静銀リース㈱(代表取締役社長 大橋 弘、以下「当社」)では、SDGs への取り組みの一環として、グループ会社である㈱静岡銀行(頭取 柴田 久氏)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。 本件は、地銀系リース会社としては初の取り組みであり、当社は、今後、本融資を活用して、環境省の補助金事業「ESG リース促進事業」を推進するなど、脱炭素機器の普及を促進することで、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいく方針です。
2021.7.30
㈱静岡銀行と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結
静銀リース㈱(代表取締役社長 xx x、以下「当社」)では、SDGs への取り組みの一環として、グループ会社である㈱静岡銀行(頭取 xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたので、その概要をご案内します。
本件は、地銀系リース会社としては初の取り組みであり、当社は、今後、本融資を活用して、環境省の補助金事業「ESG リース促進事業」を推進するなど、脱炭素機器の普及を促進することで、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいく方針です。
※企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクトを包括的に分析し、特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資
1.概 要
(1)契約日/7 月 30 日(金)
(2)融資金額/1,000,000,000 円
(3)資金使途/運転資金
(4)インパクト評価/国連環境計画金融イニシアティブが提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」およびポジティブインパクトファイナンスタスクフォースが提唱した「インパクトファイナンスの基本的考え方」に基づき、一般財団法人静岡経済研究所が㈱日本格付研究所の協力を得て評価を実施
(5)モニタリング体制/一般財団法人静岡経済研究所とともに「ポジティブ・インパクト金融原則」に従い構築した内部管理体制のもと、インパクト評価で特定した KPI について、静岡銀行が融資期間中における当社のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施
2.当社の取り組みについて(詳細は「評価書」をご参照ください)
〇当社は、当社の企業活動が社会・環境・経済に与えるインパクトとして、以下のとおり重点取り組み項目・評価指標を設定しています。
環境面 | ・ESG リースの促進(ESG リースを 2025 年度までに 200 契約) ・環境、省エネ分野の推進(環境、省エネ分野リースを 2025 年度までに 150 億円契約) ・環境方針の遵守、環境負荷低減(営業車両のエコカーへの切替) ・法令遵守、廃棄物削減(3R 促進および廃棄物削減) |
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経済面 | ・地域に密着した総合金融サービスの提供(ユーザー先数 2025 年度に 5,300 先) | |
社会面 | ・従業員の働きがいの醸成(2025 年度までに指導的地位にある女性比率を 35%以上) |
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ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2021 年7月 30 日
一般財団法人 静岡経済研究所
静岡経済研究所は、静岡銀行が、 静銀リース株式会社(以下、静銀リース) に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、静銀リースの企業活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価に当たっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則った上で、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
<要約>
(企業概要、経営方針と事業活動)
静銀リースは、静岡銀行グループの総合リース会社として、地域のお客さまの資金ニーズやさまざまな経営課題に対応している。静岡県全域をカバーする営業体制を構築し、ファイナンスリースやオートリースなどの伝統的なリースのほか、不動産リースやエコリースといった新たなリース商品も提案するなど、多様な商品ラインナップを有する。特に、エコリースや 2021 年度に始まる ESG リースなどの環境関連リースに積極的に取り組んでいるほか、リース終了後の3R(リユース、リデュース、リサイクル)推進など、環境保全に注力している。また、従業員の働きやすxx働きがいの向上や、コンプライアンスの徹底にも組織として取り組んでいる。
(インパクトの特定)
ポジティブなインパクトが期待できる活動としては、環境面では、環境関連リースの推進や環境・省エネ分野の積極的な推進、地元有力サプライヤーとの連携強化による環境関連事業の増強など、リースを通じた環境負荷低減の推進が挙げられる。また、経済面では、静岡銀行グループの一員として、県内企業の設備投資ニーズを金融面でサポートすることで、地域に密着した総合x xサービスの提供に貢献しているほか、社会面では、若手の人財育成や女性の登用など、従業員の働きがいを醸成している。
一方で、ネガティブなインパクトを低減する活動としては、静岡銀行グループで環境方針を設定して環境負荷低減に努めたり、リースが終了した物件の廃棄物の適正処理による3R(リユー ス、リデュース、リサイクル)の促進や廃棄物削減など、環境面での貢献が想定される。
(インパクトレーダーとの関連性)
特定されたインパクトを UNEP FI が掲げるインパクトレーダーに当てはめると、ポジティブ面で
は、全社を挙げて環境関連リースを促進しているほか、環境や省エネを成長分野に掲げ、企業や公共インフラにおける再生エネルギー事業への参入や、省エネルギー機器の導入を積極的にサポ
ートするなど、リースを通じた環境負荷低減を推進しているという点から、「気候変動」および「エネルギー」に関するポジティブなインパクトが想定される。
また、静岡銀行グループの一員として、中小企業を中心とする地域企業の資金調達や企業成長を支えるなど、地域に密着した総合金融サービスを提供するという観点では、「包摂的で健全な経済」に資するものでもある。さらに、母体行との人財交流や、若手の人財育成、女性の登用などによって従業員のスキルアップや働きがいを醸成している点では、「雇用」や「教育」におけるポジティブ・インパクトにも該当する。
