これに対し、売買の目的物の品質が不明であることを契約の内容として明確に規定し、さらに代金決定にも盛り込んであれば、買主は契約不適合責任を追及できないはずである との反論もあります(望月治彦・日本不動産学会Noll6、62頁)。
(公社)xx県宅地建物取引業協会令和2年度 第3回業務研修会
売買契約における
契約不適合責任に関する特約事項・容認事項について
xxxx法律事務所 弁護士 xx xx
《 目 次 》
はじめに 4
Ⅰ 契約不適合責任の基礎 5
第1 全宅連書式【一般売主用】 5
第2 全宅連書式【売主xx業者用】 9
第3 全宅連書式【消費者契約用】 10
Ⅱ 契約不適合責任の免責特約一般について 11
《特約例》【契約不適合責任を単純に免責する場合①】(シンプルなバージョン) 11
《特約例》【契約不適合責任を単純に免責する場合②】(わかりやすいバージョン) 11
Ⅲ 契約不適合に関する特約・容認事項の文例と注意点 14
1 契約不適合に関する事項(物の種類・品質・数量に関する契約不適合の場合) 14
1-1【通知期間を特約欄で決める場合】 14
1-2【契約不適合責任の条項をシンプルにしたい場合】 14
1-3【建物の契約不適合を限定する場合】 15
《私案》【建物の契約不適合を限定し、かつ、土地・建物の責任内容を限定する場合】
1-4【買主が建物を取り壊す予定の場合の建物・設備に関する免責特約】
………16
…………17
《私案》【売主が建物を取り壊して引き渡す場合の土地に関する免責特約】 18
1-5【現況有姿売買とする場合】 19
1-6【雨漏りがある場合】 19
2 契約不適合に関する事項(心理的契約不適合の場合) 20
2-1【物件敷地内で死亡事件があった場合】 20
2-2【物件内で自殺があった場合】 21
3 附帯設備一覧表を使用して中古物件の契約不適合を明らかにする方法 22
3-1【付帯設備の隠れた不具合について免責する場合】 23
3-2【付帯設備の告知した不具合や経年劣化について容認する場合】 23
4 中古物件 24
4-1【中古物件として予測できる不具合について容認事項とする場合】 25
4-2【旧耐震基準時の建物であることを容認事項とする場合】 25
5 既存不適格 26
5-1【既存不適格建築物の場合】 26
5-2【既存不適格建築物の可能性がある(現行法に抵触するか不明)の場合】 ……26
5-3【違法建築物である場合】 27
6 契約不適合責任の保証保険 28
6-1【品確法の適用がない契約不適合に関する保証の内容を確認する場合】 ………28
7 売主の設備等の現況報告 29
7-1【賃貸物件であるため設備等の状況が不明の場合】 29
7-2【買主が物件や設備等の毀損状況を熟知している場合】 29
7-3【建物について現況引渡し・契約不適合責任免責とする場合】 29
8 土壌汚染、地中埋蔵物(地歴調査) 30
8-1【区域調査・地歴調査を実施した場合】
8-2【区域調査・地歴調査を実施した場合】
……………………………………………32
……………………………………………32
8-3【契約前に土壌汚染が判明しており、引渡し時までに売主が除去する場合】 …33
8-4【買主が専門調査未了を認識しながら土壌汚染等を容認する場合】 33
8-5【埋設物について売主の撤去義務を明示する場合】 34
8-6【埋設物について買主が容認し、売主の撤去義務を免責する場合】 34
8-7【土地の付属物を買主の所有とすることで売主の撤去義務を免責する場合】
《私案》【土壌汚染・産廃埋蔵の可能性がある場合の特約文例①・引渡し前調査型】
《私案》【土壌汚染・産廃埋蔵の可能性がある場合の特約文例②・引渡し後調査型】
…34
…35
…35
8-8【買主が購入目的に照らして一定限度で地下埋設物を容認する場合】 36
8-9【PCB含有機器につき売主が引渡し時までに処分する場合】 37
《私案》【引渡しの前後を問わずPCB含有機器が発見されたら売主が処分する場合】 ………37
8-10【引渡し物件内に使用中のPCB含有機器がある場合】 37
はじめに
全宅連は、令和2年4月1日の改正民法(債権法)施行にあわせて、売買契約書や重要事項説明書の新書式を公開しました。改正民法では、特に「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」への転換が行われたことから、その理解や特約・容認事項の書き方について困惑する方もいらっしゃるかと思います。
全宅連のホームページ(ハトサポ)では、「特約・容認事項文例集」を紹介しており、会員の皆様であれば、契約書作成の参考文例として使用することができます。
ただ、きちんとした理解をせずに、単に文例をコピー&ペーストするだけでは、かえってトラブルの元になりかねません。
そこで、今回の研修では、ハトサポで紹介されている文例を中心に、「契約不適合責任」に関連する特約・容認事項に絞って解説をしたいと思います。
※ 本レジュメには、複数の特約文例が紹介されていますが、現場においては、その文例が法律上使用可能かについて慎重にご判断いただくとともに、取引ごとに適宜加筆・修正を加えて使用してください。
※ ハトサポの文例集は、適宜、修正・追加が行われていますので、最新の情報にご留意ください。
Ⅰ 契約不適合責任の基礎
第1 全宅連書式【一般売主用】
第●条 引渡された本物件が種類又は品質に関してこの契約の内容に適合しないものであるとき(以下「契約不適合」という。)は、買主は、売主に対し、本物件の修補を請求することができる。この場合、売主又は買主は、相手方に対し、修補の方法に関し協議の申し入れをすることができる。
2 引渡された本物件に契約不適合があるときは、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し、修補に代え、又は修補とともに損害賠償を請求することができる。
3 引渡された本物件に契約不適合があるときは、買主は、売主に対し、相当の期間を定めて本物件の修補を催告したうえ、この契約を解除することができる。ただし、その契約不適合によりこの契約を締結した目的が達せられないときに限り解除できるものとする。
4 買主が前項に基づきこの契約を解除し、買主に損害がある場合には、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し損害賠償を請求することができる。この場合、標記の違約金(H)の定めは適用されないものとする。
5 買主は、この契約を締結したときに本物件に契約不適合があることを知っていた場合、又は本物件の引渡し後標記(L)に定めた期間を経過するまでに売主に本物件に契約不適合がある旨を通知しなかった場合、売主に対して本条に定める権利を行使できないものとする。
1 契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、「引渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に、売主が負担する責任です(民法第562条参照)。旧民法では、物件の欠陥や不具合は「瑕疵」と呼ばれ、引渡された物件に「隠れた瑕 疵」があった場合に、売主は「瑕疵担保責任」として損害賠償や解除の責任を負うとさ
れていました。
これに対して、改正民法では、法律上の文言として「契約の内容に適合するか否か」が問題となるのですから、まさに当事者が「契約の内容」としてどのような品質を予定 していたかが正面から問題となります。
そして、どのような品質が予定されていたかは、結局は、「契約書」の記載で判断されることは明らかです。
