は、新規定である。物的貸借につき、遅延利息の利率を、基礎利率に2.5%をプラスしたものと定め、遅延利息の率の限度が一般の貸借と異なるとしたのは、抵当権信用のさいの貸出コストは、通常の貸借の場合よりも小さいからである56)。
55) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.663; vgl. ▇▇▇▇▇▇▇-▇▇nsch, S.610.
また、遅延利息を決定するさいに問題となるのは、固定的な法定利率ではない。法定利率を修正する基準利率は、半年ごとの変動金利であり、現代化法の施行された2002年には3.62%、その後低減し、2006年1月から1.37%、7月から1.95%(2007年1 月から2.70%、7 月から3.19%)である。これに5%を加えた額が、遅延利息の上限とされる(497 条1 項、288 条1 項、247 条)57)。
ウ 1 項3 文によれば、個別の場合において、貸主は、損害がより高いことを、また、借主は、損害がより少ないことを、それぞれ証明することができる。これは、旧消費者信用法11 条1 項後段に相当する。それによると、貸主は、(288 条4項と同じく、遅滞になった債務の債権者は)損害が、(通常の貸借の)5%という 1 文や(物的貸借の)基礎利率プラス2.5%という概算よりももっと高かったと証明することができる。3 文は、他方で、借主にも、貸主の損害は、1 文の概算よりも少なかったと証明することを認める。この可能性は、消費者信用法に由来する独自の規定であり、288条のもとでは、遅滞した債務者には認められていない。債権総論では、より高いことの証明は可能であるが、低い証明はできない。もちろん、実務上、信用機関に対して、借主が、損害が少なかったと証明することはむずかしいが、その他の貸主に対しては、ありえないわけではない58)。
⑶ 497条2項によれば、遅滞が生じた後に発生した利息は、特別の(分離した)口座(gesondertes ▇▇▇▇▇)に記帳されなければならず、債務額またはその他の債権者の債権とともに当座勘定(Kontokorrent)の中に入れてはならない(1文)。この規定は、旧消費者信用法11条2項に相当する。1文は、遅滞後に生じる「利息」は、必ず特別の口座に記帳することを定めている。この口座の分離は、商法355
56) 抵当債務のある貸借の貸主は、4%の固定利率を請求でき、2000 年5 月1 日から、旧288
条1 項1 文が改正され、一般規定では(消費者のする物的信用契約にも適用される)、基礎利率に5%をプラスする遅延利息が請求できたから、1 項2 文の新規定では、物的貸借の貸主は、現行法よりも不利になったのである。Vgl. Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.663; ▇▇▇▇▇▇▇- ▇▇nsch, S.611.
57) ▇▇「利息制限法と消費者問題のあり方」消費者法ニュース52号135頁参照。ちなみに、ドイツではゼロ金利や超低金利政策がとられてきたわけではないから、変動金利といっても、わがくにと比較するとかなり高めの数字となっている。
58) 遅延利息の請求に関し、288 条3 項において、債権者が、他の法律上の原因にもとづき、より高い利息を請求することができることについては、▇▇「遅延利息の設定における競争条件の統一と消費者信用」国際商事法務31 巻11 号1543 頁参照。【倫理】69 頁所収。
条による▇▇の効果を防止している59)。
この利息については、289 条2 文が適用されるが、貸主は損害賠償を法定利率
(246 条)までしか請求できない(2 文)。すなわち、289 条1 文の▇▇の禁止では、債務者は保護されない。なぜなら、債権者は、289 条2 文によって、利息をつけることのできる遅延利息を請求しており、遅延利息は、利息ではなく損害賠償である。そこで、▇▇は損害賠償の限度で可能だが、法定利率までとしているのである。実質的には、▇▇を制限しているともいえよう。
⑷ ア ⒜ 3 項は、充当の順序(Anrechnungsreihenfolge)の制限である。借主による支払が、弁済期に達した全債務の返済にたりないときには、367 条1項の規定によらずに、まず権利行使の費用に、つぎにその他の債務額(1項)に、最後に利息(2 項)に充当される(1 文)。貸主は、一部の弁済を拒絶することができない(2 文)。
これにより、消費者の借入債務への支払総額が減じる(旧消費者信用法11 条3
項1 文)。債権総論の一般的な充当の順序では、まず権利追行の費用に、つぎに遅延利息、最後に元本の順となる。これに比して、消費者の負担の軽減となっている。2文も、一般規定である266条と異なり、消費者には一部給付の権利があり、貸主がこれを妨げえないことを定めている。
⒝ 2006 年のわが貸金業法の改正では、いわゆる総量規制の考え方が打ち出された。その方途は多岐にわたるが、信用情報を把握することの充実や契約締結時の貸手責任の強化を中心とする。従来、消費貸借契約自体の過剰契約の制限や、割賦販売契約などをも含めた契約額の総量規制は、従来、わがくにでは十分行われたことがなく、信用供与形態が多様なもとでは、信用情報の集中が必要となる。これらの必要性はいうまでもないが、他方、多重債務問題の▇▇的な解決には、貸手責任の観点から、民法の原則をも修正する必要が生じることがあろう。この
59) 口座の分離は、ドイツ法上しばしば行われ、本文の288 条の場合のほか、たとえば、賃貸借の保証金(Kaution, 敷金)でも求められており、確実な返還を保障するものとなっている。どんぶり勘定を防止するために、わが法のもとでも参考に値するものである。▇▇「賃貸借法における保護規定と投資、労働流動性、環境保護─ドイツ賃貸借法の 2001 年現代化法」国際商事法務29 巻11 号1321 頁、12 号1463 頁、▇▇・土地法の研究
(2003 年)198 頁所収。
意味では、改正法は、債権総論の原則を変えるほどのものではない。
改正法は、以下のとおり、貸金業者に借主の返済能力の調査を義務づけ、個人が借主の場合には、指定信用情報機関の信用情報の使用を義務づけるものである。改正前の旧13条(過剰貸付の禁止)は、たんなる抽象的な義務を定めたにすぎず、必ずしも十分ではなかったからである。
そして、①自社からの借入残高が50 万円超となる貸付け、または②総借入残
高が100 万円超となる貸付けの場合には、年収等の資料(源泉徴収票等)の取得を義務づける(貸金業法[第5 次改正の]13 条)。返済能力の調査を具体化するものである。借主の側からは、安易な借入への心理的な制約となる。
また、調査の結果、総借入残高が年収の3 分の1 を超える貸付けなど、返済能力を超えた貸付けを禁止する。なお、内閣府令で、売却可能な資産がある場合などは除かれる。
そして、貸金業者に対し、みずからの貸付けの金額と他の貸金業者の貸付けの残高の合計額が年収等の3 分の1 を超えることとなる貸付けは、原則として禁止される。
極度方式基本契約を締結している場合には、極度方式貸付けの状況を勘案し、または定期的に、指定信用情報機関の信用情報を使用して返済能力を調査し、自らの貸付けの金額と他の貸金業者の貸付けの残高の合計額が年収等の3 分の1 を超えると認められるときは、極度方式貸付けを抑制するために必要な措置を講じなければならないこととする(貸金業法[第5 次改正の]13 条の2 ~ 13 条の4)60)。イ 現代化法によると、消費貸借の返還および利息請求権の消滅時効は、1 項 による遅滞の発生後、197 条1 項3 号から5 号までに掲げる事由による権利の確定
まで停止する。ただし、その発生から10 年を超えない。利息の請求権には、197条2 項は適用されない(3 文)。
367条を変更した充当順序を定めた代償として、旧消費者信用法11条3項3文は、利息請求権(2 項)につき、旧197 条、218 条2 項が適用されないとした。つまり、旧195 条の30 年の通常の消滅時効が適用されたのである。これにより、貸主が利息だけのために、時効の中断、たとえば、訴訟の提起をすることを不要としていた。
しかし、現代化法は、時効期間をも大幅に短縮したから、195 条によると、 2002 年1 月1 日から、通常の時効期間は、3 年となった。これでは、弁済をうけない貸主は、たびたび時効の中断をする必要にせまられる。
60) 改正法の総量規制は、基本的に行政的規制の延長にあるものと位置づけられる。私法上の制限は、必ずしも十分ではない。
改正法13 条「貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。
2 貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める貸付けの契約を除く。)を締結しようとする場合には、前項の規定による調査を行うに際し、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。
3 貸金業者は、前項の場合において、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、第1 項の規定による調査を行うに際し、資金需要者である個人の顧客(以下この節において「個人顧客」という。)から源泉徴収票(所得税法(昭和40年法律第33号)第226 条第1 項に規定する源泉徴収票をいう。以下この項及び第13 条の3 第3 項において同じ。)その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けなければならない。ただし、貸金業者が既に当該個人顧客の源泉徴収票その他の当該個人顧客の収入又は収益その他の資力を明らかにする事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録として内閣府令で定めるものの提出又は提供を受けている場合は、この限りでない。
