浜松いわた信⽤⾦庫(理事⻑ 髙栁 裕久、以下「当⾦庫」)では、SDGs への取組み及び持続可能な社会への貢献を実現するため有限会社大橋建工様と「ポジティブ・イ ンパクト・ファイナンス」(以下PIF)の契約を締結しましたので下記のとおり、お知らせいたします。
2024年3月29日
有限会社xxx工との
「浜松xxxx⽤⾦庫ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約締結について
浜松xxxx⽤⾦庫(理事⻑ xx xx、以下「当⾦庫」)では、SDGs への取組み及び持続可能な社会への貢献を実現するため有限会社xxx工様と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」(以下PIF)の契約を締結しましたので下記のとおり、お知らせいたします。
企業概要
有限会社xxx工様の取組みについての詳細は、「評価書」をご参照ください
事業者名 | 有限会社xxx工 |
所 在 地 | xxxxxxxxx0000 |
業 種 | 建築工事業 |
実施内容
契約日 | 2024年3月29日 |
融資⾦額 | 50,000,000円 |
資⾦使途 | 運転資⾦ |
同社におけるインパクトを、以下のとおり評価しました。(詳細は別添の「評価書」をご参照ください)
社 会 | ・⾃然災害対応⼒の強化 ・労働災害発生件数0件の継続 ・従業員の給与水準引き上げ | |
社 会 経 済 | ・取引先中⼩企業の増加とそれに伴う協⼒企業の業務増加 | |
⾃ 然 環 境 | ・照明の LED 化による CO₂削減 | |
社 会 | ・xxx有害物質の適正な破棄による健康被害の削減 | |
・ | ・⾼効率・省エネルギーな建物の改修 | |
⾃ 然 | ||
環 x |
「PIF」は、企業活動において環境・社会・経済に及ぼすポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減を包括的に分析・評価することで、資⾦供給と当該活動の継続的な⽀援を目的とする融資商品です。
事業者様の企業活動そのものが SDGs や ESG 等に与えるポジティブ及びネガティブなインパクトを当⾦庫および(⼀財)しんきん経済研究所が(株)日本格付研究所の協⼒を得ながら評価を実施します。
また、事業者へのインパクト評価で特定された KPI について、進捗状況、適切に回避・低減されているか融資期間中におけるモニタリングを実施します。
浜松xxxx⽤⾦庫は、お客様の SDGs・ESG 経営に向けたソリューションの提供や対話を⾏い、⻑期に亘る信頼関係構築と持続可能な地域社会の構築に取り組んでまいります。 以 上
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
評価対象企業:有限会社xxx工
2024 年 3 月 29 日
一般財団法人しんきん経済研究所
目次
3-1 UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析 13
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性 13
有限会社xxx工は、浜松市を中心とした静岡県西部地域が基盤の建築工事業者である。1946年の創業当初から大切な思いとして引き継いできた「お客様にとって安心・安全の建築・工事を提供する」を積み重ねてきている。
当社では、一般住宅の新築・改修工事、公共工事など幅広く業務を行っているが、特に法人向け改修工事に強みがあり、売上の 76%(2023 年度 6 月期)を占める主力事業として顧客の工場・倉庫・事務所関連の工事全般を行っている。
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた分析結果と個別要因を加味して、ポジティブ・インパクトとして「エネルギー」、「健康と衛生」、「雇用」、「賃金」、「零細・中小企業の繁栄」、「気候の安定性」、
「資源強度」を、ネガティブ・インパクトとして「自然災害」、「健康および安全性」、「民族・人種平等」、「気候の安定性」、「大気」、「資源強度」、「廃棄物」を特定した。
今回実施の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の概要
金額 | 50,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 10 年間 |
1.企業概要
企業名 | 有限会社xxx工 |
所在地 | xxxxxxxxxxxx 0000 |
事業所 | 本社事務所 |
従業員数 | 9 名 |
資本金 | 2,000 万円 |
事業内容 | [土木・建築工事] 鉄骨建築、木造建築、内外装リフォーム、盛土、コンクリート工事 [とび・土工] 外構・外柵工事、エクステリア [工場営繕] 雨漏り・天井修理、外壁修理、床面修理、配管修理、 [地震対策] 設備固定・転倒防止、耐震補強、コンクリート基礎工事 [設備・備品製作] 安全柵・梯子、架台・足場、掲示板・表示板、シャッター・窓 |
