Q1 私は今春卒業予定の学生です。ある企業の採用試験に合格し内定通
Q1
労働契約・就業規則
Q1 私は今春卒業予定の学生です。ある企業の採用試験に合格し内定通
知を受け、会社に入社誓約書を提出しました。ところが、先日、会社から採用ができないという内定取消しの連絡がありました。希望していた会社だったので入社して働きたいのですが、働くことはできないのでしょうか。
A
A 企業が採用内定通知を行い、それに対して学卒予定者が誓約書を提出するなどの
手続きをとれば、その時点で労働契約が成立したものと解されます。
企業からの採用内定取消しは解雇と同じ扱いになり、取消しの理由が内定当時知ることが出来ず、また知ることができないような事実であって、社会通念に照らして相当であると認められる場合に限られています。もし、取消しの事由が社会通念上相当として是認することができないものである場合には無効となりますので、まずは理由を確認し、企業に対して入社日からの就労を求めてみましょう。
就職活動において、新規学卒者が企業の求人募集に応募し採用試験や面接を受け、採用決定すると企業は応募者へ内定通知を行い、これに対する学生の承諾により、特別な別段の合意がない限り労働契約が成立します。この手続きは企業によって異なりますが、企業から内定者へ「内定通知書」が発送され、内定者は「承諾書」や「誓約書」などの書類を企業へ提出します。
高校生や大学生などの新卒者の場合、働き始める時期を卒業後の 4 月からとした労働契約が成立しているとされます。このような契約を「始期付解約権留保付労働契約」
(仕事を始めるまでの期間に企業側が一定の範囲で契約を解約する権利を持っている労働契約)といいます。
内定期間は実際に働いていませんが、労働契約は成立しているので、企業が内定を取消すことは労働契約の解約であり、解雇の場合に準じ、客観的に合理的な理由が必要であり、労働基準法第 20 条による解雇の予告が義務付けられています。
内定の取消しは、採用内定当時に知ることができず、また知ることが期待できない 事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当とされるものに限るとされています。たとえば、学校を卒業できない、健康状態が悪化して仕事ができない、履歴書の不実記載、犯罪行為等の理由が考えら れます。
業績の悪化を理由とした内定取消しについては、経営悪化が新規採用を不可能ないし困難とするようなものであり、かつ、この経営悪化が採用内定当時予測できないものであった場合に限られます。また国は企業に対して、不況を理由に採用内定を取消さないよう最大限の経営努力をはらう等、あらゆる手段を講ずるように定めています
(新規学校卒業者の採用に関する指針)。やむを得ず、新卒者の内定取消しを行う場合は、あら
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かじめハローワークや学校長に通知する必要があります。
Q2
Q2 採用試験と面接を無事に終え、入社することが出来ました。ハロ
ーワークの求人票には賃金が 18 万円と記載してありましたが、入社時に
もらった労働条件通知書には賃金が 15 万円となっていました。面接時に
は賃金を 15 万円にするような話は聞いていません。求人票の内容と労働
条件通知書の内容に違いがあっても良いものでしょうか?
A
A 求人票の内容は、使用者が「このような条件で雇いたい」と不特定多数の求職者
に示す労働条件であって、個々の労働者に対応するものではありません。面接や採用試験の結果を考慮して、時には両者で話し合って決めることもありますので、求人票が必ずしも実際の労働条件になるとは限りませんが、明示された労働条件に納得いかない場合は、ハローワークもしくは労働基準監督署へ相談しましょう。
使用者には、労働者の募集に際し、求人票に労働条件の明示義務が課せられています(職業安定法第 5 条)。また、使用者には労働契約の締結に際し、賃金、労働時間そ
の他労働条件を書面などでの明示義務が課せられています(労働基準法第 15 条)。
使用者が変更内容を明示したとしても、変更明示が適切に行われていない場合 や、当初の明示が不適切だった場合(虚偽の内容や、明示が不十分な場合)は行政による指導監督や罰則等の対象となる場合があります。
判例では、「xx性、重要性、公共性等からして、求職者は、当然、求人票記載事項が雇用契約の内容になると考えるし、求人票に記載した公共職業安定所の紹介により成立した労働条件の内容は求人票記載事項を明確に変更し、これと異なる合意をする等特段の事情が無い限り、求人票記載事項の通り、労働条件が定められたと解すべきである。」(S58.10.19 大阪地裁、xxx工業事件)と判断をしています。
しかし一方で、「募集事項については、あくまで採用者側からの申込みの誘因に過ぎず、求人票に記載された事項がそのまま労働条件になることを保障したものでない。」(S58.12.19 東京高裁、八州測量賃金請求事件)としている判例もあります。
また、労働契約は、賃金その他の労働条件を示して、その締結を申込み、これに対して相手方が承諾することによって成立します。したがって、求人票と異なる内容の労働契約を締結するためには、改めてその内容を示して締結を申込み、相手方の承諾を受ける必要があります。
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これらのことから、求人票が必ずしも実際の労働条件になるとは限りませんが、事業主は明示する労働条件が変更される場合は、変更内容について可能な限り速やかに労働者へ知らせるよう配慮が必要です。
Q3
Q3 この度、ある会社から内定通知が届き就職が決まりました。入社に
あたり、入社承諾書、誓約書、身元保証書が同封してあり提出するように書いてありました。それぞれ内容がよく分からないのですが、必ず提出しない
といけないのですか。
A
A 会社が内定者に、入社承諾書、誓約書、身元保証書の提出を求めることは一般的
に行われています。これらは、法的に必ず必要な書類とは定められていませんので、提出させるかどうかは会社の判断によります。また、会社の就業規則等に採用時の提出書類が定められ、その内容に違法性がなく合理的なものであれば、労働契約の内容となり、提出の義務があると考えられています。
入社時に必要な書類の提出をしないと、採用取消し等の不利益を受ける可能性があるので注意しましょう。
■ 入社承諾書・・・所定の時期に間違いなく入社すること、場合によっては入社を取り消される可能性もあること(卒業出来なくなったとき、健康状態の悪化で就業困難となったとき、経歴詐称が発覚したとき、違法行為で逮捕・起訴されたとき等)を了解した上で、入社の意思表示をするもの。
■ 誓約書・・・会社が社員に対して当然守ってもらわなければいけない事項を示して守ることを約束させ、社員としての自覚を促すもの(会社の信用を損ねる行為をしないこと、機密事項等を外部にもらさないこと等)。
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■ 身元保証書・・・社員が会社に損害を与えた場合に社員本人と連帯して責任を負うことを会社に約束するもの。身元保証法で身元保証契約の期間や賠償範囲が制限されています。身元保証契約の期間について定めが無ければ 3 年、定めがある場合の最長は 5 年。また、無制限に損害額全てを負担するものではありません。
Q4
Q4 1 年契約の契約社員として今の会社で 4 年働いています。同じ会社
で 5 年を超えて働けば正社員になれると聞いたのですが、本当ですか。
A
A 有期労働契約で働いている方が「無期労働契約への転換」の申込みをすると、期間の
定めのない無期労働契約になりますが、労働条件(職務、勤務地、賃金、労働時間)などは労働協約,就業規則や個々の労働契約に別段の定めがない限り、直前の有期労働契約のものと同一となります。したがって、5 年以上働けば無期契約の労働者となれますが、正社員の労働条件が適用されるわけではありません。
有期労働契約で働くパート,アルバイト,契約社員等が、契約の更新を繰り返して通算 5 年を超えて働いた場合には、労働者が申込みをすれば期間の定めのない労働
契約(無期労働契約)に転換することができます(労働契約法第 18 条)。ただし、法律では、期間の定めをなくすだけで、労働条件を正社員並みに引き上げることまでは要求していません。
【無期転換の要件と効果】
① 同一の使用者との間に締結されている
同一かどうかは、事業所単位ではなく、法人の場合は法人単位、個人事業主の場合は当該個人事業主単位で判断。
② 2 以上の有期労働契約があること
有期労働契約が 1 回以上更新されている場合
③ 通算契約期間が 5 年を超える
2013 年(平成 25 年)4 月 1 日以降に契約したものが対象
■契約期間が1年の場合の例
無期転換の申込みができる期間
▲ 転換
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 契約
1年 1年 1年 1年 1年 1年
無期労働契約
【転換のための申込み方法】
転換
申込
有期労働契約の通算期間が 5 年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間に無期転換の申込みをすることができます。申込みをするかどうかは労働者の自由です。
無期転換の申込みをすると使用者が申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約がその時点で成立します。無期に転換されるのは、申込み時の有期労働契約が終了する翌日からです。
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なお、更新時に無期転換を申込まないことを契約更新の条件とすることはできません。
【契約のない期間がある場合】
【契約の無い期間がある場合の例】
無期転換の申込
みができる期間
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
1年
契約の無い期間
(6か月以上)
契約期間は通算できず、
リセットされる
クーリングされる契約期間
▲ 転換
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 更新
▲ 契約
契約がない期間(1 年契約の場合は 6 か月以上)が間にあると、それまでの契約期間はリセットされます(クーリング期間)。たとえば 1 年契約を1回更新して 2 年間働いた後、6 か月間契約のない期間をはさみ、後にまた同じ会社で働いたとしても、はじめの 2 年間は通算契約期間にカウントされませんので注意が必要です。
契約期間 契約の無い期間 | |
2 か月以下 | 1 か月以上 |
2 か月超~4 か月以下 | 2 か月以上 |
4 か月超~6 か月以下 | 3 か月以上 |
6 か月超~8 か月以下 | 4 か月以上 |
8 か月超~10 か月以下 | 5 か月以上 |
10 か月超 | 6 か月以上 |
【無期転換ルールの特例】
〇研究者、教員等に関する特例
有期労働契約を締結している大学等・研究開発法人の研究者、教員等については、労働者の無期転換申込権が発生するまでの期間は 10 年です。
〇専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特例
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「一定の専門的知識等を有する有期雇用の労働者」「定年後に有期契約で継続雇用される高年齢者」の場合は、労働契約法の無期転換の原則によらず、一定期間は無期転換申込権が発生しないこととする特例の対象となります。ただし、特例が適用されるためには、当該企業等が適切な雇用管理を実施するための計画を策定し、都道府県労働局長の認可を受ける必要があります。
Q5
Q5 希望する会社に、正社員として就職することが決まりました。会社の
就業規則によると、入社 6 か月間は試用期間でその後本採用になります。試用期間中に適性がないとみられたら、採用を取り消されるらしいと聞
き不安です。試用期間と解雇との関係について教えてください。
A
A 試用期間中も労働契約は成立しています。解雇は、客観的に合理的な理由が必要
ですが、試用期間中は通常の解雇よりやや広い範囲で解雇が認められています。「辞めてくれ」「本採用はしない」と言われた場合は、理由を確認しましょう。
また、試用期間中でも、14 日を超えて雇用されている場合は、労働基準法に基づく解雇予告が必要です。
試用期間とは、労働者の勤務態度、能力などを評価して正式に採用するかどうかを会社が判断するための期間で、契約書に期間を明示し、就業規則にも規定しておく必要があります。
期間の長さについては特に決まりはなく、1 か月から 6 か月の期間を設けている会社が多いようです。この期間は、使用者が雇用を継続することが適当でないと判断した場合に、解雇または本採用を拒否する解約権が留保されている(解約権留保付労働契約)ので、通常の解雇よりやや広い範囲で解雇が認められています。例えば、採用時の面接や応募書類では分からなかった事実が試用期間中に分かった場合、その事実によって本採用を拒否することが客観的にみて相当である場合です。
ただ、試用期間中も労働契約は成立しているので、労働基準法などの労働関係法が適用され、自由に解雇できるわけではありません。試用期間中の解雇と試用期間満了時の本採用拒否には、通常の解雇と同じ理由と処置が必要となります。
【試用期間中に判断基準とされるもの】
① 勤務成績(能力) ② 勤務態度 ③ 健康状態 ④ 出勤率
⑤ 協調性 ⑥ 提出書類の不備(経歴詐称) など
本採用を拒否する場合、使用者側も全く何も注意や指導・教育をせずに採用を拒否するのは問題です。試用期間中にどれだけの指導や教育をしたのか、それにもかかわらず改善がされなかったのか、など慎重に判断しなければなりません。
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また試用期間中であっても、14 日を超えて雇用されている労働者を解雇する場合や、試用期間満了時の本採用拒否の場合には、解雇の手続きに沿って対応することが必要です。30 日以上前に予告するか、平均賃金の 30 日分以上の解雇予告手当を支払うこととなります(労働基準法第 20 条)。
Q6
Q6 自分の職場の就業規則を見たことが無いのですが、これは労働法的
に問題ないのですか?
A
A 相談者の会社が、就業規則を作成されているのであれば、周知義務違反となりま
す。また、合理的な労働条件を定める就業規則が労働者に周知されている場合、その労働条件が契約の内容となり、労働者は遵守する義務を負います。
就業規則とは、労働者がその会社で就業するにあたっての労働条件(勤務時間、休日・休暇、賃金など)や、職場で守るべき規律などを具体的に定めたルールブックで、常時 10 人以上(パート・アルバイトも含む)の労働者がいる職場は、就業規則を作成しなければなりません。またその就業規則を、事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を添えて、労働基準監督署長へ届け出なければいけません(就業規則を変更した場合も同様)。さらに、作成した就業規則は労働者に周知しなければいけません(労働基準法第 89.90.92.106 条)。
【就業規則に必ず記載しなければならない事項】
1. 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇に関する事項
2. 賃金の決定、計算・支払方法、賃金締切及び支払時期、昇給に関する事項
3. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
*この他、退職手当、賞与等に関する規定があれば記載が必要です。
【周知方法】
◼ 労働者へ書面で交付
◼ 職場の見やすい場所への掲示、備付け
◼ パソコンにデータを入れておき、いつでも閲覧できるようにしておく
就業規則は労働基準監督署長への届け出だけでは足らず、労働者に周知して初めて効力を持ちます。周知がされていない場合には、労働基準法第 120 条 1 号に定める 30万円以下の罰金刑にも該当することになります。
“大事な就業規則なので、会社の金庫に保管しておく”のでは周知になりません。周知を怠ると、せっかく作成した就業規則は効力を生じないことになるので注意しましょう。
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また、労働者は就業規則をきちんと確認して、ルールに沿った労務提供を行いましょう。
Q7
Q7 正社員には通勤手当が支給されますが、パートとして正社員と同じ
仕事をしている私には支給されません。働き方改革では、“同一労働同一賃金”と言われていますが、何が変わるのでしょうか?
