さらに、2050 年の脱炭素社会の実現を見据えた場合、設計段階における ZEB 水準の省エネルギー性能の確保、再生可能エネルギーの最大限の導入等の省エネ・脱炭 素対策とともに、建築物の維持管理を行う運用段階の取組、設備等の改修・更新時における最適な設備等の選択(再生可能エネルギー設備を含む。)、導入判断等、建築物のラ イフサイクルにおいて可能な限りの低炭素化・脱炭素化を目指すことが不可欠である。...
資料4-2
建築物に係る契約に関する基本方針解説資料(案)
Ⅴ-1.建築物に係る契約に関する基本的事項について
1.建築物に係る契約の背景と意義
1-1 建築物分野における温室効果ガス排出削減の必要性
我が国は、令和 2(2020)年 10 月に 2050 年カーボンニュートラルを宣言し、これと整合的かつ野心的な中期目標である「2030 年度において温室効果ガスを 2013 年度から 46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていく」を掲げた地球温暖化対策計画を令和 3 年 10 月に閣議決定したところである。環境配慮契約法と直接関連する業務その他部門における温室効果ガス排出削減目標は、2013 年度比 51%削減となっており、排出部門別では家庭部門の 66%削減に次いで大幅な削減が求められている。
さらに、2050 年の脱炭素社会の実現を見据えた場合、設計段階における ZEB 水準の省エネルギー性能の確保、再生可能エネルギーの最大限の導入等の省エネ・脱炭素対策とともに、建築物の維持管理を行う運用段階の取組、設備等の改修・更新時における最適な設備等の選択(再生可能エネルギー設備を含む。)、導入判断等、建築物のライフサイクルにおいて可能な限りの低炭素化・脱炭素化を目指すことが不可欠である。
このため、環境配慮契約法の基本方針に定められた建築物の設計に係る契約、建築物の維持管理に係る契約及び建築物の改修に係る契約(省エネルギー改修事業(ESCO 事業)に係る契約及びその他の省エネ改修事業に係る契約)の契約類型について、個々の取組の推進による温室効果ガスの排出削減を図ることはもとより、建築物のライフサイクルにおいて効果的・有機的に連携することにより、相乗効果による更なる温室効果ガス排出削減及び脱炭素化を図り、2030 年度の中期削減目標の達成及び 2050 年カーボンニュートラルに貢献することを目指すものである。
1-2 建築物に係る契約に関する基本的事項
環境配慮契約法に基づく基本方針においては、建築物の設計に係る契約、建築物の維持管理に係る契約及び建築物の改修に係る契約(ESCO 事業及びその他の省エネ改修事業)を合わせて「建築物に係る契約」として整理しており、その基本的事項は、以下のとおりである。
(1)建築物に係る契約
建築物の設計に係る契約、建築物の維持管理に係る契約及び建築物の改修に係る契約(以下「建築物に係る契約」という。)に関する基本的事項は以下のとおりとする。
・建築物の新築に当たっては、原則として、建築物の ZEB 化及び再生可能エネルギーの導入を図るものとする。
・既存建築物の改修に当たっては、改修による省エネルギー効果等を踏まえ、必要に応じ、
ZEB 化を見据えた中長期的な改修計画を検討するものとする。
・建築物に係る契約に当たっては、建築物の企画・設計段階から維持管理の運用段階、さらには建築物の改修段階に至るまでのライフサイクル全般において、建築物の脱炭素化を図るため、エネルギー消費量等のデータ計測・分析等を踏まえた各段階における対策・取組等の効果的な連携及び評価、要求性能の実現のためのプロセスの設定等について、専門家等の活用を含め、検討するものとする。
1-3 建築物に係る契約の体系
建築物の設計、維持管理及び改修係る契約については、個別の環境配慮契約においても、それぞれ温室効果ガス排出削減効果を発揮するものであるが、3 つの契約が建築物のライフサイクルにおいて効果的・有機的に連携することにより、一層の温室効果ガスの排出削減に対する相乗効果が期待される。このため、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた建築物に係る契約について図Ⅴ-1.1-1 のとおり再整理を行った。
なお、各契約類型の内容や契約手続等については、図Ⅴ-1.1-1 に示した各契約類型の項で詳述している。
Ⅴ-1.建築物に係る契約
Ⅴ-2.建築物の設計に係る契約
Ⅴ-3.建築物の維持管理に係る契約
Ⅴ-4.建築物の改修に係る契約
Ⅴ-4-1.省エネルギー改修事業に係る契約
Ⅴ-4-2.その他の省エネ改修事業に係る契約
図Ⅴ-1.1-1 建築物に係る契約の体系
2.建築物に係る契約に関する各契約類型間の連携
2-1 建築物に係る契約の基本的考え方
建築物のライフサイクルにおいて、徹底的な省エネルギー対策を図るとともに、脱炭素化を目指すことが必要であり、特に、省エネルギー対策の実効性をより高めるためには、企画・設計段階、運用段階及び改修の各段階をデータの計測・分析結果等を通じて一体的にマネジメントしていくことが重要である。各契約類型における環境配慮の方向性を踏まえた建築物に係る契約の基本的事項に示された基本的な考え方は、以下のとおりである。
❑ 建築物の新築に当たっては、原則として、建築物の ZEB 化及び再生可能エネルギーの導入を図ること。
🡺 建築物の企画・設計段階における ZEB 水準(ZEB Oriented 相当以上)の省エネルギー性能の確保、再生可能エネルギーの最大限の導入が必要であること
❑ 既存建築物の改修に当たっては、改修による省エネルギー効果等を踏まえ、必要に応じ、ZEB 化を見据えた中長期的な改修計画を検討すること。
🡺 建築物の特性や改修規模を踏まえた ZEB 化の可能性の検討及び中長期的・段階的な ZEB の実現に向けた改修計画を検討すること
❑ 建築物に係る契約に当たっては、建築物の企画・設計段階から維持管理の運用段階、さらには建築物の改修段階に至るまでのライフサイクル全般において、建築物の脱炭素化を図るため、エネルギー消費量等のデータ計測・分析等を踏まえた各段階における対策・取組等の効果的な連携及び評価、要求性能の実現のためのプロセスの設定等について、専門家等の活用を含め、検討すること。
🡺 建築物のライフサイクルにおいてコミッショニングプロセスの活用を図り、脱炭素化に向けた対策・取組等の効果的な連携を図ること
🡺 エネルギー管理指標・目標等による要求性能の設定、要求性能の実現に向け取得データの活用を図るため、管理レベルに対応したエネルギー管理機能の導入を検討すること
🡺 発注者自らが技術内容を理解し、発注仕様を作成することが困難な場合等における専門家の関与・活用可能性の検討を実施すること
2-2 建築物のライフサイクルにおける効果的な連携
(1)コミッショニングプロセスの概要
コミッショニングとは、建築物の実際の性能を確認し、本来の性能を実現するために行うプロセスであり、新築建築物に対して行うコミッショニングと既存建築物に対して行うコミッショニングに大きく分けられる。
新築建築物のコミッショニングは、設計者の設計業務や設計図書を検証し、また施工者が行う建設業務や設備品質を検証し、必要に応じて性能試験を実施することにより、確実な要
求性能の実現を図るプロセスである。
既設建築物のコミッショニングは、現状の運用性能を検証・分析し、必要な改修や調整等を提案し、より適切な省エネ運転を実現するプロセスである。
建築設備コミッショニング協会1では、コミッショニングを行うことにより、次の効果があるとしている。
🔾 透明性の高いプロセスをとるため、発注者が求める満足度の高い建設プロジェクトが実現できること
🔾 建設プロジェクトにおいて、設計や施工時の手戻り等が少なく、生産性の向上が期待できること
🔾 データによる定量的な検証・確認ができるため、省エネルギーの達成とともに、確実な性能実現と適切な維持管理が可能となること
🔾 環境負荷削減・省コスト・快適性向上により、不動産価値の増大につながること
また、大規模公共建築物のコミッショニングとして、xxxxx0(平成 24 年 7 月基本設
計方針策定。平成 26 年 12 月から整備を開始し、平成 29 年 11 月に竣工、平成 30 年 1 月より供用開始)において実施した事例に関する実証結果について一連の報告3がなされており、その中で、公共建築物におけるコミッショニングの効果として以下の内容を報告している。
公共建築物、特に大規模庁舎においては、建築コストの縮減や環境負荷の低減を行いながら、業務の効率性を最大限に引き出す執務環境を実現することが求められている。また、施工フェーズのみならず、運用フェーズにおける建物の適正な維持管理やライフサイクルコストの縮減が求められている。従来の公共建築物の設計においては、省エネルギー・省資源について、発注者が独自で適切な目標設定を行うことは困難であり、何らかの目標設定を行うとしても、どうしても設計者任せの目標設定になり、その結果、仕様の決定も設計者任せとなることが多かった。また、目標を設定しても、その達成状況を検証する術も持たないというのが実状であった。