その意味で、契約書の記載内容が重視される傾向が強まることが予想され、紛争予防のためには正確な特約・容認事項の記載が要請されることになります。
【特約・容認事項の作成のポイント】
「その契約でどのような品質の物件が予定されているか」という視点を持つ。
2 「隠れたる」瑕疵の変更
瑕疵担保責任では「隠れた」瑕疵であること(買主が瑕疵につき善意無過失であること)が要件とされていました。つまり、買主が瑕疵を知っていれば、売主は瑕疵担保責任を負うことはありませんでした。
これに対して、契約不適合責任では、外形上明白な欠陥があったとしても、それを契約内容としてどのように解決するかが重要であるとして、買主の善意無過失は要件ではなくなりました(※)。
そのため、売主の立場に立った場合、物件の欠陥や不具合があることを前提に引渡す場合には、単に事実を特約欄に記載するのみではなく、それらの存在も契約の内容とし て予定する品質であることを明確にしたり、個別の欠陥・不具合について買主がリスクを負うことを容認することを読み取れる記載とすることが望まれます。
【特約・容認事項の作成のポイント】
欠陥や不具合を「契約適合」に転換するという視点を持つ。
→ 特約を、物件の一種の「仕様書」(品質の確認書)として記載する。または、買主が欠陥・不具合を「容認」することを明記する。
(※)全宅連の「一般売主用」書式では、買主が契約不適合を知っていた場合には権利行使できないこととしています。
3 契約不適合責任における請求
物件に契約不適合がある場合、改正民法では、買主は、売主に対して、①履行の追完
(修補)請求(562条)、②代金減額請求(563条)、③損害賠償請求(415条)、
④契約解除(541条・542条)を求めることができるとされています(564条参照)。
全宅連の「一般売主用」書式では、①・③・④は明記しています。②の代金減額請求権は、買主にとって取扱いが難しいことから書式には明記していませんが、当該権利を排除するものではありませんので、買主が代金減額請求をすること自体は可能です。
※ ①・③・④のみが記載された書式をきちんと読み込まれたためか、免責特約として、
「買主は、本物件の契約不適合を理由に、修補請求、損害賠償請求、契約解除ができないものとする」という記載をした方がおられました。
しかし、この記載だと、「代金減額請求ができない」ということが読み取れず、紛争の種が残ってしまいますので、ご注意ください。
→ 免責特約の文例については後述。
4 契約不適合の通知期間
従来の瑕疵担保責任では、買主は瑕疵を知った時から1年以内に解除権又は損害賠償請求権を行使しなければなりませんでしたが、改正民法では、契約不適合責任について同様の「知った時から1年以内」の期間制限を維持しつつ、買主はその期間内に権利行使までしなくても「通知」をすればよいことになりました(民法第566条本文)。
ただ、買主が契約不適合を発見するまで長期にわたって売主の地位が不安定となることは不動産取引の安定性を害することから、実務ではこの期間制限を物件の引渡し後から一定期間に限定することが多く、全宅連の「一般売主用」書式でも通知期間を合意で定めることができるようにしています。
第2 全宅連書式【売主xx業者用】
第●条 引渡された本物件が種類又は品質に関してこの契約の内容に適合しないものであるとき(以下「契約不適合」という。)は、買主は、売主に対し、本物件の修補を請求することができる。この場合、売主又は買主は、相手方に対し、修補の方法に関し協議の申し入れをすることができる。
2 引渡された本物件に契約不適合があるときは、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し、修補に代え、又は修補とともに損害賠償を請求することができる。
3 引渡された本物件に契約不適合があるときは、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときを除き、買主は、売主に対し、相当の期間を定めて本物件の修補を催告したうえ、この契約を解除することができる。
4 買主が前項に基づきこの契約を解除し、買主に損害がある場合には、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し損害賠償を請求することができる。この場合、標記の違約金(G)の定めは適用されないものとする。
5 引渡された本物件に契約不適合があるときは、買主は、売主に対し、相当の期間を定めて本物件の修補を催告したうえ、損害賠償請求や契約解除によらずに、その契約不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
6 買主は、本物件の引渡し後2年を経過するまでに売主に本物件に契約不適合がある旨を通知しなかった場合、本条に定める権利を行使できないものとする。
1 宅地建物取引業法第40条によりxx業者が自ら売主となる場合(買主は非xx業者の場合)には、契約不適合の「通知期間」を物件引渡しの日から2年以上とする特約は有効ですが、これを2年未満にする特約は無効となります。
また、業法第40条は、契約不適合責任の「内容」を民法より制限する特約も無効とするものと解されています。例えば、売主の義務を修補に限って、買主の代金減額請求、損害賠償請求、契約解除を認めないといった特約も無効となります。
2 全宅連の「一般売主用」書式では、買主が契約不適合を知っていた場合には売主は責任を負わないとしましたが、「売主xx業者用」書式では、業法第40条があるため、この要件を設けることはできません。そこで、売主xx業者としては、物件の欠陥・不具合やその可能性を示しておくだけでは不十分な場合もあり、実際に引渡される物件の品質と契約で予定していた物件の品質とに齟齬がないことを示せるように、特約事項・容認事項を丁寧に書き込むことが求められます。
第3 全宅連書式【消費者契約用】
第●条 (第1項~第5項は、売主xx業者用と同じ)
6 買主は、本物件の引渡し後1年を経過するまでに売主に本物件に契約不適合がある旨を通知しなかった場合、本条に定める権利を行使できないものとする。
消費者契約用の書式では、消費者契約法の規制があることを踏まえて、契約不適合責任については原則としてxx業者売主用の契約条項を援用しています。
ただし、第6項では、買主の売主に対する契約不適合の通知期間について、売主がxx業者である場合とのバランスも考慮し、物件引渡し後1年としています。
※ 消費者契約法は、契約不適合責任について、概ね以下のように規律しています。
売主事業者の「損害賠償義務」を免除等する条項は、原則無効です(消費者契約法第8条1項1号・2号)。ただし、売主事業者が「修補義務」又は「代金減額義務」を負う場合には、損害賠償義務を免除等することも可能です(消費者契約法第8条2項1号)。また、消費者契約の締結に先立って又は同時に、他の事業者が修補義務又は損害賠償義務を負う契約が買主消費者のために締結されている場合にも、損害賠償義務を免除等することが可能です(同項2号)。
買主消費者の「解除権」を放棄させる条項は、常に無効です(消費者契約法第8条の2)。
また、売主事業者の契約不適合責任の責任期間を極端に短くする特約のように、買主消費者の権利を制限する条項でxxxに反して買主消費者の利益を一方的に害するものも無効です(消費者契約法第10条)。
これらを踏まえると、消費者契約では、売主事業者の契約不適合責任を全部免除する特約は無効になりますが、xx上は、買主の権利を修補請求権と解除権のみに限定するなど、売主事業者の契約不適合責任をより軽減する特約を結ぶことも検討の余地はあります。しかし、この契約書を修正する特約を結ぶ場合には、常に消費者契約法第10条違反とされるリスクがあることに留意する必要があります。
