Contract
浜松市土木工事請負契約における設計変更ガイドライン
令和3年4月
浜松市財務部技術監理課
はじめに
土木工事の施工おいては、その自然的・社会的条件が複雑かつ多様で、不確実である。このため、契約時点で設計図書に定められた条件が、現地の条件と異なる場合には、施工方法や使用材料等の設計内容について、変更しなくてはならなくなる場合がある。
設計変更については「浜松市建設工事設計変更事務処理要領」において、その手続きは定められているものの、当初の施工条件が明確になっていなかったり、協議による内容が曖昧になっていたり、様々な理由により、設計変更が適切に行われていない事例があるとの意見もある。
また、改正品確法の基本理念に「請負契約の当事者が対等の立場における合意に基づいてxxな契約を適正な額の請負契約代金で締結」が示されているとともに、「設計図書に適切に施工条件を明示するとともに、必要があると認められたときは適切に設計図書の変更及びこれに伴い必要となる請負代金又は工期の変更を行うこと」が規定されている。
このことから、本ガイドラインは、設計変更の対象事項や仮設・施工方法における「指定・任意」の正しい運用を明らかにし、設計変更が適切に実施されることを目的として策定したものである。
目 次
1. 設計変更の基本
(1)設計変更の基本的な考え方 1
(2)設計変更の対象事項 1
(3)設計図書の確認 1
(4)設計変更における留意事項 2
(5)設計変更における歩掛・単価について 2
(6)設計変更の手続き 3
(7)設計変更ができない場合 5
2. 設計変更の対象となる具体的な事例
(1)設計図書が相互に一致しない 6
(2)設計図書に誤びゅう又は脱漏がある 6
(3)設計図書の表示が明確でない 6
(4)設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が相違する 6
(5)予期することのできない特別な状態が生じた 6
(6)発注者が必要であると認めるとき 6
(7)受注者の責めによらない事由による工事の一時中止 6
(8)受注者による工期の延長請求 7
(9)発注者による工期の短縮請求 7
3. 指定・任意の正しい運用について
(1)基本的な考え方 8
(2)指定と任意の定義 8
(3)指定と任意の比較表 8
(4)指定仮設の事例 9
(5)指定・任意の正しい運用から見た不適切な事例 9
4. 施工条件の明示について
(1)施工条件の明示 11
5. 入札・契約時の契約図書等の疑義の解決
(1)入札前 13
(2)契約後 13
1.設計変更の基本
(1) 設計変更の基本的な考え方
工事の施工は、設計図書(別冊の設計書、図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。以下同じ。)に基づいて施工すべきであるが、真にやむを得ない事情により設計図書と現場等に差異が生じた場合、当該工事との一体性を損ねない範囲において設計変更を行う。
(2) 設計変更の対象事項
浜松市建設工事執行規則(以下「規則」という。)において、条件変更等に伴う設計変更の対象事項は規則第30 条(条件変更等)に、発注者が必要であると認めるときの
設計図書の変更は規則第31 条(設計図書の変更)に、また、受注者の責めによらない
事由による工事の一時中止については規則第32 条(工事の中止)に規定している。さらに、受注者による工期の延長の請求及び発注者による工期の短縮の請求等については各々規則第33 条、規則34 条に規定している。
設計変更の対象となる事項
設計変更の対象事項 | 工事執行規則 | 参考 (契約約款) |
1.設計図書が相互に一致しない | 第30 条 第1 項第1 号 | 第18 条 第1 項第1 号 |
2.設計図書に誤びゅう又は脱漏がある | 第30 条 第1 項第2 号 | 第18 条 第1 項第2 号 |
3.設計図書の表示が明確でない | 第30 条 第1 項第3 号 | 第18 条 第1 項第3 号 |