一方で、静岡銀行グループとともに環境方針を設定し、環境負荷低減に努めているほか、関連商品や営業活動を通じて、お客さまに対する啓発活動にも熱心に取り組んでいることは「気候変動」のネガティブ・インパクトを低減しているほか、リース終了物件に対して、関連法令や業界が定めたガイドラインに準拠して廃棄物を適正に処理するとともに、3R(リユース、リデュース、リサイクル)を促進することで廃棄物削減に貢献していることは、「廃棄物」のネガティブなインパクトを低減させている。
(SDGs との関連性)
環境関連リースの促進や、企業や公共インフラにおける再エネ、省エネ事業をサポートしている観点から「ターゲット 7.2」、「ターゲット 11.6」に関するポジティブなインパクトが想定される。また、中小企業を中心とする地域企業の資金調達や企業成長を支えている点では「ターゲット 8.3」が、母体行との人財交流による従業員のスキルアップや若手の人財育成、女性の登用などによる働きがい醸成では「ターゲット 4.4」や「ターゲット 8.5」に対して、プラスの効果を与える。
一方で、環境方針を設定し、環境負荷低減に努めているほか、お客さまに対する啓発活動への取組みや、リース終了物件に対する3R(リユース、リデュース、リサイクル)促進や廃棄物削減への貢献は「ターゲット 13.3」、「ターゲット 12.4」のネガティブなインパクトを低減させてい
る。
(地域課題との関連性)
静銀リースでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 450 億円に、従業員数を 150 人にすることを目標としており、これにより静岡県経
済全体に年間 665 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
静岡県においては、2021 年2月に、xxxx知事が、県全域での脱炭素社会の実現を目指すため「2050 年温室効果ガス排出量実質ゼロ」を表明した。また、地球温暖化対策の推進に関する実行計画を県内全市町が策定しているほか、県や静岡市、浜松市など 11 の自治体 が、2050 年の二酸化炭素排出実質ゼロに向けた取組みを表明している。各自治体とも、再生可能エネルギーの普及促進や省エネルギーのための設備投資・技術革新など事業者との連携を前提としており、リース等の金融機関への期待も大きい。
(KPI の設定とマネジメント体制)
静銀リースは、特定したインパクト(環境面、経済面、社会面)ごとに、KPI(指標と目標)を設定する。推進体制としては、 xxx代表取締役社長(以下、xx社長)が統括責任 者に就き、管理本部長のxxxxxx取締役専務執行役員(以下、xx専務)がプロジェクトリーダーとして陣頭指揮を執るほか、営業推進部、管理部、経営統括部から5名を選出してプロジェクトチームを組成している。また、静岡銀行やグループ会社、あるいは行政や市民団体、エネルギー関連企業や廃棄物処理業者等とのパートナーシップを意識し、KPI 達成に向けた取組みの拡大を図っていく。
(モニタリング)
KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と静銀リースの担当者が、少なくとも年に1回の会合の場を設け、共有する。静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポ
ートする。
今回実施予定の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
契約日および返済期限 (モニタリング期間) | 2021 年7月 30 日~2026 年 7 月 30 日(5年0ヵ月) |
金額 | 1,000,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
企業概要
企業名 | 静銀リース株式会社 |
所在地 | xxxxxxxxxxx 0 xx 0-0 |
事業所 | 本社(静岡市) 中部支社(静岡市) 藤枝営業所(藤枝市)西部支社(浜松市) 東部支社(沼津市) 富士営業所(富士市) 首都圏営業部(xxx品川区) |
従業員数 | 121 人 うち役員 6 名 プロパー社員 81 名 パート従業員 15 名 静岡銀行からの出向者 19 名 |
資本金 | 250 百万円 |
業種 | 総合リース業 |
事業の内容 | ファイナンスリース オペレーティングリースオートリース 割賦販売 他 |
業種別債権残高割合 (上位5業種) | 製造業 21.3%卸売・小売業 16.1%運輸業 12.7%物品賃貸業 10.9% 医療・福祉 5.6% (2021 年 3 月 31 日現在) |
物件種類別債権残高割合 (上位 5 物件) | 産業機械 24.5%輸送用機器 21.7%商業機器 12.6% 工作機械 7.7% 電子計算機及び関連装置 5.1% (2021 年 3 月 31 日現在) |
沿革 | 1974 年 葵リース㈱設立 1993 年 社名を静銀リース㈱に変更 1994 年 静銀抵当証券㈱と合併 |
(2021 年6月 30 日現在)
1. 地域金融における役割および特徴
【地域に密着した総合リース会社】
静銀リースは、「地域に密着し、総合金融サービスを提供する静銀グループの一員として。」をキャッチフレーズに、静岡銀行グループの総合リース会社として、地域のお客さまの資金ニーズやさまざまな経営課題に対応している。
ファイナンスリース、オペレーティングリース、オートリース、割賦販売など、伝統的なリース需要に対応するとともに、近年は、不動産リース、エコリースなど新たなリース商品も提案するなど、多様な商品ラインナップを有する。また、静岡県内に3支社および2営業所を設けて県全域をカバーする営業体制を構築しており、中小企業を中心に、大企業や官公庁など、ユーザー数は 5,000 件を超える。
ものづくり産業が盛んで物流拠点も多い静岡県経済を反映して、物件種類別のリース取扱高(検収ベース)の割合は、「輸送用機器」(22.7%、全国は 13.8%)や「産業機械」
(17.0%、同 9.8%)が、全国と比較して高いことが特徴である。
輸送用機器としては、法人向けのオートリースにおける自動車がそのほとんどを占め、営業用の乗用車や運送用のトラック、あるいは作業用のフォークリフトなどが中心となる。近年は、営業車両にハイブリッド車や電気自動車などのエコカーを導入するケースも増えており、自動車ディーラー等と連携してニーズに対応している。また、産業機械としては、工場のラインに設置される各種機械が対象となる。静岡県の産業特性を反映して、金属加工機械や食料品加工機械などが多く、昨今の人手不足等を反映して生産効率化を図るための産業用ロボットの導入も増えているほか、より省エネ効果の高い機械への買い替えも進み、静銀リースではエコリース等を提案して設備更新を促進している。