A
A 同じ企業で働く正社員とパートなどの非xx雇用労働者との間で、基本給や賞与、
手当などあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることは禁止されます(「パートタイム・有期雇用労働法」)。さらに、2020年4 月(中小企業は 2021 年 4 月)から、非xx雇用労働者は、正社員との待遇の違いやその理由などについて、事業主に対して説明を求めることができるようになります。通勤手当については、正社員と同様に扱われる可能性があります。事業主に確認してみましょう。
働き方改革の「同一労働同一賃金」は、同一企業内において、正社員とパートなどの非xx雇用労働者との間の不合理な差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けることができるよう法改正がされました。
法改正では、1.不合理な待遇差の禁止、2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、3.行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続きの整備、が主な改正点です。
1.不合理な待遇差の禁止
正社員と非xx雇用労働者との間で、職務内容や配置の変更範囲などを考慮
し、働き方の前提条件が同じなら同じ待遇(均等待遇)、就業の実態等に違いがなる場合はその違いに応じた待遇の違いがxxxxのとれた待遇(均衡待遇)であることが求められます。
要するに、正社員のAさんとパートのBさんで、仕事の内容や責任の重さが違うのなら、仕事の成果や責任の重さに対して支払われる賃金や手当が違っていても問題ありませんが、同じであれば同じにしなければならない、ということで す。
また、通勤手当が、通勤に必要な経費を支給するという目的の手当であれば、 AさんとBさんに待遇に差を設けることは不合理と判断されます。待遇の違いがバランスのとれたものでなればなりませんので、待遇差を設けている場合は、その理由を明確にしておきましょう(厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」を参照)。
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「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要(一部抜粋)
【基本給・資格手当・役職手当等】
「職業経験・能力に応じて」「業績・成果に応じて」「勤務年数に応じて」支払うものなので、それぞれの趣旨・性格に照らして、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。
【通勤手当】
非xx雇用労働者には、正社員と同一の支給をしなければならない。
【ボーナス(賞与)】
会社への貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給をしなければならない。
【福利厚生・教育訓練】
福利厚生施設の利用、慶弔休暇等は同一の利用・付与を行わなければならない。また同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた教育訓練を実施しなければならない。
2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
事業主は、労働者から待遇差の内容や理由について説明を求められた場合、説明をしなければなりません。待遇差の説明に対し、「パートだから」という理由では、合理的な説明とは言えないので、待遇差を設けている理由を明確にしておきましょう。
また、説明を求めた労働者に対して、不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
3.行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続きの整備
「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」,話し合いに納得がいかない場合は、行政による助言指導や都道府県労働局の紛争調整委員会による調停(無料・非公開)等が利用できますので、早めに専門機関へ相談しましょ
う。
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Q8
Q8 最近体調が悪く、病院で診断してもらったところ「しばらく仕事を休
んで治療した方が良い」と言われました。休んでいる間は有給休暇を使おうと思っています。有給休暇を使いきっても回復しないときは欠勤することになります。欠勤が長くなると会社を辞めさせられるのではないかと心配です。休職制度について教えてほしい。
A
A 労働者が私傷病等により働けなくなった場合に、会社を辞めることなく雇用関係
を維持したまま、一定期間休ませて働くことを免除することを「休職」といいます。休職制度は法律に定めがないので、会社ごとに制度の有無・内容を自由に決めるこ
とができます。
もし、会社に休職制度が無い場合は、すぐに辞めるという結論を出すのではなく、傷病の程度や回復の見込み等の状況を伝え、今後の働き方について会社と話し合ってみましょう。
会社に休職制度がある場合は、就業規則に休職事由や休職期間,、休職期間中の労働条件,、休職期間満了後の取り扱いなどが定められています(就業規則の相対的記載事項)。
休職制度には、休職事由によって「私傷病によるとき」「公職についた場合」「労働組合の専従に就いたとき」「他社へ出向している期間」などがあります。
相談者のように私傷病で相当期間において欠勤しなければならない場合、会社に休職制度があれば「私傷病による休職」が認められますので、すぐに辞めさせられることはありません。
私傷病による休職は、会社が従業員の復職が可能かどうかを見極めることを目的とするもので、解雇または退職を猶予した制度です。したがって休職期間中に私傷病が回復すると復職できますが、休職期間が満了しても私傷病が回復しないときは解雇または退職することになります。
近年は、病気になっても働き続ける社会の構築を目指して、治療と仕事の両立支援の取り組みを国が積極的に進めています。両立支援制度の計画・構築に取り組む会社もあり、各都道府県にある産業保健総合支援センターが支援を行っています。助成金制度などもあるので、まずは会社にご自身の気持ちを伝え、働きかけてみましょう。
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Q9
Q9 賃金の支払日前日に、急に社長が「売上げが下がって会社も経営が出
賃
来ないので、毎月5万円給料を下げる」と言われました。一方的な賃金の引
金
き下げは困ると言いましたが、「会社がつぶれたら君たちも全員辞めないといけないから、まだましではないか!」と相手にしてもらえません。会社は、
一方的に従業員の賃金を下げることができるでしょうか。
A
A 1か月やそこらの短期間に赤字になったことを理由として、労働者の同意がない
まま賃金を一方的に下げる行為は、無効になると考えられます。改めて、一方的な賃金引き下げについては応じられないことを社長に言いましょう。
なお、賃金引き下げに応じる場合は「いつまでの賃下げなのか」「どのようになったら元の賃金に戻してもらえるのか」等の条件提示を会社に求めましょう。
労働者と使用者の間で「働きます」「賃金を支払います」と合意することで、労働契約が成立します。契約内容である労働条件を変更するには、①使用者と個々の労働者 との個別合意による場合と、②就業規則の変更による場合があります。
①使用者と労働者の合意によることが原則です(労働契約法第 8 条)。
②就業規則の変更によって労働条件を変更する場合は、次の要件を総合的に勘案して、合理的だと判断される必要があります(労働契約法第 10 条)。
・労働者の受ける不利益の程度 ・労働条件の変更の必要性
・変更後の就業規則の内容の相当性 ・労働組合等との交渉の状況また、変更後の就業規則を労働者に周知させていなければなりません。
上記の①又は②の手続きをしないで、社長(使用者)が一方的に賃金を減額することは出来ません。
しかし、下記のような特別の事情がある場合には、使用者は賃金を減額することが出来ます。
◼ 労働者に責めのある不祥事等があり「懲戒処分」による減給
◼ 職位や資格等の引き下げによる賃金の減少
◼ 担当する仕事の内容が変わった(配転)ことによる賃金減少
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この場合であっても賃金引き下げの理由が就業規則に明記されており、労働者に就業規則を周知させている場合でなければ、減額することは出来ません。
Q10
Q10
新卒で入社して2年目になります。毎月、給料明細書をもらってい
るのですが、引かれているものの内容がよく分かりません。給料から引かれているものについて教えて下さい。
A
A 給料は、その全額を支払わなければなりません(全額払いの原則)が、例外があり
ます。毎月の給料から、社会保険料や税金などを差し引くことを控除といいます。控除には、法律により差し引くことが義務付けられている『法定控除』と、労働者と会社の取り決めで差し引くことができる『法定外控除』があります。控除が義務付けられているものは、毎月の給料から差し引かれ、会社を通じて納められています。
【法定控除】
社会保険料
① 健 康 保 険:労働者やその被扶養者が、仕事以外で病気やけが、,出産,、死亡した場合に医療費等が給付される制度です。
② 厚生年金保険:労働者の老後の生活保障のためや、現役時代に病気やけがをして障がいが残った場合、亡くなった場合に給付される制度です。
③ 介 護 保 険:介護が必要になった高齢者を、社会全体で支える制度で、40 歳になると介護保険に加入が義務付けられ、保険料を支払うことになります。
④ 雇 用 保 険 :労働者が失業して次の仕事に就くまでの生活保障として、また育児休業等で雇用を継続する時、教育訓練を受講した時等に給付される制度です。
税 金
⑤ 所 得 税:個人の所得に対してかかる税金です。
⑥ 住 民 税:都道府県と市町村に納める税金です。前年の収入に対してかかるので、入社2年目の6月から差し引かれます。
【法定外控除】
労働者の代表と使用者との間で結ばれた労使協定にもとづき、会社が給与から差し 引くもので、財形貯蓄,労働組合費,互助会費等があり、会社によって異なります。こ れら法定外控除は、労使協定なしに勝手に会社が給料から差し引くことはできません。
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給料明細書の控除項目の中で不明なものがある場合は、会社に確認して下さい。
Q11
Q11
新卒で入社して数か月になります。学生時代のアルバイトは時給だった
ので、最低賃金額を下回っているかが分かりやすかったのですが、今は月給制
で色々な手当も付いています。どうやって確認をすればよいのでしょうか。
A
A 月給額を時間額に換算して最低賃金額と比較します。
月給÷1か月の平均所定労働時間*1≧最低賃金額(時間額)
*1 所定労働時間:労働契約や就業規則等で定められた労働時間のこと。残業時間は含まれない。
1か月の平均所定労働時間:(年間労働日数×1 日の所定労働時間)÷12
最低賃金は、年齢に関係なく、パートや学生アルバイトなどを含め、すべての労働者に適用されます。また、都道府県ごとに異なり、毎年 10 月頃改正されます。
① Aさんに支払われた賃金のうち、通勤手当と時
139,428円-(5,500円+8,928円)=12
② この金額を時間額に換算すると
125,000円÷1か月所定労働時間(168時間
令和元年 10 月の鳥取県の最低賃金(790 円)
を割っているので、最低賃金法違反となります。 最低賃金を上回るよう、会社に改善を求めましょう
また電子部品・デバイス・電子回路、電気機械器
具、情報通信機械器具製造の産業は、特定 (産業別)
最低賃金額の計算から除外されるもの
時間外勤務手当 休日出勤手当深夜勤務手当 精皆勤手当
通勤手当 家族手当
臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
1 か月を超える期間ごとに支払われる賃金
(賞与など)
例えば、鳥取県で働いているAさんの場合で見てみましょう。
間外手当は算入しないので、
5,000円
)≒744円
。
最低賃金が適用されます。毎年 12 月頃改正され、令和元年 12 月の鳥取県は 807 円です。
次の労働者については都道府県労働局長の許可を受けた場合、最低賃金の減額特例が認められています。
① 精神、身体の障害により著しく労働能力の低い者 ② 試用期間中の者
③ 認定職業訓練を受ける方のうち一定の者 ④ 軽易な業務に従事する者
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⑤ 断続的労働に従事する者
Q12
Q12
課長から「あとで代休を取っていい」と言われ、休日出勤するこ
とが時々あります。私の会社は、代休を取ると何も支払われませんが、友
人の会社は割増賃金だけは支払われているようです。代休を取っても、割
増賃金はもらえるのですか?
A
A 「代休」の場合は、休日出勤した後で休みを取ったとしても、休日労働の割増賃
金部分は請求できます。「代休」や休日出勤の割増賃金について、会社の就業規則の規定を確認してみましょう。
仕事の都合などで休日に働かなければならなくなった時の措置として、「代休」と
「振替休日」があります。
「代休」とは、休日に働いた代償として、それ以降の別の労働日を休日として与えることを言います。例えば、労働者を法定休日の日曜日に出勤させ、水曜日に「代休」を与えても、日曜日の休日に労働したことに変わりありません。この場合、会社は休日労働に対しての割増賃金部分(35%以上)を支払わなければなりません。この時、法定休日と所定休日では割増賃金率が異なります。例のように、法定休日(*)に労働して後日代休を取得したら 35%以上の割増率になりますが、所定休日(*)であれば 25%以上の割増率になります。
代休を与えるには、会社と労働者代表が労使協定を結び、就業規則に規定しておく必要があります。
一方「振替休日」は、本来、労働義務のない日と定められた休日を、事前に労働義務のある労働日に変更し、その代わりに他の労働日を休日に振り替えることを言います。振替休日の場合は、あらかじめ休日を入れ替えることになるので割増賃金の支払 いは必要ありません。ただし、振替の結果、週の労働時間が法定 40 時間を超えた超過分については、時間外労働として 25%以上の割増賃金が必要です。
休日の振替を行うためには、
1. 就業規則に振替休日の規定をしておくこと
2. 4 週 4 休の休日を確保したうえで、振替日を特定すること
3. 遅くとも前日までに本人に周知することが必要となります。
*法定休日と所定休日
労働基準法は、毎週 1 日または 4 週間に 4 日の休日を与えなければならないとしています。これを法定休日といいます。
一方、週休 2 日制など労働基準法を上回る休日を与える会社があります。就業規則等により、法定休日を上回って与えられる休日を所定休日といいます。
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Q13
Q13
私の会社は、1 日 30 分以上の残業をしないと残業代が支払われませ
ん。友人の会社では 30 分未満の残業でも、残業代は支払われています。残業時間の計算は、会社ごとに自由に取り決めができるのですか。
A
A 超過勤務の時間数の取扱いについては、「1か月における時間外、休日、深夜の各労
働について、各々の合計時間数に1時間未満の端数がある場合に 30 分未満を切り捨て、
30 分以上を1時間に切り上げること。」は認められています。
1 日単位で集計し、その都度 30 分未満の時間外労働を切り捨てるような計算方法は認められていません。改善されるよう要求してください。
使用者は個々の労働者の労働時間を正確に把握し、勤務実態にあった割増賃金を支払うようにしなければなりません。労働者が法定労働時間を超えて働いているのを知りながら割増賃金の支払いをしないのは「賃金の全額支払い」の違反となります。
残業時間の端数処理について、次の処理方法が通達により認められています。
◼ 1 か月間における残業、休日出勤、深夜残業の合計時間数に 1 時間未満の端数がある場合、30 分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる
◼ 「給与額(基本給)÷労働時間(残業以外)」という計算をし、1時間当たりの給料、残業代に円未満の端数が生じた場合、50 銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げる
◼ 1 か月における残業代、休日出勤手当、深夜手当の割増賃金部分の総額に 1 円未満の端数が生じた場合、50 銭未満の端数を切り捨て、それ以上を 1 円に切り上げる
上記の場合は違法とはなりませんが、1日の 5 分や 10 分でも実際に労働した時間なので、毎日の残業時間の端数切り捨ては、労働基準法違反となります。
割増賃金の不払いの請求には、根拠となる時間外労働の記録(タイムカード、業務記録など)が必要です。請求する前に入手しておきましょう。
15
15
Q14
Q14
4 月に課長になり、給料や役職手当は増えましたが、管理職だから
と言われて残業手当が出なくなり、手取りがかなり少なくなりました。業務も増えて、毎日残業をしているのに管理職は残業手当をもらえないのでしょうか?