子会社 | 有限会社xx空調 所在地 xxxxxxxxxxxx 000 事業内容 総合設備工事業 株式会社カスタムハウス 所在地 xxxxxxxxxxxx 0000 事業内容 一般個人向けの新築注文住宅 |
許認可・登録・特許・認証等 | 特定建設業許可 静岡県知事許可(特‐3)第 18327 号 土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、熱絶縁工事業、建具工事業、水道施設工事業、解体工事業 一般建設業許可 静岡県知事許可(般‐4)第 18327 号電気工事業、管工事業 宅地建物取引業許可 静岡県知事(1)第 14236 号 |
主要取引先 | ヤマハ発動機株式会社株式会社山善 株式会社ジェイテクトコラムシステム |
JFE 溶接鋼管株式会社 株式会社エフ・イー・シーチェーン株式会社クチーナ 株式会社ハマキョウレックス株式会社ヤタロー 静岡トヨタ自動車株式会社株式会社xx楽器製作所 ヤマト運輸株式会社 浜北工業株式会社 味の素エンジニアリング株式会社その他、中小中堅企業 | |
沿革 | 1964 年 「xx建築」として、浜松市xx町にてxxxxxが創業 1965 年 事業拡大につき“建築工事業”の許認可取得 1973 年 「xxx工」へ商号を変更 1975 年 浜松市xx町から上西町に事業所を移転 1976 年 事業拡大につき“土木工事業”の許認可取得 1987 年 「有限会社xxx工」として法人設立 1990 年 事業拡大につき“とび・土工工事業”の許認可取得 1996 年 営業許可申請を更新、“建築工事業、土木工事業、とび・土工工事業” 2000 年 本社事務所をリニューアル 2017 年 本社工場をリニューアル 2019 年 ショールームをオープン 2020 年 代表取締役にxxxxxが就任 2021 年 建築一式工事、土木一式工事 他 20 工種にて特定建設業許可を取得 2022 年 M&A で有限会社xx空調を子会社化 2023 年 電気工事、管工事にて一般建設業許可を取得 新築住宅事業を分社化し、株式会社カスタムハウス設立 |
(1)事業概要
有限会社xxx工(以下、xxx工)は、浜松市を中心とした静岡県西部地域を基盤とする建築工事業者である。1946年の創業当初から大切な思いとして引き継いできた「お客様にとって安心・安全の建築・工事を提供する」を積み重ねてきている。
xxx工では、一般住宅の新築・改修工事、公共工事など幅広く業務を行っているが、特に法人向け改修工事に強みがあり、売上の 76%(2023 年度 6 月期)を占める主力事業として顧客の工場・倉庫・事務
所関連の工事全般を行っている。
【2023 年6月期の売上構成(単位:億円、構成割合)】
公共工事, 0.3億円, 7% その他工事, 0.1億円,…住宅改修, 0.2億…
住宅新築, 0.4億円,…
法人向け改修工事, 3.1億円 76%
(xxx工資料を基にしんきん経済研究所が作成)
*2023 年 9 月、新設住宅事業を分社化
(2)子会社・組織
xxx工は、有限会社xx空調(以下、xx空調)と株式会社カスタムハウス(以下、カスタムハウス)の 2 つ子会社がある。xx空調は 2022 年 9 月に M&A で子会社化した会社で、工場やビルのダクト工事、局所排気工事などの設備工事全般を行っている。
カスタムハウスはxxx工が行っていた新築住宅事業を 2023 年 9 月に分社化したものであり、代表取締役社長はxxx工のxxxx代表取締役社長(以下、xx社長)が兼務している。
【子会社・組織図】
<.. image(タイムライン が含まれている画像 自動的に生成された説明) removed ..>
(xxx工資料)
(3)主な事業の概要
①法人向け改修工事
主に、製造業の工場向けに建築物の新築、増築、修繕、模様替え等の営繕工事を行っている。外壁から床面、配管、天井、白線、コンクリート工事に至るまで、工場の営繕全般を一貫して対応できることがxxx工の強みとなっている。工場のリノベーションにより、顧客の生産性及び職場環境の向上に貢献している。
中小製造業者の場合、工事発注担当者がいないケースが多く、いる場合でも、「どのような工事をすれば良いかわからない」、「どこにお願いすれば良いかわからない」、などの悩みを抱えている。xxx工に一括して発注することで工事の発注手間、管理工数を削減することができ本業に集中できるとの評価を受けている。
(xxx工資料)
(1)経営理念(経営の基本方針・経営者の考え方)
(xxx工資料)
(2)企業理念(会社の基本方針・社員を含む会社全体としての在り方)
(xxx工資料)
(3)経営方針
xxx工では、2023 年度の売上高 4 億 1000 万円を、2028 年度には 15 億 1000 万円に成長させる経営計画をたてている。