Ⅱ 契約不適合責任の免責特約一般について
従来の瑕疵担保責任と同様に、契約不適合責任についても免責特約を結ぶことは可能です。単純に免責する場合には、以下のような特約とすればよいでしょう。
《特約例》【契約不適合責任を単純に免責する場合①】(シンプルなバージョン)
第●条にかかわらず、売主は、買主に対し、本物件に関する契約不適合責任を負わないものとする。
※ 旧民法下で「売主は瑕疵担保責任を負わないものとする。」という単純な特約で対応していたことを踏襲するものです。買主がxx業者や企業である場合は、このシンプルな特約で済むケースも多いでしょう。
《特約例》【契約不適合責任を単純に免責する場合②】(わかりやすいバージョン)
第●条にかかわらず、買主は、引渡された本物件が種類又は品質に関してこの契約の内容に適合しない場合であっても、売主に対して、履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除、錯誤取消しその他一切の法的請求をすることができないものとする。
※ この文例は、わかりやすい上に、契約不適合責任だけでなく、「錯誤取消しその他一切の法的請求」を封じており、トラブル防止の観点からは①よりもおすすめです。
ただし、免責特約については、以下の各点に注意してください。
(1) 免責特約があっても、売主が知りながら買主に告げなかった契約不適合については、責任を免れることはできない(民法第572条)。
例えば、売主が雨漏りを知りながら、単純に不適合責任を負わない旨の上記特約を記載しても、雨漏りについては不適合責任を負うことになります。そのようなトラブルを避けるためには、雨漏りがあることと、買主がそれを物件の品質として容認して購入するものであることを明記する必要があります。
→ 文例は後述。
(2) 適法な免責特約であっても、裁判所がその効力を制限することがある。
従前の瑕疵担保責任のトラブルで、法律上は有効なはずの免責特約であっても、裁判所が、事案の内容のxx性や買主保護の観点から、免除特約の効力を否定したり、意思解釈によって一部の瑕疵に免除特約の効力を及ばせないといった判断をすることがありました(【参考判例】参照)。当事者の意思を重視する改正民法下において、この傾向は強まる可能性もあります。
単に形式的・機械的に契約書や重説に免除特約を記載するだけでなく、当事者にその意味・効果を十分に認識・理解させることが大切です。
【参考判例】
商人間のガソリンスタンド跡地の売買において、瑕疵担保責任免除特約につき、地上に一部が露出した埋設物について免責したにすぎず、それ以外の地中障害物についてまで免責するものとは認められないとして、その撤去費用につき売主の損害賠償責任を認めた事例(札幌地裁平成17年4月22日)。
結局、この点は、「買主が当該欠陥まで免責する意思があったか」というケースごとの判断となってしまうため、免責特約で売主側のリスクを100%排除することは困難です。その意味では、
①単純な免責特約で対応するか、
②詳細な特約・容認事項の記載で対応するか、
③きちんと物件の専門調査を実施して対応するか、を取引ごとに慎重に判断する必要があります。
(3) 欠陥や不具合の「可能性」を指摘しておく特約・容認事項の効力については議論がある。
単純な免責特約は、売主がxx業者(買主が非業者)の場合や、消費者契約の場合は無効です。そこで、すでに発見されている欠陥・不具合については、特約・容認事項に明記して対処することになります。
これに対して、まだ発見されていない欠陥・不具合について、例えば、「本物件には土壌汚染があるかどうかは不明であるが、買主はこれを容認して購入する」とか、
「本物件には土壌汚染の存在する可能性があるが、買主はこれを容認して購入する」といった特約・容認事項の記載とすることで、売主が責任を回避できるかという問題があります。
すなわち、契約不適合責任を免除しているのではなく、取引物件の品質を「土壌汚染があるかもしれない土地」とすることによって、そもそも「契約不適合」には当たらないとする手法です。
これについて、「土壊汚染があるか不明」であるというのは、単に売主の認識を開示したに過ぎないから、土壊汚染があれば契約不適合責任は免れないとし、特にxx業者が自ら売主となる場合には、「土壞汚染があるかどうか不明である」「雨漏りがあるかどうか不明である。」といった約定を設けてもxx業法40条の拘束を回避することはできないとする論説があります((一社)土地総合研究所(編)民法改正と不動産取引52頁)。
これに対し、売買の目的物の品質が不明であることを契約の内容として明確に規定し、さらに代金決定にも盛り込んであれば、買主は契約不適合責任を追及できないはずであるとの反論もあります(xxxx・日本不動産学会Noll6、62頁)。
私見としては、物件の品質として「土壌汚染の可能性」が特約として明記され、その点が売買代金にも反映されているのであれば、特約が有効となる場合もあると考えています。ただ、結局は、この問題も、「当事者が予定していた品質としてどの程度の土壌汚染まで容認していたか」という認定の問題になり、ケースバイケースで判断されるのではないでしょうか(契約時の代金額や値下げ幅と、実際に出てきた土壌汚染の程度とに著しい乖離があれば、特約の効力が及ばない場合もあるでしょう)。
そうすると、とにかくリスクを最小化したいということであれば、結局は、契約前に専門調査を入れることがベストな対応方法ということになります。
Ⅲ 契約不適合に関する特約・容認事項の文例と注意点
※ ここでは、基本的にはハトサポで紹介している契約不適合に関する文例を抜粋して紹介しています。ただし、文言を一部修正しているものもあります。また、他の文例(私案)なども適宜差し込んでいますので、参考にしてください。
1 契約不適合に関する事項(物の種類・品質・数量に関する契約不適合の場合)
1-1【通知期間を特約欄で決める場合】
売主および買主は、本契約書第○条第〇項に定める、買主の売主に対する契約不適合に基づく通知期間を、引渡し後6ヶ月に変更することについて合意した。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合は無効となる文例です。
※ 全宅連の「一般売主用」書式では、標記(L)欄を用いればよいでしょう。
※ 全宅連の「消費者契約用」書式では、通知期間を1年としています。これを特約で6ヶ月程度にすることも可能とする見解もありますが、実際には無効とされるリスクもあり、おすすめしません。
1-2【契約不適合責任の条項をシンプルにしたい場合】
(契約不適合責任)
第○条 買主は、本物件に契約不適合がある場合には、追完請求、代金減額請求、催告解除、無催告解除、損害賠償請求等の契約不適合に関する請求を、売主に対してすることができる。ただし、本物件の引渡し後1年を経過したときはできないものとする。
※ ただし書は、売主がxx業者(買主非業者)の場合は無効となります。
※ 全宅連の「一般売主用」書式は、取引の安定という観点から、改正民法と比較して売主を保護する文言を追加していますので、この文例に置き換えると売主に不利となる可能性が高いことに注意してください。
1-3【建物の契約不適合を限定する場合】
本物件の建物は建築後相当年数を経過し老朽化が進んでいるため、本契約書○条の規定にかかわらず、下記の点を除き売主は建物に関して一切の契約不適合責任を負わないものとする。
① 雨漏り
② シロアリの害