A
A 労働基準法上の「管理監督者」か否かは、職務内容,責任と権限,勤務態様,待遇の
実態に応じて総合的に判断されるので、実態を整理しておきましょう。
労働基準法上の「管理監督者」に該当しない場合は、残業に対して時間外割増賃金等の支払いが必要となるので、会社と話し合ってみましょう。
通常、労働者が法定労働時間(8 時間/1 日、40 時間/週)を超えて働いた場合又は休日に労働した場合には、割増賃金等を支払うこととされていますが、労働基準法上の
「管理監督者」には労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外されます(労働基準
法第 41 条第2号)。ただし、職場で管理職や役職名があったとしても、労基法上の管理監
督者と一致しないケースも多く見受けられます。
法解釈では「管理監督者」とは「一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。」とされており、職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断されるとしています。
◆労働基準法上の「管理監督者」にあたるか否かの判断基準◆
① 職務内容、責任と権限
労働時間、休憩・休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容、責任と権限を有していること。労働条件の決定、その他労務管理につい て、経営者と一体的な立場にあり、経営者から重要な責任と権限(採用、解雇、人事考課、労働時間の管理)を委ねられていなければ、管理監督者とは言えません。
② 勤務態様
現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること。管理監督者は、時を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にあることが必要です。労働時間について厳格に管理されているような場合は、管理監督者とは言えません。
③ 賃金等の待遇
賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること。管理監督者 は、その職務の重要性から、定期給与、賞与、その他の待遇において、一般労働者と比較して相応の待遇がなされなければなりません。
16
「課長」「店長」「リーダー」「マネージャー」といった肩書だけで管理監督者だと使用者から言われても、自らの裁量で行使できる権限が少なく、多くの事項について上司の決裁を仰いだり、上司の命令を部下に伝達したりするにすぎない場合など総合的に判断した結果、「管理監督者」に該当しない場合は労働時間の規制を受け、時間外割増賃金や休日割増賃金の支払いが必要になります。
なお、「管理監督者」と判断された場合でも、深夜業に関する割増賃金や年次有給休暇に関する規定は、一般の労働者と同様に適用されます。
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管理監督者性を判断する要素
管理監督者性を否定する重要な要素 | 管理監督者性を否定する補強要素 | |
職務内容、責任と権限 | ・採用、解雇、人事考課、労働時間の管理、これらへの責任と権限、関与が実質的にない | |
勤務態様 | ・遅刻、早退等で減給、人事考課での負の評価などの不利益な取扱いがされる | ・人員が不足する場合自らが長時間労働を余儀なくされるなど、実際には労働時間に関する裁量がほとんどない ・部下同様の勤務態様が労働時間の大半を占める |
賃金等の待遇 | ・時間単価換算した賃金額がアルバイト、パート等に満たない または、最低賃金額に満たない | ・基本給、役職手当の優遇措置が十分でない ・年間の賃金が一般労働者と比べ同程度以下 |
Q15
Q15 営業職として、毎日遅くまで外回りをしています。外回り後に報告書作成等の事務作業を会社に戻ってしなければならず、帰宅が深夜近くの日もあります。ところが、残業代は全く支給されていないので会社に確認したところ、「営業手当として毎月支払っている」と言われました。明細書を確認すると毎月定額で支給されていますが、これで問題はないのでしょうか。
A
A 時間外労働について、あらかじめ定額で支給する固定残業代制は、手当の額が労働
基準法で定める割増賃金の計算額を上回る限りは、違法ではないとされています。したがって固定残業代制を採用している場合でも、実際の残業時間により計算した残業代の額が手当を超える場合は、差額の残業代を追加で支払わなければなりません。
まずは、営業手当が何時間分の残業時間に相当するのかを、就業規則や労働条件通知書で確認しましょう。また、使用者はタイムカードなど客観的な記録により労働時間を把握することが義務付けられ、労働者も日頃から自分の労働時間を手帳にメモをするなどして、残業時間を把握しておきましょう。
使用者が、時間外や休日および深夜に労働者を労働させた場合、法律で定められた割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第 37 条)。したがって外回りの多い営業職であっても、時間外労働をしている場合は残業代が支払われるのが原則です。
ご質問の場合、会社は残業代を含めて毎月定額で営業手当として支給しており、いわゆる固定残業代制度を採用していると思われます。固定残業代(みなし残業代、定額残業代)とは、その名称(営業手当、業務手当、職務手当など)にかかわらず、一定時間分の時間外労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。
固定残業代制度を採用する場合には、基本給と明確に区分をして就業規則や労働条件通知書などに記載し労働者に周知をしなければいけません。
① 「基本給」と「固定残業代」を明確に区別し、何時間分の残業代であるかを明示
② 実際の残業時間が固定残業時間を超える場合はその差額を追加で支払うこと
③ 就業規則や労働条件通知書において特定の手当が固定残業代であること
(記載例)
⚫ 基本給 15万円
⚫ 営業手当(時間外労働の有無にかかわらず、25 時間分の残業代に相当) 3万円
※25 時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給
参 考
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若者雇用促進法に基づく指針では、青少年が応募する可能性のある募集または求人について、固定残業代制を採っている事業主は、募集・採用にあたって上記についての明示が義務化されています。
Q16
Q16 今月になって 2 日続けて 30 分遅刻してしまい、課長から「会社のき
まりで今度遅刻をしたら給料を 1 日分カットする。」と言われました。遅刻をしたことについては反省をしていますが、遅刻した時間に比べてカット
される金額が多いのではないでしょうか。
A
A ご質問のように、3 回目の遅刻をしたら給料の 1 日分をカットすることは減給の
制裁の範囲を超えており違法になります。就業規則にペナルティーとしての減給の規定がある場合であっても、給料をカットできるのは平均賃金の 1 日分の半額までとなります。
労働者が会社に労務の提供をし、会社は労務の対価として労働者に給料を支払う約束をすることで労働契約が成立します。労働者が約束通りに働いたときには給料は全額支払われなければなりません。しかし、遅刻や早退、欠勤など労働者の都合で働いていない時間分について会社は労働者に給料を支払う必要はありません。これをノーワーク・ノーペイの原則と言います。
働いていない時間や日数に応じて給料をカットすることは、賃金の全額払いの原則に違反しませんが、例えば 30 分の遅刻を 1 時間単位でカットすることは働かなかった時間を超えるカットとなり、賃金の全額払いの原則に反し違法となります。
ただし、会社の就業規則に、減給についての規定がある場合にペナルティーとして給料の一部分をカットすることは、労働基準法の減給の制裁として認められており、全額払いの原則に違反しません。例えば、就業規則で懲戒として「1か月の間に遅刻を 3 回した場合は、減給することがある。」という規定があれば、給料の一部をカットされる可能性があります。
。
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しかし、給料のカット額が大きいと労働者の生活をおびやかすおそれがあるので、労働基準法では減給の範囲について一定の制限を加えています。
減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない(労働基準法第91条 。
Q17
Q17 バイトの面接時、店長に「もし遅刻をした時は、罰金 5,000 円を払ってもらう。」と言われました。そうなった時は、支払わないといけないでしょうか。
A
A 労働契約を結ぶ際、「もし、~なら〇万円賠償させる」などと、違約金や損害賠償
額の予定をあらかじめ定めることは禁止されています。
労働契約の禁止事項には以下のものがあります。
① 違約金・損害賠償額の予定 (労働基準法第 16 条)
② 前借金と賃金の相殺(労働基準法第 17 条)
③ 強制貯金(労働基準法第 18 条)
①については、労働者本人だけでなく、親権者や身元保証人に損害賠償を負担させることも禁止されています。
その他にも
・一年以内に退職したら罰金 10 万円
・会社に損害を与えたら 20 万円支払うこと なども違法です。
ただし、現実に労働者の責任により発生した損害についての賠償を請求することまで禁止したものではないので、実害について弁償費用を請求される場合があります。
賃金は、労働の対価として支払われるものなので、欠勤・遅刻・早退の就労していない部分について、使用者に賃金の支払い義務はありません。遅刻した時間分の賃金がカットされた場合は、やむをえないと言えます。
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不当な請求をされたら、早めに専門家へご相談ください。
Q18
Q18
事情があって、会社を 11 月末で退職しようと思っています。私の会
社は、6 月と 12 月にボーナスが支給されます。12 月のボーナスの算定期間は、6 月から 11 月です。算定期間は在職しているのでボーナスをもらうことができると思うのですが、同僚は「ボーナス支給日前に退職するとボーナスはもらうことはできない」と言っています。
同僚の言うように、私はボーナスをもらうことができないのでしょうか。
A
A 支給日に在籍していることが賞与の支払い条件という就業規則や慣行がないと
認められる場合においては、算定期間内の在籍した期間に応じて支給を求めることができます。
まず、会社の就業規則などで支給日在籍要件があるかどうか確認しましょう。
賞与(ボーナス)は賃金のように、法律で支給が義務付けられているわけではありません。支給する場合、賞与の支給日・支給対象者など、賞与をどのような条件で支払うかは、会社によって異なります。
就業規則等に「賞与は支給日に在籍している者に対し支給する」の規定がある場合と、従来からの「慣行がある」場合には、支給日に在籍していないことを理由に賞与を支給しなくても差し支えないとされています。判例にも、支給日前に退職した労働者は賞与を請求する権利はないと判断したものがあります(京都新聞社事件S60.11.28)。
しかし、整理解雇のように労働者に責任のない離職において、支給日在籍要件を根 拠に賞与を支給しないというのは公序良俗に反し無効と判断されたものもあります。他にも、定年退職者に対する支給日在籍要件を有効とした判例や、支給日在籍要件
がある場合であって、支給日が遅くなり、本来の支給日に在籍していた従業員にボーナス受給権を認めた判例があります。
産休や育休中の賞与の支給については、会社の規定によります。
「賞与は会社の休業中の者には支給なし」と記載があった場合でも、算定期間中に働いた日数分は支給されます。ただし、「会社の業績と個人の成績を勘案し各人ごとに決定する」等の記載がある場合は支給なしとなる場合があります。
育児休業中に賞与がもらえるかどうかは、会社規定の「賞与の支給要件」を確認しましょう。また、支給を受けても育児休業給付金が減額されることはありません。
Q19
Q19
私の会社では、朝 9 時から夕方 5 時までが労働時間です。そのうち
休憩時間が 1 時間あります。仕事が忙しい時は、夜 11 時くらいまで仕事することがあるのですが、労働時間と割増賃金には、どのような決まりがある
のですか?
A
A 労働基準法では、労働時間は休憩時間を除いて1日8 時間、1 週間に 40 時間ま
でと決められており、これを法定労働時間といいます。法定労働時間を超えて働かせる時には、労使協定(36 協定)を締結しなければなりません。
また、法定労働時間を超えて働く場合には、割増賃金を支払う必要があります。
【法定労働時間】
労働基準法第 32 条では「労働者に休憩時間を除き、1 週について 40 時間、1 日について 8 時間を超えて労働させてはならない」としています。
ただし、常時 10 人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業、接
客娯楽業については、特例として法定労働時間が週 44 時間、1 日 8 時間までです。
【所定労働時間】
労働契約や就業規則の中で定められた労働時間(休憩時間を除く)をいい、法定労働時間を超えることはできません(相談者の会社の場合:午前 9 時から午後 5 時)。
所定労働時間を超えて働いても、法定労働時間内であれば割増をつけなくてもかまいませんが、その時間分の賃金は支払う必要があります。
【法定労働時間を超えて働く時】
法定労働時間を超えて、労働者を働かせる場合や休日労働をさせる場合は、あらかじめ労働者の代表*と書面で「時間外労働・休日労働に関する協定」(労使協定)を結んで、所轄の労働基準監督署長に届け出ておかなくてはなりません(労働基準法第
36 条)。
*労働者の代表:労働者の過半数を代表する労働組合がある場合には、その労働組合、ない場合は事業所の労働者の過半数を代表する者
【割増賃金】
時間外や休日及び深夜に労働させた場合は、法律で定められた割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第 37 条)。
■ 時間外労働(法定労働時間を超えた場合)・・・25%以上
■ 休日労働(法定休日に労働した場合)・・・・・35%以上
■ 深夜労働(午後 10 時~翌朝 5 時)・・・・・・ 25%以上
■ 時間外労働が深夜に及んだ場合・・・・・・・ 50%以上
■ 休日労働が深夜に及んだ場合・・・・・・・・ 60%以上
なお、1 か月に 60 時間を超える時間外労働については、割増率が 50%以上になります(中小企業は 2023 年 4 月から適用)。
Q20
Q20
先日、内定先の会社から、「採用内定者に対して入社前の研修を実施
するので特別の用事がない限り参加して欲しい。」と言われました。入社前
の研修時間は労働時間になりますか?
A
労働時間、休日・休暇
A 会社からの採用内定通知を受けた労働者が誓約書を提出すると、「始期付解約権
留保付労働契約」が成立すると解されています。すなわち労働契約は成立しているが、就労開始時期(入社日)があるため、就労開始時期が来るまでは労務の提供を強制できないのが通例です。したがって、採用内定者に入社前の研修への参加を義務付けるのであれば、事前に内定者の同意を得るなどにより、研修参加義務があることを労働契約の内容とすることが必要です。そのようになっていない場合は、内定者が研修へ参加しないことによって、内定取消しや入社後に不利益な取り扱いをすることはできません。
そもそも労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、研修への参加時間について次のような通達があります。
「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不 利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」
(昭 26.1.20 基収第 2875 号、平 11.3.31 基発 168 号)
つまり、研修へ参加しなければ就業規則上の制裁などの不利益な取扱いを受ける場合や、研修の内容と業務に強い関連性があり、参加しなければ業務に支障が生ずる場合は、実質的に出席の強制があるとされ、研修時間は労働時間となり、賃金の支払いが必要になります。
賃金額については就労開始時期(入社日)が来ていないため必ずしも初任給の時間割・日割額でなくてもよいとされていますが、地域別最低賃金額以上としなければなりません。また、研修時間が 1 日 8 時間を超える場合は割増賃金の支払いが必要になります。
入社前の研修の日時によっては学業に支障が出ることもありますから、内定先の会社へ研修の内容・日時・場所・研修手当(賃金)などについて確認をしてみてください。
Q21
Q21 最近、転職をしたのですが、前の会社に比べ今の会社は残業が多く、帰りが遅くなり困っています。残業時間について、法律で決まっていること
はありますか。
A
A 労働時間については、法定労働時間(8 時間/日、40 時間/週)が定められており、
原則その時間を超えて働かせてはいけません(労働基準法第 32 条)。この法定労働時間を超えて働かせる場合には、会社と労働者代表が労使協定(36 協定)を結び、事前に労働基準監督署長に届け出る必要があります(労働基準法第 36 条)。
労働条件通知書や就業規則に時間外労働に関する規定があっても、36 協定の内容や有効期間、さらには締結した労働者の代表がどのようになっているのかを確認し、 36 協定に反する労働にならないようにしましょう。
法定の労働時間を超えて労働者を働かせる場合には、労使協定(36 協定)を締結して、所轄の労働基準監督署長に届け出をしていないと、働かせることはできません。
【時間外・休日労働をさせる 36 協定の項目】
① 労働者の範囲(業務の種類、労働者数)
② 対象期間(1 年間)とその起算日
③ 労働時間を延長または休日に労働させることができる場合
④ 1 日、1 か月及び 1 年のそれぞれについて、労働時間を延長して労働させることができる時間または労働させることができる休日の日数
⑤ 協定の有効期間
⑥ 下記の限度時間を超えて労働させることができる場合
⑦ 限度時間を超えた労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置、割増賃金の率及び労働させる場合の手続
⑧ 限度時間を超えて労働させる場合であっても、時間外・休日労働時間は、月 100 時間未満、2 ないし 6 か月平均で 80 時間以下であること。
限度時間:法定労働時間を超えて時間外労働をさせる場合の上限(限度時間)は 1 か月 45 時間(42 時間)かつ 1 年 360 時間(320 時間)*¹*²と法律で
定められています(法第 36 条 3 項、4 項)。
限度時間を超えて労働させた場合(特別条項付き協定を締結した場合を除く)は罰則として 6 か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金が科せられます。
*1( )内は 3 か月を超える 1 年単位の変形労働時間制による場合。
*2 時間外労働のみ(休日労働は含まない。)
24
この限度時間を超えて労働時間を延長する場合は、上記⑥~⑧の項目の入った特別条項付きの協定を締結する必要があります。
臨時的な特別の事情があって、特別条項付き協定を結んだ場合でも、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1 か月については 100 時間未満でなければならず、かつ 2 か月から 6 か月までの平均が全て 80 時間を超えてはならないことになってい
ます。また、時間外労働及び休日労働を合算して年 720 時間以内にしなければなりません。
限度時間を超えて労働させる要件としては
