派遣労働 Q&A
第1部
派遣労働 Q&A
Q1
A1
派遣労働者とは、どのような働き方をする労働者なのですか?
派遣労働者とは、労働契約を結んだ派遣元の指示で派遣先へ赴き、
派遣先の指揮命令を受けて働く労働者です。
派遣労働とは、労働者と派遣労働契約(労働契約)を結んだ会社(派遣元)が労働者派遣契約(派遣契約)を結んでいる会社(派遣先)へ労働者を派遣し、労働者は派遣先の指揮命令に従って働くという働き方です。派遣先は労働者から労務の提供を受けた後に派遣元に派遣料金を支払い、派遣元は、派遣料金の中から派遣労働者へ賃金を支払います。
図1 派遣労働における契約関係
派遣労働は、労働契約を結んだ会社の指揮命令を受けて働く働き方(直接雇用)とは異なり、指揮命令をする会社と賃金を支払う会社が別であるため、いろいろな問題が生じることがあります。
そこで、派遣労働者の雇用の安定、福祉の増進を図るため、労働者派遣法(労働
者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)及び派遣元指針(派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針)、派遣先指針(派遣先事業主が講ずべき措置に関する指針)が定められ、派遣元と派遣先がそれぞれ講ずるべき措置等を示しています。
派遣労働は、労働者の契約形態によって「常用型」と「登録型」の二つに分けられます。
登録型派遣労働者は、派遣元に氏名や希望する業務、スキル等を登録しておき、仕事の依頼を受けたときにだけ派遣元と労働契約を結び、派遣先で働きます。登録型派遣労働者の場合は、派遣元は派遣先から依頼を受けると、自社に登録している労働者の中から、適性、スキル、希望条件等を考慮したうえで、派遣先の示す条件に近い労働者を選びます。派遣元は、労働者の承諾が得られたら、その労働者と労働契約を結び、労働者を派遣先で就業させることになります。
一方、常用型派遣労働者は、派遣元と常に労働契約を結んでいる状態で、派遣先
で働きます。
☞ 詳しくは、第2部第2章 労働者派遣と労働者派遣法
「1 労働者派遣・派遣労働とは」(P 27)へ
Q2 「派遣」と「請負」は何が違うのでしょうか?
A2 請負では、注文主と労働者との間で、契約や指揮命令の関係がありません。
労働者派遣と取り違えやすい働き方として、請負があります。請負とは、請負業者が注文主と請負契約を結んで仕事を引き受け、請負業者自身が雇用する労働者を指揮命令して、請負業者の責任で仕事を完結させるものです。請負の場合は、労働者派遣と異なり、業務の遂行に関する指示や、労働時間管理に関する指示等については、請負業者自らが行います。
図2 労働者派遣と請負の契約の違い
労働者派遣】
労働者派遣契約
【請負】
請負契約
派遣元 派遣先 請負業者 注文主
労働契約
指揮命令関係 指揮命令関係
労働契約
労働者 労働者
労働者派遣事業を行うためには、厚生労働大臣の許可が必要です。許可のない事業主が、形式的には請負契約のかたちをとりながら、実際には注文主が直接労働者に対し就業時間や場所を指定したり指揮命令を行ったりするなど、事実上の労働者派遣を行っている場合があります(いわゆる「偽装請負」)。偽装請負は、労働者派遣法、職業安定法に違反します。また、偽装請負では、労働基準法や労働安全衛生法等に定められた派遣元・派遣先の様々な責任があいまいになってしまうため、労働者の労働条件や安全衛生が十分に確保されず、トラブルが起こりがちです。
もし、自分の働き方が、「偽装請負」に該当するのではないかと思い当たることがあれば、東京労働局需給調整事業部(P 89)などの行政機関に相談するとよいでしょう。
また、派遣で働くときには、労働者派遣法の許可を受けた派遣会社を選びましょう。
※厚生労働省「人材サービス総合サイト」で確認できます。
☞ 詳しくは、第2部第2章 労働者派遣と労働者派遣法
「3 労働者派遣と類似した三者関係」(P 28)へ
【参考】派遣と請負との区分に関する基準(概要)
~昭和 61 年 4 月 17 日労働省告示第 37 号~
以下の項目に一つでも該当しない場合は、適正な請負ではなく、労働者派遣事業を行うものと判断される可能性があります。
□ 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を、受託者が自ら行っている。
□ 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を、受託者が自ら行っている。
□ 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く)を、受託者が自ら行っている。
□ 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの単なる把握を除く)を、受託者が自ら行っている。
□ 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を、受託者が自ら行っている。
□ 労働者の配置等の決定や変更を、受託者が自ら行っている。
□ 業務の処理に関する資金について、すべて受託者自らの責任の下に調達し、かつ支弁している。
□ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を受託者が負っている。
□ 受託者が自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く)又は材料若しくは資材により、業務を処理している。又は、受託者が自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理している。
Q3
A3
派遣で働くことができないのは、どのような場合でしょうか?