一 次に掲げる金額を合算した額(次号イにおいて「当該貸金業者合算額」という。)が50 万円を超える場合
イ 当該貸付けの契約(貸付けに係る契約に限る。ロにおいて同じ。)に係る貸付けの金額(極度方式基本契約にあつては、極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示する場合にあつては、当該下回る額))
ロ 当該個人顧客と当該貸付けの契約以外の貸付けに係る契約を締結しているときは、その貸付けの残高(極度方式基本契約にあつては、極度額(当該貸金業者が当該個人顧客に対し当該極度方式基本契約に基づく極度方式貸付けの元本の残高の上限として極度額を下回る額を提示している場合にあつては、当該下回る額))の合計額
二 次に掲げる金額を合算した額(次条第2 項において「個人顧客合算額」という。)が百万円を超える場合(前号に掲げる場合を除く。)
イ 当該貸金業者合算額
ロ 指定信用情報機関から提供を受けた信用情報により判明した当該個人顧客に対する当該貸金業者以外の貸金業者の貸付けの残高の合計額」
また、これに続く以下の項目も、行政的規制の延長にある。 13 条の2 過剰貸付け等の禁止
13 条の3 基準額超過極度方式基本契約に係る調査
13 条の4 基準額超過極度方式基本契約に係る必要な措置
そこで、政府草案は、497 条3 項3 文で、197 条2 項は、利息請求権には適用されないとのみ規定した。これによって、判決で確定された利息請求権(titulierte Zinsansprüche)は、30 年で時効にかかることが明示された。また、連邦参議院の提案で、判決で確定されていない利息債権(auch nicht titulierte Zinsforde- rungen)と元本(1項)も、長期時効のもとにおかれるとされ、3文が新設された。政府草案の497 条3 項と3 文は、4 文となった。新3 文によれば、貸借の返還と1
項の遅滞後の利息の請求権の時効は、197 条1 項3 号‒ 5 号の債務名義の獲得(Titu- lierung, 確定判決など、30年の時効)まで、停止する。しかし、請求権の最長期は、成立から10 年である61)。
ウ 1 文から4 文は、支払が執行名義(Vollstreckungstitel)により行われ、執行の主たる債権が利息の支払を内容とする場合には、適用されない(5 文)。借主が、利息債権を含む貸主の強制執行により支払ったときには、5 文によると、 1 文‒ 4 文は適用されない。これは、旧消費者信用法11 条3 項4 文に由来する。利息のみを分離して給付する場合には、367 条の弁済の充当方法と、197 条2 項の通常の時効が残る結果となる。
IV 期限の利益と支払の猶予
1 期限の利益喪失約款
⑴ ア 期限の利益は、債務者にとって重大な利益であり、些細な契約違反によって、これを失うことには、その後の高額な遅延損害金が発生する理由ともなることから、問題がある。とりわけ、わが法のもとでは、期限の利益喪失を道具とすることによって、法律上支払義務のない、いわゆるグレーゾーン金利の支払を実質的に強制することが行われてきた。これについては、2006 年の3 判決である最判平18・1・13 民集60 巻1 号1 頁、最判平18・1・19 判時1926 号23 頁、最判平18・1・24 判時1926 号36 頁が出されており、支払の遅滞によって期限の利益を喪失する旨の特約は、支払義務をおわない超過部分の支払をも事実上強制することになり、超過部分に関しては無効になるとした(なお、最判平18・3・30 判
61) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.664; Jauernig (▇▇▇▇▇▇), S.596; ▇▇▇▇▇▇▇ (Putzo), S.695.
例集未登載も同旨)。
「期限の利益喪失特約がその文言どおりの効力を有するとすると、Y〔借主〕は、支払期日に制限超過部分を含む約定利息の支払を怠った場合には、元本についての期限の利益を当然に喪失し、残元本全額及び経過利息を直ちに一括して支払う義務を負うことになる上、残元本全額に対して年29.2%の割合による遅延損害金を支払うべき義務も負うことになる。このような結果は、Yに対し、期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため、本来は利息制限法1 条1 項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから、同項の趣旨に反し容認することができず、本件期限の利益喪失特約のうち、Yが支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は、同項の趣旨に反して無効であり、Yは、支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば、制限超過部分の支払を怠ったとしても、期限の利益を喪失することはなく、支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り、期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。
そして、本件期限の利益喪失特約は、法律上は、上記のように一部無効であって、制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども、この特約の存在は、通常、債務者に対し、支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、その結果、このような不利益を回避するために、制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。
したがって、本件期限の利益喪失特約の下で、債務者が、利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である」(前掲最判平18・1・13)。
期限の利益喪失特約が、債務者に誤解を与え、事実上支払を強制するものであることを指摘し、正面からその任意性を否定した点で、画期的である。この議論
は、直接には、期限の利益喪失特約に関するものであるが、それがない高利の約定そのものにもあてはまる面があることから、支払の任意性の判断に影響するところも大である62)。
イ また、些細な不履行を理由とする期限の利益喪失、さらに連続する取引で、過払いになっている場合に、当該の不履行だけで期限の利益が喪失するかが問題となる63)。
たとえば、過去に10 回、超過利息を支払っており、11 回目に、支払が遅れたといった場合には、すでに支払った超過利息の範囲内では、債務不履行は生じないと解される(最判平15・7・18 民集57 巻7 号895 頁参照。同判決は、一連の取引において、超過利息がつぎの取引に充当されていく場合であるが、一連の返済にも同様の関係がある)。先行する利息の支払が制限を超えた場合には、すでに一部無効であり、元本に充当されうるからである。債務不履行は、外見にすぎず、超過利息が充当されれば、当該の不履行自体が存在しないのである。
また、貸主が、些細な不履行や計算違いに藉口して、残金全額の期限の利益喪失を主張することは▇▇▇に反することがあろう。さらに、不履行があっても、一括返済を求めずに、長期間、損害金の名目で分割払させた場合には、制限超過利息をとる隠れ蓑にすぎないというべきである。特別法や外国法で指摘されるように、期限の利益喪失は、債務者の権利ともいえる利益を奪うものであるから、債務全体の残額とのバランスや不履行の態様を考慮することが必要となる(期限の利益の存続と、遅延損害金の制限)。期限の利益喪失を発動する手続をも明確にする必要があろう。
たとえば、貸金契約と同様の信用供与契約である割賦販売法は、消費者保護の観点から、分割払契約の解除による残債務の一括請求にさいし、20 日以上の相当な期間を定めた書面による未払い金の催告を求め、また損害金の利率を法定利率による遅延損害金に制限している(5 条、6 条。なお、消費者契約法9 条をも参照)。
さらに、最近の立法例を参照すると、つぎに、現代化法の498条が参考になる。
62) ▇▇「貸金業にまつわる最近の最高裁判例の法理」ジュリ1319 号26 頁。
63) ▇▇・民商135巻1号198頁(214頁)参照(最判平18・1・24民集60巻1号319頁の評釈)。
期限の利益喪失条項の規制と、期限の利益が喪失した場合の遅延利息の規制(前述の497 条1 項、2 項)が有機的に結合されている点が参考に値するものである。
2006 年のわが貸金業法等の改正のさいに、期限の利益喪失に対する包括的な規制が行われなかったことは、取引履歴の開示など、判例理論を成文化するものもみられたことからすると、重大なアンバランスというべきである。
⑵ ア 現代化法は、498 条において、分割返済の消費貸借における全額の弁済期の到来〔期限の利益の喪失〕を包括的に制限した。期限の利益を喪失させるにたりる不履行を定めているのである。
すなわち、借主の支払遅滞を理由として、貸主は、分割払で返済される貸借において、消費者消費貸借契約を解約告知することができるのは、つぎの場合だけである。