③ 建築構造上主要な部位のxxの腐食
④ 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む)の故障
なお、買主は、売主に対し、本物件について上記点の契約不適合を発見したときは、すみやかに通知して、修復に急を要する場合を除いて立ち会う機会を与えなければならない。
※ 売主がxx業者の場合(買主非業者)は無効となる文例です。
※ 建物につき契約不適合となる事情を限定する特約です。
※ 売主の責任内容は制限していませんので、買主は、建物の①~④の欠陥や、土地の欠陥・不具合について、修補だけでなく、代金減額請求・損害賠償請求・契約解除が可能ということになります。
《私案》【建物の契約不適合を限定し、かつ、土地・建物の責任内容を限定する場合】
売主及び買主は、第○条にかかわらず、売主の契約不適合責任については以下のとおりとすることを合意する。
1 引渡された本物件が種類又は品質に関してこの契約の内容に適合しないものであるとき(以下「契約不適合」という。)は、買主は、売主に対し、本物件の修補を請求することができる。この場合、売主又は買主は、相手方に対し、修補の方法に関し協議の申し入れをすることができる。ただし、建物については、①構造耐力上主要な部分の腐蝕、②雨水の侵入を防止する部分の雨漏り、③シロアリの害、④給排水管・排水桝の故障についてのみ、売主は買主に対して責任を負うものとする。
2 売主が買主に負う契約不適合責任の内容は前項の修補に限るものとし、買主はこの契約の無効、取消し、解除、代金減額請求又は損害賠償請求をすることはできないものとする。
3 前項にかかわらず、買主は、本物件の土地の契約不適合によりこの契約を締結した目的が達せられないときに限り、この契約を解除できるものとする。その場合、買主に損害がある場合には、契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し損害賠償を請求することができる。この場合、標記の違約金( )の定めは適用されないものとする。
4 買主は、この契約を締結したときに本物件に契約不適合があることを知っていた場合、又は本物件の引渡し後標記( )に定めた期間を経過するまでに売主に本物件に契約不適合がある旨を通知しなかった場合、売主に対して本条に定める権利を行使できないものとする。
※ 売主がxx業者の場合(買主非業者)は無効となる文例です。
※ 契約書式の契約不適合責任の条項をすべて入れ替える文例です。
※ 売主の責任内容も限定する特約です。買主は、建物については、①~④の欠陥について修補しか請求できません。また、土地の欠陥・不具合についても、原則は修補しか請求できず、例外的に契約目的を達成できない場合のみ解除と損害賠償請求が可能ということになります。
1-4【買主が建物を取り壊す予定の場合の建物・設備に関する免責特約】
買主は本物件引渡し完了後、建物を取り壊すことを前提に購入するため、売主が第○条に定めた建物の契約不適合責任を負わないこと、又、第△条の物件状況報告書記入欄の一部は未記入とし、第×条の設備表の申告をしないことを承諾する。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合、消費者契約の場合は無効となる可能性がある文例です。
《参考》売主がxxを取り壊して更地渡しとする場合の免責特約について
上記の特約は買主が建物を取り壊す場合を想定していますが、これに対して、売主がxxを取り壊して更地で引き渡す契約も多いと思われます。その場合も、敷地の地xxに売主の予期しない埋設物があることを懸念して、土地について契約不適合の免責特約を付すことがあります。
ところが、このケースは、売主が契約不適合について、契約時点では知らないが、引渡し前にはそれを知ってしまうという点に特徴があります。この場合、単純な免責特約だと、免責の効果が及ばない危険があります。
従前の瑕疵担保責任は、契約時点に存在する瑕疵に関する責任だったので、免責特約も契約時点の瑕疵を免責し、売主の悪意も契約時点を基準に判断されました。
ところが、契約不適合責任は、債務不履行の一種とされたことから、引渡し時点に存在する不適合に関する責任となります(改正民法も、契約不適合を、「引き渡された目的物が…契約の内容に適合しないものであるとき」と定義しています)。そのため、免責特約も引渡し時点に発覚していない不適合を免責するだけであり、売主の悪意は引渡し時点を基準に判断されるという見解が、買主側から主張されることが予想されます。実際には、免責特約を入れた趣旨や経緯を踏まえて、ケースバイケースで判断される
と思われますが、特約の文言であらかじめ売主のリスクを軽減する方法も考えられます。
《私案》【売主が建物を取り壊して引き渡す場合の土地に関する免責特約】
本契約の対象は土地のみであり、売主は本契約第〇条の引渡し日までに、自己の責任と負担において、本物件土地上の建物を収去して、更地にして買主に引き渡すものとする。
ただし、本契約締結時点において本物件土地の地中に上記建物の基礎以外の埋設物・土壌汚染等の契約不適合が存在した場合、その発見が本物件の引渡し前か後かを問わず、売主はこれについて一切の法的責任を負わないものとする。
なお、上記の契約不適合が引渡し前に発見された場合、売主と買主はその処理について協議するものとするが、本契約第〇条の引渡し日までに協議が調わない場合は、売主は上記建物を収去した状態で本物件土地を買主に引き渡せば足りるものとする。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合、消費者契約の場合は無効となる文例です。
1-5【現況有姿売買とする場合】
本物件は、本件土地上の建物も築20年を経過し、本件土地も地方(郊外)に所在する元々安価なものであって、売主は本物件の売買価格では本物件の品質に関する専門家調査費用を捻出できない状況にあるところ、買主はそれを前提に、その責任において実施した内覧、現状確認、環境確認に基づき、契約書所定の代金により本物件を現状有姿にて購入するものである。
従って、買主は一切の契約不適合を容認するものであり、今後、売主に対して追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償、錯誤取消し等の契約不適合責任を求めないものとする。
※ 売買代金等の関係で、建物状況調査・土壌汚染調査等の専門家調査ができない場合には、このような特約でやむを得ない場合もあるでしょう。
ただし、この特約例を売主がxx業者(買主非業者)の場合や消費者契約の場合に使用することは「契約不適合責任を負わない。」という特約に等しいので、xx業法40条や消費者契約法8条に違反して無効となる可能性も高く、使用はおすすめしません。
また、一般売主の場合でも、内覧等を徹底し、買主にリスクを充分に説明することが必要です。
1-6【雨漏りがある場合】
本件建物には雨漏りがあるが、買主はそれを認識、容認して本件建物を購入するものであり、雨漏りについては、買主は売主に対し、契約不適合責任、その他の法的請求をしないものとする。
※ 雨漏りがすでに発覚しており、内覧時に位置や程度もそれなりに特定できているのであれば、上記特約は有用でしょう。ただし、雨漏りの位置や程度が特定されておらず、引渡し後に想定外の雨漏りが発生した場合には、物件の種類や規模にもよりますが、上記特約の効力が及ばないこともあり得ます。