今回の新庁舎の設計においては、コミッショニングを導入したことにより、性能検証管理チームの助言を得て、妥当性のある高度な目標を設定し、客観的な評価を得た上で、熱源・空調システムの仕様を決定することができた。さらに、施工フェーズから運用フェーズには、施工者を交えた会議の実施により、設計意図の確実な具現化と庁舎完成後の機能性能試験を実施したことにより、目標達成の検証を行うことができた。運用の初期フェーズで設備性能の最適化を図ることは、長いライフサイクルに亘り、機能的で経済的な運用につながると期待する。
また、性能検証運営会議では、設計者から設計の過程や根拠を示した様々な文書が提出され、熱源の構成のみならず再生可能エネルギーの活用等についても様々な議論が重ねられた。関係者が設計の意図や内容を明確に把握し、第三者による客観的な検証を経ることによって、庁内の合意形成を円滑に進めることが可能になり、県議会等の様々な場面においても説得力のある説明を行うことができたことが発注者として大きなメリットと考える。
一方、コミッショニングの費用確保のための根拠がなく、庁内調整が困難であった。予算申請を行う上で、コミッショニングの標準的な費用の算定基準が望まれる。
1 特定非営利活動法人建築設備コミッショニング協会(Building Services Commisioning Association)
2 行政棟(延床面積 46,718 ㎡)、議会棟(延床面積 6,699 ㎡)、駐車場棟及び警察棟の 4 つの等からなる庁舎。
3 「官庁施設におけるコミッショニングプロセス適用に関する実証的研究(第 1 報~第 6 報)」空気調和・衛生工学会大会(札幌)(2019)
(2)コミッショニングプロセスの活用
建築物のライフサイクル全般においてコミッショニングプロセスの適用を図ることにより、建築物が本来有する性能を実現することにつながり、結果として建築物の徹底した省エネ・ 脱炭素化につながるものと考えられる。また、コミッショニングプロセスは、建築物のライ フサイクルすべてにおいて適用することが最も望ましいものと考えられるが、建設物の特性 等等を踏まえ、発注者の要求を満たす範囲で、適切に選択して実施することも可能であり、 部分的な適用であっても、適切な対応を図ることにより、大きな効果が期待できることとな るものと考えられる。
特に、発注者が自ら技術内容を理解し、発注仕様を作成することが困難な場合等においては、技術的な中立性を保ちつつ、発注者の側に立った専門家の関与・活用(コミッショニングプロセス)について検討を実施することが望ましい。
なお、一般にコミッショニングの業務は、設計・施工、維持管理等からは独立したものであり、別途費用が発生4することに留意が必要である。
図Ⅴ-1.2-1 は、新築建築物を想定し、企画・設計段階の ZEB 化、徹底した省エネ対策、再エネの導入、運用段階の要求性能の実現・改善、改修段階の運用実績データの活用など建築物のライフサイクルにおいて各契約類型が効果的・有機的に連携、脱炭素化を推進するためにコミッショニングプロセスを活用する場合のイメージを示したものである。
コミッショニングプロセスの仕組み
図Ⅴ-1.2-1 新築建築物の各契約類型間の効果的な連携のイメージ
図Ⅴ-1.2-2 は、既存建築物を想定し、運用段階におけるデータ計測・分析等を通じた改善への取組、更新・改修に向けた運用実績データの積極的な活用等要求性能実現のためコミ
4 コミッショニングを行うことにより、費用が発生し、イニシャルコストの増加は想定されるが、中立の立場でデータ分析等を実施し、維持管理段階の運用改善等を図ることにより、結果としてランニングコストの削減につながる場合が多い。
ッショニングプロセスを活用する場合のイメージを示したものである。
図Ⅴ-1.2-2 既存建築物の運用段階と更新・改修の効果的な連携のイメージ
2-3 データ計測・分析等の活用の必要性
企画・設計段階、運用段階及び改修の各段階をエネルギー消費量等のデータの計測・分析結果等を通じて一体的なマネジメントを行うことにより、建築物の省エネルギー対策の実効性を高めることが可能となる。
他方、データの活用を図るためには、建築物の設計段階又は改修段階において維持管理の運用段階におけるデータ計測・分析結果等の他の契約類型への展開及び活用を想定した対策が求められる。具体的には、エネルギー管理指標・目標等による要求性能の設定、要求性能の実現に向け取得データの活用を図るためにも、建築物の建築に当たって、企画・設計段階において、建築物に必要となるエネルギー管理機能が適切に検討されるとともに、管理レベルに対応したエネルギー管理機能の導入することが望ましい。また、データ計測・分析結果等を他の契約類型に効果的な展開に資するため、必要に応じ、維持管理とデータ分析に係る業務の分業化を含めた専門家の活用等の取組を促進する等の検討が重要である。
施設規模・運用管理体制に応じたエネルギー管理レベルの目安は表Ⅴ-1.2-1、施設の規模等による管理レベル設定の目安は図Ⅴ-1.2-3 のとおりである。
なお、本項及び「Ⅴ-3.建築物の維持管理に係る契約に関する基本的事項」は、国土交通省の「官庁施設におけるエネルギー管理機能の計画・設計の手引き(案)」をもとに作成したものであるが、これらの資料の内容は、適宜見直しが行われることがあることから、必要に応じ最新の資料を確認されたい。
表Ⅴ-1.2-1 施設の管理レベル設定の目安、エネルギー管理の方法等
図Ⅴ-1.2-3 施設の規模等による管理レベル設定の目安
3.建築物に係る契約に関する各契約類型の概要
上記2のとおり、建築物に係る契約に関する各契約類型(建築物の設計に係る契約、建築物の維持管理に係る契約及び建築物の改修に係る契約)は、個別の環境配慮契約においても、それぞれ温室効果ガス排出削減効果を発揮するものであるが、これらの環境配慮契約が効果的・有機的に連携することにより、一層の温室効果ガスの排出削減に対する相乗効果が期待されるものである。建築物に係る契約に関する各契約類型の概要は、以下のとおりである。
3-1 建築物の設計に係る契約の概要
建築物は、通常の物品等の購入とは異なり、設計者が発注者の企画意図を的確に把握し、様々な要求事項を総合的にバランスさせて作成した設計図によって単品生産されるものである。他方、建築物は何十年にわたり長期に供用されるものであるため、設計段階において温室効果ガスの排出の削減等への配慮が不十分である場合は、その負の影響も長期にわたることになる。すなわち、環境保全性能の高い建築物の実現のためには、設計段階において設計者に対し十分な環境配慮を求めることが極めて重要である。
建築物における温室効果ガス等の排出の削減を推進するためには、設計段階において一定の環境保全性能を求めるとともに、更に建築物における環境保全性を高めるため、設計者に対し、ZEB 化や再生可能エネルギーの最大限の導入など求められる水準の確保を前提に、維持管理の運用段階を視野に入れつつ、温室効果ガス等の削減に関する技術提案を求め、脱炭素につながる優れた技術力を持つ設計者を積極的に活用することが適切と考えられる。
また、より質の高い設計を進めていくためには、可能な限り事業の早い段階において環境配慮に関する意思決定がなされることが重要である。環境に配慮された設計については、設計の初期の段階から意匠・構造・設備等からなる設計チームのバランスが取れた環境配慮に対する提案・検討がなされ、実現されていくことが重要であり、これらの取組が推進されるように十分に配慮する必要がある。
このため、環境配慮契約においては、設計者や設計組織の持つ創造力や確かな技術力、これまでの経験の蓄積に基づく専門家としての豊かなノウハウを技術提案書から評価し設計者を選定するために、環境配慮型プロポーザル方式を採用し、適切な運用を図るものとする。
3-2 建築物の維持管理に係る契約の概要
建築関連から排出される二酸化炭素排出量は、我が国全体の 40%程度を占め、そのうち、建築物の運用段階における排出が 3 分の 2 程度との推計もあり、建築物の運用段階に当たっての省エネルギー・省 CO2 化に係る取組の推進が温室効果ガス排出削減に向けた大きな課題となっている。また、建築物に起因する温室効果ガス等の排出削減のためには、その運用に当たってエネルギー消費量等の計測・分析及び分析結果等を踏まえた運用改善が極めて重要である。
このため、国等の機関の建築物については、設計段階における環境配慮の重要性に加え、維持管理を行う運用段階においても、設計段階の要求水準・要求性能を適切に発揮させる観点から、施設規模・運用管理体制に応じたエネルギー管理レベルを設定するとともに、データ計測・分析結果等を踏まえ、可能な限りの省エネルギー対策を率先した推進、更にはその先の脱炭素化を目指すことが必要である。
3-3 建築物の改修に係る契約の概要