① 工事単価高額化
現在は、主に製造業企業向けの改修工事で売上を上げているが、工事案件は、1000 万円以下の少額工事がほとんどを占めている。「断熱化」「省エネ化」「省力化」「生産性向上」などに関わる工事の提案型営業活動による工事単価アップを図る。
対法人向け工事受注金額で、2028 年まで毎期前年対比 120%の成長を目指す。
② 公共工事受注の強化
現在は、年間 1,2 件の公共工事を受注している。実績及び技術力の向上の意味でも公共工事の意義は大きい。シンプルに受注による売上金額のみならず、技術力アップによる高額工事受注にも繋がっている。2000 万円以上の公共工事受注を強化していく。
公共工事受注金額は、2028 年まで毎期前年対比 150%の成長を目指す。
③ 建築工事+設備工事
xxx工は、建築工事がメインの会社ではあるが、顧客が製造業企業であることから、設備工事のニーズが多い。これまでの、建築系や土木系メインの提案から、建築+設備(電気・管)の工事提案を強化している。そのために、2022 年のxx空調の M&A、2023 年には電気工事・管工事の建設業許可を取得した。
設備工事の受注金額は、2028 年まで毎期前年対比 150%の成長を目指す。
<.. image(ウォーターフォール図 中程度の精度で自動的に生成された説明) removed ..>
(xxx工資料)
(1)設備老朽化と更新需要の増加
老朽化した設備は故障リスクが高く、生産効率の低下や安全性の低下を招く懸念がある。こうした状況を受け、設備更新需要が活発化している。特に、生産設備の自動化や省力化に向けた投資が顕著となっている。
(2)サステナビリティへの意識の高まり
近年、環境問題への意識の高まりから、工場営繕においてもサステナビリティへの取り組みが重要になっている。具体的には、省エネ設備の導入や、環境負荷低減に配慮した材料の使用などが進められている。
(3)予防保全へのシフト
従来の故障対応から、故障を未然に防ぐ予防保全へのシフトが進んでいる。予防保全には、設備の定期点検や状態監視などが含まれ、これらの取り組みによって、設備の安定稼働とコスト削減を実現できる。
(4)アウトソーシングの拡大
人手不足や専門性の不足などの課題から、工場営繕を外部業者にアウトソーシングする企業が増えている。アウトソーシングによって、専門的なサービスを受けられるだけでなく、コスト削減や業務効率化を実現できる。
(5)技術革新の加速
AI や IoT などの技術革新が加速しており、工場営繕の分野にも新たな技術が次々と導入されている。これらの技術を活用することで、作業の効率化や安全性向上、コスト削減などが期待できる。
(1)自然災害への対応
xxx工の本社所在地である静岡県浜松市及び周辺地域では、近年台風や線状降水帯による大規模水害が多発していることに加え、マグニチュード 8~9 級の地震発生確率が 30 年以内 70~80%と予想される南海トラフ地震に備えが求められるなど自然災害への対応が課題となっている。xxx工が行う耐震化や浸水対策を伴う工場営繕は、地域課題である自然災害への対応に貢献しているといえる。
(2)環境問題への対応
浜松市では、2050 年カーボンニュートラルを目指すための施策や取組を示す「浜松市地球温暖化対策実行計画」やエネルギー政策を市民や事業者などオール浜松で進めている。xxx工が行う高効率・省エネルギー工事は、地域課題である環境問題への対応に貢献しているといえる。
2.サステナビリティ活動
(1)石綿の除去
石綿(アスベスト)は、その粉じんを吸入することにより、肺がん、中皮腫等の重篤な健康障害を引き起こす危険がある。2006 年 9 月以降使用が全面的に禁止されているが、それ以前の建物には石綿を含んでいるものもある。
xxx工では、改修工事を行う際、石綿障害予防規則など関連法令を遵守し、石綿に関する事前調査、及び適正処分を行っている。
(2)自然災害対応力の強化
①社屋の全面改修
xxx工では、近年多発する水害や、マグニチュード 8~9 級の地震発生確率が 30 年以内 70~80%と予想される南海トラフ地震に備えるため、既存社屋の耐震補強含む全面改修工事を予定している。
鉄骨造の工場建屋の社屋の耐震補強に関連付けて、外装工事、内装工事、照明の LED 化その他設備工事も実施予定となっており、BCP 対策と共に働く環境整備による生産性向上を図ろうとしている。
②自然災害に強い建物の施工
近年、長時間に渡る記録的な大雨などを原因として、事業所の浸水被害が相次いでいる。xxx工では、浸水被害後の現状復旧工事の他、工場敷地に止水板を設置する工事など、その実績を重ねると共 に、浸水対策工事の提案活動を実施している。
(3)高効率・省エネルギーな建物の施工
取引先の製造業において、高効率・省エネルギー工事についてのニーズが数多くある。最も多い工事事例が、蛍光灯照明から LED 照明への更新工事であり、電気代の削減効果と共に、照明器具自体の長寿命化、メンテナンス性の向上などを図ることができ、取引先の高効率・省エネルギー化に貢献しているといえる。