※ 売主がxx業者の場合や消費者契約の場合も、上記特約は雨漏りがあること自体を契約で予定する物件の品質とするものなので、そもそも契約適合となり、問題はないと思います。ただ、違法な免責特約との誤解を避けるために、「本件建物には雨漏りがあるが、買主はそれを認識、容認して本件建物を購入するものである。」との記載にとどめる方が望ましいとする意見もあります。
2 契約不適合に関する事項(心理的契約不適合の場合)
2-1【物件敷地内で死亡事件があった場合】
本物件敷地内において、平成○年頃、死亡事件(殺人)が発生したが、事件当時の建物は、「お祓い」をして取り壊しをしているとのことである。買主は上記死亡事件を容認して購入するものであり、同事件は「契約不適合」に該当するものではなく、同死亡事件を理由に買主は売主に契約不適合に関する法的請求等一切の請求をなし得ないものとする。
※ よく「何年前の自殺なら契約不適合に当たらないか」、「死亡事件のあった建物が取り壊されていれば土地の契約不適合に当たらないか」といったご質問がありますが、その情報のみで結論を導くことは困難です。
なぜなら、裁判所は、関連するあらゆる諸要素を総合的に考慮して死亡事件が契約不適合に当たるか否か、仮に当たるとして契約の解除まで認めるか損害賠償のみとするかを判断しており、「何年前」とか、「建物が取り壊された」といった事情は諸要素の一つに過ぎないからです。
したがって、売主やxx業者が殺人や自殺といった死亡事件があったことを知っている場合には、かかる心理的欠陥のある品質の物件であることを、契約書や重要事項説明書に記載しておくことが原則ということになります。
《参考判例》
・ 農山村地帯の建物で約50年前にあった猟奇的殺人について、当該建物が取り壊され ていても、事件は地元住民の記憶に残っているから、土地の「瑕疵」に当たるとした事例(東京地裁八王子支部平成12年8月31日)。
・ 約8年前にあった殺人事件について、建物が取り壊されていても建物の「瑕疵」に当たるとしつつ、損害賠償を代金の5%のみとした事例(大阪高裁平成18年12月19日)。
・ 約2年前の睡眠薬による自殺について、「瑕疵」には当たるとしつつ、縊死との比較や死亡場所が病院であったことなどから、軽微な瑕疵であるとして、代金の1%の損害賠償のみ認めた事例(東京地裁平成21年6月26日)。
《裁判所が自殺等に関して考慮する可能性がある要素》
(ここに列記する以外にももちろんあり得ます)
(1)死の状況
①死因は殺人か、自殺か。(事故死か、病死か、自然死か。)②自殺の態様は縊死(首吊り死)か、焼身自殺か、服毒か、睡眠薬多量摂取か、手首自傷か、飛び降りか。③自殺のあった場所は当該物件内か、隣室か、上下階か。④最終的に死亡した場所は当該物件内か、病院か。(飛び降りなら敷地内か否か。)⑤死体は腐乱していたか否か。
⑥自殺の発生時期はいつ(何年前)か。 (2)物件の状況
①木造か、鉄骨造か。②戸建てか、アパートか、ファミリー向けマンションか、単身者用マンションか。③建物は現存しているか、取り壊されているか。
(3)取引の状況
①売買か、賃貸か。②買主の購入目的は居住目的か、店舗等の事業目的か。③売主・買主はxx業者か否か。商人か、事業者か、消費者か。④買主が建物を取り壊す予定があったか否か。⑤買主が死亡事故の有無について気にしていたか否か。⑥以前に自殺物件であることを理由に購入を辞退した者がいたか。
(4)周辺住民の認識
①周辺住民、地域住民の記憶に残っているか否か。②都市部か、農山村部か。③報道があったか否か。④死亡時に警察等の出入りによる騒ぎがあった否か。
2-2【物件内で自殺があった場合】
本物件内において、〇年〇月頃に当時の所有者の親族(または〇〇)が自殺していることを、買主は確認・容認した。
3 附帯設備一覧表を使用して中古物件の契約不適合を明らかにする方法
※ 前提として、全宅連の売買契約書の書式には、契約条項として以下のように印字されています。
【一般売主用】
(付帯設備の引渡し)
第11条 売主は、別添「付帯設備表(表1・表2)」のうち「有」と記したものを、本物件引渡しと同時に買主に引渡す。
2 売主は、前項の付帯設備の故障や不具合については、修補・損害賠償その他一 切の責任を負わないものとする。
【xx業者売主用】
(付帯設備の引渡し)
第11条 売主は、別添「付帯設備表(表1・表2)」のうち「有」と記したものを、本物件引渡しと同時に買主に引渡す。
不動産の売買では、付帯設備の品質(契約内容に適合するか)まで厳密に問題とすることは円滑な取引を阻害する恐れがあり、むしろ内覧して特に異常がなければ付帯設備は現況引渡しを原則とする実務があることから、一般売主用書式では、端的に売主は付帯設備の故障や不具合について責任を負わないものとしています。
これに対して、xx業者売主用書式では、業法40条に抵触する恐れがあることから、
2項は記載していません。
なお、免責条項があっても、売主が付帯設備の故障や不具合を知っていた場合には、契約不適合責任を免れませんので、書式の文言のみで処理しようとするのはトラブルのもとです。現場では、各設備が有るか無いか、それらを売主はそのままにして置いていくのか撤去するのか、置いていく場合にそれらは使用可能なのかという点について、内覧や売主への聞き取りで確認すると共に、「付帯設備及び物件状況確認書(告知書)」を作成してください。
そのうえで、次のような特約・容認事項を明記しておくならば、多くのトラブルを回避することが可能でしょう。
3-1【付帯設備の隠れた不具合について免責する場合】
売主は、第○条に定める「設備一覧表」の設備に「有」と記したものを、本物件引渡しと同時に買主に引き渡すが、買主が引渡しを受けた後に、故障や不具合が生じたとしても、売主は買主に対し、その修復義務や損害賠償義務等の一切の責任を負わないものとする。
なお、買主は、添付した設備一覧表の備考欄に記されたとおりの使用不可、異常箇所のある付帯設備があることを確認した。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合、消費者契約の場合は無効となる文例です。
3-2【付帯設備の告知した不具合や経年劣化について容認する場合】
1.売主は、別紙「付帯設備表」の「設備の有無」欄に「有」と記載したものを、本物件の引渡しと同時に買主に引き渡すものとする。
2. 買主は、別紙「付帯設備表」の「判明している故障・不具合の具体的内容」ならびに「備考」欄に記載されたとおり、設備に使用不可、故障箇所があることを確認した。第1項に記載した設備の引渡しを受けた後に、上記記載の故障・不具合等が発生したとしても、契約に適合するものであって、売主は買主に対し、その修復義務や損害賠償責任等を負わないものとする。
3. 買主は.本物件の設備等について、経年劣化および使用にともなう機能低下・汚損等があることを容認のうえ、本物件を買い受けるものとする。
※ 付帯設備表に記載された故障や不具合を「契約適合」にする文例です。
4 中古物件
取り壊しを目的としないものの、築年数のかなり経過した中古物件の取引の場合、契約不適合責任を免責する特約に頼るケースも多いと思いますが、売主xx業者(買主非業者)の場合や消費者契約の場合は、特約は無効になりますし、一般売主の場合も売主が知っていた契約不適合については免責されません。そこで、以下の手順で、できる限り「契約不適合」となりそうな事項を顕れたるものとして買主に認識させ、「契約適合」とすることが重要となってきます。手抜きをせずに丁寧なプロセスを踏むことが大切です。
《中古物件売買の場合の手順》
① 引渡時までに買主との内覧を徹底する。
② 設備や物件の状況を「付帯設備表」や「物件状況確認書(告知書)」で確定する。その際、専門家の調査によらなければ明らかにならない事項については、「不明。