4.設計図書に示された施工条件と実際の工事 現場が相違する | 第30 条 第1 項第4 号 | 第18 条 第1 項第4 号 |
5.予期することのできない特別な状態が生じ た(設計図書で明示されていない施工条件について) | 第30 条 第1 項第5 号 | 第18 条 第1 項第5 号 |
6.発注者が必要があると認めるとき | 第31 条 | 第19 条 |
7.受注者の責めによらない事由による工事の 一時中止 | 第32 条 | 第20 条 |
8.受注者による工期延長の請求 | 第33 条 | 第22 条 |
9.発注者による工期短縮の請求等 | 第34 条 | 第23 条 |
(3) 設計図書の確認
受注者は、工事の施工にあたり、規則第30 条第1項に該当する事実を発見したときは、その旨を直ちに監督員に通知し、発注者にその確認を請求しなければならない。
発注者は、受注者の意見を聴いて、調査の結果(これに対してとるべき措置を指示する必要があるときは、当該指示を含む。)をとりまとめ、調査の終了後14 日以内に、その結果を受注者に通知しなければならない。
(4) 設計変更における留意事項
設計変更にあたっては下記の事項に留意し受注者へ指示する。
① 当初設計の考え方や設計条件を再確認して、設計変更「協議」にあたる。
② 当該事業(工事)での変更の必要性を明確にし、設計変更は規則第31 条にもとづき書面で行う。(規格の妥当性、変更対応の妥当性(別途発注とすべきではないか)を明確にする。)
③ 設計変更に伴う契約変更の手続きは、その必要が生じた都度、遅滞なく行うものとする。
④ 指示書への延長必要日数、概算金額の記載を行う。ただし、以下の事項を条件とする。
(ⅰ) 受注者からの協議における変更の場合は、受注者の見積書を参考にして指
示書に記載する。
(ⅱ) 受注者からの協議によらず発注者の指示による場合は、概算金額※を指示書に記載することとし、記載できない場合にはその理由を記載することとする。
(ⅲ) 記載する概算金額※は、「参考値」であり、契約変更額を拘束するものでは
ない。
(ⅳ) 概算金額※の算出条件を明確にしておくこと。
※概算金額:契約額ベースの増減概算額
(5) 設計変更における歩掛・単価について
変更内容 | 積算歩掛 | 積算単価 | |
変更の種類 | 工種の内容 | ||
現地精査等に伴う数量変更 | 既契約の歩掛 | 既契約の単価 | |
構造、工法、位置、断面等の変更 | 同工種又は類似工種 | 既契約の歩掛 | 既契約の単価 |
工事の追加 | 同工種又は類似工種、新工種 | 変更通知時点の歩掛 | 変更通知時点の単価 |
注)「工事の追加」とは、施工条件の変化又は発注者の意志による工事内容の追加であり、既契約内容に含まれていない新工種を追加する場合、あるいは同工種又は類似工種であっても既契約工事範囲外の箇所に工事を追加する場合などをいう。
※「土木工事積算資料」静岡県交通基盤部 より(一部改)
(6) 設計変更の手続き
ア 設計変更の手続きフロー(全般)
請負工事の契約成立
【規則第30 条】
【規則第32 条】
【規則第31 条】
【規則第33 条】
【規則第34 条】
条件変更等
【共仕※1第1編1-1-3】 【共仕※1、特記仕様書等】
工事の一時中止に伴うもの
「工事一時中止に係るガイ
必要な場合
設計図書の変更
(発注者が設計図書の変更を必要と認めたとき)
工期の延長短縮請求
設計図書の照査(受注者)
「設計図書照査ガイドライン※2」による
受注者からの設計図
書の協議事項
ドライン」による
3
照査結果の報告(受注者) 協議 (受注者)
中止期間中に要した費用
再開以降の工事にかかる増加費用
必要な場合
内容の確認・回答・指示(発注者) 内容の確認
・受注者の都合による形状変更
・任意仮設の変更 等
・工事目的物の変 更をともなうもの
・指定仮設の変更 等
中止期間中の増加費用に関する契約変更