図表 物件種類別のリース取扱高(割合)
物件種類 | 静銀リース | 全国 |
輸送用機器 | 22.7% | 13.8% |
商業及びサービス業用機器 | 19.8% | 11.5% |
産業機械 | 17.0% | 9.8% |
その他 | 13.7% | 9.8% |
情報通信機器 | 8.9% | 38.5% |
工作機械 | 5.4% | 2.2% |
事務用機器 | 5.1% | 7.2% |
土木建設機械 | 5.1% | 2.8% |
医療機器 | 2.2% | 4.4% |
合計 | 100.0% | 100.0% |
業種 | 静銀リース | 全国 |
卸売業・小売業 | 20.0% | 15.8% |
製造業 | 16.6% | 18.6% |
その他サービス業 | 16.0% | 15.6% |
不動産業・物品賃貸業 | 13.6% | 5.8% |
運輸業 | 11.0% | 6.4% |
業種別のリース取扱高(契約ベース)では、卸売業・小売業の割合が全体の 20.0%と最も高く、次いで、製造業(16.6%)、その他サービス業(16.0%)が続き、全国とほぼ同様の構成比となっている。他のリース会社と協調してリースをしたり、リース債権を購入したりするケ
ースもあり、不動産業・物品賃貸業の比率が高くなっている。
図表 業種別のリース取扱高(割合、上位5業種)
※1 図表の出典
静銀リースの取扱高は 2020 年度実績
全国のリース取扱高は 2019 年度実績(出典:公益社団法人リース事業協会「リース・ハンドブック 2020
年8月」)
2. 業界・取引先からの要望・ニーズおよび強み
【ユーザーニーズへの対応】
企業が設備投資等においてリースを活用するメリットとしては、一般的に、①BS におけるオフバランス効果、②初期投資負担の軽減、③設備の陳腐化の防止、➃事務負担の軽減などが挙げられており、資金調達の一般的な手法として定着している。
リースユーザーがリース会社に求めることとしては、照会対応や契約事務などに対する迅速xx、的確なアドバイス、有利な取引条件などが挙げられる※2。静銀リースでは、静岡銀行と決算書等の情報を共有していることから審査スピードが速く、お客さまに寄り添った伴走型の営業スタイルや、レスポンスの良さ、親身な対応などが、多くのお客さまから高い評価を得ている。ま た、目的を明確にした戦略的なファンドを複数設定し、新商品を開発することで、こうしたユーザーニーズに応えている。
また、静岡銀行グループのネットワークを生かすことで、総合的な提案力も可能としている。たとえば、小売業者の新規出店に際して、土地の手配から資金手当てまでトータルでサポートしたり、営業車両の更新に際して、排ガス規制の改正に的確かつ迅速に対応した見積書を提示したり、あるいはお客さま同士をマッチングして事業拡大に貢献するなど、お客さまの事業が円滑に進むようグループの総力を結集させている。
さらに、お客さまの設備投資負担の軽減ニーズに対応するため、補助金や税制優遇を活用したリース提案も行っている。2020 年度には、「エコリース促進事業補助金」、「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」、「石油ガス災害バルク等の導入事業費補助金」、「AI・IoT 等を活用した更なる輸送効率化推進事業費補助金(トラック輸送の省エネ化推進事業)」、
「CEV 補助金」、「次世代タクシーの普及促進事業」などの公的支援策を合計 141 件提案した。こうした公的支援制度は、毎年仕様が変わることから常に情報を更新しておかなくてはならず、社内で育成システムを有する静銀リースにとって、他社との差別化ができている一面といえ る。
※2 出典:公益社団法人リース事業協会「リース需要動向調査報告書 2021 年1月」照会対応や契約事務などが迅速である(48.0%)
リース契約に関してアドバスをしてくれる(46.9%)取引条件が有利である(44.2%)
3. 経営方針と事業活動
(1)環境配慮への取組み
【環境方針および取組指針等の設定】
静銀リースでは、静岡銀行グループの環境方針や取組指針に準拠して、自らの企業活動における環境配慮とともに、リース事業を通じた環境問題への積極的な取組みにより自然環境を守り、持続可能な社会の実現に貢献している。
<静岡銀行グループ環境方針>
静岡銀行グループは、基本理念「地域とともに夢と豊かさを広げます。」のもと、自らの企業活動における環境配慮はもちろん、地域金融を中心とする本業を通じた環境問題への積極的な取り組みにより、郷土の豊かな潤いのある自然環境を守り、持続可能な社会の実現に貢献します。
方針1.関連法令等の遵守
環境に関連する法令等を遵守します。また、持続可能な社会の実現に向けて国内外の指針等が要請する事項に対し真摯に向き合い、企業行動につなげていきます。
方針2.環境負荷の低減
新たな技術や再生可能エネルギー等の導入、省エネルギー・省資源等の推進により、環境負荷の低減に努めます。
方針3.商品・サービスの開発
環境に配慮した商品・サービスの開発などを通じて、お取引先とともに持続可能な社会の実現に貢献します。
方針4.気候変動リスクの認識
気候変動が引き起こす影響が将来にわたり静岡銀行グループの経営リスクとなることを認識し、リスク管理の高度化と情報開示に努めます。また、具体的な環境目標を定め、その実現をはかります。
方針5.啓発活動
企業としての環境保全活動に取り組むことで、静岡銀行グループの役職員一人ひとりの環境問題に対する意識の高揚をはかり、持続可能な社会の実現に貢献する行動につなげていきます。
方針6.ガバナンス
環境保全及び気候変動に対する取り組み状況について経営に報告を行い、実効性を検証します。また、各ステークホルダーと対話を重ねながら、取組内容の改善に努めます。
<静岡銀行グループにおける環境問題への取組指針>
・金融業務を通じた環境への対応
静岡銀行グループの総合金融機能を発揮し、お客さまの環境保全への取り組みを、さまざまなかたちでサポートしています。
・静岡銀行グループの環境負荷の低減
地球温暖化の原因といわれる温室効果ガス。その代表的なものが CO2(二酸化炭素)です。静岡銀行グループでは、環境保全活動の一環として、地球温暖化防止に向けた CO2排出量の削減に取り組んでいます。
・従業員の地域・家庭での環境への対応強化
地球温暖化防止に関する意識調査の実施や、環境に関する情報発信を通じ、従業員の地域・家庭での環境問題への取り組みを強化しています。
<気候変動への対応(TCFD 提言への取り組み)> 静岡銀行では、2020 年 3 月に TCFD 提言への賛同を表明しました。気候変動シナリオ分析を進めていくとともに、地域の持続的成長に向けてグループ一体となり、環境等の社会問題に対して積極的に取り組んでまいります。 TCFD 提言が推奨する 4 項目に沿った対応は以下のとおりです。 | |||