但し、専門家による調査は未了」と明記しておく。
③ 中古物件として予測できる不具合については、売買契約書において後記のような特約・容認事項を記載しておく。
④ 重要事項説明でも以上の点を十分説明する。
もちろん、業者の立場で知った重要事項は説明しなければなりません(xx業法4
7条)。特に、買主から依頼を受けたxx業者は、売主の言動や告知書に頼るだけでは調査不十分だとする判例もあります。
〈参考判例〉
建物の台所の一部が約8年前に火災に遭って焼損し、下からのぞき込めば焼損の痕跡が確認できる物件について、「売主と買主の双方から仲介を依頼された仲介業者は、売主の提供
する情報のみに頼ることなく、自ら「通常の注意」を尽くせば仲介物件の外観(建物内部を
含む。)から認識することができる範囲で、物件の瑕疵の有無を調査して、その情報を買主
に提供すべき契約上の義務を負う」として、焼損の痕跡を見逃した仲介業者に責任を負わせ
た事例(東京地裁平成16年4月23日)。
4-1【中古物件として予測できる不具合について容認事項とする場合】
買主は売主に対し、本契約書第○条のとおり、引渡から●年間以内に本物件の契約不適合に関する通知をしなければならない。
但し、本物件は築20年を経過しており屋根等の躯体・基本的構造部分や水道管、下 水道管、ガス管、ポンプ等の諸設備については相当の自然損耗・経年変化が認められるところであって、買主はそれを承認し、それを前提として本契約書所定の代金で本物件を購入するものである(それらの状況を種々考慮、協議して当初予定していた売買代金から金○○万円を値引きしたものである)。
買主は、それぞれの設備等が引渡時に正常に稼働していることを現地で確認したが、引渡後に自然損耗、経年変化による劣化・腐蝕等を原因として仮に雨漏り、水漏れ、ポンプ等の設備の故障等があったとしても、それらは契約不適合に該当するものではなく買主の責任と費用で補修するものとし、売主に法的請求・費用負担等を求めないものとする。
4-2【旧耐震基準時の建物であることを容認事項とする場合】
本件建物は昭和56年5月31日以前に建築確認を取得した旧耐震基準時の建物であり、現在の耐震基準を満たしていない建物であることを買主は容認して契約書記載の売買代金で購入するものであり、今後、売主に対して耐震基準を満たさないことについて一切の追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償、錯誤取消等の責任を求めないものとする。
5 既存不適格
建築当時は、建築基準法等に適合して建てられた建物であっても、その後の法令の改正や、条件の変更などにより現在は違法建築物と同じような状況になっている建物のことを「既存不適格建築物」といいます。
これに対して、建築当時から建築基準法等に違反している建物は「違法建築物」あるいは「違反建築物」といいます。
既存不適格建築物は、建築時に適法であった建物ですから、違反という扱いをしないことになっていますが、増改築や建て直し等の場合には、その時点での法令を遵守しなければならなくなります。
5-1【既存不適格建築物の場合】
本物件建物は建築当時において適法に建築されたが、その後の法令改正等により現行の〇〇基準を満たしていないため、建替え時には同一規模の建物は建築できない可能性があるほか、増改築、大規模な修繕・模様替え、用途変更をするときは、現行の法令に適合させる必要がある。 買主はこの点を容認するものとし、売主に対し、追完請求、代金減額請求、催告解除、無催告解除、錯誤取消し、損害賠償請求等の法的請求をしないことを確認する。
5-2【既存不適格建築物の可能性がある(現行法に抵触するか不明)の場合】
買主は下記の点を確認のうえ容認し、買主は売主に対し、追完請求、代金減額請求、催告解除、無催告解除、錯誤取消、損害賠償請求等の法的請求をしないことを確認する。
記
本物件建物は、建築当時指定されていた建ぺい率・容積率・用途・建物の高さの制限の各内容と現在指定されている内容が異なるため、増築、改築、再建築を行う場合、現在と同規模・同一用途の建築物が建築できない場合があること。
5-3【違法建築物である場合】
1.買主は、本物件建物が〇〇を理由として、建築基準法第〇〇条(〇〇基準)に抵触するものであることを容認のうえ、本物件を買い受けるものとする。
2.万一、特定行政庁から本物件建物の一部または全部の除却、移転、使用制限その他の是正措置を命じられた場台においても、買主は、自己の責任と負担になることを承諾するものとする。
6 契約不適合責任の保証保険
6-1【品確法の適用がない契約不適合に関する保証の内容を確認する場合】
本件建物の契約不適合を担保すべき責任に関する保証保険契約について、住宅瑕疵担保責任保険(別紙、財団法人○○機構の「○○保険の概要」を参照。)対象部分以外の保証については、別紙、「短期保証基準書」の範囲内とする。
尚、付帯設備の保証については、商品メーカーの保証による。
品確法は、新築住宅の主要部分等(基本構造部分(基礎・柱・床・屋根等)と雨水の浸入を防止する部分)の契約不適合については、建築会社や売主に10年間の長期保証を義務付け、建築会社や売主業者は瑕疵担保責任保険等の履行確保措置を講じなければなりません。
また、品確法の適用がない契約不適合についても、建築会社の短期保証や売主業者のアフターサービスが付される場合が多くあります。上記特約は、そのような場合の文例として参考にしてください。
なお、これらの保証については、買主に承継可能か、承継可能だとしてどのような手続が必要か等につき、個別に確認するようにしてください。
7 売主の設備等の現況報告
7-1【賃貸物件であるため設備等の状況が不明の場合】
売主は、本物件を第三者に賃貸していたので、建物の設備の状況や生活環境については、詳しく把握していないところである。建物の設備等について損傷や不具合があっても契約不適合に該当するものでなく、買主は売主に対し追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償、錯誤取消しその他の請求をなし得ないものとする。以上の点を種々考慮し、本来の売買価格から○○万円を値引きしたものである。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合、消費者契約の場合は無効となる可能性のある文例です。
7-2【買主が物件や設備等の毀損状況を熟知している場合】
買主は、契約時における本物件及び附帯設備等の状態が、経年・使用・結露等により毀損・損耗・劣化等に至っている状況を熟知し、売主は、本物件を現状にて買主に引渡すものとし、売主及び買主は、本項記載項目に関しては契約不適合責任に該当するものではなく、売主は本契約条項第○条記載の契約不適合責任を負わないことを確認するものとする。
※ 買主が内覧時に当然に毀損状況を把握できる場合や、元は賃借人であった者が物件を購入することになった場合などに使用できる文例です。
7-3【建物について現況引渡し・契約不適合責任免責とする場合】
売主は、本物件を現況のままの状態で買主に引き渡すものとし、本契約書第○条ならびに第○条にかかわらず、本物件建物(建物に付属した各種配管・枡並びにフェンス等も含む)については一切の契約不適合責任を負いません。また、買主に引渡し後、各設備に故障・不具合が見つかったとしても売主に対し、追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求、錯誤取消し等の一切の請求をなし得ないものとし、物件状況等報告書については土地のみについて記載します。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合、消費者契約の場合は無効となる文例です。