新築建築物における ZEB 化とともに、国等の機関の建築物のうち、大部分を占める既存建築物5についても、改修のタイミングにおいて徹底した省エネルギー対策、再生可能エネルギーの導入促進等のストック対策の推進が極めて重要である。
環境配慮契約法第 5 条第 2 項第 3 号において、省エネルギー改修事業(以下「ESCO 事業」という。)とは「事業者が、省エネルギーを目的として、庁舎6の供用に伴う電気、燃料等に係る費用について当該庁舎の構造、設備等の改修に係る設計、施工、維持保全等(以下この号において「設計等」という。)に要する費用の額以上の額の削減を保証して、当該設計等を行う事業をいう。」とされており、ESCO 事業が位置づけられているところである。しかしながら、ESCO 事業は、光熱水費の削減額等により事業費を賄う仕組みであることから、事業が成立するためには、一定以上のエネルギー削減余地及び光熱水費額が必要となるため、 ESCO 事業が成立しない場合が多い状況にある。いうまでもなく、建築物の省エネルギー対策を直接または間接に改修目的とする事業は、ESCO 事業に限ったものではなく、ESCO 事業以外の省エネルギー改修事業(以下「その他の省エネ改修事業」という。)についても ESCO事業とともに、「建築物に係る契約」の一つとして基本方針に位置づけ、国等の機関の施設における温室効果ガス等の排出削減、更には脱炭素化に向けて環境配慮契約を実施するものとする。
また、既存建築物の ZEB 化を推進する観点から、大規模改修時における建築物の ZEB 化実現(省エネ性能の ZEB 水準の確保)の可能性の検討、中長期的な改修計画において段階的にエネルギー性能の向上を図り、ZEB 化を目指す等の検討を行うことも求められる。
以下では、ESCO 事業の概要及びその他の省エネ改修事業の概要について示すこととする。なお、ESCO 事業及びその他の省エネ改修事業の内容や契約手続等の詳細については、各契約類型の項に記載している。
3-3-1 ESCO 事業に係る契約の概要
ESCO 事業は、施設管理者において新たな改修資金を必要としない省エネルギー推進方法として注目されており、国等の機関が ESCO 事業を率先して推進することにより、環境負荷
5 建築年次別の官庁施設の延べ面積は、築後 10 年未満の施設は 9%に対し、築後 20 年を経過する施設が 70%、築後 30 年を経過する施設が 47%となっている(国土交通省大臣官房官庁営繕部「国家機関の建築物の保全の現況」令和 4 年 3 月)。
6 本資料における庁舎とは、宿舎以外の建築物とする。
低減に寄与することが期待されるものである。
また、環境配慮契約法第 7 条の規定により国の ESCO 事業の契約に当たっては、10 箇年度以内の債務負担が可能となっている。
(1)ESCO事業の概要
① ESCO 事業の概要
ESCO 事業は、設計、施工、及び保守・運転管理等を含む複数年のサービスを提供するものであり、事業費の支払いに当たっては、定期的に省エネルギー効果の計測・検証を行い、保証された効果を確認することにより契約された額を毎年度支払うこととなる。基本的に、この保証された光熱水費の削減額で、全ての事業費を賄うものである(図Ⅴ-1.3- 1)。
省エネ効果
支事払業
額費
の
ESCO事業実施前
ESCO事業期間内
契約期間終了後
光熱費支出
光熱費支出
初期投資
金利
返却分
XXXXの配当
顧客の利益
顧客の利益
光熱費支出
ESCO事業者が一定割合を 保証する
図Ⅴ-1.3-1 ESCO 事業のイメージ
② 設備更新型 ESCO 事業の概要
老朽化した設備機器がある場合には、その更新費用を別途積み上げ、通常の ESCO 事業と一体的に発注する事業(設備更新型 ESCO 事業※1)を行うことができる。
設備更新型 ESCO 事業7では、通常の改修工事と比較して、設備機器の更新による省エネルギー効果が保証されるとともに、設計、施工から維持管理まで包括的に事業者に委託することで、事業者の創意工夫により、全体のコストを押し下げる効果も期待できるなどのメリットも想定される。
7 以下、設備更新型ESCO 事業と対比する場合、光熱水費の削減額で全ての事業を賄う通常のESCO 事業を「従来型ESCO 事業」という。
ESCO 事業総事業費
設備更新費※2
ESCO 前の光熱水費から削減が保証
ESCO 事業者の経費
返済分
光熱水費
+ 維持保全に係る
費用
改
修
前
改修後
ESCO
前
ESCO
期間中
ESCO
終了後
通常の設備改修の場合
設備更新型 ESCO 事業の場合
図Ⅴ-1.3-2 通常の設備改修と設備更新型 ESCO 事業についての概念図
※1 条件とした設備の更新に要する費用は、環境配慮契約法第 5 条第 2 項第 3 号でいう「維持保全等」及び「電気、燃料等」に係る費用に含まれる。
※2 条件とした設備の更新に要する費用は、一括払い。
表Ⅴ-1.3-1 設備更新型 ESCO 事業の構成
構 成 | 概 要 |
設備更新部 | ・発注者が指定した設備機器の更新(ただし、当該設備機器に係る維持管理及び省エネルギー効果の計測・検証は除く。) |
ESCO 部 | ・発注者が指定した設備機器に係る維持管理及び省エネルギー効果の計測・検証 ・設備更新部に係る事業者の追加提案(効率のxxx) ・設備更新部以外で、事業期間の光熱水費削減額により導入費用を賄うことが可能な技術提案 |
※ 設備更新型ESCO 事業は設備更新部に係る省エネルギー効果も含めて保証する事業である。
(2)契約に関する留意事項
① 一括契約について
ESCO 事業の契約は、設計業務、施工(設備システムなどの改修)及び維持管理業務等を一括として締結するものであるため、事業の全てを一社で実施することは少なく、複数の企業から構成されるコンソーシアム等と契約を結ぶことが一般的である。
国等においては、コンソーシアム等と契約を結ぶ際の制度として、設計・施工一括発注方式が導入されているところ8。ESCO 事業においても、このような場合には、設計・施工一括発注方式の整理を準用し、コンソーシアムの各構成員の責任を明確にする必要がある。
8 中央建設業審議会ワーキンググループ第二次中間とりまとめ(平成 19 年 3 月 15 日)
② 政府調達に関する協定
ESCO 事業の契約は、設備改修、維持管理及び運用等を対象とするものであることから、
「政府調達に関する協定」(平成 7 年条約第 23 号)が適用される調達の対象となるサービ
ス(「サービス」の適用範囲は、政府調達協定付属書Ⅰ付表 4 に特定されており、ESCO事業に直接・間接に関連すると考えられるサービスの例としては、建設工事、建設のためのサービス、エンジニアリング・サービスその他の技術的サービス9が考えられる)及び対象外のサービスの双方を包含する混合的な契約になる可能性がある。そのため、ESCO 事業の実施に当たっては、導入可能性の判断やフィージビリティ・スタディ等の結果を踏まえて、いずれのサービスに該当するかを判断する必要がある。
③ 契約方式
ESCO 事業の契約方式には、表Ⅴ-1.3-2 に示す2つの方式がある。なお、これら2つの方式を1つにまとめた形で契約した事例10もある。
表Ⅴ-1.3-2 ESCO 事業の契約方式の比較
契約方式 | 特 徴 |
ギャランティード・セイビングス契約 | ・発注者が初期投資(設計・施工)に係る資金調達を行う。 ・発注者は ESCO 事業者と光熱費等の削減保証を行うためのパフォーマンス契約を結ぶ。 ・初期投資年度の予算支出が突出する。 |
シェアード・セイビングス契約 | ・ESCO 事業者が初期投資を含め必要な資金調達を行う。 ・発注者は ESCO 事業者と光熱費等の削減保証を行うためのパフォーマンス契約を結び、改修等の費用の対価を分割で支払う。 ・契約期間内で予算支出の平準化が可能である。 |
9 建設サービスに関連する建築のためのサービス、エンジニアリング・サービスその他の技術的サービスに限る。ただし、独立して調達される場合の次のサービスを除く。
・建築設計サービスの実施設計サービス
・契約管理サービス
・基礎及び建築構造物の建設のためのエンジニアリングデザイン・サービス、建築物の機械及び電気の設備のためのエンジニアリングデザイン・サービス又は土木建設工事のためのエンジニアリングデザイン・サービスのうちいずれかの実施設計、仕様書の作成及び費用の見積りの一又はこれらの組合わせからなる設計サービス
・建設及び設置工事段階におけるその他のエンジニアリングデザイン・サービス
10 公立大学法人北九州市立大学において実施されたESCO 事業は、ギャランティード・セイビングス契約及びシェアード・セイビングス契約をまとめた形の事例である。
3-3-2 その他の省エネ改修事業に係る契約の概要
省エネ改修事業は、照明や熱源、空調設備等の更新、外壁や開口部の断熱強化、エネルギーマネジメントシステムや再生可能エネルギー設備の導入等、改修する部位によって多岐にわたる。ただし、設備の故障、老朽化、耐用年数の超過等のタイミングで改修が必要となり、これらの事業と同時に省エネ設備等が導入される場合も少なからずあるものと考えられる。その他の省エネ改修事業は、ESCO 事業以外の省エネルギー・脱炭素に係る改修事業であ って、省エネルギー対策・温室効果ガスの排出削減を主たる目的とする建築物の省エネ改修