① 特別条項付き協定に定める一時的または突発的な事由があると認められること
② 特別条項付き協定に定める手続きをとること
③ 月 45 時間を超えることができるのは年間 6 か月まで
※上限を超えて労働させた場合は 6 か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金が科せられます
2020 年 4 月 1 日以降の協定に適用
法律上は、残業時間の上限がありませんでした(行政指導のみ)。
法律で残業時間の上限を定め、これを超える残業はできなく なります。
上限なし
法律による上限(例外)
・年720時間
・複数月平均80時間*
月残業45時間 ・月100時間未満*
*休日労働を含む
=1日残業2時間程度 80
年間6か月まで 年間6か月まで
大臣告示による上限
(行政指導) 法律による上限(原則)
残業時間月45時間年360時間
残業時間(原則)
月45時間年360時間
法定労働時間
1日8時間週40時間
法定労働時間
1日8時間週40時間
1年間=12か月 1年間=12か月
月残業 時間=1日残業4時間程度
(以前) (現在)
但し、自動車運転の業務、建設事業、医師、砂糖製造業(沖縄、鹿児島)については5年間、適用が猶予されています。又、新技術.新商品等の研究開発業務については時間外労働の上限規制は適用されません。
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なお、36 協定は労働者に時間外労働を義務づけるものではないので、就業規則や労働契約で時間外労働をさせる規定が必要となります。
【参考】
長時間労働は過労死や過労自殺、うつ病などの精神疾患、脳・心臓疾患を発症するケースが多く、心身ともに働き過ぎによる健康障害の問題が深刻化しています。
脳・心臓疾患に係る労災認定基準で示されている労働時間の評価の目安は以下の
通りです(長期間の過重業務の場合)。
① 業務との関連性が強い
・月 100 時間を超える時間外労働及び休日労働の合計
・発症 2~6 か月の平均で月あたり 80 時間を超える時間外労働
② 業務との関連性が強まる
・発症前 1~6 か月間の月あたり 45 時間を超える時間外労働
③ 業務との関連性が弱い
・発症前 1~6 か月間の月間平均で月あたり 45 時間以内の時間外労働
Q22
Q22
会社が、「業務に忙しい時期とひまな時期があるので、変形労働時間
制を導入したい」と社員に提案しています。この制度は、ひまな時期に勤務時間を短くして早く帰ることができる制度と説明されたのですが、もう少し詳しいことを知りたいです。変形労働時間制とはどのような制度ですか。
A
A 本来、忙しい時期に法定労働時間を超えて働くと、使用者は労働者に残業代を支
払わなければなりませんが、変形労働時間制を採用した場合は、所定内労働として扱うことができ、残業代を支払わなくもよいことになります。例えば、忙しい時期に 1
日の所定労働時間を 9 時間とした日は 9 時間働いても、また 1 週間の所定労働時間を
45 時間とした週は 45 時間働いても、所定内労働として扱われます。労働者にとっては、ひまな時期には早く帰ることのできるメリットもありますが、忙しい時期の所定労働時間が長くなったり、所定労働日が増えたり、今までなら支払われていた残業代が少なくなるなどのデメリットもあります。
また、変形労働時間制を導入するにあたっては、労使協定の締結が必要です(1 か月単位の変形労働時間制の場合を除く)。導入するかどうか、制度の内容などを労使で十分話し合う必要があります。
変形労働時間制とは、業務の繁閑がある場合に繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑などに応じて、柔軟に労働時間を設定することができる制度です。
変形労働時間制の種類には、1 か月単位と 1 年単位のものがあり、30 人未満の小売業などに限り 1 週間単位のものがあります。さらに、始業及び終業の時刻を労働者に自由に選択させるフレックスタイム制があります。
次頁「3 種類の変形労働時間制一覧」参照(フレックスタイム制については説明を省く)
変形労働時間においても、あらかじめ就業規則や労使協定などで定めた各日・各週の労働時間を超えて労働させる場合、その超えた部分には時間外労働として割増賃金を支払わなければなりません。
また、1年単位の変形労働時間制において、労使協定で定めた対象期間の途中で採用、配置転換された者、退職する者(労働期間が対象期間より短い労働者)が、実労働期間を平均して1週間当たり 40 時間を超えて労働した時間については、次の式により割増賃金の支払いをしなければなりません。
割増賃金を支払う時間
実労働期間における実労働時間
(実労働期間の暦日数÷7)×40 時間
<所定労働時間だけ労働した場合>
26
= -
3種類の変形労働時間制一覧
項 目 | 1か月変形制 | 1年変形制 | 1週間変形制 | |
制度の特色等 | 対象事業場 | 制限なし | 制限なし | 労働者30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店に限る |
対象労働者 | ①請求のあった妊産婦は除く ②満15歳以上18歳未満の者は1週48時間、1日 8時間を超えない範囲内で適用可 | ①同左 ②同左 ③一般職の地方公務員は除く | ①同左 ②満15歳以上18歳未満の者は適用不可 ③同左 | |
特色 | *1か月以内の変形期間で労働時間のやりくりできる *1日、1週の所定労働時間の上限規制がない | *1年以内の変形期間で労働時間のやりくりができる(3か月、6か月などの変形制も可) | *業務の繁閑に合わせて週ごとに異なる形の労働時間制を編成できる *他の変形制のように各日の始業・終業時刻を就業規則に記載する必要はなく、従業員に通知すれば足りる | |
実施に適している事業場 | *月内、週内において業務の繁閑が著しい事業場 *特定の日や週に集中的な業務処理が求められる事業場 | *年間を通じて業務の繁閑が著しい事業場 *年間105日以上の所定休日があるが時期の偏っている事業場(週平均 40時間制の実現可) | 上記の事業場に限られる | |
労働時間の限度等 | 1日の労働時間の制限 | なし | 10時間 | 10時間 |
1週の労働時間の制限 | なし | 52時間 3か月超の時は、週48時間を超える週は連続3週以内、3か月ごとに3回以内とする | 40時間 | |
対象期間中の週平均労働時間の限度 | 40時間(特例事業場は44時間) | 40時間 | ― | |
休憩時間 | 法定通りの取扱い | 同左 | 同左 | |
休日 | 4週に4日 | 1週に1日 | 4週に4日 | |
手続 | 就業規則への記載 | どちらかが必要 | 必要 | 必要なし |
労使協定の締結・届出 | 必要 | 必要 |
注 1年変形制における下記労働者についての1日、1週の労働時間の限度は次のとおりとなっている。
*積雪地域の建設業の屋外労働者等:対象期間の区分なく、1日10時間、1週52時間
*タクシー業の隔日勤務者:1日については対象期間の区分なく16時間、1週については上記の表と同じ
Q23
Q23
私の会社は、月に 1 回仕事が終わってから研修があります。強制参
加とは言われていませんが、業務についての研修なので誰も欠席せずに全員参加しており半強制的な感じです。この時間についての給料はありません。研修なので仕方がないのでしょうか。
A
A 使用者が指定する研修について、参加するように指示されたり、後日レポートの
提出を課されたりするなど、実質的な業務指示で参加する研修は、使用者の指揮監督のもとにある労働時間であり、当然給料の支払いが必要になります。また、“強制参加”とは言われていなくても、研修を欠席することで不利益な扱いをされたり、業務に支障をきたしたりするのであれば、実質的に強制参加と言え労働時間に当たると考えられます。
毎月の研修を欠席するとどうなるのかを、会社に確認してみてください。そのうえで研修時間が労働時間であると確認できれば、給料支払いについて職場内で話し合いをし、会社へ請求されてはどうでしょう。
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下におかれている時間のことをいいます。使用者の明示又は黙示の指示により、労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当 します。
労働時間には実際に働く時間のほか、手待ち時間や作業準備や片付けの時間も含まれます。更衣時間については、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めていたりするような場合は、労働時間に該当しません。
研修時間についての給料の有無は、「労働時間にあたるかどうか」で決まってきます。研修・教育訓練について、業務上義務づけられていない自由参加であれば、その研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しません。
研修が実質的に義務付けられものであれば労働時間と解され、その研修が業務終了後(労働時間 8 時間)に行われたのなら、時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。
Q24
Q24
休憩時間に電話がかかってきたり、来客があると上司から応対す
るように言われているので、ゆっくり昼食を取ったり、自由に過ごすこと
ができません。私のような休憩時間の過ごし方は、問題ではないでしょう
か。
A
A 「休憩時間とは単に作業に従事しない手待ち時間を含まず、労働者が権利として
労働から離れることを保障されている時間の意であって、その他の拘束時間は労働時間として取扱うこと」としています。
したがって、ご質問のように休憩時間中であっても電話がかかってきたり、来客があれば応対しなければならない場合は「手待ち時間」と言われ、完全に労働から離れることを保障されている休憩時間とは言えず、労働時間に当たりますので別の時間に休憩時間を取る必要があります。
会社と労使協定を結んで休憩時間を交替制にするなど、休憩時間をきちんと取ることが出来るように話し合いましょう。
休憩時間は、仕事をすることによって蓄積される労働者の心身の疲労を回復させるための時間です。休憩時間については、労働基準法第 34 条において長さや与え方などの原則が定められています。
1 休憩時間の長さ
1 日の労働時間が 6 時間を超える場合は 45 分以上、8 時間を超える場合には 1 時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません。
2 休憩時間の与えかた
(1)一部の業種を除き、原則としてすべての労働者に一斉に与えなければなりません。
一斉休憩の原則が適用されない業種
運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署
また、労使協定を締結すれば、一斉付与は適用除外となり交替で与えることが出来ます。
(2)休憩時間は労働者の自由に利用させなければなりません。
会社が労働者に、法律で決められた長さの休憩時間をとらせない(与えない)あるいは一斉に休憩を取らせないといけない業種なのに一斉に与えられない、休憩時間は自由に利用させないこと等は、労働基準法違反になります。会社に改善を申し入れても改善されない場合は、労働基準監督署にご相談下さい。
29
なお、社内に休憩する場があり、そこを自由に利用できるような場合や、休憩時間に外出するときに届出をするようになっている場合、合理的な必要性があれば問題ないと考えられます。
Q25
Q25
現在、就職活動中です。求人票を見ていると、年間休日数が 105 日
の会社や 100 日以下の会社等さまざまですが、法律で決まりはありますか。
A
A 休日については労働基準法第 35 条において、「毎週少なくとも1日の休日か、(例
外的に)4 週間を通じて 4 日以上の休日を与えなければならない」と定められているだけで、年間休日数について定めはありません。しかし、法の制限を満たす休日数を 1 日の労働時間数などから間接的に算定することができます。
労働基準法をもとに、1 日の労働時間数から年間休日数の目安を算出できます。
1 年 365 日は 52.14 週(365 日÷7 日)となりますので、休日の与え方の原則を基に年間最低でも 53 日の休日が必要になります。休日数が少ないと法の労働時間の上限を超えてしまう場合があり、注意しなければなりません。労働時間については同法第 32 条において、「休憩時間を除いて1日に 8 時間、1週間に 40 時間を超えて労働させ
てはいけない」と定められています(労働者数 10 人未満の商業、映画・演劇業、保健衛生業、
接客娯楽業は週 44 時間)。
この労働時間の原則を基に、年間で働かせても良い上限の労働時間数を計算すると 2085.6 時間(52.14 週×40 時間)となります。この年間総労働時間数から年間の労働日数を求め、年間休日数を算出すると、以下のようになります。
例1 1日の労働時間が8時間の場合:年間労働日数が 260 日(2085.6 時間÷8 時間)となり、年間休日数は 105 日(365 日-260 日)が最低限の目安
例2 1日の労働時間が7時間 30 分の場合:年間労働日数が 278 日(2085.6 時間
÷7.5 時間)となり、年間休日数は 87 日(365 日-278 日)が最低限の目安
年間休日数の目安(令和 2 年度分:土日以外の祝日が 15 日あります)
年間休日数 | 休日の内容 | 1 日の労働時間の限度 |
105 日 | 完全週休 2 日制(土日)+1 日の休み | 8 時間 |
105 日 | 毎週 土、日曜日と祝日は休み、(但し祝日の内 2 日は出勤+月に 1 回土曜日出勤あり) | 8 時間 |
87 日 | 毎週日曜日と祝日は休み 土曜日は毎月 2 日勤務(但し 12 月は 3 日勤務) | 7.5 時間 |
53 日 | 毎週 1 日の休み | 6.6 時間 |
※「完全週休 2 日制」とは毎週 2 日の休みがあることで、「週休 2 日制」とは月に1回以上週 2 日の休みがあることとなっています。
30
1日8時間、週 40 時間勤務の場合は、年間休日が 105 日を下回れば、法違反の可能性が高くなります。以上のことを参考にし、年間休日数に注目して求人票を見てみましょう。
Q26
Q26 私が勤めるお店では、有給休暇を取ると、その月の皆勤手当が貰えなくなります。このような取扱いをすることは、問題ないのでしょうか。
A
A 年次有給休暇(年休)とは、労働者を休日以外に労働から解放し、心身の休養
がとれるよう法律が保障した休暇制度です。休暇を取得しても出勤として取り扱うこと(有給)により、休暇の取得を促進するのが法の趣旨です。
また、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています(労働基準法第 136 条)ので皆勤手当を支給しない扱いは、違法と判断される場合があります。
年次有給休暇は、継続勤務と出勤率の要件を満たした労働者へ当然に与えられる権利です。年次有給休暇を取得したことにより、使用者は不利益な取り扱いをしないようにしなければならないとされています。賃金を減額することや、賞与の減額、その他手当の減額、年休を取得した日を欠勤又は欠勤に準じて扱う等が考えられますが、特に手当については個々のケースごとに事情をみる必要があります。
その判断は
① 手当の趣旨、目的
② 労働者が失う経済的利益の程度
③ 有給休暇の取得に対する事実上の抑制力の強弱 などです。
31
様々な事情を考慮して、労働者の有給休暇を取得する権利を抑制したり、労働基準法が労働者に保障した権利を実質的に失わせたりするものとならないことが必要です。
Q27
Q27
法律が変わり、労働者は年次有給休暇を最低でも年に 5 日は取得で
きると聞いたのですが、どのような条件で取得できるのでしょうか。
A
A 使用者は、年 10 日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対して、年
次有給休暇を付与した日(基準日)から 1 年以内に最低 5 日は取得させる義務を負います。従って、労働者の希望を聴き、時季を指定して確実に年次有給休暇を取得させなければなりません。これに違反した場合には、罰則(一人につき 30 万円以下の罰金)の対象となります。
年次有給休暇は、原則、労働者が請求する時季に与えるものです。
しかし、取得率が低い現状から、2019 年 4 月から全ての企業を対象に、年 10 日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、少なくとも 5 日については取得させることが使用者の義務となりました。
労働者の申出による取得(原則)
労働者が使用者に取得時季を申出
労働者
「〇月× 日に休みます」
使用者
使用者の時季指定による取得(新設)
使用者が労働者に
取得時季の意見を聴取
労働者
労働者の意見を尊重し 使用者が取得時季を指定
「〇月 × 日に 使用者
休んでください」
対象者
年次有給休暇が10日以上付与される労働者(下表網掛け)
(正社員、パートタイム労働者等全ての労働者、管理監督者を含む)
週所定労働日数が5日以上 または 週所定労働時間が 30 時間以上の労働者
週所定労働日数が5日以上 または 週所定労働時間が 30 時間以上の労働者
継 続 勤務年数 | 6か月 | 1 年 6か月 | 2 年 6か月 | 3 年 6か月 | 4 年 6か月 | 5 年 6か月 | 6 年 6か月以上 |
付与日数 | 10 日 | 11 日 | 12 日 | 14 日 | 16 日 | 18 日 | 20 日 |
週所定労働日数が4日以下 かつ 週所定労働時間が 30 時間未満の労働者
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 6か月 | 1年 6か月 | 2年 6か月 | 3年 6か月 | 4年 6か月 | 5年 6か月 | 6年 6か月以上 | |
付与日数 | 4日 | 169 〜 216 日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10 日 | 12 日 | 13 日 | 15 日 |
3日 | 121 〜 168 日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10 日 | 11 日 | |
2日 | 73 〜 120 日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48 〜 72 日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
期 間
年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に 5 日について、取得時季を指定する方法でも与えることができます。
[(例)4/1 入社の場合]
10 日付与(基準日)
4/1入社
10/1
4/1
9/30
10/1 ~翌 9/30 までの1年間に5日取得時季を指定しなければならない
■ 入社日から年次有給休暇を前倒しで 10 日付与する場合には、入社日から1年以内に最低でも 5 日取得させることになります。
■ 年次有給休暇を何日か取得済みの労働者に対しては、5 日から控除した日数分を時季指定することになります。
(例) 労働者が自ら 3 日取得した場合 ⇒ 使用者は 2 日を時季指定
■ 半日単位で取得した年休は 5 日から控除することができますが、時間単位で取得した年休は 5 日から控除することができません。
Q28
Q28 先日、労働者から「1か月後に退職したい」と申出があり、退職届を受理しました。退職日の当日、その労働者から「10 日残っている有給休暇を使いたいのですが・・・」と言われました。退職届を提出された時に有給休暇の請求があれば使用させるのですが、退職日当日に言われた場合、使用者としてどう対応したらいいのでしょうか?