設計図書の変更は行わない 設計図書の訂正又は修正(発注者)
●軽微な設計変更※3は設計変更内容を指示し、概算金額、延長必要日数を受注者と協議を行い、工期末までに契約変更を行う。
●それ以外は、契約変更の手続きをその都度行う。
契約変更
※1・・・浜松市土木工事共通仕様書 ※2・・・浜松市土木工事設計図書照査ガイドライン
※3・・・浜松市建設工事設計変更事務処理要領による
イ 設計変更の手続きフロー(規則第30 条関係))
発注者 受注者
規則第30 条第1項に該当する事実の発見
【規則第30 条第2 項】
発注者:調査の実施受注者:立会い
【規則第30 条第1 項】
通知し確認を請求
【規則第30 条第3 項】
調査結果のとりまとめ
調査結果の通知(とるべき措置の指示含む
受 理
原則14 日以内
【規則第30 条第4 項】
必要があると認められるときは
設計図書の訂正又は変更
【規則第30 条第4 項】
工事目的物の変更を伴わない場合(仮設等の変更)は協議
設計図書の訂正 設計図書の変更
【規則第30 条第5 項】
必要があると認められるときは 協 議
工期もしくは請負代金額の変更
概算金額・延長必要日数
※軽微な設計変更の場合は、概算金額、延長必要日数を協議し、設計変更内容を指示する、
契 約 変 更 の 手 続 き
変更図面・追加特記仕様書・変更数量計算書等の変更設計図書の作成
指示・協議内容・現地条件と適合しているか確認
【規則第27 条】
協議①工期の変更
②請負代金額の変更
x 約 締 結
(7) 設計変更ができない場合
次の場合は、原則として設計変更ができないので留意すること。
(ただし規則第36 条(臨機の措置)により施工した場合を除く。)
① 規則に定められた手続きを経ていない場合
② 書面によらない指示等で施工した場合(規則第9条第7項)
③ 設計図書に条件明示のない事項について、発注者と協議を行わず、受注者が独自の判断で施工した場合
④ 発注者と受注者の協議が調わない時点で施工した場合
⑤ 受注者の都合による施工方法等の変更(施工承諾等)
2. 設計変更の対象となる具体的な事例
(1) 設計図書が相互に一致しない(これらの優先順位が定められている場合を除く。)
【規則第30 条第1 項第1 号】
① 図面と仕様書の材料寸法、数量等の記載が一致しない場合
② 平面図と断面図の寸法、材料名、仕様等の記載が一致しない場合 等
(2) 設計図書に誤びゅう又は脱漏がある【規則第30 条第1 項第2 号】
① 工事施工の制約条件である、土質に関する条件明示がない場合
② 工事施工の制約条件である、地下水位に関する条件明示がない場合
③ 工事施工上必要な材料仕様について、明示がない場合 等
(3) 設計図書の表示が明確でない【規則第30 条第1 項第3 号】
① 土質柱状図は明示されているが、地下水位が不明確な場合
② 水替工実施の記載はあるが、作業時又は常時排水などの運転条件等の明示がない場合 等
(4) 設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が相違する【規則第30 条第1 項第
4 号】
① 設計図書に示された土質が、現地条件と一致しない場合
② 設計図書に示された地下水位が、現地条件と一致しない場合
③ 設計図書に示された交通誘導警備員の人数等が、道路使用許可の内容と一致しない場合
④ その他、新たな制約等が発生した場合 等
(5) 予期することのできない特別な状態が生じた【規則第30 条第1 項第5 号】
① 施工中に地中障害物を発見し、撤去が必要となった場合
② 施工中に埋蔵文化財を発見し、調査が必要となった場合
③ 工事区域内に想定外の軟弱地盤があり、地盤改良が必要となった場合 等
(6) 発注者が必要があると認めるとき【規則第31 条】
① 周辺住民との協議により、変更する必要があると認める場合
② 関係官公署の行政指導により、変更する必要があると認める場合
③ 関連工事との調整により、変更する必要があると認める場合