事業を対象として想定している。
また、その他の省エネ改修事業の実施に当たっては、下記の項目について検討を行い、可能な限り、建築物の脱炭素化を目指すことが重要である。
🔾 改修による省エネ効果を踏まえ、必要に応じて中長期的な改修スケジュール(ZEB 化改修を見据えた中長期計画)を検討すること
🔾 大規模改修時にあっては ZEB 等の省エネ基準を満たす可能性を検討すること
🔾 維持管理の運用段階におけるデータの積極的な活用を図ること(運用実績の改修計画への活用)
🔾 維持管理の運用改善に資するエネルギー消費量等のデータ計測・分析ツール、制御システムの導入等のエネルギー管理機能の拡充を検討すること
🔾 改修事業終了後に適切な維持管理のため、必要に応じ、運転指針等を作成すること
Ⅴ-2.建築物の設計に係る契約に関する基本的事項について
1.はじめに
1-1 建築物の設計に係る契約に関する基本的事項
環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、建築物に係る契約の体系及び建築物の設計に係る契約に関する基本的事項は、以下のとおりである。
建築物に係る契約
その他の省エネ改修事業に係る契約
ESCO事業に係る契約
建築物の改修に係る契約
建築物の維持管理に係る契約
建築物の設計に係る契約
… Ⅴ-1
… Ⅴ-2
… Ⅴ-3
… Ⅴ-4
… Ⅴ-4-1
… Ⅴ-4-2
図Ⅵ-2.1-1 基本方針における建築物の設計に係る契約の位置づけ
①建築物の設計に係る契約
建築物の設計に係る契約に関する基本的事項は以下のとおりとする。ただし、当該事業の主目的に照らして温室効果ガス等の排出の削減以外の項目が特に優先される事業、温室効果ガス等の削減について設計上の工夫の余地がほとんどない事業等についてはこの限りではない。
・建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務を発注する場合は、原則として温室効果ガス等の排出の削減に配慮する内容(自然エネルギー等の積極的な利用を含む。)を含む技術提案を求め、総合的に勘案してもっとも優れた技術提案を行った者を特定する方式(以下「環境配慮型プロポーザル方式」という。)を採用するものとする。
・建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務を発注する場合は、原則として、設計成果に求める施設の長寿命化、省エネルギー・省資源、自然エネルギーの利用、環境負荷低減に配慮した木材等の資機材の利用等を踏まえた環境保全性能を契約図書に明記するものとする。
・建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務を発注する場合は、建築物のライフサイクル全般におけるエネルギー消費量等のデータ活用等の重要性に鑑み、必要に応じ、エネルギー管理機能の導入を契約図書に明記するものとする。
・環境配慮型プロポーザル方式を採用した場合であって、特定された者の技術提案に盛り込まれた温室効果ガス等の排出の削減への配慮の内容が、経済性にも留意して妥当と判断されるときは、その内容を契約図書に明記することにより、当該技術提案の内容が設計成果に反映されるようにするものとする。
・環境配慮型プロポーザル方式を採用した場合にあっては、特定された者と契約を締結し、設計成果について総合的な環境保全性能とともに生涯二酸化炭素排出量(LCCO2)の評価を契約の相手方(設計者)に求めるものとする。
・環境配慮型プロポーザル方式による発注に当たっては、あらかじめその旨及び概要を公表するものとし、また、概要を変更したときは変更後の概要を公表するものとする。
・環境配慮型プロポーザル方式による発注に当たっては、技術提案の提出を求める者に対し必要な情報を提供し、検討のための適切な時間を確保するように配慮するものとする。
・環境配慮型プロポーザル方式による発注に当たっては、xx性、透明性及び客観性を確保するものとする。
建築物における温室効果ガス等の排出の削減を推進するためには、設計に対し一定の環境保全性能を求め全体の環境保全性を高めるとともに、建築物における環境保全性を一層高めるため、設計者に対し積極的に温室効果ガス等の削減に関する技術提案を求め、環境保全に関する優れた技術力を持つ設計者を積極的に活用することが適切と考えられる。
また、継続的な環境配慮技術の活用を行い、適切に評価をしていくことで、環境に配慮した設計技術の向上が期待される。
このため国等の機関の建築物の建築又は大規模な改修に係る設計を委託する場合には、次の2段階の環境配慮を求めることとし、以下では、その内容及び手続について説明することとする。
ただし、建築物の設計に係る契約に関する基本的事項に示されているとおり、建築物の設計に係る契約においては、当該事業の主目的に照らして温室効果ガス等の排出の削減以外の項目が特に優先される事業、温室効果ガス等の削減について設計上の工夫の余地がほとんどない事業等11については、必ずしも基本的事項を適用するものではない。なお、発注者の判断により、可能な範囲で環境配慮契約を行うことが望ましい。
⭘ 要求環境保全性能の規定
⇒ 設計業務を発注する際に環境保全性能を求めることにより、全ての設計の環境保全性能を一定の水準まで向上させる
⭘ 優れた環境配慮設計の推奨
⇒ 環境配慮型プロポーザル方式の導入により、温室効果ガス等の削減に関する技術
11 温室効果ガス等の削減について、極めて高度な特定の機能に対する要求性能が温室効果ガス等の排出削減に優先する事業、設計業務発注前に多くの項目について意思決定がなされ優先されるべき事項が決定している事業、宿舎等で一連の施設群に対し最初の設計を基に連続的に設計を行う事業、及び特段の事情により採択できない理由を事前に公表している事業
提案を求め、環境保全に対し優れた創造性、技術力、経験等を有する設計者を選定することにより、建築物の環境保全性能を向上させる
2段階の環境配慮によって建築物の環境保全性能の向上を図る
本解説資料の対象
レベルアップ
環境配慮型プロポーザル方式の導入による技術力向上
→環境配慮型プロポーザル方式を活用することにより、環境保全に対し優れた創造性、技術力、経験等を有する設計者を選定し、優れた手法の発掘と環境配慮設計技術の向上を図り、建築物の環境保全性能の向上を推進する。
ボトムアップ
環境保全性能を求めることによる全ての設計の環境保全性能向上
→全ての建築物で最低限満たすべき水準を規定し、確実に環境と調和の取れた施設整備を推進する。
要求環境保全性能の規定
優れた環境配慮設計の推奨
建築物の環境保全性能
図Ⅴ-2.1-2 建築物の設計における環境配慮のイメージ
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、建築物の設計に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、発注者が具体的に建築物の設計に係る契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
本解説資料は、建築物の設計に係る契約に当たっての考え方や具体的な内容、実際の事務手続等について説明したものである。
なお、本解説資料に示した事例は参考例であり、当該地域の実情等を踏まえ、発注者が適切に対応することが必要である。
中略
3.要求環境保全性能の規定について
建築物の設計については、建設地の立地・入居者の使用目的・地域との調和・予算等様々な設計条件を総合的に検討し、それらを高度にバランスさせた状態で取りまとめていくものである。このため、総合的には優れていても環境への負荷が比較的大きな設計となる場合が起こりえる状況にある上に、設計者の考え方によってそのバランスが一様ではなく、バラツキをもっている状況にある。温室効果ガス等の削減は、地球環境に対して極めて重要な課題であり認識も高くなりつつあるが、もっぱら総合性能に着目した自由な競争のみでは温室効果ガスの排出増加を抑えることが困難である。このため、建築物の建築又は大規模な改修の委託を行う際にあっては、最低限必要とする環境保全性能を設計委託段階で指定し、契約要件とすることで、著しく環境保全性能の悪い設計を排除することが必要である。
官庁施設については、官庁営繕関係基準類等の統一化に関する関係省庁連絡会議において
「官庁施設の環境保全性基準」が統一基準として決定されていることから、設計業務の実施に当たって同基準を適用することを設計仕様書に明記12することにより設計成果に求める環境保全性能を規定することができる。更に環境保全性能の上乗せを行う場合は、CASBEE における BEE 値やエネルギー消費量、ライフサイクル二酸化炭素排出量(LCCO2)等の値を設定し、設計成果に求める環境保全性能として設計仕様書に記載する。