A
A 今回の場合、退職日当日に有給休暇を請求されていますが、退職日以降は労働契
約が終了し労働義務がなくなるので、労働者は有給休暇を取得することはできません。労働者に有給休暇の趣旨と請求方法を説明され、十分理解いただくよう努めてくださ い。
有給休暇とは、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持・培養を図ることを目的として、休日以外に賃金をもらいながら自分の希望する日に休みをとることのできる制度です。法律では「使用者は、有給休暇を労働者が請求する時季に与えなければならない」としております。つまり、有給休暇の取得ができる労働者から有給休暇の請求があれば、原則応じなければならないということです。
退職前の労働者は、有給休暇を取得したいときは就業規則の規定等により事前に取得時季を指定して、会社に取得請求をすることができますが、退職日以降はその会社の労働者ではなくなるため、請求する権利はありません。
34
また、有給休暇は労働義務のある日について請求できますが、公休日や産前産後休暇,休職期間中,退職日以降など労働義務のない日(免除された日)は使用することができません。
Q29
Q29
わたしは月 2 回、宿直勤務があります。仮眠時間はありますが、宿
直後の翌日も続けて通常勤務をしなければなりません。拘束時間が長いの
は問題ないのでしょうか。
A
A 所轄の労働基準監督署長の許可を受けている宿日直勤務の場合は、通常の勤務を
終えて宿直勤務をしても、労働時間等の規定が適用されないので拘束時間が長くても問題ありません。したがって使用者は許可基準の宿日直手当を支払えばよく、時間外の割増賃金を支払う必要はありません。
まずは、労基署長の許可があるか会社に必ず確認しましょう。許可がなければ、労働時間に当たる可能性があり、36 協定の締結や割増賃金の支払いが必要となります。また、一度許可があっても業務内容が変化してしまっていることも考えられます。相談者の宿直勤務が、常態としてほとんど労働する必要のない勤務なのか、宿直勤務中に通常の労働をしていないか、よく検討され、宿直勤務と言えない場合は、宿直勤務の見直しなどを会社へ申入れしてください。
宿直又は日直とは、通常の一日の仕事が終わった後、引き続いて翌日の仕事の開始までの時間や休日に、事業場で電話応対、巡視など非常事態に備えて待機するような勤務を言い、その勤務時間帯が夜間にわたり宿泊を要するものを宿直、主として昼間であるものを日直といいます。
本来1日の労働時間は 8 時間、週 40 時間が上限(労働基準法第 32 条)となっていますが、宿日直勤務は常態として、ほとんど労働する必要のない勤務であることから、労働時間,休憩・休日に関する規定の適用除外(※)とされています。ただし、そこには労働者保護の観点から、厳格に判断した上で許可を受けたものについてのみ認めています。
【宿直又は日直勤務の許可基準】
(1)勤務の態 様:原則として通常の労働は許可せず、定時的巡視、緊急の文書または電話の収受、非常事態発生の待機等を目的とするものに限る。常態としてほとんど労働する必要のない勤務のみを認める。
(2)宿日直手 当:相当の手当を支給する(1 回の宿日直手当の最低額は、宿日直につ
くことが予定されている同種の労働者に対して支払われる1 日平均
賃金の 3 分の1)。
(3)宿日直の回数:頻繁にわたるものは許可しない。勤務回数は原則として、日直については月 1 回、宿直については週 1 回を限度とする。
(4)そ の 他:宿直については、相当の睡眠設備の設置を条件とする。
(※)労働基準法では、第 32 条で原則労働時間は 1 日 8 時間、週 40 時間が上限、第 34 条で休憩時間
35
が、第 35 条で原則週1回の休日が、第 37 条で時間外、休日及び深夜の割増賃金が定められており、これらが労働時間等(労働時間・休憩・休日)に関する規定となっています。
Q30
Q30
6 か月契約のパートタイマーとして働いています。契約期間途中な
のに売上が減少し、経営が苦しくなったことを理由にいきなり解雇されま
した。契約どおりの雇用期間、働けると思っていたのに仕方がないのでしょ
うか。
A
A 期間が決まっている労働契約(有期雇用契約)の場合、その期間途中の契約解除は
原則できません。
ご質問のように、使用者の都合で一方的に解雇された場合、労働者は契約期間終了までの賃金に相当する損害賠償を請求することが出来ますが、先ずは使用者に経営が苦しいだけでは「やむを得ない事由」に相当しないことを伝え、当初の契約通りに期間満了まで勤務出来るように申し出て下さい。
また、雇用期間の定めが有る無しにかかわらず、労働者を解雇する時は、使用者は労働者に 30 日以上前に解雇の予告を行うか、解雇予告手当の支払いをしなければな
りません(労働基準法第 20 条)。
労働契約法では、使用者からの期間途中の解約の申し入れについて、「使用者は期間の定めのある労働契約(有期雇用契約)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」と明記してあります(労働契約法第 17 条)。
この場合の「やむを得ない事由」とは、「客観的に合理的で社会通念上相当と認められる事由」(労働契約法第 16 条)よりも狭いと解され、例えば、会社が倒産・天災事変などで事業の継続が困難になった場合や当事者の懲戒解雇等の事由に限定されます。
労働者からの期間途中の解約については、「やむを得ない事由」があれば、直ちに解除できますが、その事由が労働者の過失によって生じた場合は、その損害を賠償しなければなりません。したがって、病気で働けない,家族の介護をしなければならない等の「やむを得ない事由」で退職したい場合は、使用者に相談し、理解を得て退職するようにしましょう。
他に条件の良い就職先が見つかった等の自分勝手な理由で、契約期間中に使用者の了解を得ないで退職することは認められません。
36
使用者の了解を得ないで、契約期間中に一方的に退職すると、トラブルになる可能性があります。
Q31
Q31
先日、会社から「来月いっぱいで辞めてくれないか」と言われまし
た。辞めたくないのですが、どうしたらよいでしょうか。
A
A 会社から「辞めてくれないか」と言われたときは、労働者は解雇だと思ってしま
いがちですが、まず会社に「解雇」なのか「退職勧奨」なのかを確認する必要があります。確認しないままに、「はい、わかりました」などと返答すると、事実上「了解した」と受け止められ、自己都合退職として扱われてしまう可能性があるので、注意してください。
解雇・退職
退職勧奨に応じる場合は、退職金などの支給条件はどうなるのか、離職票の離職理由が「退職勧奨による退職」となるかを、納得のいくまで確認しましょう。納得できないときは、安易に退職届を提出しないことです。辞める気持ちがないのであれば、使用者に「辞めるつもりはありません」と明確に伝えることが大切です。
使用者が労働者を退職させる場合、「解雇」と「退職勧奨」とは大きな違いがあります。
「解雇」とは、使用者の意思で労働契約を一方的に終了させて、労働者を辞めさせることを言います。解雇するには、労働者の無断欠勤や遅刻が著しいなどの合理的な理由が必要であり、その理由が社会通念上、解雇に値するほどの相当性があると認められなければ無効となります。解雇の手続きとして使用者は、30 日以上前に労働者に解雇予告をするか、予告を行わない場合は平均賃金の 30 日以上の解雇予告手当を支払うことが法律で決まっています。また、労働者は解雇が予告された日から退職の日までに、辞めさせられる理由について、使用者に解雇理由証明書を請求することができます。
一方、使用者が労働者に対して退職を勧めることを「退職勧奨」と言います。退職勧奨に応じると退職となり、解雇のような合理的な理由や解雇予告の手続きは必要ありません。よって、使用者が労働者に辞めてほしいときに退職勧奨をすることは問題ありません。退職勧奨であれば、使用者からの申し出に対して「辞める」「辞めない」は労働者の自由な意思で決めることができます。使用者から「辞めてほしい」と言われたとしても、労働者に退職する意思がなければ、応じる必要はありません。
なお、退職勧奨が時に退職強要になるケースもあるので注意が必要です。労働者の自由な選択の中で、退職の意思表示がなされなければなりません。
37
また、退職理由により、失業給付の受給日数が大きく変わったり、待期の有無に影 響したりするので、特に注意が必要です。
Q32
Q32
1 年契約の契約社員として 4 年勤めています。会社から突然「次の
契約は更新しない」と言われました。私は、次も更新されると思っていた
ので困っています。
A
A 3 回以上契約更新または 1 年を超えて継続雇用されている労働者については、少
なくとも期間満了日の 30 日前までに雇止めの予告が必要です(あらかじめ『労働契約を更新しない』と明示されているものを除きます)。
「次の更新はしない」などと言われたときは、雇止めの理由を確認し、働き続けたい意思があれば、使用者に気持ちを伝え、専門機関に早めに相談しましょう。
1年契約など、期間の定めのある有期雇用契約の場合は、通常契約期間が満了したら雇用が終了します。しかし、契約更新を何度も繰り返しているケースが多くみられます。何度も契約を繰り返し更新していた場合に、突然「次の契約を更新しない」と言われることを「雇止め」と言い、雇止め時のトラブルが増えています。
労働契約法第 19 条では、以下の場合には、使用者による雇止めが認められないということが明記されています。
① 何度も繰り返されていた有期契約が、期間の定めのない契約と変わりないと認められるもの。
・更新時に本人の意思確認もなく、手続きも形式的、または手続きしないような状態にあった。
・更新がたびたび繰り返され、特に問題なければ更新される状況にあったような場合。
② 労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていた。採用時に「長く勤めてほしい」といったような長期雇用を期待させる言動があったような場合。
①、②のいずれかに該当する場合、解雇と同様に、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めが認められません。
更新を希望される場合は、更新の意思を使用者に示すことが必要で、それは必ずしも書面による必要はなく、口頭でも構いません。使用者から雇止めを告げられた時に
「嫌だ、困る」などと言えば、“黙示の申込みをしたことになる”とされています。
雇止めの予告後に、労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)。
このように、契約社員やパート社員などの有期雇用契約者であっても、何度も繰り返している場合には、簡単に辞めさせることはできません。
Q33
Q33
1 年契約のパートタイマーとして 5 年目に入り働いていたところ、
仕事中にケガをして労災認定され、治療のため休業中です。先日会社から期間満了を理由に「次の契約更新はしない」と言われてしまいました。復職して働き続けようと思っていたのに、仕方がないのでしょうか。
A
A これまでに 4 回契約更新をしていることから、これまでの更新時と比べて他に異
なる理由が存在せず、次回の更新を行わない理由が休業中というだけであれば、「不当な雇止め」となる可能性があります。
まず、会社に雇止めの理由について証明書を請求し、その内容が不当な雇止めでないか検討してみましょう。また、復職の希望を持っておられるのであれば、治療回復の見込みを使用者に伝え、継続雇用についてよく話し合ってみてはどうでしょか。
正社員でもパートでも、労働基準法第 19 条では、労働者が業務上負傷し、又は病
気にかかり、療養のために休業する期間及びその後 30 日間は解雇できないことになっており、労災で休業している期間はまさにそれにあたります(解雇制限)。
期間の定めがある労働契約が、期間満了により終了すること(雇止め)は解雇では ありませんから、休業中に契約期間満了で労働契約が終了しても違法ではありません。
しかし、有期契約であっても、この契約を反復更新し相当期間にわたって労働関係が継続している場合には、たまたまある契約期間の満了によって労働契約を終了させることは解雇であると考えられます。
1年契約のパートタイマーを何年も雇用しており、更新の都度、新たに契約を結び直していても、反復更新することにより今回も更新されるであろうことを期待することになり(労災がなければ当然更新)、契約期間の満了をもっての雇止めは解雇ですから、解雇制限期間中は雇止めできないことになります。前回の更新と同様に今回も契約更新を行う必要があると考えられます。
Q34
Q34
仕事の内容や職場の人間関係などのトラブルで体調を崩し、夜も眠
れず辛いので会社を辞めようと思っています。先日「辞めたい」と言ったら、
「仕事が忙しいので次の人が決まるまで、辞めてもらっては困る」と言われました。次の人が決まるまで辞めることはできないのでしょうか。
A
A 次の人が決まらなくても、辞めることは出来ます。但し、会社に退職の規定があ
れば、それに従って退職の手続きをしてください。
退職のルールは、契約期間の定めがある契約とない契約で異なります。
【期間の定めのある労働契約の場合】
期間途中での契約解除は使用者・労働者双方共に原則できません(契約内容に退職の事項があればそれに従い辞められる)。但し、やむを得ない事由があるときは契約の解除が出来る(民法第 628 条)ので、まずは話し合ってみましょう。
【期間の定めのない労働契約の場合】
退職届を提出して 2 週間を経過すると、退職理由を要せず退職は成立します(民法第
627 条)。但し、入社時に退職に関する説明を受け、退職のルールについて就業規則の
規定や退職ルールを承諾している場合や労働条件通知書等に記載してある場合、その定められたルールで申出ることが必要です。
退職の申出は口頭でも成立しますが、退職の意思表示を明確にするために退職日を明記した書面(退職届等)を提出しましょう。
どうしても、退職届を使用者が受け取らない場合は、内容証明郵便にして使用者あてに退職届を郵送する方法もありますが、この方法は慎重に行う必要があります。
Q35
Q35
上司から「営業車で事故をしたので懲戒解雇になるかもしれないか
ら、退職願を出して自己都合退職してはどうか」と言われて、退職願を提出しました。しかし、同僚から、そんな理由で懲戒解雇になることはおかしいと言われたので、退職願を撤回したいのですが、提出してしまった退職願の
撤回はできますか。
A
A 退職願の提出が会社の圧力などにより、労働者がやむを得ず提出したものであれ
ば、退職の意思は真意に基づかないものとして無効または取消しを主張することが可能です(民法第 95 条、96 条)。退職願の取消しを主張する場合は、早めに専門家へご相談下さい。
退職の意思が真意に基づかない場合とは、以下のようなものがあります。
し ん りりゅうほ
⚫ 心裡留保
さ く ご
⚫ 錯誤
:労働者が、使用者の要請により退職願を提出したが、使用者も労働者に退職の意思がないのを承知していた場合
:懲戒解雇事由が存在しないのに、懲戒解雇になるかもしれない
と信じて退職願を提出した場合
さ ぎ きょうはく
⚫ 詐欺・強 迫:労働者に対し、懲戒解雇処分があるなどと欺いて、あるいは恐れおののかせて退職願を提出させた場合
また、退職願(ねがい)と退職届(とどけ)は似ていますが、少し異なります。
□ 退職願(ねがい)
労働契約の解約を合意してもらう為の申出。会社に判断を仰ぎ、承諾されると退職となる。
□ 退職届(とどけ)
労働者が一方的に退職の意志表示を会社へするもので、承諾の有無にかかわらず届が受理されると退職となる。受理されると撤回できない。
退職願は雇用契約の合意解約の申込みです。申込みに対して会社の承諾前であれば撤回することは自由です。しかし、会社がすでに承諾している場合は、合意解約が成立している段階なので、退職の意思が真意に基づかないことを立証できないと、撤回は難しくなります。
Q36
Q36
5 年間勤務した会社を辞めることにしました。退職日は、給料締日の 20
日です。会社は退職月の給料の支払いは、通常と同じ翌月 20 日に支払うと言っ
ています。 自己都合退職なので、雇用保険の失業給付はすぐにもらえません。なるべく早く給料を支払ってもらいたいのですが、会社の言うように来月の支払
日まで待っていないといけないのでしょうか。
A
A 退職後に「給料を早く支払ってください」と請求すれば、会社の就業規則に給料
支払日翌月 20 日と規定されていても、会社は請求日から 7 日以内に給料を支払わな
ければなりません(労働基準法第 23 条第 1 項)。
労働基準法では「労働者の死亡または退職の場合で、権利者の請求があった場合に
は、請求を受けた日から 7 日以内に、賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他
い か ん
名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない」と定め
ています。
この場合の「賃金の支払いまたは金品の返還を請求することができる権利者」とは、一般には、労働者が退職した場合にはその労働者本人であり、労働者が死亡した場合にはその労働者の遺産相続人のことを言います。
また、会社に退職金制度がある場合、退職金については行政通達で「退職手当は通常の賃金と異なり、予め就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りるものである」としており(昭和 26.12.27 基収 5483 号、昭和 63.3.14 基発 150 号)、就業規則等に定められている支払時期(例:退職月の翌々月末日支払)に支払いをしても差支えないとされています。ただし、就業規則等に退職金の支払時期の定めがなければ、給料と同様に
7日以内の支払を請求することができます。
退職金の支払いについては、就業規則等に支払いに関する計算根拠や支払い時期が定められていますので、それを確認して支払い請求をすることになります。
したがって、給料については 7 日以内に支払ってもらうよう会社に請求してみましょう。退職金については、就業規則の規定を確認しましょう。
Q37
Q37
今の会社で働き始めて 5 年になりますが、同じような業種の会社へ
転職を考えています。しかし、会社の規定で「退職後に同業他社に転職する
ことは出来ない」との定めがあり、退職時に誓約書も提出しないといけないようです。
もし同業他社へ転職することになったら、会社から損害賠償を請求され
ることはあるのでしょうか。
A
A 就業規則に、同業他社に就職することを禁止する規定(競合避止規定)があった
としても、その規定が合理的な内容でなければ無効となります。合理的な内容の規定であり、かつ、会社に重大な損害を与えて退職した場合(部下を引き抜いて退職した、在職時に得た名簿を持ち出し転職先で使用している等)には、損害賠償を請求される可能性がありますので注意しましょう。その時には早めに専門家へご相談ください。
労働者には、日本国憲法で「職業選択の自由」が保障されています。
一方、会社には、機密情報やノウハウなど社内の貴重な情報が、退職した社員によってライバル会社に流れてしまわないよう、同業他社への転職を制限することも認められています(競合避止規定)。その場合には、就業規則上の明確な根拠が必要となり、その内容が合理的で、労働者に不当な不利益を与えるものでないことも必要とされます。
競合避止規定を適用するには、以下の条件が必要となります。
◼ 転職禁止対象が限定的(この規定を適用できる責任ある職種、地位の労働者か?)