⒈ 借主が、少なくとも2 回連続して分割支払の全部または一部を遅滞し、かつ少なくとも〔額面金額または分割支払額の〕10%につき、消費者消費貸借契約の期間が3 年を超える場合には、額面金額または分割支払額の5%につき、遅滞となること(1 文1 号)、および
⒉ 貸主が、借主に対し、期間内に支払がなされない場合には残債務の全額を請求する旨の表示をして、残額支払のために2 週間の期間を設定し、その期間が徒過されたこと(1 文2 号)。
498 条は、借主の保護を目的としている。1 項では、遅滞を条件とした告知について、特定の要件を設け、2 項では、利用されなかった消費貸借の費用が包含されないとしている。この規定は、旧消費者信用法12 条に相当する。それは、 EUの消費者信用指令15 条が命じていない、追加的な規定である。
1 項1 号によると、498 条では、2 回遅滞がなければならないから、少なくとも
3回の分割払の消費者消費貸借にのみ適用される。また、498条は、遅滞の場合に、消費貸借の残債務の満期がくるには、告知の意思表示が必要であるとしている。そこで、自動的な解約条項(automatische wirkende Verfallklauseln)は、無効である64)。
イ 告知が有効であるには、1 項1 文にいう要件(1 号、2 号とも)が、すべて存在することが必要である。まず、借主の遅滞の限定がある。借主は、1 文1 号
により、2 つの前後連続した支払につき、全部または、一部遅滞にならなければならない(286条)65)。消費者契約においては、このような明確性が必要であろう。
また、残額は、消費貸借額の10%以上でなければならない(3年以上の貸借では、 5%)。些細な不履行を理由に、重大な結果を招来するべきものではないからである。実体的なバランスが必要であり、あまりに些細な不履行に藉口して、期限の利益喪失特約を主張することを防止している。
ウ 1 文2 号によれば、貸主は、借主に、告知の前にさらに2 週間の追加期間
(Nachfrist)を設定しなければならない。それには、返還するべき債務の不払いのさいには、残る全債務を請求するとの意思表示が付される。これによって、貸主は、履行のために最後の機会を与えるのである。その意思表示では、497条1項、 2 項で負担する返還するべき額を、具体的に指摘しなければならない66)。契約の解除にさいしては、相当の期間を定めて催告することが必要である(日本民法では541 条参照)。これと同様に、期限の利益喪失といった当事者の利益を大きく損なうものには、慎重な手続が必要なのである。
借主が、期間内に支払ったときには、告知の要件はなくなる。分割払の貸借
(Teilzahlungsdarlehen)は、従来と変更なく存続する。そこで、わがくにで、しばしばみられたように、期限の利益が喪失したと主張しながら、他方で、高利の損害金を分割払で主張する(これは、実質的には利息制限法の潜脱である)ことを防止できるのである。
⑶ 貸主が、借主に対して、遅くても期間を設定する時までに、合意により交渉する機会(Gespräch)を与えなければならない(1項2文)。期限の利益喪失が、
64) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.665.期間の設定のさいに意思表示をしてもたりない。Jauernig (Berger), S.598.また、314 条3 項の類推により、相当の期間内に告知しなければならない。なお、2 週間の期間は、短縮することはできないが、延長することはできる。 Palandt (Putzo), S.696.
65) ここで、消費者は、2 回ごとに(1 回おきにjede zweite Rate)給付することによって、告知権を否定するわけにはいかない。なぜなら、消費貸借契約の一部支払の同意には、相殺の同意が含まれるからである。消費者は、一方的にそれに反することはできないし、それによれば、もっとも古い残支払から充当されるからである。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.666.
66) そこで、あまりに過大な額をいったときには、期間の設定は無効である。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.666.
不履行に対処するためであり、高利の実現の道具でないとすれば、不履行をたんなるチャンスととらえるのではなく、その治癒を考えることが必要であろう。もっとも、機会の提供は、告知のための前提要件ではない67)。
⑷ 貸主が消費者消費貸借契約を解約告知した場合には、利息およびその他の時の経過に応じた消費貸借契約の費用に関する残債務は、段階的な計算(bei staffelmäßiger Berechnung)によると、解約告知が効力を生じた後の期間に相当する分だけに減額される(2 項)。
2項が定めたのは、告知の効果である。貸主が貸借を有効に告知したときには、分割払の合意はなくなるから、2 項で決定される全部の残債務が請求可能となる
(fällig)。しかし、この場合でも、貸主は、契約上の全利息の支払を請求できるわけではなく、法律上当然に、貸方に入らない費用については、残債務の利息の減少(Abzinsung)が生じる。残債務のうち、段階的な計算では、告知後の期間に入るような、期間による費用と契約利息は、消費者の利益のために、残債務から減額される68)。
期限の利益喪失条項の規制と、期限の利益が喪失した場合の遅延損害の規制が有機的に結合されている点が参考に値するものである。なお、本稿では立ち入りえないが、不履行の場合の遅延損害金も制限されている(497 条は、遅延利息の一般規定である288 条を一部修正し強行法規としている。遅延損害金の制限の点は、わが消費者契約法とも類似している)。
⑸ 3 項は、2002 年8 月1 日改正に(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)よって附加された。すなわち、1 項、2 項の規定は、不動産によって担保された消費貸借契約には適用されない。
2 分割払、支払猶予、ファイナンスリース
⑴ 消費者向けの消費貸借は、たんに単純な貸付としてだけ行われるわけでは
67) いわゆる義務規定(Sollvorschrift)である。Jauernig (Berger), S.598.しかし、この規定違反は、損害賠償義務を生じる。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.666.
68) Vgl. Jauernig (▇▇▇▇▇▇), S.598; Palandt (Putzo), S.697.一回限りの期間による給付は、必ずしも費用が減少するわけではないから、この限りでない。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.666.たとえば、担保の設定である。1年が半年になっても、設定の費用そのものは同じである。
ない。売買のさいの分割払やファイナンス・リース、当座貸越など、多様な形態がある。旧消費者信用法は、事業者と消費者の間の有償の信用契約のすべてに適用された。この意味における有償の信用は、消費貸借のほか、支払の猶予とその他のファイナンス支援措置をも意味した。
現代化法では、体系的理由と見通しをよくするために、491 条‒ 498 条の消費者消費貸借は、消費貸借(488 条‒ 490 条)の特則として規定されている。そこで、 499 条において、これらを消費者へのファイナンス支援措置として、包括的に準用している。本稿では、このうち、準用に関する総論部分と特則の一部を扱う。現代化法499 条は、358 条、359 条、492 条1 項から3 項までおよび494 条から
498 条までの規定を、2 項および3 項の規定の適用を妨げることなく、事業者が消
費者に対して3 か月を超える有償の支払猶予その他の有償ファイナンス支援措置を与える場合に準用する(1 項)。
1 項では、有償の支払の猶予(Zahlungsaufschub)または他の有償のファイナンス支援措置(Finanzierungshilfe)を目的とする消費者契約には、消費者消費貸借契約に関する規定が準用されると定める。例外は、貸越契約(Überziehung)に関する493 条と、492 条4 項だけである。他の信用契約、たとえば、後発的な支払期間の猶予(Stundung)の締結のための代理は、492 条1 項の形式を必要としない。
「支払の猶予」(Zahlungsaufschub)は、ほんの20年前までは、ドイツ民法には、知られていない概念であった。これは、EUの消費者信用指令のArt.1. Abs.2 lit.cに由来し、旧消費者信用法1 条2 項にうけつがれ、499 条に入ったのである69)。
支払の猶予は、消費者の利益のために、給付期間に関する任意規定、とくに 271 条(給付期間)からの乖離を契約によって認めるものである。ここで、要件となるのは、有償の支払の猶予が、3 か月以上になることである。従来消費者信用法3 条1 項1 号に規定された制限がある70)。
「その他のファイナンス支援措置」も、ドイツ民法では、前は知られていなかった概念である。これも、EUの消費者信用法指令のArt.1. Abs.2 lit.cにもとづき、
69) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.667; vgl. Jauernig (berger), S.599.