ガバナンス | 静岡銀行グループでは、環境の保全と企業活動の調和に向けて、第 14 次中期経営計画の策定を通じて議論を進めてきました。今後、中期経営計画で定めた内容を実現していくために必要な具体策を定め、経営会議等にてその進捗を確 認していきます。 | ||
戦略 | ■機会 新型コロナウイルス感染症拡大が収束した後には、持続可能な社会への貢献がますます求められ、気候変動関連ビジネスの市場規模拡大が期待されま す。静岡銀行グループでは、お客さまの温室効果ガス排出削減に向けた設備投資やリースの利用を積極的に支援し、環境負荷低減に貢献していきます。 ■移行リスク 低炭素経済への移行に伴う気候変動政策や規制、技術革新等に生じるリスクが想定されます。静岡銀行の与信残高に占める炭素関連資産(電力、ガス、エネルギー等)の割合は 1.3%であり、影響の分析に努めていきます。 ■物理的リスク 気候変動に起因する近年の自然災害を踏まえて気候変動シナリオ分析を進め、財務に与える影響の分析に努めていきます。 | ||
リスク管理 | 静岡銀行では、クレジットポリシーと照らし合わせ、環境や社会に対し影響を与える可能性がある融資について取り上げの可否を判断しています。また、気候変動に起因する移行リスクや物理的リスクに対応するリスク管理体制の構築 を検討していきます。 | ||
指標と目標 | 静岡銀行では、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおり、2018 年度の電力使用量由来のCO2排出量は 16,385 トンと、2015 年度から▲1,289 トンの削減を達成しています。 また、2020 年度の環境関連融資目標を 300 億円に設定しています。(2019 年 度実績:246 億円) |
<特定セクターに対する投融資方針>
静岡銀行グループは、取引を通じて環境・社会に対する負の影響を助長する可能性の高い資金使途の投融資に関し、慎重に判断することで、環境・社会への負の影響を低減・回避することに努めます。
違法または違法目的、公序良俗に反する事業は、環境・社会に対するリスクまたは負の影響を内包しており、これらの事業に対する投融資は行いません。
1.石炭火力発電
環境保護、気候変動、持続可能なエネルギーへの取り組みは金融機関の社会的使命の中でも特に重要なものと位置付けられる。
静岡銀行グループでは、再生可能エネルギー事業を積極的に支援する一方で、新規の石炭火力発電への投融資は原則行わない。
例外的に対応する場合は、所在国のエネルギー政策や国際的ガイドラインを参考に、慎重に判断する。
2.クラスター爆弾製造関連事業
一般市民に甚大な影響を与えてきた兵器であり、その非人道性を踏まえ、クラスター爆弾製造企業に対する投融資は行わない。
3.非人道兵器
核兵器、生物・化学兵器、対人地雷はクラスター爆弾と同様に人道上の懸念が大きいものであり、こうした兵器の製造に対する投融資は行わない。
4.パーム油農園開発
パーム油農園開発事業は、森林伐採や野生動植物の生息地の破壊など環境面の懸念に加え、児童労働などの人権侵害の懸念も含んでいる。
パーム油農園開発事業への投融資に関しては RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)等の認証取得状況などを考慮し慎重に判断する。
5.森林伐採
森林が有する二酸化炭素の吸収・貯蓄機能は気候変動の緩和に重要な役割を果たしている。
森林伐採事業に対する投融資に関しては国際認証の取得状況や環境に対する配慮などを考慮し慎重に判断する。
【環境関連リースの推進】
①成長分野の積極的な営業推進
静銀リースでは、「環境・省エネ」、「医療・介護」、「農業」の3分野を「成長分野」と位置づ
け、積極的な営業活動を推進している。この成長分野の獲得契約額は 20 億円(2020 年度下半期)と、全体の1割強を占める。なかでもxxx発電システムや省エネ機器等の「環境・省エネ」分野は、リース料の一部補填が受けられるエコリースも追い風となり、成長分野の3割強を占めている。
なお、「医療・介護」分野は、医療法人等が病院や診療所などを新設する際の医療機器や医療器具、診断システムなどに対するリースで、成長分野の5割強を占める。また、「農業」分野
は、植物工場建設時の水耕システムや LED 照明等へのリースが該当し、成長分野の1割強を占める。
②エコリース、ESG リースへの取組み
全国的に日照時間の長い静岡県では、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)も後押しして、企業がxxx発電事業に参入するケースが多く見られた。xxx発電システムの導入に関してはリースの活用も多く、静銀リースにおいても、エコリース等を提案することで、県内事業者の再生可能エネルギー事業への参画をサポートしてきた。2016 年度~2020 年度のxxx発電事業に関する同社のリース実績は 89 件、41 億円と、同社全体に占める割合は件数が 0.3%、契約額は 2.2%となっている。
静銀リースのエコリースの契約額は累計 111 億円となり、2019 年度に受給した補助金額は全国のリース会社の中で6番目に多い 63 百万円と、全国 1,513 百万円に占めるシェアは 4.2%※3となっている。全体のリース契約額の全国シェアが1%に満たない中、エコリースの全国シェアは相対的に高く、環境関連分野への強みが見てとれる。
2021 年度に始まる ESG リースについても、すでに指定リース事業者に採択されており、静岡銀行の営業担当者やお客さまへの周知等、積極的な営業活動を展開していく計画である。
※3 出典:「令和2年度行政事業レビューシート(環境省)」
エコリース促進事業 | ESG リース促進事業 |
家庭、業務、運輸部門を中心とした地球温暖化対策を目的として、一定の基準を満たす再生可能エネルギー設備や業務用設備、産業用機械等の幅広い分野の低炭素機器をリースで導入した際に、リース総額の1%~5%を補助する補助金制度。 2020 年度で事業終了。 | 中小企業等が脱炭素機器をリースにより導入した場合に、当初リース契約期間の総リース料の 1%~4%の補助金を指定リース事業者に対して交付する。さらに ESG 要素を考慮した優良な取組を行ってる場合、極めて先進的な取組とし て、2%上乗せする。 エコリースの後継制度として 2021 年度に事業x x。 |
【他社と連携した環境事業】
2019 年に東京電力グループと連携して実施した、富士市の小中学校への低炭素型空調および LED 照明のESCO 事業が、総電力使用量の削減により環境配慮かつ地域社会に貢献する取組みとして、富士市より表彰を受けた。また、2021 年 4 月には、同じく東京電力グループが富士市と業務委託契約を締結した ESCO 事業に参画。高効率な空調機器の導入や照明の LED 化など、市役所の省エネ化に向けた庁舎リニューアル工事で、完了後の 23 年から 15 年間の省エネ効果は年平均で4割減を見込んでいる。