④ 施設の維持管理又は利用方法が具体化したことにより、変更する必要があると認める場合 等
(7) 受注者の責めによらない事由による工事の一時中止【規則第32 条】
※「工事一時中止に係るガイドライン」参照
① 設計図書に定められた着手時期に、受注者の責めによらず施工できないため、工事を一時中止した場合
② 設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見されたため施
工を続けることが困難な場合
③ 警察、河川、鉄道管理者等の管理者間協議が未了のため、工事を一時中止した場合
④ 管理者間協議の結果、施工できない期間が設定されたため、工事を一時中止した場合
⑤ 受注者の責めによらないトラブル(地元調整等)が生じたため、工事を一時中止した場合
⑥ 予見できない事態が発生した(地中障害物の発見等)ため、工事を一時中止した場合
⑦ 工事用地の確保ができない等のため工事を施工できない場合
⑧ 埋蔵文化財の発掘又は調査、その他の事由により工事を施工できない場合等
(8) 受注者による工期の延長の請求
① 天候不良の日が例年に比べ多いと判断でき、工期の延長が生じた場合
② 設計図書に明示された関連工事との調整に変更があり、工期の延長が生じた場合
③ その他受注者の責めに帰することができない事由により工期の延長が生じた場合 等
(9) 発注者による工期の短縮の請求等
① 関連工事等の影響により、工期短縮が必要な場合
② 受注者による工期の延長の請求の理由が正当ではあるが、当初工期のままもしくは必要な工期の延長ができない場合
③ 工種の追加等で工期を延長すべき場合において、通常必要とされる工期に満たない工期とする場合
④ その他の事由(地元調整、関係機関調整など)により工期の短縮が必要な場合 等
3. 指定・任意の正しい運用について
(1) 基本的な考え方
指定と任意についての基本的な考え方として、規則第17 条(自主施工の原則)に次のとおり記載されている。
施工方法等については、請負契約において特に定める場合を除き、受注者がその責任において定めるものとする。
つまり、「施工方法等」(仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段)は、受注者がその技術力等を発揮するところであり、施工主体である受注者の責任による自主的な選択が原則である。
一方、受注者の自主的な選択を制限する必要がある場合は、設計図書等に特別の定めを明示し、「施工方法等」を指定することができる。
(2) 指定と任意の定義
「指定」とは、工事目的物を施工するにあたり、設計図書のとおり施工を行わなければならないものであり、「任意」とは、受注者の責任において自由に施工を行うことができるものである。
(3) 指定と任意の比較表
x x | x x | 任 意 |
設 計 図 書 | 施工方法等について具体的に指定する (契約条件として位置付け) | 施工方法等について具体的に指定しない (契約条件としない場合は「参考」 の旨を明示すること) |
例 外 | ・仮設は、「指定」する場合に「指定仮設」と明示すること。 ・建設機械の機種・規格は、設計書に明示されていても「任意」扱いとする。ただし、排出ガス対策型など共通仕様書等で指定されている内容は除く。 ・作業土工の掘削線等は、図面に明示されていても 「任意」扱いとする。 | |
施工方法等の変更 | 発注者の指示又は承諾が必要 | 受注者の任意 (ただし、施工計画書等の修正・ 提出は必要) |
施工方法の変更が ある場合の設計変更 | 設計変更の対象とする | 設計変更の対象としない |
当初明示した条件の変 更に対応した設計変更 | 設計変更の対象とする | 設計変更の対象とする |
注)指定・任意かかわらず、施工上の条件明示(地質条件、廃棄物処理条件等)はできるだけ明確に行い、設計変更に対応できるようにすることが必要である。
(参照:「4.施工条件の明示について」)