住宅の用途にあっては「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(平成 11 年法律第 81 号)
に基づく「評価方法基準」(平成 13 年 8 月 14 日国土交通省告示第 1347 号)があり、これらを参考に設計成果に求める環境保全性能の最低水準を定めることが考えられる。
以下に各基準の概要を示す。なお、研究施設及び医療施設等の特殊性のある建築物については、建築物の特性を踏まえつつ、これらの基準に準拠して設計成果に求める環境保全性能の最低水準を適切に規定する必要がある。
3-1 官庁施設の環境保全性基準
「官庁施設の環境保全性基準」(官庁営繕関係統一基準、令和 4 年 3 月改定)は、環境負荷の低減及び周辺環境の保全に配慮した官庁施設の整備を推進することを目的として、官庁施設に求められる環境保全性の水準(新築の場合)及びこれを確保するために必要な技術的事項等を定めている。
○環境保全性に係る性能
環境保全性に係る性能は、環境負荷低減性(長寿命、適正使用・適正処理、エコマテリアル、省エネルギー・省資源)及び周辺環境保全性(地域生態系保全、周辺環境配慮)とする。
12 政府実行計画においては、「新築事業については原則ZEB Oriented 相当以上とし、2030 年度までに新築建築物の平均でZEB Ready 相当となることを目指す」ことが掲げられており、「官庁施設の環境保全性基準」はZEB Oriented 相当を確保するエネルギー性能となっている。また、「2030 年度には設置可能な建築物(敷地を含む。)の約 50%以上にxxx発電設備を設置することを目指す」こととされており、xxxをはじめとした再生可能エネルギーの最大限の活用が求められている。
○環境保全性の水準
(1)建築環境総合性能
① 特定事務庁舎13を新築新築する場合
建築物環境総合評価システム(CASBEE)による建築物の環境効率(BEE 値)が
1.5 以上となること。
② ①以外
建築物環境総合評価システム(CASBEE)による建築物の環境効率(BEE 値)が
1.0 以上となること。
(2)建築物のエネルギー消費性能
① 新築する場合
原則として、建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令(平成 28 年経済産業
省・国土交通省第 1 号。以下「基準省令」という。)に基づく設計一次エネルギー消費量(その他一次エネルギー消費量を除く。また、再生可能エネルギーに伴う一次エネルギー消費量の削減分を含めない。)の値が、基準省令に基づく用途に応じてそれぞれ次の値以下となること。
a. 事務所等、学校等、工場等
基準省令に基づく基準一次エネルギー消費量(その他一次エネルギー消費量を除く。)の値に 0.6 を乗じて得た値
b. a 以外
基準省令に基づく基準一次エネルギー消費量(その他一次エネルギー消費量を除く。)の値に 0.7 を乗じて得た値
② ①以外
省エネ性能の向上のための措置を講じること。
(3)運用段階におけるエネルギー消費量(運用エネルギー)及びそれに伴う二酸化炭素排出量(運用 CO2)、ライフサイクル二酸化炭素排出量(LCCO2)、ライフサイクル廃棄物最終処分量(LCW)並びにライフサイクル資源投入量(LCR)を算出する方法、その他の方法により環境保全性を確認する場合は、(1)及び(2)に掲げる区分を考慮した水準を設定して行うこと。
3-2 住宅の評価方法基準
「評価方法基準」(平成 13 年 8 月 14 日国土交通省告示第 1347 号)は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、表示すべき住宅性能に関する基準を定めるものであり、評価の方法の基準(総則)として次の3項目の基準を規定している。
❑ 設計住宅性能評価
13 建築物のエネルギー性能の向上に関する法律(平成 27 年法律第 53 号。以下「建築物省エネ法」という。)第 12 条第 1 項に基づく、建築物エネルギー消費性能確保計画における建築物の用途の区分が「事務所」又は「税務署、警察署、保健所又は消防署その他これに類するもの」のみに該当する延べ面積が 2,000 ㎡以上の官庁施設をいう。
❑ 新築住宅に係る建築住宅性能評価
❑ 既存住宅に係る建築住宅性能評価
また、設計住宅性能評価は、設計図書を評価基準(新築住宅)に照合して行うこととされており、評価の方法の基準(性能表示事項別)として 10 項目の基準を規定している。
❑ 構造の安定に関すること
❑ 災害時の安全に関すること
❑ 劣化の軽減に関すること
❑ 維持管理・更新への配慮に関すること
❑ 温熱環境に関すること
❑ 空気環境に関すること
❑ 光・視環境に関すること
❑ 音環境に関すること
❑ 高齢者等への配慮に関すること
❑ 防犯に関すること
評価の方法の基準(性能表示事項別)の中では「温熱環境に関すること」が温室効果ガス等の排出の削減に最も影響が大きいと考えられることから、「断熱等性能等級」及び「一次エネルギー消費量等級」の規定における要件を契約図書に含めることも重要である。
表Ⅴ-2.3-1 断熱等性能等級及び一次エネルギー消費量等級
項 目 | 結 果 | ||
5.温熱環境・エネルギー消費量に関すること | 5-1 断 熱 等性能等級 | 外壁、窓等を通しての熱の損失の防止を図るための断熱化等による対策の程度 | |
地域の区分[1・2・3・4・5・6・7・8] | |||
外皮平均熱貫流率【 W/(㎡・K)】 冷房期の平均日射熱取得率【 】 | |||
7 | 熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている(8 地域を除く) | ||
6 | 熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている | ||
5 | 熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている | ||
4 | 熱損失等の大きな削減のための対策(建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令(平成 28 年経済産業省令・国土交通省令第1号。以下「基準省令」という。)に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)が講じ られている | ||
3 | 熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている | ||
2 | 熱損失の小さな削減のための対策が講じられている | ||
1 | その他 | ||
5-2 一 次 エネルギー消費量等級 | 一次エネルギー消費量の削減のための対策の程度 | ||
地域の区分[1・2・3・4・5・6・7・8] | |||
床面積当たりの設計一次エネルギー消費量【 MJ/(㎡・年)】 | |||
6 | 一次エネルギー消費量の著しい削減のための対策が講じられている | ||
5 | 一次エネルギー消費量のより大きな削減のための対策(基準省令に定める建築物のエネルギー消費性能の向上の一層の促進のために誘導すべき基準(その設定の基礎となる基準一次エネルギー消費量が、基準省令第 12 条第1項の規定により求められたものであるものに限る。)に相当する程度)が講じ られている | ||
4 | 一次エネルギー消費量の大きな削減のための対策(基準省令に定める建築物エネルギー消費性能基準(その設定の基礎となる基準一次エネルギー消費量が、基準省令第5条第1項の規定により求められたものであるものに限る。) に相当する程度)が講じられている | ||
1 | その他 |
「設計住宅性能評価書(一戸建ての住宅)」より作成
4.優れた環境配慮設計の推奨
4-1 環境配慮型プロポーザル方式について
(1)趣旨
建築物に要求される性能は、環境保全性、社会性、安全性、機能性、経済性など多岐にわたる。このため、建築物の設計に当たって一律に環境保全性能を求める訳にはいかないものの、温室効果ガス等の環境負荷低減の観点からは、設計者においては、様々な要求事項の中で環境と高度に調和のとれた設計を行う高い技術力が要求される。このような状況から建築物の設計にあっては、温室効果ガス等の排出削減に関する内容を盛り込んだ技術提案を求めることが適切である。
また、より質の高い設計を進めていくためには、可能な限り事業の早い段階において環境配慮に関する意思決定がなされることが重要である。環境に配慮された設計については、設計の初期の段階から意匠・構造・設備等からなる設計チームのバランスが取れた環境配慮に対する提案・検討がなされ、実現されていくことが重要であり、これらの取組が推進されるように十分に配慮する必要がある。