会社の貴重な情報を扱う労働者など、合理的な範囲に限定されていること。
◼ 転職禁止期間が限定的(転職禁止期間に納得できるか)判例によると 2 年程度が妥当。
◼ 転職禁止地域が限定的(競合地域内での競合企業への転職か、起業であるか)担当地域のみに限定するなど。
◼ 相応の代償(在職中に機密の保持分として特別な手当が支給されていたか)機密保持が必要な部署に対しての手当支給など、退職後に労働者の自由が制限されることに相応の代償がされているか。
これらを総合的に考慮して内容に合理性がない場合、競業避止規定は無効となります。
Q38
Q38
パートで働いています。仕事中に転んで右腕を骨折してしまい、1
か月ほど仕事を休むことになりました。治療費のことや休んでいる間、収入がなくなるので心配です。何も補償はないのでしょうか?また、パートでも
労災保険の対象になるのでしょうか。
A
A 労災保険は、パートタイム労働者やアルバイト,日雇労働者などの雇用形態にか
かわらず、すべての雇用されている労働者が適用対象になります。
労働者を 1 人でも雇用する事業主は加入を義務付けられ、保険料は全額事業主が負担します。仮に、事業主が保険料を納付していなくても、労働者は労災保険の給付を請求することができます。
労災保険とは、労働者が業務上の理由(業務災害)や通勤途中(通勤災害)にケガ(負傷)や病気をした時、またそれが原因で障害が残ったり死亡したりした場合に、国が会社等の事業主に代わって、労働者やその遺族に対して労災保険(労働者災害補償保険)から必要な給付を行う制度です。
業務上のケガ(負傷)や病気が労災保険の対象となるか否かの判断は、下記の業務遂行性及び業務起因性が認められることが必要です。
◼ 業務遂行性・・・労働者が労働契約に基づき事業主の指揮命令下に発生したケガ、病気であること。(事業場内で仕事をしている時、作業の準備・後始末をしている時、トイレに行く途中、出張中など)
◼ 業務起因性・・・業務とケガ、病気との間に相当因果関係があること。
労災の対象となるか否かについては、使用者の過失(安全配慮義務)は要件とされず、また労働者に過失(注意義務違反)があっても、上記2要件を満たせば労災となります。
業務上のケガや病気で治療を受ける時は、健康保険を使うことはできません。病院の窓口で、仕事中のケガであることを伝えて治療を受ける必要があります。治療費については、労災指定病院で治療を受ける場合、窓口で支払う必要はなく無料です(療養の給付)。労災指定病院以外の場合は、自分で治療費を立て替えて支払い、後で労働基準監督署へ治療費の請求をします(療養の費用の支給)。
また、労働者が業務上のケガや病気で療養のため仕事を休み、給料が支払われない場合は、休業補償給付を受けることができます。休業 3 日目までの補償は、労働基準
法で定める平均賃金の 60%を事業主が補償し、休業 4 日目からは 1 日につき給付基礎日額の 80%(休業補償給付 60%+休業特別支給金 20%)が支給されます。
44
労災保険に基づく保険給付を受けるためには、被災労働者本人または遺族が請求書に必要事項を記載し、事業主による請求書への証明をもらい、被災労働者の事業場を管轄する労働基準監督署に提出する必要があります。療養の費用の支給の場合は、併せて医療機関の証明も必要です。
Q39
Q39
私は先日、5 年間勤務した会社を退職しました。給与明細書から雇
用保険料が天引きされていたのに、会社が雇用保険の加入手続きをしてい
ないことが、退職後にわかりました。私は失業給付を受けることはできないのでしょうか。
A
A 適用基準を満たしているにもかかわらず、事業主(会社)が雇用保険の加入の届
け出を行っていなかった場合、2 年前まで遡って加入手続きが可能です。また、雇用保険料が給与から天引きされていたことが、給料明細書や源泉徴収票等の書類により明らかである場合は、2 年を超えて天引きが確認できる最も古い時期まで遡って、雇用保険の加入手続きができるようになりました。
このような場合は、まず会社に対して雇用保険への加入手続きを求めましょう。会社が応じてくれない時は、2 年を超えた期間について雇用保険料が給料から天引きされていたことが確認できる資料(給与明細書、源泉徴収票など)を持参して、会社を管轄するハローワークへ相談に行きましょう。
労働保険・社会保険
退職した労働者が、雇用保険の失業給付を受けることのできる日数は、退職時の年齢、被保険者であった期間、離職理由などによって違いがありますが、そもそも失業給付を受けるためには雇用保険に加入していたことが要件になります。
雇用保険は事業所単位で適用され、適用事業に雇用される労働者は、原則として被保険者となります。
適用事業
労働者を 1 人でも雇用する事業は、その業種や事業規模のいかんを問わず、すべて雇用保険の適用事業となります。ただし、個人経営の農林水産業で雇用している労働者が常時 5 人未満の事業は、当分の間、暫定任意適用事業とされています。
適用になる人(被保険者要件)
適用事業主に雇用されているすべての労働者(パート、アルバイトを含む)は、本人の意思にかかわらず、原則として被保険者になります。
ただし、次に該当する者の場合は被保険者になりません。
① 1 週間の所定労働時間が 20 時間未満である者
② 同一の事業主の適用事業に継続して 31 日以上雇用されることが見込まれない者
③ 季節的に雇用される者であって、雇用期間が 4 か月以内であるか、所定労働時間が週 30 時間未満の者
④ 昼間の学生
⑤ 船員保険の被保険者
45
⑥ 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者
Q40
Q40
私は平成 31 年 3 月に 20 年間勤務した会社を 65 歳で定年退職し、
令和元年 5 月より新たな会社へ就職しました。現在、雇用保険に加入してい
ます。労働条件通知書でも加入となっています。加入する必要があるのでしょうか。
A 65 歳以上の労働者も「高年齢被保険者」として原則、雇用保険の対象となります。
A
【適用対象者】以下の雇用条件で働いている人は雇用保険加入の対象者です。
① 平成 29年1月1 日以降新たに 65 歳以上の労働者として雇用された場合
② 平成 28 年 12 月末時点で高年齢被保険者である労働者を平成 29年1月1 日以降も継続して雇用している場合
【適用要件】
上記①・②の新規加入については、1 週間の所定労働時間が 20 時間以上であり、 31 日以上の雇用見込みがあることが適用要件です。
雇用保険は労働者の希望の有無にかかわらず、要件に該当すれば、加入義務があります。
65 歳以上の労働者も、「高年齢被保険者」として原則、雇用保険の対象となっているので、該当する労働者を新規雇用する(継続雇用している)事業所は、各々の届出書を所轄のハローワークへ提出しなければなりません。提出期限は新規雇用の手続きの場合と同様です。
65 歳以上の被保険者も受給要件を満たせば、以下の雇用保険の給付金が支給されます。
・高年齢求職者給付金、育児休業給付金、介護休業給付金、教育訓練給付金
(参考)【高年齢求職者給付金(一時金)】
要 件
高年齢者求職者給付金は、高年齢被保険者が離職し、以下の要件を満たす時に、基本手当に代えて一時金として、要件を満たすごとに支給されます(年金と併給可)。
① 積極的に就職する意思があり、いつでも就職できるが仕事が見つからない離職者であること。
② 離職前 1 年間に賃金の支払の基礎となった日数が 11 日以上ある月が
通算して 6 か月以上必要です。
給付額
被保険者期間が1年未満 → 30 日分
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〃 1年以上 → 50 日分
Q41
Q41
今の会社に入社して 10 年が過ぎました。3 か月前にプライベートで
ケガをして、現在は健康保険の傷病手当金を受給しながら休職中です。
しかし、いつ復帰できるのか分からないし、同僚にも迷惑をかけているので、退職をして治療に専念しようと思っています。その場合、今受給している健康保険の傷病手当金は停止になるのでしょうか。また、失業給付はもら
えるのでしょうか。
A
A 健康保険の傷病手当金と雇用保険の失業給付は、給付の対象が異なっているため、
同時に受給することが出来ません。治療に専念するために退職をお考えであれば、退職後も継続して傷病手当金を受給し、働ける状態になってから失業給付を受給されてはどうでしょうか。そのためには、退職後に、ハローワークで受給期間の延長申請の手続きをすることを忘れないでください。
健康保険の傷病手当金は、病気やケガで療養のために働くことが出来ない日が継続して 3 日以上あり、会社から給料が支払われないときに支給されるものです。支給期間は支給を開始した日から最大 1 年 6 か月までです。もし、支給期間内に退職をしても、次の要件を満たすと、退職後も継続して傷病手当金を受給することができます。
【傷病手当金の受給要件】
① 退職日まで継続 1 年以上被保険者期間があること
② 退職時点で傷病手当金を受給しているか、または受ける条件を満たしていること(ただし、退職日に出勤したときは継続給付を受ける条件を満たさないため退職後の傷病手当金は支給されませんので、注意してください。)
一方、雇用保険の失業給付は、働ける状態の方が失業している場合に給付されるものです。病気やケガ等ですぐには働けない場合は失業給付の対象にはなりませんが、そのようなときは受給期間の延長をすることが認められています。
通常の失業給付の受給期間は、離職した日の翌日から 1 年ですが、受給期間の延長
申請をすると受給期間を最大3年間延長(受給期間が最長 4 年間になる)することが出来ます。
【失業給付の支給要件】
① 雇用保険の被保険者であった方…離職した日以前 2 年間に、雇用保険の被保険者期間が 12 か月以上
ただし、倒産・解雇等によって突然離職を余儀なくされた場合は、離職した日以前の 1 年間に 6 か月以上の被保険者期間があれば可能
② 再就職の意思と能力がある
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③ ハローワークで求職の申込みをしている
Q42
Q42
私はパートで週 20 時間働いており、雇用保険には入っていました
が、厚生年金と健康保険(社会保険)には加入していませんでした。先日会社から、社会保険に入るよう言われましたが、主人の扶養の範囲内で働きたいのですが、入らないといけないのでしょうか?
A
A 社会保険の被保険者の要件が拡大され、その要件を満たす労働者は加入しなけれ
ばなりません。どのような働き方をすればいいのか、家族でよく考えて労働契約を結びましょう。
原則は、勤務時間・勤務日数が常勤雇用者の 4 分の 3 以上働く方が厚生年金保険と
健康保険(社会保険)の加入対象ですが、従業員 501 人以上の企業又は 500 人以下の企業でも労使合意に基づき、要件を満たす方にも対象が拡大されました。
【要件】以下の項目すべてに該当する方
① 週の所定労働時間が 20 時間以上であること(残業時間は含めない)
② 雇用期間が 1 年以上見込まれること(更新の可能性がある方を含む)
③ 所定内賃金の月額が 88,000 円以上であること(通勤手当、残業代、賞与などは含めない)不明な場合は「時間給×1 週間あたりの所定労働時間×52 週÷12 か月」で計算
④ 学生でないこと(ただし夜間、定時制の方は対象)
⑤ 従業員数(社会保険の対象となっている従業員数)が常時 501 人以上又は 500 人以下の場合は労使で合意が出来ていること。
⑥ 現在、75 歳未満であること(厚生年金は 70 歳未満の方)
【社会保険に加入するメリット】
⚫ 将来もらえる年金が増える
⚫ 障害がある状態になった場合などに障害年金がもらえる
⚫ 健康保険の給付も充実し、傷病手当金や出産手当金がもらえる
⚫ 会社も労働者とほぼ同額の保険料を負担するので、個人で国民健康保険に加入している方などは保険料が安くなる
社会保険に加入すると、保険料の負担が増えますが、これまでより手厚い保障を受けることができます。
【その他気をつけるポイント】
〇 社会保険の被扶養者(第 3 号被保険者)かどうかを判断する年収 130 万円の基
準に変更はありませんが、年収 130 万円未満であっても、上の加入要件に当てはまる方は、被扶養者とはならず、自身で社会保険に加入することになります。
48
〇 配偶者が勤務する会社から支給される扶養手当(家族手当等)の支給要件については、各会社によって違いますので、その会社にお問い合わせください。
社会保険の適用関係図
被保険者となる人=適用事業所に使用される全ての人
1 週の所定労働時間 が一般従業員の
1 か月の所定労働日数
}
4分 の3 以上 ある
か?