また、古い空調機器を使用の場合、現行の高効率空調機器に更新することで省エネ化が図れることも多く、国や県からの補助金が出ているタイミングに合わせて提案活動を行っている。
【高所 LED 交換工事】
(xxx工 HP より抜粋)
(xxx工資料)
(4)全従業員が活躍できる職場環境の整備
①女性従業員の活用
xxx工では、従業員 9 中 4 名(うちパート従業員 2 名)が女性であり、時短正社員制度など女性従業員が働きやすい勤務体系制度を整備している。
【xxx工の女性従業員】(2024 年 2 月)
年齢 | 雇用形態 | 資格 | 担当業務 |
24 歳 | 新卒 正社員 | 2 級建築士 | 法人向け事務所改修工事、住宅向 けリノベーション工事 |
38 歳 | 中途 正社員 | 宅地建物取引士 | 地元不動産オーナー物件向けリ ノベーション工事 |
43 歳 | 中途 パート | インテリアコーディネーター | サポート業務 |
48 歳 | 中途 パート | インテリアコーディネーター | サポート業務 |
(xxx工資料)
②国籍を問わない平等な職場環境
xxx工では、かつてブラジル国籍女性を正社員で 1.5 年間雇用(帰国のため退社)しており、に住宅向けリノベーション工事に携わり、リノベーションプランの提案から工事の施工管理までを一貫して対応していた。今後も、日本語能力と建築に関する専門知識が一定レベル以上見込める場合は、国籍を問わず採用していく方針である。
③ワークライフバランス
xxx工の有給休暇取得日数は、平均 10.5 日(2023 年 6 月期)となっている。有給休暇取得率は平
均 87.5%と大企業も含めた建設業平均を 30.0 ポイント上回っている。
【有給休暇取得状況】
平均取得日数 | 平均付与日数 | 平均取得率 | |
当社 | 10.5 日 | 12.0 日 | 87.5% |
建設業平均 | 10.3 日 | 17.8 日 | 57.5% |
(厚生労働省令和 5 年就業条件総合調査、xxx工資料を基に当研究所作成)
時間外労働は、月平均 10 時間(2023 年 6 月期)と、建設の平均 13.8 時間を下回っている。産休・育休の取得については、男性・女性とも今まで対象者がいなかったため実績はない。
【時間外労働】
月間時間外労働時間計 | |
当社 | 10.0 時間 |
建設業平均 | 13.8 時間 |
(厚生労働省毎月勤労統計調査令和 4 年分結果確報、xxx工資料を基に当研究所作成)
④従業員研修制度
xxx工では、新卒・中途採用別に OJT と OFF-JT を組み合わせた研修を全額会社負担で行っている。新卒採用の従業員に対しては、入社月に外部の新入社員研修に参加させるとともに、6 か月間の
OJT を行っている。中途採用の従業員に対しては、外部の社員研修・リーダー研修などに参加させるとともに、3 か月間の OJT を行っている。
業務に関係する資格については取得奨励制度を設け、従業員に対して資格取得の動機付けを行っている。
⑤年 3%以上の賃上げ検討
xxx工では、経営理念の一つに「全社員とその家族の幸福を追求する」を掲げており、「豊かな生活と幸福の追求のため、待遇の向上、職場環境の改善に努める」としている。また、2023 年度の売上高 4 億 1000 万円を、2028 年度には 15 億 1000 万円に成長させる経営計画をたてており、その実現のためには従業員の待遇改善が同時に求められる。そこで、xxx工では年 3%以上の賃上げを持続的に行うことを検討している。
(5)過去 20 年間労働災害発生件数ゼロ
xxx工では、過去 20 年間労働災害が 1 件も発生していない。従業員が安心して働ける環境は、従業員満足度を高め、企業の持続的成長を支えている。施工現場での朝礼では、安全意識の向上と作業者へのxxxxを図っている。また、定期的に危険予知訓練を行い潜在的な危険を予知して対策を講じている。
(1)零細・中小企業の繁栄に貢献
xxx工は、ヤマハ発動機株式会社、株式会社山善など大手企業を主要取引先としているが、金額ベースで 45%、件数ベースで 68%が零細・中小企業との取引となっている。また、専門工事を行う協力会社の大半が零細・中小企業となっている。
零細・中小企業の工場は老朽化が進んでいる場合が多く、耐震性や環境性能が劣る他、アスベスト等有害物質が含まれていることもある。
xxx工が、取引先の老朽化した工場を営繕することで、耐震性・安全性・作業効率を高めることができる。また、省エネルギー設備を導入すれば、エネルギーコストを削減することもでき、快適な職場は従業員のモチベーションを高めることもできる。xxx工の工場営繕事業の拡大は、施主の繁栄と同時に、協力会社の業務拡大にもつながるため、零細・中小企業の繁栄に貢献しているといえる。
(1)建設現場から排出される廃棄物の処理