消費者信用法1 条2 項を介して取り入れられた。この概念は、一面では、新規な取引をうけとめる概念(Auffangfunktion)でもあるが、すでに知られているものではファイナンスリース契約がある71)。
⑵ ファイナンスリース契約、および分割払と引換えに、一定の物の引渡または他の一定の給付の履行を目的とする契約(分割払取引)については、500 条から504 条までに定める特則が適用される(2 項)。
2 項は、特定の場合につき、500 条以下に特則を設け、消費者消費貸借の規定の準用にとどめないものとした。特徴のある取引形態だからである。しかし、1項の原則と2 項の関係は、相対的なものにすぎない。「その他のファイナンス支援措置」のもっとも重要な場合であるファイナンスリース契約と、「支払の猶予」のもっとも重要な場合である分割支払取引については、1 項による一般規定が適用されないからである。この有償の消費者契約に適用される規範は、消費者消費貸借法と別に、500 条ないし501 条において独立して導入されている。分割支払取引には、502 条‒ 504 条が適用される。
「ファイナンスリース契約」の概念は、従来、法律では定義されていない。リース借主は、一定期間、リース料を、使用の対価として支払わなければならず、さらに、リース貸主のファイナンスのコストの償却(Amortisation)もしなければならない。リース借主の取得権は、必要ではないとされる72)。
分割支払取引は、2 項の新たな定義では、分割支払と引換えに、特定の物の引渡または特定の給付の履行を目的とする契約である(旧消費者信用法の4 条1 項
5 文2 号参照)。ただし、規範の趣旨からすると、「分割支払と引換えに」とあっても、のちの一括支払(Zahlung auf einmal)や分割(in Raten)の場合でもた
70) 支払猶予のもっとも重要な形式は、猶予(Stundung)の下位としての分割取引(Teil- zahlungsgeschäft)である。猶予は、契約で原始的にも、後発的に合意によっても定められる。期限の猶予約款の一種であるpactum de non petendo も同じである。ただし、クレジットカード取引では、支払猶予ではなく、組織的な期間の延期(Verschiebung)があるにすぎず、この延期も、必ずしも3 か月という制限なしに行われる。
71) リースには、ファイナンスリースのほか、製造者ないし取引者▇▇▇(Hersteller- bez. Händlerleasing)とMietkauf がある。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.667; Palandt (Putzo), S.698; Jauernig (▇▇▇▇▇▇), S.599.
72) ファイナンスリースについては、Vgl. ▇▇▇▇▇▇▇ (▇▇▇▇▇), S.625; Jauernig (Berger), S.599.
りる。必要なのは、たんに、物の引渡または他の給付の履行に関する契約が、支払期限を延期されることだけである。2 項でも同様で、このような(引渡)契約をともなう有償の支払の猶予でたりる73)。
⑶ この款(499 条‒ 504 条のファイナンス支援措置に関する部分)の規定は、 491 条2 項および3 項に定める範囲において適用されない(3 項)。すなわち、少額の場合などの特則規定の適用範囲は、準用される消費者消費貸借と同じ例外のもとにあるとされる。
V むすび
1 当座貸越契約
⑴ 当座貸越は、従来、民法典の対象とするところではなかった。しかし、それが、消費貸借の重要な内容をなしていることから、現代化法は、特則をおいた。すなわち、493 条は、当座貸越信用供与(Überziehungskredit)に関する独立した1 条をおいたのである。
同条1 項は、あらかじめ合意がある貸越であり、2 項は、事後的な貸越の規定である。
この493 条は、ほぼ旧消費者信用法5 条に相当し、振込口座(Gehaltkonto)や類似の口座への貸越について、492 条の方式を免除している。この信用形態を不必要に制約しないためである。そして、書式と表示義務の代わりに、同条は、通知義務を定めた。
⑵ ア 492 条の規定は、信用供与機関(Kreditinstitut)が、借主に、当座口座(laufendes ▇▇▇▇▇)への一定額の貸越を認める消費貸借には適用されない(1項1文)。ただし、利息以外には、請求される消費貸借に対して費用が計算されず、かつ3 か月以内には利息が付せられないものに限る。
491 条に対し、493 条の例外規定の人的な適用範囲は、制限され、貸主が銀行など信用機関である消費者貸借のみが対象となる。
適用の前提として、借主は、信用機関に当座口座(laufendes ▇▇▇▇▇)、すなわち、
73) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.667; ▇▇▇▇▇▇▇▇ (▇▇▇▇▇▇), S.599.
支払取引に使う当座口座(Kontokorrentkonto)をもたなければならない。さらに、信用機関が消費者に、この口座で特定額まで貸越する権利を認め、消費者には、限度額のある信用わくが認められなければならない74)。
イ 信用供与機関は、このような消費貸借の貸越(Inanspruchnahme)の前に、借主に対して以下の事項を通知しなければならない(以下、2 文1 号から4 号)。
⒈ 消費貸借の上限
⒉ 通知の時点において適用される年利
⒊ 利息が変更される条件
⒋ 契約終了に関するルール
合意された貸越信用の契約がある場合には、1 文により、492 条の規定は適用されない。消費者貸借契約は、ここでは、方式なしに締結される。方式の自由である。
しかし、この2 文1 号から4 号までに定める契約上の条件は、遅くとも消費貸借の最初の利用=貸越(Inanspruchnahme)をした後に(erste Überziehung, 最初の引出)、借主に通知(確認)しなければならない(2 文)。通知するのは、貸借の一定額で現された限度額、名目の年利、変更の条件、契約終了のルールなどの契約条件である。
また、借主には、消費貸借の利用=貸越の間は、年利の変更があるごとに通知しなければならない(3 文)。3 文にもとづく確認および前文にもとづく通知は、書面により行われなければならない(4 文)。通知は、口座の通知書(Kontoauszug)への表示によることもできる(5 文)。
⑶ 2 項は、事前の貸越の合意がなく、消費者の信用に対して一方的に付与された甘受(Duldung)による貸越信用が行われる場合である。
信用供与機関が当座口座の貸越を〔事後的に〕認め、かつその口座が3 か月以上にわたり貸越しとなる場合には、信用供与機関は、借主に、年利、費用および
74) 手数料などの費用は、包含されない。ここでいう費用は、通常の口座維持料(▇▇▇▇▇- führungsgebüren)ではなく、支払取引の処理(Abwicklung)の費用である。また、利息は、4 半期より短くして消費者に負担させることができない。これにより、商法典 355 条1 項後段の▇▇は制限される。Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.654-655; ▇▇▇▇▇▇▇▇ (▇▇▇▇▇▇), S.593; ▇▇▇▇▇▇▇ (Putzo), S.692.