(4) 指定仮設の事例
① 河川堤防と同等の機能を有する仮締切の場合
② 仮設構造物を一般交通に供用する場合
③ 特許工法又は特殊工法を採用する場合
④ 関係官公庁等との協議により制約条件のある場合
⑤ 第三者に特に配慮する必要がある場合
(例:重要な仮設土留、仮設防護柵等)
⑥ 他工事等に使用するため、工事完成後も存置される必要のある仮設
(5) 指定・任意の正しい運用から見た不適切な事例
【例-1】≪機械の規格選定に関する事例≫
機械土工において、バックホウ(0.35 ㎥級)で施工計画書が提出されたが、積算ではバックホウ(0.6 ㎥級)を考えているので、現場にもって来るように指示した。
《解説》 積算におけるバックホウの規格は、特別な現場条件の制約等がある場合を除き、作業内容(土量)により決定されるものである。
上記例は、「任意」に該当し、施工方法等は受注者の責任において定めるものであるため、不適切な事例となる。また、特別な施工条件の制約等があり標準的な機種・規格以外で積算した場合においては、制約となる施工条件等を特記仕様書や工事数量総括表の摘要欄に明示する必要がある。
【例-2】≪機械の機種選定に関する事例≫
⚫ 鋼xxの打込みについて、受注者が積算上の標準機種であるクローラクレーンで施工せず、分解・組立・運搬に係る費用を計上する必要のないラフテレーンクレーンで施工したため、クローラクレーンの分解・組立・運搬に係る費用を設計変更にて減額した。
⚫ 切梁下の掘削において、特記仕様書には何も明記はなかったので受注者がクラム
シェル(0.6 ㎥級)およびバックホウ(0.45 ㎥級)にて計画し、施工した。施工中に発注者が、積算がクラムシェル及び人力施工となっていることを理由に人力施工に変更するよう求めた。
《解説》 機械の機種や施工方法については積算における標準的なものであり、受注者に対し拘束する事項とはならない。また、積算基準の適用範囲内であれば、受注者の施工方法や機種選定が積算と異なっていても問題とはならないため、積算どおりの施工方法や施工機種での施工を指示することや、受注者の施工の実態にあわせた設計変更を行うことは不適切である。
【例-3】≪仮設備の選定に関する事例≫
⚫ 都市工事において、受注者が防音ハウス(任意仮設)の検討を行った結果、個々のプラントのスリム化やレイアウトを工夫することによって、発注者が参考図として示していた規模より小さいもので施工可能であった。設計より安くなるという理由で参考図どおり施工するように指導した。
⚫ 道路工事に係る工事用道路を敷き砂利で計上していたが、現地の地盤が軟弱であ
ったため、受注者から敷き鉄板への変更について協議があった。発注者は任意仮設であることを理由に、設計変更の対象としなかった。
《解説》 任意仮設は、その施工に制約を与えるものではないため、積算どおりの仮設を指示することは不適切である。しかし、現場条件等に変更が生じ、設計計上した工法による施工が困難な場合は、適切に設計変更する必要がある。
【例-4】≪施工効率等に関する事例≫
シールド工事や推進工事において、受注者の企業努力により標準歩掛をこえた日進量で施工できた。発注者が積算上の歩掛(日進量)を平均でこえることがないように指示し、日々の進行を調整しながら施工するよう指導した。また、実際の日進量で減額設計変更した。
《解説》 企業努力によるものであるが、最近の各受注者による新技術の開発には目まぐるしいものがある。例えば、シールド機械の施工能力が標準以上であったり、シールド工法そのものに替わる効率的な工法が開発されていたりすることがある。この場合、シールドが本設(工事目的物)若しくは第三者による条件でない限り「任意」として発注すべきであり、たまたま条件(稀少機械の調達ができる業者が受注する、特許工法権者が認める業者が受注する等)がそろうことでより安価な工法が実施できる場合でも「任意」として扱うべきである。
【例-5】≪新技術活用の採用等に関する事例≫