8 土壌汚染、地中埋蔵物(地歴調査)
《地中の契約不適合に関するxx業者の調査・説明義務の基礎》
①土壌汚染対策法に関する事項を調査・説明
要措置区域・形質変更xx届出区域における土地の形質の変更の制限は、業法上の重要事項として明記された法令上の制限であり、高度の注意義務をもって調査・説明しなければなりません(業法35条1項2号、業法施行令3条32号)。
②調査結果の記録の有無の確認
xx業者は、土壌汚染や地中埋設物・地盤・地質等について専門的知識や能力を有するものではないので、土壌汚染対策法における基準値超過物質の存否や超過の程度・範囲について調査したり、高額な費用を要するボーリング調査などを自ら実施する義務はありません。
また、xxxと違い、調査結果の記録の有無の調査が業法上義務付けられているわけではありません。
しかし、予防法務・コンプライアンスの観点からは、買主に不測の損害を与えないように、調査結果の記録の有無を確認しておくべきでしょう。引渡し後に瑕疵(契約不適合)が発見されたところ、実は売主がボーリング調査結果の記録などを所持していた場合には、仲介業者の注意義務違反が問われる可能性もあると思われます。現に記録が存在する場合には、xx業者はその内容を説明し、当該記録に不十分
なところがあれば売主・管理業者・施工会社等に照会すべきです。
③地歴調査
地歴調査についても、業法上義務付けられているわけではありません。しかし、地歴調査はxx業者が自らの足で行うことができ、高額な調査費用もかからないので、予防法務・コンプライアンスの観点からは実施しておくべきでしょう。引渡し後に有害物質が発見された場合、地歴調査をしておけば過去にメッキ工場があったことがすぐにわかったようなケースでは、仲介業者の注意義務違反が問われる可能性があると思われます。
具体的には、売主・近所の人・行政機関等からの聞き取り、土地の外観・周辺の
状況、登記簿謄本・行政窓口の資料等の確認により、従前の土地利用の状況(建物が建っていたか、住宅か、マンションか、工場か、クリーニング店か、地階はあったか、どのように使用していたか、沼地・湿地だったか、過去に瑕疵(契約不適合)について問題が発生したことがないか等)を調査し、重要事項説明書や売主の物件
状況確認書(告知書)を利用して地歴調査の内容を報告します。
なお、地歴調査の内容に問題がなかったとしても、「地中に問題はない」と説明
することは望ましくありません。地歴調査の内容を説明しつつ、「ボーリング調査等の専門的な調査は未了である」旨を明示すべきです。
そして、工場、廃棄物処理場、ガソリンスタンド、クリーニング店といった地歴
が判明した場合や、専門的調査が未了で土壌汚染・地中埋設物等の存在の可能性が
排除できない場合については、売買契約において売主・買主にどのようにリスクを分配するかを明確にするようにしてください。
8-1【区域調査・地歴調査を実施した場合】
法令上は、現在、本件土地は土壌汚染対策法上の要措置区域に指定されていない。閉鎖登記簿謄本、住宅地図、xxや近隣住民からの聴取によると、以前は○○との
ことで土壌汚染の影響を受ける施設はなかったとのことであるが、詳細は不明である。なお、本件土地については、埋蔵物に関するボーリング調査並びに土壌汚染に関す
る専門調査は未了である。
8-2【区域調査・地歴調査を実施した場合】
法令上は、現在、本件土地は土壌汚染対策法上の要措置区域に指定されていない。本件土地の地歴調査については、登記簿並びに売主、近隣住民、区役所○○課から
のヒヤリングにより実施した。それによると本件土地は昭和36年まで農地であったが、その後残土業者による残土埋め立てにより宅地化され、昭和38年に木造2階建て新築物件が建築されて分譲されたものであるとのことであった。また、本件土地の付近にはxx川が流れているが、区役所、近隣住民からの聞き取りでは水害歴はなく、売主からも水害歴はないということであった。
なお、本件土地については、埋蔵物に関するボーリング調査、並びに土壌汚染に関する専門家調査は未了である。
※ 8-1や8-2の特約文例は、売買物件について一定の調査が行われていることを示していることから売買を推し進めるには有用であり、また、専門調査が未了であることを示すことで一定のトラブル抑止効果もあるでしょう。ただ、これらの文例だけでは、何らかの契約不適合が発覚したときの責任の所在が明確となるわけではないので、免責特約等と組み合わせるのが望ましいでしょう。
8-3【契約前に土壌汚染が判明しており、引渡し時までに売主が除去する場合】
本件土地北西の土壌から環境省の環境基準を上回るトリクロロエチレンが検出され検出数値は環境省の基準値○○を超えた○○である。売主であるABC自販の説明並びに土壌汚染調査会社XYZの説明並びに報告によると、ABC自販が、機械・電子部品の洗浄剤として使用した当該物質が配管網の腐蝕部分を通じて土壌に浸透したものと思われる。
売主は、本物件の引渡しまでの間にその責任と費用負担において、環境基準値を下回るまでの対策を実施するとともに必要な数値監査を行い、土壌・水質の修復を行うこととしている。詳細は土壌調査報告書・対策計画書・計量証明書等を参照されたい。
8-4【買主が専門調査未了を認識しながら土壌汚染等を容認する場合】
本物件について土壌汚染・敷地内残存物(地中埋蔵物)等、地盤沈下等の専門家の調査は未了であり、また隣地境界立合い、及び植栽・ネットフェンス等の撤去は行わず、現況にて引渡すものであることを買主は容認する。買主はその責任において実施した内覧、現状確認、環境確認に基づき、契約書所定の代金により、上記を容認して購入するものである。従って、本物件引渡し後に仮に土壌汚染、産業廃棄物の埋蔵等があっても、買主は、今後、売主に対して一切の追完請求、代金減額請求、解除、損害賠償、錯誤取消し等の責任を求めないものとする。
※ 売主がxx業者(買主非業者)の場合、消費者契約の場合は無効となる可能性の高い文例です。
8-5【埋設物について売主の撤去義務を明示する場合】
売主は、本契約第〇条の引渡し日までに、自己の責任と負担において、本物件土地に埋設されている●●の撤去を完了するものとする。
8-6【埋設物について買主が容認し、売主の撤去義務を免責する場合】
買主は、本物件土地に●●が埋設されていることを容認のうえ、本物件を買い受けるものとし、本件について売主に一切の異議・苦情等を申し出ないものとする。
8-7【土地の付属物を買主の所有とすることで売主の撤去義務を免責する場合】
本物件に付属する門、塀、地中障害物その他の付属物がある場合は、本物件の引渡し時より買主の所有に帰属するものとする。これらの付属物について、買主は売主に対し除去その他一切の法的請求をしないものとする。
※ 地中障害物については、実質的には契約不適合責任を免責するのと同視できる特約なので、売主がxx業者(買主非業者)の場合や消費者契約の場合は無効となる可能性の高い文例です。
《私案》【土壌汚染・産廃埋蔵の可能性がある場合の特約文例①・引渡し前調査型】
1.本件土地は平成30年まで化学工場の敷地として使用されており、土壌汚染、産業廃棄物埋蔵の可能性があるため、【□売主は・□買主は】、【□引渡し時までに・□本契約締結後速やかに】これを調査するものとする。
その結果、
□汚染・埋蔵がある場合、売主は、その責任と負担で、引渡し時までにこれを除去する。
□汚染・埋蔵がある場合、引渡し後買主がこれを除去するが、その除去費用は売主の負担とする。