これに関する変更を通知しなければならない。この通知は、口座の通知書への表示によることもできる(2 項)。
信用機関の「甘受による貸越」は、たとえばATMによる現金の支払によって生じる。2 項のいう甘受による貸越は、銀行が、義務をおわずに、貸越をするかどうか自由な判断をなしうる場合である。たとえば、支払が保証されていない小切手の支払が典型的な場合である。性質上、銀行と消費者の間で、貸越信用の付与またはそれを高めるための設定的な合意があるとみられる(konkludente Eini- gung)。しかし、このような合意は、時間的に貸越の後に行われている。2 項の意味の貸越の許容があるにすぎない場合には、銀行は、1 項の合意された貸越信用の場合よりも限定された情報提供義務をおうにとどまる。銀行は、年利、その他の貸越費用、およびこれに関連する変更の明示だけをしなければならない。さらに、この通知義務は、貸越が3 か月よりも長く継続するときにのみ生じる。通知は、1 項の場合と同じく、口座の通知書によることでたりる75)。
2 統一的法典の意義
みなし利息(利制3 条)を筆頭に、両建預金や貸増しや天引き、個別の取引の一連の取引への偽装、保証料の金利への上乗せの例にみられるように、特殊な取引方法によって実質的に金利を高める方策を防止する必要があることから、単純な金利の規制だけでは十分とはいえない。
2006 年の貸金業法等の改正時に、金利以外に、過剰融資の抑制や不適切な取立の規制、広告の規制、債務者情報の流出の防止、説明義務の徹底、債務者にかける生命保険や年金担保の規制、不適切な▇▇証書の利用、リボルビング払いなどが問題となっていた。改正法は、これらの多くの問題に対処したが、認知症の高齢者や精神・知的障害者などの保護といった周辺の課題はまだ残されている
(年金担保は、貸金業法の2004 年改正により罰則をもって禁止)。
また、過剰融資との関係では、リボルビング払いは、毎月の支払を一定額におさえるが、他方で、期間が不定期となり、新たな貸付の契機ともなり、元本は容
75) Dauner-Lieb (▇▇▇▇), S.655; ▇▇▇▇▇▇▇▇ (▇▇▇▇▇▇), S.593; Palandt (Putzo), S.692.
易には減らないとの特徴をもっている。金利の問題は、周辺部をおさえたうえで、多重債務そのものを抑制しなければ解決しがたい性格を帯びている。2006 年改正法は、その一部に踏み込んだが必ずしも全面的なものとはいえない。
全般的な法体系の上でも問題がある。利息制限法が金利の制限のみを規定し、また貸金業法が業務規制をしながらも、その雑則においてみなし弁済を定めたにすぎないことから、わがくにには、必ずしも消費者に特有の消費貸借法と位置づけうるものが存在してこなかった。ほかに、包括的な消費者信用法も存在しない。法を見通し良くする必要があろう。
金利の周辺をおさえた規制は、わがくにでも、かねてから問題となっている手形や期限の利益の喪失約款を利用した高利の仕組みのような種々の脱法的な貸借を防止するうえでも効果的である。とりわけ消費者消費貸借における手形の利用禁止は、現在わがくにでも焦眉の課題である。見通しのよさともれのない体系という観点からは、他の消費者信用と同様に(割賦販売法や特定商取引法)、クーリングオフの導入をも求めるものであろう。すなわち、規制は、一面では▇▇的に(金利やみなし弁済の見直し)、他面では個別の規制を積み重ねるといった、きめの細かさを必要としているのである76)。
76) ⒤ なお、最判平19・2・13 判時1962 号68 頁(第3 小法廷)は、貸主と借主の間で、基本契約が締結されていない複数の貸借において、第1 の貸付に対して利息制限法の制限
を超過する弁済が行われ、過払金が発生し、その後、第2 の貸付による債務が発生した
ときには、①「第1 の貸付けの際にも第2 の貸付けが想定されていたとか、その貸主と
借主との間に第1 貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情のない
限り、第1 貸付け過払金は、第1 の貸付けに係る債務の各弁済が第2 の貸付けの前にさ
れたものであるか否かにかかわらず、第2 の貸付けに係る債務には充当されないと解するのが相当である」とした。また、②「過払金を不当利得として返還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法704 条前段所定の利息の利率は、民法所定の年5 分と解するのが相当である」とした。
①の判断には、過払金の弁済充当を認める範囲が狭いとの、また②の判断には、不当利得の性質に関する疑問がある(すなわち、契約の一部無効のさいの不当利得は、いわゆる給付利得であり、有効な契約の規範目的にそくして清算されるべきであり、利息制限法が適用された場合にもっとも近い解決が図られなければならない。受益者の利得は利息を付して全額返還される)。この裁判例は、従来の裁判例とはやや異質のものであり、事案の特殊性によるものか、それともこれにより最高裁の立場が変動しつつあるかどうかについては、注目の必要がある(後者と即断することはできない)。なお、詳細は別稿にゆずる。
ⅱ 数口の債務の1 つが完済された後の別口債権への充当は、最判昭43・10・29 民集 22 巻10 号2257 頁がかつて肯定したところであり、また、一連の取引における貸付への
充当については、最判平15・7・18 民集57 巻7 号895 頁(第2 小法廷)、最判平15・9・
11(第1 小法廷)、最判平15・9・16(第3 小法廷)があった。
また、2006 年(平18 年)12 月13 日成立(20 日公布)の利息制限法5 条によれば、同一当事者間の金銭消費貸借において複数貸付があったときには、それらの残元本と▇▇本の合計額、同時に複数貸付があったときにはそれら元本の合計額を元本として利息発生の元本とすることが規定された。貸付個数を分断する潜脱を許さないことと同時に、基本契約があるか否かに関係なく、個別か否かも関係なく、そのときにある総元本を基本とすることが明文化されている。
利息制限法第5 条 次の各号に掲げる利息に関する第1 条の規定の適用については、当該各号に定める額を同条に規定する元本の額とみなす。
1 営業的金銭消費貸借(債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借をいう。以下同じ。)上の債務を既に負担している債務者が同一の債権者から重ねて営業的金銭消費貸借による貸付けを受けた場合における当該貸付けに係る営業的金銭消費貸借上の利息 当該既に負担している債務の残元本の額と当該貸付けを受けた元本の額との合計額
2 債務者が同一の債権者から同時に2 以上の営業的金銭消費貸借による貸付けを受けた場合におけるそれぞれの貸付けに係る営業的金銭消費貸借上の利息 当該2 以上の貸付けを受けた元本の額の合計額
ⅲ 他方、最高裁第1 小法廷は、6 月17 日の判決において(6 月判決という)、いわゆるカードローンの基本契約が、同契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には、他の借入金債務が存在しなければこれをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当とした。
また、第1 小法廷は、7 月19 日判決において、同一の貸主と借主の間で基本契約に基づかずに切替え及び貸増しとしてされた多数回の貸付けに係る金銭消費貸借契約が、利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解した。基本契約の存在は決定的な理由たりえない。
平15 年判決では充当が原則であり、6 月判決でも、新たな借入金は、契約の構造上、充当される合意が包含されているとされており、つまり充当が原則なのである。これに対して、2 月判決は、特段の事情のないかぎり、充当されないというのである。両者の関係については別稿に譲るが(消費者法ニュース73 号で予定、判評585 号9 頁)、充当法理は判例法理の中心をなすものであり、基本契約の存否や契約の分断といった技術的区別により左右されるべきではない。2 月判決は、当該の契約の特質にもとづく例外的なものと位置づける必要がある。