基礎工や地盤改良工において、設計と同等以上の品質が確保できる新技術を、受注者の企業努力により活用したいとの申し出があった。発注者は新技術を活用したことがなく、積算上の工法で実施するよう指示した。
《解説》 設計図書において、施工方法その他を定めていない場合は受注者の責任において定めることができ、その施工方法が新技術であっても、発注者として拒否することはできない。ただし、新技術の活用に当たっては、発注者として求める品質等が満足されているかを確認するのはもちろんのこと、将来の維持管理等も検討のうえ承諾する必要がある。
4. 施工条件の明示について
(1) 施工条件の明示
施工条件は、契約条件となるものであることから、制限を受ける当該工事に関する施工条件を、設計図書の中で明示するものとする。また、明示された条件に変更が生じた場合は、契約書の関連する条項に基づき、適切に対応するものとする。
明示項目 | 明 示 事 項 |
工程関係 | 1. 他の工事の開始又は完了の時期により、当該工事の施工時期、全体工事等に影響がある場合は、影響箇所及び他の工事の内容、開始又は完了の時期 2. 施工時期、施工時間及び施工方法が制限される場合は、制限されるx x内容、施工時期、施工時間及び施工方法 3. 当該工事の関係機関等との協議に未成立のものがある場合は、制約を受ける内容及びその協議内容、成立見込み時期 4. 関係機関、自治体等との協議の結果、特定された条件が付され当該工 事の工程に影響がある場合は、その項目及び影響範囲 5. 余裕工期を設定して発注する工事については、工事の着手時期 6. 工事着手前に地下埋設物及び埋蔵文化財等の事前調査を必要とする場合は、その項目及び調査期間。又、地下埋設物等の移設が予定されている場合は、その移設期間 7. 設計工程上見込んでいる休日日数等作業不能日数 |
用地関係 | 1. 工事用地等に未処理部分がある場合は、その場所、範囲及び処理の見込み時期 2. 工事用地等の使用終了後における復旧内容 3. 工事用仮設道路・資機材置き場用の借地をさせる場合、その場所、範囲、時期、期間、使用条件、復旧方法等 4. 施工者に、消波ブロック、桁製作等の仮設ヤードとして官xxx及び 発注者が借り上げた土地を使用させる場合は、その場所、範囲、時期、期間、使用条件、復旧方法等 |
公害関係 | 1. 工事に伴う公害防止(騒音、振動、粉塵、排出ガス等)のため、施工方法、建設機械・設備、作業時間等を指定する必要がある場合は、その内容 2. 水替・流入防止施設が必要な場合は、その内容、期間 3. 濁水、湧水等の処理で特別の対策を必要とする場合は、その内容(処理施設、処理条件等) 4. 工事の施工に伴って発生する騒音、振動、地盤沈下、地下水の枯渇等、 電波障害等に起因する事業損失が懸念される場合は、事前・事後調査 の区分とその調査時期、未然に防止するために必要な調査方法、範囲等 |
(平成14年3月28日付け国官技第369号国土交通省大臣官房技術調査課長からの通達による)
安全対策関係 | 1. 交通安全施設等を指定する場合は、その内容、期間 2. 鉄道、ガス、電気、電話、水道等の施設と近接する工事での施工方法、作業時間等に制限がある場合は、その内容 3. 落石、雪崩、土砂崩落等に対する防護施設が必要な場合は、その内容 4. 交通誘導員、警戒船及び発破作業等の保全設備、保安要員の配置を指定する場合又は発破作業等に制限がある場合は、その内容 5. 有毒ガス及び酸素欠乏等の対策として、換気設備等が必要な場合は、 その内容 |
工事用道路関 係 | 1. 一般道路を搬入路として使用する場合 ① 工事用資機材等の搬入経路、使用期間、使用時間帯等に制限がある場合は、その経路、期間、時間帯等 ② 搬入路の使用中及び使用後の処置が必要である場合は、その処置内容 2. 仮道路を設置する場合 ① 仮道路に関する安全施設等が必要である場合は、その内容、期間 ② 仮道路の工事終了後の処置(存置又は撤去) ③ 仮道路の維持補修が必要である場合は、その内容 |