派遣で働くことができない業務があります。
また、日雇いや、退職後一定の期間は派遣で働くことができないルールもあります。
1 法律で労働者派遣事業を行うことができない業務として次のものがあります。
①港湾運送業務
②建設業務
③警備業務
④病院等における医療関係業務
(ただし、紹介予定派遣・産休等代替・へき地の医師を除く)
⑤弁護士・税理士等のいわゆる「士」業務(一部例外あり)
2 日々又は 30 日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣(いわゆる「日雇派遣」)は、原則として禁止されています。
ただし、①情報処理システム開発、機械設計、通訳・翻訳、速記、秘書、添乗、研究開発などの一定の専門的な業務、② 60 歳以上の者や昼間学生など、雇用機会の確保が特に困難な場合として政令で定められる場合は、例外的に日雇派遣が認められています。
3 退職後、1年以内に同じ会社に派遣労働者として就労することはできません。ただし、60 歳以上の定年退職者は、この制限の対象から除かれます。
☞ 詳しくは、第2部第4章 禁止・制限される派遣態様
「1 派遣禁止業務」
「2 日雇派遣の禁止」
「5 離職後1年以内の労働者の派遣禁止」(P 40 ~ 41)へ
Q4 A4
同じ派遣先で何年間でも派遣社員として働くことができますか?
派遣で働くことができる期間に制限がある場合があります。
派遣先が派遣労働者を受け入れることができる期間は、以下のように場合によって異なります。
1 派遣受入期間に制限のない場合
(1)無期雇用派遣労働者に係る労働者派遣
派遣元に無期雇用されている場合には、受入期間の制限はありません。
(2)60 歳以上の派遣労働者
60 歳以上の派遣労働者には、受入期間の制限はありません。
(3)有期プロジェクト型業務
事業の開始、転換、拡大、縮小または廃止のために必要な業務で、一定期間内で完了することが予定されている業務への派遣については、その業務が完了するまでの期間であれば、受入期間の制限はありません。
(4)日数限定業務
1か月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の所定労働日数の半分以下で、かつ 10 日以下であるような業務への派遣については、受入期間の制限はありません。
(5)産前産後・育児・介護休業を取得する労働者の業務
従業員が産前産後休業や育児・介護休業を取得するときに、代わりの従業員を補充するための派遣労働者の受け入れは、受入期間の制限はありません。
2 派遣受入期間に制限のある場合
上記(1)~(5)以外の場合には、派遣受入期間に制限があります。
受入期間の制限には、①事業所単位と②個人単位の2つの考え方があります。
①派遣先事業所単位の期間制限
同一の派遣先の事業所に対し、派遣できる期間は、原則、3年が限度となります。派遣先が3年を超えて受け入れるには、派遣先の過半数労働組合等からの意見を聴く必要があります。
図3 派遣先事業所単位の受入期間の制限
受入は原則上限3年
3年(意見聴取が必要)
Aさん
Bさん
Cさん
Dさん
Eさん
Fさん
Gさん
Gさん
3年
事業所
②派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(課など)に対し派遣できる期間は、3年が限度となります。
図4 派遣労働者個人単位の期間制限
3年
Aさん
同じ人を同じ課へ派遣できる
のは上限3年
Aさん
別の課ならOK
Aさん
Y
課
2係
1係
X
課
☞ 詳しくは、第2部第4章 禁止・制限される派遣態様
「6 派遣の期間制限」(P 42)へ
Q5
A5
法律に違反する労働者派遣が行われた場合、どのようになるのでしょうか?