平15 年の3 つの判決が事例判決の形式をとっているのは(その射程は広いにもかかわらず)、充当のための定式を立てると、潜脱の口実を作らせるからである(これにつき、▇▇「判批」民商129巻6号853頁参照)。「基本契約」は、事例として言及されただけで、これが充当を制限するための要件となっているわけではないのである。2 月判決は、その趣旨を見過ごしている。後者は、当該の事件に限定される事例判決と解さるべきものにすぎない。最高裁の判例の潮流は、平15 年判決、6 月、7 月判決の線上にある。
改正貸金業法における改正のプロセス概観
[1] | [2] | [3] | [4] | [5] | |
⑴貸金業の適正化 | 貸金業協会☆ | 参入規制 | 参入規制 | ||
⑵過剰貸付の抑制 | 取立規制強化 | 指定信用 | 総量規制 | ||
⑶金利体系の適正化 | 上限金利* | ||||
⑷その他 | 国の責務 | やみ金対策 | やみ金対策 |
☆貸金業協会の自主規制の強化、行為規制の強化、マンスリーステートメント、書面交付の電子化、行政処分の強化、業務改善命令の導入。
*上限金利の引下げ、みなし弁済の廃止、金利引下げの補助規定、日賦貸金業者・電話担保金融の廃止、媒介手数料の制限など。
[1](第1 次施行・公布日から)
[2](第2 次施行・公布から1 か月後)
[3](第3 次施行・本体施行、公布から1 年以内)
[4](第4 次改正・施行から1 年半以内)
[5](第5 次施行・施行から2 年半以内。ただし、公布からおおむね3 年を目途)。詳細については、Ⅰ2参照。
付・現代化法試訳(消費者消費貸借)
以下は、現代化法による関連条文である(2002 年改正を含む。現代化法の翻訳については、▇▇・前掲書(前注4)493 頁以下、▇▇▇・契約法における現代化の課題(2002 年)225 頁以下参照。ただし、後者は、2002 年8 月の改正を含まない)。
488 条 消費貸借契約における契約類型上の義務
⑴ 消費貸借契約にもとづいて、貸主は、借主に対して、合意された限度で金銭を利用させる義務をおう。借主は、義務のある利息を支払い、利用した金額を期限に返済する義務をおう。
⑵ 約定利息は、別段の定めがない限り、1 年を経過するごとに、また1 年経過前に返済するべき場合には、返済の時に支払わなければならない。
⑶ 消費貸借の返還の時期を定めていないときには、満期は、貸主または借主が解約告知をした時に到来する。解約告知のための期間は、3 か月とする。利息が義務づけられていないときには、借主は、解約告知なしでも返済する権利を有する。
489 条 借主の通常の解約告知権
⑴ 以下の場合に、借主は、一定の期間にわたって固定利率(▇▇▇▇▇▇ Zinssatz)が合意された消費貸借契約の全部または一部を解約告知することができる。
⒈ 利息の拘束(Zinsbindung 利息の支払義務の生じる状態)が返済のための特定の期日の前に終了し、かつ利率について新しい合意が行われないときには、 1 か月の解約告知の期間を設けることにより、利息の拘束が終了する日の経過時に解約告知をすることができる。1 年以内の一定の時期に利率の改定が合意されているときには、借主は、利息の拘束が終了する日から解約告知をすることができる。
⒉ 貸借が消費者に供与され、それが土地担保権または船舶担保権により担保されていないときには、全額を受領して6 か月を経過した後、3 か月の解約告知の期間を設けることにより、解約告知をすることができる。
⒊ いずれの場合においても、全額を受領して10 年を経過した後には、6 か月の解約告知期間を設けることにより、解約告知をすることができる。貸金を受領した後に、返済時期または利率について新しい合意がされた場合には、全額払渡の時点に代えて、この合意の時点を基準とする。
⑵ 借主は、変動利率を伴う消費貸借契約を、3 か月の解約告知の期間を設けることにより、いつでも解約告知をすることができる。
⑶ 借主が、解約告知が効力を生じた後2 週間以内に、負担する額につき返済しない場合には、1 項または2 項による借主の解約告知は、効力を生じなかったものとみなす。
⑷ 1 項および2 項による借主の解約告知権は、契約により排除し、またはその要件を加重することができない。連邦、連邦の特別財産、州、市町村、市町村の団体、ヨーロッパ共同体または外国の地域団体に対する消費貸借については、
この限りではない。
490 条 特別の解約告知権
⑴ 借主の財産関係、または消費貸借のために供した担保の価値がいちじるしく悪化し(eine wesentliche Verschlechterung)、あるいは悪化するおそれがあり、それにより、担保を換価しても貸金の返済が危うくなる場合には、貸主は、貸金の払渡(Auszahlung)前にはつねに、払渡後には、原則として〔解約のための〕告知期間を定めることなく(fristlos)消費貸借契約を解約告知することができる。
⑵ 消費貸借契約において確定期間につき固定利率が合意され、かつ、土地担保権あるいは船舶担保権により担保されている場合において、借主は、489 条1
項2 号の期間のもとで、その消費貸借契約を返済期前に解約告知をすることができる。ただし、借主の正当な利益(berechtigtes Interesse)に有益な場合に限る。このような利益があるのは、とりわけ、借主が消費貸借の担保に供した物を他の用途のため使用(Verwertung〔とくに換価〕)する必要があるときである。借主は、返済期前の解約告知(vorzeitige Kündigung)によって貸主に生じた損害を賠償しなければならない(Vorfälligkeitsentschädigung, 履行期前の損害の賠償)。
⑶ 313 条および314 条の規定は、これにより影響されない。
491 条 消費者消費貸借契約
⑴ 事業者が貸主で消費者が借主である場合の有償の消費貸借契約(消費者消費貸借契約)では、2 項と3 項の規定の適用を除き、次条以下に定める規定を補充的に適用する。
⑵ 次の各号のいずれかにあたる消費者消費貸借契約については、以下に定める規定を適用しない。
⒈ 支払われるべき消費貸借額(Nettodarlehensbetrag, 消費貸借の正味金額)が200ユーロを超えないとき。 〔Bagatelldarlehen〕
⒉ 使用者が自分の労働者との間で、市場の通常の利率以下の利息について
合意したとき。 〔Arbeitgeberdarlehen〕
⒊ 公法上の認可決定または公的予算の出捐による居住用土地および都市計画上の助成において、直接、助成資金を委託された公法上の機関と消費者との間で、市場の通常の利率以下の利率が定められたとき。 〔Förderdarlehn〕
⑶ 次の場合にも、適用しない。〔2002 年改正(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)〕
⒈ 358 条2 項、4 項、5 項、および492 条から495 条までの規定は、民事訴訟法の規定にもとづき作成された裁判上の調書に記載された、または▇▇証書が作成された消費者消費貸借契約〔に適用しない〕。ただし、その調書または▇▇証書が、①年利、②契約締結時に考慮された消費貸借の費用、ならびに③年間の利息または費用を変更しうる要件を含んでいる場合に限る。
〔gerichtliches Protokoll〕
⒉ 358 条2 項、4 項、5 項および359 条は、有価証券、外国為替、デリバティブまたは貴金属を取得するための融資に利用される消費者消費貸借契約〔に適用しない〕。 〔Spekulationsgeschäft〕
492 条 書面の方式、契約内容
⑴ 消費者消費貸借契約は、より厳格な方式が定められていない限り、書面によって締結しなければならない。電子的方式による(in elektronischer Form)契約の締結はできない。書面の方式は、申込と承諾が契約当事者によって各別に書面によって表示されることでたりる。貸主の表示が自動支払機(automatische Einrichtung)を利用して行われる場合には、当該表示は署名を必要としない。借主により署名されるべき契約上の表示には、以下のことを示さなければならない。
⒈ 消費貸借の純〔正味の〕金額、場合によってはその上限。
⒉ 〔分割払の〕全額が、消費者消費貸借契約の締結時に全期間を通じて額によって確定している場合には、借主によって消費貸借の弁済、利息その他の費用として支払うべき分割払の総額。分割払により支払う条件が変動する消費貸借の場合には、契約締結時に基準となった消費貸借の条件を基礎とした全額を示さ
なければならない。〔2002 年改正(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)で一部削除〕