さらに、関西電力系のスタートアップ企業と連携し、「使用済みパソコンを活用した ICT 環境構築支援事業」への参画を進めている。当事業は、リースアップされたパソコンに再生措置を施し、一般消費者やパソコン教室等に販売する事業で、再生措置の作業は障がい者を積極的に雇用している企業が行うことで障がい者雇用に貢献できるとともに、パソコンのリユースによる環境負荷低減にも資する事業である。
【環境関連法制への適正な対応】
リース期間終了後のリース物件の処理に関しては、終了物件の2割は中古市場や買取り業者への売却、3割は納入業者が下取りしている。自社で処理すべき1割については、環境関連法制やガイドラインに準拠し、産業廃棄物処理業者と連携して適正に処分している。
①中古市場や買取り業者への売却
・中古物件を買い取る業者と業務提携し、中古市場で売却。
・医療機器を売却する場合は、医薬品医療機器等法に基づき、メーカーに中古品医療機器の販売に関する指示事項を確認の上、適正に売却している。
(提携業者:医療機器2社、パソコン2社、産業用機械5社、自動車7社)
②納入業者による下取り
・コピー機などは、慣行として新規に納入する業者が下取りする場合が多い。
③マニュフェスト処理(処分)
・ユーザーから廃棄処分を求められる情報機器などは、静岡県内3社の産業廃棄物処理業者と契約し、廃棄を依頼。
・年に1回、現地視察や決算書徴求により、処理実態や財務内容をチェック。
・銅線などの金属部品は種類ごとに分別し、有価物としてリサイクルするよう依頼。
【紙の削減】
自社内で使用する印刷用紙の削減に、全従業員が意識して取り組んでいる。審査用書類や会議用資料等の電子化や両面印刷、裏面活用等による枚数削減を進めた結果、紙の使用量は 2020 年度の 1 年間で前年比▲27.1%と大幅に削減した。
(2)従業員の働きやすxx働きがい向上の取組み
【静岡銀行との人財交流】
静銀リースでは、静岡銀行と積極的に情報共有や人財交流を図っている。
人財交流については、2019 年 10 月に試行し、2020 年4月から本格導入している。現在は、管理職9名、役席者や一般社員 14 名の合計 23 名が、静岡銀行から静銀リースに出向
している。このうち、女性が1名、年代別では、管理職は 40 歳代から 50 歳代前半、役席者や一般社員は 20 歳代後半~30 歳代前半と、若手社員の交流も進めている。また、静岡銀行から静銀リースへの出向者が、兼業として静岡銀行の法人営業企画部門に週に 1 日出勤するなど、多様な働き方によって相互理解に努めている。一方で、静銀リースの若手社員が2名、静岡銀行に出向しており、営業店の渉外担当者として、営業活動の最前線で経験を積んでいる。
こうした連携強化により、母体行や他のグループ会社との間で、営業方針に関する相互理解が進むほか、お客さまの情報共有が促進され、従業員の働きがいにつながり、媒介、紹介案件、リ ースニーズ情報、同行訪問等が増加し、実績として還元されることで、さらなるモチベーションアップにつながるなど、好循環が生まれている。
【若手社員の人財育成】
リース事業は、経済環境の変化に敏感でなくてはならないほか、環境規制やコンプライアンス等に関する制度の改正の影響も受けるため、常に情報のアップデートが必要となる。さらに静銀リースでは、「ソリューション営業力の強化」を第 14 次中期経営計画(2020 年度~22 年度)に掲げているが、お客さまの課題解決に向けた提案をするためには、補助金や税制優遇等の公的支援策や、企業や専門機関等とのマッチングなど、幅広い知識・人的ネットワークが不可欠とな る。
こうした人財育成においては、2名の人事研修担当がカリキュラムを組み、OJT 指導によるレベルアップのほか、静岡銀行への短期トレーニーや、社内における階層別研修の実施、大手リース会社や地銀リース業務研究会等が開催する外部研修への参加、銀行業務検定試験や資格試験の受験推奨など、従業員の知識やノウハウの蓄積による能力向上とそれに伴う自信の醸成に、全社的に取り組んでいる。また FP や簿記などの資格取得者には金銭的なインセンティブを与えて称揚している。
【女性の登用】
静岡銀行グループでは、ダイバーシティ推進委員会を設置するなど、グループ全体のダイバーシティ&インクルージョンに関する取組みを推進している。その中で、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく行動計画を再策定したほか、経団連が推進する「2030 年 30%へのチャレンジ」への賛同を表明している。
静銀リースにおいても、女性の管理職を 1 名配置しているほか、ビジネスリーダーやアシスタントチーフといった指導的地位に、女性を積極的に登用している。2016 年度以降の5年間で、アシスタントチーフ以上の指導的地位にある役職者を 5 名から 10 名に増加させた(うちビジネスリーダーは1名から5名に増加)。今後も、意欲、能力のある人財は男女や年齢に関係なくxxに評価し、積極的に登用していく方針である。
こうした女性の登用には、休暇などの整備も欠かせない。四半期ごとに1日のクウォーター休暇や、半期にそれぞれ3日間、5日間の長期休暇を制度化しているほか、育児休暇や介護休暇も設定している。静岡銀行グループでは 2021 年3月に、「男性育休 100%宣言」への賛同を表明したが、静銀リースとしても子育て世代の従業員が働きやすい環境を構築していく。
【健康経営】
静銀リースでは、静岡銀行グループの健康経営に関する基本方針「静岡銀行グループ 健康 経営宣言」に準拠して、従業員の健康保持・増進を重要な経営課題と位置づけ、働きやすい環境づくりや従業員による健康づくりの支援に取り組んでいる。具体的には、がん検診等の健康診断制度の充実、生活習慣病予防に向けた各種健康増進施策、産業保健スタッフによる相談体制整備などのメンタルヘルスケア体制の充実などである。なお、静岡銀行グループの健康経営に関する取組みは、「健康経営優良法人 2018 ~ホワイト 500~」に認定されている。
<静岡銀行グループ 健康経営宣言>
・静岡銀行グループでは、基本理念「地域とともに夢と豊かさを広げます」のもと、地域の総合金融機関として、質の高い金融サービスの提供を通じて、地域、お客さま、従業員、株主の夢と豊かさの実現を応援します。
・基本理念実現のためには、従業員一人ひとりが心身ともに健康で生き生きと働き、個々の能力を最大限に発揮し成長を続けていくことが重要です。
・従業員は最も大切な経営資源の一つであり、従業員の健康は、従業員本人や家族だけでなく静岡銀行グループにとっても大切な財産です。
・こうした認識のもと、静岡銀行グループでは、従業員の健康保持・増進を重要な経営課題と位置づけ、働きやすい環境づくりや従業員による健康づくりへの支援に積極的に取り組む「健康経営」を推進します。
(3)コンプライアンスへの取組み
【コンプライアンス管理体制】