派遣労働者からの申告等をきっかけとして、厚生労働大臣(または都
道府県労働局長)の指導等が行われる可能性があります。
また、派遣先は、期間制限に違反して派遣受入をした等の一定の場合に、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたものとみなされます。
派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合など、違法状態が発生した時点で、派遣先が派遣労働者に対し、労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなされます(労働契約申込みみなし制度)。
労働者が申込みの承諾をしたら、労働者と派遣先との契約(直接雇用)が成立します。契約が成立した場合の労働条件は、派遣元における労働条件と同一の内容になります。
〈「労働契約申込みみなし制度」についての裁判例〉
原告(労働者 5 人)は、被告(東リ)らが、派遣法第 40 条の 6 の適用を免れる目的で請負名目の契約を締結し、労働者派遣の役務をさせたとして、直接雇用の申し込みみなし制度の適用を求め、被告との間に無期労働契約が存在すること等の確認を求める訴訟を提起した。裁判所は、被告が原告ら労働者を偽装請負で就労させてきたと認定し、さらに「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、労働者派遣の役務の提供を受けている法人の代表者又は当該労働者派遣の役務に関する契約の契約締結権限を有するものは、偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認する」という判断を示しつつ、派遣法等の規定の適用を免れる目的があったことも認定した。
本判決は、労働契約申込みみなし制度により労働契約の成立を認めたリーディングケースである。(東リ事件 最高裁 令和 4 年 6 月 7 日)
☞ 詳しくは、第2部第3章 労働者派遣に関わる義務とその違反
「4 労働契約申込みみなし制度」(P 37)へ
Q6
A6
6か月間派遣社員として働けば、正社員になることができる制度があるそうですが、本当ですか?
必ず正社員になれるわけではありませんが、派遣契約を結ぶときに、「紹
介予定派遣」で派遣労働契約を結ぶと、派遣先で直接雇用される可能性があります。
紹介予定派遣とは、派遣の開始前または開始後に、派遣元が、派遣労働者及び派遣先に対して職業紹介することを予定して派遣就業させるというものです。
紹介予定派遣制度を活用することによって、派遣労働者は、派遣先の仕事の内容や会社の雰囲気を理解した上で就職することができ、派遣先は派遣労働者の適性、能力をじっくり見極めた上で、その労働者を直接雇用するかどうかを判断することができるというメリットがあります。
紹介予定派遣の場合は、派遣期間は6か月を超えてはいけません。
に係る雇用契約にて就業開始
紹介予定派遣契約、紹介予定派遣
・派遣期間は最長6か月間
・派遣期間中に派遣労働者は仕事への適正等を確認し派遣先は派遣労働者の職務遂行能力等を判断する。
・求人条件の確認
・採用意思の確認
・求職条件の確認
・就職意思の確認
入社
派遣元企業
正式採用
双方の合意
派遣社員
派遣先企業
双方への確認・紹介
派遣契約期間終了
ただし、紹介予定派遣で派遣労働契約を結んだ場合であっても、6か月後に必ず派遣先に直接雇用されるとは限りません。また、派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合であっても、必ずしも正社員として雇用しなければならないというものではなく、例えば3か月間の有期雇用などでもよいことになっています。
なお、紹介予定派遣の場合に限り、スムーズに直接雇用へと移行できるように、派遣就業開始前に派遣先が派遣労働者の面接を行ったり、派遣元から労働者の履歴
書を取り寄せたりすることができます。
また、派遣就業開始前または派遣就業期間中に、求人条件を明示することや、派遣就業期間中に採用の内定等を行うことが認められています。
☞ 詳しくは、第2部第2章 労働者派遣と労働者派遣法
「4 紹介予定派遣」(P 31)へ
Q7
A7
派遣会社に登録したいと思っています。どのようなことに気をつけて派遣会社を選べばよいのでしょうか?