⒊ 消費貸借の返済の方法、または、あらかじめこれに関する合意をしていないときには、契約終了に関する定め。
⒋ 消費貸借の利率およびその他の費用のすべて。費用については、その額が判明している限り個別に示さなければならず、その他の場合には、借主の負担に帰せられるべき仲介費用があればこれを含めて、その根拠を示さなければならない。
⒌ 実効年利、または利率その他の金額決定の要素の変更が留保されている場合には当初の実効年利。当初の実効年利とともに、どのような要件のもとで金額決定要素が変更されるか、およびどれだけの期間、支払の欠損または融資へのプレミアム(Zuschlag)から生じる負担が、実効年利の算定にあたりどこまで差引計算(verrechnen)されるかを、あわせて表示しなければならない。
⒍ 未払債務その他の保険の費用。ただし、その消費者消費貸借契約に関連して取り決めるものに限る。
⒎ 供与されるべき担保。
(1a)1 項5 文2 号とは異なり、最高限度額までの請求〔利用〕が任意である消費貸借および不動産消費貸借契約では、総額は記載されない。不動産消費貸借契約は、貸付(Zurverfügungsstellung)が不動産担保権による担保に依存し、また不動産担保権によって担保される消費貸借契約およびそのつなぎ融資
(Zwischenfinanzierung)において通常行われる条件で行われる消費貸借契約をいう。建築貯蓄金庫(Bausparkasse)に関する法律7 条3 項から5 項による担保
を除き、不動産担保権による担保も同様である。〔2002 年改正(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)で追加〕
⑵ 実効年利とは、消費貸借の正味の金額の百分率により示される1 年あたりのすべての負担をいう。実効年利および当初の実効年利の算定には、価格表示に関する法律(Verordnung zur Regelung der Preisangaben)6 条を基準とする。
⑶ 貸主は、借主に対して、契約の表示の写しを与えなければならない。
⑷ 1 項および2 項は、借主が消費者消費貸借契約を締結するために授権した
代理にも適用する。第1 文の規定は、訴訟代理権および公証人による公証をうけた代理については適用しない。
493 条 当座貸越信用供与
⑴ 492 条の規定は、信用供与機関(Kreditinstitut)が、借主に、当座口座(laufen- des ▇▇▇▇▇)への一定額の貸越を認める消費貸借には適用しない。ただし、利息以外には、請求される消費貸借に対して費用が計算されず、かつ3 か月以内には利息が付せられないものに限る。* 信用供与機関は、このような消費貸借の貸越
(Inanspruchnahme)の前に、借主に対して以下の事項を通知しなければならない。
⒈ 消費貸借の上限
⒉ 通知の時点において適用される年利
⒊ 利息が変更される条件
⒋ 契約終了に関するルール
第2 文(* 以下)1 号から4 号までに定める契約上の条件は、遅くとも消費貸借の最初の利用=貸越(Inanspruchnahme)をした後に、借主に確認しなければならない。また、借主には、消費貸借の利用=貸越の間は、年利の変更があるごとに通知しなければならない。第3文にもとづく確認および前文にもとづく通知は、書面により行われなければならない。通知は、口座の通知書(Kontoauszug)への表示によることもできる。
⑵ 信用供与機関が当座口座の貸越を〔事後的に〕認め、かつその口座が3 か月以上にわたり貸越しとなる場合には、信用供与機関は、借主に、年利、費用およびこれに関する変更を通知しなければならない。この通知は、口座の通知書への表示によることもできる。
494 条 方式欠缺の法律効果
⑴ 書面の方式が全体的にみて遵守されず(insgesamt nicht eingehalten ist)、または492 条1 項5 文1 号から6 号までに定められた記載を欠くときには、消費者消費貸借契約およびこれを締結するために消費者から授与された代理権は、無効
とする。
⑵ 前項に定める〔方式の〕欠如にかかわらず、消費者消費貸借契約は、借主が貸借の〔金銭の〕支払をうけ、またはその支払を請求する限りでは、有効とする。ただし、その消費者消費貸借契約の基礎とする利率(492条1項5文4号)は、その記載、実効年利または当初の年利の記載(492 条1 項5 文5 号)あるいは総額の記載(492 条1 項5 文2 号1a〔2002 年改正で追加〕)がない場合には、法定利率に引き下げられる。記載のない費用は、借主の負担とならない。合意された分割返済金(Teilzahlungen)は、引き下げられた利息または費用を考慮して、新たに計算しなければならない。どのような要件のもとで、価格決定の要因が変更されるかが記載されていないときには、これを借主に不利に変更することはできない。担保は、これにつき記載のない場合には請求できない。消費貸借の正味金額が5 万ユーロを超えるときには、この限りではない。
⑶ 実効年利または当初の実効年利がいちじるしく低く表示されているときには、消費者消費貸借契約の基礎となる利率は、実効年利または当初の実効年利としていちじるしく低く記載された利率まで減額される。
495 条 撤回権
⑴ 消費者消費貸借契約において、借主は、355条にもとづく撤回権を有する。
⑵ 借主が、契約上、解約告知期間を要することなくいつでも、かつ追加の費用なしに返済できるときには、493 条1 項1 文にいう消費者消費貸借契約には、前項の規定は適用されない。
〔2002 年8 月1 日改正(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)で、2 項削除、3
項が2 項となる。〕
496 条 抗弁の放棄、手形および小切手の禁止
⑴ 借主が貸主に対して有する抗弁を404 条により譲渡債権者〔Abtretungs- gläubiger, 債権の譲受をうけた債権者〕にも対抗し、または貸主に対して借主に帰属する債権をもって406 条により譲渡債権者に対しても相殺する抗弁のための権利を放棄する合意は、無効とする。
⑵ 借主は、消費者消費貸借契約による貸主の請求権について手形上の拘束を生じさせる義務をおわない。貸主は、消費者消費貸借契約から生じる自分の請求権を担保するために、消費者から小切手をうけ取ってはならない。借主は、貸主に対し、1 文または2 文の規定に反して交付された手形または小切手の返還を、いつでも請求することができる。貸主は、手形または小切手の交付によって借主に生じたすべての損害につき責任をおう。
497 条 遅延利息の扱い、一部給付の充当
⑴ 借主は、消費者消費貸借契約にもとづいて負担した支払を遅滞したときには、負担した金額(geschuldeten Betrag, 元本)につき288条1項により利息〔288条1 項の遅延利息は、基礎利率に5% をプラスしたもの〕を支払わなければならない。これは、不動産消費貸借(Immobiliardarlehensverträge)には適用されない。〔2002 年改正(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)〕この契約では、遅延利息の利率は、その年の基礎利率に2.5%をプラスしたものとする。個別の場合において、貸主は、損害がより高いことを、また、借主は、損害がより少ないことを、それぞれ証明することができる。
⑵ 遅滞が生じた後に発生した利息は、特別の(分離した)口座(gesondertes ▇▇▇▇▇)に記帳されなければならず、債務額またはその他の債権者の債権とともに当座勘定(Kontokorrent)の中に入れてはならない。この利息については、 289 条2 文が適用されるが、貸主は損害賠償を法定利率(246 条)までしか請求できない。
⑶ 借主による支払が、弁済期に達した全債務の返済にたりないときには、 367 条1 項の規定によらずに、まず権利行使の費用に、次にその他の債務額(1 項)に、最後に利息(2 項)に充当する。貸主は、一部の支払を拒絶することができない。消費貸借の返還および利息請求権の消滅時効は、1項による遅滞の発生後、 197 条1 項3 号から5 号までに掲げる事由による〔権利の〕確定まで停止する。ただし、その発生から10年を超えない。利息の請求権には、197条2項は適用しない。 1 文から4 文は、支払が執行名義(Vollstreckungstitel)により行われ、執行の主たる債権が利息〔の支払〕を内容とする場合には、適用されない。