建設現場から排出される廃材については、木材、アスファルト、コンクリート殻、アスベスト混入材、 PCB 含有照明器具など分別して、外部の廃棄物収集運搬処理業者へ処理を委託している。処理状況については、マニフェスト発行により処理の完了を確認している。
(2)CO2 削減の取り組み
xxx工では、社用車のアイドリングストップ、事務所内の無駄な空調・照明の電力削減など地道な取り組みを行っている。
3.包括的分析
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いて、xxx工について網羅的なインパクト分析を実施した。その結果、ポジティブ・インパクトとして「エネルギー」、「住居」、「雇用」、「賃金」、「零細・中小企業の繁栄」、「インフラ」が、ネガティブ・インパクトとして「現代奴隷」、「自然災害」、「健康および安全性」、「エネルギー」、「文化と伝統」、「賃金」、「社会的保護」、「民族・人種平等」、「その他の社会的弱 者」、「気候の安定性」、「水域」、「大気」、「土壌」、「生物種」、「生息地」、「資源強度」、「廃棄物」が抽出された。
xxx工の個別要因を加味して、当社のインパクト領域を特定した。
その結果、xxx工は石綿の除去や高効率・省エネルギーにつながる工場営繕事業を行っていることから、「健康と衛生」、「気候の安定性」、「資源強度」をポジティブ・インパクトに追加した。
削除したインパクト領域については、事業との関連性がないことから「エネルギー」をネガティブ・インパクトから削除した。また、道路や橋などのインフラ工事を行わず、住宅事業も分社化しているため、「住居」、「インフラ」をポジティブ・インパクトから削除した。
さらには、水域、土壌、生物種、生息地に大きな悪影響を及ぼす工事を行っていないため、「水域」、
「土壌」、「生物種」、「生息地」をネガティブ・インパクトから削除した。また、文化遺産を損壊するような事業を行っておらず、身体的かつ精神的な苦痛を与えるような苦痛を与えるような強制労働や社会的弱者に対する差別も行っていないことから、「現代奴隷」、「文化と伝統」、「その他の社会的弱者」をネガティブ・インパクトから削除した。「社会的保護」も平均的な水準の福利厚生は整備されていることからネガティブ・インパクトから削除した。
3-3 特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動の関連性
xxx工のサステナビリティのうち、ボジティブ面のインパクトは、石綿の除去は、「健康と衛生」に、全従業員が活躍できる職場環境の整備は、「雇用」に、給与水準の引き上げは、「賃金」に、中小企業に対する工場営繕事業は、「零細・中小企業の繁栄」に、高効率・省エネルギーな建物の施工は、「エネルギー」、「気候の安定性」、「資源強度」に貢献する取り組みであると評価される。
一方、ネガティブ面においては、石綿の除去は、「健康および安全性」、「大気」、「廃棄物」に、自社社屋の全面改修は、「自然災害」に、労働災害ゼロの実績は、「健康および安全性」に、全従業員が活躍できる職場環境の整備は、「民族・人種平等」に、社用車のアイドリングストップ、事務所内の無駄な空調・照明の電力削減は、「気候の安定性」、「資源強度」に貢献する取り組みであると評価される。
UNEP FI のインパクト分析ツールを用いたインパクト分析結果を参考に、xxx工のサステナビリティに関する活動を同社の HP、提供資料、ヒアリング等から網羅的に分析するとともに、同社を取り巻く外部環境や地域特性等を勘案し、当社が社会・環境・経済に対して最も強いインパクトを与える活動に
ついて検討した。そして、同社の活動が、対象とするエリアやサプライチェーンにおける社会・環境・経済に対して、ポジティブ・インパクトの増大やネガティブ・インパクトの低減に最も貢献すべき活動を、インパクト領域として特定した。
【UNEP FI のインパクト分析ツールを用いたインパクト分析結果】
インパクトエリア | インパクトトピック | 既定値 | ||
ポジティブ | ネガティブ | |||
社会面 | 人格と人の安全保障 | 紛争 | ||
現代奴隷 | 〇 | |||
児童労働 | ||||
データプライバシー | ||||
自然災害 | 〇 〇 | |||
健康および安全性 | 健康および安全性 | |||
資源とサービスの入手可能性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 | 水 | |||
食料 | ||||
エネルギー | 〇 〇 | 〇 | ||
住居 | ||||
健康と衛生 | ||||
教育 | ||||
移動手段 | ||||
情報 | ||||
コネクティビティ | ||||
文化と伝統 | 〇 | |||
ファイナンス | ||||
生計 | 雇用 | 〇 〇 | ||
賃金 | 〇 〇 | |||
社会的保護 | ||||
平等と正義 | ジェンダー平等 | |||
民族・人種平等 | 〇 | |||