静銀リースでは、静岡銀行グループのコンプライアンス・リスク管理に係る「基本方針」と「倫理憲章」に準拠した事業方針を定めるとともに、社内体制の整備や従業員教育を徹底している。
具体的には、「コンプライアンス」、「情報資産管理」、「リスク管理」、「産業廃棄物管理」、「インサイダー管理」など、13 の分野でそれぞれ「責任者」や「統括担当者」などを置き、本社と支社等の拠点が一体となって、コンプライアンス体制を構築している。また、40 項目からなる「コンプライアンス・チェックリスト」を作成し、全従業員が毎月チェックすることで日々の業務における各自の行動を振り返り、意識の醸成・向上を図っている。
<基本方針>
静岡銀行グループは、地域社会を形成する一員として、法令や社会ルールの遵守はもちろん、豊かな社会常識とxx無私な心を持って、地域社会と共存しながら発展していくため、コンプライアンス(倫理法令遵守)の基本方針として「倫理憲章」を定めています。
<倫理憲章>
・信頼の確保
私たちは、銀行の持つ社会的責任と公共的使命の重みを常に認識し、銀行グループとして健全な業務運営を通じて揺るぎない信頼の確立を図ります。
・法令・規定の遵守
私たちは、業務遂行にあたって法令・社内の規定を遵守することはもちろん、誠実・xxを旨として、社会の一員としての規範を全うします。
・豊かな社会常識とxx無私な心
私たちは、銀行グループの役職員として豊かな社会常識とxx無私な心を養い、地域社会の発展に貢献します。
・反社会的勢力等との関係遮断
静岡銀行グループは、反社会的組織、公序良俗に反する組織からの不当な要求は断固として拒否するとともに一切の関係を排除します。
・活発なコミュニケーション
私たちはステークホルダーとのコミュニケーションを活発にし、相互に協力しあって強固なコンプライアンス体制を構築します。
【ガイドライン・法制面の改正への対応】
リース業界では、公益社団法人リース事業協会が中心となって、リース物件の取扱いやユーザー対応等に関する業界のガイドラインが設定されている。静銀リースでは、こうしたガイドラインにも全社を挙げて真摯に対応している。
①リサイクルガイドライン
リース終了物件の3R(リユース、リデュース、リサイクル)の促進のため、再リースの継続推進、中古市場、中古業者への売却を通じ、物件再利用に向けた活動を行っている。
②微量 PCB 廃棄物の処理
毒性の強いPCB(ポリ塩化ビフェニル)は「PCB 特別措置法」、「廃棄物処理法」に従って処理するものとされている。静銀リースでは、該当素材の取扱いがないことを確認している。
③自然災害発生時におけるリース会社のユーザー対応等に関するガイドライン
自然災害発生時において、被災中小企業等からのリース料の支払猶予要請やリース期間延長の相談、災害によりリース物件が滅失した場合のリース契約に関する相談があった場合に、支払条件の変更等の柔軟かつ適切な対応を行うこととされている。静銀リースでは、自然災害以外でも、今般のコロナ禍おける経済変調等を要因とした支払猶予の相談等にも親身に応じ、お客さまの資金繰り安定化に寄与している。
➃中小企業向けのリース契約に関する経営者保証ガイドライン
中小企業向けのリース契約に係る不必要な経営者保証のさらなる削減が求められている。ガイドライン策定の前提として、経営者保証を取得しない比率が7割弱とされている中、静銀リースでは、8割の契約において経営者保証を取得していない。
⑤マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン
ファイナンスリース事業者は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」によって、顧客等の取引時確認等の義務が課されているが、静銀リースでは、同法律に基づく、取引時確認、確認記録・取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出、リスクの特定・評価、取引時確認等を的確に行うための措置を確実に履行している。
⑥改正フロン排出抑制法
業務用冷蔵庫・冷凍機器、自動販売機、業務用エアコン等の管理者(使用者)は、フロン排出抑制法によって、「機器点検」と「点検記録簿の作成」が求められている。静銀リースでは、法改正時に通達を発行して社内に周知させたほか、自社でマニュフェスト処理する場合には、産業廃棄物処理業者にフロン回収行程管理票を発行して、適正処理を徹底している。
⑦医療機器の廃棄
医療機器の廃棄物は、血液や病原微生物等が付着している恐れのある「感染性廃棄物」とそれ以外の「非感染性廃棄物」に大別されるが、感染性廃棄物は滅菌消毒を行った上で、特別管理産業廃棄物の取扱許可を取得している業者に処理委託する必要がある。静銀リースでは、許可業者と連携することで適正処理を行っている。
Ⓑ廃棄物焼却炉のリース取扱の中止
ダイオキシンは放出されると土壌や水環境中に長期間残留し、食物連鎖を通して生物濃縮され、生体に影響を及ぼすと言われている。静銀リースでは、ダイオキシンを発生させる恐れのある焼却炉のリースについては、コンプラアインス・チェックリストの№32 において「ダイオキシン類に係わる 新規リース案件を取上げしてはならない」として、毎月各自がチェックするよう社内規定を設定している。
4. 企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブ・ネガティブなインパクト
【ポジティブなインパクトが期待できる活動】
テーマ | 活動内容 |
<環境面>リースを通じた 環境負荷低減を推進 | ①環境関連リースの推進 ・エコリースの積極的な推進(2020 年度まで) ・ESG リース促進事業の指定リース事業者として、脱炭素社会に向けた設備投資を推進(2021 年度以降) ②成長分野として環境・省エネ分野を積極的に推進 ・県内企業の再生エネルギー事業への参入をサポート ・県内企業の省エネルギー機器の導入をサポート ③地元有力サプライヤーとの連携強化による環境関連事業を増強 ・公共インフラにおける ESCO 事業に参画 |
<経済面> 地域に密着した総合金融サービス の提供 | ①静岡銀行グループの一員として、地域に密着し総合金融サービスを提供 ・県内企業の設備投資ニーズを金融面でサポート ・静岡銀行グループのネットワークを活用したスピーディかつ多様なリースの提供 |
<社会面> 若手の人財育成と女性の登用 | ①静岡銀行との人財交流や若手の人財育成、女性の登用による働きがい醸成 ・母体行との人財交流により相互理解が促進されるとともに、営業手法の高度化、多様化につながる ・若手人財の育成システムの構築、女性の登用により、従業員のス キルアップや働きがいを醸成 |
【ネガティブなインパクトを低減する活動】
テーマ | 活動内容 |