派遣会社がインターネット等で公開している情報などを参考にしながら、信頼できる派遣会社を選びましょう。
以下の情報を事業所ごとに公開することが、派遣元の義務とされています。
① 事業所毎の派遣労働者の数
② 派遣先の数
③ 労働者派遣に関する料金の平均額
④ 派遣労働者の賃金の平均額
⑤ マージン率
⑥ 労使協定を締結しているか否か
➍ 労使協定を締結している場合には、対象の範囲及び有効期間の終期
⑧ 教育訓練に関する事項
⑨ その他参考になると認められる事項
※下線部は、これまでも情報提供の対象項目でしたが、令和3年4月1日以降は新たにインターネットによる情報提供が必要となりました。
上記⑤のマージン率とは、「派遣料金-派遣労働者に支払った賃金額」が、「派遣料金」に占める割合のことです。マージン率が高ければ、派遣料金のうち、派遣労働者に支払う賃金以外の諸経費の割合が大きいということになります。逆にマージン率が低ければ、派遣料金のうち、派遣労働者に支払う賃金以外の諸経費の割合は小さいということになります。
マージン率が小さい会社の方がよいと感じる人もいるかもしれませんが、「諸経費」には、派遣元会社の事業経費だけではなく、派遣労働者が加入する社会保険料・労働保険料、福利厚生費用、教育訓練費用等も含まれています。したがって、各種保険にきちんと加入し、福利厚生や教育訓練に力を入れている派遣元は、そうでない派遣元に比べ、マージン率が高くなる可能性もあります。
マージン率だけを考慮して派遣元を選ぶのではなく、その他の情報とも組み合わせて、総合的に判断するようにしましょう。
派遣会社によっては、自ら開設しているインターネットサイトのほかに、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」によって情報提供を行っていることもあります。
Q8
A8
派遣会社へ登録しましたが、なかなか仕事を紹介してもらえません。複数の派遣会社へ登録してもよいのでしょうか?
労働者は、複数の派遣会社に登録することが可能です。なかなか派遣先を紹介してもらえない場合には、その理由を派遣元に確認してみましょう。
登録型派遣労働者は、派遣元に氏名や就業可能な業務などを登録しておき、仕事の依頼を受けたときにその派遣期間だけ労働契約を結び、派遣先で働きます。派遣元に登録しただけでは労働契約を結んだことにはなりませんので、労働者は複数の派遣会社に登録することが可能です。
派遣元は、現に労働契約を結んで派遣就業させている派遣労働者だけではなく、まだ派遣就業させていない登録者についても、個々の就業ニーズ、就業期間、就業日、就業時間、就業場所、派遣先の就業環境などについて、労働者または登録者の希望に合った就業機会を確保するように努めなければなりませんが、派遣元に登録をしても、すぐに希望どおりの派遣先を紹介してもらえるとは限りません。もし、相当な期間を経ても派遣先を紹介してもらえない場合には、派遣元にその理由を確認してみることも必要でしょう。
また、派遣元は、労働契約締結前(登録中など)に、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対して、賃金見込み額やその他の待遇(就業時間、就業場所等、その時点で想定される内容)などの内容を説明しなければなりません。契約を締結する前に、派遣元からきちんと説明を受けておきましょう。
☞ 詳しくは、第2部第7章 派遣労働者の労働条件・待遇
「4 労働条件・待遇などの明示・説明」(P 61)へ
Q9
A9
派遣元に登録する際に本籍などの個人情報を聞かれました。派遣元からの質問には、どのようなことでも答えなければならないのでしょうか?