このような要請がある中、プロポーザル方式は、設計者や設計組織の持つ創造力や確かな技術力、これまでの経験の蓄積に基づく専門家としての豊かなノウハウを技術提案書から評価し設計者を選定するものであり、とりわけ建築物の設計において、敷地の条件や各種の要求性能を考慮し、温室効果ガス等の排出量を有効に削減していく設計を行っていくには、立地の特性等を踏まえた高度な技術的判断が必要なため、その活用が適切である。
しかしながらプロポーザル方式の運用に当たっては、極めて高いxx性・透明性・客観性が必要である14。
このような観点から、環境配慮型プロポーザル方式の運用に当たっても、その基礎として、xx性・透明性・客観性の高い手続のあり方について改善を逐次重ねている国土交通省で採用されているプロポーザル方式に準じた運用を行うこととする。
(2)適用範囲
建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務を発注する場合は、原則として、環境配慮型プロポーザル方式を採用すること。
なお、環境配慮型プロポーザル方式の手続終了後に行われる契約手続は会計法令等に基づいて行うべきものであること及び本手続を採用できるのは、会計法第 29 条の 3 第 4 項の契約の性質又は目的が競争を許さない場合に限られることに留意されたい。
建築物の設計において温室効果ガス等の排出削減に関する内容について、それぞれの建築物の立地条件や様々な要求性能を考慮し、高度な技術的判断を必要とする設計の場合には、
14 一部の事業においては、適切な情報公開がなされていない等により、十分な透明性が確保されていない事例もあり、一層の留意が必要である。
環境配慮型プロポーザル方式の対象とした。
また、環境配慮型プロポーザル方式の実施に当たっては、当該建築物の要求事項から設定される技術提案項目のうち、必ず1つ以上に、温室効果ガス等の排出削減に関する内容(パッシブ手法の省エネルギー対策や自然エネルギー利用を含む。)を盛り込むこととする。
❑ 各省庁等は、毎年度環境配慮型プロポーザル方式を行う業務を指定し、その業務の概要とともに環境配慮型プロポーザル方式を行う旨を公表15するものとする。
❑ 環境配慮型プロポーザル方式を行う旨公表した業務について、変更があった場合には、変更後の概要を公表するものとする。
4-2 建築の設計におけるプロポーザル方式の意義
一般に、建築設計は、発注者の企画目的を実現するため、設計条件を基に設計者が創意工夫をもって施設の空間構成を具体化するものであり、成果物が必ずしもあらかじめ特定できない業務である。このため、建設される建築物の質や経済性等は設計者の選定によって大きく左右される。
公共施設は国民共有の資産として質の高さが求められることから、その設計業務を委託しようとする場合は、設計料の多寡のみによる選定方法によって設計者を選定するのではなく、設計者の創造性、技術力、経験等を適正に審査の上、その設計業務の内容に最も適した設計者を選定することが極めて重要である 。
プロポーザル方式は建築物の質の高さに重点を置いており、そのプロジェクトにとって最も適切な創造力、技術力、経験などを持つ「設計者(人)」を選ぶ方式である。質の高い建築設計を行うために最も重要なのは、設計者の能力や経験などの資質である。具体的には、設計者や設計組織(チーム)の持つ創造力や確かな技術力、これまでの経験の蓄積に基づく専門家としての豊かなノウハウが、発注者が要求する性能・品質を有する建築物を実現する上で必要である。そうした設計者の選定方法として望ましいのが「プロポーザル方式」である。プロポーザル方式は、設計案を作っていく上で発注者との共同作業を進めるパートナーとして、最も適した設計者を選定しようとするものである。
国においては、国土交通省で平成 3 年 3 月の建築審議会の答申「官公庁施設の設計業務委
託方式のあり方」を受け、建築設計業務委託に関する制度の充実に努め、平成 6 年には設計者の選定にプロポーザル方式を導入し、その後、この方式の普及と運用上の改善等を行い、官庁施設の設計において、プロポーザル方式が広く適用され、建築物の質に重点を置く設計の推進が図られてきた。
また、平成 17 年に施行された「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成 17 年 3
月 31 日法律第 18 号)の第 8 条第 1 項に基づく「公共工事の品質確保の促進に関する施策を
15 既に各府省庁においては、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成 12 年 11 月 27 日法律第 127 号)の規定等により、発注予定案件が四半期ごとに公表されていることから、こうした仕組みを利用するこが考えられる。なお、該当案件については、一般的に年度当初に公表されている。
総合的に推進するための基本的な方針」においても「公共工事に関する調査・設計の契約においても、価格のみによって契約相手を決定するのではなく、技術提案を求め、その優劣を評価し、最も適切な者と契約を結ぶこと等を通じ、その品質を確保することが求められる。」とされている。
中略
5-6 選定通知/提出要請書の送付
技術提案書の提出要請書に次に掲げる事項を記載するものとする。
なお、技術提案書を特定するための評価基準については、「5-9」の審査委員会を経て決定するものとする。
① 業務の詳細な説明
② 技術提案書の作成様式及び記載上の留意事項
③ 技術提案書の提出方法、提出先及び提出期限
④ 技術提案書を特定するための評価基準
⑤ 技術提案書の提出要請書に不明の点がある場合の質問の受付方法、受付窓口、受付期間及びその回答方法
⑥ 書類等の作成に用いる言語、通貨及び単位
⑦ 契約書案、仕様書案
⑧ その他必要と認められる事項
なお、提出書類の簡素化等を図るため、業務内容に応じて具体的な技術提案を求めるテーマを示し、当該テーマに対する提案を求めるものとする。この場合において、提出を要求する書類は、必要最小限とするものとする。また、説明書及び技術提案書の提出要請書に提出書類の様式を定め、ページ数や図表枚数等を規定するものとする。
なお、技術提案のテーマ設定に当たっては、温室効果ガス等の排出削減に関する内容(自 然エネルギー等の積極的な利用を含む。)を含めるものとする。
(技術提案のテーマ設定例)
・ZEB Oriented 相当以上を達成するための設計上の配慮事項について
・施設の特性を踏まえた機能・品質を確保した上で徹底した省エネルギー対策に取り組むための設計上の配慮事項について
・地域性を考慮した環境負荷の抑制と自然エネルギーの活用に関する設計上の配慮事項について
・本施設に適用すべき LCCO2 削減技術及びそれを決定していく上で考慮すべき要素について
・本施設の特性を考慮した、効果的な環境負荷低減に関する設計上の提案について(一般的項目の網羅的提示ではなく、気候・敷地・形状・周辺状況等を考慮し、より効果的な方策を示すこと)
・積雪・寒冷地に立地する施設について、温室効果ガス排出量の削減を行うための気候風土及びコストを踏まえた環境負荷低減方策の提案について
以下省略
Ⅴ-3.建築物の維持管理に係る契約に関する基本的事項について
1.はじめに
1-1 建築物の維持管理に係る契約に関する基本的事項
環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、建築物に係る契約の体系及び建築物の維持管理に係る契約に関する基本的事項は、以下のとおりである。
建築物に係る契約
その他の省エネ改修事業に係る契約
ESCO事業に係る契約
建築物の改修に係る契約
建築物の維持管理に係る契約
建築物の設計に係る契約
… Ⅴ-1
… Ⅴ-2
… Ⅴ-3
… Ⅴ-4
… Ⅴ-4-1
… Ⅴ-4-2
図Ⅴ-3.1-1 基本方針における建築物の維持管理に係る契約の位置づけ
②建築物の維持管理に係る契約
建築物の維持管理に係る契約に関する基本的事項は以下のとおりとする。
・建築物の維持管理に係る契約を発注する場合は、原則として、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した内容を契約図書に明記するものとする。
・建築物の維持管理に係る契約を発注する場合は、対象となる施設のエネルギー使用実態、特性等を踏まえ、複数年契約、複数施設の一括発注等、運用改善に資する契約方式の検討を行うものとする。
・建築物の維持管理に係る契約であって、入札に付するもののうち、価格と価格以外の要素を総合的に評価して事業者を選定する場合は、原則として、温室効果ガス等の排出の削減に配慮する内容を含む提案を求めるものとする。
・建築物の維持管理に係る契約に当たっては、エコチューニング等を活用し、エネルギー消費量等のデータ計測・分析及び分析結果を反映した運用改善を実施事業者に求めるものとする。また、運用実績データを改修計画の検討に活用するものとする。
・具体的な要求仕様及び入札条件については、当該建築物の用途・特性等を踏まえ、調達
者において設定するものとする。