<環境面> 環境方針の設定 廃棄物の適正処理 | ①静岡銀行グループとともに環境方針や取組指針を設定し、環境負荷低減に努める ・環境方針や取組指針に準拠し、法令遵守やガバナンスを徹底 ②リース終了物件の適正処理による3R(リユース、リデュース、リサイクル)促進および廃棄物削減 ・法令やガイドライン等に準拠した適正な処理および3R(リユース、 リデュース、リサイクル)の促進による廃棄物削減 |
(1)UNEP FI が掲げるインパクトレーダーとの関連性
静銀リースの企業活動は、全社を挙げて環境関連リースを促進しているほか、環境や省エネを成長分野に掲げ、企業や公共インフラにおける再生エネルギー事業への参入や、省エネルギー機器の導入を積極的にサポートするなど、リースを通じた環境負荷低減を推進しているという点か ら、「気候変動」および「エネルギー」に関するポジティブなインパクトが想定される。
また、静岡銀行グループの一員として、中小企業を中心とする地域企業の資金調達や企業成長を支えるなど、地域に密着した総合金融サービスを提供しているという観点では、「包摂的で健全な経済」に資するものでもある。さらに、母体行との人財交流や、若手の人財育成、女性の登 用などによって従業員のスキルアップや働きがいを醸成している点では、「雇用」や「教育」におけるポジティブ・インパクトにも該当する。
一方で、静岡銀行グループとともに環境方針を設定し、環境負荷低減に努めているほか、関連商品や営業活動を通じて、お客さまに対する啓発活動にも熱心に取り組んでいることは「気候変動」のネガティブ・インパクトを低減しているほか、リース終了物件に対して、関連法令や業界が定めたガイドラインに準拠して廃棄物を適正に処理するとともに、3R(リユース、リデュース、リサイクル)を促進することで廃棄物削減に貢献していることは、「廃棄物」のネガティブなインパクトを
低減させている。
利用可能性、アクセス性、価格の手頃さ、品質 | 質(物理的・化学的性質)と有効利用 | 環境の制約内で人のニーズを満たす手段としての、人々・社会の ための経済的価値創出 |
水 | 大気 | 包摂的で健全な経済 |
食料 | 水 | 経済の収れん |
住宅 | 土壌 | |
健康と衛生 | 生物多様性と生態系サービス | |
教育 | 資源効率・資源安全保障 | |
雇用 | 気候変動 | |
エネルギー | 廃棄物 | |
移動手段 | ||
情報 | ||
文化・伝統 | ||
人格と人の安全保障 | ||
司法 | ||
強固な制度、平和、安定 |
(2)SDGs との関連性
静銀リースの企業活動は、環境関連リースの促進や、企業や公共インフラにおける再エネ、省エネ事業をサポートしている観点から「ターゲット 7.2」、「ターゲット 11.6」に関するポジティブなインパクトが想定される。また、中小企業を中心とする地域企業の資金調達や企業成長を支えている点では「ターゲット 8.3」が、母体行との人財交流による従業員のスキルアップや若手の人財育成、女性の登用などによる働きがい醸成では「ターゲット 4.4」や「ターゲット 8.5」に対し て、プラスの効果を与える。
一方、環境方針を設定し、環境負荷低減に努めているほか、お客さまに対する啓発活動への
取組みや、リース終了物件に対する3R(リユース、リデュース、リサイクル)促進や廃棄物削減への貢献は「ターゲット 13.3」、「ターゲット 12.4」のネガティブなインパクトを低減させている。
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<環境面> リースを通じた環境負荷低減を推進環境方針の設定 廃棄物の適正処理 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 全社を挙げてエコリースやESG リースなどの環境関連リースを推進しているほか、環境や省エネを成長分野に掲げ、お客さまの再生エネルギー事業への参入や、省エネルギー機器の導入を積極的にサポートしている。 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 静岡銀行グループとともに環境方針を設定し、環境負荷低減に努めているほ か、関連商品や営業活動を通じて、お客さまに対する啓発活動にも熱心に取り組んでいる。また、リース終了物件に対して、関連法令や業界が定めたガイドラインに準拠して適正に処理するとともに、3R(リユース、リデュース、リサイクル)を促進 することで廃棄物削減に貢献している。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<経済面> 地域に密着した総合金融サービスの提供 8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。 地域に密着し、総合金融サービスを提供する静岡銀行グループの一員として、静岡銀行グループの持つお客さまの情報やネットワークを最大限に活用すること で、スピーディかつ多様なリースを提供するとともに、リース利用時に活用できる補助 金や税制優遇等の公的支援策も同時に提案することで、中小企業を中心とする地域企業の資金調達や企業成長を支えている。 |
特定されたインパクトが SDGs の 169 のターゲットに与える影響 | SDGs の ゴール |
<社会面> 若手の人財育成と女性の登用 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する。 母体行との人財交流を進めることで、営業手法の高度化、多様化につながると ともに、若手人財の育成システムの構築、女性の登用により、従業員のスキルアップや働きがいを醸成している。 |
(3)地域課題との関連性
①地域経済に与える波及効果の測定
静銀リースは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの KPI を達成することによって、10 年後の売上高を 450 億円に、従業員数を 150 人にすることを目標とする。
「平成 27 年静岡県産業連関表」を用いて、静岡県経済に与える波及効果を試算すると、こ
の目標を達成することによって、静銀リースは、静岡県経済全体に年間 665 億円の波及効果を与える企業となることが期待される。
②地域の独自課題への貢献
【静岡県および県内全市町が地球温暖化対策を推進】
静岡県では、「改定版 第3次静岡県環境基本計画」(2016 年度~20 年度)におい て、「環境の理想郷“ふじのくに”の創造」を基本目標に掲げ、自然環境や生活環境、地球環境等の保全に取り組んでいる。具体的な行動として、環境に配慮した事業活動の促進や環境・エネルギー分野への参入・技術支援など「環境と経済の両立」や、事業所の省エネ化、環境産業の創出など「環境と経済を両立するビジネススタイルの促進」、あるいは「循環資源の3R の推 進」や「廃棄物適正処理の推進」など、企業が取り組むべき課題も数多く設定している。