3/4以上
3/4未満
家族に社会保険の被保険者がいる場合
平成28年10月~
①週20時間以上
②月額賃金8.8万円以上
③1年以上の雇用見込
➃学生は除外
⑤従業員規模501人以上の企業
年収
130万円以上
年収130万円未満
家族の被保険者年収の
半分以上
半分未満
健康保険 被保険者
厚生年金 被保険者
(国民年金第2号被保険者 )
国民健康保険 被保険者
国民年金 第1号 被保険者
健康保険
被扶養者
国民年金 第1号被保険者
※配偶者の場合は第3号被保険者
【被保険者の取扱いに係る留意事項】
短時間労働者(4 分の 3 未満)の標準報酬月額の算定に係る支払基礎日数の取扱い
短時間労働者の算定基礎届・月額変更届等における支払基礎日数は、
各月 11 日以上の勤務日数があるかどうかで判断します。
【もし新たに社会保険に加入する場合】
〇 厚生年金保険と健康保険の加入手続きは勤め先の会社が行いますが、現在、配偶者の健康保険の被扶養者の方は、資格喪失の届出を配偶者の会社を通じて行う必要がありますので、その旨を配偶者の会社に申し出て下さい。
〇 現在、国民健康保険に加入している方は、国民健康保険の資格喪失の届出を自分で行う必要があります。詳しくはお住まいの市町村にお尋ねください。
なお、この社会保険の加入基準を守らない事業主には、懲役刑または罰金刑とする罰則規定が適用されますので、ご注意ください。
49
Q43
Q43
30
退職日について社長と相談をしていたところ、私の社会保険料負担
が多くなるので退職日は月末 31 日ではなくました。どういう意味なのでしょうか。
日にしてはどうかと言われ
A
A 社会保険料は、資格を取得した日の属する月から資格を喪失した日の属する月の
前月まで、月単位で計算されます。この場合の資格を喪失した日とは、退職した日の翌日となります。よって、退職時の社会保険料の支払いは、退職日が月末か月末の前日かによって変わります。保険料のみで考えると、1 か月分少ない方が良いと思われるかもしれませんが、将来年を取った時に支給される老齢年金や、病気やケガなどで身体に障がいが残った時に支給される障害年金の支給要件に影響したり、年金加入月数によって支給額が多くなったりする可能性があるので、よく考えて退職日を決めて下さい。
社会保険の保険料は、資格を取得した日の属する月から資格を喪失した日の属する月の前月まで、会社と労働者で折半して負担しています。資格喪失日は退職日の翌日となります。
月末の1日前で退職した場合は、離職日が月末になるため、月末退職に比べ、社会保険料の負担が 1 か月分少なくなります。例えば、5 月 31 日に退職した場合、資格喪
失日は6月1日になり、社会保険料は 5 月分までが控除されます。5 月 30 日に退職した場合、資格喪失日は 5 月 31 日になり、4 月分までが控除されます。
したがって、月の途中で退職すると、その月の保険料は、会社は負担せずにすみます。労働者も社会保険料を負担しなくていいのですが、その月の国民年金保険料は負担しなければなりません。
なお参考までに、社会保険料は翌月の給料から控除する事が基本なので、4 月分の保険料は 5 月の給料から控除されます。仮に月末の 5 月 31 日に退職した場合、5 月分の保険料も併せて控除されます。
社会保険料の支払いは、原則、翌月の給料から控除されます。例① 5 月 31 日退職・・・5 月分までの社会保険料が発生
⇒5 月分給料から 4 月分と 5 月分の社会保険料を控除例② 5 月 30 日退職・・・4 月分までの社会保険料が発生
50
⇒5 月分給料から 4 月分の社会保険料を控除
Q44
Q44
病気で1カ月近く入院していましたが、月末には退院予定です。入
院中は、様々な検査や手術したこと等で高額の請求が来ると思います。現在、仕事も休職しており、収入が途絶えているためとても不安です。
A
A 健康保険の「高額療養費制度」がありますが、差額ベッド代や食事代等は高額療養費
の支給対象にはなりませんので、ご自身の医療費のどこまでが対象になるのか、また申請方法等について、ご加入の公的医療保険(協会けんぽや健康保険組合など)にご相談下さい。入院などで医療費が高額になりそうなときは、あらかじめ協会けんぽなどに「限度額適用認定証」を交付してもらい、病院の窓口に提示しておくと、窓口での支払いが上限額までとなるので、多額の支払いや払い戻し申請をする必要がありません。また、高額療養費が支給されるまでの数か月間、高額療養費の見込み額の8割を無利子で貸付してくれる「高額医療費貸付制度」もありますので、併せてご相談下さい。
高額療養費制度の支給要件は、以下のとおりです。
① 同一医療機関や薬局で同一月に 1 人の支払った額が上限額を超えた場合に、超えた金額が支給されます(※1)。
② 同一世帯で同一月に 21,000 円以上支払った人が 2 人以上いるときは、それらを合算(1 人が 2 つ以上の医療機関で支払った場合も同様)できます。
③ 療養があった月以前 12 か月以内に既に 3 回以上高額療養費が支給されているときは、4 回目以降は下表の多数回該当額を超えた分が支給されます(※2)。
毎月の上限額は、所得によって異なります。
51
70 歳未満の場合(70 歳以上 75 歳未満の高額療養費算定基準額は別に定める。)
標準報酬月額 | 高額療養費算定基準額(※1) | 多数回該当(※2) |
83 万円~ | 252,600 円+(医療費-842,000 円)×1% | 140,100 円 |
53 万円~79万円 | 167,400 円+(医療費-558,000 円)×1% | 93,000 円 |
28 万円~50 万円 | 80,100 円+(医療費-267,000 円)×1% | 44,400 円 |
26 万円以下 | 57,600 円 | |
低所得者 | 35,400 円 | 24,600 円 |
高額療養費の計算事例
年収約 370~約 770 万円の方で医療費が 100 万円かかった場合
窓口での負担は 3 割なので 30 万円ですが、上限額を計算すると下記のとおりとなります。
80,100 円+(100 万円-267,000 円)×1%=87,430 円・・・実際の自己負担額
既に 30 万円を支払っている場合には、申請すれば、差額(212,570 円)が高額療養費として支給されます。
Q45
Q45
この度、1 年間の育児休業を終了し職場に復帰することになりまし
た。復帰後しばらくは短時間勤務制度を利用するので給料が下がります。その場合、社会保険料はどうなるのですか?
A
A 産休、育休復帰後の社会保険料については、低下した給料に基づいて社会保険料
を下げるための「標準報酬月額の改定」と、将来の年金額に影響しないようにするための「養育期間標準報酬月額の特例」という制度があります。
いずれの制度も、被保険者からの申出により行われる手続きなので、会社の担当者に手続きがされているか確認しましょう。
通常、毎月の給料から控除されている社会保険料(健康保険料、厚生年金保険 料)は各々の給料、時間外手当や通勤手当の合計を等級にあてはめた「標準報酬月
額」を基に計算されています。産前産後休業や育児休業から職場復帰後、3 歳未満の子を養育している被保険者は“育児短時間勤務制度”を利用して勤務時間を短縮することが出来ます。勤務時間が短くなれば給料もその分低下しますが、社会保険料については自動的に下がることはありません。そこで、標準報酬月額を改定する届出をすることで標準報酬月額を下げることが出来ます。それに伴い社会保険料も下がるので毎月の負担を減らすことが出来ます。
これとは別に、養育期間標準報酬月額の特例という制度があります。これは、将来受け取る年金額の計算について、短時間勤務になって給料が低下して標準報酬月額が下がっても、従前(養育を始めた月の前月)の標準報酬月額に基づいて算定されるもので、養育期間中の給料低下が将来の年金額に影響しないようにするための措置です。対象となる期間は、3歳未満の子の養育開始月から3歳到達日の翌日の月の前月までです(それまでに次の子の産前産後休業期間中の保険料免除を開始したときには終了となります)。この特例は夫も対象となり、給料等が下がった理由は特に限られていませんので、夫が育児のために時間外手当が減った場合などでも対象になります。時効は 2 年間なので、退職後であっても遡って適用することが出来ます。
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いずれの制度も、会社の義務ではなく本人の申出により行われる手続きですの で、まずは会社の担当者に手続きがされているのか確認してみましょう。もしされていなかったら、会社経由で手続きをしてもらいましょう。
Q46
Q46
妊産婦の産前産後休業制度や育児休業制度のほかに、経済的支援
制度としてはどのようなものがありますか?
A
A 産休・育休中の経済的な支援については、出産手当金、育児休業給付金や社会
保険料免除の制度があります。
【産休中の経済的支援
産休中の経済的支援】出産手当金
法律で定められた産休中(産前 6 週間、産後 8 週間)の生活を支えるための給付
で、仕事に復帰するママのための制度です。(双子以上は産前 14 週間)対象者:健康保険に加入している従業員
支給額:標準報酬日額(※)×3分の2×産休日数
※社会保険料を決める際の給与額(標準報酬月額)を 30 で割った数値
手続き:会社が協会けんぽ又は健康保険組合に申請をする。
【育休中の経済的支援
育休中の経済的支援】育児休業給付金
雇用保険の被保険者が育休を取得し、賃金が一定水準を下回った場合に支給される制度です。
対象者:休業の開始前 2 年間に、賃金支払い基礎日数が 11 日以上ある月が 12か月以上ある雇用保険の加入者
支給額:休業開始時の賃金日額×支給日数×67%(休業開始から6か月経過後は 50%)
手続き:会社がハローワークにて手続きをする。
【産休中・育休中の保険料免除制度】
産休中・育休中の保険料免除制度
産休・育休期間の社会保険料(健康保険・厚生年金保険)が、被保険者本人負担分及び事業主負担分ともに免除される制度です。社会保険料免除を受けた場合でも、その期間分は全て将来の年金額に反映されます。健康保険の給付も受けられます。
手続き:会社が年金事務所又は健康保険組合に申出をする。
2019 年 4 月 1 日以降は、国民年金に加入している方でも、出産予定日の含まれる
月の前月から 4 か月間、国民年金の保険料が免除されます。ただし、国民健康保険料については免除されません。
出産予定日の 6 か月前から手続きが出来るので、市町村役場の国民年金担当窓口に「国民年金被保険者関係届書(申請書)」の提出を行ってください。
53
Q47
Q47
正社員として工場で働いています。この度妊娠が判明しました。
つわりがひどく、切迫流産のおそれがあると医師に言われました。業務上重いものを持つことが多いため、職場へ報告したところ、「忙しいので長期で休まれては困る。短時間の勤務対応もできないから、辞めてもらうしかないかも。。。」と言われました。働き続けたいのですが、辞めるしか
ないのでしょうか。
A
A 妊娠、出産、産前産後休暇の請求や取得を理由とする解雇、その他の不利益取
り扱いをすることは禁止されています(男女雇用機会均等法第 9 条)。また、使用者は妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務へ転換させなければなりません(労働基準
法第 65 条)。このことから、「妊娠している状態で通常の勤務ができない」ことを理
由に解雇したり、退職を迫ったりすることは違法といえるでしょう。
先ずは働き続ける意思を、はっきりと伝えましょう。つわりや体調不良でつらいときや、職場に配慮してほしい場合には、医師に「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもらいましょう。
妊娠、出産、産前産後休暇の請求や取得を理由とする解雇、その他の不利益取り扱いは、右表のとおりです。
なお、「軽易な業務」への転換については、特に法律で定められていないため、会社と当事者の状況に応じて検討することになります。会社は、軽易な業務を新たに作ることまでは法律上求められておらず、適切な業務がないときは現在の業務で働く時間を短縮するか、休業で対処せざるを得ないこともあるでしょう。その場 合、労働基準法で賃金額の保障はされていないため、転換後の業務内容、賃金については協議が必要です。
母性健康管理指導事項連絡カードは、主治医等が行った指導事項を事業主へ的確に伝えるためのカードです。事業主はこのカードの記載内容に応じ、適切な措置(*)を講じる義務があります(男女雇用機会均等法第 13 条)。これに違反した場合は、厚生労働大臣が勧告し、それでも従わなかった場合は勧告された旨が公表されることもあります。
*指導事項に応じた措置(例)
1. 妊娠中の通勤緩和→時差通勤、勤務時間の短縮等の措置
2. 妊娠中の休憩→休憩時間の延長、休憩回数の増加等の措置
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3. 妊娠中または出産後の症状等への対応→作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の措置
なお、カードの提出がない場合でも、女性労働者本人の申し出等から主治医等の指導内容等が明確であれば、事業主は必要な措置を講ずる必要があります。また、指導等がなくても女性労働者から申し出があった時、会社は主治医等と連絡を取 り、その判断を求めるなど適切な対応を図る必要があります。
また、事業主は女性労働者の症状等に関する情報につき、プライバシーの保護に特に留意する必要があります。
【不利益扱いの禁止の対象となる事由】(男女雇用機会均等法第 9 条、同施行規則第 2 条の2)
① 妊娠したこと。
② 出産したこと。
③ 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め又は当該措置を受けたこと
④ 坑内業務の就業制限もしくは危険有害の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと。又はこれらの業務に従事しなかったこと。
⑤ 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず若しくは産後休業をしたこと。
⑥ 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと。
⑦ 事業場において変形労働時間制がとられる場合において、1 週間又は 1 日について法定労働時間を超える時間について労働しないこと、時間外もしくは休日について労働しないこと、深夜業をしないことを請求したこと、又はこれらの労働をしなかったこと。
⑧ 育児時間の請求をし、または育児時間を取得したこと。
男女雇用機会均等
⑨ 妊娠中および出産に起因する症状(つわり、妊娠悪阻、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠または出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいう)により、労務の提供ができないこと、もしくはできなかったこと、または労働能率が低下したこと。
55
妊娠・出産等を理由とする解雇・不利益取扱いに関する職場でのトラブルは、一人で悩まず各都道府県労働局雇用環境・均等室にご相談ください。
Q48
Q48
1 年契約で 5 年働いています。来年以降の更新があることについて
も、口頭で言われていました。先日、「妊娠したので出産後に育児休業を取りたい」と上司に伝えると「育児休業は正社員しか取れない」と言われました。育児休業を取得して、復職したいと思っていたのでとてもショックでしたが、上司が言うように私は有期契約労働者なので、育児休業を取ることは出来ないのでしょうか。
A
A 有期契約労働者(期間を定めて雇用されている方)であっても、下記の要件を満
たす場合には、育児休業の取得が法律により認められています。
① 同一の事業主に引き続き 1 年以上雇用されていること。
② 子が1歳6 か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと。
再度、上司に相談して、法律の内容をよく理解してもらいましょう。
【有期契約労働者の育児休業の取得要件】
① 同一の事業主に引き続き 1 年以上雇用されていること。
育児休業申出の直前の 1 年間について、勤務の実態に即し雇用関係が実質的に継続していることをいいます。契約期間が形式的に連続しているか否かにより判断するものではありません。
② 子が1歳 6 か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと。
育児休業の申し出があった時点で、労働契約の期間満了が確実であるか否かによって判断されます。
上記②の要件を満たさないケースとしては、次のようなものがあげられます。
■ 書面又は口頭で、労働契約の更新回数の上限が明示されており、その上限まで契約が更新された場合の労働契約期間の末日が、子が 1 歳 6 か月に達する日までの間である。
■ 書面又は口頭で、労働契約の更新をしない旨の明示がされており、申出時点で締結している労働契約の期間の末日が、子が 1 歳 6 か月に達する日までの間である。
ただし、上記■のケースに該当する場合であっても
・ 雇用の継続の見込みに関する事業主の言動
・ 同様の地位にある他の労働者の状況
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・ 当該労働者の過去の契約の更新状況等の実態を見て判断することもあります。
左記の通りの適用が基本ですが、労使協定により、次のような労働者は育児休業をすることができないという定めがその事業所(会社)にある場合は、事業主は労働者からの育児休業の申し出を拒むことができるようになっています。
⚫ その事業主に継続して雇用された期間が1年に満たない労働者
⚫ 育児申出の日から 1 年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
⚫ 1 週間の所定労働日数が 2 日以下の労働者
適用除外者でないことを確認し、回答欄Aの①、②の要件を満たしていれば、正社員でなくても育児休業を取得することができます。再度、上司に相談して法律の内容をよく理解してもらいましょう。
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パートやアルバイトなど1日の労働時間が通常より短い方であっても、期間の定めのない労働契約によって働いている場合は、取得の対象者になります。
Q49
Q49
育休をとり職場に復帰したあと、子供の送迎のために終業時刻を早
くしてもらっています。しかし、同僚から「あなたが早く帰るせいで、まわ
りは迷惑している」と何度も言われ、精神的にまいっています。どうしたらいいでしょうか。
A
A 妊娠・出産・育児休業などを理由とする上司や同僚からのハラスメントは「マタ
ニティハラスメント(マタハラ)」といい、事業主はハラスメントに対する防止措置を講じることが義務付けられています。
マタハラを受けたときは会社の相談窓口か労働組合に相談しましょう。相談しにくいときは社外の相談窓口にご相談ください。
【マタハラの嫌がらせの例示】
1 制度等(※)の利用への嫌がらせ型
・制度等の利用を阻害する言動
・解雇や不利益取扱いを示唆する言動
・嫌がらせ等をする言動
例)・妊娠により立ち仕事を免除されていることを理由に「あなたばかり座って仕事してずるい!」と仲間外れ。
・男性が育休を申し出たが「男のくせに育休をとるなんてあり得ない」と言われ断念。
※ 制度等とは男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法の法律が対象とする母体保護や育児・介護の両立支援のための制度等のことです。
2 状態への嫌がらせ型
・妊娠・出産等を理由に解雇その他不利益取扱いを示唆する言動
例)先輩から「就職したばかりのくせに妊娠して、産休・育休をとろうなんて図々しい」と何度も言われ、就業意欲が低下している。
・妊娠・出産等を理由に嫌がらせ等をする言動
対象となる事由(状態)
①妊娠したこと、②出産したこと、③産後休業を取得したこと、
④つわり等で能率が下がったこと など
【事業主の義務】(すべての事業主に義務付けられています。)
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
ハラスメントを許さない旨の方針を事業主が明確に示し、制度等の利用ができることを周知啓発する
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備相談しやすい相談窓口(担当者)を社内に設ける
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(3)職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応相談があったとき速やかに事実確認し、被害者への配慮、行為者への処分等の措置を行い、改めて職場全体に対して再発防止の措置を行う
(4)職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置業務体制の整備など、必要な措置を講じる
(5)マタハラを相談した場合のプライバシー保護などのルールの周知を図る
このように、マタハラに対してすべての会社は速やかに対応をすることや相談窓口を整備することが義務付けられましたので、社内の相談窓口や労働組合に相談してみましょう。まだ窓口が設けられていないときや、社内では相談したくないときは外部の相談窓口に相談してください。
【不利益取扱いの禁止】
妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由として、以下のような不利益な取扱いをすることは法律で禁止されています。
例えばこんなことを理由として
こんな取扱いを受けたら法違反です
・妊娠した、出産した
・妊婦健診のため、仕事を休んだ
・つわりや切迫流産で仕事を休んだ
・産前・産後休業をとった
・育児休業・介護休業をとった 等
・解雇された
・契約が更新されなかった
・パートになれと強要された
・減給された
・通常ありえない配置転換をされた 等
会社が法違反の不利益取扱いを行った場合、行政指導や悪質な場合には事業主名の公表が行われる可能性があります。さらに、訴訟や交渉の結果、会社は解決金や損害賠償金、慰謝料の支払いを求められることもあります。
(参考)制度を利用することは権利として認められていますが・・・
妊娠・出産・育児や介護のための様々な制度は、要件を満たせば利用する権利が法的に認められています。ただ、休業や短時間勤務をすることにより、上司や同僚の仕事にも影響を及ぼす場合があることを忘れてはなりません。
日頃から自分の状況等を知らせるなど上司や同僚とコミュニケーションを図り、感謝の気持ちを忘れず、あなたの妊娠・出産・育児・介護を応援してくれる仲間を増やしていくことも大切です。
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また、利用があたりまえと思わず、上司や同僚とコミュニケーションを図り、ありがとうの気持ちを忘れないください。
Q50
Q50
夫の父が病気で倒れ、介護が必要な状態となりました。介護施設に
入所するまでには時間がかかるので、介護休業を取りたいと思いますが、
仕事と介護を両立するための制度には、どんなものがあるのでしょうか?