仮設備関係 | 1. 仮土留、仮橋、足場等の仮設物を他の工事に引き渡す場合及び引き継いで使用する場合は、その内容、期間、条件等 2. 仮設備の構造及びその施工方法を指定する場合は、その構造及びその 施工方法 3. 仮設備の設計条件を指定する場合は、その内容 |
建設副産物関 係 | 1. 建設発生土が発生する場合は、残土の受入場所及び仮置き場所までの、距離、時間等の処分及び保管条件 2. 建設副産物の現場内での再利用及び減量化が必要な場合は、その内容 3. 建設副産物及び建設廃棄物が発生する場合は、その処理方法、処理場所等の処理条件 4. 再資源化処理施設又は最終処分場等を指定する場合は、その受入場所、 距離、時間等の処分条件 |
工事支障物件等 | 1. 地上、地下等への占用物件の有無及び占用物件等で工事支障物が存在する場合は、支障物件名、管理者、位置、移設時期、工事方法、防護等 2. 地上、地下等の占用物件工事と重複して施工する場合は、その工事x x、期間等 |
薬液注入関係 | 1. 薬液注入を行う場合は、設計条件、工法区分、材料種類、施工範囲、削孔数量、削孔延長及び注入量、注入圧等 2. 周辺環境への調査が必要な場合は、その内容 |
その他 | 1. 工事用資機材の保管及び仮置きが必要である場合は、その保管及び仮置き場所、期間、保管方法等 2. 工事現場発生品がある場合は、その品名、数量、現場内での再使用の 有無、引き渡し場所等 3. 支給材料及び貸与品がある場合は、その品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所、引渡期間等 4. 関係機関・自治体等との近接協議に係る条件等その内容 5. 架設工法を指定する場合は、その施工方法及び施工条件 6. 工事用電力等を指定する場合は、その内容 7. 新技術・新工法・特許工法を指定する場合は、その内容 8. 部分使用を行う必要がある場合は、その箇所及び使用時期 9. 給水の必要のある場合は、取水箇所・方法等 |
注)1 明示されていない施工条件、明示事項が不明確な施工条件についても、契約書の関連する条項に基づき双方協議できるものであること。
2 現場説明時の質問回答のうち、施工条件に関するものは、質問回答書により、文書化すること。
3 施工条件の明示は、工事規模、内容に応じて適切に対応すること。なお、施工方法、機械施設等の仮設については、施工者の創意工夫を損なわないよう表現上留意すること。
5. 入札・契約時の契約図書等の疑義の解決
契約図書等に係る疑義については、下記により、入札前の段階、設計照査の段階で解決しておくことが、スムーズな設計変更につながることになる。
(1) 入札前
契約書案、設計書、仕様書、図面、現場説明等の必要な条件を承諾のうえ、競争入札に参加すること。
(浜松市建設工事等の入札執行について(入札心得)第1条)
(2) 契約後
施工前に設計図書の照査を行い、必要がある場合は、監督員に確認を求めること。
(浜松市土木工事共通仕様書1-1-3設計図書の照査等 2.)
おわりに
積算は本来、現場条件や実態を反映したものであるべきことが原則であるから、積算の標準化、簡素化を進めている積算基準も、現場条件などによってはその適用の可否を検討する必要がある。
工事を完成する手段については、設計図書に特別の定めがある場合を除き、本来受注者の任意に施工することができるもので、積算基準を根拠とした指導や発注者が想定した工法と異なることによる設計変更は適切ではない。
会計実地検査等においては、積算基準と実態が異なっているのではないかという指摘が行われることがあるが、個々の現場で積算基準の適用範囲等が合っているのであれば、基準と実態のかい離があっても問題になることは原則としてない。
従って、仮に積算と実態の違いがあったとしても、積算の考え方と個々の現場の事情をきちんと説明することが大切であり、そのためにも施工条件を明確化し、適切な設計変更を行う必要がある。