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた建築物の維持管理に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、発注者が具体的に建築物の維持管理に係る契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
本解説資料は、建築物の維持管理に係る契約に当たっての考え方や具体的な内容、実際の事務手続等について説明したものである。
なお、本解説資料に示した事例は参考例であり、当該建築物の用途・特性、地域の実情等を踏まえ、発注者が適切に対応することが必要である。
2.契約方式の解説
2-1 建築物の維持管理に係る契約の基本的考え方
建築物の運用段階に起因する温室効果ガス等の排出削減を図るとともに、可能な限り早期の ZEB 化を推進する観点から、建築物の維持管理に係る契約の基本的な考え方は、以下のとおりである。なお、建築物における温室効果ガス等の排出量やエネルギー消費量等は、当該施設の目的・用途等により異なることから、同一用途の施設等を参考に、当該施設における省エネルギー対策及びその効果を検討の上、実施することが望ましい。
❑ 建築物の維持管理に係る契約を発注する場合は、原則として、温室効果ガス等の排出の削減に配慮した内容を契約図書に明記すること。
❑ 建築物の維持管理に係る契約を発注する場合は、対象となる施設のエネルギー使用実態、特性等を踏まえ、複数年契約、複数施設の一括発注等、運用改善に資する契約方式の検討を行うこと。
❑ 建築物の維持管理に係る契約であって、入札に付するもののうち、価格と価格以外の要素を総合的に評価して事業者を選定する場合は、原則として、温室効果ガス等の排出の削減に配慮する内容を含む提案を求めること。
❑ 建築物の維持管理に係る契約に当たっては、エコチューニング等を活用し、エネルギー消費量等のデータ計測・分析及び分析結果を反映した運用改善を実施事業者に求めること。また、運用実績データを改修計画の検討に活用すること。
❑ 具体的な要求仕様及び入札条件については、当該建築物の用途・特性等を踏まえ、調達者において設定すること。
ただし、発注する維持管理業務の内容によっては、直接的に温室効果ガス等の排出の削減を実施することが容易ではない場合もあること等から、このような場合にあっては、温室効果ガス等の排出削減の可能性を勘案し、調達者が当該施設の用途・特性等を踏まえ、適切に要求仕様及び入札条件を設定し、可能な範囲で環境配慮契約を実施するものとする。
なお、過度な省エネルギー対策によって、建築物内の人の健康をそこなうことがないよう、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(昭和 45 年法律第 20 号)に基づく建築物環境衛生管理基準を遵守しつつ、温室効果ガス等の排出削減を行うものとする。
2-2 対象とする業務範囲等
(1)対象とする業務範囲
一般に建築物の維持管理に係る業務は、建築物自体の維持管理、当該施設に導入されている設備機器等の維持管理、環境衛生管理、清掃、廃棄物処理、施設の警備、受付や電話交換等xx多岐にわたっている。また、業務の発注に当たっては、各業務を単独で発注する場合、複数業務を包括化して発注する場合、さらに業務量が多い場合にあっては、逆に業務を分割化して発注する場合もあり、発注方法も一定ではない。
建築物の維持管理に係る契約においては、これら多くの業務のうち、施設の導入設備・機器等の適切な運転保守管理、運用改善等の実施により直接的に温室効果ガス排出削減が期待される電気設備保守管理業務、機械設備保守管理業務及びエレベーターを中心とした搬送設備保守管理業務を含む業務を主な対象とする16。ただし、前記 3 業務以外の業務にあっても、温室効果ガス等の排出の削減に資する維持管理業務として発注者の判断により対象業務として選定することを妨げるものではない。
(2)公共サービス改革法に基づく取組
建築物の維持管理に係る契約については、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成 18 年法律第 51 号。以下「公共サービス改革法」という。)」に基づく公共サ
ービス改革基本方針の改定(平成 22 年 7 月閣議決定)において、国の行政機関等17の施設のうち、霞が関に所在する合同庁舎を始めとする庁舎の管理・運営業務が、官民競争入札又は民間競争入札の対象事業として選定され、以降、比較的大規模な施設を中心に、多くの施設における管理・運営業務が対象事業として選定され、民間競争入札が実施されている。これらの管理・運営業務は、複数の業務を包括化するとともに、複数年契約で発注される場合が多く、また、原則として総合評価落札方式が採用されている18。
以下修正中
16 「建築保全業務共通仕様書(平成 30 年版)」(国土交通省大臣官房官庁営繕部)における「電気設備」「機械設備」「搬送設備」における定期点検及び保守、運転・監視及び日常点検・保守に関連する業務を想定。
17 公共サービス改革法における対象機関は、国の行政機関、独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人及び特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成 11 年法律第 91 号)第 4 条第 1 項第 9 号の規定の適用を受けるもの(株式会社であるものであって、株式会社国際協力銀行及び株式会社日本政策金融公庫以外のものを除く。)となっており、概ね環境配慮契約法の対象機関と合致している。
18 内閣府「施設管理・運営業務の係る民間競争入札の効果に関する調査」(平成 28 年 1 月)。
Ⅴ-4-1.省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項について
1.はじめに
1-1 省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項
環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、建築物に係る契約の体系及び建築物の改修に係る契約のうち、省エネルギー改修事業(ESCO 事業)係る契約に関する基本的事項は、以下のとおりである。
建築物に係る契約
その他の省エネ改修事業に係る契約
ESCO事業に係る契約
建築物の改修に係る契約
建築物の維持管理に係る契約
建築物の設計に係る契約
… Ⅴ-1
… Ⅴ-2
… Ⅴ-3
… Ⅴ-4
… Ⅴ-4-1
… Ⅴ-4-2
図Ⅴ-4.1.1-1 基本方針におけるその他の省エネ改修事業に係る契約の位置づけ
③建築物の改修に係る契約ア.ESCO 事業に係る契約
ESCO 事業に係る契約に関する基本的事項は以下のとおりとする。
・ESCO 事業の立案に当たっては、事前に既存施設の状況を的確に把握し、フィージビリティ・スタディなど ESCO 事業を適切かつ円滑に遂行する手段を活用しながら、計画の立案を行うものとする。
・ESCO 事業の立案に当たっては、長期の供用計画を適切に作成して、契約期間内に契約条件に変更がないよう、十分検討を行うものとする。
・ESCO 事業者の決定に当たっては、価格のみならず、施設の設備システム等にもっとも適し、かつ、創意工夫が最大限に取り込まれた技術提案その他の要素について総合的に評価を行うものとする。
・ESCO 事業の契約に当たっては、事業期間中に想定されうるリスクの分担について、事前に実施事業者との間で十分協議を行うものとする。
・ESCO 事業の実施に当たっては、維持管理及び計測・検証のための要領を適切に定め契約を行うものとする。
・ESCO 事業の終了前に、ESCO 事業として採択された技術の範囲に関わる部分について、事業終了後に適切な維持管理を行うための要領の作成を実施事業者に求めるものとする。
1-2 本解説資料の使い方
本解説資料は、環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、省エネルギー改修事業に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、発注者が具体的に ESCO 事業に係る契約を締結する際に適用し、計画の立案、ESCO 事業の受注者の選定、リスク分担、計測・検証等の基本的な考え方を示すことにより、円滑に ESCO 事業を実施し、国等の機関の施設における光熱水費の削減並びに、環境への負荷の低減を図るための参考として使用されることを想定したものである。
本解説資料は、省エネルギー改修事業に係る契約に当たっての考え方や具体的な内容、実際の事務手続等について説明したものであり、国土交通省の「官庁施設における ESCO 事業導入・実施マニュアル19」及び(一財)省エネルギーセンターの「ESCO 導入のてびき(自治体向け)20」をもとに、作成したものであるが、これらの資料の内容は、適宜見直しが行われていることから、必要に応じ最新の資料を確認されたい。