年齢差別 | ||||
その他の社会的弱者 | 〇 | |||
社 会経済面 | 強固な制度・平和・安定 | 法の支配 | ||
市民的自由 | ||||
健全な経済 | セクターの多様性 | |||
零細・中小企業の繁栄 | 〇 〇 | |||
インフラ | インフラ | |||
経済収束 | 経済収束 | |||
自然環境面 | 気候の安定性 | 気候の安定性 | 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 | |
生物多様性と生態系 | 水域 | |||
大気 | ||||
土壌 | ||||
生物種 | ||||
生息地 | ||||
サーキュラリティ | 資源強度 | |||
廃棄物 |
修正値 | |
ポジティブ | ネガティブ |
〇 〇 | |
〇 | |
〇 | |
〇 〇 | |
〇 | |
〇 | |
〇 | |
〇 | 〇 |
〇 | |
〇 | 〇 〇 |
4.KPI の設定
特定されたインパクト領域のうち、社会面・社会経済面・自然環境面に対して一定の影響が想定され、当社の経営の持続可能性を高める項目について、以下のとおり KPI が設定された。
なお、「賃金」について、適正な賃金の支払いがなされておりネガティブ・インパクトの抑制がなされていることが確認できたことから KPI を設定しない。また、「民族・人種平等」について、外国人在籍時(2024 年 2 月時点では在籍者は 0 人)には、国籍を問わない平等な職場環境を実現しており、十分にネガティブ・インパクトの抑制がなされていることが確認できたことから KPI を設定しない。
インパクトレーダーとの関連性 | 自然災害 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 自然災害対応力の強化 |
取組内容 | 水害対策、耐震補強を伴う社屋の全面改修。 |
SDGs | 11.b 2020 年までに、包含、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対する強靱さ(レジリエンス)を目指す総合的政策及び計画を導入・実施した都市及び人間居住地の件数を大幅に増加させ、仙台防災枠組 2015- 2030 に沿って、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行う。 13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 |
KPI(指標と目標) | 2024 年 5 月 着工 2025 年 7 月 完成 |
インパクトレーダーとの関連性 | 健康および安全性 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 労働災害発生件数 0 件の継続 |
取組内容 | 安全点検体制の強化や安全講習の継続実施を行うことで、重大な 労働災害発生件数 0 件を維持する。 |
SDGs | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環 境を促進する。 |
KPI(指標と目標) | 重大な労働災害発生件数 0 件を維持する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | 賃金 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 従業員の給与水準引き上げ |
取組内容 | 従業員の待遇を改善するため、継続的に給与水準を引き上げる。 |
SDGs | 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに 同一労働同一賃金を達成する。 |
KPI(指標と目標) | 2034 年 3 月まで年平均 3%以上の賃上げを実施する。 |
<.. image(アイコン 自動的に生成された説明) removed ..>
<.. image(アイコン 自動的に生成された説明) removed ..>
インパクトレーダーとの関連性 | 零細・中小企業の繁栄 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 取引先中小企業の増加とそれに伴う協力企業の業務増加 |
取組内容 | 中小企業の工場営繕を増加させることで、取引先及び協力企業の 繁栄に寄与する。 |
SDGsとの関連性 | 8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の 設立や成長を奨励する。 |
KPI(指標と目標) | 2034 年 3 月までに、新規取引の中小企業を累計 50 件開拓する。 |
<.. image(アイコン 自動的に生成された説明) removed ..>
インパクトレーダーとの関連性 | 気候の安定性、資源強度 |