こうした基本計画を達成するための目標として、県では「ふじのくに地球温暖化対策実行計 画」を策定し、2005 年度を基準に、21 年度の県内温室効果ガス排出量を△21.0%削減する目標を掲げている。このうち、「産業部門」では、事業所の自主的削減の促進や ESG 金融の普及促進などによって△23.6%、「業務部門」では、業務用建築物の省エネ化促進によって△ 12.1%、「運輸部門」では、EVなど次世代自動車の普及促進などによって△19.2%と、事業分野に対する削減の期待は大きい。
2021 年2月には、静岡県のxxxx知事が、県全域での脱炭素社会の実現を目指すため「2050 年温室効果ガス排出量実質ゼロ」を表明したほか、2021 年度に新たな「静岡県地球温暖化対策実行計画(区域施策偏)」の策定を行い、脱炭素社会の実現に向けた新たな取組み等について検討し、県民や事業者、市町と協力して推進していくとしている。
県内市町においても、「地球温暖化対策の推進に関する法律第 21 条第 1 項」に基づく地方公共団体実行計画(事務及び事業に関するもの)を全市町が策定しているほか、静岡県を始め静岡市や浜松市など 10 市町が、「地方公共団体における 2050 年二酸化炭素排出実質ゼロに向けた取組等」を表明している。各自治体とも、行政だけでなく、市民や事業者と連携した取組みを進めており、再生可能エネルギーの普及促進や省エネルギーのための設備投資・技術革新など、リース等の金融機関への期待も大きい。
【地元大学とのつながり】
静銀リースは、常葉大学(静岡市)からの依頼で、毎年、リース事業に関する講座を担当している。企業の資金調達方法や金融におけるリースの位置づけなど、リースに関する概要を説明する講座を受け持っているほか、インターンシップも年 10 回ほど開催して、学生の職場体験機会を創出している。こうした大学や学生とのつながりによって地元から学生を採用しており、2022 年度の新卒採用者も4名内定するなど、地域の雇用の受け皿として貢献している。
5. インパクトを測定する KPI(指標と目標)
特定されたインパクト | KPI(指標と目標) | 関連する SDGs |
<環境面> 気候変動エネルギー廃棄物 | 1.ESG リースの促進 ・ESG リース促進事業の指定リース事業者として、ESGリースを 2025 年度までに 200 件契約する。 2.環境・省エネ分野の推進 ・お客さまの再生エネルギー事業への参入や省エネルギー機器の導入をサポートし、環境・省エネ分野リースを 2025 年度までに 150 億円契約する。 3.環境方針の遵守、環境負荷低減 ・営業車両を 2025 年度までに、すべてハイブリッド車や電気自動車などのエコカーに切り替える(軽自動車を除く)。 4.法令遵守、廃棄物削減 ・法令やガイドラインに則り、リース終了物件の適正処理による3R(リユース、リデュース、リサイクル)促進および廃棄物削減に努める。 | |
<経済面> 包摂的で健全な経済 | 1.地域に密着した総合金融サービスの提供 ・県内 5 営業拠点体制を維持し、県内企業・官公庁等からのリースニーズに迅速かつ丁寧に対応する。 ・営業エリア内でのリースの浸透を目指し、ユーザー先数 (再リース除く)を 2025 年度に 5,300 先とする。 | |
<社会面>雇用 教育 | 1.従業員の働きがいの醸成 ・若手社員の育成体制・研修カリキュラム等を充実させ、スキルアップおよびモチベーションアップを図る。 ・女性の登用を積極的に行い、2025 年度までに指導的地位にある女性比率を 35%以上とする。 (母体行からの出向者・転籍者を対象人数から除く、アシスタントチーフを含む) |
6. マネジメント体制
静銀リースでは、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、組織横断的なプロジェクトチームを結成。xx社長が統括責任者に就き、管理本部長のxx専務がプロジェクトリーダーとして陣頭指揮を執っている。プロジェクトチームには、営業推進部、管理部、経営統括部から5名が選出され、社内の制度、中期経営計画、事業計画、商品、実績、日々の業務、諸活動等を棚卸しすることで、自社の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性について検討を重ねた。
本ポジティブ・インパクト・ファイナンス実行後においても、xx社長の下、プロジェクトリーダーやプロジェクトチームを中心に KPI の達成に向けた推進体制を構築していく。お客様への営業活動や支社等への示達については営業推進部が、廃棄物処理や法令遵守については管理部が、人財育成や従業員の評価制度等の社内体制については経営統括部がそれぞれ担当することで、全社を挙げた取り組みとしていく方針である。
一方で、KPI 達成のためには、自社内の経営資源だけでは困難なケースも想定される。特に、母体行である静岡銀行やグループ会社と一体となった活動推進、あるいは行政や市民団体、エネルギー関連企業や廃棄物処理業者等との連携も不可欠となる。今後は、プロジェクトチームを
中心に外部事業者とのパートナーシップを意識し、取組みの拡大を図っていくとしている。
統括責任者 | 代表取締役社長 xx x |
プロジェクトリーダー | 代表取締役専務執行役員 xx xx |
プロジェクトチーム | 営業推進部 副部長 xxxx、推進役 xxxx管理部 ビジネスリーダー xxxx 経営統括部 副部長 xxxx、調査役 xxxx |
7. モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI の達成および進捗状況については、静岡銀行と静銀リースの担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施するほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
静岡銀行は、KPI 達成に必要な資金およびその他ノウハウの提供、あるいは静岡銀行の持つ
ネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI 達成をサポートする。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、静岡経済研究所が、静岡銀行から委託を受けて実施したもので、静岡経済研究所が静岡銀行に対して提出するものです。
2.静岡経済研究所は、依頼者である静岡銀行および静岡銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する静銀リースから供与された情報と、静岡経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者および本件問合せ先>
一般財団法人静岡経済研究所
企画調査部 調査グループ長 xx xxx
〒400-0000
xxxxxxxx 0-00 xxxxx 0 x
XXL:000-000-0000 FAX:000-000-0000