□汚染・埋蔵がある場合、売主は、引渡し時までにこれを除去する。ただし、その除去費用のうち○○○円までは【□売主が・□買主が】、それを超える費用は【□買主が・□売主が】負担する。
□汚染・埋蔵がある場合、引渡し後買主がこれを除去するが、その除去費用のうち
○○○円までは【□売主が・□買主が】、それを超える費用は【□買主が・□売主が】負担する。
2.前項にかかわらず、汚染・埋蔵があり、その除去に○〇〇万円以上の費用を要する場合は、【□売主は・□買主は・□売主又は買主は】、本契約を解除できるものとする。この場合、売主は受領済の金員を無利息で遅滞なく買主に返還し、売主及び買主は互いに損害賠償請求その他一切の法的請求をしないものとする。ただし、汚染・埋蔵の調査に要した費用は【□売主の・□買主の】負担とする。
《私案》【土壌汚染・産廃埋蔵の可能性がある場合の特約文例②・引渡し後調査型】
1.本件土地は平成30年まで化学工場の敷地として使用されており、土壌汚染、産業廃棄物埋蔵の可能性があるため、買主は、本契約第○条に定める残代金支払い時に、残代金○○○円の内、●●●円(以下「留保金」という)の支払いを留保する。
2.買主は、売主に対し、○年○月○日限り、前項の留保金を支払うものとする。ただし、買主は、本件土地の引渡し後、同日までに汚染・埋蔵について調査し、その除去を要することが判明した場合は、留保金からその除去費用を控除して支払うものとする。
3.買主は、汚染・埋蔵があった場合、留保金を上限としてその除去費用を留保金から控除することができるのみとし、売主に対し、留保金額を超える損害賠償の請求、契約の解除その他一切の法的請求はできないものとする。
8-8【買主が購入目的に照らして一定限度で地下埋設物を容認する場合】
本件土地は平成30年4月まで鉄筋コンクリート造りの地上4階、地下1階の構造の商業ビル用地として使用しており【※地歴】、同ビルを解体した際、売主は地下5メートルまでは基礎杭が取り除かれていることを現地確認したが【※売主の保証範囲】、それ以下の地層に基礎杭(パイル)が存在する可能性はある【※地歴に内在する危険性】。買主は、本件土地を木造2階建て4棟のための分譲地として購入するものであり【※ 買主の購入目的】、地下5メートル以下に基礎杭が存在する可能性を容認して本件土地を購入するものであり【※買主の容認】、地下5メートル以下の地層に基礎杭が存在したとしても同存在は契約不適合に該当するものでなく、売主に対し追完請求、代金減
額請求、解除、損害賠償等の一切の責任を問わないことを確認する。
売主及び買主は、それらの状況を種々考慮、協議して、当初予定していた売買代金から金○○万円の値引きがなされたことを確認する【※値引きの有無】
※ 特定の不具合について売主の責任を回避させる場合、単に「契約不適合責任を負わない」とすることには、種々問題があり、特に売主xx業者・消費者契約では単純な免責特約は使うことができません。
そこで、ただ免責するのではなく、そもそも特定の不具合がある前提の取引であることを明示して、その不具合を含めて当該物件が「契約の内容に適合した物件」であることを示す必要があります。
その場合、
①物件の履歴(地歴・家歴等)
②物件に内在する危険性と売主の保証範囲
③買主の購入目的
④買主の危険性の容認
⑤値引きの有無
などを考えていくのがよいでしょう。
特に、③の「買主の購入目的」は、契約不適合の該当性や軽微性を判断する重要な要素になります。これを明記することによって、「その目的を達成できる物件であればよい」という意味で、契約不適合となる不具合を限定する効果を得られます。
ただし、購入目的を明記するということは、「その目的は絶対に達成できる物件でなければならない」という意味では、売主や媒介業者により高度な調査・説明義務が求められるという面も生じることに留意が必要です。
8-9【PCB含有機器につき売主が引渡し時までに処分する場合】
本物件建物の屋上に設置してある高圧変圧器および高圧コンデンサーには、高濃度 PCB(ポリ塩化ビフェニル)が使用されている。売主は、本物件の引渡しの時までに、自己の責任と費用負担にて、法に定める方法に従い当該高濃度PCBを撤去し、本物件内から移動させるものとする。
《私案》【引渡しの前後を問わずPCB含有機器が発見されたら売主が処分する場合】
売主は、本物件の引渡しの前後を問わず、本物件からPCB含有機器(引渡し時における「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」他関係法令に定められた基準によりPCB廃棄物として処理する必要のあるものに限る。)が発見された場合には、自己の責任と負担において、法に定める方法に従い速やかにこれを撤去・移設し、又は処分する。
8-10【引渡し物件内に使用中のPCB含有機器がある場合】
本物件建物の屋上に設置してある高圧変圧器および高圧コンデンサーには、高濃度 PCB(ポリ塩化ビフェニル)が使用されている。買主は法で定められた期限(〇〇年
〇月〇〇日)までは、当該高圧変圧器および高圧コンデンサーを使用することはできるが、上記期限内に高濃度PCBを処分しなければならないため、処分後は使用できなくなる可能性がある。また、売主は廃止届出を、買主は新たに設置等届出を行う必要がある。
※ PCBの取扱いに関してはPCB特別措置法があります。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、変圧器・コンデンサーといった電気機器の絶縁油など幅広く利用されていましたが、毒性が高く社会問題となり、PCB特別措置法が定められました。
PCBの保管事業者は、保管・処分等の状況や処分終了の届出などが義務づけられています。すでに使用していないPCB廃棄物は、譲渡等が禁止され、法で定められた期限までに処分しなければなりません。また、使用中のPCB含有機器は、譲渡等はできるものの、やはり法で定められた期限までに使用を終了して処分しなければなりません。xx県の場合、高濃度PCB廃棄物・使用製品の処分期間は、①変圧器・コンデンサー
等が令和4年3月末まで、②安定器及び汚染物等が令和5年3月末までとなっています
(低濃度PCB廃棄物・使用製品は令和9年3月末まで)。
このように処分期間が接近していること、また、処分費用が高額であることなどから、取引物件にPCB含有機器が設置されているかどうかに常に注意を払い、特約等によってトラブルを未然に防止してください。
《参考》環境省ホームページより
Q 建物の売買を予定していますが、PCB使用製品やPCB含有電気工作物が設置されているかどうか分からない場合はどうすればよいですか?
A 建物の売買契約を行う前に、キュービクルや電気室などに変圧器やコンデンサーが設置されていないか確認してください。設置されている場合は、これらにPCBが含まれるかどうかをまず売主が確認し、含まれていた場合は電気事業法及びPCB特別措置法に従い、所要の手続きを行ってください。当該電気工作物が使用中のものである場合には、地位の承継である場合を除き、売主が廃止届出を、また買主が新たに設置等届出を行う必要があります。
また、売買する建物が昭和52年(1977年)3月までに建築・改修された建物である場合には、PCBが使用された蛍光灯等の安定器が設置されたままになっている可能性があるため、十分に確認する必要があります。見つかった場合は、速やかに交換し、処分に係る所要の手続きを行ってください。なお、当該電気工作物や安定器がすでに廃棄され保管中のものであった場合は、PCB特別措置法において、譲渡し及び譲受けが原則禁止されており、売買が行われた後も売主が適正に処分する必要があります。