派遣元は、本籍地や家族の職業などの個人情報を原則、収集することはできません。
派遣元が収集することができる労働者の個人情報は、業務の目的の達成に必要な範囲に限られます。
また、個人情報の収集にあたっては、派遣元は直接本人から聞くか、本人の同意を得たうえで本人以外の者から聞くなど、適法かつ公正な手段によらなければなりません。
もし、派遣元が収集する目的を明らかにしないまま派遣就労をするために必要でない個人情報を求めようとしたり、あるいはその収集する目的に納得できないという場合には、東京労働局需給調整事業部(P 89)に相談しましょう。
また、派遣先で、派遣労働者の個人情報に関するトラブルがあったときには、まずは派遣元責任者に申し出ましょう。また、派遣労働者自身も、個人情報を不用意に明かさないように十分注意しましょう。
☞ 詳しくは、第2部第3章 労働者派遣に関わる業務とその違反
「2 個人情報の取扱い」(P 35)へ
Q10 しておいたほうがよいのではないか?」と言われました。これは、派遣
派遣元から「勤務を始める前に、あらかじめ派遣先と『打ち合わせ』を
A10
先が正式に決まったものと理解してよいのでしょうか?
派遣先は、労働者が派遣先で働き始める前に面接を行ったり、派遣元から履歴書を送付させたりしてはいけません。
ただし、紹介予定派遣に限り、事前面接や履歴書の送付が認められています。
紹介予定派遣の場合を除き、派遣先が派遣労働者を受け入れる前に、労働者の面接(特定目的行為)を行うことは禁止されています。派遣元から派遣先に職場見学や打合せに行くように指示されたときには、派遣先を訪問する前に、派遣元に①職場見学は派遣元の指示に基づくものなのか、労働者の自由な意思によるものなのか、②「打合せ」と称して派遣先が派遣労働者を決定するために行われるものではないことなどを確認しましょう。
派遣先を訪問したところ、派遣先の人から面接のようにいろいろ質問され、その後で派遣元から「他の者に決まった」と派遣が取り消されたりしたような場合には、東京労働局需給調整事業部(P 89)に相談しましょう。
☞ 詳しくは、第2部第6章 労働者派遣契約
「2 労働者派遣契約を締結する際の手続き等」(P 49)へ
Q11
A11
派遣先から契約内容以外の仕事も指示されます。派遣元に伝えても「派
遣先はお客様だから」と言って取り合ってもらえません。契約内容以外の業務であっても、派遣先からの指示には従わなければならないのでしょうか?
派遣労働者は、就業条件明示書で示された業務内容以外の仕事を命じられても、これに従う義務はありません。
派遣元は、派遣労働者が派遣就業を開始する前に、「労働条件通知書」や「就業条件明示書」を交付するなどして、派遣先での就業条件を明示しなければなりません。
派遣先は就業条件明示書等に示された業務内容の範囲を超えて指示を出すことはできません。派遣労働者は就業条件明示書等で示された業務以外の仕事を命じられても、これに従う義務はありません。
派遣労働者は、明示された労働条件と実際の労働条件が異なっていたときには、労働契約を解除できる場合がありますが、解除しないで働き続けたいという場合には、派遣元責任者を通じて、契約内容を守ってもらうように派遣先へ申し入れてもらうとよいでしょう。
☞ 詳しくは、第2部第7章 派遣労働者の労働条件・待遇
「3 適正な派遣就業の確保」(P 61)へ
Q12
A12
派遣先の正社員と同じ仕事をしているのに、給料などの待遇は正社員
よりかなり悪いように思います。派遣だから仕方がないのでしょうか?