インパクトの別 | ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 照明の LED 化による CO2 削減 |
取組内容 | 全面改修する社屋の照明を LED 化する。 |
SDGsとの関連性 | 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
KPI(指標と目標) | 2025 年 7 月までに改修した社屋の照明を 100%LED 化する。 |
<.. image(アイコン が含まれている画像 自動的に生成された説明) removed ..>
インパクトレーダーとの関連性 | 健康および安全性、健康と衛生、大気、廃棄物 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大、ネガティブ・インパクトの低減 |
テーマ | 石綿等有害物質の適正な破棄による健康被害の削減 |
取組内容 | 石綿等有害物質を除去する工場営繕の施工に積極的に取り組む。 |
SDGs | 3.9 2030 年までに、有害化学物質、並びに大気、水質及び土壌の汚染による死亡及び疾病の件数を大幅に減少させる。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質や全ての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、 水、土壌への放出を大幅に削減する。 |
KPI(指標と目標) | 2034 年 3 月までに、石綿等有害物質を除去する工場営繕を累計 100 件以上施工する。 |
インパクトレーダーとの関連性 | エネルギー、気候の安定性、資源強度 |
インパクトの別 | ポジティブ・インパクトの増大 |
テーマ | 高効率・省エネルギーな建物の改修 |
取組内容 | 省エネルギーにつながる工場営繕を増加する。 |
SDGs との関連性 | 7.1 2030 年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 7.3 2030 年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 13.3 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。 |
KPI(指標と目標) | 2034 年 3 月までに、省エネルギーにつながる工場営繕を累計 200 件以上施工する。 |
<.. image(コンパクトディスク が含まれている画像 自動的に生成された説明) removed ..>
<.. image(アイコン 自動的に生成された説明) removed ..>
<.. image(アイコン 自動的に生成された説明) removed ..>
5.マネジメント体制
最高責任者 | 代表取締役社長 大橋賢作氏 |
実行責任者 兼プロジェクトリーダー | 内ヶ崎文子氏 |
担当部署 | 管理部 |
6.モニタリングの頻度と方法
本ポジティブ・インパクト・ファイナンスで設定した KPI 達成及び進捗状況については、浜松磐田信用金庫と当社の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年1回実施するほか、日ごろの情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
浜松磐田信用金庫は、KPI の達成に必要な資金及びその他のリソースの提供、浜松磐田信用金庫が持つネットワークから外部の資源ともマッチングすることで KPI の達成をサポートする。
モニタリング期間中に達成した KPI については、達成後もその水準を維持しているか確認し、経営環境の変化などにより KPI を変更する必要がある場合は、浜松磐田信用金庫と当社が協議の上、再設定を検討する。
以上
本評価書に関する重要な説明
1.本評価書は、一般財団法人しんきん経済研究所(以下、しんきん経済研究所)が、浜松磐田
信用金庫から委託を受けて実施したもので、しんきん経済研究所が浜松磐田信用金庫に対して提出するものです。
2.しんきん経済研究所は、依頼者である浜松磐田信用金庫及び浜松磐田信用金庫がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する大橋建工から供与された情報と、しんきん経済研究所が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)」に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的な考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナン
スに関する第三者意見書の提供を受けています。
<評価書作成者及び本件問合せ先>一般財団法人しんきん経済研究所間淵公彦
〒432-8036
