ろう。」「投資促進のためには,契約面および政策面の双方からの支援,およびEUと産ガス国間との対話が必要であろうが,巨大プロジェクトはこれでも不十分であろう」と 示唆する。
み量はイタリアの電力会社ENELとの年40億m3販売契約のみであり,残りの年50億m3については売り先が決まっていない。暫定的に,販売会社In Salah Gasが同国国営Sonatrachに販売するという契約である。また,アルジェリア政府が早期着工を望んでいるイタリア向けおよびスペイン向けの各パイプライン敷設の計画も進展していない。
同国だけでなく,ロシアのガスℝや,エジプトのLNG事業,カタールのガスℝなど,欧州近隣に多くのガス埋蔵量があり開発計画はあるものの,売り先の確保ができず事業化できないでいる。英国の著名な専門家であるXxxxxxxx Xxxxxxx,「EU市場が自由化されても,20億ドル以上の大型プロジェクト(特に50億ドル以上の新規事業)はファイナンスが付かないであ
ろう。」「投資促進のためには,契約面および政策面の双方からの支援,およびEUと産ガス国間との対話が必要であろうが,巨大プロジェクトはこれでも不十分であろう」と示唆する。
冒頭に述べたように,日本でも需要家の売買意欲が乏しいことから,xxxxxxがEUに対して警告しているように,ガスプロジェクトの立ち上げが遅延すると,長期的にみて需要をまかなうだけのガス供給が安定的に確保できないという恐れもある。ガス輸出国フォーラム
(GECF)には,アジア諸国の主要産ガス国のマレーシア,ブルネイ,インドネシアが参加していることからも,今回の問題がEUに限られていないといえよう。
(担当:小ℝxx)
カザフスタン/ロシア:カザフスタンの投資環境に暗雲
~Tengizxx開発,CPCを巡る問題が相次いで表面化
カザフスタンの上流開発を巡るカザフスタン政府とコンソーシアムの対立,ならびにカザフスタンの主要輸送原油パイプラインであるCPCパイプラインを巡るロシア政府とコンソーシアムの対立の二つが同時に表面化している。不安定要因が相次いで表面化しており,カザフスタンの投資環境が悪化しているとの見方がされている。
1.ChevronTexacoがTengizxxの第二次開発計画を中断~カザフスタン政府との対立が表面化
ChevronTexacoは11月14日にTangizchevroil
(TCO)のカザフスタンTengiz油ℝの第二次開発計画(35億ドル)の延期を発表した。表向きには「パートナー間のファイナンス調整不一致による」と発表されているが,実際は「カザフスタン政府とコンソーシアム側の対立」が理由との見方が強くされているが,対立の詳細は明
らかにされていない。他開発プロジェクト, CPCパイプライン拡張計画への影響も懸念されている。
(1)TCO計画中断の理由(ChevronTexacoの公式発表)
ChevronTexacoはXxxxxxの第二次開発計画中断は,開発プロジェクト(生産量拡大,ガス圧入)のファイナンス調達方法についてTCOパートナー間合意ができなかったこが理由であると発表している。今回の開発計画では,今後
3年間に35億ドルを投じることにより,生産量を現状の27万b/dから43万b/dに拡大する予定であった。
(2)計画中断に対する見方
カザフスタン政府には,90年代に締結した各開発契約は外資優位でありすぎたとの認識が根強くあり,自らに有利な条件への「改善」を望んでいる。この傾向はカザフスタンの巨大埋蔵
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量が明らかになり,カザフスタンの投資の魅力が高まるにつれ強まってきたと見られている。具体的内容は報じられていないが,TCOに対しては,過去から執拗に1993年時の契約変更を求めており,今回対立が表面化したようである。今回の対立のポイントの一つとして資金調達方法を巡る意見の相違が伝えられている。 ChevronTexacoは,5年間の加速償却(accel- erated amortization)を利用した留保資金増での売上充当を主張,これに対し,カザフ政府は,同償却は,2002-2006年において総額10億ドルのprofit taxの支払いを軽減させるもので,カザフ政府の承認を得たものではないとしてこれを認めず,増産計画の実施にあたっては資金借入れを主張している。Kazmunaigazのシェア 20%分の資金(600百万ドル)負担を疑問視する声もある。理由は不明だが,国外投資家が地方税の免税を主張しているとも伝えられており,その不満も対立の一つとして伝えられている。
カザフスタン政府としてもTengiz油ℝの原
油 生 産 が 歳 入 に 与 え る 影 響 は 大 き く , ChevronTexacoとともに事態の長期化を望まないはずである。カザフスタン政府は同様の動きが他の開発プロジェクト(Kashagan等)に波及することを懸念しており,見た目にも ChevronTexacoに譲歩したような解決とはしないであろう。従ってカザフスタン政府は今回の事態への対応は,個別問題としての取り扱いとし,全体的な投資環境改善に向けての動きとはしないものと考えられる。
(3)今回の事態による影響,各方面の対応
Xxxxxxの掘削を請け負うParker Drilling, Fluor Corpは既に計画延期を告げられており, Xxxxxxは発表直後に株価が12%下落するなどの影響を受けている。
米国は問題打開に動き出しており,11月20日のワシントンでのXxxxxxxxカザフスタン副首相-Evans米国商務長官会談で,「事態への憂慮と改善の希望」を伝えている。