A
A 両立支援制度には、介護休業や介護休暇、所定労働時間の短縮等の措置、法定時
間外労働・深夜業の制限、所定時間外労働の免除制度などがあります。会社に申し出、申
請をして利用してください。
介護休業:要介護状態にある家族(※)1 人につき 93 日を上限に 3 回まで分割して取得できます。
※ 要介護状態にある家族とは、負傷、疾病又は身体もしくは精神の障害により、2 週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態にある者で、配偶者・父母・子・配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹・孫が対象。
介護休暇:要介護状態の家族の介護、通院の付添い、その他の世話を行うために、対象家族が 1 人の場合は 1 年間につき 5 日、2 人以上の場合は 1 年間につき
10 日を限度として、1 日単位または半日単位で介護休暇を取得できます
(2021 年 1 月から時間単位での取得も可能)。
所定労働時間の短縮等の措置:介護休業とは別に、会社が選んだ次のいずれかの制度を、利用開始から 3 年の間で 2 回以上利用することができます。
①所定労働時間の短縮 ②フレックスタイム ③始業・終業時刻の繰上げ繰下げ
④介護サービスの費用助成、その他これに準ずる制度
法定時間外労働・深夜業の制限:労働者が請求した場合、1 か月 24 時間、1 年 150 時間を超える法定時間外労働、また深夜労働(午後 10 時から午前 5 時まで)をさせることは出来ません。
所定時間外労働の免除(残業の免除):労働者が請求した場合、介護終了までの期間について所定労働時間を超えて労働させることは出来ません。
なお、介護休業や介護休暇などの取得を申し出たり、取得したりしたこと等を理由に解雇や不利益な取り扱いをすることは、法律で禁止されています。
介護休業中の賃金の有給無給については、法律上特に定めはありません。賃金が支
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払われない場合には、雇用保険より介護休業給付金として休業開始時賃金日額の 67%相当額が給付されます。
有期契約労働者の介護休業取得には、以下の要件をすべて満たす必要があります。
①入社1年以上
②介護休業開始予定日から 93 日経過後6か月経過する日までに契約期間が満了しないこと
Q51
Q51
転職して 3 年になりますが、今の会社では職場の健康診断を一度も
受けたことがありません。以前勤務していた会社では、健康診断(年に 1 回)を受けていました。健康診断をするかしないかは、会社によって違うものでしょうか。
A
A 業種,規模を問わず、常時使用する労働者への健康診断の実施は、事業主の義務で
す。会社で 1 年に 1 回の健康診断が実施されていない場合は、法律に違反しますので、健康診断を実施してくれるように会社へ要請しましょう。それでも会社が健康診断を実施しない場合は、労働基準監督署へご相談ください。
健康診断の実施が必要な常時使用する労働者とは
① 1 年以上使用される予定の者(特定業務従事者は 6 月以上使用される予定の者)
② 同種の業務に従事する労働者の 1 週間の所定労働時間数の 3/4 以上である者
以上の二つの要件を満たせばパート、アルバイトも健康診断を受けさせないといけません。
主な健康診断には次のようなものがあります。
◼ 雇 入 時 の 健 康 診 断 常時使用する労働者を雇い入れるときに行います。
◼ 定 期 健 康 診 断 常時使用する労働者について 1 年以内ごとに 1 回、
定期的に一定の項目について行います。
◼ 特定業務従事者健康診断 坑内労働、深夜業等の有害業務に従事する労働者につ
いて 6 か月以内ごとに 1 回、定期的に行います。
健康診断は法律により事業者に義務付けられているため、費用については事業者が負担すべきものとされています。
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そ の 他
また、一般の定期健康診断の場合は、受診に要した時間の賃金を支払うことが望ましいですが、特定業務従事者の場合は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものなので、所定労働時間内に行われることを原則としています。よって、特定業務従事者健康診断の実施に要する時間は労働時間と解され、賃金の支払いが必要となっています。
Q52
Q52
現在、大学生でアルバイトをしています。毎月の収入は、このアル
バイト代のみで月 10 万円ほどです。年明けに、アルバイト先から『源泉徴
収票』というものを渡され、「手続きは自分でして下さい」と言われました。
何をすれば良いのかわかりません。
A
A 所得税を納めなければいけない一定の収入額は一般的に103 万円ですが、大学生等
の場合(所得税法上の勤労学生※1)は 130 万円となります。ご質問のように、大学生アルバ
イトで毎月 10 万円の収入であれば、1 年間の総収入は 120 万円となり所得税はかかりません。
会社から渡された『源泉徴収票』には、「支払金額」に 1 年間の収入額、「源泉徴収税額」に見込みで控除した所得税が書かれているだけだと思います。支払う必要のない所得税を仮払いしている状態なので、税務署に行って確定申告をし、還付してもらいましょう。
所得税は、アルバイトであっても一定の収入があれば納めなければいけません。会社で働いたり、アルバイトをしたりすると、毎月の給与の課税対象額が 88,000 円以上の場合は所得税(見込み額)が控除されています。12 月の給与が支払われると、その年 1 年間の給与額が確定し、所得税の額も確定します。毎月控除されていた所得税
(見込み額)の合計と、1 年の終わりに確定した所得税(確定額)との差額を調整する必要があり、これを年末調整と言います。一般的には年末の給与を支払う時に年末調整で会社が精算をしてくれる場合が多いですが、アルバイトや中途退職者等は「自分で手続きをして下さい」と言われることもあるようです。その場合は、会社から渡された『源泉徴収票』を持って自分で税務署に行き、手続きをする必要があり、これを確定申告といいます。
『源泉徴収票』には、その年の 1 年間(1 月 1 日から 12 月 31 日)にその会社から得た個人の所得(給与等)と、それに対してかかる税金(所得税)が記載されています。
学生等で扶養親族等がいない場合、年間収入額(非課税分の通勤手当を除く)が 103 万円以下の時は年間所得に対して所得税は課税されませんので、確定申告をすると、月々の給与から控除されていた所得税が還付されます(勤労学生に該当する場合は 130 万円以下の時非課税)。
年の中途で勤務先やバイト先を変更した場合、所得税は個人の所得に対して課税されるので、交付された複数の源泉徴収票を確認し、必要があれば確定申告をしましょう。
個人の収入に応じて納める税金には、所得税以外にも住民税があります。住民税については、住民登録されている市町村へ確認してください。
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所得税については、5 年前まで遡って還付請求することも出来ますので、該当する場合は税務署で手続きをしましょう。
※1 所得税法上の勤労学生(夜間学生や通信教育学生も含む)
・学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
・国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
・職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの
以上の学校に当てはまるかどうかわからないときは、通学している学校の窓口で確認してください。
◼ 家族の扶養になっている場合は、アルバイト収入によっては扶養から外れる事になり家族が支払う税金が増える可能性があります。
◼ 手続き等で分からない事があれば税務署に相談しましょう。
◼ 会社は社会保険の各種届出やバイト代金の支払い報告書に名前とマイナンバーを記載することが必要です。社会保険に加入しなくても、支払い報告書を会社が行政に提出する必要があります。従って、アルバイトであってもマイナンバーの提出が求められます。
例
夫
所得税(38万円)
扶養控除
所得税 非 課 税
配偶者控除 配偶者特別控除(最高38万円)が受けられる
扶養控除が受けられない
課
税
健康保険
国民健康保険
社会保険(自身()従業員500人超)
社会保険(夫)の扶養
社会保険(自身)
住民税非課税※2 課 税
年収(給与収入)93万 103万 106万 130万 150万 201.6万
20
所得税 非課税
親の扶養親族から外れる
課
税
健康保険
国民健康保険
社会保険(親)の扶養
課
社会保険(自身)
住民税非課税※2
税
妻(扶養なし)
2019 年の夫の給与収入が 1,120 万円以下の場合(2020 年から変更あり)
歳以上の
勤労学生
子
※2 非課税限度額は市町村による(鳥取市:96.5万円)。住民税非課税世帯は、世帯全員の状況で判断されます。
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Q53
Q53
転勤してきた店長からミスをしたことをきっかけに、自分だけが
みんなの前で頻繁に怒鳴られ、昼休憩時間もおかまいなしに説教されています。
同僚たちは「店長の言動は行き過ぎだ」と言ってくれますが、だれも店長が怖くて何も言うことはできません。この頃は店長と顔を合わせるのが怖く、夜も眠れなくなりました。どうしたらよいでしょうか。
A
A 職場でパワーハラスメントを受けている場合は、証拠を記録しておくことが大切
です。いつ、だれが、どのように行ったのか、その場に居合わせた人などできるだけ詳しく記録しておきましょう。店長に直接パワハラ行為をやめてほしいと言うことが難しい場合は、証拠を持って本社に職場環境の改善や配置転換を求めましょう。
それでも改善されない場合は、労働局や弁護士などの専門機関に相談しましょう。また、心身に不調がある場合には、医師の診断を受け診断書を提出して、会社の病
気休暇や休職制度,有給休暇をとるなどして、心身の回復を図ることも考えましょう。
職場におけるパワーハラスメントとは、以下の 3 つの要素全てを満たす必要があります。
① 優越的な関係を背景とした
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
③ 就業環境を害すること
①優越的な関係 とは
上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩や同僚間、業務上必要な知識や豊富な経験を有しているかどうか、なども含まれる。また、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動 とは
社会通念に照らし、当該言動が「明らかに業務上必要性がない」又は「その態様が相当でないもの」を指します。この判断に当たっては、様々な要素(言動の目的、業務の内容や性質、当該言動の態様・頻度・継続性、行為者との関係性等)を総合的に考慮することが必要です。
③就業環境を害する とは
当該言動により、労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、看過できない程度の支障が生じることをさし、この判断に当たっては「平均的な労働者の感じ方」を基準とされています。
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パワハラの典型的な行為
精神的な攻撃
人間関係からの切り離し
一人だけ別室に席を移されるあいさつしても無視される
身体的な攻撃
胸ぐらをつかまれる
こうげき
たた なぐ け
ぼうこう
叩く、殴る、蹴るなどの暴行を受ける
長時間くり返し叱られる
どろぼう
ば とう
どと罵倒される
給料泥棒
おはよう
ございます
・・・
役立たず
「役立たず」「給料泥棒」な
過小な要求
プライバシーの侵害
家族や恋人のことをしつこく聞かれる
スマホを勝手にのぞかれる
過大な要求
達成不可能なノルマを課される他人の仕事を押しつけられ仕事が終わらない
仕事が与えられない
今日はデートなんだ
スマホ見ない
でください
今日もお前は
掃除だ!
仕事が終わらない、
どうしよう・・・
毎回掃除や草むしりしか命じられない
ふ かい
※ただし、業務上必要な指示や注意を不快に感じても、「業務の適正な範囲」内であれば、パワハラには当たりません。
パワハラの加害者は、被害者の名誉・プライバシーなどの人格を侵害する不法行為として、損害賠償責任を問われることがあります。また、会社には労働契約上、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ働くことできるように配慮する義務があるので、ハラスメントを放置しておくと、安全配慮義務違反として会社も法的責任を問われることがあります。
2019 年(令和元年)6 月 5 日に公布の法律で、パワーハラスメント防止対策が法制化されました。このことにより、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となりました(労働施策総合推進法)。
【雇用管理上の措置の具体的内容】
・事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発
・苦情などに対する相談体制の整備
・被害を受けた労働者へのケアや再発防止 等
事業主は、パワハラの原因や背景となる要因を解消するために、次のような取り組みを行いましょう。
⚫ コミュニケーションの活性化や円滑化のための定期的な面談やミーティング
⚫ 感情をコントロールする手法やコミュニケーションのスキルアップ,マネジメントや指導についての研修会の実施
⚫ 適正な業務目標の設定や適正な業務体制の整備
⚫ 労働者に過度に肉体的・精神的負荷を強いる職場環境や組織風土の改善
Q54
Q54
現在の障害者雇用の算定基礎に精神障害者を加えるなど法定雇用
率の算定基礎が見直しになったと聞いたのですが、具体的に何が変わって
いるのでしょうか?
A
A 法定雇用率の算定基礎の対象に、精神障害者が追加されました。
障害者雇用促進法では障害者法定雇用率が設定されており、すべての事業主は法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があり、民間企業の雇用率は現在 2.2%と定められています。従って従業員 45.5 人以上の事業主は、1 人以上雇用する義務があります。
【障害者雇用促進等に関する法律】
① 法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務
② 雇用の分野での障害者差別の禁止
③ 雇用の分野での合理的配慮の提供義務
④ 相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助義務
【障害者雇用率】
民間企業:2.2% 国及び地方公共団体:2.5% 都道府県等教育委員会:2.4%
(2021 年 3 月末までに、さらに 0.1%ずつ引き上げ)。
【障害者の範囲】
障害者雇用率制度上では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています(短時間労働者は原則 0.5 人カウント)
【障害者雇用納付金制度】
法定雇用率を未達成の企業のうち、常用労働者 100 人超の企業から、障害者雇用納付金が徴収されます。この納付金を元に、法定雇用率を達成している企業に対して、調整金、報奨金が支給されます。
『 労働相談 Q&A みなくる通信より 』 正誤表
本書中、下記のとおり誤りがございました。
謹んでお詫び申し上げますと共に、下記のように訂正いたします。
誤 | 正 | |
8 頁 19~20 行目 | 就業の実態等に違いがなる場合は | 就業の実態等に違いがある場合は |
25 頁 1~5 行目 | 特別条項付き協定を結んだ場合でも、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1 か月については 100 時間未満でなければならず、かつ 2 か月から 6 か月までの平均が全て 80 時間を超えてはならないことになっています。また、時間外労働及び休日労働を合算して年 720 時間以内にしなければなりません。 | 特別条項付き協定を結んだ場合でも、時間外労働は年 720 時間以内にしなければなりません。また、休日労働を含む時間外労働は、1 か月について 100 時間未満でなければならず、かつ 2 か 月から 6 か月までの平均が全て 80 時間を超えることはできません。 |
(2020.5.22)