498 条 分割返済の消費貸借における全額の弁済期の到来〔期限の利益の喪失〕
⑴ 借主の支払遅滞を理由として、貸主は、分割払で返済される貸借において、以下の場合に、消費者消費貸借契約を解約告知することができる。
⒈ 借主が、少なくとも2 回連続して分割支払の全部または一部を遅滞し、かつ少なくとも〔額面金額または分割支払額の〕10%につき、消費者消費貸借契約の期間が3 年を超える場合には、額面金額または分割支払額の5%につき、遅滞となること、および
⒉ 貸主が、借主に対し、期間内に支払がなされない場合には残債務の全額を請求する旨の表示をして、残額支払のために2 週間の期間を設定し、その期間が徒過されたこと。〔ここまで、1 項1 文〕
貸主が、借主に対して、遅くても期間を設定する時までに、合意により交渉する機会を与えなければならない。〔1 項2 文〕
⑵ 貸主が消費者消費貸借契約を解約告知した場合には、利息およびその他の時の経過に応じた消費貸借契約の費用に関する残債務は、段階的な計算(bei staffelmäßiger Berechnung)によると、解約告知が効力を生じた後の期間に相当する分だけに減額される。
⑶ 1 項および2 項は、不動産消費貸借契約には適用されない。〔2002 年改正
(Gesetz v. 23. 7. 2002, BGBl. I S.2850)〕
499 条 支払猶予、その他のファイナンス支援措置
⑴ 358条、359条、492条1項から3項までおよび494条から前条までの規定は、 2 項および3 項の規定の適用を妨げることなく、事業者が消費者に対して3 か月を超える有償の支払猶予その他の有償ファイナンス支援措置を与える場合に準用する。
⑵ ファイナンスリース契約、および分割払と引換えに、一定の物の引渡または他の一定の給付の履行を目的とする契約(分割払取引)については、3 項の規定の適用を妨げることなく、500 条から504 条までに定める特則を適用する。
⑶ この款〔499 条‒ 504 条のファイナンス支援措置に関する部分〕の規定は、
491 条2 項および3 項に定める範囲において適用しない。分割払取引においては、
491 条2 項1 号に掲げる消費貸借の正味の金額を分割払価格と読み替えるものとする。
500 条 ファイナンスリース契約
事業者と消費者との間におけるファイナンスリース契約については、358 条、 359 条、492 条1 項1 文から4 文まで、492 条2 項および3 項、495 条1 項ならびに
496 条から498 条までの規定のみを準用する。
501 条 分割払取引
事業者と消費者との間における分割払取引については、358 条、359 条、492 条 1 項1 文から4 文までおよび492 条2 項および3 項、495 条1 項ならびに496 条から
498条までの規定のみを準用する。その他については、次条以下の規定を適用する。
502 条 分割払取引における必要的記載事項、方式欠缺の法律効果
⑴ 分割払取引の場合に、消費者により署名された契約の表示は、次の事項を示さなければならない。
⒈ 現金支払価格
⒉ 分割払価格(初回金および消費者が支払うべきその他の分割払返済額の総額、利息、その他の費用を含むものとする)
⒊ 個々の分割払金額、回数および支払時期
⒋ 実効年利
⒌ 当該分割払取引に関連して定められた保険の費用
⒍ 所有権留保その他の供すべき担保の合意〔ここまで、1 項1 文〕
事業者が分割払と引換えにのみ物を供給し、または給付を行うときには、現金支払価格および実効年利の表示を要しない。〔1 項2 文〕
⑵ 通信取引における分割払取引の場合には、1 項、492 条1 項1 文から4 文および492 条3 項の要件は、適用しない。ただし、1 項1 文1 号から5 号に記載した
事項が、個別の分割払の額の例外〔額の変動〕とともに、消費者に、適時に書面の方式によって通知され、消費者が契約締結前にその記載事項を詳細に知ることができるときに限る。
⑶ 492 条1 項1 文から4 文までの書面の方式が遵守されず、または1 項1 文1
号から5 号までに定める記載事項のいずれかを欠くときには、分割払取引は、無効である。1 文に対する瑕疵にかかわらず、消費者に物が引渡され、または給付が履行されたときには、分割払取引は有効となる。分割払価格または実効年利の表示がないときには、現金支払価格には、法定利率まで利息を付するものとする。現金支払価格が示されず、疑わしいときには、市場価格を現金支払価格とみなす。担保の設定が記載されない場合には、それを請求することができない。実効年利または当初の実効年利が〔事実と異なり〕低く表示されているときには、分割払価格は、実効年利または当初の実効年利として低く表示されたパーセントまで引き下げられる。
503 条 分割払取引における返還権、解除
⑴ 495 条1 項によって消費者に認められた撤回権に代えて、消費者に、356 条による返還権(Rückgaberecht)を認めることができる。
⑵ 事業者は、498 条1 項の要件のもとでのみ、消費者の支払遅滞を理由として分割払取引を解除することができる。消費者は、事業者に対して、契約により生じた費用も償還しなければならない。返還すべき物の使用の対価の算定には、その間に生じた価値の減少(Wertminderung)を考慮しなければならない。事業者が分割払取引にもとづいて引渡した物を取戻したときには、これを解除権の行使とみなす、ただし、事業者が消費者との間で、引揚げ(Wegnahme)時における物の通常の売買価値を消費者に対して補償するよう合意している場合は、この限りではない。4 文は、物の供給に関する契約が消費者消費貸借契約と結合し
(358条2項)、かつ貸主が物を回収する場合に準用する。解除がなされたときには、貸主と消費者の間の法律関係は、2 文および3 文により定める。
504 条 分割払取引における期限前の支払
消費者が、分割払取引から生じる義務を期限前に履行した場合には、分割支払価格は、利息やその他の時の経過に応じて生じる(laufzeitabhängige)費用のうち、段階的な算定によれば期限前に履行がなされた後の期間に相当する分だけ減じられる。現金支払価格が、502 条1 項2 文によって表示されない場合には、法定利率(246 条)を基礎とする。消費者が履行期前に自分の義務を履行した場合であっても、事業者は、当初予定された期間のうち最初の9 か月分について、利息その他の時の経過に応じて生じる費用を請求することができる。
505 条 分割供給契約
⑴ 事業者との契約において、消費者の意思表示が契約の締結に向けられ、かつ以下のいずれかにあたる場合には、消費者は、2 文の場合を除き、355 条による撤回権を有する。
⒈ 関連するものとして売却された複数の物(mehrere als zusammengehö- rend verkaufter ▇▇▇▇▇▇)を分割して引渡し、かつ物全部に対する代金を分割して(in Teilzahlungen)支払う場合、または
⒉ 同種の物を定期的に(regelmäßige)引渡す場合、または
Ṣ 物の回帰的(wiederkehrenden)取得または引渡を義務づける場合。 491 条2 項および3 項に定めた範囲では、これは適用されない。491 条2 項1 号
に定めた正味の消費貸借金額は、消費者による最初の解約告知時までに支払われる分割払の全額とする。
⑵ 1項の分割供給契約は、書面による方式を要する。1文の規定は、消費者が、契約締結時にさいし普通取引約款を含む契約条項にアクセス、再生可能な方式で
(wiedergabefähiger Form)保存できる場合には、適用しない。事業者は、消費者に対し、書面による方式により契約内容を通知しなければならない。
506 条 異なった合意の効力
491 条から505 条の規定は、消費者の不利に変更することはできない。これらの規定は、それが、異なった方法で変更されたときにも適用される(durch
anderweitige Gestaltungen umgangen werden)。
507 条 生業的貸付(Existenzgründer)への適用
491 条から506 条は、自然人に対して、かつ営業的なまたは独立した職業的な活動のために、消費貸借、支払猶予、またはその他の金融支援措置が与えられ、またはこれらの目的のために分割引渡の契約(Ratenlieferungsvertrag)が締結された場合にも、適用される。ただし、正味の消費貸借額または現金価格が5万ユーロを超える場合には、この限りではない。
508 条‒ 515 条は削除