なお、本解説資料に示す内容は参考例であり、企画立案、発注等は諸条件を踏まえて適切に対応することが必要である。
以下省略
19 「官庁施設におけるESCO 事業導入・実施マニュアル」(平成 18 年 3 月策定、平成 20 年 3 月改定、平成 23 年 5 月改定、平成 26 年 3 月改定):平成 26 年 3 月に改定されており、特に設備更新型 ESCO 事業と従来型ESCO 事業が対比して記載されている。国土交通省大臣官房官庁営繕部の環境対策ホームページ xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxxxxxx_xx0_000000.xxxx
20(一財)省エネルギーセンターによるESCO 導入のための情報提供及び調査事業は平成20 年度で終了している。なお、(一社)ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会においてESCO 事業に関する情報提供等を実施している。xxxx://xxx.xxxxxx.xx.xx/
Ⅴ-4-2.その他の省エネ改修事業に係る契約に関する基本的事項について
1.はじめに
1-1 その他の省エネ改修事業に係る契約に関する基本的事項
環境配慮契約法に基づく基本方針に定められた、建築物に係る契約の体系及び建築物の改修に係る契約のうち、その他の省エネ改修事業係る契約に関する基本的事項は、以下のとおりである。
建築物に係る契約
その他の省エネ改修事業に係る契約
ESCO事業に係る契約
建築物の改修に係る契約
建築物の維持管理に係る契約
建築物の設計に係る契約
… Ⅴ-1
… Ⅴ-2
… Ⅴ-3
… Ⅴ-4
… Ⅴ-4-1
… Ⅴ-4-2
図Ⅴ-4.2.1-1 基本方針におけるその他の省エネ改修事業に係る契約の位置づけ
③建築物の改修に係る契約
イ.その他の省エネ改修事業に係る契約
その他の省エネ改修事業に係る契約に関する基本的事項は以下のとおりとする。
・その他の省エネ改修事業の立案に当たっては、当該施設の運用段階におけるエネルギー消費量等のデータの活用に努めるとともに、必要に応じ、改修後の維持管理における運用改善に資するエネルギー管理機能の拡充を図るものとする。
・その他の省エネ改修事業の発注に当たっては、当該施設の特性及び当該改修の目的等に応じたエネルギー消費量又は温室効果ガス等の排出量等の削減に資する契約方式を選択するものとする。
・具体的な要求仕様及び入札条件については、当該改修の目的等を踏まえ、調達者において設定するものとする。
1-2 本解説資料の使い方
環境配慮契約法に基づく基本方針に記載のとおり、建築物の改修計画の検討に当たっては、当該施設の特性、エネルギー消費量等のデータ計測・分析及びデータの分析結果等を踏まえ、総合的な観点から「ESCO 事業を実施」するか、「その他の省エネ改修事業」を実施するかを選択することとされている。
本解説資料は、基本方針に定められた、建築物のその他の省エネ改修事業に係る契約に関する基本的事項を踏まえ、発注者が当該事業の契約を締結する際の参考として使用されることを想定したものである。
その他の省エネルギー改修事業を行う場合には、本項に記載の事項を参照し契約手続きを進めることとする。
なお、本解説資料に示した事例は参考例であり、当該建築物に係る改修の目的、当該地域の実情等を踏まえ、発注者が適切に対応することが必要である。
2.契約方式の解説
2-1 その他の省エネ改修事業に係る契約の基本的考え方
環境配慮契約法における建築物の改修に係る契約としては、法第 5 条第 2 項第 3 号に規定される省エネルギー改修事業(ESCO 事業)を位置づけていたところであるが、国の機関の建築物についてみると、築後 20 年を経過する官庁施設は全体の 70%以上、さらに築後 30 年を経過する官庁施設は全体の 47%以上となっており、既存建築物のストック対策として建築物の改修による徹底した省エネルギー対策、再生可能エネルギーの導入等の創エネルギー対策が極めて重要である。
このため、従前の ESCO 事業以外の改修事業であるその他の省エネ改修事業についても、新たに建築物に係る契約類型として位置づけ、当該事業を実施することにより、徹底した省エネルギー対策・脱炭素化を主とした環境配慮の実施可能性を検討し、より積極的に環境配慮契約を実施することが求められる。
改修計画の検討に当たっては、当該施設の運用段階における設備等の運転状況やエネルギー消費や温室効果ガス排出実態の把握・分析等を踏行うとともに、改修後の維持管理の運用段階においても、エネルギー消費量に係るデータの実測を行い、次の改修に活用されるよう、継続的・持続的な管理が行われることが不可欠であり、契約類型の垣根を超えた契約も念頭に計画を立案することも必要となる。
さらに、建築物に係る契約の基本的事項においては、既存建築物の改修に当たって、以下の基本的考え方を掲げており、建築物の特性、省エネ効果等を勘案し、中長期的な ZEB 化を見据えた改修計画の検討を実施するよう求めている。
❑ 既存建築物の改修をするに当たっては、改修による省エネルギー効果等を踏まえ、必要に応じ、ZEB 化を見据えた中長期的な改修計画を検討すること。
🡺 大規模改修時にあっては ZEB 等の省エネ基準を満たす可能性を検討すること
🡺 改修による省エネ効果を踏まえつつ、段階的な ZEB 化の実現を図るために中長期的な改修計画について検討すること
また、その他の省エネ改修事業に係る契約の基本的考え方は、以下のとおりである。
❑ その他の省エネ改修事業の立案に当たっては、当該施設の運用段階におけるエネルギー消費量等のデータの活用に努めるとともに、必要に応じ、改修後の維持管理における運用改善に資するエネルギー管理機能の拡充を図ること。
🡺 維持管理の運用段階におけるデータの積極的な活用を図ること
🡺 改修に当たってエネルギー使用実態に基づき設備容量を最適化することによる定格時の性能向上及び低負荷時の効率低下の抑制を検討すること
🡺 改修後の維持管理の運用改善に資するエネルギー消費量等のデータ計測・分析ツール、制御システムの導入等のエネルギー管理機能の拡充を検討すること
❑ その他の省エネ改修事業の発注に当たっては、当該施設の特性及び当該改修の目的等に応じたエネルギー消費量又は温室効果ガス等の排出量等の削減に資する契約方
式を選択すること。
🡺 発注に当たっては、当該施設の改修計画を踏まえ、要求仕様及び入札条件を設定するとともに、適切な契約方式等を選択すること
❑ 具体的な要求仕様及び入札条件については、当該改修の目的等を踏まえ、調達者において設定すること。
2-2 対象とする業務範囲等
省エネルギー改修は、建物の築年数、改修の目的、施設面積、建物の用途、改修の規模又は予算等に応じ、対象とする業務の範囲がxx多岐にわたり、また、業務の発注に当たっては、老朽化した複数施設を包括して実施する場合や、事前調査、設計、施工を分割して発注する場合もあり、発注方法も様々である。
その他の省エネ改修事業において対象とする業務は、ESCO 事業に依らない省エネルギー・脱炭素に係る改修事業であって、省エネルギー対策・温室効果ガスの排出削減を主な目的とする建築物の省エネ改修を対象とする。
なお、設備の更新については、省エネ改修事業の一部として実施されるものを対象とし、単なる設備の更新(入れ替え)のみの場合、再生可能エネルギー設備の導入のみの場合は、その他の省エネ改修事業に含まれないものとする。
2-3 主な省エネルギー技術
新築建築物に比べ、一般に導入可能な技術に制限がある場合が多い既存建築物の改修においても、汎用的な技術を効果的に組み合わせることにより、大きな省エネルギー効果が実現される。
表Ⅴ-4.2-1 は、環境省の補助事業において ZEB 化改修(改修による既存建築物の ZEB化)に当たって導入された技術を整理したもの21である。ZEB 化改修の場合であっても、多くの場合は既存の汎用的な技術の活用で対応可能となっている。
21 環境省「ZEB PORTAL・ネット・ゼロ・エネルギービル(ゼブ)ポータル」による。
表Ⅴ-4.2.1-1 ZEB 改修に導入されている主な省エネルギー技術
区分 | 技術 | 導⼊❹ | |
パッシブ技術 | 外皮断熱(屋根、外壁、床等) | ◎ | |
外皮(開口部) | ◎ | ||
日射遮蔽(ルーバー、庇、ぶら) | △ | ||
アクティブ技術 | 空調 | ⾼効率空調(PAC、EHP、GHP) | ◎ |
⾼効率交換機(RAC) | △ | ||
全熱交換器 | △ | ||
⾼効率給湯器 | △ | ||
照明 | LED照明器具 | ◎ | |
換気 | ⾼効率ファン | △ | |
受変電・コンセント | ⾼効率トランス | △ | |
蓄電池 | ○ | ||
EMS | BEMS | ○ | |
創エネ技術 | xxx発電 | ◎ |
注:環境省補助事業に採択された既存建築物の導入技術を集計。◎:導入率 80%以上、○:50~ 79%、△:20~49%