Tengizの生産量拡大が遅れればCPCパイプラインの輸送能力拡張計画にも影響を及ぼすと
見られる。
<Tengiz油ℝ概要>
ラ イ セ ン ス 会 社 Tengizchevroil JV: ChevronTexaco50 %, ExxonMobil25 %, Kazmunaigas20%,LukArco5%
推定可採埋蔵量:90億bbl
生産計画(当初の計画):現在270千b/d→
2005年1Q430千b/d→2010年700千b/d
2.ロシアがCPCパイプラインの「自然独占」を主張
~カザフスタン開発プロジェクトの輸送計画に影響
ロシア政府がCPCパイプラインの「自然独占
(natural monopoly)」を主張している。これはロシア政府がCPCパイプラインをロシア国内パイプラインの一部とみなして輸送タリフを規制するというもので,連邦エネルギー委員会が強い意向を示している。ロシアの自然独占法は 1996年12月に施行しているが,1997年のCPCとの基本合意では,自然独占を適用しない旨合意されたので,コンソーシアムが建設に着手した。当初の基本合意を翻したロシア側の一方的な主張に対し,コンソーシアム側は激しく抵抗している。CPCパイプラインが自然独占とされると,パイプラインタリフや輸送量がロシアのコントロール下におかれることとなり,開発側に大きな影響を与えるからである。
ロシアでは国営会社Transneftがロシアの国
内原油パイプラインを独占しており,CPCの建設についても自らの独占体制を脅かすものとして,前向きではなかった。ロシア石油会社も自社でのパイプライン建設を指向する動きが出ており,国内でも独占体制を巡るせめぎあいが起こっている。また最近の米露エネルギー協調の枠組みでは,ロシアのパイプライン独占体制に対し,米国が将来的に開放を求めると考えられており,Transneftは10月の米露エネルギーサミットへの参加を見送っている。今回のCPCの自然独占をめぐる問題について米国は McSlarrowエネルギー次官が憂慮の意を示している。
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<CPCパイプライン概要>
・Capian Pipeline Consortiam:ロシア政府 24%,カザフスタン政府19%,オマーン政府7%, ChevronTexaco15% , LukArco12.5% , Rosneft-Shell17.5%, Exxonmobil7.5%, Agip2%,BG2%,Oryx1.75%,Kazakhstan Pipeline Ventures1.75%
・ルート:カザフスタンTengiz ~ロシア
Novorossiysk
・総延長:1420km
・開通:2001年10月
・輸送能力:第一フェーズ56万b/d,第二フェーズ75万b/d(2003年完了),第三フェーズ95万b/d(2007年完了),第四フェーズ134万b/d
(2010年完了)
(担当:xxxx)
イラク:West Qurnaxx開発契約の破棄を通告,xxxの真意は?
1.Lukoilに対しWest Qurna開発契約の破棄を通告
イラクがLukoil (ロシア)に対しWest Qurna油ℝ(フェーズ2)開発契約の破棄を通告したことが12月12日,明らかになった。イラク石油省が12月9日付けの書簡により通告したもの。国連による大量破壊兵器の査察が開始され,一方で米国が軍事作戦へ向けた準備を着々と進めるなど,イラク包囲網が一段と狭まりつつある中,イラク寄りとされてきたロシアに対して何故イラクが強硬な措置を取ったのかについて関心が集まっている。
West Qurna油ℝ(フェーズ2)開発プロジェクトは,生産量がピーク時で600千b/d以上を見込まれており,世界第2位の1,125億bblの原油埋蔵量を有するイラクでも有数の大型開発案件である。1997 年にLukoil ( 68.5% ), Zarubezneft,Machinoimport(各3.25%)のロシア3社コンソーシアムとイラクとの間でPS契約(初期投資額37億ドルとされる,残り25%はイラク国内企業)が調印されたが,ロシア側は国連経済制裁を理由に現在まで実務作業を開始せず凍結してきた。
イラク側の契約破棄通知に対し,Lukoilはイラクの決定は法的根拠のないものだとして国際的仲裁機関への提訴も辞さない構えであり,ロ
シア政府もイラクに対し翻意を要求するコメントを発表しLukoilをバックアップする姿勢を示している。
契約破棄の理由について,イラクのRashid石油相は12月15日の会見で,「契約上の履行義務をLukoil側が果たしていないこと」をあげ政治的意図はないと強調した。Ramadan副大統領やKhalaf駐ロ大使も同様の発言を行い,xxxは表向きこの問題が政治問題化することを避ける姿勢を示した。ただし,Aziz副首相がカナダ紙National Post(12月17日付)と行ったインタビューでは,xxxの本音と思われるコメントが飛び出した。Xxxx氏は,Lukoilが契約当事者のイラク政府ではなくxxxxxと交渉し,
「フセイン政権転覆後」も本契約が有効であるとの保証を取り付けようとしたとして,「恥知らずで許し難い行動である」と同社を強く非難した。
2.xxxの真意はロシア政府への反発か,それとも?
(1)メディアの見方
今回のイラクの行動について,xxxx政権に対するイラク政府の不満の表れであるとする見方が各メディアで報じられた。ロシアはxxの提出した大量破壊兵器査察に関する安保理決議に結局賛成に回り,水面下では「フセイン後」
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