令和2年4月から、新たな均等・均衡待遇の制度が施行されています。
平成 30 年の法改正により、派遣労働者の待遇について、派遣元には、派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することが義務化されました。
派遣先均等・均衡方式をとる場合には、派遣先の通常の労働者と比較して、①職務内容(業務の内容+責任の程度)や職務内容・配置の変更範囲が同じであれば差別的な取扱いをしてはならず(均等待遇)、②そうでない場合であっても、職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の相違を考慮して不合理な待遇差を設けてはならない(均衡待遇)こととされています。
労使協定方式をとる場合には、①過半数労働組合又は過半数代表者(過半数労働組合がない場合に限ります)と派遣元との間で一定の事項を定めた労使協定を書面で締結し、②法令で定められた内容の労使協定の事項を遵守しているときは、③一部の待遇(派遣先による教育訓練・福利厚生施設)を除き、この労使協定に基づき待遇が決定されることとなります。
派遣元は、①労使協定を締結しているか否か、②労使協定を締結している場合には、労使協定の対象となる派遣労働者の範囲、労使協定の有効期間の終期につき、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することが原則となっています。
なお、現在は、派遣元の約9割が労使協定方式を採用しています。
☞ 詳しくは、第2部第7章 派遣労働者の労働条件・待遇
「2 均等・均衡待遇等-平成 30 年改正」(P 54)へ
Q13 葉を聞いたことがあるのですが、派遣でも利用できる制度なのでしょ
長い間、有期雇用の派遣で働いています。「無期転換ルール」という言
うか?
A13 派遣労働者にも「無期転換ルール」は適用されます。
同一の使用者と有期労働契約が反復更新された場合、①その通算期間が5年を超えており、②契約の更新回数が1回以上であれば、労働者の申込みにより無期労働契約に転換することができます。これを「無期転換ルール」といいます。
なお、1つの労働契約と次の労働契約の間に一定の期間が空いているときは通算されない場合があったり(クーリング期間)、無期転換の申込みは雇用契約の期間内に行う必要があったりしますので、「無期転換ルール」を利用する際には注意しましょう。
☞ 詳しくは、第2部第7章 派遣労働者の労働条件・待遇
「15 派遣労働契約の終了 (4)無期転換ルール」(P 84)へ
Q14
派遣で通算3年間働くことが決まりましたが、その後はどうなるので
しょうか?
A14 る方には、派遣終了後の雇用継続のために、派遣元から以下の措置(雇
同一の組織単位(課など)に継続して1年以上派遣される見込みのあ
用安定措置)が講じられます。
派遣元は、同一の組織単位(課など)に継続して1年間以上派遣される見込みがある派遣労働者等に対し、派遣先への直接雇用の依頼などの派遣後の雇用継続のための措置(雇用安定措置)を講じなければなりません。
雇用安定措置の対象者とその内容は、派遣される見込みの期間によって違います。
☞ 詳しくは、第2部第4章 禁止・制限される派遣態様
「7 雇用安定化措置等」(P 45)へ
Q15
A15
派遣で働いていてトラブルが起きたときには、誰に相談したらよいのでしょうか?
派遣元、派遣先の苦情処理担当者に相談しましょう。
担当者は、派遣就業を開始する前に交付される就業条件明示書等で確認することができます。
派遣労働者からの苦情を適切に処理するために、派遣元と派遣先は、あらかじめ派遣労働者からの苦情の申し出を受ける者、苦情の処理を行う方法、派遣元と派遣先との連携体制などについて、労働者派遣契約に定め、就業条件明示書等により派遣労働者に通知しなければなりません。就業条件明示書で、派遣元及び派遣先における苦情処理担当者の氏名を確認しておきましょう。
就労に関するトラブルにつき、具体的な対応が求められるのは派遣先であることが多いと思われますので、派遣先は、派遣労働者から苦情の申し出を受けた場合には、派遣元に通知するとともに密接に連携を取り、誠意をもって適切かつ速やかに苦情に対応することとされています。
そして、派遣労働者が派遣元や派遣先に苦情を申し出たことを理由に、不利益な取扱いを行うことは禁止されています。
☞ 詳しくは、第2部第7章 派遣労働者の労働条件・待遇
「11 苦情の処理・裁判外紛争解決手続」(P 76)へ