静岡県浜松市中央区東伊場二丁目7番1号浜松商工会議所会館5階
TEL:053-452-1510 FAX:053-401-6511
第三者意見書
2024 年 3 月 29 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 有限会社大橋建工に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:浜松いわた信用金庫 |
評価者:一般財団法人しんきん経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省のESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、浜松いわた信用金庫が有限会社大橋建工(「大橋建工」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、一般財団法人しんきん経済研究所(「しんきん経済研究所」)による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。浜松いわた信用金庫は、中小企業向けの PIF の実施体制 整備に際し、しんきん経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツー ルを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつ かのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大 企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務 局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、浜松い わた信用金庫及びしんきん経済研究所にそれを提示している。なお、浜松いわた信用金庫は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照しているIFC(国際金融 公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の 企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的
で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
浜松いわた信用金庫及びしんきん経済研究所は、本ファイナンスを通じ、大橋建工の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、大橋建工がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、浜松いわた信用金庫がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(1) 浜松いわた信用金庫は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
(出所:浜松いわた信用金庫提供資料)
(2) 実施プロセスについて、浜松いわた信用金庫では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、浜松いわた信用金庫からの委託を受けて、しんきん経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIFモデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全てしんきん経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、しんきん経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要 素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である大橋建工から貸付人である浜 松いわた信用金庫及び評価者であるしんきん経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
梶原 敦子
担当主任アナリスト
川越 広志
担当アナリスト
望月 幸美
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026
2024 年 4 月 1 日一般財団法人しんきん経済研究所
PIF 評価書における訂正すべき事項のお知らせ
本評価書において下記の箇所に訂正すべき事項があったことをお知らせします。
<P3 「沿革」について>
正 1946 年「大橋建築」として、浜松市神立町にて・・・(後略)。
誤 1964 年「大橋建築」として、浜松市神立町にて・・・(後略)。
以上